説明

強化された耐水性を有する硬化組成物を提供するための硬化性組成物

本発明は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基および少なくとも1つのカルボン酸官能性基およびナノ粒子金属酸化物成分を有する二重官能性成分を含有するエネルギー硬化性組成物である。該硬化性組成物は、必要に応じて、開始剤(光開始剤および/または遊離基開始剤)、二重官能性成分と反応し得る成分およびエネルギー硬化性成分中に一般に存在する添加剤を含有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤、コーティング、インキ調製物、複合材料などとして有用なエネルギー硬化性組成物、特に放射線硬化性組成物を対象とする。本発明の組成物は、改良された接着強さ、接着性および耐湿性をポリマーに付与する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、重合性エチレン性不飽和基およびカルボン酸官能性基を有する化合物、オリゴマーまたは低分子量ポリマー(二重官能性成分)を含んでなるエネルギー硬化性組成物である。好ましくは、エチレン性不飽和重合性基は、好ましくは該部分の末端部にまたはポリマー鎖にぶら下がっている基上に存在する、ビニルエーテル基、(メタ)アクリル基、アリル基、またはα−オレフィン基を含んでなる。硬化性エチレン性不飽和成分は、好ましくは化合物、オリゴマーまたは低分子量ポリマー中の末端部に存在するかまたはポリマー材料に対するペンダント側鎖中に含まれていてよいカルボキシル基も含有する。好ましくは、カルボキシル基は、中和またはエステル化されていない。好ましくは、重合性二重官能性成分(重合性エチレン性不飽和基およびカルボキシル基)は、数平均分子量約150〜約10000、好ましくは約200〜約5000、もっとも好ましくは約250〜約3000の範囲の分子量を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0003】
さらに、該組成物は、二重官能性エチレン性不飽和成分と混合可能な低分子量成分および/またはオリゴマー材料を含有し得、二重官能性成分と重合し得る基を含有する。
【0004】
本発明のさらなる重要な成分は、ナノ粒度金属酸化物、好ましくは酸化亜鉛を含んでなる。ナノ粒度金属酸化物は、硬化ポリマー材料の接着強さおよび耐湿性を改良する。
【0005】
該二重官能性(エチレン性不飽和およびカルボキシル官能性)成分は、当技術分野で周知であって、長い間、エネルギー硬化性調製物中に用いられてきた。二重官能性エネルギー硬化性組成物は、米国特許第5912381号、同第6429235号、同第6908665号、同第6472056号および同第6565696号(各特許の全内容を引用して本明細書に組み入れる)に開示されている。引用して本明細書に組み入れられた特許には、本発明の実施において有用であり得る様々な型の二重官能性成分、該成分を含有する調製物、組成物を硬化する方法、さらなる成分および添加剤、および有用な成分を調製するための方法が開示されている。
【0006】
本発明の実施に有用な二重官能性重合性成分の重要な特徴は、それが少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和基および少なくとも1つのカルボキシル官能性基を含有することである。二重官能性成分は、150ダルトン以下の範囲の比較的低分子量を有する化合物または約10000まで、好ましくは約5000まで、もっとも好ましくは約2000までの範囲の分子量(Mn)を有するオリゴマー材料であり得る。
【0007】
二重官能性成分は、エネルギー硬化性組成物の約1重量%〜約99重量%、好ましくは約10重量%〜約90重量%、もっとも好ましくは約25重量%〜約75重量%の範囲で存在し得る。
【0008】
本発明のエネルギー硬化性組成物は、必要に応じて、重合性エチレン性不飽和を有し、反応性水素原子またはヒドロキシル、カルボキシル、アミド、イソシアネート、ビニルエーテル、エポキシなどのような基における反応性水素原子と反応し得る基を有する官能性基を有する成分およびオリゴマーを含有し得る。
【0009】
適当な二重官能性成分として、ヒドロキシエチルアクリレートで変性された1,2シクロヘキサンジカルボン酸無水物、カプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートで変性された無水フタル酸、ヒドロキシエチルアクリレートで変性されたアルキルまたはアルケニル無水コハク酸、ジトリメチロールプロパントリアクリレートで変性されたダイマー酸、ヒドロキシエチルアクリレートで変性された無水マレイン酸、トリメチロールプロパンジアクリレートで変性されたダイマー酸、および同族のアリル化合物などの物質が挙げられる。酸および無水物は、カルボキシル基の一部のみをエチレン性不飽和組成物と反応させることによって変性される。一般には、無水物を形成する2個のカルボキシル基のうち1つだけを反応させるかまたはダイマー酸基のうち1つだけを変性させる。該リストは単なる例示であり、より広い範囲の有用な成分は、引用して本明細書に包含された特許に示されている。
【0010】
本発明の組成物に有用な任意の成分として、約1000〜約3000の分子量(Mn)範囲の脂肪族ウレタンアクリレート、イソボルニルアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化ノニルフェノールアクリレートなどが挙げられる。該リストは単なる例示であって、本発明の組成物に含まれ得る化合物を限定するものではない。任意の成分は、エネルギー硬化性組成物の約5重量%〜約75重量%、好ましくは約10重量%〜約60重量%、もっとも好ましくは約15重量%〜約50重量%の量で存在し得る。
【0011】
本発明の実施に有用な金属酸化物は、金属酸化物のナノスケールサイズ粒子を含んでなる。ナノスケール粒子は、1ミクロン未満の平均粒度を有する。ナノスケール粒子は、好ましくは約800nm未満、より好ましくは約500nm未満、もっとも好ましくは約400nmまでの範囲の平均粒度を有する。金属酸化物として、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛などのような物質が挙げられる。金属酸化物ナノスケール粒子は、エネルギー硬化性組成物の約0.01重量%〜約15重量%の範囲で、好ましくは硬化性組成物の0.1重量%〜約10重量%の範囲で、もっとも好ましくは該組成物の0.5重量%〜5重量の範囲で存在し得る。
【0012】
酸化亜鉛を金属酸化物として用いる際、特定のナノ粒度範囲の酸化亜鉛は可視光を透過させ得るので、ナノスケール酸化亜鉛の粒度によっては、本発明の組成物は硬化すると透明な材料であり得る。しかしながら、亜鉛酸化物の特定のナノ粒子は、可視光を透過させず、曇ったまたは不透明な特性を硬化組成物に付与するであろう。
【0013】
透明な状態でのナノ粒度酸化亜鉛は、Elementis製のTECYLOXYL(商標)UVとして利用可能である。透明性が問題とならない場合、例えば本発明の硬化性組成物を不透明な材料用の接着剤として用いる場合などには、他の等級のナノ粒度酸化亜鉛を用いてよい。
【0014】
当技術分野で周知であるように、特定の粒度範囲の特定の金属酸化物のナノ粒子は、紫外線の特定の周波数を取り除くかまたは吸収する。このため、放射線の波長が、組成物を硬化するために用いる放射線が金属酸化物ナノ粒子によって吸収または反射されない範囲となるように選択されない限り、紫外線によって本発明の組成物を硬化することは困難になり得る。しかしながら、紫外線の吸収または反射は通常は全部ではないので、本発明の組成物は、組成物を硬化するために用いる紫外線の強度を増加させることによって硬化し得る。ナノ粒度酸化亜鉛は好適な金属酸化物である。
【0015】
本発明の組成物は、組成物中のナノスケール亜鉛粒子による放射線の吸収または反射に関わる困難を伴うことなく電子線(EB)放射によって硬化し得る。EB硬化は、紫外線に対して不透明な対象物に適用してもよい。一般には、EB硬化は、比較的低温にて行い得るため、熱による物品のひずみは生じない。
【0016】
高温で組成物を重合することに役立つ重合開始剤を用いることは、本発明の組成物を硬化するのにあたり好適な方法ではない。該硬化は、遊離基開始剤の使用によって高温で行い得るか、または温度が十分高い場合には遊離基開始剤を用いずに行い得る。遊離基開始剤は、選択した温度範囲にて組成物を硬化するように選択し得る。
【0017】
本発明のエネルギー硬化性組成物は、本発明の実施に有用な二重官能性エネルギー硬化性成分と共重合し得る材料を含有してよい。重合組成物の特性を調節するために組成物に、さらなる材料を添加してよい。すなわち、柔軟性、硬度、耐熱性、耐溶剤性、耐湿性などのような特性を調節するための重合性材料を、本発明のエネルギー重合性組成物中に含ませてよい。さらなる材料は、二重官能性材料における少なくとも1つの基と反応する基を含有する。二重官能性成分は少なくとも1つの重合性二重結合および少なくとも1つのカルボキシル官能性基を含んでなるので、重合性不飽和基および/または遊離カルボキシル基と反応する基を含有する材料をエネルギー硬化性組成物中に含ませることができる。さらなる重合性材料の構造は、硬化組成物の少なくとも1つの特性を改良するように選択される。柔軟性、硬度、耐溶剤性、耐衝撃性および接着性のような特性は、さらなる共重合性材料によって影響を受け得る。
【0018】
さらなる材料は、変性ポリアミド、M約1000〜約10000の範囲の変性エポキシアクリレート、イソボルニルアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、デカンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート60%による脂肪族ポリエステル樹脂、プロポキシル化ノニルフェノールアクリレートなどのような材料を含んでよい。さらなる材料は、重合性エチレン性不飽和基、ヒドロキシル基、アミン基などのような反応性基を含有し得る。さらなる材料は、組成物の二重官能性成分と、またはそれ自体もしくは組成物への他の添加剤と重合し得る基を含有すべきである。好ましくは、さらなる材料は、エチレン性不飽和基によって二重官能性成分と共重合し得る。
【0019】
重合性組成物は、硬化組成物の柔軟性、脆性、硬度などを変性するために可塑剤のような物質を含有し得る。可塑剤は、組成物を塗布する特定の基材に対する接着性のような特性に悪影響を与えないように注意深く選択されるべきである。エネルギー硬化性組成物中に通常存在するさらなる材料、例えば重合防止剤、安定剤、レオロジー改質剤、希釈剤、酸化抑制剤、老化防止成分、顔料などは、本発明の組成物中に存在し得る。
【0020】
組成物に添加したさらなる成分の官能基によって硬化ポリマー組成物の特性を変性してもよい。さらなる成分の官能基は、組成物の架橋の量に影響を及ぼし、およびより高い硬度および/またはより低い脆性、改良された耐熱性、改良された柔軟性、改良された耐溶剤性などをポリマーに付与し得る。
【0021】
二重官能性重合性成分とナノスケール金属酸化物との組み合わせは、硬化ポリマーの接着性および耐湿性を増加させる。
【0022】
本発明の組成物は、熱に組み合わせて触媒(遊離基開始剤)を使用することによって、紫外線光によって、およびEBによって硬化し得る。組成物を硬化するためのもっとも好適な方法は、それが不透明であり得る薄膜と関連し、確実な完全硬化が必要とされる場合、組成物を硬化するために用いることができるEBによるものである。本発明の組成物は、硬化ポリマーが非常に低い濃度の移行物を含有する程度まで硬化させることができ、このことは食品と関連した組成物の使用を可能にする。該組成物は、食品を包装する積層ポリマーおよび封止ポリマーにおいて特に有用である。
【0023】
本発明の組成物は、基材、特に紙状基材上での表面コーティングとして塗布し、硬化させて基材の耐水性を改良し得る。本発明の組成物は、紙状基材に塗布し得、本発明の組成物を一定時間接触したままにして、塗布した薄い基材に浸透させ、組成物を好ましくは紫外線またはEB放射によって硬化させることを可能にし得る。
【0024】
本発明の組成物は、印刷用インキ調製物に必要な特性を付与する種々の顔料および他の成分を含有する印刷用インキ調製物中に含まれてもよい。本発明の組成物は、基材へのインキの接着性を改良し、さらに、印刷された材料の耐水性および耐湿性を増加させる。該組成物の塗布および硬化した際の基材および印刷用インキの耐水性の増加は、耐湿性または耐水性改善が必要とされる場合に有用である。
【0025】
該組成物をEB放射によって硬化させる本発明の好適な実施態様においては、光開始剤を組成物中に必要としない。しかしながら、組成物を紫外線放射によって硬化させるべき際には、光開始剤は一般に必要である。UV硬化性組成物用の光開始剤は当技術分野で周知であって、本発明の組成物において開始剤として概して有用である。移行物が問題となる場合、例えば食品に関する場合などには、光開始剤は、高分子量型または硬化工程中にポリマーに組み入れられる型のものであり得る。高分子量光開始剤および重合性光開始剤の使用は、硬化組成物の表面への光開始剤の移行を防止することに有用であり得る。これは、硬化製品を食品に関して使用すべき場合に特に有用である。すなわち、食品包装用の積層接着剤またはフィルム用のシーラントに用いる場合である。
【0026】
本発明の組成物は、異なった基材、例えばポリ−α−オレフィン、金属、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタンなどに良好な接着性を付与する。
【実施例】
【0027】
本発明の組成物を調製し、以下の手順に従って試験した。試験すべき各調製物の10〜12ミクロン層を6インチ×8インチの金属化ホイル基材上にコートした。ポリエステルフィルム(DuPont Teijin Films 48 LBT、12号)を金属化ホイル基材の接着剤コート表面に隣接して設置し、カードラミネーターへ通過させた。次いで得られたラミネートフィルムを電子線放射源を用いて30キログレイにて100フィート/分で硬化した。硬化したラミネートから1インチストリップを裁断し、硬化直後に、剥離強度値を、Thwing−Albert Friction/Peel Tester、Model 225−1上で12インチ/分にて測定した。EB硬化試料ストリップを室温にて2日間平衡化した。2日後、試料ストリップを60℃にて1時間水中に浸漬し、試料ストリップを水からの取り出し直後に剥離試験した。接着剤の組成物および剥離試験の結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示された試験の結果から分かるように、ナノ粒子ZnOの添加は、水槽から引き出した直後に行った剥離試験での1時間60℃にて水中で浸漬した接着剤接合フィルムの剥離強度に実質的な影響を与える。
【0030】
組成物へのナノ粒子ZnOの添加は、60℃にて水中での浸漬後の接着の剥離強度を実質的に改良する。剥離強度および耐湿性における改良は、先行技術の観点では予期し得ないものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重官能性エネルギー重合性成分、ナノ粒子金属酸化物、および必要に応じて、重合開始剤を含んでなるエネルギー硬化性組成物。
【請求項2】
約1重量%〜約99重量%の二重官能性エネルギー重合性成分を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
10重量%〜90重量%の二重官能性エネルギー重合性成分を含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
25重量%〜75重量%の二重官能性エネルギー重合性成分を含んでなる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
約0.01〜約20重量%のナノ粒子金属酸化物を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
0.1〜15重量%のナノ粒子金属酸化物を含んでなる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
二重官能性エネルギー重合性成分、ナノ粒子酸化亜鉛、およびエネルギー硬化性組成物の約5重量%〜約75重量%の量で二重官能性エネルギー重合性成分と共重合性の官能性成分を含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
共重合性の成分は、エネルギー硬化性組成物の10重量%〜60重量%の量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
共重合性の成分は、エネルギー硬化性組成物の15重量%〜50重量%の量で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ナノ粒子金属酸化物は、酸化亜鉛、二酸化チタンおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
約30重量%までの添加剤を含んでなる、請求項1に記載のエネルギー硬化性組成物。
【請求項12】
約10重量%〜約75重量%の二重官能性エネルギー重合性成分、約5重量%〜約75重量%の、二重官能性エネルギー重合性成分と共重合性の官能性成分、0.01重量%〜20重量%のナノ粒子金属酸化物、30重量%までの添加剤および重合開始剤を含んでなる、請求項1に記載のエネルギー硬化性組成物。
【請求項13】
ナノ粒子金属酸化物は酸化亜鉛を含んでなる、請求項12に記載のエネルギー硬化性組成物。
【請求項14】
電子線硬化された、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
電子線硬化された、請求項7に記載の組成物。
【請求項16】
電子線硬化された、請求項12に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−528436(P2009−528436A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557394(P2008−557394)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/005341
【国際公開番号】WO2007/103172
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】