説明

張力制御機能付巻上げ装置およびトロール曳網装置

【課題】ワイヤの張力を一定に保持し、且つワイヤの線長を一定に保持する、張力制御機能付巻上げ装置およびトロール曳網装置を提供する。
【解決手段】ワイヤ14を巻回したドラム12を回転させる正逆回転可能な液圧モータ42と、当該液圧モータ42に直結し作動油を供給する液圧ポンプ44と、当該液圧ポンプ44を回転駆動する電動機46とを備えた張力制御機能付巻上げ装置10であって、前記電動機46の負荷電流の変動に基づいて当該電動機46のトルクを制御し、前記ワイヤ14を繰り出しまたは巻き上げ、前記ワイヤ14の張力を設定値に保持する制御部32を具備するトロール曳網装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張力制御機能付巻上げ装置およびトロール曳網装置に係り、特にワイヤの張力を一定に制御する張力制御機能付巻上げ装置およびトロール曳網装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引き網を漁船で引き回して操業するトロール漁法がある。トロール漁法は船尾後方の両端部に設置した巻上げ装置のワイヤに拡網器具を介して魚網を接続し曳航する。魚網は網の開口面積を大きくすることにより魚類等の採取量を多くすることができるため、左右ウィンチから繰り出すワイヤの張力を調整する必要がある。
【0003】
図4に従来の巻上げ装置の構成概略を示す。図示のように、巻上げ装置1のドラム2から繰り出されたワイヤの先端には図示しない魚網が接続している。巻上げ装置1はドラム2を駆動する油圧モータ3と、この油圧モータ3に作動油を供給する油圧ポンプ4とを備え、前記油圧モータ3と油圧ポンプ4の油圧経路にはリリーフ弁5と制御弁6が設置されている。また、繰り出されたワイヤの途中には線長センサ7と張力センサ8が設置されている。
【0004】
このようになっている巻上げ装置1は、ワイヤの線長センサ7および張力センサ8の検出信号に基づいて図示しない制御部で適正な線長および張力となる制御信号が制御弁6に送られる。油圧モータ3へ作動油を供給する油圧ポンプ4は、リリーフ弁5でバイパスさせて作動油を吐出させることにより油圧調整を行い、張力および線長を制御している。
【0005】
また、特許文献1に示すトロール漁法では、左右のワイヤに作用する張力をほぼ同等に保持するためにワイヤに設置した各種のセンサが検出する情報に基づいて左右のワイヤに作用する張力の現在の状態を検出し、ウィンチの運転状態を調整して左右のウィンチに作用する張力をほぼ同等に保持するようにしている。このウィンチの運転状態の調整は具体的には、ウィンチに供給する油圧力をほぼ一定に保持するようにしている。すなわち、電磁リリーフ弁の圧力の増減調整によって基準油圧力を保持している。
【特許文献1】特開2000−201572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ワイヤの張力調整に電磁リリーフ弁を用いると、基準圧力に左右されることになる。例えば、ワイヤを巻き上げているときに、船舶の上下動(ヒービング)等、急に大きな負荷がワイヤに作用すると基準圧力を超える圧力がかかり、作動油はリリーフ弁を通りタンクにバイパスされてウィンチのドラムが逆転してしまう。そして、負荷がもとに戻るとドラムは通常の巻上げを開始する。そうすると、船舶の上下動等によりワイヤに弛みが発生し、ワイヤの伸びとともに船舶等の上下動または魚網の重み等の力が加わり、過剰の張力が働くことによってワイヤが切断してしまう場合がある。
【0007】
また、トロール漁の場合、ウィンチドラムがロックされていると漁船が魚群の位置を発見し進行方向を変更しようとすると、旋回方向のワイヤの張力が他方のワイヤの張力より低下することになり、トロール網に作用する張力のバランスが不均衡となるので、直進しかできない。
【0008】
さらに、漁船が魚網を曳航する際に、海底の岩塊等に根がかりしてワイヤに過剰な張力が作用した場合、通常のウィンチは巻上げドラムが回転しないようブレーキでロックしている。このため、ワイヤが切断されるか、船が転覆する等の事故が発生し、危険を伴っていた。また、潮流が変化したり、船速の変化等種々の曳網条件が複合的に変化する場合にも対応することができない。
【0009】
また、ウィンチから繰り出されるワイヤは細い線を束ね縒りをかけてあることと、巻き癖がついているため、張力が弱くなった瞬間にキンク(kink)現象が発生し切断の原因となってしまう。そのためにもキンクが生じないよう常に一定以上の張力を保つ必要がある。
そこで、上記問題点を改善するため、本発明はワイヤの張力を一定に制御することを目的としている。また、本発明はワイヤの線長を一定に保持することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る張力制御機能付巻上げ装置は、ワイヤを巻回したドラムを回転させる正逆回転可能な液圧モータと、当該液圧モータに直結し作動油を供給する液圧ポンプと、当該液圧ポンプを回転駆動する電動機と、前記電動機の負荷電流の変動に基づいて当該電動機のトルクを制御し、前記ワイヤを繰り出しまたは巻き上げ、前記ワイヤの張力を設定値に保持する制御部とを有することを特徴としている。
【0011】
この場合において、前記制御部は、線長センサの検出値の変動に基づいて、前記ワイヤを繰り出しまたは巻き上げ、線長を設定値に保持することを特徴としている。また、前記液圧ポンプは、二方向吐出固定容量型であり、前記電動機は、正逆回転可能なサーボモータであって、前記制御部は、前記サーボモータを介して前記液圧ポンプの作動油の吐出量と吐出方向と吐出圧を制御する、ことを特徴としている。
【0012】
また、ワイヤを巻回したドラムを回転させる正逆回転可能な液圧モータと、当該液圧モータに直結し作動油を供給する液圧ポンプと、当該液圧ポンプを吐出制御する吐出容量制御器と、前記液圧ポンプの負荷圧力の変動に基づいて前記液圧ポンプの吐出量を制御し、前記ワイヤを繰り出しまたは巻き上げ、前記ワイヤの張力を設定値に保持する制御部と、を有することを特徴としている。
【0013】
この場合において、前記制御部は、線長センサの検出値の変動に基づいて、前記ワイヤを繰り出しまたは巻き上げ、前記ワイヤの線長を設定値に保持することを特徴としている。また、前記液圧ポンプは、二方向吐出可変容量型であり、前記制御部は、前記液圧ポンプを制御して作動油の吐出量と吐出方向と吐出圧を制御する、ことを特徴としている。
【0014】
本発明に係るトロール曳網装置は、トロール網の左右のワイヤを巻回したドラムを回転させる正逆回転可能な液圧モータと、当該液圧モータに作動油を供給する液圧ポンプと、当該液圧ポンプを回転駆動する電動機とを備えたトロール曳網装置であって、前記電動機の負荷電流の変動に基づいて当該電動機のトルクを制御し、左右の前記ワイヤを繰り出しまたは巻き上げ、前記トロール網の左右の張力を設定値に保持する制御部と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
上記構成による本発明によれば、電動機の負荷電流の変動に基づいてトルクと比例関係にあるポンプ吐出量を制御して、ワイヤの巻き上げおよび繰り出しを行い、ワイヤの張力を一定に保つことができる。このため、これまで油圧ポンプの制御に用いてきた制御弁を用いる必要がなくなり、消費エネルギーを節約することができる。
【0016】
また、本発明は、油圧ポンプと油圧モータが直結しているため、応答性がよく、ワイヤに過剰な張力および弛みが生じることがない。したがって、トロール網を曳航する際に、キンクによるワイヤの切断を防止することができる。また、トロール船が旋回する場合でも、旋回側のワイヤに過剰な張力が生じることなく、一定の張力で旋回させることができる。
さらに、ワイヤに過剰な張力がかかると、自動的にワイヤを繰り出すことによって過剰の張力を低減し、電動機の逆転による電力を発生させて、その電力を抵抗で消費させることにより、ブレーキ作用をなすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る張力制御機能付巻上げ装置およびトロール曳網装置の実施形態を添付の図面に従って詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る張力制御機能付巻上げ装置の構成概略を示す図である。
【0018】
張力制御機能付巻上げ機10(以下、巻上げ装置という)は、図1に示したように、ワイヤ14を繰り出し、巻き上げる巻上げ機30と、巻上げ機30を制御する制御部32とを備えている。制御部32は、比較器34、サーボ増幅器40を有する。
【0019】
比較器34には、ワイヤ14の設定線長Vaおよび設定張力Vbが入力される。また、比較器34には、後述する線長計22の検出信号Vcおよび後述する電流検出器38の検出信号Vdがフィードバック信号として入力される。比較器34では、設定線長Vaと線長計22の検出信号Vcとの差を求めサーボ増幅器40に出力する。また、電流検出器38の検出信号Vdは設定張力Vbとなるようにサーボモータ46のトルクに換算しサーボ増幅器40に出力する。サーボ増幅器40は、設定線長Vaおよび設定張力Vbが得られるように巻上げ機30の駆動制御信号を出力する。もちろん図4の張力センサ8と同様に、ワイヤの張力を直接測定し、フィードバック信号Vdとしてもよい。
【0020】
一方、巻上げ機30は、ワイヤ14を巻回したドラム12と、ドラム12に直結されてドラム12を正逆回転させる油圧モータ(液圧モータ)42と、油圧モータ42に作動油を供給する液圧ポンプである二方向吐出固定容量型油圧ポンプ44と、油圧ポンプ44を回転させるサーボモータ46とを主な構成要素としている。
【0021】
サーボモータ46は、正逆回転可能になっており、サーボモータ46の回転方向と回転速度とが変化することにより、油圧ポンプ44の作動油の吐出方向と吐出量とが変化する。また、油圧ポンプ44は、一方の吐出口が管路48を介して油圧モータ42の一方の流入口に直結してあり、他方の吐出口が管路50を介して油圧モータ42の他方の流入口に直結してある。そして、油圧ポンプ44と油圧モータ42と管路48、50とは、閉回路を形成している。また、サーボモータ46は、図示しないモータ駆動回路に接続されており、このモータ駆動回路がサーボ増幅器40の出力信号に基づいて、サーボモータ46の回転方向と回転速度とを制御する。
【0022】
なお、管路48と管路50との間には、管路52が設けてある。この管路52には、一対のチェック弁54、56が対抗するように配設してある。これらのチェック弁54、56は、油圧ポンプ44および油圧モータ42の内部漏れによるドレン流出分を補うためのもので、両者の間が管路58を介してオイルタンク60に接続されている。また、油圧ポンプ46と油圧モータ42とは、固定減速比を持った減速機を構成している。
【0023】
ドラム12と繰り出されるワイヤ14を支持する滑車20との間には線長計22が設けてある。線長計22は、ドラム12が正逆方向に回転してワイヤ14を矢印28のように繰り出し、または巻き上げたときに、ワイヤ14の繰り出し長さを検出して制御部32に入力する。
【0024】
電流検出器38はサーボモータ46と油圧ポンプ44の間に接続して、サーボモータ46の出力電流を検出している。サーボモータ46はワイヤ14の張力によって負荷電流が変動する。そこで、サーボモータ46の負荷電流を検出して、その検出信号Vdを比較器34にフィードバックしている。
【0025】
このようになっている第1実施形態の巻上げ装置10の作用について以下説明する。船体が波によって上下方向に変動(ヒービング)、または、ワイヤ14の先端部に設けたトロール網が根がかり等の種々の原因によって、ワイヤ14に過剰の張力がかかったり、弛みが生じたりする。そこで、ワイヤ14の張力および線長を一定に保持する制御は、次のようにして行なわれる。
【0026】
まず、ワイヤ14に過剰の張力がかかった場合について説明する。制御部32の比較器34には、ワイヤ14を一定の張力に保持するため、設定張力Vbを入力する。ワイヤ14に過剰の張力がかかるとサーボモータ46の負荷電流が増大する。比較器34は設定張力Vbとなるように電流検出器38の検出信号Vdに基づいてサーボモータ46のトルクを換算しサーボ増幅器40に送出する。サーボ増幅器40は、ワイヤの過剰な張力を低減できるようなワイヤ14の繰り出しに対応した制御信号を、図示しないモータ駆動回路に出力する。
【0027】
モータ駆動回路は、サーボ増幅器40の出力信号に応じて例えば正方向に回転し、油圧ポンプ44の作動油の吐出方向と吐出量とを制御する。これにより、作動油が油圧モータ42に供給され、油圧モータ42が正方向に回転してドラム12を回転させる。ワイヤ14は、ドラム12の回転にほぼ比例し繰り出される。
サーボ増幅器40は、電流検出器38の検出信号Vdが設定張力と一致するようにサーボモータ46の駆動制御信号を出力する。
【0028】
そして張力のかかったワイヤ14によってワイヤ14がドラム12から繰り出されドラム12が回転する。回転した方向の油圧が上がりドラム12に直結した油圧モータ42も逆回転し、油圧モータ42に直結した油圧ポンプ44も逆回転する。そうすると油圧ポンプ44のサーボモータ46も逆回転し、サーボモータ46は発電機となりその発電した電気エネルギーがモータ駆動回路に逆流することになる。そして、この電気エネルギーを抵抗で消費させることによってブレーキ作用をなすことができる。また、その電力をブレーキ駆動回路に逆流させてもブレーキ作用をなすことができる。これにより、ワイヤ14に作用する過剰の張力の影響が除去され、設定張力Vbに保持される。
【0029】
一定張力に調整した後、線長計22は、ワイヤ14の繰り出し長さVcを検出して制御部32の比較器34にフィードバック信号として入力する。そして、比較器34は、設定線長Vaと線長計22との出力信号Vcに基づくフィードバック信号との差分をとってサーボ増幅器40に出力する。そうすると張力一定のまま、設定線長までワイヤ14が巻き上げられ、設定線長Vaに保持される。
【0030】
次にワイヤ14に弛みが生じた場合について説明する。ワイヤ14に弛みが生じると、ワイヤ14にかかる張力がなくなる。すなわちサーボモータ46の負荷が軽くなり負荷電流が減少する。そして、比較器34で設定張力Vbとなるように検出信号Vdに基づいてサーボモータのトルクを換算しサーボ増幅器40に送出する。サーボ増幅器40は、ワイヤの設定張力Vbを確保できるようなワイヤ14の巻き上げに対応した制御信号を、図示しないモータ駆動回路に出力する。
【0031】
モータ駆動回路は、サーボ増幅器40の出力信号に応じて例えば逆方向に回転し、油圧ポンプ44の作動油の吐出方向と吐出量とを制御する。これにより、作動油が油圧モータ42に供給され、油圧モータ42が逆方向に回転してドラム12を回転させる。ワイヤ14は、ドラム12の回転にほぼ比例し巻き上げられる。サーボ増幅器40は、電流検出器38の検出信号Vdが設定張力Vbを得られるまでサーボモータ46の駆動制御信号を出力する。
【0032】
これにより、ワイヤ14に弛みが生じた場合であっても、ただちに設定張力Vbが得られるまでワイヤ14の巻き上げが行われ一定の張力に保持される。一定張力に保持された後は、線長計22による測定線長Vcに基づくフィードバック信号が比較器34に入力されて、設定線長Vaとの差分をとってサーボ増幅器40に出力する。そうすると張力一定のまま、設定線長Vaまでワイヤ14が繰り出され、設定線長Vaに保持される。
なお、油圧ポンプの作動油の吐出方向を一方向とし、三方弁などによって油圧モータ42への作動油の供給を切替え、油圧モータ42を正逆回転させるようにしてもよい。
【0033】
図3は、第2実施形態の説明図である。なお、第1実施形態と同一の構成については同一の作用を成しその説明を省略する。この第2実施形態に係る巻上げ装置70は、巻上げ機の構造が図1に示した巻上げ機30と異なり、吐出容量制御部71を新たに付加している。すなわち、第2実施形態の巻上げ機72は、液圧ポンプが二方向吐出可変容量型油圧ポンプ74によって構成され、電動機が常に一方向に一定回転速度で回転している汎用の誘導モータ76によって構成してある。そして、二方向吐出可変容量型油圧ポンプ74は、本実施形態の場合、斜板ポンプから構成してあって、吐出容量制御部71に接続されている。この吐出容量制御部71は、サーボモータ46と固定容量ポンプ77と両ロッド液圧シリンダ78からなり、制御部32のサーボ増幅器40の出力信号に基づいて、斜板の傾斜方向と傾斜角度とを制御し、二方向吐出可変容量型油圧ポンプ74の作動油の吐出方向と吐出量とを制御する。また、二方向吐出可変容量型油圧ポンプ74と油圧モータ42とは、管路48、50によって直結されており、可変減速比を有する減速機、すなわち無段変速機を構成している。
【0034】
二方向吐出可変容量型油圧ポンプ74の吐出側の管路48と管路50との間には、管路49が設けてある。この管路49には一対のチェック弁57を介して圧力検出器80を備えている。一対のチェック弁57は管路48、50のいずれかの圧力が上がっても後述する圧力検出器80で検出できるようにしている。
【0035】
圧力検出器80は二方向吐出可変容量型油圧ポンプ74の圧力を検出している。二方向吐出可変容量型油圧ポンプ74はワイヤ14の張力によって付加圧力が変動する。そこで、二方向吐出可変容量型油圧ポンプ74の付加圧力を検出して、その検出信号Veを比較器34にフィードバックしている。
【0036】
このようになっている第2実施形態の巻上げ装置70は、誘導モータ76が一方向に一定回転速度で常時回転し、斜板ポンプ74を一定回転速度で一方向に回転する。そして、制御部32を構成しているサーボ増幅器40が、比較器34の出力信号に基づいて、必要とするワイヤ14の繰り出し速度または巻上げ速度が得られる二方向吐出可変容量型油圧ポンプ74の作動油の吐出方向と吐出量とに応じた信号を出力する。サーボ増幅器40の出力信号は、吐出容量制御部71に与えられ、吐出容量制御部71が二方向吐出可変容量型油圧ポンプ74の斜板の傾斜方向と傾斜角度とを制御する。これにより、二方向吐出可変容量型油圧ポンプ74から作動油が油圧モータ42に供給され、油圧モータ42が正方向または逆方向に回転し、ワイヤ14に作用する過剰な張力と弛みを相殺するようにワイヤ14の繰り出し、巻き上げを行なう。したがって、第2実施形態における巻上げ装置70においても、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
図2はトロール曳網装置の構成概略を示す図である。漁船等に設置するトロール曳網装置50は、船体後部左右の甲板11にそれぞれ張力制御機能付巻上げ装置10の一部を構成しているドラム12を回転自在に2台設置している。ドラム12には、ワイヤ14が巻回してある。ワイヤ14の先端は回転自在に取り付けた滑車20に導かれ、滑車20から後方の海中に伸長している。さらに、2本のワイヤ14の先端は、トロール網16の端部に左右の拡網器具(オッターボード)18を介して接続している。そして2台の張力制御機能付巻上げ装置10はそれぞれ図1に示す構成である。張力制御機能付巻上げ装置10の制御部32は電動機の負荷電流の変動に基づいて電動機のトルク制御を行い、左右のワイヤ14の張力および線長を制御している。
【0038】
これにより、トロール網16を曳航する船舶が旋回するとき、旋回側のワイヤ14に過剰の張力が作用しても、旋回側の巻上げ装置10はワイヤ14の張力を設定張力に保持して、トロール網16左右の張力のバランスを維持することができる。
なお、トロール曳網装置50の張力制御機能付巻上げ装置10は第2実施形態の二方向吐出可変容量型油圧ポンプ74を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態に係る張力制御機能付巻上げ装置の構成概略を示す図である。
【図2】本発明のトロール曳網装置の構成概略を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る張力制御機能付巻上げ装置の詳細説明図である。
【図4】従来の巻上げ装置の構成概略を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1………巻上げ装置、2………ドラム、3………油圧モータ、4………油圧ポンプ、5………リリーフ弁、6………制御弁、7………線長センサ、8………張力センサ、10………張力制御機能付巻上げ装置、12………ドラム、14………ワイヤ、16………トロール網、18………拡網器具(オッターボード)、20………滑車、22………線長計、30………巻上げ機、32………制御部、34………比較器、38………電流検出器、40………サーボ増幅器、42………油圧モータ(液圧モータ)、44………油圧ポンプ、46………サーボモータ、50………トロール曳網装置、60………オイルタンク、71………吐出容量制御部、74………二方向吐出可変容量型油圧ポンプ、76………誘導モータ、77………固定容量ポンプ、78………両ロッド液圧シリンダ、80………圧力検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを巻回したドラムを回転させる正逆回転可能な液圧モータと、当該液圧モータに直結し作動油を供給する液圧ポンプと、当該液圧ポンプを回転駆動する電動機と、前記電動機の負荷電流の変動に基づいて当該電動機のトルクを制御し、前記ワイヤを繰り出しまたは巻き上げ、前記ワイヤの張力を設定値に保持する制御部とを有することを特徴とする張力制御機能付巻上げ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の張力制御機能付巻上げ装置において、
前記制御部は、線長センサの検出値の変動に基づいて、前記ワイヤを繰り出しまたは巻き上げ、線長を設定値に保持することを特徴とする張力制御機能付巻上げ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の張力制御機能付巻上げ装置において、
前記液圧ポンプは、二方向吐出固定容量型であり、
前記電動機は、正逆回転可能なサーボモータであって、
前記制御部は、前記サーボモータを介して前記液圧ポンプの作動油の吐出量と吐出方向と吐出圧を制御する、
ことを特徴とする張力制御機能付巻上げ装置。
【請求項4】
ワイヤを巻回したドラムを回転させる正逆回転可能な液圧モータと、当該液圧モータに直結し作動油を供給する液圧ポンプと、当該液圧ポンプを吐出制御する吐出容量制御器と、前記液圧ポンプの負荷圧力の変動に基づいて前記液圧ポンプの吐出量を制御し、前記ワイヤを繰り出しまたは巻き上げ、前記ワイヤの張力を設定値に保持する制御部とを有することを特徴とする張力制御機能付巻上げ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の張力制御機能付巻上げ装置において、
前記制御部は、線長センサの検出値の変動に基づいて、前記ワイヤを繰り出しまたは巻き上げ、前記ワイヤの線長を設定値に保持することを特徴とする張力制御機能付巻上げ装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の張力制御機能付巻上げ装置において、
前記液圧ポンプは、二方向吐出可変容量型であり、
前記制御部は、前記液圧ポンプを制御して作動油の吐出量と吐出方向と吐出圧を制御する、
ことを特徴とする張力制御機能付巻上げ装置。
【請求項7】
トロール網の左右のワイヤを巻回したドラムを回転させる正逆回転可能な液圧モータと、当該液圧モータに作動油を供給する液圧ポンプと、当該液圧ポンプを回転駆動する電動機とを備えたトロール曳網装置であって、
前記電動機の負荷電流の変動に基づいて当該電動機のトルクを制御し、左右の前記ワイヤを繰り出しまたは巻き上げ、前記トロール網の左右の張力を設定値に保持する制御部と、を有することを特徴とするトロール曳網装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−199398(P2006−199398A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10632(P2005−10632)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(390034588)株式会社鶴見精機 (6)
【出願人】(591038185)第一電気株式会社 (9)
【Fターム(参考)】