説明

引出装置

【課題】収納部に対する引出部の係止位置を自在に決定することが可能な引出装置を提供する。
【解決手段】収納部側アーム5に、引出部側アーム4を保持する弾性部材であるV字型に屈曲した板バネが固定されている。この板バネは、V字に屈曲させた頂点部分とこれを固定したアームとにより、回動する引出部側アームを挟むよう形成されている。このV字型に屈曲させた頂点部分である挟持部が、引出部側アームとの接触部分であり、引出部側アームと収納部側アームが折り畳まれた状態から両アームを折り曲げて引き伸ばす場合には、この板バネの挟持部が引出部側アームを付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、パソコンラックや音声調整卓などのキーボードを備えた電子機器を載置したり組み込んだ装置において、キーボードを装置内に引き出し自在に収納することを可能とした引出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンラックや音声調整卓などにおいては、通常は、キーボードを使用することなく、テーブル上のスイッチを操作したり、テーブル上で読み書きを行い、調整卓のデータ設定時やラック上のパソコンを操作する場合には、テーブル内に収納しておいたキーボードを引き出して操作するものが知られている。この種の装置は、キーボードが、その不使用時に装置内に収納することができるので、他の作業の邪魔にならず、テーブル表面を有効に利用できる利点がある。
【0003】
このような引出式のキーボードを組み込んだ装置としては、従来から特許文献1に示すようなものが知られている。すなわち、この装置は、装置本体である収納部(パソコンラックや音声調整卓の本体)と、キーボードを収納する引出部との間に「く字形」に屈曲する2本のアームを配置したものである。そして、このアームに沿ってキーボードのケーブルを配設することで、引出部の引出あるいは押し込みの際にアームと共にケーブルが一緒に移動することで、引出部と収納部との間でケーブルが絡んだり、挟まったりすることを防止している。
【特許文献1】特開2000−68664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記のような特許文献1に記載の従来技術は、単に2本のアームによって収納部と引出部とを接続しただけのものであり、収納部から引き出した引出部の位置決めが行えず、キーボードを操作する場合に引出部が使用者のキーボードを叩く力で移動したり、がた付いたりして、不安定であった。
【0005】
これを改善するために、引出部を一番手前に引き出した場合に、引出部と収納部とをロックするラッチなどの機構を設けることも考えられるが、その場合には、引出部のロック位置が一番手前に決定されてしまうので、キーボードの大きさや使用者の体格などによって引出部を収納部に対して希望する位置で係止することができない欠点があった。
【0006】
また、特許文献1の装置は、ケーブルをアームの外側に結びつけるようにして固定していたため、ケーブルがアーム外部に露出し、収納部や引出部に引っかかったり、挟まれて、破損や断線するおそれもあった。
【0007】
なお、このような問題点は、引出部にキーボードを収納した装置に限られるものではなく、収納部と引出部とを屈曲する2本のアームで連結し、引出部内に収納部側と接続するケーブル(コードやその他の配線を含む)を配置した引出装置全般に言える問題点であった。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたもので、収納部に対する引出部の係止位置を自在に決定することができ、また、引出部と収納部との間に配線されたケーブルの処理が容易な引出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、収納部とこれに対して引き出し自在に支持された引出部と、基端が前記収納部に回動自在に取り付けられた収納部側アームと、基端が前記引出部に回動自在に取り付けられた引出部側アームとを備え、前記収納部側アームと引出部側アームの先端は回動自在に連結され、引出部の収納状態と引出状態のいずれか一方において、前記収納部側アームと引出部側アームとが2つ折りに折り曲がった角度となり、引出部の収納状態と引出状態の他方において、前記収納部側アームと引出部側アームとが引き延ばされた角度となるように構成され、前記収納部側アームと引出部側アームのいずれか一方のアームには、他方のアームと弾力的に接触し、両アームの角度を保持する弾性部材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
以上のような態様では、前記収納部側アームと引出部側アームとが2つ折りに折り曲がった状態において、いずれか一方のアームに設けられた弾性部材という簡易な方法により、他方のアームを保持することができる。また、収納部側アームと引出部側アームは回動自在に連結しており、両アームが折り曲がった角度をとる状態、すなわち両アームが完全に折り畳まれない場合においても一方のアームに固定した弾性部材により他方のアームを保持することが可能である。そのため、引き伸ばされた両アームを折り曲げることが、収納部にしまわれた引出部を引き出す状態に対応する場合には、引出部の引き出し位置を完全に手前に引き出さなくても引出部を自在に係止することが可能となり、引出部が勝手に閉じる方向に戻ることもない。
【0011】
一方で、前記収納部側アームと引出部側アームとが引き延ばされた状態においても、いずれか一方のアームに設けられた弾性部材により、他方のアームを保持することができる。また、収納部側アームと引出部側アームは回動自在に連結しており、両アームが引き延ばされた角度をとる状態、すなわち両アームが完全に引き伸ばされていない場合においても一方のアームに固定した弾性部材により他方のアームを保持することが可能である。すなわち、折り畳まれた両アームを引き伸ばすことが、収納部にしまわれた引出部を引き出す状態に対応する場合には、引出部の引き出し位置を完全に手前に引き出さなくても引出部を自在に係止することが可能となる。
【0012】
なお、収納部側アームと引出部側アームが2つ折りに折曲がった角度と引き伸ばされた角度とは、2つ折に折り曲がった状態と折れ曲がったものを引き伸ばす状態とを示す相対的なものである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の引出装置において、前記収納部側アームと引出部側アームとが、平板状の部材から構成され、この平板状部材からなる一方のアームの表面に前記弾性部材である板バネの基部が重ね合わされるように固定され、前記板バネの先端が同じく平板状部材からなる他方のアームの表面に弾力的に接触していることを特徴とする。
【0014】
以上のような態様では、収納部側アームと引出部側アームは、平板状の部材から構成されるので回動自在に連結することが可能である。なお、いずれか一方のアームに固定する弾性部材を板バネに限定することで、他方のアームに対して弾力的に接触がしやすく、また挟み込むことも可能となる。これにより、引出部の位置を自在に決定することが可能な引出装置を提供することができる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2に記載の引出装置において、前記板バネの先端部が、V字型に屈曲しており、そのV字型の頂点部分が他方のアーム表面との接触部であり、V字型の先端傾斜部が板バネとそれを固定した一方のアームとの間に他方のアームが入り込む際のガイド部となっていることを特徴とする。
【0016】
以上のような態様では、板バネの先端部がV字型に屈曲しているので、その頂点部分に応力が集中し、接触するアームを安定して保持することが可能となる。また、V字型の先端が上向きに屈曲した傾斜部となっているので、ガイド部として板バネとの間に入り込むアームを誘導し、容易に当該アームを挟み込むことができる。これにより、回動するアームを自由な位置で保持することがでいきる。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の引出装置において、前記収納部側アームと引出部側アームとが、その両側辺部に立ち上がった縁部を有する断面コ字型の部材によって構成され、このコ字型の部材の内側がケーブルの配線部となっていることを特徴とする。
【0018】
以上のような態様では、収納部側アームと引出部側アームとが、両側辺部に立ち上がった縁部を有する断面コ字型の部材によって構成されているので、アームの内側にケーブルを配線することが可能であり、また縁部により安定したケーブルの支持が可能となる。
【0019】
請求項5の発明は、請求項4に記載の引出装置において、前記断面コ字型の収納部側アームと引出部側アームにおいて、その両側辺部に立ち上がった縁部の少なくとも一方に、縁部が他の部分よりも低くなった切欠部が形成され、この切欠部が前記配線部内のケーブルとアームとを結束するバンドの係止部となっていることを特徴とする。
【0020】
以上のような態様では、アームの両側辺部に立ち上がった縁部の少なくとも一方に、他の部分よりも低くなった切欠部が形成されているので、この切欠部にケーブルを結束するバンドを係止することができ、強固にケーブルをアーム上に固定することが可能となる。これにより、ケーブルの破損や断線等の問題が生じることもない。
【発明の効果】
【0021】
以上のような本発明によれば、引出部が収納部から自由な位置に引き出された状態においても、いずれか一方のアームに固定した弾性部材により、他方のアームを保持することができるので、引き出し位置を自在に決定することが可能な引出装置を提供することができる。また、アームを保持する弾性部材としてV字型に屈曲した板バネを使用しているので、V字型の頂点部分に応力が集中し、安定性の高い引出装置を提供することが可能である。
【0022】
なお、アームが断面コ字型の部材により構成され、また縁部に切欠部が形成されているので、ケーブルを縁部で囲まれたアーム上に安定した状態で配線することができ、さらに切欠部にバンドを係止させることにより、ケーブルを結束することも可能である。そのため、引出部の動作によるケーブルの挟み込みを防止することができ、ケーブルの破損や断線等の問題も生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[1.構成]
以下、本発明である引出アーム部と、この引出アーム部が接続される引出部と収納部とを有する引出装置についての実施形態における構成を、図1〜5に基づいて具体的に説明する。
【0024】
全体構成は、図1のように、電子機器が搭載する引出部1と、その引出部1が収納される収納部2と、引出部1と収納部2との間に設置された引出アーム部3の一端が引出部1に、他端が収納部2に回動自在に接続されている。また、電子機器の引出部1背面から導出されたケーブル7(図示してない)が、ケーブルホルダ9により引出アーム部3上に支持されている。
【0025】
引出部1は、キーボード等の電子機器を搭載するもので、スライド方式の収納装置と同様に両側面にレール1aを備え、収納部2は、電子機器を搭載した引出部1を収納するものであり、引出部1のレール1aに対応する位置にスライドするためのレール1bが設置されている。また、この引出部1の背面からは、電子機器のケーブル7が後述する引出アーム部3上に導出されている。
【0026】
そして、この引出部1と収納部2との間に設置する引出アーム部3は、引出部側アーム4と収納部側アーム5と、引出部側アーム4と収納部側アーム5とを連結するピン6とから構成される(図2)。この引出部側アーム4のピン6側とは逆の端部が、引出部1の背面に回動自在に取り付けられ、また、収納部側アーム5のピン6側とは逆の端部が、ここでは収納部2の引出部1背面に対向する奥側の面に回動自在に取り付けられている。またこの両アームは、この引出部側アーム4を上面に、収納部側アーム5を下面とした重なった状態でピン6により連結され、回動可能に取り付けられている。
【0027】
この引出部側アーム4は、アーム部4aと収納部側アーム5と連結する連結部4bから構成され、収納部側アーム5は、アーム部5aと引出部側アーム4と連結する連結部5bから構成される。なお、このアーム部4a,5aは、引出部1に搭載された電子機器のケーブル7の配線部の役目を果たすので、平板状の底面の両側面に立ち上がった縁部4c,5cを有する断面コ字型の部材によって構成されている。また、連結部4b,5bは、連結部4bが上面、連結部5bが下面となるようにピン6により重なった状態で回動自在に取り付けられるので、連結部4bの裏面と連結部5bの表面に、例えば摩擦の少ない両側面に縁部を有しない平板部材が用いられている。
【0028】
この各アーム部4a,5aに設けられた縁部4c,5cには、後述するケーブルホルダ9を係止するための他の部分よりも低くなった切欠部(例えば縁部に2つ)が設けられいる。この切欠部に係止したケーブルホルダ9が、アーム上に配線されたケーブル7を結束することによりケーブル7はアーム上に固定されるので、引出部1を収納部2に収納する際にもケーブル7が挟まれて破損や断線等することがない。
【0029】
なお、収納部側アーム5のアーム部5aのピン6側端部表面には、所定の形状の弾性部材である板バネ8が連結部5bにかかるように皿リベットなどで固定されている。この設置した板バネ8により、折り畳まれた引出部側アーム4と収納部側アーム5とを引き伸ばす際に、回動する引出部側アーム4の連結部4bを弾力的に挟み込む。
【0030】
そして、回動する連結部4bを挟むためにアーム部5aのピン6側の端部に固定された板バネ8は、図3のように、この板バネ8の連結部5b側の端部をV字型に屈曲させ、V字に屈曲させた頂点部分(挟持部と呼ぶ)と連結部5bとにより回動する連結部4bを挟むよう形成されている。このV字型に屈曲させた頂点部分である挟持部が、引出部側アーム4の連結部4bとの接触部分であり、例えば、引出部側アーム4と収納部側アーム5が折り畳まれた状態から両アームをピン6を軸として折り曲げて引き伸ばされる場合には、この板バネ8端部の挟持部と連結部5bとにより、回動する連結部4bを挟み込むことになる。
【0031】
なお、板バネ8の端部がV字型に屈曲しているのは、V字型にすることで頂点部分である挟持部に応力が集中し、挟んだ連結部4bに安定した一定の負荷を掛けることができるからである。また、V字型にすることにより端部の先端が上向きに反り上がった傾斜を有しているので、この先端傾斜部をガイド部として、回動する連結部4bが板バネ8とそれを固定した連結部5bに挟み込まれていく。
【0032】
つまり、引出部側アーム4の連結部4bが板バネ8の挟持部と収納部側アーム5の連結部5bとの間に挟まれることで、連結部4b面に負荷が掛かるため、引出部1が自由の引き出し位置に引き出された場合であっても、連結部4bを通じて各アームは安定した状態が保持される。これにより、引き出された引出部1が勝手に閉じる方向に動くことはない。
【0033】
なお、この引出部1を収納部2に収納する場合、すなわち、引き伸ばされた引出部側アーム4と収納部側アーム5がピン6を軸として折り曲がる場合には、引出部側アーム4の連結部4bは、板バネ8の挟持部と連結部5bとにより挟まれた状態から徐々に引き抜かれていく。そして、完全に引出部1が収納部2に収納されると、板バネ8の挟持部と連結部5bとにより挟まれていた連結部4bの全面が引き抜かれ、板バネ8端部の先端傾斜部に連結部4bの外周部が接することにより、引出部側アーム4と収納部側アーム5が固定される。これにより、安定した収納状態が保たれる。
【0034】
ケーブルホルダ9は、電子機器を搭載した引出部1から導出されるケーブル7をアーム上にホールドするために、プラスチックや弾性体等から構成されるバンドである。このケーブルホルダ9は、アーム部4b,5bの縁部4c,5cに設けられた切欠部に係止され、アームに沿って配線されたケーブル7を結束する。なお、本実施形態では、4つのケーブルホルダ9が設置されているが、これに限定するものでなく、ケーブルホルダ9の数を増減させてケーブル7を支持するものであってもよい。
【0035】
[2.作用]
前記のような構成を有する本実施形態の引き出しアーム装置3の作用は次の通りである。ここで、引出部1にはキーボード等の電子機器が搭載されており、引出部1の背面から導出されたケーブル7は、引出部側アーム4及び収納部側アーム5の縁部に係止させたケーブルホルダ9によって結束されているものとする。また、引出部側アーム4の一端は引出部1の背面に回動自在に取り付けられ、他端がピン6により収納部側アーム5の一端と連結されている。そして、収納部側アーム5のピン側とは逆側の他端は、収納部2の引出部1が収納される奥側の面に回動自在に取り付けられていることを前提とする。
【0036】
[2.1.引出時]
引出部1を収納部2から引き出す場合を考えると、まず、引出部1を収納部2から引き出すと、折り畳まれていた引出部側アーム4と収納部側アーム5とがピン6を軸として折れ曲がり、直線状に並ぶように引き伸ばされる。これに対応して、収納部側アーム5のアーム部5b端部に固定した板バネ8の先端傾斜部は、引出部側アーム4の連結部4bの外周と接するように固定されていた状態から、ガイド部として連結部4bを徐々に挟み込み、挟持部から連結部4b面に負荷を掛けていく。
【0037】
ここで、ユーザが引出部1を完全に引き出す前に引き出し位置を決定すると、両アームが引き延ばされた角度をとる当該位置において、引出部側アーム4の連結部4bが板バネ8の挟持部と収納部側アーム5の連結部5bとにより挟まれることで係止する。これにより、自在に決定した引出位置においても、安定した状態で引出部1を固定することができる。よって、引出部1を収納部2から引き出しても引出部1が閉じる方向に戻ることがない、耐振動性の高い引出装置を提供することが可能である。
【0038】
また、引出部1を完全に手前に引き出した状態、すなわち引出部側アーム4と収納部側アーム5とが直線状に並ぶように引き伸ばされた状態でも、もちろん板バネ8の挟持部と収納部側アーム5の連結部5bとが引出部側アーム4の連結部4bを挟むことで、引出部1を係止する(図4)。
【0039】
なお、アーム部の縁部4c,5cの切欠部を通じてケーブルホルダ9で結束している電子機器のケーブル7は、引出部側アーム4と収納部側アーム5と同様に折り畳んで収納されていた状態から、第1,2のアームがピン6を軸として引き伸ばされることにより、アームに沿って引き伸ばされる。これにより、電子機器のケーブル7が絡まることもなく、破損や断線等の問題も回避することが可能となる。
【0040】
[2.2.収納時]
引き出された引出部1を収納部2にしまう場合を考えると、まず、引出部1を収納部2に押し込むのだが、これは、引き伸ばされた引出部側アーム4及び収納部側アーム5がピン6を軸として徐々に折れ曲がり、両アームが折り畳まれていくことを意味する。これに対応して、板バネ8の挟持部と収納部側アームの連結部5bにより挟まれた引出部側アーム4の連結部4bが、板バネ8と連結部5bとの間から引き抜かれていく。
【0041】
ここで、ユーザが引出部1を完全に収納する前に収納位置を決定すると、両アームが折れ曲がった角度をとる当該位置において、引出部側アーム4の連結部4bが板バネ8の挟持部と収納部側アーム5の連結部5bとにより挟まれることで係止する。そのため、自在に決定した収納位置においても、安定した状態で引出部1を固定することができる。よって、耐振動性の高い引出装置を提供することが可能である。
【0042】
また、両アームがピン6を軸に完全に折り畳まれると、挟まれていた連結部4bが板バネ8と収納部側アームの連結部5bから完全に引き抜かれ、板バネ8の上向きに反り上がった先端傾斜部に連結部4bの外周が接することで、引出部側アーム4と収納部側アーム5が固定される(図5)。これにより、引出部1が収納部2から勝手に引き出されることもなく、安定した収納状態を保持することができる。
【0043】
なお、アーム上にケーブルホルダ9で支持された電子機器のケーブル7は、引出部側アーム4と収納部側アーム5と同様に引き伸ばされていた状態から、両アームがピン6を軸として折れ曲がることにより、アームに沿って折り畳まれる状態となる。すなわち、引出部1が収納部2に押し込まれても、引出部1から導出されるケーブル7は、アーム部の縁部4c,5cの切欠部に係止するケーブルホルダ9により、アームに結束させて固定されているので、引出部1と収納部2に挟まれることなく、アームと同様に折り畳まれる。これにより、引出部1に搭載された電子機器のケーブル7に関して破損や断線等するといった問題が生じることはない。
【0044】
以上のような本実施形態によれば、引出部が収納部から自由な位置に引き出された状態においても、いずれか一方のアームに固定した弾性部材により、他方のアームを保持することができるので、引き出し位置を自在に決定することが可能な引出装置を提供することができる。また、アームを保持する弾性部材としてV字型に屈曲した板バネを使用しているので、V字型の頂点部分に応力が集中し、安定性の高い引出装置を提供することが可能である。
【0045】
なお、アームが断面コ字型の部材により構成され、また縁部に切欠部が形成されているので、ケーブルを縁部で囲まれたアーム上に安定した状態で配線することができ、さらに切欠部にバンドを係止させることにより、ケーブルを結束することも可能である。そのため、引出部の動作によるケーブルの挟み込みを防止することができ、ケーブルの破損や断線等の問題も生じることがない。
【0046】
[3.他の実施形態]
[a]本発明は、前記のような実施形態において、板バネ8と収納部側アーム5の連結部5bとに挟まれる引出部側アーム4の連結部4bの表面形状に関して、特に限定していなかったが、以下のような表面構造を有する連結部4bを用いた実施形態も包含する。
【0047】
この連結部4bの表面には、上述したようにアームが動作することで板バネ8のV字型の頂点部分である挟持部から負荷が掛かるので、挟持部が接触するこの表面に、挟持部が係止するための凹部などの段差を形成した場合を考える。この構成では、回動する連結部4bの当該段差に収納部側アーム5に固定した板バネ8の挟持部が係止するので、この段差をユーザが希望する引出部1の引き出し位置に対応させて形成することで引出位置の調整が容易となり、所望の引き出し位置においても安定して支持することが可能となる。
【0048】
[b]また、前記の実施形態では、引出部1の収納部2への収納時において、収納部側アーム5のアーム部5a端部に固定された板バネ8端部の上向きに反り上がった先端傾斜部に、連結部4bの外周が接するような態様で両アームが固定されていた。しかしながら、本発明は、この実施形態に限定することなく、引出部1の収納部2への収納時においても板バネ8の挟持部と連結部5bとにより、連結部4bを挟んで負荷を常時掛け続ける実施形態も包含する。
【0049】
すなわち、前記の実施形態において、引出部1の収納時には、連結部4bが板バネ8と連結部5bとの間から引き抜かれていたのに対し、本実施形態によれば、引出部1の収納時、つまり両アームが折り畳まれた状況下においても板バネ8の挟持部と連結部5bが連結部4bを挟んで負荷を掛け続けていることを意味する。そのため、収納時においても板バネ8が引出部側アーム4の連結部4bを挟むといった前記実施形態とは異なる方法で、折り畳まれた両アームを固定することが可能である。
【0050】
[c]また、前記の実施形態に用いた板バネ8は、この板バネ8の端部をV字型に屈曲させ、挟持部と連結部5bとにより回動する連結部4bを挟むよう構成されているが、これに限定することなく、単に板バネ8端部を上向き反り上げた形状を有する構成も包含する。したがって、前記実施形態では、V字型に屈曲させた板バネ8の頂点部分である挟持部により連結部4bを固定していたのに対し、この構成によれば、反り上げた端部から連結部4bを挟み込み、板バネ8の挟み込み面を利用することにより連結部4bを固定することが可能となる。
【0051】
[d]また、本発明は、弾性部材である板バネ8が収納部側アーム5のアーム部5aに固定され、引出部側アーム4の連結部4bを挟むような実施形態に限定するものではなく、この板バネ8を引出部側アーム4に固定し、収納部側アーム5の連結5bを挟むように構成した実施形態も包含する。
【0052】
[e]また、前記の実施形態によれば、収納部側アーム5の一端は、収納部2の引出部1が収納される奥側の面に回動自在に取り付けられているが、本発明は収納部2の引出部1の引出口に回動自在に取り付けた構成を有する実施形態も包含する。すなわち、収納部側アーム5の一端が収納部2の引出口に設置され、連結する引出側アームの4の一端が引出部1の背面に取り付けられているので、収納時には、両アームが引き伸ばされ、引き出し時には、両アームが折り畳まれることになる。
【0053】
具体的には、引出部1を収納部2から引き出す場合を考えると、まず、引出部1を収納部2から引き出すと、引き伸ばされていた引出部側アーム4と収納部側アーム5とがピン6を軸として折れ曲がっていく。これに対応して、板バネ8の挟持部と収納部側アーム5の連結部5bにより挟まれた引出部側アーム4の連結部4bが、板バネ8と連結部5bとの間から引き抜かれていく。
【0054】
ここで、ユーザが引出部1を完全に引き出す前に引き出し位置を決定すると、両アームが折れ曲がった角度をとる当該位置において、引出部側アーム4の連結部4bが板バネ8の挟持部と収納部側アーム5の連結部5bとにより挟まれることで係止する。これにより、自在に決定した引出位置においても、安定した状態で引出部1を固定することができる。よって、引出部1を収納部2から引き出しても引出部1が閉じる方向に戻ることがない、耐振動性の高い引出装置を提供することが可能である。
【0055】
また、両アームがピン6を軸に完全に折り畳まれると、挟まれていた連結部4bが板バネ8と収納部側アームの連結部5bから完全に引き抜かれ、板バネ8の上向きに反り上がった先端傾斜部に連結部4bの外周が接することで、引出部側アーム4と収納部側アーム5が固定される。そのため、完全に手前に引き出された場合でも、引出部が閉じる方向に戻ることのない安定した状態を保つことが可能である。
【0056】
一方、引き出された引出部1を収納部2にしまう場合を考えると、まず、引出部1を収納部2に押し込むのだが、これは、折り畳まれた引出部側アーム4及び収納部側アーム5がピン6を軸として折れ曲がり、徐々に引き伸ばされていくことを意味する。ここで、収納部側アーム5のアーム部5b端部に固定した板バネ8の先端傾斜部は、引出部側アーム4の連結部4bの外周と接するように固定されていた状態から、ガイド部として連結部4bを徐々に挟み込み、挟持部から連結部4b面に負荷を掛けていく。
【0057】
なお、ユーザが引出部1を完全に引き出す前に引き出し位置を決定すると、両アームが引き延ばされた角度をとる当該位置において、引出部側アーム4の連結部4bが板バネ8の挟持部と収納部側アーム5の連結部5bとにより挟まれることで係止する。そのため、自在に決定した収納位置においても、安定した状態で引出部1を固定することができる。よって、耐振動性の高い引出装置を提供することが可能である。
【0058】
また、引出部1を完全に収納した状態、すなわち引出部側アーム4と収納部側アーム5とが直線状に並ぶように引き伸ばされた状態でも、もちろん板バネ8の挟持部と収納部側アーム5の連結部5bとが引出部側アーム4の連結部4bを挟むことで、引出部1を係止する。これにより、引出部1が収納部2から勝手に引き出されることもなく、安定した収納状態を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の全体構成を示す平面図。
【図2】引出アーム部を示す平面図。
【図3】引出アーム部を示す側面図。
【図4】本発明の引出時を示す平面図。
【図5】本発明の収納時を示す平面図。
【符号の説明】
【0060】
1…引出部
1a…引出部レール
2…収納部
2a…収納部レール
3…引出アーム部
4…引出部側アーム
4a…アーム部
4b…連結部
4c…側壁部
5…収納部側アーム
5a…アーム部
5b…連結部
5c…側壁部
6…ピン
7…ケーブル
8…板バネ
9…ケーブルホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部とこれに対して引き出し自在に支持された引出部と、
基端が前記収納部に回動自在に取り付けられた収納部側アームと、
基端が前記引出部に回動自在に取り付けられた引出部側アームとを備え、
前記収納部側アームと引出部側アームの先端は回動自在に連結され、引出部の収納状態と引出状態のいずれか一方において、前記収納部側アームと引出部側アームとが2つ折りに折り曲がった角度となり、引出部の収納状態と引出状態の他方において、前記収納部側アームと引出部側アームとが引き延ばされた角度となるように構成され、
前記収納部側アームと引出部側アームのいずれか一方のアームには、他方のアームと弾力的に接触し、両アームの角度を保持する弾性部材が設けられていることを特徴とする引出装置。
【請求項2】
前記収納部側アームと引出部側アームとが、平板状の部材から構成され、
この平板状部材からなる一方のアームの表面に前記弾性部材である板バネの基部が重ね合わされるように固定され、
前記板バネの先端が同じく平板状部材からなる他方のアームの表面に弾力的に接触していることを特徴とする請求項1に記載の引出装置。
【請求項3】
前記板バネの先端部が、V字型に屈曲しており、そのV字型の頂点部分が他方のアーム表面との接触部であり、V字型の先端傾斜部が板バネとそれを固定した一方のアームとの間に他方のアームが入り込む際のガイド部となっていることを特徴とする請求項2に記載の引出装置。
【請求項4】
前記収納部側アームと引出部側アームとが、その両側辺部に立ち上がった縁部を有する断面コ字型の部材によって構成され、このコ字型の部材の内側がケーブルの配線部となっていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の引出装置。
【請求項5】
前記断面コ字型の収納部側アームと引出部側アームにおいて、その両側辺部に立ち上がった縁部の少なくとも一方に、縁部が他の部分よりも低くなった切欠部が形成され、この切欠部が前記配線部内のケーブルとアームとを結束するバンドの係止部となっていることを特徴とする請求項4に記載の引出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−60246(P2008−60246A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233876(P2006−233876)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】