説明

徐放化方法

【課題】 コーティングされた製剤、食品などからの有効成分の放出を徐放化させる方法、徐放化させるためのコーティング組成物、該組成物からなる被膜を有する製剤および/または食品ならびにそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】 有効成分を含有する芯部を微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性コーティング基剤を含有するコーティング組成物(A)で被覆することを特徴とする該有効成分を含有する芯部をコーティング組成物(A)で被覆した組成物(B)からの有効成分の放出を徐放化させる方法などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされた製剤、食品などからの有効成分の放出を徐放化させる方法、徐放化させるためのコーティング組成物、該組成物からなる被膜を有する製剤および/または食品ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有効成分を徐放的に放出する製剤(徐放性製剤)は、投与後、徐々に有効成分を放出する製剤であり、例えば血漿中濃度を一定の範囲に維持することにより有効成分の効果を持続させることや、服用回数を低減して患者のコンプライアンスを改善することができるなどの利点を有している。また、血漿中濃度の急激な上昇による副作用を軽減する利点も有している。
【0003】
徐放性製剤としては、例えば有効成分を含有する芯部を水不溶性または水難溶性のコーティング基剤に水溶性物質を含有させた組成物でコーティングした製剤が知られている(非特許文献1および2参照)。一般に、上記のような汎用されている徐放性製剤では、有効成分の溶出速度はコーティング組成物の構成成分の配合比とコーティング率の両方に影響を受ける。このため、所望の溶出速度を得るためには、複数の配合比でそれぞれコーティング率を検討して、適正な構成成分の配合比とコーティング率を設定しなければならない。また、構成成分の配合比のわずかな違いが薬物放出速度に大きく影響し、所望の製剤を簡単に調製することは難しい。
【0004】
従来、健康食品、機能性食品、栄養強化食品などとして、ペプチド、アミノ酸、ビタミン類、ミネラルなどの体質改善剤や栄養強化剤などを含む食品が、錠剤状または顆粒状などの形態で市販されている。
一方、微小繊維状セルロースは、従来から知られている(非特許文献3参照)。食品、化粧品または塗料などの粘度の保持、食品原料生地の強化、水分の保持、食品安定性向上などを目的として、また低カロリー添加物または乳化安定化助剤などとして産業上利用価値があり、例えば、非木質性セルロースを含むセルロース繊維をベースとした組成物およびフィルム(特許文献1参照)などが知られている。さらに、微小繊維状セルロースとキトサンを含有するフィルムが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特表2002−521577号公報
【特許文献2】特開平7−2701号公報
【非特許文献1】カール R.スターナーゲル(Carl R.Steuernagel)、安川嘉紀、「水系フィルムコーチング剤「Aquacoat」(訳)」、アビセル時報、旭化成、平成4年10月、第50号、p.2−10
【非特許文献2】「インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス(International Journal of Pharmaceutics)」、2003年、第263巻、p.9−24
【非特許文献3】「食品新素材有効利用技術シリーズNo.3、微小繊維状セルロース」、社団法人菓子総合技術センター、1995年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、コーティングされた製剤、食品などからの有効成分の放出を徐放化させる方法、徐放化させるためのコーティング組成物、該組成物からなる被膜を有する製剤および/または食品ならびにそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)〜(47)に関する。
(1) 有効成分を含有する芯部を微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性コーティング基剤を含有するコーティング組成物(A)で被覆することを特徴とする該有効成分を含有する芯部をコーティング組成物(A)で被覆した組成物(B)からの有効成分の放出を徐放化させる方法。
(2) 有効成分を含有する芯部をコーティング組成物(A)で被覆した組成物(B)が製剤である(1)記載の方法。
(3) 有効成分を含有する芯部をコーティング組成物(A)で被覆した組成物(B)が食品である(1)記載の方法。
(4) コーティング組成物(A)が水難溶性の無機物質を含有する組成物である(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 水難溶性の無機物質と微小繊維状セルロースの質量の和が、水不溶性または水難溶性コーティング基剤の質量より大きい(4)記載の方法。
(6) 芯部が有効成分の溶解性を制御する物質を含有する芯部である(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 芯部が発泡性成分を含有する芯部である(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8) 有効成分が、水または生体内溶液に対する溶解度が0.01〜10mg/mLの有効成分である(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9) 有効成分が、水または生体内溶液に対する溶解度が10mg/mLより大きい有効成分である(5)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(10) 微小繊維状セルロースが、木質性セルロース、粉末セルロースおよび結晶セルロースからなる群から選ばれるセルロースを含有する組成物を高圧ホモジナイザーで処理することにより製造した微小繊維状セルロースである(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11) 水不溶性または水難溶性のコーティング基剤が、エチルセルロース、酢酸セルロース、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRSおよびポリビニルアセテートからなる群から選ばれるコーティング基剤である(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12) コーティング組成物(A)における微小繊維状セルロースの含有量と水不溶性または水難溶性コーティング基剤の含有量の質量比が1:99〜19:1である(1)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13) コーティング組成物(A)における微小繊維状セルロースの含有量が0.1〜95質量%である(1)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14) 被覆するコーティング組成物(A)の量が芯部に対して0.5〜100質量%である(1)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15) 芯部の形状が錠剤または顆粒剤の形状である(1)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16) 芯部の形状が有核錠の形状である(1)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(17) (a)微小繊維状セルロースならびに(b)エチルセルロース、酢酸セルロース、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRSおよびポリビニルアセテートからなる群から選ばれる水不溶性または水難溶性コーティング基剤を含有するコーティング組成物。
(18) (a)微小繊維状セルロースおよび(b)ポリビニルアセテートを含有するコーティング組成物。
(19) (a)微小繊維状セルロース、(b)水不溶性または水難溶性のコーティング基剤および(c)水難溶性の無機物質を含有する組成物。
(20) 水不溶性または水難溶性のコーティング基剤が、エチルセルロース、酢酸セルロース、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRSおよびポリビニルアセテートからなる群から選ばれるコーティング基剤である(19)記載の組成物。
(21) 微小繊維状セルロースが、木質性セルロース、粉末セルロースおよび結晶セルロースからなる群から選ばれるセルロースを含有する組成物を高圧ホモジナイザーで処理することにより製造した微小繊維状セルロースである(17)〜(20)のいずれかに記載の組成物。
(22) 微小繊維状セルロースの含有量と水不溶性または水難溶性コーティング基剤の含有量の質量比が1:99〜19:1である(17)〜(21)のいずれかに記載の組成物。
(23) 微小繊維状セルロースの含有量が0.1〜95質量%である(17)〜(22)のいずれかに記載の組成物。
(24) 水難溶性の無機物質を含有し、水難溶性の無機物質と微小繊維状セルロースの質量の和が水不溶性または水難溶性コーティング基剤の質量より大きい(19)〜(23)のいずれかに記載の組成物。
(25) 有効成分を含有する芯部と(17)または(18)記載の組成物からなる被膜を有する製剤。
(26) 有効成分を含有する芯部と水難溶性の無機物質を含有する(19)〜(23)のいずれかに記載の組成物からなる被膜を有する製剤。
(27) 有効成分を含有する芯部と(24)記載の組成物からなる被膜を有する製剤。
(28) 芯部に有効成分の溶解性を制御する物質を含有する(25)〜(27)のいずれかに記載の製剤。
(29) 芯部に発泡性成分を含有する(25)〜(28)のいずれかに記載の製剤。
(30) 水または生体内溶液に対する有効成分の溶解度が0.01〜10mg/mLである(25)〜(29)のいずれかに記載の製剤。
(31) 水または生体内溶液に対する有効成分の溶解度が10mg/mLより大きい(27)〜(29)のいずれかに記載の製剤。
(32) 被膜の量が芯部に対して0.5〜100質量%である(25)〜(31)のいずれかに記載の製剤。
(33) 芯部の形状が錠剤または顆粒剤の形状である(25)〜(32)のいずれかに記載の製剤。
(34) 芯部の形状が有核錠の形状である(25)〜(32)のいずれかに記載の製剤。
(35) 有効成分を含有する芯部と微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性コーティング基剤を含有するコーティング組成物(A)からなる被膜を有する食品。
(36) 有効成分を含有する芯部と(17)〜(23)のいずれかに記載の組成物からなる被膜を有する食品。
(37) 有効成分を含有する芯部と(24)記載の組成物からなる被膜を有する食品。
(38) 芯部に有効成分の溶解性を制御する物質を含有する(35)〜(37)のいずれかに記載の食品。
(39) 芯部に発泡性成分を含有する(35)〜(38)のいずれかに記載の食品。
(40) 水または生体内溶液に対する有効成分の溶解度が0.01〜10mg/mLである(35)〜(39)のいずれかに記載の食品。
(41) 水または生体内溶液に対する有効成分の溶解度が10mg/mLより大きい(37)〜(39)のいずれかに記載の食品。
(42) 被膜の量が芯部に対して0.5〜100質量%である(35)〜(41)のいずれかに記載の食品。
(43) 芯部の形状が錠剤または顆粒剤の形状である(35)〜(42)のいずれかに記載の食品。
(44) 健康食品、機能性食品または栄養強化食品である(35)〜(43)のいずれかに記載の食品。
(45) 有効成分を含有する芯部を調製する工程と、該芯部に微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性のコーティング基剤を含有する組成物をコーティングする工程を含む(25)〜(34)のいずれかに記載の製剤の製造方法。
(46) 有効成分を含有する芯部を調製する工程と、該芯部に微小繊維状セルロース、水不溶性または水難溶性のコーティング基剤および水難溶性の無機物質を含有する組成物をコーティングする工程を含む被膜に水難溶性の無機物質を含有する(26)〜(34)のいずれかに記載の製剤の製造方法。
(47) 有効成分を含有する芯部を調製する工程と、該芯部に微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性のコーティング基剤を含有する組成物をコーティングする工程を含む(35)〜(44)のいずれかに記載の食品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、コーティングされた製剤、食品などからの有効成分の放出を徐放化させる方法、徐放化させるための微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性コーティング基剤を含有するコーティング組成物、該組成物からなる被膜を有する製剤および/または食品ならびにそれらの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書において、「徐放」とは、有効成分を含有する芯部をコーティング組成物でコーティングした製剤および/または食品などの組成物を投与または摂取した後、時間と共に徐々に有効成分が放出されることであり、具体的には、例えば製剤および/または食品などの組成物について第十四改訂日本薬局方溶出試験法第二法(パドル法)に従い溶出試験を実施したとき、有効成分の溶出率が80%に到達する時間(T80)が3時間以上、24時間以内であり、T80の2分の1の時間における溶出率が20〜60%である、または有効成分が0次放出を示すことである。
【0009】
本発明の徐放化させる方法とは、有効成分を含有する芯部をコーティング組成物でコーティングした製剤および/または食品などの組成物に、上記の徐放の性質を付与することである。
具体的には、有効成分を含有する芯部を微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性コーティング基剤を含有するコーティング組成物(A)でコーティングすることであるが、後述するように用いられる有効成分の溶出溶媒(例えば水、胃液、腸液、血液などの生体内溶液など)に対する溶解度が0.01mg/mL以上であることが好ましく、0.01〜95mg/mLであることがより好ましく、0.01〜50mg/mLであることがさらに好ましく、0.01〜30mg/mLであることがさらにより好ましく、0.01〜10mg/mLであることが最も好ましい。上記溶出溶媒に対する溶解度の小さい、例えば0.01mg/mL以下の有効成分を用いる場合は、芯部に有効成分の溶解性を制御する物質を含有させ、有効成分を溶解しやすくする方法が利用できる。上記溶出溶媒に対する溶解度が大きい、例えば10mg/mLより大きい有効成分を用いる場合は、芯部に発泡成分を含有させる、または芯部に有効成分の溶解性を制御する物質を含有させ有効成分を溶解しにくくすることで有効成分の放出を徐放化させることができる。また、上記のコーティング組成物(A)に水難溶性無機物質を含有させることで上記溶出溶媒に対する溶解度が大きい、例えば10mg/mLより大きい有効成分の放出を徐放化させることもできる。
【0010】
以下に、本発明のコーティング組成物(A)について説明する。
本発明で用いられる微小繊維状セルロースとしては、特に限定はされないが、例えば木質性セルロース、粉末セルロース、結晶セルロースなどのセルロースを含有する組成物の懸濁液を高圧ホモジナイザーで処理することにより製造した微小繊維状セルロースなどがあげられ、好ましくは該高圧ホモジナイザーで処理することによりミクロフィブリル化したセルロースがあげられる。具体的には木材パルプなどのセルロース素材を、従来公知の種々の方法により粉砕または叩解した微細繊維(特開平3−163135号、特開昭56−100801号など)、市販の微小繊維状セルロース[例えば、商品名:セリッシュ(ダイセル化学工業)など]などがあげられる。また、バクテリアセルロース(特開昭61−221201号、特開昭62−265990号など)なども使用できる。さらに、本発明で用いられる微小繊維状セルロースの比表面積は、3m/g以上であることが好ましく、5m/g以上であることがさらに好ましい。
【0011】
本発明における水不溶性または水難溶性コーティング基剤としては、医薬品、食品、農薬、動物用薬品などの用途に許容されるものであれば特に限定されないが、好ましくは水不溶性または水難溶性のポリマー、糖類など、より好ましくは水不溶性または水難溶性のポリマーであってpH依存的な溶解性を示さないものなどがあげられる。具体的にはエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、酢酸フタル酸セルロース、酢酸セルロースなどの水不溶性または水難溶性セルロース系ポリマー;アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーSなどの水不溶性または水難溶性アクリル酸系ポリマー;ポリビニルアセテートなどの水不溶性または水難溶性ビニル系ポリマー;セラック、ゼインなどがあげられ、なかでも水不溶性または水難溶性セルロース系ポリマー、水不溶性または水難溶性アクリル酸系ポリマー、水不溶性または水難溶性ビニル系ポリマーなどが好ましい。より具体的にはエチルセルロース、酢酸セルロース、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、ポリビニルアセテートなどがあげられ、好ましくはエチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、ポリビニルアセテートなどがあげられ、より好ましくはエチルセルロース、ポリビニルアセテートがあげられる。また、上記の水不溶性または水難溶性のコーティング基剤をあらかじめ水に分散させたものを用いることもでき、例えばエチルセルロース水分散液[商品名:アクアコート(旭化成)、シュアリース(カラコン)]、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS水分散液[商品名:オイドラギットRS30D、オイドラギットRL30D(樋口商会)]、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー水分散液[商品名:オイドラギットNE30D(樋口商会)]、ポリビニルアセテート水分散液[商品名:コリコートSR30D(BASF)]などがあげられる。また、これらのコーティング基剤は2種類以上を混合して用いることもできる。
【0012】
本発明のコーティング組成物(A)における微小繊維状セルロースの含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜95質量%、より好ましくは1〜95質量%、さらに好ましくは10〜80質量%、最も好ましくは20〜50質量%である。微小繊維状セルロースの含有量を制御することで、有効成分の放出速度を容易に制御することができる。
また本発明のコーティング組成物(A)における水不溶性または水難溶性コーティング基剤の含有量は、微小繊維状セルロースの含有量との比として、好ましくは1:99〜19:1(微小繊維状セルロース:水不溶性または水難溶性コーティング基剤)、より好ましくは1:19〜9:1(同上)、さらに好ましくは3:7〜7:3(同上)、最も好ましくは4:6〜5:5(同上)である。
【0013】
さらに本発明のコーティング組成物(A)には、水難溶性の無機物質を含有していてもよい。その含有量は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは5〜45質量%であり、さらに好ましくは10〜40質量%である。水難溶性の無機物質としては、例えば軽質無水ケイ酸、カオリン、含水二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、ベントナイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどがあげられ、好ましくは軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどがあげられ、より好ましくは軽質無水ケイ酸などがあげられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0014】
また、該コーティング組成物(A)における上記の無機物質と微小繊維状セルロースの質量の和は、水不溶性または水難溶性コーティング基剤の質量より大きいことがより好ましい。
さらに、本発明のコーティング組成物(A)は、任意の種々の可塑剤、水溶性成分などを含有していてもよく、可塑剤としては、例えば水不溶性または水難溶性コーティング基剤の50質量%以下の、好ましくは5〜30質量%の、具体的にはクエン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、マクロゴール、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、トリアセチン、プロピレングリコール、セバシン酸ジブチルなどがあげられ、好ましくはクエン酸トリエチル、グリセリン脂肪酸エステルなどがあげられる。水溶性成分としては、水に溶解し、医薬品、食品、農薬、動物用薬品などの用途に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば上記組成物の50質量%以下の、好ましくは20質量%以下の、具体的には乳糖、白糖、D−マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酒石酸、尿素、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、マクロゴール、デンプン、ゼラチン、デキストリン、プルラン、カンテン、アラビアゴムなどがあげられ、好ましくは乳糖、白糖、D−マンニトール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどがあげられ、これらを2種以上組み合わせて使用することもできる。さらに、タルク、モノステアリン酸グリセリンなどの滑沢剤、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄などの着色剤などを含んでいてもよい。
【0015】
次に、上記コーティング組成物(A)でコーティングされた本発明の組成物(B)について説明する。
本発明の組成物(B)は、医薬品、農薬、動物用医薬品などに用いられる製剤、または例えば健康食品、機能性食品、栄養強化食品などの食品である。
本発明の上記製剤および食品は、医薬品、体質改善剤、栄養強化剤などの有効成分を含有する芯部と、該芯部を覆う上記コーティング組成物(A)からなる被膜を有し、溶出溶媒(例えば、水、胃液、腸液、血液などの生体内溶液など)中での有効成分の放出が徐放的である性質を有する。その形状は、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤などのいずれの形状であってもよいが、好ましくは錠剤または顆粒剤、より好ましくは錠剤である。
【0016】
本発明の製剤における芯部は、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤などのいずれの形状であってもよいが、好ましくは錠剤または顆粒剤、より好ましくは錠剤である。これらの製造方法としては当該技術分野で周知の方法があげられる。例えば、錠剤は、有効成分と製剤添加物を混合して圧縮成形することで製造できる。圧縮成形前に必要に応じて湿式または乾式の造粒など通常の製剤化処理を行ってもよいし、有効成分と製剤添加物を別々に造粒などの製剤化処理に付したものを混合し圧縮成形してもよい。また、本発明の製剤における芯部は、当該技術分野で周知の方法により、組成の異なる内核と外殻からなる有核錠の形状にすることもできる。丸剤は、有効成分と製剤添加物を混合し、練合、分割、成形の後、デンプンなどで丸衣することで製造することができる。顆粒剤は、有効成分と製剤添加物を混合後、湿式または乾式の造粒に付すことによって製造することができ、造粒後に該顆粒剤を丸め処理に付してもよい。さらに、有効成分と製剤添加物を混合後、白糖などの核粒子に噴霧することによっても製造することができる。また、顆粒剤は有効成分と製剤添加物を核粒子上に別々に噴霧し積層することにより製造することもできる。細粒剤は、顆粒剤の製法に準じて造粒を行った後、粉砕、篩過などの方法で整粒して製造することができる。カプセル剤は、顆粒および/または錠剤をカプセルに充填することで製造することができる。カプセルとしては、特に限定されないが、例えばゼラチンカプセル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル、キトサンカプセル、プルランカプセル、スターチカプセルなどがあげられる。
【0017】
本発明の食品における芯部は、例えばペプチド、核酸類、糖類、オリゴ糖類、食物繊維、ポリフェノール類、ミネラル、アミノ酸、ビタミン類、各種食品添加物などの体質改善剤や栄養添加剤などの有効成分を単独でまたは混合して、それらのみでまたは上記製剤と同様に製剤添加物とともに、例えば当該技術分野で周知の方法または上記で示した方法などを用い、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤などの形状に形成して製造することができる。
【0018】
芯部に含有される有効成分は、医薬品、食品、農薬、動物用薬品などの用途に許容されるものであり、経口もしくは経皮投与または摂取を目的とするものであれば、特に限定されないが、例えば水、生体内溶液(例えば胃液、腸液、血液など)などに対する有効成分の溶解度が0.01mg/mL以上であることが好ましく、0.01〜95mg/mLであることがより好ましく、0.01〜50mg/mLであることがさらに好ましく、0.01〜30mg/mLであることがさらにより好ましく、0.01〜10mg/mLであることが最も好ましい。また、後述するように、芯部に有効成分の溶解性を制御する物質や発泡性成分を含有させることにより、上記の溶解度に限定されず、任意の有効成分を本発明の製剤および/または食品に用いることができる。本発明に使用できる有効成分としては、より具体的には例えば以下の薬物、栄養強化剤((A)〜(YY))などがあげられる。
(A)解熱鎮痛消炎剤(例えばインドメタシン、アセチルサリチル酸、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、メフェナム酸、アズレン、フェナセチン、イソプロピルアンチピリン、アセトアミノフェン、ベンダザック、フェニルブタゾン、フルフェナム酸、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、サザピリン、エトドラクなど)、
(B)ステロイド系抗炎症剤(例えばデキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロンなど)、
(C)抗潰瘍剤(例えばエカベトナトリウム、エンプロスチル、スルピリド、塩酸セトラキサート、ゲファルナート、マレイン酸イルソグラジン、シメチジン、塩酸ラニチジン、ファモチジン、ニザチジン、塩酸ロキサチジンアセタートなど)、
(D)カルシウム拮抗剤(例えばベニジピン、塩酸ベニジピン、ベシル酸アムロジピン、ニフェジピン、塩酸ジルチアゼム、ニカルジピン、塩酸ニカルジピン、塩酸ベラパミル、ニルバジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、塩酸マニジピン、塩酸バルニジピン、塩酸エホニジピン、フェロジピン、シルニジピン、アラニジピンなど)、
(E)末梢血管拡張剤(例えば酒石酸イフェンプロジル、マレイン酸シネパシド、シクランデレート、シンナリジン、ペントキシフィリンなど)
(F)抗生物質(例えばアンピシリン、アモキシシリン、アセチルスピラマイシン、セファレキシン、エチルコハク酸エリスロマイシン、塩酸バカンピシリン、塩酸ミノサイクリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、エリスロマイシン、セフタジジム、セフロキシムナトリウム、アスポキシシリン、リチペネムアコキシル水和物など)、
(G)合成抗菌剤(例えばナリジクス酸、ピロミド酸、ピペミド酸三水和物、エノキサシン、シノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、スルファメトキサゾール・トリメトプリムなど)、
(H)抗ウイルス剤(例えばアシクロビル、ガンシクロビルなど)、
(I)抗真菌剤(例えばイトラコナゾール、フルコナゾールなど)、
(J)鎮けい剤(例えば臭化プロパンテリン、硫酸アトロピン、臭化オキサピウム、臭化チメピジウム、臭化ブチルスコポラミン、塩化トロスピウム、臭化ブトロピウム、N−メチルスコポラミンメチル硫酸塩、臭化メチルオクタロピンなど)、
(K)鎮咳剤(例えばヒベンズ酸チペピジン、塩酸メチルエフェドリン、リン酸コデイン、トラニラスト、臭化水素酸デキストロメトルファン、リン酸ジメモルファン、塩酸クロブチノール、塩酸ホミノベン、リン酸ベンプロペリン、塩酸エプラジノン、塩酸クロフェダノール、塩酸エフェドリン、ノスカピン、クエン酸ペントキシベリン、クエン酸オキセラジン、クエン酸イソアミニルなど)、
(L)去たん剤(例えば塩酸ブロムヘキシン、カルボシステイン、塩酸エチルシステイン、塩酸メチルシステインなど)、
(M)気管支拡張剤(例えばテオフィリン、アミノフィリン、クロモグリク酸ナトリウム、塩酸プロカテロール、塩酸トリメトキノール、ジプロフィリン、硫酸サルブタモール、塩酸クロルプレナリン、フマル酸ホルモテロール、硫酸オルシプレナリン、塩酸ピルブテロール、硫酸ヘキソプレナリン、メシル酸ビトルテロール、塩酸クレンブテロール、硫酸テルブタリン、塩酸マブテロール、臭化水素酸フェノテロール、塩酸メトキシフェナミンなど)、
(N)強心剤(例えば塩酸ドパミン、塩酸ドブタミン、ドカルパミン、デノパミン、カフェイン、ジゴキシン、ジギトキシン、ユビデカレノンなど)、
(O)利尿剤(例えばフロセミド、アセタゾラミド、トリクロルメチアジド、メチクロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、エチアジド、シクロペンチアジド、スピロノラクトン、トリアムテレン、フロロチアジド、ピレタニド、メフルシド、エタクリン酸、アゾセミド、クロフェナミドなど)、
(P)筋弛緩剤(例えばカルバミン酸クロルフェネシン、塩酸トルペリゾン、塩酸エペリゾン、塩酸チザニジン、メフェネシン、クロルゾキサゾン、フェンプロバメート、メトカルバモール、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、アフロクアロン、バクロフェン、ダントロレンナトリウムなど)、
(Q)脳代謝改善剤(例えばニセルゴリン、塩酸メクロフェノキサート、タルチレリンなど)、
(R)マイナートランキライザー(例えばオキサゾラム、ジアゼパム、クロチアゼパム、メダゼパム、テマゼパム、フルジアゼパム、メプロバメート、ニトラゼパム、クロルジアゼポキシドなど)
(S)メジャートランキライザー(例えばスルピリド、塩酸クロカプラミン、ゾテピン、塩酸クロルプロマジン、ハロペリドールなど)、
(T)β−ブロッカー(例えばフマル酸ビソプロロール、ピンドロール、塩酸プロブラノロール、塩酸カルテオロール、酒石酸メトプロロール、塩酸ラベタロール、塩酸アセブトロール、塩酸ブフェトロール、塩酸アルプレノロール、塩酸アロチノロール、塩酸オクスプレノロール、ナドロール、塩酸ブクモロール、塩酸インデノロール、マレイン酸チモロール、塩酸ベフノロール、塩酸ブプラノロールなど)
(U)抗不整脈剤(例えば塩酸プロカインアミド、ジソピラミド、アジマリン、硫酸キニジン、塩酸アプリンジン、塩酸プロパフェノン、塩酸メキシレチン、塩酸アジミライドなど)
(V)痛風治療剤(例えばアロプリノール、プロベネシド、コルヒチン、スルフィンピラゾン、ベンズブロマロン、ブコロームなど)、
(W)血液凝固阻止剤(例えば塩酸チクロピジン、ジクマロール、ワルファリンカリウム、(2R,3R)−3−アセトキシ−5−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2,3−ジヒドロ−8−メチル−2−(4−メチルフェニル)−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン・マレイン酸塩など)、
(X)血栓溶解剤(例えばメチル(2E,3Z)−3−ベンジリデン−4−(3,5−ジメトキシ−α−メチルベンジリデン)−N−(4−メチルピペラジン−1−イル)スクシナメート・塩酸塩など)、
(Y)肝臓疾患用剤(例えばプロトポルフィリン二ナトリウムなど)、
(Z)抗てんかん剤(例えばフェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、メタルビタール、カルバマゼピンなど)、
(AA)抗ヒスタミン剤(例えばオロパタジン、塩酸オロパタジン、オキサトミド、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸クレマスチン、メキタジン、酒石酸アリメマジン、塩酸シプロヘプタジン、ベシル酸ベポタスチンなど)、
(BB)鎮吐剤(例えばドンペリドン、塩酸ジフェニドール、メトクロプラミド、メシル酸ベタヒスチン、マレイン酸トリメブチンなど)、
(CC)降圧剤(例えば塩酸レセルピン酸ジメチルアミノエチル、レシナミン、メチルドパ、塩酸プラゾシン、塩酸ブナゾシン、塩酸クロニジン、ブドララジン、ウラピジル、N−[6−[2−[(5−ブロモ−2−ピリミジニル)オキシ]エトキシ]−5−(4−メチルフェニル)−4−ピリミジニル]−4−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)ベンゼンスルホンアミド・ナトリウム塩など)、
(DD)高脂血症用剤(例えばプラバスタチンナトリウム、フルバスタチンナトリウムなど)、
(EE)交感神経興奮剤(例えばメシル酸ジヒドロエルゴタミン、塩酸イソプロテレノール、塩酸エチレフリンなど)、
(FF)糖尿病治療剤(例えばグリベングラミド、トルブタミド、グリミジンナトリウムなど)、
(GG)抗腫瘍剤(例えばフルオロウラシル、ドキシフルリジン、テガフール・ウラシル、メシル酸イマチニブ、ゲフィチニブ、レボホリナートカルシウム、酢酸リュープロレリン、ゴセレリンなど)、
(HH)アルカロイド系麻薬(例えばモルヒネ、コデイン、コカインなど)、
(II)頻尿治療剤(例えば塩酸フラボキサート、塩酸オキシブチニン、塩酸テロリジンなど)、
(JJ)アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えばカプトプリル、塩酸イミダプリル、マレイン酸エナラプリル、アラセプリル、塩酸デラプリルなど)、
(KK)アンジオテンシンII受容体拮抗剤(例えばカンデサルタンシレキセチル、ロサルタンカリウム、バルサルタン、テルミサルタンなど)、
(LL)平滑筋弛緩薬(例えばジピリダモール、塩酸トリメタジジンなど)、
(MM)蛋白質またはペプチド(例えばブラジキニン、アンジオテンシン、オキシトシン、バソプレシン、アドレノコルチコトロピン(ACTH)、カルシトニン、インスリン、グルカゴン、コレシストキニン、β−エンドルフィン、メラノサイト阻害因子、メラノサイト刺激ホルモン、ガストリンアンタゴニスト、ニューロテンシン、ソマトスタチン、ブルシン、シクロスポリン、エンケファリン、トランスフェリン、RGDぺプチド、甲状腺ホルモン、成長ホルモン、ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)、黄体形成ホルモン(LHRH)、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、ウリカーゼ、カルボキシペプチダーゼ、グルタミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)、ストレプトキナーゼ、インターロイキン、インターフェロン、ムラミルジペプチド、サイモポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、トリプシンインヒビター、リゾチーム、表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子(TGF)、内皮細胞成長因子(ECGF)、フィブロブラスト(繊維芽細胞)成長因子(FGF)、グリア細胞成長因子(GGF)、サイモシン、特異抗体(例えば抗EGF受容体抗体など)、大豆蛋白、リン脂質結合大豆ペプチド、ラクトトリペプチド、カゼインホスホペプチド、カゼインドデカペプチド、コラーゲンペプチドなど)、
(NN)核酸類(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドなど)、
(OO)糖類(例えばコンドロイチン硫酸ナトリウム、へパリンナトリウム、デキストランフルオレセインなど)、
(PP)オリゴ糖類(例えばキシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラクチュロース、ガラクトオリゴ糖、ラフィノースなど)、
(QQ)グリセロール誘導体(例えばジアシルグリセロールなど)、
(RR)食物繊維(例えばポリデキストロース、難消化性デキストリンなど)、
(SS)カロチノイド類(例えばカロチン、リコピン、ルテイン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチンなど)、
(TT)ポリフェノール類(例えばカテキン、フラボノイド、タンニンなど)
(UU)ミネラル(例えばヘム鉄、クエン酸リンゴ酸カルシウムなど)、
(VV)アミノ酸(例えばバリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、アスパラギン酸、チロシン、セリン、スレオニン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、オルニチン、タウリンなど)、
(WW)ビタミン類(例えばビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、ビオチン、パントテン酸、コエンザイムQ10、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムなど)、
(XX)食品添加物(例えば乳酸鉄など)、
(YY)アルカロイド(例えばカフェイン、プリン、ニコチンなど)など。
【0019】
芯部に含有される製剤添加物としては、特に限定されないが、医薬品、食品、農薬、動物用薬品などの用途に許容されるものであればいずれも使用することができる。例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、結晶セルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなど、好ましくは乳糖、白糖、D−マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトールなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分α化デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンなどの崩壊剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、デキストリン、α化デンプンなどの結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素などの滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマーなどのゲル化剤;リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤;オレンジ、ストロベリーなどの香料;三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、食用黄色5号、食用黄色4号、アルミニウムキレートなどの着色剤;サッカリン、アスパルテームなどの甘味剤;クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、フマル酸、グルタミン酸などの矯味剤などがあげられる。
【0020】
また、該芯部には、有効成分の溶解性を制御する物質が含有していてもよい。有効成分の溶解性を制御する物質としては、医薬品、食品、農薬、動物用薬品などの用途に許容されるものであれば特に限定されないが、好ましくは界面活性剤、溶解補助剤、酸性化合物、塩基性化合物などがあげられ、酸性化合物、塩基性化合物などがより好ましい。具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリソルベート20、ポロキシル10オレイルエーテル、ポロキシル20セトステアリルエーテル、ポロキシル20セチルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポロキシル40ステアレート、ポロキシル50ステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤;酒石酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、乳酸カルシウムなどの酸性化合物;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの塩基性化合物;シクロデキストリンなどの溶解補助剤;アルギニンなどがあげられ、酒石酸、クエン酸、炭酸水素ナトリウムなどがより好ましい。芯部に有効成分の溶解性を制御する物質を含有させることにより、有効成分の溶解を制御し、溶出溶媒(例えば、水、胃液、腸液、血液などの生体内溶液など)中での有効成分の放出が徐放的である性質を有する本発明の製剤の調製を容易にすることができる。
【0021】
さらに、該芯部には、発泡性成分を含有していてもよい。発泡性成分としては、医薬品、食品、農薬、動物用薬品などの用途に許容されるものであれば特に限定されないが、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの塩基性化合物、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、リンゴ酸などの酸性化合物、アミノ酸などがあげられ、これらを混合して用いることができ、塩基性化合物と酸性化合物を混合して用いるのが好ましい。より具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの塩基性化合物と酒石酸、クエン酸などの酸性化合物を混合して用いるのが好ましく、炭酸水素ナトリウムおよび酒石酸を混合して用いるのがより好ましい。芯部に発泡性成分を含有させることで、例えば溶解度の大きい(例えば10mg/mL以上の)有効成分においても、溶出溶媒(例えば、水、胃液、腸液、血液などの生体内溶液など)中での有効成分の放出が徐放的である性質を示す製剤が得られる。
【0022】
本発明の製剤における被膜は、上記のコーティング組成物(A)を芯部にコーティングすることにより得られる。
上記のコーティング組成物(A)のコーティングは、流動層コーティング装置、転動流動層コーティング装置、遠心転動流動コーティング装置、パンコーティング装置などの既存の製剤機器を用いて行うことができ、当該技術分野で周知の方法が用いられる。例えば、微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性のコーティング基剤を含有する組成物を水および/または有機溶媒に溶解・分散した後、既存の製剤機器により噴霧する噴霧コーティング法、微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性のコーティング基剤を含有する組成物を構成する各成分を混合した混合粉体を既存の製剤機器により噴霧・積層させる粉末積層コーティング法、上記混合粉体を既存の製剤機器により芯部の周囲に圧縮成形する圧縮コーティング法などがあげられ、中でも、噴霧コーティング法が好ましい。
【0023】
被膜の量は、特に限定されないが、芯部に対して0.5〜100質量%であるのが好ましく、0.5〜50質量%であるのがより好ましく、1〜30質量%であるのがさらに好ましい。
以下、本発明の製剤および/または食品の製造方法について説明する。
本発明の製剤および/または食品の製造方法としては、当該技術分野で周知の製剤化技術で用いられている方法などに準じた方法をあげることができる。例えば、微小繊維状セルロースと水不溶性または水難溶性コーティング基剤などを含有するコーティング組成物(A)を調製する工程、有効成分を含有する芯部を調整する工程、および得られた組成物を該芯部にコーティングする工程を含む製造方法などがあげられる。コーティング組成物(A)を調製する工程としては、微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性コーティング基剤と、必要に応じ水難溶性の無機物質などのその他の構成成分とを、ホモジナイザーで混合するなどの方法により、水および/または有機溶媒中で混合して調製する工程、木質性セルロース、粉末セルロース、結晶セルロースなどを、必要に応じ水難溶性の無機物質などのその他の構成成分と共に、水および/または有機溶媒に懸濁させて、高圧ホモジナイザーなどで処理することにより微小繊維状セルロースを製造し、続いて得られた微小繊維状セルロースと水不溶性または水難溶性コーティング基剤とを、必要に応じその他の構成成分を添加し、ホモジナイザーで混合する方法などにより水および/または有機溶媒中で混合して溶解・分散し調製する工程などをあげることができる。有効成分を含有する芯部を調整する工程としては、例えば上記であげた芯部の製造方法を実施する工程をあげることができる。得られた組成物を芯部にコーティングする工程としては、例えば上記で例示したコーティング法を実施する工程などがあげられる。
【0024】
上記の各工程で用いられる有機溶媒としては、例えばエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトンなどがあげられ、これらの1種または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の製剤は、経口投与または経皮投与することが可能であり、投与量は有効成分の種類や患者の症状、体重などの種々の条件によって異なるが、例えば一日当たり有効成分を0.001〜20.0mg/kg程度投与することができる。また、投与回数は好ましくは一日1〜3回である。
【0025】
また、本発明の食品は、含有される有効成分、食品の形態、摂取者の体重などの種々の条件によって異なるが、通常、成人一日あたり、有効成分として1〜5000mg、好ましくは10〜1000mg摂取することが可能であり、1日に1回または数回に分けて摂取することができる。
以下に、試験例、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試験例1>(溶出試験)
実施例1で得られたコーティング錠について、第十四改正日本薬局方溶出試験法第二法に従い、溶出試験を行い(試験液;50mmol/L リン酸緩衝液(pH6.8)、試験液中の有効成分(テオフィリン)の濃度を、HPLCを用いて測定した(カラム:Inertsil ODS−3V(内径4.6mm×長さ150mm)(ジーエルサイエンス)、検出波長:271nm、移動相:50mmol/L リン酸二水素カリウム水溶液/(8:2))。試験液中での有効成分の放出挙動を、図1に示した。
【0026】
テオフィリン(溶解度:8mg/mL)を含有する実施例1で得られたコーティング錠は、試験開始直後から有効成分の徐放的な放出を示し、20時間後の溶出率は約80%であった。
<試験例2>(溶出試験)
実施例2で得られたコーティング錠について、試験例1と同様の条件で溶出試験を行い、試験液中の有効成分(ピンドロール)の濃度を、HPLCを用いて測定した(カラム:Inertsil ODS−3V(内径4.6mm×長さ150mm)(ジーエルサイエンス)、検出波長:265nm、移動相:0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液/メタノール(4:6)混液)。試験液中での有効成分の放出挙動を、図2に示した。
【0027】
ピンドロール(溶解度:4mg/mL(pH=6.8))を含有する実施例2で得られたコーティング錠は、試験開始直後から有効成分の徐放的な放出を示し、12時間後の溶出率は約80%であった。
<試験例3>(溶出試験)
実施例6で得られたコーティング顆粒について、試験例1と同様の条件で溶出試験を行い、試験液中の有効成分(テオフィリン)の濃度を、分光光度計を用いて測定した(検出波長:271nm)。試験液中での有効成分の放出挙動を、図3に示した。
【0028】
テオフィリン(溶解度:8mg/mL)を含有する実施例6で得られた本発明のコーティング用組成物でコーティングしたコーティング顆粒は、試験開始直後から有効成分の徐放的な放出を示し、5時間後の溶出率は約80%であった。
以上、試験例1〜3より、溶解度が10mg/mL以下である有効成分を含有する本発明のコーティング錠(顆粒)では、試験開始直後から有効成分の徐放的な放出を示すこと考えられた。
<試験例4>(溶出試験)
実施例3で得られたコーティング錠について、試験例1と同様の条件で溶出試験を行い、試験液中の有効成分(テオフィリン)の濃度を、試験例1と同様にHPLCを用いて測定した。試験液中での有効成分の放出挙動を、図4に示した。
【0029】
テオフィリン(溶解度:8mg/mL)を含有する実施例3で得られたコーティング錠は、試験開始直後から有効成分の徐放的な放出を示し、12時間後の溶出率は約80%であった。
微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性コーティング基剤を含有するコーティング組成物中に水難溶性無機物質(軽質無水ケイ酸)を含有しても、有効成分は徐放的な放出を示した。
<試験例5>
実施例4および比較例1で得られたコーティング錠について、試験例1と同様の条件で溶出試験を行い、試験液中の有効成分(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム)の濃度を、分光光度計を用いて測定した(検出波長:450nm)。試験液中での有効成分の放出挙動を、図5に示した。
【0030】
比較例1で得られたフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム(溶解度:400mg/mL)を含有するコーティング錠は、試験開始後約2時間は有効成分の放出は観測されなかった(試験開始後2時間後より放出を開始した。)。一方、コーティング組成物中に軽質無水ケイ酸を含有し、その含有量が微小繊維状セルロースとの質量和が含有する水難溶性コーティング基剤の質量より多い実施例4で得られたコーティング錠は、試験開始直後から有効成分の徐放的な放出を示した。
【0031】
溶出溶媒に対する溶解度の大きい(10mg/mL以上)有効成分を本発明の徐放化方法に用いる場合は、コーティング組成物中に水難溶性無機物質(例えば軽質無水ケイ酸など)を含有させ、その含有量を微小繊維状セルロースとの質量和が含有する水難溶性コーティング基剤の質量より大きくすることで、有効成分を徐放的に放出できると考えられた。
<試験例6>(溶出試験)
実施例5および比較例1で得られたコーティング錠について、試験例2と同様の条件で溶出試験を行い、試験液中の有効成分(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム)の濃度を、分光光度計を用いて測定した(検出波長:450nm)。試験液中での有効成分の放出挙動を、図6に示した。
【0032】
比較例1で得られたフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム(溶解度:400mg/mL)を含有するコーティング錠は、試験開始後約2時間は有効成分の放出は観測されなかった(試験開始後2時間後より放出を開始した。)。一方、芯部に発泡性成分(炭酸水素ナトリウムおよび酒石酸)が含有した実施例5で得られたコーティング錠は、試験開始直後から有効成分の徐放的な放出を示した。
【0033】
溶出溶媒に対する溶解度の大きい(10mg/mL以上)有効成分を本発明の徐放化方法に用いる場合は、芯部に発泡性成分を含有させることで、有効成分を徐放的に放出できると考えられた。
以上、試験例1〜6より、本発明のコーティング組成物(A)でコーティングしたコーティング錠は、以下の特徴を有していることが示された。
(i) 有効成分の溶解度が、好ましくは0.01mg/mL以上、より好ましくは0.01〜10mg/mLであるとき、有効成分の徐放的な放出を示す。
(ii) コーティング組成物(A)中に水難溶性の無機物質を含有させることもできる。特に該コーティング組成物中の該無機物質と微小繊維状セルロースの質量和が水不溶性または水難溶性コーティング基剤の質量より大きいとき、上記(i)で述べた有効成分の溶解度によらず、有効成分の徐放的な放出を示す。
(iii) 芯部に発泡性成分を含有させることで、上記(i)で述べた有効成分の溶解度によらず、有効成分の徐放的な放出を示す。
【0034】
さらに、本発明のコーティング組成物(A)でコーティングしたコーティング錠は、コーティング膜の強度が高いため、消化管内でうける機械的な応力による影響を受けにくい。従って、医薬品、食品などの用途として好適である。
【実施例1】
【0035】
テオフィリン(関東化学)50質量部、D−マンニトール(東和化成)46質量部およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L、日本曹達)3質量部を、攪拌造粒機(VG−1、パウレック)を用いて混合しながら、水10質量部を滴下し、造粒した。得られた粗粒末を送風低温乾燥機(DK−600、ヤマト科学)で乾燥した後、30メッシュの篩を用い、篩下、整粒した。得られた整粒末とステアリン酸マグネシウム(マリンクロッド)1質量部を混合し、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)で直径8mm、1錠あたり質量200mgとなるように製錠し、素錠を得た。
【0036】
微小繊維状セルロース9質量部[90%含水微小繊維状セルロース(セリッシュFD−100G、ダイセル化学工業)で90質量部]およびクエン酸トリエチル(シトロフレックス、森村商事)1.1質量部をエタノール738.9質量部に分散した後、ホモジナイザーで11000rpm、10分間撹拌した。ポリビニルアセテート27%、ポビドン2.5%およびラウリル硫酸ナトリウム0.3%からなるポリビニルアセテート水分散液(コリコートSR30D、BASF)70質量部(固形分として21質量部)を加え、溶解・分散させることによりコーティング液を調製した。
【0037】
得られたコーティング液(ポリビニルアセテート/微小繊維状セルロースの配合質量比:63/30)をパンコーティング機(ドリアコーターDRC200、パウレック)を用いて、素錠1錠200mgに対してコーティング率が約5%になるまで、上記で得られた素錠に噴霧コーティングした後、70℃で1時間乾燥させ、コーティング錠を得た。
【実施例2】
【0038】
ピンドロール(シグマ)38質量部、D-マンニトール922質量部およびヒドロキシプロピルセルロース30質量部を、乳鉢を用いて混合しながら、水73質量部を滴下し、造粒した。得られた粗粒末を、小型熱風循環式恒温器(ミニジェットオーブン、富山産業製)で乾燥した後、30メッシュの篩を用い、篩下、整粒した。得られた整粒末とステアリン酸マグネシウム10質量部を混合し、油圧プレス(油圧パワーP−18、理研精機)で直径7mm、1錠あたり質量130mgとなるように製錠し、素錠を得た。
【0039】
粉末セルロース(ARBOCEL M80、J.RETTENMAIER社製)20質量部を精製水980質量部に分散し、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、みづほ工業社製)を用い、100MPaの圧力で連続的に20回通過させることにより、微小繊維状セルロースの懸濁液を得た。この懸濁液750質量部(微小繊維状セルロースとして15質量部)をホモジナイザー(ウルトラタラックスT25、IKAジャパン社製)で11000rpm、10分間撹拌した後、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS水分散液(オイドラギットRS30D、樋口商会)50質量部(固形分として15質量部)、精製水697質量部およびクエン酸トリエチル3質量部を加え、溶解・分散させることにより、コーティング液を得た。
【0040】
得られたコーティング液(アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS/微小繊維状セルロースの配合質量比:5/5)を、パンコーティング機を用いて、素錠1錠130mgに対してコーティング率が約10%になるまで、上記で得られた素錠に噴霧コーティングした後、80℃で2時間乾燥させ、コーティング錠を得た。
【実施例3】
【0041】
テオフィリン50質量部、D−マンニトール46質量部およびヒドロキシプロピルセルロース2質量部を、サンプルミル(協立理工)を用いて混合しながら、水16質量部を滴下し、造粒した。得られた粗粒末を、小型熱風循環式恒温器で乾燥した後、30メッシュの篩を用い、篩下、整粒した。得られた整粒末とステアリン酸マグネシウム1質量部を混合し、油圧プレスで直径8mm、1錠あたり質量200mgとなるように製錠し、素錠を得た。
【0042】
エチルセルロース(エトセル、ダウケミカル)50質量部、グリセリン脂肪酸エステル(マイバセット9−40、光洋商会)10質量部、微小繊維状セルロース50質量部[90%含水微小繊維状セルロースで500質量部]および軽質無水ケイ酸(アドソリダー、フロイント産業)60質量部をエタノール4380質量部に加え、ホモジナイザーで撹拌し、溶解・分散させることによりコーティング液を調製した。
【0043】
得られたコーティング液(エチルセルロース/微小繊維状セルロース/軽質無水ケイ酸の配合質量比:5/5/6)を、パンコーティング機を用いて、素錠1錠200mgに対するコーティング率が約3%になるまで、上記で得られた素錠に噴霧コーティングした後、80℃で10分間乾燥させ、コーティング錠を得た。
【実施例4】
【0044】
フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム(協和発酵工業)38質量部、D−マンニトール922質量部およびヒドロキシプロピルセルロース30質量部を、攪拌造粒機(VG−5、パウレック)を用いて混合しながら、水99質量部を滴下し、造粒した。得られた粗粒末を送風低温乾燥機(DK−600、ヤマト科学)で乾燥した後、30メッシュの篩を用い、篩下、整粒した。得られた整粒末とステアリン酸マグネシウム10質量部を混合し、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)で直径7mm、1錠あたり質量130mgとなるように製錠し、素錠を得た。
【0045】
エチルセルロース50質量部、グリセリン脂肪酸エステル10質量部、微小繊維状セルロース50質量部[90%含水微小繊維状セルロースで500質量部]および軽質無水ケイ酸20質量部をエタノール(関東化学)4420質量部に加え、ホモジナイザーで撹拌し、溶解・分散させることによりコーティング液を調製した。
実施例3と同様にして、得られたコーティング液(エチルセルロース/微小繊維状セルロース/軽質無水ケイ酸の配合質量比:5/5/2)を、上記で得られた素錠に、素錠1錠130mgに対するコーティング率が約5%になるまで噴霧コーティングすることにより、コーティング錠を得た。
【実施例5】
【0046】
フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム176質量部、D−マンニトール(パールリトール、ロケット)3432質量部、ヒドロキシプロピルセルロース52.8質量部、炭酸水素ナトリウム(関東化学)348.5質量部、酒石酸(関東化学)311.5質量部およびステアリン酸マグネシウム44質量部を混合し、油圧プレスで直径8mm、1錠あたり質量200mgとなるように製錠し、素錠を得た。
【0047】
エチルセルロース50質量部、グリセリン脂肪酸エステル10質量部および微小繊維状セルロース50質量部[90%含水微小繊維状セルロースで500質量部]をエタノール4440質量部に加え、ホモジナイザーで撹拌し、溶解・分散させることにより、コーティング液を調製した。
実施例3と同様にして、得られたコーティング液(エチルセルロース/微小繊維状セルロース:5/5)を、上記で得られた素錠に、素錠1錠200mgに対するコーティング率が約5%になるまで噴霧コーティングすることにより、コーティング錠を得た。
【実施例6】
【0048】

遠心転動型造粒装置(CF−360S型、フロイント産業)中、100質量部の白糖・デンプン球形顆粒(ノンパレル101、フロイント産業)に、ヒドロキシプロピルセルロース5質量%を含む水溶液を噴霧しながら、テオフィリン100質量部を徐々に加えて積層させた。70℃で2時間以上乾燥させた後、一晩以上調湿し、12メッシュの篩で篩下してテオフィリン素顆粒を得た。
【0049】
微小繊維状セルロース6質量部[90%含水微小繊維状セルロースで60質量部]を434質量部の精製水に分散した後、ホモジナイザーで11000rpm、10分間撹拌した。アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS分散液100質量部(固形分として30質量部)およびクエン酸トリエチル6質量部を加え、溶解・分散させることにより、コーティング液を調整した。
【0050】
上記で得られた素顆粒に、得られたコーティング液(アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS/微小繊維状セルロースの配合質量比:10/2)を、素顆粒に対するコーティング率が約20%になるように流動層造粒装置(FLO−mini型、大河原産業)を用いて噴霧コーティングした。次いで80℃で2時間乾燥し、コーティング顆粒を得た。
<比較例1>
実施例4で得られるフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムを含有する素錠に、実施例5得られたコーティング液(エチルセルロース/微小繊維状セルロースの配合質量比:5/5)を、パンコーティング機(ハイコーターHCT−30N、フロイント産業)を用いて、素錠1錠130mgに対するコーティング率が約5%になるまで噴霧コーティングした後、70℃で1時間乾燥させ、コーティング錠を得た。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第十四改訂日本薬局方溶出試験法第二法による溶出試験結果を示す。図中、横軸は試験開始後の経過時間を示し、縦軸は薬物溶出率を示す。
【図2】第十四改訂日本薬局方溶出試験法第二法による溶出試験結果を示す。図中、横軸は試験開始後の経過時間を示し、縦軸は薬物溶出率を示す。
【図3】第十四改訂日本薬局方溶出試験法第二法による溶出試験結果を示す。図中、横軸は試験開始後の経過時間を示し、縦軸は薬物溶出率を示す。
【図4】第十四改訂日本薬局方溶出試験法第二法による溶出試験結果を示す。図中、横軸は試験開始後の経過時間を示し、縦軸は薬物溶出率を示す。
【図5】第十四改訂日本薬局方溶出試験法第二法による溶出試験結果を示す。図中、横軸は試験開始後の経過時間を示し、縦軸は薬物溶出率を示す。
【図6】第十四改訂日本薬局方溶出試験法第二法による溶出試験結果を示す。図中、横軸は試験開始後の経過時間を示し、縦軸は薬物溶出率を示す。
【符号の説明】
【0052】
−●−:実施例1で得られたコーティング錠の薬物溶出率の経時変化を表す。
−○−:実施例2で得られたコーティング錠の薬物溶出率の経時変化を表す。
−△−:実施例6で得られたコーティング錠の薬物溶出率の経時変化を表す。
−×−:実施例3で得られたコーティング錠の薬物溶出率の経時変化を表す。
−▲−:実施例4で得られたコーティング錠の薬物溶出率の経時変化を表す。
−*−:比較例1で得られたコーティング錠の薬物溶出率の経時変化を表す。
−◆−:実施例5で得られたコーティング錠の薬物溶出率の経時変化を表す。
−◇−:比較例1で得られたコーティング錠の薬物溶出率の経時変化を表す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分を含有する芯部を微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性コーティング基剤を含有するコーティング組成物(A)で被覆することを特徴とする該有効成分を含有する芯部をコーティング組成物(A)で被覆した組成物(B)からの有効成分の放出を徐放化させる方法。
【請求項2】
有効成分を含有する芯部をコーティング組成物(A)で被覆した組成物(B)が製剤である請求項1記載の方法。
【請求項3】
有効成分を含有する芯部をコーティング組成物(A)で被覆した組成物(B)が食品である請求項1記載の方法。
【請求項4】
コーティング組成物(A)が水難溶性の無機物質を含有する組成物である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
水難溶性の無機物質と微小繊維状セルロースの質量の和が、水不溶性または水難溶性コーティング基剤の質量より大きい請求項4記載の方法。
【請求項6】
芯部が有効成分の溶解性を制御する物質を含有する芯部である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
芯部が発泡性成分を含有する芯部である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
有効成分が、水または生体内溶液に対する溶解度が0.01〜10mg/mLの有効成分である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
有効成分が、水または生体内溶液に対する溶解度が10mg/mLより大きい有効成分である請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
微小繊維状セルロースが、木質性セルロース、粉末セルロースおよび結晶セルロースからなる群から選ばれるセルロースを含有する組成物を高圧ホモジナイザーで処理することにより製造した微小繊維状セルロースである請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
水不溶性または水難溶性のコーティング基剤が、エチルセルロース、酢酸セルロース、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRSおよびポリビニルアセテートからなる群から選ばれるコーティング基剤である請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
コーティング組成物(A)における微小繊維状セルロースの含有量と水不溶性または水難溶性コーティング基剤の含有量の質量比が1:99〜19:1である請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
コーティング組成物(A)における微小繊維状セルロースの含有量が0.1〜95質量%である請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
被覆するコーティング組成物(A)の量が芯部に対して0.5〜100質量%である請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
芯部の形状が錠剤または顆粒剤の形状である請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
芯部の形状が有核錠の形状である請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
(a)微小繊維状セルロースならびに(b)エチルセルロース、酢酸セルロース、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRSおよびポリビニルアセテートからなる群から選ばれる水不溶性または水難溶性コーティング基剤を含有するコーティング組成物。
【請求項18】
(a)微小繊維状セルロースおよび(b)ポリビニルアセテートを含有するコーティング組成物。
【請求項19】
(a)微小繊維状セルロース、(b)水不溶性または水難溶性のコーティング基剤および(c)水難溶性の無機物質を含有する組成物。
【請求項20】
水不溶性または水難溶性のコーティング基剤が、エチルセルロース、酢酸セルロース、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRSおよびポリビニルアセテートからなる群から選ばれるコーティング基剤である請求項19記載の組成物。
【請求項21】
微小繊維状セルロースが、木質性セルロース、粉末セルロースおよび結晶セルロースからなる群から選ばれるセルロースを含有する組成物を高圧ホモジナイザーで処理することにより製造した微小繊維状セルロースである請求項17〜20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
微小繊維状セルロースの含有量と水不溶性または水難溶性コーティング基剤の含有量の質量比が1:99〜19:1である請求項17〜21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
微小繊維状セルロースの含有量が0.1〜95質量%である請求項17〜22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
水難溶性の無機物質を含有し、水難溶性の無機物質と微小繊維状セルロースの質量の和が水不溶性または水難溶性コーティング基剤の質量より大きい請求項19〜23のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
有効成分を含有する芯部と請求項17または18記載の組成物からなる被膜を有する製剤。
【請求項26】
有効成分を含有する芯部と水難溶性の無機物質を含有する請求項19〜23のいずれかに記載の組成物からなる被膜を有する製剤。
【請求項27】
有効成分を含有する芯部と請求項24記載の組成物からなる被膜を有する製剤。
【請求項28】
芯部に有効成分の溶解性を制御する物質を含有する請求項25〜27のいずれかに記載の製剤。
【請求項29】
芯部に発泡性成分を含有する請求項25〜28のいずれかに記載の製剤。
【請求項30】
水または生体内溶液に対する有効成分の溶解度が0.01〜10mg/mLである請求項25〜29のいずれかに記載の製剤。
【請求項31】
水または生体内溶液に対する有効成分の溶解度が10mg/mLより大きい請求項27〜29のいずれかに記載の製剤。
【請求項32】
被膜の量が芯部に対して0.5〜100質量%である請求項25〜31のいずれかに記載の製剤。
【請求項33】
芯部の形状が錠剤または顆粒剤の形状である請求項25〜32のいずれかに記載の製剤。
【請求項34】
芯部の形状が有核錠の形状である請求項25〜32のいずれかに記載の製剤。
【請求項35】
有効成分を含有する芯部と微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性コーティング基剤を含有するコーティング組成物(A)からなる被膜を有する食品。
【請求項36】
有効成分を含有する芯部と請求項17〜23のいずれかに記載の組成物からなる被膜を有する食品。
【請求項37】
有効成分を含有する芯部と請求項24記載の組成物からなる被膜を有する食品。
【請求項38】
芯部に有効成分の溶解性を制御する物質を含有する請求項35〜37のいずれかに記載の食品。
【請求項39】
芯部に発泡性成分を含有する請求項35〜38のいずれかに記載の食品。
【請求項40】
水または生体内溶液に対する有効成分の溶解度が0.01〜10mg/mLである請求項35〜39のいずれかに記載の食品。
【請求項41】
水または生体内溶液に対する有効成分の溶解度が10mg/mLより大きい請求項37〜39のいずれかに記載の食品。
【請求項42】
被膜の量が芯部に対して0.5〜100質量%である請求項35〜41のいずれかに記載の食品。
【請求項43】
芯部の形状が錠剤または顆粒剤の形状である請求項35〜42のいずれかに記載の食品。
【請求項44】
健康食品、機能性食品または栄養強化食品である請求項35〜43のいずれかに記載の食品。
【請求項45】
有効成分を含有する芯部を調製する工程と、該芯部に微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性のコーティング基剤を含有する組成物をコーティングする工程を含む請求項25〜34のいずれかに記載の製剤の製造方法。
【請求項46】
有効成分を含有する芯部を調製する工程と、該芯部に微小繊維状セルロース、水不溶性または水難溶性のコーティング基剤および水難溶性の無機物質を含有する組成物をコーティングする工程を含む被膜に水難溶性の無機物質を含有する請求項26〜34のいずれかに記載の製剤の製造方法。
【請求項47】
有効成分を含有する芯部を調製する工程と、該芯部に微小繊維状セルロースおよび水不溶性または水難溶性のコーティング基剤を含有する組成物をコーティングする工程を含む請求項35〜44のいずれかに記載の食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−160626(P2006−160626A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351316(P2004−351316)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】