説明

強化ベルト

【課題】パワーターン用途のための改良された性能を有する多プライ構造を有するコンベヤーベルトを提供する。
【解決手段】強化コンベヤーベルトは複数の織物プライ30,40を有している。各プライのうちの1方のプライ30は、横糸コードWEからなる2層32,34と横糸コードWEからなる2つの層32,34を貫いて織り合わせている複数の縦糸コードWA1,WA2,WA3を備える、織り合わされたプライである。各々の縦糸コードWA1,WA2,WA3は、第1の横糸層32においては、少なくとも2本、しかし5本以下の横糸コードWEの上を通過し、2つの横糸層32,34の間を少なくとも2本の横糸コードWEの距離に渡って通過し、そして、第2の横糸層34においては、少なくとも2本、しかし5本以下の横糸コードWEの下を通過することからなる繰り返しの織物パターンを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ベルトを対象にしている。更に具体的には、前記強化ベルトは、パワーターン(powerturn)用途に使用される際に、ベルトの性能を向上させるように設計された内部構造を有する。
【背景技術】
【0002】
パワーターンベルトは特殊化されたコンベヤーベルトの一種であって、そのコンベヤーベルトは、その長手方向の長さに対し平行な直線経路を移動しない。最小では、パワーターンベルトは30°の円弧に亘って移動する。最大では、パワーターンベルトは複数回の360°旋回を行う場合があり、これはスパイラルコンベヤーと呼ばれる。このようなベルトは、倉庫、空港、及び食品産業と、異なる様々な産業に応用できる。
【0003】
旋回時のベルトを補助するよう、前記ベルトの少なくとも一方の長手方向の端部には、コンベヤーシステムによって機械的に握持される手段が設けられている。このような手段は、特許文献1に示されたガイド手段、及び特許文献2に記載されたような樹脂の成形品を含む。
【0004】
パワーターン用途のための従来のコンベヤーベルトは、単純な縦糸/横糸で織られた織物からなるいくつかの薄いプライ(ply)で作られており、両方のプライは同一の強化構造を有している。強化構造はパワーターンシステムの要求に応じて、PVCのようなエラストマー又はプラスチック母材のどちらかに埋め込まれている。過去においては、このようなベルトで申し分ないものだと判明していたが、このようなベルトは、パワーターンシステムにおいてベルトはカーブ若しくはUターンして移動することによってベルトに異なる張力がかかることを考慮されていない。このことはコンベヤーベルトの耐久性及び性能の低下につながる場合がある。
【特許文献1】米国特許第3951256号明細書
【特許文献2】米国特許第6834760号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は複数プライ構造を有するコンベヤーベルトを対象にしており、このベルトはパワーターン用途のための改良された性能を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されているのは、2つの織物プライを備えている連続長のベルト材料である。各プライのうち1つは、横糸コードからなる2層と、横糸コードからなる2層を貫いて織り合わせている複数の縦糸コードを備える、織り合わされたプライ(interwoven ply)である。各々の縦糸コードは、第1の横糸層においては、少なくとも2本、しかし5本以下の横糸コードの上を通過し、2つの横糸層の間を少なくとも2本の横糸コードの距離に渡って通過し、そして、第2の横糸層においては、少なくとも2本、しかし5本以下の横糸コードの下を通過することからなる、連続する繰り返しの織物パターンを有している。好適には、第1層の各々の縦糸コードは、第1横糸層において、少なくとも3本、しかし4本以下の横糸コードの上を通過し、第2横糸層において、少なくとも3本、しかし4本以下の横糸コードの下を通過している。
【0007】
本発明のもう一つの特徴においては、第1織物プライのコードは、ポリエステル、ポリアミド、綿、ナイロン、繊維ガラス、炭素繊維、ポリベンゾオキサゾール(polybenzoxazole,PBO)繊維、若しくはその任意の混成物又は混合物から成るグループから選択される。
【0008】
本発明の別の特徴においては、織物の第2プライは、横糸コードの単一層を備えている織物パターンを有している。織物パターンは平織、繻子織(satin weave)、若しくは斜文織(twill weave)からなるグループから選択される。
【0009】
更に開示されているのはパワーターンコンベヤーベルト材料であって、これは有限長の閉ループ構造を有している。ベルト材料は少なくとも2つの織物のプライを有している。各プライのうち1つは、横糸コードからなる2層と、横糸コードからなる2層を貫いて織り合わせている複数の縦糸コードを備える、織り合わされたプライである。各々の縦糸コードは、第1の横糸層においては、少なくとも2本、しかし5本以下の横糸コードの上を通過し、2つの横糸コードのプライの間を少なくとも2本の横糸コードの距離に渡って通過し、そして、第2の横糸層においては、少なくとも2本、しかし5本以下の横糸コードの下を通過することからなる、連続する繰り返しの織物パターンを有している。好適には、第1プライの各々の縦糸コードは、第1横糸層において、少なくとも3本、しかし4本以下の横糸コードの上を通過し、第2横糸層において、少なくとも3本、しかし4本以下の横糸コードの下を通過している。
【0010】
パワーターンベルトの別の特徴においては、第1織物プライのコードは、ポリエステル、ポリアミド、綿、ナイロン、繊維ガラス、炭素繊維、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維、若しくはその任意の混成物又は混合物からなるグループから選択される。
【0011】
本発明の別の特徴においては、第1織物プライは閉ループ構造の最外部のプライであり、頑丈なパワーターン用途に使用するための、より耐久力のあるベルト表面を形成する。
【0012】
本発明の別の特徴においては、織物の第2プライは、横糸コードの単一層を備えている織物パターンを有している。織物パターンは平織、繻子織、若しくは斜文織からなるグループから選択される。
【0013】
本発明は、例示による方法で、添付図面を参照して説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下の記述は、本発明を実施するための現時点での最良の一の形態又は複数の形態である。この記述は、本発明の一般的原理を説明することを目的になされたものであって、趣旨を制限して理解されるべきではない。本発明の技術的範囲は添付の特許請求の範囲を参照することによって、最も良く規定される。図面に示されている参照符号は明細書内に引用されている参照符号と同一である。この出願の目的のために、図に示されている様々な形態の各々は、同様の構成要素に対する同一の参照数字を使用している。構成は基本的に位置若しくは数量の変形形態を有する同一の構成要素を採用し、それによって発明概念を実施することができる代替構造が生じる。
【0015】
図1は矢印Dによって指し示された移動方向を有するパワーターンコンベヤーベルトシステムを説明している。このシステムは、1対の円錐プーリー12に関して移動する、有限長の閉ループベルト10の基本要素を有している。ベルト10の最長のエッジに沿っているのは、ベルト10をパワーターンシステムに接続させる追跡機構14である。追跡システム14の詳細は本発明に絶対不可欠なものではなく、既知若しくは従来の追跡システムのいずれかを用いることができる。
【0016】
有限長の、パワーターンの閉ループベルト10は、最初に、図2Aに見られるような、D方向の所定の長さ、向かい合った外側縁18、及び強化コードを有した連続長のベルト材料16として製造される。連続長のベルト内の強化コードは、コードが連続ベルトの長手方向Dに平行である場合は縦糸として、長手方向Dに対して横断方向若しくは長手方向Dと直角を成す場合は横糸として定義される。
【0017】
パワーターン用途のための有限長の閉ループベルトを形成するため、連続長のベルトが図2Bに見られるように、有限長のベルトの円弧20に切断され、閉ループベルト10を形成するように継ぎ合わされる。円弧が連続長のベルト材料16の中を切断するので、有限長のベルト材料の円弧20の第1部分22に沿って、ベルト材料の円弧の強化縦糸コードWA及び横糸コードWEが、連続長のベルト16のような、縦糸及び横糸コードに対応する。しかしながら、有限長のベルト材料の円弧20の第2部分24においては、円弧形状及び有限長の閉ループベルト10の移動方向Tによって、有限長のベルト材料の円弧20の中点を過ぎると、第1部分22において縦糸コードWAであったコードは横糸コードWE’として機能し始め、第1部分において横糸コードWEであったコードは縦糸コードWA’として機能し始める。
【0018】
本発明のベルトにおいては、有限長の閉ループベルト10を形成するために切断され、継ぎ合わされる連続長のベルト16は、図3に見られるように基材に埋め込まれ、ともに結合された第1及び第2強化プライを有する、2−プライ構造である。上層プライ30は、図4に見られるように、横糸コードWEの2つの層32,34、及び横糸コードWEの2つの層32,34の間で織り合わされた3本の縦糸コードWA1、WA2、WA3の繰り返しシーケンスから形成された複合プライである。各々の縦糸コードWA1、WA2、WA3は織物パターンを繰り返すように、上段の横糸層32においては、少なくとも2本の横糸コードWEの上を通過し、2つの横糸コードの層32,34の間を、少なくとも2本、好適には3本、しかし5本以下の横糸コードWEと略等しい長さに渡って通過し、その後、下段の横糸層34においては、上段の横糸層32まで戻る前に、少なくとも2本の横糸コードWEの下を通過する。図で示した縦糸コードWA1、WA2、WA3は、各々の層32,34において、2本の横糸コードWEの上及び下を通過する。縦糸コードWA1、WA2、WA3によって上及び下を通過される各々の層における横糸コードWEの最大数は、5本の横糸コードWE、好適には3本〜4本の横糸コードWEである。上を通過/下を通過する横糸コードWEの数が5本を超える場合は、上層プライ30の耐久性を、ベルトが強い応力と負荷にさらされた状況に妥協させることができる。
【0019】
最上プライ30においては、3本の縦糸コードWA1、WA2、WA3は完成した織物内で互いに隣接し、密接した織物パターンを形成する。最上プライの縦糸及び横糸コードWA1、WA2、WA3、WEは好適には同じ材料で作られる。しかしながら、異なる方向において織物の強度を変化させるために、縦糸及び横糸の糸は異なる材料で形成され得る。コードは、ポリエステル、ポリアミド、綿、ナイロン、繊維ガラス、炭素繊維、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維、若しくはその任意のブレンド又は混合のグループから選択することができる。
【0020】
下層プライ40は上層プライ30よりも単純な織物プライであり、横糸コード44の単独の層のみを有している。織物プライ40は、各々の縦糸コード42が横糸コード44の上及び下を通過する、一般に平織と呼ばれるパターンの、単純な縦糸と横糸の織物プライである。下層プライ40は、あるいは、従来の繻子織、若しくは斜文織で織られ得る。下層プライ40のコード42,44は、ポリエステル、ポリアミド、綿、ナイロン、繊維ガラス、炭素繊維、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維、若しくはその任意の混成物又は混合物のグループから選択される。
【0021】
ベルト材料16及び閉ループベルト10においては、異なるタイプの織物プライ30,40の故に、上層プライ30がベルト材料16及び閉ループベルト10に強度の大部分を供給し、ベルト材料16及び閉ループベルト10に改良された耐久性を提供する。
【0022】
各々の織物プライ30,40は、エラストマー材料、若しくは熱可塑性材料、例えばゴム、若しくはポリ塩化ビニル(PVC)化合物、若しくはコンベヤーベルト用途に使用される他のタイプの樹脂の中に埋め込まれている。埋め込み樹脂はベルト材料の所望の最終用途に基づいて選択される。2−プライ構造には、立体感のある、若しくは粗くされた表面を形成するための模様(imprint)が形成され得る、若しくは形成されなくてもよい、上及び下カバー層50,52が設けられ得る。上カバー層50が設けられる場合には、カバー層はいかなるタイプの連続したコード又は糸によっても強化されることはない。下カバー層は織物の手段によって強化されても、されなくてもよい。
【0023】
連続長のベルトの使用はパワーターン用途に特に役立つものとして開示されているが、このベルトは他のコンベヤーベルト用途においても使用することができ、ベルトの両端をともに固定することによって閉ループシステムが作られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】90°のパワーターン用途を示す図である。
【図2A】連続長のベルト材料の概略図である。
【図2B】パワーターンベルト材料を製造する際に使用されるベルト材料の区域のための切断線を示した連続長のベルトの概略図である。
【図3】本発明による織物の断面図である。
【図4】ベルト材料に使用される織物プライの更なる詳細図である。
【符号の説明】
【0025】
10 閉ループベルト
12 円錐プーリー
14 追跡システム
16 連続長のベルト
18 外側縁
20 有限長のベルト材料の円弧
22 第1部分
24 第2部分
30 最上プライ
32 横糸コードの層
34 横糸コードの層
40 最下プライ
42 縦糸コード
44 横糸コード
50 上カバー層
52 下カバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの織物プライを備えている連続長のベルト材料であって、
第1の織物プライが、横糸コードからなる2層と、該横糸コードからなる2層を貫いて織り合わせている複数の縦糸コードを備える、織り合わされたプライであり、
各々の前記縦糸コードは、第1の横糸層においては、少なくとも2本、しかし5本以下の前記横糸コードの上を通過し、2つの前記横糸層の間を少なくとも2本の前記横糸コードの距離に渡って通過し、そして、第2の横糸層においては、少なくとも2本、しかし5本以下の前記横糸コードの下を通過することからなる、連続する繰り返しの織物パターンを有している連続長のベルト材料。
【請求項2】
第2の織物プライは、平織、繻子織、若しくは斜文織からなるグループから選択される織物パターンを有している請求項1に記載の連続長のベルト材料。
【請求項3】
前記第1の織物プライのコードは、ポリエステル、ポリアミド、綿、ナイロン、繊維ガラス、炭素繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、若しくはその任意の混成物又は混合物からなるグループから選択される請求項1に記載の連続長のベルト材料。
【請求項4】
各々の前記織物プライが、エラストマー樹脂、若しくは熱可塑性樹脂に埋め込まれている請求項1に記載の連続長のベルト材料。
【請求項5】
上カバーを更に備えている請求項1に記載の連続長のベルト材料。
【請求項6】
前記第1の織物プライの中の各々の前記縦糸コードは、前記第1の横糸層における、少なくとも3本、しかし4本以下の前記横糸コードの上を通過し、前記第2の横糸層における、少なくとも3本、しかし4本以下の前記横糸コードの下を通過する請求項1に記載の連続長のベルト材料。
【請求項7】
前記第2の織物プライが、前記横糸コードからなる単独の層を備えている織物パターンを有している請求項1に記載の連続長のベルト材料。
【請求項8】
前記ベルト材料は1対の対向する両端を有し、閉ループベルトを形成するために両端が互いに固定されている請求項1に記載の連続長のベルト材料。
【請求項9】
有限長の閉ループ構造を有しているパワーターンコンベヤーベルトであって、該ベルトは、少なくとも2つの織物のプライから形成され、
第1の織物プライは、横糸コードからなる2つの層と、該横糸コードからなる2つの層を貫いて織り合わせている複数の縦糸コードを備える、織り合わされたプライであり、
各々の前記縦糸コードは、前記第1の横糸層においては、少なくとも2本、しかし5本以下の前記横糸コードの上を通過し、2つの前記横糸層の間を少なくとも2本の前記横糸コードの距離に渡って通過し、そして、前記第2の横糸層においては、少なくとも2本、しかし5本以下の前記横糸コードの下を通過することからなる連続する繰り返しの織物パターンを有しているパワーターンコンベヤーベルト材料。
【請求項10】
第2の織物プライは、平織、繻子織、若しくは斜文織からなるグループから選択される織物パターンを有している請求項9に記載のベルト材料
【請求項11】
前記第1の織物プライのコードは、ポリエステル、ポリアミド、綿、ナイロン、繊維ガラス、炭素繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、若しくはその任意の混成物又は混合物からなるグループから選択される請求項9に記載のベルト材料。
【請求項12】
各々の前記織物プライは、エラストマー樹脂、若しくは熱可塑性樹脂に埋め込まれている請求項9に記載のベルト材料。
【請求項13】
前記ベルト材料は上カバーを更に備えている請求項9に記載のベルト材料。
【請求項14】
前記第1の織物プライの中の各々の前記縦糸コードは、前記第1の横糸層においては、少なくとも3本、しかし4本以下の前記横糸コードの上を通過し、前記第2の横糸層においては、少なくとも3本、しかし4本以下の前記横糸コードの下を通過する請求項9に記載のベルト材料。
【請求項15】
前記第2の織物プライが前記横糸コードの単独の層を備えている織物パターンを有している請求項9に記載のベルト材料。
【請求項16】
前記ベルトは外側及び内側を有し、前記第1の織物プライは前記第2の織物プライよりも外側に近い請求項9に記載のベルト材料。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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