説明

循環流動層ガス化炉のライザー頂部構造

【課題】簡略な構造にてライザーから取り出される循環媒体の取出量を増加することによって循環媒体の循環量を増加できるようにする。
【解決手段】ライザー1とサイクロン補集器2との間を接続する横向ダクト15が、ライザー1との接続部にはライザー1の断面積と同等の断面積の導入部16を有し、導入部16とサイクロン補集器2との間には導入部16からサイクロン補集器2に向かい断面積が徐々に減少して燃焼ガスの流速を高める絞り部17を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡略な構造にてライザーから取り出される循環媒体の取出量を増加することによって循環媒体の循環量を増加できるようにした循環流動層ガス化炉のライザー頂部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の循環流動層炉には、ライザー(流動燃焼炉)の燃焼により循環媒体を加熱して吹き上げられた燃焼ガスを横向ダクトにより取り出し、サイクロン捕集装置に導入して循環媒体を捕集し、捕集した循環媒体を貯留部に導いて貯留し、貯留した循環媒体を流動させることにより前記ライザーに循環させるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、貯留部に貯留した循環媒体の流動を調節することにより、ライザーに循環させる循環媒体の流量を調整している。又、特許文献1において、ライザーから取り出して貯留部へ供給する循環媒体の取出量を調整する方法としては、ライザーへ供給する空気量を調節することによってライザー内の空塔速度を調整する方法がある。
【0004】
一方、近年では、ライザーで循環媒体を加熱し、サイクロン捕集装置で捕集した循環媒体を流動層ガス化炉に導入することにより、この循環媒体が保有する熱を用いて原料のガス化反応(吸熱反応)を行わせ、ガス化により温度が低下した循環媒体と、ガス化されない未反応のチャーとを前記ライザーに循環し、ライザーにおいて前記チャーを燃焼させることにより循環媒体を加熱するようにした循環流動層ガス化炉がある(特許文献2参照)。
【0005】
図7、図8は上記循環流動層ガス化炉の一例を示す概略図であり、1は空気12の供給により燃焼を行うライザー、2はライザー1の頂部から横向ダクト3により取り出した燃焼ガス4を導入して該燃焼ガス4中に混入している循環媒体5を捕集し排ガス6を排出するサイクロン補集器、7はサイクロン補集器2で捕集した循環媒体5と石炭等の原料8を導入すると共に水蒸気或いは空気等のガス化剤9を供給して前記循環媒体5の熱を用いて原料8のガス化を行ってガス化ガス10を生成する流動層ガス化炉、11は流動層ガス化炉7の循環媒体とガス化されない未反応のチャーを前記ライザー1に戻す循環流路であり、循環流路11により供給される前記チャーをライザー1で燃焼させることにより循環媒体を加熱するようにしている。図7中、13は補助燃料である。
【0006】
図7、図8の循環流動層ガス化炉においては、流動層ガス化炉7でのガス化反応に必要な大量の熱をライザー1によって供給する必要があり、このためには、ライザー1から流動層ガス化炉7へ供給される循環媒体5の供給量、即ち、ライザー1から取り出される循環媒体5の取出量を増加させて、ライザー1と流動層ガス化炉7における熱収支をバランスさせることで、ガス化を可能にする必要がある。
【0007】
このために、図7、図8に示す装置においても、前記特許文献1と同様に、ライザー1に供給する空気12の供給量を増加することによってライザー1内の空塔速度を高めることにより、ライザー1から流動層ガス化炉7へ供給される循環媒体5の供給量を増加することが考えられる。
【0008】
しかし、ライザー1内では、チャーを燃焼させるために一定の反応時間が必要であるため、単に空気量を増加してライザー1内の空塔速度を高めた場合には燃焼性が悪化し、循環媒体を十分に加熱できない場合が生じる。このため、ライザー1においては燃焼性が確保される最大の空塔速度になるように空気12の供給量を調整しているが、このようにライザー1の空塔速度を最大に保持しても、ライザー1から流動層ガス化炉7に供給される循環媒体5の供給量を増加させることには限界があった。即ち、図7、図8に示すように、ライザー1とサイクロン補集器2を繋ぐ横向ダクト3は、燃焼ガス4の流速を高めて接線方向からサイクロン補集器2に供給することにより循環媒体5の分離を行うために断面積を小さくする必要があり、このために、横向ダクト3はライザー1に対して小さい断面積となっている。従って、ライザー1内を上端部まで吹き上げられた循環媒体は横向ダクト3に向い難くなり、ライザー1内を落下してしまったり、或いはライザー1の天井壁に衝突して落下する現象が生じ、このために、ライザー1から流動層ガス化炉7への循環媒体5の循環量を増加することができなかった。このように、ライザー1から流動層ガス化炉7への循環媒体5の循環量を増加できないと、流動層ガス化炉7においてガス化に必要な熱が不足するため、ライザー1に補助燃料13を供給して循環媒体の加熱温度を高めたり、或いはライザー1を大型化して、循環媒体の全体量を増やすことにより循環媒体5の循環量を増加する必要があり、よって運転費の増加、或いは設備費の増加を招くという問題がある。
【0009】
このような問題に対処するようにした装置としては、ライザーの上部に少なくとも1つの径を細くした中間円筒部を設けることによりライザーの燃焼ガスの流速を高めて、サイクロン補集器に排出する循環媒体の排出量を増加させるようにしたものがある(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−132621号公報
【特許文献2】特開2005−041959号公報
【特許文献3】特開2002−265960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3に示す装置においては、ライザーの径を複数段に絞る構造としているために、ライザーの構造が複雑になり、ライザーは内面に耐火物を備えた構造を有しているために、複雑な構造に耐火物を備えたライザーの建設は非常に大変になってコストが増大するという問題がある。また、前記したようにライザーの径を複数段に絞って流速を高めた場合は、高温の循環媒体を含んだ燃焼ガスが中間円筒部や更にその上部の小径部内を高速で流動するためにライザーの耐火物の摩耗速度が増加するという問題がある。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、簡略な構造にてライザーから取り出される循環媒体の取出量を増加することによって循環媒体の循環量を増加できるようにした循環流動層ガス化炉のライザー頂部構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下方から供給される空気により燃焼して循環媒体を加熱するライザーと、ライザーの頂部から横向ダクトにより取り出した燃焼ガスを導入して該燃焼ガス中に混入している循環媒体を捕集するサイクロン補集器と、サイクロン補集器で捕集した循環媒体と原料を導入すると共にガス化剤を供給して前記循環媒体の熱により原料のガス化を行ってガス化ガスを生成する流動層ガス化炉と、流動層ガス化炉の循環媒体とガス化されない未反応のチャーを前記ライザーに戻す循環流路と、を有する循環流動層ガス化炉のライザー頂部構造であって、前記横向ダクトが、ライザーとの接続部にはライザーの断面積と同等の断面積の導入部を有し、該導入部とサイクロン補集器との間には前記導入部からサイクロン補集器に向かい断面積が徐々に減少して燃焼ガスの流速を高める絞り部を有することを特徴とする循環流動層ガス化炉のライザー頂部構造、に係るものである。
【0013】
上記循環流動層ガス化炉のライザー頂部構造において、ライザーの上端に導入部に接続する湾曲部を形成していることは好ましい。
【0014】
また、上記循環流動層ガス化炉のライザー頂部構造において、ライザーの上端における導入部の接続側に対して反対側の位置に、斜め45゜で切り欠いて閉塞した傾斜壁を有することは好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の循環流動層ガス化炉のライザー頂部構造によれば、ライザー頂部とサイクロン補集器を繋ぐ横向ダクトが、ライザー部との接続部にはライザー部の断面積と同等の断面積の導入部を有し、該導入部とサイクロン補集器との間には前記導入部からサイクロン補集器に向かい断面積を徐々に減少させて燃焼ガスの流速を高めた絞り部を有するので、ライザーの上端部まで吹き上げられた循環媒体は、横向ダクトにおけるライザーと同等の断面積を有する導入部にスムーズに導かれるようになるため、一旦導入部に導かれた循環媒体はライザーに落下することはなくサイクロン補集器を介して流動層ガス化炉に供給されるため、循環媒体の循環量を大幅に増加できる効果がある。又、導入部に導かれた燃焼ガスは絞り部によって流速が高められるので、サイクロン補集器での循環媒体の補集は良好に行われる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、前記図7、図8に示した循環流動層ガス化炉のライザー頂部に適用した本発明の形態の一例を示す正面図、図2は図1をII−II方向から見た平面図であり、図1、図2中、図7、図8と同じ符号を付した部分は同一物を表わしている。図1、図2に示すように、円筒状を有するライザー1の上端に、ライザー1と同じ断面積を有してサイクロン補集器2側に向くように横方向へ曲げられた湾曲部14を形成し、該湾曲部14の端部とサイクロン補集器2との間を段面形状が変化した横向ダクト15により接続している。
【0018】
前記横向ダクト15は、前記湾曲部14の断面積と同等の断面積の矩形形状を有して前記湾曲部14の端部に接続される導入部16と、該導入部16からサイクロン補集器2に向かい断面積が徐々に減少してサイクロン補集器2に接続される矩形形状の絞り部17とを有している。
【0019】
前記湾曲部14の端部に接続される導入部16の接続部には、断面が円筒の湾曲部14から矩形形状の導入部16に形状が徐々に変化する形状変化部18を有している。
【0020】
図1、図2に示す形態では以下のように作用する。
【0021】
ライザー1内を所要の空塔速度で吹き上げられる循環媒体を含む燃焼ガス4は、ライザー1と同じ断面積を有して曲げられた湾曲部14に沿ってサイクロン補集器2の方向に導かれ、横向ダクト15におけるライザー1と同等の断面積を有する導入部16に導入され、更に絞り部17により流路断面積が絞られて流速が高められ、続いてサイクロン補集器2に導かれて循環媒体5と排ガス6とに分離される。
【0022】
この時、前記ライザー1内を上昇してくる循環媒体5を含有する燃焼ガス4は、湾曲部14に沿ってライザー1と同等の断面積を有している導入部16にスムーズに導かれるようになり、しかも一旦導入部16に導かれた循環媒体はライザー1に落下することなくサイクロン補集器2に導入されて捕集されるので、ライザー1からサイクロン補集器2に取り出される循環媒体の取出量を従来に比して大幅に増加することができ、よってライザー1から流動層ガス化炉7(図7参照)へ循環される循環媒体5の循環量を大幅に増加することができる。
【0023】
又、導入部16に導かれた燃焼ガス4は絞り部17によって流速が高められてサイクロン補集器2に導入されるため、サイクロン補集器2では循環媒体5の補集を良好に行うことができる。
【0024】
図3は、本発明の形態の他の例を示す正面図、図4は図3をIV−IV方向から見た平面図である。図3、図4では、ライザー1の上端における前記サイクロン補集器2側と反対側の位置には、斜め約45゜で切り欠いて楕円形の傾斜壁19で閉塞した形状としている。そして、前記と同様の横向ダクト15におけるライザー1の断面積と同等の断面積を有する導入部16は、ライザー1上端部のサイクロン補集器2側に接続され、絞り部17の端部はサイクロン補集器2に接続される。この時、前記傾斜壁19によってライザー1の上端部と導入部16との接続部の断面積が小さくなることがないように、導入部16の下側には前記傾斜壁19と略平行に傾斜した傾斜接続部20を設けてライザー1に接続している。これによって、ライザー1と、ライザー1と導入部16との接続部と、導入部16とは同等の断面積となっている。
【0025】
図3、図4の形態においては、ライザー1内を上昇してくる循環媒体5を含有する燃焼ガス4は、傾斜壁19を有しているライザー1と導入部16との接続部を通して導入部16にスムーズに導かれるようになり、しかも一旦導入部16に導かれた循環媒体はライザー1に落下することなくサイクロン補集器2に導入されて捕集されるので、前記形態と同様に、ライザー1からサイクロン補集器2に取り出される循環媒体の取出量を従来に比して大幅に増加することができ、よってライザー1から流動層ガス化炉7(図7参照)へ循環させる循環媒体5の循環量を大幅に増加することができる。又、図3、図4の形態では、ライザー1は上端を斜めに切り欠いて傾斜壁19を形成するのみであるため、ライザー1の形状の変更は小さくて済む効果がある。
【0026】
図5は、本発明の形態の更に他の例を示す正面図、図6は図5をVI−VI方向から見た平面図である。図5、図6では、ライザー1の上端の側部に前記と同様の横向ダクト15の導入部16を接続し、又、絞り部17の端部はサイクロン補集器2に接続している。この時、ライザー1の上端部は前記横向ダクト15の接続部よりも上部に突出した図7、図8に示す従来と同様の形状を有している。
【0027】
図5、図6の形態においては、ライザー1内を上昇してくる循環媒体5を含有する燃焼ガス4は、ライザー1と同等の断面積を有する導入部16に導入され易くなり、一旦導入部16に導かれた循環媒体はライザー1に落下することなくサイクロン補集器2に導入されて捕集されるので、前記形態と同様に、ライザー1からサイクロン補集器2に取り出される循環媒体の取出量を従来に比して増加することができ、よってライザー1から流動層ガス化炉7(図7参照)へ循環させる循環媒体5の循環量を増大することができる。この時、ライザー1内を吹き上げられる燃焼ガス4中の循環媒体の一部は、ライザー1の天井部に衝突して落下するようになるが、前記したように導入部16への導入が高められることによって、従来と比較するとライザー1からサイクロン補集器2へ取り出される循環媒体の取出量は大幅に増加するようになる。更に、図5、図6の形態では、ライザー1の上端部の形状は殆ど変更する必要がないため、ライザー1を安価に製造することができる。
【0028】
なお、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、種々の形式の循環流動層ガス化炉に適用できること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す正面図である。
【図2】図1をII−II方向から見た平面図である。
【図3】本発明を実施する形態の他の例を示す正面図である。
【図4】図3をIV−IV方向から見た平面図である。
【図5】本発明を実施する形態の更に他の例を示す正面図である。
【図6】図5をVI−VI方向から見た平面図である。
【図7】従来の循環流動層ガス化炉の一例を示す概略正面図である。
【図8】図7をVIII−VIII方向から見た平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ライザー
2 サイクロン補集器
4 燃焼ガス
5 循環媒体
7 流動層ガス化炉
8 原料
9 ガス化剤
10 ガス化ガス
11 循環流路
12 空気
14 湾曲部
15 横向ダクト
16 導入部
17 絞り部
19 傾斜壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方から供給される空気により燃焼して循環媒体を加熱するライザーと、ライザーの頂部から横向ダクトにより取り出された燃焼ガスを導入して該燃焼ガス中に混入している循環媒体を捕集するサイクロン補集器と、サイクロン補集器で捕集した循環媒体と原料を導入すると共にガス化剤を供給して前記循環媒体の熱により原料のガス化を行ってガス化ガスを生成する流動層ガス化炉と、流動層ガス化炉の循環媒体とガス化されない未反応のチャーを前記ライザーに戻す循環流路と、を有する循環流動層ガス化炉のライザー頂部構造であって、前記横向ダクトが、ライザーとの接続部にはライザーの断面積と同等の断面積の導入部を有し、該導入部とサイクロン補集器との間には前記導入部からサイクロン補集器に向かい断面積が徐々に減少して燃焼ガスの流速を高める絞り部を有することを特徴とする循環流動層ガス化炉のライザー頂部構造。
【請求項2】
ライザーの上端に導入部に接続する湾曲部を形成している請求項1に記載の循環流動層ガス化炉のライザー頂部構造。
【請求項3】
ライザーの上端における導入部の接続側に対して反対側の位置に、斜め45゜で切り欠いて閉塞した傾斜壁を有する請求項1に記載の循環流動層ガス化炉のライザー頂部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−1418(P2010−1418A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162825(P2008−162825)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】