説明

弱塩基性薬および有機酸を含む薬物送達系

約5〜14の範囲内のpKaを有する窒素(N)含有治療剤を1日2回または1回の投与計画に好適であるよう徐放様式で身体に送達させることが可能であるカプセル、慣用の錠剤または口腔内崩壊錠などの医薬剤形が、治療剤(薬物)を前記弱塩基性薬物が実質的に不溶性である不適な腸管環境へ放出される前に可溶化する、少なくとも1つの有機酸を含む。単位剤形は、多数の多重コーティングされた粒子(すなわち、即時放出ビーズ、徐放性ビーズ、および/または1つ以上の時限パルス型放出ビーズ集団)から構成され、前記弱塩基性薬物と前記有機酸とが処理中および/または保管中に酸付加化合物のインサイチュ形成をもたらす密接な接触をしないように設計されている一方で、薬物放出の完了前に酸が枯渇しないことが確保されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、内容が参照により本明細書において援用される2006年1月27日に出願の米国仮特許出願60/762,766号明細書の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、5〜14の範囲内のpKaおよびpH6.8で200μg/mL以下の溶解度(solubility)を有する弱塩基性窒素(N)含有治療剤および1つ以上の薬学的に許容可能な有機酸の1つ以上の時限パルス型放出(timed, pulsatile-release)ビーズ集団を含む、放出調節剤形(modified-release dosage forms)の開発に関する。剤形は、2段階溶出媒体を用いる米国薬局方(USP)の溶出法(dissolution methodology)(0.1N HCl中で最初の2時間、続いてpH6.8での緩衝剤中での試験)により溶出試験した場合に、所定の遅延(遅延時間)後に活性成分および有機酸の両方の比較可能な放出プロファイルを示す。本発明の他の態様によれば、投薬を必要とする患者における1日1回または2回の投与計画に好適な目標PK(薬物動態学的、すなわち、血漿濃度−時間)プロファイルに対する経口薬物送達系が開示されている。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
多くの治療剤は、吸収部位でまたは吸収部位の近くで一定の速度で利用可能である場合に最も効果的である。このように利用可能な治療剤の吸収によって、一般に、最大の効力および最低の毒性副作用をもたらす最大の効力および最低の毒性副作用をもたらす所望の血漿濃度が得られる。経口適用のための浸透圧デバイスなどの高性能の薬物送達系を開発するために、非常に多くの努力がなされてきた。しかしながら、薬物の一定の血液レベルの維持が望ましくない場合がある。例えば、心血管系疾病に対する時間治療の主な目的は、例えば早朝の時間といった最も必要とされる時間中にはより高い濃度で、例えば深夜および睡眠時間の初期といった必要性が低いときにはより低い濃度で薬物を送達することである。適当に設計された薬物送達系に加えて、投与する時間も同様に重要である。必要とされる特有の薬物動態学的プロファイルは、薬物動態学的パラメータ、溶解度、消化管での吸収、および排出半減期についての知識に基づくコンピュータシミュレーションおよびモデリング技術を用いて算出することが可能である。
【0004】
経口投与された医薬剤形はヒト消化管を通過する一方で、薬物は剤形から放出されて消化(GI)管からの吸収が生じる部位またはその近辺で溶液形態で利用可能でなければならない。薬物が溶液化して剤形から放出される速度が、薬物吸収の動態学に重要である。剤形、従って、活性成分は、通過中に、異なるpH、すなわち、約1.2(空腹時の胃のpHであるが、食品の摂取で1.2〜4.0の間で変化し得る)〜約7.4(胆汁pH:7.0〜7.4および腸内pH:5〜7)で変化するpHに曝される。さらに、消化管の個々の部分における剤形の通過時間は、そのサイズおよび支配的な局所的条件に応じて著しく異なり得る。薬物吸収に影響を与える他の要因には、pKa、溶解度、結晶エネルギー、および特定の表面積などの薬物物質自体の物理化学的特性が含まれる。重要な役割を果たす支配的な局所的条件には、管腔内容物の特性(pH、表面張力、体積、撹拌および緩衝剤能力)および食品の摂取後の変化が含まれる。結果として、しばしば、一定の速度での薬物放出を達成することが困難である。
【0005】
塩基性および酸性薬は、生理学的pH範囲内で2桁を超えて変化するpH依存性溶解度プロファイルを示す。扱いが最も困難である候補は、pH>6で特に不溶性であり、治療上有効であるために高投与量を必要とする弱塩基性の医薬活性剤(pharmaceutical actives)である。腸内領域に侵入すると、吸収速度が薬物放出速度より速くなければ、剤形から放出される薬物の一部が不適な(hostile)pH環境で沈殿し得る。あるいは、薬物は、腸内の胆汁酸塩およびレシチンの存在により促進されて、過飽和溶液状態のまま残り得る。水性溶解度が優に一桁超える過飽和が、従来技術で明らかとなっている。沈殿の場合には、より遅い相での吸収のための再溶解の証拠がある。
【0006】
水溶性ポリマー(例えば、ポビドン)、不水溶性ポリマー(例えば、生理学的pHで不溶性であるエチルセルロース)、胃溶解性ポリマー(例えばEudragit EPO)、または腸溶解性ポリマー(例えば胃耐性ヒプロメロースフタレート)などの合成ポリマーの好適な組み合わせを含む機能性高分子膜が、活性成分および一定の速度での薬物放出を達成するための1つ以上の溶解剤を含む錠剤またはペレットコアに塗布されてきたが、大した成果は上げられていない。実質的に一定の速度での薬物放出を提供するための、薬学的に許容可能な緩衝剤酸、緩衝剤酸塩、およびこれらの混合物を用いた酸性または塩基性pHで高い水溶性である活性成分の医薬組成物の開発が記載されてきた。バイオアベイラビリティを向上させ、対象間および対象内での変動を低減し、弱塩基性医薬活性成分における食品の影響を最小にするため、有機酸が用いられてきた。持続性放出(extended-release)プロファイルをもたらすための弱塩基性薬を含む多粒子剤形も文献中に記載されている。これらの剤形は、典型的には、薬物を1つ以上の有機酸と一緒に粒状化または積層化させ、不水溶性および水溶性または腸溶性ポリマーの組み合わせでコーティングすることにより得られる。
【0007】
これらの開示における薬物放出は程々に延長することが可能であるが、これらは2つの欠点(すなわち、1日1回の投与計画を達成するための適切な血漿プロファイルの維持ができないこと、および塩形態が部分的乃至完全にインサイチュ形成すること、ゆえに新たな化学体が作られること)を被る。コアを含有する有機酸を徐放性高分子膜でコーティングした場合であっても、該送達系では、継続的な溶解を行うための酸の放出および得られる活性成分の吸収を延長させることで、経口摂取後24時間の時点で適切な血漿レベルを得ることはできない。さらに、多くの弱塩基性薬は、特に薬物積層化のための一般的な溶剤に溶解されているときあるいは粒状化中に、有機酸の存在下で塩を形成することが知られている。有機酸および薬物層が徐放性(SR)膜によって分離されている剤形においても、薬物積層化製剤が有機酸を含有する。結果として、最終的な剤形中の活性成分は、部分的または完全に中和された塩の形態で存在する。これは、規制事項から許容可能な状況ではない。規制機関は、これらの活性成分を新たな薬物体として見なしてもよい。それ故、1日1回の投与計画に好適とするためにCmaxおよびCminの目標血漿濃度を維持するよう活性成分を放出するために、高投与量を必要とする約5〜14の範囲内のpKaを有する弱塩基性薬および変わらない形態の有機酸を含む、薬物送達系を開発する必要性があるが未だ達成されていない。多大な研究の後、意外なことに、この未達の必要性は、インビトロ溶出媒体への滴下前または経口投与前に、有機酸および弱塩基性活性剤が処理中におよび/または保管中の剤形において相互に接触して塩を形成することを防止することにより、達成可能であることが発見された。このことは、溶解速度制御SR膜を不活性コアの酸層と酸含有コアに塗布される薬物層との間に塗布してこれらの2つの成分を分離し、さらに酸放出を薬物の放出と同期させるためにSRおよび/またはTPR(遅延時間コーティング)膜をIRビーズに塗布することにより、達成することが可能である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、約5〜14の範囲内のpKa(典型的には酸性pHで可溶性であるが、中性およびアルカリ性pHでは難溶性から実質的に不溶性)および約2時間以上の排出半減期を有する弱塩基性窒素(N)含有治療剤と、薬学的に許容可能な有機酸とが接触して、酸付加化合物が形成されることを防止することを含む、パルス型送達系を作るための医薬組成物および方法を提供する。さらに、本明細書に記載の剤形は、薬物が実質的に不溶性である不適な腸管環境中に放出される前に可溶化させることにより、1日2回または1回の投与計画に好適であるように、投与後最高で12時間〜24時間の間、許容可能な血漿濃度をもたらす確度が高められた目標薬物放出プロファイルを提供する。
【0009】
本発明の他の実施形態は、約5〜14の範囲内のpKa、pH6.8で約200μg/mL以下の溶解度、およびpH6.8で少なくとも約100の溶解度に対する至適最高投与量の比を有する1つ以上の弱塩基性窒素(N)含有治療剤を含有する1種以上のコーティングビーズ集団を含む多粒子医薬組成物に関する。例えば、pH6.8で0.05mg/mLの溶解度を有する薬物の即時放出(immediate-release)(IR)剤形についての投与計画が5mg1日2回である場合、至適最高投与量は10mg1日1回であり、pH6.8での溶解度(mg/mL)に対する至適最高投与量(mg)の比は200である。本発明の一態様により調製した多粒子組成物は、有機酸および弱塩基性治療剤の両方が比較可能な薬物放出プロファイルを示すように、約5〜14の範囲内のpKaを有する弱塩基性治療剤が上に積層化されたバリア膜(例えば、SR(徐放性))によりコーティングされ、さらにSR膜および/または遅延時間膜でコーティングされた有機酸含有コアを含む。
【0010】
本発明の一態様により調製された多粒子組成物は、米国薬局方装置1(バスケット、100rpm)または装置2(パドル、50rpm)および2段階溶出法(最初の2時間は0.1N HCl(塩酸)700mL中、その後はpH変性剤200mLを添加することにより得られるpH6.8の900mL中での試験)を用いて溶出試験したときに、有機酸および弱塩基性窒素(N)含有治療剤の両方と同様の複合放出プロファイルを示す1つ以上のコーティングビーズ(coated bead)集団を含む。本発明の他の実施形態は、未溶解の活性剤がコーティングビーズ内部に残留することを回避するために、弱塩基性活性剤のものと比してもよりさらに遅い酸放出プロファイルを示す1つ以上のコーティングビーズ集団を含む多粒子医薬組成物に関する。
【0011】
本発明の一態様による多粒子医薬組成物は:
a)有機酸含有コア粒子(有機酸結晶、ペレット、ビーズ等);
b)不水溶性ポリマーまたはポア形成水溶性または腸溶性ポリマーとの組み合わせで不水溶性ポリマーを含む、酸含有コア粒子上のバリアまたは徐放性膜;
c)即時放出(IR)ビーズを形成するために、バリアコーティング酸含有コア粒子上に積層化され、任意選択により保護シールコーティングが提供された弱塩基性薬物;
d)SRビーズが提供される場合、SRビーズを形成するための不水溶性ポリマーまたは水溶性ポリマーとの組み合わせで不水溶性ポリマーを含む、IRビーズ上のSRコーティング膜;および/または
e)時限パルス型放出(TPR)ビーズが提供される場合、TPRビーズを形成するための不水溶性と腸溶性ポリマーとの組み合わせを含む、SRコーティングビーズ上またはIRビーズ直接上の遅延時間コーティング膜
を含む、約5〜14の範囲内のpKaを有する弱塩基性医薬活性剤のコーティングビーズ集団を含む。
【0012】
本発明の特定の態様による組成物は、典型的には、上述の2段階溶出法を用いて薬物および/または有機酸放出について試験したとき、少なくとも2時間の所定の遅延時間後に活性成分および有機酸の両方の所望のまたは目標放出プロファイルを示す。
【0013】
約5〜14の範囲内のpKa、pH6.8で約200μg/mL以下の溶解度、およびpH6.8で約100以上の溶解度に対する至適最高投与量の比を有する弱塩基性窒素(N)含有治療剤の医薬組成物は、本発明の特定の実施形態により、関連するビーズ集団を硬質ゼラチンカプセルに充填し、あるいは慣用の錠剤に圧縮するか、ODT(口腔内崩壊錠)形態に圧縮することにより調製してもよい。
【0014】
本発明の他の実施形態により調製されたODT形態での弱塩基性治療剤の医薬組成物は、頬側口腔内で唾液と接触して約60秒以内で崩壊し、滑らかで嚥下が容易な懸濁液(ざらざらしたまたは粉っぽい後味の無い)を形成する。ODT形態の弱塩基性医薬活性剤の医薬組成物は、薬物含有コア(結晶、顆粒、ペレット、ビーズ等)を含む味覚マスクされたマイクロカプセル、SRコーティング酸含有コアを含むSRビーズおよび時限パルス型放出(TPR)ビーズ集団など、約400μm以下の平均粒径を有する1つ以上のコーティングビーズ集団を含んでいてもよい。味覚マスクは、任意の周知の従来技術の開示により達成してもよい。ODTは、各々約30μm以下の平均粒径を有する崩壊剤(例えば、クロスポビドン、架橋ポリビニルピロリドン)および糖アルコール(例えば、マンニトール)、糖類(例えば、ラクトース)、またはこれらの組み合わせ、および任意選択によりODT製剤において典型的に用いられる薬学的に許容可能な賦形剤、すなわち、香料、甘味料、着色剤、および別の崩壊剤を含む、約400μm以下、またはいくつかの実施形態においては約300μm以下の平均粒径を有する易分散性微粒剤(rapidly-dispersing microgranules)も含んでいてもよい。
【0015】
一実施形態によるODTは以下の特性を示す:
1)口腔内で唾液と接触すると約60秒以内で崩壊して、味覚マスクされた粒子および/またはコーティングされた粒子(SRおよび/またはTPRビーズ)を含む滑らかで嚥下が容易な懸濁液を形成する;
2)味覚マスクされた粒子は、存在する場合には、胃へ進入してから投与量の迅速かつ実質的に完全な放出を提供する(例えば、典型的には約60分間で約75%超);
3)コーティング粒子(SRおよび/またはTPRビーズ)は、消化管での継続的な吸収のための活性成分の持続性放出を提供する。
【0016】
一実施形態によるODTは、擬似的な唾液(pH約6.8)中で溶出試験したときには約3分間で10%以下(ODTについて、頬側口腔内で予測される最長の典型的な残留時間)を放出する一方で0.1N HCl中で溶出試験したときは投与量の約50%以上を約30分間で放出することにより効果的な味覚マスクを示す、味覚マスクされた微小粒子を含む。
【0017】
ある種の実施形態によれば、滑らかな(ざらざらしていない)食感を達成するために、1つ以上の弱塩基性活性剤の易分散性微粒剤およびコーティングビーズ(味覚マスクされたIRビーズ、SRビーズ、および/またはTPRビーズ)は、約6:1〜1:1、特に約4:1〜2:1の重量比で存在してもよい。ある種の他の実施形態によれば、1つ以上の弱塩基性活性剤のコーティングビーズ(味覚マスクされたIR、SRおよび/またはTPRビーズ)は、易分散性微粒剤での圧縮中の膜破損を最小にするために、圧縮性コーティング(例えば、エチルセルロースの可塑化水性分散剤による流動床コーティング)でコーティングしてもよい。
【0018】
本発明の他の実施形態による慣用の錠剤形態での弱塩基性医薬活性剤の医薬組成物は、IRビーズ(結晶、顆粒、ペレット、ビーズ等)、およびSRコーティング酸含有コアを含むSRビーズおよび/またはTPRビーズなどの1つ以上のビーズ集団を含んでいてもよい。慣用の錠剤形態での弱塩基性医薬活性剤の医薬組成物は、経口摂取して約10分間で崩壊し、構成成分ビーズ(味覚マスクされた粒子、コーティングSRビーズおよび/またはTPRビーズ)となる。慣用の錠剤は、圧縮性希釈剤、充填剤、着色剤、および任意選択により潤滑剤などの崩壊錠製剤において典型的に用いられる薬学的に許容可能な賦形剤を含んでいてもよい。
【0019】
一実施形態により調製された慣用の錠剤は以下の特性を示す:
1)経口摂取して約10分でIR粒子および/またはコーティング粒子(SRおよび/またはTPRビーズ)に崩壊する;
2)IR粒子は、存在する場合には、胃へ進入してから約60分以内、特に約30分以内に、投与量の迅速で実質的に完全な放出を提供する(例えば、約95%超);
3)SRおよび/またはTPRビーズは、消化(GI)管での継続的な吸収のための活性成分の持続性放出を提供する。
【0020】
本発明の他の実施形態は、約2時間以上の排出半減期を有する1つ以上の弱塩基性治療剤を含む1つ以上のコーティングビーズ集団を含む多粒子医薬組成物(ここで、活性成分は、SRコーティング有機酸含有コアに積層化される)に関する。本発明の本態様により開発されたパルス型送達系は、IRビーズ、SRビーズ、および時限パルス型放出(TPR)ビーズ集団を含んでいてもよい。SRコーティング有機酸含有コアは、典型的には、有機酸(例えばフマル酸)を高分子バインダー溶液から不活性粒子(例えば、糖質球)上に積層化し、単独であるいは水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ポビドンK−25またはポリエチレングリコール、PEG400)または腸溶性ポリマー(例えば、ヒプロメロースフタレート、HPMCP、またはHP−55)との組み合わせで不水溶性ポリマー(例えば約10cpsの粘度を有するエチルセルロース)でコーティングすることにより調製される。SRコーティング酸含有コアを含むIRビーズ集団は、高分子バインダー溶液からSRコーティング酸含有コア上に薬物積層化し、Opadry ClearまたはPharmacoat(商標)603の保護シールコーティングを付与することにより調製される。SRおよびTPRビーズ集団は、IRビーズを不水溶性ポリマー(例えばエチルセルロース)単独であるいは水溶性ポリマー(例えば、PVP K−25またはPEG400)または腸溶性ポリマー(例えば、ヒプロメロースフタレート、HPMCPまたはHP−55)との組み合わせでコーティングすることにより調製される。SRコーティング酸含有コアを含むIRビーズ集団は、高分子バインダー溶液からSRコーティング酸含有コア上に薬物積層化し、Opadry Clearの保護シールコーティングを付与することにより調製される。SRおよびTPRビーズ集団は、IRビーズを、単独であるいは水溶性ポリマー(例えば、PVP K−25またはPEG400)との組み合わせで不水溶性ポリマー(例えばエチルセルロース)でコーティングすることにより調製される。本発明の一態様によれば、各SRまたはTPRビーズ集団は、薬物および酸の両方を、経口投与から所定の遅延時間(例えば、最高で10時間の遅延時間)後の即時放出プロファイルまたは徐放性プロファイルとして、比較可能な速度で放出する。IRビーズは、剤形(カプセルまたは慣用の錠剤または口腔内崩壊錠)中に含まれる場合、不活性コア上に直接的に積層化され、かつ、総投与量の一部である、保護シールコーティングまたは味覚マスク膜でコーティングされた薬物を含んでいてもよく、経口投与での迅速な吸収(ボーラス投与量)を提供する。
【0021】
本発明のある種の実施形態により開発される送達系が、患者に既述の1日2回または1回の投与計画で経口投与して治療効力を与えるのに十分な量で1つ以上の弱塩基性活性医薬成分を含む、多粒子医薬組成物の製造方法も提供する。
【0022】
特定の実施形態による多粒子医薬組成物を製造する方法は、フマル酸などの薬学的に許容可能な有機酸を糖質球およびセルロース球からなる群から選択される不活性粒子に高分子バインダー溶液から積層化することを含む。流動床またはパンコーティングを用いて有機酸および高分子バインダー溶液を塗布してもよい。他の実施形態によれば、コア粒子は、所望の粒度分布を有する結晶、1つ以上の有機酸を含有する微粒剤、ペレット、またはビーズであってもよい。ある種の実施形態によれば、微粒剤、押出球形化ペレット、または圧縮微小錠剤は、1つ以上の有機酸、弾性特性を乾燥微粒剤に付与する高分子バインダー、親水性充填剤/希釈剤、ならびに任意選択により香料、甘味料、および/または崩壊剤を含む。これらの有機酸含有粒子は、単独であるいは水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコール)または腸溶性ポリマー(例えば、ヒプロメロースフタレート(HPMCPまたはHP−55))との組み合わせで、不水溶性ポリマー(例えば10cpsの平均粘度を有するエチルセルロース)を含むSR(徐放性)高分子膜でバリアコーティングされる。不水溶性および水溶性または腸溶性ポリマーは、特定の実施形態によれば、約95:5〜約50:50、特に約90:10〜60:40の重量比で存在してもよく、膜厚は、約3重量%〜50重量%、特に約5重量%〜30重量%で変化してもよい。
【0023】
特定の実施形態によれば、1つ以上の弱塩基性薬物をバリアコーティング酸含有粒子に高分子バインダー溶液から塗布し、さらに親水性ポリマーでの保護シールコーティング(例えば、Pharmacoat(商標)603またはOpadry(登録商標) Clear)を薬物積層化ビーズに塗布して、IRビーズを形成する。有機酸または薬物の量は、開発のために選択された弱塩基性活性剤の物理化学的特性及び薬理学的特性に依存し、薬物および有機酸は、有機酸結晶または有機酸含有コアが特定の実施形態により用いられるかどうかに依存して、約5:1〜1:10、特に約3:1〜1:3の重量比で存在してもよい。
【0024】
本発明の特定の実施形態によれば、バリアコーティング酸含有コアを含むIRビーズは、単独であるいは水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコール)との組み合わせで不水溶性ポリマー(例えば10cpsの平均粘度を有するエチルセルロース)を含むSR高分子膜でバリアコーティングされる。不水溶性および水溶性ポリマーは、約95:5〜約50:50、特に約90:10〜60:40の重量比で存在してもよく、膜厚は、特定の実施形態により、約3重量%〜50重量%、特に約5重量%〜30重量%で変化してもよい。
【0025】
本発明の他の実施形態によれば、薬物積層化ビーズを含むSRビーズは、不水溶性ポリマー(例えば10cpsの平均粘度を有するエチルセルロース)と腸溶性ポリマー(例えば、ヒプロメロースフタレート(HPMCPまたはHP−55))との組み合わせを含む遅延時間膜でコーティングされて、TPRビーズが形成される。特定の他の実施形態によれば、不水溶性および腸溶性ポリマーは、約9:1〜約1:4、特に約3:1〜1:1の重量比で存在してもよく、膜厚は、特定の実施形態により、約5%〜60%、特に約15重量%〜50重量%で変化してもよい。
【0026】
水性または溶剤系組成物から塗布される機能性高分子系は、典型的には可塑剤を好適な濃度で含有する。最終的な剤形は、1日1回の投与計画に好適な目標血漿濃度を提供するために活性成分物質を単独でまたは2つ以上のコーティングビーズ集団との組み合わせで含有するコーティング球状ビーズ集団を含む、放出調節(MR)カプセル、標準的な(慣用の)錠剤、または口腔内崩壊錠(ODT)であってもよい。例えば、約7時間の排出半減期を有する活性剤の1日1回の剤形は、即時放出を可能とするIRビーズ集団、遅延即時放出を可能とするより短い遅延時間(約3〜4時間)を有する第2のTPRビーズ集団、および典型的には約8〜12時間にわたる遅延徐放性プロファイルを可能とするより長い遅延時間(約7〜8時間)を有する第3のTPRビーズ集団の混合物を含有し、12〜24時間において許容可能な血漿濃度を維持し、ゆえに安全性、治療効力、および患者コンプライアンスが高まる一方で、治療コストを削減し得る。あるいは、最終的な剤形は、IRビーズ集団および約7〜8時間の遅延時間に続いて10〜12時間にわたる徐放性プロファイルを有する第2のTPRビーズ集団を含んでいてもよい。達成可能な遅延時間は、バリアコーティングの組成および厚さ、ならびに遅延時間コーティングの組成および厚さに依存する。至適な1日2回または1回の剤形の達成に影響し得る特定の要因としては、限定するものではないが、治療剤のpKa(およびpH6.0超でのその溶解度)、排出半減期、およびアスパラギン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸等からなる群から選択される有機酸の水溶液における溶解度増強剤(solubility enhancement)が含まれる。
【0027】
本発明のある種の実施形態によれば、約5〜14の範囲内のpKaおよびpH6.8で200μg/mL以下の溶解度を有する弱塩基性窒素(N)含有治療剤を含む多粒子組成物を製造する方法も提供される。この方法は:
a)1つ以上の薬学的に許容可能な有機酸のコア粒子(20〜500μm、特に100〜300μmの粒度分布を有する結晶、ビーズ、またはペレット)を調製する工程;
b)酸の放出を行うようにするために、これらの酸含有コアを、不水溶性ポリマーあるいは水溶性または腸溶性ポリマーとの組み合わせでの不水溶性ポリマーで約3%〜50%の重量増加でコーティングする工程;
c)高分子バインダー溶液から前記弱塩基性窒素(N)含有治療剤を積層化し、保護シールコーティングを薬物積層化ビーズに塗布してIRビーズを形成する工程;
d)不水溶性ポリマーまたは水溶性ポリマーとの組み合わせでの不水溶性ポリマーのバリア(徐放性)コーティングを約3%〜30%の重量増加で塗布して、SRビーズを形成する工程;
e)約10:1〜1:4の重量比の不水溶性ポリマーと腸溶性ポリマーとの組み合わせの遅延時間(時間遅延)コーティングをコーティングビーズの約10重量%〜60重量%の重量増加で塗布して、TPRビーズを形成する工程;および
f)薬学的に許容可能な賦形剤および1つ以上のビーズ集団(例えば、IRビーズ、SRビーズ、および/またはTPRビーズの所望の比での組み合わせ)の混合後に、硬質ゼラチンカプセルに充填するあるいは慣用の錠剤/口腔内崩壊錠(ODT)に圧縮する工程
を含んでいてもよい。
【0028】
1つ以上のビーズ集団(例えば、IRおよびTPRビーズ集団の組み合わせ)を含む組成物は、以下の特性を示してもよい:
a)該組成物は、口腔内で唾液と接触すると崩壊して滑らかで嚥下が容易な懸濁液(ODT形態の場合)を形成し、あるいは経口摂取してから約10分間以内に崩壊する(従来の錠剤またはカプセル形態の場合);
b)味覚マスクされたまたは味覚マスクされていないIRビーズは、胃への進入で投与量を即時に放出する(例えば、典型的には約60分間で約50%超、特に約75%超);
c)SRまたはTPRビーズは、経口投与後、所定の遅延(例えば最高で約10時間)の後に、有機酸の放出と同期して、約4〜20時間の期間にわたって薬物を放出する;
d)組成物の複合薬物放出プロファイルは、1日2回または1回の投与計画に好適であるために、目標インビトロ薬物放出/インビボ血漿濃度プロファイルに類似している。
【0029】
本発明のこれらの実施形態および他の実施形態、利点、および特徴は、以下のセクションにおいて詳細な説明および実施例が提供されて明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
発明の詳細な説明
引用したすべての文献は、関連する部分において、参照により本明細書において援用され;いずれかの文献の引用が、本発明に関してこれらが従来技術であると承認したと解釈されるべきではない。
【0031】
本明細書ならびにその特定の実施例において用いられる「弱塩基性医薬活性剤」という用語は、塩基、薬学的に許容可能な塩、異形体、立体異性体、およびこれらの混合物を包含する。下記のセクションにおいてより完全に定義されるこの用語は、約5〜14の範囲内のpKaを有する窒素(N)含有治療剤、特にpH6.8で200μg/mL以下の溶解度を有する薬剤を指す。
【0032】
本明細書において用いられる「即時放出」という用語は、約50%以上の放出、特に口腔内崩壊錠剤形への組み込みのために味覚マスクされる場合には、好ましくは約75%超、より好ましくは約90%超の放出を指し、ある種の実施形態によれば、剤形投与後、約2時間以内、特に約1時間以内での活性成分の約95%超の放出を指す。この用語は、設計された遅延時間後の即時放出パルス(immediate release pulse)によって特徴付けられる、時限パルス型放出剤形からの活性成分の放出も指すことができる。「遅延時間」という用語は、約10%未満の投与量(薬物)が放出される時間、特に実質的にまったく放出されない時間を指し、少なくとも約2〜10時間の遅延時間が、典型的には、不水溶性および腸溶性ポリマーの組み合わせ(例えば、エチルセルロースおよびヒプロメロースフタレート)でコーティングすることにより達成される。
【0033】
他に明記されていない限り、すべてのパーセントおよび比は、組成物の総計に基づく重量により計算される。
【0034】
水性または薬学的に許容可能な溶剤媒体(solvent medium)を用いて、薬物積層化のための有機酸含有コア粒子、すなわち、酸を不活性コア(例えば糖質球)に積層化することによる酸含有ビーズ、あるいは酸含有コアにまたは直接的に糖質球に薬物積層化することによるIRビーズを、適切なポリマーバインダー溶液から流動床器具において調製してもよい。分散剤または溶剤系として入手可能である機能性ポリマーの水性分散剤を用いて、コーティング酸含有ビーズ、IRビーズ、またはSRビーズのための機能性ポリマーを溶解してもよい。
【0035】
多くの活性医薬成分(API)は、これらの活性剤が酸性pHで十分乃至適度に可溶性であるが、中性およびアルカリ性pHでは不十分乃至実質的に不溶性であるという意味で、弱塩基性である。これらのpKa値は、約5〜14の範囲である。典型的な弱塩基性活性剤についてのpH依存性溶解度データが図1に示されている。例えば、0.1N HCl(塩酸)でのジピリダモールの溶解度は約1mg/mLである一方、pH6.8では、溶解度は僅かに30μg/mLである。カルベジロールの溶解度は、同様にpH依存性であり変動するが、クエン酸、酢酸、および塩酸などの緩衝化剤と直ぐにインサイチュ塩形成を起こすため図1からは明らかではなく、従って、観察される溶解度はインサイチュで形成された塩の溶解度である。
【0036】
表1は、有機酸緩衝剤における弱塩基性活性剤の溶解度の増強を列挙する。3つの異なるグループの認定が可能である。塩酸オンダンセトロンにより代表されるグループA活性剤は、微量のフマル酸を含む緩衝剤中の弱塩基性活性剤の溶解度の劇的な増加を示す。例えば、僅かに0.05mg/mLのフマル酸を含有する緩衝剤中の約26mg/mLのオンダンセトロンの溶解度は、緩衝剤中のフマル酸濃度を5mg/mLまで増加しても変化しない。ジピリダモール、カルベジロール、およびラモトリジンにより代表されるグループBでは、弱塩基性薬物の溶解度は酸の濃度の増加に伴って増加する。クロナゼパムにより代表されるグループCでは、有機酸の影響は非常に限定的であり、すなわち、溶解度増加量は典型的には約3倍未満となる。例えば、クロナゼパムの溶解度は、より高い濃度およびより低い濃度のフマル酸を含有するpH2.3および6.8の緩衝剤中で、それぞれ、約11.6および6.9μg/mLである。
【0037】
本発明の特定の実施形態を添付の図2および3を参照してさらに詳細に記載する。図2において、SRコーティングコア10は、不活性粒子コア16にコーティングされたバインダー14中に薬学的に許容可能な有機酸の層を含む有機酸含有コアに塗布されたSRコーティング12を含む。不活性粒子コア16、有機酸コーティング層14、および溶解速度制御SR層12が、SRコーティング有機酸含有コア10を構成する。図3において、代表的なTPRビーズが図示されている。TPRビーズ20は、一次SR層24に塗布された遅延時間コーティング22、保護シールコーティング26、およびSRコーティング酸含有コア10に塗布された弱塩基性薬物層28を含む。弱塩基性薬物は、典型的には高分子バインダー溶液から塗布される。SRコーティングが薬物放出を持続させる一方で、遅延時間コーティングが遅延時間(約10%未満、特に実質的にゼロの投与量の放出を示す時間)を提供する。それ故、IRビーズ24上の外側SRコーティングである遅延時間コーティング22および酸含有コア上の内側SRコーティング12は、TPRビーズからの薬物および酸の両方の放出特性を一緒に制御する。
【0038】
【表1】

【0039】
本発明の特定の実施形態により開発された製剤の新規性/実用性は、塩酸オンダンセトロン、ラモトリジン、ジピリダモール、およびカルベジロールを約5〜14の範囲内のpKaおよびpH6.8で約200μg/mL以下の溶解度を有する弱塩基性窒素(N)含有治療剤の例として用いて開示される。セロトニン5−HT受容体の選択的遮断剤である塩酸オンダンセトロンは、抗催吐剤および抗嘔吐剤である。これは、酸性pHでかなり可溶性である一方で、pH6.8では実質的に不溶性である。抗血小板薬であるジピリダモールは、化学的にジピペリジン誘導体である。これは、希酸に可溶性であり、水、中性およびアルカリ性緩衝剤に実質的に不溶性である。
【0040】
別の血管拡張性、抗増殖性特性を有するβ−遮断薬であるカルベジロールは、高圧(HF)、冠動脈疾患、およびうっ血性心不全の治療に適応される。カルベジロールの現在の市販製剤は、即時放出であり、1日2回投与される。即時型剤形は、経口投与されると、7および10時間の間の最終排出半減期で、急速かつ広範に吸収される。カルベジロール製剤の1日1回の投与は商業的に望ましく、投与計画を簡素化して患者コンプライアンスを高めるであろう。カルベジロールはラセミ体として存在し、α−ヒドロキシル第二級アミンを含有し、7.8のpKaを有する。これは予測可能な水溶解度(aqueous solubility)、すなわちpH9を超える水溶解度を示し、溶解度は<1μg/mLであり、その溶解度はpHの低下に伴って増加し、pH5付近で安定状態に達し;その溶解度は、pH7で約23μg/mLであり、pH5で約100μg/mLである。より低いpH(pH1〜4)では、溶解度は、カルベジロールのプロトン化形態またはインサイチュで形成されるその塩形態の溶解度により制限される。HCl塩形態は、プロトン化形態自体より溶解性に劣る。カルベジロールは、消化管から経細胞輸送により吸収される。インビボ吸収は、腸管内で以下の順番で低減された:空腸>回腸>大腸。最大の吸収は、空腸において中性pHで達成された。薬物の溶解は、溶解度の低下に起因する可能性のある消化管遠位部におけるカルベジロールの吸収律速要因であるため、一実施形態による1日1回の剤形は、少なくとも2つのビーズ集団(一方がIRビーズ集団で、他方がSRコーティング有機酸コアを含むTPRビーズ集団)を含むであろう。イロペリドンは抗精神病薬であり、抗痙攣薬であるラモトリジンは癲癇の治療に適応される。
【0041】
本発明のある種の実施形態によれば、有機酸緩衝剤の溶解度増強特性が利用され、同時に、酸付加化合物のインサイチュ形成は内側有機酸層と弱塩基性薬物層との間のSRコーティング膜が有ることにより防止される。このように塗布されるSRコーティング膜は、TPRビーズ中の可溶化性の酸の不足により薬物が剤形中に残留してしまわないことを確保するために、有機酸の放出を正確に制御する。一実施形態においては、本発明の剤形の活性成分コアは、有機酸でコーティングされた不活性粒子、SRコーティングでコーティングされた不活性粒子、薬物積層化された不活性粒子(IRビーズ)、さらにバリアまたはSRコーティングされた不活性粒子、および/または遅延時間コーティングされた不活性粒子を含んでいてもよい。コア中の有機酸量および薬物量は、薬物、投与量、そのpH依存性溶解度、溶解度の増強、および排出半減期に依存する。当業者は、所望のBID(1日2回)またはQD(1日1回)投与計画を達成するために、コアへのコーティングに対して適切な量の薬物/酸を選択することが可能である。一実施形態においては、不活性粒子は、糖質球、セルロース球、二酸化ケイ素球等であってもよい。あるいは、所望の粒度分布を有する有機酸結晶は、特にグループC薬についてのコアとして機能してもよく、この場合、これらの結晶は、ある種の実施形態によれば、薬物の放出と同期させて酸の枯渇前の薬物の完全な放出を確保する酸放出をプログラムするように膜コーティングされる。
【0042】
本発明の一態様によれば、剤形のコアは、所望の平均粒径を有する有機酸(例えば、フマル酸)結晶またはポリマーバインダー溶液から有機酸で積層化された糖質球などの不活性粒子を含んでいてもよい。有機酸結晶または酸含有コアは、単独であるいは水溶性または腸溶性ポリマーとの組み合わせで不水溶性ポリマーでコーティングされ、SR膜の組成および厚さは、酸放出がビーズからの薬物溶解/放出より遅いかあるいはこれと同期させることより、薬物放出の枯渇前に酸放出が完了しないことを確保するように至適化する。本発明のある種の態様において、酸含有コアは、有機酸、高分子バインダー、および任意選択により充填剤/希釈剤の回転粒状化(rotogranulation)、高せん断粒状化、および押出球形化または圧縮(直径約1〜1.5mmの微小錠剤として)により調製してもよい微粒剤またはペレットの形態であってもよい。
【0043】
カルベジロールなどの弱塩基性活性剤が高分子バインダー(例えば、ポビドン)溶液からSRコーティングフマル酸含有ビーズならびにOpadry(登録商標)ClearまたはPharmacoat603(ヒプロメロース2910;3cps)などの親水性ポリマーを含む保護シールコーティング上に積層化されて、IRビーズが形成される。一実施形態において、薬物含有IRビーズを、不水溶性ポリマー(例えばエチルセルロース)単独あるいは水溶性ポリマーとの組み合わせでの内側バリアコーティング膜と、腸溶性ポリマーとの組み合わせでの不水溶性ポリマーの遅延時間コーティング膜とで、2回コーティングし、経口投与からおよそ1〜10時間の遅延時間(遅延された開始で放出される)を有するTPRビーズを形成してもよい。不水溶性ポリマーおよび腸溶性ポリマーは、約9:1〜約1:4の重量比で、好ましくは約2:1〜1:1の重量比で存在してもよい。膜コーティングは、典型的には約5%〜約60%、好ましくは約10重量%〜約50重量%のコーティングビーズを含む。さらなる他の実施形態によれば、IRビーズは、前述の量の不水溶性ポリマーと腸溶性ポリマーとの組み合わせで単にコーティングしてもよい。
【0044】
本発明による単位カプセルまたは慣用の錠剤剤形は、単独であるいはIRビーズとの組み合わせでTPRビーズを含んでいてもよい一方で、単位ODTは、単独であるいは味覚マスクされた即時放出(IR)ビーズとの組み合わせでTPRビーズを含んでいてもよい。味覚マスクを有さないIRビーズでは、膜は、経口投与からおよそ60分以内に、好ましくは30分以内に、消化管中での弱塩基性薬物の迅速な放出を提供する。味覚マスクされている場合、これらのビーズは頬側口腔で味覚マスクを示し、消化管での弱塩基性薬物の放出を経口投与からおよそ2時間以内、好ましくは1時間以内に実質的に完了する。TPRビーズは、経口投与から約1〜10時間の遅延時間後に、弱塩基性薬物を最高でおよそ4〜20時間の期間にわたって消化管内で放出する。
【0045】
本発明は、十分に分離/離間した層に配置された活性成分薬剤および酸が、経口摂取後に、剤形が溶出媒体または体液と接触するまで、相互に接触して酸付加化合物を形成しないよう、SRコーティング有機酸含有コアを含む1つ以上の弱塩基性活性剤の1つ以上の時限パルス型放出ビーズ集団(すなわち、良好に時間制御された一連のパルス)を有する薬学的に優れた多粒子剤形を製造する方法も提供する。このように形成された剤形は、比較可能な活性成分薬剤および酸の複合放出プロファイルを示し、特に、酸の放出プロファイルは薬物の放出プロファイルより遅いので、可溶化有機酸の不足のために未溶解の薬物が剤形中に残留することはない。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、該方法は:
a.有機酸含有コア粒子(例えば、所望の粒度分布を有する有機酸結晶または高分子バインダー溶液から有機酸で積層化された不活性粒子(例えば、糖質球、セルロース球、二酸化ケイ素球)を含む粒子)を提供する工程;
b.有機酸含有コア粒子を、単独であるいは水溶性ポリマー(例えば、ポビドンまたはPEG400)またはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(例えば、HP−55)などの腸溶性ポリマーとの組み合わせでのEC−10(10cpsの平均粘度を有するエチルセルロース)などの不水溶性ポリマーからなるSRコーティング膜でコーティングする工程;
c.弱塩基性薬物層をSRコーティング有機酸含有コア粒子上に塗布し、IRビーズを形成する工程;
d.バリアコーティング膜を、単独であるいは水溶性ポリマーとの組み合わせで不水溶性ポリマーの溶液でIRビーズ上に塗布する工程;
e.遅延時間コーティング膜を、不水溶性ポリマーの溶液で約9:1〜1:4の比での腸溶性との組み合わせでSRビーズ上に塗布し、時限パルス型放出薬物粒子(TPRビーズ)を形成する工程
を含んでいてもよい。
【0047】
本発明の特定の実施形態によれば、該方法は、
i.2005年8月26日出願の同時係属中の米国特許出願第11/213,266号明細書(2006年5月18日公開の米国特許出願公開第2006/0105038号明細書)における開示による不水溶性ポリマー(例えば100cpsの平均粘度を有するエチルセルロース)単独であるいは胃溶解性ポア形成剤(例えば炭酸カルシウム)との組み合わせでの溶剤コアセルベーシ(solvent coacervation)により、あるいは2005年10月12日出願の同時係属中の米国特許出願第11/248,596号明細書(2006年4月13日公開の米国特許出願公開第2006/0078614号明細書)における開示による不水溶性ポリマー(例えば10cpsの平均粘度を有するエチルセルロース)単独であるいは胃溶解性ポリマー(例えば、Eudragit E100またはEPO)との組み合わせでの流動床コーティングまたは2005年10月21日出願の同時係属中の米国特許出願第11/256,653号明細書(2006年5月18日公開の米国特許出願公開第2006/0105039号明細書)における開示による胃溶解性ポア形成剤(例えば炭酸カルシウム)での流動床コーティングにより、IRビーズを味覚マスクする工程(この段落において記載の出願の内容は参照により本明細書に援用される);
ii.マンニトールなどの糖アルコールまたはラクトースなどの糖類およびクロスポビドンの粉末混合物を、例えば、その内容が参照により本明細書に援用される2004年4月19日出願の同時係属中の米国特許出願第10/827,106号明細書(2005年10月20日公開の米国特許出願公開第2005/0232988号明細書)における開示を用いて粒状化し、易分散性微粒剤を形成する工程;
iii.工程(e)の1つ以上のTPRビーズ集団を、単独で、あるいは工程(i)の味覚マスクされたIRビーズ、および/または所望の1日1回の血漿プロファイルを提供するための所望の比での工程(d)のSRビーズ、工程(ii)の易分散性微粒剤、ならびに他の薬学的に許容可能な賦形剤との組み合わせで、混合する工程;および
iv.頬側口腔内で唾液と接触すると直ぐに崩壊して滑らかで嚥下が容易な懸濁液を形成し、かつ、不承諾を含む意に沿わない事柄の頻度が少ない1日2回または1回の投与計画に好適な血漿プロファイルを示す、1つ以上の弱塩基性薬を必要な投与量含む口腔内崩壊錠に、工程(iii)の混合物を圧縮する工程
を含んでいてもよい。
【0048】
水性または薬学的に許容可能な溶剤媒体は、コーティング不活性粒子に基づくコア粒子の調製に用いることができる。水溶性有機酸または弱塩基性薬物を不活性粒子またはSRコーティング酸含有コアに結合するのに用いる不活性バインダーの種類は重要ではないが、通常、ポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)またはヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性またはアルコール可溶性バインダーを用いてもよい。バインダーは、不活性粒子に塗布可能である任意の濃度で用いてもよい。典型的には、バインダーは、約0.5〜10重量%の濃度で用いられる。有機酸または弱塩基性薬物は、好ましくは、このコーティング製剤中に溶液または懸濁液形態で存在してもよい。薬物積層化組成物の固形分含有量は、用途に応じて異なってもよいが、典型的には、コーティング製剤の粘度および/または薬物の溶解度に応じて約5〜30重量%で変化する。
【0049】
他の実施形態によれば、有機酸含有コアは、回転粒状化により、あるいは粒状化に続いて押出球形化または微小錠剤への錠剤化により調製してもよい。有機酸、バインダー、および任意選択により他の薬学的に許容可能な賦形剤(例えば、希釈剤/充填剤)を高せん断造粒機またはGlatt GPCG造粒機などの流動床造粒機中に一緒に混合し、粒状化し、凝集物を形成してもよい。湿った塊を押出しおよび球形化し、球状粒子(ペレット)を形成することができる。酸粒子、バインダー、および任意選択により充填剤/希釈剤または薬物含有顆粒を含む混合物を微小錠剤(直径約1〜1.5mm)に圧縮し、有機酸含有ペレットを形成することもできる。これらの実施形態において、酸含有量は、粒状化、押出、または圧縮されたコアの総重量を基準にして、95重量%もの多さであることができる。これらの酸含有コアは、薬物積層化およびその後の機能性ポリマーでのコーティングに先立って、SR膜でコーティングされる。
【0050】
酸含有コアおよびIRビーズのそれぞれの高分子コーティングは、有機酸と活性剤との相対溶解度、活性成分の性質、バリアコーティングの組成、および必要な遅延時間に応じて、約5〜50重量%で変化する。一実施形態において、酸コアには、約5〜20時間にわたる酸放出を持続させるために、エチルセルロース(EC−10)などの可塑化不水溶性ポリマーのバリアコーティングを約5〜50重量%で提供してもよい。特定の他の実施形態において、酸コアには、可塑化エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)フタレート(HP−55)のバリアコーティングが約10〜50重量%で提供されてもよい一方で、IRビーズは、酸の放出と同期させた薬物放出を達成するために、エチルセルロース(EC−10)で5〜20重量%でコーティングされる。さらに他の本発明の実施形態において、IRビーズにはいずれのバリアコーティングが提供されなくてもよく、約30〜50重量%の重量増加による約45.5/40/14.5でのEC−10/HP−55/可塑剤の外側遅延時間コーティングにより、遅延時間後の薬物放出が制御される。膜層の組成およびポリマーのそれぞれ重量は、所望の薬物/酸放出プロファイルおよび評価可能な薬物放出前の遅延時間を達成するために考慮される重要な要因である。
【0051】
IRビーズ、バリア/SRコーティングビーズ、およびTPRビーズからの薬物/酸放出プロファイルは、以下の手法に従って決定してもよい:
【0052】
味覚マスクされたまたは味覚マスクされていないIRビーズの溶出試験は、USP装置1(100rpmでのバスケット)または装置2(50rpmでのパドル)を用いて0.1N HCl900mL中で37℃において行う一方、SRおよびTPRビーズの溶出試験は、2段階溶出媒体(最初の2時間は0.1N HCl700mL中37℃で、続いてpH変性剤200mLの添加により得られるpH=6.8での溶出試験)を用いてUSP装置で行う。時間に伴う薬物/酸放出は、選択された間隔で採ったサンプルでのHPLCにより決定される。
【0053】
薬物放出の開始が、活性成分の排出半減期に応じて、経口投与後数時間で始まって、1日2回または1回の投与計画に好適である適切な血漿濃度が提供されなければならない場合がある。本発明の特定の態様によれば、薬物放出は、経口投与後、最高で約8〜10時間遅延し得る。
【0054】
経口投与後数時間にわたる即時放出パルスを伴うまたは即時放出パルスを伴わない単一の目標徐放性プロファイルが、本発明のある種の実施形態により提供される。
【0055】
水性または薬学的に許容可能な溶剤媒体を用いて、糖質球などの不活性コアまたはSRコーティング酸含有コア上への薬物の積層化による有機酸含有コア粒子または薬物含有IRビーズを調製をしてもよい。水溶性有機酸を不活性粒子にあるいは弱塩基性薬物をSRコーティング酸コア上に結合するために用いられる不活性バインダーの種類は重要ではないが、通常、水溶性またはアルコールおよび/またはアセトン可溶性バインダーが用いられる。バインダーの代表例には、限定するものではないが、水、アルコール、アセトン、またはこれらの混合物に溶解または分散されてもよい、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ポリエチレンオキシド、デキストランやコーンスターチなどの多糖類が含まれる。バインダーは、典型的には、約0.5〜10重量%の濃度で用いられる。
【0056】
酸または医薬活性剤を積層化するために用いられる代表的な不活性粒子には、好適な粒度分布(例えば、カプセル製剤へ組み込まれるコーティングビーズの形成では20〜25メッシュ糖質球、およびODT製剤へ組み込まれるコーティングビーズの形成では60〜80メッシュ糖質球)を有する、糖質球、セルロース球、および二酸化ケイ素球が含まれる。
【0057】
約5〜14の範囲内のpKaを有する弱塩基性窒素(N)含有治療剤の例には、限定するものではないが、鎮痛薬、抗けいれん薬、抗糖尿病薬剤、抗感染症薬剤、抗悪性腫瘍薬、抗パーキンソン病薬剤、抗リウマチ薬剤、心血管系薬剤、CNS(中枢神経系)興奮剤、ドーパミン受容体アゴニスト、制吐剤、消化器作用薬、精神治療剤、オピオイドアゴニスト、オピオイドアンタゴニスト、抗てんかん薬、ヒスタミンHアンタゴニスト、抗喘息薬剤、および骨格筋弛緩薬が含まれる。
【0058】
医薬活性剤の溶解度を増強する代表的な薬学的に許容可能な有機酸には、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、シュウ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等が含まれる。有機酸と医薬活性剤との比は、本発明のいくつかの実施形態において、典型的には、約5:1〜1:10、特に約3:1〜1:3で重量変化する。
【0059】
本発明において有用な不水溶性ポリマーの代表例には、エチルセルロース、ポリ酢酸ビニル(例えば、BASF製のKollicoat SR番号30D)、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、エチルアクリレートおよびメチルメタクリレートに基づく中性コポリマー、ならびにEudragit NE、RSおよびRS30D、RLまたはRL30D等などのアクリル酸およびメタクリル酸エステルと第4級アンモニウム基とのコポリマー等が含まれる。本発明において有用な水溶性ポリマーの代表例には、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、およびポリエチレングリコール等が含まれる。
【0060】
本発明において有用な腸溶性ポリマーの代表例には、セルロースのエステルおよびその誘導体(セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(hydroxypropyl methylcellulose acetate succinate))、ポリビニルアセテートフタレート、pH感受性メタクリル酸−メタメタクリレートコポリマー、およびセラックが含まれる。これらのポリマーは、乾燥粉末または水性分散剤として用いてもよい。用いてもよいいくつかの市販の材料は、Rohm Pharmaにより製造されているEudragit(L100、S100、L30D)、Eastman Chemical Co.製のCellacefate(セルロースアセテートフタレート)、FMC Corp.製のAquateric(セルロースアセテートフタレート水性分散剤)、およびShin Etsu K.K.製のAqoat(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート水性分散剤)の商品名で市販されているメタクリル酸コポリマーである。
【0061】
膜の形成に用いられる腸溶性、不水溶性、および水溶性ポリマーは通常は可塑化されている。膜の可塑化に用いてもよい可塑剤の代表例には、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリ−n−ブチル、ジエチルフタレート、ヒマシ油、セバシン酸ジブチル、モノおよびジアセチル化グリセリド(Myvacet 9-45として市販されている)等またはこれらの混合物が含まれる。可塑剤は、用いるとき、ポリマーを基準にして約3〜30重量%、より典型的には約10〜25重量%を含んでいてもよい。可塑剤の種類およびその含有量は、ポリマーまたはコーティング系の性質(例えば、水性または溶剤ベース、溶液または分散剤ベース、および総固形分)に依存する。
【0062】
一般に、バリア膜コーティングを塗布する前に薬物積層化粒子の表面を下塗りする(prime)ことが望ましく、あるいは薄いヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(例えば、Pharmacoat(登録商標)603またはOpadry(登録商標) Clear)フィルムを塗布することによって異なる膜層を分離することが望ましい。HPMCが典型的に用いられるが、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)または低粘度エチルセルロースなどの他のプライマーを用いることもできる。
【0063】
これらの時限制御パルス型放出系へ組み込むのに好適な活性医薬成分は、約5〜14の範囲内のpKa、pH6.8で200μg/mL以下の溶解度、およびpH6.8で約100以上の溶解度に対する至適最高投与量の比を有する窒素含有生理活性部分である弱塩基性活性医薬成分、誘導体、またはそれらの塩を含む。薬物物質は、ヒトでの薬理学的活性が証明されている薬学的に許容可能な化学的実体の群から選択されることができる。
【0064】
弱塩基性窒素(N)含有治療剤の特定の例には、制限するものではないが:総合失調症の治療に適応されるピペラジニル誘導体であるオランザピン;化学療法または外科手術後に関連する嘔気および嘔吐症状の予防に適応される選択的セロトニン5−HT受容体アンタゴニストであるオンダンセトロンまたは塩酸オンダンセトロン;心臓弁置換の術後の血栓塞栓性合併症の予防に適応されるジピリミジン誘導体であるジピリダモール;虚血性または心筋症由来の心不全の治療に適応されるβ−アドレナリン遮断剤であるカルベジロール;成人および小児科患者での癲癇の治療に適応されるトリアジン誘導体であるラモトリジン;総合失調症の治療に適応される向精神性薬剤であるオランザピンまたはその薬学的に許容可能な塩;双極性障害の治療に適応されるピペラジニル誘導体であるクエチアピンが含まれる。
【0065】
医薬産業において通例用いられるコーティング技術のいずれかを用いて、膜コーティングをコアに塗布することができるが、流動床コーティングは特に有用である。本発明は、治療を必要とする患者において目標PKプロファイルを提供するための経口投与のための1つ以上のビーズ集団を含む多数回投与形態、すなわち、硬質ゼラチンカプセルまたは回転錠剤プレスを用いて圧縮された慣用の壊錠および口腔内崩壊錠などの多粒子剤形の形態の製剤を指向する。慣用の錠剤は、胃へ進入すると迅速に分散する一方、ODTは、口腔内で唾液に接触すると迅速に崩壊して嚥下が容易であるコーティングビーズの滑らかな懸濁液を形成する。1つ以上のコーティングビーズ集団が、適切な賦形剤と一緒に圧縮されて錠剤としてもよい(例えば、慣用錠剤用のバインダー、希釈剤/充填剤、および崩壊剤、一方で、易分散性粒状化をODTにおけるバインダー−希釈剤/充填剤の組み合わせの代わりとしてもよい)。さらに、ODTへの圧縮は、圧縮前にパンチおよびダイを潤滑する外部潤滑システムを備える錠剤プレスを用いて行ってもよい。
【0066】
以下の非制限的な実施例は、各々が所定の遅延開始およびインビトロ薬物放出プロファイルの全体を有する1つ以上のパルスを含むか、あるいは剤形を経口投与した際のインビボ血漿濃度プロファイルが患者コンプライアンスおよび生活の質を高めるための最大の治療効力を達成するための所望のプロファイルに似たものであることが確保されたカプセル剤形を例示している。このような剤形は、「適切な時点」であるいは医師に推奨されて投与されるとき、CmaxまたはCminに関連する副作用の発生を最小にする潜在的に有益なレベルでの薬物血漿濃度の維持が可能となる。
【実施例】
【0067】
実施例1:
A.フマル酸のSRビーズ
40〜80メッシュフマル酸結晶(3750g)を、9インチボトムスプレー(9” bottom spray)Wursterインサート、10インチのカラム長、および16mmのチューブを備えた流動床コーターであるGlatt GPCG 5に充填した。これらの酸結晶を、98/2 アセトン/水(6528.3g)中に溶解した250gのエチルセルロース(Ethocel Premium 10cps、本明細書において以下EC−10として称する)および166.7gのポリエチレングリコール(PEG400)の60/40の比での溶液(6%固形分)で、10重量%以下の重量増加でコーティングした。処理条件は以下のとおりであった:微粒化空気圧(atomization air pressure):2.0bar;ノズル径:1.00mm;底配置板(bottom distribution plate):B;スプレー/振盪間隔:30s/3s;形成物温度を35±1℃で維持;吸気体積(inlet air volume):145〜175立方フィート/分(cfm)およびスプレー速度を約8〜30g/分で増加。
【0068】
フマル酸結晶も、異なる比のエチルセルロースおよびPEGを用いて上述のとおりコーティングした。より具体的には、各事例において、酸結晶を、75/25または67.5/32.5のいずれかの比でのEC−10(Ethocel Premium 10cps)/PEG400の溶液で、10重量%以下の重量増加でコーティングした。図4は、EC−10/PEGの異なる比でコーティングしたフマル酸結晶からのフマル酸の放出プロファイルを示す。
【0069】
B.バリアコーティング酒石酸結晶
60〜100メッシュ酒石酸結晶(900g)を、6インチのカラム長および底から1cmの6インチボトムスプレーWursterインサートを備えた流動床コーターであるGlatt GPCG 1に充填した。これらの酸結晶を、202.5gのエチルセルロース(Ethocel Premium 10cps)および22.5gのトリエチルクエン酸(TEC)の溶液(6%固形分)で、20%の重量増加でコーティングした。処理条件は以下のとおりであった:微粒化空気圧:1.5bar;ノズル径:1.00mm;底配置板:B;形成物温度を33±1℃で維持;吸気速度:4〜5m/sおよびスプレー速度を約5〜8g/分で増加。コーティングに続いて、ビーズをユニット内で10分間乾燥して、過剰な残存溶剤を揮発した。酒石酸の放出は非常に速かった。20%SRコーティング結晶は、0.1N HCl中で溶出試験したとき、67%の酒石酸を1時間で放出した。これらのコーティング結晶を、95/5アセトン/水に溶解した60/25/15の比でのEC−10/HP−55/TECで、20%の重量増加でコーティングした。2時間および4時間の時点での酒石酸の放出は、2段階溶出法で試験したとき、それぞれ、66%および93%であった。
【0070】
実施例2:
A.フマル酸含有コア
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、33.3g)を4%固形分で90/10変性SD 3C 190プルーフアルコール/水に激しく攪拌しながらゆっくり添加して溶解させ、次いでフマル酸(300g)がゆっくり添加して溶解する。6インチボトムスプレーWursterインサート、8インチ分離カラムを備えるGlatt GPCG 3に、866.7gの25〜30メッシュ糖質球を充填する。糖質球を、形成物温度を約33〜34℃、吸気速度を約3.5〜4.5m/sで維持しながら、フマル酸溶液で積層化する。酸コアをユニット内で10分乾燥して残存溶剤/水分を揮発し、20〜30メッシュスクリーンを通して篩分けする。
【0071】
B.SRコーティングフマル酸コア
上記の酸コア(1080g)を、95/5 アセトン/水に溶解した90/10の比での108gのエチルセルロース(EC−10)および12gのトリエチルクエン酸(TEC)の溶液(固形分7.5%)で、10重量%の重量増加でコーティングする。
【0072】
C.SRコーティング酸コアを含むジピリマドールIRビーズ
ジピリマドール(225g)をポリビニルピロリドンポビドンK−29/32(25g)の水溶液にゆっくり添加して薬物を溶解する。SRコーティング酸コアをGlatt GPCG 3中で薬物溶液でコーティングし、薬物積層化ビーズにOpadry Clearの保護シールコーティング(約2%重量増加)を提供し、17.29重量%の薬物充填量を有するIRビーズを形成する。
【0073】
D.ジピリマドールSRビーズ
上記のジピリマドールIRビーズ(1080g)を90/10 EC−10/TEC(トリエチルクエン酸)の溶液(固形分7.5%)を5〜10重量%でスプレーすることによりバリアコーティング(SRコーティング)し、Glatt中で10分間乾燥して過剰な残存溶剤を揮発する。乾燥したビーズを篩分けし、形成されている場合にはいずれの二倍体(doubles)も廃棄する。
【0074】
E.ジピリマドールTPRビーズ
実施例2Dの7%コーティングを有するジピリマドールSRビーズ(1080g)を、50/35/15の比でのEC−10/HP−55(ヒプロメロースフタレート)/TEC(トリエチルクエン酸)の遅延時間コーティング膜で、約20%の重量増加でさらにコーティングする。
【0075】
TPRビーズをGlatt中で同一の温度で乾燥して残存溶剤を揮発し、篩分けする。図5は、ジピリダモールTPRビーズからのフマル酸の放出プロファイルを示す。
【0076】
実施例3:
A.フマル酸含有コア
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、20g)を激しく攪拌しながら、90/10変性SD 3C 190プルーフアルコール/水に4%固形分でゆっくり添加して溶解し、次いで、フマル酸(200g)をゆっくり添加して溶解する。Glatt GPCG 3に780gの25〜30メッシュ糖質球を充填する。糖質球を、実施例1に開示したようにしてフマル酸溶液で積層化した。酸コアをユニット内で10分乾燥して残存溶剤/水分を揮発し、20〜30メッシュスクリーンを通して篩分けする。
【0077】
B.SRコーティングフマル酸コア
上記の酸コア(900g)を95/5 アセトン/水に溶解した90/10の比での90gのエチルセルロース(EC−10)および10gのトリエチルクエン酸(TEC)の溶液(7.5%固形分)で、10重量%の重量増加でコーティングする。
【0078】
C.ラモトリジンIRビーズ
ラモトリジン(162g)をKlucel LF(13g)の水溶液にゆっくり添加して、薬物を溶解する。上記のSRコーティング酸コア(900g)をGlatt GPCG 3中で薬物溶液でコーティングし、薬物積層化ビーズにOpadry Clearの保護シールコーティング(約2%重量増加)を提供し、Glatt中で乾燥してIRビーズを形成した。
【0079】
D.ラモトリジンSRビーズ
ラモトリジンIRビーズを70/30 EC−10/TECの溶液(7.5%固形分)を3〜5重量%でスプレーすることによりバリアコーティングし、Glatt GPCG 3中で同一の温度で10分間乾燥し、過剰な残存溶剤を揮発する。乾燥したビーズを篩分けし、形成されている場合にはいずれの二倍体も廃棄する。
【0080】
E.ラモトリジンTPRビーズ
5%コーティングのラモトリジンSRビーズを42.5/42.5/15の比でのEC−10/HP−55/TECの遅延時間コーティング膜で、約10〜15%の重量増加でさらにコーティングする。TPRビーズをGlatt中で乾燥して残存溶剤を揮発し、20メッシュシーブを通して篩分けする。
【0081】
F.ラモトリジンMRカプセル、50mg:
硬質ゼラチンカプセルにIRビーズ、SRビーズ(3%コーティング)、およびTPRビーズ(10%コーティング)を35/40/25の比で充填する。
【0082】
実施例4:
A.バリアコーティング酒石酸結晶
上記の実施例に記載のように、60〜100メッシュ酒石酸結晶(900g)を変性SD 3C 190プルーフアルコール/水中に4%固形分で溶解した90/10の比でのフマル酸(90g)および10gのKlucel LFの溶液でGlatt GPCG 3中でコーティングし、95/5アセトン/水中に7.5%固形分で溶解した65/20/15の比でのEC−10/HP−55/TECで、30重量%の増加でさらにコーティングする。コーティングした結晶を乾燥し、篩分けし、形成されている場合には二倍体を廃棄する。
【0083】
B.ラモトリジンIRビーズ
ラモトリジン(540g)をKlucel LF(60g)の水溶液にゆっくり添加して、薬物を均質に分散する。上記のSRコーティング酸コア(900g)をGlatt GPCG 3中で薬物懸濁液でコーティングし、薬物積層化ビーズにOpadry Clearの保護シールコーティング(2%重量増加)を提供し、Glatt中で乾燥し、IRビーズを形成する。
【0084】
C.ラモトリジンSRビーズ
ラモトリジンIRビーズ(800g)を、85/15 EC−10/TECの溶液(7.5%固形分)を5〜10%の重量増加でスプレーすることによりSRコーティングする。Glatt中において同一の温度で10分間乾燥して過剰な残存溶剤を揮発したSRビーズを篩分けし、形成されている場合にはいずれの二倍体も廃棄する。
【0085】
D.ラモトリジンTPRビーズ
ラモトリジンSRビーズを45/40/15の比でのEC−10/HP−55/TECの遅延時間コーティング膜で、約10〜20%の重量増加でさらにコーティングする。
【0086】
E.ラモトリジンMRカプセル、50mg:
硬質ゼラチンカプセルにIRビーズ、SRビーズ(5%または10%コーティング)、およびTPRビーズ(10%または20%コーティング)を35/40/25の比で充填する。
【0087】
実施例5:
A.フマル酸含有コア
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、33.3g)を、激しく攪拌しながら90/10190プルーフアルコール/水に4%固形分でゆっくり添加して溶解させ、次いでフマル酸(300g)をゆっくり添加して溶解させた。6インチボトムスプレーWursterインサート、8インチ分離カラムを備えるGlatt GPCG 3に866.7gの60〜80メッシュ糖質球を充填する。形成物温度を約33〜34℃で、および吸気速度を約3.5〜4.5m/sで維持しながら、フマル酸溶液で糖質球を積層化した。酸コアを、ユニット内で10分乾燥して残存溶剤/水分を揮発し、40〜80メッシュスクリーンを通して篩分けした。
【0088】
B.SRコーティングフマル酸コア
上記の酸コア(800g)を、95/5 アセトン/水中に溶解した90/10の比での180gのエチルセルロース(EC−10)および20gのトリエチルクエン酸(TEC)の溶液(7.5%固形分)で、10%〜20%の重量増加でコーティングした。
【0089】
C.カルベジロールIRビーズ
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、77.8g)を精製水(6%固形分)に激しく攪拌しながらゆっくり添加して溶解し、カルベジロール(700g)を攪拌しながらゆっくり添加して薬物を均質に溶解した。上記のSRコーティング酸コア(900g)をGlatt GPCG 3中で薬物分散剤でコーティングし、薬物積層化ビーズにOpadry Clearの保護シール−コーティング(約2%重量増加で34.2g)を提供し、Glatt中で乾燥してIRビーズを形成した。
【0090】
D.カルベジロールSRビーズ
カルベジロールIRビーズ(1080g)を、90/10 EC−10/TECの溶液(7.5%固形分)を5重量%でスプレーすることによりバリアコーティング(SRコーティング)し、Glatt中で同一の温度で10分間乾燥して過剰な残存溶剤を揮発する。乾燥したビーズを篩分けし、形成されている場合にはいずれの二倍体も廃棄する。
【0091】
E.カルベジロールTPRビーズ
カルベジロールSRビーズを50/35/15の比でのEC−10/HP−55/TECの遅延時間コーティング膜で、約10〜20重量%の重量増加でさらにコーティングする。TPRビーズをGlatt中で乾燥して残存溶剤を揮発し、20メッシュシーブを通して篩分けする。図6は、カルベジロールTPRビーズの放出プロファイルを示す。
【0092】
F.味覚マスクしたIRビーズ
上で得たIRビーズを48.5/24/27.5 アセトン/IPA/水中に溶解した50/50 EC−10/Eudragit E100で、約10〜20重量%の重量増加でコーティングする。
【0093】
G.即分散性微粒剤
マンニトールなどの糖アルコールおよびクロスポビドンなどの崩壊剤を含む即分散性微粒剤を、その内容が参照により本明細書に援用される2005年10月20日公開の同時係属中の米国特許出願公開第2005/0232988号明細書に開示されている手法に従って調製した。およそ20μm以下の平均粒径を有するD−マンニトール(152kg)(フランスRoquette製のPearlitol 25)を高せん断造粒機(Vector製のGMX 600)中で8kgの架橋ポビドン(ISP製のクロスポビドンXL−10)と混合し、精製水(およそ32kg)を用いて粒状化し、Quadro製のComilを用いて湿式磨砕(wet-mill)し、約0.8%未満のLOD(乾燥減量)でトレー乾燥させた。乾燥した顆粒を篩分けし、大きすぎる材料を粉砕して、およそ175〜300μmの範囲内の平均粒径を有する即分散性微粒剤を形成した。
【0094】
H.カルベジロールCR ODT
即分散性微粒剤をツインシェルV−ブレンダー中でTPRビーズ、SRビーズ、味覚マスクしたIRビーズ、ならびに香料、甘味料、および別の崩壊剤などの他の薬学的に許容可能な成分と、即分散性微粒剤と多重コーティングカルベジロールビーズとの比が2:1で十分な時間混合し、圧縮のための均質に分布する混合が得られる。味覚マスクされたビーズ、SRビーズ、およびTPRビーズを35/40/25の比で含むカルベジロールとしての錠剤を、外部潤滑システムを備える製造規模錠剤プレスを用いて、約5〜7kPの平均硬度で圧縮する。このように形成されたカルベジロールMR ODT50mgは口腔内で迅速に崩壊して、1日1回の投与計画に好適な目標プロファイルを提供するコーティングカルベジロールビーズを含む滑らかで嚥下が容易な懸濁液を形成する。
【0095】
実施例6:
A.フマル酸含有コア
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、53.6g)を激しく攪拌しながら90/10 190プルーフアルコール/水に4%固形分でゆっくり添加して溶解し、次いでフマル酸(482.1g)をゆっくり添加して溶解した。9インチボトムスプレーWursterインサート、10インチ分離カラムを備えるGlatt GPCG 5に3750gの25〜30メッシュ糖質球を充填した。形成物温度を約33〜35℃で、かつ、8〜60mL/分のスプレー速度を維持しながら、糖質球をフマル酸溶液で積層化した。酸コアを、ユニット内で10分乾燥して残存溶剤/水分を揮発し、40〜80メッシュを通して篩分けした。
【0096】
B.SRコーティングフマル酸コア
上述の手法に従って、上記の酸コア(3750g)を、95/5 アセトン/水中に溶解した90/10の比での177.6gのエチルセルロース(EC−10)および19.7gのトリエチルクエン酸(TEC)の溶液(7.5%固形分)で、5重量%の重量増加でコーティングした。
【0097】
C.塩酸オンダンセトロン二水和物IRビーズ
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、77.8g)を、激しく攪拌しながら50/50 190プルーフアルコール/水(4247.4gアルコール+4247.4g水、5%固形分)にゆっくり添加して溶解し、塩酸オンダンセトロン(402.8g)を攪拌しながらゆっくり添加して薬物を溶解した。SRコーティング酸コア(3500g)をGlatt GPCG 5中で薬物溶液でコーティングし、薬物積層化ビーズにPharmacoat 603の保護シールコーティング(約2%重量増加で80.5g)を提供し、Glatt中で乾燥して、IRビーズ(バッチサイズ:4028g)を形成した。
【0098】
D.塩酸オンダンセトロンSRビーズ
塩酸オンダンセトロンIRビーズ(3500g)を、90/10 EC−10/TECの溶液(7.5%固形分)をスプレーすることにより5重量%でバリアコーティング(SRコーティング)し、Glatt中で同一の温度で10分間乾燥して過剰な残存溶剤を揮発した。乾燥させたビーズをを篩分けし、形成されている場合にはいずれの二倍体も廃棄した。
【0099】
E.塩酸オンダンセトロンTPRビーズ
塩酸オンダンセトロンSRビーズを、60.5/25/14.5の比でのEC−10/HP−55/TECの遅延時間コーティング膜で、20重量%〜45重量%の重量増加でさらにコーティングした。TPRビーズをGlatt中で乾燥して残存溶剤を揮発し、30メッシュシーブを通して篩分けした。吸気密封(induction-sealed)HDPEボトル中にパッケージングしたTPRビーズをICHガイドラインに従い安定させて置いた。図7では、最高で6ヶ月にわたって安定性が増している(すなわち、40℃/75%RHで)TPRビーズで生じた薬物放出プロファイルが実証されている。表1は、本発明の製剤は物理的および化学的に安定であることを実証している。
【0100】
【表2】

【0101】
実施例7(比較例):
A.糖質球に積層化したカルベジロールIRビーズ
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、77.8g)を、激しく攪拌しながら、90/10 190プルーフアルコール/水(11667gアルコール+1296g水、6%固形分)にゆっくり添加して溶解し、カルベジロール(700g)を攪拌しながらゆっくり添加して薬物を溶解した。25〜30メッシュ糖質球(900g)をGlatt GPCG 3中で薬物溶液でコーティングし、薬物積層化ビーズにOpadry Clearの保護シールコーティング(34.2g、約2%重量増加)を提供し、Glatt中で乾燥してIRビーズ(バッチサイズ:1712g)を形成した。
【0102】
B.カルベジロールSRビーズ
カルベジロールIRビーズ(800g)を80/10 EC−10/TECの溶液(6%固形分)をスプレーすることにより15重量%でバリアコーティングし(SRコーティング)、Glatt中で10分間乾燥して過剰な残存溶剤を揮発する。5%、7.5%、および10%コーティングでサンプルを取る。乾燥したビーズを篩分けし、形成されている場合にはいずれの二倍体も廃棄する。5%および10%コーティングSRビーズでの溶出試験を行い、有機酸コアの組み込みの影響を実証する。
【0103】
C.粉末X線回折
粉末X線回折パターンを実施例6のフマル酸、カルベジロール、SRコーティングフマル酸ビーズ、カルベジロールIRビーズ、SRビーズ、およびTPRビーズについて生じさせる。これらのX線パターンの分析により、カルベジロールがギ酸塩としてではなく元の結晶状態でIRおよびTPRビーズに存在することが実証される。
【0104】
実施例8:
A.フマル酸含有コア
フマル酸含有コア(5.4重量%のフマル酸充填量)を上述の手法により調製した。
【0105】
B.SRコーティングフマル酸含有コア
上述のフマル酸コア(3750g)を、98/2 アセトン/水(6%固形分)中に溶解したEC−10および可塑剤としてのPEG400(B.1)(60/40の比)またはTEC(B.2)(90/10の比)の溶液で、10%の重量増加でコーティングした。
【0106】
C.塩酸オンダンセトロンIRビーズ
上記B.1およびB.2の塩酸オンダンセトロンIRビーズを、実施例3Cに開示したようにして調製した。薬物積層化ビーズにPharmacoat 603(ヒプロメロース2910;3cps)による保護シールコーティングを2%の重量増加で提供した。
【0107】
D.塩酸オンダンセトロンSRビーズ
塩酸オンダンセトロンIRビーズ(1080g)を、98/2 アセトン/水(7.5%固形分)中に溶解したEC−10および可塑剤としてのPEG400(D.1)(60/40の比)またはTEC(D.2)(90/10の比)の溶液をスプレーすることにより、10%の重量増加でバリアコーティング(SRコーティング)し、Glatt中で同一の温度で10分間乾燥して過剰な残存溶剤を揮発した。乾燥したビーズを篩分けし、形成されている場合にはいずれの二倍体も廃棄する。
【0108】
E.塩酸オンダンセトロンTPRビーズ
上記のD.1およびD.2の塩酸オンダンセトロンSRビーズを、90/10 アセトン/水(7.5%固形分)中に溶解した45.5/40/14.5(E.1−ロット番号1084−066)、50.5/35/14.5(E.2−ロット番号1117−025)、および60.5/25/14.5(E.3−ロット番号1117−044)の3つの比でのEC−10/HP−55/TECの遅延時間コーティング膜で、最高で50重量%の増加でさらにコーティングした。TPRビーズをGlatt中で乾燥して残存溶剤を揮発し、18メッシュシーブを通して篩分けした。図8は、3つの異なる比(E.1、E.2およびE.3)でのEC−10/HP−55/TECでコーティングしたTPRビーズからの塩酸オンダンセトロンについての放出プロファイルを示す。より具体的には、図8は、以下の製剤についての放出プロファイルを示す:
【0109】
(1)TPRビーズロット番号1084−066
60/40 EC−10/PEG400で10%でコーティングしたIRビーズに塗布された45.5/40/14.5の比でのEC−10/HP−55/TECの50重量%でのコーティングであり、IRビーズ(90/10 オンダンセトロン/PVPから積層化された5%薬物)は、60/40 EC−10/PEG400で10%でコーティングされたフマル酸コア(酸/Klucelから糖質球に4%で積層化される)を含む。
【0110】
(2)TPRビーズロット番号1117−025
90/10 EC−10/TECで10%でコーティングしたIRビーズに塗布された50.5/35/14.5の比でのEC−10/HP−55/TECの50重量%でのコーティングであり、IRビーズ(90/10 オンダンセトロン/Klucel LFから積層化された6%薬物)は、90/10 EC−10/TECで10%でコーティングしたフマル酸コア(酸/PVPから糖質球に積層化される)を含む。
【0111】
(3)TPRビーズロット番号1117−044
90/10 EC−10/TECで10%でコーティングしたIRビーズに塗布された60.5/25/14.5の比でのEC−10/HP−55/TECの50重量%でのコーティングであり、IRビーズ(90/10 オンダンセトロン/Klucel LFから積層化された6%薬物)は、90/10 EC−10/TECで10%でコーティングしたフマル酸コア(酸/PVPから糖質球に積層化される)を含む。
【0112】
実施例9:
A.試験製剤の概念実証
塩酸オンダンセトロンIRビーズ(PE364EA0001)およびTPRビーズ(30%の遅延時間コーティングを有するロット番号PE366EA0001、45%の遅延時間コーティングを有するロット番号PE367EA0001、および50%の遅延時間コーティングを有するロット番号PE368EA0001)を35%/65%の比でカプセル化して硬質ゼラチンカプセルとし、ヒトでのパイロットバイオアベイラビリティ研究のために市販のZofran(登録商標)8mg(オンダンセトロンとして)(bid(1日2回)投与)と比較されるMR(放出調節)カプセル16mg(ロット番号PF380EA0001、ロット番号PF381EA0001、およびロット番号PF382EA0001)(QD(1日1回投与))を作成した。
【0113】
B.ヒトPKの概念実証
7日間の休薬期間が与えられた18〜55歳の健常なボランティアである12人の白人男性を含む4アームクロスオーバーパイロットPOC(概念実証)研究を実施した。ボランティアの各々に、250mLの蒸留鉱水、単一の試験製剤(16mg)A(PF380EA0001)、B(PF381EA0001)、またはC(実施例4のPF382EA0001)を午前8時に投与するか、あるいはZofran(登録商標)(8mg)を一晩の絶食(少なくとも12時間)の後に午前8時および午後4時30分に2回投与し、昼食は午前11時に与えた。血液サンプルを、0(投与前)、20分、40分、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8.5時間(2回目の投与の前)、9時間10分、9.5時間、10時間、10.5時間、11.5時間、12.5時間、14.5時間、17時間、20時間、22時間、24時間、および36時間で採取した。図9は、達成された平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。該図により、試験製剤A(PE280EA0001)、B(PE281EA0001)、およびC(PE282EA0001)の血漿プロファイルが徐放性製剤に特徴的なものであること、すなわち、Zofranのものよりも明確な半減期が有意に長いことが実証される。試験製剤のAUCまたはCmaxは、Zofranのものから実質的に逸脱してはいない(すなわち、AUCはZofranの±25%以内であり、CmaxはZofranのおよそ70%である)。Zofran8mgについての実際のCmaxは、予期された24ng/mLに比して、30ng/mLであった一方で、IR成分についての実際のCmaxは、基準化したとき、約24ng/mLであった。Zofran8mg(1日2回(2回投与))のおよそ70%が24時間で吸収された。試験製剤A〜Cは、投与後から約15〜16時間でのクロスオーバー時点まで予期された傾向を示し、その後、式Cが、予期された挙動とは逆のより低い血漿濃度−時間プロファイルを継続して示した。
【0114】
実施例10:
A.SRコーティング酒石酸結晶
60〜100メッシュ酒石酸結晶を実施例2Bに記載のようにしてバリアコーティングした。
【0115】
B.カルベジロールIRビーズ(薬物充填量:40.9%w/w)
IRビーズを実施例5に記載のようにして調製する。
【0116】
C.カルベジロールSRビーズ
上記で得られたIRビーズを90/10 EC−10/TECで、5〜10%の重量増加でSRコーティングする。
【0117】
D.カルベジロールTPRビーズ
5%コーティングでコーティングしたカルベジロールSRビーズを50/35/15の比でのEC−10/HP−55/TECの遅延時間コーティングで、約30重量%以下の重量増加でコーティングする。
【0118】
E.カルベジロールCRカプセル、50mg
硬質ゼラチンカプセルにIRビーズ、SRビーズ(5%または10%コーティング)、およびTPRビーズ(30%コーティング)を35/40/25の比で充填する。
【0119】
これらの実証から、弱塩基性薬用の溶解剤として有機酸を組み込むことはpH依存性溶解度プロファイルを示し(すなわち、胃腸液への最大溶解度に比して、腸内pH6.8で約2桁の溶解度の低下を示す)、活性医薬成分の塗布前の酸の機能性コーティングは、遅延時間、緩衝剤の枯渇前の望ましいが完全な薬物放出プロファイルに対して有意な影響を有することが明らかである。さらに、活性医薬成分は、吸収のために消化管中に放出されるまで固体剤形中で形態を変えずに残留する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
図面の簡単な説明
【図1】(a)塩酸オンダンセトロン、(b)カルベジロール、(c)ジピリダモール、および(d)クロナゼパムについてのpH−溶解度プロファイルを示す。
【図2】本発明の一態様によるSRコーティング有機酸含有コアの断面を示す。
【図3】本発明の特定の態様によるSRコーティング有機酸含有コアを含むTPRビーズの断面を示す。
【図4】実施例1のEC−10/PEGの異なる比でコーティングしたSRコーティング酸結晶からのフマル酸の放出を示す。
【図5】実施例2EのTPRビーズからのジピリダモールの放出プロファイルを示す。
【図6】実施例5対比較例4BのカルベジロールTPRビーズの放出プロファイルを示す。
【図7】安定性に対するTPRビーズからの塩酸オンダンセトロンの放出プロファイルを示す(実施例5)。
【図8】EC−10/HP−55/TECの異なる比で50重量%でコーティングした実施例5のTPRビーズからの塩酸オンダンセトロンの放出プロファイルを示す。
【図9】実施例7の塩酸オンダンセトロン試験製剤(QD)およびZofran8mgの(BID)の血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの弱塩基性薬物の、即時放出(IR)ビーズ、徐放性(SR)ビーズの1つ以上の集団、および/または時限パルス型放出(TPR)ビーズの1つ以上の集団を含む医薬多粒子剤形であって、前記弱塩基性薬物が、約5〜14の範囲内のpKaおよびpH6.8で約200μg/mL以下の溶解度を有する薬学的に許容可能な窒素(N)含有治療剤および溶解剤としての少なくとも1つの薬学的に許容可能な有機酸を含み、前記弱塩基性治療剤および前記有機酸は、製造中または固体状態での保管において相互に接触することがなく、これにより、酸付加化合物のインサイチュ形成が回避され、2段階溶出媒体を用いる米国薬局方(USP)の溶出法(最初の2時間は0.1N HCl中で、続いてpH6.8での緩衝剤中での試験)によって溶出試験したときに、前記剤形からの前記薬物放出の完了まで前記有機酸が枯渇しない医薬多粒子剤形。
【請求項2】
前記弱塩基性薬物の至適最高投与量のpH6.8での溶解度に対する比が約100以上であり、少なくとも1つの薬学的に許容可能な有機酸により前記弱塩基性薬物が不適な腸管環境に放出される前に可溶化し、前記弱塩基性薬物が実質的に不溶性であり、前記剤形が1日2回または1回の投与計画に対してこのような投薬を必要とする患者で好適な目標薬物動態学的プロファイルを投与後12〜24時間で示す、請求項1に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項3】
a)前記TPRビーズが、前記SRビーズ上に塗布された、腸溶性ポリマーとの組み合わせで不水溶性ポリマーを含む外側遅延時間コーティングを含み、前記外側コーティングが薬物放出の開始前に約2〜約7時間の遅延時間を提供し、
b)前記SRビーズが、IRビーズを取り囲むSR(バリア)コーティングを含み、前記バリアコーティングが、単独であるいは水溶性ポア形成ポリマーとの組み合わせで、不水溶性ポリマーを含み、前記SR膜が徐放性プロファイルを提供し、
c)前記IRビーズが、バリア(SR)コーティング有機酸コア粒子に塗布された少なくとも1つの弱塩基性薬物を含み、
d)前記バリアコーティング有機酸コアが有機酸コア粒子を取り囲む内側バリアコーティングを含み、前記内側バリアコーティングが、単独であるいは水溶性ポリマーまたは腸溶性ポリマーとの組み合わせで不水溶性ポリマーを含み、前記内側バリアコーティングが徐放性プロファイルを提供し、および
e)前記有機酸コア粒子が前記弱塩基性薬物の溶解剤として機能する少なくとも1つの薬学的に許容可能な有機酸を含み、
ここで、弱塩基性薬物と有機酸との比が約5:1〜約1:10の範囲内にある、請求項1に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項4】
各々約30μm以下の平均粒径を有する崩壊剤および糖アルコールまたは糖類またはこれらの組み合わせを含む、400μm以下の平均粒径を有する易溶解性微粒剤をさらに含み、前記口腔内崩壊錠が、以下の特性:
i.1重量%未満の脆砕性、および
ii.多重コーティングビーズを含む滑らかな懸濁液を形成する、口腔内での唾液との接触から約60秒以内の崩壊時間
を示す、口腔内崩壊錠(ODT)の形態での請求項1に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項5】
前記TPRビーズが前記IRビーズ上のバリア(SR)コーティングを含まず、これにより、不適な腸管環境への可溶化薬物の放出が可能となり、該薬物は、1日1回の投与計画に対してこのような投薬を必要とする患者で好適であるために経口投与後に実質的に不溶性である、請求項3に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項6】
少なくともIRビーズ集団、第1のTPRビーズ集団、およびSRビーズ集団または第2のTPRビーズ集団を含み、IRビーズと第1のTPRビーズとSRビーズまたは第2のTPRビーズ集団との比が約10:90:0〜約40:10:50で変化する、請求項1に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項7】
約5〜14の範囲内のpKaおよびpH6.8で約200μg/mL以下の溶解度を有する前記弱塩基性窒素(N)含有治療剤が、鎮痛薬、抗けいれん薬、抗糖尿病薬剤、抗感染症薬剤、抗悪性腫瘍薬、抗パーキンソン病薬剤、抗リウマチ薬剤、心血管系薬剤、CNS(中枢神経系)興奮剤、ドーパミン受容体アゴニスト、制吐剤、消化器作用薬、精神治療剤、オピオイドアゴニスト、オピオイドアンタゴニスト、抗てんかん薬、ヒスタミンHアンタゴニスト、抗喘息薬剤、および骨格筋弛緩薬からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項8】
前記弱塩基性窒素(N)含有治療剤が、オランザピン、オンダンセトロン、塩酸オンダンセトロン、ジピリダモール、カルベジロール、ラモトリジン、オランザピン、クエチアピン、これらの薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項9】
前記有機酸が、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、シュウ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項10】
弱塩基性薬物と有機酸との重量比が約5:1〜1:10で変化し、1日1回の投与計画に好適な目標薬物動態学的プロファイルを提供する、請求項1に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項11】
前記有機酸コア粒子が:
i.有機酸結晶、
ii.有機酸およびポリマーバインダーでコーティングされた不活性粒子、または
iii.有機酸、ポリマーバインダー、および希釈剤/充填剤を含有し、回転粒状化、粒状化、押出球形化、または粒状化圧縮により調製されるペレットまたは微小錠剤
を含む、請求項3に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項12】
前記IRビーズが約85:15〜約99:1の薬物とバインダーとの比で高分子バインダーを含む薬物層を含み、前記高分子バインダーが、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コーンスターチ、アルファ化デンプン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項13】
前記粒子コアに、不水溶性ポリマーを単独であるいは約9:1〜5:5の比で水溶性ポリマーとの組み合わせで含む、バリア(SR)コーティングが提供され、前記バリアコーティングが、コーティングされたビーズの重量を基準にして約1.5%〜20重量%の重量増加で塗布される、請求項3に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項14】
前記粒子バリアコーティングが、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ酢酸ビニル、中性メタクリル酸−メチルメタクリレートコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される不水溶性ポリマーを含む、請求項11に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項15】
前記粒子コアに、単独であるいはメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物からなる群から選択される水溶性ポリマーとの組み合わせで不水溶性ポリマーを含むバリアコーティングが提供される、請求項11に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項16】
前記遅延時間コーティングが、不水溶性ポリマーを、腸溶性ポリマーとのそれぞれ約9:1〜1:3の比での組み合わせで、TPRビーズの重量を基準にして約10%〜60重量%の重量増加で含む、請求項3に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項17】
前記遅延時間コーティングが、不水溶性ポリマーを、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、pH感受性メタクリル酸−メチルメタクリレートコポリマー、セラック、これらの誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される腸溶性ポリマーとの組み合わせで含む、請求項14に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項18】
前記内側バリアコーティングおよび前記外側遅延時間コーティングの少なくとも1つが、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリ−n−ブチル、ジエチルフタレート、セバシン酸ジブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒマシ油、アセチル化モノグリセリドおよびジグリセリド、およびこれらの混合物からなる群から選択される可塑剤を含む、請求項3に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項19】
前記IRビーズが、剤形の経口投与後1時間以内に前記IRビーズに含有される活性成分の約50%以上を放出することによって充填投与量を提供する、請求項3に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項20】
前記IRビーズが、剤形のIR部分として組み込まれる場合、不活性コアに積層化された前記弱塩基性薬物およびポリマーバインダーを含む、請求項3に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項21】
前記弱塩基性薬物がカルベジロールまたはその薬学的に許容可能な塩を含み、各TPRビーズ集団が、約9:1〜約1:3の比での不水溶性エチルセルロースと腸溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートとの遅延時間コーティングで、50%以下の重量増加でコーティングされた徐放性コーティング酒石酸コアを含み、剤形の経口投与の際に、所定の遅延時間を示し、続いて異なる放出特徴を示す、請求項1に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項22】
前記弱塩基性薬物がオンダンセトロンまたはその薬学的に許容可能な塩を含み、各TPRビーズ集団が、約9:1〜約1:3の比での不水溶性エチルセルロースと腸溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートとの遅延時間コーティングで、50%以下の重量増加でコーティングされた徐放性コーティングフマル酸コアを含み、剤形の経口投与の際に、所定の遅延時間、続いて異なる放出特徴を示す、請求項1に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項23】
前記口腔内崩壊錠が、約5〜14の範囲内のpKaを有する弱塩基性窒素(N)含有治療剤またはその薬学的に許容可能な塩の味覚マスクされたIRビーズ集団、SRビーズ集団、および/または1つまたは2つのTPRビーズ集団を含み、徐放性コーティングフマル酸コアを含む各SRまたはTPRビーズ集団は、口腔中で容易に崩壊して、多重コーティングビーズの滑らかで嚥下が容易な懸濁液が形成され、1日1回または2回の投与計画に対してこのような投薬を必要とする患者で好適な目標薬物動態学的プロファイルを提供する、請求項1に記載の医薬多粒子剤形。
【請求項24】
約5〜14の範囲内のpKaおよびpH6.8で約200μg/mL以下の溶解度を有する弱塩基性窒素(N)含有治療剤および溶解剤としての少なくとも1つの薬学的に許容可能な有機酸を含む多粒子剤形を調製する方法であって:
a.有機酸コアを調製する工程、
b.有機酸コアを、ポリマーを含む、特に、不水溶性ポリマーを単独であるいは約95/5〜約50/50の比での水溶性ポリマーまたは腸溶性ポリマーとの組み合わせで含むバリアコーティングで、約20%以下の重量増加でコーティングすることにより、バリアコーティング有機酸コアを調製して、徐放性プロファイルを提供する工程、
c.ポリマーバインダー溶液から1つ以上の弱塩基性またはこれらの薬学的に許容可能な塩をバリアコーティング有機酸コアに積層化することにより、および任意選択により水溶性ポリマーで保護シールコーティングを塗布することによりIR(即時放出)ビーズを調製する工程、
d.単独であるいは約95:5〜約50:50の比での水溶性ポリマーとの組み合わせでの不水溶性ポリマーのバリア(SR)コーティングを、コーティングされたビーズの乾燥重量による約1.5%〜20%の重量増加で塗布することによりSRビーズを調製する工程、
e.不水溶性ポリマーを腸溶性ポリマーとの組み合わせで約9:1〜1:3の比で含む外側遅延時間コーティングを、コーティングされたビーズの約10%〜60重量%の重量増加で塗布することによりTPRビーズを調製する工程、および
f.IRビーズ、SRビーズ、および/または1つ以上のTPRビーズ集団の混合物を、1日1回の投与計画に対してこのような投薬を必要とする患者で好適であるような目標薬物動態学的プロファイル、1日2回または1回の投与計画に対してこのような投薬を必要とする患者で好適であるような薬物動態学的プロファイルを達成するために適切な量で、ゼラチンカプセルに充填するあるいは慣用の錠剤または口腔内崩壊錠に圧縮する工程
を含む方法。
【請求項25】
前記有機酸積層化、SRコーティング、薬物積層化、および外側遅延時間コーティングの各々が、薬学的に許容可能な溶剤系中の溶液または水性分散剤から塗布される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
以下の工程:
i.任意選択により、溶剤コアセルベーションまたは流動床コーティングのいずれかにより薬物含有ビーズを味覚マスクする工程、
ii.任意選択により、IRビーズ、SRビーズ、および/またはTPRビーズに可塑化ポリマーで圧縮性コーティングを提供して、圧縮中の膜破損をなくす/最小にする工程、
iii.各々約30μm以下の平均粒径を有する糖アルコールまたは糖類またはこれらの組み合わせおよび崩壊剤を粒状化して、約400μm以下の平均粒径を有する易分散性微粒剤を形成する工程、
iv.多重コーティングビーズおよび易分散性微粒剤を約1:6〜約1:2の多重コーティングビーズと微粒剤との比で混合する工程、および
v.この混合物を慣用の回転錠剤プレスで口腔内崩壊錠に圧縮する工程
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記圧縮工程が、外部潤滑システムを備える慣用の回転錠剤プレスを利用して、圧縮前にダイおよびパンチを潤滑する工程を含んでもよい、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記剤形が、治療有効量の弱塩基性窒素(N)含有治療剤のIRビーズ集団、SRビーズ集団、および/または1つ以上のTPRビーズ集団を含み、多重コーティングビーズ集団の各々が所定の遅延時間後に異なる放出特徴を示す、請求項22に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−524698(P2009−524698A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552613(P2008−552613)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/061237
【国際公開番号】WO2007/090091
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(507362111)ユーランド,インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】