説明

往復機械用のロッドとクロスヘッドの間の連結機構

【課題】ロッドおよびクロスヘッドを同軸にするための煩わしいセンタリング作業または位置決め作業を回避する往復圧縮機などの往復機械のロッドとクロスヘッドの間の連結機構を提供すること。
【解決手段】固定手段(37)によってクロスヘッド(30)に固定されたフランジ(35)を備える往復機械用のロッド(20)およびクロスヘッド(30)の間の連結機構(10)。ロッドは、往復機械のシリンダ(60)の内側で摺動するピストン(70)に連結され、フランジ(35)は、締め付け装置(50)によってフランジ(35)に固定されたロッド(20)を挿入するための軸方向の貫通孔(38)を備え、連結機構(10)は、ロッド(20)とシリンダ(60)を実質的におよび永続的に同軸にするためにフランジ(35)とクロスヘッド(30)の間に位置する一連の偏心位置決めピン(40)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復機械用の、詳細には往復圧縮機用のロッドとクロスヘッドの間の連結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクティングロッドがクロスヘッドおよび対応するロッドによって関連したピストンに連結される往復圧縮機では、ロッドとクロスヘッドの間の連結機構は、往復機械の信頼性、耐用年数、および性能にとって重要な要素を代表している。
【0003】
特に、連結機構は、シリンダから連結機構に向けてのガスの通過を防止するため前記ピストンがその中で摺動するシリンダと前記ロッドとの間に位置する、密封装置の信頼性および耐用年数に影響する。
【0004】
前記密封装置は、磨耗を受ける一連の要素を備え、その要素は、シリンダと一体であり、シリンダに対して軸方向に摺動し、ピストンに取り付けられているロッドとも接触している。
【0005】
前記密封装置の前記一連の要素は、往復機械の運転中に受けるストレスの状態に応じた耐用年数を有する。
【0006】
実際には、前記密封装置の前記一連の要素は、通常、往復機械の働きの繰り返し負荷特性により誘起される動応力によって生じる摩擦による磨耗を受ける。
【0007】
密封装置の要素の摩擦は、その結果として磨耗も同様に、ロッドが中でも固定部品に対して軸方向に変位する場合に特に顕著であり、具体的には、前記ロッドに連結された前記ピストンが中で摺動するシリンダに対して変位する場合に顕著である。
【0008】
往復機械の効率的な働きを保証するのに必要とされる必要条件をもはや考慮しない場合、磨耗の結果、したがって、密封装置の要素は、それを交換するまで保守作業および定期的な管理を必要とする。
【0009】
したがって、この欠点を克服するため、連結機構は、摩耗を受ける密封装置の要素の摩耗を可能な限り減少させるため、ロッドがシリンダに対して正確にセンタリングされるようにする必要がある。
【0010】
シリンダ内で生成されるガスに対する密封装置の摩耗を受ける構成要素の耐用年数を最大限にするために、往復圧縮機に対するいくつかの基準調整(reference regulation)で生じるような同軸度の誤差をあらかじめ定められた最高値よりも低く維持することが極めて重要である。
【0011】
クロスヘッドは、連結機構によってロッドに連結されているので、ロッドおよびシリンダを同軸にするために、同軸度の誤差を補正することができるセンタリング作業を実施することが必要である。
【0012】
第1の欠点は、こうした作業が製造段階、および構成要素が分解され組み立てられる各保守または管理作業中に実施されることである。
【0013】
前記同軸度の誤差またはシフト(shift)は、振れ測定(run−out measurement)によって、ロッドまたはクロスヘッドの軸に垂直なレベル(level)上で、互いに垂直な2つの方向に対して評価される。
【0014】
用語「振れ」は、固定部分(シリンダ)と一体で、ロッドと接触する比較器によって得られる、ロッドがその特定の行程(run)に沿って摺動する間の測定値の変動を指す。
【0015】
このようにして、垂直シフトおよび水平シフトが規定され、それは、可動部分であるロッドと固定部分であるシリンダの間の同軸度を得るために、補正される必要がある。
【0016】
前記ロッドと前記シリンダの間に位置する連結機構の各要素が作業用マージン(operating margin)を有しているので、各要素はロッドおよびシリンダの間に小さな同軸度の誤差を生じる。
【0017】
したがって、ロッドとシリンダの間の全体の垂直および水平のシフトは、それぞれ、ロッドをクロスヘッドに連結する要素の全ての垂直および水平のシフトの代数和によって与えられる。
結果として生じる別の欠点は、大きな寸法の往復機械に関しては、単一の構成要素の加工マージン(manufacturing margin)が同軸度の誤差を生じ、その結果として、確立された限度を越える水平および垂直の振れも生じる可能性があることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の1つの目的は、例えば、往復圧縮機などの往復機械のロッドとクロスヘッドの間の連結機構を提供することであり、その往復圧縮機は、ロッドおよびクロスヘッド、あるいは往復機械を保守する間、ロッドおよびクロスヘッドを同軸にするための煩わしいセンタリング作業または位置決め作業を回避する。
【0019】
別の目的は、摩耗を受ける構成要素の耐用年数および信頼性を増加させることができる往復機械のロッドとクロスヘッドの間の連結機構を提供することである。
【0020】
別の目的は、摩耗を受ける要素を交換するための保守の時間およびコストを低減できる、往復機械のロッドとクロスヘッドの間の連結機構を提供することである。
【0021】
別の目的は、圧縮機自体の運転中、および圧縮機の保守作業中に構成要素の容易なセンタリングを可能にする往復機械のロッドとクロスヘッド間の連結機構を提供することである。
【0022】
別の目的は、往復機械のロッドとクロスヘッドの間の簡単で信頼性のある連結機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によるこれらの目的は、請求項1に詳述した往復機械のロッドおよびクロスヘッドの間の連結機構を提供することにより達成される。
【0024】
本発明のさらなる特徴は、添付の特許請求の範囲に示されている。
【0025】
本発明による往復圧縮機のロッドとクロスヘッドの間の連結機構の特徴および利点は、添付の概略図面を参照して、以下の例示であり限定されない説明からより明白に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図面を参照すると、これらの図面は、往復機械用、特に往復圧縮機用のロッド20とクロスヘッド30の間の連結機構10を示し、前記連結機構10は、フランジ35を備える。
【0027】
前記ロッド20は、好ましくは、図4に示される往復機械のシリンダ60の内側で摺動するピストン70に連結され、一方、前記クロスヘッド30は、ピン32によってコネクティングロッドに連結されている。
【0028】
前記フランジ35は、好ましくは軸方向の中央貫通孔38を有し、好ましくは、例えば一連のタイロッド37などの固定手段によって摺動ブロック33を備えた前記クロスヘッド30にも固定されている。
【0029】
前記連結機構10は、前記クロスヘッド30と、前記ロッド20が挿入された前記フランジ35の前記中央貫通孔38とを同軸に、すなわち前記クロスヘッド30と前記ロッド20の間の同軸度の誤差を規定の許容範囲内にすることを可能にするために前記クロスヘッド30と前記フランジ35の間に位置する、好ましくは2つの一連の偏心位置決めピン40を備える。
【0030】
このようにして、前記ロッド20と前記シリンダ60の間の軸方向変位または偏心性をあらかじめ確立された限度内に補正することが可能である。
【0031】
こうすることの目的は、密封装置90の摩耗を減少させ、また、耐用年数を最大限にし、その結果として往復機械への保守の介在を減少させることである。
【0032】
各偏心位置決めピン40は、互いに一体で偏心した第1の円筒部分41および第2の円筒部分42を備え、すなわち前記第1の円筒部分41は、軸45を有し、前記第2の円筒部分42は、対応する軸44を有し、前記軸45と前記軸44の間に、あらかじめ確立された偏心性がある。
【0033】
前記第1の円筒部分41および前記第2の円筒部分42は、互いの間にあらかじめ確立された偏心度を有し、それぞれ前記クロスヘッド30内および前記フランジ35内に位置する対応するハウジング内に配置されている。
【0034】
前記クロスヘッド30は、好ましくは、一連の偏心ピン40に等しい数の一連のハウジング31を有し、各ハウジング31は、底部を有し、その中に対応する偏心ピン40を固定させるためのねじ付き穴がある。
【0035】
前記フランジ(35)は、好ましくは、一連の偏心ピン(40)に対して、偶数の一連のハウジング(34)を有する。
【0036】
あるいは、一連の偏心ピン40を固定するための対応するねじ付き穴は、前記クロスヘッド30のハウジング31内に位置する代わりに、前記フランジ35のハウジング34内に位置することができる。
【0037】
一連の偏心ピン40によって、その結果、製造段階で、前記クロスヘッド30を前記フランジ35と同軸にすることが可能である。
【0038】
前記偏心ピン40が、前記クロスヘッド30のハウジング31内に正確に位置決めされた後、一連のねじ47によって前記偏心ピン40を前記クロスヘッド30に好ましく固定することが可能である。
【0039】
各偏心ピン40は、好ましくは、対応するハウジング31内に位置決めを容易にするための基準要素(reference element)46を備える。
【0040】
各偏心ピン40は、好ましくは、対応する固定ねじ47を挿入するための、前記第1の円筒部分41と同軸の軸方向の貫通孔43を備える。
【0041】
このようにして、前記クロスヘッド30および前記フランジ35を分解し再び組み立てる場合でも、前記クロスヘッド30および前記フランジ35の間に、特に前記クロスヘッド30と前記フランジ35の前記中央貫通孔38との間に完全な同軸度および正確な位置決めが常に存在する。
【0042】
保守作業中、前記フランジ35および前記クロスヘッド30を同軸にするためには、前記フランジ35を前記クロスヘッド30に固定された一連の偏心ピン40と結合すれば都合よく十分である。さらに、前記連結機構10は、好ましくは、前記フランジ35の前記中央貫通孔38上にセンタリングされ固定されたリング36を備え、連結機構10がリング36と同軸になるようにする。
【0043】
前記リング36は、円錐台状の(truncated−conical)内側部分39を設け、その内側部分39は前記ロッド20の対応する円錐台状の部分22に連結され係合されている。
【0044】
このようにする目的は、前記ロッド20を前記フランジ35の前記中央貫通孔38に対して同軸にするためであり、前記フランジ35は、前記一連の偏心ピン40によって前記クロスヘッド30に対して同軸にされる。
【0045】
前記ロッド20は、前記リング36内に挿入され、さらに、前記ロッド20は前記フランジ35の前記中央貫通孔38内に挿入される。
【0046】
前記ロッド20は、さらに好ましくは、締め付け装置50によってあらかじめ引っ張られ、次いでフランジ35にクランプ締めされる。
【0047】
前記締め付け装置50は、軸受52に嵌合した前記ロッド用の環状継手51、ならびに前記フランジおよび固定リングナット54と係合した環状継手53を備える。
【0048】
本発明に基づけば、調整によってあらかじめ確立された限度内で、一連の位置決めピン40と共に、リング36が、ロッドとクロスヘッドの間に完全な同軸性が得られることを可能にするので、実際には、ロッド20を再び組み立てて増し締めすれば十分である。
【0049】
このようにして、ロッドをクロスヘッド30に組み立てそこから分解する作業は、明らかに大幅に単純化され、その結果、その保守および管理の作業も単純化され、したがって保守および管理のコストも時間も縮小させる。
【0050】
上記の説明から、製造段階で、クロスヘッド30をフランジ35に固定した後、その後に続く一連のピン40によるセンタリング段階によって、本発明の連結機構10は、自動的にセンタリングされ、ロッド20とクロスヘッド30の間の正確な位置決めを可能にし、また、分解作業の結果、同軸度を失うことも回避するのが明らかである。
【0051】
したがって、本発明は、保守および/または分解の作業後のロッドとクロスヘッドの間の困難で煩わしいセンタリングおよび位置決めの作業の必要性を回避する。
【0052】
このようにして、往復圧縮機の、特に密封装置の摩耗を受ける構成要素の耐用年数が最大にされ、また、往復機械の信頼性の大幅な増加も生じる。
【0053】
これにより、その結果、摩耗を受ける構成要素の交換に関する保守の介在の回数も減少され、コストの点からさらなる節約ももたらされることになる。
【0054】
したがって、本発明による往復圧縮機用のロッドおよびクロスヘッドの間の連結機構は、上記に示された目的を達成し、往復機械の固定部分に対して、特に、その中でロッド自体に連結されたピストンが摺動するシリンダに対して、ロッドの水平および垂直の振れの両方の補正を可能にすることが理解できる。
【0055】
これにより、有利なことに、シリンダと一体でありロッドと接触する密封装置の耐用年数を最大にすることが可能になる。
【0056】
このように考案された本発明の往復圧縮機用のロッドとクロスヘッドの間の連結機構に多くの修正および変形を加えることができるが、全ては同じ本発明の概念に包含される。
【0057】
さらに、実際に、使用される材料は、その寸法および成分も同様に技術的な要求に従って変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による往復機械用のロッドおよびクロスヘッドの間の連結機構、特に往復圧縮機の好ましい実施形態の浮き出させた左側分解図である。
【図2】図1の一詳細部分の浮き出させた左側斜視図である。
【図3】図1の連結機構を示す、一部分を断面にした、浮き出させた左側斜視図である。
【図4】密封装置を示す、往復機械の一詳細部分の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 連結機構
20 ロッド
22 円錐台状の部分(円錐形の部分)
30 クロスヘッド
31 ハウジング
32 ピン
33 摺動ブロック
34 ハウジング
35 フランジ
36 リング
37 タイロッド(固定手段)
38 (中央)貫通孔
39 円錐台状の内側部分(内側の円形ハウジング)
40 偏心位置決めピン
41 第1の円筒部分
42 第2の円筒部分
43 貫通孔
44 軸
45 軸
46 基準要素
47 固定ねじ
50 締め付け装置
51 環状継手
52 軸受
53 環状継手
54 固定リングナット
60 シリンダ
70 ピストン
90 密封装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復機械用のロッド(20)およびクロスヘッド(30)の間に設けられ、固定手段(37)によって前記クロスヘッド(30)に固定されたフランジ(35)を備えた連結機構(10)であって、
前記ロッドは、前記往復機械のシリンダ(60)の内側で摺動するピストン(70)に連結され、
前記フランジ(35)は、締め付け装置(50)により前記フランジ(35)に前記ロッド(20)を固定するための挿入用の軸方向貫通孔(38)を備え、
この連結機構(10)は、
前記ロッド(20)および前記シリンダ(60)を実質的にかつ永続的に同軸にするために前記フランジ(35)と前記クロスヘッド(30)の間に位置される一連の偏心位置決めピン(40)を備えたことを特徴とする連結機構。
【請求項2】
各偏心ピン(40)は、互いに一体で、また、他方との間であらかじめ確立された偏心性を有する第1の円筒部分(41)および第2の円筒部分(42)を備えることを特徴とする請求項1記載の連結機構(10)。
【請求項3】
各偏心ピン(40)の前記第1の円筒部分(41)および前記第2の円筒部分(42)が、前記クロスヘッド(30)内および前記フランジ(35)内にそれぞれ位置する対応するハウジング(31、34)内に配置されることを特徴とする請求項2記載の連結機構(10)。
【請求項4】
前記クロスヘッド(30)の前記ハウジング(31)が、対応する偏心ピン(40)を固定するためのねじ付き穴を備える底部を備えることを特徴とする請求項3記載の連結機構(10)。
【請求項5】
各偏心ピン(40)が、対応する固定ねじ(47)を挿入するための前記第1の円筒部分(41)と同軸の軸方向の貫通孔(43)を備えることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか記載の連結機構(10)。
【請求項6】
前記フランジ(35)の前記中央貫通孔(38)に固定されたリング(36)を備え、前記リング(36)が、前記ロッド(20)および前記フランジ(35)の前記孔を同軸にするために前記ロッド(20)の対応する円錐形部分(22)に結合された内側の円錐形ハウジング(39)を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の連結機構(10)。
【請求項7】
各偏心ピン(40)が基準要素(46)を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の連結機構(10)。
【請求項8】
前記基準要素(46)が前記第2の円筒部分(42)の基部表面上に位置することを特徴とする請求項7記載の連結機構(10)。
【請求項9】
上記に説明され図示され、上記に特定した目的のための連結機構(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−145031(P2006−145031A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320296(P2005−320296)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(505347503)ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ (112)
【Fターム(参考)】