説明

弾性ロールの製造方法、現像剤担持ロール、電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】ボイド不良を抑制可能な弾性ロールの製造方法、ボイド不良が抑えられた現像剤担持ロール、高画質化に対応可能な電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】円筒状型と材料流通口を持つ二つのコマとを有する型内に軸芯体をコマで支持して配し、ポンプで弾性層形成用材料を射出用シリンジに供給し、シリンジから注入ノズルに前記材料を送り出し、注入ノズルをコマに接触させ前記材料を注入ノズルから材料流通口を通して型内に注入し、型を加熱して前記材料を硬化させ、弾性ロールを型から取り出し、ポンプから型までの材料流路の少なくとも一部を細分化して断面積5×10-5〜6×10-4cm2の細孔とする現像剤担持ロール用途の弾性ロールの製造方法。この方法で製造された弾性ロールである現像剤担持ロール。このロールを備える電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真プロセスカートリッジ用の現像剤担持ロールなどに用いられる、軸芯体の外周に弾性層を有する弾性ロールに関する。また本発明は、電子写真プロセスを利用して画像を形成する電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属等の剛性のある軸芯体の外周上に弾性・導電性など様々な機能を持たせた種々材料を配することより得られる多層ロールの加工には、金型成形が近年多く採用されている。金型成形は、研磨等複雑な工程を経ることなく、比較的簡単に所望の形状精度を持った弾性ロールを再現良く得ることができるからである。この金型成形においては、軸芯体の両端を材料流通口のついたコマにて支持して軸芯体を円筒金型内に配する。そして、材料流通口から液状の材料を注入し、その後熱硬化樹脂ならば加熱、熱可塑性樹脂なら冷却することにより所望の形状を持った弾性ロールを得ることが可能である。
【0003】
このようなインジェクション成形法において、金型内に注入される材料に気泡が混入しているとボイド不良となりうる。例えば弾性ロールが現像剤担持ロールとして用いられる際には、画像形成体との接触状態が不均一になる為、その部分だけ画像形成体へのトナー搬送状態が変化し、画像欠陥として現れることがある。
【0004】
この気泡の発生要因として、金型内に注入される材料に元から混入している気泡が挙げられる。元々、材料はその製造工程にて複数の充填剤等と混合されるために、攪拌等の加工履歴を受けるものが殆どであり、これにより材料中には気泡が含まれているものが多い。この材料中の気泡を除去するために、材料をパッケージングする際やそもそもの混合工程などにおいて真空チャンバーなどにより、脱泡されている。しかしながらこの工程では材料の粘度などの要因により完全に小さな気泡までは除去できない場合があり、これらの材料を現像剤担持ロール用途弾性ロールの製造に用いると現像剤担持ロールとしての性能上問題となる程度の大きさのボイドが発生する場合もあった。
【0005】
このような材料中に僅かながらも気泡が残存する材料を使用する場合には、配管中や成形用金型内を真空にする手法が取られる場合もある(特許文献1)。これにより、ある程度の気泡を除去することができるが、材料が高粘度である場合には、気泡を除去する為に非常に高い真空度が必要となる。高真空にする為の装置は高価であるばかりでなく、真空度を上げることによる材料成分の揮発が問題となる場合もあり、完全に材料中の気泡を除去するに至らない場合があった。
【0006】
さらには、近年、画像の高画質・高精細化が進んでいる。これに伴い、現像剤担持ロールについては、画像形成上問題となるロール上のボイドが小さくなる傾向にある。そのため、従来は問題の無かった大きさの気泡でも、画像上問題となることがあり、対策が必要となっていた。
【0007】
このような背景から、高画質・高精細化しても画像上問題となるボイド不良のない金型成形を行う為に、従来の真空脱泡より更にボイドを抑えることが求められている。
【特許文献1】特開昭62−41029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高真空装置のような高価な装置を用いることなく、成形品のボイド不良をより抑えることができる弾性ロールの製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、ボイド不良がより抑えられた現像剤担持ロールを提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、ボイド不良がより抑えられた現像剤担持ロールを用いた、画像の高画質化・高精細化に対応可能な電子写真プロセスカートリッジ、および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、軸芯体と該軸芯体の外周面上に配された弾性層とを有する現像剤担持ロール用途の弾性ロールの製造方法において、
円筒状型と、軸芯体の両端をそれぞれ支持する二つのコマとを有する成形型を用い、該コマはいずれも材料流通口を有し、軸芯体の両端を該二つのコマにてそれぞれ支持した状態で、該軸芯体を該成形型内に配する工程;
ポンプを用いて弾性層形成用材料を射出用シリンジに供給する工程;
該射出用シリンジから、該射出用シリンジに配管で接続された注入ノズルに、弾性層形成用材料を送り出す工程;
該注入ノズルを該二つのコマの一方に接触させ、弾性層形成用材料を注入ノズルから該一方のコマの材料流通口を通して成形型内に注入する工程;
該成形型を加熱して、注入された弾性層形成用材料を硬化させる工程;および、
該硬化によって得られた弾性ロールを該成形型から取り出す工程を有し、
該ポンプから成形型までの弾性層形成用材料の流路のうち、少なくとも一部が細分化されて細孔とされ、該細孔の断面積が5×10-5cm2以上6×10-4cm2以下であることを特徴とする現像剤担持ロール用途の弾性ロールの製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明により、表面に現像剤の薄層を形成し、画像形成体に接触または近接させて該画像形成体表面に該現像剤を供給する現像剤担持ロールにおいて、
該現像剤担持ロールが上記方法によって製造された弾性ロールであることを特徴とする現像剤担持ロールが提供される。
【0013】
また、本発明により、現像剤担持ロールが装着されてなり、該現像剤担持ロールの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像剤担持ロールを画像形成体に接触または近接させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる電子写真プロセスカートリッジにおいて、
該現像剤担持ロールが、上記現像剤担持ロールであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジが提供される。
【0014】
また、本発明により、現像剤担持ロールが装着されてなり、該現像剤担持ロールの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像剤担持ロールを画像形成体に接触または近接させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することより該画像形成体表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、該現像剤担持ロールが、上記現像剤担持ロールであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、高真空装置のような高価な装置を用いることなく、成形品のボイド不良をより抑えることができる弾性ロールの製造方法が提供される。
【0016】
本発明により、ボイド不良がより抑えられた現像剤担持ロールが提供される。
【0017】
本発明により、ボイド不良がより抑えられた現像剤担持ロールを用いた、画像の高画質化・高精細化に対応可能な電子写真プロセスカートリッジ、および画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の弾性ロールの製造方法は、軸芯体と該軸芯体の外周面上に配された弾性層とを有する現像剤担持ロール用途の弾性ロールの製造方法において、
円筒状型と、軸芯体の両端をそれぞれ支持する二つのコマとを有する成形型を用い、該コマはいずれも材料流通口を有し、軸芯体の両端を該二つのコマにてそれぞれ支持した状態で、該軸芯体を該成形型内に配する工程;
ポンプを用いて弾性層形成用材料を射出用シリンジに供給する工程;
該射出用シリンジから、該射出用シリンジに配管で接続された注入ノズルに、弾性層形成用材料を送り出す工程;
該注入ノズルを該二つのコマの一方に接触させ、弾性層形成用材料を注入ノズルから該一方のコマの材料流通口を通して成形型内に注入する工程;
該成形型を加熱して、注入された弾性層形成用材料を硬化させる工程;および、
該硬化によって得られた弾性ロールを該成形型から取り出す工程を有する。
【0019】
そして、該材料ポンプから成形型までの弾性層形成用材料の流路のうち、少なくとも一部が細分化されて細孔とされ、該細孔の断面積が5×10-5cm2以上6×10-4cm2以下である。
【0020】
即ち材料が硬化し流動性を失う前のポンプから成形型までの間に設けられた細孔の断面積が6×10-4cm2以下であれば、成形物上に現像剤担持ロールとして性能上問題となりうる大きさのボイドを発生させる気泡よりも小さな気泡しか通過できない。それよりも大きな気泡が通過しようとする場合には、細孔により気泡が細かくされる。
【0021】
また、上記細孔の断面積を5×10-5cm2以上とするのは、次の理由による。すなわち細孔がこれ以上小さい場合には、弾性層形成用材料が細孔内を通過する際の抵抗が大きくなり、装置に負荷がかかる。また、現像剤担持ロール用途弾性ロールの材料には、その機械的強度を向上させるために通常、直径50μm程度の大きさの無機充填剤が含まれていることが多い。配管内に設置された細孔の大きさが、この微粒子径よりも小さい場合、細孔を通過できない材料が流れの上流側に蓄積し、流れを妨げ、ついには目詰まりを起こすことで生産性が大きく損なわれてしまう。
【0022】
このようにして、材料の流れを妨げるなどして生産性を低下させることなく、現像剤担持ロールとしての製品性能上問題となるレベルのボイドの発生を防止することができ、よって、抵抗の大きく異なる部分の生成が無く、画像のムラの発生が抑制される。また、材料中の気泡を排除する為の複雑な脱気機構等を材料配管中に設置する必要も無い。
【0023】
〔軸芯体〕
本発明において、軸芯体としては、芯金等、弾性ロールの軸芯体として公知の軸芯体を適宜使用することができる。弾性ロールが現像剤担持ロールなどの導電性ロールである場合などにおいては、導電性の軸芯体を用いることができる。導電性軸芯体としては、例えば、円柱状の炭素鋼合金表面に適宜の厚さ(例えば5μm)の工業ニッケルメッキを施したものを用いることができる。導電性軸芯体を構成する材料としては他にも、例えば次のような材料を用いることができる。すなわち鉄、アルミニウム、チタン、銅及びニッケル等の金属やこれらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮及び青銅等の合金、更にカーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等の剛直で導電性を示す公知の材料を使用することもできる。また軸芯体の形状としては円柱状のほかに中心部分を空洞とした円筒形状とすることもできる。
【0024】
〔成形型〕
成形型としては、剛性の観点から金属製のものすなわち金型を用いることが好ましい。つまり円筒状型および二つのコマが、いずれも金属製であることが好ましい。ただし、その限りではなく、樹脂製のものなどを使用することもできる。
【0025】
〔流路の細分化〕
前記流路の細分化は、例えば、直径数十μmの樹脂製もしくはステンレスなどの金属製の線を縦横に織り合わせた網目構造をもつフィルターによって行うことができる。
【0026】
〔型内に注入する弾性層形成用材料〕
弾性層形成用材料としては弾性ロールの弾性層を形成するために用いられる公知の材料を適宜用いることができる。特には、熱硬化性の材料を用いることができる。例えば、以下に示すポリマー(液状シリコーンゴムポリマーおよび/またはその他のポリマー)を、必要に応じて導電剤及び弾性材料の機械的強度を向上させるために石英やシリカなどの補強性微粒子を適宜混合して、弾性層形成用材料として用いることができる。これを、弾性層を形成する為に成形型内に注入することができる。この微粒子の直径は、現像剤担持ロール用途の弾性層材料に用いる場合には、通常最大でも50μm程度であり、これ以下であると弾性ロール表面の平滑性が失われたり必要とする補強効果が充分に得られないなどの現象を優れて防止できる。
【0027】
<液状シリコーンゴムポリマー>
注型に用いる液状シリコーンゴムポリマーとしては、加工性に優れている、硬化反応に伴う副生成物の発生が無い為寸法安定性が良好である、硬化後の物性が安定している等の理由から、付加反応架橋型液状シリコーンゴムポリマーであることが好ましい。
【0028】
付加反応架橋型液状シリコーンゴムポリマーは、例えば式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、及び式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含み、さらに触媒や他の添加物と適宜混合させて用いることができる。
【0029】
【化1】

【0030】
式中R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよいアルケニル基である。Xは正の整数であり、好ましくは下記分子量が満たされる範囲の数である。
【0031】
オルガノポリシロキサンはシリコーンゴム原料のベースポリマーであり、その分子量は特に限定されないが10万以上100万以下が好ましく、重量平均分子量は40万以上70万以下が好ましい。さらに加工特性及び得られるシリコーンゴム組成物の特性等の観点から、オルガノポリシロキサンの粘度は通常の材料使用環境の温度範囲である、およそ5℃以上35℃以下の範囲で、10Pa・s以上が好ましく、250Pa・s以下が好ましい。
【0032】
上記オルガノポリシロキサンのアルケニル基は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位であり、その種類は特に限定されない。このアルケニル基は、活性水素との反応性が高い等の理由から、ビニル基及びアリル基の少なくとも一方であることが好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0033】
【化2】

【0034】
式中、yは2以上の正の整数であり、zは正の整数である。
【0035】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤の働きをするもので、一分子中のケイ素原子結合水素原子の数は2個以上である。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、硬化反応を好適に行わせる為に、比較的低分子量(重量平均分子量で1000以上5000以下)が好ましい。
【0036】
<その他のポリマー>
本発明では以下に挙げる樹脂を用いて弾性層を形成することもできる。すなわち各種のポリアミド、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、オレフィン樹脂等である。
【0037】
〔導電剤〕
弾性層を形成する材料には必要に応じ導電剤を配合することができる。例えば、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の紛体や繊維;酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物;硫化銅、硫化亜鉛等の金属化合物粉;または適当な粒子の表面に、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブテンや、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金あるいはロジウムを電解処理、スプレー塗工もしくは混合振とうなどにより付着させた粉体;およびアセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN系カーボンブラック、ピッチ系カーボンブラック等のカーボン粉が挙げられる。また、KSCN、LiClO4、NaClO4、4級アンモニウム塩等のイオン伝導物質も使用可能である。
【0038】
導電剤としては、比較的少量の添加で電気抵抗率を低下させることができ、ゴム組成物の硬度を大きくすることなく導電性を付与することができるので、特にカーボンブラックが好ましい。
【0039】
〔表面層〕
以上のようにして作成した弾性層上に更に表面層として樹脂層を形成することができる。
【0040】
樹脂層を形成する材料として、例えば、各種のポリアミド、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、オレフィン樹脂等を用いることができる。
【0041】
これらの材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して、適当な溶媒としてメチルエチルケトン・トルエン・メチルイソブチルケトン等に分散させることができる。この分散を行うことにより、表面欠損の少ない表面層を得るための塗工液を得ることができる。
【0042】
得られた表面層形成用の分散体は、スプレー塗工法、ディッピング法等により弾性層の上に塗工することができる。
【0043】
表面層の厚みとしては、電子写真プロセスに用いる弾性ロールの場合、弾性層成分がしみ出してきて画像形成体を汚染することを優れて防止する観点から5μm以上が好ましい。また、弾性ロールの表面が硬くなることを防止し、トナーの融着を防止する観点から500μm以下が好ましい。より好ましくは10μm以上30μm以下である。
【0044】
弾性ロールが現像剤担持ロールの場合、表面層中に質量平均粒径が1μm以上20μm以下の微粒子を分散させることにより、現像剤担持ロール表面の現像剤の搬送を容易にすることができ、好適な量の現像剤を現像領域に搬送することができるので、好ましい。このような目的に使用する微粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリル酸メチル微粒子、シリコーンゴム微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリスチレン微粒子、アミノ樹脂微粒子、フェノール樹脂微粒子等のプラスチックピグメントが挙げられる。特にポリメチルメタクリル酸メチル微粒子及びポリウレタン微粒子が好ましい。これらの微粒子はこの微粒子を除く表面層構成成分の総質量に対して約3〜200質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0045】
本発明によれば、高価な高真空脱泡装置を用いることなく、さらには真空脱泡による揮発分発生による材料の物性低下を起こすことなく、画像上問題となるボイド不良の無い弾性ロールを得ることを可能にするものである。
【0046】
〔細孔の断面積の測定方法〕
フィルター等の細孔の断面積は、フィルター表面を直接顕微鏡で拡大観察し、その目開き1辺の長さを測定することにより求めることができる。
【実施例】
【0047】
以下の実施例によって本発明を詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。なお、以下特に明記しない限り、薬品等は市販の高純度品を用いた。
【0048】
〔実施例1〕
<成形方法及び成形用金型>
以下図1および2を参照する。
【0049】
直径が8mm、長さ280mmの鉄製丸棒に厚み5μmの化学ニッケルメッキをした軸芯体11を用いた。また成形型2としては、鉄製の円筒状型21と、鉄製のコマ22および23からなる金型を用いた。
【0050】
円筒状型21内に軸芯体11を配するとともに、円筒状型の両端にそれぞれ勘合させたコマ22および23の芯金保持窪み24aおよび24bに芯金を勘合させた。このようにして軸芯体の両端をコマによって支持した。
【0051】
コマ22は材料流通口(注入口)26およびランナー部28を有する。コマ23は材料流通口(排出口)27およびランナー部29を有する。
【0052】
弾性層形成用材料としては、付加反応架橋型液状シリコーンゴムを用いた。このゴムは次のA液およびB液を等量混合し硬化させたものである。A液・B液共にその液状状態での粘度は150Pa・sで、等量混合し硬化させた後のアスカC硬度が40°となるものである。
A液:ジメチルポリシロキサン100質量部に対し、平均粒子径30μmの補強性シリカ粉末20質量部と導電性カーボンブラックとしてアセチレンブラックを10質量部とを配合したもの。
B液:ジメチルポリシロキサン100質量部に対し、平均粒径30μmの補強性シリカ粉末20質量部と導電性カーボンブラックとしてアセチレンブラックを10質量部を配合したものに架橋剤としてジメチルハイドロジエンポリシロキサンを5質量部配合したもの。
【0053】
また成形装置として、図2に示す装置を用いた。二つのタンク31の一方には、上記A液を、他方には上記B液を入れた。
【0054】
二つのタンク31から供給された材料を、配管32で合流させ、材料混合装置33で混合し、流路細分化部34を経て射出用シリンジ36に供給した。このとき材料を移送するためにポンプ(不図示)を用いた。
【0055】
流路細分化部は、金属製のフィルター(工栄モスフィルター工業株式会社製金属メッシュ。商品名:JMP−01−149)を、弾性層形成用材料の流れに対して垂直に、配管内に配置したものとした。このフィルターの細孔断面積を表1に示す。
【0056】
射出用シリンジから配管37を経て注入ノズル38に弾性層形成用材料を供給した。
【0057】
注入ノズルを成形型2のコマ22に接触させ、弾性層形成用材料を注入ノズルから注入口26を通して成形型の内部(キャビティ25)に注入した。このとき、出口側(排出口27)から弾性層形成用材料がオーバーフローするまでおよそ10秒間一定流速で注入した。
【0058】
その後、成形型を120℃に10分間加熱することにより弾性層形成用材料を硬化して軸芯体の外周面に弾性層(ゴムの直径はおよそ16mmでゴム部分の長さが240mm)を形成し、弾性ロールとした。その後冷却・脱型することで弾性ロールを得た。
【0059】
次にこの弾性層に対して、200℃オーブンにて4時間の二次硬化を行った。
【0060】
さらに、この弾性層外周上に、ポリウレタン樹脂原料に平均粒径15μmのウレタン粒子及び導電性カーボンブラックを配合してなる塗工液をディップ塗工により配した。その後150℃のオーブンにて4時間硬化することで、シリコーンゴム弾性層の外周上にウレタン樹脂からなる表面層を配した多層弾性ロールを得た。
【0061】
この多層弾性ロールの画像評価を次の方法に従って行った。また、成形装置の稼働状況を後述の方法により評価した。これらの結果を表1にまとめる。
【0062】
<画像評価方法>
製造した多層弾性ロールを、電子写真式レーザービームプリンターの現像剤担持ロールとして使用し、画だし評価を行った。
【0063】
画像形成装置として用いた電子写真式レーザービームプリンターは、A4版出力用のマシンで、記録メディアの出力スピードはA4縦16枚/分、画像の解像度は600dpiである。感光体はアルミシリンダーにOPC(有機光導電体)層をコートした反転現像方式の感光ドラムであり、最外層は変性ポリカーボネートをバインダー樹脂とする電荷輸送層である。
【0064】
感光体上で現像されたトナー像は転写ロールで記録メディアに転写され、定着部で熱定着される。転写ロールで転写しなかったトナーはクリーニングブレードで感光体から掻き取られる。現像部分はカートリッジ化されており、現像剤担持ロールにはトナー層厚規制部材である現像ブレードがカウンタ方向に当接し、トナーの層厚を規制する。
【0065】
製造した多層弾性ロールを、上記電子写真プロセスカートリッジに現像剤担持ロールとして組み込み、ベタ画像及びハーフトーン画像により画像評価を行った。
【0066】
即ち、ロール上ボイド発生位置に現像剤担持ロール周期で明らかに画像濃度が他の部分と異なるポイント(点)が発生するものを×とした。また、上記画像濃度の異なる部分は存在するが、実用上問題のないレベルのものを△、印字面全体に渡って濃度ムラ・濃度の異なるポイントの無いものを○とした。
【0067】
<装置稼動状況判定基準>
前記フィルターを配管内に取り付けた際の装置稼動状況の判定は、成形装置内の配管経路中に金属製フィルターを取り付け、フィルター上の積算流量が1000リットルになるまで弾性層形成用材料を流し、装置の不具合及びフィルター表面の観察により行った。
【0068】
即ち、フィルター上の積算流量が1000リットル未満の時点で、フィルター上流と下流の材料圧力差(差圧計によりモニタリング)が、フィルター取り付け直後の圧力差に対して20%以上増加していた場合は装置不具合発生として×とした。このような装置不具合は発生しないものの使用後のフィルター表面に材料中の充填剤成分が付着・堆積しているものを△、装置不具合・フィルター上堆積物共に無いものを○とした。
【0069】
〔実施例2〕
上記金属製のフィルターが、工栄モスフィルター工業株式会社製金属メッシュ、商品名:JMP−01−074であること以外は、実施例1と同様に多層弾性ロールを作成し、実施例1と同様の評価を行った。フィルターの細孔断面積および評価結果を表1にまとめた。
【0070】
〔実施例3〕
上記金属製のフィルターが、工栄モスフィルター工業株式会社製金属メッシュ、商品名:JMP−01−238であること以外は、実施例1と同様に多層弾性ロールを作成し、実施例1と同様の評価を行った。フィルターの細孔断面積および評価結果を表1にまとめた。
【0071】
〔比較例1〕
上記金属製のフィルターが、工栄モスフィルター工業株式会社製金属メッシュ、商品名:JMP−01−37であること以外は、実施例1と同様に多層弾性ロールを作成し、実施例1と同様の評価を行った。フィルターの細孔断面積および評価結果を表1にまとめた。
【0072】
〔比較例2〕
上記金属製のフィルターが、工栄モスフィルター工業株式会社製金属メッシュ、商品名:JMP−01−300であること以外は、実施例1と同様に多層弾性ロールを作成し、実施例1と同様の評価を行った。フィルターの細孔断面積および評価結果を表1にまとめた。
【0073】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明において用いることのできる弾性ロール成形型の例を示す概念的断面図である。
【図2】本発明において用いることのできる弾性ロール成形装置の例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0075】
11 :軸芯体
2 :成形型
21 :円筒状型
22、23 :コマ
24a、24b:芯金保持窪み
25 :キャビティ
26 :材料流通口(注入口)
27 :材料流通口(排出口)
28、29 :ランナー部
31 :タンク
32 :材料流路(配管)
33 :材料混合装置
34 :流路細分化部
36 :射出用シリンジ
37 :配管
38 :注入ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と該軸芯体の外周面上に配された弾性層とを有する現像剤担持ロール用途の弾性ロールの製造方法において、
円筒状型と、軸芯体の両端をそれぞれ支持する二つのコマとを有する成形型を用い、該コマはいずれも材料流通口を有し、軸芯体の両端を該二つのコマにてそれぞれ支持した状態で、該軸芯体を該成形型内に配する工程;
ポンプを用いて弾性層形成用材料を射出用シリンジに供給する工程;
該射出用シリンジから、該射出用シリンジに配管で接続された注入ノズルに、弾性層形成用材料を送り出す工程;
該注入ノズルを該二つのコマの一方に接触させ、弾性層形成用材料を注入ノズルから該一方のコマの材料流通口を通して成形型内に注入する工程;
該成形型を加熱して、注入された弾性層形成用材料を硬化させる工程;および、
該硬化によって得られた弾性ロールを該成形型から取り出す工程を有し、
該ポンプから成形型までの弾性層形成用材料の流路のうち、少なくとも一部が細分化されて細孔とされ、該細孔の断面積が5×10-5cm2以上6×10-4cm2以下であることを特徴とする現像剤担持ロール用途の弾性ロールの製造方法。
【請求項2】
樹脂繊維もしくは金属繊維を網目状に組み合わせたフィルターによって前記細分化を行う請求項1記載の現像剤担持ロール用途の弾性ロールの製造方法。
【請求項3】
前記弾性層形成用材料が付加反応架橋型液状シリコーンゴムポリマーを含む請求項1または2記載の現像剤担持ロール用途の弾性ロールの製造方法。
【請求項4】
表面に現像剤の薄層を形成し、画像形成体に接触または近接させて該画像形成体表面に該現像剤を供給する現像剤担持ロールにおいて、
該現像剤担持ロールが、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法によって製造された弾性ロールであることを特徴とする現像剤担持ロール。
【請求項5】
現像剤担持ロールが装着されてなり、該現像剤担持ロールの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像剤担持ロールを画像形成体に接触または近接させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる電子写真プロセスカートリッジにおいて、
該現像剤担持ロールが、請求項4記載の現像剤担持ロールであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項6】
現像剤担持ロールが装着されてなり、該現像剤担持ロールの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像剤担持ロールを画像形成体に接触または近接させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することより該画像形成体表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、該現像剤担持ロールが、請求項4記載の現像剤担持ロールであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−203423(P2008−203423A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37939(P2007−37939)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】