説明

往復移動装置

【課題】 簡単な構成でディスクトレイをローディング完了位置に位置決め可能な往復移動装置を提供する。
【解決手段】 本発明の往復移動装置においては、往復移動部材1が所定の移動開始位置から移動を開始した時点、或いは所定の基準位置を通過した時点から第1所定時間の経過時点までモータ3に一定の大きさの駆動電圧或いは駆動電流を供給して往復移動部材1を駆動することにより、該往復移動部材1が位置決め部材6に当接し、該位置決め部材6に押し付けられることとなる。制御回路5は、前記第1所定時間が経過した後もモータ3に対する駆動電圧或いは駆動電流の供給動作を実行し、その後、第2所定時間が経過した時点で該供給動作を停止するものであって、前記第1所定時間の経過時点から前記第2所定時間の経過時点までの期間にモータ3に供給する駆動電圧或いは駆動電流の平均値は、前記第1所定時間だけ供給する駆動電圧値或いは駆動電流値よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばディスクプレーヤに装備されて、ディスクトレイに載置されたディスクを排出位置から所定の再生位置まで搬送するローディング動作を行なうディスク搬送装置等の往復移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスクプレーヤのディスク搬送装置においては、ディスクトレイが筐体に対して往復移動可能に配備されており、ディスクトレイの裏面には、図8(a)に示す如くラックギア(11)を有する往復移動部材(1)が固定されている。筐体にはモータ(3)が配備されており、往復移動部材(1)とモータ(3)の間にはモータ(3)の駆動力を往復移動部材(1)に伝達する動力伝達機構(2)が介在している。該動力伝達機構(2)は、モータ(3)の出力軸(31)に取り付けられた原動プーリ(22)と、往復移動部材(1)の下方位置に配備された従動プーリ(23)と、原動プーリ(22)と従動プーリ(23)との間に張設されたゴム製のベルト(21)と、従動プーリ(23)に固定されたピニオンギア(24)とから構成されており、該ピニオンギア(24)は、前記往復移動部材(1)のラックギア(11)と噛合している。
又、筐体には、往復移動部材(1)の移動をローディング完了位置で受け止めて位置決めする位置決め部材(6)が配備されている。
【0003】
上記ディスク搬送装置においては、ユーザによりローディング動作を開始させるための操作が行なわれると、モータ(3)に対する駆動電圧の供給が開始されて、往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に向かって移動を開始する。その後、往復移動部材(1)が所定の基準位置を通過した時点から所定時間が経過した時点でモータ(3)に対する駆動電圧の供給が停止されて、往復移動部材(1)は移動を停止する。この様にして、ローディング動作が行なわれる。
【0004】
しかしながら、上記ディスク搬送装置においては、ディスクトレイをローディング完了位置に正確に位置決めすることが出来なかった。
そこで、出願人は、ディスクトレイをローディング完了位置に正確に位置決めすることが出来ない原因を次のように究明した。
【0005】
図8(a)〜(d)は、上記ディスク搬送装置の一連のローディング動作を表わしており、ローディング動作を開始させるための操作が行なわれると、同図(a)に矢印で示す如く、モータ(3)が時計方向に回転を開始して往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に向かって移動を開始し、その後、往復移動部材(1)が所定の基準位置を通過した時点から所定時間が経過するまで、モータ(3)の回転を継続させる。ここで、往復移動部材(1)が所定の基準位置を通過してから位置決め部材(6)に当接するまでの時間は、モータ(3)に供給される駆動電圧のバラツキやモータ(3)の出力特性のバラツキ等により変動するので、前記所定時間は、往復移動部材(1)の移動速度が変動して遅くなったとしても往復移動部材(1)がローディング完了位置に到達する様、大きな値に設定されている。従って、同図(b)の如く往復移動部材(1)の先端面(12)が位置決め部材(6)の位置決め面(61)に当接して該往復移動部材(1)が位置決めされた後も、モータ(3)は時計方向に駆動されることになる。これによって、同図(b)に矢印で示す如く、往復移動部材(1)の先端面(12)が位置決め部材(6)の位置決め面(61)に押し付けられると共に、ベルト(21)の右側(21a)が図中に矢印で示す如く伸びることになる。一方、ベルト(21)の左側(21b)は、従動プーリ(23)が回転しないため、若干弛んだ状態となる。
【0006】
その後、前記所定時間が経過した時点でモータ(3)の回転を停止させると、上述の如く伸張したベルト(21)の収縮力によって、同図(c)に矢印で示す如く、従動プーリ(23)には時計方向の回転力が作用して往復移動部材(1)の先端面(12)が位置決め部材(6)の位置決め面(61)に押し付けられると共に、モータ(3)には反時計方向の回転力が作用してモータ(3)がベルト(21)の収縮量だけ反時計方向に回転することになる。
【0007】
モータ(3)は、同図(d)に矢印で示す如く、その後も僅かな時間は慣性力により反時計方向に回転し続け、これによって、従動プーリ(23)及びピニオンギア(24)が反時計方向に回転して往復移動部材(1)が位置決め部材(6)から僅かに離間することになる。このため、ディスクトレイをローディング完了位置に正確に位置決めすることが出来ないのである。
【0008】
そこで、ディスクトレイをローディング完了位置にロックするロック機構を具えたディスク搬送装置が提案されている(特許文献1参照)。該ディスク搬送装置において、ロック機構は、ソレノイドと、該ソレノイドによって駆動される係止アームとから構成されており、ディスクトレイの先端面が位置決め部の受け止め面に受け止められると、前記係止アームが回動してディスクトレイのアーム係止部と係合する。これによって、ディスクトレイがローディング完了位置にロックされることになる。
【特許文献1】特開平8−279222号公報[G11B 17/22]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のディスク搬送装置においては、ロック機構を別に設ける必要があるため、装置全体の構造が複雑になる問題があった。
そこで本発明の目的は、ロック機構を設けることなく、簡単な構成でディスクトレイをローディング完了位置に正確に位置決めすることが可能な往復移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る往復移動装置は、動力源と、該動力源により駆動される往復移動部材(1)と、前記動力源の動力を弾性体を介して前記往復移動部材(1)に伝達する動力伝達機構(2)と、前記往復移動部材(1)の移動を所定位置で受け止めて位置決めする位置決め部材(6)と、前記動力源に対して駆動電圧或いは駆動電流を供給する制御回路(5)とを具え、前記往復移動部材(1)が所定の移動開始位置から移動を開始した時点、或いは所定の基準位置を通過した時点から第1所定時間の経過時点まで前記動力源に一定の大きさの駆動電圧或いは駆動電流を供給して前記往復移動部材(1)を駆動することにより、該往復移動部材(1)が前記位置決め部材(6)に当接し、該位置決め部材(6)に押し付けられることとなる。
前記制御回路(5)は、前記第1所定時間が経過した後も前記動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流の供給動作を実行し、その後、第2所定時間が経過した時点で該供給動作を停止するものであって、前記第1所定時間の経過時点から前記第2所定時間の経過時点までの期間に動力源に供給する駆動電圧或いは駆動電流の平均値は、前記第1所定時間だけ供給する駆動電圧値或いは駆動電流値よりも小さく設定される。
【0011】
上記本発明の往復移動装置においては、第1所定時間の経過時点まで、制御回路(5)から動力源に対して一定の大きさの駆動電圧或いは駆動電流が供給されることにより、動力源が、往復移動部材(1)を位置決め部材(6)側へ移動させるための順方向の動力を発揮し、該動力が動力伝達機構(2)の弾性体を介して往復移動部材(1)に伝えられる。これによって、往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に向かって移動し、位置決め部材(6)に当接して位置決めされ、その後、動力源の順方向の動力が動力伝達機構(2)の弾性体に加わって、該弾性体が僅かに弾性変形することになる。そして、該弾性体の弾性復帰力によって、往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に押し付けられると共に、動力源には、前記順方向とは逆向きの力(以下、逆転力という)が作用する。該逆転力は、従来と同様に往復移動部材(1)を位置決め部材(6)から離間させる原因となるが、次の第2所定時間における動力源の駆動によって、往復移動部材(1)を位置決め部材(6)に当接させた状態に維持し、若しくは位置決め部材(6)から離間した往復移動部材(1)を再度、位置決め部材(6)に当接させることが出来る。
即ち、第2所定時間だけ制御回路(5)から動力源に対して、第1所定時間の駆動電圧或いは駆動電流よりも平均値の小さな駆動電圧或いは駆動電流が供給されることによって、動力源は、第1所定時間における順方向の動力よりも小さな順方向の動力を発揮し、該動力によって往復移動部材(1)が位置決め部材(6)側へ駆動され、この結果、前記逆転力に起因する往復移動部材(1)の位置決め部材(6)からの離間が防止され、或いは位置決め部材(6)から一旦離間した往復移動部材(1)が再び位置決め部材(6)側へ駆動されて、位置決め部材(6)に当接する。
又、第2所定時間の進行につれて、動力伝達機構(2)の弾性体は弾性復帰し、第2所定時間の経過時点では該弾性体は完全に元の自由状態に戻っているので、第2所定時間の経過時点で動力源への駆動電圧或いは駆動電流の供給動作が停止された後に、従来の如く弾性体の弾性復帰力に起因して往復移動部材(1)が位置決め部材(6)から離間することはない。
【0012】
具体的構成においては、更に、前記往復移動部材(1)が前記位置決め部材(6)に接近したことを検知してオンとなるセンサー(4)を具えており、前記制御回路(5)は、該センサー(4)がオンとなった時点から前記第1所定時間の経過時点まで前記動力源に一定の大きさの駆動電圧或いは駆動電流を供給する。
【0013】
該具体的な構成によれば、往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に向かって移動する過程で、往復移動部材(1)がセンサー(4)に対する所定の相対位置(所定の基準位置)に達すると、センサー(4)がオンとなり、該オン時点から前記第1所定時間の計時が開始され、第1所定時間の経過時点まで動力源に前記一定の大きさの駆動電圧或いは駆動電流が供給される。
【0014】
具体的構成において、前記制御回路(5)は、前記第1所定時間の経過時点から一定時間だけ前記動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流の供給動作を停止し、その後、前記第2所定時間の経過時点までの一定時間だけ前記動力源に駆動電圧或いは駆動電流を供給する。
【0015】
該具体的構成においては、第1所定時間の動力源の駆動によって、往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に押し付けられると共に、動力源に前記逆転力が作用し、この状態で、第1所定時間が経過し、動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流の供給が一旦停止される。この結果、その後の第2所定時間の進行初期において、動力源は前記逆転力の作用によって僅かに逆方向に動作し、更に弾性体が完全に弾性復帰した後も、僅かな時間は、慣性力によって逆方向の動作を継続する。これによって、往復移動部材(1)が逆方向に駆動されて、位置決め部材(6)から僅かに離間することになる。
その後、制御回路(5)から動力源に対して一定時間だけ駆動電圧或いは駆動電流が供給されることによって、動力源は順方向の動力を発揮し、該動力によって往復移動部材(1)が位置決め部材(6)側へ駆動され、この結果、往復移動部材(1)は再び位置決め部材(6)に当接して位置決めされる。
【0016】
他の具体的構成において、前記制御回路(5)は、前記第1所定時間の経過時点から前記第2所定時間の経過時点までの期間に、前記動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流を前記一定の大きさから徐々に減小させる。
【0017】
該具体的構成においては、第1所定時間の動力源の駆動によって、往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に押し付けられると共に、動力源が前記逆転力を受けた状態で、第2所定時間の動力源への駆動電圧或いは駆動電流の供給状態に移行する。この結果、第2所定時間の進行初期において、動力源は、前記逆転力を受けた状態で、該逆転力に打ち勝つ順方向の動力を発揮し、該動力によって往復移動部材(1)は位置決め部材(6)に押し付けられた状態に維持される。
その後、動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流が小さくなる過程で、弾性体は徐々に弾性復帰し、該弾性復帰に伴って動力源は僅かに逆方向に動作し、該逆方向の動作によって動力源には僅かな慣性力が発生するが、この時点で動力源に供給される駆動電圧或いは駆動電流によって、動力源は前記慣性力に打ち勝つ順方向の動力を発生するので、動力源が更に逆方向に動作することはなく、該動力源の順方向の動力によって、往復移動部材(1)は依然として位置決め部材(6)に押し付けられた状態に維持される。
そして、弾性体が完全に元の自由状態に戻った後、動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流が零となって、往復移動部材(1)の駆動が停止される。この様にして、第2所定時間の進行中、往復移動部材(1)は位置決め部材(6)に当接して位置決めされた状態に維持されることになる。
【0018】
他の具体的構成において、前記制御回路(5)は、前記第1所定時間の経過時点から前記第2所定時間の経過時点までの期間に、前記動力源に駆動電圧或いは駆動電流を供給する動作と前記動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流の供給を停止する動作とを繰り返すものであって、前記供給動作を行なう期間を徐々に短く設定する。
【0019】
該具体的構成においては、第1所定時間の経過時点から第2所定時間の経過時点までの期間に動力源に供給される駆動電圧或いは駆動電流がパルス波形となって、該パルス波形のデューティ比が徐々に小さくなるので、上述の如く該期間に動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流を徐々に減小させた場合と同様の作用効果が得られる。
【0020】
更に他の具体的構成において、前記制御回路(5)は、前記第1所定時間の経過時点から一定時間だけ前記動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流の供給動作を停止し、その後、前記第2所定時間の経過時点までの期間に、前記動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流を前記一定の大きさから徐々に減小させる。
【0021】
該具体的構成においては、第1所定時間の経過時点から一定時間だけ動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流の供給動作を停止することによって、この期間に弾性体が完全に弾性復帰し、該弾性復帰に伴って動力源は僅かに逆方向に動作するが、弾性体の弾性復帰力の作用によって、往復移動部材(1)は位置決め部材(6)に押し付けられた状態に維持される。
その後、動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流の供給が開始され、これによって、動力源は、前記逆方向への動作による慣性力に打ち勝つ順方向の動力を発生し、該動力によって往復移動部材(1)が位置決め部材(6)側へ駆動される。この結果、往復移動部材(1)は位置決め部材(6)に当接して位置決めされた状態に維持されることになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る往復移動装置によれば、ロック機構を設けることなく、簡単な構成でディスクトレイをローディング完了位置に正確に位置決めすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明をディスクプレーヤのディスク搬送装置に実施した形態につき、4つの実施例に基づいて具体的に説明する。
全体構成
本発明に係るディスク搬送装置においては、ディスクを載置するディスクトレイが筐体に対して往復移動可能に配備されており、図1に示す如く、ディスクトレイ(図示省略)の裏面には往復移動部材(1)が固定されている。筐体にはモータ(3)が配備されており、往復移動部材(1)とモータ(3)の間にはモータ(3)の駆動力を往復移動部材(1)に伝達する動力伝達機構(2)が介在している。
前記往復移動部材(1)の側面にはラックギア(11)が形成されている。一方、前記動力伝達機構(2)は、モータ(3)の出力軸(31)に取り付けられた原動プーリ(22)と、往復移動部材(1)の下方位置に配備された従動プーリ(23)と、原動プーリ(22)と従動プーリ(23)との間に張設されたゴム製のベルト(21)と、従動プーリ(23)に固定されたピニオンギア(24)とから構成されており、該ピニオンギア(24)は、前記往復移動部材(1)のラックギア(11)と噛合している。モータ(3)を駆動すると、モータ(3)の回転が原動プーリ(22)及びベルト(21)を経て従動プーリ(23)に伝わり、該プーリ(23)に固定されたピニオンギア(24)が回転することとなる。そして、該ピニオンギア(24)の回転が往復移動部材(1)のラックギア(11)に伝わって、該往復移動部材(11)が移動することになる。
【0024】
又、筐体には位置決め部材(6)が配備されており、往復移動部材(1)の先端面(12)が位置決め部材(6)の位置決め面(61)に当接した状態で、ディスクトレイがローディング完了位置に位置決めされるようになっている。
更に、筐体には、位置決め部材(6)から所定距離だけ離れた位置に、往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に向かって移動する過程で該往復移動部材(1)により押下されてオンとなるセンサー(4)が配備されている。
前記モータ(3)には、制御回路(5)が接続されており、該モータ(3)は、該制御回路(5)から駆動電圧の供給を受けて回転する。又、制御回路(5)には、前記センサー(4)の出力信号が供給され、該制御回路(5)は、後述の如くセンサー(4)がオンとなった時点で時間計測を開始する。
【0025】
第1実施例
図2(a)乃至(e)は、本実施例のディスク搬送装置の一連のローディング動作を表わしている。又、図4(a)(b)はそれぞれ、ローディング動作時における前記センサー(4)のオン/オフ状態、及びモータ(3)に供給される駆動電圧の変化を表わしている。
ユーザによりローディング動作を開始させるための操作が行なわれると、図4(b)に示す如く、モータ(3)に一定の大きさ、例えば3.5Vの駆動電圧が供給されて、図2(a)に矢印で示す如くモータ(3)が時計方向に回転を開始し、これによって往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に向かって移動を開始する。
【0026】
その後、図4(a)及び(b)に示す如く前記センサー(4)がオンとなった時点から所定時間T2が経過するまでモータ(3)に対して前記一定の大きさの駆動電圧を供給する動作が継続される。ここで、図4(a)に示す如く前記センサー(4)がオンとなった時点から往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に当接するまでの時間T1は、モータ(3)の駆動電圧のバラツキやモータ(3)の出力特性のバラツキ等により、例えば30〜40msecの間で変動するため、前記所定時間T2は、前記時間T1に比べて大きな値、例えば100msecに設定されている。
【0027】
従って、前記センサー(4)がオンとなった時点から所定時間T2が経過するまでの期間においては、時間T1が経過した時点で、図2(b)に示す如く往復移動部材(1)の先端面(12)が位置決め部材(6)の位置決め面(61)に当接して該往復移動部材(1)が位置決めされ、その後、往復移動部材(1)の先端面(12)が位置決め部材(6)の位置決め面(61)に押し付けられると共に、モータ(3)の駆動力がベルト(12)に伝わってベルト(21)の右側(21a)が伸びることになる。一方、ベルト(21)の左側(21b)は、従動プーリ(23)が回転しないため、若干弛んだ状態となる。
【0028】
その後、図4(b)に示す如く所定時間T3、例えば20msecだけモータ(3)に対する駆動電圧の供給が停止される。上述の如くベルト(21)が伸びた状態でモータ(3)の回転が停止されると、ベルト(21)の収縮力によって、図2(c)に矢印で示す如く従動プーリ(23)には時計方向の回転力が作用して往復移動部材(1)の先端面(12)が位置決め部材(6)の位置決め面(61)に押し付けられると共に、モータ(3)には反時計方向の回転力が作用してモータ(3)がベルト(21)の収縮量だけ反時計方向に回転することになる。
モータ(3)は、同図(d)に矢印で示す如く、その後も僅かな時間は慣性力により反時計方向に回転し続け、これによって、従動プーリ(23)及びピニオンギア(24)が反時計方向に回転して往復移動部材(1)が位置決め部材(6)から僅かに離間することになる。
【0029】
その後、図4(b)に示す如く所定時間T4、例えば20msecが経過するまでモータ(3)に前記一定の大きさの駆動電圧が供給される。これによって、図2(e)に矢印で示す如く、モータ(3)が時計方向に回転して、往復移動部材(1)が位置決め部材(6)側へ移動し、この結果、往復移動部材(1)は再び位置決め部材(6)に当接して位置決めされることになる。
【0030】
図3は、ローディング動作時に、本実施例の制御回路(5)によって実行されるモータ制御手続きを表わしている。
ローディング動作を開始させるための操作が行なわれると、先ずステップS1にてトレイクローズ指令を受信し、ステップS2では、モータ(3)の駆動を開始する。これによって、図2(a)に矢印で示す如く、前記往復移動部材(1)は位置決め部材(6)に向かって移動を開始することになる。
【0031】
次に図3のステップS3では、センサー(4)がオンであるか否かを判断し、ノーと判断された場合はステップ3にて同じ判断を繰り返す。その後、センサー(4)がオンになると、ステップS3にてイエスと判断されてステップS4に移行し、内蔵するタイマーをリセットして計時を開始する。続いてステップS5では、タイマーによる計測時間が前記所定時間T2より大きいか否かを判断し、ノーと判断された場合はステップS5にて同じ判断を繰り返す。この期間に、図2(b)に示す如く、往復移動部材(1)は位置決め部材(6)に当接し、該位置決め部材(6)に押し付けられることになる。
【0032】
その後、タイマーによる計測時間が前記所定時間T2を越えると、図3のステップS5にてイエスと判断されてステップS6に移行し、モータ(3)の駆動を停止する。続いてステップS7では、タイマーをリセットして計時を開始した後、ステップS8では、タイマーによる計測時間が前記所定時間T3より大きいか否かを判断し、ノーと判断された場合はステップS8にて同じ判断を繰り返す。この期間に、図2(c)に示す如く、モータ(3)はベルト(21)の収縮量だけ反時計方向に回転した後、同図(d)に示す如く、慣性力によりその回転を続行して、往復移動部材(1)が位置決め部材(6)から離間することになる。
【0033】
その後、タイマーによる計測時間が前記所定時間T3を越えると、図3のステップS8にてイエスと判断されてステップS9に移行し、再びモータ(3)の駆動を開始する。続いてステップS10では、タイマーをリセットして計時を開始した後、ステップS11では、タイマーによる計測時間が前記所定時間T4より大きいか否かを判断し、ノーと判断された場合はステップS11にて同じ判断を繰り返す。その後、タイマーによる計測時間が前記所定時間T4を越えると、ステップS11にてイエスと判断されてステップS12に移行し、モータ(3)の駆動を停止して、手続きを終了する。これによって、往復移動部材(1)が位置決め部材(6)側へ移動し、この結果、往復移動部材(1)は再び位置決め部材(6)に当接して位置決めされることになる。
【0034】
本実施例の往復移動装置においては、図2(d)(e)に示す如く位置決め部材(6)から一旦離間した往復移動部材(1)を再び位置決め部材(6)に当接して位置決めすることによって、ディスクトレイをローディング完了位置に正確に位置決めすることが出来る。
【0035】
第2実施例
図5(a)(b)はそれぞれ、本実施例のディスク搬送装置のローディング動作時におけるセンサー(4)のオン/オフ状態、及びモータ(3)に供給される駆動電圧の変化を表わしている。
本実施例のディスク搬送装置においては、第1実施例と同様に、センサー(4)がオンとなった時点から所定時間T2が経過するまでモータ(3)に一定の大きさの駆動電圧を供給し、その後、モータ(3)に供給する駆動電圧を徐々に低下させて、所定時間T5、例えば60msecが経過した時点でモータ(3)に対する駆動電圧の供給を停止する。
【0036】
本実施例のディスク搬送装置においては、前記所定時間T2のモータ(3)の駆動によって、図2(b)に示す如く往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に押し付けられると共に、モータ(3)に反時計方向の回転力(逆転力)が作用している状態で、図5(b)に示す如くモータ(3)に供給する駆動電圧を徐々に低下させる。この結果、所定時間T5の進行初期において、モータ(3)は、前記逆転力を受けた状態で、該逆転力に打ち勝つ時計方向の回転力を発揮し、該回転力によって往復移動部材(1)は位置決め部材(6)に押し付けられた状態に維持される。
その後、モータ(3)に対する駆動電圧が低下する過程で、ベルト(21)は徐々に収縮し、該収縮に伴ってモータ(3)は僅かに反時計方向に逆転し、その逆転によってモータ(3)には僅かな慣性力が発生するが、この時点でモータ(3)に供給される駆動電圧によって、モータ(3)は前記慣性力に打ち勝つ時計方向の回転力を発生するので、モータ(3)が更に逆転することはなく、該モータ(3)の時計方向の回転力によって、往復移動部材(1)は依然として位置決め部材(6)に押し付けられた状態に維持される。
そして、ベルト(21)が完全に元の自由状態に戻った後、モータ(3)に対する駆動電圧が零となって、往復移動部材(1)の駆動が停止される。この様にして、前記所定時間T5の進行中、往復移動部材(1)は位置決め部材(6)に当接して位置決めされた状態に維持されることになる。
【0037】
本実施例の往復移動装置においては、上述の如く往復移動部材(1)を位置決め部材(6)に当接させて位置決めされた状態に維持することによって、ディスクトレイをローディング完了位置に正確に位置決めすることが出来る。
【0038】
第3実施例
図6(a)(b)はそれぞれ、本実施例のディスク搬送装置のローディング動作時におけるセンサー(4)のオン/オフ状態、及びモータ(3)に供給される駆動電圧の変化を表わしている。
本実施例のディスク搬送装置においては、第1実施例と同様に、図6(a)(b)に示す如くセンサー(4)がオンとなった時点から所定時間T2が経過するまでモータ(3)に一定の大きさの駆動電圧を供給し、その後、モータ(3)に対する駆動電圧の供給を停止する動作と、モータ(3)に対して前記一定の大きさの駆動電圧を供給する動作とを繰り返して、所定時間T6、例えば70msecが経過した時点でモータ(3)に対する駆動電圧の供給を停止する。この間においては、モータ(3)に対する駆動電圧はパルス波形となり、該パルス波形のデューティ比を徐々に減小させる。
【0039】
本実施例のディスク搬送装置においては、前記所定時間T2のモータ(3)の駆動によって、図2(c)に矢印で示す如く往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に押し付けられると共に、モータ(3)に反時計方向の回転力(逆転力)が作用している状態で、図6(b)に示す如くモータ(3)に供給する駆動電圧のデューティ比を徐々に減小させる。従って、第2実施例と同様の作用効果が得られ、所定時間T6の進行中、往復移動部材(1)は位置決め部材(6)に当接して位置決めされた状態に維持されることになる。
【0040】
第4実施例
図7(a)(b)はそれぞれ、本実施例のディスク搬送装置のローディング動作時におけるセンサー(4)のオン/オフ状態、及びモータ(3)に供給される駆動電圧の変化を表わしている。
本実施例のディスク搬送装置においては、第1実施例と同様に、図7(a)(b)に示す如くセンサー(4)がオンとなった時点から所定時間T2が経過するまでモータ(3)に一定の大きさの駆動電圧を供給し、その後、所定時間T7が経過するまでモータ(3)に対する駆動電圧の供給を停止した後、再びモータ(3)に対する駆動電圧の供給を開始し、該駆動電圧を前記一定の大きさから徐々に低下させて、所定時間T8が経過した時点でモータ(3)に対する駆動電圧の供給を停止する。前記所定時間T7は、図4に示す所定時間T3よりも小さな値に設定される。
【0041】
本実施例のディスク搬送装置においては、前記所定時間T2のモータ(3)の駆動によって、図2(b)に示す如く往復移動部材(1)が位置決め部材(6)に押し付けられると共にベルト(21)の右側(21a)が伸びた状態で、モータ(3)に対する駆動電圧の供給が所定時間T7だけ停止される。これによって、ベルト(21)が徐々に収縮し、該収縮に伴ってモータ(3)は僅かに反時計方向に逆転するが、ベルト(21)の収縮力の作用によって、往復移動部材(1)は位置決め部材(6)に押し付けられた状態に維持される。
その後、図7(b)に示す如くモータ(3)に対する駆動電圧の供給が開始され、該駆動電圧を徐々に低下させる。これによって、モータ(3)は、逆転動作による慣性力に打ち勝つ時計方向の回転力を発生し、該回転力によって往復移動部材(1)が位置決め部材(6)側へ駆動される。この結果、往復移動部材(1)は位置決め部材(6)に当接して位置決めされた状態に維持されることになる。
【0042】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態においては、センサー(4)がオンとなった時点からモータ(3)に一定の大きさの駆動電圧を供給する所定時間T2を計測しているが、往復移動部材(1)が所定の移動開始位置(ディスク排出位置)から移動を開始した時点からモータ(3)に一定の大きさの駆動電圧を供給する所定時間を計測する構成を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る往復移動装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】第1実施例の往復移動装置の一連のローディング動作を表わす平面図である。
【図3】ローディング動作時に第1実施例の制御回路によって実行されるモータ制御手続きを表わすフローチャートである。
【図4】上記往復移動装置のローディング動作時におけるセンサーのオン/オフ状態、及びモータに供給される駆動電圧の変化を表わす波形図である。
【図5】第2実施例の往復移動装置のローディング動作時におけるセンサーのオン/オフ状態、及びモータに供給される駆動電圧の変化を表わす波形図である。
【図6】第3実施例の往復移動装置のローディング動作時におけるセンサーのオン/オフ状態、及びモータに供給される駆動電圧の変化を表わす波形図である。
【図7】第4実施例の往復移動装置のローディング動作時におけるセンサーのオン/オフ状態、及びモータに供給される駆動電圧の変化を表わす波形図である。
【図8】従来の往復移動装置の一連のローディング動作を表わす平面図である。
【符号の説明】
【0044】
(1) 往復移動部材
(11) ラックギア
(2) 動力伝達機構
(21) ベルト
(22) 原動プーリ
(23) 従動プーリ
(24) ピニオンギア
(3) モータ
(4) センサー
(5) 制御回路
(6) 位置決め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源と、該動力源により駆動される往復移動部材(1)と、前記動力源の動力を弾性体を介して前記往復移動部材(1)に伝達する動力伝達機構(2)と、前記往復移動部材(1)の移動を所定位置で受け止めて位置決めする位置決め部材(6)と、前記動力源に対して駆動電圧或いは駆動電流を供給する制御回路(5)とを具え、前記往復移動部材(1)が所定の移動開始位置から移動を開始した時点、或いは所定の基準位置を通過した時点から第1所定時間の経過時点まで前記動力源に一定の大きさの駆動電圧或いは駆動電流を供給して前記往復移動部材(1)を駆動することにより、該往復移動部材(1)が前記位置決め部材(6)に当接し、該位置決め部材(6)に押し付けられることとなる往復移動装置において、前記制御回路(5)は、前記第1所定時間が経過した後も前記動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流の供給動作を実行し、その後、第2所定時間が経過した時点で該供給動作を停止するものであって、前記第1所定時間の経過時点から前記第2所定時間の経過時点までの期間に動力源に供給する駆動電圧或いは駆動電流の平均値は、前記第1所定時間だけ供給する駆動電圧値或いは駆動電流値よりも小さいことを特徴とする往復移動装置。
【請求項2】
更に、前記往復移動部材(1)が前記位置決め部材(6)に接近したことを検知してオンとなるセンサー(4)を具えており、前記制御回路(5)は、該センサー(6)がオンとなった時点から前記第1所定時間の経過時点まで前記動力源に一定の大きさの駆動電圧或いは駆動電流を供給する請求項1に記載の往復移動装置。
【請求項3】
前記制御回路(5)は、前記第1所定時間の経過時点から一定時間だけ前記動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流の供給動作を停止し、その後、前記第2所定時間の経過時点までの一定時間だけ前記動力源に駆動電圧或いは駆動電流を供給する請求項1又は請求項2に記載の往復移動装置。
【請求項4】
前記制御回路(5)は、前記第1所定時間の経過時点から前記第2所定時間の経過時点までの期間に、前記動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流を前記一定の大きさから徐々に減小させる請求項1又は請求項2に記載の往復移動装置。
【請求項5】
前記制御回路(5)は、前記第1所定時間の経過時点から前記第2所定時間の経過時点までの期間に、前記動力源に駆動電圧或いは駆動電流を供給する動作と前記動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流の供給を停止する動作とを繰り返すものであって、前記供給動作を行なう期間を徐々に短く設定する請求項1又は請求項2に記載の往復移動装置。
【請求項6】
前記制御回路(5)は、前記第1所定時間の経過時点から一定時間だけ前記動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流の供給動作を停止し、その後、前記第2所定時間の経過時点までの期間に、前記動力源に対する駆動電圧或いは駆動電流を前記一定の大きさから徐々に減小させる請求項1又は請求項2に記載の往復移動装置。
【請求項7】
前記動力源はモータであって、前記動力伝達機構(2)は、該モータによって回転駆動される原動プーリと、前記往復移動部材(1)に連繋して往復移動部材(1)に動力を伝える従動プーリと、前記原動プーリと従動プーリの間に張設されたベルトとを具え、該ベルトが前記弾性体を構成している請求項1乃至請求項6の何れかに記載の往復移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−65957(P2006−65957A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247428(P2004−247428)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(397016699)三洋テクノ・サウンド株式会社 (16)
【Fターム(参考)】