説明

引戸装置

【課題】戸枠30の上部の所要スペースを最少に抑える。
【解決手段】前扉10と、前扉10を収納する後扉20と、後扉20を収納する戸袋Bと、前扉10、後扉20を連動させる連動機構40とを設け、後扉20は、前後の吊車11、11を介してハンガレール37から吊下し、前扉10は、吊車11を介して前部をハンガレール37から吊下し、戸車12を介して後部を後扉20内の走行レール22によって支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、引戸を前扉、後扉に分割して組み合わせる引戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引戸を前扉、後扉に分割し、前扉を後扉に収納するようにして組み合わせる引戸装置は、戸袋のサイズが開口部の全幅の約半分で済み、しかも、戸袋の所要厚さを薄くすることができる。戸袋には、前扉を後扉に収納し、両者を一括して収納することができるからである(特許文献1)。
【0003】
このものは、前後の吊車を介して後扉を戸枠の上部のハンガレールから前後動自在に吊下する一方、前扉は、前の吊車を介して前部をハンガレールから吊下し、後の吊車を介して後部を後扉内の別のハンガレールから吊下する。また、前扉、後扉は、連動機構を介して連動させるものとし、連動機構は、前扉、後扉の後部にそれぞれ上下動自在に組み込む摺動駒に対し、戸袋の後部に設ける揺動杆を共通に摺動自在に貫通させて構成されている。ただし、連動機構は、後扉上の前後のプーリにワイヤを巻き掛け、戸枠と前扉の前部とにワイヤを連結して構成してもよい(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3447596号公報
【特許文献2】特許第3536200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、前扉は、戸枠の上部のハンガレールと、後扉内の別のハンガレールとから吊下されるから、ハンガレールを2重に設ける必要があり、戸枠の上部の所要スペースが大きくなりがちである上、前扉の前部、後部を吊下する2本のハンガレールの平行度や高さなどに誤差を生じると、前扉の開閉が円滑でなくなるおそれがあるという問題があった。なお、プーリとワイヤとを使用する連動機構を用いる場合、戸枠の上部にさらに大きなスペースを要することになり、問題は一層深刻である。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、戸車を介して前扉の後部を支持することによって、ハンガレールを1本のみとし、戸枠の上部の所要スペースを最少に抑えることができる引戸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、前扉と、前扉を収納する後扉と、後扉を収納する戸袋と、前扉、後扉を連動させる連動機構とを備えてなり、後扉は、前後の吊車を介して戸枠の上部のハンガレールから前後動自在に吊下し、前扉は、吊車を介して前部をハンガレールから吊下し、戸車を介して後部を後扉の下端の走行レールによって前後動自在に支持し、後部上端の第1のガイドローラを後扉に係合させて振れ止めし、連動機構は、前後の吊車を上面に搭載する補助フレームを介して後扉の上端に搭載することをその要旨とする。
【0008】
なお、連動機構は、補助フレームに装着する前後のプーリに巻き掛けて補助フレームの内外に位置する無端のワイヤを備え、ワイヤは、前扉の後部に連結するとともに、補助フレームの外部において戸枠に連結してもよく、前のプーリは、調節ねじ付きのテンションブラケットを介して前後に移動可能としてもよい。
【0009】
また、補助フレームは、左右対称の断面ハット形に形成することができ、走行レールには、戸車の外れ止め用の補助片を一体に形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、前扉は、吊車を介して、後扉を吊下する戸枠の上部のハンガレールから前部を吊下し、戸車を介して、後扉の下端の走行レールによって後部を支持するとともに、後部上端の第1のガイドローラを後扉に係合させて振れ止めされている。すなわち、戸枠の上部には、1本のハンガレールを設けるだけで済み、戸枠の上部の所要スペースを最少に抑えることができる。また、前扉は、前部の吊車、後部の戸車を介して対角線上の2点で支持し、後部上端の第1のガイドローラを介して他の1点で振れ止めするから、不用意にこじれを生じたりするおそれがなく、常に円滑に開閉することができる。
【0011】
後扉は、第2のガイドローラを介して傾きを防止することにより、不用意に傾いたり、揺れたりするおそれがない。なお、第2のガイドローラは、後扉を戸袋に収納すると後扉の前端部分に対応するように、戸袋の前端付近の戸枠上に上向きに設けることが好ましい。また、第2のガイドローラを後扉の下端の走行レールに係合させれば、走行レールを前扉の戸車用、第2のガイドローラ用に兼用することができる。
【0012】
連動機構は、後扉上の前後のプーリに巻き掛けるワイヤを戸枠と前扉の後部とに連結することにより、ワイヤを介して前扉の前後動を後扉に伝達し、前扉を開閉操作するだけで後扉を併せて駆動することができる。なお、前のプーリは、ワイヤを前扉の後部に連結するために、必要最少限の距離だけ後扉の前方に突出させて配置すればよい。また、連動機構は、前後の吊車を後扉に搭載する補助フレームを介して後扉の上端に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】全体模式正面図
【図2】図1の水平断面図
【図3】要部構成斜視図
【図4】図1のX矢視相当要部拡大図
【図5】図1のY矢視相当要部拡大図
【図6】図1相当動作図
【図7】図2相当動作図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0015】
引戸装置は、前扉10、後扉20を戸枠30に組み込んでなる(図1、図2)。ただし、図1、図2は、前扉10、後扉20により開口部Fを全閉状態に閉じた場合を図示している。
【0016】
戸枠30の後部側には、収納壁として形成する戸袋Bが形成されている。後扉20は、前扉10を収納し、前扉10とともに戸袋Bに収納することにより、開口部Fを全面開放することができる。
【0017】
戸枠30は、下枠31と、前後の竪枠32、33と、上枠34とを有する。なお、戸袋Bの前端には、支柱35、35が立設されており、支柱35、35の間には、後扉20を進入させることができる。また、各支柱35と後の竪枠33との間には、壁W、Wに埋め込む戸袋Bの側板36、36が張られている。戸枠30の上部には、前後に長いハンガレール37が上枠34内に設置されており、ハンガレール37は、戸枠30の前部から、戸袋Bの上部を通って後の竪枠33に到達している。
【0018】
前扉10は、吊車11を介して前部がハンガレール37から吊下され、戸車12を介して後扉20の下端の走行レール22により後部が前後動自在に支持されている。吊車11には、外れ止め用の補助ローラ11aが付設され、吊車11、補助ローラ11aは、共通のブラケット11bを介して前扉10の前部上端に搭載されている。また、戸車12は、ブラケット12aを介して前扉10の後部下端に組み付けられている。なお、前扉10の後部上端には、第1のガイドローラ13が上向きに装着されており、第1のガイドローラ13は、後扉20に係合して前扉10を振れ止めすることができる。また、前扉10の前部には、操作用の把手14、14が両面に突出して取り付けられており、前扉10の後端には、戸当り15が付設されている。
【0019】
後扉20は、前後の吊車21、21を介してハンガレール37から前後動自在に吊下されている。ただし、各吊車21には、外れ止め用の補助ローラ21aが付設されており、吊車21、補助ローラ21aは、共通のブラケット21bを介して後扉20の上端の補助フレーム24上に搭載されている。また、戸袋Bの前端付近には、第2のガイドローラ23が下枠31上に上向きに設けられ、第2のガイドローラ23は、後扉20の下端に係合し、後扉20の下部を前後方向にガイドして後扉20の傾きを防止することができる。
【0020】
前扉10、後扉20は、連動機構40を介して連結されている。
【0021】
連動機構40は、前後の吊車21、21用の補助フレーム24を介して後扉20の上端に搭載する前後のプーリ41、41と、プーリ41、41に巻き掛ける無端のワイヤ42とを備えている。ただし、前のプーリ41は、補助フレーム24を延長することにより、後扉20の前方に突出するようにして配置されている。また、ワイヤ42は、前扉10上の固定金具43を介して前扉10の後部に連結され、上枠34内の固定金具44を介して戸枠30に連結されている。
【0022】
前扉10の後部上端の第1のガイドローラ13は、後扉20の上端に係合している(図3、図4)。また、連動機構40の前のプーリ41は、左右対称の断面ハット形の補助フレーム24の両側面、上面を延長して後扉20の前方に下向きに装着されている。なお、前のプーリ41は、調節ねじ付きのテンションブラケット41aを介して前後に移動可能であり、ワイヤ42のテンションを調節することができる。また、ワイヤ42は、補助フレーム24の内外に位置しており、前扉10上の固定金具43は、前扉10を後扉20に収納するとき、補助フレーム24内に進入可能である。
【0023】
ハンガレール37は、建屋の構造材に連結する支持材37a、37bを介して上枠34内に組み付けられている。ただし、支持材37a、37bは、上枠34の一部を構成しており、固定金具44は、支持材37bに取り付けられている。前扉10の吊車11用のブラケット11bは、スペーサ11cを介して前扉10の前部上端に取り付けられており、後扉20の吊車21用のブラケット21bは、スペーサ21cを介して、補助フレーム24の上面に固定されている。上枠34には、着脱可能な引掛け式の点検蓋34aが設けられており、上枠34の下面は、開口部Fの前部において、前扉10の両面近くまで閉じられ(図4の点線)、開口部Fの後部において、後扉20の両面近くまで閉じられている(同図の実線)。
【0024】
前扉10の後部下端の戸車12は、後扉20の下端に装着する走行レール22上を前後に走行する(図5)。なお、走行レール22には、戸車12の上部を覆うように、上方に立ち上げて屈曲させる補助片22aが一体に形成されており、補助片22aは、戸車12の外れ止めをすることができる。また、下枠31上の第2のガイドローラ23は、断面ハット形の走行レール22の下面に係合しており、第2のガイドローラ23は、戸袋Bの側板36、36を固定するブラケット36a上に、スペーサ23aを介して立設されている。
【0025】
前扉10、後扉20により開口部Fを全閉状態に閉じると(図1、図2)、前扉10は、ほぼ全体が後扉20から引き出され、前扉10の前端は、前の竪枠32に当接して停止する一方、前扉10の後端は、後扉20内に僅かに残り、第1のガイドローラ13は、後扉20の前端部に係合している。また、後扉20は、ほぼ全体が戸袋Bから引き出され、後扉20の後端は、戸袋B内に僅かに残っている。そこで、第2のガイドローラ23は、後扉20の後部に係合している。なお、ハンガレール37は、前扉10、後扉20をこのような全閉状態に維持するために、僅かに前下りに設置するものとする。また、上枠34内には、前扉10、後扉20を全閉状態に閉じるとき、過大な衝撃を生じることなく後扉20を図1、図2の規定位置に停止させるために、図示しないダンパが設置されている。
【0026】
開口部Fを開放するために、把手14を介して前扉10を後方に引き操作すると(図1、図2の各矢印K1 方向)、連動機構40のワイヤ42は、固定金具44を介して戸枠30に連結されているため、固定金具43を介して前のプーリ41を後方に引く方向に張力が加えられ、したがって、後扉20は、ワイヤ42、前のプーリ41を介して後方に駆動される(図2の矢印K2 方向)。このとき、ワイヤ42は、後扉20上のプーリ41、41に巻き掛けられたまま、プーリ41、41の回転により緩むことなく後扉20の後退とともに後方に移動する。また、後扉20の後退速度は、前扉10の後退速度の1/2である。すなわち、前扉10は、後退するに従って後扉20内に収納され、後扉20は、戸袋B内に収納される。
【0027】
開口部Fを全開状態に開放すると(図6、図7)、前扉10は、把手14、14を取り付ける前端部を除いてほぼ全体が後扉20に収納され、後端の戸当り15が後扉20の後端から突出して後の竪枠33に当接して停止する。このとき、前扉10上の第1のガイドローラ13は、後扉20の後端部に係合している。また、後扉20は、前扉10とともにほぼ全体が戸袋Bに収納され、第2のガイドローラ23は、後扉20の前端部に係合している。なお、上枠34には、このような全開状態の後扉20を軽くロックするために、図示しないストッパが装着されている。
【0028】
つづいて、前扉10、後扉20を全閉状態にするときは、把手14を介して前扉10を前方に引き操作する(図6、図7の各矢印K3 方向)。このとき、連動機構40のワイヤ42には、固定金具43を介して後のプーリ41を前進させるように張力が加えられ、後扉20を前進させる。なお、このときも、後扉20の前進速度は、前扉10の前進速度の1/2である。そこで、前扉10は、前進するに従って後扉20から引き出され、後扉20は、戸袋Bから引き出されるため、最終的に図1、図2の全閉状態に移行させることができる。
【0029】
なお、第1のガイドローラ13は、前扉10、後扉20の全開操作、全閉操作の全ストロークに亘り、常に後扉20に係合して前扉10を振れ止めする。また、第2のガイドローラ23は、常に後扉20の下端に係合して後扉20の傾きを防止する。すなわち、前扉10は、吊車11、戸車12を介して、また、後扉20は、吊車21、21を介して、それぞれ軽快に前後動させることができる。
【0030】
以上の説明において、連動機構40は、プーリ41、ワイヤ42を使用するに代えて、スプロケットとチェーンとを使用してもよい。また、連動機構40は、特許文献1のように、戸袋Bの後部に設ける揺動杆と、前扉10、後扉20の各後部に組み込む摺動駒とを組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0031】
B…戸袋
10…前扉
11…吊車
12…戸車
13…第1のガイドローラ
20…後扉
21…吊車
22…走行レール
24…補助フレーム
30…戸枠
37…ハンガレール
40…連動機構
41…プーリ
41a…テンションブラケット
42…ワイヤ

特許出願人 小松ウオール工業株式会社

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前扉と、該前扉を収納する後扉と、該後扉を収納する戸袋と、前記前扉、後扉を連動させる連動機構とを備えてなり、前記後扉は、前後の吊車を介して戸枠の上部のハンガレールから前後動自在に吊下し、前記前扉は、吊車を介して前部を前記ハンガレールから吊下し、戸車を介して後部を前記後扉の下端の走行レールによって前後動自在に支持し、後部上端の第1のガイドローラを前記後扉に係合させて振れ止めし、前記連動機構は、前記前後の吊車を上面に搭載する補助フレームを介して前記後扉の上端に搭載することを特徴とする引戸装置。
【請求項2】
前記連動機構は、前記補助フレームに装着する前後のプーリに巻き掛けて前記補助フレームの内外に位置する無端のワイヤを備え、該ワイヤは、前記前扉の後部に連結するとともに、前記補助フレームの外部において戸枠に連結することを特徴とする請求項1記載の引戸装置。
【請求項3】
前記前のプーリは、調節ねじ付きのテンションブラケットを介して前後に移動可能とすることを特徴とする請求項2記載の引戸装置。
【請求項4】
前記補助フレームは、左右対称の断面ハット形に形成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の引戸装置。
【請求項5】
前記走行レールには、前記戸車の外れ止め用の補助片を一体に形成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の引戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−92650(P2012−92650A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30654(P2012−30654)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【分割の表示】特願2006−118929(P2006−118929)の分割
【原出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000184621)小松ウオール工業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】