説明

徐放性アジスロマイシン固形製剤

【解決手段】 胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンを含有する経口投与用の固形製剤であって、この製剤は徐放性製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌薬剤を含む経口投与される製剤の分野、特にアジスロマイシンの固形経口製剤に関連する。
【背景技術】
【0002】
エリスロマイシンAに由来する広域抗生物質であるアジスロマイシンは、9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンAの一般名である。これは、Bright(米国特許第4,474,768号)及びKobrehel(米国特許第4,517,359号)によって別々に発見され、そこではN−メチル−11−アザ−10−デオキソ−10−ジヒドロエリスロマイシンAの名前で呼ばれていた。Bright及びKobrehelらによって、吸湿性一水和物形態としてアジスロマイシンが開示されている。Allen(米国特許第6,268,489号)によって、アジスロマイシンの非吸湿性二水和物形態が開示されている。一水和物及び二水和物形態の両者は、全身投与した場合、細菌感染の治療に有効である。
【0003】
胃腸管内の食物の存在は、経口投与した薬剤の生物学的利用可能性に著しく影響を与える。薬剤の生物学的利用可能性が胃腸管内の食物の存在によって影響される場合、前記薬剤は「食物効果」を示すと言われる。特にアジスロマイシンの経口投与製剤は、投与されその後食事が消化された時に食物効果を示すことが報告されていた。Curatoloは、米国特許第5,605,889号において、アジスロマイシンの経口投与カプセル投薬形態は食物効果を示すが、錠剤形態は消化の後素早く分解するので食物効果を示さないことを開示した。食物効果を示さない前記アジスロマイシン錠剤は、胃の中で溶解するポリマーフィルムコーティングを含み、容易な飲み込み及び優れた外観を提供する。
【0004】
アジスロマイシンカプセル及び錠剤のZithromax(登録商標)ブランドの製造元であるPfizer Inc.は、新薬承認申請(NDA)50,711に関連して食品医薬品局(FDA)に認可された1995年の生物薬剤学レビュー(Biopharmaceutics Review)において、経口投与されたアジスロマイシンの食物効果が形態に依存していると実証したデータを示した。そのデータによって、カプセルの形態で経口投与されたアジスロマイシンは食物効果を示したが、錠剤の形態で投与されたアジスロマイシンは食物効果を示さなかったことが実証されていた。
【0005】
Curatoloによる米国特許第5,605,889号及びNDA50,711に関連したアジスロマイシン錠剤の食物効果の欠如を実証したデータは、各対象に対して500mg(2x250mg錠剤)の用量の投与によって得られた。500mgのアジスロマイシン投与量は、クロスオーバー研究としてFDAプロトコールに従って投与され、ここでアジスロマイシンは、一晩絶食後或いは脂肪含有量が高い標準食事後の最初の実験において対象に投与された。15日の休薬期間後、前記対象は交互処置条件下でアジスロマイシンを投与された。これらの条件下で、2つの250mg錠剤として投与されたアジスロマイシンの生物学的利用可能性は、高脂質の食事によって著しく変化しなかったことが実証され、さらに250mg錠剤は食事の消化に関連した制約なしに投与されることが実証された。
【0006】
250mg以下のアジスロマイシン量を含有するアジスロマイシン錠剤に関連した食物効果の有無について報告した研究は今までなかった。
【0007】
Curatoloによる米国特許第7,108,865号では、経口投与されたアジスロマイシンは、胃腸副作用の用量依存性発生率を有すると開示されていた。下痢/軟便、腹痛、嘔気及び嘔吐を含む副作用は、1000mgのアジスロマイシンの単一用量の投与、さらに1日目は500mgで、その後2から5日は各日250mgから成るアジスロマイシン治療の5日コースで投与されたアジスロマイシンの1500mgの投与で報告された。Curatoloはさらに、高用量のアジスロマイシンの十二指腸への曝露を軽減する徐放性製剤は、例えば1から7グラムの間で副作用の発生率を減少させるなどの、アジスロマイシンの高用量の投与を可能にすることを開示していた。
【0008】
Curatoloは、米国特許第7,108,865号において、750mg以下のアジスロマイシンの単離用量を開示しておらず、少なくとも1グラムの総用量を得るための一連の投与としての250mgのアジスロマイシン錠剤の投与を開示している。Curatoloの特許は、胃腸副作用を引き起こすような用量以下でのアジスロマイシンの経口投与に関連するものではない。
【0009】
Appelらは国際特許第2006/067576号において、複数微粒子アジスロマイシン錠剤を開示している。前記アジスロマイシン錠剤は、多数の「コア」を含み、それぞれアジスロマイシンを含み、腸溶性コーティングでコーティングされている。そのコーティングされた複数微粒子は、経口投与用で、素早く分解しコーティングされた複数微粒子の分散が可能となる錠剤へ形作られる。この方法において、経腸的にコーティングされた複数微粒子徐放性アジスロマイシン製剤を摂取した対象の患者は、同等用量を運搬する現在利用可能な即時放出製剤と比較して、GI副作用の発生率及び/重症度が減少した。
【0010】
Appelの特許は、胃腸副作用を引き起こす量以下のアジスロマイシンの量を含むアジスロマイシンの経口製剤に関連するものではない。
【0011】
カプセル経口製剤に関して、Curatoloの米国特許第5,605,889号、及び新薬承認申請(NDA)50,711に関連して食品医薬品局(FDA)に認可された1995年の生物薬剤学レビュー(Biopharmaceutics Review)の両者では、食物効果が開示されていた。しかしながら、カプセルにおけるそのような食物効果は、250mgのアジスロマイシンを含有するカプセルで達成されたものであったと開示されている。カプセルでの食物効果の存在は、低用量のアジスロマイシンでは研究されていなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンを含有する錠剤などの製剤は、食事消化後の個人へ経口投与した場合、食物効果を示すことが予想外に発見された。この発見は、経口投与用のアジスロマイシン含有錠剤は食物効果を示さないことを示したデータを提供したCuratolの米国特許第5,608,889号、及び食品医薬品局(FDA)新薬承認申請(NDA)50,711の開示の観点では特に驚くべきものであった。しかしながら、アジスロマイシンを含有したカプセルは食物効果を示すとも示したそのようなデータは、胃腸副作用を引き起こすと知られた量のアジスロマイシンを含有する固形経口製剤などで得られたものであった。
【0013】
従って、本発明者らは、錠剤などのアジスロマイシンの製剤の経口投与に関連した以前認識されていなかった問題を発見した。胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンを含有する錠剤は、食事消化後に投与された場合、食物効果を示すので、そのような錠剤の生物学的利用可能性は著しく減少される。さらに、そのように投与されたアジスロマイシンの量は、低用量を必要とされるので、この食物効果による生物学的利用可能性の減少は、例えば錠剤内に含有されたアジスロマイシンの有意なパーセンテージの損出を示し、従って錠剤内に含有されたアジスロマイシンの有効性は優位に減少する。従って、そのような量のアジスロマイシンを含有する錠剤を投与した場合、この食物効果を軽減した錠剤製剤として投与されたアジスロマイシンを提供することが望ましい。
【0014】
さらに、アジスロマイシンカプセルは食物効果を示すことが認識されたが、これは胃腸副作用を引き起こす量以上の量のアジスロマイシンを含有するカプセルにおいてのみ認識されていたので、低用量のアジスロマイシンでの食物効果のこの発見は、錠剤と同様にカプセルに対しても適用可能である。従って、そのような量のアジスロマイシンを含有するカプセルを含むあらゆる固形経口製剤を投与した場合、この食物効果を軽減したカプセル或いは他の製剤として投与されるアジスロマイシンを提供することが望ましい。
【0015】
胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンを含有する本発明の製剤は、非空腹時個人へそのような製剤のアジスロマイシンの投与後に生じかねない食物効果を著しく減少した徐放性アジスロマイシンを提供する。
【0016】
加えて、アジスロマイシンはpH1では化学的に不安定であり、このpHは食事後の胃内容物中で見出されるものである。典型的には、アジスロマイシンを含有する錠剤或いはカプセルは約1時間胃の中に残り、その間に胃へ放出された約3分の1のアジスロマイシンは低いpH環境で破壊される。本明細書が優先権を主張している仮出願において、アジスロマイシンは、胃腸副作用を引き起こす用量以下の用量でニキビなどの皮膚疾患を治療するのに有効であると報告した。そのような低レベルのアジスロマイシンで、食事を摂取する条件下でのアジスロマイシンの胃分解は、非常に著しくなる。本発明は、そのような低量のアジスロマイシンを含有する製剤を提供し、さらに十分量のアジスロマイシンが胃の中での分解から保護され、身体疾患の治療に利用可能となるような徐放性機能を提供する。
【0017】
「アジスロマイシン」という用語は、アジスロマイシンでの治療に反応する疾患の治療用に個人へ治療的に投与されるアジスロマイシンの全形態を含む。そのような形態のアジスロマイシンには、アジスロマイシンの共結晶群、共沈殿物群、多形体群、同形体群、クラスレート群、塩類、溶媒和物群及び水和物群の全て、さらには無水アジスロマイシン、或いは形態の組み合わせを含む、全ての非結晶性及び結晶性形態のアジスロマイシンが含まれる。アジスロマイシンの特異的な実施例には、Allenによる米国特許第6,268,489号に開示されたアジスロマイシン二水和物、及びBrightによる米国特許第4,474,768号及びKobrehelによる米国特許第4,517,359号に開示されたアジスロマイシン一水和物が含まれる。
【0018】
胃腸副作用を引き起こす量以下のアジスロマイシンの量は、先行技術には正確に定義されていない。しかしながら、アジスロマイシンは副作用の用量依存性発生率を有することが示されていた。本特許明細書の目的に対して、あらゆる用量レベルでのアジスロマイシンの経口投与による副作用の発生率がゼロになると決定されることはないので、胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンは、250mg以下を含有する経口投与用の製剤として本明細書に定義される。
【0019】
「錠剤」という用語は、適切な希釈剤を有する或いは有さず、医薬品成分を含有し、圧縮或いは成形技術によって調合された固形薬学的製剤を意味する。錠剤の実施例には、圧縮錠剤、複数微粒子錠剤、複数圧縮錠剤、コーティング錠剤、マトリックス錠剤、浸透錠剤及びカプセルが含まれる。
【0020】
「複数微粒子錠剤」という用語は、その全体でアジスロマイシンの目的とする治療投与量を示す、アジスロマイシンを含有する非常に多数のコーティング或いは非コーティングされた粒子を含有する錠剤製剤を意味する。本発明の錠剤として適切であると設定される複数微粒子錠剤のタイプの実施例としては、Appelによる国際特許第WO2006/067576号に開示されている。
【0021】
「カプセル」という用語は、一般的にはゼラチンから製造されるが他の物質からも製造される殻内に封入された多数の固形粒子を含む製剤を意味する。前記カプセルの殻は消化後分解し、微粒子内容物を放出する。カプセル内の微粒子は、錠剤を形成するように一緒に圧縮されているものではない。カプセルが固形塊を形成するために圧縮された非常に多数の微粒子を含有する場合、そのような製剤はカプセル内の錠剤であると考えられる。
【0022】
先行技術において知られているカプセルの1タイプは、複数粒子の形体で薬剤以外を含有するカプセルである。そのようなカプセルには、硬殻カプセル、及びソフトゲルなどの軟殻カプセルの両者が含まれる。本明細書で用いられたように、これらのタイプのカプセルは、硬殻、若しくは一般的にゼラチンで作られるが他のフィルム形成物質でも作られる、ワンピースの密封された軟殻を意味しており、前記殻内には溶液、懸濁液或いは半固体ゲル或いはペーストの形態の液体を封入されるものである。前記殻の分解に対してそのようなカプセルは液体の形態であるそれらの内容物を放出し、その放出は例えばカプセルからの複数粒子の放出よりはむしろ素早い錠剤の分解により密接に関連するため、これらは錠剤として作用する傾向がある。従って、特に腸溶性コーティング錠剤に関連する本発明は、溶液、懸濁液、若しくは半固体ゲル或いはペーストのアジスロマイシンを含有する腸溶性コーティングカプセルに同じように関連するものである。
【0023】
「食物効果」という用語は、空腹後に消化された場合に投与された薬剤の生物学的利用可能性と比較した、食事後に消化された場合の経口投与された薬剤の生物学的利用可能性における変化を意味している。生物学的利用可能性における変化の存在は、食事後に投与された場合(AUCfed)及び空腹時後に投与された場合(AUCfasting)の薬剤の曲線下面積(AUC)薬物動態を比較することによって決定される。AUCは、アジスロマイシンを含有する製剤の単一投与後、長期間に亘って血漿中のアジスロマイシンの濃度をプロットした曲線の下の面積である。AUC0−72は、アジスロマイシンを含有する製剤の投与の開始から投与後72時間までの期間の血漿中のアジスロマイシンの曲線下の面積を意味するものである。この明細書において、薬剤或いは薬剤を含有する製剤は、少なくとも10日の休薬期間を有するクロスオーバーデザインにおいて、少なくとも6対象の平均を取った場合で、AUCfed/AUCfastingが0.75以下の場合、著しい食物効果を示すことが理解される。
【0024】
1実施形態において、本発明は、胃腸副作用を引き起こす量以下の量でアジスロマイシンを含有する、錠剤或いはカプセルなどの経口投与可能な製剤であり、その製剤は消化後アジスロマイシンの徐放を生じるものである。好ましい実施形態において、錠剤或いはカプセルなどの製剤には、この徐放を提供する腸溶性コーティングが含まれる。
【0025】
「徐放性」という用語は、アジスロマイシンを含有する製剤を言及する場合、「持続放出」として言及される、製剤に含有されたアジスロマイシンの食物効果が比較即時放出製剤と比較して減少するように、若しくは「遅延放出」として言及される、製剤中の大部分のアジスロマイシンが胃より遠位の胃腸管の一部内に放出されるように、前記製剤からのアジスロマイシンの放出が十分ゆっくりと生じるということを意味するものである。
【0026】
「腸溶性コーティング」という用語は、錠剤やカプセルなどの固形製剤に位置され、前記製剤に含有されている大部分の薬剤が胃の遠位の胃腸管の一部内に放出されるようにする、一般的にポリマーを含有するコーティングを意味するものである。好ましくは、本発明の腸溶性コーティングは、前記製剤に含有された前記薬剤の少なくとも80%が胃の遠位で放出されるようにするものである。より好ましくは、前記薬剤の少なくとも90%が胃の遠位で放出されるものである。最も好ましくは、前記薬剤の少なくとも95%が胃の遠位で放出されるものである。一般的に、前記腸溶性コーティングは、胃で見出されるpHでは実質的に不溶性であり、小腸で見出されるpHでは実施的により可溶性である、pH感受性コーティングである。
【0027】
腸溶性コーティングの実施例としては、ポリアクリルアミド、糖類のフタル酸、アミロース酢酸フタル酸、セルロース酢酸フタル酸、他のセルロースエステルフタル酸、セルロースエーテルフタル酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸、メチルセルロースフタル酸、ヒドロキシプロピルセルロースフタル酸、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタル酸、ポリビニル酢酸フタル酸、ポリビニル酢酸フタル酸水素、セルロース酢酸フタル酸ナトリウム、スターチフタル酸、スチレン−マレイン酸ジブチルフタル酸コポリマー、スチレン−マレイン酸ポリビニル酢酸フタル酸コポリマー、セルロース酢酸トリメリテート(trimellitate)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸コハク酸、セルロース酢酸コハク酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、スチレン及びマレイン酸コポリマーなどのフタル酸誘導体、アクリル酸及びアクリルエステルコポリマー、ポリメタクリル酸及びそれらのエステル、ポリアクリルメタクリル酸コポリマー、セラック、ビニル酢酸及びクロトン酸コポリマーなどのポリアクリル酸誘導体、及びそれらの混合物が含まれる。好ましい腸溶性コーティングには、商品名EUDRAGIT(登録商標)(Evonik Industries AG、Essen、ドイツ)で販売されているメタクリルコポリマーが含まれる。最も好ましい腸溶性コーティングは、5.5以上のpHで溶解する30%水分散液である、メタクリル酸−エチルアクリレートコポリマーであるEudragit L30D−55である。
【0028】
錠剤及びカプセルなどの固形製剤へ腸溶性ポリマーコーティングを含むコーティングを適用する方法は、本分野でよく知られている。腸溶性ポリマーを適用するための一般的なコーティング方法には、流動床及びサイド通気式パンコーティング過程が含まれる。これらの過程において、腸溶性ポリマー或いは混合物を含有し、可能なら可塑剤及び充填剤などの付加的物質を含むコーティング処方は、前記製剤へスプレーノズルの使用などによって適用される。この適用過程の間、前記製剤は、例えば熱風と共に、或いは熱風と共に或いはなしで回転パン中での撹拌によって流動化され、凝集を防ぎ、前記ポリマーフィルムの乾燥を容易にする。そのような過程は、本分野で知られている他の過程と同様に、前記製剤の表面に適用された均一なフィルムを生じる。有効成分の放出率は、コーティングを構成するポリマーの物理化学的特性、コーティングの厚さ、コーティング中の添加物の存在、有効成分の可溶性、及び抽出溶媒の酸性度或いはアルカリ性度などの因子によって制御される。
【0029】
顆粒などの粒子は、上述した方法などによってコーティングされ、そのような粒子は、複数粒子徐放性錠剤へ圧縮される。或いは、そのような粒子は、カプセルへ詰め込まれ複数粒子徐放性カプセルを提供する。
【0030】
アジスロマイシンを含有する徐放性錠剤処方はさらに、浮遊錠剤(すなわち、経口投与において特定の時間、胃内容物の上層で浮遊している錠剤)の形態でもある。前記化合物(群)の浮遊錠剤処方は、賦形剤、及びヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース或いはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの20から75%w/wの親水コロイドと一緒に前記薬剤(群)の混合物を顆粒化することによって調合され得る。得られた顆粒は次に、錠剤へ圧縮される。胃液と接触すると、前記錠剤は実質的に水不透過性ゲルバリアをその表面に形成する。このゲルバリアは1未満の密度を維持するのに関与し、それによって前記錠剤が胃液中で浮遊し続けることを可能にする。
【0031】
代替徐放性錠剤処方は、Alza Corpによって開発されたOrosテクノロジーを使用する。そのシステムにおいて、前記アジスロマイシン処方は、少なくとも部分的には、浸透圧効果によって小さい穴を介して水が入り薬剤をゆっくり押すことを可能にする半透過性膜に封入される。例えば、米国特許第3,995,631号;第3,977,404号;及び第5,156,850号を参照のこと。
【0032】
アジスロマイシンを含有する本発明の徐放性錠剤に適切な徐放性装置のタイプの実施例は、Chopraの米国特許第6,960,357号;Chenの米国特許第5,419,917号;Mulliganの米国特許第5,128,142号;Calanchiの米国特許第5,047,248号;Dumitriuの米国特許第5,858,392号;Odidiの米国特許第6,893,661号;Lenaertsの米国特許第6,607,748号;Baichwalの米国特許第6,709,677号;Conteの米国特許第5,422,123号;Rudnicの米国特許第5,484,608号;及びCremerの米国特許第6,238,698号に開示されている。本発明の徐放性錠剤に適切な徐放性装置の好ましい実施例は、Curatoloの米国特許第7,108,865号に開示されている。
【0033】
錠剤などの製剤におけるアジスロマイシンの量は、1mgから250mg以下の間の量である。例えば、前記製剤は、5、10、25、30、40、50、60、75、80、100、120、125、150、175或いは200mg含有する。好ましくは、前記製剤におけるアジスロマイシンの量は、200mg或いはそれ以下であり、より好ましくは150mg或いはそれ以下であり、最も好ましくは100mg或いはそれ以下である。特に好ましい実施形態において、前記製剤におけるアジスロマイシンの量は、例えば80、60、或いは30mgなど、80mg或いはそれ以下である。
【0034】
本発明の製剤は、アジスロマイシンに加えて、経口薬剤の製造に一般的に使用される賦形剤を含有する。そのような賦形剤の実施例には、不活性希釈剤或いは充填剤(例えば、スクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶性セルロース、ポテトスターチを含むスターチ群、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、或いはリン酸ナトリウムなど);顆粒化剤及び崩壊剤(例えば、微結晶性セルロースを含むセルロース誘導体、ポテトスターチを含むスターチ群、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸群(alginates)、或いはアルギン酸(alginic acid));結合剤(例えば、セルロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギニン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、スターチ、アルファ化スターチ、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、或いはポリエチレングリコール);及び潤滑剤、流動促進剤、及び粘着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ群、水素化ベジタブルオイル、或いはタルク)が含まれる。他の薬学的に許容可能な賦形剤の実施例には、着色剤、香料添加剤、可塑剤、保湿剤、及び緩衝剤が含まれる。
【0035】
本発明の錠剤などの本発明の製剤には、飲み込みを容易にし、優れた見た目を提供するフィルムコーティングなどの非腸溶性コーティングが含まれる。たくさんのポリマー性フィルムコーティング物質は、本分野で知られている。好ましいフィルムコーティング物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。HPMCは、例えば、登録商標OPADRY(登録商標)という商品名で、コーティング補助剤として働く賦形剤を含有するコーティング処方において、Colorcon Inc.(West point,ペンシルバニア州)から商業的に入手される。Opadry処方は、ラクトース、ポリデキストロース、トリアセチン、ポリエチレングリコール、ポリソルベート80、二酸化チタン、及び1若しくはそれ以上の色素群或いはレーキ群を含有する。他の適切なフィルム形成ポリマーも本明細書において使用され、ヒドロキシプロピルセルロース、及びアクリル酸−メタクリル酸コポリマーが含まれる。
【0036】
前記製剤は、アジスロマイシンに加えて、別の薬剤を含有する。前記処方の2つの薬剤は、前記製剤中に一緒に混合される、若しくは分割される。例えば、前記アジスロマイシンは前記製剤の内部に含有され、第二の薬剤は外部に含有され、第二の薬剤の大部分がアジスロマイシンの放出前に放出される。
【0037】
本分野では知られているように、錠剤混合物は、錠剤化する前に乾燥−顆粒化或いは湿潤顆粒化される。或いは、錠剤混合物は、直接圧縮される或いは詰められる。加工アプローチの選択は、薬剤及び選択された賦形剤の特性、例えば粒子サイズ、混合適合性、密度及び流動性などに依存している。好ましい実施形態において、アジスロマイシンを含有する粉末は顆粒化される。前記アジスロマイシンは、付加的な粒内賦形剤と共に或いはなしで顆粒化され、次に、必要に応じて、付加的賦形剤が粒外的に添加される。加えて、錠剤も、錠剤分解への影響をほとんど示さない或いは全く示さないコーティングでコーティングされ、飲み込みを容易にする、或いは優れた見た目を提供する。
【0038】
或いは、乾燥或いは湿潤顆粒化などの過程によって製造された顆粒は、カプセルへ詰め込まれる。個々の顆粒は、例えば腸溶性コーティングなどでコーティングされ、複数粒子徐放性カプセルを提供する。或いは、個々の粒子のコーティングに加えて、腸溶性コーティングなどのコーティングは前記カプセル殻の表面へ適用される。
【0039】
本発明の製剤を製造する際に使用されるあらゆる賦形剤は、薬学的に許容可能であり、前記製剤中のアジスロマイシンに適合性がなくてはならない。前記製剤中のアジスロマイシンは、あらゆる1若しくはそれ以上の薬学的に許容可能な形態であり、これは例えばアジスロマイシン二水和物、アジスロマイシン一水和物或いはそれらの組み合わせなどの、アジスロマイシンの結晶及び非結晶を含む。加えて、前記製剤は、商業的に適度な期間、例えば室温で18ヶ月保管する場合、物理的にも化学的にも安定であることが好ましい。
【0040】
好ましい実施形態において、胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンを含有する本発明の製剤は、37℃で1時間以内に、一般的に胃の中で見出されるpHであるpH1でその中に含有されるアジスロマイシンの50%以内を放出する、錠剤などの徐放性製剤である。アジスロマイシンの放出量は、以下のように決定される。テストは、USPタイプII(パドル)装置において実施した。分解溶媒は、37℃±0.5℃で維持した。アジスロマイシンを含有する製剤は、75rpmで混合しながら900mlの0.1N塩酸に浸した。1時間の最後で、前記製剤を溶媒から除去し、HPLCによってアジスロマイシンの含有量を解析した。次に、前記製剤中の平均初期アジスロマイシン量から酸性溶媒へ曝露後の前記製剤中に保持された量を引き算することによって、放出されたアジスロマイシンの量を計算した。
【0041】
好ましくは、前記製剤は、37℃、pH1で1時間以内に25%以内のアジスロマイシンを放出する。より好ましくは、前記製剤は、37℃、pH1で1時間以内に10%以内のアジスロマイシンを放出する。最も好ましくは、37℃、pH1で1時間以内に5%以内のアジスロマイシンを放出する。従って、本発明の製剤は、胃より遠位の胃腸管の一部内において製剤中に含有するアジスロマイシンの大部分を放出する。製剤に含有される薬学的に有効な量のアジスロマイシンが排出されるのとは対照的に吸収されるように放出される限り、胃より遠位の胃腸管内で大部分のアジスロマイシンが放出されることは、本発明にとって重要ではない。従って、加えて、前記製剤は、pH6.0或いは37℃以上で10時間以内に、製剤に含有されたアジスロマイシンの少なくとも50%を放出する。好ましくは、pH6.0或いは37℃以上で10時間以内に、製剤に含有されたアジスロマイシンの少なくとも75%を放出する。最も好ましくは、pH6.0或いは37℃以上で10時間以内に、製剤に含有されたアジスロマイシンの少なくとも90%を放出する。
【0042】
好ましい実施形態において、胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンを含有する本発明の製剤は、錠剤或いはカプセルなどの徐放性製剤、好ましくは腸溶性コーティングされた錠剤或いはカプセルであり、これは、このやり方で投与された、例えば腸溶性コーティングを欠損しているなどの同一の用量で徐放性製剤ではない同一の投与量及び製剤から得られたAUCfed/AUCfastingと比較して、食事後の個人への投与後に平均して少なくとも33%高い、アジスロマイシンに対するAUCfed/AUCfastingを提供する。好ましくは、本発明の製剤で得られたAUCfed/AUCfastingは、徐放性製剤ではない同様な製剤で得られたものと比較して、少なくとも50%高い。より好ましくは、本発明の製剤で得られたAUCfed/AUCfastingは、少なくとも75%高い。最も好ましくは、本発明の製剤で得られたAUCfed/AUCfastingは、少なくとも100%高い。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンを含有する経口投与に対する錠剤などの徐放性製剤を製造する方法である。
【0044】
本発明のこの実施形態に従って、胃腸副作用を引き起こす量以下のアジスロマイシンの量は、1若しくはそれ以上の薬学的賦形剤と組み合わされ、この組み合わせは任意に顆粒へ形成され、粉末或いは顆粒の形態の前記組み合わせは、固形製剤へ圧迫或いは圧縮される、若しくは殻内へ封入される。前記固形製剤は錠剤である、若しくは単一の錠剤へ圧迫或いは圧縮された、或いは殻内に封入された非常に多数の複数粒子の1つである。
【0045】
使用された徐放性メカニズムの性質に依存して、前記徐放性メカニズムは、固形製剤へ圧縮或いは圧迫される前後で、或いは殻内へ封入される前後で、アジスロマイシン及び賦形剤と組み合わされる。例えば、上述したように、徐放性錠剤が浮遊錠剤の場合、親水コロイドは、アジスロマイシン及び賦形剤と混合され、この混合物は次に顆粒化され、固形製剤へ圧縮される。或いは、前記徐放性錠剤が腸溶性コーティングを含有する場合、前記コーティングはアジスロマイシン及び賦形剤の固形製剤への圧縮後に適用される。個々の粒子は、殻内への封入前に腸溶性コーティングされる。或いは、アジスロマイシンを含有する個々の粒子を含んでいるカプセル殻は、腸溶性コーティングされる。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、胃腸副作用を引き起こす量以下の投与量のアジスロマイシンの経口投与によって改善される身体疾患を治療する方法である。本発明のこの方法に従って、アジスロマイシンを含有する1若しくはそれ以上の本発明の徐放性製剤は、胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンで有効的に治療される身体疾患を患っている個人へ投与され、ここにおいて、アジスロマイシンが投与される治療のどこか一日で、1若しくはそれ以上の製剤中で前記個人へ投与されるアジスロマイシンの総量は、胃腸副作用を引き起こす量以下である。
【0047】
必要に応じて、本発明の治療レジメは、胃腸副作用を引き起こす量以上であるアジスロマイシンの1若しくはそれ以上の負荷用量で始める。負荷用量は一般的に必要ではなく、個人が胃腸副作用を経験する可能性が増加するため、そのような負荷用量或いは多数の負荷用量は好ましくない。しかしながら、そのような負荷用量或いは用量群の利用は、負荷用量レジメが本発明に従った治療の方法に続いている限り、本発明の観点からアジスロマイシン治療レジメを外すものではない。
【0048】
本発明のこの方法に従って、個人に対して1日で投与されるアジスロマイシンの総量は、200mg或いはそれ以下であることが好ましい。より好ましくは、前記量は150mg或いはそれ以下であることがより好ましく、125mg或いはそれ以下であることがさらにより好ましい。前記量は100mg或いはそれ以下であることが特に好ましく、80mg或いはそれ以下であることが最も好ましい。特に好ましい実施形態の実施例は、60、40、或いは30mg或いはそれ以下の一日投与である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンを含有する先行技術の非徐放性カプセルを与えられた、食事を摂取した対象及び同一空腹時対象に対する、単一経口投与後のアジスロマイシンの血漿濃度の時間経過を比較したグラフである。
【図2】図2は、胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンを含有する先行技術の非徐放性錠剤を与えられた、食事を摂取した対象及び同一空腹時対象に対する、単一経口投与後のアジスロマイシンの血漿濃度の時間経過を比較したグラフである。
【図3】図3は、胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンを含有する本発明の腸溶性コーティングされた錠剤を与えられた、食事を摂取した対象及び同一空腹時対象に対する、単一経口投与後のアジスロマイシンの血漿濃度の時間経過を比較したグラフである。
【図4】図4は、本発明の即時放出カプセル(Gelucire 44/14 IR)、本発明の徐放性カプセル(Gelucire 50/13 CR)、及びアジスロマイシンを含有する即時放出錠剤の分解特性を比較したグラフである。
【図5】図5は、pHが約1(フェーズ1)、4.5(フェーズ2)及び6.8(フェーズ3)での、異なる腸溶性ポリマーでコーティングされた本発明の徐放性カプセルからのアジスロマイシンの放出特性を示したグラフである。
【図6】図6は、三相性溶媒(pH2.4、pH4.5及びpH6.2)に曝露された、及び単相溶媒(pH6)に曝露された本発明の徐放性カプセルからのアジスロマイシンの放出特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、以下の制限されない実施例によってさらに説明されるものである。
【実施例1】
【0051】
アジスロマイシンカプセルでの食物効果
80mgのアジスロマイシンを含有する非徐放性カプセルの単一用量の経口投与後のアジスロマイシンの血清濃度に対する食物の効果は、クロスオーバー研究における6対象で評価した。研究の1日目に、前記対象のそれぞれに、10時間一晩空腹時、或いは高脂肪でカロリーの高い標準化食事を食べた後に前記カプセルを投与した。15日目に、前記対象に、交互処置条件下で80mgのアジスロマイシンを含有したカプセルの単一用量を投与した。薬物動態パラメータAUC(曲線下面積)を決定するために、各用量に続いて最大72時間の間隔で各対象から血液を採取した。その結果は、表形式で表1に及びグラフを使って図1に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1及び図1では、有意な食物効果は、胃腸副作用を引き起こす投与量以下の投与量でアジスロマイシンを含有するカプセルの経口投与後に存在することが示された。80mgのアジスロマイシンを含有するカプセルを食事の後に投与した場合、薬物動態パラメータAUC0−72は、前記アジスロマイシンカプセルが空腹時に続いて投与された場合と比較して、平均して25%のAUC0−72へ減少した。従って、空腹な個人に対する生物学的な利用可能性と比較して、平均して80mgカプセル中で75%以下のアジスロマイシンが、食事をとった個人に対して生物学的に利用可能であった。
【実施例2】
【0054】
アジスロマイシン錠剤での食物効果
実施例1の研究を、80mgアジスロマイシンがカプセルではなく非徐放性錠剤で投与したことを除いて、6対象において繰り返した。その結果は、表形式で表2に及びグラフを使って図2に示した。
【0055】
【表2】

【0056】
表2及び図2では、有意な食物効果は、胃腸副作用を引き起こす投与量以下の投与量でアジスロマイシンを含有する錠剤の経口投与後に存在することが示された。80mgのアジスロマイシンを含有する錠剤を食事の後に投与した場合、薬物動態パラメータAUC0−72は、前記アジスロマイシン錠剤が空腹時に続いて投与された場合と比較して、平均して37%のAUC0−72へ減少した。従って、空腹な個人に対する生物学的利用可能性と比較して、平均して80mg錠剤中で63%以下のアジスロマイシンが、食事をとった個人に対して生物学的に利用可能であった。これらの結果は、アジスロマイシンが胃腸副作用を引き起こすと知られた量(250mg或いはそれ以上)のアジスロマイシンを含有する錠剤の形態で経口投与された場合、食物効果がないと教示している先行技術の観点から特に驚くべきものであった。
【実施例3】
【0057】
アジスロマイシン腸溶性コーティング錠剤での食物効果
実施例1及び2の研究を、80mgアジスロマイシンが腸溶性コーティング錠剤で投与したことを除いて、6対象において繰り返した。その結果は、表形式で表3に及びグラフを使って図3に示した。
【0058】
【表3】

【0059】
表3及び図3では、その他は同様な即時放出製剤と比較して、胃腸副作用を引き起こす投与量以下の投与量でアジスロマイシンを含有した腸溶性コーティング製剤の経口投与後の食物効果の有意な減少が示された。80mgのアジスロマイシンを含有する徐放性腸溶性コーティング錠剤が食事の後に投与された場合、薬物動態パラメータAUC0−72は、平均して、空腹期間の後に投与して得られたAUC0−72の87%へ減少した。従って、空腹な個人に対する生物学的利用可能性と比較して、平均して、徐放性80mg錠剤中の13%以下のアジスロマイシンのみが、食事をとった個人に対して生物学的に利用可能であった。
【0060】
表4をまとめると、実施例3の徐放性製剤で得られた生物学的利用可能性(AUCfed/AUCfasting)を、実施例1及び2の非腸溶性コーティングカプセル或いは錠剤で得られた値と都合良く比較し、平均生物学的利用可能性はそれぞれ23%及び37%に減少した一方、本発明の徐放性製剤とは87%であった。従って、投与されたアジスロマイシン投与量の3分の2から4分の3が非徐放性製剤から失われ、前記アジスロマイシン投与量の約8分の1のみが本発明の徐放性製剤から失われた。
【0061】
【表4】

【0062】
実施例1から3のデータから、AUCの測定によって決定された食物効果は、胃腸副作用を引き起こす用量よりも低い用量で投与された場合、アジスロマイシンによって生じることが示された。そのデータによってさらに、食物効果の程度は、徐放性製剤におけるそのような用量のアジスロマイシンが投与されることによって著しく減少することが示された。従って、前記徐放性製剤は、食事を与えられる条件下で対象に対して投与された場合、投与されたアジスロマイシンのより高いパーセンテージの生物学的利用可能性を提供するものである。
【実施例4】
【0063】
徐放性錠剤処方
胃腸副作用を引き起こす量以下の量のアジスロマイシンを含有する徐放性腸溶性コーティング錠剤を以下のように処方した。
【0064】
アジスロマイシンは、結合剤、希釈剤、及び潤滑剤を含む顆粒内賦形剤と任意に組み合わせ、これらの成分をふるいにかけ、均一な混合物が得られるまで混合した。次に前記混合物をひと塊に圧縮し、次に顆粒を形成するために挽いた。次に、結合剤、希釈剤及び潤滑剤を含む任意の顆粒外賦形剤を前記顆粒へ添加し、前記顆粒及びこの混合物は、前記顆粒が前記顆粒外賦形剤中で均一に分布し、潤滑混合物を形成するまで混合した。前記潤滑混合物は次に、商業的に利用可能な錠剤プレスを用いて錠剤を形成するように圧縮した。任意なサブコーティングは、サブコーティング成分を一緒に混合することによって作った。前記サブコーティング成分はさらに、フィルムコーティングを製造するためにも使用され、例えば腸溶性コーティングなど、さらなるコーティングがいらない場合、このコーティングの上層に適用される。前記サブコーティング/フィルムコーティングを適用するために、前記錠剤は有孔コーティングパンへ詰め込み、前記サブコーティング成分を前記錠剤へ添加し、約3%コーティング積層を得て、その後前記錠剤は乾燥させた。腸溶性コーティング溶液は、腸溶性コーティング成分を組み合わせ、よく混ざるまでかき混ぜることによって調合した。前記錠剤は、有孔コーティングパンにおいて前記腸溶性コーティングでコーティングし、次に乾燥させた。前記腸溶性コーティングはさらに、必要に応じて、中間サブコーティングなしで、錠剤へ直接的にも適用された。
【実施例5】
【0065】
80mg腸溶性コーティングアジスロマイシン錠剤
80mgのアジスロマイシンを含有する腸溶性コーティングアジスロマイシン錠剤は、実施例4に従って製造した。前記錠剤は、表5の組成に従って薬学的グレードの賦形剤及びアジスロマイシンを用いて処方した。
【0066】
【表5】

【実施例6】
【0067】
徐放性アジスロマイシン錠剤
60或いは30mgのアジスロマイシンを含有する付加的な徐放性腸溶性コーティング錠剤は、実施例4の方法に従って製造した。量的組成、及び錠剤当たりの薬学的グレードの構成成分の%w/wは、以下の表6に示した。
【0068】
【表6】

【実施例7】
【0069】
即時放出及び徐放性カプセル
アジスロマイシンの即時放出及び徐放性カプセルは、それぞれGelucire(登録商標)44/14及びGelucire(登録商標)50/13(Gattefosse、Gennevilliers、フランス)で調合した。Gelucire(登録商標)製品は、製薬業界ではよく知られた半固形性賦形剤である。それらは、グリセロール及び長鎖脂肪酸のPRG1500エステルの混合物である。Gelucire(登録商標)44/14は、即時放出処方を提供する。Gelucire(登録商標)50/13は、徐放性処方を提供する。
【0070】
Gelucire(登録商標)は、約65から75℃に加熱し、次に適切な量のアジスロマイシンを添加し、前記アジスロマイシンが溶解する或いは均一に分布するまで、融解されたGelucire(登録商標)に混合した。この混合物を約40℃まで冷却し、次に固いゼラチンカプセルへ移した。前記混合物におけるアジスロマイシンの負荷は約15%w/wであり、これはカプセル当たり50mgのアジスロマイシンに相当する。
【0071】
分解研究は、100rpmでUSPタイプI装置(バスケット)を用いて、37±0.5℃で0.1Mリン酸バッファー(pH6.0)レセプター溶媒において、即時放出及び徐放性カプセル、及び商業的に利用可能な即時放出250mgアジスロマイシン錠剤の半分(Teva Pharmaceuticals USA、North Wales、ペンシルバニア州)で行った。サンプルは24時間かけて回収し、HPLC法を用いてアジスロマイシンに対して解析し、製剤内容物のパーセントとして報告した。その結果は図4に示した。
【0072】
図4に示したように、即時放出カプセル及び錠剤は、その中に含有されるアジスロマイシンの全て或いは本質的に全てを、約15から30分で素早く放出した。対照的に、前記徐放性カプセルは、それらのアジスロマイシンをゆっくりと放出した。前記徐放性カプセルにおける約20%のアジスロマイシンのみが150分後に放出された。1時間後、前記徐放性カプセルから10%未満のアジスロマイシンが放出された。
【実施例8】
【0073】
腸溶性コーティングカプセル
40mgのアジスロマイシンを含有する固いゼラチンカプセルは、セルロース酢酸フタレート(CAP)或いはEudragit L 100−55(メタクリル酸コポリマー、タイプC、USP/NF)を用いて腸溶性コーティングした。前記腸溶性コーティング物質の組成は、表7に記載した。
【0074】
【表7】

【0075】
CAP及びEudragit腸溶性コーティングカプセルの分解特性は、50RPMでのUSPタイプI装置(バスケット)を用いた三相性分解溶媒を用いて評価した。前記カプセルは第一に、0.1M HCl(pH約1.0)に浸し、サンプルを最大2時間(0から2時間)まで採取した。この溶媒に放出されたアジスロマイシンの量が最小であるため、100mL分解槽を使用し、(必要に応じて)溶媒中の分解したアジスロマイシンの濃度を増加させた。前記カプセルは次に、900mLの0.1Mクエン酸バッファー(pH4.5)が入った分解槽へ移した。サンプルは、0.25、0.5、0.75、1、2、4時間(2から6時間)後に採取した。最終的に、前記カプセルは、900mLの0.1M リン酸ナトリウムバッファー(pH6.8)の入った分解槽へ挿入した。サンプルは、0.25、0.5、0.75、1、2、4、8及び16時間(6から22時間)後に採取した。各pH相からの全てのサンプルは、HPLC法を用いてアジスロマイシンに対して解析した。CAP及びEudragitカプセルそれぞれ3つのカプセルの分解研究の平均的な結果は、図5に示した。
【0076】
図5に示したように、アジスロマイシンの最小放出或いは放出なしは、約1.0のpH(フェーズ1、図5の0から2時間)或いは4.5のpH(フェーズ2、図5の2から6時間)でのCAP或いはEudragitカプセルで見られた。pH6.8(フェーズ3、図5の6から22時間)で、アジスロマイシンの分解及び放出は素早く起こり、ほとんどのアジスロマイシンは1時間以内に放出された。
【実施例9】
【0077】
徐放性カプセル処方
80mgアジスロマイシンを含有する付加的な徐放性腸溶性コーティングカプセルは、表8に示された組成を用いて製造した。
【0078】
【表8】

【0079】
前記徐放性カプセルから放出されるアジスロマイシンは、100rpmでUSPタイプII装置(パドル)を用いた三相性分解溶媒を用いて決定した。前記カプセルは第一に、30mMクエン酸(pH2.4)に浸し、サンプルは最大2時間で様々な間隔で採取した。前記カプセルは次に、リン酸二塩基ナトリウムバッファー(pH4.5)を含む第二の分解溶媒へ移した。サンプルは、最大1時間で様々な間隔で採取した。最終的に、前記カプセルはリン酸二塩基ナトリウムバッファー(pH6.2)を含む分解溶媒へ挿入した。サンプルは、最大24時間で様々な間隔で採取した。全てのサンプルは、HPLC法を用いてアジスロマイシンに対して解析した。加えて、徐放性カプセルは、0.1mMリン酸ナトリウムバッファー(pH6)の単相溶媒において評価した。サンプルは最大24時間で様々な間隔で採取した。徐放性カプセルからの三相性及び単相アジスロマイシン放出の結果は、図6に示した。
【0080】
図6に示したように、アジスロマイシン放出は、カプセルがpH6.2に曝露されるまで三相性研究では検出されなかった。図6はさらに、pH6での徐放性カプセルからのアジスロマイシン放出は、実質的にすぐ始まり、前記カプセルからのアジスロマイシンの放出は24時間以上制御されていたことも示した。
【0081】
本発明の好ましい実施形態が詳細に記載されているが、開示された実施形態は変形され得ることが当業者には明確である。そのような変形は以下の請求項に包含されることが意図されている。従って、前述の記載は、限定するというよりむしろ例示的なものであると考慮され、本発明の範囲は以下の請求項によって定義されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
250mg以下の量でアジスロマイシンを有するものである、徐放性固形経口製剤。
【請求項2】
請求項1記載の徐放性固形経口製剤において、当該製剤は錠剤である。
【請求項3】
請求項1記載の徐放性固形経口製剤において、当該製剤はカプセルである。
【請求項4】
請求項1記載の徐放性固形経口製剤において、前記アジスロマイシンの量は200mg或いはそれ以下である。
【請求項5】
請求項4記載の徐放性固形経口製剤において、前記アジスロマイシンの量は150mg或いはそれ以下である。
【請求項6】
請求項5記載の徐放性固形経口製剤において、前記アジスロマイシンの量は100mg或いはそれ以下である。
【請求項7】
請求項6記載の徐放性固形経口製剤において、前記アジスロマイシンの量は80mg或いはそれ以下である。
【請求項8】
請求項1記載の徐放性固形経口製剤において、前記製剤は、腸溶性コーティングでコーティングされているものである。
【請求項9】
請求項8記載の徐放性固形経口製剤において、前記腸溶性コーティングには、メタクリル酸コポリマーが含まれるものである。
【請求項10】
請求項1記載の徐放性固形経口製剤において、前記製剤は、個々にコーティングされた非常に多数の粒子を有するものである。
【請求項11】
請求項10記載の徐放性固形経口製剤において、前記コーティングされた粒子は、錠剤の一部或いは全部を形成する固形に形成されたものである。
【請求項12】
請求項11記載の徐放性固形経口製剤において、前記コーティングされた粒子は、カプセル殻内に封入されるものである。
【請求項13】
請求項2記載の徐放性固形経口製剤において、当該製剤は、アジスロマイシン、崩壊剤、充填剤、及び結合剤を有するものである。
【請求項14】
請求項13記載の徐放性固形経口製剤において、当該製剤は、二塩基リン酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリエチレングリコールを有するものである。
【請求項15】
徐放性固形経口製剤であって、当該製剤から前記アジスロマイシンの50%以内が1時間以内にpH1で前記製剤から放出される、250mg以下の量のアジスロマイシンを有するものである、徐放性固形経口製剤。
【請求項16】
請求項15記載の徐放性固形経口製剤であって、当該製剤は、前記アジスロマイシンの25%以内が1時間以内にpH1で放出されるものである。
【請求項17】
請求項15記載の徐放性固形経口製剤であって、当該製剤は、前記アジスロマイシンの10%以内が1時間以内にpH1で放出されるものである。
【請求項18】
請求項15記載の徐放性固形経口製剤であって、当該製剤は、錠剤である。
【請求項19】
請求項15記載の徐放性固形経口製剤であって、当該製剤は、カプセルである。
【請求項20】
請求項15記載の徐放性固形経口製剤において、前記アジスロマイシンの量は、200mg或いはそれ以下である。
【請求項21】
請求項20記載の徐放性固形経口製剤において、前記アジスロマイシンの量は、150mg或いはそれ以下である。
【請求項22】
請求項21記載の徐放性固形経口製剤において、前記アジスロマイシンの量は、100mg或いはそれ以下である。
【請求項23】
請求項22記載の徐放性固形経口製剤において、前記アジスロマイシンの量は、80mg或いはそれ以下である。
【請求項24】
請求項18記載の徐放性固形経口製剤であって、当該製剤は、アジスロマイシン、崩壊剤、充填剤、及び結合剤を有するものである。
【請求項25】
請求項24記載の徐放性固形経口製剤であって、当該製剤は、二塩基リン酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリエチレングリコールを有するものである。
【請求項26】
アジスロマイシンを含有する経口投与のための徐放性固形製剤を製造する方法であって、250mg以下の量のアジスロマイシン、及び1若しくはそれ以上の薬学的に許容可能な固形の賦形剤を組み合わせる工程、及び前記製剤へ腸溶性コーティングを適用する工程を有するものである、方法。
【請求項27】
請求項26記載の方法において、前記腸溶性コーティングは、前記徐放性固形製剤の外側の表面に適用されるものである。
【請求項28】
請求項27記載の方法において、前記腸溶性コーティングは、前記徐放性固形経口製剤内のアジスロマイシンを含有する個々の粒子、及び1若しくはそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤に適用されるものである。
【請求項29】
請求項26記載の方法において、前記徐放性固形製剤は錠剤である。
【請求項30】
請求項26記載の方法において、前記徐放性固形製剤はカプセルである。
【請求項31】
250mg以下のアジスロマイシンを含有する経口固形製剤からアジスロマイシンの生物学的利用可能性を増加するための方法であって、前記経口固形製剤を徐放性形態として提供する工程を有するものである、方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法において、前記経口固形製剤は錠剤である。
【請求項33】
請求項31記載の方法において、前記経口固形製剤はカプセルである。
【請求項34】
請求項31記載の方法において、前記アジスロマイシンの量は、200mg或いはそれ以下である。
【請求項35】
請求項34記載の方法において、前記アジスロマイシンの量は、150mg或いはそれ以下である。
【請求項36】
請求項35記載の方法において、前記アジスロマイシンの量は、100mg或いはそれ以下である。
【請求項37】
請求項36記載の方法において、前記アジスロマイシンの量は、80mg或いはそれ以下である。
【請求項38】
請求項1記載の方法において、前記製剤は、腸溶性コーティングでコーティングされるものである。
【請求項39】
請求項38の方法において、前記腸溶性コーティングには、メタクリル酸コポリマーが含まれるものである。
【請求項40】
請求項31記載の方法において、前記製剤は、個々にコーティングされた非常に多数の粒子を有するものである。
【請求項41】
請求項40記載の方法において、前記コーティングされた粒子は、錠剤の一部或いは全部を形成する固形に形成されたものである。
【請求項42】
請求項41記載の方法において、前記コーティングされた粒子は、カプセル殻内に封入されるものである。
【請求項43】
請求項42記載の方法において、前記製剤は、アジスロマイシン、崩壊剤、充填剤、及び結合剤を有するものである。
【請求項44】
請求項43記載の方法において、前記製剤は、二塩基リン酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリエチレングリコールを有するものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−538062(P2010−538062A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523991(P2010−523991)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/009169
【国際公開番号】WO2009/032037
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(510061667)ドウ ファーマシューティカル サイエンシーズ、インク. (7)
【Fターム(参考)】