説明

強化要素を備えるガラスユニット

本発明は、プラスチック材料製の周囲フレームまたは周囲要素がオーバーモールドされた板ガラス要素(10)を備える、ガラス取り付けに関する。上記フレームまたは周囲要素は、板ガラス要素のための少なくとも一つの強化要素(13’、14’、15、16、17、18’、19’、19”、20)を備え、この強化要素は、オーバーモールドプラスチック材料(9)によって上記フレームまたは周囲要素に接続され、または板ガラス要素(10)の近傍で平行またはほぼ平行な方向に配置されたコア部分(11)を備える輪郭によって形成され、板ガラス要素に対して遠位側の少なくとも一つの突出部分(12)を備える。上記発明は、上記突出部が、上記板ガラス要素の方向に開いているポケットを形成していないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームまたは周囲強化要素を有する板ガラス要素を備える、ガラスユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のガラスユニットの詳細な例は、自動車のガラスユニット、特に、自動車に設置された板ガラスルーフ、すなわちサンルーフまたは固定ルーフのものである。
【0003】
そのようなガラスユニットは、現在のところ、美的な機能、取り付け機能、および/またはアクセサリ一体化機能を呈するプラスチック製のフレームまたはフレーム要素を備えることが多い。それらは、一般的に金属製のフレームまたは強化要素を備え、これにより剛性を向上させる。
【0004】
これらの強化要素は、単一の要素で形成されてもよく、個別のインサート、すなわち、ルーフ、前側インサート、後側インサート、場合によっては二つの側方インサートから構成されてもよい。
【0005】
一般的に、これらの要素は、位置決めされた強化要素を含む型の中にプラスチックを注入することにより、封入、すなわちオーバーモールド技術を使用して直接的に接着接合されるか、または埋め込まれてもよい。一般に、プラスチックはポリウレタンであり、しかし、熱可塑性物質でもあってよい。
【0006】
現在サンルーフとして用いられるガラスは、一般的に4mmから5mmの厚さを有する強化一体ガラスである。
【0007】
このガラスは、オーバーモールド処理の熱的および機械的応力に耐えるのに十分な機械的強度を有する。
【0008】
自動車産業部門における現在の動向は、事故または車両侵入の場合の有利な耐衝撃特性、外部の騒音をろ過することによるより良い音響効果、および有効な紫外線フィルタを有し、さらにアンテナや加熱手段等を装着した、合わせガラスの普及を促進することにある。
【0009】
しかしながら、強化ガラスより繊細で予応力が少ない二つの板ガラスから構成されるこのガラスは、金属強化インサートを用いるオーバーモールド処理の応力に十分に耐えることができず、高水準の廃物をもたらす。さらに、オーバーモールド作業を行わずに一旦車両に設置された合わせガラスユニットのうちのいくつかは、使用中の強度に関して欠点を呈し、上記ルーフには、車両の移動時に応力がかかり、例えば車両が日のあたるところに駐車されるか、または大変寒い状態の間にかなりの温度変化を被る。
【0010】
一つの解決方法は、ガラスに強度を与えるために十分な合わせガラスの厚さを使用することにある。例えば、各板ガラスが2.8mmから3mmの厚さを有する合わせガラスが使用されてもよい。しかしながら、この解決方法は、明るさの基準を満足せず、すべての車両で使用することができないという欠点を有する。
【0011】
本発明は、比較的低い予応力のものを含むすべての種類のガラスユニットと互換可能である、オーバーモールドされたガラスユニットの強化のための解決方法を提供することを目的とする。
【0012】
従来技術の強化要素は、突出部分を有するウェブを備える輪郭から成る。突出部分は、V字またはU字形状を有することができると共に、システムに剛性を与える。
【0013】
この点において、従来技術は、オーバーモールド部分に少なくとも一つの剛性要素を組み込む板ガラス要素を備えるガラスユニットに関する、仏国特許出願公開第2814705号明細書に開示されている。図に示す剛性要素は、断面図で、その側方がぼぼV形状を有する。板ガラス要素の主面にほぼ平行に位置付けられたそのアームの一方がウェブ部分を形成し、アームの他方が板ガラス要素に対して遠位側の突出部分を形成する。従って、この突出部は、例えば、オーバーモールド材料で満たされたポケットを作成すると共に、二つのアームの間の角度が90°未満であるため板ガラス要素に向かって開いている。
【0014】
従来技術はまた、オーバーモールドするプラスチックによって周囲フレームに接続されたインサートを組み込んでいる周囲フレームを備える板ガラス要素を備えるガラスユニットに関する、米国特許出願公開第2003/085595号明細書に開示されている。
【0015】
各インサートは、断面図で、ほぼU字形状を有し、その側壁は、U字部の空洞に対して外側に連続していると共に、U字部の基部にほぼ平行である。従って、突出部分の各連続は、この突出部と板ガラス要素の間にポケットを形成する。
【0016】
材料がオーバーモールドされる前に主周囲シールがU字部の空洞に位置決めされるので、オーバーモールド材料はU字部の基部に接触していない。内側突出部分に接触するオーバーモールド質量も接触せず、金属インサートの外側縁表面を越えて延びているだけである。
【0017】
従って、オーバーモールド材料は、外側突出部分の連続下で形成されると共に板ガラス要素に向かって開いているポケットを、満たしている。
【0018】
オーバーモールド材料が、板ガラス要素に対面する輪郭の凹部から成るポケット内に閉じ込められているとき、オーバーモールド材料は、温度により、板ガラス要素の方向に膨張するかまたは縮小し、したがって、強化フレームによって与えられた応力が板ガラス要素の予応力を超えるときは、それを破壊することが分かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、本発明は、請求項1に記載された新規のガラスユニットに関し、その目的は、上記のような現象を引き起こさないことである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このガラスユニットは、プラスチック製の周囲フレームまたは周囲要素がオーバーモールドされた板ガラス要素を備え、上記周囲フレームまたは上記周囲要素は、板ガラス要素を強化するための少なくとも一つの要素を組み込んでおり、この強化要素は、オーバーモールドプラスチックによって、上記周囲フレームまたは上記周囲要素に接続されている。このフレームは、板ガラス要素の主面に平行またはほぼ平行に、且つ板ガラス要素に接近して配置されたウェブ部分を備える、輪郭から成る。このウェブ部分は、板ガラス要素から遠位側の少なくとも一つの突出部分を有すると共に、ポケットを形成する。
【0021】
本発明によれば、突出部分の一つまたは複数によって形成されるポケットは、板ガラス要素の方向に開いていない。すなわち、オーバーモールド材料、特にポケットに収容されている材料が膨張するとき、それは、板ガラス要素に向かっていない方向に広がるようになっている。この意味において、突出部分の一つまたは複数は、板ガラス要素の方向に開いているポケットを形成していないと言うことができる。
【0022】
従って、強化要素の輪郭は、板ガラス要素の方向にまたはそこから膨張するか収縮するようにされ、且つ、オーバーモールド状態で、且つ上記ガラスユニットが使用されることを意図している状態で、板ガラス要素の破壊をもたらす応力より大きな応力を板ガラス要素に伝達するようにされる、任意のプラスチックを含まない。
【0023】
本出願では、「ほぼ平行」は、ウェブ部分が板ガラス要素の表面に対して、若干、例えば、5°以下だけ傾斜することができることを意味している。
【0024】
突出部分の一つまたは複数は、強化要素の全長に亘って連続的に伸びてもよく、または、強化要素は、限られた範囲の突出部分を複数連ねて備える。
【0025】
第1の実施形態によれば、強化要素は、ウェブと、一つまたは二つの側方アームとを備える。ウェブは、板ガラス要素に対面して位置しており、各アームは、ウェブによって支持された突出部分を構成する。
【0026】
特に、輪郭は、板ガラス要素から離れて対面したU字部の凹部をもつ、U字形状の輪郭であってもよい。
【0027】
同様に、輪郭は、二つの側方アームを備える。そのうち少なくとも一つは、輪郭の端部が、特に直角に他方に向かって折り曲げられており、輪郭の角度は丸くすることもできる。
【0028】
この実施形態の他の変形例によれば、強化要素は、本質的にL字形状の輪郭であり、その分岐の一方は、ウェブとして作用し、他方は突出部分として作用する。
【0029】
ウェブとして作用する分岐は、好ましくは、突出部分として作用する分岐よりも長い。
【0030】
他の変形例によれば、二つのアームは、ウェブ部分に平行または傾斜し、適切な場合、ウェブ部分に連続する表面をもつプレートによって、それらの自由縁に沿って、またはそこから小さな距離(典型的には、数ミリメートル)離れて、共に結合されている。アームは、好ましくは、強化要素の全長に亘って連続プレートによって共に結合され、しかし、互いに遠位側の(またはかなり遠位側の)複数のプレートによって共に結合されてもよい。輪郭は、直角に3回折り曲げられた材料の帯板によって形成されてもよい。
【0031】
さらに他の変形例によれば、輪郭は、その自由端が内側に少なくとも1回折り曲げられることができる側方アームを備え、アームの折り曲げ端は、ウェブ上の任意の点でウェブに接触することができる。特に、側方アームは、ヘアピン状に折り曲げられることができ、あるいは、直角に1回または2回折り曲げることができる。
【0032】
輪郭の内側領域は、オーバーモールド材料で満たされてもよいが、この材料は、板ガラス要素上のいかなるところにも任意の応力を与えることができない。
【0033】
第2の実施形態によれば、強化要素は、本質的にT形状の輪郭であり、その基部はウェブ部分を構成し、その脚部は突出部分を構成する。ウェブ部分は、板ガラス要素に対面して位置される。
【0034】
本発明によれば、強化要素に対してあらゆる線熱膨張係数の任意の材料、特に、線熱膨張係数が少なくとも10−5/℃以上の材料、特にガラスの線熱膨張係数を超え、特に、少なくとも12×10−6/℃に等しい材料を使用することができる。
【0035】
他の変形例では、任意の材料の強化要素は、8×10−6/℃未満の線熱膨張係数を有する。
【0036】
本発明によれば、強化要素は、鋼のような金属要素であってもよく、または複合プラスチック要素であってもよい。
【0037】
好ましくは、強化要素は、1.5mmから5mmの厚さを有する。
【0038】
本発明によるガラス取り付け要素のオーバーモールドプラスチックは、好ましくは、ポリウレタン、またはポリ(塩化ビニル)のような熱可塑性物質から成る。
【0039】
本発明によるガラスユニットの板ガラス要素は、好ましくは、硬化または非硬化であってよく、少なくとも二つの板ガラスから形成され、二つの隣接する板の間に少なくとも一つのプラスチック板が挟まれていてもよい、合わせガラスから成る。
【0040】
ガラスは、その面の少なくとも一方が薄い層で被覆されてもよい。適切な場合、合わせガラスユニットにおいて、プラスチック板の一つまたは複数は、少なくとも一方の面が薄い層で被覆されてもよい。
【0041】
好ましくは、板ガラス要素は、5mm、さらには4mm未満の全厚さを有する硬化合わせガラスから成る。
【0042】
本発明によれば、ガラスユニットは、自動車用のガラスユニット、特にサンルーフから成ってもよい。
【0043】
本発明の他の主題は、フレーム、またはオーバーモールドプラスチックで作られた周囲要素を備える、ガラスユニットの強化要素であり、この強化要素は、ウェブ部分と、側方アームの形態で、場合によっては、ウェブ部分に向かって折り曲げられた少なくとも一つの突出部分とを備える、輪郭から成る。
【0044】
本発明の最後の主題は、板ガラス要素上にプラスチック製のフレームまたは周囲要素をオーバーモールドする方法であり、型空洞を有する少なくとも一つの型要素に、板ガラス要素と、ウェブ部分および少なくとも一つの突出部分とを備える輪郭から成る少なくとも一つの強化要素とを配置し、プラスチックを型空洞の中に注入する方法であって、突出部分の一つまたは複数は、板ガラス要素の方向に開いているポケットを形成していないことを特徴とする。
【0045】
本発明の主題をよりよく明らかにするために、以下、添付図面を参照してそのいくつかの実施の形態を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
ガラス板の残留予応力には二つの種類があり、二つの表面は圧縮予応力を有すると共に中心は引っ張り予応力を有する。
【0047】
図1の概略図は、3種類のガラスの場合の予応力を示し、二つの表面S1およびS2の間のガラスの厚さが、グラフを読み易くするために厳密に線形でない縮尺を使用して横座標に示されており、MPaで表現される応力値Cは縦座標に示されている。
・ 曲線C1は、4mmから5mmの厚さを有する強化ガラスに対応し、このガラスは、最大約−120MPaまでの応力に耐えることが分かる。
・ 曲線C2は、「ツーパス形成(two−pass forming)」または「グラスオングラス(glass−on−glass)」または「一対一(one−on−one)」として知られる処理によって製造される、曲がった合わせガラスに対応している。各板ガラスは1.6mmの厚さを有している。このガラスは、約−30MPaの応力に耐えることが分かる。このガラスは、合わせガラスの厚さによっては、最大約−30MPa、さらには、−50MPaまでの応力に耐える場合がある。
・ 曲線C3は、2枚の板ガラスが同時に曲げられる「ウィンドシールド曲げ(windshield bending)」または「ツーグラス処理(two−glass process)」として知られる処理によって製造される、曲がった合わせガラスに対応している。このガラスは最大約−6MPaまでの応力に耐えるだけである。
【0048】
図1の概略図はまた、領域Z1では、図2による従来技術の強化によって発生する応力を概略的に示し、領域Z1’では、本発明の強化によって発生する応力を示している。このような応力は、封入時および使用時の両方において生成される。本発明の強化により、合わせガラスを使用して自動車用のサンルーフを、成型中または使用時に破壊する危険性もなく、新規に製造することができることが分かる。
【0049】
図2は、従来技術の強化要素を装備するサンルーフガラスユニットの部分断面図を示す。
【0050】
ポリウレタンのようなオーバーモールドプラスチック9に封入された強化要素13は、ほぼ平坦で、サンルーフの板ガラス要素10にほぼ平行な、ウェブ部分11と称される部分と、突出部分12とを有する。ウェブ11は、ガラスに隣接する部分であり、フレーム要素の構造を強化することができる突出部分12は、板ガラス要素10に向かって開いているU字形状のウェブ11の内縁の曲げから成る。
【0051】
破壊されるのは、通常は、突出部12の開いたU字に対面する板ガラス要素の部分である。考えを概説するために、1.6mmから2.1mmの単位ガラス厚さに対して、約120℃の温度を発生するPU−RIM封入処理において、「ウィンドシールド曲げ」処理によって製造される合わせガラスの80%から90%、および「グラスオングラス」処理によって製造される合わせガラスの10%から40%は、封入処理中に破壊する。
【0052】
板ガラスの厚さが増加するとき、破壊の割合が低減する。
【0053】
従って、従来技術の強化要素を使用するために、少なくとも2.8mm、好ましくは3mmを超える厚さを有する板ガラスを使用する必要があることが分かった。
【0054】
しかしながら、そのようなガラスの厚さは、自動車製造メーカーによってほとんど受け入れられない。
【0055】
図3aおよび図3bは、輪郭が断面U字形状である、同じ強化要素13、13’を示す。
【0056】
図3aにおいて、輪郭は、従来技術に従って位置決めされ、輪郭のウェブ11、すなわち上記U字の基部は、板ガラス要素から離間して型の底部に置かれると共に、二つのアームは、板ガラス要素から垂直に配置されている。
【0057】
この配置において、オーバーモールドプラスチック9の大部分の質量は、強化要素13と板ガラス要素10の間に閉じ込められている。熱効果の下で、オーバーモールドプラスチックはかなり膨張するが、強化要素13による阻止のためウェブ11の方向には膨張することができない。
【0058】
従って、オーバーモールド材料は、板ガラス要素10の方向に膨張し、板ガラス要素に、その破壊点までの強い圧力を及ぼす。
【0059】
図3bにおいて、強化要素13’は、本発明に従って配置される。強化要素13’と板ガラス要素10の間に閉じ込められたオーバーモールド材料9の量は小さい。オーバーモールド材料9の主な部分は、板ガラス要素10から離れる方向に膨張することが可能であり、従って、板ガラス要素に向かって応力を少しも及ぼすことがない。
【0060】
図4aおよび図4bは、それぞれ、ウェブと、ウェブの端部に位置すると共に、それらの自由端が互いに向かって直角に折り返された二つの側方アームとを備える、他の強化要素14、14’を示す。
【0061】
図3aおよび図3bの場合と同じように、図4bに示す強化要素14’の配置だけが、本発明に属することに留意されたい。なぜならば、その配置が、オーバーモールド材料が、板ガラス要素10の方向に膨張するのを防止するのに対して、図4aに示す強化要素14は、オーバーモールド材料9の膨張を妨げているからである。
【0062】
図5は、他の強化要素15、すなわちL字形状輪郭を示す。この輪郭のウェブ11が、板ガラス要素に沿って配置されているため、オーバーモールド材料は、板ガラス要素の方向に膨張しない。ウェブ11が突出部分12より長いことに留意されたい。
【0063】
図6および図7は、本発明による配置において、それぞれ強化要素16、17を示す。強化要素16、17は、ウェブ部分11に平行なプレート11’によって、それらの自由縁に沿って互いに結合される二つの側方アームを有する。従って、この輪郭は、ほぼ断面矩形形状を有する。
【0064】
図7に示される強化要素17は、オーバーモールド材料9で満たされているという点において、図6のそれと異なる。双方の場合において、オーバーモールド材料は、板ガラス要素10の方向に膨張しない。
【0065】
図8aおよび図8bは、ほぼ同様の形状の二つの強化要素18、18’を示す。図8aの強化要素18は、従来技術の図2に示された強化要素に対応する。
【0066】
二つの強化要素18、18’は、板ガラス要素10に沿って配置されたウェブ11と、ヘアピン状に折り曲げられた突出部分12とから成る。
【0067】
しかしながら、図8aの強化要素の突出部分12は、外側に折り曲げられており、これにより、強化要素18と板ガラス要素10の間にオーバーモールド材料を閉じ込めることができる。
【0068】
図8bにおいて、強化要素18’の突出部分12は、内側に折り曲げられており、これにより、その中にオーバーモールド材料9を閉じ込めて、それが板ガラス要素10の方向に膨張するのを防止できることに留意されたい。
【0069】
図9a、図9b、および図9cは、板ガラス要素10に沿って配置されたウェブ11と、いくつかの突出部分12とから成る、ほぼ同様の形状の三つの強化要素19、19’、および19”を示す。
【0070】
しかしながら、図9aにおいて、突出部分12は、断面が、板ガラス要素10に向かって開いたU字をなす。オーバーモールドプラスチック9の大部分の質量は、強化要素19と板ガラス要素10の間に閉じ込められており、これは、本発明による図9bおよび図9cに示される強化要素には当てはまらないことに留意されたい。図9bでは、ウェブ11は、突出部分12によって形成されるU部を閉鎖し、図9cでは、突出部分12は、断面が、板ガラス要素10から離れて開いているU字をなす。
【0071】
図10は、その輪郭が断面においてほぼT形状を有する、強化要素20を示す。T部の横棒は、板ガラス要素に沿って置かれ、好ましくは、端部に、板ガラス要素から離れて向いている小さな折り曲げ部を有し、これにより、オーバーモールドプラスチック9が板ガラス要素10の方向に膨張するのを防止することができる。
【0072】
本発明および従来技術によるガラスユニットが、本発明によるガラスユニットの性能を示すためにテストされた。
【0073】
まず最初に、封入製造プロセスの間に本質的に生じる応力を被ったときのガラスユニットの挙動が評価され、ガラスユニットは、温度上昇、温度降下、またはガラスユニットに負荷が与えられたときに、このガラスユニットに生じる種々の応力をかけるテストが実行された。
【0074】
種々のテストに使用される材料は次の特性を有する。
【表1】

【0075】
テストされたガラスユニットは、次の寸法を有する。すなわち、幅885mm、長さ495mm(前側フレーム部から後側フレーム部)である。
【0076】
前側および後側フレーム部分のみが強化される。
【0077】
(ガラスユニットV(比較用))
強化要素は、突出部分のない平坦な輪郭である。強化要素の寸法は、次の通りである。
前側フレーム部分 厚さ5mm 幅50mm
後側フレーム部分 厚さ3mm 幅50mm
【0078】
(ガラスユニットV1(比較用))
図9aによれば、強化要素はh=9mm、l11=5mm、およびl12=30mmの寸法をもつ輪郭である。強化要素の厚さは、1.5mmである。
【0079】
(ガラスユニットV2(比較用))
強化要素は、ガラスユニットV1のものと同じ種類であるが、厚さは5mmを有する。
【0080】
(ガラスユニットV1’)
図9bによれば、強化要素はh’=9mm、l11’=5mm、およびl12’=30mmの寸法をもつ輪郭である。強化要素の厚さは、1.5mmである。
【0081】
(ガラスユニットV2’)
強化要素は、ガラスユニットV1’のものと同じ種類であるが、厚さは5mmを有する。
【0082】
ポリウレタンを使用する封入製造状態において、ガラスの初期形状(湾曲)に対してガラス上に発生する最大変位が測定された。
【0083】
湾曲の変化は、Vとの比較によって、ガラスユニットV1、V1’、およびV2’のためにさらに限定されることに留意されたい。その主な理由は、ガラスユニットV1、V1’、V2’の強化要素の剛性が、ガラスユニットV(平坦な強化要素)のそれと比較して増加したためである。
【0084】
湾曲のさらに限定された変化が、ガラスユニットV1との比較によって、ガラスユニットV1’およびV2’のために観察される。
【0085】
この傾向は、ガラスと強化要素の間に位置するポリウレタンの厚さに関係なく続く。
【0086】
これは、本発明による強化要素が、ガラス上に応力を発生することにより破壊の発生を低減することを明示している。
【0087】
(テスト1):上方への温度変化の場合(+20℃から+80℃)
このテストにおいて、ガラスユニットの各々には、20℃から80℃の温度変化がもたらされる。
【0088】
上記のように、ガラス上に発生する最大変位が測定される。
【0089】
本発明によるガラスユニットは、従来技術のガラスユニットよりガラス上の変位が小さいことに留意されたい。
【0090】
ここで再び、この傾向は、ガラスと強化要素の間に位置するポリウレタンの厚さに関係なく続く。
【0091】
(テスト2):下方への温度変化の場合(+20℃から−40℃)
+20℃から−40℃への冷却を含む温度状態のテストが、ガラスユニットV、V1、V2、V1’、およびV2’上になされた。これらのテストにおいて、ガラス上に発生した応力が測定された。
【0092】
温度低下は、特性変更の観点から最も打撃を受けるサイクルである。なぜならば、ポリウレタンのヤング率の増加は、温度を低下させることによるからである。
【0093】
ガラスユニット(ガラスと強化要素の間のポリウレタンの厚さ1.5mmをもつ)の各々について記録された応力は、下記表に示される。
【表2】

【0094】
平坦な強化要素(従って、その強化特性はかなり限定されている)を備えるガラスユニットVとは反対に、本発明によるガラスユニットV1’およびV2’によって最も良好な結果が得られ、すなわち領域Z1’における応力が最も低いようである。図1から分かるように、これらの応力は、合わせられたガラスユニットによって耐えられる範囲の値内にあり、これに対して、ガラスユニットV1およびV2の強化要素によって発生する応力は、2×2の合わせられたガラスユニット、および1×1の合わせられたガラスユニットの強度と、明らかに矛盾する。
【0095】
(テスト3):負荷下の変位
このテストのために、ガラスユニットV、V1、およびV1’には、各角部に一つの支持点を持つ各帯板(前側または後側)の一つに、その中央において負荷が加えられる。100Nの力が加えられ、変位値の最大値が記録された。
【0096】
本発明によるガラスユニットV1’は、2倍だけ減少した発生応力をもつV1のそれよりも半分だけ少ない撓みを有するので、優れた剛性特性を有することに注目された。
【0097】
この傾向は、ガラスと強化要素の間に位置するポリウレタンの厚さに関係なく続く。
【0098】
本発明は、例として上記明細書に記載されている。当業者が、請求項に規定される特許請求の範囲を逸脱することなく、本発明の種々のバージョンを作ることができることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】種々のガラス板に対する残留応力のレベルを示す概略図である。
【図2】従来技術の強化要素を備えるフレーム部分を示す、自動車サンルーフの後ろ部分の断面図である。
【図3a】図3aおよび図3bは、同じ強化要素の二つの位置を示す概略図であるが、この図に示されているのは、本発明の規定に対応していないものである。
【図3b】図3aと同じ強化要素の別の位置を示す図であり、本発明に属している。
【図4a】図4aおよび図4bは、同じ強化要素の二つの位置を示す同様の概略図であるが、この図に示されているのは、本発明の規定に対応していないものである。
【図4b】図4aと同じ強化要素の別の位置を示す同様の図であり、本発明に属している。
【図5】本発明による強化要素を示す概略図である。
【図6】ほぼ同様の形状の強化要素を示す概略図であり、本発明に属する。
【図7】ほぼ同様の形状の強化要素を示す概略図であり、本発明に属する。
【図8a】図8aおよび図8bは、ほぼ同様の形状の二つの強化要素を示す概略図であるが、この図に示されたものは本発明に属さないものである。
【図8b】図8aとほぼ同様の形状の別の強化要素を示すものであり、本発明に属している。
【図9a】図9a、図9bおよび図9cは、ほぼ同様の形状の三つの強化要素を示す概略図であるが、この図に示されたものは、本発明に属さないものである。
【図9b】図9aとほぼ同様の形状の別の強化要素を示すものであり、本発明に属している。
【図9c】図9a及び図9bとほぼ同様の形状の更に別の強化要素を示すものであり、本発明に属している。
【図10】本発明による他の強化要素を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製の周囲フレームまたは周囲要素がオーバーモールドされた板ガラス要素(10)を備えるガラスユニットであって、前記周囲フレームまたは前記周囲要素は、板ガラス要素を強化するための少なくとも一つの要素(13’、14’、15、16、17、18’、19’、19”、20)を組み込んでおり、この強化要素は、オーバーモールドするプラスチック(9)によって前記周囲フレームまたは前記周囲要素に接続されると共に、板ガラス要素(10)に平行またはほぼ平行に且つ接近して配置されたウェブ部分(11)を備える輪郭から成っており、該ウェブ部分が、板ガラス要素から遠位側にあり、少なくとも一つの突出部分(12)を支持しており、突出部分(12)の一つまたは複数が、板ガラス要素(10)の方向に開くポケットを形成していないことを特徴とする、前記ガラスユニット。
【請求項2】
突出部分(12)の一つまたは複数が、強化要素(13’、14’、15、16、17、18’、19’、19”、20)の全長に亘って連続的に延びていることを特徴とする、請求項1に記載のガラスユニット。
【請求項3】
強化要素(13’、14’、15、16、17、18’、19’、19”、20)は、長手方向に、複数の限られた範囲の突出部分を連ねて備えることを特徴とする、請求項1に記載のガラスユニット。
【請求項4】
強化要素(13’、14’、15、16、17、18’、19’、19”、20)は、一つまたは二つの側方アームを備えており、各アームが、ウェブ部分(11)によって支持された突出部分(12)を構成していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のガラスユニット。
【請求項5】
輪郭は、板ガラス要素(10)から離れて対面するU字の凹部をもつU字形状輪郭であることを特徴とする、請求項4に記載のガラスユニット。
【請求項6】
輪郭は、二つの側方アームを備えており、その少なくとも一つは、輪郭の端部が他方に向かって、特に直角に、折り曲げられて、輪郭の角度を丸くすることができることを特徴とする、請求項4に記載のガラスユニット。
【請求項7】
強化要素(15)は、本質的にL字形状輪郭であり、その分岐の一方が、ウェブ部分(11)として作用すると共に、他方が突出部分(12)として作用することを特徴とする、請求項4に記載のガラスユニット。
【請求項8】
ウェブ部分(11)として作用する分岐は、突出部分(12)として作用する分岐よりも長いことを特徴とする、請求項7に記載のガラスユニット。
【請求項9】
二つのアームは、ウェブ部分(11)に平行または傾斜しており、適切な場合、ウェブ部分と連続する表面をもつプレート(11’)によって、それらの自由端に沿って、または小さな距離をもって、共に結合されていることを特徴とする、請求項4に記載のガラスユニット。
【請求項10】
アームは、強化要素(17、19’)の長さ全体に亘ってプレート(11’)によって共に結合されていることを特徴とする、請求項9に記載のガラスユニット。
【請求項11】
アームは、互いに離れた複数のプレートによって共に結合されていることを特徴とする、請求項9に記載のガラスユニット。
【請求項12】
輪郭が、直角に3回折り曲げられた帯板材料で形成されていることを特徴とする、請求項9または10に記載のガラスユニット。
【請求項13】
輪郭は、その自由端が少なくとも1回内側に折り曲げられ得る側方アームを備え、アームの折り曲げられた端部は、ウェブに、このウェブ上の任意の点で接触することができることを特徴とする、請求項4に記載のガラスユニット。
【請求項14】
側方アームが、ヘアピン状にそれ自体の上に折り曲げられていることを特徴とする、請求項13に記載のガラスユニット。
【請求項15】
側方アームは、1回または2回直角に折り曲げられていることを特徴とする、請求項13に記載のガラスユニット。
【請求項16】
輪郭の内側領域は、板ガラス要素(10)上にいかなる応力をも及ぼすことができないオーバーモールド材料(9)で満たされていることを特徴とする、請求項9から15のいずれか一項に記載のガラスユニット。
【請求項17】
強化要素(20)は、本質的にT字形状輪郭であり、その基部は、ウェブ部分(11)を構成すると共に、その脚部は突出部分(12)を構成し、ウェブ部分(11)が、板ガラス要素(10)に対面して位置することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のガラスユニット。
【請求項18】
強化要素(13’、14’、15、16、17、18’、19’、19”、20)の一つまたは複数は、10−5/℃を超える線熱膨張係数を有することを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載のガラスユニット。
【請求項19】
強化要素(13’、14’、15、16、17、18’、19’、19”、20)の一つまたは複数は、ガラスの線熱膨張係数を超え、詳細には少なくとも12×10−6/℃に等しい線熱膨張係数を有することを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載のガラスユニット。
【請求項20】
強化要素(13’、14’、15、16、17、18’、19’、19”、20)の一つまたは複数は、8×10−6/℃未満の線熱膨張係数を有することを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載のガラスユニット。
【請求項21】
強化要素(13’、14’、15、16、17、18’、19’、19”、20)の一つまたは複数は、金属製または複合プラスチック製であることを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載のガラスユニット。
【請求項22】
強化要素(13’、14’、15、16、17、18’、19’、19”、20)の一つまたは複数が、1.5mmから5mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のガラスユニット。
【請求項23】
オーバーモールドプラスチック(9)は、ポリウレタンまたは熱可塑性物質、特にポリ(塩化ビニル)から成ることを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載のガラスユニット。
【請求項24】
板ガラス要素(10)は、硬化されていてもいなくてもよく、少なくとも二枚のガラスの板から形成され、二つの隣接する板の間に少なくとも一つのプラスチックの板が挟まれていてもいなくてもよい、合わせガラスから成ることを特徴とする、請求項1から23のいずれか一項に記載のガラスユニット。
【請求項25】
板ガラス要素(10)は、5mm未満の全厚さを有する硬化合わせガラスから成ることを特徴とする、請求項24に記載のガラスユニット。
【請求項26】
板ガラス要素(10)は、4mm未満の全厚さを有する硬化合わせガラスから成ることを特徴とする、請求項24に記載のガラスユニット。
【請求項27】
自動車用ガラスユニット、特にサンルーフのための自動車用ガラスユニットであることを特徴とする、請求項1から26のいずれか一項に記載のガラスユニット。
【請求項28】
オーバーモードされたプラスチックで作られたフレームまたは周囲要素を備える、請求項1から267のいずれか一項に記載のガラスユニット用の強化要素(13’、14’、15、16、17、18’、19’、19”、20)であって、前記強化要素は、ウェブ部分(11)と、場合によってはウェブ部分(11)に向かって折り曲げられた側方アームの形態の、少なくとも一つの突出部分(12)とを備える輪郭から成る、強化要素。
【請求項29】
プラスチック製のフレームまたは周囲要素を板ガラス要素(10)にオーバーモールドする方法であって、型空洞を有する少なくとも一つの型要素に、板ガラス要素(10)と、ウェブ部分(11)および少なくとも一つの突出部分(12)を備える輪郭から成る少なくとも一つの強化要素(13’、14’、15、16、17、18’、19’、19”、20)とが配置され、プラスチックが型空洞の中に注入され、突出部分(12)の一つまたは複数が、板ガラス要素(10)の方向に開くポケットを形成していないことを特徴とする、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−525356(P2007−525356A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518257(P2006−518257)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001560
【国際公開番号】WO2005/014320
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(399052888)サン−ゴバン グラス フランス (23)
【Fターム(参考)】