説明

復調器が効率的にロックできるようにする方法及び装置、並びに復調器が効率的に開始できるようにする方法

【課題】ディジタル・テレビジョン信号の受信機においてチャネルの捕捉を改善する。
【解決手段】テレビジョン受信機において各チャネルについて搬送波トラッキング・ループ周波数のオフセットおよびシンボル・タイミング再生のオフセットを決定する。オフセットは、各チャネルについてそれぞれのEEPROM(登録商標)内に記憶される。テレビジョン受信機において或るチャネルを捕捉しようとする場合、同調コマンドが、該当するEEPROM(登録商標)に加えられ、それぞれの値は残留側波帯(VSB)復調器40に搬送されて、そのチャネルの捕捉を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信された信号にディジタル・テレビジョン受信機を容易に同調させる方法および装置に関する。本発明は、特に、搬送波トラッキング・ループおよびシンボル・タイミング再生ループの開始点を制御することにより、受信するチャネルに残留側波帯(VSB:Vestigial SideBand)復調器をロック(lock:固定)させる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上波ディジタルTVシステムは、受信機に信号を送信する際、幾つかの問題を解決しなければならない。米国では、ディジタル・テレビジョン標準(規格)として8レベルの残留側波帯(8−VSB)変調を使用するATSC(Advanced Television System:次世代テレビジョン方式)を採用している。通常、シンボル(symbol:符号)の形式でディジタル情報を含んでいるこのような被変調信号からデータを再生するためには、受信機において、3つの機能、即ちシンボル同期のためのタイミング再生、搬送波再生(ベースバンドへの周波数復調)、およびチャネル等化を必要とする。
【0003】
シンボルおよび搬送周波数は、何れも送信標準・規格で指定されている。しかしながら、送信機と受信機の両方において、ハードウェアのパラメータが変動するので、実際の搬送周波数およびシンボルのタイミングは、指定された値から変化する。実際の搬送周波数およびシンボルのタイミングと指定された搬送周波数およびシンボルのタイミングとの間の差は、「オフセット(offset)」と呼ばれる。新しいチャネルに同調すると、搬送周波数とシンボルのタイミングのオフセットの存在を検出しなければならず、且つ受信機の残留側波帯(VSB)復調回路を、実際の搬送波とシンボルの周波数を受信するように適合させなければならない。
【0004】
1つの問題は、搬送波トラッキング・ループ(CTL:Carrier Tracking Loop)とシンボル・タイミング再生(STR:Symbol Timing Recovery)ループが、そのロックされた周波数からかけ離れていると、残留側波帯(VSB)復調器が、チャネルに「ロック」を捕捉するのに長時間を要することである。これが起こるのは、例えば、以前受信していたチャネルが、許容周波数範囲の一端において、搬送波および/またはシンボル周波数のオフセットを有しており、新しく受信するチャネルが、許容周波数範囲の他端において、搬送波および/またはシンボル周波数のオフセットを有する場合である。この問題は、捕捉と追従を確保するために搬送波トラッキング・ループ(CTL)とシンボル・タイミング再生(STR)ループの帯域幅が、低く設定される場合に悪化する。この差が大き過ぎると、ロックされない可能性すらある。
【0005】
採用された米国標準・規格に従って搬送波の再生を達成するために、抑圧搬送周波数(suppressed carrier frequency)において、小さいパイロット信号が送信信号に追加され、残留側波帯(VSB)受信機における搬送波のロックの達成を助ける。このパイロット・トーン(pilot tone)を検出して、搬送波トラッキング・ループ(CTL)をパイロット・トーンの周波数にロックするように適合させる。
【0006】
採用された米国標準に従ってシンボルのタイミングの再生を達成するために、シンボルのストリームを分析して、埋め込まれた同期信号を検出する。各データ・フレームは、2つのフィールドから成り、各フィールドには313個のセグメントが含まれ、各セグメントは、832個のマルチレベル(多値レベル)シンボルを含んでいる。各フィールドの最初のセグメントは、フィールド同期セグメントと称され、残りの312個のセグメントは、データ・セグメントと称される。どのセグメントも4−シンボル・セグメント同期シーケンスを含み、全ては、同じ4−シンボル値を有する。各フィールドの同期セグメントは、セグメント同期シーケンスを含み、その後に、所定の511−シンボルPN(Pseudorandom Number:擬似乱数)シーケンスと所定の3つの63−シンボルPNシーケンスが続く。中間の擬似乱数(PN)シーケンスは、連続的フィールド内で反転される。残留側波帯(VSB)モードの制御信号(VSBシンボルの配置サイズを規定する)が、最後の63−シンボルPN(擬似乱数)シーケンスに続き、その後に、96の予約済みの(予備の)シンボルと、前フィールドからコピーされた12のシンボルが続く。各データ・セグメントは、4−シンボル・セグメント同期シーケンスと、それに続く828のデータ・シンボルとから成る。一般に、データ・シンボルは、MPEGと互換性のあるデータ・パケットを含んでいる。4個のシンボル・セグメント同期キャラクタのタイミングが検出され、これを使用して、シンボル周波数にロックするようにシンボル・タイミング再生(STR)回路を適合させる。このシステムの詳しい説明は、第48回年次放送エンジニアリング会議(1994年3月20〜24日)、全米放送業者協会1994議事録に見られる。
【0007】
長い遅延がなく、新しく同調したチャネルに必ずロックする受信機が望ましい。本発明は、特に、受信機において、送信チャネルに対しシンボルと搬送波へのロックを確実、且つ迅速に捕捉する方法および装置を取り扱う。
【発明の概要】
【0008】
或るチャネルに同調したとき、このチャネルの搬送波トラッキング・ループ(CTL)オフセットおよびシンボル・タイミング再生(STR)オフセットのロックされた値は、最後に(前回)同調したときにロックされたチャネルのオフセット値と同じかまたは近似している可能性が高いことが、本願発明者に実感されている。従って、本発明は、上述した問題を解決するために、チャネルがロックされたときに、CTLとSTRのオフセットを表すデータを記憶する。記憶されたオフセットは、そのチャネルを再び捕捉しようとするときの開始点として利用される。CTLおよびSTR積分器は、記憶されたオフセット値から新しいCTL/STRオフセット値への移行が少なくなるので、CTLとSTRの捕捉に要する時間が短縮される。
【0009】
本発明の原理により、残留側波帯(VSB)復調器が、或るチャネルにロックされたとき、搬送波トラッキング・ループ(CTL)およびシンボル・タイミング再生(STR)のオフセットは、各チャネル用のEEPROM内に記憶される。これらの記憶されたCTL/STRのオフセットはEEPROMから読み出され、チャネルの捕捉時間を速めるために、その後の同調のための同調パラメータとして使用される。
【0010】
従って、本発明の好ましい方法により、テレビジョン受信機内の残留側波帯(VSB)復調器は、受信したテレビジョン信号が送信されたチャネルに効率的にロックするようにイネーブル(作動)される。本発明の方法は、テレビジョン受信機において、各チャネルについて、それぞれの搬送波トラッキング・ループのオフセットを決定するステップと、このようなオフセットの各々を第1のオフセットとして記憶するステップと、を含んでいる。それぞれのSTR(Symbol Timing Recovery:シンボル・タイミング再生)のオフセットも、各チャネルについてテレビジョン受信機内で決定される。これらのSTRオフセットの各々は、第2のオフセットとして記憶される。各チャネルについての第1と第2のオフセットは、同調コマンドで希望されるように、記憶手段から読み出され、所定のチャネルの捕捉を開始するために、復調器はこの再生されたオフセットを利用することができる。
【0011】
本発明の原理を組み込んだ好ましい方法により、CTR(搬送波トラッキング・ループ)のオフセットは、複数の第1のEEPROMに記憶され、これら第1のEEPROMの各々は、それぞれ異なるテレビジョン・チャネルに対応する。STR(シンボル・タイミング再生)のオフセットは、複数の第2のEEPROMに記憶され、これら第2のEEPROMの各々はそれぞれ異なるテレビジョン・チャネルに対応する。各チャネルの第1および第2の各EEPROMからのオフセットは、同調コマンドによる希望に応答して再生され、復調器は再生されたオフセットを、所定のチャネルを捕捉する際の開始(出発)点として使用する。
【0012】
本発明の原理を組み込んだ更なる好ましい方法により、受信機において、各チャネルをそれぞれの送信チャネルにロック(固定)し、且つそのようにロックされたチャネルについて搬送波トラッキング・ループ(CTR)のオフセットに注目することにより、CTRのオフセットが決定される。
【0013】
同様に、好ましい実施例は、受信機において、各チャネルをそれぞれの送信チャネルにロックし、且つロックされたチャネルについてシンボル・タイミング再生のオフセットに注目することにより、STRのオフセットを決定するステップを含んでいる。
【0014】
本発明の好ましい実施例で、テレビジョン受信機において、受信したテレビジョン信号が送信されたチャネルに残留側波帯(VSB)復調器が効率的にロックできるようにする装置が、備えられる。この装置は、受信機において、各チャネルについてそれぞれの搬送波トラッキング・ループのオフセットを決定する手段を含んでいる。第1の記憶手段は、これらのオフセットの各々を第1のオフセットとして記憶するために備えられる。また、受信機において、各チャネルについてそれぞれのSTRのオフセットを決定する手段も含まれ、これらのSTRのオフセットの各々を第2のオフセットとして記憶する第2の手段も含まれる。最後に、同調コマンドによる希望に応答して、各チャネルに対応する第1および第2のオフセットを、第1および第2の記憶手段からそれぞれ読み出す手段が備えられ、復調器は、読み出されたオフセットを使用して、所定のチャネルの捕捉(acquisition)を開始する。
【0015】
本発明の更なる好ましい実施例で、これらのオフセットを記憶する装置は、複数の第1と第2のEEPROM(電気的に消去可能/プログラム可能な読出し専用メモリ)である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の原理を組み込んでいるVSB受信機のブロック図である。
【図2】図1のブロック40の一部分を形成している搬送波トラッキング・ループ(CTL)のEEPROMの機能的ブロック図である。
【図3】図1のブロック60の一部分を形成している、シンボル・タイミング再生(STR)のEEPROMの機能的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に関して、地上波放送アナログ入力(HDTV:高精細度テレビジョン)信号は、アンテナ(図示せず)で受信され、無線周波数(RF)同調回路と中間周波(IF)プロセッサを含むネットワーク20に入力される。IFプロセッサは、二重変換チューナを含み、IF帯域出力信号を公称固定IF搬送周波数で発生する。上述したように、実際のIF搬送周波数は、公称周波数からオフセットされている(ずれている)。ネットワーク20には、自動利得制御(AGC)回路も含まれる。
【0018】
受信した信号は、搬送波抑圧8−VSB被変調信号であって、米国で採用された次世代テレビジョン標準委員会(ATSC)のテレビジョン・ディジタル標準(1995年9月16日付)で提案されている。このような残留側波帯(VSB)信号は、受信機で再生される量子化データを1つの軸だけが含んでいる、1次元のデータ・シンボルの配置で表される。
【0019】
送信される8−VSB信号の場合、ディジタル情報は、位相で送信されるのではなく、もっぱら振幅(RF包絡線の)で送信される。その8レベルの送信された信号は、Iチャネル(in−phase:同相)情報をサンプリングすることにより再生させる。Qチャネルへの依存は排除されており、8−VSB受信機は、Iチャネルを処理するだけでよいので、受信機の異なる段(ステージ)で必要とされるディジタル信号処理回路の数は、半減される。この結果、受信機の設計において簡素性とコストの節約が増大することは明らかである。
【0020】
上述したように、ネットワーク20の出力は、IF通過帯域の出力信号である。この信号は、アナログ/ディジタル変換器(ADC)30に加えられ、ADC30は、オーバサンプル(oversample)されたディジタル・データストリームを発生する。図に示す実施例で、ADC30は、入力された10.76メガ・シンボル(M samples)毎秒のVSBシンボル・データストリームを、21.52MHzのサンプリング・クロックでオーバサンプルする。これは受信されたシンボル・レートの2倍であり、オーバサンプルされた21.52M samples毎秒のデータストリームは、1シンボルにつき2サンプルが与えられる。1シンボルにつき1サンプルに代る、このような1シンボルにつき2サンプルの処理により、例えば、ガードナー(Gardner)のアルゴリズムまたは後続のDC(直流)補償ユニット50を使用してシンボル・タイミング再生(STR)に関連するその後の信号処理機能に有利な動作が得られる。
【0021】
アナログ/ディジタル変換器(ADC)30からのデータストリームは、このデータストリームをネットワーク40に加えることにより、ベースバンドに復調される。ネットワーク40は、オール・ディジタル復調器であって、CTL(搬送波トラッキング・ループ)ネットワークを有する。CTLネットワーク40は、この機能を実行するために、受信したVSBデータストリーム内の小さい基準パイロット搬送波にロック(固定)するオール・ディジタルPLL(位相ロック・ループ)を利用する。このオール・ディジタルPLL(位相ロック・ループ)には、局部発振器信号とパイロット信号間の位相差を検出するディジタル位相検出器、IF搬送周波数を追従する積分器として動作するループ・フィルタ、および積分器からの出力信号に応答して周波数を制御される局部発振器信号を発生する数値制御発振器が含まれる。このようなディジタルPLLの設計と実施は当業者によく知られており、これ以上詳しく説明しない。ユニット40は、出力としてI−位相復調されたシンボル・データストリームを発生する。
【0022】
アナログ/ディジタル変換器(ADC)ネットワーク30および復調器40に関連して、セグメント同期およびシンボル・クロック再生ネットワーク60がある。ネットワーク60は、各セグメントにおける反復的セグメント同期シーケンスを検出し、ランダム・データから分離する。また、ネットワーク60は、サンプリング・クロック信号とセグメント同期シーケンスの時間位置との間の位相差を検出する位相検出器と、シンボル周波数を追従する積分器として動作するループ・フィルタと、積分器の出力に応答して周波数が制御されるサンプリング・クロックを発生する数値制御発振器と、を含んでいる。上述したように、このようなディジタルPLLの設計と実施は当業者によく知られているので、これ以上説明しない。このようにして、セグメント同期成分の時間位置を利用して、適正に位相調整された21.52MHzのクロックを再生させ、この21.52MHzのクロックを使用して、ADC30によるデータストリーム・シンボルのサンプリングを制御する。
【0023】
回路60が、受信したチャネルにおけるシンボルにロックを捕捉すると、受信機のクロックは送信機のクロックと同期して、サンプル・クロックは、アナログ/ディジタル変換器(ADC)30(および受信機内の他の回路、図面を簡略化するために図示しない)にフィードバックされる。これが行われると、VSB受信機は、適正なチャネルに同調され、受信機は、適正に機能できる。
【0024】
前述のように、CTL(搬送波トラッキング・ループ)とSTR(シンボル・タイミング再生)ループの開始点(出発点)が、新しくロックされた周波数から遠く離れていると、VSB復調回路40が或るチャネルにロックを捕捉するのに長時間を要する。上述のように、信頼できる捕捉を確保するためにCTLとSTRループの帯域幅を低く設定すると、この問題は悪化する。
【0025】
本発明によれば、この捕捉時間は、かなり短縮される。図2は、機能的ブロック図であり、ディジタル復調器/搬送波再生回路40の一部として配置される複数(N)の搬送波トラッキング・ループ(CTL)EEPROM 1−N(42、44、46)を示す。一般に、或るチャネルがロックされると、ロックされたCTLのオフセットを表す値は、そのチャネルに対応するEEPROMメモリ内に記憶され、そのチャネルが次に選択されて同調されると、以前記憶されたオフセット値は、CTLによる搬送波捕捉の開始点として使用される。
【0026】
図2で、入力端子CINは、搬送波トラッキング・ループ(CTL)40における現在のCTLオフセット値の源(図示せず)に結合される。CIN端子は、複数のCTL EEPROM(42、44、46)のそれぞれの入力端子に共通に結合される。CTL EEPROM(42、44、46)の各出力端子は出力端子COUTに共通に結合される。出力端子COUTは、CTLのオフセットを出力端子COUTにおける値に設定できるCTL40内の回路(図示せず)に結合される。制御信号(t1、t2、tn)は、CTL EEPROM(42、44,46)の対応する制御入力端子に結合され、対応するCTL EEPROM(42、44、46)の動作を制御する。
【0027】
本発明によれば、受信機が特定のチャネル(例えば、チャネル1)にロックされると、チャネル1のCTLオフセット値は、入力端子CINで受信され、制御信号t1に応答してチャネル1に対応するCTL EEPROM 1(42)に記憶される。この値は、CTL回路40におけるPLL内の数値制御発振器に供給される数値であるか、またはCTL回路40についてロックされたオフセット値を表す他の値である。同様に、受信機が、第2のチャネル(例えば、チャネル2のような)にロックされると、チャネル2のCTLオフセット値(入力端子CINからの)は、制御信号t2に応答してチャネル2に対応するCTL EEPROM 2(44)に記憶される。N個のチャネルの各々に対応するEEPROMがユニット40内に備えられる。これは最後のEEPROM N(46)に至る破線で図示される。従って、受信機が各チャネルにロックされた後、それぞれのCTL周波数のオフセットは、各チャネルに対応するEEPROM内に記憶されている。
【0028】
同様に、セグメント同期およびシンボル・タイミング再生(STR)回路60には、図3に示す記憶要素STR EEPROM 1−N(62、64、66)が含まれる。搬送波トラッキング・ループ(CTL)の場合と同様に、受信機において各チャネルがロックされると、シンボル周波数のオフセットを表す値は、そのチャネルに対応するSTR EEPROM(62、64、66)内に記憶される。この値は、読み出されて、そのチャネルが次に選択され同調されるときに、シンボル・タイミング・オフセットの開始点として利用される。
【0029】
図3は、図2と同様である。入力端子SINは、シンボル・タイミング再生(STR)60における現在のシンボル・タイミングのオフセット値の源(図示せず)に結合される。これはSTR60における数値制御発振器に供給される値か、またはシンボル・タイミングのオフセットを表す他の値である。端子SINは、複数のSTR EEPROM(62、64、66)のそれぞれの入力端子に共通に結合される。STR EEPROM(62、64、66)の各出力端子は出力端子SOUTに共通に結合される。出力端子SOUTは、STRのオフセット値を出力端子SOUTにおける値に設定できるSTR60内の回路(図示せず)に結合される。制御信号t1、t2、tn(これは図2に示す制御信号と同じ)は、STR EEPROM(62、64、66)の対応する制御入力端子に結合され、対応するSTR EEPROM(62、64、66)の動作を制御する。上述したCTL40と同様に、或るチャネルがロックされると、入力端子SINにおける現在のシンボル・タイミングのオフセット値は、制御信号t1、t2、tnに応答してそのチャネルに対応するSTR EEPROM(62、64、66)内に記憶される。
【0030】
更に、本発明の原理により、受信機を新しいチャネルに同調させるとき、受信機はそれぞれの制御信号t1−tnをCTLとSTRのEEPROM(42、44、46)および(62、64、66)に供給する。同調されるチャネルに対応するCTLおよびSTRのEEPROM(42、44、46および62、64、66)に供給されるこの制御信号はそのEEPROMを、以前記憶されたCTLのオフセットとSTRのオフセットをそれぞれ再生し、且つその再生された値をそれぞれの端子COUTおよびSOUTに供給するように調整する。このようにして受信機は、そのチャネルについて以前記憶されたCTLのオフセットを復調器40に搬送する。復調器40は、その再生されたCTLのオフセット値を搬送周波数のオフセットの開始点として利用することができ、そのチャネルについて以前記憶されたSTRのオフセット値をシンボル・クロック再生回路60に搬送する。次に再生回路60はその再生されたSTRオフセット値をシンボル・タイミング・オフセットのスタートとして使用できる。次に受信機は、受信機が同調しようとするチャネルの捕捉(acquisition)を開始する。
【0031】
CTL(搬送波トラッキング・ループ)およびSTR(シンボル・タイミング再生)のオフセットは、最後に(前回)チャネルがロックされたとき、その各チャネルに対応するEEPROM内に記憶されたので、これらの記憶された値を、その後それらのチャネルに同調するための最初のオフセットとして利用して、チャネルの捕捉時間を高速化できる。このような値が記憶されておらず、且つこのような以前決定された値を捕捉の開始点として使用する機会のない通常の受信機と比較して、以前ロックされたオフセット値でCTLとSTRループを開始すると、捕捉時間をかなり短縮できる。これは特に、新しく同調されたチャネルの最初の同調オフセットが、前に同調されたそのチャネルのオフセット(全く関連が無くそして非常に異なる)である場合に言える。
【0032】
EEPROMは、電源を切られてもその中に記憶したデータを保持する不揮発性メモリであることを、当業者は理解する。従って、CTL EEPRPOM(42−46)およびSTR−EEPROM(62−66)に記憶された情報は、受信機が、スイッチ・オフにされたり、または停電になっても、このシステム内に記憶されている。EEPROMは、不揮発性メモリとして図示されているが、あらゆるタイプの不揮発性メモリ(現在知られているか、または将来開発される)、バッテリで働くRAM、ディスク、テープまたはコアのような磁気記憶装置などが使用できることを当業者は理解するであろう。
【0033】
更に、当業者は、EEPROM(42、44、46および62、64、66)は、物理的に分離されている必要はなく、単一のEEPROM内におけるそれぞれのロケーション(記憶位置)であるか、または、もし必要なら、複数のマルチロケーションEEPROMである。この場合、別個の制御信号(t1、t2、…tn)に対応するアドレス回路(既知の設計の)を使用し、チャネルがロックされたとき、そのチャネルに対応するEEPROMのロケーション内にそのチャネルのCTLおよびSTRのオフセット値を記憶し、そのチャネルが新たに選択されると、関連するロケーションからその値を再生できる。
【0034】
残留側波帯(VSB)受信機が適正なチャネルにロックされると、復調されたVSB信号はDC補償ユニット50に加えられる。補償ユニット50は、適応形トラッキング回路を使用して、パイロット信号成分より生じるDCオフセット成分を、復調されたVSB信号から除去する。DC補償回路50の出力は、フィールド同期検出器70およびNTSCの同一チャネル干渉排除回路80に加えられる。回路80の出力は、チャネルの歪みを訂正する適応形チャネル等化器90に加えられる。位相ノイズ(雑音)は、シンボルの配置をランダムに回転させるので、等化器90の出力は位相トラッキング・ループ100に加えられ、トラッキング・ループ100は、等化器90からの出力信号中に残留する位相/利得ノイズを除去する。これには、パイロット信号に応答して先行する搬送波再生ネットワーク40により除去されていない位相ノイズが含まれる。次に、位相トラッキング・ループ100から出力される位相訂正された信号は、ユニット110によりトレリス(trellis)復号化され、ユニット120によりデインタリーブされ、ユニット130によりリード・ソロモン(RS:Reed−Solomon)誤り訂正され、ユニット140によりデスクランブル(デランダマイズ)される。その後、復号化されたデータストリームは、ユニット150によるオーディオ/ビデオおよび表示処理を受ける。チューナ/IFプロセッサ・ユニット10、ADC30、DC補償回路50、フィールド同期検出器70、NTSCフィルタ80、等化器90、位相トラッキング・ループ100、トレリス・デコーダ110、デインタリーバ120、リード・ソロモン・デコーダ130およびデスクランバ140は、Grand Alliance HDTV方式の仕様書(1994年4月14日付)に記述されているタイプの回路を使用する。
【0035】
オール・ディジタル復調回路40とシンボル・クロック再生回路60は、本発明により必要な機能を供給する専用のディジタル・ハードウェア回路(上述したEEPROMを含む)で構成される。或いは、復調回路40/シンボル・クロック再生回路60は、制御プログラムにより既知の方法で制御されるプロセッサで構成され、入力信号を受信して、制御プログラムの指示に従ってそれらの信号を処理し、処理済みの出力信号を発生する。更に、プロセッサと専用のハードウェアの組合せも使用され、当業者はその設計を、専用のハードウェア(例えば、EEPROM)と信号処理を行うプロセッサに区切る方法、およびこのようなシステムを設計し実施する方法、そしてプロセッサと専用のハードウェアを相互接続する方法を理解するであろう。
【0036】
本発明は、特定の方法と装置、およびEEPROMを記憶メディア(媒体)として使用するような特定の実例に関して説明した。特に、本発明は、テレビジョン信号が送信される複数のチャネルのうちの希望チャネルを受信するテレビジョン受信機に関連して説明した。しかしながら、本発明の原理は、特許請求の範囲で限定される本発明の精神と範囲から離脱することなく、他の方法と構成においても具体化されることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号が送信される可能性のある複数のチャネルのうちの所望のチャネルに、受信機内の復調器が効率的にロックできるようにする方法であって、
前記復調器において、所望のチャネルにロックするステップと、
前記復調器が前記所望のチャネルにロックしている時に、前記受信機において前記所望のチャネルに対応する搬送波トラッキング・ループ周波数オフセットを特定するステップと、
前記搬送波トラッキング・ループ周波数オフセットを第1のオフセットとして記憶するステップと、
前記復調器が前記所望のチャネルにロックしている時に、前記受信機において前記所望のチャネルに対応するシンボル・タイミング再生周波数オフセットを特定するステップと、
前記シンボル・タイミング再生周波数オフセットを第2のオフセットとして記憶するステップと、
前記所望のチャネルに対する次回の同調において、捕捉開始前に前記所望のチャネルに対応する前記第1および第2のオフセットを読み出すことによって、前記復調器が当該読み出された第1および第2のオフセットを使用して前記所望のチャネルの捕捉を開始するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
各送信チャネルに前記受信機をロックし、且つ該ロックしたチャネルについて搬送波ループ・オフセットを認めることにより、各搬送波トラッキング・ループ周波数オフセットが特定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
各送信チャネルに前記受信機をロックし、且つ該ロックしたチャネルについてシンボル・タイミング再生オフセットを認めることにより、各シンボル・タイミング再生周波数オフセットが特定される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
各送信チャネルに前記受信機をロックし、且つ該ロックしたチャネルについてシンボル・タイミング再生オフセットを認めることにより、各シンボル・タイミング再生周波数オフセットが特定される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
受信テレビジョン信号が送信される可能性のある複数のチャネルのうちの所望のチャネルでの該受信テレビジョン信号の捕捉を、ディジタル・テレビジョン受信機内の残留側波帯復調器が効率的に開始できるようにする方法であって、
複数のチャネルのうちの前記所望のチャネルを捕捉するステップと、
複数の前記所望のチャネルを捕捉している時に、当該複数の所望のチャネルに対応する搬送波トラッキング・ループ周波数オフセットをそれぞれ特定するステップと、
複数の第1の不揮発性メモリのうちの1つに前記搬送波トラッキング・ループ周波数オフセットを記憶するステップであって、当該複数の第1の不揮発性メモリの各々が前記複数のチャネルの一つにそれぞれ対応する、該ステップと、
複数の前記所望のチャネルを捕捉している時に、当該複数の所望のチャネルに対応するシンボル・タイミング再生周波数オフセットをそれぞれ特定するステップと、
複数の第2の不揮発性メモリのうちの1つに前記シンボル・タイミング再生周波数オフセットの各々を記憶するステップであって、当該複数の第2の不揮発性メモリの各々が前記複数のチャネルの一つにそれぞれ対応する、該ステップと、
前記所望のチャネルに対する次回の同調において、捕捉開始前に前記所望のチャネルに対応する前記第1および第2の不揮発性メモリのそれぞれから前記搬送波トラッキング・ループ周波数オフセットおよびシンボル・タイミング再生周波数オフセットを読み出すことによって、前記復調器が当該読み出された前記搬送波トラッキング・ループ周波数オフセットおよびシンボル・タイミング再生周波数オフセットを、前記所望のチャネルの捕捉における開始点として、使用するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項6】
前記複数の第1の不揮発性メモリおよび前記複数の第2の不揮発性メモリがEEPROMである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
各送信チャネルに前記受信機をロックし、且つ該ロックしたチャネルについて搬送波ループ・オフセットを認めることにより、各搬送波トラッキング・ループ周波数オフセットが特定される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
各送信チャネルに前記受信機をロックし、且つ該ロックしたチャネルについてシンボル・タイミング再生オフセットを認めることにより、各シンボル・タイミング再生周波数オフセットが特定される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
各送信チャネルに前記受信機をロックし、且つ該ロックしたチャネルについてシンボル・タイミング再生オフセットを認めることにより、各シンボル・タイミング再生周波数オフセットが特定される、請求項5記載の方法。
【請求項10】
受信テレビジョン信号が送信される可能性のある複数のチャネルのうちの所望のチャネルに、テレビジョン受信機内の残留側波帯復調器が効率的にロックできるようにする装置であって、
前記テレビジョン受信機において、前記所望のチャネルにロックしている時に、各々のチャネルに対応する搬送波トラッキング・ループ周波数オフセットをそれぞれ特定する復調器と、
前記搬送波トラッキング・ループ周波数オフセットの各々を第1のオフセットとして記憶する第1の不揮発性メモリ手段と、
前記テレビジョン受信機において、前記復調器が前記所望のチャネルにロックしている時に、各々のチャネルに対応するシンボル・タイミング再生周波数オフセットをそれぞれ特定するシンボル・クロック再生回路と、
前記シンボル・タイミング再生周波数オフセットの各々を第2のオフセットとして記憶する第2の不揮発性メモリ手段と、
前記所望のチャネルに対する次回の同調において、捕捉開始前に前記所望のチャネルに対応する前記第1および第2のオフセットを前記第1および第2の不揮発性メモリ手段から読み出す手段と、
を備え、
前記復調器が前記読み出された第1および第2のオフセットを使用して前記所望のチャネルの捕捉を開始する、前記装置。
【請求項11】
前記第1の不揮発性メモリ手段が複数の第1のEEPROMであり、前記第2の不揮発性メモリ手段が複数の第2のEEPROMである、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記復調器には、前記受信機内のクロックを各送信チャネルの搬送波にロックし、且つ該ロックしたチャネルについて搬送波ループ・オフセットを示す手段が含まれている、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記シンボル・クロック再生回路には、前記受信機内のクロックを各送信チャネルのシンボル・タイミングにロックし、且つ該ロックしたチャネルについてシンボル・タイミング再生オフセットを示す手段が含まれている、請求項11記載の装置。
【請求項14】
前記復調器には、前記受信機内のクロックを各送信チャネルの搬送波にロックし、且つ該ロックしたチャネルについて搬送波ループ・オフセットを示す手段が含まれている、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記復調器には、前記受信機内のクロックを各送信チャネルの搬送波にロックし、且つ該ロックしたチャネルについて搬送波ループ・オフセットを示す手段が含まれている、請求項10記載の装置。
【請求項16】
前記シンボル・クロック再生回路には、前記受信機内のクロックを各送信チャネルのシンボル・タイミングにロックし、且つ該ロックしたチャネルについてシンボル・タイミング再生オフセットを示す手段が含まれている、請求項10記載の装置。
【請求項17】
前記復調器には、前記受信機内のクロックを各送信チャネルの搬送波にロックし、且つ該ロックしたチャネルについて搬送波ループ・オフセットを示す手段が含まれている、請求項16記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−296612(P2009−296612A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167440(P2009−167440)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【分割の表示】特願2003−587090(P2003−587090)の分割
【原出願日】平成15年4月14日(2003.4.14)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】