説明

役物外装材

【課題】建築物の下地が経年劣化や地震等によって変形しても、役物外装材を構成する2つの外装片が破損傷し難く、かつ美観に優れた役物外装材を提供する。
【解決手段】第1及び第2の外装片1,2の傾斜面1a,2aが弾性接着素材3を介して結合されている。これら第1及び第2の外装片1,2は、これら傾斜面1a,2aと表面1s,2sとが交叉する先端部1t,2tが鋭角になっている。該弾性接着素材3は先端部1t,2tまで延在しておらず、先端部1t,2tの間に間隙12が形成されている。このため、建築物の変形に外装片1,2が追従し、先端部1t,2t同士が近づいても、該先端部1t,2tが弾性接着素材3によって応力を受けることがなく、該先端部1t,2tが損傷することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ平板状の第1の外装片及び第2の外装片が、各外装片の板面同士が略垂直となるように、弾性接着素材によって結合されてなるL字形の役物外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の出隅部や入隅部に施工されるL字型の役物外装材として、2枚の平板状のタイルをエポキシ系接着剤で接合したものがあるが、接合が剛であるため、役物外装材が割れ易い。
【0003】
特開平7−207813号には、タイル片の1つの側面を板面に対して傾斜させた傾斜面にし、2つのタイル片の傾斜面の全面同士を弾性接着剤によって接着してなる役物タイルが記載されている。同号公報の役物タイルは、弾性接着剤を用いており、タイル片の接合部が可撓性を有していることから、該役物タイルのタイル片同士の角度を調節しながら建物躯体の出隅部に取り付けることができる。また、同号公報の第0016段落には、該傾斜面においてタイル片同士が直接に接触することがないので、欠損が防止されると記載されている。
【特許文献1】特開平7−207813号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特開平7−207813号の役物タイルにおいては、タイル片の傾斜面同士が全面にわたって弾性接着剤によって結合されている。このため、タイル片同士の接合部の先端側同士の間の間隔を狭める方向に外力が加えられた場合、弾性接着剤の変形量が少なく、該接合部付近の各タイル片先端側に変形応力が集中し易い。従って、建築物の下地が経年劣化や地震等によって大きく変形した場合、タイル片の先端側が破損するおそれがある。
【0005】
また、同号公報の役物タイルでは、該傾斜面同士の間隔を狭めるように外力が加えられた場合、該傾斜面同士の間の弾性接着剤が圧迫されて表面側にはみ出し、美観を損ねるおそれもある。
【0006】
本発明は、建築物の下地が経年劣化や地震等によって変形しても、役物外装材を構成する2つの外装片が破損し難く、かつ美観に優れた役物外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の役物外装材は、第1の外装片及び第2の外装片が、各外装片同士が略垂直となるように結合されてなる、L字コーナー部を有するL字形の役物外装材であって、該第1,第2の外装片の1つの側面が該外装片の表面もしくは裏面に斜交する傾斜面となっており、該傾斜面同士が弾性接着素材を介して結合されてなる役物外装材において、該弾性接着素材は、該傾斜面のうち該L字コーナー部の凸角部側の辺までは配置されておらず、該凸角部側において、該第1の外装片の傾斜面と第2の外装片の傾斜面との間に間隙が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の役物外装材は、請求項1において、該傾斜面における該凸角部側の辺から該凸角部と反対側の辺までの長さをLとした場合、該間隙の深さDは、0.5mm以上かつL/2以下であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の役物外装材は、請求項1又は2において、該間隙の幅Wは、0.1mm以上かつ2.0mm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の役物外装材は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記第1及び第2の外装片は、前記傾斜面と前記外装片の表面とが鋭角に交叉する先端部が面取りされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の役物外装材によれば、傾斜面の凸角部側において、傾斜面同士の間に間隙が形成されている。このため、役物外装材に対し傾斜面の凸角部側の間隔を狭めるように外力が加えられた場合に、該傾斜面同士の間の弾性接着素材が外力に追従して容易に変形するようになり、各外装片に生じる応力が緩和され、外装片の破損が防止される。また、該間隙が存在するため、弾性接着素材が圧迫されて表面側に移動したとしても該間隙内からはみ出ることが防止される。
【0012】
本発明において、間隙の深さDが0.5mm以上である場合、外装片の損傷及び弾性接着素材のはみ出しがより確実に防止されると共に、弾性接着素材が目立たない。間隙の深さDがL/2以下である場合、弾性接着素材による第1,第2の外装片の結合力が十分なものになる。
【0013】
本発明において、該間隙の幅Wが0.1mm以上である場合、役物外装材に大きな外力が加えられても、これら傾斜面同士が接触して損傷することがない。また、該間隔の幅Wが2.0mm以下である場合、美観に優れたものとなる。
【0014】
本発明において、第1及び第2の外装片は、傾斜面と板面とが鋭角に交叉する先端部が面取りされていることが好ましい。この場合、該先端部に人体が触れたときに怪我をすることが防止される。また、該先端部が破損し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。第1図は実施の形態に係る役物外装材を裏面側から見た斜視図、第2図(a)は第1図の役物外装材における凸角部付近の平面図、第2図(b)は第2図(a)の弾性接着素材が変形した状態を示す平面図、第3図は第1図の役物外装材を建物躯体の出隅部に施工した状態を示す斜視図である。
【0016】
第1図の通り、役物外装材10は、それぞれ平板状の第1の外装片1及び第2の外装片2が、各外装片1,2の板面同士が垂直となるように弾性接着素材3を用いて結合されてなるものである。
【0017】
この第1,第2の外装片1,2としては、タイル、石材、セメント板、窯業系ボード、金属系ボード等が用いられる。
【0018】
この弾性接着素材3としては、弾性接着剤、弾性テープなどが挙げられる。ここで、この弾性接着剤としては、変成シリコーン系、シリコーン系、ウレタン系、天然ゴム系、ブチルゴム系、クロロブチレンゴム系、アスファルト、ニトリルゴム系、スチレンブタジエンゴム系、酢酸ビニル系、アクリル系、ポリサルファイド系、ポリイソブチレン系等が挙げられる。また、弾性テープとしては、ブチル系、ゴム系、アクリル系のテープや、このテープと、ネット、フィルム、不織布、クロス、金属箔等との合成素材等が挙げられる。
【0019】
第1の外装片1は、1つの側面が板面に斜交する傾斜面1aになっている。同様に、第2の外装片2も、1つの側面が板面に斜交する傾斜面2aになっている。これら傾斜面1a,2a同士が弾性接着素材3を介して結合されている。
【0020】
第1図において、符号1b,2bは、それぞれ第1,第2の外装片1,2の裏面である。また、符号1s,2sは、それぞれ第1,第2の外装片1,2の前面である。
【0021】
この第1の外装片1は、傾斜面1aと前面1sとのなす角度が45°になっている。同様に、第2の外装片2は、傾斜面2aと前面2sとのなす角度が45°になっている。ただし、これらの角度は43〜47°程度であればよい。これら傾斜面1a,2aを結合した状態において、該第1の外装片1と第2の外装片2とのなす内角は90°になっている。ただし、この内角は88〜92°程度であればよい。
【0022】
この役物外装材10は、これら第1,第2の外装片1,2の結合部の前面側を凸角部11とする、L字形を有している。
【0023】
第2図(a)の通り、弾性接着素材3は、傾斜面1a,1bの凸角部11側(表面1s,2s側)の辺まで延在しておらず、該凸角部11側において、該傾斜面1a,2aの間に間隙12が形成されている。
【0024】
これら第1及び第2の外装片1,2は、これら傾斜面1a,2aと該外装片の表面(表面1s,2s)とが交叉する先端部1t,2tが鋭角になっている。
【0025】
これら傾斜面1a,2aにおいて、該表面1s,2s側(該凸角部11側)の辺から裏面1b,2b側の辺までの長さをLとした場合、該間隙12の深さDは、0.5mm以上かつL/2以下、特に1〜3mmであることが好ましい。また、この間隙12の幅Wは、0.1mm以上かつ2.0mm以下であることが好ましい。
【0026】
なお、この役物外装材10では、外装片1,2の裏面1b,2bに裏足が設けられていないが、裏足が設けられていてもよい。この場合にあっては、上記長さLは裏足を除いた長さを意味する。また、表面に凹凸が設けられていてもよい。凹凸が設けられている場合には最も低い位置を深さDの起点とする。
【0027】
次に、第3図を用いて、この役物外装材10を建物の出隅部に施工する方法を説明する。
【0028】
第3図において、建物の壁面21と壁面22とのなす角度は90°になっている。これら壁面21,22よりなる出隅部に対してこの役物外装材10を施工するには、先ず壁面21,22に接着剤(図示略)を塗布する。次いで、この役物外装材10の裏面1b,2bを接着剤が塗布された面に揉み込むようにして押さえ付ける。さらに、押さえ板などで軽く叩き、表面の段差を調整する。
【0029】
第2図(b)は、役物外装材10に矢印X,Xの方向の外力が加えられ、先端部1t,2t同士が近づいた状態を示している。このように先端部1t,2t同士が近づいても、これら先端部1t,2tの間に間隙12が形成されているため、該先端部1t,2tが弾性接着素材3から反力を受けることがない。このため、該先端部1t,2t付近に応力が発生せず、先端部1t,2t近傍の損傷が防止される。また、該間隙12が存在するため、圧迫された該弾性接着素材3が該間隙12内から該表面1s,2s側にはみ出ることはなく、美感を損ねることがない。
【0030】
第4図は別の実施の形態に係る役物外装材10Cの平面図である。
【0031】
この役物外装材10Cでは、第1,第2の先端部1t,2tの先端が面取りされている。これにより、該先端部1t,2tは破断ないし損傷し難いものとなる。また、該先端部1t,2tに人体が触れたときに怪我をすることが防止される。該先端部1t,2tの面取りによって形成された先端面の幅は、1mm以上であることが好ましい。
【0032】
第5図はさらに別の実施の形態に係る役物外装材10Dの平面図である。この役物外装材10Dでは、先端部1t,2tが曲面になっている。該先端部1t,2tの曲率半径は1mm以上であることが好ましい。
【0033】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態に係る役物外装材は出隅部用であったが、入隅部、垂壁、バルコニー下など、他の箇所に用いてもよい。
【0034】
また、上記実施の形態では、弾性接着素材3は傾斜面1a,2aのうち裏面1b,2b側の辺まで延在しており、該裏面1b,2b側には間隙が形成されていないが、該裏面1b,2b側にも間隙を設けてもよい。
【実施例】
【0035】
第2図(a)の通り、2枚のタイルの傾斜面を弾性接着素材を介して結合することにより、役物外装材を得た。なお、タイル及び弾性接着素材は以下のものを用いた。
タイル:164mm×72mm×14mm、傾斜面と表面とのなす角度45°、
タイル同士のなす角度90°
弾性接着素材:市販の弾性接着剤(株式会社INAX製「ワンパックボーイVI(EG−VI)」、厚さ1mm)
【0036】
また、間隙の幅Wを1mmとし、間隙の深さDを2mmとした。次いで、第2図(b)の矢印Xの通り、該間隙の最も表面側の幅Wが1mmになるまで、これらタイルに力を加えた。
【0037】
その結果、タイルが破損することはなかった。また、ブチルテープが表面側にはみ出すこともなかった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態に係る役物外装材を裏面側から見た斜視図である。
【図2】第2図(a)は第1図の役物外装材における凸角部付近の平面図、第2図(b)は第2図(a)の役物外装材が変形した状態を示す平面図である。
【図3】第1図の役物外装材を建物躯体の出隅部に施工した状態を示す斜視図である。
【図4】別の実施の形態に係る役物外装材10Cの平面図である。
【図5】さらに別の実施の形態に係る役物外装材10Dの平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 第1の外装片
2 第2の外装片
1a,2a 傾斜面
1t,2t 先端部
3 弾性接着素材
10,10C,10D 役物外装材
11 凸角部
12 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外装片及び第2の外装片が、各外装片同士が略垂直となるように結合されてなる、L字コーナー部を有するL字形の役物外装材であって、
該第1,第2の外装片の1つの側面が該外装片の表面もしくは裏面に斜交する傾斜面となっており、該傾斜面同士が弾性接着素材を介して結合されてなる役物外装材において、
該弾性接着素材は、該傾斜面のうち該L字コーナー部の凸角部側の辺までは配置されておらず、該凸角部側において、該第1の外装片の傾斜面と第2の外装片の傾斜面との間に間隙が形成されていることを特徴とする役物外装材。
【請求項2】
請求項1において、該傾斜面における該凸角部側の辺から該凸角部と反対側の辺までの長さをLとした場合、該間隙の深さDは、0.5mm以上かつL/2以下であることを特徴とする役物外装材。
【請求項3】
請求項1又は2において、該間隙の幅Wは、0.1mm以上かつ2.0mm以下であることを特徴とする役物外装材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記第1及び第2の外装片は、前記傾斜面と前記外装片の表面とが鋭角に交叉する先端部が面取りされていることを特徴とする役物外装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−2084(P2008−2084A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170294(P2006−170294)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】