説明

引出し用フロント調整器及び引出し

引出し用のフロント調整手段は、サイドフレーム(3)に固定でき、フロントパネル(2)に接続できるガイド(5)上に移動可能な方法で装着されるスライド(4)を備え、ガイド(4)とスライド(5)との間には回転可能なウォームホイール(6)が配置され、ウォームホイールは回転時にスライド(4)をガイド(5)に沿って移動させる。これにより、少ない数の構成要素だけを有する設置が容易な調整手段を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドフレームに固定でき、フロントパネルに接続できるガイド上に移動可能に装着されるスライドを有する引出し用フロント調整器、及び、引出しに関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許文献DE 100 21 033は引出しのフロントパネル用の調整装置を開示しており、この調整装置では、多数の調整手段がピニオン、レバー、及び、歯付きラックの形態でハウジング内に設けられ、調整手段を使用して引出しフレームに対するフロントパネルの相対的な調整が可能である。調整機構は、複数の構成要素を必要とし、製造が比較的複雑である。
【0003】
独国特許文献DE 39 30 662は、引出しのフロントパネル用の調整装置を開示しており、この調整装置では、側方から作動され得るネジがギアホイールと噛み合い、ギアホイールは、縦調整のために凹部内で案内される中心ピンを有する。そのようなギア構造は、対応する調整を可能にするが、製造及び設置が比較的複雑である。
【0004】
最後に、米国特許第3,041,657号は、調整能力が垂直方向で与えられるハンギングドア用の家具取付具を開示している。回転可能な湾曲ガイドがハウジングに装着され、湾曲ガイドを使用して、レール上を移動可能なホルダを調整できる。そのようなハンギングドアの場合、調整装置は、調整後、発生する高い重量の力によりロックされる可能性があり、取付部品は、強度を必要とするため、一般に金属を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、簡単な構造を有し、サイドフレームに対するフロントパネルの調整を可能にする引出し用フロント調整器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する引出し用のフロント調整器によって達成される。
【0007】
本発明によれば、フロントパネルに固定できるガイド上及びサイドフレームに固定できるレール上に回転可能なウォームホイールが配置され、ウォームホイールは回転時にスライドをガイドに沿って移動させる。したがって、数少ない構成要素のみから形成され、容易に設置できる、引出しのフロントパネルのための調整能力を与えることができる。また、このフロント調整器は、コンパクトな構造で実現でき、狭い空間条件で用いるのに適する。
【0008】
正確な調整のため、ウォームホイールが少なくとも1つの突起を使用してスライドと係合される。複数の突起がウォームホイールと同時に係合され、それにより、ウォームホイールとスライドとの間で特に良好な案内がなされることが好ましい。
【0009】
本発明の好ましい構造によれば、スライド及びガイドは、細長片形状として設けられるとともに、対応するガイド面によって互いに対して比較的正確に案内されてもよい。また、細長片形状の実施が平坦な構造を可能にし、積極的なインターロックが対応する断面構造によって可能である。ガイドは、断面がU形状として設けられ、スライドを側方から取り囲むことが好ましい。
【0010】
ウォームホイールは、ガイドの開口内で回転できるように装着されることが好ましい。この場合、円形突起を使用してウォームホイールを開口内に挿入することができ、ウォームホイールは、スライドの少なくとも1つの突起と係合される渦巻き状突起を有する。したがって、ウォームホイールの回転時に突起を直線的に移動させることができる。ウォームホイールをスライドとガイドとの間のキャビティ内に位置させることができ、そのため、更なる保持手段又は支持手段が不要である。また、このように形成されるフロント調整器は、容易に、破壊せずに取り外し得る。
【0011】
ガイドの前面を締結手段によりフロントパネルに固定できることが好ましい。ガイドは、例えば少なくとも1つの開口又は1つのスロットを有することができ、該開口又はスロットにネジを固定できる。また、接着剤又は機械的な締結具による他の固定も可能である。
【0012】
調整作業後にスライドとガイドとを互いに固定できるように、スライド及びガイドを例えば互いに締め付け固定することができる。この目的のため、ロックネジをスライド及び/又はガイドに設けることができる。スライド及びガイドの意図しない調整を避けるために、他の固定要素が使用されてもよい。
【0013】
本発明によれば、対応するフロント調整器を有する引出しも提供される。フロント調整器がフレーム取付部に設置されるのが好ましく、また、フロントパネルがサイドフレームの下側部分に回動可能に保持される。フレーム取付部は引出しの後壁からフロントパネルまで延びているため、フロント調整器を使用して力をフレーム取付部を介してフロントパネルから後壁へと直接に伝えることができ、それにより、サイドパネルの長手方向で短い距離の調整が可能となる。更に、長手方向調整能力の結果として、引出しに対するフロントパネルの傾きを設定できる。
【0014】
問題は、多くの場合、特に、フロントパネルの表面が完全に面一ではなく、むしろ、フロントパネルが上縁で互いから幾分突き出る、又は本体に対して非常に密接に押し付くような高さのある引出しの場合に生じる。傾き調整は修正のために可能である。
【0015】
以下、添付図面を参照して、複数の典型的な実施形態に基づいて本発明を更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】引出し用フロント調整器の設置状態の斜視図を示している。
【図2】図1のフロント調整器の分解斜視図を示している。
【図3】A〜Cは、引出しを伴わない図1のフロント調整器の図を示している。
【図4】A及びBはそれぞれ異なる位置にある図3のフロント調整器の図を示している。
【図5】A〜Cは図3のフロント調整器の設置中の図を示している。
【図6】A及びBは変形実施形態に係るフロント調整器の図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
引出し用のフロント調整器1は、フロントパネル2とサイドフレーム3との間に設置される。サイドフレーム3は下側部分30とフレーム取付部31とを有する。フロント調整器1は、フレーム取付部31に設置され、サイドフレームの長手方向の調整を可能にする。したがって、フロントパネル2を回動させることができ、回動軸線32は下側部分30とフロントパネル2との間の領域に設けられる。フレーム取付部31は、プレート、特にガラスプレートとして、あるいは、手摺り棒又はプロファイルとして設けることができる。
【0018】
フロントパネル2は、前側締結取付具を使用して回動軸線32の領域で固定することができ、前側締結取付具は、縦調整機構及び横調整機構を有してもよく、また、深さ調整手段を有してもよい。
【0019】
図2に示されるように、フロント調整器1は、それがガイド5に沿って移動できるように位置するスライド4を備える。スライド4及びガイド5は、細長片形状として設けられ、プラスチック及び/又は金属から形成されてもよい。
【0020】
ガイド5は床領域に円形開口14を有し、開口14にはウォームホイール6が回転可能に装着される。
【0021】
スライド4はネジ7を介して引出しのサイドフレーム3に接続固定され、ネジ7は、サイドフレーム3の開口9内へ挿入される、例えばプラスチックから成るスリーブ8内で案内される。ネジ7は、スライド4のネジ穴10内にネジ部を使用して固定される。スライド4をサイドフレーム3に固定するために他の締結手段が設けられてもよく、例えば、スライド4は、特にそれがガラスプレートとして設けられる場合には取付部31に接着することもできる。
【0022】
ガイド5をフロントパネル2に固定するために少なくとも1つのネジ11が設けられ、該ネジは、ガイド5の前壁のスロット又は開口13に挿入することができる。ネジ11は、ネジ部を使用してフロントパネル2の穴12に捩じ込まれる。
【0023】
図3に示されるように、細長片形状のガイド5は、側壁15を有するU形状断面を成しており、側壁は、内側に向けられるウェブ16をそれらの端部に有する。したがって、スライド4の細長片形状の突起17は、いずれの場合にも、スライド4及びガイド5を長手方向に直線的に移動させることができるように取り囲まれる。
【0024】
ガイド5に対するスライド4の位置を調整するため、スライド4には、ウォームホイール6の渦巻き状突起18と係合できる突起19が、ガイド5に面する側に設けられる。渦巻き状突起18は、開口14によって形成される軸線を中心に回転できるとともに、ウォームホイール6の回転時に突起19、したがってスライド4が直線的に移動されるようにする。ユーザは、ネジ回し20を使用してウォームホイール6を回転させることしかできず、その場合、細長片形状の突起18も複数の突起19と係合できる。
【0025】
フロント調整器の位置が図4のAに示されており、この位置では、スライド4がガイド5内に完全に受けられる(最大引き込み位置)。ガイド5は締結ネジ11を介してフロントパネルに固定され、また、ウォームホイール6は、スライド4が引き込まれる位置へと回転されている。スライド4を調整し、したがって、サイドフレーム3の取付部31の長さを調整するため、図4のBに示される伸長位置に達するまでウォームホイール6が回転される。ウォームホイールの細長片形状の突起18は、特定の突起19をガイド5から一方向に押し出し、それにより、対応する調整をもたらしている。
【0026】
フロント調整器の設置が図5のA〜Cに詳しく示されている。最初に、スライド4がサイドフレーム3に締結され、その場合、ネジ7は未だ完全に締め付けられない。他方側では、1つ以上のネジ11を介してガイド5がフロントパネル2に固定され、その場合、ウォームホイール6がガイド5上に配置される。その後、スライド4がガイド5内に挿入され、また、ウォームホイール6が更に回転されて、それにより、渦巻き状突起18が突起19のうちの1つと係合する。
【0027】
この事前固定位置において、前述した方法でサイドフレーム3に対するフロントパネル2の調整を行なうことができる。設定後、ネジ7を更に捩じ込んで、スライド4をガイド5に対して固定することができる。ネジ7の前側は、締め付け固定のためにガイド5のベース上で移動させることができる。あるいは、ネジ7がウォームホイール6の部分に対して動かされることも可能である。それにより、スライド4及びガイド5が互いに固定され、意図しない調整が避けられる。
【0028】
図5のA〜Cにおいて、固定は、ガイド5をフレーム取付部のプレート31に押し付けることによって行なわれる。この場合、ネジを締め付けることによりスライド4がガイド5の脚部をプレートに対して締め付ける。図5のAでは、ガイド5とフレーム取付部31との間に小さい隙間を見てとることができ、この隙間は図5では無くなっている。
【0029】
更なるロックネジ21がガイド5の側面に設けられるフロント調整器の変形実施形態が図6のA及びBに示されており、ロックネジ21を使用して、スライド4及びガイド5を互いに固定することができる。残りの部品は、先の典型的な実施形態の場合と同様に設けられ、したがって、同じ参照符号が付されている。ロックネジ21は、ガイド5のネジ穴に螺合固定されており、ロックネジがスライド4に当接して該スライドをクランプにより固定するまでネジ回し20により捩じ込むことができる。
【0030】
図示の典型的な実施形態では、フロントパネル2の傾きがフロント調整器1によって調整される。無論、フロントパネル2の縦調整又は横調整のためのフロント調整器を使用することもできる。特に、勿論、スライド4をフロントパネル2に取り付けて、ガイド5をサイドフレーム3に取り付けることができる。また、ガイド5の代わりに、スライド4が円形開口を有し、該円形開口にウォームホイールを回転可能に装着することができる。
【0031】
また、例えば、サイドフレーム3及び/又はフロントパネル2がプラスチックから形成され、又は屈曲シートメタルから形成される場合には、スライド4及びガイド5をサイドフレーム3又はフロントパネル2と一体に設けることができる。
【0032】
フレーム取付部31など、フロントパネル2上に調整可能に保持される部品は、フレーム取付部31とフロントパネル2との間の調整中に生じる隙間が隠されるような更なる構造で形成することもできる。この目的のため、フレーム取付部31をフロントパネル2の溝に押し込むこともできる。
【0033】
サイドフレーム3は、下側部分30及びフレーム取付部31を有する代わりに、側壁として一体品で設けることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド(4)を有する引出し用フロント調整器であって、前記スライド(4)が、サイドフレーム(3)に固定可能であり、かつ、フロントパネル(2)に接続できるガイド(5)上に移動可能に装着される、フロント調整器において、
回転可能なウォームホイール(6)が前記ガイド(4)と前記スライド(5)との間に配置され、前記ウォームホイールが回転時に前記スライド(4)を前記ガイド(5)に沿って移動させることを特徴とする、フロント調整器。
【請求項2】
前記ウォームホイール(6)が前記スライド(4)の少なくとも1つの突起(19)と係合されることを特徴とする、請求項1に記載のフロント調整器。
【請求項3】
前記スライド(4)及び前記ガイド(5)が細長片形状として設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載のフロント調整器。
【請求項4】
前記ガイド(5)が、断面がU形状として設けられ、前記スライド(4)を側方から取り囲むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフロント調整器。
【請求項5】
前記ウォームホイール(6)が、前記ガイド(5)の開口(14)内で回転できるように装着されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフロント調整器。
【請求項6】
前記ウォームホイール(6)が渦巻き状突起(18)を有し、前記渦巻き状突起(18)が前記スライド(4)の少なくとも1つの突起(19)と係合されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフロント調整器。
【請求項7】
前記ウォームホイール(6)が前記スライド(4)と前記ガイド(5)との間のキャビティ内に配置されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフロント調整器。
【請求項8】
前記ガイド(5)の前面を締結手段(11)により前記フロントパネル(2)に固定できることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のフロント調整器。
【請求項9】
前記ガイド(5)が、少なくとも1つの開口又は1つのスロット(13)を前面に有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のフロント調整器。
【請求項10】
前記スライド(4)及び前記ガイド(5)を互いに締め付け固定できることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のフロント調整器。
【請求項11】
前記スライド(4)と前記ガイド(5)とを互いに固定するためにロックネジ(7,21)が前記スライド(4)及び/又は前記ガイド(5)に設けられることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のフロント調整器。
【請求項12】
フロントパネル(2)が調整可能となるよう保持されるサイドフレーム(3)を有する引出しにおいて、
請求項1〜11のいずれか一項に記載のフロント調整器が前記サイドフレーム(3)と前記フロントパネル(2)との間に設けられていることを特徴とする、引出し。
【請求項13】
前記フロント調整器がフレーム取付部(31)に設置され、前記フロントパネル(2)が前記サイドフレーム(3)の下側部分(30)に回動可能に保持されていることを特徴とする、請求項12に記載の引出し。
【請求項14】
前記フレーム取付部(31)がプレートとして、好ましくはガラスプレートとして設けられていることを特徴とする、請求項13に記載の引出し。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2011−507565(P2011−507565A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538521(P2010−538521)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065249
【国際公開番号】WO2009/080403
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(504467554)ポール ヘティッヒ ゲーエムベーハー ウント ツェーオー. カーゲー (62)
【Fターム(参考)】