説明

弾性不織布、その製造方法及び繊維製品

【課題】優れた弾性回復性を有すると共に、べたつきがなく、肌触りが良好な弾性不織布及びこの弾性不織布を用いた繊維製品を提供すること。
【解決手段】(a)[mmmm]=20〜60モル%、(b)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1、(c)[rmrm]>2.5モル%、(d)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0、(e)質量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000及び(f)分子量分布(Mw/Mn)<4を満たす低結晶性ポリプロピレンを含有する結晶性樹脂組成物と、離型剤を用いて製造されてなる弾性不織布及びこの弾性不織布を用いた繊維製品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた弾性回復性を有すると共に、べたつきがなく、肌触りが良好な弾性不織布、その製造方法及び上記弾性不織布を用いた繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、弾性繊維及び弾性不織布は、例えば使い捨ておむつ、生理用品、衛生製品、衣料素材、包帯、包装材等の各種用途に供せられている。特に使い捨ておむつや生理用品等は、直接身体に接触させて使用されるため、身体への良好な装着感や装着後の身体の動きやすさなどの観点から、適度な伸縮性、及び弾性回復性が要求されている。
弾性回復性が付与された弾性繊維として、特許文献1には、オレフィン共重合体やスチレンブロック共重合体のようなエラストマーと他の樹脂成分とをブレンドした弾性繊維が開示されている。しかしながら、これらのエラストマーはポリプロピレンとの相溶性に劣り、かつ非結晶性であるため、これらのエラストマーとポリプロピレンとを混合して弾性繊維を形成した場合、上記エラストマーが繊維表面にブリードしてくる。そのため、この弾性繊維からなる弾性不織布にはべたつき感があり、また、この弾性不織布を用いた繊維製品は肌触りが悪いという問題があった。
特許文献2には、不織布を構成するプロピレンポリマーをフリーラジカル開始剤で処理することが開示されている。このような処理によってプロピレンポリマーの流動性は向上するが、プロピレンポリマーの熱安定性は低下する。
また、特許文献3には、結晶性プロピレンコポリマーと結晶性アイソタクチックプロピレンホモポリマーを含む結晶性プロピレンポリマー組成物で繊維を形成することが開示されている。しかしながら、結晶性プロピレンコポリマーは低結晶性ポリプロピレンに比べて、結晶性アイソタクチックプロピレンホモポリマーとの相溶性に劣り、このため、混練性の低下や、繊維表面へのブリードによる物性低下が懸念される。
さらに、特許文献4には、[mmmm]が60%未満のオレフィンホモポリマーを含む繊維が開示されているが、高規則性ポリプロピレンの配合量の規定はなく、弾性と成形性のバランスに課題がある。
特許文献5には、(mmmm)が0.2〜0.6であり、[rrrr/(1−mmmm)]≦0.1であるプロピレンポリマーとオレフィンポリマーを含む樹脂組成物が開示されているが、低結晶性ポリプロピレンの配合量が十分ではないため、繊維を形成し、これを引っ張った場合に伸長はするものの、伸長したままである。このため、伸長したままではなく縮むもの、すなわち弾性回復性を有する繊維を与える樹脂組成物が要求されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−129330号公報
【特許文献2】特表2007−511680号公報
【特許文献3】特表2001−520324号公報
【特許文献4】特表2003−511578号公報
【特許文献5】特開2003−27331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、優れた弾性回復性を有すると共に、べたつきがなく、肌触りが良好な弾性不織布、その製造方法及び上記弾性不織布を用いた繊維製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、低結晶性ポリプロピレンを含有する結晶性樹脂組成物で形成した弾性不織布により上記目的が達成されることを見出した。すなわち、立体規則性が低く、結晶化速度が小さい低結晶性ポリプロピレンを含む結晶性樹脂組成物は、弾性不織布の形成材料として好適であることを見出した。また、上記弾性不織布の製造に際して、紡糸により得られた繊維を捕集する移動捕集面に離型剤を散布することにより、移動捕集面等への付着を防止し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、以下の弾性不織布、その製造方法及び上記弾性不織布を用いた繊維製品を提供するものである。
1. 以下の(a)〜(f)を満たす低結晶性ポリプロピレンを含有する結晶性樹脂組成物と、離型剤を用いて製造されてなる弾性不織布。
(a)[mmmm]=20〜60モル%
(b)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0
(e)質量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
2. 低結晶性ポリプロピレンが、さらに以下の(g)及び(h)を満たす上記1に記載の弾性不織布。
(g)示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
(h)立体規則性指数([mm])が50〜90モル%である。
3. 結晶性樹脂組成物が、離型剤を含有する上記1又は2に記載の弾性不織布。
4. 離型剤の含有量が、樹脂組成物基準で10〜10000質量ppmである上記3に記載の弾性不織布。
【0006】
5. 上記1〜4のいずれかに記載の弾性不織布の製造方法であって、樹脂組成物の溶融物をノズルから押出して紡糸し、該紡糸により得られた繊維を移動捕集面に捕集する工程を含む製造工程により弾性不織布を製造するに際し、上記捕集面に外部離型剤を散布することを特徴とする弾性不織布の製造方法。
6. 上記1〜4のいずれかに記載の弾性不織布を用いた繊維製品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた弾性回復性を有すると共に、べたつきがなく、肌触りが良好な弾性不織布を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の弾性不織布は、以下の(a)〜(f)を満たす低結晶性ポリプロピレンを含有する結晶性樹脂組成物と、離型剤を用いて製造されたものである。ここで、本発明において、結晶性ポリプロピレンとは、後述する融点(Tm−D)が観測されるポリプロピレンのことをいう。低結晶性ポリプロピレンとは、この融点が0〜120℃の結晶性ポリプロピレンをいう。
以下の(a)〜(f)は、低結晶性ポリプロピレンを製造する際の触媒の選択や反応条件により調整することができる。後述する(g)及び(h)についても同様である。
(a)[mmmm]=20〜60モル%
上記低結晶性ポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]が20モル%以上であると、べたつきの発生が抑制され、60モル%以下であると、結晶化度が高くなりすぎることがないので、弾性回復性が良好となる。このメソペンタッド分率[mmmm]は、好ましくは30〜50モル%、より好ましくは40〜50モル%である。
上記メソペンタッド分率[mmmm]、後述するラセミペンタッド分率[rrrr]及びラセミメソラセミメソペンダッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、及びラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。また、後述するトリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]も上記方法により算出した。
なお、13C−NMRスペクトルの測定は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案されたピークの帰属に従い、下記の装置及び条件にて行うことができる。
【0009】
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ml
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
【0010】
<計算式>
M=m/S×100
R=γ/S×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8〜22.5ppm
Pαβ:18.0〜17.5ppm
Pαγ:17.5〜17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖:21.7〜22.5ppm
【0011】
(b)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
[rrrr]/[1−mmmm]の値は、上記のペンタッド単位の分率から求められ、上記低結晶性ポリプロピレンの規則性分布の均一さを示す指標である。この値が大きくなると、既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高規則性ポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物となり、べたつきの原因となる。
上記低結晶性ポリプロピレンにおいて、[rrrr]/(1−[mmmm])が0.1以下であると、紡糸により得られた繊維におけるべたつきが抑制される、このような観点から、[rrrr]/(1−[mmmm])は、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.04以下である。
【0012】
(c)[rmrm]>2.5モル%
上記低結晶性ポリプロピレンのラセミメソラセミメソ分率[rmrm]が2.5モル%を超える値であると、該低結晶性ポリプロピレンのランダム性が増加し、紡糸により得られた繊維における弾性回復性がさらに向上する。[rmrm]は、好ましくは2.6モル%以上、より好ましくは2.7モル%以上である。その上限は、通常10モル%程度である。
(d)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0
[mm]×[rr]/[mr]2は、上記低結晶性ポリプロピレンのランダム性の指標を示し、この値が2.0以下であると、紡糸により得られた繊維において十分な弾性回復性が得られ、かつべたつきも抑制される。[mm]×[rr]/[mr]2は、0.25に近いほどランダム性が高くなる。上記十分な弾性回復性を得る観点から、[mm]×[rr]/[mr]2は、好ましくは0.25を超え1.8以下、より好ましくは0.5〜1.5である。
【0013】
(e)質量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
上記低結晶性ポリプロピレンにおいて質量平均分子量が10,000以上であると、該低結晶性ポリプロピレンの粘度が低すぎず適度のものとなるため、紡糸の際の糸切れが抑制される。また、質量平均分子量が200,000以下であると、上記低結晶性ポリプロピレンの粘度が高すぎず、紡糸性が向上する。この質量平均分子量は、好ましくは30,000〜150,000であり、より好ましくは50,000〜150,000である。この質量平均分子量の測定法については後述する。
【0014】
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
上記低結晶性ポリプロピレンにおいて、分子量分布(Mw/Mn)が4未満であると、紡糸により得られた繊維におけるべたつきの発生が抑制される。この分子量分布は、好ましくは3以下である。
上記質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算の質量平均分子量であり、上記分子量分布(Mw/Mn)は、同様にして測定した数平均分子量(Mn)及び上記質量平均分子量(Mw)より算出した値である。
【0015】
<GPC測定装置>
カラム :TOSO GMHHR−H(S)HT
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
<測定条件>
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :2.2mg/ml
注入量 :160μl
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
【0016】
本発明の弾性不織布において、上記低結晶性ポリプロピレンは、さらに以下の(g)及び(h)を満たすことが好ましい。
(g)示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
低結晶性ポリプロピレンの融点(Tm−D)が0℃以上であると、紡糸により得られた繊維におけるべたつきの発生が抑制され、120℃以下であると、十分な弾性回復性が得られる。このような観点から、融点(Tm−D)は、より好ましくは0〜100℃である。
なお、上記融点(Tm−D)は、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして求めることができる。
【0017】
(h)立体規則性指数([mm])が50〜90モル%である。
立体規則性指数([mm])が50モル%以上であると、べたつきの発生が抑制され、90モル%以下であると、不織布の製造工程における操作性が向上する。このような観点から、この立体規則性指数([mm])は、より好ましくは60〜90モル%、さらに好ましくは60〜80モル%である。
立体規則性指数([mm])は、後述の日本電子(株)製JNM−EX400型装置を用い、13C−NMRスペクトルを上述の条件と同様にして測定し、プロピレン連鎖のメソトリアッド分率[mm]を測定して求めた値である。立体規則性指数([mm])の値が大きいほど、立体規則性が高い。
【0018】
上記低結晶性ポリプロピレンは、例えば、WO2003/087172号公報に記載されているような、いわゆるメタロセン触媒と呼ばれる均一系の触媒を用いて合成することができる。
【0019】
本発明の弾性不織布の製造において用いる離型剤とは、成形した不織布が成形機のロールやコンベアに付着しないように、剥離性を向上させるための添加剤をいう。上記結晶性樹脂組成物に含有される離型剤を内部離型剤といい、内部離型剤とは、樹脂原料に添加して不織布の剥離性を向上させるための添加剤をいう。後述する外部離型剤とは、成形機のロールやコンベアに直接塗布して不織布の剥離性を向上させるための添加剤をいう。
【0020】
内部離型剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)高融点ポリマー、有機カルボン酸もしくはその金属塩、芳香族スルホン酸塩もしくはその金属塩、有機リン酸化合物もしくはその金属塩、ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体、ロジン酸部分金属塩、無機微粒子、イミド酸、アミド酸、キナクリドン類、キノン類又はこれらの混合物。
(a)高融点ポリマー
ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン等。
(b)金属塩
安息香酸アルミニウム塩、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム、チオフェネカルボン酸ナトリウム、ピローレカルボン酸ナトリウム等、及びカルボン酸の金属塩である金属石鹸が挙げられる。金属としては、Li、Ca、Ba、Zu、Mg、Al、Pbなど、カルボン酸として、オクチル酸、パルチミン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リノシール酸等の脂肪酸や安息香酸、p−t−b−安息香酸等の芳香族酸が挙げられる。
(c)ジベンジリデンソルビトール又はその誘導体
ジベンジリデンソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−2,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−クロロベンジリデン)ソルビトール及び1,3:2,4−ジベンジリデンソルビトール等、具体的には、新日本理化(株)製のゲルオールMDやゲルオールMD−R等。
(d)ロジン酸部分金属塩
荒川化学工業(株)製のパインクリスタルKM1600及びパインクリスタルKM1500、パインクリスタルKM1300等。
(e)無機微粒子
タルク、クレイ、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉末、アルミナ、シリカ、ケイ藻土、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉末、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム及び硫化モリブデン等。
(f)アミド化合物
アジピン酸ジアニリド、スベリン酸ジアニリド等。
(g)有機リン酸金属塩
(株)ADEKA製のアデカスタブNA−11及びアデカスタブNA−21等。
(2)合成シリカ系
富士シリシア(株)製のサイリシアや水澤化学工業(株)製のミズカシル等。
(3)エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリルエルカアミド及びオレイルパルミトアミド等。
【0021】
これらの内部離型剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、これらの内部離型剤のうち、ジベンジリデンソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−2,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−クロロベンジリデン)ソルビトール及び1,3:2,4−ジベンジリデンソルビトールが好ましい。
本発明の弾性不織布の製造に用いる結晶性樹脂組成物において、内部離型剤の含有量は、樹脂組成物基準で10〜10000質量ppmであることが好ましく、100〜5000質量ppmがより好ましい。内部離型剤の含有量が10質量ppm以上であると、離型剤としての機能が発現され、10000質量ppm以下であると、離型剤としての機能と経済性のバランスが良好となる。
【0022】
本発明の弾性不織布の製造に用いる結晶性樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、酸化防止剤、中和剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤及び帯電防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤及びびイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これらは、結晶性樹脂組成物の調製の際に加えてもよく、低結晶性ポリプロピレンの製造の際に加えてもよい。
【0023】
本発明の弾性不織布は、メルトブロー法、スパンボンド法などの方法により製造することができ、弾性不織布の用途に応じて製造方法を適宜選定することができる。
メルトブロー法では、結晶性樹脂組成物の溶融物をノズルより押し出した後に高速の加熱気体流と接触させて微細繊維とし、この微細繊維を移動捕集面に捕集して不織布化することによって、弾性不織布を製造することができる。メルトブロー法によって製造した不織布は、該不織布を構成する繊維の平均径が小さいため、良好な風合を有する。
スパンボンド法では、溶融混練した結晶性樹脂組成物を紡糸し、延伸、開繊することによって連続長繊維を形成し、引き続き連続した工程で連続長繊維を移動捕集面上に堆積させ、絡合することによって弾性不織布を製造する。スパンボンド法では、弾性不織布を連続的に製造することができ、スパンボンド法によって製造した弾性不織布は、該不織布を構成する繊維が延伸された連続の長繊維であるため、強度が大きい。
【0024】
本発明の弾性不織布の製造するに際し、外部離型剤を用いる場合は、上記移動捕集面に外部離型剤を散布する。また、弾性不織布を製造するための結晶性樹脂組成物が内部離型剤を含む場合、上記移動捕集面に外部離型剤を散布しなくてもよいが、良好な離型性を得る点から、弾性不織布の製造に際して、上記移動捕集面に外部離型剤を散布してもよい。
【0025】
外部離型剤としては、フッ素系離型剤及びシリコーン系離型剤が挙げられる。フッ素系離型剤としては、ダイキン工業(株)製のダイフリーや(株)ネオス製のフリリースが挙げられる。シリコーン系離型剤としては、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSPRAY200、信越化学工業(株)製のKF96SP、日本ペルノックス(株)製のエポリーズ96、呉工業(株)製のKURE−1046等が挙げられる。これらは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、これらの外部離型剤のうち、シリコーン系離型剤が好ましい。
外部離型剤を上記捕集面に散布する方法としては、スプレーによる方法などが挙げられる。
【0026】
本発明の弾性不織布を用いた繊維製品としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の繊維製品を挙げることができる。すなわち、使い捨ておむつ用部材、おむつカバー用伸縮性部材、生理用品用伸縮性部材、衛生製品用伸縮性部材、伸縮性テープ、絆創膏、衣料用伸縮性部材、衣料用絶縁材、衣料用保温材、防護服、帽子、マスク、手袋、サポーター、伸縮性包帯、湿布剤の基布、スベリ止め基布、振動吸収材、指サック、クリーンルーム用エアフィルター、エレクトレット加工を施したエレクトレットフィルター、セパレーター、断熱材、コーヒーバッグ、食品包装材料、自動車用天井表皮材、防音材、クッション材、スピーカー防塵材、エアクリーナー材、インシュレーター表皮、バッッキング材、接着不織布シート、ドアトリム等の各種自動車用部材、複写機のクリーニング材等の各種クリーニング材、カーペットの表材や裏材、農業捲布、木材ドレーン、スポーツシューズ表皮等の靴用部材、かばん用部材、工業用シール材、ワイピング材及びシーツなどを挙げることができる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
(1)低結晶性ポリプロピレンの製造
攪拌機付きの内容積20Lのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを20L/h、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/h、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートと(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドとトリイソブチルアルミニウムとプロピレンとを質量比1:2:20で、事前に接触させて得られた触媒成分を、ジルコニウム換算で6μmol/hで連続供給した。
重合温度を70℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が8モル%、反応器内の全圧が0.7MPa・Gに保たれるように、プロピレンと水素を連続供給し、重合反応を行った。
得られた重合溶液に、安定剤としてイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)をその含有割合が500質量ppmになるように添加し、次いで溶媒であるn−ヘプタンを除去することにより、低結晶性ポリプロピレンを得た。
得られた低結晶性ポリプロピレンについて、上述した方法により、融点(Tm−D)、立体規則性指数([mm])、メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミメソラセミメソ分率[rmrm]、[rrrr]/(1−[mmmm])、[mm]×[rr]/[mr]2、質量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
(2)弾性不織布の成形
上記(1)で得られた低結晶性ポリプロピレンを、スクリュー径65mmのギヤポンプを有する単軸押出機を用いて樹脂温度220℃で原料を溶融押出し、ノズル径0.3mmのノズル(孔数841ホール)より、単孔当たり0.5g/minの速度で溶融樹脂を吐出させて紡糸した。紡糸により得られた繊維を温度15℃、風速0.8m/secの空気で冷却しながら、ノズル下1400mmに設置したエジェクターでエジェクター圧力0.22MPaで吸引して、ノズル下255mmで11m/minのライン速度で移動しているネット面に、シリコーン系離型剤(TOZAI CORPORATION SILICON RELEASE AGENT SREASE PC)をスプレーしながら繊維を積層した。ネット面に積層された繊維束を40℃に加熱したエンボスロールで線圧39.2kN/mでエンボス加工し、引取りロールに巻き取った。
得られた弾性不織布について、下記の測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0029】
(1)弾性回復率の測定
得られた弾性不織布から、長さ200mm×幅25mmの試験片を、機械方向(MD)と機械方向に対して垂直方向(TD)についてサンプリングした。引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフAG−I)を用いて、初期長L0を100mmに設定し、引張速度300mm/分で100%伸長した後、直ちに300mm/分で戻し、応力が0となったときの長さL(mm)を測定した。下記式により弾性回復率(%)を算出した。
弾性回復率(%)=(2−L/L0)×100
(2)弾性不織布のべたつきの評価
パネラー10名により手触りの評価を行った。べたつきが無いと感じる場合を2点、少しべたつきを感じる場合を1点、べたつきを感じる場合を0点として採点し、パネラー10名の合計点が14点以上を評価A、10〜13点を評価B、9点以下を評価Cと判定した。
(3)ロールリリース性
1時間の成形中に、カレンダーロールに巻き付く回数で評価した。
◎:巻き付きがない。
○:巻き付きが1〜2回である。
△:巻き付きが3回以上である。
(4)ローピング
ノズルとエジェクターとの間で、隣接する糸が付着した束になる現象(ローピング)の発生の有無を目視で確認した。
◎:発生しない。
×:発生した。
(5)熱融着性
ウェブをエンボスロールにより熱融着して不織布化するときのエンボス温度で評価した。温度が高すぎるとウェブはロールに付着して巻き付き、温度が低すぎると十分な接着強度が得られず、毛羽立ちやほつれが発生する。このようなロール付着、毛羽立ちが発生しない温度をエンボス温度と定義した。また、評価条件は下記のとおりである。
エンボス圧力(線圧):39.2kN/m
速度:11m/分
ウェブ幅:0.5m
【0030】
実施例2
実施例1において、低結晶性ポリプロピレンに内部離型剤(新日本理化(株)製、ゲルオールMD)を5000質量ppm添加し、かつ成形時に離型剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0031】
実施例3
実施例1において、低結晶性ポリプロピレンに内部離型剤(新日本理化(株)製、ゲルオールMD)を500質量ppm添加し、かつ成形時に離型剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0032】
実施例4
実施例1において、低結晶性ポリプロピレンに内部離型剤として高結晶性ポリプロピレン(プライムポリマー(株)製、Y2000GP)を10000質量ppm添加し、かつ成形時に離型剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0033】
実施例5
実施例1において、低結晶性ポリプロピレンに内部離型剤(新日本理化(株)製、ゲルオールMD)を500質量ppm添加した以外は、実施例1と同様にして弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0034】
比較例1
実施例1において、成形時に離型剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0035】
実施例6
実施例1において、重合温度を67℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が0.8モル%、反応器内の全圧が0.75MPa・Gに保たれるように、プロピレンと水素を連続供給した以外は実施例1と同様にして低結晶性ポリプロピレンを得て、弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0036】
実施例7
実施例2において、重合温度を67℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が0.8モル%、反応器内の全圧が0.75MPa・Gに保たれるように、プロピレンと水素を連続供給した以外は実施例2と同様にして低結晶性ポリプロピレンを得て、弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0037】
実施例8
実施例3において、重合温度を67℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が0.8モル%、反応器内の全圧が0.75MPa・Gに保たれるように、プロピレンと水素を連続供給した以外は実施例3と同様にして低結晶性ポリプロピレンを得て、弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0038】
実施例9
実施例4において、重合温度を67℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が0.8モル%、反応器内の全圧が0.75MPa・Gに保たれるように、プロピレンと水素を連続供給した以外は実施例4と同様にして低結晶性ポリプロピレンを得て、弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0039】
実施例10
実施例5において、重合温度を67℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が0.8モル%、反応器内の全圧が0.75MPa・Gに保たれるように、プロピレンと水素を連続供給した以外は実施例5と同様にして低結晶性ポリプロピレンを得て、弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0040】
比較例2
比較例1において、重合温度を67℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が0.8モル%、反応器内の全圧が0.75MPa・Gに保たれるように、プロピレンと水素を連続供給した以外は比較例1と同様にして低結晶性ポリプロピレンを得て、弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の弾性不織布は、例えば使い捨ておむつ、生理用品、衛生製品、衣料素材、包帯、包装材等の各種繊維製品に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(f)を満たす低結晶性ポリプロピレンを含有する結晶性樹脂組成物と、離型剤を用いて製造されてなる弾性不織布。
(a)[mmmm]=20〜60モル%
(b)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0
(e)質量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
【請求項2】
低結晶性ポリプロピレンが、さらに以下の(g)及び(h)を満たす請求項1に記載の弾性不織布。
(g)示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
(h)立体規則性指数([mm])が50〜90モル%である。
【請求項3】
結晶性樹脂組成物が、離型剤を含有する請求項1又は2に記載の弾性不織布。
【請求項4】
離型剤の含有量が、樹脂組成物基準で10〜10000質量ppmである請求項3に記載の弾性不織布。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の弾性不織布の製造方法であって、樹脂組成物の溶融物をノズルから押出して紡糸し、該紡糸により得られた繊維を移動捕集面に捕集する工程を含む製造工程により弾性不織布を製造するに際し、上記捕集面に外部離型剤を散布することを特徴とする弾性不織布の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の弾性不織布を用いた繊維製品。

【公開番号】特開2009−79341(P2009−79341A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185244(P2008−185244)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】