説明

形鋼材への固定具及び固定具装置

【課題】両側壁間が小幅に形成されていても、引寄具の棒状部が吊りボルト及び挟持ボルトと干渉するのを回避して引寄具を取付けることのできる形鋼材への固定具及び固定具装置を提供する。
【解決手段】開口14を有する略コ字状に形成された両側壁12と、開口14から挿入された形鋼材61のフランジ部62を挟持して固定するための挟持部と、両側壁12を連結する連結壁13と、を備え、連結壁13には、両側壁12の開口14方向と直交する方向に挿通されて吊下げられる吊りボルト51の貫通孔を設け、その貫通孔は、吊りボルト51を両側壁12間における中心位置及び中心よりずれた位置のいずれをも選択して挿通可能に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ部を備えた形鋼材に吊りボルトを吊り下げるべく該形鋼材のフランジ部に固定される形鋼材への固定具及び固定具装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の固定具として、特許文献1に記載の固定具が開示されている。この固定具は、図11に示す構造を有し、これに支持部材を連結して、吊りボルト等を吊り下げたり支持するようになっている。この固定具71は、また、図11に示す、形鋼材61のフランジ部62を両側から挟んでこの固定具71を引き寄せる引寄具72を使用することにより、固定具71を強固に形鋼材61に固定し、固定具71が形鋼材61のフランジ部62から抜脱するのを防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−293750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、比較的重量のある吊りボルトを吊り下げる場合は、特許文献1の固定具71における上側の頂壁の幅方向の中心位置に設けられた貫通孔73に吊りボルトを挿通しナットを締め付けて上側の頂壁に吊り下げることも可能である。
しかし、このように吊り下げる場合において、固定具71が小型化の要請などの観点からその両側壁74間が小幅に形成されていると、引寄具72を使用するときに、固定具71の頂壁に吊り下げられた吊りボルトが、固定具71の両側壁74間を水平方向に挿通する引寄具72の棒状部72aと干渉してしまう。このため、引寄具72を取付けることはできず、固定具71を形鋼材61に強固に固定できなくなってしまう。
【0005】
そこで、固定具71を上下逆向きにして形鋼材61に固定することが考えられる。このようにすれば、反転して下側に位置する固定具71の頂壁に吊りボルトを取付けても、引寄具72の棒状部72aは吊りボルトの頭部の上方を水平方向に挿通するから、吊りボルトと引寄具72の棒状部72aとは干渉せず、固定具71への引寄具72の取付けが可能となる。
ところが、その場合は、棒状部72aは、今度はフランジ部62の下方に位置し固定具71の上下方向に取付けられた、形鋼材61のフランジ部62を挟持する挟持ボルト75と干渉してしまう。このため、同様に、固定具71に引寄具72を取付けることはできず、固定具71を形鋼材61に強固に固定することはできない。
【0006】
そこで、本発明は、両側壁間が小幅に形成されていても、引寄具の棒状部が吊りボルト及び挟持ボルトと干渉するのを回避して引寄具を取付けることのできる形鋼材への固定具及び固定具装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の形鋼材への固定具は、フランジ部を備えた形鋼材に固定されるものであって、開口を有する略コ字状に形成された両側壁と、前記開口から挿入された前記フランジ部を挟持して固定するための挟持部と、前記両側壁を連結する連結壁と、を備え、前記連結壁には、前記両側壁の開口方向と直交する方向に挿通されて吊下げられる吊りボルトの貫通孔が設けられ、前記貫通孔は、前記吊りボルトを前記両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置のいずれをも選択して挿通可能に設けられている。
【0008】
請求項2の形鋼材への固定具は、請求項1と同様に両側壁と挟持部と連結壁とを備え、前記挟持部は、前記側壁の開口縁と、先端を前記形鋼材のフランジ部に圧接する挟持ボルトとからなり、前記連結壁には、前記挟持ボルトが前記両側壁の開口方向と直交する方向に挿通されて螺着される螺着孔が設けられ、前記螺着孔は、前記挟持ボルトを前記両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置のいずれをも選択して螺着可能に複数設けられている。請求項1と比較して、請求項1では、吊りボルトの貫通孔が両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置に設けられているのに対し、請求項2は、挟持ボルトの螺着孔が両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置に複数設けられている。
【0009】
請求項3の形鋼材への固定具は、特に、貫通孔が、前記吊りボルトが挿通された状態で前記中心位置と前記中心よりずれた位置との間を移動可能な長孔状に形成されている。
請求項4の形鋼材への固定具は、特に、貫通孔が設けられた前記中心よりずれた位置が、前記ずれた側の側壁内面と、前記ずれた側の貫通孔縁とが略接する位置である。ここで、「略接する」とは、一致または近接する意である。
請求項5の形鋼材への固定具は、特に、前記貫通孔が設けられた前記中心よりずれた位置が、前記貫通孔に挿通された前記吊りボルトの外面が前記ずれた側の側壁内面に略接する位置であり、前記両側壁間は、前記吊りボルトと同一径の他のボルト体が、前記吊りボルトと前記ずれた側と反対側の側壁との間に、前記吊りボルトと直交し前記両側壁の開口方向に沿う方向に挿通された状態で、前記吊りボルトと前記他のボルト体とが略接し、かつ、前記他のボルト体の外面と、前記ずれた側と反対側の側壁内面とが略接する幅に形成されている。
請求項6の形鋼材への固定具は、特に、前記螺着孔が設けられた前記中心よりずれた位置が、前記貫通孔に挿通された前記挟持ボルトの外面が前記ずれた側の側壁内面に略接する位置であり、前記両側壁間は、前記挟持ボルトと同一径の別のボルト体が、前記挟持ボルトと前記ずれた側と反対側の側壁との間に、前記挟持ボルトと直交し前記両側壁の開口方向に沿う方向に挿通された状態で、前記挟持ボルトと前記別のボルト体とが略接し、かつ、前記別のボルト体の外面と、前記ずれた側と反対側の側壁内面とが略接する幅に形成されている。
【0010】
請求項7の形鋼材への固定具装置は、吊りボルトと、前記両側壁と前記挟持部と吊りボルトが挿通される貫通孔を有する前記連結壁とを備えた固定具と、前記フランジ部に固定された前記固定具の両側壁間に一端側が該フランジ部に沿って挿入される棒状部を有し、該棒状部の先端側を前記固定具における側壁の反開口側に係止させて該固定具を前記フランジ部側に引き寄せる引寄具とからなる。そして、前記固定具の連結壁の貫通孔は、前記吊りボルトを前記固定具の両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置のいずれをも選択して吊り下げ可能に設けられている。
請求項8の形鋼材への固定具装置は、請求項7において、貫通孔が、前記吊りボルトを前記固定具の両側壁間における中心よりずれた位置に吊り下げ可能に設けられたものである。
【0011】
請求項9の形鋼材への固定具装置は、請求項7の吊りボルトに代えて挟持ボルトを備えたものであり、固定具の連結壁の螺着孔は、前記挟持ボルトを両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置のいずれをも選択して螺着可能に複数設けられている。
【0012】
請求項10の形鋼材への固定具装置は、特に、固定具の両側壁間が、請求項5と同様の幅に形成されており、請求項5の他のボルト体に代えて引寄具の棒状部を備えたものである。
請求項11の形鋼材への固定具装置は、特に、引寄具の棒状部が、吊りボルトと同一径のボルト体からなる。
請求項12の形鋼材への固定具装置は、特に、固定具の両側壁間が、請求項6と同様の幅に形成されており、請求項6の別のボルト体に代えて引寄具の棒状部を備えたものである。
請求項13の形鋼材への固定具装置は、特に、引寄具が、対向する壁部を有するU字状またはコ字状の係止体を備え、該係止体は、前記壁部の一方が前記固定具の側壁に形成された係止孔に挿通され、前記壁部の他方が前記側壁の反開口側の外側に配置された状態で、一方の前記壁部に形成された通孔を前記棒状部の一端側が貫通し、更に該棒状部の一端側に形成されたネジ部が他方の前記壁部に形成された螺合孔に螺着されることで、前記固定具に係止されるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明は、連結壁の貫通孔が、両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置に設けられているので、吊りボルトを中心よりずれた位置で挿通し吊り下げることで、ずれた側と反対側の側壁と吊りボルトとの間の隙間が拡大するため、吊りボルトと直交する引寄具の棒状部を前記隙間に挿通することが可能となる。その結果、引寄具の取付けが可能となり、固定具をより強固に形鋼材のフランジ部に固定することができる。また、引寄具を使用しないときは、吊りボルトを両側壁間における中心位置で挿通することができるため、吊りボルトをバランス良く安定した状態で吊り下げることができる。
【0014】
請求項2の発明は、連結壁の螺着孔が、両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置に複数設けられているので、請求項1と同様に、挟持ボルトを中心よりずれた位置で螺着することで、ずれた側と反対側の側壁と挟持ボルトとの間の隙間が拡大するため、挟持ボルトと直交する引寄具の棒状部を前記隙間に挿通することが可能となる。その結果、引寄具の取付けが可能となり、固定具をより強固に形鋼材のフランジ部に固定することができる。また、引寄具を使用しないときは、挟持ボルトを両側壁間における中心位置で螺着できるため、挟持ボルトと側壁の開口縁とで形鋼材のフランジ部をバランス良く安定した状態で挟持することができる。
【0015】
請求項3の発明は、貫通孔が長孔状に形成されているので、ナットを緩めるだけで吊りボルトを長孔内で移動させることができ、吊下位置を変更する度にナットを取り外す手間を省くことができる。
請求項4の発明は、両側壁間における中心よりずれた位置が、ずれた側の側壁内面と、前記ずれた側の貫通孔縁とが略接する位置であるから、吊りボルトをずれた側の側壁内面に略接することができ、吊りボルトと反対側の側壁内面との間に大きなスペースを形成できる。
請求項5の発明は、両側壁間が、吊りボルトの外面とずれた側の側壁内面とが略接し、吊りボルトと、該吊りボルトと同一径の他のボルト体とが略接し、前記他のボルト体の外面とずれた側と反対側の側壁内面とが略接する幅に形成されているから、吊りボルトと他のボルトとは同一のボルト体を使用できるとともに、両側壁間の幅方向の大きさを最小限とすることができ、固定具を小型化できる。
請求項6の発明は、両側壁間が、挟持ボルトの外面とずれた側の側壁内面とが略接し、挟持ボルトと、該挟持ボルトと同一径の別のボルト体とが略接し、前記別のボルト体の外面とずれた側と反対側の側壁内面とが略接する幅に形成されているから、挟持ボルトと別のボルトとは同一のボルト体を使用できるとともに、両側壁間の幅方向の大きさを最小限とすることができ、固定具を小型化できる。
【0016】
請求項7の発明は、連結壁の貫通孔が、両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置に設けられているので、請求項1と同様の効果を奏する。
請求項8の発明は、連結壁の貫通孔が、両側壁間における中心よりずれた位置に設けられているので、請求項1、請求項7と同様に、引寄具の棒状部を固定具における中心よりずれた側と反対側の側壁と吊りボルトとの間の隙間に挿通することが可能となる。その結果、引寄具の取付けが可能となり、固定具をより強固に形鋼材のフランジ部に固定することができる。
請求項9の発明は、螺着孔が、両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置に設けられているので、請求項2と同様の効果を奏する。
【0017】
請求項10の発明は、固定具の両側壁間が、請求項5と同様の幅に形成されており、請求項5と同様の効果を奏する。また、吊りボルトの外面とずれた側の側壁内面とが略接し、吊りボルトと、該吊りボルトと同一径の他のボルト体とが略接し、前記他のボルト体の外面とずれた側と反対側の側壁内面とが略接して、各ボルト体、各側壁は相互に当たり合うので、形鋼材に固定した後も各ボルト体はずれたりがたつくことなく一定位置に安定して保持される。
請求項11の発明は、引寄具の棒状部が、吊りボルトと同一径のボルト体からなるので、請求項5と同様に、吊りボルトと引寄具の棒状部とは同一のボルト体を使用できる。
請求項12の発明は、固定具の両側壁間が、請求項6と同様の幅に形成されており、請求項6と同様の効果を奏する。また、請求項10と同様に、各ボルト体、各側壁は相互に当たり合うので、形鋼材に固定した後も各ボルト体はずれたりがたつくことなく一定位置に安定して保持される。
請求項13の発明は、引寄具が、U字状またはコ字状の係止体と棒状部とで固定具の側壁の端部をリング状に囲った状態で固定具の側壁に係止するので、引寄具の一側は固定具に確実に取付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態の固定具装置を示す斜視図である。
【図2】図1の固定具装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図3】図1の固定具装置を形鋼材に固定した状態を示す斜視図である。
【図4】図1の固定具装置を形鋼材に固定した状態を示し、(a)は正面図、(b)は一部破断正面図である。
【図5】図1の固定具を示す斜視図である。
【図6】図5の固定具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図7】図1の引寄具を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図8】図1の引寄具の棒状部と吊りボルトとの配置状態を説明する説明図である。
【図9】本発明の第二実施形態の固定具装置を示す正面図である。
【図10】図9の引寄具の棒状部と挟持ボルトとの配置状態を説明する説明図である。
【図11】従来の固定具装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〈第一実施形態〉
まず、本発明の第一実施形態の固定具及び固定具装置を図1乃至図8に基づいて説明する。なお、図1及び図2は前記固定具装置を示し、図3及び図4はこの固定具装置を形鋼材に固定した状態を示す。
図1乃至図4において、固定具装置1は、フランジ部62を備えた形鋼材61に固定されるものであり、吊りボルト51と、吊りボルト51を形鋼材61のフランジ部62に吊り下げるための固定具11と、固定具11を前記フランジ部62側に引き寄せる引寄具31とで構成されている。
【0020】
以下、各構成部材について詳細に説明する。
前記吊りボルト51は、これに螺合する上下一対のナット52で後述する固定具11の連結壁13を挟持することにより固定具11に垂設される。
【0021】
前記固定具11は、図5及び図6に示すように、鋼板等の金属板材をプレス加工によって屈曲形成され、対向する一対の側壁12,12と、両側壁12を連結する連結壁13とを有している。連結壁13は、図6(b)の上側の頂壁及び下側の底壁として形成されている。両側壁12は略コ字状に切欠形成されて形鋼材61のフランジ部62が挿入される開口14を有する。側壁12の開口14の下側の縁端部である開口縁15には、側壁12に直交して互いに外方に屈曲する一対の当接フランジ16が形成され、この当接フランジ16の上面には形鋼材61のフランジ部62の下面が面当接するようになっている。
【0022】
頂壁である上側の連結壁13aのフランジ部62が挿入される開口14側の幅方向中央位置には、側壁12の開口縁15の当接フランジ16とで形鋼材61のフランジ部62を上下方向から挟持する挟持ボルト53が螺着される螺着孔17が設けられている。これにより、開口14から挿入された形鋼材61のフランジ部62は固定具11の開口縁15の当接フランジ16と挟持ボルト53の先端とで挟持され、固定具11は形鋼材61のフランジ部62に固定される。挟持ボルト53は、六角ボルトが使用され、ネジ部の先端は、形鋼材61のフランジ部62面に安定して当接すべく、平面に形成されている。
【0023】
加えて、上側の連結壁13aにおける螺着孔17より後方の背面側18即ち側壁12の開口14との反対側には貫通孔20が設けられ、また、下側の連結壁13bにおいて上側の貫通孔20と対向する位置には同様の貫通孔20が設けられている。これらの貫通孔20は本願発明の特徴とするものであり、吊りボルト51が上側の貫通孔20及び下側の貫通孔20を上下方向即ち両側壁12の開口14方向と直交する方向に挿通するようになっている。ここで、両側壁12の開口方向は、形鋼材61のフランジ部62と平行する方向である。これらの貫通孔20は、吊りボルト51が挿通された状態で両側壁12間の中心位置即ち連結壁13の幅方向の中心位置と、該中心より一方の側壁12側にずれた位置との間を移動可能な長孔状に形成されている。これにより、吊りボルト51は固定具11の両側壁12間における中心位置及び中心よりずれた位置のいずれをも選択して貫通孔20に挿通できるようになっている。前記両側壁12間における中心よりずれた位置は、ずれた側の一方の側壁12の内面とずれた側の貫通孔20の縁とが略接する位置となっている。ここで、前記「略接する」とは、ずれた側の一方の側壁12の内面と、ずれた側の貫通孔20の縁とが一致または近接する意である。
【0024】
固定具11の両側壁12間の大きさLは、吊りボルト51を貫通孔20の両側壁12間の中心位置に挿通した際に、吊りボルト51の外面の両側と両側壁12との間には、引寄具31の棒状部33を挿入できない大きさの小幅に形成されている。加えて、固定具11の両側壁12間の大きさLは、吊りボルト51が貫通孔20の両側壁12間の中心より一方の側壁12側にずれた位置に挿通された状態において、吊りボルト51と後述する引寄具31の棒状部33とが互いに直交する状態で略接し、かつ、吊りボルト51の外面及び引寄具31の棒状部33の外面がそれぞれ隣接する側壁12の内面に略接する幅に形成されている。
【0025】
なお、このように固定具11の両側壁12間の幅が形成されていることから、長孔状の貫通孔20は、基本的には、両側壁12間の中心位置を中心とする仮想円と中心よりずれた位置を中心とする仮想円とが一部において重なり合って連続するものであり、2つの仮想円を平行する両側の辺で結んだトラック形状またはそれに近い形状となっている。
【0026】
吊りボルト51は、上側及び下側の連結壁13に取付けられたナット52で固定具11を上下両側から挟持して固定具11に取付けられる。なお、吊りボルト51を固定するためのナット52は、上側の連結壁13a及び下側の連結壁13bのそれぞれにおいて各連結壁13を上下から挟持する、即ち計4個を使用して吊りボルト51を固定するようにしてもよい。或いは、下側の連結壁13bの貫通孔20にはナット52を取付けず、単に挿通するものとし、上側の連結壁13aの貫通孔20の上下両側にナット52を取付け上側の連結壁13aを上下から挟持することにより吊りボルト51を固定するものとしてもよい。
【0027】
更に、固定具11の両方の側壁12の背面側18の端部19には、後述する引寄具31の係止体34の一方の壁部41が係止する細長孔形状の係止孔21が設けられている。
【0028】
次に、引寄具31は、形鋼材61における固定具11と反対側のフランジ部62に固定される挟持体32と、一端側がフランジ部62に固定された固定具11の両側壁12間にフランジ部62に沿って挿入され、固定具11と挟持体32とを連結する棒状部33と、固定具11の一方の側壁12の端部に係止して固定具11と棒状部33とを連結する係止体34とで構成されている。
【0029】
このうち、まず、挟持体32は、引寄具31の係止体34とともに形鋼材61のフランジ部62の幅方向即ちフランジ部62の延出方向で形鋼材61を挟持するものであり、図7に示すように、左右対称形の鋼板がその中央で180度折り返されて断面略U字板状に形成され、一対の側板35が間隔をおいて対向している。両側板35は形鋼材61のフランジ部62の側縁部と対向する側端部に挿入開口を有する切欠空間36が形成されており、切欠空間36の奥部に形鋼材61のフランジ部62の端縁部が当接するようになっている。挟持体32の中央の折り返し部37は棒状部33の外径より僅かに大きい内径に形成され、この折り返し部37の内部に棒状部33を貫挿できるようになっている。そして、両側板35には内部側に凹む所定長さの凹条38が設けられ、側板35の剛性を高めているとともに、凹条38の凹みが棒状部33の外面に当接することにより、棒状部33が挟持体32の折り返し部37の内部に貫挿された後に折り返し部37から上方に外れるのを防止している。
【0030】
次に、棒状部33は、全長に至ってまたは一部において外面にねじが形成された直状のボルト体で形成され、その全長は少なくとも固定具11と挟持体32とを連結し得る長さに形成されており、形鋼材61のフランジ部62の下面側に配設される。棒状部33の挟持体32側の端部にはナット39及びワッシャー40が取付けられている。なお、棒状部33は両端部のみにネジ部を設けてもよい。
【0031】
係止体34は、固定具11の一方の側壁12の端部に取付けられるものであり、図7に示すように、鋼材からなる平板材を曲げ加工することにより中間部で折り返した一対の対向する平行板部に形成され、全体が略U字板状或いは略コ字板状に形成されている。係止体34の対向する一方の壁部41は、固定具11の一方の側壁12の端部に設けられた係止孔21に係止するとともに中央部に棒状部33の外径より僅かに大きい内径を有する通孔42が設けられている。対向する他方の壁部43は、一方の壁部41の通孔42と対向する位置即ち該通孔42との同軸上に棒状部33のネジ部と螺合する螺合孔44が設けられている。
【0032】
この係止体34は、一方の壁部41が形鋼材61のフランジ部62の幅方向において挟持ボルト53の軸を越えた、固定具11の側壁12の背面側18の端部19に設けられた係止孔21に挿通され、他方の壁部43が固定具11の側壁12の背面側18即ち反開口側の外側に配置された状態で、一方の壁部41に形成された通孔42を棒状部33の一端側が貫通し、更に棒状部33の一端側に形成されたネジ部が他方の壁部43に形成された螺合孔44に螺着されることで、固定具11に係止されるようになっている。
【0033】
次に、上記のように構成された固定具装置1を使用して吊りボルト51を形鋼材61に取付けて吊り下げる方法を説明する。
最初に、固定具11の側壁12の開口14から形鋼材61の左側のフランジ部62を挿入し、そのフランジ部62の先端を固定具11の開口14の奥部に当接させる。そして、挟持ボルト53を締付けて固定具11の側壁12の開口縁15の当接フランジ16とで形鋼材61のフランジ部62を挟持する。これにより固定具11は形鋼材61のフランジ部62に固定される。
【0034】
続いて、吊りボルト51を固定具11の上下の連結壁13の貫通孔20に貫挿させる。このとき、吊りボルト51は、連結壁13の長孔からなる貫通孔20において、両側壁12間の中心より一方の側壁12側にずれた位置で貫挿させる。これにより、吊りボルト51は、両側壁12間において一方の側壁12側に寄せられ、吊りボルト51の外面と他方の側壁12の内面との間隔は吊りボルト51が寄せられた分だけ大きくなりスペースが拡大するため、吊りボルト51の外面と他方の側壁12の内面との間には引寄具31の棒状部33を挿通可能な状態となる。
【0035】
一方、引寄具31は折り返し部37に棒状部33を貫挿させるとともに、棒状部33の端部にワッシャー40及びナット39を取付けておく。この状態で、次に、引寄具31の係止体34の一方の壁部41を固定具11の側壁12の端部の係止孔21に挿入し係合させるとともに、他方の壁部43を側壁12の背面側18即ち反開口側の外側に配置する。次いで、引寄具31の挟持体32を形鋼材61の右側のフランジ部62側に配置し、棒状部33における挟持体32と反対側の端部を係止体34の一方の壁部41の通孔42に貫挿し、更に、他方の壁部43の螺合孔44に螺合させる。続いて、引寄具31の挟持体32の切欠空間36内に形鋼材61の右側のフランジ部62を挿入させつつ挟持体32を係止体34側に移動させ、ナット39を締付けて挟持体32を形鋼材61の右側のフランジ部62に固定する。これにより、形鋼材61のフランジ部62は固定具11と挟持体32とで挟持される。固定具11が形鋼材61に取付けられた状態を図3及び図4に示す。
【0036】
以上により、引寄具31が取付けられた状態で、形鋼材61に吊りボルト51が固定され吊り下げられる。
なお、上記は、先に固定具11をフランジ部62に固定してから引寄具31を取付けているが、棒状部33の長さに余裕があれば、固定具11と引寄具31とを仮組付けしてからフランジ部62に取付け固定することもできる。
【0037】
次に、引寄具31を取付けないで吊りボルト51を形鋼材61に吊り下げる場合は、吊りボルト51は、固定具11の連結壁13において両側壁12間の中心位置で挿通させる。中心位置で挿通させれば、吊りボルト51を左右バランス良く安定した状態で吊り下げることができるからである。
【0038】
次に、第一実施形態の固定具11及び固定具装置1の作用を説明する。
第一実施形態の固定具11は、後述するようにコンパクトに形成すべく、両側壁12間の大きさLが、吊りボルト51を貫通孔20の両側壁12間の中心位置に挿通した際に、吊りボルト51の外面の両側と両側壁12との間に引寄具31の棒状部33を挿入できない小さい幅に形成されている。このような構造を有する固定具11において、連結壁13に設けた貫通孔20は、長孔の形態で両側壁12間における中心位置及び中心よりずれた位置に設けられている。これにより、吊りボルト51を中心よりずれた位置で挿通し吊り下げることで、ずれた側と反対側の側壁12と吊りボルト51との間のスペースが拡大し、吊りボルト51と直交する引寄具31の棒状部33を前記スペースに挿通することが可能となる。その結果、吊りボルト51を上側の連結壁13aから吊り下げ、固定具11内を上下に貫挿させた状態でも、引寄具31の取付けが可能となるため、固定具11をより強固に形鋼材61のフランジ部62に固定することができる。また、引寄具31を使用しないときは、吊りボルト51を両側壁12間における中心位置で挿通させてバランス上安定した状態で吊り下げることができる。
【0039】
そして、固定具11の両側壁12間は、吊りボルト51と引寄具31の棒状部33とが互いに直交する状態で略接し、かつ、吊りボルト51の外面及び引寄具31の棒状部33の外面がそれぞれ隣接する側壁12の内面に略接する幅に形成されているから、両側壁12間の大きさLを最小限とすることができる。その結果、固定具11を小型化できるため、保管スペース、運搬スペースを縮減でき、また、取り扱いも楽になる。加えて、吊りボルト51、引寄具31の棒状部33及び各側壁12は相互に略接し当たり合う、即ち相互間に隙間を生じないので、形鋼材61に固定した後も吊りボルト51等は位置ずれしたりがたついたりすることがなく一定位置に安定して保持される。
【0040】
更に、連結壁13の貫通孔20は長孔状に形成されているので、ナット52を緩めるだけで吊りボルト51を長孔内で中心位置と中心よりずれた位置との間を移動させることができ、吊下位置を変更する都度ナット52を取り外す手間を省くことができ、作業が楽になる。
【0041】
加えて、引寄具31の一端側は、U字板状またはコ字板状の係止体34と棒状部33とで固定具11の側壁12の端部をリング状に囲った状態で固定具11の側壁12に係止するので、引寄具31の一端側は固定具11に確実に取付けられる。
【0042】
なお、引寄具31の棒状部33は、吊りボルト51と同一径の他のボルト体を使用することもできる。その場合、他のボルト体は、作業現場に残っている吊りボルト51等のボルト体を利用してそれを所定長さに切断し、引寄具31の棒状部33として使用することができる。
【0043】
ところで、上記実施形態において、引寄具31の棒状部33は固定具11の内部である両側壁12間に挿通しているが、引寄具31の棒状部33を固定具11のいずれか一方の側壁12の外側に配置して取付けることも考えられる。固定具11の側壁12の外側に配置すれば、吊りボルト51と引寄具31の棒状部33とは干渉しないため、吊りボルト51を固定具11の連結壁13における両側壁12間の中心位置で挿通し吊り下げることができるからである。
【0044】
しかし、引寄具31の棒状部33を固定具11のいずれか一方の側壁12の外側に配置して取付けると、挟持体32のナット39を締め付けて固定具11を形鋼材61のフランジ部62側に引き寄せたときに、引寄具31の係止体34が係止している固定具11の一方の側壁12の背面側18の端部がフランジ部62の内方に向けて強く引張られる。このため、形鋼材61の長手方向と直交する方向に向けてフランジ部62に固定されている固定具11は、一方の側壁12における係止体34との係止箇所が平面視で挟持ボルト53と開口縁15との挟持部を中心としてフランジ部62の平面に沿って形鋼材61の長手方向に回動し、斜めを向いてしまうことがあり、更にはフランジ部62における固定具11の前記挟持部の位置やフランジ部62の平面形状等によってはフランジ部62から抜脱してしまうことがある。このようなことから、引寄具31の棒状部33は固定具11の内部である両側壁12間に挿通させる必要があるのである。
【0045】
また、上記実施形態において、引寄具31の係止体34は、形鋼材61のフランジ部62の幅方向において、挟持ボルト53の軸を越えた、固定具11の側壁12の背面側18の端部19に係止孔21を設けこれに係止させているが、挟持ボルト53より前方である側壁12の開口14側即ちフランジ部62が挿入される側に係止孔21を設けこれに係止させることも考えられる。係止体34を固定具11のこの位置に係止させるものとすれば、引寄具31の棒状部33は挟持ボルト53の軸を越えた位置つまり挟持ボルト53と開口縁15との挟持点よりも背面側18で吊り下げられている吊りボルト51までは延びておらず吊りボルト51と交差せずこれとは干渉しないので、吊りボルト51を両側壁12間の中心位置に取付けることが可能となるからである。
【0046】
しかし、この場合は、固定具11は、挟持ボルト53の軸の前方においてつまり挟持ボルト53と開口縁15との挟持点より側壁12の開口14側において、フランジ部62の奥側に向けて強く引き寄せられるから、側面視で係止体34の係止箇所を回動中心として下方に回動しようとする。このため、フランジ部62における固定具11の前記挟持点の位置やフランジ部62の平面形状等によっては固定具11がフランジ部62から抜脱してしまうことがある。このようなことから、引寄具31の係止体34は、固定具11の側壁12の背面側18の端部19に係止させているのであり、少なくとも、挟持点である挟持ボルト53の軸つまり螺着孔17の中心位置より背面側18に越えた位置で固定具11の側壁12に係止させるのが望ましい。
【0047】
〈第二実施形態〉
次に、第二実施形態の固定具及び固定具装置を図9及び図10に基づいて説明する。
第二実施形態の固定具11は、吊りボルト51が上側の連結壁13aである頂壁のみに固定されて吊り下げられるものである。したがって、取付け向きを第一実施形態とは上下逆向きにして固定具11をフランジ部62に固定したときは、吊りボルト51は、上下反転して下側に位置することになった連結壁13に固定されて吊り下げられることとなり、固定具11内を上下に貫通しないこととなる。
【0048】
以下、第二実施形態の固定具11及び固定具装置1を、第一実施形態と相違する点を中心に具体的に説明する。
固定具11の連結壁13は、上側の頂壁のみに設けられており、その連結壁13における両側壁12間の中央位置には吊りボルト51が貫通する貫通孔20が1個設けられている。
【0049】
また、頂壁の連結壁13には、挟持ボルト53が両側壁12の開口14方向と直交する方向に挿通されて螺着される螺着孔17が設けられており、この螺着孔17は、挟持ボルト53を両側壁12間における中心位置及び中心よりずれた位置のいずれをも選択して螺着可能に複数設けられている。具体的には、螺着孔17は、図10に示すように、交差する2つの斜め方向の直線上に所定間隔をおいて計5個配設されている、即ち、中心位置に1個、中心よりずれた位置には、中心位置の螺着孔17を挟んで計4個設けられている。
【0050】
固定具11の両側壁12間の大きさLは、固定具11を上下逆向きにして即ち図9に示すように連結壁13が形鋼材61のフランジ部62の下方に位置するようにしてフランジ部62に固定し、挟持ボルト53を両側壁12間の中心位置で螺着したときに、挟持ボルト53の外面の両側と両側壁12との間には、引寄具31の棒状部33を挿入できない大きさの小幅に形成されている。加えて、固定具11の両側壁12間の大きさLは、挟持ボルト53が、螺着孔17の両側壁12間の中心より一方の側壁12側にずれた位置に螺着された状態において、挟持ボルト53と引寄具31の棒状部33とが互いに直交する状態で略接し、かつ、挟持ボルト53の外面及び引寄具31の棒状部33の外面がそれぞれ隣接する側壁12内面に略接する幅に形成されている。
【0051】
側壁12の係止孔21は、固定具11を上下逆向きに設置する場合にも対応すべく、側壁12の高さ方向に更に長く形成され、または高さ方向の上下2箇所に設けられている。
【0052】
この第二実施形態の固定具11においては、固定具11の連結壁13が上側に位置して形鋼材61のフランジ部62に固定されたときは、挟持ボルト53はバランスの点から両側壁12間の中心位置で螺着される。また、吊りボルト51は、上側の連結壁13aにおける両側壁12間の中央位置に取付けられ、固定具11内を上下に貫通した状態で吊り下げられる。この場合、引寄具31は取付けることはできない。固定具11の両側壁12間は、前述のように、小幅に形成されており、吊りボルト51を上側の連結壁13aにおける両側壁12間の中心位置で吊り下げると、吊りボルト51と引寄具31の棒状部33とが干渉してしまうからである。
【0053】
一方、図9に示すように、固定具11を上下逆向きにして頂壁の連結壁13が下側に位置する状態でフランジ部62に固定したときは、吊りボルト51は前記下側に位置する連結壁13に取付けて吊り下げられ、挟持ボルト53は連結壁13における両側壁12間の中心よりずれた位置に設けられている螺着孔17に螺着される。この場合、挟持ボルト53が両側壁12間の中心よりずれた位置で螺着されることにより、ずれた側と反対側の側壁12の内面と挟持ボルト53の外面との間隙が拡大するので、この間隙に引寄具31の棒状部33が挿入されその一端部が固定具11の側壁12に取付けられる。なお、吊りボルト51は、下側に位置する連結壁13に取付けて吊り下げられるので、引寄具31が取付けられても、この棒状部33と干渉することはない。
【0054】
このように構成された第二実施形態の固定具11及び固定具装置1は、第一実施形態の固定具11及び固定具装置1と同様に作用し、連結壁13に設けられた螺着孔17が、両側壁12間における中心位置及び中心よりずれた位置に複数設けられているため、挟持ボルト53を連結壁13の中心よりずれた位置で螺着することで、両側壁12間が小幅の固定具11内に挟持ボルト53と引寄具31の棒状部33とを直交する状態で挿通させることができる。その結果、固定具11を小型化でき、そして、挟持ボルト53等を位置ずれしたりがたついたりすることなく一定位置に安定して保持できる。また、引寄具31を使用しないときは、挟持ボルト53を両側壁12間における中心位置で螺着させて安定した状態で側壁12の開口縁15とで形鋼材61のフランジ部62を挟持することができる。
【0055】
なお、引寄具31の棒状部33は、挟持ボルト53と同一径の別のボルト体を使用することもできる。その場合、別のボルト体は、作業現場に残っている挟持ボルト53等のボルト体を利用して引寄具31の棒状部33として使用することができる。
【0056】
〈変形例等〉
ところで、上記各実施形態では、固定具11の両側壁12間の大きさLは、吊りボルト51、挟持ボルト53、引寄具31の棒状部33、両側壁12等が互いに略接する幅に形成されているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、両側壁12間の大きさLが、吊りボルト51や挟持ボルト53を両側壁12間の中心位置で螺着した際に、吊りボルト51や挟持ボルト53の外面の両側と両側壁12との間には、引寄具31の棒状部33を挿入できない小幅の大きさであれば、各ボルト間、側壁12間に隙間を有する大きさのものであってもよい。即ち、両側壁12間の大きさLが前記小幅の大きさのものであれば、両側壁12間の大きさLは、吊りボルト51、挟持ボルト53、引寄具31の棒状部33、側壁12相互間が全て略接する大きさでなくてもよく、両側壁12間の大きさLは、中心からずらして取付けられた吊りボルト51や挟持ボルト53の外面と前記各ボルトをずらした側の側壁12との間、前記各ボルトと引寄具31の棒状部33との間、前記各ボルトをずらした側と反対側の側壁12と引寄具31の棒状部33との間のいずれか一または二、或いはこれらの間全てにおいて隙間がある大きさであってもよい。
【0057】
そして、第一実施形態では、固定具11の連結壁13における両側壁12間の中心位置及び中心よりずれた位置に貫通孔20を設け、第二実施形態では、固定具11の連結壁13における両側壁12間の中心位置及び中心よりずれた位置に複数の螺着孔17を設けているが、本発明を実施する場合には、固定具11の連結壁13の背面側18における両側壁12間の中心位置及び中心よりずれた位置に貫通孔20を設け、かつ、この連結壁13の開口14側における両側壁12間の中心位置及び中心よりずれた位置に複数の螺着孔17を設けてもよい。この場合は、固定具11を上下逆向きにして形鋼材61のフランジ部62の下側から挟持ボルト53を上方に向けて取付けるとともに、吊りボルト51は上側の連結壁13に取付けて固定具11内を貫通させた状態で、引寄具31の棒状部33をフランジ部62に沿って取付けることもでき、固定具11を引き寄せることができる。
【0058】
また、上記各実施形態の連結壁13は、固定具11の背面側18即ち側壁12の開口14と反対側の側面にも背面壁として加え、頂壁、底壁及び背面壁からなる略コ字板状に形成されたものとしてもよい。
【0059】
更に、上記各実施形態の引寄具31の係止体34は、対向する壁部41,43を有するU字板状またはコ字板状に形成され、一方の壁部41が固定具11の側壁12の係止孔21に挿通され、他方の壁部43が側壁12の反開口側の外側に配置された状態で、一方の壁部41の通孔42を引寄具31の棒状部33の一端側が貫通し、更に他方の壁部43の螺合孔44に螺着されることで、固定具11に係止されるものであるが、これに限定されるものではない。例えば、係止体は、両側板と中間板とを備えたコ字板状に形成し、中間板において少なくとも、吊りボルト51及び挟持ボルト53が引寄具31の棒状部33と干渉することのない、中間板の中心からずれた位置に螺合孔を設け、この係止体をその中間板が固定具11の背面の一部を閉塞するようにして該固定具11の後方からその背面にあてがい、中間板に設けた螺合孔に引寄具31の棒状部33の一端側を螺着し引き寄せるようにして固定具11の背面に取付けるものとしてもよい。なお、この場合、係止体の中間板の螺合孔は、更に中間板の中心位置にも設けてもよい。
【0060】
そして、第一実施形態の貫通孔20は、長孔状に形成されているが、2つの仮想円が一部において重なり合って連通するだるま形状に形成したものであってもよい。或いは、第二実施形態の螺着孔17と同様に、吊りボルト51が挿通される互いに独立した孔を所定位置に複数設けたものとしてもよい。但し、これらの場合は、吊りボルト51の取付位置を、中心位置と中心よりずれた位置との間で変更する都度、ナット52を吊りボルト51から取り外す必要がある。
【0061】
また、第二実施形態の螺着孔17は、両側壁12間の中心位置及び中心よりずれた位置に設けられていれば、その数、配置は問わない。例えば、一方の斜め線上に所定間隔をおいて計3個配設したものとしてもよい。或いは、中心位置に1個、中心よりずれた位置に1個の計2個を配設したものとしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 固定具装置 33 棒状部
11 固定具 34 係止体
12 側壁 41、43 壁部
13 連結壁 42 通孔
14 開口 44 螺合孔
15 開口縁 51 吊りボルト
17 螺着孔 53 挟持ボルト
20 貫通孔 61 形鋼材
21 係止孔 62 フランジ部
31 引寄具 L 両側壁間の大きさ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ部を備えた形鋼材に固定される形鋼材への固定具であって、
開口を有する略コ字状に形成された両側壁と、前記開口から挿入された前記フランジ部を挟持して固定するための挟持部と、前記両側壁を連結する連結壁と、を備え、
前記連結壁には、前記両側壁の開口方向と直交する方向に挿通されて吊下げられる吊りボルトの貫通孔が設けられ、
前記貫通孔は、前記吊りボルトを前記両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置のいずれをも選択して挿通可能に設けられていることを特徴とする形鋼材への固定具。
【請求項2】
フランジ部を備えた形鋼材に固定される形鋼材への固定具であって、
開口を有する略コ字状に形成された両側壁と、前記開口から挿入された前記フランジ部を挟持して固定するための挟持部と、前記両側壁を連結する連結壁と、を備え、
前記挟持部は、前記側壁の開口縁と、先端を前記形鋼材のフランジ部に圧接する挟持ボルトと、からなり、
前記連結壁には、前記挟持ボルトが前記両側壁の開口方向と直交する方向に挿通されて螺着される螺着孔が設けられ、
前記螺着孔は、前記挟持ボルトを前記両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置のいずれをも選択して螺着可能に複数設けられていることを特徴とする形鋼材への固定具。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記吊りボルトが挿通された状態で前記中心位置と前記中心よりずれた位置との間を移動可能な長孔状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の形鋼材への固定具。
【請求項4】
前記両側壁間における中心よりずれた位置は、前記ずれた側の側壁内面と、前記ずれた側の貫通孔縁とが略接する位置であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の形鋼材への固定具。
【請求項5】
前記両側壁間における中心よりずれた位置は、前記貫通孔に挿通された前記吊りボルトの外面が前記ずれた側の側壁内面に略接する位置であり、
前記両側壁間は、前記吊りボルトと同一径の他のボルト体が、前記吊りボルトと前記ずれた側と反対側の側壁との間に、前記吊りボルトと直交し前記両側壁の開口方向に沿う方向に挿通された状態で、前記吊りボルトと前記他のボルト体とが略接し、かつ、前記他のボルト体の外面と、前記ずれた側と反対側の側壁内面とが略接する幅に形成されていることを特徴とする請求項1、請求項3及び請求項4のいずれかに記載の形鋼材への固定具。
【請求項6】
前記両側壁間における中心よりずれた位置は、前記貫通孔に挿通された前記挟持ボルトの外面が前記ずれた側の側壁内面に略接する位置であり、
前記両側壁間は、前記挟持ボルトと同一径の別のボルト体が、前記挟持ボルトと前記ずれた側と反対側の側壁との間に、前記挟持ボルトと直交し前記両側壁の開口方向に沿う方向に挿通された状態で、前記挟持ボルトと前記別のボルト体とが略接し、かつ、前記別のボルト体の外面と、前記ずれた側と反対側の側壁内面とが略接する幅に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の形鋼材への固定具。
【請求項7】
フランジ部を備えた形鋼材に固定される形鋼材への固定具装置であって、
吊りボルトと、
開口を有する略コ字状に形成された両側壁と、前記開口から挿入された前記フランジ部を挟持して固定するための挟持部と、前記両側壁を連結するとともに、前記吊りボルトを前記両側壁の開口方向と直交する方向に吊り下げるべく該吊りボルトが挿通される貫通孔を有する連結壁と、を備えた固定具と、
前記フランジ部に固定された前記固定具の両側壁間に一端側が該フランジ部に沿って挿入される棒状部を有し、該棒状部の先端側を前記固定具における側壁の反開口側に係止させて該固定具を前記フランジ部側に引き寄せる引寄具と、からなり、
前記固定具の連結壁の貫通孔は、前記吊りボルトを前記固定具の両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置のいずれをも選択して吊り下げ可能に設けられていることを特徴とする形鋼材への固定具装置。
【請求項8】
フランジ部を備えた形鋼材に固定される形鋼材への固定具装置であって、
吊りボルトと、
開口を有する略コ字状に形成された両側壁と、前記開口から挿入された前記フランジ部を挟持して固定するための挟持部と、前記両側壁を連結するとともに、前記吊りボルトを前記両側壁の開口方向と直交する方向に吊り下げるべく該吊りボルトが挿通される貫通孔を有する連結壁と、を備えた固定具と、
前記フランジ部に固定された前記固定具の両側壁間に一端側が該フランジ部に沿って挿入される棒状部を有し、該棒状部の先端側を前記固定具における側壁の反開口側に係止させて該固定具を前記フランジ部側に引き寄せる引寄具と、からなり、
前記固定具の連結壁の貫通孔は、前記吊りボルトを前記固定具の両側壁間における中心よりずれた位置に吊り下げ可能に設けられていることを特徴とする形鋼材への固定具装置。
【請求項9】
フランジ部を備えた形鋼材に固定される形鋼材への固定具装置であって、
開口を有する略コ字状に形成された両側壁と、前記開口から挿入された前記フランジ部を挟持して固定するための挟持部と、前記両側壁を連結する連結壁と、を備えた固定具と、
前記フランジ部に固定された前記固定具の両側壁間に一端が該フランジ部に沿って挿入される棒状部を有し、該棒状部の先端側を前記固定具における側壁の反開口側に係止させて該固定具を前記フランジ部側に引き寄せる引寄具と、からなり、
前記固定具の挟持部は、前記側壁の開口縁と、先端を前記形鋼材のフランジ部に圧接する挟持ボルトと、からなり、
前記固定具の連結壁には、前記挟持ボルトが前記両側壁の開口方向と直交する方向に挿通されて螺着される螺着孔が設けられ、
前記固定具の連結壁の螺着孔は、前記挟持ボルトを前記両側壁間における中心位置及び中心よりずれた位置のいずれをも選択して螺着可能に複数設けられていることを特徴とする形鋼材への固定具装置。
【請求項10】
前記固定具の両側壁間は、前記吊りボルトと前記引寄具の棒状部とが互いに直交可能な幅であって、前記吊りボルトと前記引寄具の棒状部とが略接し、かつ、前記吊りボルトの外面及び前記引寄具の棒状部の外面がそれぞれ隣接する前記側壁内面に略接する幅に形成されていることを特徴とする請求項7及び請求項8に記載の形鋼材への固定具装置。
【請求項11】
前記引寄具の棒状部は、前記吊りボルトと同一径のボルト体からなることを特徴とする請求項7、請求項8及び請求項10のいずれかに記載の形鋼材への固定具装置。
【請求項12】
前記固定具の両側壁間は、前記挟持ボルトと前記引寄具の棒状部とが互いに直交可能な幅であって、前記挟持ボルトと前記引寄具の棒状部とが略接し、かつ、前記挟持ボルトの外面及び前記引寄具の棒状部の外面がそれぞれ隣接する前記側壁内面に略接する幅に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の形鋼材への固定具装置。
【請求項13】
前記引寄具は、対向する壁部を有するU字板状またはコ字板状の係止体を備え、
該係止体は、前記壁部の一方が前記固定具の側壁に形成された係止孔に挿通され、前記壁部の他方が前記側壁の反開口側の外側に配置された状態で、一方の前記壁部に形成された通孔を前記棒状部の一端側が貫通し、更に該棒状部の一端側に形成されたネジ部が他方の前記壁部に形成された螺合孔に螺着されることで、前記固定具に係止されることを特徴とする請求項7乃至請求項12のいずれかに記載の形鋼材への固定具装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−141022(P2012−141022A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294432(P2010−294432)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】