説明

復調回路及び受信装置

【課題】ミリ波周波数帯のASK変調された信号を受信する受信装置において、LNAやフィルタとの集積化に有利で、受信感度の優れたASK復調回路および受信装置を提供する。
【解決手段】復調回路1は、受信信号の包絡線を検波するために受信信号を整流するショットキーダイオード4aを有する包絡線検波回路4と、包絡線検波回路の入力部に設けられる整合回路3とを備え、整合回路3は、整合回路3の入力段に設けられた伝送線路3a及び伝送線路3aとショットキーダイオード4aとの間に設けられた伝送線路3bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波・ミリ波帯無線通信システムで使用される復調回路、及び受信装置に関し、特に、ASK(Amplitude Shift Keying)方式で変調された信号を受信して復調するための復調回路、及び受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル信号を無線伝送する変調方式の一つとして、ASK変調が知られている。ASK変調では、搬送波の振幅をベースバンド信号、即ち、デジタル信号の1と0に対応させて変化させる。振幅のみを変化させるため回路構成が簡素になる特徴があり、ミリ波帯の無線通信でも応用されている。
【0003】
このようなASK方式で変調された信号は、例えば、整流回路と積分回路を備える包絡線検波回路を用いて、その信号の包絡線を検波することにより元のベースバンド信号を取り出すことが出来る。
【0004】
図12は、従来の受信装置100を示す。従来の受信装置100では、受信部101で受信された信号は包絡線検波回路102によって包絡線検波され、その検波後の信号は、キャパシタ103aと抵抗103bとを有するローパスフィルタ103に通される。その後、増幅回路104によって増幅した後、コンパレータ105により電源106が発生する基準電圧と比較することにより、出力端子107から2値信号からなる受信データ信号を得る。包絡線検波回路102は、ショットキーダイオード108と、抵抗109a及びキャパシタ109bを有するローパスフィルタ109とを備えている。受信部101で受信された信号は、ショットキーダイオード108により半波整流され、ローパスフィルタ109によりその信号の包絡線形状が検出される。受信装置100と類似の構成を備えるものとして、特許文献1では、外部からの送信電波を受信して包絡線検波すると共に、その包絡線検波後の受信信号と基準電圧とを比較することにより2値信号(デジタルデータ)を復元する際に、送信装置との間の通信距離が変化しても2値信号を常に正確に復元出来る受信装置が開示されている。
【特許文献1】特開2000−354074号公報(平成12年12月19日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図12に示した従来の受信装置100では、受信電力が小さく、受信信号の振幅が、ショットキーダイオード108のオン電圧(順方向電圧降下)以下となった場合、ショットキーダイオード108が受信信号を整流出来ないので、受信装置100が復調動作を行えなくなる。
【0006】
また、従来の受信装置100では、受信部101と包絡線検波回路102とが直接接続されているために、搬送波の周波数が高くなるに従い、受信部101と包絡線検波回路102との間でインピーダンスの不整合が生じる。よって、ショットキーダイオード108に正確に受信信号を伝送することが出来なくなるので、受信装置100の受信感度が低下し、通信距離が短くなる。
【0007】
また、搬送波の周波数が高くなると、ローパスフィルタ109が有するキャパシタ109の接続長、物理的な大きさあるいは接地インダクタンスの影響によりローパスフィルタ109のインピーダンスが大きくなり、十分に搬送波信号成分を抑圧することが困難になり、不要な雑音信号としてデータ誤りを引き起こす原因となることがある。
【0008】
従って、図12に示すように、包絡線検波回路102の出力側に別途ローパスフィルタ103を設ける必要があった。
【0009】
さらに、ミリ波帯においては、LNA(Low Noise Amplifier)、ローパスフィルタ及び包絡線検波回路が半導体基板上に集積化されることが、受信装置の性能向上及び受信装置製造時の歩留まり向上のために好ましいが、ローパスフィルタと包絡線検波回路との間でインピーダンスの不整合が生じていると受信感度が低下するという問題があった。
【0010】
その上、LNAが有するトランジスタと包絡線検波回路が有するショットキーダイオードとを同一の半導体基板上に形成した場合、上記トランジスタ及び上記ショットキーダイオードそれぞれについて、好ましいエピタキシャル構造や製造プロセスが異なる。このような場合、ミリ波帯におけるトランジスタの性能を優先したエピタキシャル構造と製造プロセスが選択されることが多いが、その結果としてショットキーダイオードの抵抗成分やオン電圧を十分に低くすることができず、受信装置の受信感度が悪くなるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ASK変調を用いた無線通信システムにおいて、受信感度の優れたASK復調回路及び受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の復調回路は、上記課題を解決するために、受信信号の包絡線を検波するために受信信号を整流するダイオードを有する包絡線検波回路と、包絡線検波回路の入力部に設けられる入力回路とを備え、前記入力回路は、前記入力回路の入力段に設けられた第1伝送線路及び前記第1伝送線路と前記ダイオードとの間に設けられた第2伝送線路を有することを特徴とする。
【0013】
上記発明によれば、前記第1伝送線路及び前記第2伝送線路を有する前記入力回路を設けることにより、その前段に配置される機器の特性インピーダンスと前記ダイオードの特性インピーダンスとが等しくなる、即ちインピーダンスの整合が取れる。従って、前記入力回路の前段に配置される機器と前記ダイオードとのインピーダンスの不整合が緩和され、前記包絡線検波回路の入力における反射を低減し、前記ダイオードに効率よく変調信号を伝達することが可能となるので、受信感度が向上する。
【0014】
前記復調回路では、前記入力回路は、キャパシタと、一端が前記キャパシタを介して接地され、他端が上記第2伝送線路の一端に接続される第3伝送線路と、前記キャパシタと前記第3伝送線路との接続点に設けられ、直流バイアス電圧が印加される直流バイアス電圧入力端子とをさらに有してもよい。
【0015】
これにより、前記直流バイアス電圧入力端子、前記キャパシタと第3伝送線路との接続点、前記第3伝送線路、前記第2伝送線路、前記ダイオードのアノードの経路で直流バイアス電流が流れるので、前記ダイオードの動作点の位置が調整出来る。従って、受信信号の振幅が、前記ダイオードのオン電圧より小さい場合においても、前記ダイオードは、受信信号を整流出来る。
【0016】
また、前記直流バイアス電圧入力端子に直流バイアス電圧を印加することにより、前記接続点に直流バイアス電流を流して、前記ダイオードの動作点の位置を調整出来る。従って、前記入力回路が直流バイアス供給手段を有しており、インダクタ等の直流バイアス供給手段を別途設ける必要が無くなるので、回路面積を大きくすることなく、ダイオードに直流バイアス電流を供給することが可能となり、低コスト化に有利である。
【0017】
さらに、直流バイアス供給手段としてインダクタを用いた場合に生じる、ミリ波帯においては前記インダクタそのものの特性が得られず、インダクタを接続することにより受ける損失が大きくなり、受信信号レベルが低下して受信感度が低下するという問題も解消できる。
【0018】
その上、ダイオードの動作点の位置を調整し最適化出来るため、オン電圧の高いダイオードを用いた場合でも低コストで優れた受信感度を実現することが出来る。
【0019】
前記復調回路では、受信信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路により増幅された受信信号から所望帯域外の受信信号を減衰させるフィルタとをさらに備え、前記フィルタの出力が、前記入力回路の入力に接続されてもよい。
【0020】
これにより、前記包絡線検波回路の前段に配置される、LNA等の増幅回路あるいはフィルタ等の機器とダイオードとの不整合が緩和され、前記包絡線検波回路の入力における反射を低減し、前記ダイオードに効率よく変調信号を伝達することが可能となるので、受信感度が向上する。
【0021】
前記復調回路では、前記入力回路と、前記包絡線検波回路とを2組備え、2組の前記入力回路に、前記フィルタを通過した受信信号を分配する分配手段をさらに備え、2組の前記包絡線検波回路が有する前記ダイオードの極性が互いに逆であってもよい。
【0022】
これにより、前記分配手段によって分配された信号は、2組の前記入力回路に入力され、それぞれの包絡線検波回路からベースバンド信号が出力される。この時、2組の前記包絡線検波回路が有する前記ダイオードの極性が異なるため、2組の前記包絡線検波回路からの信号は極性が異なる。即ち、差動出力として復調信号を得ることが可能となり、グランドループによるエラーや外部ノイズの低減に有利である。
【0023】
また、2組の前記包絡線検波回路のそれぞれの入力部に入力回路を有しているため、簡素な分配回路を用いても不整合による損失を低減出来る。
【0024】
さらに、2組の前記入力回路がそれぞれ有する直流バイアス電圧入力端子にそれぞれ極性の異なる直流バイアス電圧を印加することにより、2組の前記包絡線検波回路が有する前記ダイオードの動作点の位置が調整出来るので、受信信号の振幅が、2組の前記包絡線検波回路が有する前記ダイオードのオン電圧より小さい場合においても、2組の前記包絡線検波回路が有する前記ダイオードは、受信信号を整流出来る。従って、優れた受信特性を実現することが可能となる。
【0025】
前記復調回路では、前記包絡線検波回路の出力部に、受信信号を搬送する搬送波信号の波長の1/4の長さである先端開放の伝送線路を備えてもよい。
【0026】
これにより、前記搬送波信号の成分が前記復調回路の外部に漏れることを低減する。
【0027】
前記復調回路では、前記包絡線検波回路の出力部に、前記搬送波信号の波長の1/4の長さである第4伝送線路が接続され、前記第4伝送線路の他端に前記搬送波信号の波長の1/4の長さである先端開放の第5伝送線路を備えてもよい。
【0028】
これにより、包絡線検波回路の出力部から前記搬送波信号の波長の1/4の長さだけ離れた位置が先端開放の前記第5伝送線路によって接地となるため、搬送波周波数において前記包絡線検波回路の出力部から出力側を見たインピーダンス(以降、出力部から出力側を見たインピーダンスと称する)を高くすることが出来る。
【0029】
従って、前記復調回路の出力にローパスフィルタを設ける場合、前記ローパスフィルタが有するキャパシタのインピーダンスを、その物理的な大きさ、接続長や接地インダクタンスの影響により十分小さくすることができなくても、出力部から出力側を見たインピーダンスは高くなっているため、前記キャパシタのインピーダンスは、出力部から出力側を見たインピーダンスに対して相対的に小さくなる。従って、十分に搬送波信号成分を抑圧することが出来るようになる。
【0030】
このため、復調回路の出力側に別途ローパスフィルタを設ける必要がなくなる。また、設ける場合であっても、フィルタの段数あるいは次数を少なくすることが出来る。
【0031】
前記復調回路では、前記包絡線検波回路の出力部、又は、前記第4伝送線路の他端に、第6伝送線路を設けてもよい。
【0032】
これにより、前記復調回路の出力側に設ける回路とのインピーダンスの不整合を低減することができ、復調データ誤りの発生を低減出来る。
【0033】
前記復調回路は、半導体基板上に一体形成してもよい。
【0034】
これにより、HEMT(High Electolon Mobility Transistor)等のトランジスタを形成するために最適化されたエピタキシャル構造の半導体基板上に復調回路を一体形成した場合であっても、優れた受信特性を得ることが出来る。
【0035】
本発明の受信装置は、上記いずれかの復調回路と、前記復調回路の出力部に設けられ、増幅後の信号の振幅を一定値に制限する制限増幅器、又はコンパレータとを備えているので、所望の波形を有したデジタルデータ信号を得ることが出来る。
【発明の効果】
【0036】
本発明の復調回路及び受信装置は、以上のように、受信信号の包絡線を検波するために受信信号を整流するダイオードを有する包絡線検波回路と、包絡線検波回路の入力部に設けられる入力回路とを備え、前記入力回路は、入力回路の入力段に設けられた第1伝送線路及び第1伝送線路とダイオードとの間に設けられた第2伝送線路を有するものである。
【0037】
それゆえ、ASK変調を用いた無線通信システムにおいて、受信感度の優れたASK復調回路及び受信装置を提供出来るという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の一実施形態について実施例1〜実施例4及び図1〜図11に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0039】
〔実施例1〕
図1に本発明の第1の実施例における復調回路1の回路図を示す。復調回路1は、大略的には、入力端子2、整合回路3、包絡線検波回路4、出力端子5、インダクタ6及びキャパシタ7を備えている。整合回路3は、伝送線路3a、伝送線路3b、伝送線路3c、キャパシタ3d、抵抗3e、キャパシタ3f及び直流バイアス電圧入力端子3gを有している。包絡線検波回路4は、ショットキーダイオード4a及びローパスフィルタ4bを有しており、ローパスフィルタ4bは、抵抗4c及びキャパシタ4dを有している。
【0040】
包絡線検波回路4は、ショットキーダイオード4aと、抵抗4c及びキャパシタ4dを有するローパスフィルタ4bとを備えている。入力端子2から入力される受信信号は、ショットキーダイオード4aにより半波整流され、ローパスフィルタ4bによりその信号の包絡線形状が検出される。
【0041】
復調回路1では、入力端子2と整合回路3の入力とが接続され、整合回路3の出力と包絡線検波回路4の入力とが接続される。包絡線検波回路4の出力は、インダクタ6の一端に接続され、インダクタ6の他端は、受信信号に含まれる直流成分を阻止するキャパシタ7の一端に接続されている。そして、キャパシタ7の他端は、出力端子5に接続されている。インダクタ6は、出力端子5に接続される図示しない回路と復調回路1との間でインピーダンスの整合をとるために設けられている。このような構成とすることにより、直流分をカットしたベースバンド信号を出力端子5より得ることが出来る。
【0042】
ここで、整合回路3について、伝送線路3aの一端は、入力端子2に接続され、伝送線路3aの他端は、伝送線路3bの一端に接続されている。次に、伝送線路3bの他端は、ショットキーダイオード4aのアノードに接続されている。また、伝送線路3cの一端は、伝送線路3aと伝送線路3bとの接続点に接続され、伝送線路3cの他端は、直流バイアス電圧入力端子3gに接続されている。さらに、キャパシタ3dの一端は、直流バイアス電圧入力端子3gに接続され、キャパシタ3dの他端は接地されている。その上、抵抗3eの一端は、直流バイアス電圧入力端子3gに接続され、抵抗3eの他端は、キャパシタ3fの一端に接続されている。そして、キャパシタ3fの他端は接地されている。なお、伝送線路3a、伝送線路3b及び伝送線路3cは、マイクロストリップ線路である。
【0043】
直流バイアス電圧入力端子3gは、直流バイアス電圧が入力される端子である。直流バイアス電圧入力端子3gに直流バイアス電圧を印加することにより、直流バイアス電圧入力端子3g→伝送線路3cとキャパシタ3dとの間の接続点→伝送線路3c→伝送線路3b→ショットキーダイオード4aのアノードの経路で直流バイアス電流が流れるので、ショットキーダイオード4aの動作点の位置が調整出来る。
【0044】
また、キャパシタ3dの容量は、キャパシタ3dと伝送線路3cとの接続点のインピーダンスが、搬送波周波数において十分低くなる、即ち搬送波周波数において略接地となるように設定される。これにより、搬送波周波数における、伝送線路3aと伝送線路3cとの接続点からキャパシタ3d側を見たインピーダンスは、伝送線路3cのインピーダンスを有していることになる。従って、整合回路3が伝送線路3a、伝送線路3b、伝送線路3c及びキャパシタ3dを有することにより、搬送波信号成分、即ち搬送波周波数帯の信号成分は、損失なくショットキーダイオード4aに伝達される。
【0045】
また、包絡線検波回路4について、ショットキーダイオード4aのカソードは、インダクタ6の一端に接続される。抵抗4cの一端は、ショットキーダイオード4aのカソードに接続され、抵抗4cの他端は接地されている。キャパシタ4dの一端は、ショットキーダイオード4aのカソードに接続され、キャパシタ4dの他端は接地されている。従って、抵抗4c及びキャパシタ4dは並列に接続されている。
【0046】
上述したように、直流バイアス電圧入力端子3gに直流バイアス電圧を印加することにより、ショットキーダイオード4aの動作点の位置が調整出来る。これにより、包絡線検波回路4と復調回路1の前段に接続されるLNAあるいはフィルタ等の機器との間で反射が全く無く、包絡線を正確に検波することが可能となる。即ち、検波特性が最適化される。
【0047】
図2は、スミスチャートであり、例えば搬送波信号の周波数として60.5GHzが採用された、復調回路を備える無線通信システムにおいて、復調回路に入力される受信信号に含まれる搬送波信号成分が復調回路1の入力側にどの程度反射されるかを示すものである。図2において、整合回路ありの場合、無線通信システムは図1の復調回路1を備えており、直流バイアス電圧入力端子3gに印加される直流バイアス電圧Vconを0.4V、0.6V、0.8Vと変化させている。図2において、整合回路なしの場合、無線通信システムが備える復調回路は、図12に示す包絡線検波回路110を有しており、直流バイアス電圧入力端子112に印加される直流バイアス電圧Vconを0.4V、0.6V、0.8Vと変化させている。
【0048】
図2において、整合回路ありの場合と整合回路なしの場合とを比較すると、整合回路なしの場合、包絡線検波回路110の特性インピーダンスと、整合回路を有していない復調回路の前段に接続されるLNAあるいはフィルタ等の機器の特性インピーダンスとが等しくないため、上記復調回路と上記機器との間でインピーダンスの整合が取れていない。特に、図12に示すように、直流バイアス電圧入力端子112に印加される直流バイアス電圧Vconによりショットキーダイオード111の動作点の位置を調整する構成においては、直流バイアス電圧Vconを印加することによりショットキーダイオード111のアノードに直流バイアス電流が流れるので、ショットキーダイオード111の特性が変化する。
【0049】
上記理由から、従来の復調回路では、図12に示す包絡線検波回路110を有していたとしても、整合状態を実現すること、及び受信信号の振幅が、ショットキーダイオード111のオン電圧より小さい場合においても、ショットキーダイオード111が受信信号を整流出来るように、必要な直流バイアス電圧を直流バイアス電圧入力端子112に印加し、ショットキーダイオード111の動作点の位置を調整することを両立することができなかった。
【0050】
これに対して、整合回路ありの場合、整合回路なしの場合と比較して、スミスチャートの中心に近く、よりインピーダンスの整合が取れていることが分かる。特に、直流バイアス電圧Vconが0.6Vの場合は、スミスチャートのほぼ中心であり、包絡線検波回路4が有するショットキーダイオード4aと、復調回路1の前段に接続されるLNAあるいはフィルタ等との間で反射が無視出来るほど小さく、インピーダンスの整合がとれている。
【0051】
整合回路3は、一端がキャパシタ3dを介して接地された伝送線路3cを有している。伝送線路3cとキャパシタ3dとの接続点は、搬送波周波数において略接地、即ち十分低いインピーダンスとなるため、伝送線路3cとキャパシタ3dとの接続点に直流バイアス電流を流すための配線等を接続しても、高周波回路である復調回路1及び高周波回路である整合回路3の特性に影響を与えることがない。従って、直流バイアス電圧入力端子3gに直流バイアス電圧を印加し、ショットキーダイオード4aのアノードに直流バイアス電流を流してショットキーダイオード4aの動作点の位置が調整出来る。
【0052】
また、整合回路3は、復調回路1の前段に接続されるLNAあるいはフィルタ等の機器のインピーダンスを変換し、包絡線検波回路4の入力インピーダンスと整合するよう設計されている。従って、包絡線検波回路4と復調回路1の前段に接続されるLNAあるいはフィルタ等の機器との間でインピーダンスの整合が取れている。
【0053】
このように、本実施の形態の整合回路3を復調回路に設けることにより、整合状態を実現すること、及び受信信号の振幅が、ショットキーダイオード4aのオン電圧より小さい場合においても、ショットキーダイオード4aが受信信号を整流出来るように、必要な直流バイアス電圧を直流バイアス電圧入力端子3gに印加し、ショットキーダイオード4aのアノードに直流バイアス電流を流してショットキーダイオード4aの動作点の位置を調整することを両立出来る。
【0054】
〔比較例1〕
従来は、受信信号の振幅が小さいために受信信号の電圧が小さい場合、図13に示す包絡線検波回路110のように、ショットキーダイオード108にバイアスをかけて動作させる構成を用いていた。包絡線検波回路110は、直流バイアス電圧入力端子111に直流バイアス電圧を印加し、インダクタ112を介してショットキーダイオード108のアノードに直流バイアス電流を流すことにより、ショットキーダイオード108の動作点の位置を調整する構成である。
【0055】
図14にショットキーダイオードの電圧−電流特性を示す。ショットキーダイオードのアノードに直流バイアス電流を流すことにより、ショットキーダイオードの動作点がOからAに変化するので、ショットキーダイオードのオン電圧より小さい振幅の信号を整流することが可能となる。
【0056】
しかしながら、図13の包絡線検波回路110は、図12の包絡線検波回路102に別途インダクタ113を追加した構成であるため、コストアップするという問題点が生じる。また、ミリ波帯ではインダクタ113の特性そのものが得られなくなるので、インダクタを接続することにより受ける損失が大きくなるため、受信信号レベルが低下して受信感度が低下する。
【0057】
これに対して、本実施の形態の復調回路1では、整合回路3が伝送線路3c、キャパシタ3d及び直流バイアス電圧入力端子3gからなる直流バイアス供給手段を有しており、インダクタ等の直流バイアス供給手段を別途設ける必要が無くなるので、回路面積を大きくすることなく、低コストで検波特性を改善出来る。即ち、包絡線検波回路4と復調回路1の前段に接続されるLNAあるいはフィルタ等の機器との間で生じる反射を小さく出来、整合回路3及び包絡線検波回路4を実装する半導体基板の面積を小さく出来、低コスト化に有利である。また、復調回路1では、さらにインダクタ6を上記半導体基板に形成しても良い。なお、キャパシタ7は、ベースバンド信号の直流分をカットするため容量値を大きくする必要がある。このため、キャパシタ7の面積が大きくなり、キャパシタ7を半導体基板上に形成することは困難であるので、キャパシタ7は半導体基板外に構成する。
【0058】
さらに、復調回路1では、直流バイアス供給手段としてインダクタを用いた場合に生じる、ミリ波帯においては前記インダクタそのものの特性が得られず、インダクタを接続することにより受ける損失が大きくなるため、受信信号レベルが低下して受信感度が低下するという問題点も解消できる。
【0059】
その上、ダイオードの動作点の位置を調整し最適化出来るため、オン電圧の高いダイオードを用いた場合でも低コストで優れた受信感度を実現することが出来る。
【0060】
図3は、例えば、1GHzの正弦波で搬送波周波数60.5GHzのキャリア信号を変調した変調信号を受信し、復調回路への入力変調信号レベルが0dBmであった場合の復調信号を、整合回路3がない場合と比較して示した波形図である。ここで、ショットキーダイオード4aに供給されるバイアス電圧はそれぞれ0.6Vとした。整合回路を設けることにより受信感度が向上することが分かる。また、図4に、直流バイアス電圧を変化させたときの復調信号の波形図を示す。直流バイアス電圧を0.6Vとすることにより、正弦波の復調信号が得られることが分かる。
【0061】
〔実施例2〕
本発明の他の実施例について図5〜図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施例において説明すること以外の構成は、前記実施例1と同じである。また、説明の便宜上、前記実施例1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
図5(a)は、本発明の第2の実施例における復調回路8の回路図を示したものである。ここでは、復調回路8は化合物半導体基板上に形成する。
【0063】
入力端子2には、受信信号を増幅するLNA9が接続される。さらに、LNA9の出力には、受信信号のうち不要な周波数帯域の信号を抑圧するバンドパスフィルタ10が接続される。さらに、バンドパスフィルタ10の出力側には整合回路3が接続され、整合回路3の出力側には包絡線検波回路4が接続される。また、包絡線検波回路4の出力側には伝送線路11の一端が接続され、伝送線路11の他端に先端開放の伝送線路12が接続される。伝送線路12と伝送線路11との接続点には出力整合をとるためのインダクタ6が接続されている。なお、伝送線路11及び伝送線路12は、マイクロストリップ線路である。
【0064】
インダクタ6は、化合物半導体基板上に設けられた出力端子13に接続される。また、出力端子13に、例えば化合物半導体基板を実装するセラミック基板上に設けたキャパシタ7を接続することにより、直流分をカットしたベースバンド信号を出力端子5より得ることが出来る。キャパシタ7は、搬送波信号成分より周波数が低い、復調したベースバンド信号を通過させる必要があるため、搬送波信号成分と同じ周波数の信号を通過させる場合の容量より大きい容量が必要となり、化合物半導体基板上に形成すると基板面積が大きくなるため、セラミック基板等の実装基板に設けた方が低コスト化に有利である。
【0065】
ここで、整合回路3について、伝送線路3aの一端は、バンドパスフィルタ10に接続され、伝送線路3aの他端は、伝送線路3bの一端に接続されている。次に、伝送線路3bの他端は、ショットキーダイオード4aのアノードに接続されている。また、伝送線路3cの一端は、伝送線路3aと伝送線路3bとの接続点に接続され、伝送線路3cの他端は、直流バイアス電圧入力端子3gに接続されている。さらに、キャパシタ3dの一端は、直流バイアス電圧入力端子3gに接続され、キャパシタ3dの他端は、ビアホールのインダクタンス成分(以降、単にインダクタンス成分と称する)14の一端に接続されている。そして、インダクタンス成分14の他端は接地されている。その上、抵抗3eの一端は、直流バイアス電圧入力端子3gに接続され、抵抗3eの他端は、キャパシタ3fの一端に接続されている。そして、キャパシタ3fの他端は、インダクタンス成分15の一端に接続されている。そして、インダクタンス成分15の他端は接地されている。
【0066】
なお、化合物半導体基板上に形成する場合、接地はビアホールによって行うため、ビアホールの特性を考慮する必要がある。特に、ミリ波帯においてはビアホールの特性が回路全体の特性に影響を及ぼすため、整合回路3においてビアホールの等価回路をインダクタンス成分14及びインダクタンス成分15として示している。
【0067】
上記のように構成された整合回路3を設けることにより、バンドパスフィルタ10と包絡線検波回路4とのインピーダンスの不整合が改善し、受信感度を向上出来る。
【0068】
さらに、直流バイアス電圧入力端子3gに直流バイアス電圧を印加することにより、直流バイアス電圧入力端子3g→伝送線路3cとキャパシタ3dとの間の接続点→伝送線路3c→伝送線路3b→ショットキーダイオード4aのアノードの経路で直流バイアス電流が流れるので、ショットキーダイオード4aの動作点の位置が調整出来、検波特性を最適化出来る。
【0069】
ここで、直流バイアス電圧入力端子3gには、抵抗3eとキャパシタ3fとを有するローパスフィルタが接続されているので、直流バイアス電圧入力端子3gからの雑音の混入を防止する。
【0070】
また、包絡線検波回路4は、ショットキーダイオード4aとローパスフィルタ4bとを有しており、ローパスフィルタ4bは、抵抗4c、キャパシタ4d、伝送線路4e、インダクタンス成分16及びインダクタンス成分17を有している。
【0071】
包絡線検波回路4について、ショットキーダイオード4aのカソードは、伝送線路11の一端に接続される。伝送線路4e一端は、ショットキーダイオード4aのカソードに接続され、伝送線路4eの他端は、抵抗4cの一端に接続されている。抵抗4cの他端は、インダクタンス成分16の一端に接続され、インダクタンス成分16の他端は、接地されている。キャパシタ4dの一端は、伝送線路4eの他端に接続され、キャパシタ4dの他端は、インダクタンス成分17の一端に接続されている。そして、インダクタンス成分17の他端は接地されている。伝送線路4eは、ローパスフィルタ4bと伝送線路11との接続長を表している。
【0072】
また、伝送線路11と先端開放の伝送線路12との長さは、搬送波の波長をλとした場合にλ/4としている。伝送線路11の他端は、長さがλ/4である先端開放の伝送線路12を接続したことにより、搬送波周波数において接地とみなせ、さらに上述したように、伝送線路11の長さもλ/4である。このため、伝送線路11の他端から出力側を見たインピーダンスは、搬送波周波数において高くなり、開放とみなせる。従って、ローパスフィルタ4bに優先的に搬送波信号が伝達されるため、搬送波の漏れを低減出来る。
【0073】
また、例えば、LNA9が有するトランジスタとしてHEMTを用い、ショットキーダイオード4aは、HEMTのソース−ドレイン間を短絡し、金属製のゲート電極と半導体とが直接接合された部分、即ちショットキー接合された部分を利用することが出来る。そのため、化合物半導体基板上に復調回路を一体形成することが可能である。
【0074】
ここで、化合物半導体基板として、基板厚み100μmのGaAs基板上に、復調回路8のキャパシタ7を除く部分を形成する。伝送線路3aは、線路幅40μm及び長さ50μmとし、伝送線路3bは、線路幅40μm及び長さ100μmとし、伝送線路3cは、線路幅40μm及び長さ100μmとした。また、伝送線路11は、線路幅40μm及び長さ450μmとし、伝送線路12は、線路幅40μm、長さ450μmとした。
【0075】
次に、キャパシタ3dの容量は0.4pF、インダクタ6のインダクタンスは8nHである。また、抵抗4cの抵抗値は100Ω、キャパシタ4dの容量は2pFとした。また、伝送線路4eは10μm、インダクタンス成分14〜インダクタンス成分17は28pHである。
【0076】
LNA9が有するトランジスタは、ゲート幅0.15μmのHEMTを用いている。また、例えば、ショットキーダイオード4aは、ソース−ドレイン間を短絡したHEMTのゲート接合、即ち金属製のゲート電極と半導体との接合部を利用出来る。このように形成したショットキーダイオードを用いても、直流バイアス電圧入力端子3gに直流バイアス電圧を印加することによる動作点の調整は可能であり、整合回路3により、バンドパスフィルタ10と包絡線検波回路4とのインピーダンスの不整合が改善出来るので、優れた検波特性を得ることが出来る。そのため、半導体基板上に一体形成することができ、低コストで受信感度の優れた復調回路を実現出来る。なお、本実施例において、実装基板上に設けるキャパシタ7の容量は1μFとした。
【0077】
なお、図5(b)に示す復調回路のように、包絡線検波回路4の出力に伝送線路36を設けても良い。さらに、図5(c)に示す復調回路のように、伝送線路11の他端に伝送線路36を設けても良い。これにより、図5(b)及び図5(c)の復調回路の出力側に設ける回路とのインピーダンスの不整合を低減することができ、復調データ誤りの発生を低減出来る。
【0078】
図6は、例えば、1GHzの正弦波で搬送波周波数60.5GHzのキャリア信号を変調した変調信号を受信し、包絡線検波回路4への入力変調信号レベルを0dBmとした場合、包絡線検波回路4の出力側に伝送線路11及び先端開放の伝送線路12を設けなかった復調回路において、出力端子5から出力される信号の、直流成分を除いた電力スペクトルを示したものである。ここで、直流バイアス電圧入力端子3gに印加する直流バイアス電圧は0.6Vとした。搬送波周波数帯域の変調信号が出力側にもれてくることがわかる。
【0079】
これは、ローパスフィルタ4bとショットキーダイオード4aの接続長、即ち、伝送線路4eの長さや、接地のためのビアホールの有するインダクタンス成分16及びインダクタンス成分17がミリ波帯において無視できず特性に影響を及ぼすためである。そのため、搬送波信号成分に対する伝送線路4e→キャパシタ4d→インダクタンス成分17の経路のインピーダンスが大きくなり、十分に搬送波信号成分を抑圧することができなくなる。
【0080】
一方、図7は、包絡線検波回路4の出力側に伝送線路11及び先端開放の伝送線路12を設けた復調回路において、出力端子5から出力される信号の電力スペクトルを示したものである。搬送周波数帯域の変調信号の出力端子5への漏れを低減できていることが分かる。そのため、例えば、実装基板側に設けるローパスフィルタを省く、あるいはローパスフィルタの段数あるいは次数を低くすることができ、受信装置の小型化に有利である。
【0081】
〔実施例3〕
図8は、本発明の第3の実施例における復調回路18の回路図を示したものである。図5に示した実施例2と異なる点は、バンドパスフィルタ10の出力側に分配手段19を設けて受信変調信号を分配した後、直流阻止キャパシタ20を通して一方の信号を第1復調回路21に入力し、また、直流阻止キャパシタ22を通して他方の信号を第2復調回路23に入力する構成としている。ここで、第2復調回路23は、ショットキーダイオード4a’が、第1復調回路21のショットキーダイオード4aと向きを変えて設けられている点を除いては、第1復調回路21と同じ構成である。この場合、それぞれのショットキーダイオードに順方向バイアスがかかるように、直流バイアス電圧入力端子3gからは正のバイアス電圧を、直流バイアス電圧入力端子3g’からは負のバイアス電圧を供給する。
【0082】
第1復調回路21は整合回路3を備えており、第2復調回路23は整合回路3’を備えているので、分配手段による不整合を改善することが出来る。また、このような構成とすることにより、出力端子13と出力端子13’とから極性の異なる出力を得ることが出来るため、復調回路18を搭載する実装基板側の回路構成を差動回路とすることが容易となり、外部からのノイズの低減に有利である。
【0083】
〔実施例4〕
本実施例4では、図9〜図11に、本発明の実施の形態における受信装置のブロック図を示す。
【0084】
図9の受信装置24は、復調回路26の入力部と受信アンテナ25を接続し、復調した復調信号から直流成分をキャパシタ27により除く。復調回路26には、例えば、実施例2で示した半導体基板上に形成された復調回路8が用いられる。キャパシタ27により直流成分を除かれた検波信号を、制限増幅器28によって増幅し、キャパシタ29によりさらに直流成分を除いて受信デジタル信号として出力端子30から出力する。出力端子30から出力された受信デジタル信号は、ベースバンド信号処理回路に入力される。制限増幅器28は、増幅後の検波信号の振幅がある一定値に制限される増幅器である。従って、検波信号は、この一定値にデジタル化される。
【0085】
図9の受信装置24では、制限増幅器28を利用して受信デジタル信号を得る構成としたが、例えば、図10に示す受信装置31のように、コンパレータ32を用いて電源33から出力される基準電圧と比較し、受信デジタル信号を得る構成としても良い。また、例えば、図11に示す受信装置34のように、抵抗35aとキャパシタ35bとを有するローパスフィルタ35を接続し、受信信号電圧から基準電圧を得る構成としても良い。
【0086】
実施例2では、不要な搬送波周波数帯の信号を抑圧するための回路が半導体基板上に備えられているため、復調回路21と制限増幅器28或いはコンパレータ32との間にローパスフィルタを配置する必要がなく、受信装置の小型化を図った。
【0087】
以上のように、本発明の復調回路は、受信したASk変調信号をLNAにより増幅し、フィルタにより不要信号成分を抑圧した後、整合回路を介して包絡線検波回路に入力すると共に、整合回路に設けたショートスタブを介して包絡線検波回路を構成するショットキーダイオードに直流バイアスを供給することによって、包絡線検波回路の入力不整合損の低減と、ショットキーダイオードの動作点の最適化が可能となり、受信特性の向上を図ることができる。また、搬送波信号を抑圧するための先端開放の伝送線路を設けることにより、搬送波信号の漏れを低減し、受信データ信号の誤り発生を低減出来る。
【0088】
〔実施形態の総括〕
本発明の復調回路は、上記課題を解決するために、受信信号の包絡線を検波するために受信信号を整流するショットキーダイオード4aを有する包絡線検波回路4と、包絡線検波回路4の入力部に設けられる整合回路3とを備え、整合回路3は、整合回路3の入力段に設けられた伝送線路3a及び伝送線路3aとショットキーダイオード4aとの間に設けられた伝送線路4bを有することを特徴とする。
【0089】
上記発明によれば、伝送線路3a及び伝送線路3bを有する整合回路3を設けることにより、その前段に配置される機器の特性インピーダンスと前記ダイオードの特性インピーダンスとが等しくなる、即ちインピーダンスの整合が取れる。従って、整合回路3の前段にの配置される機器とショットキーダイオード4aとのインピーダンスの不整合が緩和され、包絡線検波回路4の入力における反射を低減し、前記ダイオードに効率よく変調信号を伝達することが可能となるので、受信感度が向上する。
【0090】
前記復調回路では、整合回路3は、キャパシタ3dと、一端がキャパシタ3dを介して接地され、他端が伝送線路3bの一端に接続される伝送線路3cと、キャパシタ3dと伝送線路3cとの接続点に設けられ、直流バイアス電圧が印加される直流バイアス電圧入力端子3gとをさらに有してもよい。
【0091】
これにより、直流バイアス電圧入力端子3g、キャパシタ3dと伝送線路3cとの接続点、伝送線路3c、伝送線路3b、ショットキーダイオード4aのアノードの経路で直流バイアス電流が流れるので、ショットキーダイオード4aの動作点の位置が調整出来る。従って、受信信号の振幅が、ショットキーダイオード4aのオン電圧より小さい場合においても、ショットキーダイオード4aは、受信信号を整流出来る。
【0092】
また、直流バイアス電圧入力端子3gに直流バイアス電圧を印加することにより、前記接続点に直流バイアス電流を流して、ショットキーダイオード4aの動作点の位置を調整出来る。従って、整合回路3が直流バイアス供給手段を有しており、インダクタ等の直流バイアス供給手段を別途設ける必要が無くなるので、回路面積を大きくすることなく、ショットキーダイオード4aに直流バイアス電流を流して供給することが可能となり、低コスト化に有利である。
【0093】
さらに、直流バイアス供給手段としてインダクタを用いた場合に生じる、ミリ波帯においては前記インダクタそのものの特性が得られず、インダクタを接続することにより受ける損失が大きくなり、受信信号レベルが低下して受信感度が低下するという問題も解消できる。
【0094】
その上、ショットキーダイオード4aの動作点の位置を調整し最適化出来るため、オン電圧の高いショットキーダイオード4aを用いた場合でも低コストで優れた受信感度を実現することが出来る。
【0095】
前記復調回路では、受信信号を増幅するLNA9と、LNA9により増幅された受信信号から所望帯域外の受信信号を減衰させるバンドパスフィルタ10とをさらに備え、バンドパスフィルタ10の出力が、整合回路3の入力に接続されてもよい。
【0096】
これにより、包絡線検波回路4の前段に配置される、LNA等の増幅回路あるいはフィルタ等の機器とショットキーダイオード4aとの不整合が緩和され、包絡線検波回路4の入力における反射を低減し、ショットキーダイオード4aに効率よく変調信号を伝達することが可能となるので、受信感度が向上する。
【0097】
前記復調回路では、整合回路3及び整合回路3’と、包絡線検波回路4及び包絡線検波回路4’とを備え、整合回路3及び整合回路3’に、バンドパスフィルタ10を通過した受信信号を分配する分配手段19をさらに備え、包絡線検波回路4が有するショットキーダイオード4a及び包絡線検波回路4’が有するショットキーダイオード4a’の極性が互いに逆であってもよい。
【0098】
これにより、分配手段19によって分配された信号は、整合回路3及び整合回路3’に入力され、包絡線検波回路4及び包絡線検波回路4’からベースバンド信号が出力される。この時、包絡線検波回路4が有するショットキーダイオード4a及び包絡線検波回路4’が有するショットキーダイオード4a’の極性が異なるため、包絡線検波回路4及び包絡線検波回路4’からの信号は極性が異なる。即ち、差動出力として復調信号を得ることが可能となり、グランドループによるエラーや外部ノイズの低減に有利である。
【0099】
また、包絡線検波回路4及び包絡線検波回路4’のそれぞれの入力部に整合回路3及び整合回路3’を有しているため、簡素な分配回路を用いても不整合による損失を低減出来る。
【0100】
さらに、整合回路3及び整合回路3’がそれぞれ有する直流バイアス電圧入力端子3g及び直流バイアス電圧入力端子3g’にそれぞれ極性の異なる直流バイアス電圧を印加することにより、包絡線検波回路4が有するショットキーダイオード4a及び包絡線検波回路4’が有するショットキーダイオード4a’の動作点の位置が調整出来るので、受信信号の振幅が、包絡線検波回路4が有するショットキーダイオード4a及び包絡線検波回路4’が有するショットキーダイオード4a’のオン電圧より小さい場合においても、包絡線検波回路4が有するショットキーダイオード4a及び包絡線検波回路4’が有するショットキーダイオード4a’は、受信信号を整流出来る。従って、優れた受信特性を実現することが可能となる。
【0101】
前記復調回路では、包絡線検波回路4の出力部に、受信信号を搬送する搬送波信号の波長の1/4の長さである先端開放の伝送線路12を備えてもよい。
【0102】
これにより、前記搬送波信号の成分が前記復調回路の外部に漏れることを低減する。
【0103】
前記復調回路では、包絡線検波回路4の出力部に、前記搬送波信号の波長の1/4の長さである伝送線路11が接続され、伝送線路11の他端に前記搬送波信号の波長の1/4の長さである先端開放の伝送線路12を備えてもよい。
【0104】
これにより、包絡線検波回路4の出力部から前記搬送波信号の波長の1/4の長さだけ離れた位置が先端開放の伝送線路12によって接地となるため、搬送波周波数において包絡線検波回路4の出力部から出力側を見たインピーダンス(以降、出力部から出力側を見たインピーダンスと称する)を高くすることが出来る。
【0105】
従って、前記復調回路の出力にローパスフィルタを設ける場合、前記ローパスフィルタが有するキャパシタのインピーダンスを、その物理的な大きさ、接続長や接地インダクタンスの影響により十分小さくすることができなくても、出力部から出力側を見たインピーダンスは高くなっているため、前記キャパシタのインピーダンスは、出力部から出力側を見たインピーダンスに対して相対的に小さくなる。従って、十分に搬送波信号成分を抑圧することが出来るようになる。
【0106】
このため、復調回路の出力側に別途ローパスフィルタを設ける必要がなくなる。また、設ける場合であっても、フィルタの段数あるいは次数を少なくすることが出来る。
【0107】
前記復調回路では、包絡線検波回路4の出力部、又は、伝送線路11の他端に伝送線路36を設けてもよい。
【0108】
これにより、前記復調回路の出力側に設ける回路との不整合を低減することができ、復調データ誤りの発生を低減出来る。
【0109】
前記復調回路は、半導体基板上に一体形成してもよい。
【0110】
これにより、HEMT(High Electolon Mobility Transistor)等のトランジスタを形成するために最適化されたエピタキシャル構造の半導体基板上に復調回路を一体形成した場合であっても、優れた受信特性を得ることが出来る。
【0111】
本発明の受信装置は、上記いずれかの復調回路と、前記復調回路の出力部に設けられ、増幅後の信号の振幅を一定値に制限する制限増幅器28、又はコンパレータ32とを備えているので、所望の波形を有したデジタルデータ信号を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の復調回路及び受信装置は、受信感度の優れたASK復調回路及び受信装置として用いることが出来るので、マイクロ波・ミリ波帯無線通信システムに好適に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の実施例における復調回路の回路図である。
【図2】搬送波信号の周波数として60.5GHzが採用された、復調回路を備える無線通信システムにおいて、復調回路に入力される受信信号に含まれる搬送波信号成分が復調回路の入力側にどの程度反射されるかを示すスミスチャートである。
【図3】1GHzの正弦波で搬送波周波数60.5GHzのキャリア信号を変調した変調信号を受信し、復調回路への入力変調信号レベルが0dBmであった場合の復調信号を、整合回路がない場合と比較して示した波形図である。
【図4】直流バイアス電圧を変化させたときの復調信号の波形図である。
【図5】図5(a)は、本発明の第2の実施例における復調回路の回路図であり、図5(b)は、包絡線検波回路の出力に他の伝送線路を設けた復調回路の回路図であり、図5(c)は、包絡線検波回路の出力に接続された伝送線路の他端に他の伝送線路を設けた復調回路の回路図である。
【図6】包絡線検波回路の出力側に伝送線路及び先端開放の伝送線路を設けなかった復調回路において、出力端子から出力される信号の、直流成分を除いた電力スペクトルである。
【図7】包絡線検波回路の出力側に伝送線路及び先端開放の伝送線路を設けた復調回路において、出力端子から出力される信号の電力スペクトルである。
【図8】本発明の第3の実施例における復調回路の回路図である。
【図9】本発明の実施の形態における受信装置のブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態における他の受信装置のブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態におけるさらに別の受信装置のブロック図である。
【図12】従来の受信装置の回路図である。
【図13】従来の受信装置が有する包絡線検波回路の回路図である。
【図14】ショットキーダイオードの電圧−電流特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0114】
1、8、18、26 復調回路
2 入力端子
3 整合回路(入力回路)
3a 伝送線路(第1伝送線路)
3b 伝送線路(第2伝送線路)
3c 伝送線路(第3伝送線路)
3d キャパシタ
3e、4c、35a 抵抗
3f、4d、7、27、29、35b キャパシタ
3g 直流バイアス電圧入力端子
4 包絡線検波回路
4a ショットキーダイオード(ダイオード)
4a’ ショットキーダイオード
4b、35 ローパスフィルタ
4e 伝送線路
5、13、30 出力端子
6 インダクタ
9 LNA(増幅回路)
10 バンドパスフィルタ(フィルタ)
11 伝送線路(第4伝送線路)
12 伝送線路(第5伝送線路)
14〜17 インダクタンス成分
19 分配手段
20、22 直流阻止キャパシタ
21 第1復調回路
23 第2復調回路
24、31、34 受信装置
25 受信アンテナ
28 制限増幅器
32 コンパレータ
33 電源
36 伝送線路(第6伝送線路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号の包絡線を検波するために受信信号を整流するダイオードを有する包絡線検波回路と、
包絡線検波回路の入力部に設けられる入力回路とを備え、
前記入力回路は、前記入力回路の入力段に設けられた第1伝送線路及び前記第1伝送線路と前記ダイオードとの間に設けられた第2伝送線路を有することを特徴とする復調回路。
【請求項2】
前記入力回路は、キャパシタと、
一端が前記キャパシタを介して接地され、他端が上記第2伝送線路の一端に接続される第3伝送線路と、
前記キャパシタと前記第3伝送線路との接続点に設けられ、直流バイアス電圧が印加される直流バイアス電圧入力端子とをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の復調回路。
【請求項3】
受信信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路により増幅された受信信号から所望帯域外の受信信号を減衰させるフィルタとをさらに備え、
前記フィルタの出力が、前記入力回路の入力に接続されることを特徴とする請求項2に記載の復調回路。
【請求項4】
前記入力回路と、前記包絡線検波回路とを2組備え、
2組の前記入力回路に、前記フィルタを通過した受信信号を分配する分配手段をさらに備え、
2組の前記包絡線検波回路が有する前記ダイオードの極性が互いに逆であることを特徴とする請求項3に記載の復調回路。
【請求項5】
前記包絡線検波回路の出力部に、受信信号を搬送する搬送波信号の波長の1/4の長さである先端開放の伝送線路を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の復調回路。
【請求項6】
前記包絡線検波回路の出力部に、前記搬送波信号の波長の1/4の長さである第4伝送線路が接続され、前記第4伝送線路の他端に前記搬送波信号の波長の1/4の長さである先端開放の第5伝送線路を備えたことを特徴とする請求項5記載の復調回路。
【請求項7】
前記包絡線検波回路の出力部、又は、前記第4伝送線路の他端に、第6伝送線路を設けたことを特徴とする請求項6記載の復調回路。
【請求項8】
半導体基板上に一体形成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の復調回路。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の復調回路と、
前記復調回路の出力部に設けられ、増幅後の信号の振幅を一定値に制限する制限増幅器、又はコンパレータとを備えたことを特徴とする受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−94739(P2009−94739A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262664(P2007−262664)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度総務省「電波資源拡大のための研究開発」のうち、「ミリ波帯無線装置の低コスト化の小型ワンチップモジュール化技術の研究開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】