説明

往復移動機構および撮像装置

【課題】被写体光束中に突出する部材を減らす。
【解決手段】往復移動機構であって、往復移動の対象となる対象物を往復移動の一方向に付勢する付勢部材と、対象物に当接して往復移動の他方向に駆動する当接部材とを備え、当接部材が対象物を往復移動の他方向に駆動するときに、付勢部材の付勢力が解除される。上記往復移動機構において、付勢部材および当接部材は、対象物の一部を間隙を持って挟んでおり、当接部材が対象物の一部に当接して駆動する場合に付勢部材は対象物の一部から離間しているとともに、付勢部材が対象物の一部に当接して付勢する場合に当接部材は対象物の一部から離間していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は往復移動機構および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を往復移動させる場合に、一方向を付勢部材の付勢力により駆動して、他方向をモータにより駆動する往復移動機構がある(特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2000−155370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
モータは、付勢部材の付勢力に抗して対象物を駆動するので、移動速度を上昇させる場合にはより高出力のモータを用いることを余儀なくされる。このため、コスト上昇と大型化が避けられなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決すべく、本発明の第一態様として、往復移動の対象となる対象物を往復移動の一方向に付勢する付勢部材と、対象物に当接して往復移動の他方向に駆動する当接部材とを備え、当接部材が対象物を往復移動の他方向に駆動するときに、付勢部材の付勢力が解除される往復移動機構が提供される。
【0005】
また、本発明の第二態様として、上記往復移動機構を備える撮像装置が提供される。
【0006】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。これら特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一眼レフカメラ100の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】ミラーユニット400の斜視図である。
【図3】ミラー駆動部500の斜視図である。
【図4】往復移動機構600の側面図である。
【図5】往復移動機構600の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、ミラーユニット400を備えた一眼レフカメラ100の模式的断面図である。一眼レフカメラ100は、撮像装置であって、レンズユニット200およびカメラ本体300を備える。
【0010】
レンズユニット200は、固定筒210、複数のレンズ220、230、240、レンズマウント250および鏡筒CPU260を有する。固定筒210の一端は、レンズマウント250を介してカメラ本体300のボディマウント360に結合される。
【0011】
レンズマウント250およびボディマウント360の結合は特定の操作により解除できる。これにより、カメラ本体300には、同じ規格のレンズマウント250を有する他のレンズユニット200を装着できる。
【0012】
レンズユニット200において、カメラ本体300から遠くに位置するレンズ220は、固定筒210から直接に支持される。これに対して、他のレンズ230、240は、固定筒210対して光軸X方向に移動する。これにより、レンズユニット200の光学系は変倍または合焦する。
【0013】
例えば、レンズ230は、レンズユニット200の倍率を変化させる場合に移動するズームレンズのひとつとなる。また、レンズ240は、レンズユニット200の焦点位置を変化させる場合に移動するフォーカシングレンズのひとつとなる。
【0014】
鏡筒CPU260は、レンズユニット200の動作を制御すると共に、カメラ本体300との通信も担う。これにより、レンズユニット200がカメラ本体300に装着された場合に、カメラ本体300と連携して動作する。
【0015】
カメラ本体300は、レンズユニット200に対してボディマウント360の背後に配されたミラーユニット400を備える。ミラーユニット400の下方には合焦光学系380が配される。また、ミラーユニット400の上方にはフォーカシングスクリーン352が配される。
【0016】
フォーカシングスクリーン352の更に上方にはペンタプリズム354が、ペンタプリズム354の後方にはファインダ光学系356が配される。ファインダ光学系356の後端は、ファインダ350としてカメラ本体300の背面に露出する。
【0017】
ミラーユニット400の後方には、フォーカルプレンシャッタ370、ローパスフィルタ332および撮像素子330が順次配される。撮像素子330の更に背後には、主基板320および背面表示部340が順次配される。主基板320には、本体CPU322、画像処理回路324等が実装される。背面表示部340は、例えば、液晶表示板等を用いて形成され、カメラ本体300の背面に露出する。
【0018】
ミラーユニット400は、メインミラー420およびサブミラー460を有する。メインミラー420は、メインミラー保持枠410に支持される。メインミラー保持枠410の一端は、メインミラー回動軸430により軸支される。
【0019】
サブミラー460は、サブミラー保持枠450により保持される。サブミラー保持枠450の一端は、サブミラー回動軸470により、メインミラー保持枠410から軸支される。よって、サブミラー460は、メインミラー保持枠410に対して回動する。メインミラー保持枠410が回動する場合、サブミラー460およびサブミラー保持枠450もメインミラー保持枠410と共に移動する。
【0020】
メインミラー保持枠410において、メインミラー回動軸430およびサブミラー回動軸470の間には、被駆動ボス440が配される。被駆動ボス440は、メインミラー保持枠410の側面に固定され、ミラーユニット400の側壁から突出する。よって、被駆動ボス440を昇降させることにより、ミラーユニット400の外側からメインミラー保持枠410およびメインミラー420を回動させることができる。
【0021】
回動によりメインミラー保持枠410の前端が降下した場合、メインミラー保持枠410は、前端付近で位置決めピン480に当接して停止する。これにより、メインミラー420は、被写体光束に対して正確に45度をなす位置に停止する。こうして、メインミラー420は、レンズユニット200から入射した被写体光束上に斜めに配される斜設状態をとなる。
【0022】
また、メインミラー保持枠410の前端が上昇した場合、メインミラー保持枠410は、前端付近でストッパ490に当接して停止する。これにより、メインミラー420は、被写体光束の光路から退避した退避状態になる。なお、以降の説明において、斜設状態から退避状態に向かうメインミラー420の回動を上昇と記載する。また、退避状態から斜設状態に向かうメインミラー420の回動を下降と記載する。
【0023】
斜設状態において、メインミラー420は、レンズユニット200を通じて入射した被写体光束を反射してフォーカシングスクリーン352に導く。フォーカシングスクリーン352は、レンズユニット200の光学系が合焦した場合に被写体像を結ぶ位置に配されて当該被写体像を可視化する。
【0024】
フォーカシングスクリーン352に結像された被写体像は、ペンタプリズム354およびファインダ光学系356を通じてファインダ350から観察される。ここで、被写体像の光束がペンタプリズム354を通ることにより、フォーカシングスクリーン352上の被写体像は、ファインダ350から正立正像として観察できる。
【0025】
測光センサ390は、ファインダ光学系356の上方に配され、ペンタプリズム354において分岐されさた被写体光束の一部を受光する。測光センサ390は、受光した被写体光束の一部から被写体の明るさを検出して、本体CPU322に露光条件を算出させる。また、受光した被写体光束の一部を三原色毎に測光して、オートホワイトバランスの算出に与する。
【0026】
また、メインミラー420は、入射した被写体光束の一部を透過するハーフミラー領域を有する。サブミラー460は、ハーフミラー領域から入射した被写体光束の一部を、合焦光学系380に向かって反射する。合焦光学系380は、入射した被写体光束の一部を合焦センサ382に導く。これにより、カメラ本体300は、レンズユニット200を合焦させるレンズ230の目標位置を決定できる。
【0027】
上記のような一眼レフカメラ100においてレリーズボタンが半押しされると、合焦センサ382および測光センサ390が有効になり、被写体像を適切な撮影条件で撮影できる状態になる。次いで、レリーズボタンが全押しされると、メインミラー420およびサブミラー460が退避位置に移動して、フォーカルプレンシャッタ370が開く。よって、レンズユニット200から入射した被写体光束は、ローパスフィルタ332を通過して撮像素子330に入射する。
【0028】
撮像素子330は、CCDセンサ(Charge Coupled Device)、CMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの光電変換素子により形成され、受光した被写体像を電気信号に変換して出力する。撮像素子330から出力された電気信号は画像処理回路324において画像データに変換される。また、画像処理回路324は、画像データを生成する過程で、ホワイトバランス、シャープネス、ガンマ、階調補正、圧縮等を調整する。
【0029】
図2は、往復移動機構600を含むミラー駆動部500を備えたミラーユニット400の斜視図である。図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。図示の状態では、メインミラー保持枠410およびメインミラー420は、斜設状態にある。よって、メインミラー保持枠410は、下端近傍において位置決めピン480に当接する。
【0030】
なお、図中には、メインミラー保持枠410の側面から図中右方に突出した被駆動ボス440が見える。メインミラー保持枠410は、被駆動ボス440を昇降させることにより、位置決めピン480に当接する斜設状態と、ストッパ490に当接する退避状態との間を往復する。
【0031】
ミラーユニット400は、図中右側に、ミラー駆動部500を備える。ミラー駆動部500は、メインミラー420を上昇または下降させる動力源となる駆動モータ510を有する。駆動モータ510の出力は、複数の減速ギア520、530、540を経て往復移動機構600のカム部材610に伝達される。
【0032】
また、駆動モータ510は、回転方向を反転させることができる。駆動モータ510の回転方向が反転した場合、カム部材610の回転方向も反転する。更に、駆動モータ510は、回転速度を変化させることができる。駆動モータ510の回転速度が変化した場合は、カム部材610の回転速度も変化する。
【0033】
往復移動機構600は、カム部材610および駆動レバー620を含む。カム部材610は、外周の一部にラック612を有する。ラック612は、終段の減速ギア540に噛み合って、駆動モータ510の駆動力を受ける。
【0034】
カム部材610は、回転軸受部619を有し、図示していない回転軸に軸支される。よって、ラック612に駆動力が伝達された場合、カム部材610は回転する。ただし、カム部材610はセクタ状の切欠き部615を有する。切欠き部615の内側には、ミラーユニット400に対して固定されたバンパ部材611が配される。よって、カム部材610の回転範囲は制限される。
【0035】
駆動レバー620も、回転軸受部622を有し、図示していない回転軸の回りに揺動する。駆動レバー620の上端付近は、被駆動ボス440の直下に位置する。後述するように、被駆動ボス440を上昇させる場合は、駆動レバー620が被駆動ボス440を押し上げる。
【0036】
図3は、ミラー駆動部500を単独で示す斜視図である。図3は、ミラー駆動部500を、図2に矢印Aにより示した方向から見た様子を示す。よって、図2と対照すると、各部材におけるメインミラー420に面した側が現れている。
【0037】
駆動モータ510の出力軸には、ピニオンギア512およびトルクリミッタ514が装着される。ピニオンギア512は、トルクリミッタ514に設定された最大トルクまでの範囲で、駆動モータ510の出力軸と共に回転する。よって、過大な負荷を受けた場合は、出力軸に対して空回りして駆動モータ510を保護する。
【0038】
また、後述するように、駆動モータ510の駆動力を受けて上昇または下降する被駆動ボス440は、メインミラー420が斜設状態または退避状態に到達した場合に瞬間的に停止する。一方、駆動モータ510は慣性により回転を瞬時に止めることは難しい。よって、トルクリミッタ514を設けて停止の衝撃を緩和することが望ましい。
【0039】
減速ギア520、530は、互いに同軸で歯数の異なる一対の歯車をそれぞれ備え、歯数の多い歯車で駆動され、歯数の少ない歯車で駆動力を伝達する。これにより、駆動モータ510の駆動力を、高いトルクで往復移動機構600に伝達する。終段の減速ギア540は、所定位置に配置されたラック612に、減速ギア530の出力する駆動力を伝達する。
【0040】
往復移動機構600において、カム部材610は、ラック612に対して反対側にカム面614、チョッパ部616、台座部618を有する。カム面614は、後述する駆動レバー620に設けられたカムフォロワ部621に対して押圧力を伝える。
【0041】
チョッパ部616は、カム部材610が回転した場合に、ミラーユニット400に対して固定されたフォトインタラプタ660を横切る。よって、フォトインタラプタ660の出力を参照することにより、本体CPU322がミラーユニット400の動作を確認できる。台座部618は、カム面614の幅と略同じ高さを有し、後述する連結部材650の一端を支持する。
【0042】
駆動レバー620は、カム部材610の図中奥側および上側を回り込むように延在する。既に説明したように、駆動レバー620の上端部628は、被駆動ボス440の直下に位置する。また、この図では、駆動レバー620が、当接部材640を上端近傍に備えることが判る。
【0043】
当接部材640は、当接面642と、当接面642の片側に配されたばね座644と、当接面642に対してばね座644と反対側に配されたストッパ646とを有する。当接部材640は、揺動軸受部648において駆動レバー620から軸支される。また、ばね座644は、後述する捩じりばね630の下端と、往復移動機構600の状態に応じて係合する。
【0044】
ストッパ646は、駆動レバー620の上端部628下面に当接する。よって、当接部材640は、図示の状態よりも上方に変位することはない。なお、当接部材640が移動範囲の上端にある場合、当接部材640の当接面642は、駆動レバー620の上端部628よりも上方に突出する。
【0045】
また、駆動レバー620は、その中程に、ばね支持部626を有する。ばね支持部626には、捩じりばね630が装着される。捩じりばね630の下端632は、既に説明した通り、当接部材640のばね座644の下方に配される。捩じりばね630の上端634は、被駆動ボス440の上側に配される。なお、被駆動ボス440の周面には、捩じりばね630の上端634が当接した場合に、軸方向にずれることを防止する案内溝442が形成される。
【0046】
なお、ばね支持部626は、駆動レバー620が回動する場合に、被駆動ボス440に対して、捩じりばね630の上端634の延在方向に変位するアーム部624の上端に配されている。よって、駆動レバー620が回動した場合、捩じりばね630の上端634は、被駆動ボス440から遠ざかりまたは接近する。
【0047】
連結部材650は、カム部材610の回転軸受部619を避けて屈曲した形状を有する。連結部材650の図中上端は、駆動レバー620のばね支持部626を挿通され、捩じりばね630と共軸に、駆動レバー620に対して結合される。連結部材650の下端は、長穴652を有し、係合ピン613により、カム部材610の台座部618に係合する。
【0048】
よって、カム部材610が回転して、係合ピン613がばね支持部626から遠ざかる方向に移動した場合には、連結部材650が、駆動レバー620に対して引っ張り力を作用させる。なお、連結部材650の下端は、長穴652に挿通された係合ピン613によりカム部材610に結合されている。よって、カム部材610の回転に伴うばね支持部626および係合ピン613の間隔の変化は、長穴652に吸収される。また、部品の公差も長穴652により吸収され、カム部材610および連結部材650は円滑に動作する。
【0049】
このように、カム部材610と駆動レバー620は2系統の駆動力伝達機構を有する。そのひとつは、カム面614がカムフォロワ部621を押すことにより図中時計回りに、駆動レバー620を回動させる。他のひとつは、連結部材650がばね支持部626を引くことにより、図中反時計回りに駆動レバー620を回動させる。
【0050】
なお、カム面614は、カムフォロワ部621側から受けた押圧力が回転軸受部619に向かう形状を有する。よって、カムフォロワ部621側から受けた押圧力によりカム部材610が回されることはない。
【0051】
図4は、往復移動機構600の側面図である。図1から図3までと共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。図示の状態では、図中に点線で示す通り、メインミラー保持枠410は斜設状態にある。このとき、被駆動ボス440も、下方に押し下げられた位置にある。
【0052】
このとき、被駆動ボス440は、捩じりばね630の上端634により、略上方から押し下げられている。捩じりばね630の下端は、当接部材640のばね座644に掛かっている。更に、当接部材640のストッパ646は、駆動レバー620の上端部628の下面に当接している。
【0053】
駆動レバー620のばね支持部626は、連結部材650により、カム部材610の台座部618に連結されている。ここで、図中に一点鎖線Bで示すように、ばね支持部626の中心Cと、係合ピン613の中心Cを結ぶ直線は、カム部材610の回転の中心Cよりも図中下側を通る。
【0054】
よって、捩じりばね630の反力により、駆動レバー620は回転軸受部622を中心にして図中時計回りに回転しようとする。駆動レバー620は、連結部材650および係合ピン613を介して、カム部材610に連結されている。従って、連結部材650からカム部材610には、一点鎖線のC方向に動かす力がかかり、カム部材は図中反時計方向に回転しようとする。しかしながら、カム部材610はバンパ部材611に当接しているので、カム部材610は初期位置に止まる。
【0055】
上記のように、駆動レバー620の回動は、連結部材650により規制されているので、図示の状態では、捩じりばね630の下端632が図中上方に変位することはない。よって、被駆動ボス440は、捩じりばね630の上端634により弾性的に押さえつけられる。
【0056】
既に説明したように、被駆動ボス440が降下し切っている場合、メインミラー保持枠410は、位置決めピン480に当接して位置決めされている。よって、被駆動ボス440に接した捩じりばね630の上端634がそれ以上に下がることはない。このため、図示の状態では、当接部材640に設けられたばね座644が、捩じりばね630の下端632により、上方に向かって付勢される。
【0057】
図4に示した状態で、被駆動ボス440を上昇させる目的で駆動モータ510を動作させると、カム部材610は、回転軸受部619の回りに、図中で時計回りに回転する。これにより、カム部材610のカム面614から、駆動レバー620のカムフォロワ部621に押圧力が作用する。よって、駆動レバー620は、回転軸受部622の回りに、図中時計回りに回転する。
【0058】
図5は、被駆動ボス440を上昇させ切った状態の往復移動機構600の側面図である。図1から図4までと共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0059】
図4に示した状態に比較すると、カム部材610が図中時計回りに回転して、カム面614がカムフォロワ部621を押し上げている。これにより、駆動レバー620も図中時計回りに回動し、それ自体の上端部628を上昇させると共に、当接部材640も上昇させている。
【0060】
被駆動ボス440は、上昇した当接部材640に押し上げられて、メインミラー回動軸430よりも上方まで上昇している。これにより、メインミラー保持枠410は退避状態になる。なお、図示されていないメインミラー保持枠410の先端は、ストッパ490に当接している。よって、被駆動ボス440がこれ以上上昇することはない。
【0061】
上記の状態において、被駆動ボス440は、駆動レバー620の上端部628および当接部材640の当接面642から抜け出している。よって、捩じりばね630の上端634は、被駆動ボス440の付勢から開放されて下端632に近づく。これにより、捩じりばね630の上端634は、当接部材640の揺動軸受部648の外側の一点Dに上方から当接する。捩じりばね630の下端632は、依然として当接部材640のばね座644に係合している。
【0062】
このように、駆動レバー620が回動して上昇することにより、捩じりばね630の付勢の対象は、被駆動ボス440を押し下げることから、専ら当接部材640を押し上げることに変化する。ただし、当接部材640は、ストッパ646が駆動レバー620上端部628下面に当接している。よって、捩じりばね630の付勢により当接部材640が回動することはない。
【0063】
しかしながら、何らかの理由で、被駆動ボス440が降下する力が作用した場合、例えば、メインミラー保持枠410の前端が外部から押し下げられた場合には、当接部材640の当接面642が降下することを許す。これにより、往復移動機構600に作用する負荷を緩和できる。
【0064】
なお、上記のような作用に鑑みて、当接部材640の当接面642の上面は、駆動レバー620の上端部628よりも上方に突出していることが望ましい。しかしながら、メインミラー420が退避状態にある場合以外は負荷を緩和しなくてもよいので、先端部以外の部分では、駆動レバー620および当接部材640の上面は揃っていてもよい。
【0065】
また、図示の状態では、カム部材610における切欠き部615の端面が、バンパ部材611に当接していることが判る。バンパ部材611は弾性を有する材料で形成され、カム部材610の回転範囲を規制する。これにより、カム部材610が過剰に回動して、カム面614およびカムフォロワ部621の係合がはずれることはない。また、往復移動の両端で生じる停止の衝撃を分散させることもできる。
【0066】
なお、カム部材610のチョッパ部616は、図4に示した状態でも、図5に示した状態でも、フォトインタラプタ660を横切っていない。換言すれば、チョッパ部616は、図4と図5に示した状態の遷移の間にフォトインタラプタ660を遮る。よって、フォトインタラプタ660の出力を参照することにより、駆動モータ510のオン/オフのタイミングを確実に制御できる。
【0067】
次に、図4に示した状態から図5に示した状態への遷移の過程を説明する。図4に示した状態で、駆動モータ510に駆動されたカム部材610が図中時計回りに回転し始めると、カム面614がカムフォロワ部621に押圧力を作用させる。これにより、駆動レバー620は、図中時計回りに回動し始める。これにより、駆動レバー620の上端部628が、当接部材640と共に上昇し始める。
【0068】
このとき、捩じりばね630の上端634は、被駆動ボス440を下方に向かって付勢している。しかしながら、被駆動ボス440は降下することはないので、捩じりばね630の付勢力は、当接部材640のばね座644およびストッパ646を通じて、駆動レバー620の上端部628が上昇することを助ける。よって、駆動レバー620は、回動し始める時期に付勢力を得て迅速に上昇する。
【0069】
駆動レバー620がある回動量まで回動すると、被駆動ボス440は、捩じりばね630上端634の付勢力により駆動レバー620の上端部628に接近する。やがて、捩じりばね630の上端634は、当接部材640の揺動軸受部648の外側に当接する。これにより、被駆動ボス440は、捩じりばね630の上端634から離間する。
【0070】
こうして、捩じりばね630の上端は、被駆動ボス440に対して付勢力を作用させなくなる。また、捩じりばね630の付勢力は駆動レバー620の回動にも寄与しなくなる。このような動作を妨げないように、駆動レバー620の上面には、被駆動ボス440の相対的な降下を許容する切欠き部627が設けられる。
【0071】
更に、駆動モータ510に駆動されてカム部材610が回転すると、駆動レバー620は、更に時計回りに回動する。この過程で、被駆動ボス440は、捩じりばね630の上端634および当接部材640の間から抜け出す。換言すれば、駆動レバー620および当接部材640と捩じりばね630との間には、被駆動ボス440を通過させ得る間隔が設けられている。
【0072】
捩じりばね630からはずれた被駆動ボス440は、専ら、当接部材640の当接面642に押し上げられて、メインミラー420が退避位置に到達するまで上昇する。こうして、図5に示したように、当接部材640が、退避状態に対応した位置に被駆動ボス440を押し付ける状態となり、メインミラー420の上昇に係る一連の動作が完了する。
【0073】
なお、メインミラー保持枠410の先端がストッパ490に当接したときには、当接の衝撃が当接部材640を通じて捩じりばね630に伝わり、当接部材640が僅かに回動することにより衝撃が緩和される。また、メインミラー保持枠410が停止した後も、駆動レバー620が被駆動ボス440を上方に向かって押し付ける力に応じて捩じりばね630が弾性変形する。これにより、当接部材640は、上方に向かって付勢される。
【0074】
なお、当接部材640は、被駆動ボス440に作用する押圧力と異なる角度で被駆動ボス440に当接する当接面642を有する。これにより、被駆動ボス440が退避状態の位置で停止した場合に生じるバウンドを抑制できる。
【0075】
図5に示したメインミラー420の退避状態から、図4に示したメインミラー420の斜設状態に遷移する場合は、駆動モータ510の回転方向を反転させることにより、上記の一連の動作を逆の順序で実行する。この場合も、駆動レバー620が図中反時計回りに回動し始めるときには、捩じりばね630が当接部材640を押し下げる付勢力が、駆動レバー620の回動を加速させる。
【0076】
また、駆動レバー620の回動の過程で、被駆動ボス440は、当接部材640と捩じりばね630上端634の間に入り込む。更に、捩じりばね630の上端が被駆動ボス440を下方に向かって付勢しつつ降下する。メインミラー保持枠410の先端が位置決めピン480に当接すると、捩じりばね630は、停止した被駆動ボス440を下方に向かって付勢しつつやがて停止する。
【0077】
このように、往復移動機構600は、往復移動のいずれの方向においても、移動開始当初は捩じりばね630が被駆動ボス440の移動を加速する。また、停止直前には、捩じりばね630の弾性が衝撃を緩和する。更に、移動中は、捩じりばね630の付勢力が、駆動モータ510の負荷にならない。よって、往復移動を高速化しても、徒に高出力モータを用いることが求められない。
【0078】
なお、メインミラー420の昇降に上記ミラー駆動部500を用いる場合、メインミラー420が降下して斜設状態になった直後には、次の撮影のための測光および測距が開始される場合がある。一方、上昇して退避状態になったメインミラー420は、次に降下して斜設状態になるまで使用されない。よって、メインミラー420が上昇させる場合には移動速度を高くし、メインミラー420を降下させる場合には、降下後のバウンドを早期に収束させる目的で、移動速度を低くしてもよい。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0080】
100 一眼レフカメラ、200 レンズユニット、210 固定筒、220、230、240 レンズ、250 レンズマウント、260 鏡筒CPU、300 カメラ本体、320 主基板、322 本体CPU、324 画像処理回路、330 撮像素子、332 ローパスフィルタ、340 背面表示部、350 ファインダ、352 フォーカシングスクリーン、354 ペンタプリズム、356 ファインダ光学系、360 ボディマウント、370 フォーカルプレンシャッタ、380 合焦光学系、382 合焦センサ、390 測光センサ、400 ミラーユニット、410 メインミラー保持枠、420 メインミラー、430 メインミラー回動軸、440 被駆動ボス、442 案内溝、450 サブミラー保持枠、460 サブミラー、470 サブミラー回動軸、480 位置決めピン、490 ストッパ、500 ミラー駆動部、510 駆動モータ、512 ピニオンギア、514 トルクリミッタ、520、530、540 減速ギア、600 往復移動機構、610 カム部材、611 バンパ部材、612 ラック、613 係合ピン、614 カム面、615、627 切欠き部、616 チョッパ部、618 台座部、619、622 回転軸受部、620 駆動レバー、621 カムフォロワ部、624 アーム部、626 ばね支持部、628 上端部、630 捩じりばね、632 下端、634 上端、640 当接部材、642 当接面、644 ばね座、646 ストッパ、648 揺動軸受部、650 連結部材、652 長穴、660 フォトインタラプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復移動の対象となる対象物を往復移動の一方向に付勢する付勢部材と、
前記対象物に当接して往復移動の他方向に駆動する当接部材と
を備え、
前記当接部材が前記対象物を往復移動の前記他方向に駆動するときに、前記付勢部材の付勢力が解除される往復移動機構。
【請求項2】
前記付勢部材および前記当接部材は、前記対象物の一部を間隙を持って挟んでおり、
前記当接部材が前記対象物の前記一部に当接して駆動する場合に前記付勢部材は前記対象物の前記一部から離間しているとともに、前記付勢部材が前記対象物の前記一部に当接して付勢する場合に前記当接部材は前記対象物の前記一部から離間している請求項1に記載の往復移動機構。
【請求項3】
前記当接部材が前記対象物を往復移動の前記他方向に駆動すべく前記当接部材を駆動する駆動部をさらに備え、
前記駆動部は、前記付勢部材が前記対象物を往復移動の前記一方向に駆動すべく前記付勢部材を駆動する請求項1または2に記載の往復移動機構。
【請求項4】
前記駆動部は、
前記当接部材が前記他方向に前記対象物を駆動する場合に回転して、前記当接部材に押圧力を作用させるカムと、
前記付勢部材が前記一方向に前記対象物を付勢する場合に、前記付勢部材を変位させる引っ張り力を作用させる連結部材と
を有する請求項3に記載の往復移動機構。
【請求項5】
前記カムおよび前記連結部材は互いに連動し、
前記付勢部材の側から前記連結部材に対して引っ張り力が作用した場合に、前記カムは前記当接部材に押圧力を作用させる回転方向と反対の回転方向に回転する請求項4に記載の往復移動機構。
【請求項6】
前記付勢部材は、前記往復移動の範囲の両端において、前記対象物に付勢力を作用させる請求項1から請求項5までのいずれかに記載の往復移動機構。
【請求項7】
前記当接部材は、前記対象物から受ける負荷が増加した場合に弾性変形する負荷緩和部を有する請求項1から請求項6までのいずれかに記載の往復移動機構。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の往復移動機構を備えた撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−42511(P2012−42511A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181000(P2010−181000)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】