説明

弾性ローラ

【課題】金軸を用いることなく、低コスト、高精度で、かつ、一層の軽量化が可能な樹脂製のシャフトを用いた弾性ローラを提供する。
【解決手段】シャフト1を、シャフト長さ方向に相互に連結された同形の要素部材3の複数個と、シャフト1の他端に配置された1個の終端部材4とで構成し、要素部材3Aの一端側に軸端部12と同形の突起要素5を設けるとともに、要素部材3Aの他端側に、この要素部材3に連結される他の要素部材3Bの突起要素5Bを収容する穴要素6Aを設け、異なる要素部材3A、3Bの、穴要素6Aと、突起要素5Bとを嵌合させることによってそれらの要素部材3A、3Bを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のシャフト本体の少なくとも一端側に、シャフト本体の軸線と平行な周面を有する軸端部をシャフト本体の長さ方向外側に突出するよう設けてなるシャフトと、前記シャフト本体の周面上に配置された弾性層とよりなる導電性ローラに関し、特に、シャフトを簡易に形成することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、感光ドラム等の潜像担持体に電荷を供給してこれに潜像を形成する帯電ローラや、この潜像担持体に現像剤を供給して潜像を顕像化させる現像ローラ等、種々の弾性ローラが用いられていて、これらの弾性ローラ90は、図1(a)に断面図で、図1(b)に、図1(a)のb−b矢視に対応する側面図で示すように、シャフト91の周囲に弾性層92を配置した構造を有している。そして、シャフト91は、円周面を有するシャフト本体97と、その長さ方向両端に設けられた軸端部95、96とで構成され、軸端部95、96は、弾性ローラ90を軸支する際の被支持部分として機能する。
【0003】
そして、このような弾性ローラ90を軽量化するため、シャフト91を、樹脂製のもので形成する提案がなされているが、樹脂製のシャフト91を一体的に形成するには、射出成型による方法や、樹脂製の丸棒を機械加工する方法等が考えられるが、機械加工する方法は、弾性ローラを量産するに際しコストが掛かりすぎるという問題があるので、射出成型によらざるを得ないが、これを精度よく一体的に成型するのは、成型後の材料の収縮量が大きいこと、金型から材料を取り出すための抜き勾配を製品に付けなければならないこと等を考えると極めて難しく、この問題を解決するため、図2に断面図で示すように、金属製の金軸98の外側に樹脂よりなる短いパイプ部材99を軸方向に並べたシャフト部材91が提案されており(例えば、特許文献1参照。)、これによると、樹脂のパイプ部材99は、シャフト91の長さの、数分の一の長さとなるので、各々を精度よく成型することができ、さらに、これらを金軸上に配置するので配列する際の精度を高めることができ、シャフト91の軽量化と、必要精度の確保との両立を図ることができる。
【特許文献1】国際公開第2005/121905号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のシャフト部材91では、金軸98は不可欠であり、このため、異なる材料の部材を準備する必要があるのでコスト高になることに加えて、さらなる軽量化には限界があり、このため、金軸を用いない、樹脂だけのシャフト部材が求められていた。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、金軸を用いることなく、低コスト、高精度で、かつ、一層の軽量化が可能な樹脂製のシャフトを用いた弾性ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>は、樹脂製のシャフト本体の少なくとも一端側に、シャフト本体の軸線と平行な周面を有する軸端部をシャフト本体の長さ方向外側に突出するよう設けてなるシャフトと、前記シャフト本体の周面上に配置された弾性層とよりなる弾性ローラにおいて、
前記シャフトを、シャフト長さ方向に相互に連結された同形の要素部材の複数個と、前記シャフトの他端に配置された1個の終端部材とで構成し、前記要素部材の一端側に前記軸端部と同形の突起要素を設けるとともに、前記要素部材の他端側に、この要素部材に連結される他の要素部材の前記突起要素を収容する穴要素を設け、異なる要素部材の、穴要素と、突起要素とを嵌合させることによってそれらの要素部材を連結してなる弾性ローラである。
【0007】
<2>は、<1>において、前記終端部材を、前記要素部材の前記穴要素に嵌入される突起要素と、前記シャフトの他端側の軸端部となる他端側軸端要素とで構成してなる弾性ローラである。
【発明の効果】
【0008】
<1>によれば、前記シャフトを、シャフト長さ方向に相互に連結された同形の要素部材の複数個と、前記シャフトの他端に配置された1個の終端部材とで構成し、前記要素部材の一端側に前記軸端部と同形の突起要素を設けるとともに、前記要素部材の他端側に、この要素部材に連結される他の要素部材の前記突起要素を収容する穴要素を設け、異なる要素部材の、穴要素と、突起要素とを嵌合させることによってそれらの要素部材を連結したので、金軸を用いることなく、高精度の樹脂製シャフトを実現することができ、このことによってコストの低減と一層の軽量化を可能にすることができる。
【0009】
<2>によれば、終端部材を、前記要素部材の前記穴要素に嵌入される突起要素と、前記シャフトの他端側の軸端部となる他端側軸端要素とで構成したので、前記シャフト本体の他端にも、シャフト本体の長さ方向外側に突出する軸端部を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図に基づいて説明する。図3は、本発明に係る実施形態の弾性ローラ示す断面図であり、また、図4(a)は、この弾性ローラのシャフトを構成する要素部材を示す側面図、図4(b)は、図4(a)のb1−b1矢視に対応する側面図、図4(c)は、図4(a)のb2−b2矢視に対応する側面図であり、弾性ローラ10は、シャフト1と、その周面上に配置された弾性層2とよりなり、シャフト1は、円形の周面を有する樹脂製のローラ本体11と、その一端側にシャフト本体11の長さ方向外側に突出するよう設けられ、シャフト本体11の軸線Lと平行な周面12Sを有する軸端部12とを具えて構成される。
【0011】
また、シャフト本体11の他端にも、図示のように軸端部13を設けることもできるが、この代わりに、シャフト本体11の被支持部分と機能させるため、装置側の軸と係合する穴部を設けてもよい。
【0012】
ここで、弾性ローラ10に要求される性能に応じて、弾性層2の外側に、一層以上の被覆層を設けてもよい。
【0013】
シャフト1は、その長さ方向に相互に連結された同形の要素部材3の複数個(図示の例では4個)と、シャフト1の他端に配置された終端部材4とで構成され、要素部材3(3A)の一端側には、軸端部13と同じ形をした突起要素5(5A)が設けられ、要素部材3(3A)の他端側には、この要素部材3Aに連結される隣の要素部材3Bの突起要素5Bを収容する穴要素6Aが設けられ、異なる要素部材3A、3B同士の連結は、要素部材3Aの穴要素6Aに、要素部材3Bの突起要素5Bを嵌入することによって行われる。
【0014】
ここで、複数個の要素部材3は、上記の通りすべて(図の場合4個)同じ形状をしており、従って同一の金型で成形することができ、このことによって、金型に掛かる設備投資を抑えることができる。
【0015】
また、終端部材4は、好ましくは、要素部材3Bの穴要素6Bに嵌入される突起要素7と、シャフト1の他端側の軸端部13を構成する他端側軸端要素8とで構成するのがよい。
【0016】
なお、図示の場合、軸端部12は、円柱の先端部のみをDカットした形状に、また、軸端部13は、大径の円柱に先端に小径の円柱を設けた形状に構成されているが、装置側の、弾性ローラ10を軸支する部分に合わせて形状が決められる。
【0017】
図3、図4に示した例の場合には、穴要素6を、穴の全長にわたって断面円形の穴で構成したが、穴要素6の代わりに、突起要素5に対応する凹形をなす穴で構成することもでき、例えば、図5(a)に側面図で、5(b)に、図5(a)のb3−b3矢視に対応する側面図で示すように、要素部材23の穴要素26を、円形断面の部分26AとDカット断面部分26Bとで構成することもできる。
【0018】
また、要素部材3同士の連結は、穴要素6に突起要素5を陥入して行うので、シャフト1を、真円度の高い高精度なものにするとともに、これらの連結を強固なものにすることができる。また、この連結をさらに強固にするため、接着剤を用いて、穴要素6と突起要素5とを嵌合結合した上でこれら接着することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の弾性ローラを示す断面図および側面図である。
【図2】他の態様の従来の弾性ローラにおけるシャフト示す断面図である。
【図3】本発明に係る実施形態の弾性ローラを示す断面図である。
【図4】本実施形態の弾性ローラの要素部材を示す断面図および側面図である。
【図5】他の実施形態の要素部材を示す断面図および側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 シャフト
2 弾性層
3、3A、3B 要素部材
4 終端部材
5、5A、5B 突起要素
6、6A、6B 穴要素
7 突起要素
8 他端側軸端要素
2 10 弾性ローラ
11 シャフト本体
12、13 軸端部
12S 軸端部の周面
23 要素部材
26 穴要素
26A 穴要素円形断面の部分
26B 穴要素Dカット断面の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のシャフト本体の少なくとも一端側に、シャフト本体の軸線と平行な周面を有する軸端部をシャフト本体の長さ方向外側に突出するよう設けてなるシャフトと、前記シャフト本体の周面上に配置された弾性層とよりなる弾性ローラにおいて、
前記シャフトを、シャフト長さ方向に相互に連結された同形の要素部材の複数個と、前記シャフトの他端に配置された1個の終端部材とで構成し、前記要素部材の一端側に前記軸端部と同形の突起要素を設けるとともに、前記要素部材の他端側に、この要素部材に連結される他の要素部材の前記突起要素を収容する穴要素を設け、異なる要素部材の、穴要素と、突起要素とを嵌合させることによってそれらの要素部材を連結してなる弾性ローラ。
【請求項2】
前記終端部材を、前記要素部材の前記穴要素に嵌入される突起要素と、前記シャフトの他端側の軸端部となる他端側軸端要素とで構成してなる請求項1に記載の弾性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−138731(P2008−138731A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323908(P2006−323908)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】