説明

弾性舗装のエンボス層損傷部分の補修方法

【課題】 弾性舗装のエンボス層の損傷部分を、弾性舗装全体の中で目立つことなく均質な表面に、補修現場で、かつ簡便な方法で補修する方法を提供することである。
【解決手段】 弾性舗装のエンボス層の損傷部分を補修する方法であって、(1)損傷していないエンボス層の表面を転写したメス型を調製し、(2)損傷したエンボス層表面を取り除いた後、その部分にウレタン材料を塗着し、(3)該ウレタン材料の硬化直前に転写したメス型を重ね、該ウレタン材料の硬化後、該メス型を外して弾性舗装のエンボス層の損傷部分を補修する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性舗装のエンボス層の損傷部分を補修する方法に関する。より詳しくは、弾性舗装のエンボス層表面を転写したメス型を調製し、エンボス層の損傷部分を取り除いた後に、エンボス層用ウレタン材料及び該メス型を用いて補修する弾性舗装のエンボス層損傷部分の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性舗装の表面は、各種の原因により損傷を生じることがある。これらの弾性舗装の表面に生じる損傷は、エンボス層に部分的に生じることが多く、このような損傷が生じた時はその部分を取り除き、新たなエンボス層を形成させることができる。
しかしながら、このようなエンボス層の損傷部分を新たなエンボス層として形成すると、その部分だけが新しく、周辺の弾性舗装の表面に対して目立ち、弾性舗装表面の均質性がなくなってしまう。
表面に凹凸模様を有する弾性舗装シートの製造方法として、その凹凸模様を転写してメス型を作り、この型にポリウレタン材料を塗布し、硬化後、型からシートを取り外し、凹凸模様を有するシートを調製する方法が知られている(特開平5−124050号公報)。
【0003】
この方法は、凹凸模様の表面を現場施工によらず、予め製造工場で製造し、製造された凹凸模様が均質なシートを適用個所に搬送して舗装材として設置するものである。
このよう方法で製造される凹凸模様を有する弾性舗装シートは、工場規模で製造されるものであり、例え、製造されたシートを弾性舗装のエンボス層表面に生じた損傷部分の補修に適用しても、その表面の状態は、損傷部分近辺の状態と異なり、著しく目立ち弾性舗装表面の全体的均質性が損なわれてしまう。
【0004】
【特許文献1】特開平5−124050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、弾性舗装のエンボス層の損傷部分を、弾性舗装全体の中で目立つことなく均質な表面に、補修現場で、かつ簡便な方法で補修する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、この課題に関し鋭意検討し、本発明の弾性舗装エンボス層の損傷部分を補修する方法を見出した。
すなわち、本発明は、
1.弾性舗装のエンボス層の損傷部分を補修する方法であって、損傷していないエンボス層表面を転写したメス型を調製し、損傷したエンボス層を取り除いた後、その部分をウレタン材料により前記メス型を用いてエンボス層を補修することを特徴とするエンボス層損傷部分の補修方法、
2.損傷したエンボス層を取り除いた個所にウレタン材料を塗着し、該ウレタン材料の硬化前にメス型を重ね、硬化後にメス型を外すことを特徴とする1項記載のエンボス層損傷部分の補修方法、
3.損傷したエンボス層を取り除いた後、ウレタン材料をメス型に塗着してエンボス層を取り除いた個所に重ね、該ウレタン材料の硬化後にメス型を外すことを特徴とする1項記載のエンボス層損傷部分の補修方法、
4.損傷したエンボス層を取り除いた後、ウレタン材料をその個所及びメス型に塗着してエンボス層を取り除いた個所に重ね、該ウレタン材料の硬化後にメス型を外すことを特徴とする1項記載のエンボス層損傷部分の補修方法、及び
5.メス型が、ホットメルトタイプの材料を用いて調製されたものである1乃至4項のいずれかに記載のエンボス層損傷部分の補修方法、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、補修部分の表面の形状を、例え、弾性舗装の表面が経時的に変化しているような表面であっても、このような弾性舗装表面と均質な表面に補修することができ、従来、損傷部分を部分的に取り除いて、新たにエンボス層に補修していた方法に比べ、簡便な方法で、かつ補修部分が目立つことなく、均質な舗装表面に補修することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における弾性舗装とは、例えば、ウレタン弾性舗装において、下地(基盤)上にアスコン層を積層し、さらにその上にウレタン弾性層、エンボス層、更にトップコート層等を積層して得られる弾性舗装である。
このような弾性舗装の表面は、部分的に損傷することがあり、補修せずに放置されると、その損傷部分が拡大して多大の費用をかけて再度、施工したり、損傷部分が使用者に思いがけないトラブルを与えたりすることもあるので、舗装表面に損傷部分が見出され次第補修されねばならない。
【0009】
本発明に於いて、損傷していないエンボス層表面を転写したメス型を調製するとは次の通りである。
(1)メス型を調製するための損傷していないエンボス層表面は、補修される損傷部分のエンボス層表面状態を、弾性舗装エンボス層全体の表面と均一な状態とするに適切なエンボス表面であって、補修しようとする時点での舗装表面の現状を適切に示す部分、例えば、損傷部分を生じる原因の如何にかかわらず、損傷部分に近い表面が選択されるが、通常、このような部分は、視覚的に適切と判断される部分を選択すればよい。
【0010】
(2)転写したメス型を調製するとは、(1)で選択された部分に、ホットメルトタイプの材料を塗布し、必要により、これに複合材料を裏打ちし、この材料の硬化後、取り外して得られるメス型であり、エンボス層表面を転写した型である。
ここで使用するホットメルトタイプの材料は特に限定されるものでなく、この目的に使用できる公知の材料であればよい。例えば、常温で固体であり、加熱すると熔融し、冷却すると固化して型を形成する材料であり、例えば、熱可塑性樹脂、ホットメルトタイプの接着剤やコーティング材が挙げられる。
ホットメルトタイプのコーティング材としては、熱可塑性樹脂成分として、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリブチラール、アクリル樹脂、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合物等、天然樹脂成分としてロジン及びロジン誘導体、及びゴム成分としてブチルゴム、ポリイソブチレン等から選ばれた3成分構成から構成されたものなどが挙げられる。
好ましくは、メス型の調製が短時間で可能なホットメルトタイプの接着剤でよい。しかし、作業時間に余裕がある場合は、常温硬化シリコンゴムである常温加硫型RTVシリコンゴム等も使用できる。
【0011】
舗装表面のエンボス層を転写するメス型は、転写しようとする舗装表面上に補修しようとするエンボス表面の大きさに合わせて加熱熔融したホットメルトタイプの材料や加熱熔融した熱可塑性材料を流し、又は、転写しようとする舗装表面の周囲を粘性を有する粘土のような材料で囲み、その中に加熱熔融したホットメルトタイプの材料や熱可塑性材料を流し込み、冷却、固化したシートを取り外してメス型として得ることができる。
エンボス層表面にホットメルトタイプの材料や熱可塑性材料を流す際に、予め離型性を有する界面活性剤をエンボス表面に塗布しておけば、乾燥後、硬化させると、容易に引き剥がしてメス型を調製することができる。界面活性剤としては、通常市販されている液体洗剤であっても、固化後のメス型は容易に得られる。
【0012】
このメス型及びウレタン材料を用い損傷したエンボス表面を補修する態様は、次のようである。
損傷したエンボス表面は、適当な器具を用いて、任意の広さを切り、剥ぎ取る。その後、エンボス表面が取り除かれた表面部分を清掃し整える。
補修に用いるウレタン材料は、特に限定されないが通常舗装表面と同一の材料を用いればよい。
このウレタン材料は、エンボス表面が取り除かれた表面部分及び/又はメス型に塗り補修施工を行なう。すなわち、1.取り除かれた表面部分にウレタン材料を塗って広げ、ウレタン材料の硬化前にメス型を被せ、ウレタン材料の硬化後にメス型を取り外す方法、2.取り除かれた表面部分にウレタン材料を塗ることなく、メス型にウレタン材料を塗りつけて被せ、ウレタン材料の硬化後にメス型を取り外す方法、及び3.取り除かれた表面部分にウレタン材料を塗って広げ、一方、メス型の方にもウレタン材料を塗りつけてウレタン材料の硬化前に被せ、ウレタン材料の硬化後にメス型を取り外す方法等がある。いずれの方法であっても、メス型には離型剤を塗布しておくのが好ましい。これらの方法により、ウレタン材料が硬化した後の表面はメス型に転写されたエンボス表面に補修される。
これらの方法は、修復すべき損傷部分の大きさや厚みに応じ適切な方法を選択して適用できる。
【0013】
上記のメス型及びホットメルト材料を用い、弾性舗装表面の損傷部分を補修した例を以下に示す。
この例は、弾性舗装が竣工後10数年を経過した弾性舗装について補修した例である。このような補修では、損傷していないが、経時変化した舗装表面の状態がメス型に転写されて、このメス型により修復される損傷部分が、経時変化した状態の舗装表面を示すので、本発明の方法で補修した舗装表面は均質感を有する。
しかしながら、損傷部分がこのような長期使用した弾性舗装表面に生じたものに限らず、例えば、竣工後間もない舗装表面にグラウンド整備のための各種、器機や器具により、又はその他原因により生じた損傷部分であっても、本発明の方法を効果的に適用できる。
【0014】
[本発明による補修の具体例〕
舗装表面の点検で、表面に僅かな破れがあり、補修を要する部分を見出した。破れが見出された弾性舗装は、竣工後数年を経過し、竣工時に比べ、舗装表面は全面的に、磨耗などにより表面の凹凸模様は変化している。
先ず、その損傷部分が見出された現場において、損傷部分の近い位置の舗装表面を、補修しようとする部分よりやや大きめの広さに散水して掃き清掃した。乾いた後、その部分に家庭用液体洗剤を撒布して、乾燥させた。ホットメルト(グルースティク;エチレン塩化ビニール、酢酸塩アセテート樹脂、(株)カインズ社製)を70℃程度に加熱し、溶け出したものを、転写しようとする舗装表面のほぼ中心から垂れ流した。
熔融したホットメルト材料は、厚さ約1〜2mm程度のシート状に広がり、常温まで自然又は強制的に冷却することにより、転写しようとする損傷したエンボス表面のメス型が形成された。冷却後、シートを引き剥がすと目的のメス型が得られた。
【0015】
つぎに、補修しようとするエンボス層の損傷部分を削り取り、洗浄、清掃した。この部分に、舗装表面を構成するための舗装材料、通常、弾性舗装ではウレタン材料の適量を塗着し、固化する前に、その上に前記のメス型の内面に離型剤を塗布して、舗装材料の表面上に密着するように被せて、押えた。
ウレタン材料は、損傷部分に塗着すると共に、メス型のそのほぼ中心にも置いてもよい。このような状態で損傷部分に被せて、メス型を押し付けると、ウレタン材料は損傷部分の中心から周辺へと広がり、自然な感じに補修することができた。
ウレタン材料、及びメス型に塗布する離型剤は、特に限定されるものではなく、公知の材料を使用できる。
ウレタン材料が硬化後、メス型を取り剥がすと補修部分の表面は、弾性舗装表面の全体の中で一体感のある舗装表面として補修できた。
補修部分の表面は必要によりトップコートを塗布してもよい。この際、トップコート材を弾性舗装の表面に近い色相に調色されたものを使用すると損傷部分の修復は一段と好ましいものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の方法は、弾性舗装の表面に部分的に見出される損傷部分を、補修現場で、かつ簡便な方法で、補修した部分が舗装表面の全体的な状態の中で目立つことがなく、均質感のある表面として補修できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性舗装のエンボス層の損傷部分を補修する方法であって、損傷していないエンボス層表面を転写したメス型を調製し、損傷したエンボス層を取り除いた後、その部分をウレタン材料により前記メス型を用いてエンボス層を補修することを特徴とするエンボス層損傷部分の補修方法。
【請求項2】
損傷したエンボス層を取り除いた個所にウレタン材料を塗着し、該ウレタン材料の硬化前にメス型を重ね、硬化後にメス型を外すことを特徴とする請求項1記載のエンボス層損傷部分の補修方法。
【請求項3】
損傷したエンボス層を取り除いた後、ウレタン材料をメス型に塗着してエンボス層を取り除いた個所に重ね、該ウレタン材料の硬化後にメス型を外すことを特徴とする請求項1記載のエンボス層損傷部分の補修方法。
【請求項4】
損傷したエンボス層を取り除いた後、ウレタン材料をその個所及びメス型に塗着してエンボス層を取り除いた個所に重ね、該ウレタン材料の硬化後にメス型を外すことを特徴とする請求項1記載のエンボス層損傷部分の補修方法。
【請求項5】
メス型が、ホットメルトタイプの材料を用いて調製されたものである請求項1乃至4のいずれかに記載のエンボス層損傷部分の補修方法。

【公開番号】特開2006−144233(P2006−144233A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331608(P2004−331608)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(597000906)東洋スポーツ施設株式会社 (6)
【Fターム(参考)】