説明

弦楽器用ピック

【課題】弦楽器における弦の弦弾先端部への引っ掛かり具合を掴み易くして奏者の思い通りに弦を弾かせて演奏することができる弦楽器用ピックを提供する。
【解決手段】弦楽器用ピック100は、樹脂素材を略三角形状の薄板状に成形した本体部101を備える。本体部101の各角部には、弦楽器の弦を弾くための弦弾先端部102が円弧状に形成されている。本体部101の周縁部における各弦弾先端部102の間には、弦を弦弾先端部102に導くための円弧状のガイド部103がそれぞれ形成される。本体部101の周縁部におけるガイド部103と弦弾先端部102との間の部分には、屈曲部104が形成されている。屈曲部104は、ガイド部103上を変位する弦の変位を妨げる側に曲がった円弧状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギターなどの弦楽器の演奏時に弦を弾く弦楽器用ピックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ギターなどの弦楽器は、弦楽器内に張られた弦を奏者の指または指で把持した片状のピックで弾くことにより演奏される。一般に、弦楽器の弦を弾く弦楽器用ピックは、樹脂素材や鼈甲材を角の丸い略三角形状の薄板状に成形して構成されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、樹脂素材や鼈甲材を略三角形状の薄板状に成形した弦楽器用ピックが開示されている。また、下記特許文献2,3には、弦楽器の弦を弾く角部である弦弾先端部を鋸状に形成することにより弦をかき鳴らすことができる弦楽器用ピックがそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−310011号公報
【特許文献2】特開2005−513558号公報
【特許文献3】特開2003−167573号公報
【0005】
しかしながら、このような弦楽器用ピックにおいては、弦弾先端部への弦の引っ掛かり具合が感覚として掴み難く、弦の弦弾先端部への引っ掛かり具合をコントロールしながら思い通りの演奏をすることが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、弦楽器における弦の弦弾先端部への引っ掛かり具合を掴み易くして奏者の思い通りに弦を弾かせて演奏することができる弦楽器用ピックを提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、弦楽器の奏者に把持される板状の本体部と、本体部の周縁上に角状に形成されて弦を弾く弦弾先端部とを有した弦楽器用ピックであって、本体部の周縁部に形成されて弦を弦弾先端部に向って滑らせるためのガイド部と、ガイド部と弦弾先端部との間の部分に、ガイド部に沿って滑る弦の進行を妨げる側に屈曲した屈曲部とを備えたことにある。
【0008】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、弦楽器用ピックは、奏者に把持される本体部の周縁部に弦を弾く弦弾先端部と同弦弾先端部に向かって弦を滑らせるガイド部とが形成されるとともに、これらの弦弾先端部とガイド部との間に弦の進行を妨げる側に屈曲した屈曲部を備えて構成されている。このため、弦楽器を演奏する奏者は、弦楽器の弦をガイド部上を弦弾先端部に向かって滑らせる過程において、弦の変位が屈曲部で妨げられた感覚を受けることにより弦弾先端部に対する弦の位置関係を把握することができる。これにより、奏者は、弦楽器における弦の弦楽器用ピックへの引っ掛かり具合が掴み易くなり思い通りに弦を弦弾先端部で弾かせて演奏することができる。
【0009】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記弦楽器用ピックにおいて、弦弾先端部は、屈曲部からの突出量が弦の直径の2倍ないし30倍以下で形成されていることにある。この場合、本発明者によれば、例えば、弦楽器における弦の直径が0.01インチの場合には、弦弾先端部の突出量は、1mmないし6mmの範囲が好適である。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、弦楽器用ピックは、弦弾先端部の屈曲部からの突出量が弦の直径の2倍ないし30倍以下で形成されている。これにより、弦楽器の奏者は、弦の変位が屈曲部で妨げられてからの弦の弦弾先端部への引っ掛け具合がより掴み易くなり、思い通りの演奏を行い易くなる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記弦楽器用ピックにおいて、屈曲部は、半径が200mm以下の円弧で形成されていることにある。この場合、本発明者によれば、例えば、弦楽器における弦の直径が0.01インチの場合には、屈曲部は5mm〜100mm程度の半径の円弧が好適である。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、弦楽器用ピックは、屈曲部が200mmの半径の円弧で形成されている。これにより、弦楽器の奏者は、屈曲部による弦の変位が妨げられた感触を感知し易くなり、思い通りの演奏を行い易くなる。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記弦楽器用ピックにおいて、屈曲部は、少なくとも円弧状の曲線部を含むとともに同曲線部に対して他の曲線部または直線部を介して弦弾先端部に繋がって形成されていることにある。
【0014】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、弦楽器用ピックは、屈曲部が少なくとも円弧状の曲線部を含むとともに同曲線部に対して他の曲線部または直線部を介して弦弾先端部に繋がって形成されている。これにより、弦楽器用ピックを使用する奏者は、屈曲部を構成する曲線部と弦弾先端部との間の他の曲線部上または直線部上に弦を滑らせることによって弦の弾き方に変化を付けることができ、様々な演奏感を楽しむことができる。
【0015】
また、請求項5に係る本発明の他の特徴は、前記弦楽器用ピックにおいて、弦弾先端部は、弦の半径の100倍以下の半径の円弧で形成されていることにある。この場合、本発明者によれば、例えば、弦楽器における弦の直径が0.01インチの場合には、弦弾先端部は0.5mm〜5mm程度の半径の円弧が好適である。
【0016】
このように構成した請求項5に係る本発明の他の特徴によれば、弦楽器用ピックは、弦弾先端部が弦の半径の100倍以下の半径の円弧で形成されている。これにより、弦楽器の奏者は、弦弾先端部によって弦楽器の弦を弾き易くなり、思い通りの演奏を行い易くなる。
【0017】
また、請求項6に係る本発明の他の特徴は、前記弦楽器用ピックにおいて、屈曲部は、弦弾先端部の両側にそれぞれ形成されており、前記両側に形成された2つの屈曲部は、互いに異なる形状で形成されていることにある。
【0018】
このように構成した請求項6に係る本発明の他の特徴によれば、弦楽器用ピックは、屈曲部が弦弾先端部の両側にそれぞれ形成されており、これら両側に形成された2つの屈曲部が互いに異なる形状で形成されている。これにより、弦楽器の奏者は、互いに形状が異なる屈曲部を使い分けることにより、弦楽器の演奏感を好みに応じて変えることができる。
【0019】
また、請求項7に係る本発明の他の特徴は、前記弦楽器用ピックにおいて、弦弾先端部は、本体部に少なくとも2つ以上形成されていることにある。
【0020】
このように構成した請求項7に係る本発明の他の特徴によれば、弦楽器用ピックは、弦弾先端部が本体部の周縁部に少なくとも2つ以上形成されている。この場合、弦楽器用ピックの各弦弾先端部に繋がって形成される屈曲部は、互いに同じ形状に形成されていてもよいし、互いに異なる形状に形成されていてもよい。これにより、弦楽器の奏者は、使用できなくなった弦弾先端部に代えて新たな弦弾先端部を使用することにより一つの弦楽器用ピックを長く使い続けることができ、または、互いに形状が異なる屈曲部を使い分けることにより、弦楽器の演奏感を好みに応じて変えながら演奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A),(B)は本発明の一実施形態に係る弦楽器用ピックの全体構成を概略的に示しており、(A)は弦楽器用ピックの平面図であり、(B)は弦楽器用ピックの正面図である。
【図2】図1に示す弦楽器用ピックにおける弦弾先端部、ガイド部および屈曲部を拡大した拡大平面図である。
【図3】本発明の変形例に係る弦楽器用ピックの全体構成を概略的に示す平面図である。
【図4】本発明の他の変形例に係る弦楽器用ピックの全体構成を概略的に示す平面図である。
【図5】本発明の他の変形例に係る弦楽器用ピックの全体構成を概略的に示す平面図である。
【図6】本発明の他の変形例に係る弦楽器用ピックの全体構成を概略的に示す平面図である。
【図7】本発明の他の変形例に係る弦楽器用ピックの全体構成を概略的に示す平面図である。
【図8】本発明の他の変形例に係る弦楽器用ピックの全体構成を概略的に示す平面図である。
【図9】本発明の他の変形例に係る弦楽器用ピックの全体構成を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る弦楽器用ピックの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る弦楽器用ピック100の全体構成の概略的に示しており、(A)は弦楽器用ピック100の平面図であり、(B)は弦楽器用ピック100の正面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この弦楽器用ピック100は、エレクトリックギター、アコースティックギター、ベースギターまたはマンドリンなどの各種弦楽器を演奏する際に弦を弾く道具として用いられるものである。
【0023】
(弦楽器用ピック100の構成)
弦楽器用ピック100は、本体部101を備えている。本体部101は、弦楽器(図示せず)の奏者によって把持される樹脂製の薄板であり、角の丸い略三角形状に成形されている。本実施形態においては、本体部101は、ポリアセタール樹脂(POM)を厚さ約1mm、一辺の長さが約30mmの略三角形状に成形して構成されている。
【0024】
この本体部101における3つの角部には、弦弾先端部102がそれぞれ形成されている。弦弾先端部102は、弦楽器(図示せず)の演奏時に弦を弾く片状の部分であり、それぞれ円弧状に形成されている。本実施形態においては、弦弾先端部102は、半径が約2mmの円弧でそれぞれ形成されている。
【0025】
3つの弦弾先端部102の各間における本体部101の周縁部には、ガイド部103がそれぞれ形成されている。ガイド部103は、弦弾先端部102で弾かれる弦楽器の弦を弦弾先端部102に導くための滑らかな辺状の部分であり、それぞれ円弧状に形成されている。本実施形態においては、ガイド部103は、半径が約35mmの円弧でそれぞれ形成されている。また、この弦弾先端部102は、後述する屈曲部104から所定の突出量hで形成されている。本実施形態においては、弦弾先端部102は、屈曲部104から約4mmの突出量hで形成されている。
【0026】
3つの弦弾先端部102と3つのガイド部103との各間における本体部101の周縁部のうち、図示下側に突出する弦弾先端部102と同弦弾先端部102の両側に繋がる2つのガイド部103との間における本体部101の周縁部には、屈曲部104がそれぞれ形成されている。屈曲部104は、詳しくは図2に示すように、ガイド部103上を変位する弦楽器の弦90の円滑な進行に抵抗を与える部分であり、ガイド部103と弦弾先端部102との間の部分がガイド部103上を変位する弦90の進行を妨げる側に屈曲して形成されている。本実施形態においては、屈曲部104は、半径が約100mmの円弧でそれぞれ形成されている。この屈曲部104は、本実施形態においては、弦弾先端部102の両側にそれぞれ同じ円弧形状に形成されている。なお、図2においては、弦90を破線で示している。また、本実施形態における弦90は、直径が0.01インチに形成されたものを想定している。
【0027】
(弦楽器用ピック100の作動)
次に、このように構成した弦楽器用ピック100の作動について説明する。まず、弦楽器用ピック100の使用者(弦楽器の奏者)は、演奏する弦楽器(図示せず)および弦楽器用ピック100をそれぞれ用意する。そして、使用者は、弦楽器用ピック100を使用して弦楽器の演奏を開始する。具体的には、使用者は、弦楽器用ピック100の本体部101の中央部を指で把持して弦楽器用ピック100の周縁部によって弦楽器の弦90を弾く。
【0028】
より具体的には、使用者は、図2に示すように、弦楽器用ピック100のガイド部103に弦90を好みの角度で当てて同ガイド部103上を図示下方の弦弾先端部102に向って滑らせる(図示破線矢印参照)。この場合、弦楽器用ピック100のガイド部103は、滑らかな円弧に形成されているため、弦90を滑らかに弦弾先端部102に向って滑らせることができる。
【0029】
そして、ガイド部103上を変位する弦90が屈曲部104に達すると、弦90は屈曲部104の円弧形状に沿って変位する。この場合、屈曲部104がガイド部103上を変位する弦90の進行を妨げる側に屈曲、具体的には、滑らかな凸状の円弧で形成されたガイド部103に対して凹状に凹んだ円弧状に形成されているため、使用者は、ガイド部103上を滑らかに変位する弦90の変位の様子が変化したことを感じる。これにより、使用者は、弦楽器用ピック100の周縁部を変位する弦90が弦弾先端部102の近傍に位置したことを認識することができる。
【0030】
したがって、使用者は、弦90が屈曲部104に達したと感知した後は、弦弾先端部102における所望する位置で弦90を所望する強さで弾くようにタイミングを計りながら弦楽器用ピック100を操作して弦弾先端部102によって弦90を弾く。これにより、弦楽器は、弦90が弦弾先端部102によって弾かれるため、使用者の所望した音色で発音する。そして、使用者は、弦90を弾いた後、引き続き弦楽器を演奏する場合には、直ちに弦楽器用ピック100の位置を戻して前記と同様にガイド部103に弦90を当てて同ガイド部103上を滑らせる。すなわち、使用者は、弦楽器用ピック100のガイド部103、屈曲部104および弦弾先端部102上に対して弦90を連続的に滑らせて弾くとともに、これらの動作を繰り返し反復することによって弦楽器を連続的または断続的に発音させて演奏する。
【0031】
そして、使用者は、弦楽器用ピック100における1組のガイド部103、屈曲部104および弦弾先端部102を繰り返し使用した結果、これらのいずれかが摩耗して使用が困難な状態となった場合には、弦楽器用ピック100における他の1組のガイド部103、屈曲部104および弦弾先端部102に使用を切り替える。これにより、使用者は、1つの弦楽器用ピック100を長期間に亘って使用することができるとともに、弦楽器の演奏中に弦弾先端部102等が使用不能となった場合においても他の弦弾先端部102に使用を切り替えることによって演奏を中断することなく継続することができる。
【0032】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、弦楽器用ピック100は、奏者に把持される本体部101の周縁部に弦90を弾く弦弾先端部102と同弦弾先端部102に向かって弦を滑らせるガイド部103とが形成されるとともに、これらの弦弾先端部102とガイド部103との間に弦90の進行を妨げる側に屈曲した屈曲部104を備えて構成されている。このため、弦楽器を演奏する奏者は、弦楽器の弦90をガイド部104上を弦弾先端部102に向かってを滑らせる過程において、弦90の変位が屈曲部104で妨げられた感覚を受けることにより弦弾先端部102に対する弦90の位置関係を把握することができる。これにより、奏者は、弦楽器における弦90の弦楽器用ピック100への引っ掛かり具合が掴み易くなり思い通りに弦90を弦弾先端部102で弾かせて演奏することができる。
【0033】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例を示す図3〜図7においては、上記実施形態における弦楽器用ピック100の構成部分に対応する部分に同じ符号を付して、これらの説明は適宜省略する。
【0034】
例えば、上記実施形態においては、屈曲部104を弦楽器用ピック100における1つの弦弾先端部102の各両側にそれぞれ形成した。しかし、屈曲部104は、弦楽器用ピック100における少なくとも1つの弦弾先端部102の少なくとも片側に形成されていればよい。したがって、例えば、図3に示すように、弦楽器用ピック100における3つの弦弾先端部102の両側にそれぞれ屈曲部104を形成することもできる。
【0035】
また、上記実施形態においては、3つの弦弾先端部102の各両側に形成した各屈曲部104をすべて同じ形状に形成した。しかし、屈曲部104は、各形成位置ごとに互いに異なる形状に形成することもできる。例えば、図4に示すように、1つの弦弾先端部102の両側に互いに半径の異なる円弧状の屈曲部104をそれぞれ形成することもできる。なお、図4においては、図示上側2つの弦弾先端部102は、屈曲部104を有しない従来型の弦弾先端部となっている。
【0036】
また、上記実施形態においては、屈曲部104を円弧状に形成した。しかし、屈曲部104は、ガイド部103上を変位する弦90の進行を妨げる側に屈曲した形状、具体的には、傾斜または曲がった形状であれば、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、屈曲部104は、上記実施形態とは異なる半径の円弧または直線を単体で、さらには、円弧と直線とを適宜組合せて形成することができる。この場合、本発明者による官能試験によれば、屈曲部104を円弧状に形成する場合においては、屈曲部104の半径を200mm以下に設定するとよい。例えば、弦楽器における弦90の直径が0.01インチの場合には、屈曲部104は0.5mm〜200mm程度の半径の円弧が好適である。この場合、より具体的には、弦90を強く弾くための弦弾先端部102においては、屈曲部104は0.5mm〜30mm程度の半径の円弧が好適であり、弦90を弱く弾くための弦弾先端部102においては、屈曲部104は20mm〜200mm程度の半径の円弧が好適である。これによれば、弦楽器の奏者は、屈曲部104による弦90の変位が妨げられた感触を感知し易くなり、思い通りの演奏を行い易くなる。
【0037】
例えば、図5には、屈曲部104を2つの円弧状の曲線で構成した弦楽器ピック100を示している。この図5に示した弦楽器用ピック100は、屈曲部104が弦楽器ピック100の本体部101の内側に凹んで湾曲した円弧状の第1曲線部104aと本体部101の外側に突出して湾曲した円弧状の第2曲線部104bとによって構成されている。したがって、この弦楽器用ピック100の使用者は、第1曲線部104aによって弦90の変位の様子の変化、具体的には弦90の進行の抵抗感や異質感を受けた後、弦90を湾曲した第2曲線部104b上を滑らせながら弾くことになり、1つの曲線部104aのみで屈曲部104を構成した弦楽器用ピック100(上記実施形態)の場合に比べて異なった演奏感を得ることができる。
【0038】
また、図6には、屈曲部104を1つの円弧状の曲線と1つの直線とで構成した弦楽器ピック100を示している。この図6に示した弦楽器用ピック100は、屈曲部104が弦楽器ピック100の本体部101の内側に凹んで湾曲した円弧状の曲線部104aと直線で構成された直線部104cとによって構成されている。したがって、この弦楽器用ピック100の使用者は、第1曲線部104aによって弦90の変位の様子の変化(抵抗感や異質感)を感じ取った後、弦90を直線状の直線部104bc上を滑らせながら弾くことになり、一つの第1曲線部104aのみまたは第1曲線部104aと第2曲線部104bとで屈曲部104を構成した上記実施形態または上記変形例に係る弦楽器用ピック100に比べて、また異なった演奏感を得ることができる。
【0039】
なお、屈曲部104が2つ以上の円弧および/または直線によって構成されている場合であっても、屈曲部104が1つの円弧または直線で構成されておりこの屈曲部104を1つ以上の円弧および/または直線を介して弦弾先端部102に繋げた構成の場合であっても、両者が実質的に同一であることは言うまでもない。また、図5および図6においては、図示上側2つの弦弾先端部102は、屈曲部104を有しない従来型の弦弾先端部となっている。また、これらの屈曲部104は、弦弾先端部102の両側に同じ形状で形成されている。
【0040】
また、他の変形例として、例えば、図および図に示すように、円弧状のガイド部103に対して直線部を介して弦弾先端部102に繋げることにより屈曲部104を尖った入隅状に形成することもできる。このように、屈曲部104を尖った入隅状に形成することにより、弦楽器用ピック100の使用者は、ガイド部103上を変位する弦90の進行の様子の変化が明確に感知できるようになりより演奏を行い易くなる。すなわち、屈曲部104は、ガイド部103と弦弾先端部102とで劣角状の屈曲部を形成するようにするとよい。なお、図7および図8においては、図示上側2つの弦弾先端部102は、屈曲部104を有しない従来型の弦弾先端部となっている。
【0041】
また、上記実施形態においては、弦楽器ピック100の本体部101に対して3つの弦弾先端部102を形成した。しかし、弦弾先端部102は、弦楽器ピック100の本体部101に対して少なくとも1つ形成されていればよく、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、この弦弾先端部102の形成数は、弦楽器用ピック100の形状が略三角形に限定されるものではないことも意味している。このため、弦楽器用ピック100の形状は、従来から多く採用されている形状、例えば、おにぎり型、ホームベース型およびティアドロップ型に形成することもできる。また、上記特許文献2,3に記載された鋸状の部分と組み合わせることもできる。
【0042】
また、上記実施形態においては、弦弾先端部102を円弧状に形成した。しかし、弦弾先端部102は、弦90を弾くことができる形状であれば、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、弦弾先端部102は、上記実施形態とは異なる半径の円弧状に形成することができる。この場合、本発明者による官能試験によれば、弦弾先端部102は、弦90の半径の100倍以下の半径の円弧で形成されるよい。例えば、弦楽器における弦90の直径が0.01インチの場合には、弦弾先端部102は0.5mm〜5mm程度の半径の円弧が好適である。これによれば、弦楽器の奏者は、弦弾先端部102によって弦楽器の弦90を弾き易くなり、思い通りの演奏を行い易くなる。
【0043】
また、他の変形例として、例えば、図8に示すように、弦弾先端部102を先端部の尖った略三角形状に形成することもできる。また、図示は省略するが、弦弾先端部102を方形状や楕円状に形成することもできる。また、1つの本体部101上に複数の弦弾先端部102を形成する場合、互いに異なる形状の弦弾先端部102を形成することもできる。
【0044】
また、上記実施形態においては、弦弾先端部102の屈曲部104からの突出量hを約4mmに設定した。しかし、弦弾先端部102の屈曲部104からの突出量hは、弦90を弾くことができれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。この場合、本発明者による官能試験によれば、弦弾先端部102の屈曲部104からの突出量hは、弦90の直径の2倍ないし30倍以下に設定するとよい。例えば、弦楽器における弦90の直径が0.01インチの場合には、弦弾先端部102の突出量は、概ね1mmないし6mmの範囲が好適である。これによれば、弦楽器の奏者は、弦90の変位が屈曲部104で妨げられてからの弦90の弦弾先端部102への引っ掛け具合がより掴み易くなり、思い通りの演奏を行い易くなる。なお、上記実施形態および各変形例において弦弾先端部102の屈曲部104からの突出量hは、屈曲部104の形成長さの中間点を基点として弦弾先端部102の最先端部までの長さを想定しているが、前記基点は屈曲部104の円弧中心とすることもできる。
【0045】
また、上記実施形態においては、ガイド部103を円弧に形成した。しかし、ガイド部103は、弦90を弦弾先端部102に導くことができる形状であれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、ガイド部103は、上記実施形態とは異なる半径の円弧に形成されていてもよいし、直線状に形成されていてもよい。また、ガイド部103を円弧状に形成する場合、例えば、図9に示すように、本体部101の周縁部を凹状に凹ませた円弧状に形成することもできる。さらに、ガイド部103を本体部101の周縁部に複数形成する場合には、各ガイド部103をそれぞれ互いに異なる形状に形成することもできる。なお、図9においては、図示上側2つの弦弾先端部102は、屈曲部104を有しない従来型の弦弾先端部となっている。
【0046】
また、上記実施形態においては、弦楽器用ピック100の本体部101は、樹脂素材を厚さ約1mmの薄板に成形して構成した。しかし、本体部101を構成する素材および厚さは、弦楽器用ピック100に求められる仕様や使用者の好みに応じて適宜決定されるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、弦楽器用ピック100の本体部101は、ゴム材、フェルト材および金属材などで構成することができる。また、弦楽器用ピック100の本体部101の厚さや硬さも弦楽器用ピック100に求められる仕様や使用者の好みに応じて自由に選定することができる。
【符号の説明】
【0047】
h…突出量、
90…弦、
100…弦楽器用ピック、
101…本体部、
102…弦弾先端部、
103…ガイド部、
104…屈曲部
104a…第1曲線部
104b…第2曲線部
104c・・・直線部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器の奏者に把持される板状の本体部と、
前記本体部の周縁上に角状に形成されて弦を弾く弦弾先端部とを有した弦楽器用ピックであって、
前記本体部の周縁部に形成されて前記弦を前記弦弾先端部に向って滑らせるためのガイド部と、
前記ガイド部と前記弦弾先端部との間の部分に前記ガイド部に沿って滑る前記弦の進行を妨げる側に屈曲した屈曲部とを備えたことを特徴とする弦楽器用ピック。
【請求項2】
請求項1に記載した弦楽器用ピックにおいて、
前記弦弾先端部は、前記屈曲部からの突出量が前記弦の直径の2倍ないし30倍以下で形成されていることを特徴とする弦楽器用ピック。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した弦楽器用ピックにおいて、
前記屈曲部は、半径が200mm以下の円弧で形成されていることを特徴とする弦楽器用ピック。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した弦楽器用ピックにおいて、
前記屈曲部は、少なくとも円弧状の曲線部を含むとともに同曲線部に対して他の曲線部または直線部を介して前記弦弾先端部に繋がって形成されていることを特徴とする弦楽器用ピック。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した弦楽器用ピックにおいて、
前記弦弾先端部は、前記弦の半径の100倍以下の半径の円弧で形成されていることを特徴とする弦楽器用ピック。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載した弦楽器用ピックにおいて、
前記屈曲部は、前記弦弾先端部の両側にそれぞれ形成されており、
前記両側に形成された2つの前記屈曲部は、互いに異なる形状で形成されていることを特徴とする弦楽器用ピック。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した弦楽器用ピックにおいて、
前記弦弾先端部は、前記本体部に少なくとも2つ以上形成されていることを特徴とする弦楽器用ピック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−123350(P2012−123350A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23203(P2011−23203)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(597087756)
【Fターム(参考)】