説明

強化剤を含む固体経口投与剤形

本発明は、下層循環へのビスホスホネートの腸内送達を強化するための強化剤と組み合わせてビスホスホネートを含んでいる医薬組成物及び経口投与剤形に関する。好ましくは、該強化剤は、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸又は中鎖脂肪酸誘導体であり、該固体経口投与剤形は、遅延放出剤形などの制御放出剤形である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化剤を含んでいる組成物及び固体経口投与剤形に関する。特に、本発明は、活性成分のバイオアベイラビリティ及び/又は吸収を強化する強化剤(enhancer)と組み合わせて薬学的活性成分を含んでいる組成物及び固体経口投与剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
胃腸管(GIT)の管腔側を覆っている上皮細胞は、経口投与による薬物の送達に対する主要な障害であり得る。しかしながら、薬物の送達及び輸送を促進するために利用可能な4つの認識されている輸送経路が存在している:経細胞(transcellular)輸送経路、傍細胞(paracellular)輸送経路、担体介在輸送経路及び経細胞輸送性(transcytotic)輸送経路。薬物、例えば、慣習的な薬物、ペプチド、タンパク質、巨大分子又はナノ粒子系若しくはミクロ粒子系が上記輸送経路のうちの1種類以上と「相互作用する」能力を有していれば、それによって、薬物のGITから下層循環(underlying circulation)への送達が増大し得る。
【0003】
特定の薬物は、頂端細胞膜内に位置している栄養素のための輸送系を利用する(担体介在経路)。巨大分子も、エンドサイトーシスされた小胞中で細胞を越えて輸送される(経細胞輸送性経路)。しかしながら、多くの種類の薬物は、細胞を通って(経細胞経路)又は細胞間を通って(傍細胞経路)、受動拡散により腸上皮を越えて輸送される。経口投与された大部分の薬物は、受動輸送によって吸収される。親油性である薬物は、経細胞経路によって上皮に浸透するが、親水性である薬物は、傍細胞経路に限定される。
【0004】
傍細胞経路は、腸上皮の総表面積の0.1%未満しか占めていない。さらに、細胞の頂端部の周囲に連続的なベルトを形成しているタイトジャンクションが、隣接する細胞の間を密封することによって、細胞間の浸透を制限している。かくして、ペプチドなどの親水性薬物の経口吸収は、厳しく制限され得る。薬物の吸収に対する別の障害には、管腔刷子縁又は腸上皮細胞の中に存在している加水分解酵素、上皮膜(これは、さらなる拡散障壁をもたらし得る)の表面上の水性境界層の存在、水性境界層に付随している粘液層、及び、頂端膜を横断してプロトン勾配を生じさせる酸性雰囲気(acid microclimate)などがある。
【0005】
薬物の吸収及び最終的にはバイオアベイラビリティは、さらにまた、薬物が腸管腔内へ戻るP-糖タンパク質調節輸送(P-glycoprotein regulated transport)及びシトクロムP450代謝などの別のプロセスによっても制限され得る。吸収及びバイオアベイラビリティは、食物及び/又は飲料が存在することによっても妨げられ得る。
【0006】
ビスホスホネートは、骨折、骨粗鬆症、パジェット病、転移性骨癌及び著しい骨吸収を伴う別の骨疾患を予防及び治療するために使用される薬物のファミリーである。ビスホスホネートは、骨のハイドロキシアパタイトに結合し、破骨細胞として知られている骨を浸食する細胞を鈍化させる。この効果により、骨芽細胞として知られている骨を造る細胞の働きの効率が良くなる。
【0007】
従来のビスホスホネートが有する限界には、上部GITに対する刺激(例えば、食道潰瘍)及び低いバイオアベイラビリティなどがある。その結果、従来のビスホスホネートには、患者が該薬物の一部を適切に吸収して、副作用を回避できるように、特定の投与計画が必要である。食物、飲料、薬剤及びカルシウムは吸収を妨げるので、従来のビスホスホネートは、空の胃に投与しなければならず、特定のビスホスホネートに応じて、食物、飲料(水以外)、薬剤又はカルシウム補助食品が消費されるまで、30分間〜2時間待たなければならない。食道潰瘍は既知副作用であるので、従来のビスホスホネートについての投与計画では、患者は、当該剤形と一緒にグラス一杯の水を飲み干し、投与後30〜60分間は、横向きの姿勢(例えば、横になることによる)を避けるように規定されている。
【0008】
アレンドロネートが有する特異的な特徴は、ビスホスホネート類のメンバー及びそれらに伴っている問題点を例証するのに役立った。アレンドロネートは、化学合成によって調製された、無臭で非吸湿性の白色の結晶質ビスホスホネートである。アレンドロン酸一ナトリウム三水和物の分子量は325.1である。アレンドロネートは、男性及び閉経後の女性における骨粗鬆症の予防及び治療、並びに、男女両性における骨のパジェット病及びグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の治療に対して、米国で承認されている。他のビスホスホネート類と同様に、アレンドロネートも骨のハイドロキシアパタイトに結合して、破骨細胞の活動を特異的に阻害する。アレンドロネートは、ヒト及び動物モデルにおける骨の代謝回転を低減させ、活性化の頻度を低下させ、それによって、皮質骨及び小柱骨の両方における骨吸収を低減させ、最終的には、骨の密度と強度を増大させる。
【0009】
アレンドロネートの経口によるバイオアベイラビリティは極めて低く、投与量(5〜80mg)には関係なく、平均して、女性で0.76%及び男性で0.59%である。前全身的代謝(presystemic metabolism)は、起こらない。通常の形態のアレンドロネートを経口投与した後、吸収された投与量の40%は、8時間以内に尿中に排出され、その後の64時間でさらに5%が排出される。投与の1時間以内に、60〜70%が吸収される。バイオアベイラビリティは、食物と同時に消費することによって著しく低減され(85%〜90%)、また、コーヒー又はオレンジジュースの消費でさえ、吸収を60%以上低減させる。カルシウム含有化合物や多価カチオンはどのようなものであってもビスホスホネートに結合するので、薬剤の同時投与も吸収を低減させる。胃のpHが6より高くなると、アレンドロネートの吸収は2倍に上昇する。アレンドロネートは代謝されず、糸球体濾過率に相当する腎クリアランスで未変化のままで排出される。
【0010】
改善された全身性バイオアベイラビリティを有し、従来のビスホスホネートについての投与制限を受けないビスホスホネート組成物及び経口投与剤形は、患者に大きな利益をもたらすであろう。結果として、特に、ビスホスホネート類に関して、GIT細胞層を越えて薬物を送達するための新しい方法が必要とされている。
【0011】
可能性を有する多くの種類の吸収強化剤が同定されてきた。例えば、中鎖グリセリド類は、親水性薬物が腸粘膜を通って吸収されるのを強化する能力を示した(Pharm. Res. (1994), 11, 1148-54)。しかしながら、鎖の長さ及び/又は組成の重要性については不明瞭であり、従って、それらの作用機序の大部分は依然として分かっていない。カプリン酸ナトリウムについては、傍細胞経路による腸及び結腸の薬物吸収を強化するということが報告されている(Pharm. Res. (1993) 10, 857-864;Pharm. Res. (1988), 5, 341-346)。米国特許第4,656,161号(BASF AG)には、非イオン性界面活性剤(例えば、エチレンオキシドと脂肪酸、脂肪アルコール、アルキルフェノール若しくはソルビタンを反応させることによって調製し得るもの)又はグリセロール脂肪酸エステルを添加することによってヘパリン又はヘパリノイドの経腸吸収性を増大させる方法が開示されている。
【0012】
米国特許第5,229,130号(Cygnus Therapeutics Systems)には、経皮投与された薬理学的活性剤(ここで、該活性剤は、1種類以上の植物油を経皮透過強化剤として用いて製剤されている)に対する皮膚の浸透性を増大させる組成物が開示されている。皮膚浸透は、ある範囲のカルボン酸ナトリウム塩によって強化されることも知られている[Int. J. of Pharmaceutics (1994), 108, 141-148]。さらにまた、バイオアベイラビリティを強化するために精油を使用することも知られている(米国特許第5,66,386号 AvMax Inc. など)。精油は、シトクロムP450代謝と血流外にある薬物が消化管の中に戻るP-糖タンパク質調節輸送のいずれか一方又は両方を低減させるように作用するということが教示されている。
【0013】
しかしながら、多くの場合、薬物吸収の強化は、腸壁に対する損傷と相関関係にある。従って、GIT強化剤の広範にわたる使用に対する制限が、しばしば、それらのの潜在的な毒性と副作用によって決定される。さらにまた、特にペプチド、タンパク質又は巨大分子薬物に関して、GIT強化剤と輸送経路のうちの1つとの「相互作用」は、一時的又は可逆的であるべきである(例えば、傍細胞経路を介した輸送を強化できるようなタイトジャンクションとの一時的相互作用又はタイトジャンクションの開放)。
【0014】
上記で記載したように、可能性を有する多くの種類の強化剤が知られている。しかしながら、これは、強化剤が組み入れられている対応する数の製品には至らなかった。スウェーデン及び日本で現在使用が承認されている、1種類のそのような製品は、DoktacillinTM坐剤である[Lindmark et al. Pharmaceutical Research (1997), 14, 930-935]。その坐剤は、アンピシリン及び中鎖脂肪酸、カプリン酸ナトリウム(ClO)を含んでいる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
強化剤とともにする薬物の投与を容易なものにするであろう固体経口投与剤形を提供することは、望ましい。固体経口投与剤形が他の剤形よりも有利である点としては、製造が容易であること、種々の制御放出製剤及び持続放出製剤(extended release formulation)を製剤する能力を有すること、並びに、投与が容易であることなどを挙げることできる。溶液形態にある薬物の投与では、血流中の薬物濃度プロフィールは容易に制御することができない。他方、固体経口投与剤形は、多能であり、部分的に変更を加えて、例えば、薬物放出の量及び持続時間を最大にすることや治療上望ましい放出プロフィールに従って薬物を放出させることができる。患者のコンプライアンスを向上させるような投与の便宜性に関する利点及び固体経口投与剤形に伴う製造コストに関する利点も存在し得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によれば、本発明の組成物及びそれから製造された剤形は、薬物とGIT細胞内層におけるビスホスホネートの吸収を促進する強化剤を含んでおり、ここで、該強化剤は、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸又は中鎖脂肪酸誘導体であり(但し、(i) 当該強化剤が中鎖脂肪酸のエステルである場合、6〜20炭素原子の当該炭素鎖長はカルボキシレート部分の鎖長に関する;及び、(ii) 当該強化剤が中鎖脂肪酸のエーテルである場合、少なくとも1のアルコキシ基が6〜20炭素原子の炭素鎖長を有している)、また、該強化剤及び該組成物は、室温で固体である。
【0017】
本発明の別の態様によれば、該組成物及びそれから製造された剤形は、薬物とGIT細胞内層におけるビスホスホネートの吸収を促進する強化剤を含んでおり、ここで、該組成物中に存在している唯一の該強化剤は、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸又は中鎖脂肪酸誘導体である。
【0018】
薬物がビスホスホネートを含んでいる実施形態では、該薬物は、アレンドロネート、クロドロネート、エチドロネート、インカドロネート、イバンドロネート、ミノドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、リセドロネート、チルドロネート、ゾレドロネート及びそれらの誘導体の遊離酸形態及び生物学的に許容される塩を包含する群から選択することができる。該ビスホスホネート剤形は、腸溶性コーティングを施された即時放出性固体経口投与剤形(ここで、該固体経口投与剤形は、改善された経口バイオアベイラビリティを提供し、また、上部GITの局所的な刺激のリスクを最小限度に抑える)であり得る。
【0019】
剤形は、錠剤、マルチパーティキュレート剤(multiparticulate)又はカプセル剤であり得る。マルチパーティキュレート剤は、錠剤の形態であり得るか、又は、カプセル剤の中に含ませることができる。錠剤は、単層錠剤又は多層錠剤であることができ、その層の1層中若しくは全層中に圧縮されたマルチパーティキュレート剤を含んでいるか又はどの層の中にもマルチパーティキュレート剤を含んでいない。好ましくは、剤形は、制御放出剤形であり、さらに好ましくは、遅延放出剤形である。剤形は、ポリマーでコーティングすることが可能であり、好ましくは、速度制御ポリマー又は遅延放出ポリマーでコーティングすることが可能である。ポリマーは、強化剤及び薬物と一緒に圧縮して、マトリックス剤形(例えば、制御放出マトリックス剤形)を形成させることも可能である。次いで、該マトリックス剤形に、ポリマーコーティングを施すことができる。
【0020】
本発明の別の実施形態には、該剤形の製造方法、及び、該剤形を患者に投与することによる医学的状態の治療方法又は予防方法が包含される。
【0021】
図面の簡単な説明
図1は、実施例1に記載した、0分及び30分間隔で2時間までの時間における、3H-TRHとC8、C10、C12、C14、C18及びC18:2のナトリウム塩の、Caco-2単層におけるTEER(Ωcm2)に対する効果を示している。
【0022】
図2は、実施例1に記載した、C8、C10、C12、C14、C18及びC18:2のナトリウム塩の、Caco-2単層内の3H-TRH輸送についてのPappに対する効果を示している。
【0023】
図3は、実施例1に記載した閉ループラットモデルに従い、NaC8又はNaC10強化剤(35mg)の存在下で500μgのTRHを十二指腸内にボーラス投与した後の、血清TRH濃度-時間プロフィールを示している。
【0024】
図4は、実施例1に記載した閉ループラットモデルに従い、NaC8又はNaC10強化剤(35mg)の存在下で1000μgのTRHを十二指腸内にボーラス投与した後の、血清TRH濃度-時間プロフィールを示している。
【0025】
図5は、実施例2に記載した閉ループラットモデルに従い、異なるレベルのカプリン酸ナトリウム(C10)(10mg及び35mg)においてUSPヘパリン(1000IU)を投与した後の、4時間にわたるAPTT応答を示している。
【0026】
図6は、実施例2に記載した閉ループラットモデルに従い、異なるレベルのカプリル酸ナトリウム(C8)(10mg及び35mg)の存在下においてUSPヘパリン(1000IU)を投与した後の、5時間にわたる抗第Xa因子応答を示している。
【0027】
図7は、実施例2の閉ループラットモデルに従い、異なるレベルのカプリン酸ナトリウム(10mg及び35mg)の存在下においてUSPヘパリン(1000IU)を投与した後の、5時間にわたる抗第Xa因子応答を示している。
【0028】
図8は、(a)皮下用USPヘパリン溶液(5000IU);(b)USPヘパリン(90000IU)とNaC10を含んでいる経口用非コーティング即時放出性錠剤;(c)USPヘパリン(90000IU)とNaC8を含んでいる経口用非コーティング即時放出性錠剤;及び、(d)実施例2に記載したように本発明に従って調製した、USPヘパリン(90000IU)とカプリン酸ナトリウムを含んでいる経口用非コーティング持続放出性錠剤;を投与した後の、8時間までの時間にわたるイヌの平均抗第Xa因子応答を示している。
【0029】
図9は、35mgの様々な強化剤(例えば、カプリル酸ナトリウム(C8)、ノナン酸ナトリウム(C9)、カプリン酸ナトリウム(C10)、ウンデカン酸ナトリウム(C11)、ラウリル酸ナトリウム(C12))及び様々な強化剤の50:50二成分混合物の存在下で、パルナパリンナトリウム(低分子量ヘパリン(LMWH))(1000IU)のリン酸緩衝生理食塩水溶液を開ループモデルのラット(n=8)に十二指腸内に投与した後の、3時間にわたる平均抗第Xa因子応答を示している。基準製品は、パルナパリンナトリウム250IUを皮下投与した。対照溶液は、強化剤は含まずにパルナパリンナトリウム1000IUを含有している溶液を、十二指腸内へ投与した。
【0030】
図10は、異なるレベルのカプリン酸ナトリウム(0.0g(対照)、0.55g、1.1g)を含んでいるロイプロリド(20mg)の溶液をイヌに対して十二指腸内投与した後の、8時間にわたるロイプロリドの平均血漿レベルを示している。
【0031】
図11は、550mgのカプリン酸ナトリウムの存在下で、溶液剤(10mL)及び即時放出性錠剤の両方としてパルナパリンナトリウム(90,000IU)を経口投与した後の、8時間にわたる、イヌにおける平均抗第Xa因子応答を示している。
【0032】
図12は、カプリン酸ナトリウムの存在下で、溶液剤(240mL)及び即時放出性錠剤の両方としてパルナパリンナトリウム(90,000IU)を経口投与した後の、24時間にわたる、ヒトにおける平均抗第Xa因子応答を示している。
【0033】
図13は、異なる投与量のカプリン酸ナトリウム(0.55g、1.1g、1.65g)の存在下で、異なる投与量のパルナパリンナトリウム(20,000IU, 45,000IU, 90,000IU)を含んでいる15mLの溶液を空腸内投与した後の、24時間にわたる、ヒトにおける平均抗第Xa因子応答を示している。
【0034】
図14は、(a)0.55gのカプリン酸ナトリウムを含んでいる即時放出性カプセル剤として;(b)0.55gのカプリン酸ナトリウムを含んでいる、Eudragit Lでコーティングした迅速崩壊性錠剤として;及び、(c)強化剤を含まずに、Eudragit Lでコーティングした迅速崩壊性錠剤として、45,000IUのパルナパリンナトリウムを経口投与した後の、8時間にわたる、イヌにおける平均抗第Xa因子応答を示している。
【0035】
図15は、45,000IUのLMWHと0.55gのカプリン酸ナトリウムを、経口、空腸内及び結腸内に同時投与した後の、8時間にわたる、イヌにおける平均抗第Xa因子応答を、皮下投与した場合と比較して示している。
【0036】
図16は、絶食状態又は食事が与えられている状態で、異なる量のカプリン酸ナトリウム(0.5g及び0.25g)と一緒にアレンドロネート(17.5mg)を経口投与した後の、36時間にわたって尿中に排出されたアレンドロネートの投与量に対して標準化されていない量を、絶食状態におけるFosamax(登録商標)(35mg)の平均血漿レベルと比較して示している。
【0037】
図17は、10mg錠剤及び20mg錠剤に含ませてゾレドロン酸を経口投与した後の、48時間にわたって尿中に排出されたゾレドロン酸の平均累積量を、Zometa(登録商標)液体濃厚物から調製したゾレドロン酸(1mg)を静脈内に注射した後に排出された量と比較して示している。
【0038】
図18は、6mgのアレンドロネート及びカプリン酸ナトリウムを3種類の異なった投与計画に従って経口投与した後の、12時間、24時間、36時間及び48時間において尿中に排出されたアレンドロネートの平均累積量を、絶食状態においてFosamax(登録商標)(35mg)を朝に投与した後で排出された量と比較して示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本明細書及び「特許請求の範囲」で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」には、当該内容によって別途明瞭に示されていない限り、複数の指示物も包含される。かくして、例えば、「an enhancer」について言及されている場合、その言及には、2種類以上の強化剤の混合物も包含され、また、「a drug」について言及されている場合、その言及には、2種類以上の薬物の混合物も包含される。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「薬物」には、ヒトを包含する動物に経口経路を介して投与するのに適した慣習的な薬物及びその類似体を包含する任意の薬物が包含される。用語「薬物」には、さらにまた、親水性又は巨大分子の薬物(例えば、ペプチド、タンパク質、オリゴ糖、多糖又はホルモンなど)を包含する経口経路を介して充分には吸収されない物質(entity)も明瞭に包含される。そのような薬物としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる:インスリン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子調節タンパク質(calcitonin gene regulating protein)、心房ナトリウム利尿タンパク質(atrial natriuretic protein)、コロニー刺激因子、ベタセロン、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン類、ソマトロピン、ソマトトロピン、ソマトスタチン、インスリン様増殖因子(ソマトメジン類)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、抗利尿ホルモン(ADH)、又は、バゾプレッシン及びその類似体、例えば、デスモプレシン、副甲状腺ホルモン(PTH)、オキシトシン、エストラジオール、成長ホルモン類、酢酸ロイプロリド、酢酸ゴセレリン、ナフェレリン(naferelin)、ブセレリン、第VIII因子、インターロイキン類、例えば、インターロイキン-2及びその類似体、並びに、抗凝血剤、例えば、ヘパリン、ヘパリノイド類、低分子量ヘパリン、ヒルジン及びその類似体、ビスホスホネート類(これは、アレンドロネート、クロドロネート、エチドロネート、インカドロネート、イバンドロネート、ミノドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、リセドロネート、チルドロネート及びゾレドロネートを包含する)、五糖類(pentassacharides)(これは、抗凝血性五糖類を包含する)、抗原類、アジュバント類など。該薬物がビスホスホネートである実施形態では、、該薬物は、アレンドロネート、クロドロネート、エチドロネート、インカドロネート、イバンドロネート、ミノドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、リセドロネート、チルドロネート及びゾレドロネートからなる群から選択される。本明細書中で使用される場合、用語「薬物」及び「ビスホスホネート」には、それらの全ての形態が包含され、ここで、そのような形態としては、光学的に純粋なエナンチオマー又はエナンチオマーのラセミ混合物若しくは他の混合物、並びに、誘導体形態、例えば、塩類、酸類及びエステル類などがある。薬物は、任意の適切な相状態で提供され得る(これは、固体、液体、溶液及び懸濁液などとして提供されることを包含する)。固体微粒子形態で提供される場合、該微粒子は、任意の適切なサイズ又は形態を有する微粒子であることができ、また、1種類以上の結晶質形態、半結晶質形態及び/又は非晶質形態を呈することができる。
【0041】
該薬物は、ナノ粒子薬物送達系又はミクロ粒子薬物送達系に含ませることが可能であり、その際、該薬物は、ナノ粒子若しくはミクロ粒子であるか、又は、ナノ粒子若しくはミクロ粒子の中に混入されているか、ナノ粒子若しくはミクロ粒子によってカプセル化されているか、ナノ粒子若しくはミクロ粒子に結合しているか、若しくは、それ以外の方法でナノ粒子若しくはミクロ粒子と関連している。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「薬物の治療上有効量(therapeutically effective amount of a drug)」は、動物(好ましくは、哺乳動物、最も好ましくは、ヒト)において、既に存在している医学的状態を治療する上で、及び/又は、医学的状態の発症を予防するか若しくは遅延させる上で、治療的に有効な反応を惹起する薬物の量のことを示している。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「強化剤(enhancer)」は、動物(例えば、ヒト)のGITを横切る薬物(特に、親水性及び/又は巨大分子の薬物)の輸送を強化することが可能な化合物(又は、化合物の混合物)のことを示しており、ここで、該強化剤は、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸又は中鎖脂肪酸誘導体である(但し、(i) 当該強化剤が中鎖脂肪酸のエステルである場合、6〜20炭素原子の当該炭素鎖長はカルボキシレート部分の鎖長に関する;及び、(ii) 当該強化剤が中鎖脂肪酸のエーテルである場合、少なくとも1のアルコキシ基が6〜20炭素原子の炭素鎖長を有している)。好ましくは、該強化剤は、中鎖脂肪酸のナトリウム塩である。最も好ましくは、該強化剤は、カプリン酸ナトリウムである。一実施形態では、該強化剤は、室温で固体である。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「中鎖脂肪酸誘導体」には、脂肪酸の塩、エステル、エーテル、酸ハロゲン化物、アミド、無水物、カルボキシレートエステル、ニトリル及びグリセリド(例えば、モノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリド)が包含される。該炭素鎖は、種々の程度の不飽和で特徴付けることができる。換言すれば、該炭素鎖は、例えば、完全に飽和していてもよく、又は、部分的に不飽和でもよい(即ち、1以上の炭素-炭素多重結合を含んでいてもよい)。用語「中鎖脂肪酸誘導体」は、その炭素鎖の当該酸基(又は、その誘導体)と反対の末端も上記部分(即ち、エステル部分、エーテル部分、酸ハロゲン化物部分、アミド部分、無水物部分、カルボキシレートエステル部分、ニトリル部分又はグリセリド部分)のうちの1つで官能化されている中鎖脂肪酸も包含することが意図されている。かくして、そのような二官能性脂肪酸誘導体には、例えば、二塩基酸及びジエステル(官能性部分が同じ種類である)が包含され、さらにまた、異なった官能性部分(例えば、アミノ酸及びアミノ酸誘導体)を含んでいる二官能性化合物、例えば、脂肪酸炭素鎖の酸又はエステル又はその塩と反対の末端にアミド部分を含んでいる中鎖脂肪酸又はそのエステル若しくは塩も包含される。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「強化剤の治療上有効量(therapeutically effective amount of an enhancer)」は、薬物の下層循環への腸内送達を強化して、経口投与を介して薬物の治療上有効量を摂取することを可能とする強化剤の量のことを示している。浸透性に乏しい薬物の胃腸内送達の強化における強化剤の有効性が投与部位に依存するということが示されている(実施例6、実施例7及び実施例12を参照されたい)、最適な送達の部位は、薬物及び強化剤に左右される。
【0046】
本発明の強化剤は、GIT細胞内層と一時的又は可逆的に相互作用して、浸透性を増大させ、そのような相互作用がなければ浸透性に乏しい分子の吸収を促進する。好ましい強化剤としては、以下のものなどがある: (i) 中鎖脂肪酸及びその塩、(ii) グリセロール及びプロピレングリコールの中鎖脂肪酸エステル、及び、(iii) 胆汁酸塩。一実施形態では、該強化剤は、中鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸の塩、エステル、エーテル又は別の誘導体(これは、好ましくは室温で固体であり、また、8〜14炭素原子の炭素鎖長を有する;但し、(i) 当該強化剤が中鎖脂肪酸のエステルである場合、8〜14炭素原子の当該炭素鎖長はカルボキシレート部分の鎖長に関する;及び、(ii) 当該強化剤が中鎖脂肪酸のエーテルである場合、少なくとも1のアルコキシ基が8〜14炭素原子の炭素鎖長を有している)。別の実施形態では、該強化剤は、中鎖脂肪酸のナトリウム塩である(ここで、中鎖脂肪酸は、8〜14炭素原子の炭素鎖長を有しており;そのナトリウム塩は、室温で固体である)。さらに別の実施形態では、該強化剤は、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム又はラウリン酸ナトリウムである。薬物及び強化剤は、1:100000〜10:1(薬物:強化剤)の比率、好ましくは、1:1000〜10:1の比率で存在させることができる。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「速度制御ポリマー材料(rate controlling polymer material)」には、本発明の固体経口投与剤形からの薬物の放出を制御することができるか又は遅延させることができる親水性ポリマー、疎水性ポリマー並びに親水性及び/又は疎水性ポリマーの混合物が包含される。適切な速度制御ポリマー材料としては、以下のものからなる群から選択される速度制御ポリマー材料などがある:ヒドロキシアルキルセルロース、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリ(エチレン)オキシド;アルキルセルロース、例えば、エチルセルロース及びメチルセルロース;カルボキシメチルセルロース、親水性セルロース誘導体;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドン;酢酸セルロース;酢酸酪酸セルロース;酢酸フタル酸セルロース;酢酸トリメリト酸セルロース;ポリ酢酸フタル酸ビニル;フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート;ポリ(アルキルメタクリレート)及びポリ(酢酸ビニル)。別の適切な疎水性ポリマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸及びそれらのそれぞれのエステルから誘導されたポリマー及び/又はコポリマー、ゼイン、蝋、セラック並びに硬化植物油などがある。
【0048】
本発明の実施に際して特に有用であるものは、ポリアクリル酸ポリマー、ポリアクリレートポリマー、ポリメタクリル酸ポリマー及びポリメタクリレートポリマー、例えば、Eudragit(登録商標)の商品名(Rohm GmbH, Darmstadt, Germany)で販売されているもの(特に、Eudragit(登録商標) L、Eudragit(登録商標) S、Eudragit(登録商標) RL、Eudragit(登録商標) RS コーティング材料及びそれらの混合物)などである。これらのポリマーの一部は、遅延放出ポリマーとして使用して、当該薬物が放出される部位を制御することができる。そのようなものとしては、ポリメタクリレートポリマー、例えば、Eudragit(登録商標)の商品名(Rohm GmbH, Darmstadt, Germany)で販売されているもの(特に、Eudragit(登録商標) L、Eudragit(登録商標) S、Eudragit(登録商標) RL、Eudragit(登録商標) RS コーティング材料及びそれらの混合物)などがある。
【0049】
本発明による固体経口投与剤形は、錠剤、マルチパーティキュレート剤又はカプセル剤であり得る。好ましい固体経口投与剤形は、薬物と強化剤の胃の中での放出を最小限度に抑えることで胃の中で強化剤の局所濃度が稀釈されるのを最小限度に抑え、当該薬物及び強化剤を腸内で放出する、遅延放出剤形である。特に好ましい固体経口投与剤形は、遅延放出急速開始(delayed release rapid onset)剤形である。そのような剤形は、薬物と強化剤の胃の中での放出を最小限度に抑えることで胃の中で強化剤の局所濃度が稀釈されるのを最小限度に抑えるが、腸内の適切な部位にいったん到達した後は、薬物及び強化剤を急速に放出し、吸収部位における薬物及び強化剤の局所濃度を最大にすることによって、浸透性に乏しい薬物の送達を最大なものとする。
【0050】
本明細書中で使用される場合、用語「錠剤」には、限定するものではないが、即時放出性(immediate release)(IR)錠剤、持続放出性(sustained release)(SR)錠剤、マトリックス錠剤、多層錠剤、多層マトリックス錠剤、徐放性(extended release)錠剤、遅延放出性(delayed release)錠剤及びパルス放出性(pulsed release)錠剤が包含され、これらは、いずれも又は全て、1以上のコーティング材料で場合によりコーティングすることが可能である(ここで、そのようなコーティング材料としては、ポリマーコーティング材料、例えば、腸溶性コーティング、速度制御コーティング、半浸透性コーティングなどがある)。用語「錠剤」には、さらにまた、薬物化合物がその中でオスマジェント(osmagent)(及び、場合により別の賦形剤)と組み合わされていて、半透膜で覆われている浸透性送達系(osmotic delivery system)も包含される(ここで、該半透膜によって、該薬物化合物がそこを通って放出されるオリフィスの形が定められる)。本発明の実施において特に有用な錠剤固体経口投与剤形としては、IR錠剤、SR錠剤、コーティングIR錠剤、マトリックス錠剤、コーティングマトリックス錠剤、多層錠剤、コーティング多層錠剤、多層マトリックス錠剤及びコーティング多層マトリックス錠剤からなる群から選択されるものなどがある。好ましい錠剤剤形は、腸溶性錠剤剤形である。特に好ましい錠剤剤形は、腸溶性急速開始錠剤剤形である。
【0051】
本明細書中で使用される場合、用語「カプセル剤」には、即時放出性カプセル剤、持続放出性カプセル剤、コーティング即時放出性カプセル剤、コーティング持続放出性カプセル剤、遅延放出性カプセル剤及びコーティング遅延放出性カプセル剤が包含される。一実施形態では、カプセル剤剤形は、腸溶性カプセル剤剤形である。別の実施形態では、カプセル剤剤形は、腸溶性急速開始カプセル剤剤形である。
【0052】
用語「マルチパーティキュレート剤(multiparticulate)」は、本明細書中で使用される場合、複数個の離散粒子、ペレット、ミニタブレット及びそれらの混合物又は組合せを意味する。経口投与剤形がマルチパーティキュレートカプセル剤である場合、そのマルチパーティキュレート剤を含有させるために、ハードゼラチンカプセル又はソフトゼラチンカプセルを適切に使用することができる。あるいは、該マルチパーティキュレート剤を含有させるために、サッシェを適切に使用することができる。該マルチパーティキュレート剤は、速度制御ポリマー材料を含んでいる層でコーティングすることができる。マルチパーティキュレート剤経口投与剤形には、インビトロ及び/又はインビボの異なった放出特性を有している粒子、ペレット又はミニタブレットの2以上の集団のブレンドを含ませることができる。例えば、マルチパーティキュレート剤経口投与剤形には、適切なカプセルに含まれている即時放出性成分及び遅延放出性成分のブレンドを含ませることができる。一実施形態では、マルチパーティキュレート剤剤形は、遅延放出急速開始ミニタブレットを含んでいるカプセル剤を含有している。別の実施形態では、マルチパーティキュレート剤剤形は、即時放出性ミニタブレットを含んでいる遅延放出性カプセル剤を含有している。さらに別の実施形態では、マルチパーティキュレート剤剤形は、遅延放出性顆粒剤を含んでいるカプセル剤を含有している。さらに別の実施形態では、マルチパーティキュレート剤剤形は、即時放出顆粒剤を含んでいる遅延放出性カプセル剤を含有している。
【0053】
別の実施形態では、マルチパーティキュレート剤を1種類以上の補助賦形剤物質と一緒に圧縮して、単層錠剤又は多層錠剤などの錠剤形態とすることができる。典型的には、多層錠剤には、同一であるか又は異なった放出特性を有する同一であるか又は異なったレベルの同じ活性成分を含有している2つの層を含ませることができる。あるいは、多層錠剤には、各層の中に異なった活性成分を含ませることができる。そのような錠剤(単層であろうと又は多層であろうと)には、付加的な制御放出特性を提供するために、場合により制御放出ポリマーをコーティングすることができる。
【0054】
本発明の多くの実施形態について記載する。いずれの場合にも、該薬物は、治療効果を惹起するのに充分な任意の量で存在させることができる。当業者には理解されるように、使用される薬物化合物の実際の量は、とりわけ、該薬物の効能、患者の詳細及びその薬物を使用する治療目的に依存する。薬物化合物の量は、適切には、約0.5μg〜約1000mgの範囲内にある。該強化剤は、経口投与を介して該薬物の治療上有効量の摂取を可能にするのに充分な任意の量で適切に存在させる。一実施形態では、該薬物及び該強化剤は、1:100000〜10:1(薬物:強化剤)の比率で存在している。別の実施形態では、薬物と強化剤の比率は、1:1000〜10:1である。使用する薬物と強化剤の実際の比率は、とりわけ、特定の薬物の効能及び特定の強化剤の強化活性に依存する。
【0055】
一実施形態では、ビスホスホネートと、そのビスホスホネートのGIT細胞内層における吸収を促進する強化剤として、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸又は中鎖脂肪酸誘導体を含んでいる医薬組成物及びその医薬組成物から製造された固体経口投与剤形が提供され、ここで、該強化剤及び該組成物は、室温で固体である。
【0056】
別の実施形態では、ビスホスホネートと、そのビスホスホネートのGIT細胞内層における吸収を促進する強化剤を含んでいる医薬組成物及びその医薬組成物から製造された固体経口投与剤形が提供され、ここで、該組成物中に存在している唯一の該強化剤は、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸又は中鎖脂肪酸誘導体である。
【0057】
さらに別の実施形態では、本発明の組成物を含んでいる多層錠剤が提供される。典型的には、そのような多層錠剤には、即時放出形態にある薬物と強化剤を含有している第1層、及び、改変された放出形態にある薬物と強化剤を含有している第2層を含ませ得る。本明細書中で使用される場合、用語「改変された放出(modified release)」には、患者に投与されたときの、薬物の持続放出、遅延放出又は別の制御放出が包含される。代替的な実施形態では、多層錠剤には、薬物を含有している第1層と強化剤を含有している第2層を含ませ得る。各層には、独立に、該薬物又は該強化剤の放出を改変させるように選択されたさらなる賦形剤を含ませることができる。かくして、該薬物及び該強化剤は、それぞれ、第1層及び第2層から、同一の速度又は異なった速度で放出され得る。あるいは、多層錠剤の各層には、薬物と強化剤の両方を、同一の量又は異なった量で含ませることができる。
【0058】
さらに別の実施形態では、本発明の組成物を含んでいるマルチパーティキュレート剤が提供される。マルチパーティキュレート剤には、粒子、ペレット、ミニタブレット又はそれらを組み合わせたものを含ませることができ、薬物及び強化剤は、そのマルチパーティキュレート剤を作り上げる粒子、ペレット又はミニタブレットの同一の集団又は異なった集団に含ませることができる。マルチパーティキュレート剤の実施形態では、マルチパーティキュレート剤を含ませるために、サッシェ及びカプセル(例えば、ハードゼラチンカプセル又はソフトゼラチンカプセル)を適切に使用することができる。マルチパーティキュレート剤剤形には、インビトロ及び/又はインビボの異なった放出特性を有している粒子、ペレット又はミニタブレットの2以上の集団のブレンドを含ませることができる。例えば、マルチパーティキュレート剤剤形には、適切なカプセルに含まれている即時放出性成分及び遅延放出性成分のブレンドを含ませることができる。
【0059】
上記で記載した実施形態のいずれの場合においても、最終的な剤形(カプセル剤、錠剤、多層錠剤など)に制御放出コーティングを施すことができる。該制御放出コーティングには、典型的には、上記で定義した速度制御ポリマー材料を含ませることができる。そのようなコーティング材料の溶解特性は、pH依存性であり得るか、又は、pHとは無関係であり得る。
【0060】
本発明の固体経口投与剤形のさまざまな実施形態には、さらに、補助賦形剤物質、例えば、稀釈剤、滑沢剤、崩壊剤、可塑剤、粘着防止剤、乳白剤、顔料、香味料なども含有させることができる。当業者には理解されるように、賦形剤の正確な選択及びその相対的な量は、ある程度、最終的な剤形に左右される。
【0061】
適切な稀釈剤としては、例えば、製薬上許容される不活性増量剤、例えば、微結晶性セルロース、乳糖、第二リン酸カルシウム、糖類及び/又は前記物質のうちのいずれかの混合物などがある。稀釈剤の例としては、以下のものを挙げることができる:微結晶性セルロース、例えば、Avicel商標(FMC Corp., Philadelphia, Pa.)(例えば、AvicelTM pH101、AvicelTM pH102、及び、AvicelTM pH112)で販売されているもの;乳糖、例えば、乳糖一水和物、乳糖無水物、及び、Pharmatose DCL21;第二リン酸カルシウム、例えば、Emcompress(登録商標)(JRS Pharma, Patterson, NY);マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロース;及び、グルコース。
【0062】
適切な滑沢剤(これは、圧縮しようとする粉末の流動性に作用する物質を包含する)は、例えば、以下のものである:コロイド状二酸化ケイ素、例えば、AerosilTM 200;タルク;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、及び、ステアリン酸カルシウム。
【0063】
適切な崩壊剤としては、例えば、僅かに架橋しているポリビニルピロリドン、トウモロコシデンプン(corn starch)、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン(maize starch)及び化工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、デンプングリコール酸ナトリウム、並びに、それらの組合せ及び混合物などがある。
【実施例】
【0064】
実施例1
TRH含有錠剤
(a) Caco-2単層
細胞培養: Caco-2細胞を、1%(v/v)非必須アミノ酸、10%ウシ胎仔血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(4.5g/L グルコース)の中で培養した。細胞は、37℃で、湿度95%におけるCO2 5%で培養した。細胞を標準的な組織培養フラスコ中で増殖させ、100%のコンフルエントに達したときにその都度継代した。次いで、Caco-2細胞を、5×105細胞/cm2の密度でポリカーボネート製フィルターインサート(Costar, 直径12mm, 孔径0.4μm)の上に播種し、6ウェル培養プレート中で、1日おきに培地を交換をしながらインキュベートした。これらの研究を通して、フィルター上に播種してから20日〜30日の間で継代30代〜40代のコンフルエントな単層を使用した。
【0065】
経上皮輸送研究: 様々なMCFAナトリウム塩の3H-TRHの輸送(頂端側から側底側への流れ)に対する効果について、以下の通り試験した:TRH流束実験についての時間ゼロで、15.0μCi/mL(0.2μM)の33H-TRHを頂端側に加えた。輸送実験は、25mM N-[2-ヒドロキシエチル]-ピペラジン-N'-[2-エタンスルホン酸](HEPES)バッファー(pH7.4)を含んでいるハンクス平衡塩類溶液(HBSS)の中で、37℃で実施した。溶解度がばらついているので、表1に示されているように、様々な濃度の異なったMCFAナトリウム塩及び様々な頂端側バッファー(apical buffer)を用いた。いずれの場合にも、側底側チャンバー(basolateral chamber)には標準的なHBSS+HEPESを含有させた。
【表1】

【0066】
細胞培養培地を除去した後、予め加温しておいたHBSS(37℃)を含有しているウェルの中に該単層を入れた(頂端側 1mL、及び、側底側 2mL)。単層を37℃で30分間インキュベートした。次に、時間ゼロで、頂端側HBSSを、強化剤化合物を含んでいるか又は含まずに、放射標識化合物を含有している対応する頂端側被験溶液と置き換えた。単層の完全性(integrity)をモニターするために、Evomを備えたMillicell ERSチョップスティックス装置(Millipore(U.K.)Ltd., Hertfordshire, UK)を用いて、時間ゼロ及び30分間隔で120分まで、該単層の経上皮電気抵抗(TEER)を測定した。該プレートを、インキュベーター(37℃)内の軌道振盪機の上に配置した。単層を横切る輸送は、30分間隔で120分まで、側底側でサンプリング(1mL)することにより追跡した。30分間隔毎に、各インサートを新鮮な予め加温しておいたHBSS(2mL)を含有している新しいウェルに移した。頂端側のストック放射能は、t=0分とt=120分に10μLのサンプルを取って測定した。シンチレーション液(10mL)を各サンプルに加え、各サンプルの1分間当たりの崩壊について、Wallac System 1409シンチレーションカウンターで測定した。各時点における頂端側及び側底側の溶液について、3H-TRH濃度の平均値を計算した。Artursson(Artursson P., J. Pharm. Sci. 79:476-482 (1990))によって記述された方法を用いて、見かけの透過係数を計算した。
【0067】
図1は、3H-TRHとC8、C10、C12、C14、C18及びC18:2ナトリウム塩の2時間にわたるCaco-2単層のTEER(Ωcm2)に対する効果を示している。C8、C10、C14及びC18についてのデータは、対照と比較してTEERが僅かに低下していることを示している。一方、C12についてのデータは、多少の細胞損傷(TEERの低下)を示しいる。この低下は、恐らく、ここで使用した強化剤の比較的高い濃度の結果であると思われる。
【0068】
図2は、C8、C10、C12、C14、C18及びC18:2ナトリウム塩の、Caco-2単層を横切る3H-TRHのPappに対する効果を示している。対照と比較して、C8、C10、C12及びC14のナトリウム塩では、その使用濃度における透過係数(Papp)が著しく増大した。C12塩に対して観察された高いPapp値がこの高い強化剤濃度における細胞損傷を示している可能性があるということは、留意される。
【0069】
ミトコンドリア毒性アッセイ: MDHの存在下におけるテトラゾリウム塩の色の変化に基づいた方法を用いて、ミトコンドリアデヒドロゲナーゼ(MDH)の活性を細胞生存のマーカーとして評価した。細胞を回収し、計数して、約106細胞/mLの密度で96ウェルプレートに播種した(1ウェル当たり細胞懸濁液100μL)。次に、加湿した空気(5% CO2)中で、該細胞を37℃で24時間インキュベートした。表1に示してある濃度の各MCFAナトリウム塩溶液を用いて多数のウェルを処理し、そのプレートを2時間インキュベートした。インキュベート後、10μLのMTT標識試薬を各ウェルに加え、4時間置いた。各ウェルに可溶化バッファー(100μL;表1を参照されたい)を加え、該プレートをさらに24時間インキュベートした。分光光度計(Dynatech MR7000)を用いて、各サンプルの570nmにおける吸光度を測定した。
【0070】
(b) インビボ投与(閉ループラットモデル)
Doluisioら(Doluisio J. T., et al: Journal of Pharmaceutical Science (1969), 58, 1196-1200)、及び、Braydenら(Brayden D.: Drug Delivery Pharmaceutical News (1997), 4(1))の方法に部分的な変更を加えて、インビボラット閉ループ試験を実施した。雄のWistar種ラット(体重範囲250g〜350g)を塩酸ケタミン/アセプロマジンを用いて麻酔した。腹部で正中線切開を行い、周囲の血管に損傷を与えないように注意しながら、十二指腸のセグメント(7〜9cmの組織)を幽門括約筋から約5cm離して取出した。37℃に加温したサンプル溶液(C8又はC10(35mg)及びTRH(500μg及び1000μg)を含んでいるPBS)及び対照(TRH(500μg及び1000μg)のみを含んでいるPBS)を、26G注射針を用いて、該十二指腸セグメントの管腔内に直接投与した。十二指腸内への全投与容積(サンプル及び対照)は、1mL/kgであった。該セグメントの近位末端を結紮し、そのループに等張生理食塩水(37℃)を噴霧して湿らせ、次いで、膨張しないようにしながら腹腔内に戻した。切開部を外科クリップを用いて閉じた。1グループの動物には、参照として、PBS中に入れたTRH(0.2mL中100μg)を皮下注射により投与した。
【0071】
図3は、上記閉ループラットモデルに従い、NaC8又はNaC10強化剤(35mg)の存在下で500μgのTRHを十二指腸内にボーラス投与した後の、血清TRH濃度-時間プロフィールを示している。図4は、上記閉ループラットモデルに従い、NaC8又はNaC10強化剤(35mg)の存在下で1000μgのTRHを十二指腸内にボーラス投与した後の、血清TRH濃度-時間プロフィールを示している。図3及び図4から、いずれの場合にも、強化剤が存在することによってTRHの血清レベルが対照TRH溶液の場合よりも有意に増大することが見て取れる。このことは、該強化剤の存在下において、薬物の吸収が増大することを示している。
【0072】
(c) 錠剤化
溶液におけるNaC8及びNaC10のTRHに対する強化効果が確立されたので、即時放出性(IR)TRH錠剤及び持続放出性(SR)TRH錠剤などを調製することができる。IR製剤及びSR製剤については、以下の表2及び表3において詳細に記載する。
【表2】

【表3】

【0073】
実施例2
ヘパリン含有錠剤
(a) 閉ループラットセグメント
TRHの代わりにUSPヘパリンを使用し且つ十二指腸内ではなく回腸内に投与して、上記実施例1(a)で実施した方法を繰り返した。腹部で正中線切開を行い、回腸の遠位末端を探し出した(回腸-盲腸接続部から約10cmの位置)。周囲の血管に損傷を与えないように注意しながら、7〜9cmの組織を取出し、遠位末端を結紮した。全血(尾動脈から新しく採取したもの)の1滴をBiotrack 512凝血モニターの試験カートリッジ上に置くことにより、活性化プロトロンビン時間(APTT)応答により示されるヘパリン吸収を測定した。APTTの測定は、様々な時点で行った。図5は、異なるレベルのカプリン酸ナトリウム(C10)(10mg及び35mg)におけるUSPヘパリン(1000iu)のAPTT応答を示している。血流中へのヘパリン吸収の指標としてAPTT応答を使用する場合、強化剤を含有しない対照ヘパリン溶液と比較して、カプリン酸ナトリウムの存在下において吸収が有意に増大していることは明白である。
【0074】
クエン酸塩を添加した血液サンプルを、3000rpmで15分間遠心分離して、抗第Xa因子分析用の血漿を得た。図6は、カプリル酸ナトリウム(C8、10mg及び35mg)の存在下におけるUSPヘパリン(1000iu)の抗第Xa因子応答を示している。図7は、カプリン酸ナトリウム(C10、10mg及び35mg)の存在下におけるUSPヘパリン(1000iu)の抗第Xa因子応答を示している。いずれの場合にも、当該対照は、強化剤を含有しない同じヘパリン濃度の溶液である。NaC8(35mgの投与量)及びNaC10(10mg及び35mgの両方の投与量)について観察された抗第Xa因子活性の有意な増大は、対照ヘパリン溶液と比較してヘパリン吸収が増大していることを示している。
【0075】
(b) 錠剤化
(i) IR錠剤
表4に詳述されている処方に従い、Manesty(E)単独錠剤プレスを用いてブレンドを直接圧縮することにより、ヘパリンナトリウムUSP(197.25IU/mg;製造元 Scientific Protein Labs., Waunkee, Wis)及び強化剤(カプリル酸ナトリウム(NaC8)及びカプリン酸ナトリウム(NaC10);供給元:Napp Technologies, New Jersey)を含んでいる即時放出性(IR)錠剤を調製した。ブレンドは、以下のように調製した:ヘパリン、強化剤及び錠剤賦形剤(適用可能な場合、コロイド状二酸化シリカ及びステアリン酸マグネシウムを除いて)を秤量して容器内に入れた。コロイド状二酸化シリカは、存在させる場合、425μmの篩を通して篩って容器内に入れ、その後、該混合物を4分間混合した後、ステアリン酸マグネシウムを加えてさらに1分間混合した。
【表4】

【0076】
上記で調製した錠剤の力価は、ヘパリンのアズール染料測定に基づくヘパリンアッセイを用いて試験した。アッセイ対象のサンプルをアズールA染料溶液に添加し、626nmにおける当該サンプル溶液の吸光度から、ヘパリン含量を計算した。表4において詳述されている選択されたバッチについての錠剤データ及び力価を、表5に記載する。
【0077】
この実施例によるIR錠剤のpH7.4のリン酸バッファー中における溶解プロフィールは、様々な時点でサンプリングしてヘパリンアッセイにより測定した。
【0078】
ヘパリン/カプリル酸ナトリウム: バッチ1及びバッチ2からの錠剤は、急速に放出し、15分間で100%の薬物化合物をもたらした。バッチ4からの錠剤も急速に放出し、30分間で100%の放出をもたらした。
【0079】
ヘパリン/カプリン酸ナトリウム: バッチ5及びバッチ6からの錠剤は、急速に放出し、15分間で100%の薬物化合物をもたらした。
【表5】

【0080】
(ii) SR錠剤
上記(i)で用いた方法と同じ方法を使用して、表6に示されている処方により持続放出性(SR)錠剤を調製した。上記(i)における方法と同じ方法を使用して制御放出性錠剤の力価を測定した。錠剤の詳細及び選択されたバッチの力価については、表7に示してある。この実施例によるSR錠剤についての溶解プロフィールは、様々な時点でサンプリングしてpH7.4におけるヘパリンアッセイにより測定した。
【0081】
ヘパリン/カプリル酸ナトリウム: バッチ8、バッチ9及びバッチ11についての溶解データは、表8に示してある。このデータから、15% Methocel K100LVを含有し、5%デンプングリコール酸ナトリウムを含有する及び含有しないヘパリン/カプリル酸ナトリウムSR錠剤(バッチ8及びバッチ9)が持続的に放出し、3〜4時間で100%放出したということが見て取れる。10%マンニトールを含有するバッチ11は、より速く放出した。
【0082】
ヘパリン/カプリン酸ナトリウム: バッチ13及びバッチ14についての溶解データは、表8に示してある。このデータから、20% Methocel K100LVを含有するヘパリン/カプリン酸ナトリウムSR錠剤(バッチ13)が薬物化合物を6時間にわたって持続的に放出したことが見て取れる。Methocel K100LVの代わりにMethocel K15Mを使用した場合(バッチ14)、薬物化合物の放出は8時間後においても完了しなかった。
【表6】

【表7】

【表8】

【0083】
(iii) 腸溶性コーティング錠剤
表9において詳述されているコーティング溶液を用いて、バッチ7及びバッチ15から得られた錠剤に腸溶性コートを施した。側方換気したコーティングパン(Freund Hi-Coater)を使用して、錠剤に、5%(w/w)コーティング溶液をコーティングした。崩壊試験は、VanKel崩壊試験機VK100E4635中で実施した。崩壊媒質は、最初、1時間は模倣胃液(pH1.2)とし、次に、リン酸バッファー(pH7)とした。記録された崩壊時間は、リン酸バッファー(pH7.4)への導入から完全崩壊までの時間とした。バッチ7から得た腸溶性コーティング錠剤の崩壊時間は34分24秒であったが、バッチ15から得た腸溶性コーティング錠剤の崩壊時間は93分40秒であった。
【表9】

【0084】
(c) イヌによる研究
上記表5及び表6のバッチ3、バッチ7及びバッチ15から得た錠剤を、単一用量クロスオーバー試験で、5匹のイヌからなるグループに経口投与した。各グループには、以下のものを投与した:(1) ヘパリン90000IU及びNaC10強化剤550mgを含有する非コーティングIR錠剤(バッチ7)を経口投与;(2) ヘパリン90000IU及びNaC8強化剤550mgを含有する非コーティングIR錠剤(バッチ3)を経口投与;(3) ヘパリン90000IU及びNaC10強化剤550mgを含有する非コーティングSR錠剤(バッチ15)を経口投与;及び、(4) ヘパリン溶液(5000IU、対照)を皮下(s.c.)投与。様々な時点で、抗第Xa因子分析用の血液サンプルを頚静脈から採取した。処置前及び処置後における全ての動物の臨床的評価では、被験体に対する副作用は全く認められなかった。図8は、参照のヘパリン溶液皮下注射と一緒に、各処置についての平均抗第Xa因子応答を示している。図8のデータは、本発明による全ての製剤について、血漿抗第Xa因子活性が増大したことを示している。この結果は、NaC8強化剤及びNaC10強化剤のいずれを用いても、生物活性ヘパリンが首尾よく送達されるということを示している。IR製剤で同じ投与量のヘパリンを使用した場合、NaC10の投与量がNaC8の投与量に比較して低いにも関わらず(NaC10の投与量はNaC8の投与量の半量であった)、NaC10強化剤でより大きな抗第Xa因子応答が観察された。その抗第Xa因子応答は、SR錠剤を使用することにより、IR製剤と比較してより長い時間プロフィールにわたって持続可能である。
【0085】
実施例3
ラットにおける十二指腸内投与後の低分子量ヘパリン(LMWH)の全身的アベイラビリティに対する強化剤の効果
雄Wistar種ラット(250g〜350g)を、塩酸ケタミン(80mg/kg)とマレイン酸アセプロマジン(3mg/kg)の混合物を筋内注射することにより麻酔した。該動物には、必要に応じて、ハロタンガスも投与した。腹部を正中線切開し、十二指腸を取出した。
【0086】
リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)の中で再調製した被験溶液(ここで、該被験溶液は、パルナパリンナトリウム(LMWH)(Opocrin SBA, Modena, Italy)を含有し、強化剤を含有しているか又は含有していない)を、幽門から約10〜12cmの腸内に挿入されたカニューレを介して投与した(1mL/kg)。この処理中、腸は、生理食塩水を用いて湿気を維持させた。薬物の投与後、腸セグメントを注意深く腹中に戻し、切開部を外科クリップを用いて閉じた。非経口参照溶液(0.2mL)は、首の背部のひだ(fold)に皮下投与した。
【0087】
様々な時間間隔で、尾動脈から血液サンプルを採取し、血漿抗第Xa因子活性を測定した。図9は、35mgの様々な強化剤[カプリル酸ナトリウム(C8)、ノナン酸ナトリウム(C9)、カプリン酸ナトリウム(C10)、ウンデカン酸ナトリウム(C11)、ラウリル酸ナトリウム(C12)]及び様々な強化剤の50:50二成分混合物の存在下で、パルナパリンナトリウム(LMWH)(1000IU)のリン酸緩衝生理食塩水溶液を開ループモデルのラット(n=8)に十二指腸内投与した後の、3時間にわたる平均抗第Xa因子応答を示している。基準製品は、パルナパリンナトリウム250IUを皮下投与した。対照溶液は、強化剤は含まずにパルナパリンナトリウム1000IUを含有している溶液を、十二指腸内へ投与した。
【0088】
図9は、ラットへ十二指腸内投与された後、強化剤の非存在下におけるLMWHの全身送達は比較的劣っているが、中鎖脂肪酸のナトリウム塩を同時投与することにより、ラットの腸からのLMWHの全身送達が有意に増大したことを示している。
【0089】
実施例4
イヌにおける十二指腸内投与後のロイプロリドの全身的アベイラビリティに対する強化剤の効果
ビーグル種イヌ(10〜15kg)を、メデトミジン(80μg/kg)を用いて鎮静化させ、内視鏡を口、食道及び胃を経由して十二指腸内に挿入した。脱イオン水中で再調製した被験溶液(10mL)(ここで、該被験溶液は、酢酸ロイプロリド(Mallinckrodt Inc, St. Louis, MO)を含有し、強化剤を含んでいるか又は含んでいない)を内視鏡を介して十二指腸内に投与した。内視鏡を除去した後、アチパメゾール(400μg/kg)を用いて沈静化を解いた。0.5mLの滅菌水中で再調製したロイプロリド(1mg)含有非経口参照溶液を、静脈と皮下にそれぞれ投与した。
【0090】
様々な時間間隔で、頚静脈から血液サンプルを採取し、血漿ロイプロリドレベルを測定した。得られた平均血漿ロイプロリドレベルは、図10に示してある。結果は、強化剤を用いずに十二指腸内に投与された場合のロイプロリドの全身送達は極僅かであるが、強化剤を同時投与することによって、ロイプロリドの全身送達が強化剤の投与量に依存して著しく強化されたことを示している(強化剤の上位投与量では、8%の平均(%)相対的バイオアベイラビリティが観察された)。
【0091】
実施例5
イヌにおける経口投与後のLMWHの全身的アベイラビリティに対する強化剤の効果
(a) 顆粒の製造
パルナパリンナトリウム(47.1%)、カプリン酸ナトリウム(26.2%)、マンニトール(16.7%)及びExplotabTM(Roquette Freres, Lestrem, France)(10.0%)を含有している200gのブレンドを、Kenwood Chefミキサー内で、造粒溶媒として水を用いて造粒した。得られた顆粒を、オーブン内で、67〜68℃でトレイ乾燥させ、振動造粒機内の1.25mmと0.8mmと0.5mmの篩をそれぞれ通して粒度を小さくした。得られた顆粒の実際の力価は、ラベル表示の101.1%であると決定された。
【0092】
(b) LMWH 30,000IU/カプリン酸ナトリウム183mgの即時放出性錠剤の製造
上記顆粒を、5分間、0.5%ステアリン酸マグネシウムと袋混合させた。得られたブレンドを、Riva Piccalo錠剤プレス上で13mm円形凹型機械を用いて錠剤化して、パルナパリンナトリウム30,000IU及びカプリン酸ナトリウム183mgの目標錠剤含有量とした。該錠剤は、108Nの平均錠剤硬度及び675mgの平均錠剤重量を有していた。該錠剤の実際のLMWH含量は、ラベル表示の95.6%であると決定された。
【0093】
錠剤の崩壊試験を実施した。崩壊かご(disintegration basket)の6つのチューブのそれぞれに、1個の錠剤を入れた。崩壊装置は、37℃で、脱イオン水を使用し、毎分29〜30サイクルで作動させた。錠剤は、550秒で崩壊した。
【0094】
(c) LMWH 90,000IU/カプリン酸ナトリウム0.55gの溶液の製造
パルナパリンナトリウム90,000IU及びカプリン酸ナトリウム0.55gを個別に秤量してガラスびんの中に入れ、得られた粉末混合物を、水10mLを用いて再調製した。
【0095】
(d) イヌの生物試験的評価
6匹の雌ビーグル種イヌ(9.5〜14.4Kg)の群における単一用量の非無作為化クロスオーバー研究において、処置の間の7日のウォッシュアウトで、パルナパリンナトリウム90,000IU及びカプリン酸ナトリウム550mgを溶液剤形(上記溶液組成物10mLに相当する)及び迅速崩壊錠剤剤形(上記錠剤組成物の3錠に相当する)の両方として投与した。パルナパリンナトリウム5000IUを含有する皮下注射を参照として用いた。
【0096】
様々な時間間隔で、頚静脈から血液サンプルを採取し、抗第Xa因子活性を測定した。データは、ベースラインの抗第Xa因子活性に対して調整した。得られた平均血漿抗第Xa因子レベルは、図11に要約してある。皮下による参照レグ(reference leg)と比較した場合、錠剤剤形及び溶液剤形はいずれも良好な応答を示した。血漿抗第Xa因子レベルにより決定される固体剤形からのパルナパリンナトリウムの平均送達量は、対応する溶液剤形からの平均送達量より著しく多かった。
【0097】
実施例6
ヒトにおける経口投与後のLMWHの全身的アベイラビリティに対する強化剤の効果
(a) 顆粒の製造
Gral 10の中で、パルナパリンナトリウム(61.05%)、カプリン酸ナトリウム(33.95%)及びポリビニルピロリドン(Kollidon 30, BASF AG, Ludwigshafen, Germany)(5.0%)を5分間混合した後、全ての材料物質が明らかに造粒されるまで、混合しながら、蠕動ポンプを用いて水を徐々に加えた。
【0098】
得られた顆粒は、オーブン中で、50℃で24時間トレイ乾燥させた。乾燥した顆粒は、Fitzmill M5Aを用いて、30メッシュの篩を通して粉砕した。
【0099】
(b) LMWH 45,000IU/カプリン酸ナトリウム275mgの即時放出性錠剤の製造
10リットル容のV Coneブレンダーの中で、パルナパリンナトリウム/カプリン酸ナトリウム/ポリビニルピロリドンの顆粒(78.3%)を、マンニトール(16.6%)、Explotab(5.0%)及びステアリン酸マグネシウム(1.0%)と5分間混合した。得られたブレンド(480.41mg/g)の力価は、ラベル表示の100.5%であった。該ブレンドを、Piccola 10ステーションプレス上で13mm円形標準凹型機械を用いて自動モードで錠剤化して、LMWH 45,000IU及びカプリン酸ナトリウム275mgの目標含有量とした。得られた即時放出性錠剤は、1027mgの平均錠剤重量、108Nの平均錠剤硬度及び97%ラベル表示の力価を有していた。該錠剤は、最大で850秒までの崩壊時間を示し、pH1.2のバッファー中に30分で100%溶解した。
【0100】
(c) LMWH 90,000IU/カプリン酸ナトリウム550mgの溶液の製造
それぞれがLMWH 45,000IU及びカプリン酸ナトリウム275mgを含んでいる2個の即時放出性錠剤を水30mLの中で再調製した。
【0101】
(d) ヒトの生物試験的評価
オープンラベルによる3処置及び3期間の研究において、各投与の間の7日のウォッシュアウトで、LMWH 90,000IU及びカプリン酸ナトリウム550mgを、12人の健康なヒトのボランティアに、溶液剤形(上記溶液剤形の30mLに相当する)及び固体剤形(上記組成物の2錠に相当する)の両方として経口投与した。ここで、処置A(即時放出性錠剤)及び処置B(経口溶液)は、無作為化した方法でクロスオーバーさせたが、処置C(6,400IU FluxumTM SC(Hoechst Marion Roussel);市販されている注射可能なLMWH製品)は、単一ブロックとして同一の被験者に投与した。
【0102】
様々な時間間隔で血液サンプルを採取し、抗第Xa因子活性を測定した。得られた平均抗第Xa因子レベルは、図12に示してある。処置A及び処置Bは、参照の皮下処置と比較して、予想外に低い応答を示した。しかしながら、血漿抗第Xa因子レベルにより測定されるLMWHの平均送達量については、固体剤形からの平均送達量が、対応する溶液剤形からの平均送達量(0.9%の平均(%)バイオアベイラビリティしか観察されなかった)よりも著しく多かったことは留意すべきである。
【0103】
実施例7
ヒトにおける空腸内投与後のLMWHの全身的アベイラビリティに対する強化剤の効果
(a) 溶液の製造
以下のLMWH/カプリン酸ナトリウムの組合わせを、脱イオン水15mLを用いて調製した:
(i) LMWH 20,000IU、カプリン酸ナトリウム0.55g;
(ii) LMWH 20,000IU、カプリン酸ナトリウム1.1g;
(iii) LMWH 45,000IU、カプリン酸ナトリウム0.55g;
(iv) LMWH 45,000IU、カプリン酸ナトリウム1.1g;
(v) LMWH 45,000IU、カプリン酸ナトリウム1.65g。
【0104】
(b) ヒト生物研究評価
最大で11人までの健康なヒトのボランティアでのオープンラベルによる6処置期間のクロスオーバー研究において、上記溶液のそれぞれの15mLを、鼻空腸挿管(nasojejunal intubation)を介して空腸内に投与した。この研究では、皮下参照として、3,200IUのFluxumTM SCを含ませた。様々な時間間隔で血液サンプルを採取し、抗第Xa因子活性を測定した。得られた平均抗第Xa因子レベルは、図13に示してある。
【0105】
本研究における各処置についての平均(%)相対的バイオアベイラビリティが、実施例6における溶液剤形について観察された平均(%)バイオアベイラビリティよりも著しく高かったことは留意すべきである。本研究における処置については、5%〜9%の範囲の平均(%)バイオアベイラビリティが観察されたが、このことは、カプリン酸ナトリウムを含有する好ましいLMWH経口投与剤形は胃内での薬物及び強化剤の放出を最少限度に抑え且つ小腸内での薬物及び強化剤の放出が最大となるように設計すべきであることを示唆している。
【0106】
実施例8
LMWHと強化剤を含有する遅延放出性錠剤剤形の製造
(a) LMWH/カプリン酸ナトリウムの顆粒の製造
造粒溶媒としてKollidon 30の50%水溶液を用いて、パルナパリンナトリウム:カプリン酸ナトリウム(0.92:1)の500gのバッチをGral 10内で造粒した。得られた顆粒は、Niro Aeromatic Fluidized Bed Drierの中で、最終製品温度25℃で60分間乾燥させた。乾燥した顆粒は、Fitzmill M5Aの中で、30メッシュの篩を通して粉砕した。得られた乾燥顆粒の力価は、ラベル表示の114.8%であると決定された。
【0107】
(b) LMWH 22,500IU/カプリン酸ナトリウム275mgの即時放出性錠剤の製造
10L容のVコーンブレンダーの中のマンニトール(16%)、PolyplasdoneTM XL(ISP, Wayne, NJ)(5%)及びAerosilTM(1%)(Degussa, Rheinfelden, Germany)に上記顆粒(77.5%)を添加し、10分間混合した。得られたブレンドにステアリン酸マグネシウム(0.5%)を加え、混合をさらに3分間続けた。得られたブレンドを、Piccola錠剤プレス上で13mm円形標準凹型機械を用いて錠剤化して、平均錠剤重量772mg及び平均錠剤硬度140Nとした。
【0108】
得られた錠剤の実際の力価は、1錠当たりLMWH 24,017IUと決定された。
【0109】
(c) LMWH 22,500IU/カプリン酸ナトリウム275mgの遅延放出性錠剤の製造
Hi-Coaterの中で、Eudragit L 12.5(50%)、イソプロピルアルコール(44.45%)、セバシン酸ジブチル(3%)、タルク(1.3%)及び水(1.25%)を含んでいるコーティング溶液を用いて上記錠剤をコーティングし、最終的に重量(%)が5.66%増加した。
【0110】
得られた腸溶性コーティング錠剤は、pH1.2の溶液中における崩壊試験に1時間付された後でも無傷のままであり、pH6.2の媒質中において、32〜33分後に完全な崩壊が観察された。
【0111】
実施例9
LMWHと強化剤を含有する即時放出性カプセル剤剤形の製造
(a) LMWH 22,500IU/カプリン酸ナトリウム275mgの即時放出性カプセル剤の製造
前実施例の(a)項から得られた顆粒をサイズ00の硬ゼラチンカプセル中に手で充填して、前実施例の錠剤の顆粒含有量に相当する目標充填重量とした。
【0112】
実施例10
強化剤を含まずにLMWHを含有する遅延放出性錠剤剤形の製造
(a) LMWH顆粒の製造
造粒溶媒としてKollidon 30の50%水溶液を用いて、パルナパリンナトリウム:AvicelTM pH101(0.92:1)(FMC, Little Island, Co. Cork, Ireland)の500gのバッチを、Gral 10内で造粒した。得られた顆粒は、Niro Aeromatic Fluidized Bed Drierの中で、排ガス温度38℃で60分間乾燥させた。乾燥した顆粒は、Fitzmill M5Aの中で、30メッシュの篩を通して粉砕した。得られた乾燥顆粒の力価は、ラベル表示の106.5%であると決定された。
【0113】
(b) LMWH 22,500IUの即時放出性錠剤の製造
25L容のVコーンブレンダーの中のマンニトール(21%)及びAerosil(1%)に上記顆粒(77.5%)を添加し、10分間混合した。得られたブレンドにステアリン酸マグネシウム(0.5%)を加え、混合をさらに1分間続けた。
【0114】
得られたブレンドを、Piccola錠剤プレス上で13mm円形標準凹型機械を用いて錠剤化して、平均錠剤重量671mg及び平均錠剤硬度144Nとした。
【0115】
得られた錠剤の実際の力価は、1錠当たりLMWH 21,651IUと決定された。
【0116】
(c) LMWH 22,500IUの遅延放出性錠剤の製造
Hi-Coaterの中で、Eudragit L 12.5(50%)、イソプロピルアルコール(44.45%)、セバシン酸ジブチル(3%)、タルク(1.3%)及び水(1.25%)を含んでいるコーティング溶液を用いて上記錠剤をコーティングし、最終的に重量(%)が4.26%増加した。
【0117】
得られた腸溶性コーティング錠剤は、pH1.2の溶液中における崩壊試験に1時間付された後でも無傷のままであり、pH6.2の媒質中において、22分後に完全な崩壊が観察された。
【0118】
実施例11
イヌにおける経口投与後のLMWHの全身的アベイラビリティに対する、強化剤含有制御放出性剤形の効果
(a) イヌの研究評価
オープンラベルによる非無作為化クロスオーバーブロック設計で、LMWH 45,000IUを、(a)カプリン酸ナトリウム550mgを含有する即時放出性カプセル剤剤形(実施例9で製造した2個のカプセル剤に相当する)として、(b)カプリン酸ナトリウム550mgを含有する遅延放出性錠剤剤形(実施例8で製造した2個の錠剤に相当する)として、及び、(c)強化剤を全く含有しない遅延放出性錠剤剤形(実施例10で製造した2個の錠剤に相当する)として、8匹のビーグル種イヌ(10.5〜13.6kg)に投与した。この研究では、皮下参照として、3,200IUのFluxumTM SCを含めた。
【0119】
様々な時間間隔で頚静脈から血液サンプルを採取し、抗第Xa因子活性を測定した。その平均抗第Xa因子レベルは、図14に示してある。
【0120】
カプリン酸ナトリウムの非存在下において、強化剤を含んでいない遅延放出性固体剤形からのLMWHの全身送達が最少であったことは留意すべきである。それとは対照的に、カプリン酸ナトリウムを含んでいる遅延放出性LMWH固体剤形の投与後は、良好な抗第Xa因子応答が観察された。カプリン酸ナトリウムを含んでいる遅延放出性剤形からの平均抗第Xa因子応答は、同等のレベルの薬物及び強化剤を含んでいる即時放出性剤形からの平均抗第Xa因子応答よりも著しく高かった。
【0121】
実施例12
強化剤を同時投与した後のイヌにおけるLMWHの全身的アベイラビリティに対する投与部位の効果
4匹のビーグル種イヌ(10〜15Kg)に対して、空腸及び大腸に、それぞれ、カテーテルを外科的に取り付けた。脱イオン水で再調製した、カプリン酸ナトリウムと一緒にLMWHを含んでいる被験溶液(10mL)を、経口的に又は腸内カテーテルを介して、当該イヌに投与した。この研究では、皮下参照として、3,200IUのFluxumTM SCを含めた。
【0122】
様々な時間間隔で前肢静脈から血液サンプルを採取し、抗第Xa因子活性を測定した。得られた平均抗第Xa因子レベルは、図15に示してある。結果は、強化剤の存在下におけるLMWHの腸からの吸収が胃からの吸収よりも著しく高いことを示している。
【0123】
実施例13
ロイプロリド含有錠剤
実施例1及び実施例2で用いられたのと同様の種類のアプローチに従い、表10に詳述されている処方に準じて、ロイプロリドを含有するIR錠剤を調製することができる。
【表10】

【0124】
実施例14
アレンドロネートの空腸内投与
オープンラベルによる無作為化7処置6期間の研究として、IJ投与又はPO投与で、各投与間に少なくとも48時間のウォッシュアウト期間を設けて、研究を行った。本研究には、19人の健康な男性被験者を参加させた。少なくとも1回投与された15人の被験者は、薬物動態解析に含めた。薬物動態解析は、アレンドロネートの尿中排出に基づいていた。表11には、この研究における処置、累積量及び尿中に排泄された投与量の割合(%)(累積量を基準とする)を示してある。
【表11】

【0125】
これらのデータによって示されているように、アレンドロネートの胃腸における吸収は、カプリン酸ナトリウムと一緒に空腸内ボーラス溶液として投与された場合、現在市販されている非コーティング即時放出性Fosamax(登録商標)参照錠剤と比較して、有意に強化された。
【0126】
実施例15
アレンドロネートの空腸内及び経口投与
オープンラベルによる部分的無作為化3処置3期間の研究において、各投与間に少なくとも48時間のウォッシュアウトを設けて、12人の男性被験者に対して本研究中に少なくとも1回投与し、また、その12人の被験者は、薬物動態解析に含めた。この研究においては、以下の処置で投与した。
【表12】

【0127】
これらのデータによって示されているように、水性空腸内液として(25分間かけて)カプリン酸ナトリウムと同時投与された後で、アレンドロネートの体内吸収(systemic absorption)は著しく強化された。この結果は、アレンドロネートとカプリン酸ナトリウム(ClO)の腸溶性コーティング即時放出性経口投与剤形では、現在市販されている剤形と比較してアレンドロネートの経口吸収が強化されていて、有利であるということを示している。
【0128】
実施例16
アレンドロネートの経口投与
吸収強化剤を含んでいる固体経口投与剤形として投与されたアレンドロネートの相対的バイオアベイラビリティを、市販されている参照剤形であるFosamax(登録商標)の経口投与と比較するために、研究を行った。この研究は、オープンラベルによる部分的無作為化単一用量5処置5期間の研究として、各投与間に少なくとも48時間のウォッシュアウトを設けて実施した。16人の健康なボランティア(20〜34歳で体重64.1〜81.5kgの13人の男性被験者及び3人の女性被験者)を参加させ、下記表13に記載されているように5種類の処置全てを実施した。
【表13】

【0129】
36時間のサンプリング期間にわたってヒトの尿のサンプルを収集し、蛍光検出によるHPLCで分析した(アッセイ範囲:2〜2000ng/mL)。試験された処置についての尿中に排出された投与量の平均割合(%)(累積量を基準とする)は、以下の通りであった。
【表14】

【0130】
対応のあるt-検定を実施して、被験試作品の排出された投与量(%)とFosamax(登録商標)についての排出された投与量(%)を比較した。
【表15】

【0131】
参照製品であるFosamax(登録商標)について観察されたものとの比較で、絶食させて投与した被験試作品(1錠又は2錠として投与)について、尿中に排出されたアレンドロネートの投与された用量の割合(%)における統計的に有意な増加が観察された。
【0132】
Fosamax(登録商標)について観察されたものとの比較で、食事を与えて投与した被験試作品(処置C - 有意水準5%)について、排出されたアレンドロネートの投与された用量の割合(%)における統計的に有意な減少が観察された。被験投与について尿中で回収された投与された用量の累積量は、Fosamax(登録商標)について観察されたものよりも4.6〜6.4倍多かった。
【0133】
アレンドロネートと同時投与されるC10の量を0.25gから0.5gに増大させても、尿中で回収された投与された用量の割合(%)は変化しなかった(それぞれ、1.6±1.7%、及び、1.5±0.6%)。アレンドロネート17.5mgをC1O 0.25gと一緒に2個の錠剤として投与することにより(処置D)、処置Eに従って1個の錠剤として投与した場合(1.2±0.9%)よりもアレンドロネートの投与された用量の多い割合(%)が回収された(1.6±1.7%)。食事が与えられている状態で、アレンドロネート17.5mgとC1O 0.5gを2個の錠剤として投与した場合(処置C)、尿中において、0.2±0.2%のアレンドロネートが測定された。
【0134】
標準的な朝食と一緒に又は標準的な朝食の最大で2時間後でアレンドロネートを投与した場合におけるFosamax(登録商標)のバイオアベイラビリティはきわめて小さいということが刊行された文献に記載されているということは、留意すべきである。
【0135】
実施例17
ゾレドロン酸の経口投与剤形のバイオアベイラビリティについての研究
本発明の経口投与剤形にあるゾレドロン酸のバイオアベイラビリティをゾレドロン酸の現在販売されている形態(Zometa(登録商標)の名称で、静脈内注射用の液体濃厚物としてNovartisによって提供されている)と比較するために、単一用量のクロスオーバー研究を行った。考慮中の経口投与剤形は、カプリン酸ナトリウムと10mg又は20mgのゾレドロン酸を含有し、実施例6、実施例8及び実施例13の方法に従って形成された腸溶性コーティング錠剤であった。該液体濃厚物は、ゾレドロン酸1mgを含んでいる静脈内注射として投与した。
【0136】
研究を終えた12人の被験者から得た利用可能な全てのデータを、薬物動態解析で用いた(参照製品についての被験者1に関しては、データがなかった)。薬物動態についての全ての計算は、SAS (PC バージョン6.12)を用いて行った。各期間内の各被験者についての各尿収集物におけるゾレドロン酸のレベルは、濃度(ng/mL)及び総排出量(ng)の両方に関して、分析検査室によって報告された。報告された濃度値が定量化についてのアッセイ限界よりも低いサンプルは、薬物動態解析で使用するために排出量ゼロとした。
【0137】
排出されたゾレドロン酸について報告された量(ナノグラム;g×10-9)は、薬物動態解析に付す前に、報告された各値に10-6を掛けることによって、ミリグラム(g×10-3)に変換した。これは、統計的なデータをを簡明にするために、及び、排出された総量を投与された用量と同じ単位(mg)で表すために実施した。各期間中に各被験者について時間単位の間隔「0〜12」、「12〜24」、「24〜36」及び「36〜48」にわたって排出された量を付加的に合計して、時間単位の間隔「0〜12」、「0〜24」、「0〜36」及び「0〜48」にわたって排出された累積量を得た。
【0138】
SAS統計プログラム(PCバージョン6.12)の一般線形モデル(GLM)法を用いて、統計解析を行った。排出されたゾレドロン酸の累積量及び排出されたゾレドロン酸の自然対数に変換された(ln-変換)累積量について、分散分析により評価した。該解析において、治療効果についての仮説検証を行った(α=0.05)。
【0139】
対象となるペアワイズ比較は、10mgの錠剤と注射の間の比較、20mgの錠剤と注射の間の比較、及び、10mgの錠剤と20mgの錠剤の間の比較であった。該解析に用いた統計モデルは、被験者及び治療効果についての項を含んでいた。治療効果の同等性の検定についてのF比は、効果についての平均二乗誤差項を分子として、及び、分散分析から得られた平均二乗誤差項を分母として使用して、構成した。
【0140】
仮説検証に加えて、α=0.10(全体)、α=0.05(それぞれ)でのt-検定アプローチ(2,1-側)により、ペアワイズ処理比較についての信頼区間(90%)を計算した:
区間下限=(XT-XR)-Se*tα/2
区間上限=(XT-XR)+Se*tα/2
[ここで、
XTは、被験処置についての最小二乗平均であり、XRは、参照処置についての最小二乗平均である。本発明の2つの錠剤の比較においては、XTは、本発明の20mg錠剤についての最小二乗平均であり、XRは、本発明の10mg錠剤についての最小二乗平均である。
Seは、SAS estimate statement から得られた平均の間の推定される差の標準誤差である。
tα/2は、α=0.10レベルでの統計解析における誤差項の自由度でのt-分布から得られた臨界値である]。
【0141】
ln-変換されたデータに関して、変換値についての結果から区間を計算し、次いで、累乗して非変換スケールに変換した:
区間限界=e(ln-変換区間限界)
【0142】
参照平均(非変換値)のパーセントで表される「真の」平均処置差について、及び、真の幾何平均比(ln-変換値)について、信頼区間をコンピューターを用いて計算した。同様に、ln-変換値からの累乗した被験最小二乗平均及び参照最小二乗平均によって、これらの処置についての幾何平均の推定値を得た。
【0143】
それぞれ一晩の絶食後に投与された10mg錠剤、20mg錠剤及び1mg Zometa(登録商標)注射液を比較するために、上記結果の統計解析を行った。下記表16〜表18には、ゾレドロン酸の尿中排出についてのペアワイズ処理比較の結果について要約してある。図17は、3種類の処置についての平均累積排出量を示している。平均累積尿中排出量に関して、統計的に有意な差は検出されなかった。10mg錠剤と20mg錠剤の平均48時間尿中排出量は、ほぼ0.5mgに等しかった。1mg Zometa(登録商標)注射液の処置でも、同じ時間での平均排出量は、同様である。3種類の剤形全てについて、ゾレドロン酸排出の大部分(85%〜87%)は、投与後最初の12時間以内に起こった。
【0144】
下記表16では、絶食させた12人の閉経後の女性への単一の10mg錠剤及び1mg注射液の投与後におけるゾレドロン酸の尿中排出量の統計的比較について要約している。
【表16】

【0145】
20mg錠剤とZometa(登録商標)注射液1mgの比較
下記表17では、絶食させた12人の閉経後の女性への単一の20mg錠剤及び1mg注射液の投与後におけるゾレドロン酸の尿中排出量の統計的比較について要約している。
【表17】

【0146】
20mg錠剤と10mg錠剤の比較
表18では、絶食させた12人の閉経後の女性への単一の10mg錠剤及び20mg錠剤の投与後におけるゾレドロン酸の尿中排出量の統計的比較について要約している。
【表18】

【0147】
実施例18
アレンドロネートの経口投与剤形のバイオアベイラビリティについての研究
この研究は、各投与の間に少なくとも7日のウォッシュアウトを設けた、オープンラベルによる4処置4期間の無作為化クロスオーバー研究であった。この研究の目的は、食事を与えられている状態及び絶食状態にある閉経後の女性への単一用量の投与後における本発明のアレンドロネートナトリウムの剤形の薬物動態及びバイオアベイラビリティを測定して、骨粗鬆症に使用するための適切な用量を決定すること、及び、当該剤形が「Merck & Co., Inc.」によって販売されているFosamax(登録商標)錠剤に関連した朝投与するという慣習をどの程度克服できるかについて決定することであった。
【0148】
合計で17人の被験者を参加させ、その17人の被験者に少なくとも1回投与した。16人の被験者がこの研究を完了し、少なくとも3回の処置を受けた。この研究で実施された処置は以下の通りであった:
処置A: Fosamax(登録商標)35mg錠剤を、添付文書に従って投与する(一晩の絶食後に投与;被験者は、投与後4時間は直立している);
処置B: 6mg錠剤を、Fosamax(登録商標)の用法に従って投与する(一晩の絶食後に投与;被験者は、投与後4時間は直立している);
処置C: 6mg錠剤を、午後6時の夕食後、午後10時30分に投与する(午後6時30分から朝食まで絶食;被験者は、投与後少なくとも2時間は横になる);
処置D: 6mg錠剤を、標準的なFDA高脂肪性朝食を摂って、午前中に投与する(被験者は、投与後4時間は直立している)。
【0149】
アレンドロネートは、蛍光検出法を用いる有効なHPLCによって、尿サンプル中で測定した。該アレンドロネート尿アッセイによる定量化の限界は、2ng/mLであった(アッセイ範囲 2〜500ng/mL)。尿サンプルは、投与前、並びに、投与後0〜12時間、12〜24時間、24〜36時間及び36〜48時間に収集した。
【0150】
最終的なデータ解析に基づいて、4時間の絶食後で午後に6mgの投与(処置C)又は10時間の絶食後で午前に6mgの投与(処置B)によって、参照錠剤 35mg Fosamax(登録商標)(処置A)と比較して、アレンドロネートのバイオアベイラビリティが、それぞれ15.4倍及び11.8倍増大した。食事が与えられている状態で午前に6mgの投与(処置D)では、参照錠剤 35mg Fosamax(登録商標)(処置A)と比較して、アレンドロネートのバイオアベイラビリティが2.8倍増大した。10時間の絶食後で午前に6mgの投与(処置B)と比較して、アレンドロネートの最も高い相対的バイオアベイラビリティは、処置C(午後に投与;4時間の絶食後)の127±104%であり、処置D(午前に投与;食事あり)では、20±35%であり、処置A(Fosamax(登録商標)を午前に投与;10時間の絶食後)では、10±5%であった。
【0151】
先のデータに基づいて、5.65mgのアレンドロネートを含んでいる強化剤含有錠剤は、35mg Fosamax(登録商標)錠剤と同等である。これは、本研究の目的のためには、四捨五入して、6mgであった。この研究の目的は、最大で16人の閉経後の女性における単一用量4種クロスオーバーバイオアベイラビリティ研究において強化剤含有アレンドロネート錠剤をFosamax(登録商標)と比較することであった。各処置期間の間に、少なくとも7日のウォッシュアウトを設けた。
【0152】
用いた方法は、上記試験方法に従う、蛍光検出によるHPLCであった。該方法は、アレンドロネートとリン酸カルシウムの共沈殿に基づいている。次いで、当該分子の第1級アミノ基を2,3-ナフタレンジカルボキシアルデヒド及び(NDA)-N-アセチル-D-ペニシラミン(NAP)で誘導体化して、蛍光誘導体を形成させる。次いで、その誘導体化された分子で勾配HPLCを実施し、検出は、励起波長420nm、発光波長490nmで行う。上記アレンドロネート尿アッセイによる定量化の限界は、2ng/mLであった(アッセイ範囲 2〜500ng/mL)。
【0153】
薬物動態パラメータは、WinNonlinTM バージョン4.0.1(Pharsight Corporation, USA)を用いて計算した。以下のパラメータは、ノンコンパートメント法を用いて、アレンドロネートについての尿中濃度から導いた:
各時点において排出された累積量(Aet)及び排出された総量(AeT)、
各時点における排出速度(Aet/t)、総体的な排出速度(AeT/T)、
観察された最大排出速度(max rate)、及び、測定可能な最後の速度(rate last)。
【0154】
参照処置と比較した被験処置の相対的バイオアベイラビリティ(F%)は、個々の被験者に基づいて計算した(個々の各被験者によって当該試験で排出されたアレンドロネートの量(投与量に基づいて調整)を、同じ被験者によって当該参照で排出されたアレンドロネートの量(投与量に基づいて調整)で割る);
【数1】

【0155】
相対的バイオアベイラビリティは、「処置A」(Fosamax(登録商標) 35mgを午前に投与;10時間の絶食後)又は「処置B」(6mgを午前に投与;10時間の絶食後)を参照処置として用いて計算した。被験者08は、参照の投与(処置A)を受けなかったので、この個体についての相対的バイオアベイラビリティを計算するための参照値としては、処置Aを受けた個体群についての平均累積排出量を用いた。これらの計算値の平均を、平均相対的バイオアベイラビリティとして提示する。
【0156】
正式な分析の前に、薬物動態データの見直しを行った。この見直しには、データの欠落及び異常値についてのチェックが含まれていた。番号12の被験者は、自主的に同意を取り消したので本研究を完了せず、番号17の被験者に代えた。従って、薬物動態解析には番号12の被験者は含めなかった。被験者8は、処置期間2(処置A)の間に投与を受けなかったが、薬物動態解析に含めた。この個体についての相対的バイオアベイラビリティを計算するための参照値としては、処置Aを受けた個体群についての平均累積排出量を用いた。
【0157】
この研究には合計で17人の女性被験者を参加させ、この研究の間にその17人の女性被験者に少なくとも1回投与した。15人の被験者がこの研究を完了し、4種類の処置全てを受けた。1人の被験者(被験者12)は、処置期間1(処置A)における投与後、本研究についての同意を取り消した。1人の被験者(被験者8)は家族の非常事態のために処置期間2(処置A)において投与を受けなかったが、本研究に戻ってその残りの期間を完了する許可を責任者から与えられた。1人のボランティア(被験者6)は、Fosamax(登録商標)錠剤を摂取したときに、感知可能な量のアレンドロネートを全く吸収しなかった。彼女は非応答者として分類された。それは、彼女は、Fosamax(登録商標)錠剤からアレンドロネートを吸収する能力が欠如しているので、患者として治療を受けることができないと思われるからである。強化された錠剤の投与を同じ方法で受けた場合に、彼女が通常の量のアレンドロネートを吸収したことは、留意されるべきである。従って、本発明の強化された錠剤は、上記のような非応答者を治療するのに適切であり得る。
【0158】
完全なデータセットに基づいて、記述統計を計算した。被験者S06(Fosamax(登録商標)に対する非応答者)のデータセットは省いた。以下の結果は、最も信頼のおけるデータセットに基づいている。即ち、被験者S06(参照処置に対する非応答者)は記述統計から省いた。
【0159】
参照錠剤であるFosamax(登録商標)(処置A)と比較した強化剤含有アレンドロネート錠剤からのアレンドロネートのバイオアベイラビリティの順位は、以下の通りである:処置C(午後に投与;4時間の絶食後) 1536±1554%、処置B(午前に投与;10時間の絶食後) 1180±536%、及び、次いで、処置D(午前に投与;食事あり) 283±559%。
【0160】
10時間の絶食後で午前に投与された強化剤含有アレンドロネート錠剤(処置B)との比較で最も高いアレンドロネートの相対的バイオアベイラビリティは、処置C(午後に投与;4時間の絶食後)の127±104%であり、処置D(午前に投与;食事あり)では、20±35%であり、次いで、処置A(Fosamax(登録商標)を午前に投与;10時間の絶食後)では、10±5%であった。
【0161】
投与後尿中に排出されたアレンドロネートの最も高い総累積量は、処置C(午後に投与;4時間の絶食後)の220±163μgであり、処置B(午前に投与;10時間の絶食後)では、203±87μgであり、次いで、処置D(午前に投与;食事あり)では、33±54μgであり、これらとの比較で、参照錠剤であるFosamax(登録商標)では、113±55μgであった。
【0162】
投与後に測定された最も速い総アレンドロネート排出速度は、処置C(午後に投与;4時間の絶食後)の5.2±3.9μg/時間であり、処置B(午前に投与;10時間の絶食後)では、4.8±2.1μg/時間であり、次いで、処置D(午前に投与;食事あり)では、0.8±1.3μg/時間であり、これらとの比較で、参照錠剤であるFosamax(登録商標)では、2.7±1.3μg/時間であった。
【0163】
それぞれの投与から回収されたアレンドロネートの総割合(%)は、処置C(午後に投与;4時間の絶食後)の投与後で最も高くて3.7±2.7%であり、処置B(午前に投与;10時間の絶食後)では、3.4±1.5%であり、次いで、処置D(午前に投与;食事あり)では、0.6±0.9%であり、これらとの比較で、参照錠剤であるFosamax(登録商標)では、0.3±0.2%であった。
【0164】
これらの結果は、アレンドロネートの既存の剤形と比較して本発明のアレンドロネート錠剤が優れたバイオアベイラビリティを有していることを示しているのみではなく、アレンドロネートの投与条件におけるより大きなフレキシビリティーがバイオアベイラビリティを低下させることなく存在し得ることも示している。慣習的なビスホスホネート製剤についての投与計画では、以下のことが必要とされる:(1)朝に投与すること;(2)絶食状態で投与すること;及び、(3)投与後2時間までは全ての食物、飲料及び他の薬物を避けること。それに反して、本発明の強化剤含有アレンドロネート錠剤では、慣習的なビスホスホネート製剤の投与計画に従って投与することが可能であるばかりではなく、朝以外の日中の時間に、一晩の絶食時間より少ない絶食時間の後で、また、食物及び/又は飲料の消費におけるその後の遅延を考慮しないで、投与することも可能である。本発明の強化剤含有アレンドロネート錠剤は、さらにまた、既存の剤形にあるアレンドロネートの実質的に高い投与量に相当するバイオアベイラビリティレベルも提供する。本発明の剤形が示すバイオアベイラビリティにおけるこの強化によって、同等のバイオアベイラビリティの達成においてより少ない投与量のビスホスホネートを使用することが可能であり、又は、同等の投与量を用いてより高いバイオアベイラビリティを達成することが可能である。
【0165】
本発明の組成物及び剤形には、上記で記載した中鎖脂肪酸及び中鎖脂肪酸誘導体以外の強化剤を使用することも包含される。バイオアベイラビリティを増大させるために、並びに、眠りから覚めた朝以外の時間に投与すること又は食物、飲料(水以外)、カルシウム補助食品及び/若しくは薬物の消費の2時間以内における投与を可能とするために、中鎖脂肪酸以外の脂肪酸;イオン性、非イオン性及び親油性の界面活性剤;脂肪アルコール;胆汁酸塩及び胆汁酸;ミセル;キレート剤などの吸収強化剤を使用することができる。
【0166】
本発明の範囲内で考慮される非イオン性界面活性剤としては、以下のものを挙げることができる:アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルマクロゴルグリセリド;ポリオキシアルキレンエーテル;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシアルキレンアルキルフェノール;ポリオキシアルキレンアルキルフェノール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;グリセリド、植物油、硬化植物油、脂肪酸及びステロールからなる群から選択された少なくとも1種類とポリオールとの親水性エステル交換反応産物;ポリオキシエチレンステロール、その誘導体及び類似体;ポリオキシエチル化ビタミン及びその誘導体;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ラウリン酸PEG-10、ラウリン酸PEG-12、ラウリン酸PEG-20、ラウリン酸PEG-32、ジラウリン酸PEG-32、オレイン酸PEG-12、オレイン酸PEG-15、オレイン酸PEG-20、ジオレイン酸PEG-20、オレイン酸PEG-32、オレイン酸PEG-200、オレイン酸PEG-400、ステアリン酸PEG-15、ジステアリン酸PEG-32、ステアリン酸PEG-40、ステアリン酸PEG-100、ジラウリン酸PEG-20、トリオレイン酸PEG-25グリセリル、ジオレイン酸PEG-32、ラウリン酸PEG-20グリセリル、ラウリン酸PEG-30グリセリル、ステアリン酸PEG-20グリセリル、オレイン酸PEG-20グリセリル、オレイン酸PEG-30グリセリル、ラウリン酸PEG-30グリセリル、ラウリン酸PEG-40グリセリル、PEG-40パーム核油、PEG-50硬化ヒマシ油、PEG-40ヒマシ油、PEG-35ヒマシ油、PEG-60ヒマシ油、PEG-40硬化ヒマシ油、PEG-60硬化ヒマシ油、PEG-60トウモロコシ油、PEG-6カプレート/カプリレートグリセリド、PEG-8カプレート/カプリレートグリセリド、ラウリン酸ポリグリセリル-10、PEG-30コレステロール、PEG-25フィトステロール、PEG-30ダイズステロール、トリオレイン酸PEG-20、オレイン酸PEG-40ソルビタン、ラウリ
ン酸PEG-80ソルビタン、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85、POE-9ラウリルエーテル、POE-23ラウリルエーテル、POE-10オレイルエーテル、POE-20オレイルエーテル、POE-20ステアリルエーテル、トコフェリルPEG-100コハク酸エステル、PEG-24コレステロール、オレイン酸ポリグリセリル-10、モノステアリン酸スクロース、モノラウリン酸スクロース、モノパルミチン酸スクロース、PEG10-100ノニルフェノールシリーズ、PEG15-100オクチルフェノールシリーズ、及び、ポロキサマー。
【0167】
本発明の範囲内で考慮されるイオン性界面活性剤としては、以下のものを挙げることができる:アルキルアンモニウム塩;フシジン酸塩;アミノ酸、オリゴペプチド及びポリペプチドの脂肪酸誘導体;アミノ酸、オリゴペプチド及びポリペプチドのグリセリド誘導体;レシチン及び水素化レシチン;リゾレシチン及び水素化リゾレシチン;リン脂質及びその誘導体;リゾリン脂質及びその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキルスルフェートの塩;脂肪酸塩;ナトリウムドクセート;アシルラクチレート;モノグリセリド及びジグリセリドのモノアセチル化及びジアセチル化酒石酸エステル;コハク酸化モノグリセリド及びジグリセリド;モノグリセリド及びジグリセリドのクエン酸エステル;ラウリル硫酸ナトリウム;及び、第4級アンモニウム化合物。
【0168】
本発明の範囲内で考慮される親油性界面活性剤としては、以下のものを挙げることができる:脂肪アルコール;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル類;ステロール及びステロール誘導体;ポリオキシエチル化ステロール及びステロール誘導体;ポリエチレングリコールアルキルエーテル;糖エステル;糖エーテル;モノグリセリド及びジグリセリドの乳酸誘導体;グリセリド、植物油、硬化植物油、脂肪酸及びステロールからなる群から選択された少なくとも1種類とポリオールとの疎水性エステル交換反応産物;油溶性ビタミン及びビタミン誘導体;及び、それらの混合物。この群の中で、好ましい親油性界面活性剤としては、グリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそれらの混合物などを挙げることができるか、又は、好ましい親油性界面活性剤は、植物油、硬化植物油及びトリグリセリドからなる群から選択された少なくとも1種類とポリオールとの疎水性エステル交換反応産物である。
【0169】
本発明の範囲内で考慮される胆汁酸塩及び胆汁酸としては、以下のものを挙げることができる:ジヒドロキシ胆汁酸塩、例えば、デオキシコール酸ナトリウム、トリヒドロキシ胆汁酸塩、例えば、コール酸ナトリウム、コール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、ケノデオキシコール酸(「ケノジオール」又は「ケン酸(chenic acid)」とも称される)、ウルソデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロリトコール酸、タウロケノデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、グリココール酸、 グリコデオキシコール酸、グリコリトコール酸、グリコケノデオキシコール酸、及び、グリコウルソデオキシコール酸。
【0170】
本発明の範囲内で考慮される可溶化剤としては、以下のものを挙げることができる:アルコール及びポリオール、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール及びその異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び別のセルロース誘導体、中鎖脂肪酸及びその誘導体のモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド;グリセリド シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体;約200〜約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル、例えば、テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル又はメトキシPEG;アミド及び別の窒素含有化合物、例えば、2-ピロリドン、2-ピペリドン、ε-カプロラクタム、N-アルキルピロリドン、N-ヒドロキシアルキルピロリドン、N-アルキルピペリドン、N-アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド及びポリビニルピロリドン;エステル、例えば、プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、モノ酢酸プロピレングリコール、ジ酢酸プロピレングリコール、ε-カプロラクトン及びその異性体、δ-バレロラクトン及びその異性体、β-ブチロラクトン及びその異性体;並びに、当技術分野で知られている別の可溶化剤、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、N-メチルピロリドン、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及び、水。
【0171】
さらに別の適切な界面活性剤は、当業者には明らかである、並びに/又は、適切な教科書及び文献に記載されている。
【0172】
本発明は、本明細書に記載されている特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際、本明細書中に記載されているものに加えて、本発明の様々な部分的変更は、以上の説明および付随する図面から当業者には明らかになるであろう。そのような部分的変更は、添付した「特許請求の範囲」の範囲内に含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】図1は、実施例1に記載した、0分及び30分間隔で2時間までの時間における、3H-TRHとC8、C10、C12、C14、C18及びC18:2のナトリウム塩の、Caco-2単層におけるTEER(Ωcm2)に対する効果を示している。
【図2】図2は、実施例1に記載した、C8、C10、C12、C14、C18及びC18:2のナトリウム塩の、Caco-2単層内の3H-TRH輸送についてのPappに対する効果を示している。
【図3】図3は、実施例1に記載した閉ループラットモデルに従い、NaC8又はNaC10強化剤(35mg)の存在下で500μgのTRHを十二指腸内にボーラス投与した後の、血清TRH濃度-時間プロフィールを示している。
【図4】図4は、実施例1に記載した閉ループラットモデルに従い、NaC8又はNaC10強化剤(35mg)の存在下で1000μgのTRHを十二指腸内にボーラス投与した後の、血清TRH濃度-時間プロフィールを示している。
【図5】図5は、実施例2に記載した閉ループラットモデルに従い、異なるレベルのカプリン酸ナトリウム(C10)(10mg及び35mg)においてUSPヘパリン(1000IU)を投与した後の、4時間にわたるAPTT応答を示している。
【図6】図6は、実施例2に記載した閉ループラットモデルに従い、異なるレベルのカプリル酸ナトリウム(C8)(10mg及び35mg)の存在下においてUSPヘパリン(1000IU)を投与した後の、5時間にわたる抗第Xa因子応答を示している。
【図7】図7は、実施例2の閉ループラットモデルに従い、異なるレベルのカプリン酸ナトリウム(10mg及び35mg)の存在下においてUSPヘパリン(1000IU)を投与した後の、5時間にわたる抗第Xa因子応答を示している。
【図8】図8は、(a)皮下用USPヘパリン溶液(5000IU);(b)USPヘパリン(90000IU)とNaC10を含んでいる経口用非コーティング即時放出性錠剤;(c)USPヘパリン(90000IU)とNaC8を含んでいる経口用非コーティング即時放出性錠剤;及び、(d)実施例2に記載したように本発明に従って調製した、USPヘパリン(90000IU)とカプリン酸ナトリウムを含んでいる経口用非コーティング持続放出性錠剤;を投与した後の、8時間までの時間にわたるイヌの平均抗第Xa因子応答を示している。
【図9】図9は、35mgの様々な強化剤(例えば、カプリル酸ナトリウム(C8)、ノナン酸ナトリウム(C9)、カプリン酸ナトリウム(C10)、ウンデカン酸ナトリウム(C11)、ラウリル酸ナトリウム(C12))及び様々な強化剤の50:50二成分混合物の存在下で、パルナパリンナトリウム(低分子量ヘパリン(LMWH))(1000IU)のリン酸緩衝生理食塩水溶液を開ループモデルのラット(n=8)に十二指腸内に投与した後の、3時間にわたる平均抗第Xa因子応答を示している。基準製品は、パルナパリンナトリウム250IUを皮下投与した。対照溶液は、強化剤は含まずにパルナパリンナトリウム1000IUを含有している溶液を、十二指腸内へ投与した。
【図10】図10は、異なるレベルのカプリン酸ナトリウム(0.0g(対照)、0.55g、1.1g)を含んでいるロイプロリド(20mg)の溶液をイヌに対して十二指腸内投与した後の、8時間にわたるロイプロリドの平均血漿レベルを示している。
【図11】図11は、550mgのカプリン酸ナトリウムの存在下で、溶液剤(10mL)及び即時放出性錠剤の両方としてパルナパリンナトリウム(90,000IU)を経口投与した後の、8時間にわたる、イヌにおける平均抗第Xa因子応答を示している。
【図12】図12は、カプリン酸ナトリウムの存在下で、溶液剤(240mL)及び即時放出性錠剤の両方としてパルナパリンナトリウム(90,000IU)を経口投与した後の、24時間にわたる、ヒトにおける平均抗第Xa因子応答を示している。
【図13】図13は、異なる投与量のカプリン酸ナトリウム(0.55g、1.1g、1.65g)の存在下で、異なる投与量のパルナパリンナトリウム(20,000IU, 45,000IU, 90,000IU)を含んでいる15mLの溶液を空腸内投与した後の、24時間にわたる、ヒトにおける平均抗第Xa因子応答を示している。
【図14】図14は、(a)0.55gのカプリン酸ナトリウムを含んでいる即時放出性カプセル剤として;(b)0.55gのカプリン酸ナトリウムを含んでいる、Eudragit Lでコーティングした迅速崩壊性錠剤として;及び、(c)強化剤を含まずに、Eudragit Lでコーティングした迅速崩壊性錠剤として、45,000IUのパルナパリンナトリウムを経口投与した後の、8時間にわたる、イヌにおける平均抗第Xa因子応答を示している。
【図15】図15は、45,000IUのLMWHと0.55gのカプリン酸ナトリウムを、経口、空腸内及び結腸内に同時投与した後の、8時間にわたる、イヌにおける平均抗第Xa因子応答を、皮下投与した場合と比較して示している。
【図16】図16は、絶食状態又は食事が与えられている状態で、異なる量のカプリン酸ナトリウム(0.5g及び0.25g)と一緒にアレンドロネート(17.5mg)を経口投与した後の、36時間にわたって尿中に排出されたアレンドロネートの投与量に対して標準化されていない量を、絶食状態におけるFosamax(登録商標)(35mg)の平均血漿レベルと比較して示している。
【図17】図17は、10mg錠剤及び20mg錠剤に含ませてゾレドロン酸を経口投与した後の、48時間にわたって尿中に排出されたゾレドロン酸の平均累積量を、Zometa(登録商標)液体濃厚物から調製したゾレドロン酸(1mg)を静脈内に注射した後に排出された量と比較して示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ以下で定義される治療上有効量の薬物及び強化剤を腸に送達するのに有効な、ビスホスホネート及び強化剤を含んでいる医薬組成物であって、該強化剤が、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸又は中鎖脂肪酸誘導体を含んでいて、室温で固体である、上記医薬組成物。
【請求項2】
前記炭素鎖長が、8〜14炭素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記強化剤が、中鎖脂肪酸のナトリウム塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記強化剤が、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム及びラウリン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記薬物及び前記強化剤が、1:100,000〜10:1(薬物:強化剤)の比率で存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種類の補助賦形剤をさらに含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ビスホスホネートが、アレンドロネート、クロドロネート、エチドロネート、インカドロネート、イバンドロネート、ミノドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、リセドロネート、チルドロネート及びゾレドロネートからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物を含んでいる固体経口投与剤形であって、該剤形中の前記ビスホスホネート及び前記強化剤がそれぞれ治療上有効量で存在している、上記固体経口投与剤形。
【請求項9】
前記剤形が、錠剤、カプセル剤又はマルチパーティキュレート剤である、請求項8に記載の剤形。
【請求項10】
前記剤形が遅延放出剤形である、請求項8に記載の剤形。
【請求項11】
前記剤形が錠剤である、請求項8に記載の剤形。
【請求項12】
前記錠剤が多層錠剤である、請求項11に記載の剤形。
【請求項13】
前記剤形が、速度制御ポリマー材料をさらに含んでいる、請求項8に記載の剤形。
【請求項14】
前記速度制御ポリマー材料がHPMCである、請求項13に記載の剤形。
【請求項15】
前記速度制御ポリマー材料が、アクリル酸若しくはメタクリル酸及びそれらのそれぞれのエステルから誘導されたポリマーであるか、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸及びそれらのそれぞれのエステルから誘導されたコポリマーである、請求項13に記載の剤形。
【請求項16】
前記組成物が、圧縮して錠剤形態とした後、速度制御ポリマー材料でコーティングされている、請求項13に記載の剤形。
【請求項17】
前記錠剤が多層錠剤である、請求項16に記載の剤形。
【請求項18】
前記剤形がマルチパーティキュレート剤である、請求項8に記載の剤形。
【請求項19】
前記マルチパーティキュレート剤が、離散粒子、ペレット、ミニタブレット又はそれらの組み合わせを含んでいる、請求項18に記載の剤形。
【請求項20】
前記マルチパーティキュレート剤が、粒子、ペレット、ミニタブレット又はそれらの組み合わせのうちの2以上の集団のブレンドを含んでおり、ここで、各集団は、インビトロ又はインビボの異なった放出特性を有している、請求項19に記載の剤形。
【請求項21】
前記マルチパーティキュレート剤が、ゼラチンカプセル内にカプセル化されている、請求項18に記載の剤形。
【請求項22】
前記カプセルが、速度制御ポリマー材料でコーティングされている、請求項21に記載の剤形。
【請求項23】
前記マルチパーティキュレート剤が、サッシェ内に入れられている、請求項18に記載の剤形。
【請求項24】
前記離散粒子、ペレット、ミニタブレット又はそれらの組み合わせが圧縮されて錠剤となっている、請求項19に記載の剤形。
【請求項25】
前記錠剤が、速度制御ポリマー材料でコーティングされている、請求項24に記載の剤形。
【請求項26】
前記錠剤が多層錠剤である、請求項24に記載の剤形。
【請求項27】
前記錠剤が多層錠剤である、請求項25に記載の剤形。
【請求項28】
前記ビスホスホネートと前記強化剤が、前記剤形内に、1:100,000〜10:1(薬物:強化剤)の比率で存在している、請求項8に記載の固体経口投与剤形。
【請求項29】
前記比率が1:1,000〜10:1(薬物:強化剤)である、請求項28に記載の固体経口投与剤形。
【請求項30】
約0.5μg〜約1,000mgのビスホスホネートを含んでいる、請求項8に記載の固体経口投与剤形。
【請求項31】
前記ビスホスホネートがアレンドロネートである、請求項8に記載の固体経口投与剤形。
【請求項32】
前記ビスホスホネートがリセドロネートである、請求項8に記載の固体経口投与剤形。
【請求項33】
前記ビスホスホネートがゾレドロン酸である、請求項8に記載の固体経口投与剤形。
【請求項34】
前記ビスホスホネートがイバンドロネートである、請求項8に記載の固体経口投与剤形。
【請求項35】
前記組成物が遅延放出腸溶性錠剤の形態にある、請求項8に記載の固体経口投与剤形。
【請求項36】
前記ビスホスホネートと前記強化剤が、前記剤形内に、1:1,000〜10:1(薬物:強化剤)の比率で存在している、請求項35に記載の固体経口投与剤形。
【請求項37】
前記強化剤がカプリン酸ナトリウムである、請求項35に記載の固体経口投与剤形。
【請求項38】
前記ビスホスホネートがアレンドロネートである、請求項29に記載の固体経口投与剤形。
【請求項39】
前記ビスホスホネートがアレンドロネートである、請求項30に記載の固体経口投与剤形。
【請求項40】
前記ビスホスホネートがリセドロネートである、請求項29に記載の固体経口投与剤形。
【請求項41】
前記ビスホスホネートがリセドロネートである、請求項30に記載の固体経口投与剤形。
【請求項42】
前記ビスホスホネートがゾレドロン酸である、請求項29に記載の固体経口投与剤形。
【請求項43】
前記ビスホスホネートがゾレドロン酸である、請求項30に記載の固体経口投与剤形。
【請求項44】
前記ビスホスホネートがイバンドロネートである、請求項29に記載の固体経口投与剤形。
【請求項45】
前記ビスホスホネートがイバンドロネートである、請求項30に記載の固体経口投与剤形。
【請求項46】
治療上有効量のビスホスホネート及び強化剤を腸に送達するのに有効な、ビスホスホネート及び強化剤を含んでいる医薬組成物であって、該強化剤が、
(i) 6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸の塩;
(ii) 中鎖脂肪酸ハロゲン化物誘導体、中鎖脂肪酸無水物誘導体又は中鎖脂肪酸グリセリド誘導体であって、それぞれ、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有するもの;
(iii) 前記脂肪酸塩と反対の末端に、酸ハロゲン化物部分、酸無水物部分又はグリセリド部分を有している、項(i)の脂肪酸塩;
(iv) 前記ハロゲン化物部分と反対の末端に、酸ハロゲン化物部分、酸無水物部分又はグリセリド部分を有している、上記項(ii)の酸ハロゲン化物誘導体;
(v) 前記無水物と反対の末端に、酸無水物部分、酸ハロゲン化物部分又はグリセリド部分を有している、上記項(ii)の無水物誘導体;又は、
(vi) 前記グリセリド部分と反対の末端に、グリセリド部分、酸ハロゲン化物部分又は酸無水物部分を有している、上記項(ii)のグリセリド誘導体;
を含んでいて、室温で固体である、上記医薬組成物。
【請求項47】
治療上有効量のビスホスホネート及び強化剤を腸に送達するのに有効な、ビスホスホネート及び強化剤を含んでいる医薬組成物であって、該強化剤が、
(1) 6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸又は中鎖脂肪酸誘導体を含んでおり;
(2) 該組成物中に存在している唯一の強化剤であり;及び、
(3) ビスホスホネートの下層循環への腸内送達を強化する;
上記医薬組成物。
【請求項48】
前記強化剤が、8〜14炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸の塩である、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記脂肪酸塩がナトリウム塩である、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記脂肪酸塩が、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム及びラウリン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記薬物及び前記強化剤が、1:100000〜10:1(薬物:強化剤)の重量比で存在している、請求項47に記載の組成物。
【請求項52】
錠剤、カプセル剤又はマルチパーティキュレート剤の形態にある、請求項47に記載の組成物。
【請求項53】
前記強化剤が、
(a) 6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する脂肪酸の酸塩、酸ハロゲン化物、酸無水物又はグリセリド;及び、
(b) 項(a)の誘導体であって、該炭素鎖の該酸塩基と反対の末端に酸ハロゲン化物部分、酸無水物部分又はグリセリド部分を有しているという点で、二官能性であるもの;
からなる群から選択される、請求項47に記載の組成物。
【請求項54】
室温で固体である、請求項47に記載の組成物。
【請求項55】
室温で固体である、請求項53に記載の組成物。
【請求項56】
剤形を製造する方法であって、
(a) ビスホスホネートと強化剤を含んでいるブレンドを提供するステップであって、該強化剤は、室温で固体であり、且つ、ビスホスホネートの下層循環への腸内送達を強化すること;及び、
(b) 該ブレンドから固体経口投与剤形を形成させるステップ;
を含み、ここで、前記強化剤が、
(i) 6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸の塩;
(ii) 中鎖脂肪酸ハロゲン化物誘導体、中鎖脂肪酸無水物誘導体又は中鎖脂肪酸グリセリド誘導体であって、それぞれ、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有するもの;
(iii) 前記脂肪酸塩と反対の末端に、酸ハロゲン化物部分、酸無水物部分又はグリセリド部分を有している、項(i)の脂肪酸塩;
(iv) 前記ハロゲン化物部分と反対の末端に、酸ハロゲン化物部分、酸無水物部分又はグリセリド部分を有している、上記項(ii)の酸ハロゲン化物誘導体;
(v) 前記無水物と反対の末端に、酸無水物部分、酸ハロゲン化物部分又はグリセリド部分を有している、上記項(ii)の無水物誘導体;又は、
(vi) 前記グリセリド部分と反対の末端に、グリセリド部分、酸ハロゲン化物部分又は酸無水物部分を有している、上記項(ii)のグリセリド誘導体;
を含んでいる、上記方法。
【請求項57】
前記形成ステップが、前記ブレンドを錠剤に直接圧縮することを含んでいる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記形成ステップが、前記ブレンドを造粒して前記固体経口投与剤形に組み入れるための粒剤を形成させることを含んでいる、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記形成ステップが、前記ブレンドをカプセル化することを含んでいる、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記薬物と前記強化剤を1:100,000〜10:1(薬物:強化剤)の比率で配合する、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記固体経口投与剤形を腸溶性コーティングでコーティングするステップをさらに含んでいる、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
医学的状態を治療又は予防する方法であって、治療上有効量の請求項1に記載の組成物を患者に経口投与するステップを含んでいる、上記方法。
【請求項63】
前記医学的状態が骨粗鬆症である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記医学的状態が転移性骨癌である、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記医学的状態が関節リウマチである、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記医学的状態が骨折である、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
患者が食物、薬剤又は水以外の飲料を消費する前の30分間以内に前記投与ステップが実施される、請求項62に記載の方法。
【請求項68】
前記投与ステップが朝以外の日中に実施される、請求項62に記載の方法。
【請求項69】
前記投与ステップが夕方に実施される、請求項62に記載の方法。
【請求項70】
患者が横になる前の30分間以内に前記投与が実施される、請求項62に記載の方法。
【請求項71】
医学的状態を治療又は予防する方法であって、治療上有効量の請求項47に記載の組成物を患者に経口投与するステップを含んでいる、上記方法。
【請求項72】
患者が食物、薬剤又は水以外の飲料を消費する前の30分間以内に前記投与ステップが実施される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
患者が食物、薬剤又は水以外の飲料を消費する前の30分間以内に前記投与ステップが実施される、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記投与ステップが朝以外の日中に行われる、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
患者が横になる前の30分間以内に前記投与が実施される、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
ビスホスホネート及び強化剤を含んでいる医薬組成物であって、該強化剤はビスホスホネートの下層循環への腸内送達を強化し、また、該組成物は、患者が食物、薬剤又は水以外の飲料を消費する前の30分間以内に患者に投与される場合に、治療上有効量のビスホスホネートを送達する、上記組成物。
【請求項77】
請求項76に記載の組成物を含んでいる、経口投与剤形。
【請求項78】
医学的状態を治療又は予防する方法であって、治療上有効量の請求項76に記載の組成物を患者に経口投与するステップを含んでいる、上記方法。
【請求項79】
ビスホスホネート及び強化剤を含んでいる医薬組成物であって、該強化剤はビスホスホネートの下層循環への腸内送達を強化し、また、該組成物は、朝以外の日中に患者に投与される場合に、治療上有効量のビスホスホネートを送達する、上記組成物。
【請求項80】
請求項79に記載の組成物を含んでいる、経口投与剤形。
【請求項81】
医学的状態を治療又は予防する方法であって、治療上有効量の請求項79に記載の組成物を患者に経口投与するステップを含んでいる、上記方法。
【請求項82】
ビスホスホネート及び強化剤を含んでいる医薬組成物であって、該強化剤はビスホスホネートの下層循環への腸内送達を強化し、また、該組成物は、患者が横になる前の30分間以内に患者に投与される場合に、治療上有効量のビスホスホネートを送達する、上記組成物。
【請求項83】
請求項82に記載の組成物を含んでいる、経口投与剤形。
【請求項84】
医学的状態を治療又は予防する方法であって、治療上有効量の請求項82に記載の組成物を患者に経口投与するステップを含んでいる、上記方法。
【請求項85】
ビスホスホネート及び強化剤を含んでいる医薬組成物であって、該強化剤はビスホスホネートの下層循環への腸内送達を強化し、また、該組成物は、患者が食物、薬剤又は水以外の飲料を消費した後の6時間以内に患者に投与される場合に、治療上有効量のビスホスホネートを送達する、上記組成物。
【請求項86】
請求項85に記載の組成物を含んでいる、経口投与剤形。
【請求項87】
医学的状態を治療又は予防する方法であって、治療上有効量の請求項85に記載の組成物を患者に経口投与するステップを含んでいる、上記方法。
【請求項88】
骨粗鬆症を予防又は治療する方法であって、治療上有効量の請求項1に記載の組成物を患者に経口投与するステップを含み、該投与ステップは、1週間に1回実施される、上記方法。
【請求項89】
約1mg〜約20mgのビスホスホネートが経口投与される、請求項62に記載の方法。
【請求項90】
約2mg〜約7mgのビスホスホネートが経口投与される、請求項62に記載の方法。
【請求項91】
約1mg〜約100mgのビスホスホネートが経口投与される、請求項87に記載の方法。
【請求項92】
約1mg〜約50mgのビスホスホネートが経口投与される、請求項87に記載の方法。
【請求項93】
治療上有効量の薬物及び強化剤を腸に送達するのに有効な、アレンドロネート及び強化剤を含んでいる経口投与用医薬組成物であって、就寝時に患者に投与される場合に治療上有効量のアレンドロネートを送達する、上記医薬組成物。
【請求項94】
治療上有効量の薬物及び強化剤を腸に送達するのに有効な、アレンドロネート及び強化剤を含んでいる経口投与用医薬組成物であって、1週間当たりの用量約1〜約10mg、1日当たりの用量約0.1〜約2mg又は1ヵ月当たりの用量約3〜約45mgで骨粗鬆症の予防に有効である、上記医薬組成物。
【請求項95】
治療上有効量の薬物及び強化剤を腸に送達するのに有効な、アレンドロネート及び強化剤を含んでいる経口投与用医薬組成物であって、食物、薬剤又は水以外の飲料を消費した後の6時間以内に患者に投与される場合に、治療上有効量のアレンドロネートを送達する、上記医薬組成物。
【請求項96】
治療上有効量の薬物及び強化剤を腸に送達するのに有効な、アレンドロネート及び強化剤を含んでいる経口投与用医薬組成物であって、1週間当たりの用量約2〜約20mg、1日当たりの用量約0.2〜約4mg又は1ヶ月当たりの用量約6〜約90mgで骨粗鬆症の治療に有効である、上記医薬組成物。
【請求項97】
治療上有効量の薬物及び強化剤を腸に送達するのに有効な経口投与用医薬組成物であって、ゾレドロン酸及び強化剤を含んでいる、上記医薬組成物。
【請求項98】
骨癌の治療に有効である、請求項95に記載の組成物。
【請求項99】
骨粗鬆症の治療又は予防に有効である、請求項95に記載の組成物。
【請求項100】
請求項95に記載の組成物を含んでいる経口投与剤形であって、約1〜約25mgのゾレドロン酸を含んでいる、上記経口投与剤形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−533349(P2009−533349A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504354(P2009−504354)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/008935
【国際公開番号】WO2007/117706
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508299382)メリオン リサーチ III リミテッド (1)
【Fターム(参考)】