説明

弾性機能を有する床構造及びその弾性機能の硬さを変更する方法

【課題】局部的な段差や隙間を生じさせることの少ない弾性機能を有する床構造及びその弾性機能の硬さを変更する方法を提供する。
【解決手段】平面方向に連結されることによって床板2を構成する複数の板部材10と、各板部材10の下面12に所定の間隔をおいて複数設けられ、板部材10を支持する支持部材20と、互いに隣接する板部材10、10のうちいずれか一方の板部材10の縁13の上面11及び下面12に設けられた一対の連結部30、31と、互いに隣接する板部材10、10の一方の板部材10を他方の板部材10に対して固定する固定部材40と、板部材10が平面方向に連結されることによって構成される床板2の外周縁2aに着脱可能に設けられ、床板2上に敷設された畳3の平行方向の移動を規制する規制部材50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体育館などに畳を敷設する際に体育館の床面と畳との間に設置され、畳に加えられる荷重を吸収する弾性機能を有する床構造及びその弾性機能の硬さを変更する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、中学校や高等学校の体育の授業において柔道など畳の施設を必要とする競技が行われる場合、体育館の床面の上に床構造が設置され、その上に畳が敷設されている。この床構造としては、競技者に怪我が生じるのを可及的に防止するために、弾性機能を有するものが用いられている。このような弾性機能を有する床構造として、例えば、弾性素材からなる複数の支持部材が下面に設けられた2以上の板部材がゴムジョイントにより平行方向に連結されたものや(特許文献1)、弾性素材からなる複数の支持部材が下面に設けられた2以上の板部材が、互いにそれぞれの縁の下面から他方に向かって突出する連結部によって平行方向に連結されたもの(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63−4119号公報
【特許文献2】実開昭54−177126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたものは、隣接する板部材がゴムジョイントのみによって連結されているので、荷重が加えられた板部材に隣接する板部材が連動せずに、板部材と板部材との間に局部的な大きな段差を生じて、畳が傾き、競技者がバランスを崩すという問題がある。また、特許文献2に記載されたものは、板部材と板部材との連結が隣接する板部材の下面を相互に支持する連結部のみによりなされているため、板部材と板部材との平面方向の連結が十分ではなく、板部材と板部材との間に隙間を生じさせるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、局部的な段差や隙間を生じさせることの少ない弾性機能を有する床構造及びその弾性機能の硬さを変更する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明に係る弾性機能を有する床構造は、平面方向に連結されることによって床板を構成する2以上の板部材と、弾性素材から構成され、各板部材の下面に設けられ、該板部材を支持する支持部材と、互いに隣接する板部材のうちいずれか一方の板部材の縁の上面及び下面に設けられ、他方の板部材の縁に向かって突出し、その間に他方の板部材の縁が挿入可能な上下一対の連結部と、断面コ字状に形成され、互いに隣接する板部材の一方の板部材を他方の板部材に対して固定する固定部材と、を備えた弾性機能を有する床構造であって、前記板部材の上面の縁近傍には、前記固定部材のコ字の突出部分の先端縁が挿入可能な固定孔が形成され、隣接する一方の板部材に設けられた一対の連結部の間に他方の板部材の縁が挿入した状態で、一の固定部材の一方の前記先端縁が隣接する一方の板部材の固定孔に挿入され、他方の前記先端縁が隣接する他方の板部材の固定孔に挿入されることによって、隣接する板部材は、互いに平面方向に対して固定されることを特徴とする。
【0007】
以上のように、本発明に係る弾性機能を有する床構造によると、隣接する板部材同士が一方の板部材の連結部の間に他方の板部材の縁が挿入されて連結されることにより、荷重が加えられた板部材に隣接する板部材が連動し、板部材と板部材との間に局部的な段差が生じるのを可及的に防止することができる。また、さらに固定部材を用いて隣接する板部材同士を互いに平面方向に対して固定することにより、板部材と板部材との間に局部的な隙間が生じるのを可及的に防止することができる。
【0008】
本発明に係る弾性機能を有する床構造において、前記支持部材は、四角柱形状からなり、各板部材の下面に所定の間隔をおいて複数設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記板部材は、前記床板上に敷設される畳の大きさと異なる大きさで形成されていることが好ましく、このように、床板を構成する板部材を畳と異なる大きさとすることにより、板部材同士が接する境界と畳同士が接する境界とを異なる位置とすることができるため、より局部的な段差を生じさせることの少ない弾性機能を有する床構造とすることができる。
【0010】
さらに、前記板部材が平面方向に連結されることによって構成される床板の外周縁に設けられ、該床板上に敷設された畳の平行方向の移動を規制する規制部材をさらに備えていることが好ましく、このように、床板の外周縁に畳の移動を規制する規制部材を備えることにより、隣接する畳同士に隙間が生じるのを可及的に防止することができる。
【0011】
また、本発明に係る弾性機能を有する床構造の硬さを変更する方法は、前記板部材が平面方向に連結されることによって構成される床板の下面に設けられた複数の支持部材のうち、1以上の支持部材を復元力が異なるものに変更することを特徴とする。このように、複数の支持部材のうち、1以上の支持部材を復元力が異なるものに変更することにより、本発明に係る弾性機能を有する床構造の硬さを、対象とする選手の体重に対応した適切な硬さとすることができる。
【0012】
本発明に係る弾性機能を有する床構造の硬さを変更する方法において、復元力が異なる2種類の支持部材を用意し、縦方向及び横方向に互いに隣接する支持部材が異なる種類の支持部材となるように配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、局部的な段差や隙間を生じさせることの少ない弾性機能を有する床構造及びその弾性機能の硬さを変更する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る弾性機能を有する床構造を示す略全体平面図である。
【図2】本実施形態に係る弾性機能を有する床構造の板部材を示す平面図である。
【図3】図1のA−A´線に沿った拡大断面図である。
【図4】図1のB−B´線に沿った拡大断面図である。
【図5】本実施形態に係る弾性機能を有する床構造の使用例を示す略部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態に係る弾性機能を有する床構造について、図面に基づいて説明する。本実施形態に係る弾性機能を有する床構造1は、図1に示すように、平面方向に連結されることによって床板2を構成する複数の板部材10と、各板部材10の下面12に所定の間隔をおいて複数設けられ、板部材10を支持する支持部材20と、互いに隣接する板部材10、10のうちいずれか一方の板部材10の縁13に設けられた一対の連結部30、31と、互いに隣接する板部材10、10の一方の板部材10を他方の板部材10に対して固定する固定部材40と、板部材10が平面方向に連結されることによって構成される床板2の外周縁2aに着脱可能に設けられ、床板2上に敷設された畳3の平行方向の移動を規制する規制部材50とを備えている。
【0016】
板部材10は、図2に示すように、畳と形状及び大きさの異なる略正方形状に形成されたラワンベニヤなどの合板からなり、上面11の各縁13の両角14近傍には、後述する固定部材40の上端縁41又は下端縁42が挿入可能な固定孔15が形成されている。
【0017】
支持部材20は、図3及び図4に示すように、例えば発泡樹脂などの弾性素材から構成され、四角柱形状に形成されている。
【0018】
連結部30、31は、図1乃至図3に示すように、平板状に形成されたアルミニウムなどの所定の硬度を有する材料からなり、長手方向の長さが板部材10の各縁13の両角14近傍に形成された固定孔15、15の間の長さよりも短い長方形状に形成されている。また、連結部30、31は、連結部30、31の長手方向の中央と板部材10の縁13の中央とがほぼ同一の位置となるように、互いに隣接する板部材10、10のうちいずれか一方の板部材10の縁13近傍の上面11及び下面12にネジ32などによって固定されて設けられている(図2(a)乃至(c)参照)。さらに、連結部30、31は、互いに隣接する板部材10、10のうちの他方の板部材10の縁13に向かって突出した状態で設けられ、突出した連結部30と連結部31との間33は、他方の板部材10の縁13が挿入可能な幅を有している。
【0019】
固定部材40は、図4に示すように、金属などの所定の硬度を有する材料からなり、断面コ字状に形成されている。断面コ字状に形成された固定部材40の上端縁41は、互いに隣接する板部材10、10のうちいずれか一方の板部材10の固定孔15に挿入可能に形成され、固定部材40の下端縁42は、他方の板部材10の固定孔15に挿入可能に形成されている。
【0020】
規制部材50は、図3及び図4に示すように、木材などの材料からなり、断面L字状に形成された本体部51と、金属などの材料からなり、底部56が後述する本体部51の堀溝54に取り付けられると共に、上端57が板部材10の固定孔15に挿入されることにより、本体部51を板部材10に装着させる断面逆L字状に形成された固定部55とを備えている。本体部51は、板部材10の縁13の長さとほぼ同一の長さの奥行きを有し、本体部51の奥行き方向の中央と板部材10の縁13の中央とがほぼ同一の位置となるように配置した際に、板部材10の固定孔15と整合する位置に固定部55の底部56を挿入して取り付けることができる堀溝54が形成されている。また、本体部51は、段差部分の高さが支持部材20の高さとほぼ同一に形成されており、本体部51の堀溝54の深さは、堀溝54に固定部55の底部56を挿入して取り付けた際に、固定部55の底部56の表面の位置と、堀溝54が形成された領域以外の本体部51の段差部分の表面の位置とが一致するように形成されている。
【0021】
次に、図5に基づいて、本実施形態に係る弾性機能を有する床構造1の組み立て方法について説明する。本実施形態に係る弾性機能を有する床構造1の組み立ては、まず、互いに隣接する板部材10、10のうちいずれか一方の板部材10に設けられた一対の連結部30、31の間33に、他方の板部材10の縁13を順次挿入し、2以上の板部材10からなる床板2を形成する。次に、一の固定部材40の上端縁41を隣接する一方の板部材10の固定孔15に挿入すると共に、下端縁42を隣接する他方の板部材10の固定孔15に挿入して、順次隣接する板部材10同士を固定させる。最後に、床板2の外周に位置する板部材10の固定孔15に規制部材50の固定部55を挿入し、床板2の外周縁2aに規制部材50を装着させる。また、本実施形態に係る弾性機能を有する床構造1の解体は、以上の手順の逆の手順により行なうことができる。
【0022】
以上のように組み立てられた本実施形態に係る弾性機能を有する床構造1は、図5に示すように、規制部材50により囲われた領域の内側に複数の畳3を隙間なく敷設することによって、スプリング整備のなされた柔道場と同様の弾性機能を有する床構造を仮設的に実現させることができる。
【0023】
ここで、本実施形態に係る弾性機能を有する床構造1は、板部材10の下面12に設けられた複数の支持部材20のうち、1以上の支持部材20を復元力が異なるものに変更したり、復元力が異なる2種類の支持部材20を用意し、縦方向及び横方向に互いに隣接する支持部材20が異なる種類の支持部材20となるように配置したりすることにより、弾性機能の硬さを変更することができる。
【0024】
本実施形態に係る弾性機能を有する床構造1の硬さを変更する具体的な態様としては、例えば、全ての支持部材20を比較的復元力の大きい種類の支持部材とすることにより、弾性機能の硬さを硬くして、体重の重い大学生以上の使用に適した弾性機能を有する床構造とすることができ、また、全ての支持部材20を比較的復元力の小さい種類の支持部材とすることにより、弾性機能の硬さを軟らかくして、体重の軽い小学生以下の使用に適した弾性機能を有する床構造とすることができる。さらに、比較的復元力の大きい種類の支持部材と比較的復元力の小さい種類の支持部材とを用意し、縦方向及び横方向に互いに隣接する支持部材20が異なる種類の支持部材20となるように配置することにより、弾性機能の硬さを中程度の硬さにして、中学生及び高校生の使用に適した弾性機能を有する床構造とすることができる。
【0025】
本実施形態に係る弾性機能を有する床構造1において、連結部30、31は、板部材10の縁13から突出した部分を板部材10側に収納することができるスライド式の連結部であるとしても良く、これにより、弾性機能を有する床構造1を解体した後の板部材10の収納スペースを小さくすることができると共に、板部材10の縁13から突出している部分に起因する怪我を防止することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 弾性機能を有する床構造、10 板部材、20 支持部材、30 連結部、40 固定部材、50 規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面方向に連結されることによって床板を構成する2以上の板部材と、
弾性素材から構成され、各板部材の下面に設けられ、該板部材を支持する支持部材と、
互いに隣接する板部材のうちいずれか一方の板部材の縁の上面及び下面に設けられ、他方の板部材の縁に向かって突出し、その間に他方の板部材の縁が挿入可能な上下一対の連結部と、
断面コ字状に形成され、互いに隣接する板部材の一方の板部材を他方の板部材に対して固定する固定部材と、を備えた弾性機能を有する床構造であって、
前記板部材の上面の縁近傍には、前記固定部材のコ字の突出部分の先端縁が挿入可能な固定孔が形成され、
隣接する一方の板部材に設けられた一対の連結部の間に他方の板部材の縁が挿入した状態で、一の固定部材の一方の前記先端縁が隣接する一方の板部材の固定孔に挿入され、他方の前記先端縁が隣接する他方の板部材の固定孔に挿入されることによって、隣接する板部材は、互いに平面方向に対して固定されることを特徴とする弾性機能を有する床構造。
【請求項2】
前記支持部材は、四角柱形状からなり、各板部材の下面に所定の間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の弾性機能を有する床構造。
【請求項3】
前記板部材は、前記床板上に敷設される畳の大きさと異なる大きさで形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の弾性機能を有する床構造。
【請求項4】
前記板部材が平面方向に連結されることによって構成される床板の外周縁に設けられ、該床板上に敷設された畳の平行方向の移動を規制する規制部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の弾性機能を有する床構造。
【請求項5】
前記板部材が平面方向に連結されることによって構成される床板の下面に設けられた複数の支持部材のうち、1以上の支持部材を復元力が異なるものに変更することによって、請求項1乃至4いずれか記載の弾性機能を有する床構造の硬さを変更する方法。
【請求項6】
復元力が異なる2種類の支持部材を用意し、縦方向及び横方向に互いに隣接する支持部材が異なる種類の支持部材となるように配置することを特徴とする請求項5記載の弾性機能を有する床構造の硬さを変更する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−74667(P2011−74667A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227717(P2009−227717)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(508057221)
【Fターム(参考)】