説明

弾性不織布及び繊維製品

【課題】優れた弾性回復性を有すると共に、べたつきがなく、肌触りが良好な弾性不織布
及びこの弾性不織布を用いた繊維製品を提供すること。
【解決手段】(a)[mmmm]=20〜60モル%、(b)[rrrr]/(1−[m
mmm])≦0.1、(c)[rmrm]>2.5モル%、(d)[mm]×[rr]/
[mr]2≦、2.0、(e)重量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
、(f)分子量分布(Mw/Mn)<4を満たす低結晶性ポリプロピレンを含有し、紡糸
速度500〜2500m/分で紡糸してなる繊維からなることを特徴とする弾性不織布及
びこの弾性不織布を用いた繊維製品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた弾性回復性を有すると共に、べたつきがなく、肌触りが良好な弾性不
織布及びこの弾性不織布を用いた繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、弾性繊維及び弾性不織布は、例えば使い捨ておむつ、生理用品、衛生製品、衣料
素材、包帯、包装材等の各種用途に供せられている。特に使い捨ておむつや生理用品等は
、直接身体に接触させて使用されるため、身体への良好な装着感や装着後の身体の動きや
すさなどの観点から、適度な伸縮性、及び弾性回復性が要求されている。
弾性回復性が付与された弾性繊維として、特許文献1には、オレフィン共重合体やスチ
レンブロック共重合体のようなエラストマーと他の樹脂成分とをブレンドした弾性繊維が
開示されている。しかしながら、これらのエラストマーはポリプロピレンとの相溶性に劣
り、かつ非結晶性であるため、これらのエラストマーとポリプロピレンとを混合して弾性
繊維を形成した場合、上記エラストマーが繊維表面にブリードしてくる。そのため、この
弾性繊維からなる弾性不織布にはべたつき感があり、また、この弾性不織布を用いた繊維
製品は肌触りが悪いという問題があった。
特許文献2には、不織布を構成するプロピレンポリマーをフリーラジカル開始剤で処理
することが開示されている。このような処理によってプロピレンポリマーの流動性は向上
するが、プロピレンポリマーの熱安定性は低下する。
特許文献3には、プロピレンとエチレンからなるプロピレン組成物で繊維を形成するこ
と、および、プロピレンとエチレンからなるプロピレン組成物を鞘成分とし、高密度ポリ
エチレンを芯成分とする鞘芯型複合繊維を形成することが開示されている。しかしながら
、プロピレンとエチレンからなるプロピレン組成物は、結晶性アイソタクチックプロピレ
ンホモポリマーとの相溶性が必ずしも十分ではなく、このため、混練性の低下や、繊維表
面へのブリードによる物性低下が懸念される。
特許文献4には、低結晶性ポリプロピレンと高結晶ポリプロピレンからなる組成物を鞘
成分とし、低結晶性ポリプロピレンを芯成分とする鞘芯型複合繊維からなる弾性不織布が
開示されている。しかしながら、紡糸速度が速い場合には、繊維が配向結晶化することで
、弾性回復性が不十分となったり、また、引っ張り物性、特に破断伸びが低下するなどの
問題が生じる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−129330号公報
【特許文献2】特表2007−511680号公報
【特許文献3】特開2007−277755号公報
【特許文献4】特開2009−209506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、優れた弾性回復性、破断伸びを有すると共に
、べたつきがなく、肌触りが良好な弾性不織布及びこの弾性不織布を用いた繊維製品を提
供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の低結晶性ポリプロピレンを含有し、特定
の成形条件により得られた弾性不織布により上記目的が達成されることを見出した。すな
わち、特定の立体規則性を有する低結晶性ポリプロピレンを含有する繊維は、弾性回復性
、破断伸びに優れ、べたつきが低減化され、弾性不織布の形成材料として好適であること
を見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、
1.以下の(a)〜(f)を満たす低結晶性ポリプロピレンを含有し、紡糸速度500〜
2500m/分で紡糸してなる繊維からなることを特徴とする弾性不織布、
(a)[mmmm]=20〜60モル%
(b)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
2.前記繊維が芯鞘型複合繊維である上記1記載の弾性不織布、
3.前記芯鞘型複合繊維は、鞘成分がオレフィン系重合体を含有し、芯成分が90〜10
0質量%の低結晶性ポリプロピレンを含有し、かつ、芯成分が鞘成分よりも高い含有量の
低結晶性ポリプロピレンを含む上記2記載の弾性不織布、
4.前記芯鞘型複合繊維が、以下の式により算出される総低結晶性ポリプロピレン含量が
、90質量%以上99質量%以下である上記2又は3に記載の弾性不織布、及び
総低結晶性ポリプロピレン含量(%)=(Ws×Xs+Wc×Xc)/100
Ws:鞘成分の質量分率
Wc:芯成分の質量分率
Xs:鞘成分中の、低結晶性ポリプロピレンの質量分率
Xc:芯成分中の、低結晶性ポリプロピレンの質量分率
5.上記1〜4のいずれかに記載の弾性不織布を用いた繊維製品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、優れた弾性回復性、破断伸びを有すると共に、べたつきがなく、肌触
りが良好な弾性不織布を提供することができる。さらに、当該弾性不織布は、巻き取りロ
ールからのリリース性が良好で二次加工性に優れる、耐熱性に優れる、HMA(ホットメ
ルト接着剤)を塗布しても収縮が起こらない等の優れた性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の弾性不織布は、特定の性状を有する低結晶性ポリプロピレンを含有し、紡糸速
度500〜2500m/分で紡糸してなる繊維からなる。
結晶性ポリプロピレンとは、下記の示差走査型熱量計(DSC)を用いた測定により融
点が観測されるポリプロピレンをいい、高結晶性ポリプロピレンとは、該融点が155℃
以上の結晶性ポリプロピレンをいい、低結晶性ポリプロピレンとは、該融点が0〜120
℃の結晶性ポリプロピレンをいう。
なお、融点(Tm−D)は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下−1
0℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最
も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される。
【0008】
[低結晶性ポリプロピレン]
本発明において用いられる低結晶性ポリプロピレンは、以下の(a)〜(f)に示す性
質を有するものであり、これらは低結晶性ポリプロピレンを製造する際の触媒の選択や反
応条件により調整することができる。
【0009】
(a)メソペンタッド分率[mmmm]=20〜60モル%
メソペンタッド分率[mmmm]が20モル%より小さいと、固化が非常に遅いため、
不織布がカレンダーロールやベルトに付着したり、引き込まれたりして連続成形ができな
い。また、メソペンタッド分率[mmmm]が60モル%より大きいと、結晶化度が高す
ぎるため、弾性回復性が悪い。このメソペンタッド分率[mmmm]は、好ましくは30
〜50モル%、より好ましくは40〜50モル%である。
【0010】
(b)[rrrr]/[1−mmmm]≦0.1
[rrrr]/[1−mmmm]の値は、低結晶性ポリプロピレンの規則性分布の均一
さを示す指標である。この値が大きくなると、マグネシウム担持型チタン触媒を用いて製
造される従来のポリプロピレンのように高規則性ポリプロピレンとアタクチックポリプロ
ピレンの混合物となり、べたつきの原因となる。
上記低結晶性ポリプロピレンにおいて、[rrrr]/[1−mmmm]が0.1より
大きいと、規則性分布が広がり、アタクチックポリプロピレンの混合物となり、べたつき
の原因となる。このような観点から、[rrrr]/(1−[mmmm])は、好ましく
は0.05以下、より好ましくは0.04以下である。
【0011】
(c)[rmrm]>2.5モル%
上記低結晶性ポリプロピレンのラセミメソラセミメソ分率[rmrm]が2.5モル%
以下であると、低結晶性ポリプロピレンのランダム性が減少し、結晶化度が高くなり、弾
性回復性が低下する。[rmrm]は、好ましくは2.6モル%以上、より好ましくは2
.7モル%以上である。その上限は、通常10モル%程度である。
【0012】
(d)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0
[mm]×[rr]/[mr]2は、重合体のランダム性の指標を示し、0.25に近
いほどランダム性が高くなり、弾性回復性に優れる。この値が2.0以下であると、紡糸
により得られた繊維において十分な弾性回復性が得られ、かつべたつきも抑制される。
上記十分な弾性回復性を得る観点から、[mm]×[rr]/[mr]2は、好ましく
は0.25〜1.8、より好ましくは0.25〜1.5である。
【0013】
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
上記低結晶性ポリプロピレンにおいて重量平均分子量が10,000以上であると、該
低結晶性ポリプロピレンの粘度が低すぎず適度のものとなるため、紡糸の際の糸切れが抑
制される。また、重量平均分子量が200,000以下であると、上記低結晶性ポリプロ
ピレンの粘度が高すぎず、紡糸性が向上する。この重量平均分子量は、好ましくは30,
000〜150,000であり、より好ましくは50,000〜150,000である。
【0014】
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
上記低結晶性ポリプロピレンにおいて、分子量分布(Mw/Mn)が4未満であると、
紡糸により得られた繊維におけるべたつきの発生が抑制される。この分子量分布は、好ま
しくは3以下である。
【0015】
上記(a)〜(d)の立体規則性はNMRにより求められる。
本発明において、メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr
]及びラセミメソラセミメソペンダッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Za
mbelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で
提案された方法に準拠し、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定され
るポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、及びラセミメソ
ラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が
高くなる。また、トリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]も上記方法により算出
した。
なお、13C−NMRスペクトルの測定は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等
により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案されたピーク
の帰属に従い、下記の装置及び条件にて行うことができる。
【0016】
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ml
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
【0017】
<計算式>
M=m/S×100
R=γ/S×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8〜22.5ppm
Pαβ:18.0〜17.5ppm
Pαγ:17.5〜17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖:21.7〜22.5ppm
【0018】
上記(e)重量平均分子量(Mw)および(f)分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパ
ーミエイションクロマトグラフィ(GPC)測定により求められる。本発明の重量平均分
子量は、下記の装置および条件で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量であり、分
子量分布は、同様にして測定した数平均分子量(Mn)および上記重量平均分子量より算
出した値である。
【0019】
<GPC測定装置>
カラム :TOSO GMHHR−H(S)HT
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
<測定条件>
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :2.2mg/ml
注入量 :160μl
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
【0020】
上記低結晶性ポリプロピレンは、例えば、WO2003/087172号公報に記載さ
れているようなメタロセン系触媒を使用して製造することができる。特に、配位子が架橋
基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物を用いたものが好ましく、なかでも、
2個の架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物と助触媒を組み合わせて得
られるメタロセン系触媒が好ましい。
具体的に例示すれば、
(A)一般式(I)
【0021】
【化1】

【0022】
〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、E1及びE2
はそれぞれ置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ヘテロシク
ロペンタジエニル基、置換ヘテロシクロペンタジエニル基、アミド基、ホスフィド基、炭
化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A1及びA2を介して架橋構造
を形成しており、又それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子
を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX、E1、E2
又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同
じでも異なっていてもよく、他のY,E1、E2又はXと架橋していてもよく、A1及びA2
は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数
1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−
O−、−CO−、−S−、−SO2−、−Se−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1
−、−BR1−又は−AlR1−を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20
の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一
でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜
3の整数を示す。〕
で表される遷移金属化合物、及び(B)(B−1)該(A)成分の遷移金属化合物又はそ
の派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(B−2)アルミノキサンか
ら選ばれる成分を含有する重合用触媒が挙げられる。
【0023】
上記(A)成分の遷移金属化合物としては、配位子が(1,2’)(2,1’)二重架
橋型の遷移金属化合物が好ましく、例えば(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−
ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジク
ロライドが挙げられる。
【0024】
上記(B−1)成分の化合物の具体例としては、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモ
ニウム、テトラフェニル硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリメ
チルアンモニウム、テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸
メチル(トリ−n−ブチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸ベンジル(トリ−n−ブ
チル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム、テトラフェ
ニル硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニ
ウム、テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム、テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウ
ム、テトラフェニル硼酸メチル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオ
ロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸
トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニ
ルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラ−n−ブチルアンモ
ニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラエチルアンモニウム、テトラ
キス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム、テト
ラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム、テトラキス(ペ
ンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタ
フルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼
酸ジメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリ
ニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルピリジニウム、テトラキス(
ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェ
ニル)硼酸メチル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)
硼酸ベンジル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸
メチル(4−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフ
ェニルホスホニウム、テトラキス〔ビス(3,5−ジトリフルオロメチル)フェニル〕硼
酸ジメチルアニリニウム、テトラフェニル硼酸フェロセニウム、テトラフェニル硼酸銀、
テトラフェニル硼酸トリチル、テトラフェニル硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン
、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム、テトラキス(ペンタフル
オロフェニル)硼酸(1,1’−ジメチルフェロセニウム)、テトラキス(ペンタフルオ
ロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼
酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル,テトラキス(ペンタフルオ
ロフェニル)硼酸リチウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム、テ
トラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テオラフェニルポルフィリンマンガン、テトラ
フルオロ硼酸銀,ヘキサフルオロ燐酸銀、ヘキサフルオロ砒素酸銀、過塩素酸銀、トリフ
ルオロ酢酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀等を挙げることができる。
【0025】
上記(B−2)成分のアルミノキサンとしては、公知の鎖状アルミノキサンや環状アル
ミノキサンが挙げられる。
【0026】
また、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニ
ウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニ
ウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチ
ルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウム
ヒドリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等の有機アルミニウム化合物を併用して、
低結晶性ポリプロピレンを製造してもよい。
【0027】
[高結晶性ポリプロピレン]
本発明において用いられる高結晶性ポリプロピレンとしては、Y2000GP(商品名
、プライムポリマー社製)などを用いることができるが、融点が155℃以上の結晶性ポ
リプロピレンであればいずれのものでもよく、特に限定されない。例えば、プロピレン単
独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重
合体などが挙げられる。高結晶性ポリプロピレンの分子量については、いずれの場合にも
成形性の観点から選択され、メルトブロー法による成形の場合には、JIS K7210
に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したメルトフローレート(MF
R)が100〜2000g/10分程度のものが好ましく、スパンボンド法による成形の
場合には10〜100g/10分程度のものが好ましい。これらの範囲から、繊維や不織
布の目的とする用途により選択して用いることができる。具体的には、成形性が重視され
る用途には、結晶化温度が高く、かつ結晶性の高いポリプロピレンが好ましく、結晶化温
度(Tc)が100℃以上であるものがより好ましい。
【0028】
[紡糸条件]
繊維の紡糸条件は、繊維の配向結晶化を抑制するため、紡糸速度を比較的遅くすること
が好ましく、紡糸速度は500〜2500m/分であることを要し、好ましくは1000
〜2000m/分である。紡糸速度が2500m/分を超える場合、弾性不織布の破断伸
びが低下し、十分な弾性回復性が得られず、500m/分未満では、糸が太く、繊維の量
が十分でないことから、外観が悪化するなど、不織布として不十分となる。
【0029】
[芯鞘型複合繊維]
本発明の不織布を形成する繊維は、芯鞘型複合繊維であることが好ましい。ここで、芯
鞘型複合繊維とは、その断面が中心部の「芯」と外層部の「鞘」から成る繊維をいう。
1.鞘成分
芯鞘型複合繊維の鞘成分は、低結晶性ポリプロピレンと高結晶性ポリプロピレンを含有
することが好ましく、その好ましい成分量は、低結晶性ポリプロピレン50〜99質量%
と高結晶性ポリプロピレン1〜50質量%であり、より好ましくは低結晶性ポリプロピレ
ン60〜95質量%と高結晶性ポリプロピレン5〜40質量%であり、さらに好ましくは
低結晶性ポリプロピレン60〜90質量%と高結晶性ポリプロピレン10〜40質量%で
ある。低結晶性ポリプロピレンが50質量%以上であることで、十分な弾性回復性が得ら
れ、99質量%以下であることで、カレンダーロールへの付着が抑えられ、連続成形性が
向上する。
【0030】
本発明の鞘成分においては、内部離型剤を添加してもよい。内部離型剤とは樹脂原料に
添加して不織布の剥離性を向上させるための添加剤をいい、具体的には、高融点ポリマー
、有機カルボン酸もしくはその金属塩、芳香族スルホン酸もしくはその金属塩、有機リン
酸化合物もしくはその金属塩、ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体、ロジン
酸部分金属塩、無機微粒子、イミド類、アミド類、キナクリドン類、キノン類又はこれら
の混合物等が挙げられる。
【0031】
高融点ポリマーとしては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン等が挙
げられる。
有機カルボン酸としては、オクチル酸、パルチミン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベ
ヘン酸、モンタン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、
リノシール酸等の脂肪酸や安息香酸、p−t−ブチル−安息香酸等の芳香族カルボン酸が
挙げられる。有機カルボン酸の金属塩としては、上記有機カルボン酸のLi、Ca、Ba
、Zu、Mg、Al、Pb等の塩やカルボン酸の金属塩である金属石鹸が挙げられ、具体
的には安息香酸アルミニウム塩、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナ
トリウム、チオフェネカルボン酸ナトリウム、ピローレカルボン酸ナトリウム等が挙げら
れる。
【0032】
芳香族スルホン酸としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、分岐アルキルベンゼン
スルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられ、芳香族
スルホン酸の金属塩としては、上記芳香族スルホン酸のLi、Ca、Ba、Zu、Mg、
Al、Pb等の塩が挙げられる。
【0033】
有機リン酸化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ
ブチルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、ブトキシエチルホスフェート、
トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、
クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、クレジ
ルジー2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールジフェノールホスフェート、各
種芳香族縮合リン酸エステル、2−クロロエチルホスフェート、クロロプロピルホスフェ
ート、ジクロロプロピルホスフェート、トリブロモネオペンチルホスフェート、含ハロゲ
ン縮合リン酸、ビス−2−エチルヘキシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート、2
−メタクリロイルオキシルエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイ
ルオキシエチルホスフェート、メチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェー
ト、モノイソデシルホスフェート、2−ブチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシ
ルアシッドホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルハイドロジェンホスフェ
ート、ジブチルハイドロジェンホスフェート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン
酸、ポリオキシアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル
リン酸、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテルリン酸等が挙げられ、有機リン
酸化合物の金属塩としては、上記有機リン酸化合物のLi、Ca、Ba、Zu、Mg、A
l、Pb等の塩が挙げられる。これらの市販品としては、(株)ADEKA製のアデカス
タブNA−11及びアデカスタブNA−21等が挙げられる。
【0034】
ジベンジリデンソルビトール又はその誘導体としては、ジベンジリデンソルビトール、
1,3:2,4−ビス(o−3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2
,4−ビス(o−2,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス
(o−4−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−クロロ
ベンジリデン)ソルビトール及び1,3:2,4−ジベンジリデンソルビトール等が挙げ
られ、市販品としては、新日本理化(株)製のゲルオールMDやゲルオールMD−R等が
挙げられる。
【0035】
ロジン酸部分金属塩としては、荒川化学工業(株)製のパインクリスタルKM1600
及びパインクリスタルKM1500、パインクリスタルKM1300等が挙げられる。
【0036】
無機微粒子としては、タルク、クレイ、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレ
ーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイ
ト、アルミニウム粉末、アルミナ、シリカ、ケイ藻土、酸化チタン、酸化マグネシウム、
軽石粉末、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネ
シウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシ
ウム及び硫化モリブデン等が挙げられる。これらの市販品としては、富士シリシア(株)
製のサイリシアや水澤化学工業(株)製のミズカシル等が挙げられる。
【0037】
これらの内部離型剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる
。本発明においては、これらの内部離型剤のうち、ジベンジリデンソルビトール、1,3
:2,4−ビス(o−3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−
ビス(o−2,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−
4−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−クロロベンジ
リデン)ソルビトール及び1,3:2,4−ジベンジリデンソルビトールが好ましい。
【0038】
内部離型剤の含有量は、鞘成分樹脂の組成物基準で10〜10000質量ppmである
ことが好ましく、100〜5000質量ppmがより好ましい。内部離型剤の含有量が1
0質量ppm以上であると、離型剤としての機能が発現され、10000質量ppm以下
であると、離型剤としての機能と経済性のバランスが良好となる。
【0039】
2.芯成分
芯鞘型複合繊維の芯成分は、低結晶性ポリプロピレンを含むことが好ましく、その好ま
しい成分量は、低結晶性ポリプロピレン90〜100質量%と高結晶性ポリプロピレン0
〜10質量%である。低結晶性ポリプロピレンが90質量%以上であることで、十分な弾
性回復性が得られ、最も高い弾性回復性を得るには低結晶性ポリプロピレンが100質量
%であることが好ましい。
【0040】
3.複合繊維
芯鞘型複合繊維は以下の規定を満たすことが好ましい。なお、下記の説明において、以
下のように省略して表す。
Ws:鞘成分の質量分率(%)
Wc:芯成分の質量分率(%)
Xs:鞘成分中の、低結晶性ポリプロピレンの質量分率(%)
Xc:芯成分中の、低結晶性ポリプロピレンの質量分率(%)
【0041】
本発明の芯鞘型複合繊維においては、鞘成分と芯成分の比率(Ws/Wc)が、50/
50〜10/90の範囲であることが好ましい。当該規定を満たすことで、良好な弾性回
復性を示す。
【0042】
本発明の芯鞘型複合繊維においては、芯成分が鞘成分よりも高い含有量の低結晶性ポリ
プロピレンを含むことが好ましい。すなわち、Wc×XcがWs×Xsより大きくなるこ
とが好ましい。このような芯鞘型複合繊維であることで、高い弾性回復性と良好な連続成
形性を両立することができる。
【0043】
本発明の芯鞘型複合繊維においては、下記の式によって計算される総低結晶性ポリプロ
ピレン含量は、90〜99質量%であることが好ましい。90質量%以上であることで十
分な弾性回復性が得られ、99質量%以下であることで、カレンダーロールに付着するこ
とによる成形性を悪化や、不織布のべたつきを回避することができる。
総低結晶性ポリプロピレン含量(%)=(Ws×Xs+Wc×Xc)/100
なお、鞘成分の質量分率、芯成分の質量分率は不織布成形に用いる芯鞘複合ノズルにお
ける、芯部と鞘部の樹脂吐出量を調整することによって制御することができる。
【0044】
本発明の芯鞘型複合繊維の製造に用いる鞘成分および芯成分の樹脂組成物には、必要に
応じて各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、酸化防止剤、中和剤、スリ
ップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤及び帯電防止剤等が挙げられる。これらの添加剤
は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、酸化防止
剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤及びびイオウ系酸化防止剤等が
挙げられる。これらは、鞘成分および芯成分の樹脂組成物の調製の際に加えてもよく、低
結晶性ポリプロピレンの製造の際に加えてもよい。
【0045】
[弾性不織布および繊維製品]
本発明の弾性不織布は、メルトブロー法、スパンボンド法などの方法により製造するこ
とができ、弾性不織布の用途に応じて製造方法を適宜選定することができる。
メルトブロー法では、樹脂の溶融物をノズルより押し出した後に高速の加熱気体流と接
触させて微細繊維とし、この微細繊維を移動捕集面に捕集して不織布化することによって
、弾性不織布を製造することができる。メルトブロー法によって製造した不織布は、該不
織布を構成する繊維の平均径が小さいため、良好な風合を有する。
スパンボンド法では、溶融混練した樹脂を紡糸し、延伸、開繊することによって連続長
繊維を形成し、引き続き連続した工程で連続長繊維を移動捕集面上に堆積させ、絡合する
ことによって弾性不織布を製造する。スパンボンド法では、弾性不織布を連続的に製造す
ることができ、スパンボンド法によって製造した弾性不織布は、該不織布を構成する繊維
が延伸された連続の長繊維であるため、強度が大きい。
【0046】
本発明の弾性不織布を用いた繊維製品としては、特に限定されるものではないが、例え
ば以下の繊維製品を挙げることができる。すなわち、使い捨ておむつ用部材、おむつカバ
ー用伸縮性部材、生理用品用伸縮性部材、衛生製品用伸縮性部材、伸縮性テープ、絆創膏
、衣料用伸縮性部材、衣料用絶縁材、衣料用保温材、防護服、帽子、マスク、手袋、サポ
ーター、伸縮性包帯、湿布剤の基布、スベリ止め基布、振動吸収材、指サック、クリーン
ルーム用エアフィルター、エレクトレット加工を施したエレクトレットフィルター、セパ
レーター、断熱材、コーヒーバッグ、食品包装材料、自動車用天井表皮材、防音材、クッ
ション材、スピーカー防塵材、エアクリーナー材、インシュレーター表皮、バッッキング
材、接着不織布シート、ドアトリム等の各種自動車用部材、複写機のクリーニング材等の
各種クリーニング材、カーペットの表材や裏材、農業捲布、木材ドレーン、スポーツシュ
ーズ表皮等の靴用部材、かばん用部材、工業用シール材、ワイピング材及びシーツなどを
挙げることができる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら
限定されるものではない。
【0048】
実施例1
(1)低結晶性ポリプロピレンの製造
攪拌機付きの内容積20Lのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを20L/h、トリ
イソブチルアルミニウムを15mmol/h、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキス
ペンタフルオロフェニルボレートと(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチ
ルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライ
ドとトリイソブチルアルミニウムとプロピレンとを質量比1:2:20で、事前に接触さ
せて得られた触媒成分を、ジルコニウム換算で6μmol/hで連続供給した。
重合温度を67℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が2モル%、反応器内の全圧が
0.8MPa・Gに保たれるように、プロピレンと水素を連続供給し、重合反応を行った

得られた重合溶液に、安定剤としてイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・
ケミカルズ社製)をその含有割合が500質量ppmになるように添加し、次いで溶媒で
あるn−ヘプタンを除去することにより、低結晶性ポリプロピレン(LMPP)を得た。
得られた低結晶性ポリプロピレンについて、上述した方法により、融点(Tm−D)、
立体規則性指数([mm])、メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミメソラセミメソ
分率[rmrm]、[rrrr]/(1−[mmmm])、[mm]×[rr]/[mr
2、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。結果を第1表
に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
(2)弾性不織布の成形
鞘成分としては、上記(1)で得られた低結晶性ポリプロピレン(LMPP)90質量
%、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したメ
ルトフローレート(MFR)が33g/10分の高結晶性ポリプロピレン(PP、バゼル
社製、モプレンHP561S)10質量%の配合比でペレット状態に混合したものを用い
、芯成分としては、低結晶性ポリプロピレンのみを用いた。
不織布の成形はスパンボンド装置(Reicofil社製Reicofil4)を用い
て行った。鞘成分樹脂と芯成分樹脂を別々の単軸押出機を用いて樹脂温度220℃で原料
を溶融押出し、ノズル径0.6mmの芯鞘複合ノズル(孔数5800ホール/m)より、
単孔当たり0.60g/分の速度で、溶融樹脂を鞘成分:芯成分の比率が20:80とな
るように吐出させて紡糸した。
紡糸により得られた繊維を温度16℃、キャビン圧2000Paで40m/minのラ
イン速度で移動しているネット面に繊維を積層した。ネット面に積層された繊維束を65
℃に加熱したエンボスロールで線圧20N/mmでエンボス加工し、引取りロールに巻き
取った。
得られた弾性不織布について、下記の測定及び評価を行った。結果を第2表に示す。
【0051】
(3)弾性回復率の測定
得られた弾性不織布から、長さ200mm×幅25mmの試験片を得て、機械方向(M
D)と機械方向に対して垂直方向(TD)についてサンプリングした。引張試験機((株
)島津製作所製、オートグラフAG−I)を用いて、初期長L0を100mmに設定し、
引張速度300mm/分で100%伸長した後、直ちに300mm/分で戻し、応力が0
となったときの長さL(mm)を測定した。下記式により弾性回復率(%)を算出した。
弾性回復率(%)=(2−L/L0)×100
【0052】
(4)破断ひずみ及び最大応力の測定
得られた不織布から、長さ200mm×幅25mmの試験片を得て、機械方向(MD)
と機械方向に対して垂直方向(TD)についてサンプリングした。引張試験機((株)島
津製作所製、オートグラフAG−I)を用いて、初期長L0を100mmに設定し、引張
速度300mm/分で試験片が破断するまで伸張し、破断直前の最大応力とその点での長
さL(mm)を測定した。また、下記式により破断ひずみ(%)を算出した。
破断ひずみ(%)=(L−L0)/L0×100
【0053】
(5)目付けの計測
得られた不織布の5cm×5cmの質量を測定し、目付け(g/m2)を算出した。
(6)繊度計測
偏光顕微鏡を用いて不織布中の繊維を観察し、ランダムに選んだ5本の繊維直径の平均
値(d)を測定し、樹脂の密度(ρ=900000g/m3)を用いて、不織布サンプル
の繊度を次式から計算した。
繊度(g/9000m)=ρ×π×(d/2)2×9000
(7)紡糸速度
上記方法で得た繊度のデニール値を用い、下記式から紡糸速度を算出した。
紡糸速度(m/min)=単孔吐出量(g/min)/繊度(デニール・g/900
0m)×9000(m)
【0054】
実施例2〜4、比較例1
実施例1において、鞘成分及び紡糸条件を第2表に示すように変更した以外は、実施例
1と同様にして弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を第2表に示す

【0055】
【表2】

【0056】
LMPP:実施例1−(1)で製造した低結晶性ポリプロピレン
PP:モプレンHP561S、バゼル社製、融点:160℃
Engage:エチレン系重合体、Dow社製、Engage8401
ASPUN:エチレン系重合体、Dow社製、ASPUN6834
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の弾性不織布は、例えば使い捨ておむつ、生理用品、衛生製品、衣料素材、包帯
、包装材等の各種繊維製品に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(f)を満たす低結晶性ポリプロピレンを含有し、紡糸速度500〜2
500m/分で紡糸してなる繊維からなることを特徴とする弾性不織布。
(a)[mmmm]=20〜60モル%
(b)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
【請求項2】
前記繊維が芯鞘型複合繊維である請求項1記載の弾性不織布。
【請求項3】
前記芯鞘型複合繊維は、鞘成分がオレフィン系重合体を含有し、芯成分が90〜100
質量%の低結晶性ポリプロピレンを含有し、かつ、芯成分が鞘成分よりも高い含有量の低
結晶性ポリプロピレンを含む請求項2記載の弾性不織布。
【請求項4】
前記芯鞘型複合繊維が、以下の式により算出される総低結晶性ポリプロピレン含量が、
90質量%以上99質量%以下である請求項2又は3に記載の弾性不織布。
総低結晶性ポリプロピレン含量(%)=(Ws×Xs+Wc×Xc)/100
Ws:鞘成分の質量分率
Wc:芯成分の質量分率
Xs:鞘成分中の、低結晶性ポリプロピレンの質量分率
Xc:芯成分中の、低結晶性ポリプロピレンの質量分率
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の弾性不織布を用いた繊維製品。

【公開番号】特開2011−179135(P2011−179135A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44492(P2010−44492)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】