弾性ロール、弾性ロールの製造方法、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置
【課題】使用履歴のある弾性ロールの導電性芯金における錆発生を抑制した弾性ロールを提供する。
【解決手段】弾性ロール100は、導電性芯金10の外周に、少なくとも同芯状に絶縁性の第1の接着層12と、導電性の第2の接着層14と半導電性の弾性層16とが積層され、第2の接着層14の軸方向端部が、それぞれ第1の接着層12の軸方向端部より延出して形成され、導電性の第2の接着層14は、導電性芯金10と電気的に導通状態になっている。さらに、弾性層16には、抵抗層である表面層(図示せず)が積層される。
【解決手段】弾性ロール100は、導電性芯金10の外周に、少なくとも同芯状に絶縁性の第1の接着層12と、導電性の第2の接着層14と半導電性の弾性層16とが積層され、第2の接着層14の軸方向端部が、それぞれ第1の接着層12の軸方向端部より延出して形成され、導電性の第2の接着層14は、導電性芯金10と電気的に導通状態になっている。さらに、弾性層16には、抵抗層である表面層(図示せず)が積層される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性ロール、弾性ロールの製造方法、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を採用した複写機やプリンタなどの画像形成装置において、例えば帯電装置として、被帯電体(例えば、感光体)の表面に直接接触させて、直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加させ、被帯電体を帯電させる近接または接触型の帯電装置または、被帯電体に形成されたトナー画像を紙などの転写媒体に転写する転写装置が主に用いられている。
【0003】
このような近接または接触型の帯電装置に用いる帯電ロールや転写装置に用いられる転写ロールとして、例えば、回転軸である導電性芯金と弾性層との間の電気抵抗の制御と接着性との両立を図るため、導電性芯金と弾性層との間に、弾性層より体積抵抗率の高い接着層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【0004】
また、導電弾性層と回転軸を強く接着させるためにカーボン粉末を含まない接着剤をスパイラル状に回転軸に塗布してから導電性弾性層を付着させ、回転軸の接着剤未塗布部分と導電弾性層とをスパイラル状に直に接触させて導通性を確保した帯電ロールが提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
また、軸体の外周に第1の接着層を形成し、第1の接着層の両端部より延出させてカーボンブラック含有の第2の接着層を積層し、次いで、第2の接着層上にゴム層を積層した後、第1の接着層両端部に沿って、第2の接着層とゴム層とを切断し、第2の接着層とゴム層の各両端部を取り除くことにより、第1の接着層と第2の接着層とゴム層との端部を揃え、ゴム層の両端縁部の拡径を防止する帯電ロールの製法が提案されている(例えば、特許文献4)。
【0006】
【特許文献1】特開平9−190049号公報
【特許文献2】特開平9−272178号公報
【特許文献3】特開平11−102113号公報
【特許文献4】特開2004−302127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、使用履歴のある弾性ロールの導電性芯金における錆発生を抑制した弾性ロール、弾性ロールの製造方法を提供し、また、該弾性ロールを供えた帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち、本発明の弾性ロール、弾性ロールの製造方法、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置は、以下の特徴を有する。
【0009】
(1)導電性芯金上に、少なくとも絶縁性の第1の接着層と、導電性の第2の接着層と、半導電性の弾性層とを有し、前記第2の接着層は、前記導電性芯金と電気的に導通状態である弾性ロールである。
【0010】
(2)前記導電性芯金上に、少なくとも前記第1の接着層、第2の接着層、弾性層の順で積層され、前記第2の接着層の軸方向端部が、前記第1の接着層の軸方向端部より延出して形成されている上記(1)に記載の弾性ロールである。
【0011】
(3)前記導電性芯金上に、少なくとも前記第1の接着層と、第2の接着層と、弾性層とが積層され、さらに、前記第1の接着層の軸方向端部より延出した端部を有する導電性の第3の接着層を有し、前記第2の接着層と第3の接着層とは少なくとも一部分で接触している上記(1)に記載の弾性ロールである。
【0012】
(4)さらに、前記導電性芯金と接触する導電層を有し、前記導電層は、前記第2の接着層の端面とも接触している上記(1)に記載の弾性ロールである。
【0013】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の弾性ロールを備えることを特徴とする帯電装置である。
【0014】
(6)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の弾性ロールを備えるプロセスカートリッジである。
【0015】
(7)少なくとも像保持体と、該像保持体に接触しその表面を帯電する上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の弾性ロールとを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0016】
(8)導電性芯金上に、少なくとも絶縁性の第1の接着層、導電性の第2の接着層、半導電性の弾性層の順に積層形成する工程と、前記第1の接着層、第2の接着層、弾性層の両端部を切り揃える工程と、前記導電性芯金と第2の接着層の端面とに接触する導電層を形成する工程と、を有する弾性ロールの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制される。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、弾性層が形成される領域における導電性芯金の錆の発生が抑制される。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制され、接着性と導電性とに優れた弾性ロールを得る事ができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制される。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制された帯電装置が提供される。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制されたプロセスカートリッジが提供される。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制された画像形成装置が提供される。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制される、弾性ロールが製造される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について以下説明する。なお、本発明の実施の形態を詳細に説明するにあたり、まず本実施の形態における弾性ロールについて詳述し、その後、本実施の形態における弾性ロールを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置について述べる。なお、図面の各構成の寸法は、実際の寸法と異なる場合がある。
【0026】
<弾性ロール>
本発明における第1の実施の形態の弾性ロール100は、図1に示すように、導電性芯金10の外周に、少なくとも同芯状に絶縁性の第1の接着層12と、導電性の第2の接着層14と半導電性の弾性層16とが積層され、第2の接着層14の軸方向端部が、それぞれ第1の接着層12の軸方向端部より延出して形成され、導電性の第2の接着層14は、導電性芯金10と電気的に導通状態になっている。さらに、弾性層16には、抵抗層である表面層(図示せず)が積層される。また、本実施の形態では、弾性層16の両端面と第2の接着層14の両端面とは、略面一形状になっている。
【0027】
ここで、本発明における「導通状態」とは、導電性芯金と第2の接着層との間の体積抵抗率が1×108Ω・cm以下の場合を意味する。なお、体積抵抗率の測定方法については後述する。
【0028】
本実施の形態の弾性ロール100を例えば接触帯電ロールとして画像形成装置に用い画像形成を行った場合、導電性の第2の接着層14が導電性芯金10と電気的に導通状態であるため、弾性ロール100全体に電流が供給され、その結果、弾性ロール100の帯電性は損なわれず、一方、絶縁性の第1の接着層12と導電性芯金10の表面との電荷の授受は、例えば、導電性を有する接着層と導電性芯金表面との電荷の授受に比べ減少することから、使用履歴による導電性芯金10の第1の接着層12が形成されている領域における錆の発生が抑制される。
【0029】
ここで、使用履歴のある弾性ロールの導電性芯金が錆を発生しやすい原因は、以下のようであると考えられる。弾性ロールには感光体を帯電するための電流が流れる。この電流の一部は弾性層を形成する導電ゴム中のイオンや、弾性層と導電性芯金とを接着させる接着層中のイオンを導電性芯金表面へと移動させる。そのため、導電性芯金表面はイオンが多い状態となり、導電性芯金の腐食が生じやすくなる。または、この電流による導電性芯金と接着層との間の電荷移動の際、酸化還元反応を伴い、導電性芯金表面に腐食されやすい部分が生じる。
【0030】
これらを防ぐためには、弾性層を形成する導電性ゴムと導電性芯金との間または接着層と導電性芯金との間での電荷の授受を無くすこと、言い換えれば、導電性芯金と弾性層を形成する導電性ゴムとの間で電流を流さないことが有効である。しかしながら、実使用上、費用、信頼性などの観点から、導電性芯金から弾性層へ電流を供給する構成が有効である。
【0031】
本実施の形態では、導電性芯金10の表面に錆を生じさせず、且つ導電性芯金10より弾性層16へ電気を供給することを両立するため、例えば、弾性ロール100の画像形成領域に相当する導電性芯金10の外周に、絶縁性の第1の接着層12を形成し、導電性芯金10の表面の電荷の授受を減じることで、実用上の課題となる画像形成領域における錆の発生が抑制される。特に、高温高湿環境下における導電性芯金10の錆の発生が抑制される。これにより、導電性芯金10と弾性層16との一部剥離が抑制され、その結果、弾性ロール100の画像形成領域における形状の歪みが防止され、弾性ロール10を用いて画像形成を行った場合に、画像欠陥の発生が抑制される。
【0032】
また、導電性の第2の接着層14が、弾性ロール100の非画像形成領域から弾性ロール100全体に電流を供給するので、帯電性能を損なうことはない。したがって、上述したように、導電性芯金10と弾性層16との接着性、製造容易性、帯電性能を損なうことなく、使用履歴のある弾性ロール100における導電性芯金10の第1の接着層12が形成されている画像形成領域における錆の発生が抑制される。
【0033】
本実施の形態における弾性ロール100の各構成要素の素材について、以下に説明する。導電性芯金10は、導電性を有するものであって、一般には鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。また、JIS G4804に示されているような快削鋼にクロム、ニッケル等でメッキ処理を施した材質でも良い。メッキは電解メッキあるいは無電解メッキのどちらでもよい。また、導電性芯金10は、ロール形状のほかに、中空のパイプ形状が用いられる。
【0034】
第1の接着層12を形成する絶縁性の接着剤は、導電性芯金10と接着し、第2の接着層14との接着性が高いものであって、体積抵抗率が、第2の接着層14より高抵抗率である接着層であれば公知のいずれの接着剤が用いられる。第1の接着層12の接着剤としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム等を主成分とするものが用いられ、好ましくは、ケムロック607(ロード・ファー・イースト社製)が用いられる。さらに、第1の接着層12は、後述する導電性粒子または半導電性粒子を含まないことが好ましいが、導電性芯金10と電荷の授受が抑制可能な量で、導電性粒子または半導電性粒子を含有してもよい。
【0035】
第1の接着層12の体積抵抗率は、1×1010Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上、1×1016Ω・cm以下であり、さらに好ましくは、1×1012Ω・cm以上、1×1015Ω・cm以下である。
【0036】
第1の接着層12の膜厚は、1μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上15μm以下である。第1の接着層12は欠陥無く絶縁するため、また、イオン等の拡散による絶縁性の低下を防ぐため、通常の接着層よりも厚くすることが好ましい。
【0037】
第2の接着層14を形成する導電性の接着剤は、第1の接着層12と接着し、弾性層16との接着性が高いものであって、体積抵抗率が、第1の接着層12より低抵抗率である接着層であれば公知のいずれの接着剤が用いられる。第2の接着層14の接着剤としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム等を主成分とするものが用いられ、さらに、第2の接着層14には、導電性粒子または半導電性粒子が含有される。導電性粒子または半導電性粒子としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、熱分解カーボン、グラファイト、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物等のイオン性化合物等が用いられ、これらの材料を単独または2種以上を混合して用いてもよい。第2の接着層14に用いられる接着剤としては、例えば、ケムロック258(ロード・ファー・イースト社製)に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)を含有させたものが用いられる。これら導電剤の添加量は所望の導電性が得られる範囲で添加することができる。
【0038】
第2の接着層14の体積抵抗率は、1×108Ω・cm以下であり、好ましくは1×101Ω・cm以上、1×106Ω・cm以下であり、さらに好ましくは、1×101Ω・cm以上、1×105Ω・cm以下である。
【0039】
第2の接着層14の膜厚は、1μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0040】
第1の接着層12の軸方向端部より延出する第2の接着層14の延出領域は、導通状態を確保できる範囲で任意に設定できるが、確実に導通を確保する観点から、弾性層16の軸方向の長さに対して、0.1%以上1%以下が好ましい。例えば、弾性層16の軸方向の長さが300mmの場合、第2の接着層14の延出領域は、0.3mm以上3mm以下、好ましくは、1mm以上2mm以下である。なお、第2の接着層14の延出領域はロール両端にあることが好ましいが、片側のみでも良い。
【0041】
また、半導電性の弾性層16は、導電性または半導電性を有するものであり、一般には樹脂材またはゴム材に導電性粒子または半導電性粒子を分散、または、イオン性導電剤を混入したものである。樹脂材は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂などが用いられ、ゴム材は、例えば、エチレン−プロピレンゴム、ポリブタンジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴムなど、または、これらを発泡させた発泡材が用いられる。
【0042】
また、導電性粒子または半導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物が用いられ、これらの材料を単独または2種以上を混合して用いてもよい。さらに、必要に応じて、タルク、アルミナ、シリカ等の無機充填材、フッ素樹脂やシリコーンゴムの微粉等の有機充填材の1種または2種以上を混合してもよい。
【0043】
イオン性導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩又は塩素酸塩等、リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩又は塩素酸塩等が1種または2種以上を混合して用いられる。
【0044】
弾性層16の膜厚は、0.5mm以上5mm以下、好ましくは1mm以上4mm以下である。
【0045】
表面層(図示せず)を形成する材料としては、例えば、結着樹脂に導電性粒子または半導電性粒子を分散、または、イオン性導電剤を含有し、その抵抗を制御したものであり、表面層の体積抵抗率は、1×103Ω・cm以上、1×1014Ω・cm以下であり、好ましくは1×105Ω・cm以上、1×1012Ω・cm以下であり、さらに好ましくは、1×107Ω・cm以上、1×1010Ω・cm以下である。
【0046】
表面層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメリル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、テトラフルオロエチレン(PFA)、テトラフルオロエチレン(FEP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂などが用いられる。
【0047】
表面層に用いる導電性粒子または半導電性粒子としては、上述した半導電弾性層32に用いたものと同様の、カーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物等の1種または2種以上を混合して用いられる。イオン性導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩又は塩素酸塩等、リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩又は塩素酸塩等が1種または2種以上を混合して用いられる。また、必要に応じて、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン、タルク、シリカ、アルミナ等の無機充填材や、フッ素樹脂やシリコーン樹脂の微粉等の有機充填材の1種または2種以上を混合してもよい。また、さらに界面活性剤や帯電制御剤等が必要に応じて添加される。
【0048】
表面層の膜厚は、例えば0.01μm以上、1,000μm以下であり、好ましくは0.1μm以上、500μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上、100μm以下である。
【0049】
上述した第1の接着層12、第2の接着層14、弾性層16および表面層の体積抵抗率は、以下のようにして測定する。すなわち、100mm×100mm、厚さ2mmのアルミ材の上にスキマゲージを用いて、各層を形成するための塗液を用いて、10μmの塗液膜を作り、アドバンテスト社製R8340Aを用い5Vの印加電圧のもと測定した。
【0050】
(体積抵抗率およびそれらの測定)
ここで、体積抵抗率は、円形電極(例えば、アドバンテスト社製R8340Aまたは(株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタUPMCP−450型URプローブ)を用い、JIS K 6911(1995)に従って測定することができる。前記体積抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。図12は、円形電極の一例を示す概略平面の図12(a)及び概略断面の図12(b)からなる。図12に示す円形電極は、第1電圧印加電極Aと第2電圧印加電極Bとを備える。第1電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。第1電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと第2電圧印加電極Bとの間に上述の測定試料Tを挟持し、第1電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cと第2電圧印加電極Bとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を電圧印加10秒後に測定し、下記式(1)により、測定試料の体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出することができる。ここで、下記式(1)中、tは、測定試料の接着剤層の厚さを示す。
式(1):ρv=19.6×(V/I)×t
【0051】
(導電性芯体と各層との間の抵抗の測定)
導電性芯体と上述した第1の接着層12、第2の接着層14との間の抵抗値は、特開平6−118105号公報に記載の方法で測定された値の平均値をいう。
【0052】
抵抗の平均値は、下記方法により測定された抵抗値に基づき、軸方向には導電性支持体上の接着層の両端部よりそれぞれ20mmと、中央部分の3点を、更に該3点の周方向には6度毎に抵抗測定し、全ての測定値を相加平均して求めた。この抵抗測定には、幅5mmの円筒状のSUS製ベアリングからなる電極を25gの重りで測定対象のロール表面に接触させ、ロールを5.5rpmで回転させながら電極と導電性支持体間の抵抗の計測をした。電源および電流計には、高抵抗測定器(アドバンテスト社製、R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計)を用いた。印加電圧は1V、抵抗は式(2)より算出した。
式(2):抵抗(Ω)=印加電圧/電流
【0053】
さらに、上述した第1の接着層12、第2の接着層14、弾性層16および表面層は、各層のために組成が調製された塗液を、例えば、ブレード塗布方法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法(図7に示す)、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等により塗布されることにより形成される。
【0054】
本発明における第2の実施の形態の弾性ロール110は、図2に示すように、導電性芯金10の外周に、少なくとも同芯状に絶縁性の第1の接着層22と、導電性の第2の接着層24と半導電性の弾性層16とが積層され、第2の接着層24の軸方向端部が、それぞれ第1の接着層22の軸方向端部より延出して形成され、導電性の第2の接着層24は、導電性芯金10と電気的に導通状態になっている。さらに、弾性層16には、抵抗層である表面層(図示せず)が積層される。さらに、本実施の形態では、図2に示すように、弾性層16の両端面と第1の接着層24の両端面とは、略面一形状になっている。
【0055】
本実施の形態の弾性ロール110を画像形成装置に用い画像形成を行った場合、導電性の第2の接着層24が導電性芯金10と電気的に導通状態であるため、弾性ロール110全体に電流が供給され、その結果、弾性ロール110の帯電性は損なわれず、一方、絶縁性の第1の接着層22と導電性芯金10の表面との電荷の授受は、例えば、導電性を有する接着層と導電性芯金表面との電荷の授受に比べ減少することから、使用履歴による導電性芯金10の第1の接着層22が形成されている領域における錆の発生が抑制され、本実施の形態の場合、錆由来の弾性層16の形状歪みの発生が抑制され、その結果、弾性層16の全面が画像形成領域として使用される。
【0056】
第1の接着層22の軸方向端部より延出する第2の接着層24の延出領域は、導通状態を確保できる範囲で任意に設定できるが、確実に導通を確保する観点から、弾性層16の軸方向の長さに対して、0.1%以上1%以下が好ましい。例えば、弾性層16の軸方向の長さが300mmの場合、第2の接着層24の延出領域は、0.3mm以上3mm以下、好ましくは、1mm以上2mm以下である。なお、第2の接着層24の延出領域はロール両端にあることが好ましいが、片側のみでも良い。
【0057】
本実施の形態における導電性芯金10、第1の接着層22、第2の接着層24、弾性層16、表面層の素材は、第1の実施の形態で述べた導電性芯金10、第1の接着層12、第2の接着層14、弾性層16、表面層と同様の材料が用いられ、また、その層の厚みも同様であり、各層の作成手段も同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0058】
本発明における第3の実施の形態の弾性ロール120は、図3に示すように、導電性芯金10の外周に、少なくとも同芯状に絶縁性の第1の接着層12と、導電性の第2の接着層14と半導電性の弾性層16とが積層され、さらに、第1の接着層12の軸方向端部より延出した端部を有する導電性の第3の接着層18が設けられ、第2の接着層14と第3の接着層18とは少なくとも一部分で接触している。さらに、弾性層16には、抵抗層である表面層(図示せず)が積層される。さらに、本実施の形態では、図3に示すように、弾性層16の両端面と第1の接着層12の両端面とは、略面一形状になっている。なお、第1及び第2の実施の形態における弾性ロールと同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0059】
本実施の形態における導電性の第3の接着層18は、第1の接着層12の端部より延出された積層され、第3の接着層18は、第1の接着層12の全面に積層されてもよいが、弾性ロールの膜厚増加、製造コストを考慮すると、図3に示すように、第3の接着層18の一端部が導電性芯金10に接触し、第3の接着層18の他端部が第1の接着層12の端部に一部重なるように積層されていることが好ましい。さらに、本実施の形態では、第3の接着層18の外周全面は、第2の接着層14の内周面の一部と接着しているため、導電性芯金10と弾性層16は、第3の接着層18と第2の接着層14とを介して導通状態になっている。
【0060】
本実施形態において、導電性の第3の接着層18から導電性の第2の接着層14を経て、弾性ロール120の非画像形成領域から弾性ロール120全体に電流を供給するので、帯電性能を損なうことはない。したがって、上述したように、導電性芯金10と弾性層16との接着性、製造容易性、帯電性能を損なうことなく、使用履歴のある弾性ロール120における導電性芯金10の第1の接着層12が形成されている画像形成領域における錆の発生が抑制される。
【0061】
また、本実施の形態では、第3の接着層18の体積抵抗率は、第2の接着層14と同一またはどちらかがより体積抵抗率が高くてもよいが、導通状態の確保を考慮すると、第3の接着層18の体積抵抗率は、第2の接着層14の体積抵抗率より低いことが好ましい。第3の接着層の18の体積抵抗率は、上述同様の測定方法により、1×108Ω・cm以下であり、好ましくは1×10−1Ω・cm以上、1×106Ω・cm以下であり、さらに好ましくは、1×101Ω・cm以上、1×105Ω・cm以下である。
【0062】
第3の接着層18の膜厚は、1μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0063】
第1の接着層12の軸方向端部より延出する第3の接着層18の延出領域は、導通状態を確保できる範囲で任意に設定できるが、確実に導通を確保する観点から、弾性層16の軸方向の長さに対して、0.1%以上1%以下が好ましい。例えば、弾性層16の軸方向の長さが300mmの場合、第3の接着層18の延出領域は、0.3mm以上3mm以下、好ましくは、1mm以上2mm以下である。なお、第3の接着層18の延出領域はロール両端にあることが好ましいが、片側のみでも良い。
【0064】
本発明における第4の実施の形態の弾性ロール130は、図4に示すように、導電性芯金10の外周に、少なくとも同芯状に絶縁性の第1の接着層22と、導電性の第2の接着層14と半導電性の弾性層16とが積層され、さらに、第1の接着層22の軸方向端部より延出した端部を有する導電性の第3の接着層28が設けられ、第2の接着層14と第3の接着層28とは少なくとも一部分で接触している。さらに、弾性層16には、抵抗層である表面層(図示せず)が積層される。さらに、本実施の形態では、図3に示すように、弾性層16の両端面と第2の接着層14の両端面とは、略面一形状になっている。なお、第1及び第2の実施の形態における弾性ロールと同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0065】
さらに、詳細に説明すると、本実施の形態における導電性の第3の接着層28は、その内周全面が導電性芯金10に接触し、一方、第3の接着層28の一方端部上に第1の接着層12の端部が重なるように形成されている。一方、第1の接着層14より延出した第3の接着層28の外周面に導電性の第2の接着層12が接触するように積層されているので、導電性芯金10と弾性層16は、第3の接着層28と第2の接着層14とを介して導通状態になっている。
【0066】
本実施形態において、導電性の第3の接着層28から導電性の第2の接着層14を経て、弾性ロール130の非画像形成領域から弾性ロール130全体に電流を供給するので、帯電性能を損なうことはない。したがって、上述したように、導電性芯金10と弾性層16との接着性、製造容易性、帯電性能を損なうことなく、使用履歴のある弾性ロール130における導電性芯金10に直接第1の接着層12が付着して形成されている画像形成領域における錆の発生が抑制される。
【0067】
また、本実施の形態では、第3の接着層28の体積抵抗率は、第2の接着層14と同一またはどちらかがより体積抵抗率が高くてもよいが、導電性芯金10との接着性を考慮し、さらに錆発生の抑制を考慮すると、第3の接着層28の体積抵抗率は、第2の接着層14の体積抵抗率より高いことが好ましい。第3の接着層の28の体積抵抗率は、上述同様の測定方法により、1×108Ω・cm以下であり、好ましくは1×101Ω・cm以上、1×106Ω・cm以下であり、さらに好ましくは、1×101Ω・cm以上、1×105Ω・cm以下である。
【0068】
第3の接着層28の膜厚は、1μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0069】
第1の接着層12の軸方向端部より延出する第3の接着層28の延出領域は、導通状態を確保できる範囲で任意に設定できるが、確実に導通を確保する観点から、弾性層16の軸方向の長さに対して、0.1%以上1%以下が好ましい。例えば、弾性層16の軸方向の長さが300mmの場合、第3の接着層18の延出領域は、0.3mm以上3mm以下、好ましくは、1mm以上2mm以下である。
【0070】
本発明における第5の実施の形態の弾性ロール140は、図5に示すように、第1の接着層22の端面と弾性層16との端面が略面一になるように構成され、さらに、第3の接着層18の軸方向端部と第2の接着層24の軸方向端部が、第1の接着層12の軸方向端部より延出して形成されている以外は、第3の実施の形態と同様である。なお、第1,第2及び第3の実施の形態における弾性ロールと同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0071】
本実施の形態の弾性ロール140を画像形成装置に用い画像形成を行った場合、導電性の第3の接着層18を介して第2の接着層24が導電性芯金10と電気的に導通状態であるため、弾性ロール140全体に電流が供給され、その結果、弾性ロール140の帯電性は損なわれず、一方、絶縁性の第1の接着層22と導電性芯金10の表面との電荷の授受は、例えば、導電性を有する接着層と導電性芯金表面との電荷の授受に比べ減少することから、使用履歴による導電性芯金10の第1の接着層22が形成されている領域における錆の発生が抑制され、本実施の形態の場合、錆由来の弾性層16の形状歪みの発生が抑制され、その結果、弾性層16の全面が画像形成領域として使用される。
【0072】
本発明における第6の実施の形態の弾性ロール150は、図6に示すように、第1の接着層22の端面と弾性層16との端面が略面一になるように構成され、さらに、第3の接着層28の軸方向端部と第2の接着層24の軸方向端部が、第1の接着層22の軸方向端部より延出して形成されている以外は、第4の実施の形態と同様である。なお、第1,第2,第3及び第4の実施の形態における弾性ロールと同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0073】
本実施の形態の弾性ロール150を画像形成装置に用い画像形成を行った場合、導電性の第3の接着層18を介して第2の接着層24が導電性芯金10と電気的に導通状態であるため、弾性ロール150全体に電流が供給され、その結果、弾性ロール150の帯電性は損なわれず、一方、絶縁性の第1の接着層22と導電性芯金10の表面との電荷の授受は、例えば、導電性を有する接着層と導電性芯金表面との電荷の授受に比べ減少することから、使用履歴による導電性芯金10の第1の接着層22が直接形成されている領域における錆の発生が抑制され、本実施の形態の場合、錆由来の弾性層16の形状歪みの発生が抑制され、その結果、弾性層16の全面が画像形成領域として使用される。なお、図6に示すように、例えば、第1の接着層12が導電性芯金10に直接接触している領域より、小さい領域で弾性層16を形成した場合には、例えば高温高湿下で長時間使用し、仮に第3の接着層28と接着する導電性芯金10に錆が発生したとしても、弾性層16全面が画像形成領域として担保される。
【0074】
本発明における第7の実施の形態の弾性ロール160は、図7に示すように、導電性芯金10の外周に、少なくとも同芯状に絶縁性の第1の接着層22と、導電性の第2の接着層14と半導電性の弾性層16とが積層され、さらに、導電性芯金10及び第2の接着層14の端面と接触する導電層38を有する。なお、第1,第2,第3,第4及び第5の実施の形態における弾性ロールと同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0075】
本実施の形態では、導電層38が導電性芯金10と電気的に導通し、さらに、導電層38が導電性の第2の接着層14の端面と接触しているため、弾性ロール160全体に電流が供給され、その結果、弾性ロール160の帯電性は損なわれず、一方、絶縁性の第1の接着層22と導電性芯金表面10との電荷の授受は、導電性を有する接着層と導電性芯金表面との電荷の授受に比べ減少することから、使用履歴による導電性芯金10の第1の接着層22が直接形成されている領域における錆の発生が抑制され、本実施の形態の場合、錆由来の弾性層16の形状歪みの発生が抑制され、その結果、弾性層16の全面が画像形成領域として使用される。
【0076】
導電層38は、導電性芯金10と第2の接着層14と接着性の高いものであって、体積抵抗率が、第1の接着層12より低抵抗率である接着層であれば公知のいずれの接着剤が用いられる。導電層38としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム等を主成分とするものが用いられ、さらに、導電層38には、導電性粒子または半導電性粒子が含有される。導電性粒子または半導電性粒子としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、熱分解カーボン、グラファイト、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物等が用いられ、これらの材料を単独または2種以上を混合して用いてもよい。第2の接着層14に用いられる接着剤としては、例えば、ケムロック258(ロード・ファー・イースト社製)に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)を含有させたものが用いられる。
【0077】
導電層38は、上記の他に、例えばカーボンブラックを分散した導電性グリースが用いられる。
【0078】
導電層38の体積抵抗率は、1×106Ω・cm以下であり、好ましくは1×10−3Ω・cm以上、1×104Ω・cm以下であり、さらに好ましくは、1×10−1Ω・cm以上、1×103Ω・cm以下である。
【0079】
導電層38の膜厚は、1μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0080】
導電層38と導電性芯金10との接触領域は、導通状態を確保できる範囲で任意に設定できるが、確実に導通を確保する観点から、弾性層16の軸方向の長さに対して、0.1%以上1%以下である。例えば、弾性層16の軸方向の長さが300mmの場合、導電層38の接触領域は、0.3mm以上3mm以下、好ましくは、1mm以上2mm以下である。なお、導電層38の接触領域はロール両端にあることが好ましいが、片側のみでも良い。
【0081】
上述した第7の実施の形態における弾性ロールの製造方法は、図7に示す導電性芯金10上に、少なくとも絶縁性の第1の接着層22、導電性の第2の接着層14、半導電性の弾性層16の順に積層形成する工程と、第1の接着層22、第2の接着層14、弾性層16の両端部を切り揃える工程と、導電性芯金10と第2の接着層14の端面とに接触する導電層38を形成する工程と、を有する。
【0082】
第2の接着層14の端面と導電性芯金10の両方に接触するように導電層38を設けるという比較的簡単の工程により、導電層38を介して導電性芯金10と第2の接着層14とを導通させる弾性ロール160が得られる。さらに、絶縁性の第1の接着層22と導電性芯金10表面との電荷の授受は、導電性を有する接着層と導電性芯金表面との電荷の授受に比べ減少することから、使用履歴による導電性芯金10の第1の接着層22が直接形成されている領域における錆の発生が抑制され、錆由来の弾性層16の形状歪みの発生が抑制され、その結果、弾性層16の全面が画像形成領域として使用される弾性ロール160が製造される。
【0083】
図11は、本実施の形態における画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
【0084】
次に、本実施の形態の画像形成装置の一例について説明する。
【0085】
図11は、上述の実施の形態の弾性ロールを帯電ロールとして用いた画像形成装置の構成例を示す概略図である。図示した画像形成装置200は、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。電子写真感光体401a〜401dは、例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成することが可能である。
【0086】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って弾性ロールである帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0087】
さらに、ハウジング400内の所定の位置には露光装置403が配置されており、露光装置403から出射された光ビームを帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0088】
ここで、帯電ロール402a〜402dは、電子写真感光体401a〜401dの表面に接触させて感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである(帯電工程)。上記帯電ロール402a〜402dとして、上述した実施の形態における弾性ロール100,110,120,130,140,150,160が用いられる。
【0089】
露光装置403としては、電子写真感光体401a〜401dの表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を所望の像様に露光できる光学系装置等を用いることができる。これらの中でも、非干渉光を露光可能な露光装置を用いると、電子写真感光体401a〜401dの導電性基体と感光層との間での干渉縞を防止することができる。
【0090】
現像装置404a〜404dには、上述の二成分静電荷像現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行うことができる(現像工程)。そのような現像装置としては、二成分静電荷像現像用現像剤を用いる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のものを選択することができる。一次転写工程では、1次転写ロール410a〜410dに、像担持体に担持されたトナーと逆極性の1次転写バイアスが印加されることで、像担持体から中間転写ベルト409へ各色のトナーが順次1次転写される。
【0091】
クリーニングブレード415a〜415dは、転写工程後の電子写真感光体の表面に付着した残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0092】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、背面ロール408及び張力付与ロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介して背面ロール408と当接するように配置されている。
【0093】
2次転写ロール413に、中間転写体上のトナーと逆極性の2次転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルトから記録媒体へトナーが2次転写される。背面ロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416或いは、除電器(不図示)により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。また、ハウジング400内の所定の位置には給紙装置(被転写媒体容器)411が設けられており、給紙装置411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。上記1次転写ロール410a〜410d、2次転写ロール413には、上述した実施の形態における弾性ロール100,110,120,130,140,150,160を用いることができる。
【0094】
本実施の形態におけるプロセスカートリッジは、図11に示すように、上述の実施の形態の弾性ロールを帯電ロールとして用いたもので、弾性ロールである帯電ロール402a、電子写真感光体401a、クリーニングブレード415aおよび現像装置404aが、一体化されて、例えばブラック用のプロセスカートリッジが構成されている。同様に、弾性ロールである帯電ロール402b、電子写真感光体401b、クリーニングブレード415bおよび現像装置404bが、一体化されてイエロー用のプロセスカートリッジが構成され、弾性ロールである帯電ロール402c、電子写真感光体401c、クリーニングブレード415cおよび現像装置404cが、一体化されてマゼンタ用のプロセスカートリッジが構成され、弾性ロールである帯電ロール402d、電子写真感光体401d、クリーニングブレード415dおよび現像装置404dが、一体化されてシアン用のプロセスカートリッジが構成される。
【実施例】
【0095】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」は「質量部」を表す。
【0096】
(弾性ロールの作製)
図1に示す弾性ロール100の構成の一例を製作した。
【0097】
−接着層の形成−
直径8mm、長さ332mmの円柱状のニッケルメッキにて処理した快削鋼鋼材の導電性芯金10上に、両端部10mmを残しケムロック607(ロード・ファー・イースト社製)を10μmの厚さになるように塗布し第1の接着層12を形成した。第1の接着層12の体積抵抗率は、1×1014Ω・cmであり、導電性芯金10と第1の接着層14との間の抵抗は1×1012Ω以上であった。
【0098】
次に、ケムロック258(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)5質量部を分散した液を上記第1の接着層12を形成した導電性芯金10上に両端部8mmを残し膜厚15μmになるように塗布し、第2の接着層14を形成した。第2の接着層14の体積抵抗率は、1×104Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の間の抵抗は2×104Ωであった。
【0099】
(体積抵抗率の測定)
実施例、比較例において接着層の体積抵抗率は、100mm×100mm、厚さ2mmのアルミ材の上にスキマゲージを用いて、接着層を10μmの塗液膜を作りこれをサンプルとして測定した。
【0100】
測定には円形電極((株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタUPMCP−450型URプローブ)および高抵抗測定器(アドバンテスト社製、R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計)を用い、JIS K 6911(1995)に従って測定した。具体的には測定条件としては25℃55%RHの環境下で電圧5V印加し、10秒後の電流を求め、下記の式(1)により算出した。
【0101】
式(1):体積抵抗率ρv=19.6×(V/I)×tから算出した。
(式(1)中、tは接着剤層の厚さを示す。)
【0102】
(導電性芯金と接着層との間の抵抗測定)
実施例、比較例において導電性芯金と接着層との間の抵抗は、特開平6−118105号公報に記載の方法で測定された値の平均値をいう。
【0103】
抵抗の平均値は、下記方法により測定された抵抗値に基づき、軸方向には導電性芯金上の接着層の両端部よりそれぞれ20mmと、中央部分の3点を、更に該3点の周方向には6度毎に抵抗測定し、全ての測定値を相加平均して求めた。
【0104】
この抵抗測定には、電極として幅5mmの円筒状のSUS製ベアリングからなる電極を用い、この電極を25gの荷重で測定対象の接着層に接触させ、25℃55%RHの環境下でロールを5.5rpmで回転させながら角度6度毎に抵抗測定電極と導電性芯金間に印加電圧1Vにおける電流を測定し下記式(2)により抵抗を算出した。
【0105】
このとき電源および電流計としては、高抵抗測定器(アドバンテスト社製、R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計)を使用した。
式(2):抵抗(Ω)=印加電圧(V)/電流(A)
【0106】
−弾性層の形成−
弾性層16を形成させるため、下記混合物をオープンロールで混練りし、第1の接着層12、第2の接着層14を形成した導電性芯金10上に、両端部8mmを残し厚さ3mmとなるように円筒状に被覆し、内径14.0mmの円筒型の金型に入れ、170℃で30分間加硫させ、金型から取り出した後、研磨し、中央部の層厚が端部の層厚より薄い円筒状の弾性層を得た。中央部と端部の外径の差は85μmであった。
・ゴム材 ・・・100質量部
(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム:Gechron3106:日本ゼオン社製)
・導電剤(カーボンブラック アサヒサーマル:旭カーボン社製) ・・・15質量部
・イオン導電剤(過塩素酸リチウム) ・・・1質量部
・加硫剤(硫黄)200メッシュ:鶴見化学工業社製 ・・・1質量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM:大内新興化学工業社製) ・・・2.0質量部
・加硫促進剤(ノクセラーTT:大内新興化学工業社製) ・・・0.5質量部
【0107】
−表面層の形成−
弾性層16上に抵抗層を形成させるため、下記混合物をビーズミルにて分散し得られた分散液を、メタノールで希釈し、抵抗層の塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて、弾性層の表面に塗布し、その後、150℃で15分間加熱乾燥し、10μmの抵抗層を形成し、弾性ロール100を得た。
・高分子材料(共重合ナイロン)アラミンCM8000:東レ社製 100質量部
・導電剤(カーボンブラック)MONARCH1000:キャボット社製 12質量部
・溶剤(メタノール) 500質量部
・溶剤(ブタノール) 240質量部
【0108】
(弾性ロールの作製)
図2に示す弾性ロール110の構成の一例を製作した。第1の接着層22を導電性芯金10の両端部8mmを残し塗布し、第2の接着層24を導電性芯金10の両端部7mmを残し塗布した以外は、第1の接着層及び第2の接着層は同一素材を用い、実施例1と同様に、図2に示す態様の弾性ロール110を得た。ここで、第1の接着層12の体積抵抗率は、1×1014Ω・cmであり、導電性芯金10と第1の接着層14との間の抵抗は1×1012Ω以上であった。また、第2の接着層14の体積抵抗率は、1×104Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の間の抵抗は2×106Ωであった。
【0109】
<実施例3>
(弾性ロールの作製)
実施例1と同様に第1の接着層12まで形成した後、ケムロック204(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)3質量部を分散した液を両端部の8mmから11mmのみに膜厚10μmとなるよう塗布して、第3の接着層18を形成した。その後、実施例1と同様に第2の接着層14を形成した以外は、実施例1に準じて、以降を形成し、図3に示す態様の弾性ロール120を得た。ここで、第3の接着層18の体積抵抗率は、第2の接着層14の体積抵抗率より高く、1×105Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の間の抵抗は5×106Ωであった。
【0110】
<実施例4>
(弾性ロールの作製)
まず、ケムロック204(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)3質量部を分散した液を両端部の8mmから11mmのみに膜厚10μmとなるよう塗布して、第3の接着層28を形成した後、両端部10mmを残しケムロック607(ロード・ファー・イースト社製)を10μmの厚さになるように塗布し第1の接着層12を形成した。その後、実施例1と同様に第2の接着層14を形成した以外は、実施例1に準じて、以降を形成し、図4に示す態様の弾性ロール130を得た。ここで、第3の接着層28の体積抵抗率は、第2の接着層14の体積抵抗率より高く、1×105Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の間の抵抗は5×106Ωであった。
【0111】
<実施例5>
(弾性ロールの作製)
実施例2と同様に第1の接着層22まで形成した後、ケムロック204(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)3質量部を分散した液を両端部の7mmから9mmのみに膜厚10μmとなるよう塗布して、第3の接着層18を形成した。その後、実施例2と同様に第2の接着層24を形成した以外は、実施例2に準じて、以降を形成し、図5に示す態様の弾性ロール140を得た。ここで、第3の接着層18の体積抵抗率は、第2の接着層24の体積抵抗率より低く、1×105Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層24の間の抵抗は5×106Ωであった。
【0112】
<実施例6>
(弾性ロールの作製)
実施例4と同様に、ケムロック204(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)3質量部を分散した液を両端部の7mmから9mmのみに膜厚10μmとなるよう塗布して、第3の接着層28を形成した後、両端部10mmを残しケムロック607(ロード・ファー・イースト社製)を8μmの厚さになるように塗布し第1の接着層22を形成した。その後、実施例4と同様に第2の接着層24を形成した以外は、実施例4に準じて、以降を形成し、図6に示す態様の弾性ロール150を得た。ここで、第3の接着層28の体積抵抗率は、第2の接着層14の体積抵抗率より高く、1×105Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の抵抗は5×106Ωであった。
【0113】
<実施例7>
(弾性ロールの作製)
直径8mm、長さ332mmの円柱状のニッケルメッキにて処理した快削鋼鋼材の導電性芯金10上に、両端部10mmを残しケムロック607(ロード・ファー・イースト社製)を10μmの厚さなるように塗布し第1の接着層12を形成した。第1の接着層12の体積抵抗率は、1×1014Ω・cmであり、導電性芯金10と第1の接着層14との間の抵抗は1×1012Ω以上であった。
【0114】
次に、ケムロック258(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)5質量部を分散した液を導電性芯金10の両端部10mmを残し膜厚15μmになるように塗布し、第2の接着層14を形成した。第2の接着層14の体積抵抗率は、1×104Ω・cmであった。
【0115】
次いで、実施例2と同様に弾性層16まで形成した後に、芯金の両端面より9mmの位置で弾性層16を切断し除去し、第2の接着層14の端面を露出させた。次に、導電層38としてケムロック204(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)10質量部を分散した液を、導電性芯金10と第2の接着層14に接触するように塗布した。その後、実施例1と同様に表面層を形成し、図7に示す態様の弾性ロール160を得た。ここで、導電層38の体積抵抗率は、1×101Ω・cmであった。
【0116】
<実施例8>
(弾性ロールの作製)
実施例7の導電層38の素材を、カーボンブラックを分散した導電性グリースに代えた以外は、実施例7に準じて、図7に示す弾性ロール170の他の態様を得た。ここで、導電性グリースから成る導電層38の体積抵抗率は、1×101Ω・cmであった。
【0117】
<比較例1>
(弾性ロールの作製)
第1の接着層22を導電性芯金の両端部8mmを残し塗布し、第2の接着層14を芯金の両端部9mmを残し直接導電性芯金10に触れないように塗布した以外は実施例1と同様に作成し、図8に示す態様の弾性ロール170を得た。なお、弾性ロール170を、富士ゼロックス社製DocuCentre Colar a450に取り付けて、後述する評価に基づき、実施例1と同様に低温・低湿条件(10℃、RH15%)にて、印字テストを行ったが、帯電不良のため良好な画質が得られなかった。そのため、その後の評価はできなかった。
【0118】
<比較例2>
(弾性ロールの作製)
第1の接着層22を導電性芯金10の両端部8mmを残し塗布した後に、第2の接着層を塗布しなかった以外は、実施例1と同様に作製し、図9に示す態様の弾性ロール180を得た。この弾性ロールを、富士ゼロックス社製DocuCentre Colar a450に取り付けて、後述する評価に基づき、実施例1と同様に低温・低湿条件(10℃、RH15%)にて、印字テストを行ったが、帯電不良のため良好な画質が得られなかった。そのため、その後の評価はできなかった。
【0119】
<比較例3>
(弾性ロールの作製)
第1の接着層を塗布しなかった以外は、実施例1と同様に作製し、図10に示す態様の弾性ロール190を得た。
【0120】
[評価]
(画像評価)
上述した弾性ロールを、富士ゼロックス社製DocuCentre Colar a450の帯電ロールの代わりに取り付けて、低温・低湿条件(10℃、RH15%)にて、印字テストを行った。次に1万枚印刷し、1万枚印刷後のドラムカートリッジを40℃、95パーセントの環境下に7日間保管し、その後、低温・低湿条件(10℃、RH15%)にて印字テストを行った。その後、さらに、目視にて弾性ロールの外観検査を行った。
【0121】
印字テストの評価基準は下記の様である。
○:帯電不良によるトナーかぶり、または、濃度上昇、画質欠陥がない。
×:帯電不良によるトナーかぶり、または、濃度上昇、画質欠陥がある。
【0122】
(弾性ロールの両端部の拡径度合い)
<測定方法>
弾性ロールの端部の拡径度合いは、レーザー式の外径測定器により、弾性ロールの弾性層端部から5mmと20mmの位置の外径を測定し、5mm位置の外径から20mmの位置の外径を引いた値から求めた。
【0123】
<評価基準>
上記の外径差が10μm以下は良好であり○、10〜20μmは使用上問題ないものの拡径の傾向があるため△とし、20μm以上は濃度ムラや放電の不均一による感光体の不均一磨耗が発生するため×とした。
【0124】
結果を表1、表2に記載する。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
<実施例9>
導電性芯金10としてステンレス鋼製のφ14mm、長さが306mmのシャフトを準備した。この導電性芯金10表面の弾性層と接合する接合面に、実施例1と同様に図1の構造を有する第1の接着層及び第2の接着層を形成し、抵抗値を測定した。第1の接着層12の体積抵抗率は、1×1014Ω・cmであり、導電性芯金10と第1の接着層14との間の抵抗は1×1012Ω以上であった。また、第2の接着層14の体積抵抗率は、1×104Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の間の抵抗は2×104Ωであった。
【0128】
次にエピクロルヒドリンゴム(Gechron3106:日本ゼオン社製)50質量部、NBR(DN4050、日本ゼオン社製)50質量部、及び、発泡剤としてのベンゼンスルホニルヒドラジド6質量部を混合し、混合物を得た。
【0129】
次に、先に準備した導電性芯金10の外周に、上記の混合物をクロスヘッド押出し機により押し出して、外径がφ20mmの未発泡状態のゴム層を両端部8mmを残し成形した。次いで、未発泡ゴム層を加硫缶にて160℃で20分間加硫して発泡させ、発泡ゴム層(弾性層)を形成した。この発泡ゴム層(弾性層)表面を研削盤にて砥石研磨し、芯体の周りに弾性層を有する外径がφ28mmの弾性ロール(転写ロール1)を得た。
【0130】
<実施例10>
(弾性ロールの作製)
図2に示す弾性ロール110の構成の一例を製作した。第1の接着層22を導電性芯金10の両端部8mmを残し塗布し、第2の接着層24を導電性芯金10の両端部7mmを残し塗布した以外は、第1の接着層及び第2の接着層は同一素材を用い、実施例9と同様に、図2に示す態様の弾性ロール(転写ロール2)を得た。ここで、第1の接着層12の体積抵抗率は、1×1014Ω・cmであり、導電性芯金10と第1の接着層14との間の抵抗は1×1012Ω以上であった。また、第2の接着層14の体積抵抗率は、1×104Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の間の抵抗は2×106Ωであった。
【0131】
[評価]
(画像評価)
実施例9または10の弾性ロールを、富士ゼロックス社製DocuColor5065Pの2次転写ロールの代わりに取り付けて、低温・低湿条件(10℃、RH15%)にて、印字テストを行った。次に1万枚印刷し、1万枚印刷後のドラムカートリッジを40℃、95パーセントの環境下に7日間保管し、その後、低温・低湿条件(10℃、RH15%)にて印字テストを行った。その後、さらに、目視にて弾性ロールの外観検査を行った。
【0132】
印字テストの評価基準は下記の様である。
○:帯電不良によるトナーかぶり、または、濃度上昇、画質欠陥がない。
×:帯電不良によるトナーかぶり、または、濃度上昇、画質欠陥がある。
【0133】
(弾性ロールの両端部の拡径度合い)
<測定方法>
弾性ロールの端部の拡径度合いは、レーザー式の外径測定器により、弾性ロールの弾性層端部から5mmと20mmの位置の外径を測定し、5mm位置の外径から20mmの位置の外径を引いた値から求めた。
【0134】
<評価基準>
上記の外径差が10μm以下は良好であり○、10〜20μmは使用上問題ないものの拡径の傾向があるため△とし、20μm以上は濃度ムラや放電の不均一による感光体の不均一磨耗が発生するため×とした。
【0135】
結果を上記表1に記載する。
【0136】
実施例1から実施例9は初期の印刷テスト、1万枚の印刷テスト後の保管後の画質、及び、外観検査結果ともに良好であった。ただし、実施例1と実施例3と実施例4に於いて端部の一部に錆が見られたものの、非画像領域に錆が見られただけなので、実用上の問題とはならなかった。それに対し、比較例1では第2の接着層が導電性芯金と電気的な接触状態にないため、感光体を帯電できなかった。また、比較例2では第2の接着層がないため、感光体を帯電できなかった。また、比較例3では第1の接着層がないため、一万枚印刷テスト後の保管後では画質不良を起こしてしまい、また、外観検査より芯金の腐食に起因する形状変形が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の活用例として、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置等への適用がある。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明における第1の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図2】本発明における第2の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図3】本発明における第3の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図4】本発明における第4の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図5】本発明における第5の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図6】本発明における第6の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図7】本発明における第7の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図8】比較例1の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図9】比較例2の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図10】比較例3の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図11】本発明の実施の形態における画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図12】抵抗率の計測方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0139】
10 導電性芯金、12,22 第1の接着層、14,24 第2の接着層、16 弾性層、18,28 第3の接着層、38 導電層、100,110,120,130,140,150,160 弾性ロール。
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性ロール、弾性ロールの製造方法、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を採用した複写機やプリンタなどの画像形成装置において、例えば帯電装置として、被帯電体(例えば、感光体)の表面に直接接触させて、直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加させ、被帯電体を帯電させる近接または接触型の帯電装置または、被帯電体に形成されたトナー画像を紙などの転写媒体に転写する転写装置が主に用いられている。
【0003】
このような近接または接触型の帯電装置に用いる帯電ロールや転写装置に用いられる転写ロールとして、例えば、回転軸である導電性芯金と弾性層との間の電気抵抗の制御と接着性との両立を図るため、導電性芯金と弾性層との間に、弾性層より体積抵抗率の高い接着層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【0004】
また、導電弾性層と回転軸を強く接着させるためにカーボン粉末を含まない接着剤をスパイラル状に回転軸に塗布してから導電性弾性層を付着させ、回転軸の接着剤未塗布部分と導電弾性層とをスパイラル状に直に接触させて導通性を確保した帯電ロールが提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
また、軸体の外周に第1の接着層を形成し、第1の接着層の両端部より延出させてカーボンブラック含有の第2の接着層を積層し、次いで、第2の接着層上にゴム層を積層した後、第1の接着層両端部に沿って、第2の接着層とゴム層とを切断し、第2の接着層とゴム層の各両端部を取り除くことにより、第1の接着層と第2の接着層とゴム層との端部を揃え、ゴム層の両端縁部の拡径を防止する帯電ロールの製法が提案されている(例えば、特許文献4)。
【0006】
【特許文献1】特開平9−190049号公報
【特許文献2】特開平9−272178号公報
【特許文献3】特開平11−102113号公報
【特許文献4】特開2004−302127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、使用履歴のある弾性ロールの導電性芯金における錆発生を抑制した弾性ロール、弾性ロールの製造方法を提供し、また、該弾性ロールを供えた帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち、本発明の弾性ロール、弾性ロールの製造方法、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置は、以下の特徴を有する。
【0009】
(1)導電性芯金上に、少なくとも絶縁性の第1の接着層と、導電性の第2の接着層と、半導電性の弾性層とを有し、前記第2の接着層は、前記導電性芯金と電気的に導通状態である弾性ロールである。
【0010】
(2)前記導電性芯金上に、少なくとも前記第1の接着層、第2の接着層、弾性層の順で積層され、前記第2の接着層の軸方向端部が、前記第1の接着層の軸方向端部より延出して形成されている上記(1)に記載の弾性ロールである。
【0011】
(3)前記導電性芯金上に、少なくとも前記第1の接着層と、第2の接着層と、弾性層とが積層され、さらに、前記第1の接着層の軸方向端部より延出した端部を有する導電性の第3の接着層を有し、前記第2の接着層と第3の接着層とは少なくとも一部分で接触している上記(1)に記載の弾性ロールである。
【0012】
(4)さらに、前記導電性芯金と接触する導電層を有し、前記導電層は、前記第2の接着層の端面とも接触している上記(1)に記載の弾性ロールである。
【0013】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の弾性ロールを備えることを特徴とする帯電装置である。
【0014】
(6)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の弾性ロールを備えるプロセスカートリッジである。
【0015】
(7)少なくとも像保持体と、該像保持体に接触しその表面を帯電する上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の弾性ロールとを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0016】
(8)導電性芯金上に、少なくとも絶縁性の第1の接着層、導電性の第2の接着層、半導電性の弾性層の順に積層形成する工程と、前記第1の接着層、第2の接着層、弾性層の両端部を切り揃える工程と、前記導電性芯金と第2の接着層の端面とに接触する導電層を形成する工程と、を有する弾性ロールの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制される。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、弾性層が形成される領域における導電性芯金の錆の発生が抑制される。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制され、接着性と導電性とに優れた弾性ロールを得る事ができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制される。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制された帯電装置が提供される。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制されたプロセスカートリッジが提供される。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制された画像形成装置が提供される。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、使用履歴による導電性芯金の錆発生が抑制される、弾性ロールが製造される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について以下説明する。なお、本発明の実施の形態を詳細に説明するにあたり、まず本実施の形態における弾性ロールについて詳述し、その後、本実施の形態における弾性ロールを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置について述べる。なお、図面の各構成の寸法は、実際の寸法と異なる場合がある。
【0026】
<弾性ロール>
本発明における第1の実施の形態の弾性ロール100は、図1に示すように、導電性芯金10の外周に、少なくとも同芯状に絶縁性の第1の接着層12と、導電性の第2の接着層14と半導電性の弾性層16とが積層され、第2の接着層14の軸方向端部が、それぞれ第1の接着層12の軸方向端部より延出して形成され、導電性の第2の接着層14は、導電性芯金10と電気的に導通状態になっている。さらに、弾性層16には、抵抗層である表面層(図示せず)が積層される。また、本実施の形態では、弾性層16の両端面と第2の接着層14の両端面とは、略面一形状になっている。
【0027】
ここで、本発明における「導通状態」とは、導電性芯金と第2の接着層との間の体積抵抗率が1×108Ω・cm以下の場合を意味する。なお、体積抵抗率の測定方法については後述する。
【0028】
本実施の形態の弾性ロール100を例えば接触帯電ロールとして画像形成装置に用い画像形成を行った場合、導電性の第2の接着層14が導電性芯金10と電気的に導通状態であるため、弾性ロール100全体に電流が供給され、その結果、弾性ロール100の帯電性は損なわれず、一方、絶縁性の第1の接着層12と導電性芯金10の表面との電荷の授受は、例えば、導電性を有する接着層と導電性芯金表面との電荷の授受に比べ減少することから、使用履歴による導電性芯金10の第1の接着層12が形成されている領域における錆の発生が抑制される。
【0029】
ここで、使用履歴のある弾性ロールの導電性芯金が錆を発生しやすい原因は、以下のようであると考えられる。弾性ロールには感光体を帯電するための電流が流れる。この電流の一部は弾性層を形成する導電ゴム中のイオンや、弾性層と導電性芯金とを接着させる接着層中のイオンを導電性芯金表面へと移動させる。そのため、導電性芯金表面はイオンが多い状態となり、導電性芯金の腐食が生じやすくなる。または、この電流による導電性芯金と接着層との間の電荷移動の際、酸化還元反応を伴い、導電性芯金表面に腐食されやすい部分が生じる。
【0030】
これらを防ぐためには、弾性層を形成する導電性ゴムと導電性芯金との間または接着層と導電性芯金との間での電荷の授受を無くすこと、言い換えれば、導電性芯金と弾性層を形成する導電性ゴムとの間で電流を流さないことが有効である。しかしながら、実使用上、費用、信頼性などの観点から、導電性芯金から弾性層へ電流を供給する構成が有効である。
【0031】
本実施の形態では、導電性芯金10の表面に錆を生じさせず、且つ導電性芯金10より弾性層16へ電気を供給することを両立するため、例えば、弾性ロール100の画像形成領域に相当する導電性芯金10の外周に、絶縁性の第1の接着層12を形成し、導電性芯金10の表面の電荷の授受を減じることで、実用上の課題となる画像形成領域における錆の発生が抑制される。特に、高温高湿環境下における導電性芯金10の錆の発生が抑制される。これにより、導電性芯金10と弾性層16との一部剥離が抑制され、その結果、弾性ロール100の画像形成領域における形状の歪みが防止され、弾性ロール10を用いて画像形成を行った場合に、画像欠陥の発生が抑制される。
【0032】
また、導電性の第2の接着層14が、弾性ロール100の非画像形成領域から弾性ロール100全体に電流を供給するので、帯電性能を損なうことはない。したがって、上述したように、導電性芯金10と弾性層16との接着性、製造容易性、帯電性能を損なうことなく、使用履歴のある弾性ロール100における導電性芯金10の第1の接着層12が形成されている画像形成領域における錆の発生が抑制される。
【0033】
本実施の形態における弾性ロール100の各構成要素の素材について、以下に説明する。導電性芯金10は、導電性を有するものであって、一般には鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。また、JIS G4804に示されているような快削鋼にクロム、ニッケル等でメッキ処理を施した材質でも良い。メッキは電解メッキあるいは無電解メッキのどちらでもよい。また、導電性芯金10は、ロール形状のほかに、中空のパイプ形状が用いられる。
【0034】
第1の接着層12を形成する絶縁性の接着剤は、導電性芯金10と接着し、第2の接着層14との接着性が高いものであって、体積抵抗率が、第2の接着層14より高抵抗率である接着層であれば公知のいずれの接着剤が用いられる。第1の接着層12の接着剤としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム等を主成分とするものが用いられ、好ましくは、ケムロック607(ロード・ファー・イースト社製)が用いられる。さらに、第1の接着層12は、後述する導電性粒子または半導電性粒子を含まないことが好ましいが、導電性芯金10と電荷の授受が抑制可能な量で、導電性粒子または半導電性粒子を含有してもよい。
【0035】
第1の接着層12の体積抵抗率は、1×1010Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上、1×1016Ω・cm以下であり、さらに好ましくは、1×1012Ω・cm以上、1×1015Ω・cm以下である。
【0036】
第1の接着層12の膜厚は、1μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上15μm以下である。第1の接着層12は欠陥無く絶縁するため、また、イオン等の拡散による絶縁性の低下を防ぐため、通常の接着層よりも厚くすることが好ましい。
【0037】
第2の接着層14を形成する導電性の接着剤は、第1の接着層12と接着し、弾性層16との接着性が高いものであって、体積抵抗率が、第1の接着層12より低抵抗率である接着層であれば公知のいずれの接着剤が用いられる。第2の接着層14の接着剤としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム等を主成分とするものが用いられ、さらに、第2の接着層14には、導電性粒子または半導電性粒子が含有される。導電性粒子または半導電性粒子としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、熱分解カーボン、グラファイト、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物等のイオン性化合物等が用いられ、これらの材料を単独または2種以上を混合して用いてもよい。第2の接着層14に用いられる接着剤としては、例えば、ケムロック258(ロード・ファー・イースト社製)に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)を含有させたものが用いられる。これら導電剤の添加量は所望の導電性が得られる範囲で添加することができる。
【0038】
第2の接着層14の体積抵抗率は、1×108Ω・cm以下であり、好ましくは1×101Ω・cm以上、1×106Ω・cm以下であり、さらに好ましくは、1×101Ω・cm以上、1×105Ω・cm以下である。
【0039】
第2の接着層14の膜厚は、1μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0040】
第1の接着層12の軸方向端部より延出する第2の接着層14の延出領域は、導通状態を確保できる範囲で任意に設定できるが、確実に導通を確保する観点から、弾性層16の軸方向の長さに対して、0.1%以上1%以下が好ましい。例えば、弾性層16の軸方向の長さが300mmの場合、第2の接着層14の延出領域は、0.3mm以上3mm以下、好ましくは、1mm以上2mm以下である。なお、第2の接着層14の延出領域はロール両端にあることが好ましいが、片側のみでも良い。
【0041】
また、半導電性の弾性層16は、導電性または半導電性を有するものであり、一般には樹脂材またはゴム材に導電性粒子または半導電性粒子を分散、または、イオン性導電剤を混入したものである。樹脂材は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂などが用いられ、ゴム材は、例えば、エチレン−プロピレンゴム、ポリブタンジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴムなど、または、これらを発泡させた発泡材が用いられる。
【0042】
また、導電性粒子または半導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物が用いられ、これらの材料を単独または2種以上を混合して用いてもよい。さらに、必要に応じて、タルク、アルミナ、シリカ等の無機充填材、フッ素樹脂やシリコーンゴムの微粉等の有機充填材の1種または2種以上を混合してもよい。
【0043】
イオン性導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩又は塩素酸塩等、リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩又は塩素酸塩等が1種または2種以上を混合して用いられる。
【0044】
弾性層16の膜厚は、0.5mm以上5mm以下、好ましくは1mm以上4mm以下である。
【0045】
表面層(図示せず)を形成する材料としては、例えば、結着樹脂に導電性粒子または半導電性粒子を分散、または、イオン性導電剤を含有し、その抵抗を制御したものであり、表面層の体積抵抗率は、1×103Ω・cm以上、1×1014Ω・cm以下であり、好ましくは1×105Ω・cm以上、1×1012Ω・cm以下であり、さらに好ましくは、1×107Ω・cm以上、1×1010Ω・cm以下である。
【0046】
表面層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメリル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、テトラフルオロエチレン(PFA)、テトラフルオロエチレン(FEP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂などが用いられる。
【0047】
表面層に用いる導電性粒子または半導電性粒子としては、上述した半導電弾性層32に用いたものと同様の、カーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物等の1種または2種以上を混合して用いられる。イオン性導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩又は塩素酸塩等、リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩又は塩素酸塩等が1種または2種以上を混合して用いられる。また、必要に応じて、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン、タルク、シリカ、アルミナ等の無機充填材や、フッ素樹脂やシリコーン樹脂の微粉等の有機充填材の1種または2種以上を混合してもよい。また、さらに界面活性剤や帯電制御剤等が必要に応じて添加される。
【0048】
表面層の膜厚は、例えば0.01μm以上、1,000μm以下であり、好ましくは0.1μm以上、500μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上、100μm以下である。
【0049】
上述した第1の接着層12、第2の接着層14、弾性層16および表面層の体積抵抗率は、以下のようにして測定する。すなわち、100mm×100mm、厚さ2mmのアルミ材の上にスキマゲージを用いて、各層を形成するための塗液を用いて、10μmの塗液膜を作り、アドバンテスト社製R8340Aを用い5Vの印加電圧のもと測定した。
【0050】
(体積抵抗率およびそれらの測定)
ここで、体積抵抗率は、円形電極(例えば、アドバンテスト社製R8340Aまたは(株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタUPMCP−450型URプローブ)を用い、JIS K 6911(1995)に従って測定することができる。前記体積抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。図12は、円形電極の一例を示す概略平面の図12(a)及び概略断面の図12(b)からなる。図12に示す円形電極は、第1電圧印加電極Aと第2電圧印加電極Bとを備える。第1電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。第1電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと第2電圧印加電極Bとの間に上述の測定試料Tを挟持し、第1電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cと第2電圧印加電極Bとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を電圧印加10秒後に測定し、下記式(1)により、測定試料の体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出することができる。ここで、下記式(1)中、tは、測定試料の接着剤層の厚さを示す。
式(1):ρv=19.6×(V/I)×t
【0051】
(導電性芯体と各層との間の抵抗の測定)
導電性芯体と上述した第1の接着層12、第2の接着層14との間の抵抗値は、特開平6−118105号公報に記載の方法で測定された値の平均値をいう。
【0052】
抵抗の平均値は、下記方法により測定された抵抗値に基づき、軸方向には導電性支持体上の接着層の両端部よりそれぞれ20mmと、中央部分の3点を、更に該3点の周方向には6度毎に抵抗測定し、全ての測定値を相加平均して求めた。この抵抗測定には、幅5mmの円筒状のSUS製ベアリングからなる電極を25gの重りで測定対象のロール表面に接触させ、ロールを5.5rpmで回転させながら電極と導電性支持体間の抵抗の計測をした。電源および電流計には、高抵抗測定器(アドバンテスト社製、R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計)を用いた。印加電圧は1V、抵抗は式(2)より算出した。
式(2):抵抗(Ω)=印加電圧/電流
【0053】
さらに、上述した第1の接着層12、第2の接着層14、弾性層16および表面層は、各層のために組成が調製された塗液を、例えば、ブレード塗布方法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法(図7に示す)、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等により塗布されることにより形成される。
【0054】
本発明における第2の実施の形態の弾性ロール110は、図2に示すように、導電性芯金10の外周に、少なくとも同芯状に絶縁性の第1の接着層22と、導電性の第2の接着層24と半導電性の弾性層16とが積層され、第2の接着層24の軸方向端部が、それぞれ第1の接着層22の軸方向端部より延出して形成され、導電性の第2の接着層24は、導電性芯金10と電気的に導通状態になっている。さらに、弾性層16には、抵抗層である表面層(図示せず)が積層される。さらに、本実施の形態では、図2に示すように、弾性層16の両端面と第1の接着層24の両端面とは、略面一形状になっている。
【0055】
本実施の形態の弾性ロール110を画像形成装置に用い画像形成を行った場合、導電性の第2の接着層24が導電性芯金10と電気的に導通状態であるため、弾性ロール110全体に電流が供給され、その結果、弾性ロール110の帯電性は損なわれず、一方、絶縁性の第1の接着層22と導電性芯金10の表面との電荷の授受は、例えば、導電性を有する接着層と導電性芯金表面との電荷の授受に比べ減少することから、使用履歴による導電性芯金10の第1の接着層22が形成されている領域における錆の発生が抑制され、本実施の形態の場合、錆由来の弾性層16の形状歪みの発生が抑制され、その結果、弾性層16の全面が画像形成領域として使用される。
【0056】
第1の接着層22の軸方向端部より延出する第2の接着層24の延出領域は、導通状態を確保できる範囲で任意に設定できるが、確実に導通を確保する観点から、弾性層16の軸方向の長さに対して、0.1%以上1%以下が好ましい。例えば、弾性層16の軸方向の長さが300mmの場合、第2の接着層24の延出領域は、0.3mm以上3mm以下、好ましくは、1mm以上2mm以下である。なお、第2の接着層24の延出領域はロール両端にあることが好ましいが、片側のみでも良い。
【0057】
本実施の形態における導電性芯金10、第1の接着層22、第2の接着層24、弾性層16、表面層の素材は、第1の実施の形態で述べた導電性芯金10、第1の接着層12、第2の接着層14、弾性層16、表面層と同様の材料が用いられ、また、その層の厚みも同様であり、各層の作成手段も同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0058】
本発明における第3の実施の形態の弾性ロール120は、図3に示すように、導電性芯金10の外周に、少なくとも同芯状に絶縁性の第1の接着層12と、導電性の第2の接着層14と半導電性の弾性層16とが積層され、さらに、第1の接着層12の軸方向端部より延出した端部を有する導電性の第3の接着層18が設けられ、第2の接着層14と第3の接着層18とは少なくとも一部分で接触している。さらに、弾性層16には、抵抗層である表面層(図示せず)が積層される。さらに、本実施の形態では、図3に示すように、弾性層16の両端面と第1の接着層12の両端面とは、略面一形状になっている。なお、第1及び第2の実施の形態における弾性ロールと同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0059】
本実施の形態における導電性の第3の接着層18は、第1の接着層12の端部より延出された積層され、第3の接着層18は、第1の接着層12の全面に積層されてもよいが、弾性ロールの膜厚増加、製造コストを考慮すると、図3に示すように、第3の接着層18の一端部が導電性芯金10に接触し、第3の接着層18の他端部が第1の接着層12の端部に一部重なるように積層されていることが好ましい。さらに、本実施の形態では、第3の接着層18の外周全面は、第2の接着層14の内周面の一部と接着しているため、導電性芯金10と弾性層16は、第3の接着層18と第2の接着層14とを介して導通状態になっている。
【0060】
本実施形態において、導電性の第3の接着層18から導電性の第2の接着層14を経て、弾性ロール120の非画像形成領域から弾性ロール120全体に電流を供給するので、帯電性能を損なうことはない。したがって、上述したように、導電性芯金10と弾性層16との接着性、製造容易性、帯電性能を損なうことなく、使用履歴のある弾性ロール120における導電性芯金10の第1の接着層12が形成されている画像形成領域における錆の発生が抑制される。
【0061】
また、本実施の形態では、第3の接着層18の体積抵抗率は、第2の接着層14と同一またはどちらかがより体積抵抗率が高くてもよいが、導通状態の確保を考慮すると、第3の接着層18の体積抵抗率は、第2の接着層14の体積抵抗率より低いことが好ましい。第3の接着層の18の体積抵抗率は、上述同様の測定方法により、1×108Ω・cm以下であり、好ましくは1×10−1Ω・cm以上、1×106Ω・cm以下であり、さらに好ましくは、1×101Ω・cm以上、1×105Ω・cm以下である。
【0062】
第3の接着層18の膜厚は、1μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0063】
第1の接着層12の軸方向端部より延出する第3の接着層18の延出領域は、導通状態を確保できる範囲で任意に設定できるが、確実に導通を確保する観点から、弾性層16の軸方向の長さに対して、0.1%以上1%以下が好ましい。例えば、弾性層16の軸方向の長さが300mmの場合、第3の接着層18の延出領域は、0.3mm以上3mm以下、好ましくは、1mm以上2mm以下である。なお、第3の接着層18の延出領域はロール両端にあることが好ましいが、片側のみでも良い。
【0064】
本発明における第4の実施の形態の弾性ロール130は、図4に示すように、導電性芯金10の外周に、少なくとも同芯状に絶縁性の第1の接着層22と、導電性の第2の接着層14と半導電性の弾性層16とが積層され、さらに、第1の接着層22の軸方向端部より延出した端部を有する導電性の第3の接着層28が設けられ、第2の接着層14と第3の接着層28とは少なくとも一部分で接触している。さらに、弾性層16には、抵抗層である表面層(図示せず)が積層される。さらに、本実施の形態では、図3に示すように、弾性層16の両端面と第2の接着層14の両端面とは、略面一形状になっている。なお、第1及び第2の実施の形態における弾性ロールと同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0065】
さらに、詳細に説明すると、本実施の形態における導電性の第3の接着層28は、その内周全面が導電性芯金10に接触し、一方、第3の接着層28の一方端部上に第1の接着層12の端部が重なるように形成されている。一方、第1の接着層14より延出した第3の接着層28の外周面に導電性の第2の接着層12が接触するように積層されているので、導電性芯金10と弾性層16は、第3の接着層28と第2の接着層14とを介して導通状態になっている。
【0066】
本実施形態において、導電性の第3の接着層28から導電性の第2の接着層14を経て、弾性ロール130の非画像形成領域から弾性ロール130全体に電流を供給するので、帯電性能を損なうことはない。したがって、上述したように、導電性芯金10と弾性層16との接着性、製造容易性、帯電性能を損なうことなく、使用履歴のある弾性ロール130における導電性芯金10に直接第1の接着層12が付着して形成されている画像形成領域における錆の発生が抑制される。
【0067】
また、本実施の形態では、第3の接着層28の体積抵抗率は、第2の接着層14と同一またはどちらかがより体積抵抗率が高くてもよいが、導電性芯金10との接着性を考慮し、さらに錆発生の抑制を考慮すると、第3の接着層28の体積抵抗率は、第2の接着層14の体積抵抗率より高いことが好ましい。第3の接着層の28の体積抵抗率は、上述同様の測定方法により、1×108Ω・cm以下であり、好ましくは1×101Ω・cm以上、1×106Ω・cm以下であり、さらに好ましくは、1×101Ω・cm以上、1×105Ω・cm以下である。
【0068】
第3の接着層28の膜厚は、1μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0069】
第1の接着層12の軸方向端部より延出する第3の接着層28の延出領域は、導通状態を確保できる範囲で任意に設定できるが、確実に導通を確保する観点から、弾性層16の軸方向の長さに対して、0.1%以上1%以下が好ましい。例えば、弾性層16の軸方向の長さが300mmの場合、第3の接着層18の延出領域は、0.3mm以上3mm以下、好ましくは、1mm以上2mm以下である。
【0070】
本発明における第5の実施の形態の弾性ロール140は、図5に示すように、第1の接着層22の端面と弾性層16との端面が略面一になるように構成され、さらに、第3の接着層18の軸方向端部と第2の接着層24の軸方向端部が、第1の接着層12の軸方向端部より延出して形成されている以外は、第3の実施の形態と同様である。なお、第1,第2及び第3の実施の形態における弾性ロールと同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0071】
本実施の形態の弾性ロール140を画像形成装置に用い画像形成を行った場合、導電性の第3の接着層18を介して第2の接着層24が導電性芯金10と電気的に導通状態であるため、弾性ロール140全体に電流が供給され、その結果、弾性ロール140の帯電性は損なわれず、一方、絶縁性の第1の接着層22と導電性芯金10の表面との電荷の授受は、例えば、導電性を有する接着層と導電性芯金表面との電荷の授受に比べ減少することから、使用履歴による導電性芯金10の第1の接着層22が形成されている領域における錆の発生が抑制され、本実施の形態の場合、錆由来の弾性層16の形状歪みの発生が抑制され、その結果、弾性層16の全面が画像形成領域として使用される。
【0072】
本発明における第6の実施の形態の弾性ロール150は、図6に示すように、第1の接着層22の端面と弾性層16との端面が略面一になるように構成され、さらに、第3の接着層28の軸方向端部と第2の接着層24の軸方向端部が、第1の接着層22の軸方向端部より延出して形成されている以外は、第4の実施の形態と同様である。なお、第1,第2,第3及び第4の実施の形態における弾性ロールと同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0073】
本実施の形態の弾性ロール150を画像形成装置に用い画像形成を行った場合、導電性の第3の接着層18を介して第2の接着層24が導電性芯金10と電気的に導通状態であるため、弾性ロール150全体に電流が供給され、その結果、弾性ロール150の帯電性は損なわれず、一方、絶縁性の第1の接着層22と導電性芯金10の表面との電荷の授受は、例えば、導電性を有する接着層と導電性芯金表面との電荷の授受に比べ減少することから、使用履歴による導電性芯金10の第1の接着層22が直接形成されている領域における錆の発生が抑制され、本実施の形態の場合、錆由来の弾性層16の形状歪みの発生が抑制され、その結果、弾性層16の全面が画像形成領域として使用される。なお、図6に示すように、例えば、第1の接着層12が導電性芯金10に直接接触している領域より、小さい領域で弾性層16を形成した場合には、例えば高温高湿下で長時間使用し、仮に第3の接着層28と接着する導電性芯金10に錆が発生したとしても、弾性層16全面が画像形成領域として担保される。
【0074】
本発明における第7の実施の形態の弾性ロール160は、図7に示すように、導電性芯金10の外周に、少なくとも同芯状に絶縁性の第1の接着層22と、導電性の第2の接着層14と半導電性の弾性層16とが積層され、さらに、導電性芯金10及び第2の接着層14の端面と接触する導電層38を有する。なお、第1,第2,第3,第4及び第5の実施の形態における弾性ロールと同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0075】
本実施の形態では、導電層38が導電性芯金10と電気的に導通し、さらに、導電層38が導電性の第2の接着層14の端面と接触しているため、弾性ロール160全体に電流が供給され、その結果、弾性ロール160の帯電性は損なわれず、一方、絶縁性の第1の接着層22と導電性芯金表面10との電荷の授受は、導電性を有する接着層と導電性芯金表面との電荷の授受に比べ減少することから、使用履歴による導電性芯金10の第1の接着層22が直接形成されている領域における錆の発生が抑制され、本実施の形態の場合、錆由来の弾性層16の形状歪みの発生が抑制され、その結果、弾性層16の全面が画像形成領域として使用される。
【0076】
導電層38は、導電性芯金10と第2の接着層14と接着性の高いものであって、体積抵抗率が、第1の接着層12より低抵抗率である接着層であれば公知のいずれの接着剤が用いられる。導電層38としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム等を主成分とするものが用いられ、さらに、導電層38には、導電性粒子または半導電性粒子が含有される。導電性粒子または半導電性粒子としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、熱分解カーボン、グラファイト、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物等が用いられ、これらの材料を単独または2種以上を混合して用いてもよい。第2の接着層14に用いられる接着剤としては、例えば、ケムロック258(ロード・ファー・イースト社製)に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)を含有させたものが用いられる。
【0077】
導電層38は、上記の他に、例えばカーボンブラックを分散した導電性グリースが用いられる。
【0078】
導電層38の体積抵抗率は、1×106Ω・cm以下であり、好ましくは1×10−3Ω・cm以上、1×104Ω・cm以下であり、さらに好ましくは、1×10−1Ω・cm以上、1×103Ω・cm以下である。
【0079】
導電層38の膜厚は、1μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0080】
導電層38と導電性芯金10との接触領域は、導通状態を確保できる範囲で任意に設定できるが、確実に導通を確保する観点から、弾性層16の軸方向の長さに対して、0.1%以上1%以下である。例えば、弾性層16の軸方向の長さが300mmの場合、導電層38の接触領域は、0.3mm以上3mm以下、好ましくは、1mm以上2mm以下である。なお、導電層38の接触領域はロール両端にあることが好ましいが、片側のみでも良い。
【0081】
上述した第7の実施の形態における弾性ロールの製造方法は、図7に示す導電性芯金10上に、少なくとも絶縁性の第1の接着層22、導電性の第2の接着層14、半導電性の弾性層16の順に積層形成する工程と、第1の接着層22、第2の接着層14、弾性層16の両端部を切り揃える工程と、導電性芯金10と第2の接着層14の端面とに接触する導電層38を形成する工程と、を有する。
【0082】
第2の接着層14の端面と導電性芯金10の両方に接触するように導電層38を設けるという比較的簡単の工程により、導電層38を介して導電性芯金10と第2の接着層14とを導通させる弾性ロール160が得られる。さらに、絶縁性の第1の接着層22と導電性芯金10表面との電荷の授受は、導電性を有する接着層と導電性芯金表面との電荷の授受に比べ減少することから、使用履歴による導電性芯金10の第1の接着層22が直接形成されている領域における錆の発生が抑制され、錆由来の弾性層16の形状歪みの発生が抑制され、その結果、弾性層16の全面が画像形成領域として使用される弾性ロール160が製造される。
【0083】
図11は、本実施の形態における画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
【0084】
次に、本実施の形態の画像形成装置の一例について説明する。
【0085】
図11は、上述の実施の形態の弾性ロールを帯電ロールとして用いた画像形成装置の構成例を示す概略図である。図示した画像形成装置200は、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。電子写真感光体401a〜401dは、例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成することが可能である。
【0086】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って弾性ロールである帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0087】
さらに、ハウジング400内の所定の位置には露光装置403が配置されており、露光装置403から出射された光ビームを帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0088】
ここで、帯電ロール402a〜402dは、電子写真感光体401a〜401dの表面に接触させて感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである(帯電工程)。上記帯電ロール402a〜402dとして、上述した実施の形態における弾性ロール100,110,120,130,140,150,160が用いられる。
【0089】
露光装置403としては、電子写真感光体401a〜401dの表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を所望の像様に露光できる光学系装置等を用いることができる。これらの中でも、非干渉光を露光可能な露光装置を用いると、電子写真感光体401a〜401dの導電性基体と感光層との間での干渉縞を防止することができる。
【0090】
現像装置404a〜404dには、上述の二成分静電荷像現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行うことができる(現像工程)。そのような現像装置としては、二成分静電荷像現像用現像剤を用いる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のものを選択することができる。一次転写工程では、1次転写ロール410a〜410dに、像担持体に担持されたトナーと逆極性の1次転写バイアスが印加されることで、像担持体から中間転写ベルト409へ各色のトナーが順次1次転写される。
【0091】
クリーニングブレード415a〜415dは、転写工程後の電子写真感光体の表面に付着した残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0092】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、背面ロール408及び張力付与ロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介して背面ロール408と当接するように配置されている。
【0093】
2次転写ロール413に、中間転写体上のトナーと逆極性の2次転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルトから記録媒体へトナーが2次転写される。背面ロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416或いは、除電器(不図示)により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。また、ハウジング400内の所定の位置には給紙装置(被転写媒体容器)411が設けられており、給紙装置411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。上記1次転写ロール410a〜410d、2次転写ロール413には、上述した実施の形態における弾性ロール100,110,120,130,140,150,160を用いることができる。
【0094】
本実施の形態におけるプロセスカートリッジは、図11に示すように、上述の実施の形態の弾性ロールを帯電ロールとして用いたもので、弾性ロールである帯電ロール402a、電子写真感光体401a、クリーニングブレード415aおよび現像装置404aが、一体化されて、例えばブラック用のプロセスカートリッジが構成されている。同様に、弾性ロールである帯電ロール402b、電子写真感光体401b、クリーニングブレード415bおよび現像装置404bが、一体化されてイエロー用のプロセスカートリッジが構成され、弾性ロールである帯電ロール402c、電子写真感光体401c、クリーニングブレード415cおよび現像装置404cが、一体化されてマゼンタ用のプロセスカートリッジが構成され、弾性ロールである帯電ロール402d、電子写真感光体401d、クリーニングブレード415dおよび現像装置404dが、一体化されてシアン用のプロセスカートリッジが構成される。
【実施例】
【0095】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」は「質量部」を表す。
【0096】
(弾性ロールの作製)
図1に示す弾性ロール100の構成の一例を製作した。
【0097】
−接着層の形成−
直径8mm、長さ332mmの円柱状のニッケルメッキにて処理した快削鋼鋼材の導電性芯金10上に、両端部10mmを残しケムロック607(ロード・ファー・イースト社製)を10μmの厚さになるように塗布し第1の接着層12を形成した。第1の接着層12の体積抵抗率は、1×1014Ω・cmであり、導電性芯金10と第1の接着層14との間の抵抗は1×1012Ω以上であった。
【0098】
次に、ケムロック258(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)5質量部を分散した液を上記第1の接着層12を形成した導電性芯金10上に両端部8mmを残し膜厚15μmになるように塗布し、第2の接着層14を形成した。第2の接着層14の体積抵抗率は、1×104Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の間の抵抗は2×104Ωであった。
【0099】
(体積抵抗率の測定)
実施例、比較例において接着層の体積抵抗率は、100mm×100mm、厚さ2mmのアルミ材の上にスキマゲージを用いて、接着層を10μmの塗液膜を作りこれをサンプルとして測定した。
【0100】
測定には円形電極((株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタUPMCP−450型URプローブ)および高抵抗測定器(アドバンテスト社製、R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計)を用い、JIS K 6911(1995)に従って測定した。具体的には測定条件としては25℃55%RHの環境下で電圧5V印加し、10秒後の電流を求め、下記の式(1)により算出した。
【0101】
式(1):体積抵抗率ρv=19.6×(V/I)×tから算出した。
(式(1)中、tは接着剤層の厚さを示す。)
【0102】
(導電性芯金と接着層との間の抵抗測定)
実施例、比較例において導電性芯金と接着層との間の抵抗は、特開平6−118105号公報に記載の方法で測定された値の平均値をいう。
【0103】
抵抗の平均値は、下記方法により測定された抵抗値に基づき、軸方向には導電性芯金上の接着層の両端部よりそれぞれ20mmと、中央部分の3点を、更に該3点の周方向には6度毎に抵抗測定し、全ての測定値を相加平均して求めた。
【0104】
この抵抗測定には、電極として幅5mmの円筒状のSUS製ベアリングからなる電極を用い、この電極を25gの荷重で測定対象の接着層に接触させ、25℃55%RHの環境下でロールを5.5rpmで回転させながら角度6度毎に抵抗測定電極と導電性芯金間に印加電圧1Vにおける電流を測定し下記式(2)により抵抗を算出した。
【0105】
このとき電源および電流計としては、高抵抗測定器(アドバンテスト社製、R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計)を使用した。
式(2):抵抗(Ω)=印加電圧(V)/電流(A)
【0106】
−弾性層の形成−
弾性層16を形成させるため、下記混合物をオープンロールで混練りし、第1の接着層12、第2の接着層14を形成した導電性芯金10上に、両端部8mmを残し厚さ3mmとなるように円筒状に被覆し、内径14.0mmの円筒型の金型に入れ、170℃で30分間加硫させ、金型から取り出した後、研磨し、中央部の層厚が端部の層厚より薄い円筒状の弾性層を得た。中央部と端部の外径の差は85μmであった。
・ゴム材 ・・・100質量部
(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム:Gechron3106:日本ゼオン社製)
・導電剤(カーボンブラック アサヒサーマル:旭カーボン社製) ・・・15質量部
・イオン導電剤(過塩素酸リチウム) ・・・1質量部
・加硫剤(硫黄)200メッシュ:鶴見化学工業社製 ・・・1質量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM:大内新興化学工業社製) ・・・2.0質量部
・加硫促進剤(ノクセラーTT:大内新興化学工業社製) ・・・0.5質量部
【0107】
−表面層の形成−
弾性層16上に抵抗層を形成させるため、下記混合物をビーズミルにて分散し得られた分散液を、メタノールで希釈し、抵抗層の塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて、弾性層の表面に塗布し、その後、150℃で15分間加熱乾燥し、10μmの抵抗層を形成し、弾性ロール100を得た。
・高分子材料(共重合ナイロン)アラミンCM8000:東レ社製 100質量部
・導電剤(カーボンブラック)MONARCH1000:キャボット社製 12質量部
・溶剤(メタノール) 500質量部
・溶剤(ブタノール) 240質量部
【0108】
(弾性ロールの作製)
図2に示す弾性ロール110の構成の一例を製作した。第1の接着層22を導電性芯金10の両端部8mmを残し塗布し、第2の接着層24を導電性芯金10の両端部7mmを残し塗布した以外は、第1の接着層及び第2の接着層は同一素材を用い、実施例1と同様に、図2に示す態様の弾性ロール110を得た。ここで、第1の接着層12の体積抵抗率は、1×1014Ω・cmであり、導電性芯金10と第1の接着層14との間の抵抗は1×1012Ω以上であった。また、第2の接着層14の体積抵抗率は、1×104Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の間の抵抗は2×106Ωであった。
【0109】
<実施例3>
(弾性ロールの作製)
実施例1と同様に第1の接着層12まで形成した後、ケムロック204(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)3質量部を分散した液を両端部の8mmから11mmのみに膜厚10μmとなるよう塗布して、第3の接着層18を形成した。その後、実施例1と同様に第2の接着層14を形成した以外は、実施例1に準じて、以降を形成し、図3に示す態様の弾性ロール120を得た。ここで、第3の接着層18の体積抵抗率は、第2の接着層14の体積抵抗率より高く、1×105Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の間の抵抗は5×106Ωであった。
【0110】
<実施例4>
(弾性ロールの作製)
まず、ケムロック204(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)3質量部を分散した液を両端部の8mmから11mmのみに膜厚10μmとなるよう塗布して、第3の接着層28を形成した後、両端部10mmを残しケムロック607(ロード・ファー・イースト社製)を10μmの厚さになるように塗布し第1の接着層12を形成した。その後、実施例1と同様に第2の接着層14を形成した以外は、実施例1に準じて、以降を形成し、図4に示す態様の弾性ロール130を得た。ここで、第3の接着層28の体積抵抗率は、第2の接着層14の体積抵抗率より高く、1×105Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の間の抵抗は5×106Ωであった。
【0111】
<実施例5>
(弾性ロールの作製)
実施例2と同様に第1の接着層22まで形成した後、ケムロック204(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)3質量部を分散した液を両端部の7mmから9mmのみに膜厚10μmとなるよう塗布して、第3の接着層18を形成した。その後、実施例2と同様に第2の接着層24を形成した以外は、実施例2に準じて、以降を形成し、図5に示す態様の弾性ロール140を得た。ここで、第3の接着層18の体積抵抗率は、第2の接着層24の体積抵抗率より低く、1×105Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層24の間の抵抗は5×106Ωであった。
【0112】
<実施例6>
(弾性ロールの作製)
実施例4と同様に、ケムロック204(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)3質量部を分散した液を両端部の7mmから9mmのみに膜厚10μmとなるよう塗布して、第3の接着層28を形成した後、両端部10mmを残しケムロック607(ロード・ファー・イースト社製)を8μmの厚さになるように塗布し第1の接着層22を形成した。その後、実施例4と同様に第2の接着層24を形成した以外は、実施例4に準じて、以降を形成し、図6に示す態様の弾性ロール150を得た。ここで、第3の接着層28の体積抵抗率は、第2の接着層14の体積抵抗率より高く、1×105Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の抵抗は5×106Ωであった。
【0113】
<実施例7>
(弾性ロールの作製)
直径8mm、長さ332mmの円柱状のニッケルメッキにて処理した快削鋼鋼材の導電性芯金10上に、両端部10mmを残しケムロック607(ロード・ファー・イースト社製)を10μmの厚さなるように塗布し第1の接着層12を形成した。第1の接着層12の体積抵抗率は、1×1014Ω・cmであり、導電性芯金10と第1の接着層14との間の抵抗は1×1012Ω以上であった。
【0114】
次に、ケムロック258(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)5質量部を分散した液を導電性芯金10の両端部10mmを残し膜厚15μmになるように塗布し、第2の接着層14を形成した。第2の接着層14の体積抵抗率は、1×104Ω・cmであった。
【0115】
次いで、実施例2と同様に弾性層16まで形成した後に、芯金の両端面より9mmの位置で弾性層16を切断し除去し、第2の接着層14の端面を露出させた。次に、導電層38としてケムロック204(ロード・ファー・イースト社製)100質量部に導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)10質量部を分散した液を、導電性芯金10と第2の接着層14に接触するように塗布した。その後、実施例1と同様に表面層を形成し、図7に示す態様の弾性ロール160を得た。ここで、導電層38の体積抵抗率は、1×101Ω・cmであった。
【0116】
<実施例8>
(弾性ロールの作製)
実施例7の導電層38の素材を、カーボンブラックを分散した導電性グリースに代えた以外は、実施例7に準じて、図7に示す弾性ロール170の他の態様を得た。ここで、導電性グリースから成る導電層38の体積抵抗率は、1×101Ω・cmであった。
【0117】
<比較例1>
(弾性ロールの作製)
第1の接着層22を導電性芯金の両端部8mmを残し塗布し、第2の接着層14を芯金の両端部9mmを残し直接導電性芯金10に触れないように塗布した以外は実施例1と同様に作成し、図8に示す態様の弾性ロール170を得た。なお、弾性ロール170を、富士ゼロックス社製DocuCentre Colar a450に取り付けて、後述する評価に基づき、実施例1と同様に低温・低湿条件(10℃、RH15%)にて、印字テストを行ったが、帯電不良のため良好な画質が得られなかった。そのため、その後の評価はできなかった。
【0118】
<比較例2>
(弾性ロールの作製)
第1の接着層22を導電性芯金10の両端部8mmを残し塗布した後に、第2の接着層を塗布しなかった以外は、実施例1と同様に作製し、図9に示す態様の弾性ロール180を得た。この弾性ロールを、富士ゼロックス社製DocuCentre Colar a450に取り付けて、後述する評価に基づき、実施例1と同様に低温・低湿条件(10℃、RH15%)にて、印字テストを行ったが、帯電不良のため良好な画質が得られなかった。そのため、その後の評価はできなかった。
【0119】
<比較例3>
(弾性ロールの作製)
第1の接着層を塗布しなかった以外は、実施例1と同様に作製し、図10に示す態様の弾性ロール190を得た。
【0120】
[評価]
(画像評価)
上述した弾性ロールを、富士ゼロックス社製DocuCentre Colar a450の帯電ロールの代わりに取り付けて、低温・低湿条件(10℃、RH15%)にて、印字テストを行った。次に1万枚印刷し、1万枚印刷後のドラムカートリッジを40℃、95パーセントの環境下に7日間保管し、その後、低温・低湿条件(10℃、RH15%)にて印字テストを行った。その後、さらに、目視にて弾性ロールの外観検査を行った。
【0121】
印字テストの評価基準は下記の様である。
○:帯電不良によるトナーかぶり、または、濃度上昇、画質欠陥がない。
×:帯電不良によるトナーかぶり、または、濃度上昇、画質欠陥がある。
【0122】
(弾性ロールの両端部の拡径度合い)
<測定方法>
弾性ロールの端部の拡径度合いは、レーザー式の外径測定器により、弾性ロールの弾性層端部から5mmと20mmの位置の外径を測定し、5mm位置の外径から20mmの位置の外径を引いた値から求めた。
【0123】
<評価基準>
上記の外径差が10μm以下は良好であり○、10〜20μmは使用上問題ないものの拡径の傾向があるため△とし、20μm以上は濃度ムラや放電の不均一による感光体の不均一磨耗が発生するため×とした。
【0124】
結果を表1、表2に記載する。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
<実施例9>
導電性芯金10としてステンレス鋼製のφ14mm、長さが306mmのシャフトを準備した。この導電性芯金10表面の弾性層と接合する接合面に、実施例1と同様に図1の構造を有する第1の接着層及び第2の接着層を形成し、抵抗値を測定した。第1の接着層12の体積抵抗率は、1×1014Ω・cmであり、導電性芯金10と第1の接着層14との間の抵抗は1×1012Ω以上であった。また、第2の接着層14の体積抵抗率は、1×104Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の間の抵抗は2×104Ωであった。
【0128】
次にエピクロルヒドリンゴム(Gechron3106:日本ゼオン社製)50質量部、NBR(DN4050、日本ゼオン社製)50質量部、及び、発泡剤としてのベンゼンスルホニルヒドラジド6質量部を混合し、混合物を得た。
【0129】
次に、先に準備した導電性芯金10の外周に、上記の混合物をクロスヘッド押出し機により押し出して、外径がφ20mmの未発泡状態のゴム層を両端部8mmを残し成形した。次いで、未発泡ゴム層を加硫缶にて160℃で20分間加硫して発泡させ、発泡ゴム層(弾性層)を形成した。この発泡ゴム層(弾性層)表面を研削盤にて砥石研磨し、芯体の周りに弾性層を有する外径がφ28mmの弾性ロール(転写ロール1)を得た。
【0130】
<実施例10>
(弾性ロールの作製)
図2に示す弾性ロール110の構成の一例を製作した。第1の接着層22を導電性芯金10の両端部8mmを残し塗布し、第2の接着層24を導電性芯金10の両端部7mmを残し塗布した以外は、第1の接着層及び第2の接着層は同一素材を用い、実施例9と同様に、図2に示す態様の弾性ロール(転写ロール2)を得た。ここで、第1の接着層12の体積抵抗率は、1×1014Ω・cmであり、導電性芯金10と第1の接着層14との間の抵抗は1×1012Ω以上であった。また、第2の接着層14の体積抵抗率は、1×104Ω・cmであり、導電性芯金10と第2の接着層14の間の抵抗は2×106Ωであった。
【0131】
[評価]
(画像評価)
実施例9または10の弾性ロールを、富士ゼロックス社製DocuColor5065Pの2次転写ロールの代わりに取り付けて、低温・低湿条件(10℃、RH15%)にて、印字テストを行った。次に1万枚印刷し、1万枚印刷後のドラムカートリッジを40℃、95パーセントの環境下に7日間保管し、その後、低温・低湿条件(10℃、RH15%)にて印字テストを行った。その後、さらに、目視にて弾性ロールの外観検査を行った。
【0132】
印字テストの評価基準は下記の様である。
○:帯電不良によるトナーかぶり、または、濃度上昇、画質欠陥がない。
×:帯電不良によるトナーかぶり、または、濃度上昇、画質欠陥がある。
【0133】
(弾性ロールの両端部の拡径度合い)
<測定方法>
弾性ロールの端部の拡径度合いは、レーザー式の外径測定器により、弾性ロールの弾性層端部から5mmと20mmの位置の外径を測定し、5mm位置の外径から20mmの位置の外径を引いた値から求めた。
【0134】
<評価基準>
上記の外径差が10μm以下は良好であり○、10〜20μmは使用上問題ないものの拡径の傾向があるため△とし、20μm以上は濃度ムラや放電の不均一による感光体の不均一磨耗が発生するため×とした。
【0135】
結果を上記表1に記載する。
【0136】
実施例1から実施例9は初期の印刷テスト、1万枚の印刷テスト後の保管後の画質、及び、外観検査結果ともに良好であった。ただし、実施例1と実施例3と実施例4に於いて端部の一部に錆が見られたものの、非画像領域に錆が見られただけなので、実用上の問題とはならなかった。それに対し、比較例1では第2の接着層が導電性芯金と電気的な接触状態にないため、感光体を帯電できなかった。また、比較例2では第2の接着層がないため、感光体を帯電できなかった。また、比較例3では第1の接着層がないため、一万枚印刷テスト後の保管後では画質不良を起こしてしまい、また、外観検査より芯金の腐食に起因する形状変形が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の活用例として、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置等への適用がある。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明における第1の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図2】本発明における第2の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図3】本発明における第3の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図4】本発明における第4の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図5】本発明における第5の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図6】本発明における第6の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図7】本発明における第7の実施の形態の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図8】比較例1の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図9】比較例2の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図10】比較例3の弾性ロールの構成の一例を示す横断面図である。
【図11】本発明の実施の形態における画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図12】抵抗率の計測方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0139】
10 導電性芯金、12,22 第1の接着層、14,24 第2の接着層、16 弾性層、18,28 第3の接着層、38 導電層、100,110,120,130,140,150,160 弾性ロール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯金上に、少なくとも絶縁性の第1の接着層と、導電性の第2の接着層と、半導電性の弾性層とを有し、
前記第2の接着層は、前記導電性芯金と電気的に導通状態であることを特徴とする弾性ロール。
【請求項2】
前記導電性芯金上に、少なくとも前記第1の接着層、第2の接着層、弾性層の順で積層され、
前記第2の接着層の軸方向端部が、前記第1の接着層の軸方向端部より延出して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性ロール。
【請求項3】
前記導電性芯金上に、少なくとも前記第1の接着層と、第2の接着層と、弾性層とが積層され、
さらに、前記第1の接着層の軸方向端部より延出した端部を有する導電性の第3の接着層を有し、
前記第2の接着層と第3の接着層とは少なくとも一部分で接触していることを特徴とする請求項1に記載の弾性ロール。
【請求項4】
さらに、前記導電性芯金と接触する導電層を有し、
前記導電層は、前記第2の接着層の端面とも接触していることを特徴とする請求項1に記載の弾性ロール。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の弾性ロールを備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の弾性ロールを備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
少なくとも像保持体と、該像保持体に接触しその表面を帯電する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の弾性ロールとを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
導電性芯金上に、少なくとも絶縁性の第1の接着層、導電性の第2の接着層、半導電性の弾性層の順に積層形成する工程と、
前記第1の接着層、第2の接着層、弾性層の両端部を切り揃える工程と、
前記導電性芯金と第2の接着層の端面とに接触する導電層を形成する工程と、を有することを特徴とする弾性ロールの製造方法。
【請求項1】
導電性芯金上に、少なくとも絶縁性の第1の接着層と、導電性の第2の接着層と、半導電性の弾性層とを有し、
前記第2の接着層は、前記導電性芯金と電気的に導通状態であることを特徴とする弾性ロール。
【請求項2】
前記導電性芯金上に、少なくとも前記第1の接着層、第2の接着層、弾性層の順で積層され、
前記第2の接着層の軸方向端部が、前記第1の接着層の軸方向端部より延出して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性ロール。
【請求項3】
前記導電性芯金上に、少なくとも前記第1の接着層と、第2の接着層と、弾性層とが積層され、
さらに、前記第1の接着層の軸方向端部より延出した端部を有する導電性の第3の接着層を有し、
前記第2の接着層と第3の接着層とは少なくとも一部分で接触していることを特徴とする請求項1に記載の弾性ロール。
【請求項4】
さらに、前記導電性芯金と接触する導電層を有し、
前記導電層は、前記第2の接着層の端面とも接触していることを特徴とする請求項1に記載の弾性ロール。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の弾性ロールを備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の弾性ロールを備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
少なくとも像保持体と、該像保持体に接触しその表面を帯電する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の弾性ロールとを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
導電性芯金上に、少なくとも絶縁性の第1の接着層、導電性の第2の接着層、半導電性の弾性層の順に積層形成する工程と、
前記第1の接着層、第2の接着層、弾性層の両端部を切り揃える工程と、
前記導電性芯金と第2の接着層の端面とに接触する導電層を形成する工程と、を有することを特徴とする弾性ロールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−151893(P2010−151893A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327157(P2008−327157)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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