説明

強化された強度、弾性率及び破壊靭性を有するシートからステントを製造する方法

改良された強度、弾性率、及び破壊靭性を有するポリマーシートで設けられたポリマーステントを製造する方法が開示される。方法は、単数又は複数の軸に沿ってポリマーシートを延伸させるステップであって、延伸の軸に沿ってポリマーの強度、破壊靭性、及び弾性率を増大させるように構成された、ポリマーシートを延伸させるステップを備える。方法は、延伸されたシートからチューブ状のステントを形成するステップを更に備える。ステントはスライド‐ロック機構を含み、スライド‐ロック機構はステントが折り畳まれた直径から拡張された直径へ移行することを許容し、かつ拡張された直径からの径方向におけるリコイル(スプリングバック)を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー製の医療装置、詳細にはステントを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、体内の管腔への埋め込みに適した、径方向に拡張可能な内部人工器官に関する。「内部人工器官」は、体内に設置される人工のデバイスに該当する。「管腔」とは、血管などの管状器官の空洞を指す。ステントはそのような内部人工器官の一例である。ステントは、一般的に円柱状の形状をしたデバイスで、血管又は尿路及び胆管など他の解剖学的管腔の一セグメントを開いた状態に保持し、時には拡張するよう機能する。ステントは、血管中のアテローム硬化型狭窄の治療によく使用される。「狭窄」は、体内の導管又は開口部が狭小化又は収縮することを指す。そのような治療においてステントは、身体の血管を補強し、血管系における血管形成の後の再狭窄を阻止する。「再狭窄」は、一見して成功裏に(例えば、バルーン血管形成、ステントによる治療又は弁形成によって)治療を受けた後の、血管内又は心臓弁における狭窄の再発を指す。
【0003】
上記治療を行うための異なるタイプのいくつかのステントの設計が発明されている。一のクラスの設計は、ワイヤ、備蓄されたチューブ若しくは円筒状に巻いたシート材料から形成された、相互に連結した構造要素若しくはストラットのパターン又はネットワークを有するスキャフォールド(足場)から構成されるステントを含む。スキャフォールドという名の由来は、これが開状態を物理的に維持し、必要な場合に流路壁を拡張するからである。ステントスキャフォールドは、ステントを治療部位まで送達し、そこで拡張又は展開させることができる直径までカテーテル上に圧縮又は圧着される(加締められる)。かかる設計によるスキャフォールドの圧縮及び拡張は、構造要素の撓み(flexing)又は曲げ(bending)によって達成される。スキャフォールドの圧着(加締め)及び拡張は、一般的に撓んだ要素又は曲げられた要素の塑性変形を伴い、この塑性変形により、ステントを圧着された(加締められた)、又は拡張された状態(構成)に保持(維持)又は固定することを可能とする。
【0004】
他のタイプの設計において、ステントは巻き上げて設けられたシートから製造され、周方向において隣接して対向するモジュールを備える。モジュールは、長手方向において隣接するように設けられたスライド‐ロック・ラジアル要素(スライド及びロックするラジアル要素)を含み、スライド‐ロック・ラジアル要素は折り畳まれた(圧着された)直径から拡張された直径へとラジアル要素の一方向へのスライドを許容し、かつ拡張された直径からの径方向におけるリコイル(スプリングバック)を阻止するように構成される。スライド‐ロック・ラジアル要素は撓んだり、曲がったりすることができる。しかしながら、要素の撓み又は曲げを通じて圧縮及び拡張される上記ステントとは異なり、折り畳まれた直径から拡張された直径へのステントの拡張の間に、スライド‐ロック・ラジアル要素は実質的に塑性変形を必要としない。
【0005】
設計に拘わらず、治療部位までの送達は、カテーテルを用いて小開口部にステントを挿通させること、及び、治療部位までステントを輸送することを典型的に含む。展開は、ステントが所望の位置に置かれると、より大きな直径へステントを拡張させることを含む。ステントによる機械的介入は、バルーン血管形成術と比べて再狭窄の率を低下させた。しかし、再狭窄は依然として重要な課題である。再狭窄が、ステント留置区域で発生してしまった場合、バルーン単独で治療した病変部の場合に比べて臨床的オプションは一層限定されてしまうので、その治療は困難になるおそれがある。
【0006】
ステントは、機械的介入だけではなく、生物学的療法を行うためのビークル(乗り物)としても使用される。生物学的療法では、治療物質を局所的に投与するために薬剤入りステントが使用される。治療部位へ効果的に集中させるためには、逆効果的副作用、更には中毒性副作用を生じさせることが多い全身性の薬の投与が必要となる。局所送達は、全身性の方法よりも合計薬剤の投与レベルが低いが、特定部位に薬物を集中させるので、好ましい治療方法である。このように、局所送達は副作用が殆ど生じず、より優れた成果を達成する。
【0007】
薬剤入りステントは、開存性を提供するように設計された構造の表面を、活性又は生物活性のある薬剤又は薬物を含むポリマー担体でコーティングすることによって製造することができる。構造自体は、活性のある薬剤又は薬物の担体としても提供できる。
【0008】
ステントは、いくつかの機械的な必要条件を満たすことができなければならない。ステントは、構造上の負荷、即ち、ステントが血管の壁を支えることによりステントにかけられる径方向の圧縮力に耐えることができなければならない。したがって、ステントには適切な径方向の強度がなくてはならない。径方向における強度は、ステントが臨床的に重大な損傷を受けずに耐えることができる外部圧力を指す。更に、鼓動する心臓が誘発する周期的な負荷を含む、様々な荷重がステントにかかることになるが、ステントは、そのサイズ及び形状を耐用年数の間適切に維持するために十分な剛性を有するべきである。例えば、径方向の荷重はステントを内向きに後退(リコイル/スプリングバック)させてしまう傾向がある。更に、ステントは、圧着(加締め)、拡張及び周期的な負荷から生じる応力に起因する破壊に対する十分な靭性又は抵抗性を有するべきである。
【0009】
埋込可能な医療装置による治療のいくつかは、限定された期間のみ装置の存在を必要とする。一旦、構造的な組織の支持及び/又は薬物の送達を含む治療が完了すれば、ステントは治療位置(治療部位)から除去するか、消滅させるのが望ましい。装置を消滅させる1つの方法では、体内の条件への全体又は部分的な曝露を介して侵食されるか又は崩壊する材料から装置を製造することができる。このように、治療/療法(レジメン)が完了した後に、装置の侵食可能な部位を埋込領域から消滅又は実質的に消滅させることができる。崩壊プロセスが完了した後、装置の一部、又は装置の侵食可能な部位は残存しない。いくつかの実施の形態では、非常に僅かな痕跡又は残留物が残されていてもよい。生体吸収性ポリマー等の生体分解性、生体吸収性、及び/又は生体侵食性の材料から製造したステントは、臨床的に必要な期間が終了した後にのみ、完全に侵食されるように設計することができる。
【0010】
しかしながら、埋込可能な医療装置のための材料としてポリマーを用いることは、例えば、ステントをスライドさせること及びロックすること等において潜在的な欠点を有する。ポリマーステントがステントの臨床的及び機械的な要求をより満たすことができるように、かかる欠点に対処するステントのための製造工程又は材料の改質が必要である。
【発明の概要】
【0011】
本発明の多様な実施の形態では、軸に沿ってポリマーのシートを延伸させるステップであって、延伸により延伸の軸に沿ってポリマーの強度、破壊靭性及び弾性率を増大させるように、ポリマーシートを延伸させるステップと;延伸されたポリマーのシートからチューブ状のステントを形成するステップであって、ステントはスライド‐ロック機構を有し、スライド-ロック機構はステントが折り畳まれた(圧着された)直径から拡張された直径へ移行することを許容し、かつ拡張された直径からの径方向におけるリコイル(スプリングバック)を阻止するように、チューブ状のステントを形成するステップとを備える;ステントを製造する方法を含む。
【0012】
本発明の更なる実施の形態では、ポリマーのシートを加熱してポリマーのシートの延伸を可能とするステップと;軸に沿ってポリマーのシートを延伸するステップであって、延伸がポリマーの強度、破壊靱性及び弾性率を増大させるように、ポリマーのシートを延伸するステップと;変形したポリマーのシートをターゲット温度未満まで能動的に冷却するステップであって、延伸された状態又は延伸された状態に近い状態で前記ポリマーのシートを安定化させるように、変形したポリマーのシートを能動的に冷却するステップと;前記冷却するステップの後に、変形したポリマーのシートからステントを製造するステップとを備える;ステントを製造する方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1Aは、部分的に拡張された状態にあるスライド‐ロック設計によるステントを示す図である。
【図1B】図1Bは、拡張した状態にある図1Aのステントを示す図である。
【図1C】図1Cは、図1A及び図1Bにおけるステントのスライド‐ロック・ラジアル要素を示す図である。
【図2】図2は、ポリマーシートから形成したステントの延伸の軸と円筒軸との間の関係を説明するためのx‐y座標面を表す図である。
【図3A】図3Aは、引張力によるシートの延伸を表す図である。
【図3B】図3Bは、図3Aにおける延伸された状態のシートから形成されたステントの軸方向を投影して表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の多様な実施の形態は、ポリマーシートからのステントの製造に関する。詳細には、複数の実施の形態はスライド‐ロック(スライド及びロック)機構を備えるステントを製造する方法を含む。この製造方法は、要素が塑性変形を伴って曲がったり、撓んだりする、径方向における圧縮/拡張が可能なスキャフォールド設計、及びシートが高度に重なってそれ自体の上に巻かれるジェリーロール(ゼリーロール)設計等の他の設計により、シートからステントを製造する方法にも適用可能である。
【0015】
複数の実施の形態は、少なくとも1つの軸に沿ってポリマーシートを延伸又は変形するステップと、及び、延伸又は変形したシートからステントを形成するステップとを含む。本明細書で説明する方法は、全体的に、任意のポリマー製の埋込可能な医療装置に適用可能である。この方法は、自己拡張可能なステント、バルーンを用いて拡張することができるステント及びステントグラフト等のポリマーシートから形成することができる任意のチューブ形状の埋込可能な医療装置に適用可能である。
【0016】
スライド‐ロック機構を有し、スライド‐ロック機構により作動する拡張可能なステント、又は「スライド‐ロック(スライド及びロックする)」ステントは、周方向において隣接して対向するモジュールを含む。モジュールは、長手方向において隣接して設けられるスライド‐ロック・ラジアル要素(スライド及びロックするラジアル要素)を含み、スライド‐ロック・ラジアル要素は折り畳まれた直径から拡張/展開された直径へとラジアル要素の一方向へのスライドを許容する。スライド‐ロック・ラジアル要素は拡張した直径からの径方向におけるリコイル(スプリングバック)を阻止することができる。スライド‐ロックステントの設計は、例えば米国特許出願公開第20060136041号公報に記載されており、この記載は参照により本明細書に援用する。(一の)ラジアル要素は、例えば展開中に径方向において折り畳まれた状態から径方向において拡張した状態までステントが径方向における一方向の拡張を行う形態において、周方向において隣接する(他の)ラジアル要素と共にスライドして相互に連結される。(複数の)ラジアル要素は、ステントが体の通路内で展開後に拡張した直径で維持される(即ち、「ロックアウトされる」)ようにラチェッティング効果を提供するように構成される。
【0017】
スライド‐ロックステント(例えば、ラジアル要素)の構造は、ステントの拡張中に撓んだり、曲がったりすることができる。しかし、圧縮/拡張可能なスキャフォールドを有するバルーンを用いて拡張することができるステントとは異なり、要素の実質的な塑性変形は、折り畳まれた直径から拡張した直径へのステントの拡張の間に必要とされない。このタイプの要素は「非変形要素」と呼ぶことができる。したがって、「非変形要素」という用語は、全体として、ステントの展開(配置/送達)中にその原寸法(即ち、長さ及び幅)を実質的に維持する構造を意味することを意図する。
【0018】
スライド‐ロックステントは平らなシートから形成することができ、周方向において隣接する(複数の)ラジアル要素の係合を可能とするように巻くことができる。平らなシートは切断するか、機械(マシニング)加工するか、又はエッチング加工することで、スライド‐ロック機構のラジアル要素又は任意の他の構造を形成することができる。例えば、要素又は構造は、レーザー切断又は化学エッチング等の加工技術によりポリマーシート中に形成することができる。
【0019】
図1A及び図1Bは、例示のスライド‐ロックステント10の一部を示す図である。図1Aは部分的に拡張した状態のステント10を示し、図1Bは拡張した状態のステント10を示す。図1A及び図1Bに示すステントは、作動(即ち、撓み、曲げ等の)要素を用いずに拡張及びロックアウトを達成するスライド‐ロック(スライド・アンド・ロック)ステント装置である。スライド‐ロックステントには、非作動位置から作動位置へと偏移して拡張中にロックアウト歯を通過する一方で、再び戻る(バックする)ように構成された作動キャッチ部材を用いることもできる。
【0020】
図1A及び図1Bにおいて、周方向において隣接する2つのモジュール12’及び12’’は、長手方向においてオフセットして設けられたスライド‐ロック・ラジアル要素14’及び16’をモジュール12’が有し、スライド‐ロック・ラジアル要素14’’及び16’’をモジュール12’’がそれぞれ有するように設けられている。モジュールは、一般的に、その近位端部及び遠位端部に少なくとも2つのスライド‐ロック・ラジアル要素を有する。スライド‐ロック・ラジアル要素は、制御された展開を提供し、且つ径方向における圧縮に抗するスライド‐ロック機構を含むことから、機構的なラジアル要素と呼ぶこともできる。これらモジュールの実施の形態では、1つのモジュール毎に、2つ乃至8つ、又は2つ乃至4つのスライド‐ロック・ラジアル要素が設けられてもよい。
【0021】
図1A乃至図1Cに示すようないくつかの実施の形態では、長手方向においてオフセット(離間)してモジュールに設けられるスライド‐ロック・ラジアル要素は、図1A及び図1Bに示す2つの受動的なラジアル要素18のような、単数又は複数の受動的なラジアル要素により相互に連結されると共に分離されて設けられる。これらの受動的なラジアル要素はスライド‐ロック・ラジアル要素のように径方向において拡張するスライド‐ロック機構に寄与しないために、非機構的なラジアル要素と呼ぶことができる。いくつかの実施の形態では、受動的なラジアル要素が設けられない。他の実施の形態では、各々のスライド‐ロック・ラジアル要素の間に配置された1つ乃至8つの受動的なラジアル要素が設けられる。これらの受動的であって非機構的なラジアル要素を多くの異なる幾何学的構成で設計することにより、とりわけ、変更可能な可撓性、変更可能な径方向における強度、変更可能なスキャフォールド(管壁のカバレッジ)、及び/又は過剰拡張を阻止する安全キャッチを提供することができる。
【0022】
図1A及び図1Bに示すように、各々のスライド‐ロック・ラジアル要素上のタブ20(ここでは16’’上に示される)は、周方向において隣接するスライド‐ロック・ラジアル要素内のスロット22(ここでは16’中に示される)内にスライド可能に係合される。ステント10はその全周に1つ乃至8つ、2つ乃至6つ、又は2つ乃至4つの、周方向において隣接する複数のラジアル要素を含むことができる。
【0023】
図1Cは、ロックアウト歯、キャッチ、又はストップ24を有するスロット22を備えるスライド‐ロック・ラジアル要素14を示す図である。タブ20が、周方向において隣接するスライド‐ロック・ラジアル要素からスロット22内へスライド可能に係合される場合、タブ20はスロット22内を移動することができ、それにより図1Cに矢印26で全体的に示すように、画成された移動経路を通って移動する。ストップ24は周方向において互いにオフセット(離間)して設けられ、スロットの近位28及び遠位30の側面又は壁部に交互に配置される。移動経路は、図示のように実質的に周方向の軸に沿って配置することができ、あるいは移動経路が、周方向の軸と長手方向の軸との両方を横切るように設けてもよい。
【0024】
スライド‐ロックステントは、例えば図1A及び図1Bに示すものに類似した変形可能なラジアル要素14も含むことができる。スライド‐ロック・ラジアル要素14は変形する変形可能領域を含むことができ、材料の変形による径方向の軸に沿った拡張及び/又は収縮を許容ことができる。変形可能領域は、例えば、ジグザグ形状、U字形状、サーペンタイン(曲がりくねった)形状、ウェーブ形状、うねりを有する形状、及び角度(アングル)が付けられた形状の構成を含む様々な材料の構成を有するように設けることができ、また、変形可能領域を生じるように材料断面の変化を有することができる。
【0025】
埋込可能な医療装置は、その一部又は全部を生体分解性ポリマー、生体吸収性ポリマー、又は生体安定性ポリマーで製造することができる。埋込可能な医療装置の製造で用いられるポリマーは生体安定性、生体吸収性、生体分解性、又は生体侵食性であってよい。生体安定性とは、生体分解性ではないポリマーを指す。生体分解性、生体吸収性、及び生体侵食性という用語は互換可能に用いられ、血液等の体液に曝露された場合、完全に分解及び/又は侵食されることができ、体によって徐々に再吸収、吸収及び/又は除去され得るポリマーを指す。ポリマーの分解及び吸収のプロセスは、例えば加水分解及び代謝プロセスによって引き起こされる。
【0026】
生体分解性ポリマーで設けられたステントは、例えば、血管開通の維持及び/又は薬物送達というその意図された機能が完了されるまでの期間の間は、体内に残存することが意図される。分解、侵食、吸収、及び/又は再吸収のプロセスが完了した後では、生体分解性ステント又はステントの生体分解性の部分のいずれもが残存しないこととなる。いくつかの実施の形態では、非常に僅かな痕跡又は残留物が残されていてもよい。
【0027】
治療期間の長さは治療されている身体の疾患(不調)に依存する。疾患している血管中でのステントの使用を含む冠性心疾患の治療において、この期間は約数か月から数年となり得る。しかし、典型的には、約6か月、12か月、18か月又は2年までとなる。状況によっては、治療期間が延びて2年を超えることもあり得る。
【0028】
前述のように、ステントには径方向における高い強度、高い弾性率、及び高い破壊靭性等の特定の機械的要求が課せられる。こうした要求を満たすステントは、疾患している血管への送達、展開及び治療を十分に可能とする。不適切な機械的特性を有するポリマーステントは、血管への埋め込み後に、機械的損傷や内向きのリコイル(スプリングバック)をもたらす可能性がある。
【0029】
径方向における強度については、ポリマーの強度対重量比(比強度)は金属のそれ(比強度)よりも小さい。これを補うために、ポリマーステントは金属ステントよりも有意に厚いストラットを必要とし、それは望ましくないほど大きなプロファイル(断面積)を伴う。
【0030】
更に、それらが脆性破壊のメカニズムを示す可能性があるために、人体内の条件で剛性を有するポリマーが低い破壊靭性を有する可能性がある。例えば、これらは、摂氏約37度の人体の温度(Tbody)を超えるガラス転移温度(Tg)を有するポリマーを含む。かかるポリマーは、破損の前に塑性変形を殆ど又は全く示さない可能性がある。ステントにとって、ステントの使用範囲の全体(即ち、圧着(加締め)、送達、展開)に渡り、及び所望される治療期間中において、破壊に抗することが重要である。
【0031】
いくつかのポリマーが有する強度不足に対処する1つの方法は、変形したポリマーコンストラクトからステントを製造することである。変形したポリマーは、変形方向に沿って強度及び剛性が増加する傾向がある。発明者は、また、変形によりポリマーコンストラクト及びステントの破壊靭性が増加する傾向があることを観察した。一概に限定するものではないが、強度及び弾性率の増加は、変形の軸又は方向に沿うポリマー鎖の整列又は好ましいポリマー鎖の配向に起因する。
【0032】
本発明の特定の実施の形態では、延伸又は変形したポリマーシートからスライド‐ロックステントを製作するステップを含む。かかる実施の形態では、ポリマーシートは単数又は複数の軸に沿って延伸することができる。ステントは延伸されたシートから、又はより一般的には、延伸されたシートの矩形の一部から形成することができる。延伸されたシート又はその一部を、周方向おいて対向して隣接する複数のスライド‐ロック・モジュールを形成するように切断又は機械(マシニング)加工することができる。スライド‐ロック・モジュールの形成に際し、シートをチューブの形態に巻くことができ、減少させた直径又送達用の直径にステントを確保するように、対向する両モジュールを係合する。
【0033】
いくつかの実施の形態では、シートを、延伸軸に沿って塑性変形させることができる。代替として、シートは弾性的に延伸されてもよい。
【0034】
更に、チューブは、チューブの円筒軸が延伸軸に対して平行、垂直、又は平行乃至垂直の間の角度を有するように形成されてもよい。特に、延伸軸が円筒軸に対して垂直又は実質的に垂直であるように、ステントを形成する場合、ステントの径方向における強度を最大化することができる。
【0035】
シートの延伸度は歪み(ε)、(L/L)により定量化することができ、式中、Lは元(延伸前)の長さであり、Lは延伸された長さである。代替として、延伸度をパーセント延伸、即ち、(ε−1)×100%として表現することもできる。例示の実施の形態では、パーセント延伸は、0乃至100%、100乃至300%、300乃至500%、又は500%を超える。
【0036】
更なる実施の形態では、ステントは少なくとも1つの追加された軸に沿って延伸されたシートから形成することができる。特に、シート及びシートから形成されたステントが2軸配向を有するように、ステントは2つの軸に沿って延伸されたシートから形成することができる。2つの異なる軸が互いに成す相対的な角度は任意に設けることができる。特定の実施の形態では、2つの延伸軸は垂直に設けられる。かかる実施の形態では、ステントの円筒軸に対して1つの延伸軸は平行に設け、1つの延伸軸は直角に設けて、ステントを形成してもよい。更に、複数の軸に沿う延伸度又は歪みは同じに設けても、異なるように設けてもよい。
【0037】
図2は、シートから形成したステントの延伸の軸42と円筒軸44との間の関係を説明するためのx‐y座標平面40を示す図である。例えば、延伸の軸と円筒軸との間の角度46を有する延伸シートからステントを形成することができる。
【0038】
一の実施の形態では、ポリマーのシート又はフィルムは、テンタ(幅出し機)を用いて1つの軸又は2つの軸に沿って延伸することができる。テンタでは、延伸は一般的にはボックスの内部で行われる。シートは、少なくとも1つの軸に沿って引張力又は引抜き張力を与えるテンタ‐フックによりいずれかの側面で把持される。ボックスの内側の温度を制御してもよい。
【0039】
図3Aは、張力51によるシート50の延伸を表す図である。シート50は、引張力51に平行な軸52に沿って延伸又は伸長させることができる。引張力51によりシート50が延伸軸52に沿って延伸する。シート50の長さは、延伸前においてL1であり、延伸後においてL2である。引張力51及びその結果として得られるシート50の延伸により、シート50の幅はW1からW2へ減少する。図3Bは、延伸後にシート50から形成されたステント57の軸方向を投影して表す図である。ステント57は、延伸軸52に対して相対的に角度59を成す円筒軸58を有する。
【0040】
一の実施の形態では、シートを延伸するための引張力は、所望される延伸度を達成するように選択することができる。引張力は時間の経過と共に一定としても、可変としてもよい。一の実施の形態では、一定の延伸率又は一定の歪み率のいずれかをもたらすように、引張力を調節してもよい。
【0041】
様々なポリマーを使用して、本明細書に記載されるようなステントを製造することができる。これらのポリマーには、半結晶性ポリマー及び非晶性ポリマーが含まれる。更に、ステントは部分的に架橋された非晶性ポリマーから製造することができる。ポリマーシートは、延伸するステップの前に低い架橋度で架橋されたポリマーから形成することができる。あるいは、ポリマーシートは延伸中又は延伸後に架橋することができる。ポリマー及び加工の条件は、延伸により誘導されたポリマーの配向を安定化し、破壊靭性を高め又は最適化するように選択される。
【0042】
一般的に、製造方法は、変形を促進又は可能とするためにポリマーシートを環境(周囲)温度を超えて加熱するステップと、加熱したシートを変形させるステップと、及び配向させたポリマー構造を安定化するように構成された、変形したシートを冷却するステップとを含む。一の実施の形態では、シートは、Tbody(人体の温度)を超えるTg(ガラス転移温度)を有する半結晶性ポリマーから製造される。Tg(ガラス転移温度)未満の温度におけるポリマー鎖の流動性の欠如は、加工後及び患者への埋め込みに際して、ポリマー構造を安定化する。人体内の条件でステントの十分な安定性を確保するためには、Tg(ガラス転移温度)をTbody(人体の温度)よりも少なくとも摂氏10度、摂氏20度又は摂氏30度高く設けるべきである。
【0043】
他の実施の形態では、シートはTbody(人体の温度)を超えるTg(ガラス転移温度)を有する非晶性ポリマーにより設けられ、誘導されたポリマー構造は、また、Tg未満におけるポリマー鎖の流動性の欠如に起因して安定化される。他の実施の形態では、ステントが架橋されたポリマーから製造される場合に、この架橋により、加工及び埋め込み後のポリマー構造を安定化させる。架橋は、ポリマーの全体に渡って一様に分布させることができる。架橋ポリマーを用いるいくつかの実施の形態では、ポリマーのTg(ガラス転移温度)がTbody(人体の温度)を超えるように設けられ、ポリマー鎖の流動性の欠如及び架橋の両方により、ポリマーの誘導された配向を安定化する。
【0044】
例示する半結晶性ポリマーは、ポリ(L−ラクチド)、ポリグリコリド(PGA)、ポリマンデリド(PM)、ポリ(4−ヒドロキシ酪酸)(PHB)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(L−ラクチド−コ−カプロラクトン)を含む。例示する非晶性ポリマーは、ポリ(DL−ラクチド)(PDLLA)、及びポリ(DL−ラクチド−コ−カプロラクトン)を含む。PLLA、PM、PGA、PDLLA及びPLGAはTbody(人体の温度)を超えるTg(ガラス転移温度)を有する。更に、以下のチロシン誘導体ポリカーボネートの各々(ポリ(DTEカルボナート)及びポリ(DTBカルボナート)及びポリ(DTHカルボナート)及びポリ(DTOカルボナート)及びポリ(DTBzlカルボナート))は、Tbody(人体の温度)を超えるTg(ガラス転移温度)を有する非晶質ポリマーである。「Polymeric Materials Encylopedia」、J. Salamone編、CRC Press、9巻、7280ページ(1996年)。
【0045】
Tbody(人体の温度)を超えるTg(ガラス転移温度)を有するシート状に形成されたポリマーを用いる実施の形態では、ポリマーシートは、シート状に形成されたポリマーのガラス転移温度(Tg)を超える、融解温度(Tm)未満の温度で延伸される。一般に、ポリマーの温度がそのTg(ガラス転移温度)を超えると、ポリマーは脆弱なガラス質の状態から変形可能な固体又は延性を有する状態へ転換する。この延性を有する状態において、ポリマー鎖は、延伸又は変形方向に沿って優先的に再配向させる十分な運動の自由度を有する。変形のためのターゲット温度は、Tg(ガラス転移温度)を少なくとも摂氏5度、摂氏10度、摂氏20度又は摂氏30度超える温度、即ち、Tg(ガラス転移温度)よりも摂氏30度を超える(高い)温度とすることができる。ポリマーシートは様々な方法で加熱することができる。例えば、暖めた気体(例えば、空気、窒素、アルゴン等)をノズルによりシートへ吹きつける、シートを加熱プレートの間に配置する、又はオーブン内で加熱する、ことができる。
【0046】
シートの空間的に一様な機械的特性を得るために、シートを一様に又は略一様に加熱することは一般的に好ましい。上記の加熱法は、ポリマーシートの一様な加熱を行う目的で適合させることができる。例えば、一様な加熱は暖めた気体を吹きつける細長いノズルで行うことができる。細長いノズルをシートの一の次元の長さに沿って延在させて設け、他の次元に沿ってシートの表面の上方で素早く平行移動させるものとしてもよい。更に、シートの表面に隣接して設けた加熱プレート又はオーブン内での加熱は、一様な加熱を提供することができる。
【0047】
シートを伸ばす張力をかける前にターゲット温度までシートを加熱してもよい。変形中及び変形後に加熱を継続してもよい。いくつかの実施の形態では、シートをターゲット温度又は他の温度に維持しながら、延伸後のターゲットとする伸びを、張力下で保持することができる。
【0048】
前述のように、シートはターゲットとする伸びまで延伸した後にTg(ガラス転移温度)未満に冷却される。Tg未満への冷却は誘導された配向を安定化し、それは改良された機械的特性を与えるものと考えられる。シートは、典型的には、レーザー加工等の更なる加工ステップの前に室温又は環境(周囲)温度(即ち、摂氏20度乃至摂氏30度)まで冷却される。いくつかの実施の形態では、延伸されたシートを環境(温度)の条件下で受動的に冷却してもよい。
【0049】
あるいは、延伸したシートを環境温度未満の低温の媒体(冷媒)へ曝露することによって能動的に冷却してもよい。例えば、ノズルでシート上に低温の気体を吹きつけることができる。低温の気体は摂氏10度、摂氏0度又は摂氏−10度(摂氏マイナス10度)未満とすることができる。いくつかの実施の形態では、延伸したシートをTg(ガラス転移温度)未満まで急冷又はクエンチングする。例えば、延伸したシートを5乃至30秒未満でTg未満まで冷却することができる。延伸したシートのクエンチング又は急冷により、誘導されたポリマー配向の損失を減少又は防止することができる。
【0050】
更に、半結晶性ポリマーで設けられたシートにとって、熱及び変形の履歴は、破壊靭性を高めるために特に重要である。複数の実施の形態では、延伸されたシート及びそれから形成されるステントの破壊靭性を高めるように熱及び変形の履歴が制御されたポリマーシートの変形を含む。
【0051】
一般的に、半結晶性ポリマーが結晶する場合、2つの個別の事象が発生する。第1の事象は、非晶性ポリマーマトリックス中における核の形成である。第2の事象は、これらの核の周囲での結晶子(結晶)の成長である。それゆえ、ポリマーの結晶化の全体的な速度は、ポリマーマトリックス中における核の平衡濃度と、これらの核の周囲の結晶子(結晶)の成長の速度とに依存する。
【0052】
半結晶性ポリマーは、融点未満の温度で非晶性ドメイン(非晶性領域)及び結晶性ドメイン(結晶性領域)の両方を含有することができる。一般に、結晶化はポリマーのTg(ガラス転移温度)とTm(融解温度)との間の温度のポリマーにおいて生じる傾向がある。核形成及び結晶子(結晶)成長の速度の両方は、Tg(ガラス転移温度)においてゼロから増加し、最大値に到達し、次いでTmにおいてゼロまで減少する。結晶子(結晶)成長のプロセスがはるかに広範囲のポリマー鎖の流動性を必要とするので、Tg(ガラス転移温度)を超える、Tm(融解温度)よりもはるかに低い温度では、核形成が結晶子(結晶)成長よりも実質的に起こりやすい。しかしながら、Tg(ガラス転移温度)を超える、高温の、Tm(融解温度)未満の温度では、結晶子(結晶)成長は核形成よりも起こりやすい。挙動の結果としては、高温では比較的少数の大きな結晶子(結晶)が形成される一方で、低温では比較的多数の小さな結晶子が形成されることとなる。
【0053】
大部分の半結晶性ポリマーは静止状態からゆっくりと(緩慢に)結晶するが、材料を大きく(強く)変形させる場合には一桁分速く結晶する。これらの変形は、Tg(ガラス転移温度)を超えるTm(融解温度)未満での加工の特性である。かかる結晶化は物理学における歪み誘起性(又は流動誘起性)結晶化と称される。Liedauer等,「Int. Polym. Proc. 8」, 236−244ページ(1993年);Kumaraswamy等,「Macromolecules 35」, 1762−1769ページ(2002年)参照。
【0054】
ポリマーの破壊靭性に影響を及ぼし、結晶度に関連する複数のパラメータが存在する。破壊靭性は結晶子(結晶)密度に正比例し、結晶子(結晶)サイズに反比例する傾向がある。その結果、ポリマーが比較的小さなサイズの結晶子(結晶)で比較的高い結晶子(結晶)密度を有する場合、破壊靭性は特に強化又は改良される。例えば、約50nm未満の結晶子サイズ(層状結晶の厚み)が望ましい。したがって、Tg(ガラス転移温度)に近い、より低い温度では、核形成速度が結晶子成長速度より速いので、延伸中はシートの温度をこの範囲とすることが好ましい。
【0055】
更に、結晶(化)度の度合は破壊靭性にも影響する。高すぎる結晶度は所望されない破壊靭性の低下及び脆性挙動をもたらす。得られる結晶度は、温度及びシートが結晶化の温度範囲(即ち、ガラス転移温度Tgと融解温度Tmとの間)にある時間に依存する。
【0056】
変形プロセスの多様な加工変数が存在し、これらの変数は変形されたシートの破壊靭性及び他の特性に影響を及ぼすことができる。変数には、変形温度、変形温度で変形されるまでシートが加熱される時間(加熱時間)、変形時間又は初期状態から最終的な延伸状態へシートを延伸する時間、シートの最終的な延伸状態への到達と能動的な冷却の開始との間の遅延時間(冷却遅延)、並びにシートの能動的な冷却の期間(能動的冷却時間)、及び能動的な冷却によりTg(ガラス転移温度)未満までシートを冷却する時間(Tg冷却時間)を含む。典型的な実施の形態では、能動的冷却時間はTg冷却時間よりも長くてもよい。
【0057】
「能動的な冷却」は、シートの温度の低下をもたらす環境(周囲)温度未満の条件へのシートの曝露を介して冷却するステップをいう。受動的な冷却は環境(周囲温度)条件へのシートの曝露を介してのみシートが冷却されるステップを含む。冷却遅延の間に、シートは受動的に冷却されるか、又は環境(周囲)温度への、又は環境(周囲)温度を超える温度へのシートの曝露を介してシートの温度を低下させることができる。あるいは、シートの加熱は、冷却遅延の内のいくらか又は全ての間に継続してもよい。
【0058】
シートの破壊靭性は、変形温度、変形時間、加熱時間、冷却遅延、Tg冷却時間、及び能動的冷却時間のパラメータに依存すると考えられる。変形されたシートの所望の、又は最適な破壊靭性、弾性率、及び径方向における強度を得るために、パラメータを調整することができる。いくつかの実施の形態では、高い破壊靭性を達成するパラメータの値は、パラメータの様々な値についての破壊靭性に関連する特性の測定及び評価によって決定することができる。例えば、シートの試料の破断時の伸び又はシートから製造されたステントの展開後の割れの数によってパラメータの様々な値を測定(及び評価)することができる。
【0059】
変形温度は、シートが延伸されるときのシートの温度を指す。いくつかの実施の形態では、変形温度を延伸中に変えることができる。半結晶性ポリマーの高い破壊靭性は、比較的低い変形温度(例えば、Tg(ガラス転移温度)を超えたTgに近い温度)によって達成できる。例示の実施の形態では、変形温度又は範囲は、シートのポリマーのTg(ガラス転移温度)よりも摂氏2度未満だけ、摂氏2度乃至摂氏5度だけ、摂氏5度乃至摂氏10度だけ、あるいは摂氏10を超える温度だけ高い温度とすることができる。あるいは、変形温度又は範囲は、Tg+0.1×(Tm−Tg)乃至Tg+0.5×(Tm−Tg)の範囲とすることができる。更に、いくつかの実施の形態では、高い破壊靭性は、急速な加熱時間、短い冷却遅延、及び速いTg冷却時間によって達成することができる。例えば、PLLAで設けられた、又は本質的にPLLAから成るシートについては、変形温度は摂氏65度乃至摂氏100度の範囲とすることができる。
【0060】
前述のように、比較的急速な加熱時間により、高い破壊靭性を伴う変形されたシートの製造を可能とすることができる。急速な加熱時間は、シートの温度が、核形成及び(結晶)成長を引き起こす結晶化範囲にある時間量を減少するものと考えられる。加熱が緩慢(slow)すぎると、変形による歪み誘起性の結晶化と加熱による結晶度の増大とが合わさって、低い破壊靭性を有する脆いシートをもたらす。
【0061】
典型的には、ポリマーシートはTambient(環境温度/周囲温度)から加熱される。例示の実施の形態では、PLLAポリマーシートは、10秒未満、10乃至20秒、20乃至40秒、40乃至60秒、又は60秒を超えて、Tambient(環境温度/周囲温度)から変形温度まで加熱される。
【0062】
特定の実施の形態では、冷却遅延を少なく又は最小限にして、変形後の結晶度の更なる増加を減らすか又は解消することで、誘導されたポリマー鎖の配向を安定化又は凝結させる。いくつかの実施の形態では、シートが最終的な延伸状態に到達した直後又は僅かに後(1秒未満)に、変形されたシートの冷却が開始される。他の実施の形態では、冷却遅延は、機械的特性を改良する結晶度の更なる増大を可能とするように選択される。更に、冷却遅延の支援は、寸法不安定性(即ち、シートの形状の歪み)をもたらすポリマーにおける内部応力を軽減する(逃がす)ことができる。例示する冷却遅延は、2秒未満、5秒未満、10秒未満、又は10秒を超えてもよい。
【0063】
前述のように、ステントの製造に用いる延伸シートは、架橋ポリマーから製造することができる。本明細書で用いる場合、架橋は、一般的に、一のポリマー鎖を他のポリマー鎖に連結する化学的共有結合を指す。架橋されたポリマーは、ポリマーの大部分に渡って架橋を含む。ポリマー鎖が架橋によって一体として連結される場合、それらは個別のポリマー鎖として移動する能力の幾分かを失う。したがって、架橋は、ポリマーの配向した構造の弛緩を阻止又は防止する。
【0064】
架橋度は架橋又は架橋密度によって特徴づけることができる。架橋密度は、架橋部位の間の平均分子量(数平均又は重量平均)(Mc)として表すことができる。あるいは、架橋密度は、架橋点であるモノマー単位のモル分率(Xc)として表すことができる。「An Introduction to Plastics」, Hans−Georg Elias 第2版 Wiley (2003年)参照。架橋密度は、動的機械的分析(DMA)等の公知の方法によって決定することができる。
【0065】
特定の実施の形態では、ポリマーシートは、架橋されていない前駆体ポリマーから形成することができる。架橋されていないポリマーは、ポリマーシートの加工又は形成(例えば、押出加工)において遭遇したもの以外の条件(例えば、熱又は放射線)又は化合物(例えば、架橋剤)に曝されていない又は曝露されていないポリマーと対応させることができる。前駆体ポリマーは半結晶性ポリマーであっても、非晶性ポリマーであってもよい。前駆体ポリマーの架橋は、ポリマーシートの延伸中に、又はポリマーシートをターゲットとする歪みまで延伸した後に、又はその両方において誘導することができる。シートを延伸した後、架橋は、延伸によって誘導された配向したポリマー構造の弛緩を阻止又は防止する。かかる実施の形態では、前述のようにポリマーシートを加熱及び冷却することができる。
【0066】
架橋は、熱、圧力、又は放射線によって開始される化学反応によって形成することができる。放射線は、電子線、ガンマ線又は紫外線を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施の形態では、延伸中に、又はターゲットとする歪みへ到達すると同時に、又はその両方で、架橋を誘導するためにポリマーシートを放射線に曝露することができる。放射線によって誘導された架橋は、架橋剤によって引き起こすか、又は架橋剤によって促進することができる。架橋剤によるポリ乳酸の放射線架橋は、例えば、Mitomo, Hiroshi等、 「Polymer 46」 4695‐4703ページ (2005年)及びQuynh, Tran等、 「European Polymer Journal 43」 1779‐1785ページ (2007年)中に記載され、両方の記載とも参照により本明細書に援用する。放射線量、タイプ、及び架橋剤のモル(量)又は重量パーセントも架橋密度に影響を及ぼすことができる。放射線量は架橋密度に正比例する。
【0067】
他の実施の形態では、ポリマーシートを、延伸前に既に架橋を有するポリマーから形成することができる。例えば、延伸前にポリマーシートは、0.5%未満、1%未満、又は2%未満の架橋度を有することができる。これらの実施の形態では、架橋されたポリマーシートは延伸され、それは架橋されたポリマー鎖の配向を誘導する。次いで、架橋は、誘導された配向の弛緩を阻止又は防止することができる。いくつかの実施の形態では、更なる架橋は延伸中に、又はターゲットとする歪みまで延伸した後に、又はその両方において誘導することができる。いくつかの実施の形態では、前述のようにポリマーシートを加熱及び冷却することができる。
【0068】
強度、弾性率、及び破壊靭性等の機械的特性は架橋度又は架橋密度に依存する。架橋が増加するにつれて、ポリマーの剛性は高くなる。しかし、架橋度が増大するにつれて、材料は脆くなる。例示の実施の形態では、架橋度は、0.5%未満、又は1%未満、又は2%未満とする。
【0069】
更なる実施の形態では、シートから製造されたステントの破壊靭性を増大させるために、ナノ粒子をシート中に分散させることができる。本明細書で用いるとき、ナノ粒子は1ミクロンメートル未満の範囲のサイズの粒子を指す。かかる粒子のサイズの範囲は、800nm未満、500nm未満、200nm未満、又は100nm未満とすることができる。粒子は、シートの製造中に(例えば、押出加工中に)ポリマー内へ混合又は分散させることができる。粒子は体液への曝露に対して非侵食性であっても、侵食性であってもよい。
【0070】
材料の例示のクラスは、バイオセラミック粒子、金属粒子又は金属ファイバ、カーボンナノチューブ又はナノファイバ、及び量子ドットを含む。例示のバイオセラミック粒子はヒドロキシルアパタイト及びリン酸カルシウムを含む。金属粒子はマグネシウム、鉄及びタングステンを含むことができる。「量子ドット」は、励起子が3つの空間的次元の全てにおいて制限される半導体を指す。
【0071】
[定義]
本発明において、以下の用語及び定義を適用する。
【0072】
「ガラス転移温度」(Tg)は、大気圧下で脆弱なガラス状態から固体の変形が可能な又は延性のある状態に、ポリマーの非晶性ドメイン(非晶性領域)が変化する温度である。言い換えれば、Tgは、ポリマーの鎖中のセグメント運動の開始が起こる温度に対応する。非晶性ポリマー又は半結晶性ポリマーが温度上昇に曝されるとき、温度上昇につれて、ポリマーの膨張係数及び熱容量は両方とも増加し、分子運動の増加を示す。温度が上昇しても、サンプルにおける実際の分子容積は一定のままであり、そのため、より高い膨張係数は、システムと関連した自由容積の増大、それゆえ分子が移動する自由度の増大を示す。熱容量の増大は、移動を介する熱放散の増大に対応する。所与のポリマーのTgは加熱速度に依存し、ポリマーの熱履歴に影響を受ける。更に、ポリマーの化学構造は、流動性に影響することによってガラス転移に強く影響を及ぼす。
【0073】
「応力」は、平面内の小領域を通して作用する力におけるような、単位面積当たりの力を指す。応力は、それぞれ法線(ノルマル)応力及び剪断応力と呼ばれる、平面に対して垂直な(法線方向の/ノルマルな)成分及び平行な成分に分解することができる。引張応力は、例えば、伸び(長さの増大)をもたらす、負荷された応力の法線方向成分である。加えて、圧縮応力は、縮み(長さの減少)をもたらす、材料に負荷される応力の法線方向成分である。応力は、材料の変形(長さの変化を指す)をもたらすことができる。サンプルが応力を負荷される場合、「伸び」又は「縮み」は、材料のサンプルの長さの増大又は減少として定義することができる。
【0074】
「ひずみ」は、所与の応力又は負荷(荷重)において材料に発生する伸び(伸長)又は縮み(圧縮)の量を指す。歪みは、元の長さの割合又はパーセンテージ(即ち、元の長さで割った長さの変化量)として表すことができる。歪みは、それゆえ、伸び(伸張)が正であり、縮み(圧縮)が負である。
【0075】
「強さ(強度)」は、材料が破壊の前に耐え得る、軸に沿った最大の応力を指す。極限強度は、試験中に加えられる最大の負荷を当初の断面積で割って算出する。
【0076】
「弾性率」は、材料に加えられた単位面積当たりの力、即ち、応力の成分を、加えられた力により生じる、加えられた力の軸に沿った歪みで割った比率として定義される。例えば、材料は引張弾性率と圧縮弾性率との両方を有している。
【0077】
「引張強度」(材料が破壊する前に耐え得る最大の引張応力を指す)に到達するまで、材料に対する引張応力を増加させることができる。極限引張強度は、試験中に加えられる最大の負荷を当初の断面積で割って算出する。同様に、「圧縮強度」は軸方向に方向付けられた押圧する力に耐える材料の能力(容量)である。圧縮強度が限界に到達すると、材料は破壊する。
【0078】
「靭性」は、破壊の前に吸収されるエネルギーの量であり、即ち、ある材料を破壊するために必要な仕事量と等価である。靭性の1つの測定値は、ゼロ歪みから破壊歪みまでの応力‐歪み曲線下の面積である。この事例において靭性の単位は材料の単位体積当たりのエネルギーである。例えば、L. H. Van Vlack、「Elements of Materials Science and Engineering」、pp.270−271、Addison−Wesley(Reading,PA,1989年)を参照されたい。
【0079】
ステント等の埋込可能な医療装置を構成する構造又は基材は、生体分解性ポリマー若しくは生体分解性ポリマーの組み合わせ、生体安定性ポリマー若しくは生体安定性ポリマーの組み合わせ、又は生体分解性及び生体安定性ポリマーの組み合わせから完全に又は少なくとも部分的に製造することができる。更に、装置の表面のためのポリマーをベースとするコーティングは、生体分解性ポリマー若しくは生体分解性ポリマーの組み合わせ、生体安定性ポリマー若しくは生体安定性ポリマーの組み合わせ、又は生体分解性及び生体安定性ポリマーの組み合わせとすることができる。
【0080】
分解、侵食及び吸収、及び/若しくは再吸収のプロセスが完了した後、ステントの一部が残存しないこと、又は生体安定性のスキャフォールド上にコーティングを適用する事例では、ポリマーが装置に残存しないことは理解されるであろう。いくつかの実施の形態では、非常に僅かな痕跡又は残留物が残されていてもよい。生体分解性ポリマーで設けられたステントは、例えば、血管開通の維持及び/又は薬物送達というその意図された機能が完了されるまでの期間中は、体内に残存することが意図される。
【0081】
埋込可能な医療装置の製造に用いることができるポリマーの代表例は、ポリ(N‐アセチルグルコサミン(キチン)、キトサン、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリエステルアミド、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、コ−ポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸等)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレン及びエチレン−アルファオレフィンのコポリマー、ポリアクリレート以外のアクリルポリマー及びアクリルコポリマー、ハロゲン化ビニルポリマー及びハロゲン化ビニルコポリマー(ポリ塩化ビニル等)、ポリビニルエーテル(ポリビニルメチルエーテル等)、ポリハロゲン化ビニリデン(ポリ塩化ビニリデン等)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレン等)、ポリビニルエステル(ポリ酢酸ビニル等)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(ナイロン66(登録商標)及びポリカプロラクタム等)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、並びにカルボキシメチルセルロースを含むが、これらに限定されない。用いることができるポリ(乳酸)に基づく他のタイプのポリマーは、グラフトコポリマー、及びABブロック−コポリマー(「ジブロック−コポリマー」)又はABAブロックコポリマー(「トリブロック−コポリマー」)等のブロックコポリマー、又はその混合物を含む。
【0082】
ポリ(アミノ酸)は、それぞれのアミノ酸を細胞機構又は酵素機構によって分解できる広いクラスのポリマーである。かかるポリマーには、比較的低い分解温度のために加工が困難であるという短所がある。しかしながら、α−L−アミノ酸がエステル結合、カルボナート結合又はイミノカルボナート結合等の非アミド結合によって連結される、ポリ(アミノ酸)のクラスが開発されている。これらのポリマー系は「擬似」ポリ(アミノ酸)と称される。ポリマー骨格中の非アミド結合の存在は、擬似ポリ−(アミノ酸)の物理的機械的特性及び加工性を大幅に改良する。更に、ポリマーのビルディングブロックとして天然に存在するアミノ酸は、生物学的システム中へ遊離される分解産物の潜在毒性を減少させることができる。
【0083】
チロシン誘導体ポリカーボネート(埋込可能な医療装置の製造ための他の代表的なクラスのポリマー)は、擬似ポリ(アミノ酸)の具体的な実施例を表す。これらの分解性ポリマーはデスアミノチロシル−チロシンアルキルエステルの重合から誘導される。「J. of Appl. Polymer ScL, 63巻, 11」, pp. 1467−1479ページ参照。チロシン誘導体ポリカーボネートの合成において、L−チロシン及びその天然の代謝物質デスアミノチロシン[3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]をビルディングブロックとして使用して、デスアミノチロシル−チロシンアルキルエステルを形成する。次いでこれらのジフェノール酸モノマーを重合して、チロシン誘導体ポリイミノカルボネート、ポリカーボネート及びポリアリレートを得る。特に、チロシン誘導体ポリカーボネートは、ホスゲン又はビス(クロロメチル)カルボネートトリホスゲンの存在下でチロシンを重合することによって合成される。「Adv Biochem Engin/Biotechnol」(2006年),102:59参照。
【0084】
チロシン誘導体ポリカーボネートの代表的な構造は次のとおりである。
【0085】
【化1】

【0086】
Rが水素である場合、繰り返し単位は「DT」と称するデスアミノ−チロシル−チロシンである。ポリカーボネートのペンダント基(R)は、例えば、エチルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、オクチルエステル、及びベンジルエステルであってよい。対応するポリマーは、ポリ(DTEカルボナート)、ポリ(DTBカルボナート)、ポリ(DTHカルボナート)、ポリ(DTOカルボナート)及びポリ(DTBzlカルボナート)とそれぞれ称される。エチルペンダント基は、少なくともペンダント基が生体分解性ではない理由により好ましく、より短いペンダント基は体によって容易に及び安全に除去される。
【0087】
これらのポリマーの物理化学的性質はペンダントアルキルエステル鎖の変更によって調整することができる。これらの特性には、強度、剛性又は弾性率、Tg(ガラス転移温度)、及び疎水性が含まれる。
【0088】
チロシン誘導体ポリカーボネートは50乃至70Mpaの強度及び1乃至2GPaの剛性(即ち、弾性率)を有し、ポリ(DTEカルボナート)は最も高い強度と剛性を持つことが見出された。「Medical Plastics: Degradation Resistance and Failure Analysis」, Robert. C. Portnoy, William Andrews, Inc. (1998年)参照。ペンダント鎖の長さの増大は、強度及び剛性を低下させる傾向がある。
【0089】
ポリ(DTEカルボナート)は、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン及びポリオルトエステルよりも強度及び剛性が高い。しかし、ポリ(DTEカルボナート)は、PLLA(2.4乃至10GPa)又はポリグリコリド(6.5GPa)ほど剛性は高くない。同書参照。チロシン誘導体ポリカーボネートはPLLA(60乃至70MPA)及びPGA(60乃至80MPa)と同等の強度を有する。「Medical Device Manufacturing & Technology 2005」参照。
【0090】
ペンダント炭素鎖の長さが2乃至8の炭素原子へ増加する場合、チロシン誘導体ポリカーボネートのTg(ガラス転移温度)は摂氏93度から摂氏52度まで低下する。同書参照。一連の分解温度はペンダント鎖長に依存せず、摂氏293度を超える。同書参照。Tgと熱分解温度との間の広いギャップは、これらのポリマーを、押出、圧縮モールド成形、及び射出モールド成形を含む通常の高分子加工技術によって容易に加工可能とする。ポリマーは、その骨格中の芳香族基の存在に起因して、滅菌中に安定性を示すことも予想される。
【0091】
本発明の特定の実施の形態を示し、説明してきたが、本発明のより広い局面を逸脱しない限り、変更及び変形を施すことも可能であることは当業者にとって自明であろう。したがって、添付の請求項はその範囲において本発明の真の精神及び範囲に含まれる全ての変更及び変形を包含する。
【符号の説明】
【0092】
10 スライド‐ロックステント
12’ モジュール
12’’ モジュール
14 スライド‐ロック・ラジアル要素
14’ スライド‐ロック・ラジアル要素
14’’ スライド‐ロック・ラジアル要素
16 スライド‐ロック・ラジアル要素
16’ スライド‐ロック・ラジアル要素
16’’ スライド‐ロック・ラジアル要素
18 受動的なラジアル要素
20 タブ(スライド‐ロック・ラジアル要素)
22 スロット(スライド‐ロック・ラジアル要素)
24 ロックアウト歯(キャッチ/ストップ)
26 タブの移動(スライド)経路
28 近位(スロット)
30 遠位(スロット)
40 x‐y座標平面(延伸軸/円筒軸)
42 延伸軸
44 円筒軸
46 角度(延伸軸/円筒軸)
50 シート
51 引張力
52 延伸軸
57 ステント
58 円筒軸(ステント)
59 角度(延伸軸/円筒軸)
ε 歪み
シートの元の長さ(延伸前)
L シートの長さ(延伸後)
L1 シートの長さ(延伸前)
L2 シートの長さ(延伸後)
Tambient 環境温度/周囲温度
Tbody 人体の温度
Tg ガラス転移温度
Tm 融解温度
W1 シートの幅(延伸前)
W2 シートの幅(延伸後)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸に沿ってポリマーのシートを延伸させるステップであって、前記延伸により前記ポリマーの強度、破壊靭性、及び弾性率を増大させるように、ポリマーのシートを延伸させるステップと;
前記延伸されたポリマーのシートからチューブ状のステントを形成するステップであって、前記ステントはスライド‐ロック機構を有し、前記スライド‐ロック機構は、前記ステントが折り畳まれた直径から拡張された直径へ移行することを許容し、かつ前記拡張された直径からの径方向におけるリコイルを阻止するように、チューブ状のステントを形成するステップとを備える;
ステントを製造する方法。
【請求項2】
前記ポリマーのシートは、PLLA及びPLGAからなる群から選択される生体分解性ポリエステルから製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーのシートはチロシン誘導体ポリカーボネートを含む、又はチロシン誘導体ポリカーボネートから製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スライド‐ロック機構は周方向において隣接するモジュールを有し、前記モジュールは長手方向において隣接するスライド‐ロック・ラジアル要素を含み、前記スライド-ロック・ラジアル要素は前記折り畳まれた直径から前記拡張された直径へ前記スライド‐ロック・ラジアル要素の一方向へのスライドを許容し、かつ前記拡張された直径からの径方向におけるリコイルを阻止するように構成された、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステントの円筒軸が前記延伸軸に対して平行、垂直、又は平行乃至垂直の間の角度を成す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2の延伸軸に沿って前記ポリマーのシートを延伸させるステップであって、前記ポリマーのシートに2軸配向を提供するように、前記ポリマーのシートを延伸させるステップを更に備え、前記ステントの円筒軸が前記第2の延伸軸に対して平行、垂直、又は平行乃至垂直の間の角度を成す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記延伸軸は前記円筒軸に対して垂直であり、前記第2の延伸軸は前記円筒軸に対して平行である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーのシートは本質的に生体吸収性ポリマーにより構成された、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記スライド‐ロック機構は、前記延伸されたポリマーのシートをレーザー切断するステップにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記延伸させるステップは、前記ポリマーのTg以上かつ前記ポリマーのTm未満の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーは、少なくともTbodyよりも摂氏10度高いTgを有する半結晶質ポリマー又は非晶質ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも前記ポリマーの前記Tgよりも摂氏5度高い温度まで前記ポリマーのシートを一様又は実質的に一様に加熱するステップと、前記延伸させるステップの後に前記Tg未満の温度まで前記延伸されたポリマーのシートをクエンチングするステップとを更に備え、温度の低下が、前記延伸させるステップによって誘導されたポリマー鎖の配向の弛緩を阻止又は防止する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマーのシートは前記延伸させるステップの前に架橋され、前記架橋が前記延伸させるステップによって誘導されたポリマー鎖の配向の弛緩を阻止又は防止し、前記架橋度は5%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記延伸させるステップの間に、又は前記延伸させるステップの後に前記ポリマーのシートの架橋を誘導するステップを更に備え、前記架橋を誘導するステップは、前記延伸させるステップによって誘導されたポリマー鎖の配向の弛緩を阻止又は防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーは半結晶質ポリマー又は非晶質ポリマーであり、Tbodyを超えるTgを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記延伸されたシートの架橋度は5%未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーのシートは前記ポリマー中に分散させたナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ粒子はナノファイバ及びナノチューブからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーのシートは前記ポリマー中に分散させた量子ドットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
ポリマーのシートを加熱して前記ポリマーのシートの延伸を可能とするステップと;
軸に沿って前記ポリマーのシートを延伸させるステップであって、前記延伸が前記ポリマーの強度、破壊靭性及び弾性率を増大させるように、前記ポリマーのシートを延伸させるステップと;
変形した前記ポリマーのシートをターゲット温度未満まで能動的に冷却するステップであって、延伸された状態で、又は前記延伸された状態に近い状態で前記ポリマーのシートを安定化させるように、変形した前記ポリマーのシートを能動的に冷却するステップと;
前記冷却するステップの後に、前記変形したポリマーのシートからステントを製造するステップとを備える;
ステントを製造する方法。
【請求項21】
前記ステントは前記延伸されたポリマーのシートからチューブ状のステントを形成するステップにより製造され、前記ステントはスライド‐ロック機構を有し、前記スライド‐ロック機構は、前記ステントが折り畳まれた直径から拡張された直径へ移行することを許容し、かつ前記拡張された直径からの径方向におけるリコイルを阻止する、請求項20に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2012−522587(P2012−522587A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503667(P2012−503667)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/029442
【国際公開番号】WO2010/120532
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(509268314)アボット カルディオバスキュラー システムズ インコーポレーテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】Abbott Cardiovascular Systems Inc.
【住所又は居所原語表記】3200 Lakeside Drive,Santa Clara,California 95054,United States of America
【Fターム(参考)】