弾性部材の装着装置、および装着方法
【課題】筐体に取り付けられたシャフトに弾性部材をドーム状に装着する作業を簡略化すること。
【解決手段】本発明に係る弾性部材の装着装置は、所定の位置に設置された筐体のシャフトの中心軸の延長線上に配設された保持筒に、内径が弾性部材の外径より小径に形成された外筒と、この外筒内で中心軸に沿って移動可能に配設された部材押し出し部とを備えることによって、部材設置部に設置した弾性部材を、ドーム状に変形させた状態で保持筒の外筒内に移しかえて保持させた後に、保持筒移動部を装着位置に移動させて、外筒内に保持された弾性部材の周縁を筐体の凹部に押しこむように構成した。
【解決手段】本発明に係る弾性部材の装着装置は、所定の位置に設置された筐体のシャフトの中心軸の延長線上に配設された保持筒に、内径が弾性部材の外径より小径に形成された外筒と、この外筒内で中心軸に沿って移動可能に配設された部材押し出し部とを備えることによって、部材設置部に設置した弾性部材を、ドーム状に変形させた状態で保持筒の外筒内に移しかえて保持させた後に、保持筒移動部を装着位置に移動させて、外筒内に保持された弾性部材の周縁を筐体の凹部に押しこむように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置や機械装置に設けられた回転ツマミに適度な回転負荷を与えて操作性を向上させるために、前記回転ツマミのシャフトを中心に弾性部材を取り付ける弾性部材取付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子装置や機械装置に設けられた回転ツマミは、回転操作を容易にするためにツマミの外径を大きくしたり、ツマミが装置のパネル面から突出する長さを長くしたり、ツマミの外周に一部リブ状の突起を設けたりすることが行われることがある。
このような構造とすることによって、確かに回転操作は容易になるが、使用者による操作以外の外力(衣服に引っかけるなど)によって、不用意に回転してしまうという問題が発生する。そこで、そのような不用意な回転を抑制するために、回転ツマミに適度な回転負荷を与えるとよい。そのために、回転ツマミやそのシャフトに弾性部材を圧接させて回転負荷(回転に対する摩擦抵抗)を与えることが行われている。
【0003】
そのような弾性部材を用いた回転ツマミの取り付け構造が提案されている。
例えば、特開2007-180282号公報(特許文献1)に開示の取り付け構造は、装置のケースに固定された固定部分と、この固定部分に対して回転可能に構成されたシャフトとを備えた回転ツマミの取り付け構造において、前記シャフトは、当該シャフトの外径より小径の挿通部が形成された弾性部材の前記挿通部に差し込まれ、前記ケースの回転ツマミの取り付け部には、取り付けられた前記シャフトを中心として断面の基本形状が円形に形成された凹部が形成され、この凹部には、この凹部の内径より大径に形成された前記弾性部材の下縁が押し込まれた状態で装着されている構造である。
【0004】
前記特許文献1に開示の構造は、図1に示したように、
携帯用のトランシーバなどの装置のケースに、ボリュームなどの回転操作デバイス2が取り付けられ、この回転操作デバイス2のシャフト22の周囲のケースのパネル面の取り付け部には、略円形で内径d3の凹部91が形成されている。
【0005】
図2に示したGは略円形のシート状の弾性部材であり、組み付け前の自由状態においてはシート状で平面形状であって、基本形状が直径d1の円形であり、中心部分にはシャフト22の外径より小さい内径d2の孔G1が形成されている。
前記弾性部材Gの外径d1は、前記凹部91の内径d3より大径に形成されているので、弾性部材Gの孔G1を拡径させつつ、シャフト22を差し込み、凹部91の奥まで押し込むと、弾性部材Gの中心部分はシャフト22との間の摩擦抵抗などによって盛り上がり、弾性部材Gの縁部分は、凹部91の底まで押し込まれ、ドーム状となって装着される。
【0006】
このようなドーム状の弾性部材Gの外縁は前記凹部91との大きな摩擦抵抗によって保持され、前記シャフト22は、前記弾性部材Gの孔G1との適度な摩擦抵抗によって適度な回転負荷が与えられた状態となっている。したがって、シャフト22が不用意に回転することが防止される。
また、弾性部材Gの孔G1の内径の拡大加工などの調整によって、回転負荷を増減させることができるので、使用者が好みの回転負荷に調整することが容易である。
【0007】
また、ツマミを嵌め込む深さを調整することでも、弾性部材Gとの間の圧力を加減して回転負荷を調節することができる。
また、弾性部材Gを取り除いても回転負荷以外の機能には全く影響を与えないので、防水構造の装置にも適用しやすい。
しかも、弾性部材Gは、シート状のゴムやエラストマーなどの弾性部材を打ち抜き加工もしくは切り抜き加工することで、材質、シート厚、硬度、色などの制約を受けず、容易に製作することができるので、材質や大きさなどを適宜選択することによって、安価に製作できるとともに、使用者の好みの操作感を得ることができる。
【0008】
以上のようにして、前記弾性部材を用いることによって、簡単な構造でしかも安価な部材で、適度な回転負荷を確実に与えることができるとともに、回転負荷を調節することも使用者において容易に可能となるという効果に加えて、以下のような効果も得られる。
・グリースなどを用いて回転負荷を与える構成ではないので、温度変化の影響を受けにくい。
・シャフトの根元のリングナットが弾性部材によって覆われて外部から見えないので当該装置の質感が向上する。
・弾性部材の挿通部の径などを調節することにより、回転負荷の調節が使用者においても容易に行える。
・弾性部材は、平面状のシート部材から打ち抜き加工することで製作できるので、立体的で複雑な形状のものと比較して、金型作成の費用や手間がかからない。
・弾性部材の挿通部の径などを調節によって、容易に様々な回転負荷を設定することができるので、使用者層の好みに応じた回転負荷が得られる弾性部材を低コストで提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-180282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、シャフトに弾性部材をドーム状に装着することによって、適度な回転負荷を与えることができるとともに、種々の効果が得られるが、弾性部材をドーム状にして装着する作業を習得するには時間を要するので、弾性部材の取り付け作業の簡略化が課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る弾性部材の装着装置は、
装置の筐体に回転シャフトを備えた回転操作デバイスが取り付けられ、前記筐体における前記回転操作デバイスの取り付け部には、前記シャフトを中心として凹部が形成されており、前記シャフトに、挿通部が形成された弾性部材を差し込むとともに、前記凹部に、前記弾性部材の周縁が押し込まれた状態で装着する弾性部材の装着装置であって、
所定の位置に設置された前記装置の筐体の前記シャフトの中心軸の延長線上に配設された保持筒と、
この保持筒を、前記シャフトにかぶせる装着位置と、前記シャフトから離間させる離間位置との2位置に移動させる保持筒移動部と、
前記弾性部材を設置する部材設置部と、
を備え、
前記保持筒には、内径が前記弾性部材の外径より小径に形成された外筒と、
この外筒内で中心軸に沿って移動可能に配設された部材押し出し部とを備えることによって、
前記弾性部材を前記部材設置部に設置し、
前記部材設置部に設置された弾性部材に前記保持筒を当接させ、前記弾性部材をドーム状に変形させた状態で前記保持筒の外筒内に移しかえて保持させ、
前記保持筒移動部を前記装着位置に移動させて、前記外筒内に保持されたドーム状の弾性部材を、前記部材押し出し部によって押し出して、前記筐体の前記凹部に前記弾性部材の周縁を押しこむように構成した。
請求項2では、
前記部材設置部を、前記シャフトの中心軸の延長線上の移し替え位置と、前記弾性部材を前記部材設置部に設置するセット位置との2位置に移動させる設置部移動部を備え、
前記セット位置で前記部材設置部に弾性部材を設置し、
前記部材設置部を前記移し替え位置に移動させた状態で、前記保持筒移動部を前記離間位置から移動させて前記保持筒を前記部材設置部の弾性部材に当接させて前記部材設置部の弾性部材をドーム状に変形させた状態で前記保持筒の外筒内に移しかえて保持させるように構成した。
請求項3では、
前記保持筒移動部によって前記保持筒を前記シャフトを覆う装着位置に移動させた状態で、前記保持筒を前記シャフトの中心軸回りに回転させる保持筒回転部を備えた。
【0012】
請求項4に係る弾性部材の装着方法では、
装置の筐体に回転シャフトを備えた回転操作デバイスが取り付けられ、前記筐体における前記回転操作デバイスの取り付け部には、前記シャフトを中心として凹部が形成されており、前記シャフトに、挿通部が形成された弾性部材を差し込むとともに、前記凹部に、前記弾性部材の周縁が押し込まれた状態で装着する弾性部材の装着方法であって、
前記弾性部材を、内径が前記弾性部材の外径より小径に形成された外筒に押しこむことによって、ドーム状に変形させた状態で一旦保持させ、
ドーム状に変形した弾性部材を保持したままの前記外筒を、前記シャフトの中心軸の延長線方向から押し当てて、ドーム状の前記弾性部材を押し出すことによって、弾性部材の挿通部に前記シャフトを差込み、前記弾性部材の周縁を前記筐体の凹部に押しこむことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る弾性部材の装着装置によれば、筐体のシャフトの中心軸の延長線上に配設された保持筒には、内径が弾性部材の外径より小径に形成された外筒と、この外筒内で中心軸に沿って移動可能に配設された部材押し出し部とを備え、保持筒移動部を移動させることによって、部材設置部に設置された弾性部材を受け取って前記外筒の内部にドーム状に変形させた状態で保持し、このドーム状の弾性部材を、筐体に形成された凹部にドーム状のまま押しこむことができるので、弾性部材を装着する作業が簡単になる。
請求項2によれば、前記部材設置部を移し替え位置とセット位置との2位置に移動させる設置部移動部を備え、前記セット位置で前記部材設置部に弾性部材を設置し、前記移し替え位置で前記部材設置部の弾性部材をドーム状に変形させた状態で前記保持筒に移しかえるので、保持筒移動部を水平方向に移動させることなく、弾性部材の設置と移しかえがスムーズに行える。
請求項3によれば、前記保持筒を前記シャフトに押し当てる装着位置に移動させた状態で、前記保持筒を回転させる保持筒回転部を備えたので、弾性部材を筐体に形成された凹部に押しこむことが確実に行える。
また、本発明の請求項4に係る弾性部材の装着方法によれば、弾性部材を保持筒の外筒に押しこむことによって、ドーム状に変形させた状態で一旦保持させて、筐体に形成された凹部に押しこむので、弾性部材をドーム状に変形させて装着する作業が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る弾性部材の装着装置を用いて弾性部材を装着した状態の要部拡大断面図である。
【図2】本発明に係る弾性部材の装着装置に用いる弾性部材の平面図である。
【図3】前記弾性部材をドーム状に変形させた状態の斜視図である。
【図4】本発明に係る弾性部材の装着装置の側面図である。
【図5】本発明に係る弾性部材の装着装置の側面図である。
【図6】本発明に係る弾性部材の装着装置の側面図である。
【図7】前記弾性部材の装着装置の要部の平面図である。
【図8】部材設置部と弾性部材の斜視図である。
【図9】本発明に係る弾性部材の装着装置の側面図である。
【図10】前記弾性部材の装着装置を用いた装着作業の途中工程の説明図である。
【図11】前記弾性部材の装着装置を用いた装着作業の途中工程の説明図である。
【図12】前記弾性部材の装着装置を用いた装着作業の途中工程の説明図である。
【図13】前記弾性部材の装着装置を用いた装着作業の途中工程の説明図である。
【図14】前記弾性部材の装着装置を用いた装着作業の途中工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る弾性部材の装着装置によって弾性部材が装着された状態を示した図1において、
9は携帯型トランシーバ等の電子装置の筐体であり、所定の取り付け部にはシャフト22の周囲にリング形状の凹部91が形成されており、その中央部の取り付け孔にボリューム等の回転操作デバイス2が取り付けられている。前記回転操作デバイス2のシャフト22は図示しない回転ツマミを備えている。
そして、前記凹部91にはドーム状に変形された弾性部材Gの周縁が押しこまれており、弾性部材Gの中心部に設けられた挿通部に前記シャフト22が差し込まれている。
【0016】
前記弾性部材Gは、略円形のゴム等のシート部材で形成されており、組み付け前の自由状態においては図2に示したようにシート状で平面形状であって、基本形状が外径d1の円形であり、中心部分には内径d2の孔G1が挿通部として形成されている。前記弾性部材Gの外径d1は、前記凹部91の内径d3より大きい。
図1のように装着するときには、図3に示したように、弾性部材Gをドーム状に変形させてシャフト22と凹部91に装着する。
【実施例1】
【0017】
本願発明の実施例1に係る弾性部材の装着装置は、図4に示したように、基台1に固定された主柱11が自立するように構成されている。そして、前記主柱11に沿って、設置部移動部8と保持筒移動部5とが配設されている。
【0018】
前記基台1の手前側の上面には、弾性部材を装着する対象の装置の筐体を設置するための筐体設置部3が形成されている。この筐体設置部3には、前記対象の筐体を所定の設置位置に位置決めしやすいようにガイド31が設けられており、前記ガイド31によって前記対象の筐体のシャフト22は、保持筒4の真下に位置決めされる。
【0019】
前記筐体設置部3の真上には、弾性部材を一時的に保持する保持手段41を備えた保持筒4が、保持筒移動部5によって、前記主柱11に沿って上下移動可能に配設されている。前記保持手段41は、前記保持筒4の下面に開口させて形成されており、図10に示したように、円筒状の外筒42と、前記外筒に内装された円筒状の部材押し出し部43とを備えている。前記外筒42の内径d4は、前記弾性部材Gの外径d1より少し小径とされ、前記部材押し出し部43の外径は、前記外筒42の内径よりさらに小径とされ、前記部材押し出し部43は、外筒42の内部をその中心軸に沿って上下方向にスライド可能に配設されている。
【0020】
前記保持筒移動部5は、前記主柱11に配設された操作レバー6を手前側に引き倒す操作をすると、リンク機構61によって、前記主柱11の前面に配設されたレールに沿って上下移動するように構成されている。(図4、5、6参照。)
また、前記保持筒移動部5は、操作レバー6が手前側に引き倒されると、前記保持筒4を対象の装置の筐体のシャフトを覆う位置に移動し、さらに引き倒されると、前記保持筒4をその中心軸の回りに回動させるように構成された保持筒回転部62を備えている。この保持筒回転部62はカム機構によって前記保持筒移動部5を押し下げる動作を前記保持筒4の回転動作に変換する。(図6参照。)
【0021】
前記筐体設置部3と前記保持筒4との間の空間には、弾性部材をセットする手段を備えた部材設置部7が、設置部移動部8によって、前記支柱2に垂直な平面内で垂直軸81を軸にして水平回転移動可能に配設されている。
前記設置部移動部8の水平回転移動範囲は、前記主柱11に向かって左側に退避したセット位置(図7(A)参照。)から、前記保持筒4の真下の装着位置(図7(B)参照。)までの範囲とする。特に、前記装着位置で確実に位置決めできるように、例えば前記垂直軸81の近傍にストッパ82を設けておく。なお、図7においては、保持筒移動部5、操作レバー6、リンク機構61、保持筒回転部62、および保持筒4の図示は省略した。
図8に示したように、前記部材設置部7の上面の中央部は円柱形状にくり抜かれて凹部71が形成されており、前記凹部71の中央にはピン72が上向きに立設されている。前記凹部71の内径d5は、前記弾性部材Gの外径d1より大きく形成され、前記ピン72の外径は前記弾性部材Gの孔G1に容易に差込み可能な大きさに形成されている。また、前記部材設置部7の凹部71の外径は、前記保持筒4の外筒42の外径よりも大きい。
そして、装着位置においては、筐体設置部3に設置された筐体9のシャフト22と保持筒4とは一直線上に並ぶ。
【0022】
以上の構成の弾性部材の装着装置1を用いて、対象の装置のシャフト22に弾性部材Gを装着する手順を説明する。
先ず、図7(A)に示したように、前記設置部移動部8をセット位置に退避させる。このときの弾性部材の装着装置1の側面図を図9に示した。
そして、前記対象の装置の筐体9を筐体設置部3の所定の設置位置に設置する。このとき、前記ガイド31を利用するとよい。
次に、前記部材設置部7の凹部71に弾性部材Gをセットする。このとき、前記凹部71の内径d5は、前記弾性部材Gの外径d1より大きく形成されているとともに、前記凹部71がガイドとなるので、前記弾性部材Gの孔G1を、前記部材設置部7の凹部71に上向きに立設されたピン72に容易に挿通することができる。(図8参照。)
【0023】
次に、前記設置部移動部8を図7(B)に示したように、前記保持筒4の真下の装着位置に移動させる。このとき、前記ストッパ82を利用することによって、前記設置部移動部8を前記装着位置で確実に位置決めすることが容易にできる。(図4参照。)
このときの前記保持筒移動部5と前記保持筒4の近傍を拡大した状態を図10に示した。
なお、図10〜14は、装着作業の途中工程の説明図であり、前記保持筒移動部5と前記保持筒4の近傍を拡大して示したものである。
【0024】
次に、前記操作レバー6を手前に少し引き倒すと、前記リンク機構61によって、前記保持筒移動部5は上昇位置から前記主柱11に沿って下降を開始し、前記保持筒4は前記装着位置に位置決めされている前記部材設置部7に当接する。このとき、前記部材設置部7の凹部71の外径は、前記保持筒4の外筒42の外径よりも大きいので、前記外筒42は前記凹部71に収まり、前記凹部71に設置された前記弾性部材Gと当接する。(図5、11参照。)
前記操作レバー6を更に押し下げて前記保持筒移動部5を押し下げると、図11に示したように、保持筒4の外筒42が、弾性部材Gの外縁近傍を押さえることによって、孔G1が前記ピン72で支えられている弾性部材Gはドーム状に変形する。このとき、前記外筒42の内径d4は前記弾性部材Gの外径d1より小さいので、弾性部材Gはドーム状に変形しやすい。
その後、前記操作レバー6を戻すと、前記保持筒4が上昇位置に引き上げられる。このとき、前記保持筒4の下端の外筒42の内部には、弾性部材Gがドーム状に変形した状態で保持されて、前記保持筒4と共に引き上げられる。(図12参照。)
【0025】
次に、設置部移動部8を図7(A)の位置に戻すと、図12に示したように、前記弾性部材Gを保持した保持筒4は、前記筐体のシャフト22の真上に位置した状態となっている。
そこで、操作レバー6を再度手前に大きく引き倒すと、図13に示したように、前記弾性部材Gを保持した保持筒4は真下に下降し、保持筒4の外筒42が、対象の装置の筐体9に形成された凹部91の縁に当接して、それ以上は下降しなくなる。このとき、前記外筒42の内部に保持されたドーム状の弾性部材Gは、前記シャフト22に被せられて、弾性部材Gの孔G1に前記シャフト22が挿通される。
【0026】
更に、図10に示したように、前記操作レバー6を操作して前記保持筒移動部5を更に押し下げると、外筒42はそれ以上下がらないので前記バネ45が圧縮されつつ、前記部材押し出し部43だけが下降する。このとき、前記カム機構62によって押し下げる動きが回転動作に変換されるので、前記部材押し出し部43は保持部シャフト44に沿って回転しながら下降する。前記部材押し出し部43が下降すると、弾性部材Gを外筒42から下方に押し出して弾性部材Gの外縁を前記凹部91に押しこむ。このとき、前記外筒42はバネ45によって下方に弾性付勢されて、対象の装置の筐体9に押しつけられたままの状態であり、前記弾性部材Gが押し出される場合のガイドとなる。(図6、14参照。)
このようにして、弾性部材Gはドーム状の形状で前記シャフト22と前記凹部91の既定の位置に装着されるのである。このとき、前記弾性部材Gの外径d1は、前記凹部91の内径d3より大きいので、弾性部材Gはドーム状のままで前記凹部91に装着される。
ここで、前記部材押し出し部43が回転しながら下降して、前記弾性部材Gを前記凹部91に装着するので、前記部材押し出し部43と前記弾性部材Gとの間は滑りやすく前記弾性部材Gは前記外筒42から離脱しやすくなり、確実に前記凹部91に押しこまれる。
【0027】
次に、前記操作レバー6に加えていた力を開放すると、圧縮されていた前記バネ45の弾性復元力によって前記部材押し出し部43は上昇して図13の位置の状態まで復帰する。この位置以上に上昇しないようにラッチ機構を備えている。
続いて、もう一度前記操作レバー6を手前に押し下げると、前記部材押し出し部43は、前記バネ45を圧縮させつつ保持部シャフト44に沿って回転しながら下降して、前記弾性部材Gを前記凹部91に押しこむ動作を繰り返す。このように動作を繰り返すことによって、弾性部材Gは前記凹部91に確実に装着されるのである。
【0028】
次に、前記操作レバー6を引き上げると、前記ラッチ機構が解除されて前記保持筒4は前記主柱11に沿って上昇するので、弾性部材Gの装着が完了した対象の装置の筐体9を筐体設置部3から取り除き、次の装置の筐体に次の弾性部材Gを装着するための態勢に復帰する。
以上の工程を繰り返すことによって、複数の装置の筐体にそれぞれ弾性部材Gを装着する作業を、次々に効率よく行うことが可能となる。
【0029】
なお、前記保持筒4を昇降させるための機構としては、図示した保持筒移動部5の形態に限定されるものではなく、部材押し出し部43を内蔵した保持筒4であれば、他の形態でも構わない。また、操作レバー6とリンク機構61に代えて、他の機構、例えば電動による昇降機構を用いてもよい。
また、前記設置部移動部8に代えて、平行にスライド移動する機構を採用してもよい。
また、以上の実施例においては、筐体設置部3を有する基台1、設置部移動部8、そして保持筒移動部5を一つの主柱11に設置しているが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、設置部移動部8と保持筒移動部5を一つの支柱に設置して、筐体設置部3をベルトコンベア等の搬送手段で移動可能とした構成としてもよい。
さらには、保持筒4が昇降する形態を例にとって説明したが、保持筒4を水平移動させて、対象の装置の筐体に取り付けられた水平方向のシャフトに弾性部材Gを装着する形態も可能である。
【符号の説明】
【0030】
G 弾性部材
G1 孔
10 弾性部材の装着装置
1 基台
11 主柱
2 回転操作デバイス
22 シャフト
3 筐体設置部
31 ガイド
4 保持筒
41 保持手段
42 外筒
43 部材押し出し部
5 保持筒移動部
6 操作レバー
61 リンク機構
62 保持筒回転部
7 部材設置部
71 凹部
72 ピン
8 設置部移動部
81 垂直軸
9 筐体
91 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置や機械装置に設けられた回転ツマミに適度な回転負荷を与えて操作性を向上させるために、前記回転ツマミのシャフトを中心に弾性部材を取り付ける弾性部材取付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子装置や機械装置に設けられた回転ツマミは、回転操作を容易にするためにツマミの外径を大きくしたり、ツマミが装置のパネル面から突出する長さを長くしたり、ツマミの外周に一部リブ状の突起を設けたりすることが行われることがある。
このような構造とすることによって、確かに回転操作は容易になるが、使用者による操作以外の外力(衣服に引っかけるなど)によって、不用意に回転してしまうという問題が発生する。そこで、そのような不用意な回転を抑制するために、回転ツマミに適度な回転負荷を与えるとよい。そのために、回転ツマミやそのシャフトに弾性部材を圧接させて回転負荷(回転に対する摩擦抵抗)を与えることが行われている。
【0003】
そのような弾性部材を用いた回転ツマミの取り付け構造が提案されている。
例えば、特開2007-180282号公報(特許文献1)に開示の取り付け構造は、装置のケースに固定された固定部分と、この固定部分に対して回転可能に構成されたシャフトとを備えた回転ツマミの取り付け構造において、前記シャフトは、当該シャフトの外径より小径の挿通部が形成された弾性部材の前記挿通部に差し込まれ、前記ケースの回転ツマミの取り付け部には、取り付けられた前記シャフトを中心として断面の基本形状が円形に形成された凹部が形成され、この凹部には、この凹部の内径より大径に形成された前記弾性部材の下縁が押し込まれた状態で装着されている構造である。
【0004】
前記特許文献1に開示の構造は、図1に示したように、
携帯用のトランシーバなどの装置のケースに、ボリュームなどの回転操作デバイス2が取り付けられ、この回転操作デバイス2のシャフト22の周囲のケースのパネル面の取り付け部には、略円形で内径d3の凹部91が形成されている。
【0005】
図2に示したGは略円形のシート状の弾性部材であり、組み付け前の自由状態においてはシート状で平面形状であって、基本形状が直径d1の円形であり、中心部分にはシャフト22の外径より小さい内径d2の孔G1が形成されている。
前記弾性部材Gの外径d1は、前記凹部91の内径d3より大径に形成されているので、弾性部材Gの孔G1を拡径させつつ、シャフト22を差し込み、凹部91の奥まで押し込むと、弾性部材Gの中心部分はシャフト22との間の摩擦抵抗などによって盛り上がり、弾性部材Gの縁部分は、凹部91の底まで押し込まれ、ドーム状となって装着される。
【0006】
このようなドーム状の弾性部材Gの外縁は前記凹部91との大きな摩擦抵抗によって保持され、前記シャフト22は、前記弾性部材Gの孔G1との適度な摩擦抵抗によって適度な回転負荷が与えられた状態となっている。したがって、シャフト22が不用意に回転することが防止される。
また、弾性部材Gの孔G1の内径の拡大加工などの調整によって、回転負荷を増減させることができるので、使用者が好みの回転負荷に調整することが容易である。
【0007】
また、ツマミを嵌め込む深さを調整することでも、弾性部材Gとの間の圧力を加減して回転負荷を調節することができる。
また、弾性部材Gを取り除いても回転負荷以外の機能には全く影響を与えないので、防水構造の装置にも適用しやすい。
しかも、弾性部材Gは、シート状のゴムやエラストマーなどの弾性部材を打ち抜き加工もしくは切り抜き加工することで、材質、シート厚、硬度、色などの制約を受けず、容易に製作することができるので、材質や大きさなどを適宜選択することによって、安価に製作できるとともに、使用者の好みの操作感を得ることができる。
【0008】
以上のようにして、前記弾性部材を用いることによって、簡単な構造でしかも安価な部材で、適度な回転負荷を確実に与えることができるとともに、回転負荷を調節することも使用者において容易に可能となるという効果に加えて、以下のような効果も得られる。
・グリースなどを用いて回転負荷を与える構成ではないので、温度変化の影響を受けにくい。
・シャフトの根元のリングナットが弾性部材によって覆われて外部から見えないので当該装置の質感が向上する。
・弾性部材の挿通部の径などを調節することにより、回転負荷の調節が使用者においても容易に行える。
・弾性部材は、平面状のシート部材から打ち抜き加工することで製作できるので、立体的で複雑な形状のものと比較して、金型作成の費用や手間がかからない。
・弾性部材の挿通部の径などを調節によって、容易に様々な回転負荷を設定することができるので、使用者層の好みに応じた回転負荷が得られる弾性部材を低コストで提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-180282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、シャフトに弾性部材をドーム状に装着することによって、適度な回転負荷を与えることができるとともに、種々の効果が得られるが、弾性部材をドーム状にして装着する作業を習得するには時間を要するので、弾性部材の取り付け作業の簡略化が課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る弾性部材の装着装置は、
装置の筐体に回転シャフトを備えた回転操作デバイスが取り付けられ、前記筐体における前記回転操作デバイスの取り付け部には、前記シャフトを中心として凹部が形成されており、前記シャフトに、挿通部が形成された弾性部材を差し込むとともに、前記凹部に、前記弾性部材の周縁が押し込まれた状態で装着する弾性部材の装着装置であって、
所定の位置に設置された前記装置の筐体の前記シャフトの中心軸の延長線上に配設された保持筒と、
この保持筒を、前記シャフトにかぶせる装着位置と、前記シャフトから離間させる離間位置との2位置に移動させる保持筒移動部と、
前記弾性部材を設置する部材設置部と、
を備え、
前記保持筒には、内径が前記弾性部材の外径より小径に形成された外筒と、
この外筒内で中心軸に沿って移動可能に配設された部材押し出し部とを備えることによって、
前記弾性部材を前記部材設置部に設置し、
前記部材設置部に設置された弾性部材に前記保持筒を当接させ、前記弾性部材をドーム状に変形させた状態で前記保持筒の外筒内に移しかえて保持させ、
前記保持筒移動部を前記装着位置に移動させて、前記外筒内に保持されたドーム状の弾性部材を、前記部材押し出し部によって押し出して、前記筐体の前記凹部に前記弾性部材の周縁を押しこむように構成した。
請求項2では、
前記部材設置部を、前記シャフトの中心軸の延長線上の移し替え位置と、前記弾性部材を前記部材設置部に設置するセット位置との2位置に移動させる設置部移動部を備え、
前記セット位置で前記部材設置部に弾性部材を設置し、
前記部材設置部を前記移し替え位置に移動させた状態で、前記保持筒移動部を前記離間位置から移動させて前記保持筒を前記部材設置部の弾性部材に当接させて前記部材設置部の弾性部材をドーム状に変形させた状態で前記保持筒の外筒内に移しかえて保持させるように構成した。
請求項3では、
前記保持筒移動部によって前記保持筒を前記シャフトを覆う装着位置に移動させた状態で、前記保持筒を前記シャフトの中心軸回りに回転させる保持筒回転部を備えた。
【0012】
請求項4に係る弾性部材の装着方法では、
装置の筐体に回転シャフトを備えた回転操作デバイスが取り付けられ、前記筐体における前記回転操作デバイスの取り付け部には、前記シャフトを中心として凹部が形成されており、前記シャフトに、挿通部が形成された弾性部材を差し込むとともに、前記凹部に、前記弾性部材の周縁が押し込まれた状態で装着する弾性部材の装着方法であって、
前記弾性部材を、内径が前記弾性部材の外径より小径に形成された外筒に押しこむことによって、ドーム状に変形させた状態で一旦保持させ、
ドーム状に変形した弾性部材を保持したままの前記外筒を、前記シャフトの中心軸の延長線方向から押し当てて、ドーム状の前記弾性部材を押し出すことによって、弾性部材の挿通部に前記シャフトを差込み、前記弾性部材の周縁を前記筐体の凹部に押しこむことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る弾性部材の装着装置によれば、筐体のシャフトの中心軸の延長線上に配設された保持筒には、内径が弾性部材の外径より小径に形成された外筒と、この外筒内で中心軸に沿って移動可能に配設された部材押し出し部とを備え、保持筒移動部を移動させることによって、部材設置部に設置された弾性部材を受け取って前記外筒の内部にドーム状に変形させた状態で保持し、このドーム状の弾性部材を、筐体に形成された凹部にドーム状のまま押しこむことができるので、弾性部材を装着する作業が簡単になる。
請求項2によれば、前記部材設置部を移し替え位置とセット位置との2位置に移動させる設置部移動部を備え、前記セット位置で前記部材設置部に弾性部材を設置し、前記移し替え位置で前記部材設置部の弾性部材をドーム状に変形させた状態で前記保持筒に移しかえるので、保持筒移動部を水平方向に移動させることなく、弾性部材の設置と移しかえがスムーズに行える。
請求項3によれば、前記保持筒を前記シャフトに押し当てる装着位置に移動させた状態で、前記保持筒を回転させる保持筒回転部を備えたので、弾性部材を筐体に形成された凹部に押しこむことが確実に行える。
また、本発明の請求項4に係る弾性部材の装着方法によれば、弾性部材を保持筒の外筒に押しこむことによって、ドーム状に変形させた状態で一旦保持させて、筐体に形成された凹部に押しこむので、弾性部材をドーム状に変形させて装着する作業が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る弾性部材の装着装置を用いて弾性部材を装着した状態の要部拡大断面図である。
【図2】本発明に係る弾性部材の装着装置に用いる弾性部材の平面図である。
【図3】前記弾性部材をドーム状に変形させた状態の斜視図である。
【図4】本発明に係る弾性部材の装着装置の側面図である。
【図5】本発明に係る弾性部材の装着装置の側面図である。
【図6】本発明に係る弾性部材の装着装置の側面図である。
【図7】前記弾性部材の装着装置の要部の平面図である。
【図8】部材設置部と弾性部材の斜視図である。
【図9】本発明に係る弾性部材の装着装置の側面図である。
【図10】前記弾性部材の装着装置を用いた装着作業の途中工程の説明図である。
【図11】前記弾性部材の装着装置を用いた装着作業の途中工程の説明図である。
【図12】前記弾性部材の装着装置を用いた装着作業の途中工程の説明図である。
【図13】前記弾性部材の装着装置を用いた装着作業の途中工程の説明図である。
【図14】前記弾性部材の装着装置を用いた装着作業の途中工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る弾性部材の装着装置によって弾性部材が装着された状態を示した図1において、
9は携帯型トランシーバ等の電子装置の筐体であり、所定の取り付け部にはシャフト22の周囲にリング形状の凹部91が形成されており、その中央部の取り付け孔にボリューム等の回転操作デバイス2が取り付けられている。前記回転操作デバイス2のシャフト22は図示しない回転ツマミを備えている。
そして、前記凹部91にはドーム状に変形された弾性部材Gの周縁が押しこまれており、弾性部材Gの中心部に設けられた挿通部に前記シャフト22が差し込まれている。
【0016】
前記弾性部材Gは、略円形のゴム等のシート部材で形成されており、組み付け前の自由状態においては図2に示したようにシート状で平面形状であって、基本形状が外径d1の円形であり、中心部分には内径d2の孔G1が挿通部として形成されている。前記弾性部材Gの外径d1は、前記凹部91の内径d3より大きい。
図1のように装着するときには、図3に示したように、弾性部材Gをドーム状に変形させてシャフト22と凹部91に装着する。
【実施例1】
【0017】
本願発明の実施例1に係る弾性部材の装着装置は、図4に示したように、基台1に固定された主柱11が自立するように構成されている。そして、前記主柱11に沿って、設置部移動部8と保持筒移動部5とが配設されている。
【0018】
前記基台1の手前側の上面には、弾性部材を装着する対象の装置の筐体を設置するための筐体設置部3が形成されている。この筐体設置部3には、前記対象の筐体を所定の設置位置に位置決めしやすいようにガイド31が設けられており、前記ガイド31によって前記対象の筐体のシャフト22は、保持筒4の真下に位置決めされる。
【0019】
前記筐体設置部3の真上には、弾性部材を一時的に保持する保持手段41を備えた保持筒4が、保持筒移動部5によって、前記主柱11に沿って上下移動可能に配設されている。前記保持手段41は、前記保持筒4の下面に開口させて形成されており、図10に示したように、円筒状の外筒42と、前記外筒に内装された円筒状の部材押し出し部43とを備えている。前記外筒42の内径d4は、前記弾性部材Gの外径d1より少し小径とされ、前記部材押し出し部43の外径は、前記外筒42の内径よりさらに小径とされ、前記部材押し出し部43は、外筒42の内部をその中心軸に沿って上下方向にスライド可能に配設されている。
【0020】
前記保持筒移動部5は、前記主柱11に配設された操作レバー6を手前側に引き倒す操作をすると、リンク機構61によって、前記主柱11の前面に配設されたレールに沿って上下移動するように構成されている。(図4、5、6参照。)
また、前記保持筒移動部5は、操作レバー6が手前側に引き倒されると、前記保持筒4を対象の装置の筐体のシャフトを覆う位置に移動し、さらに引き倒されると、前記保持筒4をその中心軸の回りに回動させるように構成された保持筒回転部62を備えている。この保持筒回転部62はカム機構によって前記保持筒移動部5を押し下げる動作を前記保持筒4の回転動作に変換する。(図6参照。)
【0021】
前記筐体設置部3と前記保持筒4との間の空間には、弾性部材をセットする手段を備えた部材設置部7が、設置部移動部8によって、前記支柱2に垂直な平面内で垂直軸81を軸にして水平回転移動可能に配設されている。
前記設置部移動部8の水平回転移動範囲は、前記主柱11に向かって左側に退避したセット位置(図7(A)参照。)から、前記保持筒4の真下の装着位置(図7(B)参照。)までの範囲とする。特に、前記装着位置で確実に位置決めできるように、例えば前記垂直軸81の近傍にストッパ82を設けておく。なお、図7においては、保持筒移動部5、操作レバー6、リンク機構61、保持筒回転部62、および保持筒4の図示は省略した。
図8に示したように、前記部材設置部7の上面の中央部は円柱形状にくり抜かれて凹部71が形成されており、前記凹部71の中央にはピン72が上向きに立設されている。前記凹部71の内径d5は、前記弾性部材Gの外径d1より大きく形成され、前記ピン72の外径は前記弾性部材Gの孔G1に容易に差込み可能な大きさに形成されている。また、前記部材設置部7の凹部71の外径は、前記保持筒4の外筒42の外径よりも大きい。
そして、装着位置においては、筐体設置部3に設置された筐体9のシャフト22と保持筒4とは一直線上に並ぶ。
【0022】
以上の構成の弾性部材の装着装置1を用いて、対象の装置のシャフト22に弾性部材Gを装着する手順を説明する。
先ず、図7(A)に示したように、前記設置部移動部8をセット位置に退避させる。このときの弾性部材の装着装置1の側面図を図9に示した。
そして、前記対象の装置の筐体9を筐体設置部3の所定の設置位置に設置する。このとき、前記ガイド31を利用するとよい。
次に、前記部材設置部7の凹部71に弾性部材Gをセットする。このとき、前記凹部71の内径d5は、前記弾性部材Gの外径d1より大きく形成されているとともに、前記凹部71がガイドとなるので、前記弾性部材Gの孔G1を、前記部材設置部7の凹部71に上向きに立設されたピン72に容易に挿通することができる。(図8参照。)
【0023】
次に、前記設置部移動部8を図7(B)に示したように、前記保持筒4の真下の装着位置に移動させる。このとき、前記ストッパ82を利用することによって、前記設置部移動部8を前記装着位置で確実に位置決めすることが容易にできる。(図4参照。)
このときの前記保持筒移動部5と前記保持筒4の近傍を拡大した状態を図10に示した。
なお、図10〜14は、装着作業の途中工程の説明図であり、前記保持筒移動部5と前記保持筒4の近傍を拡大して示したものである。
【0024】
次に、前記操作レバー6を手前に少し引き倒すと、前記リンク機構61によって、前記保持筒移動部5は上昇位置から前記主柱11に沿って下降を開始し、前記保持筒4は前記装着位置に位置決めされている前記部材設置部7に当接する。このとき、前記部材設置部7の凹部71の外径は、前記保持筒4の外筒42の外径よりも大きいので、前記外筒42は前記凹部71に収まり、前記凹部71に設置された前記弾性部材Gと当接する。(図5、11参照。)
前記操作レバー6を更に押し下げて前記保持筒移動部5を押し下げると、図11に示したように、保持筒4の外筒42が、弾性部材Gの外縁近傍を押さえることによって、孔G1が前記ピン72で支えられている弾性部材Gはドーム状に変形する。このとき、前記外筒42の内径d4は前記弾性部材Gの外径d1より小さいので、弾性部材Gはドーム状に変形しやすい。
その後、前記操作レバー6を戻すと、前記保持筒4が上昇位置に引き上げられる。このとき、前記保持筒4の下端の外筒42の内部には、弾性部材Gがドーム状に変形した状態で保持されて、前記保持筒4と共に引き上げられる。(図12参照。)
【0025】
次に、設置部移動部8を図7(A)の位置に戻すと、図12に示したように、前記弾性部材Gを保持した保持筒4は、前記筐体のシャフト22の真上に位置した状態となっている。
そこで、操作レバー6を再度手前に大きく引き倒すと、図13に示したように、前記弾性部材Gを保持した保持筒4は真下に下降し、保持筒4の外筒42が、対象の装置の筐体9に形成された凹部91の縁に当接して、それ以上は下降しなくなる。このとき、前記外筒42の内部に保持されたドーム状の弾性部材Gは、前記シャフト22に被せられて、弾性部材Gの孔G1に前記シャフト22が挿通される。
【0026】
更に、図10に示したように、前記操作レバー6を操作して前記保持筒移動部5を更に押し下げると、外筒42はそれ以上下がらないので前記バネ45が圧縮されつつ、前記部材押し出し部43だけが下降する。このとき、前記カム機構62によって押し下げる動きが回転動作に変換されるので、前記部材押し出し部43は保持部シャフト44に沿って回転しながら下降する。前記部材押し出し部43が下降すると、弾性部材Gを外筒42から下方に押し出して弾性部材Gの外縁を前記凹部91に押しこむ。このとき、前記外筒42はバネ45によって下方に弾性付勢されて、対象の装置の筐体9に押しつけられたままの状態であり、前記弾性部材Gが押し出される場合のガイドとなる。(図6、14参照。)
このようにして、弾性部材Gはドーム状の形状で前記シャフト22と前記凹部91の既定の位置に装着されるのである。このとき、前記弾性部材Gの外径d1は、前記凹部91の内径d3より大きいので、弾性部材Gはドーム状のままで前記凹部91に装着される。
ここで、前記部材押し出し部43が回転しながら下降して、前記弾性部材Gを前記凹部91に装着するので、前記部材押し出し部43と前記弾性部材Gとの間は滑りやすく前記弾性部材Gは前記外筒42から離脱しやすくなり、確実に前記凹部91に押しこまれる。
【0027】
次に、前記操作レバー6に加えていた力を開放すると、圧縮されていた前記バネ45の弾性復元力によって前記部材押し出し部43は上昇して図13の位置の状態まで復帰する。この位置以上に上昇しないようにラッチ機構を備えている。
続いて、もう一度前記操作レバー6を手前に押し下げると、前記部材押し出し部43は、前記バネ45を圧縮させつつ保持部シャフト44に沿って回転しながら下降して、前記弾性部材Gを前記凹部91に押しこむ動作を繰り返す。このように動作を繰り返すことによって、弾性部材Gは前記凹部91に確実に装着されるのである。
【0028】
次に、前記操作レバー6を引き上げると、前記ラッチ機構が解除されて前記保持筒4は前記主柱11に沿って上昇するので、弾性部材Gの装着が完了した対象の装置の筐体9を筐体設置部3から取り除き、次の装置の筐体に次の弾性部材Gを装着するための態勢に復帰する。
以上の工程を繰り返すことによって、複数の装置の筐体にそれぞれ弾性部材Gを装着する作業を、次々に効率よく行うことが可能となる。
【0029】
なお、前記保持筒4を昇降させるための機構としては、図示した保持筒移動部5の形態に限定されるものではなく、部材押し出し部43を内蔵した保持筒4であれば、他の形態でも構わない。また、操作レバー6とリンク機構61に代えて、他の機構、例えば電動による昇降機構を用いてもよい。
また、前記設置部移動部8に代えて、平行にスライド移動する機構を採用してもよい。
また、以上の実施例においては、筐体設置部3を有する基台1、設置部移動部8、そして保持筒移動部5を一つの主柱11に設置しているが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、設置部移動部8と保持筒移動部5を一つの支柱に設置して、筐体設置部3をベルトコンベア等の搬送手段で移動可能とした構成としてもよい。
さらには、保持筒4が昇降する形態を例にとって説明したが、保持筒4を水平移動させて、対象の装置の筐体に取り付けられた水平方向のシャフトに弾性部材Gを装着する形態も可能である。
【符号の説明】
【0030】
G 弾性部材
G1 孔
10 弾性部材の装着装置
1 基台
11 主柱
2 回転操作デバイス
22 シャフト
3 筐体設置部
31 ガイド
4 保持筒
41 保持手段
42 外筒
43 部材押し出し部
5 保持筒移動部
6 操作レバー
61 リンク機構
62 保持筒回転部
7 部材設置部
71 凹部
72 ピン
8 設置部移動部
81 垂直軸
9 筐体
91 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の筐体に回転シャフトを備えた回転操作デバイスが取り付けられ、前記筐体における前記回転操作デバイスの取り付け部には、前記シャフトを中心として凹部が形成されており、前記シャフトに、挿通部が形成された弾性部材を差し込むとともに、前記凹部に、前記弾性部材の周縁が押し込まれた状態で装着する弾性部材の装着装置であって、
所定の位置に設置された前記装置の筐体の前記シャフトの中心軸の延長線上に配設された保持筒と、
この保持筒を、前記シャフトにかぶせる装着位置と、前記シャフトから離間させる離間位置との2位置に移動させる保持筒移動部と、
前記弾性部材を設置する部材設置部と、
を備え、
前記保持筒には、内径が前記弾性部材の外径より小径に形成された外筒と、
この外筒内で中心軸に沿って移動可能に配設された部材押し出し部とを備えることによって、
前記弾性部材を前記部材設置部に設置し、
前記部材設置部に設置された弾性部材に前記保持筒を当接させ、前記弾性部材をドーム状に変形させた状態で前記保持筒の外筒内に移しかえて保持させ、
前記保持筒移動部を前記装着位置に移動させて、前記外筒内に保持されたドーム状の弾性部材を、前記部材押し出し部によって押し出して、前記筐体の前記凹部に前記弾性部材の周縁を押しこむように構成したことを特徴とする弾性部材の装着装置弾性部材の装着装置。
【請求項2】
前記部材設置部を、前記シャフトの中心軸の延長線上の移し替え位置と、前記弾性部材を前記部材設置部に設置するセット位置との2位置に移動させる設置部移動部を備え、
前記セット位置で前記部材設置部に弾性部材を設置し、
前記部材設置部を前記移し替え位置に移動させた状態で、前記保持筒移動部を前記離間位置から移動させて前記保持筒を前記部材設置部の弾性部材に当接させて前記部材設置部の弾性部材をドーム状に変形させた状態で前記保持筒の外筒内に移しかえて保持させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の弾性部材の装着装置弾性部材の装着装置。
【請求項3】
前記保持筒移動部によって前記保持筒を前記シャフトを覆う装着位置に移動させた状態で、前記保持筒を前記シャフトの中心軸回りに回転させる保持筒回転部を備えたことを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の弾性部材の装着装置弾性部材の装着装置。
【請求項4】
装置の筐体に回転シャフトを備えた回転操作デバイスが取り付けられ、前記筐体における前記回転操作デバイスの取り付け部には、前記シャフトを中心として凹部が形成されており、前記シャフトに、挿通部が形成された弾性部材を差し込むとともに、前記凹部に、前記弾性部材の周縁が押し込まれた状態で装着する弾性部材の装着方法であって、
前記弾性部材を、内径が前記弾性部材の外径より小径に形成された外筒に押しこむことによって、ドーム状に変形させた状態で一旦保持させ、
ドーム状に変形した弾性部材を保持したままの前記外筒を、前記シャフトの中心軸の延長線方向から押し当てて、ドーム状の前記弾性部材を押し出すことによって、弾性部材の挿通部に前記シャフトを差込み、前記弾性部材の周縁を前記筐体の凹部に押しこむことを特徴とする弾性部材の装着方法。
【請求項1】
装置の筐体に回転シャフトを備えた回転操作デバイスが取り付けられ、前記筐体における前記回転操作デバイスの取り付け部には、前記シャフトを中心として凹部が形成されており、前記シャフトに、挿通部が形成された弾性部材を差し込むとともに、前記凹部に、前記弾性部材の周縁が押し込まれた状態で装着する弾性部材の装着装置であって、
所定の位置に設置された前記装置の筐体の前記シャフトの中心軸の延長線上に配設された保持筒と、
この保持筒を、前記シャフトにかぶせる装着位置と、前記シャフトから離間させる離間位置との2位置に移動させる保持筒移動部と、
前記弾性部材を設置する部材設置部と、
を備え、
前記保持筒には、内径が前記弾性部材の外径より小径に形成された外筒と、
この外筒内で中心軸に沿って移動可能に配設された部材押し出し部とを備えることによって、
前記弾性部材を前記部材設置部に設置し、
前記部材設置部に設置された弾性部材に前記保持筒を当接させ、前記弾性部材をドーム状に変形させた状態で前記保持筒の外筒内に移しかえて保持させ、
前記保持筒移動部を前記装着位置に移動させて、前記外筒内に保持されたドーム状の弾性部材を、前記部材押し出し部によって押し出して、前記筐体の前記凹部に前記弾性部材の周縁を押しこむように構成したことを特徴とする弾性部材の装着装置弾性部材の装着装置。
【請求項2】
前記部材設置部を、前記シャフトの中心軸の延長線上の移し替え位置と、前記弾性部材を前記部材設置部に設置するセット位置との2位置に移動させる設置部移動部を備え、
前記セット位置で前記部材設置部に弾性部材を設置し、
前記部材設置部を前記移し替え位置に移動させた状態で、前記保持筒移動部を前記離間位置から移動させて前記保持筒を前記部材設置部の弾性部材に当接させて前記部材設置部の弾性部材をドーム状に変形させた状態で前記保持筒の外筒内に移しかえて保持させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の弾性部材の装着装置弾性部材の装着装置。
【請求項3】
前記保持筒移動部によって前記保持筒を前記シャフトを覆う装着位置に移動させた状態で、前記保持筒を前記シャフトの中心軸回りに回転させる保持筒回転部を備えたことを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の弾性部材の装着装置弾性部材の装着装置。
【請求項4】
装置の筐体に回転シャフトを備えた回転操作デバイスが取り付けられ、前記筐体における前記回転操作デバイスの取り付け部には、前記シャフトを中心として凹部が形成されており、前記シャフトに、挿通部が形成された弾性部材を差し込むとともに、前記凹部に、前記弾性部材の周縁が押し込まれた状態で装着する弾性部材の装着方法であって、
前記弾性部材を、内径が前記弾性部材の外径より小径に形成された外筒に押しこむことによって、ドーム状に変形させた状態で一旦保持させ、
ドーム状に変形した弾性部材を保持したままの前記外筒を、前記シャフトの中心軸の延長線方向から押し当てて、ドーム状の前記弾性部材を押し出すことによって、弾性部材の挿通部に前記シャフトを差込み、前記弾性部材の周縁を前記筐体の凹部に押しこむことを特徴とする弾性部材の装着方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−274360(P2010−274360A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128641(P2009−128641)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】
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