説明

循環部品及びその製造方法並びに転がり運動案内装置

【課題】方向転換路の外周案内部と内周案内部とを一体化させた循環部品及びその製造方法並びに転がり運動案内装置を提供する。
【解決手段】方向転換路40は、2つの接続口40a、40bを連通するように1つの成形体である循環部品本体351の内部を湾曲して延びる貫通穴によって構成され、循環部品本体351の取付け側端面35Bには2つの接続口40a、40bを結ぶスリット45が設けられ、このスリット45によって、取付け側端面35Bから方向転換路40の内周案内部40iに至るまでの領域が切断されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無限循環型の転がり運動案内装置の移動ブロックに設けられる転動体を循環させるための循環部品及びその製造方法並びに循環部品を用いた転がり運動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の転がり運動案内装置は、たとえば、特許文献1に記載のようなものが知られている。すなわち、この転がり運動案内装置は、軌道レールと、軌道レールに対して転動体を介して移動自在に組み付けられる移動ブロックと、を備えている。移動ブロックは、軌道レールに設けられた転動体転走面に対応して形成された転動体転走面と、この転動体転走面と所定の間隔を隔てて並行に設けられる戻し通路と、を有するブロック本体と、ブロック本体の移動方向端面に取り付けられる循環部品とから構成されている。
【0003】
循環部品には、軌道レールの転動体転走面とブロック本体の転動体転走面によって構成される負荷転動体転走路の端部と戻し通路の端部とを連通する円弧状に湾曲する方向転換路が設けられている。
従来の循環部品は、方向転換路の外周案内部が形成されたエンドプレートと、エンドプレートとは別体構成で方向転換路の内周案内部が形成されたアールピースとを備え、エンドプレートとアールピースとを組み合わせて方向転換路を構成するようになっていた。
【0004】
しかし、循環部品として、エンドプレートとアールピースの2種類の部品が必要で、製造工数が多く、組み立て時にもこれらの2種類の部品をブロック本体に組み合せる作業が必要となり、作業性も悪かった。
特に、転動体の径が小さい小型型番の転がり案内装置では、エンドプレート及びアールピースがきわめて小さくなり、成形時の寸法管理及び組み立て時の作業性が困難となる。
【0005】
そこで、小型型番の場合には、従来からエンドプレートと同程度の大きさのプレートにアールピース部を形成したターンプレートと呼ばれる部品が用いられ、ターンプレートをエンドプレートに組み付ける構成が採用されているが、プレートの厚み分だけ移動ブロックと軌道レール間の負荷域を出た転動体が方向転換路に至るまでの間で転動体が遊び、方向転換路に進入する際にガタついて循環に悪影響がある。
さらに、エンドプレートとターンプレートの組み合わせ面には、それぞれの成形寸法誤差から発生する隙間を持っており、ねじ締結時にその隙間を無くすように変形をすることで、アールピース部の位置が変化し、転がり運動案内装置の滑動性の悪化にもつながるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−171722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、方向転換路の内周案内部と外周案内部とを一体的に成形可能な循環部品及びその製造方法並びに転がり運動案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、軌道レールに設けられた転動体転走面に対応し
て形成された転動体転走面と、該転動体転走面と所定の間隔を隔てて並行に設けられる戻し通路と、を有するブロック本体の移動方向端面に取り付けられる構成で、前記軌道レールの転動体転走面とブロック本体の転動体転走面によって構成される負荷転動体転走路の端部と戻し通路の端部とを連通する方向転換路が設けられた循環部品において、
前記ブロック本体の移動方向端面に取付けられる1つの成形体によって構成される循環部品本体を有し、
該循環部品本体の前記ブロック本体との取付け側端面には前記戻し通路及び負荷転動体転走路と接続される方向転換路の2つの接続口が設けられ、
前記方向転換路は、前記2つの接続口を連通するように循環部品本体の内部を湾曲して延びる貫通穴によって構成され、
前記循環部品本体の前記取付け側端面には2つの接続口を結ぶスリットが設けられ、該スリットによって、前記取付け側端面から前記方向転換路の内周案内部に至るまでの領域が切断されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の循環部品の成形方法は、軌道レールに設けられた転動体転走面に対応して形成された転動体転走面と、該転動体転走面と所定の間隔を隔てて並行に設けられる戻し通路と、を有するブロック本体の移動方向端面に取り付けられる構成で、前記軌道レールの転動体転走面とブロック本体の転動体転走面によって構成される負荷転動体転走路の端部と戻し通路の端部とを連通する方向転換路が設けられた循環部品であって、
前記ブロック本体の移動方向端面に取付けられる1つの成形体によって構成される循環部品本体を有し、
該循環部品本体の前記ブロック本体との取付け側端面には前記戻し通路及び負荷転動体転走路と接続される方向転換路の2つの接続口が設けられ、
前記方向転換路は、前記2つの接続口を連通するように循環部品本体の内部を湾曲して延びる貫通穴によって構成され、
前記循環部品本体の前記取付け側端面には2つの接続口を結ぶスリットが設けられ、該スリットによって、前記取付け側端面から前記方向転換路の内周案内部に至るまでの領域が切断されている循環部品の成形方法において、
前記循環部品の外周形状を成形するためのキャビティを備えた開閉可能の金型と、該金型のキャビティ内に挿入され前記方向転換路を成形するための中子とを備え、
前記中子は、方向転換路に対応する中子本体部と、該中子本体部の内周側から延びる前記スリットに対応する板状部と、を備えた構成で、
前記金型を型締めして成形材料を充填硬化させた後に、中子が付いた状態で循環部品の成形体を離型し、
離型した成形体からスリットを通じて中子を無理抜きすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の無限循環転がり運動案内装置は、軌道レールと、軌道レールに対して転動体を介して移動自在に組み付けられる移動ブロックと、を備え、
移動ブロックは、軌道レールに設けられた転動体転走面に対応して形成された転動体転走面と、該転動体転走面と所定の間隔を隔てて並行に設けられる戻し通路と、を有するブロック本体と、該ブロック本体の端面に取り付けられ前記軌道レールの転動体転走面とブロック本体の転動体転走面によって構成される負荷転動体転走路の端部と戻し通路の端部とを連通する方向転換路が設けられた循環部品とを備えた転がり運動案内装置において、
前記循環部品は、
前記ブロック本体の移動方向端面に取付けられる1つの成形体によって構成される循環部品本体を有し、
該循環部品本体の前記ブロック本体との取付け側端面には前記戻し通路及び負荷転動体転走路と接続される方向転換路の2つの接続口が設けられ、
前記方向転換路は、前記2つの接続口を連通するように循環部品本体の内部を湾曲して延びる貫通穴によって構成され、
前記循環部品本体の前記取付け側端面には2つの接続口を結ぶスリットが設けられ、該スリットによって、前記取付け側端面から前記方向転換路の内周案内部に至るまでの領域が切断されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1つの部品である循環部品本体に貫通孔として方向転換路を形成するので、部品点数を削減することができ、循環部品の製造工数、組み立て工数を削減することができる。
また、従来のように方向転換路の外周案内部側と内周案内部側の2部品を組み合わせる場合の組付け誤差や変形が無いので、方向転換路を正確な形状に成形でき、円滑な方向転換が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る転がり運動案内装置の循環部品を示すもので、(A)は表側から見た概略斜視図、(B)は裏側から見た概略斜視図、(C)は裏面図、(D)は(C)のD−D線断面図、(E)は(C)のE−E線断面図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態に係る転がり運動案内装置の全体構成を示すもので、(A)は正面図、(B)は(A)の循環部品を一部破断して示す図、(C)は(A)の一部破断平面図、(D)は循環部品のボルト固定部の部分断面図、(E)は(C)のE−E線断面図、(F)は循環部品の取付け側端面の部分斜視図である。
【図3】図3は図1の循環部品の成形用金型を示すもので、(A)は固定金型の概略斜視図、(B)は第1入れ子の概略斜視図、(C)は第2入れ子の概略斜視図、(D)は第2入れ子の中子の斜視図、(E)は中子の平面図、(F)は中子の断面図、(G)は中子の側面図、(H)は成形用金型を組み合せた状態を示す概略斜視図、(I)は型締時の第1入れ子と中子の係合状態を示す斜視図である。
【図4】図4は図3の成形用金型を用いた成形品の離型手順を示すもので、(A)は型締状態の斜視図、(B)は固定金型から第1入れ子を離型した状態を示す斜視図、(C)は固定金型から第2入れ子を離型した状態を示す斜視図、(D)は第2入れ子から成形品を離型した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は図4の成形品離型手順を中子部分を断面にして示すもので、(A)は型締状態の図、(B)は固定金型から第1入れ子を離型した状態を示す図、(C)は固定金型から第2入れ子を離型した状態を示す図、(D)は第2入れ子から成形品を離型する途中状態を示す図、(E)は離型した成形品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図2は本発明の実施の形態に係る転がり運動案内装置を示す図で、(A)は正面図、(B)は(A)の循環部品を一部破断して示す図、(C)は(A)の一部破断平面図、(D)は循環部品のボルト固定部の部分断面図、(E)は(C)のE−E線断面図、(F)は循環部品の取付け側端面の部分斜視図である。
この転がり運動案内装置1は、軌道レール10と、この軌道レール10に対して転動体としてのボール20を介して移動自在に組み付けられる移動ブロック30と、を備えている。
【0014】
軌道レール10は断面矩形状の長尺体で、軌道レール10の左右側面には、その長手方向に沿って転動体転走面としてのボール転走溝10aが左右側面に1条ずつ、計2条形成されている。
移動ブロック30は、ブロック本体31と、ブロック本体31の移動方向両端面31Aに取り付けられる2つの循環部品35、35とを備えた構成となっている。
【0015】
ブロック本体31は、軌道レール10を跨ぐように取り付けられる断面コ字形状の部材で、軌道レール10の左右側面と対向する一対の脚部32,32と、一対の脚部32,32を連結する連結部33とを備えている。この脚部32,32の軌道レール10との対向面に、軌道レール10に形成されたボール転走溝10aに対向するボール転走溝32aと、これに平行なボールの戻し路32bが形成されている。
軌道レール10のボール転走溝10aとブロック本体31のボール転走溝32aとの間に多数のボール20が転動自在に介装され、負荷ボール転走路32cとして構成される。
【0016】
ボール20は、移動ブロック30の移動に伴い、負荷ボール転走路32cの一端から、一方の循環部品35に形成された方向転換路40を通って戻し路32bに入り、戻し路32bから他方の循環部品35に形成された方向転換路40を通って負荷ボール転走路32cの他端に戻り、無限循環するようになっている。
【0017】
(循環部品35の構成)
図1には、循環部品35の構成を詳細に示している。(A)は表側から見た概略斜視図、(B)は裏側から見た概略斜視図、(C)は裏面図、(D)は(C)のD−D線断面図、(E)は(C)のE−E線断面図である。
循環部品35は、ブロック本体31の移動方向端面31Aに取付けられる1つの成形体によって構成される循環部品本体351を有している。この実施の形態では、循環部品35は、1つの循環部品本体351のみから構成されている。
循環部品35も、ブロック本体31の断面形状に倣った断面コ字形状の部材で、左右一対の脚部36、36と、脚部36,36を連結する連結部37とを備えており、脚部36、36に、それぞれ方向転換路40、40が設けられている。そして、脚部36,36の内側面には、軌道レール10のボール転走溝10aに非接触で嵌り込む凸条36aが突設されている。凸条36aはボール転走溝10aよりも若干小径の円弧形状となっている。
循環部品本体351のブロック本体31との取付け側端面35Bには、戻し通路32bに接続される接続口40b及び負荷転動体転走路32cと接続される接続口40aが設けられている。方向転換路40は、これら2つの接続口40a、40bを連通するように循環部品本体351の内部を湾曲して延びる貫通穴によって構成されている。そして、循環部品本体351の取付け側端面35Bには2つの接続口40a、40bを結ぶスリット45が設けられ、このスリット45によって、取付け側端面35Bから方向転換路40の内周案内部40iに至るまでの領域が切断されている。
【0018】
方向転換路40は、ボール径より若干大径の円を、仮想の回転軸を中心に半周だけ旋回させた円の軌跡によって描かれる半ドーナツ形状である。方向転換路40の円形断面の中心を結ぶ半円状の中心曲線40Nが通る平面を方向転換路中心面40Pとすると、スリット45は、この方向転換路中心面40Pと平行に延びる構成で、スリット45を隔てて半月状の切断面45a、45bが対向する構成となっている。
【0019】
この例では、スリット45の方向転換路中心面40Pに対して直交方向の中心が、方向転換路中心面40Pと一致するように構成されている。
このスリット45の間隔は、少なくともボール径よりも小さく、ボール20がスリット46内にはまりこまないようになっている。そして、循環部品35は弾力性を有するポリエステルエラストマー等の軟質材によって構成され、スリット45の幅を拡大する方向に弾性変形可能となっている。軟質材としては、ポリエステルエラストマの他に、エーテル系ウレタン等が適用可能である。
このように弾力性を有する素材を用いれば、ボールが移動する際のボールガタつきを緩衝する作用がある。
スリット45の間隔は、スリット45がボール径の大きさまで開くことが可能であれば、ゼロであってもよい。スリット45の間隔は、好適には、ボール径の75%以下、より
好適には50%以下であればよい。
【0020】
なお、この例では、スリット45の切断面45a、45bは平行で、全面にわたって均一な間隔であるが、たとえば、テーパ形状となっていてもよいし、段付き形状であってもよいし、均一な間隔でなくてもよい。
また、スリット45の形成位置は、方向転換路40の方向転換路中心面40Pと直交方向の路幅の範囲内であれば、スリット45の中心が方向転換路中心平面40Pに対して直交方向に所定量ずれていてもよい。
【0021】
この循環部品35は、一対の固定ボルト38によって、ブロック本体31の移動方向端面31Aに締め付け固定されるもので、固定ボルト38が挿通されるボルト挿通孔39が設けられている。この例では、ボルト挿通孔39は、循環部品35の左右の脚部36,36の付け根位置に設けられている。一方、ブロック本体31の移動方向端面31Aには、固定ボルト38がねじ込まれるねじ穴34が設けられている。このねじ穴34の開口縁部には段凹部34aが設けられ、循環部品35のボルト挿通孔39の取付け端面35B側の開口縁には、上記段凹部34aに嵌合する段凸部39aが設けられ、ブロック本体31に対する循環部品35の位置決めがなされている。
【0022】
次に、上記無限循環転がり案内装置の循環部品の製造方法について説明する。
図3は、この循環部品35を成形するための金型構成を示している。
すなわち、循環部品35の基本的な形状を成形するためのキャビティ用凹部112を備えた固定金型110と、循環部品35のコ字形の内周形状を成形するための第1入れ子120と、循環部品35の方向転換路40を成形するための中子140が設けられた第2入れ子130とから構成されている。
これらの金型構造については、基本的な構造のみで、図1に記載の、循環部品35に形成されているボルト挿通孔39の段凸部39aについては、省略されている。
【0023】
固定金型110は、図3(A)に示すように、金型プレート111の片面に循環部品35の外周形状を形成するための直方体形状のキャビティ用凹部112が形成されている。このキャビティ用凹部112は、循環部品35の反取付け側の表側端面を形成するための凹部底面113と、上側面を形成するための凹部上面114と、左右側面を形成するための凹部側面115,115と、脚部32の左右下面を成形するための凹部下面116と、を備えている。また、凹部底面113には、ボルト挿通孔39を形成するための軸部117,117が突設されている。
凹部底面113には、第1入れ子120が嵌合される第1入れ子嵌合孔118が形成されている。この第1入れ子嵌合孔118は、第1入れ子120の断面形状に倣った形状となっている。
【0024】
第1入れ子120は、図3(B)に示すように、断面コ字形状の循環部品35のコ字形の内周面に倣った断面矩形状の直線状に延びるレール状の部材で、左右側面に、方向転換路40のコ字形状の内周側面に形成された凸条36aを形成するための直線状に延びる凹条121が形成されている。この第1入れ子120の一端部が、固定金型110の凹部底面113に形成された第1入れ子嵌合孔118に嵌合され、他端部がキャビティ用凹部112内に突出して、循環部品35の内周形状を成形するようになっている。
【0025】
第2入れ子130は、図3(C)に示すように、固定金型110のキャビティ形成用凹部112の開口部を開閉するように組み付けられるプレート状の金型で、キャビティ形成用凹部112の開口部に臨むプレート面131によって、循環部品35の取付け側端面35Bを形成するようになっている。
このプレート面131に、キャビティ形成用凹部112内に挿入され方向転換路40と
スリット45を成形するための中子140が取り付けられている。
【0026】
中子140は、図3(D)〜(G)に示すように、方向転換路40に対応する円弧状に湾曲した中子本体部141と、中子本体部141の内周側から延びる前記スリット45に対応する半月状の平板部142と、を備えた構成となっている。中子本体部141は、方向転換路40と同様に円弧状に湾曲した半ドーナッツ形状で、方向転換路40の断面形状と同じ形断面円形状となっている。
【0027】
中子本体部141の外周面は、負荷ボール転走路32cとの接続部において、切欠き40cに対応する直線状の切欠き形成部143となっている。この切欠き形成部143は、第1入れ子120の凹条121に対応する円筒面の一部を構成する円弧面となっている。
平板部142は、中子本体部141の断面中心を結ぶ半円を通る面に沿って設けられたもので、半円状の中子本体部141の内周面と、中子本体部141の両端を結ぶ線によって囲まれる半月形状となっている。
【0028】
図3(H)は、固定金型110に第1入れ子120が挿入され、固定金型110のキャビティ形成用凹部112を開閉するように第2入れ子130が対向配置させた状態を示している。この状態から第2入れ子130を固定金型110に組み付けて型締めし、インジェクション成形によって溶融された成形材料が充填されて型成形される。
【0029】
図3(I)は、第2入れ子130を固定金型110に組み付けた際の、中子140と第1入れ子120との嵌合状態を示している。中子140の中子本体部141の一端部の外周面に形成された切欠き形成部143が、第1入れ子120の側面の凹条121に密接し、成形材料の進入を防止するようになっている。
【0030】
次に、上記金型によって成形された成形品の離型手順を、図4、図5を参照して説明する。図5(A)乃至(D)は、図4(A)乃至(D)を中子部分の概略縦断面図である。
図4(A)および図5(A)には、固定金型110、第1入れ子120及び第2入れ子130を型締めした状態を示している。型締めした金型のキャビティ内に、射出成型により溶融した成形材料Mが不図示のゲートからキャビティ内に充填される。
成形材料が硬化した段階で、図4(B)、図5(B)に示すように、固定金型110から第1入れ子120が抜き取られる(図4(B)、図5(B)参照)。
【0031】
次いで、固定金型110と第2入れ子130が型開きされ、成形体としての循環部品35が第2入れ子130ごと離型される(図4(C)、図5(C)参照)。
最後に、第2入れ子130から循環部品35を離型する(図4(D)、図5(D)参照)。
【0032】
この抜き取り作業は、循環部品35のスリット45を中子本体141で押し広げながら無理抜きする(図5(D)参照)。
無理抜きは循環部品35の弾性変形の範囲内で行われ、無理抜きした後は、図5(E)に示すように、変形部分が弾性復帰する。この実施の形態では、弾力性を有する軟質材によって構成されているので、スムースに抜き取ることができ、永久歪みは残らない。
【0033】
なお、上記実施の形態では、軌道レール10の左右側面を挟むように配置される左右一対のボール列を備えた構成となっているが、軌道レール10及び移動ブロック30の断面形状、無限循環路の条数及び形態は任意であり、適宜変更され得る。
また、上記実施例では転動体としてはボールを使用しているが、ボールに限定されず、ローラ等各種転動体が適用可能である。
さらに、上記実施の形態では直線運動を案内する転がり運動案内機構について説明した
が、直線運動に限定されず曲線状でもよい。
また、この実施の形態では、多数のボールが互いに独立した構成でボール循環路に収納される構成となっているが、ボール同士がボール保持部によって保持される構成となっていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 転がり運動案内装置、10 軌道レール、20 ボール(転動体)、30 移動ブロック、10a ボール転走溝、31 ブロック本体、31A 移動方向端面、32a 負荷ボール転走溝、32b 戻し路、32c 負荷ボール転走路、35 循環部品、351
循環部品本体(成形体)、35B 取付け側端面、40 方向転換路、40a 接続口(負荷転動体転走路側)、40b 接続口(戻り通路側)、40i 内周案内部、45 スリット、45a、45b 切断面、110 固定金型、120 第1入れ子、130 第2入れ子、140 中子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道レールに設けられた転動体転走面に対応して形成された転動体転走面と、該転動体転走面と所定の間隔を隔てて並行に設けられる戻し通路と、を有するブロック本体の移動方向端面に取り付けられる構成で、前記軌道レールの転動体転走面とブロック本体の転動体転走面によって構成される負荷転動体転走路の端部と戻し通路の端部とを連通する方向転換路が設けられた循環部品において、
前記ブロック本体の移動方向端面に取付けられる1つの成形体によって構成される循環部品本体を有し、
該循環部品本体の前記ブロック本体との取付け側端面には前記戻し通路及び負荷転動体転走路と接続される方向転換路の2つの接続口が設けられ、
前記方向転換路は、前記2つの接続口を連通するように循環部品本体の内部を湾曲して延びる貫通穴によって構成され、
前記循環部品本体の前記取付け側端面には2つの接続口を結ぶスリットが設けられ、該スリットによって、前記取付け側端面から前記方向転換路の内周案内部に至るまでの領域が切断されていることを特徴とする循環部品。
【請求項2】
循環部品は、スリットの幅を拡大する方向に弾性変形可能な弾力性を有することを特徴とする請求項1に記載の循環部品。
【請求項3】
軌道レールに設けられた転動体転走面に対応して形成された転動体転走面と、該転動体転走面と所定の間隔を隔てて並行に設けられる戻し通路と、を有するブロック本体の移動方向端面に取り付けられる構成で、前記軌道レールの転動体転走面とブロック本体の転動体転走面によって構成される負荷転動体転走路の端部と戻し通路の端部とを連通する方向転換路が設けられた循環部品であって、
前記ブロック本体の移動方向端面に取付けられる1つの成形体によって構成される循環部品本体を有し、
該循環部品本体の前記ブロック本体との取付け側端面には前記戻し通路及び負荷転動体転走路と接続される方向転換路の2つの接続口が設けられ、
前記方向転換路は、前記2つの接続口を連通するように循環部品本体の内部を湾曲して延びる貫通穴によって構成され、
前記循環部品本体の前記取付け側端面には2つの接続口を結ぶスリットが設けられ、該スリットによって、前記取付け側端面から前記方向転換路の内周案内部に至るまでの領域が切断されている循環部品の成形方法において、
前記循環部品の外周形状を成形するためのキャビティを備えた開閉可能の金型と、該金型のキャビティ内に挿入され前記方向転換路を成形するための中子とを備え、
前記中子は、方向転換路に対応する中子本体部と、該中子本体部の内周側から延びる前記スリットに対応する板状部と、を備えた構成で、
前記金型を型締めして成形材料を充填硬化させた後に、中子が付いた状態で循環部品の成形体を離型し、
離型した成形体からスリットを通じて中子を無理抜きすることを特徴とする循環部品の成形方法。
【請求項4】
軌道レールと、軌道レールに対して転動体を介して移動自在に組み付けられる移動ブロックと、を備え、
移動ブロックは、軌道レールに設けられた転動体転走面に対応して形成された転動体転走面と、該転動体転走面と所定の間隔を隔てて並行に設けられる戻し通路と、を有するブロック本体と、該ブロック本体の端面に取り付けられ前記軌道レールの転動体転走面とブロック本体の転動体転走面によって構成される負荷転動体転走路の端部と戻し通路の端部とを連通する方向転換路が設けられた循環部品とを備えた転がり運動案内装置において、
前記循環部品は、前記ブロック本体の移動方向端面に取付けられる1つの成形体によって構成される循環部品本体を有し、
該循環部品本体の前記ブロック本体との取付け側端面には前記戻し通路及び負荷転動体転走路と接続される方向転換路の2つの接続口が設けられ、
前記方向転換路は、前記2つの接続口を連通するように循環部品本体の内部を湾曲して延びる貫通穴によって構成され、
前記循環部品本体の前記取付け側端面には2つの接続口を結ぶスリットが設けられ、該スリットによって、前記取付け側端面から前記方向転換路の内周案内部に至るまでの領域が切断されていることを特徴とする転がり運動案内装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−102851(P2012−102851A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254046(P2010−254046)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】