説明

弾性表面波装置

【課題】SAW素子をFCB実装するSAW装置の信頼性を高める。特にバンプ接合部近傍での圧電基板やIDT電極膜の割れを防ぐ。
【解決手段】単結晶圧電基板の表面にIDT電極を備えかつ金属バンプを介してベース基板上にFCB実装されたSAW素子を1以上含むSAW装置で、IDT電極は、単結晶圧電基板上に順次積層した窒化チタン又はチタンからなる下地層とAl層とを含む積層膜により形成されかつ、単結晶圧電基板は46°以上の回転Y‐X伝搬タンタル酸リチウム基板である。単結晶圧電基板は、64°回転Y‐X伝搬ニオブ酸リチウム基板でも良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波装置に係り、特に、金属バンプを介してフリップチップ実装される弾性表面波素子の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電効果によって発生する弾性表面波(Surface Acoustic Wave/以下、SAWということがある)を利用するSAW装置は、小型軽量で高機能化に適することから、共振器やフィルタ、デュプレクサ等として近年広く使用されている。
【0003】
かかるSAW装置は、一般に、タンタル酸リチウム(LiTaO3)やニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電性を有する単結晶基板の表面に弾性表面波を励振する複数の交差指状電極(インターデジタルトランスデューサ:Interdigital Transducer/以下、IDTということがある)を設けたチップ状のSAW素子を形成し、これをベース基板上に搭載して気密封止することにより構成される。
【0004】
また、このようなSAW装置を開示するものとして下記特許文献がある。
【0005】
【特許文献1】特開2003‐101372号公報
【特許文献2】WO99/16168号公報
【特許文献3】特開2005‐039676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、SAW装置の一つである例えばアンテナデュプレクサは、携帯電話機のRF部(高周波部)に備えられ、送信増幅器の後段に位置して大きな電力が印加されるため高い耐電力性能が要求される。
【0007】
このため、上記特許文献1(特開2003‐101372)では、IDTを形成する電極材料としてエピタキシャル成長させたアルミニウム単結晶膜を使用し、耐電力性を向上させている。また、このようなエピタキシャルアルミニウムによる電極膜を形成するには単結晶圧電基板の格子に整合させるバッファ層(下地層)が必要となるため、同文献では圧電基板上に窒化チタンからなる下地膜を設け、その上にアルミニウム単結晶膜を形成する。また上記特許文献2(WO99/16168)並びに特許文献3(特開2005‐39676)でも同様に、タンタル酸リチウム又はニオブ酸リチウム基板上に窒化チタン又はチタンからなるバッファ層を設け、その上にアルミニウム単結晶膜を形成している。
【0008】
一方、異なる材料の単結晶下地層の上に薄膜をエピタキシャル成長させる場合、格子の整合は薄膜の欠陥(例えば点欠陥や積層欠陥、転位、双晶など)により緩和されることが一般的に知られている。しかしながら、エピタキシャル膜として安定に存在することは可能ではあるものの、欠陥が形成されるまでには薄膜内に大きな内部応力が生じる。したがって成膜後ひとたび外部から応力が加わると、エピタキシャル薄膜自身が破壊されるか、あるいは下地層が破壊されることによりデバイスとしての機能が失われる損傷が生じる可能性がある。
【0009】
このような格子の不整合による薄膜破壊は、SAWチップをワイヤボンディングしていた旧来の実装構造では問題とはならなかった。ところが、SAW装置の小型薄型化の要請からベース基板へのSAWチップの実装は、旧来のダイボンディングやワイヤボンディング方式から、ワイヤを張る面積・高さが不要なフリップチップボンディング(以下、FCBということがある)方式に移行しつつある。
【0010】
FCB実装は、例えば金バンプを金めっきしたベース基板に超音波を併用して熱圧着することにより行われるが、実装にあたっては、単結晶圧電基板上にエピタキシャルアルミニウム電極を形成したSAWチップをベース基板の接続パッドに対して電気的に接続すると同時に、当該チップをベース基板上に機械的に保持する必要がある。SAWチップをベース基板上に機械的に保持するには、製品にかかる衝撃力やハンダリフロー時の熱的な衝撃にも耐え得る強度が必要となる。しかも、SAWチップ上のエピタキシャル膜には、前に述べたように格子の不整合によりそれ自身に大きな内部応力が内在し、この内部応力のほかに上記衝撃(製品への衝撃やハンダリフロー時の熱的衝撃)が加わることとなる。
【0011】
本発明者が多数のSAW装置のサンプルを作製し実験検討したところ、金バンプが形成された圧電基板領域やその周辺領域あるいはIDT電極膜に亀裂(割れ)が認められることがあり、このような欠陥は上述したような内部応力が原因であると考えられる。そして、このような亀裂の発生は当該SAW装置の電気特性の劣化や断線不良の原因ともなり得ることから、SAW装置の信頼性を損なうおそれがある。
【0012】
したがって、本発明の目的は、かかる問題を解決し、SAW素子をFCB実装するSAW装置の信頼性をより一層向上させる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明の第一の弾性表面波装置は、単結晶圧電基板の表面に交差指状電極を備えかつ金属バンプを介してベース基板上にフリップチップ実装された弾性表面波素子を1以上含む弾性表面波装置であって、前記交差指状電極は、前記単結晶圧電基板上に順次積層した窒化チタン又はチタンからなる下地層とアルミニウム層とを含む積層膜により形成され、かつ前記単結晶圧電基板は、46°以上の回転カット角を有するYカットX伝搬タンタル酸リチウム基板である。
【0014】
また本発明の第二の弾性表面波装置は、単結晶圧電基板の表面に交差指状電極を備えかつ金属バンプを介してベース基板上にフリップチップ実装された弾性表面波素子を1以上含む弾性表面波装置であって、前記交差指状電極は、前記単結晶圧電基板上に順次積層した窒化チタン又はチタンからなる下地層とアルミニウム層とを含む積層膜により形成され、かつ前記単結晶圧電基板は、64°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。
【0015】
SAW素子をFCB実装した場合にエピタキシャル膜の格子の不整合が大きな薄膜の内部応力を発生させ、これに機械的あるいは熱的な衝撃が加わってエピタキシャル膜の破壊や下地単結晶圧電基板の破壊などを生じさせ、SAW装置のデバイスとしての機能が損なわれる損傷が生じ得ることは既に述べたとおりである。本発明者は、このような問題を解決する方法を種々検討した結果、SAW素子を構成する圧電基板として特定高カットの基板を使用することが有利であることを見出した。
【0016】
具体的には、図1から図6は単結晶圧電基板上に形成したアルミニウムエピタキシャル膜のX線回折による極点図であり、図1から図5はY軸をそれぞれ36°、39°、46°、48°および52°回転した新たなY′軸に垂直に切り出したLiTaO3単結晶圧電基板上にバッファ層(TiN薄膜)を設けてその上にエピタキシャル成長させたアルミニウム(111)の極点図であり、図6はY軸を64°回転した新たなY′軸に垂直に切り出したLiNbO3単結晶圧電基板上に同様にバッファ層(TiN薄膜)を設けてその上にエピタキシャル成長させたアルミニウム(111)の極点図である。尚、当該TiN薄膜やアルミニウムエピタキシャル膜の詳細な成膜条件等については、後の実施例の説明において述べる。
【0017】
これらの図において、A点はアルミニウム(111)の信号である。一方、B点はアルミニウム以外の信号である。このB点はTiN薄膜やアルミニウム膜を成膜する前の単結晶圧電基板にも観察されるものであり、この位置は単結晶圧電基板のZ軸面の方向に一致する。これら極点図から分かるように、単結晶圧電基板からの信号の位置と、アルミニウム(111)の位置の差が単結晶圧電基板のY軸を回転させて、新たなY´軸に垂直に切り出したY軸の回転角(カット角)によって異なっている。つまり、圧電基板のカット角36°〜52°により、格子の不整合が異なることが考えられる。不整合の差はエピタキシャル膜の内部応力の差となり、この内部応力の差がフリップチップ接合強度の差を生じさせ、SAW装置の信頼性を低下させる原因となることが予想される。
【0018】
エピタキシャル膜の格子の不整合による内部応力は次のように説明されている。エピタキシャル膜の原子は、下地単結晶基板表面の原子の配列によるポテンシャルが低い位置に配列される。この配列で定まる位置は、エピタキシャル膜材料の格子定数とは異なり、エピタキシャル膜の原子配列に歪が発生する。下地単結晶基板の格子定数とエピタキシャル膜の格子定数の不整合が大きいほど、膜の歪が大きくなり、結果として膜の内部応力を増大させている。
【0019】
TiN薄膜(バッファ層)によりアルミニウム(111)面は、下地単結晶圧電基板のZ軸面に平行にエピタキシャル成長する。Z軸面が基板表面に平行なほど格子の不整合は少なく、内部応力は低いと考えられる。また、単結晶圧電基板のカット角が大きくなれば、Z軸面と基板表面のなす角は小さくなる。上記極点図の観察から、圧電基板のカット角を大きくするほど圧電基板のZ軸面の信号位置B点における仰角とアルミニウム(111)の信号位置A点における仰角の角度範囲が近づき、カット角46°では圧電基板のZ軸面の仰角とアルミニウム(111)の仰角範囲が10°以内の差である。したがって、カット角が46°以上(LiTaO3基板の場合例えば46°〜52°,LiNbO3基板の場合64°)になるほど単結晶圧電基板とアルミニウムの格子の不整合は少なくなり、内部応力は小さくなると考えられる。尚、これらのカット角を有する圧電基板を使用したサンプルを多数作製して基板割れの状態を観察した結果について、後の実施例の説明において述べる。
【0020】
したがって本発明では、上述のようにSAW素子を構成するため使用する単結晶圧電基板として、46°以上(特に46°以上52°以下)の回転カット角を有するYカットX伝搬タンタル酸リチウム基板または64°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板を用いる。そして、当該圧電基板上に窒化チタン又はチタンからなる下地層(バッファ層)を設け、その上にアルミニウム薄膜を設けることによりIDT電極を形成する。これにより、当該SAW素子をベース基板上にFCB実装してSAW装置を製造した場合に、バンプ接合部近傍の圧電基板やIDT電極膜等に亀裂や割れが発生することを防ぎ、当該SAW装置の信頼性を向上させることが出来る。
【0021】
また、本発明によれば、従来の一手法のように耐電力性を向上させるため電極材料に添加物(例えばCuやTi等)を混入した合金を使用することなく、純アルミニウムによって電極膜を形成しつつ耐電力性を高めることが出来るから、IDT電極が腐食しやすくなったりあるいは電気抵抗が増大するなどの問題を回避し、挿入損失が小さく良好な電気特性と耐腐食性を備えたSAW装置を作製することが可能となる。さらに本発明では、IDT電極のアルミニウム層を単結晶構造または双晶構造とすることが望ましい。これにより電気抵抗が小さく低損失・高効率で長寿命のSAW装置を実現することが出来る。
【0022】
尚、本発明は、高い耐電力性を求められるSAWデュプレクサに好ましく適用できるものであるが、これに限定されず、例えばバンドパスフィルタやローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等の各種SAWフィルタ、トリプレクサその他、弾性表面波を利用するSAW素子を1つ以上含む様々なSAW装置に対し本発明は適用可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、FCB実装によりSAW素子を基板上に搭載して構成するSAW装置の信頼性を向上させることが出来る。
【0024】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の本発明の実施の形態および実施例の説明により明らかにする。尚、本発明はこれら実施形態および実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図7は、本発明の一実施形態に係るSAW装置を示すものである。同図に示すようにこのSAW装置11は、ベース基板25の表面にSAW素子21を搭載し、当該SAW素子21を実装したベース基板25の表面を蓋体31により気密封止したものである。ベース基板25へのSAW素子21の搭載は、フェースダウンによるFCB実装により行う。すなわち、SAW素子21側に形成した接続用の電極22と、ベース基板25上に設けた接続パッド26とを金属バンプ(例えばAuバンプ)23を介して接合することにより、SAW素子21を電気的および機械的にベース基板25に対し接続する。尚、例えばデュプレクサを構成する場合には、SAW素子21として、互いに中心周波数の異なる2つのSAW素子(送信用SAW素子と受信用SAW素子)をベース基板25上に設ける。
【0026】
SAW素子21は、46°回転Y‐X伝搬LiTaO3単結晶圧電基板の表面にバッファ層としてTiN(又はTi)からなる薄膜をエピタキシャル成長により形成した後、その上に更にAl薄膜をエピタキシャル成長させることによって電極膜を形成し、当該電極膜をフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術を用いてパターニングすることによりIDTを形成する。
【0027】
尚、上記圧電基板は、46°から52°のいずれかのカット角を有するLiTaO3単結晶圧電基板であっても良く、64°回転Y‐X伝搬LiNbO3単結晶圧電基板を使用することも可能である。これらのカット角の単結晶圧電基板を用いることで、単結晶圧電基板と電極膜(Al薄膜)間の結晶格子の不整合が少なくなり、内部応力を小さく抑えて圧電基板やIDT電極部の割れを防ぐことが出来る。また上記Al薄膜は、高い耐電力性を実現するために単結晶構造を備えるものとすることが望ましいが、完全な単結晶構造でなくても(例えば双晶構造や結晶粒界の少ない多結晶構造等となっていても)良い。
【0028】
上記電極膜を形成した圧電基板の表面には、当該SAW素子21をベース基板25にFCB実装するための複数の接続パッド22を形成する。これらの接続パッド22は、例えばCr(クロム)薄膜とAl薄膜をこの順に積層成膜し、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術を用いて所定数の接続パッドを形成する。そして、これら接続パッド22にAuボールを超音波接合することによりFCB実装用の金属バンプ23を形成する。尚、上記SAW素子21(IDT、接続パッド)の形成にあたっては、1枚の圧電ウエハ上に複数のSAW素子を同時に形成し、これら形成した各素子をダイシングによりチップ状に分割して個々のSAW素子とすれば良い。
【0029】
ベース基板25は、樹脂、セラミック又は樹脂にフィラー等を混合した複合材料からなる基板等のいずれであっても良く、構成材料は特に問わない。ベース基板25の底面(SAW素子21の実装面と反対側)には、外部接続用の端子(図示せず)を設ける。更に、ベース基板25の上面や底面、内部の配線層には、各種の素子や配線、グランド電極等を設けることが可能である。また、蓋体31は、SAW素子21を取り囲むようにベース基板25上に設けられSAW素子21の収容空間を形成する枠体(所謂ダム)32と、枠体32の上に載せられて前記収納空間の上面を塞ぐ天板33とからなり、ベース基板25上に実装されたSAW素子21を気密封止する。
【実施例1】
【0030】
以下、本発明の実施例につき説明する。
【0031】
36°、39°、46°、48°および52°の各回転Y‐X伝搬LiTaO3単結晶圧電基板を純水ブラシ洗浄器で洗浄し、当該基板の表面にTiN膜とAl膜とをスパッタリング装置によりTiN、Alの順に成膜する。このとき成膜条件として、TiN膜は、金属Tiターゲットを用い、ArとN2 を50:50の比率のガスで圧力0.5Paとなるように流量を調整し、ターゲットに加える電力をDC0.2kW、パワー密度で約0.1W/cm2となるように制御し、TiN膜を4nmの厚さに形成した。TiN膜を形成した上記4種類の単結晶圧電基板を、真空のままAl成膜室へ搬送しAl膜を成膜した。Al膜の成膜条件としては、純度6NのAlターゲットを用い、Arガスで0.5Paとなるように流量を調整し、ターゲットに加える電力をDC2kW、パワー密度で約1W/cm2となるように制御した。
【0032】
そして成膜したAl膜の結晶性をX線回折により評価した。その結果が前記図1から図5に示した各極点図である(図1:36°,図2:39°,図3:46°,図4:48°,図5:52°)。また、64°回転Y‐X伝搬LiNbO3単結晶圧電基板についても同様にTiN膜とAl膜とを成膜し、Al膜の結晶性をX線回折により評価した。その結果が前記図6に示した極点図である。
【0033】
このようにして形成したエピタキシャルAl膜とTiN膜にフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術を用いてSAW共振器となるIDTを複数のSAW素子形成領域について同時にパターニングした。その後、FCB実装用のAuバンプを設ける接続パッド(導電パッド)を形成するため、Cr(クロム)膜、Al膜の順に成膜し、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術を用いて当該接続パッドを形成した。そして、これら接続パッドにAuバンプをAuボールの超音波接合により設けた。このときの条件は、超音波パワーが148mW、荷重50g、超音波印加時間は30msecである。各SAW素子には6個のAuバンプを設け、その後、各SAW素子をウェハダイシングによりチップ状に分割して個々のSAW素子とした。
【0034】
一方、フリップチップ実装するベース基板は、ガラスエポキシ基板にNi/Auのめっき電極を形成し、プラズマ洗浄を行い、表面を清浄化した。このベース基板に上記チップ状のSAW素子を、AuバンプがNi/Auめっき面に接するように配置し、超音波併用熱圧着を行うことによりFCB実装を行った。FCB実装の条件は、超音波パワーが500mW、荷重500g、超音波印加時間100msecであり、ベース基板を加熱するステージ温度は150℃である。
【0035】
このようにしてFCB実装したSAW素子の接続パッド部分をAuバンプ形成面の裏面側から観察して、その部分の単結晶圧電基板の割れの発生数をカウントした。単結晶圧電基板の割れの現象は、FCB実装の機械強度を低下させ、耐衝撃性や耐熱衝撃性を極端に劣化させて製品としての機能を停止させる可能性があるため、これを防ぐことが強く望まれる。
【0036】
下記表1は、上記6種類の単結晶圧電基板を用いたSAW素子のパッド部分の基板割れの発生数を示したものである。
【0037】
【表1】

【0038】
この表から明らかなように、36°、39°回転Y‐X伝搬カットLiTaO3単結晶圧電基板を使用したものについてはそれぞれ、2.5%、0.5%の基板割れが発生しているのに対し、46°、48°および52°の各回転Y‐X伝搬カットLiTaO3単結晶圧電基板並びに64°回転Y‐X伝搬カットLiNbO3単結晶圧電基板を使用したものについては、基板割れは全く発生していない。
【0039】
この要因は、エピタキシャルAl膜の内部応力の差によるものと考えられる。すなわち、46°以上の回転カット角を有するLiTaO3基板および64°のカット角を有するLiNbO3基板の上に形成したエピタキシャルAl膜のほうが内部応力が小さい膜であるため、接続パッド部分の単結晶圧電基板の割れが発生しなかったと考えられる。内部応力はヘテロエピタキシャル膜の下地単結晶との格子のずれに起因すると考えられ、X線回折で観られた、下地単結晶圧電基板のZ軸とアルミニウム(111)の位置のずれが要因と思われる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】36°回転Y‐X伝搬LiTaO3単結晶圧電基板に成膜したエピタキシャルアルミニウム層の(111)極点図である。
【図2】39°回転Y‐X伝搬LiTaO3単結晶圧電基板に成膜したエピタキシャルアルミニウム層の(111)極点図である。
【図3】46°回転Y‐X伝搬LiTaO3単結晶圧電基板に成膜したエピタキシャルアルミニウム層の(111)極点図である。
【図4】48°回転Y‐X伝搬LiTaO3単結晶圧電基板に成膜したエピタキシャルアルミニウム層の(111)極点図である。
【図5】52°回転Y‐X伝搬LiTaO3単結晶圧電基板に成膜したエピタキシャルアルミニウム層の(111)極点図である。
【図6】64°回転Y‐X伝搬LiNbO3単結晶圧電基板に成膜したエピタキシャルアルミニウム層の(111)極点図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るSAW装置を示す概念図である。
【符号の説明】
【0041】
11 SAW装置
21 SAW素子(SAWチップ)
22 接続用電極
23 Auバンプ
25 ベース基板
26 接続パッド
31 蓋体
32 枠体(ダム)
33 天板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶圧電基板の表面に交差指状電極を備えかつ金属バンプを介してベース基板上にフリップチップ実装された弾性表面波素子を1以上含む弾性表面波装置であって、
前記交差指状電極は、前記単結晶圧電基板上に順次積層した窒化チタン又はチタンからなる下地層とアルミニウム層とを含む積層膜により形成され、かつ
前記単結晶圧電基板は、46°以上の回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板である
ことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】
単結晶圧電基板の表面に交差指状電極を備えかつ金属バンプを介してベース基板上にフリップチップ実装された弾性表面波素子を1以上含む弾性表面波装置であって、
前記交差指状電極は、前記単結晶圧電基板上に順次積層した窒化チタン又はチタンからなる下地層とアルミニウム層とを含む積層膜により形成され、かつ
前記単結晶圧電基板は、64°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である
ことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項3】
前記交差指状電極のアルミニウム層が単結晶構造である
請求項1または2に記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
前記交差指状電極のアルミニウム層が双晶構造である
請求項1または2に記載の弾性表面波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−288764(P2007−288764A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323991(P2006−323991)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【特許番号】特許第3961012号(P3961012)
【特許公報発行日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】