弾性表面波を用いる微細気泡の発生方法および微細気泡発生装置
【課題】微細気泡の発生方法および微細気泡発生装置において、簡単かつ小型の機器構成で、液体の物性による制約が少なく広範囲の種類の液体に適用可能とし、微細気泡を安定的に発生可能とする。
【解決手段】本方法は、弾性表面波Wを励振するための複数の櫛歯状の電極21を表面Sに備えた圧電基板2を液体10中に配置し、電極21によって表面Sに弾性表面波Wを励振し、液体10中で表面Sを伝播する弾性表面波Wによって液体10中に微細気泡Bを発生させる。液体10中の圧電基板2の表面Sを伝播する弾性表面波Wによって微細気泡Bを発生させるので、旋回流を起して剪断力を発生させるために用いる高圧ポンプなどの機械的な動作を行う機器が不要であり、簡単かつ小型の機器構成で微細気泡を安定的に発生させることができる。
【解決手段】本方法は、弾性表面波Wを励振するための複数の櫛歯状の電極21を表面Sに備えた圧電基板2を液体10中に配置し、電極21によって表面Sに弾性表面波Wを励振し、液体10中で表面Sを伝播する弾性表面波Wによって液体10中に微細気泡Bを発生させる。液体10中の圧電基板2の表面Sを伝播する弾性表面波Wによって微細気泡Bを発生させるので、旋回流を起して剪断力を発生させるために用いる高圧ポンプなどの機械的な動作を行う機器が不要であり、簡単かつ小型の機器構成で微細気泡を安定的に発生させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロメートルまたはナノメートルオーダの微細気泡を発生する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気泡の直径がミクロン以下のナノメートルオーダという微細な気泡を発生させるために、気液混合流体に旋回流を起こし、液中に生じる剪断力によって液体に含まれる気体を細分化することが行われている。例えば、渦流ポンプからの気液混合流体を、円筒にその内周接線方向から供給し、円筒内での旋回中に気泡を微細化させる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、液体を電気分解してガス化しつつ、液体に超音波を印加することにより、そのガスから直径がナノメートルオーダの気泡を生成する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4118939号
【特許文献2】特許第4016099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような微細気泡の発生方法においては、液体を高圧化するためのポンプなどが必要であり機器の小型化が困難である。また、上述した特許文献2に示されるような微細気泡の発生方法においては、液体の電気分解に基づくので、電気分解処理の可能性の有無によって対象とする液体や気泡の種類が限定されるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単かつ小型の機器構成で、液体の物性による制約が少なく広範囲の種類の液体に適用でき、液体中に安定的に微細気泡を発生させることができる微細気泡の発生方法および微細気泡発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、弾性表面波を励振するための複数の電極からなる励振手段を表面に備えた圧電基板を液体中に配置し、前記励振手段によって前記表面に弾性表面波を励振し、液体中で前記表面を伝播する弾性表面波によって液体中に微細気泡を発生させるものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の微細気泡の発生方法において、前記表面は、少なくとも前記励振手段を覆うように絶縁体によって覆われているものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の微細気泡の発生方法において、前記圧電基板の板厚は、前記励振手段による弾性表面波が前記表面に対向する裏面を伝播する板厚とされているものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載の微細気泡の発生方法において、前記励振手段を前記表面と共に該表面に対向する裏面に備え、これら両面に弾性表面波を励振するものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の微細気泡の発生方法において、前記両面における弾性表面波は互いの位相が同相となるように励振するものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、弾性表面波によって発生させた微細気泡を衝撃波によって圧壊させることにより、さらに微細な気泡とするものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、前記圧電基板における微細気泡が発生する領域がその周辺に対して正電位とされているものである。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、前記圧電基板における微細気泡が発生する領域がその周辺に対して負電位とされているものである。
【0014】
請求項9の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、前記微細気泡を発生させる液体中に気体を供給することにより該気体を溶存させておくものである。
【0015】
請求項10の発明は、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、液体が平面視で円形状の液体容器に入れられているものである。
【0016】
請求項11の発明は、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、管状の構造材の内部を流れる液体中で微細気泡を発生させるものである。
【0017】
請求項12の発明は、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、液体を収容する液体容器の内壁面に前記圧電基板と前記励振手段を備えているものである。
【0018】
請求項13の発明は、液体中で弾性表面波を用いて微細気泡を発生させる微細気泡発生装置において、弾性表面波を励振するための複数の電極からなる励振手段を表面に備えた圧電基板と、前記圧電基板を液体中に保持する基板保持部と、を備え、前記励振手段に高周波電圧を印加することにより励振されて前記圧電基板に沿って液体中で伝播する弾性表面波によって液体中に微細気泡を発生させるものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、液体中の圧電基板の表面を伝播する弾性表面波によって微細気泡を発生させるので、旋回流を起して剪断力を発生させるために用いる高圧ポンプなどの機器が不要であり、簡単な構成により、小型の機器構成で、微細気泡を発生させることができる。また、ガス化のために液体を電気分解するということもないので、液体の物性による制約が少なく広範囲の種類の液体に適用して微細気泡を安定的に発生させることができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、励振手段を構成する電極が絶縁されるので、導電性の液体であっても、液体中に微細気泡を安定的に発生させることができる。また、電極間が短絡してしまう不測の事態を回避でき、操作性良く容易に微細気泡を発生させることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、表面と裏面の両面で微細気泡を発生でき、効率良く多くの微細気泡を発生させることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、圧電基板当たりの入力電力の上限値を高めることにより、より多くの電力を投入できるので、より多くの微細気泡を発生させることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、圧電基板における電界分布が表面と裏面とで互いに対称となり、電圧振動による基板の圧縮と伸長が表裏で協調して行われるので、励振手段に投入する電力を効率的に電気機械変換して機械的エネルギとし、弾性表面波を効率的により強く励振でき、より多くの微細気泡を発生させることができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、簡単な構成により、微細気泡をさらに微細な気泡とすることができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、液体中のマイナスイオン(OH−等)を圧電基板や微細気泡の表面に付着させることにより、その同種電荷間の反発力によって、圧電基板近傍から微細気泡を速やに離脱させることができ、また、各微細気泡を互いに離間せしめて微細気泡間の結合を阻止することができるので、結合太り(合体)による微細気泡の消失を抑制し、微細気泡の状態を安定に維持させ、効率的に微細気泡を発生させることができる。
【0026】
請求項8の発明によれば、液体中のプラスイオンによって、請求項7の発明と同様の効果が奏される。
【0027】
請求項9の発明によれば、所望の気体を液体中に溶存させることにより、所望の気体から成る微細気泡を効率的に発生させることができる。
【0028】
請求項10の発明によれば、円形状の液体容器の円周方向の液体の流れによって、圧電基板近傍から微細気泡を速やに離脱させ、また、各微細気泡を互いに離間させることができ、微細気泡間の結合を阻止して結合太りによる微細気泡の消失を抑制し、効率的に微細気泡を発生させることができる。なお、圧電基板を、平面視で液体容器の中心から外して配置することにより、円周方向の液体の流れを自然発生させることができる。円周方向の液体の流れが発生している状態では、液体容器の中心部における微細気泡を液体の運動によって圧壊させることができ、微細気泡をさらに微細にすることができる。
【0029】
請求項11の発明によれば、液体の流れによって、圧電基板近傍から微細気泡を速やに離脱させ、また、各微細気泡を互いに離間させることができるので、微細気泡間の結合を阻止して結合太りによる微細気泡の消失を抑制し、効率的に微細気泡を発生させることができる。また、液中の気泡数の密度が均一となる液体の流れを発生させることができる。このような微細気泡を含む液体流を、管状の構造材によって所望の場所まで導き、洗浄等の処理に使用することができる。
【0030】
請求項12の発明によれば、小型の機器構成で、微細気泡を発生させることができる。また、液体を流す管状の構造材によって液体を流しながら均一かつ大量の微細気泡を安定的に発生させることができる。
【0031】
請求項13の発明によれば、液体中に圧電基板を備えればよいので、簡単で小型の機器構成の微細気泡発生装置を提供することができる。また、ガス化のために液体を電気分解するということもないので、液体の物性による制約が少なく広範囲の種類の液体に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る微細気泡の発生方法を示す微細気泡発生装置の断面図。
【図2】同装置の斜視図。
【図3】同方法の手順を示すフローチャート。
【図4】同方法の変形例を示す装置断面図。
【図5】同方法の他の変形例を示す装置断面図。
【図6】同方法の更に他の変形例を示す装置断面図。
【図7】同方法の更に他の変形例を示す装置断面図。
【図8】同方法の更に他の変形例を示す装置断面図。
【図9】第2の実施形態に係る微細気泡の発生方法を示す装置断面図。
【図10】第3の実施形態に係る微細気泡の発生方法を示す装置断面図。
【図11】同方法の変形例を示す装置断面図。
【図12】第4の実施形態に係る微細気泡の発生方法を示す装置斜視図。
【図13】同装置の平面図。
【図14】(a)は同装置の変形例を示す平面図、(b)は同装置の他の変形例を示す平面図。
【図15】(a)は第5の実施形態に係る微細気泡の発生方法を示す装置斜視図、(b)は同装置の断面図。
【図16】(a)は第6の実施形態に係る微細気泡の発生方法を示す装置斜視図、(b)は同装置の断面図。
【図17】第4の実施形態の変形例を示す装置斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態に係る弾性表面波を用いる微細気泡の発生方法および微細気泡発生装置について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1、図2、図3は第1の実施形態について示す。図1、図2に示すように、微細気泡発生装置1は、弾性表面波Wを励振するための励振手段として複数の櫛歯状の電極21を表面Sに備えた圧電基板2を液体10中に配置した装置であり、電極21によって表面Sに弾性表面波Wを励振し、液体10中で表面Sを伝播する弾性表面波Wによって液体10中に微細気泡Bを発生させる。液体10は液体容器11に入れられている。以下、各構成を詳細説明する。
【0034】
圧電基板2は、長方形の板材であって、その長手方向が上下方向となるように基板保持部20によって液体10中に垂直に保持されている。圧電基板2は、例えば、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)のような圧電体そのものからなる基板である。また、圧電基板2は、非圧電基板の表面に圧電薄膜、例えば、PZT薄膜(鉛、ジルコニューム、チタン合金薄膜)を形成したものでもよく、その表面の圧電体薄膜の表面部分において、弾性表面波Wが励振される。従って、圧電基板2は、弾性表面波Wが励振される圧電体部分を表面に備えた基板であればよい。また、微細気泡発生装置1の圧電基板2として、その形状は、長方形に限らず、任意の形状とすることができる。また、表面Sは平面とは限らず任意の曲面とすることができる。圧電基板2は、一定厚みを有する板状とは限らず、任意形状であって、弾性表面波Wを伝播させる表面Sを備えるものであればよい。
【0035】
櫛歯状の電極21は、圧電基板2の表面Sに互いに異極となる2つの櫛形の電極を互いに噛み合わせて形成した電極(交差指電極、IDT:インター・ディジタル・トランスジューサ)である。電極21の互いに隣り合う櫛の歯は互いに異なる極性の電極に属し、励振する弾性表面波Wの波長の半分の長さのピッチで配列されている。電極21の互いに異極の電極間に高周波電圧印加用の電気回路Eから高周波(例えば、MHz帯)電圧を印加することにより、櫛形電極によって電気的エネルギが波の機械的エネルギに電気機械変換されて、圧電基板2の表面Sに弾性表面波Wが励振される。励振された弾性表面波Wの振幅は、電極21に印加する電圧の大きさで決まる。励振された弾性表面波Wの波束の長さは、電圧の印加時間の長さに対応する。電極21によって励振された弾性表面波Wは、一対の櫛形電極の歯が交差した幅に対応する幅の波となって、櫛の歯に垂直な方向xに伝播する。このような弾性表面波Wは、表面Sに存在する液体に対して、弾性表面波Wの伝播方向に移動させるような力を及ぼす性質がある。また、櫛形電極は、方向xの正負両方向に伝播する弾性表面波を生成するので、負方向に向かう弾性表面波を全反射させて有効利用する反射器を表面Sに備えてもよい。また振動の効率化と安定化のため定在波を発生させる目的で、圧電基板2の両面に共振および反射用の電極を設けてもよい。
【0036】
固体表面を伝播する弾性表面波Wは、超音波、例えば、ピエゾ素子等を用いて発生して固体や流体中を3次元的に伝播する超音波に比べて、容易に安定的に高い周波数の波動として励振することができる。この周波数が高く波長が短い弾性表面波Wを液体中に伝播させることにより、直径がミクロンオーダやサブミクロンからナノメータオーダの微細な気泡をその液体中に発生させることができる。微細気泡Bは、液体10中に溶存している気体から生成されると考えられる。そこで、液体中に微細気泡となるべき気体を予め過飽和に溶存させておき、その気体の微細気泡を発生させ易くしてもよい。例えば、図1に示すように、任意の気体を液体10中に供給するための気体導入管12を備え、気体導入管12によって導入した気体を液体10中に溶存させておく。すると、気体導入管12によって導入した気体を含む微細気泡Bを発生させることができる。導入する気体として、酸素やオゾンなど微細気泡化によって高機能を発揮するような単体ガスや、大気中の空気などを用いることができる。さらに、気体の溶存可能量を増やすために、保冷装置を備えて液体10を冷して、液体10の温度を低く維持するようにしてもよい。
【0037】
液体10は、水道水や純水などの水、さらに、アルコール等の有機溶剤、その他の任意の液体を用いることができる。ただし、電極21に絶縁保護を施していない場合には、液体10は電気絶縁性の液体に限られる。そこで、電極21の電気絶縁や圧電基板2の腐食防止のため、圧電基板2表面に絶縁層や保護層を設けてもよい。これらは弾性表面波Wの伝播損失を起こさないようにすることが望ましい。
【0038】
図3に示すように、単純な手順で微細気泡を発生させることができる。すなわち、圧電基板2を液体10中に配置して弾性表面波Wを励振し(#1)、液体中において弾性表面波Wを圧電基板2の表面Sに沿って伝播させる(#2)。すると、液体10中で伝播する弾性表面波Wによって、液体10中に微細気泡が発生する(#3)。以下、微細気泡を発生させる間、上記ステップ(#1〜#3)を繰り返せばよい。
【0039】
本実施形態によれば、液体10中の圧電基板2の表面Sを伝播する弾性表面波Wによって微細気泡Bを発生させるので、旋回流を起して剪断力を発生させるために用いる高圧ポンプなどの機器が不要であり、簡単な構成により、小型の機器構成で微細気泡Bを発生させることができる。また、ガス化のために液体を電気分解するということもないので、液体10に対する物性上の制約が少なく、広範囲の種類の液体に適用して微細気泡を安定的に発生させることができる。また、所望の気体を液体10中に溶存させることにより、所望の気体から成る微細気泡Bを効率的に発生させることができる。
【0040】
(第1の実施形態の変形例)
図4乃至図8は第1の実施形態の変形例を示す。図4に示すように、圧電基板2は、液体10中において、水平に設置することもできる。電極21は、圧電基板2の表面Sにおける中央に配置され、電極21から両側に伝播する弾性表面波Wによって微細気泡Bが発生される。なお、基板2の配置姿勢は、垂直(鉛直のこと)や水平に限られず、一般に任意の向きとすることができる。
【0041】
また、図5に示すように、圧電基板2は、その表面Sが、少なくとも電極21を覆うように絶縁体2aによって覆われているものとすることができる。絶縁体2aは、表面Sの全面を覆う必要はない。絶縁体2aは、硬い材料、つまり、弾性表面波Wが吸収されないような材料で構成される。このような絶縁体2aは、圧電基板2と同等の圧電材料、例えばLiNbO3(ニオブ酸リチウム)の薄板や、他の絶縁材料、例えばシリコン基板の薄板などを、表面Sに接合して表面Sに設けられる。また、薄板を接合する替わりに、表面S上にPZT等の圧電薄膜を形成して、絶縁体2aとすることができる。絶縁体2aの厚みが薄い場合には、その外表面を弾性表面波Wが伝播する。厚い場合には、下地の表面Sに沿って弾性表面波Wが伝播し、絶縁体2aが途切れて表面Sが露出した所、または、基板の端面における表面Sと絶縁体2aの界面が露出したところ(露頭)で、微細気泡Bが発生する。
【0042】
この変形例によれば、励振手段を構成する電極21が絶縁されるので、導電性の液体であっても、液体中に微細気泡を安定的に発生させることができる。また、絶縁体2aを備えているので、電極間が短絡してしまうという不測の事態を回避でき、操作性良く容易に微細気泡を発生させることができる。
【0043】
また、図6に示すように、圧電基板2の板厚は、電極21による弾性表面波Wが表面Sを伝播すると共に、表面Sに対向する裏面Srを弾性表面波Wrが伝播するように薄い板厚とすることができる。圧電基板2の厚みは、例えば、弾性表面波Wの波長の1/4よりも薄くすればよい。圧電基板2として、PZT等の圧電薄膜を用いることができる。このような薄い圧電基板2は、その周辺を額縁のように保持する周辺補強部を備えることにより、安定使用が可能な微細気泡発生装置1とすることができる。このようなダイヤフラム構造に形成した圧電基板は、シリコン基板などのエッチング技術などを用いて形成することができる。この変形例によれば、表面Sと裏面Srの両面で微細気泡Bを発生でき、効率良く多くの微細気泡Bを発生させることができる。
【0044】
また、図7に示すように、圧電基板2は、励振手段としての電極21を表面Sと共に表面Sに対向する裏面Srに備え、これら両面S,Srに弾性表面波W,Wrを励振するものとすることができる。この変形例は、図6に示したものとは異なり、圧電基板2の厚みを薄くする必要はなく、任意の厚みとすることができる。また、圧電基板2の両面の同極性の電極21を、圧電基板2を貫通するスルーホールによって接続することにより、高周波電圧印加用の電気回路Eとの接続配線を片面に集約することができる。このような変形例によれば、圧電基板当たりの入力電力の上限値を高めることにより、より多くの電力を投入できるので、入力電力の上限値を増加させて、より多くの微細気泡Bを発生させることができる。
【0045】
また、図8に示すように、圧電基板2の両面S,Srにそれぞれ電極21を設け、両面S,Srにおける弾性表面波W,Wrが互いに同相となるように励振するものとすることができる。この変形例も、図6に示したものとは異なり、圧電基板2の厚みを薄くする必要はなく、薄い方が好適であるが任意の厚みとすることができる。このような変形例によれば、圧電基板2における電界分布が表面Sと裏面Srとで互いに対称となり、電圧振動による圧電基板2の圧縮と伸長が表裏で協調して行われるので、電極21に投入する電力を効率的に波動の機械エネルギに電気機械変換でき、弾性表面波W,Wrを効率的に、より強く励振でき、より多くの微細気泡Bを発生させることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
図9は第2の実施形態について示す。本実施形態は、第1の実施形態において、圧電基板2の表面Sに対向する位置に衝撃波発生装置14を備えるものであり、弾性表面波Wによって発生させた微細気泡Bを、衝撃波発生装置14から発せられる衝撃波SWによって圧壊させ、微細気泡Bをさらに微細な気泡B1とする。衝撃波発生装置14は、微細気泡Bに対して衝撃波SWを照射できる装置であればよい。例えば、微細気泡Bを発生する圧電基板2そのものを衝撃波発生装置14の衝撃波発信源として兼用して衝撃波SWを発生させ、液体10中に衝撃波SWを伝播させるようにしてもよい。この場合、衝撃波発信源を別途設置しなくともよくなる。また、この兼用によっては衝撃波SWの十分な強度が得られない場合は、超音波発信器等を用いる衝撃波発生装置14を別途設けて、両者からの衝撃波を印加するようにしてもよい。本実施形態によれば、旋回流を起こす流体運動発生用の機器などを必要とせず、簡単な構成により、微細気泡Bをさらに微細な気泡B1とすることができる。衝撃波SWの伝播方向は、表面Sの正面方向とは限らず、上下左右斜めの任意の方向であって微細気泡Bに衝撃波SWを照射できる方向であればよい。また、衝撃波SWを特定焦点位置に集中するように発信面を曲面形成したり、複数の発信面毎に波の位相制御をするようにしてもよい。
【0047】
(第3の実施形態)
図10は第3の実施形態について示し、図11はその変形例を示す。本実施形態は、第1の実施形態において、図10に示すように、圧電基板2に正電圧を印加するようにしたものである。すなわち、圧電基板2から離間した液体中に対向電極15を設け、圧電基板2と対向電極15との間に直流電源Vからの電圧を印加して、圧電基板2における微細気泡Bが発生する領域を、その周辺に対して正電位となるようにしている。対向電極15(負電極)に対して、圧電基板2とその周辺に正電圧を印加するための圧電基板2側の正電極(不図示)は、金属等の一様な電位を持つ導電性の材質のものが望ましい。また、弾性表面波Wを伝播する圧電基板2の表面Sに正電極用の電極パターンを設けてもよい。この場合、部品点数の軽減を図ることができる。また、電極21を正電極として共用することができる。この場合、液体10に対して電極21が常に正電位となるように高周波電圧を印加すればよい。また、液体10は、例えば水の場合、純水ではなくイオンが多く含まれるような水道水や電解水が望ましい。なお、本実施形態における電極21は絶縁処理されているものである。
【0048】
本実施形態によれば、液体10中のマイナスイオン(例えば、OH−)を圧電基板2や微細気泡Bの表面に付着させることにより、その同種電荷間の反発力によって、圧電基板2近傍から微細気泡Bを速やに離脱させることができ、また、各微細気泡Bを互いに離間せしめて微細気泡B間の結合を阻止することができる。従って、微細気泡Bの結合太りによる微細気泡Bの消失を抑制でき、効率的に微細気泡Bを発生させ、微細気泡Bの状態を安定に維持させることができる。
【0049】
また、図11に示すように、圧電基板2に印加する電位を負電位とすることもできる。この場合、液体10中プラスイオンによって、上述同様の効果が奏される。圧電基板2を正電位とするか負電位とするかは、液体10や微細気泡Bの特性、微細気泡Bの適用分野(利用分野や目的)に応じて選択決定すればよい。
【0050】
(第4の実施形態)
図12、図13は第4の実施形態について示し、図14はその変形例を示す。本実施形態は、第1の実施形態において、図12に示すように、液体10が平面視で円形状の液体容器11に入れられているものである。液体容器11は、上面から見た際、その内周壁が真円に近い形状が望ましいが、楕円や矩形にC面処理、R面処理を施したような角のない回転流を発生し易い形状でもよい。圧電基板2は、このような液体容器11の中心から偏心した位置に配置されている。また、その表面Sは、液体容器11の直径方向に平行されており、微細気泡Bの発生方向(表面Sに垂直な方向)が円周方向とされている。このような配置構成のもとで発生された微細気泡Bは、液体容器11の内壁面に沿って移動し、液体容器11内の液体10が内壁面に沿った方向の運動量を受けて、液体容器11内に、円周方向の回転流(一種の対流)が発生する。また、円周方向に液体10の流れが発生することにより、液体容器11の中心部における微細気泡Bが液体10の運動によって圧壊してさらに微細な気泡となる。このような構成の微細気泡発生装置1では、例えば、液体容器11の下部中央から微細気泡Bを含む液体10を、矢印OUTで示すように導出して、その液体10を洗浄用途などに用いることができる。また、液体10の流出を補うために、、矢印INで示すように液体容器11の上方から適宜液体補給を行えばよい。なお、このような回転流を促進するために、積極的に、外部のモータによって回転するスターラなどを液体容器11内に備えたり、圧電基板2そのものを、例えば、微細気泡Bが離脱するように液体容器11の円周方向に沿って回転移動させたりしてもよい。
【0051】
本実施形態によれば、円形状の液体容器11の円周方向の液体10の流れによって、圧電基板2近傍から微細気泡Bを速やに離脱させ、また、各微細気泡Bを互いに離間させ分散させることができるので、微細気泡B間の結合を阻止して結合太りによる微細気泡Bの消失を抑制し、効率的に微細気泡Bを発生させることができる。
【0052】
図14(a)は、上述の図13における圧電基板2を平面視で液体容器11の直径方向から傾けて、液体の回転流に対して邪魔にならない配置としたものである。また、図14(b)は、図13における電極21の配置が表面S内で90゜回転されて、液体容器11の直径方向が弾性表面波の伝播方向とされている。これらの変形例においても、上記同様の効果を奏することができる。
【0053】
(第5の実施形態)
図15(a)(b)は第5の実施形態について示す。本実施形態は、管状の構造材5の内部を管方向に沿う矢印y方向に流れる液体10中で微細気泡Bを発生させるものである。管状の構造材5の内部に、第1の実施形態における圧電基板2と同様の圧電基板2が配置されている。圧電基板2において発生する微細気泡Bは、液体10の液流によって圧電基板2から順次離脱し、液流と共に流れて行く。y方向の液流は、位置エネルギによって発生するものでもよく、別途ポンプを設けてポンプによって発生するものでもよい。このとき、液体10中の微細気泡Bが、その利用目的に応じて適切な気泡数密度となるように、予め圧電基板2における弾性表面波の励振電力、励振周波数、励振用電極数、伝播面積、圧電基板そのものの数量など、微細気泡Bを生成する性能に関わる諸元を設定したり、使用中に変更したりすることができる。また、微細気泡Bが適切な粒子数密度となるように、液体10の流量を調節して変更するようにしてもよい。管状の構造材5は、断面が円形のパイプや四角形のパイプの他に、任意断面のパイプなどを用いることができる。
【0054】
本実施形態によれば、液体10の流れによって、圧電基板2近傍から微細気泡Bを速やに離脱させ、また、各微細気泡Bを互いに離間させることができるので、微細気泡B間の結合を阻止して結合太りによる微細気泡Bの消失を抑制し、効率的に微細気泡Bを発生させることができる。また、液体10中の微細気泡数の密度が均一となるように微細気泡Bを発生させることができる。このような微細気泡Bを含む液体10を、管状の構造材5によって所望の場所まで送液し、洗浄等の処理に使用することができる。
【0055】
(第6の実施形態)
図16(a)(b)は第6の実施形態について示す。本実施形態は、上述の第5の実施形態において、圧電基板2の配置構成を変更したものである。すなわち、圧電基板2および電極21が、管状の構造材5の内壁面に沿って設けられている。電極21を備えた圧電基板2は、別途形成したものを構造材5の内壁面に貼り付けてもよく、また、構造材5の内壁面に圧電性の薄膜を成膜し、その上に電極21を成膜して形成するものでもよい。本図に示した例では、電極21の各櫛歯の長手方向が管状の構造材5の軸方向に沿って設けられており、弾性表面波は構造材5の円周方向に伝播する。電極21の配置構成は、この構成に限らず、構造材5の内壁面における任意の向きや構造とすることができる。例えば、電極21の各櫛歯の長手方向を構造材5の円周方向とすることができ、この場合、弾性表面波は、構造材5の軸方向に沿って伝播する。本実施形態によれば、小型の機器構成で、液体を流しながら均一かつ大量の微細気泡を安定的に発生させることができる。
【0056】
図17はは上述の第4の実施形態の変形例を示し、上述の第6の実施形態と同様に圧電基板2と電極21を液体容器11の内壁面に設けたものである。本実施形態によれば、すなわち、液体容器11内に、その内部空間を占拠することなく、微細気泡を発生する構成を備えることができ、小型の機器構成で微細気泡Bを発生させることができる。
【0057】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。弾性表面波を用いる本発明の微細気泡の発生方法および微細気泡発生装置は、特に、気泡の直径がサブミクロンのナノメートルオーダの気泡を発生させるものであり、このような微細気泡を含む液体は、各種の洗浄液、加工や反応促進のための化学反応液、整理作用液などとして好適に用いることができる。例えば、加工後の機械部品、電子回路基板、シリコン基板等の各種半導体基板、食器などの洗浄液として用いることができる。また、圧電基板2は複数組み合わせて用いることができる。また、微細気泡Bは、より小さい気泡をより安定に効率よく発生させるために、微細気泡間の結合太りを防止することが有効であり、そのため気泡結合防止手段として、上述のように圧電基板2と液体10との間に相対流速を発生させたり、気泡を帯電させたりする手段が好適に用いられる。
【符号の説明】
【0058】
1 微細気泡発生装置
2 圧電基板
2a 絶縁体
5 管状の構造材(液体容器)
10 液体
11 液体容器
20 基板保持部
21 電極(励振手段)
B 微細気泡
S 表面
Sr 裏面
SW 衝撃波
W,Wr 弾性表面波
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロメートルまたはナノメートルオーダの微細気泡を発生する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気泡の直径がミクロン以下のナノメートルオーダという微細な気泡を発生させるために、気液混合流体に旋回流を起こし、液中に生じる剪断力によって液体に含まれる気体を細分化することが行われている。例えば、渦流ポンプからの気液混合流体を、円筒にその内周接線方向から供給し、円筒内での旋回中に気泡を微細化させる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、液体を電気分解してガス化しつつ、液体に超音波を印加することにより、そのガスから直径がナノメートルオーダの気泡を生成する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4118939号
【特許文献2】特許第4016099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような微細気泡の発生方法においては、液体を高圧化するためのポンプなどが必要であり機器の小型化が困難である。また、上述した特許文献2に示されるような微細気泡の発生方法においては、液体の電気分解に基づくので、電気分解処理の可能性の有無によって対象とする液体や気泡の種類が限定されるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単かつ小型の機器構成で、液体の物性による制約が少なく広範囲の種類の液体に適用でき、液体中に安定的に微細気泡を発生させることができる微細気泡の発生方法および微細気泡発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、弾性表面波を励振するための複数の電極からなる励振手段を表面に備えた圧電基板を液体中に配置し、前記励振手段によって前記表面に弾性表面波を励振し、液体中で前記表面を伝播する弾性表面波によって液体中に微細気泡を発生させるものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の微細気泡の発生方法において、前記表面は、少なくとも前記励振手段を覆うように絶縁体によって覆われているものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の微細気泡の発生方法において、前記圧電基板の板厚は、前記励振手段による弾性表面波が前記表面に対向する裏面を伝播する板厚とされているものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載の微細気泡の発生方法において、前記励振手段を前記表面と共に該表面に対向する裏面に備え、これら両面に弾性表面波を励振するものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の微細気泡の発生方法において、前記両面における弾性表面波は互いの位相が同相となるように励振するものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、弾性表面波によって発生させた微細気泡を衝撃波によって圧壊させることにより、さらに微細な気泡とするものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、前記圧電基板における微細気泡が発生する領域がその周辺に対して正電位とされているものである。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、前記圧電基板における微細気泡が発生する領域がその周辺に対して負電位とされているものである。
【0014】
請求項9の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、前記微細気泡を発生させる液体中に気体を供給することにより該気体を溶存させておくものである。
【0015】
請求項10の発明は、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、液体が平面視で円形状の液体容器に入れられているものである。
【0016】
請求項11の発明は、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、管状の構造材の内部を流れる液体中で微細気泡を発生させるものである。
【0017】
請求項12の発明は、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法において、液体を収容する液体容器の内壁面に前記圧電基板と前記励振手段を備えているものである。
【0018】
請求項13の発明は、液体中で弾性表面波を用いて微細気泡を発生させる微細気泡発生装置において、弾性表面波を励振するための複数の電極からなる励振手段を表面に備えた圧電基板と、前記圧電基板を液体中に保持する基板保持部と、を備え、前記励振手段に高周波電圧を印加することにより励振されて前記圧電基板に沿って液体中で伝播する弾性表面波によって液体中に微細気泡を発生させるものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、液体中の圧電基板の表面を伝播する弾性表面波によって微細気泡を発生させるので、旋回流を起して剪断力を発生させるために用いる高圧ポンプなどの機器が不要であり、簡単な構成により、小型の機器構成で、微細気泡を発生させることができる。また、ガス化のために液体を電気分解するということもないので、液体の物性による制約が少なく広範囲の種類の液体に適用して微細気泡を安定的に発生させることができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、励振手段を構成する電極が絶縁されるので、導電性の液体であっても、液体中に微細気泡を安定的に発生させることができる。また、電極間が短絡してしまう不測の事態を回避でき、操作性良く容易に微細気泡を発生させることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、表面と裏面の両面で微細気泡を発生でき、効率良く多くの微細気泡を発生させることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、圧電基板当たりの入力電力の上限値を高めることにより、より多くの電力を投入できるので、より多くの微細気泡を発生させることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、圧電基板における電界分布が表面と裏面とで互いに対称となり、電圧振動による基板の圧縮と伸長が表裏で協調して行われるので、励振手段に投入する電力を効率的に電気機械変換して機械的エネルギとし、弾性表面波を効率的により強く励振でき、より多くの微細気泡を発生させることができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、簡単な構成により、微細気泡をさらに微細な気泡とすることができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、液体中のマイナスイオン(OH−等)を圧電基板や微細気泡の表面に付着させることにより、その同種電荷間の反発力によって、圧電基板近傍から微細気泡を速やに離脱させることができ、また、各微細気泡を互いに離間せしめて微細気泡間の結合を阻止することができるので、結合太り(合体)による微細気泡の消失を抑制し、微細気泡の状態を安定に維持させ、効率的に微細気泡を発生させることができる。
【0026】
請求項8の発明によれば、液体中のプラスイオンによって、請求項7の発明と同様の効果が奏される。
【0027】
請求項9の発明によれば、所望の気体を液体中に溶存させることにより、所望の気体から成る微細気泡を効率的に発生させることができる。
【0028】
請求項10の発明によれば、円形状の液体容器の円周方向の液体の流れによって、圧電基板近傍から微細気泡を速やに離脱させ、また、各微細気泡を互いに離間させることができ、微細気泡間の結合を阻止して結合太りによる微細気泡の消失を抑制し、効率的に微細気泡を発生させることができる。なお、圧電基板を、平面視で液体容器の中心から外して配置することにより、円周方向の液体の流れを自然発生させることができる。円周方向の液体の流れが発生している状態では、液体容器の中心部における微細気泡を液体の運動によって圧壊させることができ、微細気泡をさらに微細にすることができる。
【0029】
請求項11の発明によれば、液体の流れによって、圧電基板近傍から微細気泡を速やに離脱させ、また、各微細気泡を互いに離間させることができるので、微細気泡間の結合を阻止して結合太りによる微細気泡の消失を抑制し、効率的に微細気泡を発生させることができる。また、液中の気泡数の密度が均一となる液体の流れを発生させることができる。このような微細気泡を含む液体流を、管状の構造材によって所望の場所まで導き、洗浄等の処理に使用することができる。
【0030】
請求項12の発明によれば、小型の機器構成で、微細気泡を発生させることができる。また、液体を流す管状の構造材によって液体を流しながら均一かつ大量の微細気泡を安定的に発生させることができる。
【0031】
請求項13の発明によれば、液体中に圧電基板を備えればよいので、簡単で小型の機器構成の微細気泡発生装置を提供することができる。また、ガス化のために液体を電気分解するということもないので、液体の物性による制約が少なく広範囲の種類の液体に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る微細気泡の発生方法を示す微細気泡発生装置の断面図。
【図2】同装置の斜視図。
【図3】同方法の手順を示すフローチャート。
【図4】同方法の変形例を示す装置断面図。
【図5】同方法の他の変形例を示す装置断面図。
【図6】同方法の更に他の変形例を示す装置断面図。
【図7】同方法の更に他の変形例を示す装置断面図。
【図8】同方法の更に他の変形例を示す装置断面図。
【図9】第2の実施形態に係る微細気泡の発生方法を示す装置断面図。
【図10】第3の実施形態に係る微細気泡の発生方法を示す装置断面図。
【図11】同方法の変形例を示す装置断面図。
【図12】第4の実施形態に係る微細気泡の発生方法を示す装置斜視図。
【図13】同装置の平面図。
【図14】(a)は同装置の変形例を示す平面図、(b)は同装置の他の変形例を示す平面図。
【図15】(a)は第5の実施形態に係る微細気泡の発生方法を示す装置斜視図、(b)は同装置の断面図。
【図16】(a)は第6の実施形態に係る微細気泡の発生方法を示す装置斜視図、(b)は同装置の断面図。
【図17】第4の実施形態の変形例を示す装置斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態に係る弾性表面波を用いる微細気泡の発生方法および微細気泡発生装置について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1、図2、図3は第1の実施形態について示す。図1、図2に示すように、微細気泡発生装置1は、弾性表面波Wを励振するための励振手段として複数の櫛歯状の電極21を表面Sに備えた圧電基板2を液体10中に配置した装置であり、電極21によって表面Sに弾性表面波Wを励振し、液体10中で表面Sを伝播する弾性表面波Wによって液体10中に微細気泡Bを発生させる。液体10は液体容器11に入れられている。以下、各構成を詳細説明する。
【0034】
圧電基板2は、長方形の板材であって、その長手方向が上下方向となるように基板保持部20によって液体10中に垂直に保持されている。圧電基板2は、例えば、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)のような圧電体そのものからなる基板である。また、圧電基板2は、非圧電基板の表面に圧電薄膜、例えば、PZT薄膜(鉛、ジルコニューム、チタン合金薄膜)を形成したものでもよく、その表面の圧電体薄膜の表面部分において、弾性表面波Wが励振される。従って、圧電基板2は、弾性表面波Wが励振される圧電体部分を表面に備えた基板であればよい。また、微細気泡発生装置1の圧電基板2として、その形状は、長方形に限らず、任意の形状とすることができる。また、表面Sは平面とは限らず任意の曲面とすることができる。圧電基板2は、一定厚みを有する板状とは限らず、任意形状であって、弾性表面波Wを伝播させる表面Sを備えるものであればよい。
【0035】
櫛歯状の電極21は、圧電基板2の表面Sに互いに異極となる2つの櫛形の電極を互いに噛み合わせて形成した電極(交差指電極、IDT:インター・ディジタル・トランスジューサ)である。電極21の互いに隣り合う櫛の歯は互いに異なる極性の電極に属し、励振する弾性表面波Wの波長の半分の長さのピッチで配列されている。電極21の互いに異極の電極間に高周波電圧印加用の電気回路Eから高周波(例えば、MHz帯)電圧を印加することにより、櫛形電極によって電気的エネルギが波の機械的エネルギに電気機械変換されて、圧電基板2の表面Sに弾性表面波Wが励振される。励振された弾性表面波Wの振幅は、電極21に印加する電圧の大きさで決まる。励振された弾性表面波Wの波束の長さは、電圧の印加時間の長さに対応する。電極21によって励振された弾性表面波Wは、一対の櫛形電極の歯が交差した幅に対応する幅の波となって、櫛の歯に垂直な方向xに伝播する。このような弾性表面波Wは、表面Sに存在する液体に対して、弾性表面波Wの伝播方向に移動させるような力を及ぼす性質がある。また、櫛形電極は、方向xの正負両方向に伝播する弾性表面波を生成するので、負方向に向かう弾性表面波を全反射させて有効利用する反射器を表面Sに備えてもよい。また振動の効率化と安定化のため定在波を発生させる目的で、圧電基板2の両面に共振および反射用の電極を設けてもよい。
【0036】
固体表面を伝播する弾性表面波Wは、超音波、例えば、ピエゾ素子等を用いて発生して固体や流体中を3次元的に伝播する超音波に比べて、容易に安定的に高い周波数の波動として励振することができる。この周波数が高く波長が短い弾性表面波Wを液体中に伝播させることにより、直径がミクロンオーダやサブミクロンからナノメータオーダの微細な気泡をその液体中に発生させることができる。微細気泡Bは、液体10中に溶存している気体から生成されると考えられる。そこで、液体中に微細気泡となるべき気体を予め過飽和に溶存させておき、その気体の微細気泡を発生させ易くしてもよい。例えば、図1に示すように、任意の気体を液体10中に供給するための気体導入管12を備え、気体導入管12によって導入した気体を液体10中に溶存させておく。すると、気体導入管12によって導入した気体を含む微細気泡Bを発生させることができる。導入する気体として、酸素やオゾンなど微細気泡化によって高機能を発揮するような単体ガスや、大気中の空気などを用いることができる。さらに、気体の溶存可能量を増やすために、保冷装置を備えて液体10を冷して、液体10の温度を低く維持するようにしてもよい。
【0037】
液体10は、水道水や純水などの水、さらに、アルコール等の有機溶剤、その他の任意の液体を用いることができる。ただし、電極21に絶縁保護を施していない場合には、液体10は電気絶縁性の液体に限られる。そこで、電極21の電気絶縁や圧電基板2の腐食防止のため、圧電基板2表面に絶縁層や保護層を設けてもよい。これらは弾性表面波Wの伝播損失を起こさないようにすることが望ましい。
【0038】
図3に示すように、単純な手順で微細気泡を発生させることができる。すなわち、圧電基板2を液体10中に配置して弾性表面波Wを励振し(#1)、液体中において弾性表面波Wを圧電基板2の表面Sに沿って伝播させる(#2)。すると、液体10中で伝播する弾性表面波Wによって、液体10中に微細気泡が発生する(#3)。以下、微細気泡を発生させる間、上記ステップ(#1〜#3)を繰り返せばよい。
【0039】
本実施形態によれば、液体10中の圧電基板2の表面Sを伝播する弾性表面波Wによって微細気泡Bを発生させるので、旋回流を起して剪断力を発生させるために用いる高圧ポンプなどの機器が不要であり、簡単な構成により、小型の機器構成で微細気泡Bを発生させることができる。また、ガス化のために液体を電気分解するということもないので、液体10に対する物性上の制約が少なく、広範囲の種類の液体に適用して微細気泡を安定的に発生させることができる。また、所望の気体を液体10中に溶存させることにより、所望の気体から成る微細気泡Bを効率的に発生させることができる。
【0040】
(第1の実施形態の変形例)
図4乃至図8は第1の実施形態の変形例を示す。図4に示すように、圧電基板2は、液体10中において、水平に設置することもできる。電極21は、圧電基板2の表面Sにおける中央に配置され、電極21から両側に伝播する弾性表面波Wによって微細気泡Bが発生される。なお、基板2の配置姿勢は、垂直(鉛直のこと)や水平に限られず、一般に任意の向きとすることができる。
【0041】
また、図5に示すように、圧電基板2は、その表面Sが、少なくとも電極21を覆うように絶縁体2aによって覆われているものとすることができる。絶縁体2aは、表面Sの全面を覆う必要はない。絶縁体2aは、硬い材料、つまり、弾性表面波Wが吸収されないような材料で構成される。このような絶縁体2aは、圧電基板2と同等の圧電材料、例えばLiNbO3(ニオブ酸リチウム)の薄板や、他の絶縁材料、例えばシリコン基板の薄板などを、表面Sに接合して表面Sに設けられる。また、薄板を接合する替わりに、表面S上にPZT等の圧電薄膜を形成して、絶縁体2aとすることができる。絶縁体2aの厚みが薄い場合には、その外表面を弾性表面波Wが伝播する。厚い場合には、下地の表面Sに沿って弾性表面波Wが伝播し、絶縁体2aが途切れて表面Sが露出した所、または、基板の端面における表面Sと絶縁体2aの界面が露出したところ(露頭)で、微細気泡Bが発生する。
【0042】
この変形例によれば、励振手段を構成する電極21が絶縁されるので、導電性の液体であっても、液体中に微細気泡を安定的に発生させることができる。また、絶縁体2aを備えているので、電極間が短絡してしまうという不測の事態を回避でき、操作性良く容易に微細気泡を発生させることができる。
【0043】
また、図6に示すように、圧電基板2の板厚は、電極21による弾性表面波Wが表面Sを伝播すると共に、表面Sに対向する裏面Srを弾性表面波Wrが伝播するように薄い板厚とすることができる。圧電基板2の厚みは、例えば、弾性表面波Wの波長の1/4よりも薄くすればよい。圧電基板2として、PZT等の圧電薄膜を用いることができる。このような薄い圧電基板2は、その周辺を額縁のように保持する周辺補強部を備えることにより、安定使用が可能な微細気泡発生装置1とすることができる。このようなダイヤフラム構造に形成した圧電基板は、シリコン基板などのエッチング技術などを用いて形成することができる。この変形例によれば、表面Sと裏面Srの両面で微細気泡Bを発生でき、効率良く多くの微細気泡Bを発生させることができる。
【0044】
また、図7に示すように、圧電基板2は、励振手段としての電極21を表面Sと共に表面Sに対向する裏面Srに備え、これら両面S,Srに弾性表面波W,Wrを励振するものとすることができる。この変形例は、図6に示したものとは異なり、圧電基板2の厚みを薄くする必要はなく、任意の厚みとすることができる。また、圧電基板2の両面の同極性の電極21を、圧電基板2を貫通するスルーホールによって接続することにより、高周波電圧印加用の電気回路Eとの接続配線を片面に集約することができる。このような変形例によれば、圧電基板当たりの入力電力の上限値を高めることにより、より多くの電力を投入できるので、入力電力の上限値を増加させて、より多くの微細気泡Bを発生させることができる。
【0045】
また、図8に示すように、圧電基板2の両面S,Srにそれぞれ電極21を設け、両面S,Srにおける弾性表面波W,Wrが互いに同相となるように励振するものとすることができる。この変形例も、図6に示したものとは異なり、圧電基板2の厚みを薄くする必要はなく、薄い方が好適であるが任意の厚みとすることができる。このような変形例によれば、圧電基板2における電界分布が表面Sと裏面Srとで互いに対称となり、電圧振動による圧電基板2の圧縮と伸長が表裏で協調して行われるので、電極21に投入する電力を効率的に波動の機械エネルギに電気機械変換でき、弾性表面波W,Wrを効率的に、より強く励振でき、より多くの微細気泡Bを発生させることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
図9は第2の実施形態について示す。本実施形態は、第1の実施形態において、圧電基板2の表面Sに対向する位置に衝撃波発生装置14を備えるものであり、弾性表面波Wによって発生させた微細気泡Bを、衝撃波発生装置14から発せられる衝撃波SWによって圧壊させ、微細気泡Bをさらに微細な気泡B1とする。衝撃波発生装置14は、微細気泡Bに対して衝撃波SWを照射できる装置であればよい。例えば、微細気泡Bを発生する圧電基板2そのものを衝撃波発生装置14の衝撃波発信源として兼用して衝撃波SWを発生させ、液体10中に衝撃波SWを伝播させるようにしてもよい。この場合、衝撃波発信源を別途設置しなくともよくなる。また、この兼用によっては衝撃波SWの十分な強度が得られない場合は、超音波発信器等を用いる衝撃波発生装置14を別途設けて、両者からの衝撃波を印加するようにしてもよい。本実施形態によれば、旋回流を起こす流体運動発生用の機器などを必要とせず、簡単な構成により、微細気泡Bをさらに微細な気泡B1とすることができる。衝撃波SWの伝播方向は、表面Sの正面方向とは限らず、上下左右斜めの任意の方向であって微細気泡Bに衝撃波SWを照射できる方向であればよい。また、衝撃波SWを特定焦点位置に集中するように発信面を曲面形成したり、複数の発信面毎に波の位相制御をするようにしてもよい。
【0047】
(第3の実施形態)
図10は第3の実施形態について示し、図11はその変形例を示す。本実施形態は、第1の実施形態において、図10に示すように、圧電基板2に正電圧を印加するようにしたものである。すなわち、圧電基板2から離間した液体中に対向電極15を設け、圧電基板2と対向電極15との間に直流電源Vからの電圧を印加して、圧電基板2における微細気泡Bが発生する領域を、その周辺に対して正電位となるようにしている。対向電極15(負電極)に対して、圧電基板2とその周辺に正電圧を印加するための圧電基板2側の正電極(不図示)は、金属等の一様な電位を持つ導電性の材質のものが望ましい。また、弾性表面波Wを伝播する圧電基板2の表面Sに正電極用の電極パターンを設けてもよい。この場合、部品点数の軽減を図ることができる。また、電極21を正電極として共用することができる。この場合、液体10に対して電極21が常に正電位となるように高周波電圧を印加すればよい。また、液体10は、例えば水の場合、純水ではなくイオンが多く含まれるような水道水や電解水が望ましい。なお、本実施形態における電極21は絶縁処理されているものである。
【0048】
本実施形態によれば、液体10中のマイナスイオン(例えば、OH−)を圧電基板2や微細気泡Bの表面に付着させることにより、その同種電荷間の反発力によって、圧電基板2近傍から微細気泡Bを速やに離脱させることができ、また、各微細気泡Bを互いに離間せしめて微細気泡B間の結合を阻止することができる。従って、微細気泡Bの結合太りによる微細気泡Bの消失を抑制でき、効率的に微細気泡Bを発生させ、微細気泡Bの状態を安定に維持させることができる。
【0049】
また、図11に示すように、圧電基板2に印加する電位を負電位とすることもできる。この場合、液体10中プラスイオンによって、上述同様の効果が奏される。圧電基板2を正電位とするか負電位とするかは、液体10や微細気泡Bの特性、微細気泡Bの適用分野(利用分野や目的)に応じて選択決定すればよい。
【0050】
(第4の実施形態)
図12、図13は第4の実施形態について示し、図14はその変形例を示す。本実施形態は、第1の実施形態において、図12に示すように、液体10が平面視で円形状の液体容器11に入れられているものである。液体容器11は、上面から見た際、その内周壁が真円に近い形状が望ましいが、楕円や矩形にC面処理、R面処理を施したような角のない回転流を発生し易い形状でもよい。圧電基板2は、このような液体容器11の中心から偏心した位置に配置されている。また、その表面Sは、液体容器11の直径方向に平行されており、微細気泡Bの発生方向(表面Sに垂直な方向)が円周方向とされている。このような配置構成のもとで発生された微細気泡Bは、液体容器11の内壁面に沿って移動し、液体容器11内の液体10が内壁面に沿った方向の運動量を受けて、液体容器11内に、円周方向の回転流(一種の対流)が発生する。また、円周方向に液体10の流れが発生することにより、液体容器11の中心部における微細気泡Bが液体10の運動によって圧壊してさらに微細な気泡となる。このような構成の微細気泡発生装置1では、例えば、液体容器11の下部中央から微細気泡Bを含む液体10を、矢印OUTで示すように導出して、その液体10を洗浄用途などに用いることができる。また、液体10の流出を補うために、、矢印INで示すように液体容器11の上方から適宜液体補給を行えばよい。なお、このような回転流を促進するために、積極的に、外部のモータによって回転するスターラなどを液体容器11内に備えたり、圧電基板2そのものを、例えば、微細気泡Bが離脱するように液体容器11の円周方向に沿って回転移動させたりしてもよい。
【0051】
本実施形態によれば、円形状の液体容器11の円周方向の液体10の流れによって、圧電基板2近傍から微細気泡Bを速やに離脱させ、また、各微細気泡Bを互いに離間させ分散させることができるので、微細気泡B間の結合を阻止して結合太りによる微細気泡Bの消失を抑制し、効率的に微細気泡Bを発生させることができる。
【0052】
図14(a)は、上述の図13における圧電基板2を平面視で液体容器11の直径方向から傾けて、液体の回転流に対して邪魔にならない配置としたものである。また、図14(b)は、図13における電極21の配置が表面S内で90゜回転されて、液体容器11の直径方向が弾性表面波の伝播方向とされている。これらの変形例においても、上記同様の効果を奏することができる。
【0053】
(第5の実施形態)
図15(a)(b)は第5の実施形態について示す。本実施形態は、管状の構造材5の内部を管方向に沿う矢印y方向に流れる液体10中で微細気泡Bを発生させるものである。管状の構造材5の内部に、第1の実施形態における圧電基板2と同様の圧電基板2が配置されている。圧電基板2において発生する微細気泡Bは、液体10の液流によって圧電基板2から順次離脱し、液流と共に流れて行く。y方向の液流は、位置エネルギによって発生するものでもよく、別途ポンプを設けてポンプによって発生するものでもよい。このとき、液体10中の微細気泡Bが、その利用目的に応じて適切な気泡数密度となるように、予め圧電基板2における弾性表面波の励振電力、励振周波数、励振用電極数、伝播面積、圧電基板そのものの数量など、微細気泡Bを生成する性能に関わる諸元を設定したり、使用中に変更したりすることができる。また、微細気泡Bが適切な粒子数密度となるように、液体10の流量を調節して変更するようにしてもよい。管状の構造材5は、断面が円形のパイプや四角形のパイプの他に、任意断面のパイプなどを用いることができる。
【0054】
本実施形態によれば、液体10の流れによって、圧電基板2近傍から微細気泡Bを速やに離脱させ、また、各微細気泡Bを互いに離間させることができるので、微細気泡B間の結合を阻止して結合太りによる微細気泡Bの消失を抑制し、効率的に微細気泡Bを発生させることができる。また、液体10中の微細気泡数の密度が均一となるように微細気泡Bを発生させることができる。このような微細気泡Bを含む液体10を、管状の構造材5によって所望の場所まで送液し、洗浄等の処理に使用することができる。
【0055】
(第6の実施形態)
図16(a)(b)は第6の実施形態について示す。本実施形態は、上述の第5の実施形態において、圧電基板2の配置構成を変更したものである。すなわち、圧電基板2および電極21が、管状の構造材5の内壁面に沿って設けられている。電極21を備えた圧電基板2は、別途形成したものを構造材5の内壁面に貼り付けてもよく、また、構造材5の内壁面に圧電性の薄膜を成膜し、その上に電極21を成膜して形成するものでもよい。本図に示した例では、電極21の各櫛歯の長手方向が管状の構造材5の軸方向に沿って設けられており、弾性表面波は構造材5の円周方向に伝播する。電極21の配置構成は、この構成に限らず、構造材5の内壁面における任意の向きや構造とすることができる。例えば、電極21の各櫛歯の長手方向を構造材5の円周方向とすることができ、この場合、弾性表面波は、構造材5の軸方向に沿って伝播する。本実施形態によれば、小型の機器構成で、液体を流しながら均一かつ大量の微細気泡を安定的に発生させることができる。
【0056】
図17はは上述の第4の実施形態の変形例を示し、上述の第6の実施形態と同様に圧電基板2と電極21を液体容器11の内壁面に設けたものである。本実施形態によれば、すなわち、液体容器11内に、その内部空間を占拠することなく、微細気泡を発生する構成を備えることができ、小型の機器構成で微細気泡Bを発生させることができる。
【0057】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。弾性表面波を用いる本発明の微細気泡の発生方法および微細気泡発生装置は、特に、気泡の直径がサブミクロンのナノメートルオーダの気泡を発生させるものであり、このような微細気泡を含む液体は、各種の洗浄液、加工や反応促進のための化学反応液、整理作用液などとして好適に用いることができる。例えば、加工後の機械部品、電子回路基板、シリコン基板等の各種半導体基板、食器などの洗浄液として用いることができる。また、圧電基板2は複数組み合わせて用いることができる。また、微細気泡Bは、より小さい気泡をより安定に効率よく発生させるために、微細気泡間の結合太りを防止することが有効であり、そのため気泡結合防止手段として、上述のように圧電基板2と液体10との間に相対流速を発生させたり、気泡を帯電させたりする手段が好適に用いられる。
【符号の説明】
【0058】
1 微細気泡発生装置
2 圧電基板
2a 絶縁体
5 管状の構造材(液体容器)
10 液体
11 液体容器
20 基板保持部
21 電極(励振手段)
B 微細気泡
S 表面
Sr 裏面
SW 衝撃波
W,Wr 弾性表面波
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性表面波を励振するための複数の電極からなる励振手段を表面に備えた圧電基板を液体中に配置し、
前記励振手段によって前記表面に弾性表面波を励振し、
液体中で前記表面を伝播する弾性表面波によって液体中に微細気泡を発生させることを特徴とする微細気泡の発生方法。
【請求項2】
前記表面は、少なくとも前記励振手段を覆うように絶縁体によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項3】
前記圧電基板の板厚は、前記励振手段による弾性表面波が前記表面に対向する裏面を伝播する板厚とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項4】
前記励振手段を前記表面と共に該表面に対向する裏面に備え、これら両面に弾性表面波を励振することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項5】
前記両面における弾性表面波は互いの位相が同相となるように励振することを特徴とする請求項4に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項6】
弾性表面波によって発生させた微細気泡を衝撃波によって圧壊させることにより、さらに微細な気泡とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項7】
前記圧電基板における微細気泡が発生する領域がその周辺に対して正電位とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項8】
前記圧電基板における微細気泡が発生する領域がその周辺に対して負電位とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項9】
前記微細気泡を発生させる液体中に気体を供給することにより該気体を溶存させておくことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項10】
液体が平面視で円形状の液体容器に入れられていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項11】
管状の構造材の内部を流れる液体中で微細気泡を発生させることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項12】
液体を収容する液体容器の内壁面に前記圧電基板と前記励振手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項13】
液体中で弾性表面波を用いて微細気泡を発生させる微細気泡発生装置において、
弾性表面波を励振するための複数の電極からなる励振手段を表面に備えた圧電基板と、
前記圧電基板を液体中に保持する基板保持部と、を備え、
前記励振手段に高周波電圧を印加することにより励振されて前記圧電基板に沿って液体中で伝播する弾性表面波によって液体中に微細気泡を発生させることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項1】
弾性表面波を励振するための複数の電極からなる励振手段を表面に備えた圧電基板を液体中に配置し、
前記励振手段によって前記表面に弾性表面波を励振し、
液体中で前記表面を伝播する弾性表面波によって液体中に微細気泡を発生させることを特徴とする微細気泡の発生方法。
【請求項2】
前記表面は、少なくとも前記励振手段を覆うように絶縁体によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項3】
前記圧電基板の板厚は、前記励振手段による弾性表面波が前記表面に対向する裏面を伝播する板厚とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項4】
前記励振手段を前記表面と共に該表面に対向する裏面に備え、これら両面に弾性表面波を励振することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項5】
前記両面における弾性表面波は互いの位相が同相となるように励振することを特徴とする請求項4に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項6】
弾性表面波によって発生させた微細気泡を衝撃波によって圧壊させることにより、さらに微細な気泡とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項7】
前記圧電基板における微細気泡が発生する領域がその周辺に対して正電位とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項8】
前記圧電基板における微細気泡が発生する領域がその周辺に対して負電位とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項9】
前記微細気泡を発生させる液体中に気体を供給することにより該気体を溶存させておくことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項10】
液体が平面視で円形状の液体容器に入れられていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項11】
管状の構造材の内部を流れる液体中で微細気泡を発生させることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項12】
液体を収容する液体容器の内壁面に前記圧電基板と前記励振手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の微細気泡の発生方法。
【請求項13】
液体中で弾性表面波を用いて微細気泡を発生させる微細気泡発生装置において、
弾性表面波を励振するための複数の電極からなる励振手段を表面に備えた圧電基板と、
前記圧電基板を液体中に保持する基板保持部と、を備え、
前記励振手段に高周波電圧を印加することにより励振されて前記圧電基板に沿って液体中で伝播する弾性表面波によって液体中に微細気泡を発生させることを特徴とする微細気泡発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−579(P2011−579A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148118(P2009−148118)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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