説明

微小機械エネルギー、力及び質量の真空ベースセンサに使用する装置と方法

二重クランプビームが、近くにゲートを有するビーム内に、ゲートとビームのダイポールに対しサブミクロンの距離以内に非対称のピエゾ抵抗層を有している。懸架ビームが、プラズマチャンバー中にそれぞれ1:9の流量比で供給されるCl2/Heで行うプラズマエッチング法を利用して製造される。パラメトリック増幅器が、共振で駆動されるNEMS信号ビーム及び2倍の共振で駆動される一対のポンプビームを備え、ポンプビームに変調されたローレンツ力を生成して前記信号ビームのばね定数を摂動させる。ブリッジ回路が、第一と第二のアーム内の第一と第二のNEMSビームに励起信号の二つの位相の合っていない成分を提供する。DC電流が、共振周波数のチューニングを行なうためAC駆動NEMS装置に供給される。分析器が、異なる共振周波数と複数の駆動/検出エレメントを有する複数のピエゾ抵抗NEMSカンチレバー、又は光学的回折格子を形成する相互に作用する複数のビーム、又は各々異なる被検体に応答する複数の歪検出NEMSカンチレバー、又は異なるIR吸収体を有する複数のピエゾ抵抗NEMSカンチレバーを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の技術分野
本発明は、エネルギー、力及び質量の特徴すなわち特性を電気的応答に変換する真空ベースの微小機械検出器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本願は、2002年5月7日付けで出願された米国仮特許願第60/379,536号、同第60/379,542号、同第60/379,544号、同第60/379,535号、同第60/379,546号、同第60/379,644号、同第60/379,713号、同第60/379,709号、同第60/379,685号、同第60/379,550号及び同第60/379,551号並びに2002年10月17日付けで出願された米国仮特許願第60/379,617号に関連している。なおこれらの出願は本願に援用しかつその優先権を米国特許法35 USC 119に基づいて主張するものである。
【0003】
同時係属出願の援用
本願は、同時に出願された米国特許願(PAU.35)(発明の名称:A Method And Apparatus For Providing Signal Analysis Of A Bionems Resonator)及び米国特許願(PAU.36)(発明の名称:Dynamics Bionems Sensors And Arrays Of BIONEMS Sensor Immersed In Fluids)をこれらがすべて記載されているように援用するものであることを特に理解されたい。さらに本願は、2002年5月3日付けで出願された米国特許願第10/138,538号(発明の名称:An Apparatus and Method for Ultrasensitive Nanoelectrochemical Mass Detection)及び2001年8月9日付けで出願された米国特許願第09/927,779号 (発明の名称:Active NEMS Arrays for Biochemical Analyses)をこれらがすべて記載されているように援用するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2.従来技術の説明
懸架された薄い二次元電子ガスのヘテロ構造体が最近完成され、続いてBlick et al.,Phys. Rev. B62に記載されているようにナノスケールの導電機器に採用されている。Beck et al.のAppl. Phys.Lett. 68,3763(1996)及びAppl. Phys.Lett.73,1149(1998)では、応力感知電界効果型トランジスタ(stress sensing field effect transistor)がカンチレバー中に組み込まれて偏向読取り機として使用された。採用されたFETは、相互コンダクタンスが約1000μSであり、小信号ドレイン源抵抗(small signal drain-source resistance)が約10MΩでありそしてその歪感度(strain sensitivity)は圧電効果から生まれると推定された。
【0005】
共振機械システムの運動の鋭敏な検出は常に、運動の電気信号への有効な変換及び低ノイズ電気読取り回路の使用の少なくとも一方に依存している。真空下で作動する極端に高いアスペクト比のミクロンスケールの構造体の場合、上記変換は、十分速く応答して上記構造体の熱機械的揺動(thermomechanical fluctuation)を検出できる。しかし、装置の大きさがナノメートルスケールまで小さくなると、熱機械的揺動又は量子ゼロ点運動(quantum zero-point motion)の基本感度限界を保持するのに要求される応答変換を得るために必要なアスペクト比を維持することはますます困難になる。
【0006】
さらに、ナノ電気機械装置の検出感度は一般に、固有の揺動よりむしろ読取り回路の線形電気増幅器の入力のノイズによって制限される。この制限を回避するには、信号を、線形電気増幅器に送る前に非線形増幅器で増幅してやる必要がある。幸運なことに、ナノ電気機械システム(NEMS)の主要な特徴の一つは容易にアクセスできる非線形性である。
【0007】
メカニカルパラメトリック増幅(mechanical parametric amplification)は、これまでの10年間にいくつかのマイクロファブリケイテッドシステム(microfabricated system)で説明されている。これらすべてのシステムの共振器の運動は、共振器のばね定数をその2倍の固有周波数で変調することによって増幅できる。これらのシステムを区別する特徴はそれらの帯域幅、ダイナミックレンジ及びばね定数の変調の性質である。RugarとGrutterが、初めてマイクロファブリケイテッド装置の機械パラメトリック増幅を示した。彼等の装置では、シリコン製カンチレバーのばね定数の電気成分は、そのカンチレバーとベースプレートの間にキャパシタを形成し次いでその2表面上の電極間の電圧を変えることによって変調された。彼等の装置の帯域幅はωO/4Q=5.3 Hzであったので、それらの検出感度は、熱機械的ノイズのスキージングを始めて証明するのに十分なものであった。Dana et al.は、その金属とガリウムヒ素の間の熱による不整合による残留応力で曲げられた一部金属化ガリウムヒ素製のカンチレバーのパラメトリック増幅を観察した。ばね定数の変調は、湾曲した形態から生ずる二次幾何学的非線形性にアクセスするため、増幅すべき小さい機械信号のトップに大きいポンプ駆動装置(pump drive)を重ねることによって実施された。この実験の帯域幅も6 Hz程度であった。Carr et al.は、1 kHz程度の帯域幅で500 kHzにて作動する表面を微細機械加工された捩じり共振器[surface micromachined torsional resonator)のパラメトリック増幅を示した。この装置では、キャパシタが共振器と基板の間に形成されそしてばね定数の電気成分を、やはり再び前記キャパシタに加えたポンプ信号(pump signal)によって変調させた。これらの実験はすべて、200 mV〜数Vの範囲内の閾ポンプ電圧(threshold pump voltage)で20までのメカニカルゲイン(mechanical gain)を示した。
【0008】
VHF NEMSに対する平衡電子変位(balanced electronic displacement)の検出
マイクロ電気機械システム(MEMS)をサブミクロンのドメインまで縮小しようとする最近の努力が活発な研究分野で開始されて技術界及び科学界の両方から注目されている。これらのナノ電気機械システム(NEMS)は、マイクロ波バンドに達する基本機械的共振周波数(fundamental mechanical resonance frequency)を有しているので、超高速アクチュエータ、センサ及び高周波数信号処理素子などの多数の重要な技術用途に適している。これらのシステムによって、実験で、新しいフォノン仲介メカニカルプロセス及びメゾスコピック(mesoscopic)メカニカルシステムの量子挙動の研究が可能になると期待される。
【0009】
NEMSが切り開く興味深い実験領域にアクセスするためのみならずNEMSベースの技術を開発するため最も必要な要素として、サブナノメートルの変位(displacement)に感受性の鋭敏で広帯域のオンチップ変換(on-chip transduction)法がある。MEMSのスケールで変異を検出することは、電気結合を通じて磁気、静電気及びピエゾ抵抗の変換器を使って成功してきたが、これらの方法の大部分は、サブミクロンのスケールでは応答しなくなる。さらに、大部分のMEMS装置の吸引電子の2ポート作動検出の機器構成(attractive electronic two-port actuation-detection configuration)は、NEMSの寸法が小さいためストレイカップリング(stray-coupling)との遭遇を避けられないので、NEMSのスケールで実行することが困難になる。
【0010】
NEMSドメインにうまく大きさを合わせてNEMSの変位に直接電子カップリングを行うオンチップ変位変換方式(on-chip displacement transduction scheme)は起磁気検出法である。無線周波数(RF)NEMSでの起磁気反射測定(magnetomotive reflection measurement)は広範囲にわたる用途が見出され詳細に検討されている。このような測定法の演算回路は図19(a)に示してあり、そのNEMSは並列RLCネットワークとしてモデル化されている。ωの電源で駆動されると、RLに対する電圧は下記式で表され検出できる。
【0011】

上記式中、ReはNEMS装置に対する電子DC結合抵抗(electronic DC coupling resistance)であり,Zm(ω)は共振器の機械インピーダンスであり、RLとRSはそれぞれ電源インピーダンスと負荷インピーダンスでありそしてRL=RS=50Ωという単純化するための仮定を行った。我々は、大部分の実験システムの場合と同様にRe>>|Zm(ω)|という近似を行った。Zm(ω)に比例するNEMSの変位のため測定されたEMFはReに比例する背景電圧に含まれている。このことによって、有用なパラメータすなわち機械的共振周波数における検出効率を、下記式に示すように、信号電圧Sの背景電圧Bに対する比率と定義しやすくなる。
【0012】

上記諸式は、反射1ポート起磁気変位検出法(reflective,one-port magnetomotive displacement detection)のいくつかの限界を示している。第一に、対象のNEMS装置が金属化層を備えていないか又は共振周波数が高い(機械インピーダンスが小さい)場合、すなわちRe>>Rmであるとき、EMFの検出は極めて困難になる。第二に、信号の背景電圧が、検出電子機器の全ダイナミックレンジの使用を阻害する。変位の動作と検出のための2ポートのコンフィギュレーションはS/Bを改善することによって上記問題点を改善できるようにみえるかもしれないが、実際は、ポート間のストレイ電子カップリング(stray electronic coupling)が一般に測定される応答を支配している。
【0013】
超高周波数の炭化ケイ素製ナノ機械共振器
UHF(極超短波)及びマイクロ波のバンドに達する基本共振周波数を有するナノ機械共振器の製造と測定に、最近有意義な努力がなされている。このような研究と開発は、科学的にかつ技術的に非常に重要である。基礎科学の観点から、このような装置は、メゾスコピック機械運動を観察することによって量子力学の試験を行い及び標準の量子極限を超える超高感度の測定を行う魅力的な可能性を提供する。科学技術面で、ナノ電気機械システム(NEMS)は、高分解能センサ及びアクチュエータとして又は高速信号処理要素として使用されると、今日の産業で実用化されているものを超えてはるかに大きい集積性(integratability)という優れた利点を提供する。
【0014】
コーネル大学のCarr et al.は、380MHzまでの基本共振周波数を有する単一の懸架ワイヤの測定に成功したと最近報告した。しかし彼等の論文に指摘されているように、「長さが2μm未満のワイヤは容易には検出できなかった」が、このことは380MHzが彼等の技術でアクセスできるほぼ最高の基本共振周波数であるので将来重要な新しい発展はないことを意味している。
【0015】
ローレンツ力によるMEMSINEMS共振器の周波数のチューニング
MEMSを高性能のセンサ及び変換器として利用するには、そのシステムの周波数を、チューニングするか又はシステムを製造した後に調節する必要がある。機械的共振を数倍までチューニングする数種類の方法が、MEMSの説明書の装置周波数のチューニング法に提供されている。これらの方法は二つのカテゴリーに分類される。すなわち、機械ばねによって提供される復元力を変える方法及び補充する方法に分類される。前者の方法の最も簡単な例はクランプビームの熱サイクル由来の方法である。ビームが温度の変化によって収縮又は膨張すると、共振周波数は、ビームに応力が誘発されるためシフトする。後者の場合は、機械ばね力とともに静電復元力を提供するマイクロ機械装置の静電アクチュエータを作動させることによって実現されている。
【0016】
NEMS装置のより高い機械的共振周波数はより高いばね定数を伴うので、機械的復元力を変えることによる力チューニング(force tuning)は、高周波数の共振器では効果が小さいと考えられる。高周波数MEMS(f>1MHz)のチューニングの可能性を評価するため我々は、装置の周波数の一定の力と温度変化に対する依存性の試験をいくつか行った。我々の測定結果は、装置の周波数が上昇すると熱周波数がシフトするなどの他の効果の中で、チューニングの効果が不明瞭になるということを示している。共振周波数が5MHzを超えると、我々の現在の技術を使って力チューニングを行うことは不可能であった。低周波数の共振器(1MHz<f<3.5MHz)では、微小機械加工中及び電気接触層中に誘発される構造体中の応力が、低い力チューニングの適用を支配している。熱によるチューニングも装置の周波数にきわめて強く依存しており、ばね定数が最大の装置が最小のチューニング性を示す。
【0017】
起磁気変換を利用する曲げ共振器と捩じり共振器による変位検出の最終限界
マクロ機械装置は、1-100kHzの周波数で作動する広範囲の電子装置に組み込まれている。その結果、この周波数の範囲に適切な確立した運動検出技術が多数存在している。100MHzを超える周波数で作動するナノ機械装置はRF信号を処理する際に重要な役割を演じると考えられるのでこれらの技術をこれら周波数の範囲で徹底的に特徴づける必要がある。個々の検出技術の有用性は以下の三要素:(1) 運動の測定可能な信号への有効な変換、(2) その信号の測定装置への有効な結合、及び(3) 低ノイズの検出器を使用できることに依存している。必要なことは、マクロ機械共振器に関連する起磁気検出技術の性能を数量化する方法である。
【0018】
NEMSアレースカラー分析器/相関器
機械アレースペクトル分析器(mechanical array spectrum analyzer)を支持する概念は何十年も前の概念である。周知の一実施態様で、その分析器は、加えられる時変性波形の振動又は静電気で駆動される共振リード(resonant reed)(カンチレバー)を通じて機能する。その信号が、与えられたエレメントが共振して応答できるバンド内にスペクトルウエイトを持っている場合、その特定のエレメントの運動が起こりそして運動の振幅はそのバンドのスペクトルウエイトに比例している。これら装置の共通の用途は、回転計としての用途、例えばシャフトエンコーダ由来のAC電圧を使って前記リードアレーを静電気で駆動する回転機械としての用途であった。
【0019】
ミニアチュア懸架装置は、熱容量が非常に小さくて熱コンダクタンスが非常に小さくそしてこれら対になった特性からもたらされる極端に短い熱応答時間のため極端に敏感なボロメトリック検出器(bolometric detector)のベースを形成できる。従来技術はこれらの特性を使用してマイクロスケールのMEMSアレーIRイメイジャー(imager)を提示した。そこで前記エレメントは機械的に読み取られ、オーバーレーヤーは、IR線を吸収すると、下に位置するカンチレバー装置に比べて格差がある熱膨張を示した。次に歪が誘発する曲がりを、別の光学的変位読取り法で検出した。この分野の他の研究は、懸架されたマイクロスケールの装置の頂部にパターン化された異なる物質間に誘発される熱電圧に基づいている。この場合、読取りは電気的読取りであるが、その高い機能はやはり隔離された検出エレメントが小さいこと(マイクロスケール)からもたらされる。
【0020】
必要なことは、NEMSの技術を使って、UHFからマイクロ波周波数まで機械的応答にアクセスすることによってかような分析器を再活性化(reinvigorate)して極めて低い操作電力のレベルとモノリシックで超コンパクトな形態を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
ナノ電気機械システムすなわちNEMSはサブミクロンの寸法にした機械装置である。この大きさの形態では、極端に高い基本周波数を保持し、同時に共振機械応答に対する非常に高い機械的応答度(小さい力定数)と妥当なクオリティーファクター(Q)を保持することができる。特性のこの強力な組合わせは直接、機械検出を行うための最適の特性、例えば
a)高いエネルギー、力及び質量の感度
b)極めて小さい電力で作動できる性能
c)使用可能な非線形性を全く適度の制御力で誘発する性能
になる。
【0022】
このようにNEMSは短い応答時間を必要とする電気機械装置の用途を生み出し、現在の大部分の純電子装置に匹敵する作動周波数を達成できる。
【0023】
多端子電気機械装置すなわち2個、3個、4個のポートを取り入れた装置が可能である。これらの装置内の別個の電気機械変換器は、入力刺激すなわち信号力及び機械応答の読取りすなわち出力変位の両者を提供できる。以後これらはそれぞれアクチュエータ及び(変位)変換器と呼称する。追加の制御変換器によって、準静的又は時変性の電気信号を加えて、機械エレメントの特性を制御された有用な方式で励起又は摂動する準静的又時変性の力に変換できる。電気機械的な変換と作動の異なる物理的方法を利用すると、これらポート間の高度に独立した相互作用が可能になり、実際に、入力、出力及び恐らく複数の制御ポートの間の「直交性」が可能になる。換言すれば、各ポートは、互いに比較的弱い直接の結合を維持しながら、機械エレメントと強く相互作用することができる。時変性刺激の場合、周波数の変換が目的のときは、この直交性が、チューニングされたか又は狭帯域の変換器の応答で提供されて、制御信号例えばポンプ信号から入力信号と出力信号を(周波数)選択できる。
【0024】
信号ドメインと変位の間の変換
変位ドメインの出力信号は、静止シフト、共振応答、定常状態誘発振動の振幅の変調、定常状態誘発振動の調波内容の変調又はノイズスペクトルの修正などの信号である。下記表は変換のモデルの範囲を示す。
【0025】

【0026】
ナノ機械センサのエレメント
コンプライアントエレメント
コンプライアントエレメントは、移動するか又は変位するサブミクロンの大きさまで縮小された機械構造体である。これは大きさが極めて小さいので顕微鏡的分野に対する有効なプローブとして働く。これら構造体は通常、半導体の材料で製造される。例えば、我々は、本発明でGaAs、Si、SiC及びGaAs/AlGaAsヘテロ構造体を使用した。時には純金属又は金属合金も使用できる。材料の選択は、主として材料の電気的特性、化学的特性及び機械的特性によって決まる。センサの形態は設計する際の重要な要因である。有限要素シミュレーション法は共振周波数、ばね定数、力/質量の感度を推定するのに有用である。
【0027】
変換器
入力信号ドメインから検出様式への圧電変換、ピエゾ抵抗変換、起磁気変換などを行う構造体は変換器を備えている。一般にこれは組成構造層(compositional structural layer)すなわち電流経路及びローレンツ力由来のemfを生成する起源である。
【0028】
アクチュエータ
NEMS装置の機械運動を起こす構造体はアクチュエータであるが、その構造体は、起磁気変換器の駆動ローレンツ力、隣接電極にダイポールフィールドを生成する電流又は周囲流体の均一な確率的熱揺動を得るため外部部電流と磁界を組み合わせたものである。
【0029】
ナノ機械センサシステム
センサシステムは、単純な1エレメントのシステム又は特定の機能を達成するためより複雑なコンパウンドエレメントの構造体を備えている。変換器内に生成した被検出電気信号又は変換器の変化した電気パラメータは、ブリッジ、一つのポート、二つのポート又の他の複数のポートの組合わせで検出できる。
【0030】
用語「NEMS」は、本明細書で使用する場合、1ミクロンに等しいか又は1ミクロンより小さい少なくとも一つの寸法を有する装置を意味する。「NEMS」装置は、1ミクロンより大きい他の寸法を一つ又は二つ以上有することもある。さらに大きさが1ミクロンか又は1ミクロン未満の装置と大きさが1ミクロンより大きい装置の特性を決定する際に明確に区別されるラインがないことが多いことは理解できるであろう。用語「NEMS」のより重要な意味は、問題の装置が、サブミクロンの装置又は作動に特有の特性を、サブミクロンの大きさの類似の装置と共有していることである。
【0031】
本発明は、我々が移動度の非常に高い懸架量子ワイヤを達成できることに基づいた高分解能の変位読取りを行う装置と方法を目的としている。2端子センサのインピーダンスは5kΩという小さい値である。分子線エピタキシャル(MBE)成長法で成長させた材料が直接パターン化され、そして平面内ゲート(in-plane gate(IPG))を使って振動を励起させる。金属化は不要である。したがって高いQ値を得ることができる。
【0032】
前記機械的パラメトリック増幅器は、NEMSに固有の形態の非線形性を利用するので、検出感度の問題の実際的な解決策である。
【0033】
本発明は、さらに具体的に述べると、二重にクランプされた幅がサブミクロンの懸架ビームを備えかつそのビーム内又はビーム上に形成されて非対称に配置された機械信号から電気信号に変換する層を含む一体に製造された装置と定義される。少なくとも一つのサイドドライブゲート(side drive gate)がサブミクロンの距離以内でビームに近接して設けられている。
【0034】
前記非対称に配置されて機械信号から電気信号に変換する層は、ビーム内に非対称に配置された圧電層を備えている。そのビームは2DEGのヘテロ構造体から製造される。
【0035】
一実施態様で、ビームは電気接点を備えており出力端子付き2端子回路を形成しそしてさらにそのビームと並列の回路にインダクタを備えかつ前記ビームの出力端子に阻止コンデンサが結合されている。その阻止コンデンサに低ノイズ極低温増幅器が結合されている。
【0036】
前記ゲートにはゲートダイポール電荷セパレーション(gate dipole charge separation)が設けられそして前記ビームにはビームダイポール電荷セパレーションが設けられているのでこのビームとゲートはダイポール-ダイポール相互作用によって相互に作用する。そのサイドゲートは2DGEの層を有している。
【0037】
例示実施態様では、ビームとサイドゲートはチップを有しさらにそのチップが上に配置されている基板を備えており、その基板はその上に電極が形成され、そのゲートには前記基盤の電極とゲートの間にゲートダイポール電荷セパレーションが設けられている。そのビームにはビームダイポール電荷セパレーションが設けられ、そのビームとゲートはダイポール-ダイポール相互作用によって相互に作用する。
【0038】
一実施態様で、ビームとゲートは、2DEGのGaAs圧電層、そのGaAs層の各側面上の二つのサンドイッチAlGaAsスペーサ層、そのAlGaAsスペーサ層の上側と下側それぞれに配置された第一と第二のAlGaAs:Siドナー層、そのAlGaAs:Siドナー層それぞれの上側と下側に配置された二つのGaAsキャップ層を含む非対称のヘテロ構造のスタックで形成されている。前記2DEGのGaAs圧電層の下側の各層は、その2DEG GaAs圧電層の上側の対応する層より厚さが大きい。AlxGa1-xAs犠牲層が前記スタックの下側に配置されそしてそのAlxGa1-xAs犠牲層の下側に基板が配置されている。なお式中0<x<1である。
【0039】
本発明の装置はさらに二つのゲートを有していてもよくこのゲートは各々ビームからサブミクロンの距離以内に配置され各々ゲートダイポール電荷セパレーションを備えている。
【0040】
本発明の装置はさらに、ビームを含む回路内に、ビームに送られる検出電流の電源と増幅器を備えて出力信号を生成する。例示実施態様ではその増幅器は極低温増幅器である。
【0041】
検出電流の電源はDCとACの検出電流をビームに供給する。
【0042】
一実施態様で、ビームの変換層はビームの振動を誘発するのに使用される圧電層でありそしてビームの振動を検出するのに使用されるピエゾ抵抗層(piezoresistive layer)でもある。
【0043】
本発明はさらに、犠牲層上に配置された2DEGの層を含むヘテロ構造のスタックを設置し、そのスタック上にマスクを選択的に配置してNEMSのビームのパターンを画成し、Cl2/Heプラズマエッチング法を使って前記スタックの露出部分のドライエッチングを行って前記2DEG層の電気特性を実質的に変えることなくNEMSビームを画成し、次いで犠牲層をエッチングして除きNEMSビームを釈放するステップを含んでなる、二次元電子ガス層を含む懸架NEMSビームの改良製造法と定義される。
【0044】
Cl2/Heプラズマエッチング法を使用して前記スタックの露出部分のドライエッチングを行うステップは、Cl2とHeのガスをそれぞれ1:9の流量比でECRプラズマチャンバー中に供給するステップを含んでいる。
【0045】
Cl2とHeのガスをECRプラズマチャンバー中に供給するステップはさらに、前記スタックを20Wの一定のRF電力で150V以下のセルフバイアスに維持し次いで前記Cl2とHeのガスをほぼ300W以上のマイクロ波電力でイオン化するステップを含んでいる。
【0046】
また本発明は、平面内に画成された懸架されて振動するサブミクロンの信号ビームであって、平面内運動に対する曲げばね定数を有しそしてその信号ビームの機械的共振振動数ω又はその近傍で駆動される信号ビーム;その信号ビームに結合され2ω又はその近傍で駆動される一対のポンプビーム;前記信号ビームと一対のポンプビームに垂直の成分を少なくとも有する磁界を加える磁界源;及び前記ポンプビームと回路で結合された交流電流の電源であって、磁界の存在下ポンプビームを通じて電流を加えポンプビームに変調ローレンツ力を生成させて信号ビームに圧縮と引っ張りの振動力を加えて信号ビームの平面内運動に対する曲げばね定数を摂動する交流電源;を備えたNEMSパラメトリック増幅器に関する。増幅器はビームに結合される。
【0047】
前記ポンプビームと信号ビームは集合して平面内のH字型構造体を形成し、信号ビームはH字型構造体の中央部分を形成している。ポンプビームは2ωで共振するようにチューニングされる。
【0048】
また本発明は上記NEMSパラメトリック増幅器を作動させる方法に関する。
【0049】
また本発明は、サブミクロンの変位を特徴とするサブミクロンカンチレバーであって、制限部分(restriction portion)を有するNEMSカンチレバー及びそのカンチレバーに結合されたピエゾ抵抗歪変換エピ層(epilayer)を含み、Gが下記式:

(式中、パラメータΠLはピエゾ抵抗変換器の材料のピエゾ抵抗係数であり、係数βは導電性層の厚さが有限であることから起こるGの減少を示し、Kはカンチレバーのばね定数であり、Iはカンチレバーのオーバーレングス(overlength)であり、I1は制限部分の長さであり、bは制限部分の厚さであり、tは制限部分の厚さであり、そしてRTは変換器の2端子間の抵抗である)で表わされる装置のゲージ率であるサブミクロンカンチレバーである。
【0050】
共振の近くでは、熱機械的搖動の力スペクトル密度(force spectral density)は、下記式:

(式中、KBはボルツマン定数であり、Tは温度であり、Yは減衰係数であり、f0は共振周波数でありそしてQ=mf0/Yはクオリティファクターであり、mはカンチレバーの質量である)で表わされる。
【0051】
共振の近くでは、熱機械的揺動の電圧スペクトル密度(voltage spectral density)は、下記式:

(式中、fはカンチレバーの振動の周波数である)で表わされる。
【0052】
本発明は、予め定められた厚さの被ドープ層を提供し;その被ドープ層にドーピング濃度を提供し;下記式:

(式中、

はイオン化アクセプタサイトの密度であり、ρはフェルミ統計学によって与えられるキャリヤの体積密度であり、ρ(χ)=e(p(χ)−n(χ))であり、そして正と負のキャリヤ密度は下記式:

(式中、βは1/kTであり、EFはフェルミエネルギーであり、EVは価電子帯エネルギーでありそしてECは伝導帯のエネルギーである)で表わされる条件を満たすことによって電荷の中性が得られるまでフェルミ準位を調節し;下記式:

(式中、σは実験に基づいた表面のキャリヤの密度である)で表わされる境界条件下で、下記式:

(式中、EVは価電子帯のエネルギーであり、εは比誘電率であり、eは電子の電荷である)に従って価電子帯のベンディング(bending)を確認し;次いでキャリヤ密度ρについて集中(convergence)が達成されるまで調節と確認を行う上記ステップを反復して繰り返すステップを含んでなる、異なるドーピング濃度と異なる厚さでドープされて真性層上に配置された層を有するNEMS装置のキャリヤの分布をスケールし(scale)確認する方法に関する。
【0053】
また本発明は、励起信号の起源;その起源に結合されて励起信号の二つの位相の合っていない成分を生成する電力スプリッタ(power splitter);その電力スプリッタに結合された第一操作ポート;その電力スプリッタに結合された第二操作ポート;変換された電気出力を有する第一NEMS共振ビームを含む、前記第一操作ポートに結合された第一回路アーム;変換された電気出力を有する第二NEMS共振ビームを含む、前記第二操作ポートに結合された第二回路アーム(これら第一と第二のビームは互いに整合されている);並びにDC結合抵抗 Re及びNEMS共振ビームに結合された検出ポートを備えたブリッジ回路に関する。
【0054】
上記ブリッジはさらに、第一と第二の回路アームの向かい合ったアームに回路で結合された可変減衰器と位相調整器を有している。減衰器は第一と第二の回路アームの間のインピーダンスの不整合を減衰器なしの場合より正確に調整するが、位相調整器は減衰器の回路を有することから生ずる位相の不整合を補償する。
【0055】
NEMS共振ビームは試験材料を吸着するように構成された表面を有し、そのNEMS共振ビームの性能はその試験材料の作用を受け前記ブリッジで測定される。
【0056】
ブリッジはさらに、増幅器及びその増幅器に検出ポートを結合する出力インピーダンスミスマッチ回路を備えている。前記第一と第二のNEMS共振ビームは起磁気NEMS共振ビームであり金属化されていない。
【0057】
本発明はさらに、上記ブリッジ回路中の二つのNEMS装置の出力を平衡させる方法に関する。
【0058】
本発明は、駆動電源;その駆動電源に結合されて対向する位相の駆動振動を生成する電力スプリッタ;その電力スプリッタが生成した駆動信号の一方の位相に結合された第一起磁気NEMS共振ビーム;その電源スプリッタが生成した駆動信号の他方の対向する位相に結合された第二起磁気NEMS共振ビーム;これら二つの起磁気NEMS共振ビームに結合された電気端子;その端子に結合された増幅器;及びその増幅器に結合され、装置の順方向伝送係数S21の振動数依存性を測定する手段を備えた装置と定義される。
【0059】
前記第一と第二の起磁気NEMS共振ビームはSiCで構成され、平面内(in plane)共振及び平面外(out of plane)共振で振動する。吸着表面が一方のNEMS共振ビーム上に配置され、そしてその吸着表面上の吸着物の吸着量を測定手段で測定する。
【0060】
本発明は、励起駆動信号を提供し;その励起駆動信号を二つの位相の合っていない成分にスプリットし;その位相の合っていない成分の一方を、第一の変換された電気出力を有する第一NEMS共振ビームに提供し;その位相の合っていない成分の他方を、第二の変換された電気出力を有する第二NEMS共振ビームに提供し、その第一と第二のNEMS共振ビームは互いに整合されており;その第一と第二のNEMS共振ビームを振動させ;その第一と第二の変換された電気出力を合計して平衡検出出力信号を生成させ;その平衡検出出力信号を増幅器で増幅し;次いで順方向伝送係数S21の振動数依存性を測定するステップを含んでなる方法に関する。
【0061】
第一と第二の起磁気NEMS共振ビームを振動させる前記ステップは、これらビームを平面内共振及び/又は平面外共振で振動させるステップで構成されている。
【0062】
本発明はさらにまた、表面を有し、長さがL、幅がW、ヤング率がE、質量密度がρ及び変位の振幅がAであるサブミクロンのSiC NEMSビーム;磁界源B;ビームの表面に配置されてビームの軸方向の長さの少なくとも一部分に電流を流す電極手段;その電極手段の第一末端に結合されてSiC NEMSビームを共振集波数

で起磁気的に駆動する交流電源;並びに下記式:

で表わされるSiC NEMSビームから生成したVemfを検出する、前記電極手段の第二末端に結合された検出器を備えてなる起磁気的に駆動されるサブミクロンNEMS共振ビームの改良品と定義される。
【0063】
前記電極手段は、ビームを磁界内で駆動するための交流電源に結合された単一の電極を備え、そしてビームの運動によって電極内に生成したEMFを検出する検出器に結合されている
【0064】
前記電極手段は、ビームを磁界内で駆動するための交流電源に結合された第一電極及びビームの運動によって電極内に生成したEMFを検出する検出器に結合された第二電極を備えている。
【0065】
前記SiC NEMSビームは、UHFの範囲以上の特にマイクロ波Lバンドの基本共振周波数を提供する寸法とパラメータを持っている。
【0066】
本発明は、NEMS装置が配置される磁界を提供し;そのNEMS装置にAC電流を供給してそのNEMS装置を前記磁界内で共振周波数で振動させ;そのNEMS装置にDC電流を供給してそのNEMS装置の平面外共振周波数を一定のローレンツ力でチューニングするステップを含んでなる、平面外共振を行うサブミクロンNEMS装置をチューニングする方法に関する。
【0067】
DC電流をNEMS装置に供給するステップは、金属化を行うためのDC電流を供給するステップを含んでいる。
【0068】
このNEMS装置は平面内共振も行うので、上記方法はさらに、NEMS装置の温度を変えて、NEMS装置の平面外共振と平面内共振をチューニングするステップを含んでいる。
【0069】
また本発明は、上記方法でチューニングされる、平面外共振を行うチューニング可能なサブミクロンNEMS装置に関する。このNEMS装置は、高度にドープされた単結晶の半導体で形成された半導体-金属2層(bilayer)で構成されておりそしてその半導体の上に配置された金属化物(metallization)は多結晶金属でありこの半導体−金属2層の応力を低下させる。
【0070】
本発明は、下記式:

(式中、

である)で定義される挿入損εが最小にすなわち1に近くなるように、幅がw、厚さがt、長さがLであり、検出器負荷抵抗がRLであり、等価機械インピーダンスがRmであり、導電率がσのビーム上の電極で波長λに対応する周波数で作動する共振ビームを含む共振サブミクロン1ポートNEMS装置の改良品に関する。
【0071】
本発明は、下記式:

(式中、

である)で定義される挿入損εが最小に又は1に近くなるように、幅がw、厚さがt、長さがLであり、検出器負荷抵抗がRLであり、等価機械インピーダンスがRmであり、導電率がσのビーム上の電極で波長λに対応する周波数で作動する共振ビームを含む共振サブミクロン2ポートNEMS装置の改良品に関する。
【0072】
本発明は、負荷抵抗がRLで増幅器に結合された2ポートのまっすぐの二重にクランプされたNEMS起磁気ビームの改良品に関し、そのNEMSビームは、下記式:

(式中、kBはボルツマン定数でありそして

(式18)
である)で定義されるスペクトル変位感度Smx(2)がNEMSビームの熱揺動に対応するスペクトル変位密度に等しいか又はそれより大きいように選択された、磁界B内で長さがL、厚さがt、幅がw、ヤング率がE、質量密度がρであり、そしてその金属化の導電率がσであり、温度がTであり、駆動信号波長がλであり、共振振動数がf0であり、増幅器のスペクトル電力密度がSavであるNEMSビームである。
【0073】
本発明は、Si基板を提供し;そのSi基板上にSiO2層を配置し;そのSiO2層上にSiエピ層を配置し;そのSi基板の一部分を、ストップ層として使用されるSiO2層まで選択的に異方性エッチングを行い;そのSiO2層の一部分を選択的にエッチングして懸架されたSiエピ層膜を露出させ;次いで懸架されたSiエピ層膜のNEMSビームを製造するステップを含んでなり、キャピラリの歪が回避されかつ電子ビームの解像力が基板からの近接散乱(proximate scattering)無しで達成される、Si膜からNEMSビームを製造する方法に関する。
【0074】
本発明は、GaAs基板を提供し;そのGaAs基板上にAlGaAs層を配置し;そのAlGaAs層上にGaAsエピ層を配置し;そのGaAs基板の一部分を、ストップ層として使用されるAlGaAs層まで選択的に異方性エッチングを行い;そのAlGaAs層の一部分を選択的にエッチングして懸架されたGaAsエピ層膜を露出させ;次いで懸架されたGaAsエピ層膜のNEMSビームを製造するステップを含んでなるGaAs膜からNEMSビームを製造する方法に関する。
【0075】
GaAs基板の一部分を、ストップ層として使用されるAlGaAs層まで選択的に異方性エッチングを行うステップは、NH4OH溶液又はクエン酸溶液によるエッチングで構成されている。NH4OH溶液によるエッチングのステップは、エッチングを行う前に新たに混合して得たNH4OHとH2O2を約1:30の容積比率で含有する溶液でエッチングするステップからなっている。
【0076】
クエン酸溶液によるエッチングのステップは、クエン酸一水和物を脱イオン水と1:1の重量比で混合して完全に溶解し、次いでこの1:1混合物を3:1の容積比でH2O2と混合して浴を提供することによって得られた室温の浴でエッチングするステップからなっている。
【0077】
本発明は、二つの対向する平行の基板;その一方の基板から延びる複数のピエゾ抵抗NEMSカンチレバー(そのカンチレバーは各々、対応する複数の共振周波数が選択されたスペクトル範囲をカバーするように異なる共振周波数を有している);及びそのもう一つの基板から延びる複数の駆動/検出エレメント(そのエレメントは各々本来、前記複数のピエゾ抵抗NEMSカンチレバーのうちの一つと結合されている)を含んでなるNEMSアレー分析器に関する。
【0078】
本発明は、フレーム;相互作用アレーを形成して光回折格子を形成する複数のNEMS構造体;その複数のNEMS構造体を入力信号に応答して駆動する手段;その複数のNEMS構造体を照明する光源;及び時変性回折格子として集合的に作用する複数のNEMS構造体からの回折光を検出する検出手段を含んでなるNEMSアレー分析器に関する。
【0079】
本発明は、複数の歪検出NEMSカンチレバー(これらカンチレバーは各々、その上に対応する被検体に応答するオーバーレーヤーを配置され、そのオーバーレーヤーの応答は対応するカンチレバーに歪を加える);及び前記複数の歪検出NEMSカンチレバー各々の歪を検出する手段を含んでなるNEMS電子化学検出アレーに関する。前記オーバーレーヤーの応答は、歪を対応するカンチレバーに加えてそのカンチレバーを曲げる、オーバーレーヤーの膨張又は収縮する容積変化を含み、そして前記検出手段は各カンチレバーの曲がりの大きさを測定する光検出アレーを含んでいる。前記オーバーレーヤーの応答は、対応する各カンチレバーの全慣性質量を変化させる質量負荷を含み、そして検出手段は各カンチレバーの共振周波数偏移(resonant frequency shift)の変化を検出する手段を含んでいる。
【0080】
本発明は、二つの対向する平行の基板;その基板のうちの一方から延びる大きさが同一の複数のピエゾ抵抗NEMSカンチレバー(各カンチレバーには異なるIR周波数に応答するIR吸収体が設けられ、そのIR吸収体は各IR吸収体が吸収したIRの量に対応して各カンチレバーの対応する示差熱膨張を誘発する);及びもう一つの基板から伸びる複数の駆動/検出エレメント(これら駆動/検出エレメントは各々複数のピエゾ抵抗NEMSカンチレバーのうちの一つと本来結合されている)を含んでなるNEMS赤外線検出アレーに関する。
【0081】
本発明の装置と方法は、文法的な流暢さのために作用的な面からの説明でもって記述してきたし、また記載していくが、請求の範囲は、米国特許法第112条でことさらに規定されていない限り、いかなる形でも「手段」又は「ステップ」の限定解釈により必然的に限定して解釈されるべきでないこと、請求の範囲により規定される定義の意味及び均等の全範囲が司法上の均等論の下に与えられるべきであること、そして請求の範囲が米国特許法第112条の下で明言的に規定されている場合は、米国特許法第112条の下で全法定均等物が与えられるべきであることを、まさにその旨理解されたい。ここで図面に移ることにより、この発明はよりよく思い描くことができ、そこでは同じ要素は同じ番号で参照されている。
【0082】
次に、請求の範囲に定義されるこの発明の具体的な祥解例として提示する好適な実施態様についての以下の詳細な説明に移ることにより、この発明及びその種々の実施態様をよりよく理解することができよう。請求の範囲によって定義される発明は、以下に記述する具体的に祥解された実施態様よりも範囲が広いこともあり得ると、ここでは正にそのように理解している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
二重にクランプされたビーム
高移動度の二次元電子ガス(2DEG)を含むGaAs/AlGaAs量子ウエルヘテロ構造体由来の二重にクランプされたビームであって、IT-ドライブ(IT-drive)を平面内サイドゲート(in-plane side gate)に加えて、ダイポール-ダイポール機構によってビームの機械共振を励起するビームを開示する。高周波数の変位の鋭敏な変換は、一定のD.C.検出電流の存在下、2DEGを横切って発生するA.C. EMFを測定することによって達成される。組み込まれた2DEGの移動度が高いので、組み合わされた圧電機構とピエゾ抵抗機構によって低ノイズ、低電力及び高利得のマイクロ電気機械変位の検出が得られる。
【0084】
ビーム30が二つのゲート32の間に形成され、図2及び図3の顕微鏡写真に示したように装置12を集合して構成している。出発材料は、特別に設計された、MBEで成長させた二次元電子ガス(2DEG)のヘテロ構造体である。図2に示す装置が形成されている一般に参照番号10で表わした層構造のスタックは、図1bに示すように合計の厚さが115nmの七つの個々の層で構成されている。頂部と底部の層14は、これらの層の間に位置するAlGaAs:Siドナー層16の酸化を防止する薄いGaAsキャップ層である。中央部の厚さ10nmのGaAs層18は、頂部表面の下方37nmの位置に位置している高移動度の二次元電子ガス(2DEG)を保持する量子ウエルを形成しかつ二つのAlGaAsスペーサ層20で囲まれている。層構造スタック10の下に、400nmのAl0.8Ga0.2As犠牲層22がある。犠牲層22は、チップ28のバック電極と機械的支持体を提供する厚さがより大きいn+基板の上に順に配置されている。
【0085】
図1aは、図1bに示すヘテロ構造体のエネルギー準位の線図である。スタック10内の厚さすなわち位置tは縦軸の目盛で示しエネルギー準位ε(MeV)は横軸の目盛で示してある。フェルミエネルギーεFはエネルギー準位をゼロとする。いくつかのサイドバンドの僅かな伝導を除いて、大部分の電子伝導が2DEG層18に閉じ込められている。
【0086】
スタック構造体10は、故意に非対称に作製してGaAs層18の圧電効果の中和を避けたことすなわち層18はスタック10の中央に位置せずにスタック10の一方の側よりに位置するように製造したことに留意すべきである。その結果、スタックが歪むと、層18は、スタック10の側部の伸張されたか又は圧縮された層とともに引張りだけ又は圧縮だけを受ける。スタック10と犠牲層22がチップ28を構成している。事実、層18の上に重ねて不活性化層などの層を作ると、外力を加えなくても残留歪を生じる。
【0087】
オーミック電極24を配置した後、PMMAの厚い層26をチップ28の上にスピンコーットし続いて電子ビームリソグラフィーのステップを一回実施して、図2に示すようにビーム30をそのサイドゲート32から分離する、PMMA層26のトレンチ34を露出させる。そのときPMMA層26は、トレンチ34を犠牲層22までさらにエッチングするために行われる低電圧電子サイクロトロンリアクター(ECR)によるエッチングに対する直接マスクとして利用される。PMMA層26をはがし取った後、ビーム30の下側の犠牲層22を希HFで除くことによって図2に示す最終構造体のレリーフが得られる。
【0088】
ドライエッチングによる2DEG層18の損傷を最小限にするため、このエッチング法を最適化する有意な努力がなされた。多種類のプラズマ混合物で実験を行った後、Cl2/Heプラスマが、平滑な表面の形態及びPMMAを侵食することなく輪郭が明確なマスクの端縁を残した垂直側壁などの優れたエッチング特性を有しているため選択された。図3cに断面図を示した他の方法の従来のECRチャンバー内で、35Å/sという安定したエッチング速度が達成された。Cl2ガスとHeガスを、それぞれ1:9の体積流量(sccm)比でオリフィス202を通じて、3mTorrまで減圧にしたプラズマチャンバー200中に供給し、次いで、チップ28は印加電圧150Vで200Wの一定のRF電力を持ちながら、これらのガスは300Wのマイクロ波電力でイオン化されて図2に示すトレンチ34をエッチングしてビーム30を画成する。
【0089】
この方法をさらに図3dに示す。ステップiで、図1bに示すAl0.8Ga0.2As/GaAsのサンドイッチで構成された量子ウエル構造体を含むスタック10が犠牲層22の上に設けられる。ステップiiで、厚さ800nmのPMMAマスク26をスタック10
の表面にスピンコートし次に電子ビームリソグラフィーを利用してパターン化し二重にクランプされたビーム30及びサイドゲート32になるものの輪郭を形成させる(簡略にするため、ゲート32の形成は図3dから省略してある)。ステップiiiで、損傷が少ない上記ECRエッチング法を実施して前記PMMAのパターンを下に位置するスタック10に移す。ステップivで、選択的ウエットエチング法を実施して犠牲層22の露出部分を優先的に除く。ステップvで、PMMAのマスク26をアセトン又はプラズマエッチング法を使用してはがし取る。
【0090】
このエッチング法が2DEG層18に悪影響を与えないことを証明するため、我々は同じ方法で懸架ホール効果バーを作製し、得られた懸架2DEGを広範囲にわたって特長づけた。加工する前で照明後の初期移動度と密度はそれぞれ5.1x105cm2/Vsと1.26x1012cm-2である。我々の改良された低損傷エッチング法によって、移動度は2.0x105cm2/Vsに維持することができ一方電子密度は4.5x1011cm-2まで幾分低下する。我々は、チャネルの幅が0.35μmと小さくてもエッチングされた構造体中に十分に成長した量子ホールプラトーを観察した。我々は、縦方向の抵抗を測定したとき、電子サイクロトロンの運動の直径が懸架ワイヤの電気的幅に整合すると最大境界散乱(maximal boundary scattering)に対応する低フィールドマキシマム(low field maximum)を検出した。このピークの位置から、我々はワイヤの各側部が0.1μm削除されたと推定できる。我々は、ホールのクロスジャンクション(Hall cross-junction)に対する輸送の測定から電子の弾道挙動を確認した。「ラストホールプラトー(last Hall plateau)」と「ネガティブベンドレジスタンス(negative bend resistance)」はすべての装置12に存在している。輸送手段のフリーパス(transport mean free path)は約2μmであることが分かった。
【0091】
ナノ電気機械(NEMS)システムにおいて、運動の誘発と検出は重要な課題を提起する。図2に示す装置12の操作は比較的容易でかつ効率的である。RF-ドライブは、サイドゲート32の一方又は両方に直接供給され、図1に示す合金のオーミック接点24を通じてネットワーク分析器(図示せず)の出力に接続される大面積の2DEGである。1又は2以上のサイドゲート32によるビーム30の平面外振動の誘発は独特なものである。ゲートとビームの間隔dは100ナノメートルと短くできるので、小さい駆動振幅で十分であることが分かっている。例示実施態様のトレンチ34はすべて0.5μmという一定の幅を有している。装置12は最初、減圧下4.2Kで測定される。0〜26μAの範囲の一定のDC検出電流が10mHの RFチョーク36を通じて振動ビーム30に供給され、この値は誘発される小信号の損失を避けるため十分大きく選択される。その振動信号は装置12に直近に配置されている低温増幅器38によってピックアップされ、その出力は装置12が同軸ケーブル39を通じて浸漬されているクライオスタット(cryostat)から導かれる。その信号をネットワーク分析器の入力に接続する前に室温増幅器(図示せず)を使ってS/N比を改善できる。これら結合された増幅器は、例示実験の周波数の範囲内で約200の電圧利得を持っている。
【0092】
典型的な完成された装置12を、図3aの顕微鏡写真に示しそして図式的に図3bに示してある。電源35から一定のDCバイアス電流(Ib)を、ビーム30に到達する前に大RFチョーク36(約10mH)を通じて送る。ゲート32に印加されるゲート駆動電圧はDCとRFの両方の成分からなり、すなわちVg=Vg(o)+vgeiωtである。誘発される信号は式:V=V(0)+veI(ωt+φ)で表わすことができ、DC電圧ポテンシャルV(0)=IbRdcがキャパシタ37すなわちCでブロックされると、振動要素は液体ヘリウムと室温の両者で増幅される。ビーム30は幅が0.5μmで長さが6μmであり計算ばね定数が0.25N/mである。液体ヘリウムの温度まで冷却されると、それらの2端子抵抗は約100kΩになる。照明後はこの抵抗は5kΩまで低下する。ビーム30の電気的幅(electrical width)はR=170Ωの場合、約0.3μmである。
【0093】
我々は第一機械共振の周りに非常に強力な振動信号を観察した。各種駆動振幅におけるマグニチュード応答曲線(magnitude response curve)を図4aに示す。図4aは出力電圧のマグニチュード対周波数のグラフである。この共振は第一平面外振動モードすなわちビームノルマル(beam normal)が配置されている平面外の振動モードに対応することが計算によって確認されている。駆動振幅が45mVを超えて大きくなると、その応答曲線は非線形になり非対称のローレンツ型を想定する。線形応答の領域では、共振の振幅は、図4aの挿入グラフに示すように、ACゲート電圧の振幅に比例する。
【0094】
観察された信号の起源を明らかにするため、我々はゲート駆動を10mVに固定し次いでDCバイアス電流を-26μAから0まで次いで26μAまで変化させた。共振時の応答振幅対励振振幅の関係を図4bに示す。このデータから二つの特徴が明らかである。第一に、20μAに近い電流で、以下の二つの理由すなわち(a)小ビーム30のジュール加熱及び(b)印加されたこのように高い電界(約15kV/m)におけるドリフト速度の飽和という理由で飽和されるようになる。第二に、中くらいの電流では、共振時の信号強度は図4bの挿入図に示すようにDCバイアス電流に比例する。さらに我々が電流の方向を逆にすると誘発される信号はその符号を変えることも我々は分かっている(180°の位相の変化)。
【0095】
したがって、我々は、観察された信号に支配的に寄与しているのは、ビームの振動によって起こる抵抗の変化であると結論している。これは、バルクのGaAsのピエゾ効果及び2DEGの横圧電電荷ゲーティングから始まるようである。小信号が電流バイアスがゼロでも観察されることに留意すべきである。図4bの挿入図の線形部分の傾斜から、10mVの公称ドライブが装置12に約100の抵抗の変化を誘発する。ビーム30の圧電特性を利用してビームの振動を誘発させるが、そのピエゾ抵抗特性を利用して振動を検出する。
【0096】
我々はここでこの方法の感度を推定する。非線形性が始まったときの臨界振幅を読み取ることによって、我々は共振ビーム30の振動の振幅を測定できる。この臨界変位振幅はビーム30の形態だけで決まり、下記式:

(式中、hはビームの振動方向の厚さでありそしてνはGaAsのポアソン比である)で近似的に表わされる。Q=2600及びν=0.31という測定値を挿入すると、我々はxc=6nmを得て、これは約45mVの駆動レベルで維持される。最小の解像可能な信号は0.1mVの駆動と約5μAの検出電流で達成される。したがって、我々は最高の可能な電流2μAで、xc/450/4=0.03Å又は3x10-3Å/√Hzにおける共振を検出することができ、このことは4.2Kにおけるビーム抵抗由来のジョンソンノイズに基づいた我々の推定と一致している。対応する力の感度は、75fN/√Hzであり、このことは、光学的干渉法や起磁気法で小さいNEMSの共振器又は変換器を検出する従来の方式に類似している。ビームを非線形に駆動するのに必要な力の閾値は1.5nNである。変位の解像度は、より高い移動度を有する2DEGヘテロ構造体を使うことによって又は約100mKにて最新式の低温前置増幅器で操作することによって改善することができる。
【0097】
図4aと4bにおいて我々が加える駆動力は印加するACゲート電圧に対応していることに留意すべきである。ゲートに対するDCバイアスによる共振周波数又は共振のマグニチュードの有意な変化を我々は見つけられなかった。これは、ゲート32とビーム30の間の静電力とは異なる結合機構であることを示している。静電力はゲート電位のDCとAC成分の積に比例するので、その応答はDCゲート電圧で直接スケール(scale)すべきである。これは結合プレート間の直接のクーロン相互作用を想定している。我々の平面内ゲートの配置構成におけるビームの正味電荷はC(Vg(0)+vgeiωt)(式中、Vg(0)はDC信号のマグニチュードであり、vgはAC信号のマグニチュードであり、そしてCは推定値が18aF/μmの、ゲート32における共面2DEG領域間のキャパシタンスでありこの推定値は平行プレートの場合に比べて非常に小さい)で表わされる。公称1VのDCゲート電圧の場合、ビーム30上には数百の誘発電子電荷があるだけである。ゲートに加えられた電界のアッパーバウンド(upper bound)は(Vg(0)+vgeωt)/d(式中、dは図2に示すビームとゲートの離隔距離である)で表される。したがって、角周波数ωでビーム30に加えられる全静電力はf=CVg(0)vgiωty0/d2(式中、y0はスタティックオフセット(static offset)である)で表される。この力の投射だけが、図3bの図面の平面に垂直の平面外(z)方向にビームを駆動する。この力の有効z成分の妥当な推定値は下記式:

(式中、y0は懸架ビーム30が例えば未修正非対称(uncontrolled asymmetry)であることによる静的ずれ(static offset)である)で表される。装置12において、ゲート32に対するビーム30の10nmの不整合を観察できなければならないが観察されなかった。それ故、我々はこの数値をy0の推定値の上限値とする。公称1VのDCゲート電圧において、45mVのACゲート電圧すなわち静電駆動機構から発する力はfy=0.2pNと計算される。これは、ビーム30を非線形応答で駆動させる必要な力より4桁小さい。
【0098】
厳密に対称構造のヘテロ構造を有する懸架ビームの静電正味応力はゼロである。したがってこの場合、そのダイポール-ダイポール作動は二次効果(second order effect)である。このヘテロ構造体の内蔵歪は、意図的に設計した非対称の量子ウエル構造の層によって誘発される。あるいは、圧電層を含むバイモルフ(bimorph)構造をつくることによって、その二層構造の格子のミスマッチのためビームに内蔵応力を発生させてビームに静電ダイポールを誘発させることができる(図2に示すp2)。上記圧電層はGaAs又は他のIII-V族の半導体のPZT、ZnOなどでもよい。図2に示す他の成分p1は、サイドゲートの2DGE層と導電基板もしくはチップキャリヤの間に生成する。静電A.C.力がない場合、我々は、新しい駆動機構すなわちショートレンジのダイポール-ダイポール相互作用が我々のナノ電気機械システムでは有力であると提唱するものである。このダイポール-ダイポール相互作用のポテンシャルは下記式:

で表すことができ、これは、ビーム30上のダイポール電荷セパレーション(dipole charge separation)41,p1及び図3bと図2の平面に垂直に取ったディフェレンシャルスライス(differential slice)dr中のゲート32上のディフェレンシャルダイポール電荷セパレーション43,dp2を示す図2に描かれた二つのダイポールモーメントdp1とp2間のRFカップリングと理解できる。ここでdp1はゲートのスライスのダイポールモーメントdp1rε0Lvgeiωtdrであり、そしてp2は歪んだGaAS/AlGaAsのビーム30の圧電効果によって固定されたダイポールモーメントである。zは平面外のビームの変位p2=3E dA wt2 z/Lであり、そしてL、w及びtは、図2に示すようにビームの長さ、幅及び厚さである。εrはGaAsの比誘電率である。ここでEは約85Gpaのヤング率であり、約3.8pC/NのdAはAlGaAsの適当な圧電定数である。z方向に生成する力は下記式:

によって表わされる。
【0099】
この力はDCゲート電圧の影響を受けず、我々の観察結果と一致している。45mVのACゲート電圧による駆動で、fzはこの機構から1.2nNであると推定され、直接のクーロン相互作用より4桁大きい。これは、非線形開始時に我々が観察する力と一致している。そのショートレンジの特性のため、このダイポール-ダイポール相互作用はNEMSに独特のものでありマイクロ電気機械システム(MEMS)では微々たるものである。
【0100】
我々は我々の歪に敏感な装置の温度依存性も試験した。減圧下、三つの異なる温度で測定した。その試験結果を図5のグラフに示してある。その駆動と検出の電流は同じレベルに保持されている。装置12は液体ヘリウムと液体窒素の温度で際立って良好に作動するが室温では応答が低下する。共振時の信号強度が温度によって減衰することは、2DEGの移動度が高温で有意に低下することで説明できる。高温で増大したビームの2端子間の抵抗は大きい分圧器として働くので、誘発された信号電圧のごく小部分だけRF増幅器38の入力の両端で降下する。
【0101】
パラメトリック増幅器
二重にクランプされたビームの固有の機械的非線形性に純粋に基づいたナノメートル規模の機械パラメトリック増幅器を提供する。縮退モードで作動すると、二倍の信号周波数におけるビームの力定数のパラメトリック変調が、ビームの末端に長さ方向の交番力を加えることによって起こる。これは、パラメトリック振動の初期に安定したほぼ百倍の小信号の機械利得を提供する。大信号の場合、装置が制限前置増幅器として作動するこの方式ではその利得がこの当初の利得以下で飽和することを我々は見つけている。最高の利得において、熱力学的限界でのノイズに整合した性能が達成される。簡単な理論モデルが、観察された現象を説明しそしてこの方法が出力に結合された量子制限ナノ電気機械システムを達成する優れた将来性を提供することを示している。
【0102】
図6の顕微鏡写真に示すような例示実施態様に記載されているパラメトリック増幅器は、懸架ナノ機械変換器すなわちビーム30上で、固有周波数17MHz及び利得-帯域幅積2.6kHzにて作動し、1000に近い小信号の利得を得るために僅か数mVのポンプ電圧と1μW程度の電力しか必要としない。ばね定数の変調は純粋な機械的変調であるので、従来技術のようなキャパシタプレートを全く必要とせず、製造形態によって正確に制御され、従来技術のようなプレストレス(prestress)は全く必要でない。例示実施態様で採用されている機構は65dBを超える高い利得-ダイナミックレンジ積を得ることができる。熱機械的揺動の位相依存増幅は4Kで観察される。装置40の剛性のため、検出感度は、電気読取り増幅器38のノイズによって制限されるので熱機械的ノイズを観察するには不十分である。しかし装置40は、機械的前置増幅器として作動し、小振幅の高調波モーション( harmonic motion)に対するSN比が劇的に改善されることを示す。
【0103】
図6に示す装置40は、シリコン基板上の炭化ケイ素のエピタキシャル層から電子ビームリソグラフィーで製造した。装置40は、前記炭化ケイ素層を垂直にプラズマエッチングすることによってパターン化し次いで等方性プラズマエッチングで支持シリコンを除いて懸架した。装置40は、図6の顕微鏡写真に示すように、両端を垂直のポンプビーム42で支えられた信号ビーム31で構成されている。装置40の横の大きさは17.5μmで、その厚さは200nmである。装置40は、減圧下、4Kにて、チップ表面に対し垂直のB=8テスラの磁界内で測定されるので、ローレンツ力が信号ビーム31を励起させ次に起磁気技術を使ってビームの運動を検出する。
【0104】
信号ビーム31のばね定数は、図7の線図に示すように、ポンプビーム42を通じて経路44を通って周波数2ω0で流れる交流電流Iを加えることによって変調される。なおω0はビーム31の基本周波数である。この電流が生成するローレンツ力 Tは、信号ビーム31に正弦圧縮力と正弦張力を加え、下記式:

(式中、L2はポンプビーム42の長さであり、そしてζはポンプビーム42の有限復元力を説明する形態係数である)で表わされる。原則として、ζは有限エレメント刺激法から測定できる。縦方向の力は、信号ビーム31の平面内運動の曲げばね定数を下記式:

(式中、Eはヤング率であり、そしてw1、L1及びt1は信号ビーム31の幅、長さ及び厚さである)で表わされる振幅で摂動させる。
【0105】
小さい変位の場合、ポンプ及び調和励起(harmonic excitation)Faの影響下の信号ビーム31の運動の式は下記式:

(式中、mは有効質量であり、Qはクオリティーファクターでありそしてfnは熱機械的ノイズである)で表わされる。限界ポンプ振幅:

を超えると、パラメトリック増幅器の利得が発散する(diverge)。閾値未満のポンプ振幅の場合、機械利得は励起とポンプの間の相対位相Φ:

によって決まる。
【0106】
利得のこの式は、kpが閾値に近づくにつれて発散するが、事実上システムの非線形性は利得を飽和させる。我々のシステムの有力な非線形性は曲げによって幾何学的に剛性にする性質であり、これは半剛性の支持体でクランプされた信号ビーム31の縦方向の伸張によってもたらされる。飽和のモデルを開発するため、我々は、下記のように運動の式に3次の伸張項を組み込む。

(式中、

である)。
【0107】
我々が基本周波数の運動を検討する場合、最大の利得Gを得るため位相Φ=0を選ぶと、

であり、その3次項がばね定数を2ωoで摂動させてポンプの作動を妨害する。

【0108】
我々は、上記1次項を無視して運動x=Gx0の定常振幅の下記式を導出する。

【0109】
上記パラメトリック増幅器の応答は図8の模式図に示す回路で測定する。ポンプビーム42と信号ビーム31に対する同軸ケーブル46と48の長さはそれぞれ、2ωoとωoにて1-1インピーダンス変成器として働くように選択される。ポンプビーム42はケーブル46を通じて、2ωで作動する駆動発振器(driving oscillator)50及び等価の熱電ノイズ源60に結合されている。ωで作動する実質的な出力発信器52は、負荷抵抗54とケーブル48を通って信号ビーム31に結合され、信号ビーム31のパラメトリック振動を示す出力基準信号を含んでいる。信号ビーム31からの出力は増幅器56を通ってディスプレイ又は測定装置58に結合されている。そのときの電気応答は、機械運動の、信号ビーム31のベースライン電気抵抗上への重合わせである。我々は、スペクトル分析器で測定される、共振時と共振していないときの電気応答を下記式に従って比較して機械利得を測定する。

【0110】
上記ポンプの効力を確証するため、我々は、信号源のネットワーク分析器50を図8に示すスペクトル分析器58を入れ替えて、共振ピークの周波数偏移をDCポンプ力の関数として測定した。図9に見られる一致から、我々は周波数偏移がΔf/f=1.59/mNであることを見つけて、ポンプビーム42の有限復元力を無視する((1)においてζ=1と仮定する)。式(2.2)から予想される変動は、Δf/f=6.24/mNである。これらの数値が一致していないことは、ポンプビーム42の剛性が信号ビーム31に加えられた有効ポンプ力を実際に低下させることを示唆している。ζを評価するため、我々は、図10の線図に示すように合計1nNの静的力(static force)をポンプビーム42を横切って加える、構造体の有限要素機械的刺激法(finite element mechanical simulation)を実施した。そのモデルの信号ビーム31の圧縮力計算値87pmから、下記式にしたがってその信号ビーム31に加えられた有効圧縮力を見出すことができる。

【0111】
こうして我々はT=0.235nNでありかつζ=0.235であることを知り、我々の周波数偏移の測定値は実際は6.77/mNになる。予想値と一致することは我々のモデルがポンプの有効性を説明していることを示している。
【0112】
図11は、観察されたパラメトリック効果がポンプビーム42に対するローレンツ力によるものであることをさらに証明するため、図8に示す増幅器の2種類の磁界における位相依存性利得を測定した結果を示すグラフである。信号ビーム31はその基本集波数ω0で駆動されそしてポンプビーム42は可変移相器(図示せず)によって信号ビーム31に関連して2ω0で駆動される。信号ビーム31の運動は、信号ビーム31の運動とポンプビーム42の励起との間の位相差によって、増幅されるか又はディアンプリファイ(deamplify)される。式(2.5)が示すように、最大利得はΦ=π/2で生じそして最小利得はΦ=0で生じる。式(2.1)と(2.2)が示すように、磁界が強力なほど、ポンプが誘発する周波数偏移が大きくなり、その結果、最大利得は大きくなり最小利得は小さくなる。増幅とディアンプリフィケーションは、ポンプが丁度2ω0のとき最大であるが、利得の実質的な変動はオフ共振(off-resonance)時に可能であり、わずかにオフ共振でωにて励起する場合、サイドバンドがω及び2ω0−ωで一つずつ合計二つ生成する。図12は、最大の利得を得るために設定された移相で固定された励起に対する信号ビームの応答の最有力なサイドバンドωを示す。高い利得において、ポンプの作動は共振の帯域幅を実質的に小さくする。ポンプの電圧が8.2mVのとき、帯域幅は1760Hzから35Hzまで低下する。
【0113】
ポンプの振幅が閾値に近づくと、共振中のパラメトリック増幅器の利得は劇的に増大すると予想される。我々の装置が閾値のすぐ下の8.2mVで作動すると、図13のグラフに示すような増幅された熱機械的揺動を観察するのに、Φ=0における利得39で十分である。信号ビーム31の熱機械的揺動に対する応答は、パラメトリック増幅器によって狭められるローレンツ線形である。揺動力はポンプに固有のものではないので、このピークに対する利得は位相について平均すべきである。平均利得を39と仮定すると、ピークの振幅は、550 fm/Hz1/2又は14 fm/Hz1/2の運動のrms振幅に一致する。共振時の単純な調波発信器の熱機械的揺動の振幅は下記式:

で表わされ、ばね定数k=mw02の場合、32nN/mであり、これは信号ビーム31の場合、26fm/Hz1/2の値になる。これらの値が一致しないのは平均利得の近似及びばね定数の計算のエラーが原因であろう。
【0114】
我々は、スペクトル分析器を、ポンプビーム42に関連する無線周波数ロックイン増幅器(radiofrequency lock-in amplifier) (図示せず)と取り替えることによって、増幅された熱機械的揺動の位相依存性を観察した。図14が示すように、ポンプ電圧が閾値に近い場合、前記揺動は明らかに増幅されるが直角位相(quadrature)内だけである(すなわちωと2ωの間の位相関係)。その直角位相内の全ノイズは、線形電気増幅器56の入力における位相独立性ノイズ(phase-independent noise)が優勢なので、他の直角位相内で影響は全く観察されない。
【0115】
信号ビーム31のブラウン運動が機械ノイズを付加すること無しで増幅されるように、調波運動もそうである。我々のシステムでは、電気増幅器がノイズのレベルを支配しているので、信号ビーム31の調波運動の測定に対するS/N比は、パラメトリック増幅で劇的に改善できる。図15のグラフは、運動のrms振幅1.2pmを生ずる調波励起の利得と各直角位相内の全ノイズレベルを比較している。限界のポンプ振幅の近くでは、S/N比が、Φ=π/2の直角位相についてはほぼ100倍改善される。電気増幅器56の入力ノイズが熱機械的ノイズを越えて優勢なので、S/N比はΦ=0の直角位相でも少しであるが改善される。この結果は、パラメトリック増幅器の最も基本的な用途すなわち機械的前置増幅器としての用途を説明している。
【0116】
増幅器のダイナミックレンジは、この用途では非常に重要である。ポンプが不在で調波励起が47fmの場合、我々の装置は図16のグラフに示すように800という高い利得を示す。しかし励起が大きくなると、利得ははるかに低い値で飽和する。図16は、利得が飽和し始める時点は運動の振幅だけで決まり励起では決まらないことを明らかに証明している。飽和はrms振幅-360pmで始まり、その増幅器のダイナミックレンジの上限によく近似している。ダイナミックレンジの上限は、結局、システムが非直線性であることの直接的な結果である。我々のシステムでは、その優勢な非直線性が、曲げばね定数の拡大(expansion)時の3次項であると予想される。
【0117】
ピエゾ抵抗NEMS変位変換器の減圧下での感度
直面する最も重大な工学的課題の一つは、NEMSのカンチレバーの変位を測定する読取りシステムを最適化することである。図51のSEM写真に実用装置の一例を示してあり、カンチレバー190にピエゾ抵抗歪変換器が組み込まれている。この変換器は、カンチレバー190の運動を、この場合はカンチレバー190の頂部表面に配置されたp+ドープSiエピ層からパターン化された導電経路の歪が誘発する抵抗の変化によって電気信号に変換する。例示のために図51の顕微鏡写真の斜視図に示すバイオNEMS変換器すなわちカンチレバー190は、「そのベースにカットアウトを有する飛込み板」の形態であると類比することができる。装置190の形態は、1又は2以上の幅がbのレッグ194で構成された集中領域(constriction region)192内に主として消散(dissipation)を起こさせ、この領域192はカンチレバー190の曲げ剛性を高めたり又は各種設計することができる。またカンチレバー190には、従来の電極(図示せず)が設置され、その結果、カンチレバーが曲がるときのレッグ194のピエゾ抵抗の変化を、バイアス電流を提供する従来の外部測定回路(図示せず)が測定できると解すべきである。さらに、外部駆動力は、用途及び設計上の選択によって従来の方式でカンチレバーに加えたり又は加えないでおくことができる。好ましい実施態様では、レッグ194が二つある。長さがl、幅がw、厚さがt、減圧下の共振周波数がω0/2π及び力定数がKであるカンチレバー190のバイオファンクショナライズド(biofunctionalized)チップ196は10K程度の温度上昇に耐えることができると我々は考えている。
【0118】
我々は、変換器の性能をその応答度R(単位:ボルト/m)すなわちR=IGで特徴付けた。なおIはバイアス電流でありそして

とRTはそれぞれ変換器のゲージ率と二端子間抵抗である。
【0119】
共振の近くでは熱機械的変位の揺動の力スペクトル密度は

で表わされる。読取りプロセスでの電気ノイズから生じる追加の三項も含めなければならない。これらの項は入力にすなわち変位ドメインに、係数1/R2を使って戻さねばならない。第一の項はピエゾ抵抗変換器の熱電圧ノイズから生じ(SVT=4kBTRT)、一方第二の項は読取り増幅器の電圧と電流ノイズから生じる(SVA=SV+SIRT2;式中SVとSIはそれぞれ増幅器の電圧と電流ノイズのスペクトル密度である)。
【0120】
これらの揺動を合計すると、我々が全結合変位ノイズ(total coupled displacement noise)と呼ぶものが得られ、これは全システムの実際の変位感度である。

【0121】
これから我々は、下記式:

(式中、Kはばね定数でありそしてQはカンチレバービームのクオリティファクターである)で表わされる、共振時の電気機械システムの結合力感度を求めることができる。
【0122】
単純なカンチレバーの形態と比べて幾分複雑な図51に示す機械装置は、コンプライアンス度が高くしかも低質量である(全体の大きさを小さく保持できる場合)。そのばね定数は単純なカンチレバーのそれより複雑であり、***修正EQN(EQN corrected)***として表わすことができる。

【0123】
装置の形態を特徴付ける変数は、図51に記載してあり、三種のプロトタイプのSiナノカンチレバーの物理的パラメータを示す表3に、ここで考察するカンチレバーについて要約してある。表にしたこれらパラメータは、厚さt;幅w;長さl、集中幅(constriction width)b及び長さl1;減圧下の周波数ω0/2π、力定数K及び抵抗RTである。
【表3】

【0124】
例示装置のカンチレバー190は、厚さが130nmで最上部の30nmは高度に(p+)ドープされたSiエピ層で構成され、そのSiエピ層の下側に位置する残りの100nmは真性のSi層である。そのピエゾ抵抗変換器は、<110>方向にそって配向されたレグ194の電流経路によってp+ボロンドープSi(4x1019/cm3)からパターン化される。このカンチレバーのゲージ率は下記式で表される。

【0125】
パラメータΠLはp+変換器の材料のピエゾ抵抗係数である(p形<110>シリコンの場合4x10-10m2/Nである)。パラメータβ(0〜1の係数)を使用して導電層の有限の厚さを説明する。キャリヤが無限小厚さの表面に閉じ込めれるようになると、βは単調に1に近づく。我々は、我々のカンチレバーについてはβが約0.7であると予想している。係数βは、導電層の厚さが有限であるためGが減少をすることを説明し、キャリヤが無限小の厚さの表面層に閉じ込められるようになると、βは1に近づく。我々は、我々のエピ層についてはβ=0.7と推定している。図51に示すカンチレバーの場合、我々はG=3.3x107Ω/mであると観察している。写真の変換器の形態の場合、2端子間(平衡)抵抗RTは15.6kΩである。これはG/RTが約2.1ppm/nmであることを示していることに留意すべきである。
【0126】
我々は、ここでレッグ194の回路に加えられる電流バイアスのレベルに対する制約が何かについて検討する。達成できる力の感度は、応答度がバイアス電流に比例している場合(R=IG)、明らかに、耐えられるバイアス電流の最大レベルによって決まる。最大の実用的レベルは、許容可能とみなされる最大の温度上昇によって決まる。原型装置の形態は主に、幅がbの集中領域192内に消散を起こさせる。我々は、10K程度の最大温度上昇に耐えられると推定している。我々はこの問題を、長さがl1で断面積がAのビーム190の集中領域192の寸法の問題すなわち支持末端195に流入する熱の問題として処置する。熱がすべて減圧を通じて交換されるわけではないと推定される。放散領域x<l1において、

であり、式中kSi=1.48x102W/mK at300Kはシリコンの熱伝導度である。カンチレバー190の集中領域192の上の領域における放散を無視できると仮定して、我々は境界条件:x=l1においてdT/dx=0を適用する。この簡単な熱伝導係数の計算は、10Kの最大温度上昇は定常バイアス電流:I=60μAで達成され約60μWの電力が消散されることを示す。このバイアス電流に対して、我々の原型の装置は応答度R=IGが約2μV/nmになる。
【0127】
これらパラメータの知識によって、我々はここで原型システムの結合力感度を推定できる。カンチレバー190の場合、室温から出発して10K温度が上昇すると仮定すると、力領域に対して変換器が誘発する熱電圧ノイズは、2000のQで共振すると

であることが分かっている。電圧と電流ノイズのレベルがそれぞれ(入力に対して)約4nV/√Hz及び約5fA/√Hzである典型的な低ノイズ読取り増幅器の場合、これらの同じパラメータは増幅器の項

を生成する。このカンチレバーの場合、熱機械的変位の揺動の力スペクトル密度は式:SFV=300aN/√Hzで表わされる。改善されたクオリティーファクターに対する全変換器ノイズは表4に示してある。
【0128】
熱機械的変位由来のノイズが明らかに優勢である。これは、寸法を小さくして共振周波数を大きくしばね定数を低くすることによって減らすことができる。
【0129】
上記装置の大きさをさらに小さくすることによる利点を例示するため、我々は、形態は図51に示したものと同一であるが、l=6μm、t=110nm、w=900nm、B=300nm及びl1=3μmである二つのより小さいカンチレバーを検討する。この装置をカンチレバー190と同じエピ層の厚さ比で作製すると仮定すると、RT=19kΩ及びG=2.9x109Ω/m(表4のカンチレバー#2)になる。
【0130】
カンチレバー#2の場合、我々はやはりそのチップが10Kの温度上昇に耐えられると仮定している。Q=2000の場合、変換器が誘発する力ノイズが

であり、一方その力ドメインに関連する読取り増幅器の寄与(contribution)は

であることは我々には分かっている。その熱機械的変位の揺動の力スペクトル密度はSFY=249aN/√Hzである。Q=30000の場合、その熱機械的変位の揺動の力スペクトル密度はSFY=64aN/√Hzである。
【0131】
考えられるもう一つの装置の“カンチレバー#3”はカンチレバー#2と同一であるが、全寸法が約1/3に一様に小さくなっている。この装置の場合、RT=67kΩ及びG=3.0x1010Ω/mである。もう一度Q=2000を利用すると、変換器が誘発するジョンソン力ノイズはSFY=1.5aN/√Hzになり、その力ドメインに関連する増幅器の寄与は

になる。その熱機械的変位の揺動の力スペクトル密度はSFY=83aN/√Hzである。Q=30000の場合、その熱機械的変位の揺動の力スペクトル密度はSFY=21aN/√Hzである。許容される他の熱量に対する力感度(force sensitivity)は表4に示してある。
【表4】

【0132】
ドーピング密度が4x1019/cm3の場合、空乏の長さは2nm程度なので、カンチレバー#3全体を実行可能のドメインに入れて厚さを30nmより薄くプッシュ(push)し続けることは実際的ではない364MHzのカンチレバー#4を達成するため、厚さtを有意に薄くすることなしに長さを短くした。ばね定数を増大することによって課された制約を除いて、結合力感度は、室温でクオリティーファクター2000の場合、SFY=62aN/√Hzであり依然として優れている。各種クオリティーファクターの4種のカンチレバーすべての感度は表4に要約してある。表5は4Kの場合の類似のデータを示す。
【表5】

【0133】
NEMSベースのピエゾ抵抗力の検出
室温と9Kにおけるピエゾ抵抗検出器の力感度はさきに考察している。室温での力感度の圧力依存性も考察されている。原子間力顕微鏡(AFM)を使用して図51aに示すようにカンチレバーの先端を既知の距離だけ移動させてゲージ率を直接測定した。その結果、直接測定値G=dRT/dx=3x107Ω/mが得られ、我々は、β=0.7の場合Gが約6x108Ω/mであると計算した。この不一致は加工中の拡散が原因である。特に、カンチレバーがパターン化された膜が早期加工ステップ中にKOHエッチング法を使って形成されたこれら特定の装置をマスクするため、温度による拡散が懸念されβを期待値より低下させる850℃にてLPCVDで窒化ケイ素を成長させたが、この高温マスキングステップは、膜を形成するのに、DRIEエッチング法をKOH法の代わりに使う場合必要でない。
【0134】
共振の近くでの熱機械的揺動の力スペクトル密度は下記式:

(式中、Yは減衰係数(kg/s)でありf0は共振集波数でありそしてQ=mf0/Yはクオリティーファクターである)で表わされる。
【0135】
共振の近くでの熱機械的揺動の電圧スペクトル密度はしたがって下記式:

で表わされる。
【0136】
これは前記増幅器で測定され、下記式:

(式中、Rbiasは試料に対して並列に接続されたバイアス抵抗器のインピーダンスであり、Rampはカンチレバー190が電気的に結合されている増幅器(図示せず)の入力インピーダンスでありそしてCは前期増幅器の入力キャパシタンスであり、SVmeasuredは前記増幅器への入力で測定されるジョンソンノイズでありそしてSVAは前記増幅器からの電圧スペクトル密度である)で表わされる。
【0137】
図52は、上記ゲージ率を測定するのに使った装置に類似の寸法の装置の、室温で減圧下の熱機械ノイズの共振のピークを示す。試料の抵抗は16.7kΩであり、10.5kΩの抵抗器と並列になっている。増幅器の入力キャパシタンスは33pFでありそして入力抵抗は100kΩである。したがって我々は、605.5kHzにおけるジョンソンノイズ5.7nV/√Hzからのバックグランドを予想している。前置増幅器のノイズは、組み合わせたバックグランドは6.2nV/√Hzと予想して、この周波数で2.5nV/√Hzと測定された。バックグランドの測定値は9.13nV/√Hzであった。このカンチレバーの場合、共振周波数の測定値は605.5kHzであった。減圧下でのクオリティーファクターの測定値は550であった。したがって式8.1から熱機械的揺動からの力スペクトル密度は1.5fN/√Hzである。我々は、式8.2と式8.3をインバート(invert)しローレンティアンフィット(Lorentzian fit)を実験データに使ってゲージ率を測定しG=1.0x108Ω/mを得た。
【0138】
図52への挿入図はこの装置のクオリティーファクターの圧力依存性を示している。圧力は、200mTorrを超えると明らかに減衰効果がある。
【0139】
図53aは、液体ヘリウムのクリオスタット内に入れた同じ装置の共振ピークを示す。48μAのバイアス電流を使用したが、この温度での最大加熱(装置の先端で起こる)は、

で表わされると推定される。その結果装置の先端の温度は約9Kになる。この温度で共振周波数は552kHzになりそして2.1x103のクオリティーファクターが得られた。力感度は式8.1で表される。前記のクオリティーファクターの測定値と推定温度9Kを使って、式8.1から力感度113aN/√Hzが得られる。式8.2からゲージ率を外挿することができる。この方法で、ゲージ率1.6x108Ω/mが得られ、すなわち室温での値の1.6倍であり、これは温度の低下でピエゾ抵抗係数が増大することによって起こる。
【0140】
図53bは、同じチップに同時に作製した同寸法の別の装置の同じデータを示す。このカンチレバーの抵抗は14.4kΩである。このカンチレバーの共振周波数は620kHzでかつクオリティーファクターの測定値は2.11x103であった。これらの値を使って式8.1から力感度126aN/√Hzが得られる。
【0141】
ピエゾ抵抗センサのスケーリング
公称真性のシリコンの頂面に薄く重度にドープされたシリコン層を有するピエゾ抵抗器を設計する。その装置をより小さい寸法にスケールすると、その薄いシリコン層の空乏層の作用がますます重要になる。キャリヤの分布は、コンバージェンス(convergence)が達成されるまで二つの手順を繰り返すことによって以下のように計算する。第一の手順は電荷の中性が達成されるまでフェルミ準位を調節する。第二の手順は、下記式:

(式中、EVは価電子帯のエネルギーであり、eは電子の電荷であり、ρはキャリヤの体積密度でありそしてεは比誘電率である)に従って価電子帯のベンディング(bending)を計算する。ρ(x)はフェルミ統計によって与えられる電荷密度であり、ρ(x)=e(p(x)―n(x))で表され、この式中、

は境界条件:

(式中、σは表面キャリヤの密度である)のもとでの陽性キャリヤの密度である。式3.2と3.3の表面準位の密度σは、ケイ素-二酸化ケイ素の界面の界面準位密度の刊行されている値に基づいて推定した。
【0142】
フェルミ準位を設定して電荷の中性を達成すると、下面において境界条件:

(式中、z=tは公称真性ケイ素の下面を示し、これは通常、変換器すなわちカンチレバーの下面である(zは平面外の方向である))が確実に達成される。
【0143】
フェルミ準位EFは、電荷の中性が維持される条件:

(式中、

はイオン化アクセプタサイトの密度であり、EAはイオン化アクセプタサイトのエネルギーである)によって設定される。
【0144】

であり、
式中、βは1/kTであり、そしてEcは導電バンドのエネルギーである。式3.1と3.6は、コンバージェンスが達成されるまで繰り返し解いた。
【0145】
図17は、ドーパント層の厚さが30nmでドーパントの濃度が4x1025m-3である厚さ130nmの試料のキャリヤの分布を示す。ドープ層の厚さが7nmの、厚さ30nmの試料のキャリヤ分布は図18に示してある。両方の場合、キャリヤは良好に閉じ込められている(confine)。
【0146】
いま我々がカンチレバー190などの通常の2層構造で達成できる最小の厚さに近づいていることは、図18から明らかである。その寸法をこれ以上直接小さくすることは、空乏層の厚さがドープ領域の寸法に対して重要になるので、性能を犠牲にすることなしには不可能である。したがって新しい技術が必要である。
【0147】
ピエゾ抵抗NEMSセンサへのキャリヤの閉込め
キャリヤの閉込めは、図54a、54b及び54cに示すようにキャリヤを量子ウエル構造体中に閉じ込めることによって実質的に増大することができる。これらの図において、導電/ピエゾ抵抗検出が量子ウエル(QW)層300で行われそして「閉込め層」と呼称される層302がキャリヤをQW層300に閉じ込める働きをする。これを達成するため、閉じ込め層302は、p型センサの場合、有意に低い価電子帯の端縁を有していなければならず又はn型センサの場合、有意に高い伝導帯の端縁を有していなければならない。0.4eV以上の程度の帯域端縁エネルギーの差が、良好なキャリヤ閉込めのために重要であると考えられる。
【0148】
図54bに示す構造を具体的に実現するには、頂部と底部の閉込め層302と304は(100)平面で成長させた真性シリコンでよい。量子ウエル層300はpドープされたゲルマニウムでよい(これもシリコン層上にエピタキシャル成長させることができる(100)平面で成長させるが、ホウ素、インジウム及びガリウムがゲルマニウムのpドーパントの例である)。次にピエゾ抵抗センサを<110>方向にパターン化できる。<110>方向に配向されたp型ゲルマニウムのピエゾ抵抗係数は、同じ方向に配向されたシリコンのそれより50%大きい。ゲルマニウムの価電子帯端縁はシリコンのそれより0.46eV高くこの用途でキャリヤを閉じ込めるのに十分である。
【0149】
これらの材料は、量子ウエル300として再度働くゲルマニウム及び下層302として働く真性シリコンとともに図54cに示すピエゾ抵抗層を実現するために使用される。
【0150】
使用できる材料の具体例は本発明を決して限定するものではない。キャリヤを2DEG又は量子ウエルに閉じ込める技術分野はよく開発されているので、この分野の知識と技術はすべて本明細書に記載されているセンサのようなセンサを製造するのに使用できる。
【0151】
上記のような構造体にも、キャリヤ閉じ込めのため(ウエルの深さが有限であるため)及び実際の製造上の問題のため(多数の層のため)、達成できる最小の厚さに制約がある。図55に示すように支持層として絶縁体を使うことによって、センサの厚さを一層薄くできる。絶縁層306に使用できる材料の例は二酸化ケイ素又は窒化ケイ素であるが、本発明にはあらゆる絶縁体が含まれておりこれら2種類に限定すべきではない。
【0152】
ピエゾ抵抗センサの厚さを薄くすると感度が増大するという利点は、「ピエゾ抵抗NEMS変位変換器の減圧下での感度」の章で証明した。ここで説明する発明は、真性シリコンの上に重度にドープされたシリコンを有する従来の2層構造を使って達成できる厚さ以上に厚さを薄くできる。
【0153】
VHF NEMSの平衡電子変位の検出
ナノ電気機械システム(NEMS)の変位を電子検出するのに使う広帯域無線周波数(RF)の平衡ブリッジ(balanced bridge)技術は、2ポート動作検出機構(two-
port actuation-detection configuration)を使用し、この機構は、NEMS変換器の変位に比例するバックグランドゼロの(background-nulled)起電力(EMF)をDC磁界に生成する。この技術の有効性は、非常に高い周波数(VHF)で大きい静電バックグランドインピーダンス(large static background impedance)が付随するNEMSの 電気機械的共振から起こるインピーダンスの小さな変化を検出することによって示される。この技術は、ドープされた半導体のNEMSなどの実験システムの試験を行うことができるので、他の高周波数変位変換回路に利益をもたらす。
【0154】
図19a、19b及び19cは、起磁気反射とブリッジの測定に関する図である。例示した実施態様は起磁気NEMS装置であるが。本発明の精神には、静電気、熱ノイズ、音声などの運動を誘発する手段の如何にかかわらず、すべてのタイプのNEMS装置が含まれていると解すべきである。図19aは、信号を発するNEMS装置が一つだけ存在する起磁気反射を例示する構成図であり、図19bは、互いに平衡した信号を発する二つのNEMS装置が存在するブリッジ測定を例示する構成図である。両測定法において、ネットワーク分析器68又の発振器が駆動電圧Vinを供給する。図19bに示すブリッジ測定の場合、Vinは電力分割器70によって二つの位相が合っていない成分に分割された後ポート64と66に印加される。RLはネットワーク分析器68の入力インピ−ダンスであり、RSは同分析器の電源インピーダンスである。例示実施態様ではRS=RL=50Ωである。
【0155】
NEMS装置60bが、図19bに、複素機械インピーダンスZm(ω)及びDC結合抵抗Reを有する並列RLCネットワークとしてモデル化されている。ΔRはNEMS装置60aと60bのブリッジの2アーム間のDC不整合抵抗である。送信ライン、特に高周波数でブリッジ測定を行う際の送信ラインは、電気経路の長さが異なっている場合、位相平衡全体を乱すことがある。図19cは、厚さ1μmのAlGaAs犠牲層の頂面に厚さ50nmのn+GaAs構造層と厚さ100nmの真性GaAs構造層を有するエピタキシャル成長させたウェーハから製造された図19bに示す代表的なブリッジ装置の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、検出ポート62及び動作ポート64と66の間に延びるNEMSビームすなわち装置60aと60bを示している。この顕微鏡写真に、オーム接触パッドが大体見える。二重にクランプされたビーム60a、60bは、寸法が8μm(L)x150nm(w)x500nm(t)であり、平面内基本曲げ機械的共振周波数は約35MHzである。
【0156】
ブリッジの一方の側にNEMS変換器60bを有し他方の側に抵抗がR≒Reの整合実効抵抗器(matching effective resistor)を有する、図19bに示す平衡回路は、検出効率を改善するように設計してある。読取りポート62の電圧Vo(ω)は、ω≠ω0の場合、二つの180°位相が合っていない電圧を、回路中の駆動ポート64と駆動ポート66に印加することによってゼロにする。我々は、一つの変換器と一つの平衡抵抗器の代わりに二つの同じ二重にクランプされたビーム変換器を平衡点62の両側に作製することによって回路を優れた感度で平衡させることができることを発見した。
【0157】
同等の駆動ポート64と66及び平衡点すなわち検出点62を有する代表的な装置を、図19cのSEM写真に示す。このような装置に、我々は、二つの良好に分離された機械的共振を、図21にグラフで示したように、|ω2―ω1|>>ω1/Q1(式中、ω1とQ1は変換器60a、60bの共振周波数および共振のクオリティーファクターである) (それぞれi=1,2)である各ビーム変換器60a、60bから一つずつ、ほとんど常に得た。図21のグラフは、両方の機械共振の近くで、本発明のシステムが、図19bの走査回路の機械変換器整合抵抗器のモデルによって十分に説明されることを示している。我々はこの挙動を、高いQファクター(Q≧103)及び製造工程中パラメータの局部変動に対する共振周波数の極端な感度が原因であると考えている。
【0158】
第一に、これら改良点を明確に評価するため、我々は、n+(Siドープ)GaAsからのみならずn+(Bドープ)Siからパターン化された二重クランプビームの基本曲げ共振の反射測定法と平衡ブリッジ測定法を比較した。金属化層なしのこれらタイプのNEMS変換器60a、60bの機械的共振を電子検出することは、これらシステムの2端子インピーダンスが非常に高いときがあるので(Re≧2kΩ及びRm<<Re)困難であることが判明した。起磁気ビームを駆動するには金属化することが通常必要であるが、ブリッジ測定の場合は、感度が非常に高いので金属化されていない起磁気半導体ビームを使用できる。それにもかかわらず、我々は、本願に記載のブリッジ法によって、BドープSi変換器の基本曲げ共振を10MHz<f0<85MHzの範囲内で、及びSiドープGaAsビームの基本曲げ共振を7MHz<f0<35MHzの範囲内で検出した。我々のすべての測定において、Rm<<Reという状態は,Rm≦10ΩでかつReが2kΩ<Re<20kΩの範囲内にあるとき当てはまる。
【0159】
ここで我々はn+Siビームから得た我々の試験結果に注目した。これらの装置は、厚さがそれぞれ350nmと400nmのSi層と埋込み酸化物層を有する、絶縁体ウェーハ上にBドープSiを配置した材料から製造した。そのドーピングは950℃で行いそしてその平均ドーパント濃度は、試料の平均シート抵抗:R≒60ΩからNa≒6x1019cm-3と推定した。実際の装置は、光学的リソグラフィー、電子ビームリソグラフィー及びリフトオフステップ続いて異方性電子サイクロトロン共振(ECR)プラズマエッチングと選択的HFウエットエッチングを行って製造した。製造を行った後、試料をチップのキャリヤに接着し、次いでAlのワイヤボンドで電気接続を行った。そのブリッジのポイント62における電気機械応答を、超伝導ソレノイドで生成させた磁界内で測定した。
【0160】
図20aは、25.598MHzにて約3x104のQファクターで共振する二重クランプBドープSiビームを、反射配置構成で測定した結果を上の曲線72で示しそして磁界強度B=0,2,4,6Tに対しブリッジ配置構成で測定した結果を下の曲線74で示したグラフである。駆動電圧は同一である。ブリッジ測定法ではバックグランドが約1/200まで低下した。ブリッジ測定法での共振の位相は、図21に示すように駆動信号に対して180°シフトしている。図20bは両配置構成の広帯域伝達関数の振幅のグラフである。そのブリッジ回路の動作ポートと検出ポートの間の結合は容量結合である。
【0161】
特に、図20aは、寸法が15μm(L)x500μm(w)x350nm(t)でRe≒2.14Ωの装置の応答を反射の配置構成で測定した結果を上の曲線72で示し、いくつもの磁界強度に対しブリッジの配置構成で測定した結果を曲線74で示している。この装置は、T≒20Kにおいて25.598MHzにてQ≒3x104の平面内曲げ機械的共振を行う。そのDC不整合抵抗ΔRは約10Ωであった。約1/200≒Re/ΔRにバックグランドが低下することは、以下の分析で示すようにブリッジ測定法で得たことに留意すべきである。
【0162】
図20bは、ゼロ磁界での比較可能な励振のための両配置構成の広帯域伝達関数の測定結果を示すグラフである。動的バックグランドが、関連振動数の範囲内で少なくとも1/100まで低下することに注意すべきである。
【0163】
Reが約100Ωでブリッジ配置構成内に埋包されている金属化SiCビーム60a、60b中に、我々はVHFバンド(Rm約1Ω)中の深い機械曲げ共振を検出できた。図21は大きさが2μm(L)x150nm(w)x80nm(t)の二つの二重クランプSiCビーム60a、60bの平面内曲げ機械共振のデータトレースを示すグラフである。QファクターがT≒4.2Kにて約103で、198.00MHzと199.45MHzそれぞれに極めて顕著な二つの良く分離された共振がある。これらのビームは、SiCビーム製造に関する下記の方法を利用して厚さがそれぞれ20nmと3nmのAlとTiのトップ金属化層を設けて製造した。
【0164】
ブリッジ型に配置構成されたNEMS装置60a、60bは事実上、分離された動作検出ポート64-62、66-62を有する2ポート装置とみなすことができる。二つのポート64、66の結合は単に機械的性質を有しているだけではなく、その機械的応答はポート64,66間の電子結合が動的にゼロ化されているため電気機械的伝達機能を支配していることは明らかである。
【0165】
我々は最近、基本機械的共振の位相同期ループ(PLL)によって、ブリッジ型に配置構成された二重クランプビーム60a又は60bの周波数の連続追尾を行った。電源インピーダンス Rsは、電源分割器のため、前記ブリッジの両アームで対称であるからZeq'(ω)に明確には組み入れられずReの部分とみなすことができる。事実、ReをRe+Rsと入れ替えるとより一般的な形態を生成する。
【0166】
前記回路のポイント62の電圧は、式4.1と対比して下記式:

で求めることができる。ω=ω0のとき、我々は、信号SとバックグランドBについて式4.2と類似の検出効率を下記式:

で定義できる。
【0167】
ΔRが小さいと、検出効率は1ポートの場合よりかなり高くなる。共振の近くでは、バックグランドは、図20(a)の測定結果によって確認されるようにRe/ΔRの比率で抑圧される。しかし製造法による固有抵抗のミスマッチΔRは、バックグランドの減少に対する最終的な制限ではない。
【0168】
向かい合ったアーム中に可変アクチュエータ64aと移相器66aを挿入することによって、さらに平衡させてバックグランドを減少させることができる。アクチュエータ64aは前記ミスマッチをより正確に平衡させ、一方移相器66aはアクチュエータ64aの挿入で起こった位相の不均衡を補償する。
【0169】
しかし、より高い周波数では、図19bに示す回路モデルしたがって上記の式は、前記伝達関数の測定値から明らかなように不正確になる。容量結合は動作ポート64と66の間で優勢になりかつ平衡ポート62の高周波数での検出は図20bに示したようになり、これはこの方法の全効率を低下させる。回路のレイアウト及びボンディングパッドを注意深く設計することによって、このような問題点は最小限にすることができる。
【0170】
出力インピーダンスReと増幅器の入力インピーダンスRLとの間に存在する有意なインピーダンス不整合の問題:Re>>RLを処置することによってさらに信号を改良できる。例示実施態様、例えば図20aに示す測定では、この出力インピーダンスの不整合は、約40dB程度と推定される信号減衰を起こす。出力インピーダンスが整合している回路62aを使って、ビームと負荷抵抗の間の不整合を避けることができる。
【0171】
NEMS装置のエネルギーの消散
ナノメートル規模のドープビーム変換器で測定することによって、NEMS装置の特にNEMSの表面及び表面の吸着物から生ずるエネルギー消散の機構を洞察することができる。試験された周波数の範囲:10MHz<f0<85MHzで測定されたBドープSiビームのQファクター:2.2x104<Q<8x104は、金属化されたビームから得た値の2〜5倍である。この比較は厳密にいうと定性的な比較である。我々は、8個の金属化Siビームと14個のドープSiビームのQファクターを、指定の周波数の範囲にわたって異なる実験法で測定して比較した。金属化層及び不純物のドーパントはともにエネルギーの消散に顕著に寄与することが示唆された。我々の測定は、ナノメートル規模の金属化オーバーレーヤーがQファクターを有意に低下させうることを確認しているようである。第二に、これらのドープされたビームは高いQファクターが達成されかつ表面に金属の皮膜がないことから、表面の吸着物や欠陥によるエネルギー消散の小さい変化を試験するための優れた用具になる。事実、ドープビームをReを通じて効率的にin situ抵抗加熱すると、熱アニーリングと表面吸着物の脱着が容易になってさらに高いQファクターが達成されることが分かった。これらの器具は吸着物による消散プロセスの試験用に有望である。
【0172】
要約すると、我々はNEMSの小さい変位を検出する広帯域の平衡した無線周波数ブリッジ法を開発した。この技術は、ピエゾ抵抗変位の検出のような他の高周波数高インピーダンスの用途に有用であることを証明している。この技術は独特の利点を有し、他の方法ではどうしても測定できない機械的共振をシステムから電子的に測定できた。
【0173】
超高周波数炭化ケイ素のナノ機械変換器
超高周波数(UHF)帯域の基本モード共振周波数のナノ機械変換器は、単結晶炭化ケイ素の薄膜材料から製造され、次いで起磁気変換(magneto motive transduction)によって測定され、平衡ブリッジ読取り回路に結合される。本発明より前に製造された装置で測定された最高の共振周波数は632MHzである。
また本願に記載の技術は機械運動のマイクロ波のLバンド周波数にアクセスする際に有望であることは明らかであり、このことは、中間視的スケールで機械運動の物理学を研究し及び次世代のナノ電気機械システム(NEMS)を得るための新しい技術を開発するのに大きく期待できる。
【0174】
例示した実施態様で、我々は超高周波数炭化ケイ素のナノ機械的変換器の製造法と測定法を開示する。起磁気変換に基づいた我々の測定法は、周波数が600MHzを超える共振の検出に成功した。さらに、我々の技術が、すでに達成されたUHF周波数の範囲に限定されないことは容易に分かることである。マイクロ波Lバンド(1〜2GHz)も、少し最適化した同じ測定装置で容易に利用できると考えられる。装置の製造法は、エッチングマスクの選択については僅かな差はあるがY.T. Yang et al.,Appl. Phys. Lett.,78,162-164(2001)に記載の方法に類似している。ナノメートルのスケールの単結晶の3C-SiC層に対し本願で使用される方法は、湿式化学的エッチング法及び/又はウェーハボンディング法に基づいた方法ではない。特に注目に値するのは、表面のナノ機械加工工程の最後の懸架ステップがドライエッチング法を使って実行されることである。この方法は、湿式エッチング法で遭遇する表面張力によって起こることがある損傷を避けかつ大きい機械的に可撓性の装置を形成する際に重要なポイントを乾燥する必要がなくなる。
【0175】
装置を製造するのに使う出発材料は、直径100mmの(100)Siウェーハ上にヘテロエピタキシャル成長させた厚さ259nmの単結晶3C-SiCの膜である。3C-SiCエピタキシーは、2ステップの炭化ベース常圧化学蒸着(APCVD)法を利用しRF誘発加熱反応器で実施する。シランとプロパンをプロセスガスとして使用し、水素をキャリヤガスとして使用する。エピタキシャル成長は、約1330℃のサセプタ温度で実施する。この方法を利用して成長させた3C-SiC膜は、x線回折法で示されるように各ウェーハを横切って均一(100)配向している。透過型電子顕微鏡法と選択領域回折分析法(selective area diffraction analysis)はこれら膜が単結晶であることを示す。その微細構造は、Si基板上に成長させたエピタキシャル3C-SiC膜の典型的な構造であり、そのSiC/Si界面の近くに最大の欠陥密度がみられるが、このことは膜の厚さを大きくすると低下する。これらの膜の独特の性質は、3C-SiC/Si界面にボイドがないことである。この性質は、APCVDで成長させた3C-SiC膜については一般に報告されていない特性である。
【0176】
大面積の接触パッドを光学リソグラフィーで画成することによって製造が始まる。次に厚さが60nmのCr層を蒸着し次いで標準のリフトオフ法をアセトンで実施する。次いで試料を、2層(bilayer)のポリメチルメタクリレートPMMAのレジストでコートし次に電子ビームリソグラフィーでパターン化する。レジストの露光と現像を行った後、その試料に30〜60nmのCrを蒸着し続いてアセトン内でリフトオフを行う。次にCr金属マスクのパターンを、異方性電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマエッチング法でその下の3C-SiCに移す。我々は、3mTorrの圧力下、NF3、O2及びArそれぞれのプラズマを10、5及び10sccmの流量でかつ300Wのマイクロ波電力で使用する。加速DCバイアスは250Vである。これら条件下でのエッチング速度は約65nm/minである。
【0177】
次に、Siに対する選択的等方性ECRエッチング法を使ってSi基板の制御された局部エッチングを行って、前記垂直にエッチングされた構造体をリリースする。我々は、3mTorrの圧力下、マイクロ波電力300W及びDCバイアス100VでNF3とArのプラズマをともに25sccmの流量で使用する。我々は、NF3とAr単独ではこれら条件下で目立った速度でSiCをエッチングしないことを知っている。Siの水平及び垂直のエッチング速度は約300nm/minである。これらの安定したエッチング速度によって、我々は前記構造体のクランプ領域のアンダカットを十分な制御レベルで達成できる。懸架構造体と基板の距離は100nm以内に制御できる。
【0178】
その構造体を懸架させた後、CrエッチングマスクをArプラズマ内でのECRエッチング又は湿潤Crフォトマスクエッチング剤(過塩素酸と硝酸セリウムアンモニウム)で除く。この構造体は化学的に安定でかつ機械的に堅牢なので我々は、次に、リリースされた構造体で起磁気変換を行うため必要な金属化ステップのためのリソグラフィー製造ステップを実施できる。懸架された試料を再び2層のPMMAでコートし、次にアライメントステップを行った後電子ビームリソグラフィーでパターン化して所望の電極を画成する。この電極構造体は、厚さ5nmのCrと厚さ40nmのAuの膜を熱蒸着させ続いて標準のリフトオフ法を実施することによって完成される。最後に、もう一つのフォトリソグラフィーステップとこれに続く5nmのCrと200nmのAuの蒸着及び通常のリフトオフを実施して、ワイヤボンディング用の大きな接触パッドを画成する。
【0179】
完成した装置のSEM顕微鏡写真は図22に示してある。図22aと22bの写真はそれぞれ、装置領域の上面図と側面図である。大面積のフィンガーパッド76が、結合用の6nmのCr続いて80nmのAuの金属膜を熱蒸着することによって形成される。電子ビームリソグラフィーで画成された装置の微細構造体78は、電子ビーム蒸着法で蒸着された36nmのニッケル膜で被覆する。NiとAuを含むかような金属膜は、エッチングマスクとして及び電気伝導のために使用する二つの目的を果たす。
【0180】
ウェーハ表面に対し垂直に異方性電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチングを行っている間、構造体78の一部分を構成している金属膜は、それらの下側の単結晶3C-SiC薄膜を保護する働きをする。この第一エッチングステップは、基板の金属で被覆されていない領域のシリコン材料を露出させる。続く第二ECRエッチングステップは、シリコン材料を等方的にゆっくり除き、金属化された炭化ケイ素ビーム78を基板から懸架させる。各装置10は、名目的に同一の二つの二重クランプビーム78で構成されている。図22cと22dは装置10の二つのビーム78の中の一方の拡大図である。ビームの懸架は図22dに示す写真から最もよく見ることができる。またこれらの写真から、我々は、懸架されたビームの形態を、概略、長さlが1.25μm、幅wが0.18μm及び厚さtが0.075μmと測定できる。全エッチイング工程中のニッケルの厚さの減少は無視できるように調整されるので、SiC膜の厚さはビーム全体の厚さすなわち高さからニッケルの厚さ36nmを差し引くことによって達成される。
【0181】
使用される金属マスクは、起磁気変換のために必要な導電層として保持される。ニッケルで金属化された典型的なビームは、抵抗の測定値は約90オームであり、同じ装置内の二つのビーム78の抵抗の差は1-2%以内である。
【0182】
次に試料を試料ホルダー(図示せず)にのせ、次いで50オームのマイクロストリップ線路(図示せず)にワイヤボンディングを行い、この線路は順に50オームの同軸ケーブル(図示せず)に結合される。図23に示すブリッジ回路の装置フィンガーパッド76aと76bに連結されているケーブルと結線は、ほぼ同一に製造され、180°電力分割器80の二つの出力コネクタまで到達し、その分割器は、HP8720Cネットワーク分析器84のポート82からの駆動電力を二つの等しい部分に分割するが、位相差は180°である。低温測定時は、装置10をディッパー(dipper)又は機器カラム内にいれてその減圧缶又は試料チャンバーを減圧にして液体ヘリウム中に浸漬する。均一な静止磁界を超伝導磁石(図示せず)で加え、その磁石の磁界方向は二重クランプビーム78に対し垂直である。RF電流がビーム78の導電層を流れるとRF駆動周波数の力をビーム78が受ける。その駆動力周波数がビーム78の機械的共振周波数と整合しないと、誘発される機械運動は最小になる。
【0183】
端子86は、理想的な場合、仮想接地であり、この場合、その二つのビーム78は正確に同一でありそれらビームに回路成分の2分枝が接続されている。非理想の場合、同じモードに対し装置の二つのビーム78の僅かに異なる共振周波数をもたらすのみならず理想の仮想接地から残留バックグランドのシフトをもたらす。駆動周波数がビーム78の中の一方の基本モード機械的共振の周波数と整合すると、共振機械運動がそのビーム78に起こる。かような機械運動
は磁界に対し垂直であるが、同じ周波数のEMF電圧を誘発する。このEMF電圧は、追加の発電機として働いて装置の端子86から検出器のポート88へ送られる電力に作用する。次にかような電力は増幅され、ネットワーク分析器84のポート88で検出される。
【0184】
ネットワーク分析器の言語で、我々はそのネットワークの順方向伝送係数S21の周波数依存性を測定する。定義から分かるように、|S21|2は、入力ポートに入る電力に対し整合した負荷に送達される電力を表わす。機械運動に関する情報は、スペクトル中の共振ピークとして現れる。
【0185】
加えた磁界の方向が、図22aの平面であるウェーハ表面90の平面内にあってかつビーム78に垂直であると、運動の方向はウェーハ表面90に対して垂直でありこの運動は平面外共振と呼称される。平面内共振と呼称される類似の曲げモードは、磁界がウェーハ表面90に垂直であるとき励起される。かようなモードはウェーハ表面90の平面内で共振運動を行う。
【0186】
図22a-22dに示す装置と名目的に同じ装置10の場合、平面外共鳴のピ−クは342MHzと346MHzに観察され、そのピークはそれぞれ、装置10の二つのビーム78の運動に対応している。平面内共振の測定も試料ホルダーの配向を90°変更した後、実施される。平面内共振は615MHzと632MHzに見られる。
【0187】
共振周波数の期待値は下記諸式を使って推定できる。長さがLで厚さがtの二重クランプビームの基本共振周波数 fは、下記の簡単な関係式:

(式中、Eはヤング率であり、ρは質量密度である)に従って形態係数t/L2に対し直線的に変化する。我々の装置では、金属製電極の追加された質量と剛性によって装置の共振周波数が変わるので装置の共振応答はそれほど単純でない。この効果は、ビームの大きさが小さくなるにつれて特に顕著になる。構造材料に対する第一の依存性を電極の負荷と剛性による第二の効果から分離するため、我々は複合体の振動ビームの簡単なモデルを採用する。一般に異なる材料製の二つの層で構成されたビームに対する共振式は下記式のように変形される。

【0188】
上記式の指数1と2はそれぞれ構造層と電極層の形態と材料の特性を意味する。定数ηはモード番号(mode number)と境界条件によって決まり、基本モードの二重クランプビームの場合η=3.57である。電極層(層2)のために行う補正が小さいと仮定すると、我々は、補正係数Kを定義して均質ビームの下記式:

と直接比較することができ、補正係数Kは下記式:

で表わされる。この式中、I10は第二層がない場合に計算されるモーメントである。次に補正係数Kを使って測定された周波数に対する有効形態係数[t/L2]effの値を得ることができる。ビームが顕著な引張り応力又は圧縮応力を受けていると、[t/L2]effより大きい別の非線形補正項が出現すると考えられる。しかし、我々のデータは線形の傾向を示しているので、周波数に対する内部応力に関する補正は小さいことを示している。
【0189】
共振周波数の測定値はかような推定値より約30%低い。この不一致は、低周波数の範囲の我々の以前の研究で遭遇したことと比べて驚くことではない。特に、装置の大きさが小さくなると、表面、欠陥及び非理想のクランピングなどの役割がますます重要になる。これらの要因はかような予想では考えられない。
【0190】
平面内共振のデータを図24に示してあるが、この場合磁界は8テスラであり、駆動電力は-60dBmであり、帯域幅分解能は10Hzに等しい。順方向伝送係数の周波数依存性をプロットしてある。挿入図はS21平面に対する複雑な関数(complex function)の投影を示す。二つの共振ピークが、予想通りに約180°の位相差で観察される。これらのデータに、機械的変換器と電気接続に関する情報が含まれている。機械的共振構造体に関する情報を引き出すため、我々は、周波数に対する複雑な値の関数でありかつ共振ピークから離れたデータ点から調整して得たバックグランドを差し引く。バックグランドを差し引いた後、得られた関数の振幅を図25にプロットしてある。脱埋め込み(de-embedded)振幅ピークは実験誤差の範囲内でローレンツ型に調整することができ、そのピークの高さは予想通りにB2にほぼ比例する。
【0191】
図25の振幅軸は正規化されているので、その値はクリオアンプ(cryoamp)92の入力に差し戻される信号電圧を表わす。このような正規化は、ネットワークの順方向伝送係数の定義を増幅器92の利得(48dB)の知識とともに使用して容易に実施できる。このような推定で、我々は同軸ケーブルからの損失を無視する。また装置の出力のインピーダンスの不整合からの効果も無視するが、その効果は我々の場合、1の桁にしか寄与しないであろう。このような簡略化で、図25に示すクリオアンプ92の入力における信号電圧は、起磁気変換によって生成するEMF電圧に近いと考えることができ、下記式:

(式中、Lはビームの長さであり、f0は共振周波数であり、Bは磁界の大きさでありそしてAは機械運動の変位の振幅である)で表わされる。こうして我々は、8テスラの磁界下で約7x10-3Åという運動の最大振幅を得る。
【0192】
同じ式を使って、我々は、ノイズ電圧/√Hzが分かっている場合、変位感度を推定することもできる。一般に、検出感度は、ビームの抵抗由来のジョンソンノイズ及び前置増幅器92由来のノイズによって制約される。これら二つのノイズ源は、実験が液体ヘリウムの温度で行われるので、互いに類似している。ビームの抵抗は一般に数十オームでありそしてMITEQ低温増幅器92のノイズ温度は、対象の周波数の範囲内で数ケルビン程度である。この複合ノイズ(combined noise)は、事実上入力に対する約10Kのノイズ温度であり、150pV/√Hzというノイズ電圧/√Hzに相当する。一方これは約5x10-5Å/√Hzという変位感度を提供する。実際、図25から推定されるノイズは上記価の 倍である。この追加のノイズはネットワーク分析器84の受信機の感度を反映している。
【0193】
この特定の説明をするために、我々はシステムのノイズ性能を最適化する試みをしなかった。しかし、クリオアンプ92の超低ノイズの特徴の全性能を利用するため、クリオアンプ92の後ろに-40dBの利得を有する適度に低いノイズの第二段階の増幅器(図示せず)を付加することによって上記試みをすることは全く意味がない。
【0194】
一次近似として、我々は平面内の場合の共振周波数は、下記式:

(式中、WとLはそれぞれビームの幅と長さであり、Eはヤング率であり、ρは質量密度である)で表わされる。我々は、式5.1と5.2を組み合わせて下記式を得る。

【0195】
式5.2から、我々は、上記装置を出発点として使用し、3方向の寸法すべてを同比率で小さくしてビームの大きさを縮小すれば共振周波数が容易にマイクロ波Lバンドになることを知っている。このような縮小はe-ビームのリソグラフィーの現在の技術で容易に達成できる。一方、式5.3は、我々が同じBフィールド、同じ材料及び類似の振幅の機械運動を保持する限り、信号の振幅は著しく低下することはないことを我々に示している。
【0196】
結論として、我々は、同じ技術でUHFの範囲内の基本共振周波数とマイクロ波Lバンド周波数も有する炭化ケイ素のナノ機械変換器の測定法を明らかにした。これによって、今まで決してアクセスできなかった機械運動の周波数帯域にアクセスできるようになった。
【0197】
ローレンツ力によるMEMSINEMS変換器の周波数チューニング
起磁気NEMS変換器の共振周波数は、ビームを流れるDC電流からローレンツ力装置によって共振ビームに加えられる静応力を変えることによって、良好にチューニングすることができる。我々は、図26のSEM顕微鏡写真に示したような二重クランプビーム94について我々のすべての測定を実施した。これらのビームはGaAsとSiから微細加工で製造した(microfabricate)。これらの機械構造体に対し電気結合を行うため、我々はビーム94の頂部にd≒50nmのAu又はAlの薄い電極層をパターン化した。各種の長さ50μm<L<70μm及び固定したw=1.5μmとt=0.8μmを有するいくつものビーム94を使用して1MHz<ω0/2TT:<3.5MHzの周波数の範囲をカバーして力チューニング実験を行った。周波数の温度による変動を試験するため、各種アスペクト比を有するいくつものビーム(4MHz<f<40MHz)を同じチップ上に作製し次いで温度を変えながら共振周波数を記録した。
【0198】
起磁気励起と検出法を測定に利用した。概略を述べると、ネットワーク分析器96を使って、4.2Kの超伝導磁石(図示せず)のコア内に配置されたビーム94の頂部の電極(図示せず)にそって交流電流を流した。このAC電流によるローレンツ力がビーム94を励起し次いで運動が生成した起電力がネットワーク分析器94によって検出された。周波数偏移のデータを検査によって共振曲線から得た。
【0199】
AC駆動電流のみならず直流電流(DC)を前記電極に流すことによってチューニング力を導入した。一定磁界内のDC電流はビームに一定のローレンツ力/単位長さ:τ=IB(式中、Iは電流であり、Bは磁界である)を加える。これらの実験で2種類の形態を試験した。第一のケースでは、ビーム94をチップの平面に垂直に(z方向と定義した)励起し次いで一定の力を同じ方向に前記DC電流に沿って加えた。第二のケースでは、ビームを磁界に対して90°回転させ、次いで平面(x-y面)で励起させ次いでその平面に引張り力を加えた。
【0200】
二重クランプビーム94の運動は、下記ビーム式:

(式中、σはビーム内の引張り応力又は圧縮応力であり、AとIはそれぞれ断面積とその領域のモーメントであり、Eはヤング率であり、ρは例によって材料の質量密度であり、tは時間であり、xはビームにそった距離であり、そしてuはビームの励起方向の変位である)でモデル化できる。
【0201】
より一般的な考察を行うため、我々は、前記ビーム式に内部応力の項を加えた。しかし以下の我々の分析結果は、内部応力が観察されたビームの共振を大きくは変えないことを示している。基本共振の周波数は、上記式から下記式:

(式中、tとLはそれぞれビームの厚さと長さであり、Eはヤング率である)として誘導できる。
【0202】
我々は、30個までのSiビームとGaAsビームの共振周波数を測定した。図27は、ビーム94の基本周波数の、アスペクト比t/L2の関数としての測定値を示す。我々が共振周波数fのt/L2に対する線形依存性を得るということは、ビーム94の各種内部応力ゆえに行うfに対する補正が非常に小さいことを示唆している。図27の勾配から測定したE/ρの価は、計算値の75%以内でしかない。しかし、このことは、有効長を10%まで変えることがある半導体犠牲層の故意でないアンダカット及び起磁気電流を得るためビーム上に配置された電極層による質量負荷作用の周波数を低下させる作用によって説明できる。
【0203】
i)ローレンツ力チューニング(Lorentz Force Tuning)
図28に我々は、1.177MHzのビーム94の平面外共振のローレンツ力チューニング曲線を示す。3種の磁界内での、印加DC電流の関数としての周波数偏移δfz/fz(式中、δfzはz-方向又は平面外励起の周波数の変化でありそしてfzはz-方向又は平面外励起の周波数である)をプロットする。これらのプロットが図30に示す同じ曲線になるということは、この効果が実際に力チューニング効果であることを再確認している。最低磁界では明らかに湾曲しているのは、以下に考察するようにDC電流の加熱効果によるものである。我々は、4種のGaAs試料(1<f<3MHz)について定性的に類似の曲線が得られたことに注目している。
【0204】
図29は、異なる磁界強度に対する電流の関数としての、同じビーム94の平面内励起のための正規化平面内周波数偏移δfxy/fxyを示す。このデータの対称性の欠如は磁界強度が増大するにつれて一層明らかになる。図31に単位長さ当たり加えた力の関数としてプロットしたチューニングは、この平面内の力チューニング効果が非常に弱いので、周波数を低下させる加熱の効果によっておそらく不明瞭になることを示している。
【0205】
ii)熱的チューニング
薄いAu層で被覆されたGaAsビームの正規化された平面内周波数と平面外周波数の温度による変化を図32に示してある。これら二つのモードは、最小の変化を示す高剛性のモードとは異なる温度係数を示すことに注目することが大切である。この場合、ビームの寸法wxtxLは1.5x0.8x70ミクロンであった。平面外周波数と平面内周波数はそれぞれ、fz=1.177MHz及びfxy=1.838MHzであった。Siビームには、周波数が僅かに高い類似の効果が観察された(fz=2.830,fxy=2.328MHz)。
【0206】
図32に示すデータは、剛性の非常に高い構造体では熱的チューニングが弱いということを示唆している。この予想は、ある範囲の周波数を有するいくつものビーム94の共振周波数の温度依存性を測定することによって確認される。Si及びGaASそれぞれの場合のデータを図33と34に示してある。密度チャージ(density charge)がその温度範囲にわたって無視できる場合の音速の変化も前記両材料のデータに対してプロットしてある。通常の加熱源と冷却源を使用して温度を変えることができる。
【0207】
i)ローレンツ力
我々は先に、ビームの固有応力は我々の構造体の観察される共振周波数には余り寄与しないと主張した(図27参照)。我々は、中性のビームを仮定しそして一定のローレンツ力による応力の項を付加することによってチューニングの問題を分析する。したがって我々は、クランプビームと同軸の一定の応力に対するそのビームの応答(これを我々は後にローレンツ力と関連付ける)を再検討することから出発する。平衡点の回りの小振幅の運動の式は下記の通りである。

上記式中、σはビーム内の引張り応力又は圧縮応力であり、AとIはそれぞれ断面積とその面積のモーメントであり、Eはヤング率でありそしてρは例によって材料の質量密度である。クランプされた境界条件に対し応力を加えられた場合の振動周波数 (ω0')は、上記式を解くことによって得ることができる。

【0208】
この式中、Lとtはそれぞれビーム94の長さと厚さである。この共振周波数は応力の性質すなわち圧縮応力又は引張り応力によって増減できる。
【0209】
単位長さ当たりの小さい一定の横力(transverse force)はビーム94の平衡形態を変える。このような引っ張る力の作用下にあるビーム94は、下記式:

(式中、τはビームに対する単位長さ当たり一定の力である)で表わされる弾性的な形態をとる。なおこの力はビームを伸長して引張り応力を生成する。そのτによる引張り応力は下記式:

で表わされる。
【0210】
したがって、式6.2を使って新しい共振振動数は下記式:

で表わされる。その周波数偏移はすべての横力に対し明白に起こることに留意すべきである。
【0211】
単位長さ当たり一定の力τ=IBに対する周波数偏移の式は、下記式:

の形態をとる。
【0212】
L/t≒50でw=1μmである我々のGaAsビームのプレファクター(prefactor)はメートル単位で100のオーダーである。加えられる単位長さ当たり最大の力は4x10-3 N/mである。したがって我々は、周波数偏移を下記式:

として安全に拡大できる。
【0213】
この式は我々のビーム94に対し10-5-10-6のオーダーの正規化周波数を推定する。しかし我々の測定値は、いくつもの有意な様式で上記諸式から逸脱する。第一に、周波数偏移の測定値がz方向の共振に対し非対称であるので、我々はビームを基板95の方に引っ張る力に対し負の周波数偏移に遭遇する。我々が観察している作用は有意に大きくかつ両変数BとIにおいて線形である。
【0214】
しかし、単位長さ当たり一定の力を加える方法は、ローレンツ力によるチューニングの場合、面倒を起こす。一定の電流Iは、約5〜10Kであると推定される局部の温度上昇を起こす。したがって周波数偏移の測定値は、印加電流したがって加えられる力のより詳細な関数:

である。
【0215】
この作用は、磁界の強度Bがゼロに向かって変化するにつれて一層明らかになる。B=0の場合、我々は、Iの完全に対称の曲線を期待している。図29に示すように、周波数偏移曲線は、チューニング力が小さくなるにつれてより対称になる。加熱が原因であると我々が想定している偶数成分(even component)を差し引いた後、我々は図29のデータを図35にプロットした。図35が図28に類似していることに注目すべきである。しかし図35に示す作用の方が小さい。
【0216】
我々は両方の場合に観察される非対称チューニングの原因を理解していない。この種の非対称チューニングは座屈した(buckled)構造体で観察できるが、我々の実験で観察されたビームの共振周波数は、我々のビームが座屈転移(buckling transition)からはるかに離れていることを示している。図32と33に示す共振周波数の興味深い温度依存性は、温度による共振周波数の偏移が観察される挙動の原因ではないことを示唆している。観察される作用は半導体が接触する金属2層に生成した応力が原因であるかもしれない。多結晶質の金属及び単結晶の大量にドープされた半導体で製造された単一成分のビームは上記応力を排除する。
【0217】
起磁気変換法を使って曲げ及び捩れの変換器で行う変位検出の究極的な限界
例示実施態様で、我々は微小機械変換器の枠内で起磁気検出法の性能を定量化する。我々は、1MHzから1GHzまでの周波数でのその変位感度を制限するいくつもの要因を概説する。我々は、実際的なシステムと装置の感度を評価して、1GHzにおける感度の熱機械的ノイズの限界を達成できることを示す。
【0218】
i)起磁気変換
磁界の存在下、その磁界に垂直な機械運動はその両者に垂直な起電力(EMF)を誘発する。移動物体上の電極は、誘発された電圧信号又はEMFを検出器に伝送する。機械変換器の運動の起磁気変換を評価してみる。その変換器の正常モードに近い周波数及び低い振幅で、その運動は、有効質量m及び有効ばね定数kを有する減衰単純調波発信器(damped simple harmonic oscillator)によって、下記式:

(式中、Yは消散を起こす内部と外部の自由度に対する運動の結合によって生ずる減衰係数を示す)で良好に表わされる。mの値はモードの形態で決まりそしてkの値は力Fがどのように加えられるか及び変位zが測定される位置によって決まる。長さがL、厚さがt及び幅がwであり、その基本曲げモードでt方向に振動するまっすぐな二重クランプビームの場合、均一な力に対してビームの中心で測定されるばね定数は下記式:

(式中、Eは材料の弾性定数である)で表わされる。
【0219】
電極にそったx軸の検出電極に誘発される単位長さ当たりのEMFは下記式:

(式中、yは磁界に対して垂直に測定されそしてθは電極と磁界Bの間の角度である)で表わされる。検出電極の長さLeに沿って積分することによって、全電圧は、下記式:

として形態係数ζで表わすことができる。
【0220】
まっすぐな二重クランプビームの基本曲げモードの場合、変位が中心で測定されると、ζ=0.53である。そのとき、共振周波数ω0における起磁気変換の効率は 下記式:

で表わされる。
【0221】
我々はここで装置の応答度Rを下記式のように定義する。

【0222】
ii)起磁気回路のモデル
長さLdの駆動電極に対するローレンツ力F=BIdLdで駆動されるQ値の高い変換器の場合、起磁気変換によって下記式:

で表わされる共振周波数ω0=√(k/m)を中心とするローレンツスペクトル線分型(Lorentzian line shape)が生成する。
【0223】
まっすぐな二重クランプビームの場合、厚さ方向の振動の基本周波数は下記式:

(式中、ρは材料の質量密度である)で表わされる。
【0224】
運動の式は、図36に模式図で示す並列LCR回路に生成する電圧と同じ形態であるので、機械システムの類似の電気パラメータは下記式のように定義できる。


【0225】
クオリティーファクターQは、運動のエネルギーの消散を示しかつ減衰係数:Y=ω0/Qに関連している。したがって機械的消散は機械的抵抗で表わされる。二重クランプシリコンビームの基本共振ω0の場合、

である。
【0226】
運動の振幅は、応答度によってLCR変換器を横切る電気振幅に比例している。
【0227】
原則として、変換器の運動を発生させるために使う技術は、その検出と直接関係はない。しかし実際には、サブミクロンの変換器にはスペースの制限があるので、駆動と検出の両方のためにビームの表面上に単一の電極を使うことが便利であることが多い。起磁気方式の場合、磁界に垂直の電極に交流電流を流すことによって、振動ローレンツ力を装置に加えることができる。我々の分析は、二つの定性的に異なるケース、すなわち単一電極が起磁気駆動と検出の両方の働きをする1ポートのケース及び検出電極が別になっている2ポートのケースに分割する。上記2ポートのケースは、起磁気駆動がない場合の外部刺激に対する変換器の応答の測定に関連している。
【0228】
1ポートのケース
1ポート回路のモデルを図37の模式図に示す。抵抗96、Reは電極のDC抵抗を表しそして抵抗98、RLは検出器の入力のインピーダンスを表す。抵抗100、R0は、大きい埋込みインピーダンスを提供して駆動装置を電流源102にする。その装置は、50Ωの伝送ライン104によって駆動装置102に接続される。図36に示すRLC回路は、抵抗96、Reと大地の間に結合される。
【0229】
2ポートのケース
起磁気駆動装置を有する2ポートのケースの場合、その駆動回路は図37に示す1ポートの場合と同一である。図39に示す検出回路は、小さいリアクティブカップリング(reactive coupling)を除いて全く別のものである。その検出電極は、電極抵抗と並列の理想AC電圧源としてモデル化することができる。そのAC電源の電圧V'はRLC並列回路の電圧又は変換器の運動に比例している。測定回路の電流Imは、下記運動式:

(式中、Leは検出電極の長さでありそしてkは二つの電極が構造体中の異なる位置に存在することを説明する形態係数である)の減衰力を増大することによって駆動回路に作用する。二つの同一の並列電極を有するまっすぐなビームの場合、L'=Lでありかつk=1である。機械共振のための回路は、下記式:

で表される並列抵抗を付加することによって改変される。
この近似は共振ピークの近くで有効である。
【0230】
測定回路への結合
高周波数で起磁気検出を行う際の最も重大な問題は、変換された信号を検出器に効率的に結合することである。装置の周波数は増大しそしてその全体の大きさは小さくなるので、装置の機械的特性が最終的に電極自体によって支配されないために、検出電極の寸法は比例して小さくしなければならない。電極の抵抗はL/wtの関係で増減するので考慮しなければならない。100MHz以上で作動する典型的なナノ機械装置の場合、このソースインピーダンスRSは検出回路の負荷インピーダンスRLよりはるかに高い。結合回路に注意を払わないと、検出器が測定する電圧が実質的に低下することがある。
【0231】
1ポートのケース
1ポートのケースでは、最も簡明な結合の選択肢は検出器を装置に直接に又は伝送ラインを通じて接続することである。RL=50Ωの標準RF増幅器を使用すると、長さがλ/2の伝送ラインが1-1変圧器として作動するので我々は図38に示す均等の回路を取り替えることができる。この回路構成では、電気応答は変換器の運動に比例しない。この理由から、結合効率を、検出器のオン共振とオフ共振での電圧の差Vmと運動によって誘発される電圧V0との比率と定義することが適切である。オン共振(on-resonance)の場合、応答の機械的部分をRmで表わすが、一方オフ共振の場合、それは事実上ゼロである。したがって結合効率ε1は下記式:

で表わされる。
【0232】
結合効率は、電極抵抗が大きくなると低下しまた機械抵抗又は変換器の応答度が大きくなると低下する。結合は、金属半導体の電界効果トランジスタ(MESFET)(図示せず)などの高インピーダンスの検出器を使って改善できるが、その改善は、それが装置にわたって直接接続されるときのみ実質的なものになる。
【0233】
2ポートのケース
2ポートのケースでは、最も実際的な結合法は、ソースインピーダンスを、標準の低ノイズRF増幅器の50Ωの入力インピーダンスまで低下させる方法である。ここで我々は、最も簡単なインピーダンス変換法すなわち図39に示すような2エレメントLセクションを検討する。
【0234】
リアクティブエレメントの最適選択は下記式:

(式中、RSは検出電極の抵抗を意味する)で表される。
【0235】
次に、電圧の測定値は下記式:

で表わされる係数で減少させる。
【0236】
例えば、50Ωまで変えた1kΩの電極からの信号を0.11の効率で結合して1ポートのケースの場合の0.0023と比較する。装置に二つの電極用に十分なスペースがある限り及び特に目的が外部刺激に対する装置の応答を測定することであるとき、2ポートの配置構成の方が好ましいことは明らかである。
【0237】
寄生リアクタンス
100MHzを超える周波数の場合、結合回路に対する寄生リアクタンスの作用を考慮しなければならない。長さが3μm、幅が200nm及び厚さが100nmで100MHzで振動するまっすぐな二重クランプシリコンビームの場合、幅が70nmの電極の自己インダクタンスは、約2mΩで無視できる。幅が70nmで、同じ変換器上で60nm離れている二つの電極間の相互インピーダンスは約1mΩである。それらのキャパシタンスも約1fFで無視できる。第一近似に対するこれらエレメントのキャパシタンスとインダクタンスは、第一近似に対しL log
(L/w)にしたがって増減するので、それらはGHzの周波数の範囲にまで十分に、標準形態に重要ではないと考えられる。最も重要な寄生エレメントは、基板がのっている大地面と装置を伝送ラインに接続するリード線との間のキャパシタンスである。厚さが500μmのシリコン基板上の幅が100μmで長さが500μmの典型的なリード線の場合、その分路キャパシタンスは約150fFすなわち1GHzにおいて1kΩである。このキャパシタンスは、類似のインピーダンスの検出電極を分路するので結合効率を低下させ最終的に測定感度を低下させる。1GHzを超える周波数で有効な結合を保証すため、リード線の長さを最小限にするか又は基板上に共面導波路(coplanar waveguide)をつくることによって装置に適正な伝送ラインを設けるように留意しなければならない。
【0238】
感度の分析
システムの制約
起磁気検出技術の感度限界は、測定の三つの要素すなわち変換、結合及び増幅各々の関数である。上記のように変換効率又は応答度は、装置の物理的寸法及び作動周波数によって直接決まる。読み取り回路の結合効率は、検出電極の有限抵抗、迷走リアクタンス及び結合回路のエレメント自体を含む多くのパラメータによって決まるので最も最適化しやすい。読取り増幅器の入力ノイズは一定である。原則として、測定には三つの基本的なノイズ源すなわち増幅器のノイズSav、検出電極のジョンソンノイズSjv及び変換器の固有の熱機械的振動がある。測定によって導入されるノイズのスペクトル密度Smxは下記式で表されるように装置の運動に変換できる。

【0239】
我々の計算は、増幅器のノイズの影響を1GHzまでの周波数で予想される熱機械的ノイズより小さくするように装置と読取りを設計できることを証明している。
【0240】
問題の範囲を制限するため、我々は、上記分析で明らかになった一般的な関係を、1又は2個の金製の電極を表面に有しかつ基本的正常モードで振動するまっすぐな二重クランプビームの単純な場合に適用する。我々はさらに、装置の厚さが50nmもあるので駆動装置と検出電極はかなり薄くする必要がある。多くの用途には、測定される運動に対する測定回路の影響が無視できるという追加の要件がある。起磁気検出では、測定のバックアクション又は摂動作用が測定回路が流す電流に比例している。
【0241】
変換の形態
ナノ機械装置の形態は一般に、それが製造される構造層の厚さ又はその製造法もしくは用途に適したアスペクト比によって制限される。以下に示す単純な曲げと捩れの変換器の場合、(L,t,f0)の間の独立パラメータが二つだけある。我々は、高周波数の用途に特に関心があるので、(t,f0)及び(L/t,f0)の項で起磁気変換の形態関連パラメ−タを計算する。
【0242】
表1と2は、これら二つの単純な形態のシリコンの周波数と応答度を示す。表1には曲げ及び捩じりの変換器の形態関連パラメータを列挙してある。図40に線図で示すように、力の定数を、曲げの場合はビームの中心202で測定し、捩じりの場合はパドル200の端縁で測定する。数値はすべてSI単位である。表2には典型的な曲げ及び捩じりの変換器の形態関連パラメータを列挙してある。
【表1】

【表2】

【0243】
二重クランプビーム202と捩じり変換器200は、RF周波数の範囲で類似の起磁気応答を提供する。これらの力の定数と応答度は類似しているが、まっすぐなビームは捩じりパドル変換器とは異なる利点を提供する。50nmもの厚さで1GHzに近い周波数を達成するために、捩じり変換器はアスペクト比が非常に低い捩じりロッド204を備えていなければならない。例えば、上記表に記載されている1GHz変換器の場合、このアスペクト比は4である。その構造体は製造が難しいだけでなく、このような小さいアスペクト比を有する捩じりロッドの復元トルクの非線形係数は高い。これはあらゆる装置の用途の線形ダイナミックレンジを厳しく制限する。
【0244】
結合
結合効率は二つの相反する必要条件に支配されている。質量負荷(mass loading)の作用及び起こりうる減衰作用を最小限にするため、ソースインピーダンスは小さくしなければならないが、同時に検出電極も小さくしなければならない。分析を簡単にするため、我々は電極の厚さの装置の厚さに対する比率に上限Aを設定している。なおこの上限は原則として特定の用途によって決まる。計算する際、我々は電極が最適の電極で断面積ができるだけ大きいと仮定する。したがって、まっすぐなビームの場合、電極の抵抗は下記式:

(式中、σは電極の導電率であり、λは駆動信号の波長であり、tはビームの厚さであり、Lはビームの長さでありそしてweはビームの幅である)で表わされる。
【0245】
1ポートの場合、結合回路の挿入損又は電力アウト/電力インの比率は下記式:

(式中、

である)で表わされる。
【0246】
大きいアスペクト比L/t(α<<1])を有する典型的な装置の場合、その結合効率はα2に近似できる。
【0247】
2ポートの場合、結合回路の挿入損は下記式:

で表わされる。
【0248】
大きいアスペクト比L/t,α<<1を有する典型的な装置の場合、括弧内の項は無視できる。寄生リアクタンスは小さいので、この結果は、起磁気駆動を利用しようがしまいが定性的に成立する。しかし、起磁気駆動を利用する場合、ビーム上に二つの電極を設置するにはxを約1/√3まで小さくする必要がある。
【0249】
結合効率は、まっすぐなビームの厚さ又はアスペクト比によって下記式:

(式中、

である)で表わされ、またw=tの場合は下記式:

(式中、

である)表わされる。
【0250】
測定感度
起磁気検出の感度は、二つの電気的ノイズ源すなわち検出電極自体のジョンソンノイズと増幅器入力のノイズによって制約される。検出電極のスペクトル密度は下記式:

で表わされる。
【0251】
上記式は、まっすぐなビームの厚さとアスペクト比によって下記式:

と書くことができ、またw=tの場合は下記式:

と書くことができる。
【0252】
応答度、結合効率及び電気的ノイズ源を組み合わせて、我々はまっすぐな二重クランプビームに対する2ポート測定のスペクトル変位感度の下記式:

を得ることができ、またw=tの場合は下記式:

を得ることができる。
【0253】
感度は一定のアスペクト比のビームの周波数から独立していることに留意すべきである。上記計算で、我々は電極の幅の代わりに装置の幅を使用した。これは、電極が一本だけありそして装置は他の手段で駆動されるか又は受動測定(passive measurement)に使用されると仮定している。起磁気駆動と検出を同時に使用する場合、計算は、wの代わりに個々の電極の幅の近似値w/3を使用しなければならないことを除いて、すべての点で同一である。
【0254】
熱ノイズとの比較
機械的変換器の測定に対する最終的なノイズのフロアー(floor)はその固有の熱揺動である。機械的変換器の熱揺動に対応する変位ノイズのスペクトル密度はローレンツ線形であり、共振時の価は下記式:

で表わされる。
【0255】
まっすぐな二重クランプビームの特別の場合は下記式:

で表わされ、またw=tの場合は下記式:

で表わされる。
【0256】
2ポート測定法の場合は下記式:

で表わされる。
【0257】
上記式から、熱機械的揺動を検出するのに要求される増幅器のノイズのレベルは、概略1/f0に低下しそして小さいαの限度において他の形態係数から独立している。我々は、αの項を無視し熱機械的限度を達成するのに必要な増幅器の入力ノイズについて解いて、下記式:

が得られる。
【0258】
その全感度は高周波数まで十分増減できるが(scale)、起磁気検出の周波数の範囲は必要な測定回路によって基本的に制限される。以下の章で、我々はこの周波数の限界は実際のシステムのどこにあるのか確認する。
【0259】
数字で表わした例
入力インピーダンスRL=50Ωの典型的な低ノイズRF増幅器は、ソースインピーダンス50Ωに対して0.3dB〜1.0dBの範囲のノイズ数値を有している。本願に記載されている2ポート検出回路の場合、増幅器はインピーダンスの変換を通じて50Ωが見えているので、ノイズの数値(NF)を下記式:

によって電力スペクトル密度に変換できる。
【0260】
これは50Ωの両端にかかる有効ノイズ電圧SVaを示し、この電圧は増幅器の入力の電圧と電流ノイズの両方を含んでいる。引用したノイズ指数の場合、増幅器のノイズ電圧の範囲は、増幅器が室温下にあると仮定して、0.93nV/√Hz〜1.0nV/√Hzの範囲内にある。4Kの低温増幅器の場合、ノイズのレベルは1.2 nV/√Hzまで低下する。
【0261】
断面が正方形で、磁界B=8Tにおいて次の電気パラメータ:λ=0.1、RL=50Ω、σ=1.6x107/Ω-mを有するシリコンビームを検討する。2ポート検出の感度は、

の場合、下記式:

で表わされ、そして

の場合、下記式:

で表わされる。
熱機械的ノイズは下記式:


で表わされる。
【0262】
図41には、Q=10000で各種の厚さのまっすぐな二重クランプシリコンビームの8Tの磁界内で測定した熱機械的ノイズと比較して、周波数の関数としての2ポート起磁気検出法の感度のグラフに感度の計算結果を要約して示している。熱機械的ノイズを測定できる周波数は電気回路のパラメータにのみ依存していることに留意すべきである。
【0263】
図42は、熱機械的ノイズによって制限される起磁気感度を得るため500Ωの増幅器に要求される、電極の導電率の関数としての入力ノイズレベルのグラフである。この装置は8Tの磁界内のQ=10000のまっすぐな二重クランプシリコンビームであり、そしてその電極は厚さが構造体の1/10である。増幅器の入力ノイズを先に導出した式に基づいて前記起磁気法をGHzの周波数の範囲に拡大する最良の方法は、検出電極の導電率を増大する方法である。図42のプロットはこの方法の効率を示す。
【0264】
この起磁気法は、運動中のナノ機械変換器を検出するのに非常に強力な道具である。この方法は、1GHzまで及び1GHzを超える周波数で高い感度を達成しかつ大きい線形ダイナミックレンジを有している。その有効性の根底にある物理的原理は、測定された信号の非常に基本的なイネーブリング直通分析法(
very basic, enabling straightforward analysis)である。簡単な読取り回路と標準のRF増幅器によって、起磁気検出法は、1GHzで作動するナノ機械変換器に熱機械的揺動の感度限界を達成できる。
【0265】
Si及びGaAsの膜を使用して行うNEMSの製造
Si及びGaAsの膜はバルク微細機械加工法で製造できる。両方ともに、異方性選択的エッチング剤を使うバックサイド加工法で各種の幅と寸法の懸架された膜が製造され、それらはさらに微細機械加工されて多種類の装置を製造することができる。各工程の基本的方法は同じであるが、これら二つの材料は結晶学的性質が異なるので二つの別個の方法が必要である。
【0266】
Si膜の製造
マイクロ電気機械システム(MEMS)のスティクション(stiction)は、表面積/容積比が大きいため、前世紀の80年代に表面の微細加工法が出現して以来ずっと重大な故障モードであった。この装置をナノ電気機械システム(NEMS)に縮小する場合、スティクションは、製造工程でさらに一層困難な問題を起こす。NEMS装置を予め画成された膜にパターン化することによって、懸架されたナノ構造体はもはや基板に近接していない。リリースに関連するスティクションは乾燥中に効果的に防止される。したがって、NEMSの高収率が達成される。
【0267】
またこれら膜基板は高解像度リソグラフィーにとって有利である。というのはパターンの露光中、基板の反射が著しく減少するからである。我々は、ナノメートル規模のパターンが電子ビームリソグラフィーで容易に画成できることを立証した。
【0268】
Si膜の加工法は図43a-43dに概略を記載してある。膜の製造は、図43aに示すようにSi基板108に結合されたシリコンのエピ層104と厚さ0.4μmの注入SiO2層106で構成された材料で始まる。高度に異方性のKOHウエットエッチング法を利用してバルクSi基板108の領域110を試料のバックサイドから除く。KOHは選択的にエッチングする特性があるのでSiO2をエッチング停止層として働かせることができ、このことから平滑なバックサイドと良好に画成された均一な膜厚が保証される。
【0269】
シリコンのエッチングの異方性
KOHは、図43bに示すように、Siをその結晶面に正確に沿ってエッチングして125°の側壁角を形成するピラミッド形エッチング窓110を形成する。マスクのアンダカッティングは我々の目的を達成するには無視できる。この正確な異方性のため、あらゆる大きさの膜をかなり容易に製造できる。マスクは、へき開面にそった線で分離された一連の適当な大きさの正方形で構成され、多数の試料の加工を容易に行うことができそして加工が完了したならば個々のダイに容易にへき開できる。
【0270】
膜の製造
KOHエッチング法は侵食性であるため、マスクとしては低応力(Siリッチ)Si3N4を使う。ウェーハの両面を、低圧化学蒸着法(LPCVD)によって600ÅのSi3N4でコートして、Siエピ層104のピンホールなし保護層112とバックサイドのマスキング層114とを作製する。マスク112は、光露光を行い続いて10sccm(standard cubic centimeter per minute)のAr及び20sccmのNF3の混合物を使用して電子サイクロトロン共鳴(ECR)システム内で2分間エッチングを行って、窒化物で製造する。窒化ケイ素コーティング112が損傷しないことを保証するようにエッチングする前に保護するため、一つのフォトレジスト層(図示せず)をエピ層面にスピンコートしなければならない。
【0271】
バルクのSiのエッチングを30%KOH溶液内で実施し、80℃に保持しエッチングを行う直前に混合する。この容積比で最大エッチング速度が約1.4μm/minになり、SiO2層106に到達するのに6時間を超えるエッチング時間を必要とする。KOHは、約8Å/minの速度でSiO2をエッチングし、十分な時間を残してSiエピ層104に 損傷を与える前にエッチングを停止する。
【0272】
SiO2犠牲層106を、図43cに示すように、10%HF溶液内で約340Å/minのエッチング速度で除去する。SiO2層106をアンダカットすることによって膜の大きさを両方向に4μmだけ広げる。希HFが、約3Å/minの速度でSi3N4をエッチングして、12分間のエッチング時間でマスク112の約38Åだけを除去する。
【0273】
次に残りのSi3N4層112を、図43dに示すように160℃に保持した85%H3PO4浴内にて6分間で除去する。H3PO4内でのSiO2とSiのエッチング速度は我々の目的のためには無視できるが、30分を超えるエッチング時間ではSi層104にいくらかの損傷が観察された。
【0274】
溶液中の僅かな百分率の金属不純物が、エッチング工程中に電気化学的置換メッキ反応で、下に位置する裸のSi表面104上に堆積することがある。これは、5重量%のHClを溶液に添加してキレート化剤として作用させ、エッチング特性を変化させずに避けることができる。また溶液が蒸発するとエッチング速度がかなり低下することには注意しなければならない。このため、この工程は、安定な結果を保証するため適正な温度に到達した後できるだけ速く実施すべきである。
【0275】
GaAs膜の製造
GaAs膜を製造するため開発された方法は図44a-44dに示す側断面図に描いてある。加工は、バルクのGaAs基板116並びにこの基板の頂面に配置した三つの電子ビームエピタキシャル(MBE)成長層すなわち600nmのGaAsバッファ層118、1μmのAl0.8Ga0.2Asエッチング停止層120及び図44aに示すような所望の最終膜厚を得るために必要である適当なGaAsエピ層122からなる材料から始まる。二種類の異方性選択的エッチング法すなわちNH4OH:H2O2溶液及びクエン酸:H2O2溶液による方法を試験した。各エッチング剤は、それ自身特有のエッチング性を持っているので各々の利点は異なっている。
【0276】
エッチングの異方性
GaAsの異方性エッチングは、シリコンの場合の先に述べた方法と比べて、エッチングの形態が使用されるエッチング剤のみならず二つの主要結晶面にそって異なり、いくらか複雑である。NH4OH溶液は、図45aの顕微鏡写真に示すようにエッチングされた壁と床にそって良好に画成された平滑な面を生成するが、クエン酸によるエッチングは図46aの顕微鏡写真に示すようにすべての面が余り均一ではない。両エッチング剤のアンダカット比によって、最終膜の寸法をいかに小さくできるか制限され、そして妥当な大きさの膜を製造するため市販されている基板より薄い基板が要求される。アンダカット比は、横エッチング速度/垂直エッチング速度の比と定義する。基板116は100μmまで薄くできるが、これ以上薄くなると、試料は非常に壊れやすくなり割れたり又は砕ける傾向がありその後のステップを切り抜けられそうにない。膜の前面は下記加工ステップで述べるように保護されるので、前面に所望の装置を製造した後に基板を薄くし次いで膜を加工することによって、基板の厚さが原因の壊れやすいという問題を避けることができる。これを行うには、エッチングを行う前に装置を膜のパターンに合わせるために赤外線マスクアライナー(infrared mask aligner)が必要である。
【0277】
NH4OH:H2O2溶液のエッチング速度は、エッチング剤の容積比によって異なる結晶面に沿って変化する。最大の選択性を得るために選んだ1:30溶液は、図44bに示すように、(0―10)面内で約130°の側壁鈍角を生成しそして(011)面内で約60°の側壁鋭角を生成する。さらに、これら両結晶面に対し平均約0.5のアンダカット比で有意なアンダカッティングが起こる。これは、マスク窓の寸法を、エッチング深さ1μm毎に約1μm2広げる働きをする。上記特性の組合わせによって、寸法が(011)面にそって、基板の最初の厚さ100μmに対し最小約200μmまで制限される。
【0278】
GaAsに対するクエン酸の異方性エッチング特性はNH4OHとは幾分異なる。容積比が3:1の場合、図46bの顕微鏡写真に示すように、クエン酸は(1―10)方向に約130°の側壁角を生成するが(011)方向には90°の有効角を生成する。(0―10)面と(011)面に対するアンダカット比はそれぞれ1.2μmと1.5μmである。これら二つの特性を組み合すことによって、(011)方向の寸法の制限を、基板の最初の厚さ100μmに対して約150μmまで低下させる。
【0279】
後者の装置の制限が膜の寸法をより小さくすることを要求する場合、クエン酸溶液の方がNH4OH溶液より好ましいであろう。しかし現在の条件下では、エッチング速度は約100μmの深さを過ぎるとゼロに近づく。そのため、基板をできるだけ薄くすることが必要になり、取り扱うことが難しい壊れやすい試料が生成する。NH4OHエッチング剤は600μmを超える厚さを通じて均一にエッチングして輪郭が明確で再現性がある膜の寸法を得ることができるので、現時点では、膜のより大きい寸法が許される場合、この溶液の方が好ましい。クエン酸の溶液比と温度の条件をさらに実験すれば、将来、この溶液が有用であることが証明されるであろう。
【0280】
膜の製造
基板のシニング(thinning)
両エッチング法に使う試料の調製法は同一である。膜の製造は、容積比が1:8:1の高速異方性H2SO4:H2O2:H2Oウエットエッチング法を利用して、GaAs基板116を300μmと100μmの間の厚さまで薄くすることから始まる。この方法は、約5μm/minの速度でエッチングを行い、我々の目的にかなった適正に平滑でかつ十分に均一なバックサイド面を生成する。一辺が数mmの材料片を作製し、次いでこれをへき開して個々の膜加工を行うのに使うより小さい試料にする。
【0281】
フォトレジスト層124を前面上にスピンコートしてエピ層120を保護した後、その材料面をガラスカバースリップまでワキシングする。AZ 4330フォトレジストを使用し、そして試料とワックスは130℃を超える温度まで加熱しないように注意しなければならない。というのは、このような加熱を行うとフォトレジストをその後の工程で除去することが極端に難しくなるからである。一旦ワックスが硬化したならば、アセトンを含む小綿球を使ってフォトレジストの残渣を基板116のバックサイドから緩やかに除くことができる。
【0282】
エッチング速度は温度に対し極端に敏感であることに注意すべきである。エッチング剤の成分を混合するときいくらか熱が生じるので、その溶液は1時間放置して室温まで戻した後、試料を浸漬する。またこのように温度に対し敏感なので、室温の通常の変動によって、エッチング速度がいくぶん不安定になり20%も変化することがある。試料を溶液から定期的に取り出して厚さを測定するとエッチング速度したがってエッチング時間が著しく異なることがあるから、正確な所望の材料の厚さを達成するには垂直マイクロメータが助けになる。その厚さに到達したならば、試料はDI水中で徹底的にすすぎ次にアセトン中に入れてワックスを溶解する。
【0283】
エッチング法
ワックスを除いたならば、保護のためフォトレジスト126を前面に再びスピンコートする。次にそのバックサイドをマスクアライナー内でフラッド露出させ(flood expose)次いで現像して残留レジストを除く。AZ 4330フォトレジスト126を、試料のバックサイドに2750rpmでスピンコートし次に95℃で1分間ベークして厚さが約5μmのレジスト層を生成させる。次に最終的な膜の寸法に相当するエッチングマスクを適正な結晶面に対して作製する。パターンを現像した後、115℃で2分間、後ブレークし、試料のエピ層面を顕微鏡のスライドガラスまでワキシングを行う。
【0284】
使用したNH4OH溶液は、最大の選択性(約100)を得るため容積比が1:30のNH4OHとH2O2で構成されており、エッチングを行う前に新しく混合する。その反応は拡散速度が制限されているので、前記溶液を試料にスプレイすると、エッチング生成物を機械的に除去するだけでなく溶液が循環して混合する働きがある。最大の選択性を保証するためテフロン製試料ホルダーを使うことが大切であることに注意すべきである。AlGaAs犠牲層に到達すると、そのエッチングされた窓は、その頂部2層を通じて透明になりそして色はオレンジ色になる。下側に位置するGaAs層の完全な除去を保証するためエッチングを約30秒間続けさせ次に試料をDI水内で徹底的にすすいですべてのエッチング生成物が除かれたことを保証する。
【0285】
先に述べたクエン酸溶液もバルクの基板を除去するのに使用できる。これは反応速度が制限されているので単純な浴として使用する。完全な溶解を保証するため一日前に、クエン酸一水和物をDI水と重量比1:1で混合する。次にこの溶液を3:1の容積比でH2O2と混合し次に約20分間放置して室温まで戻す。その浴に試料を、透明な窓が見えるようになるまで浸漬し(6時間で最初の基板は100μmまで薄くなった)次に徹底的にすすぐ。
【0286】
この時点で、図44cに示すように107より大きいAlGaAsのGaAsに対する選択性でスライドガラスに依然として結合しているAlGaAs層は、試料を20%HF中に1分15秒間浸漬することによって除去される。AlGaAs層が完全に除かれると、不鮮明なリング(faint ring)が膜の回りに光学的に見えるがこれは犠牲層のアンダカッティングを示している。この工程を完了するため、試料をアセトン中に一夜放置してワックスを溶解し、イソプロピルアルコールに移し次に吹き付け乾燥して図44dに示す構造体が得られる。
【0287】
バルク微細機械加工法を利用してシリコンとガリウムヒ素から膜構造体を製造する方法を開発した。両方法ともに選択エッチング式異方性エッチングシステムを利用する。Siシステムについて、SiO2を超えてSiに対して選択的な、明確に定義されたKOHエッチング剤の特性決定を行った。GaAsシステムについて、NH4OH及びクエン酸の溶液の特性を決定した。なおこれら溶液はともにAlGaAsを超えてGaAsに対して選択的である。再現性と耐久性の両方について好ましいエチング剤は、将来の装置の制限条件が150μm未満の膜の寸法を要求しないならばNH4OHであることが分かった。
【0288】
NEMSアレースカラ分析器/相関器
図47はNEMSアレースペクトル分析器128の背後にある基本概念を示している。この概念化において、「共振リード(resonant reed)」の類似物は図47に示すようなピエゾ抵抗NEMSカンチレバーである。アレー128を形成するエレメント130はずらして配置された長さ部分(図47にはLi…,Lkで示してある)を有しその結果、所望の予めプログラムされたスペクトル範囲をカバーする全共振応答を生成する。図47には、各エレメント130が別個に駆動され検出されるように描かれているがすべて共通の接地電極132を共有している。より簡単に読み取りができることは注目すべきである。信号は、図47に、局部スタブ136を有する共通の伝送ライン134から送られ各エレメント130に静電動作を提供するように描かれている。図47に示す駆動電極138とカンチレバーチップ140の間の厚さの差が、この方向に機械的運動を誘発するのに必要な平面外電界を提供する。
【0289】
図47は、個々の未結合エレメントが機能を提供する実施例を示している。機械エレメントの結合されたアレーの集合機械モードを有することも可能である。これは広いクラスの光電気機械アレースペクトル分析器を提供する。このファミリーからの簡単な一実施例を図48に概念的に示したが、図48aに示すような複数の相互にかみ合わせたか又は他の方法で配列された相互に作用するビーム又はカンチレバー210が対向する二つのTフレーム212の間に配置されている。
図48おいて、v(t)で表わされる電気信号波形に、フーリエ成分が存在しアレーの集合モード(collective mode)をパラメトリカルに駆動する。一方この運動は、コリメータ218によってコリメートされた光ファイバー216によって装置10に結合されそして本来時変性の光回折格子であるアレー128を通じて伝送されるレーザ214からの光の回折オーダーの強度を調節する。これらのオーダーは連続的に読み取ることができるので、入力220中の電気波形v(t)のスペクトルのリアルタイム分析値を提供できる。
【0290】
NEMSアレーの化学的/生物学的センサ
二つのグループが、MEMSに基づいた電気機械「ノーズ(nose)」装置を開拓している。これらグループは、主として気体被検体と流体被検体を検出することに努力してきた。相互作用の二つの異なる物理的機構から生ずるニ種類の作動モードがある。第一のモードは、両グループの最近の研究の基礎になっているが、被検体にエクスポーズ(expose)すると膨張又は収縮するオーバーレーヤーから、カンチレバーに差動歪(differential strain)が誘発されることに基づいている。このオーバーレーヤーがカンチレバーの一面だけをコートしている場合、このオーバーレーヤーが膨張又は収縮すると曲がりを起こしその曲がりは光学的に検出される。
【0291】
検出の第二のモードは、質量負荷(mass loading)とこの負荷で生成するセンサの全慣性質量(total inertial mass)の変化に基づいており、この変化は共振周波数偏移として検出できる。
【0292】
これらのアイディアをNEMSアレーの領域に縮小する重大でかつやむをえない理由がある。最も重要な理由は、「電気機械ノーズ」の感度が、NEMSエレメントの質量がより小さいことから並びにナノスケールの機械エレメントの高められた歪感度、質量感度、コンプライアンス及び作動周波数から得られるさらなる改良によって大きく高めることができることである。この具体例を、超高感度NEMS質量検出に関する我々の最近の研究で提供する。
【0293】
図49はNEMSアレーの電子ノーズの概念化を示す。別個に変換されるピエゾ抵抗カンチレバー144のアレー内の各エレメント142は、特定の目的被検体に対する感度を提供する膜を負荷された面である。この概念化において、隣接する静電駆動電極146は、化学的に機能するようにされたエレメントを別個に励起させる。これを行うには各駆動電極に個々に接続する必要がある。
【0294】
各エレメント142にアドレスする他の手段は図50に示してあり、これは、カンチレバー144が図50に示すようにかみ合わされた長さで設計される場合、単一の伝送ライン130及び周波数ドメインにおいて掃引信号を生成するアドレス指定能力(swept signal yielding addressability)を採用する。
【0295】
NEMSアレー赤外線検出器/イメージャー(imager)
例示実施態様のIRイメージャーはNEMSアレー128に基づいている。大きさを有意に減らすと、感度と応答時間によって巨大なペイ-オフ(pay-off)が提供される。一つの可能な装置のレイアウトを図50に示す。この図では、個々のエレメントの共振周波数はIR吸収装置の長さ部分のリソグラフィーによるパターン化の変化でスタガーされている(stagger)。「吸収装置」のIR吸収から生じる、歪が誘発した曲がりのAC読取り値は周波数偏移として検出される。この偏移は、各エレメントの平均の位置で決まるそのエレメントの共振周波数の直接の結果である。この位置依存性は、RF駆動信号自体及び各エレメントの駆動電極に印加されたDC静電圧から生じる。このDC電圧のバイアスは、各カンチレバーの位置のエネルギーの静電項(electrostatic term)に変わり位置依存性共振周波数になる。この特別の概念化で、我々は、個々の共振エレメントの段階的な周波数励起による多数のアレーエレメントの速い問い合わせ(fast interrogation)も予想している。これによって。単一の伝送ラインでアドレスできる。ピエゾ抵抗器を共通の読取り伝送ラインにAC結合することによって読取り値を類似の方法で周波数逓倍すると予想することは全く妥当なことである。
【0296】
多くの変更や修正が、この発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によってなし得るであろう。したがって、ここに具体的に詳述した実施態様は、単に例示を目的として記載されたものであり、前掲の特許請求の範囲により定義される発明を制限するものと受け取ってはいけないと理解されなければならない。例えば、ある請求項の複数要素が特定の組合わせで記載されているという事実に拘わらず、この発明は、より少ない要素、より多い要素、又は異なる要素での他の組合わせも、たとえそのような組合わせが当初請求されていなくとも、上記に開示されているものは含むものであるということを篤と理解しなければならない。
【0297】
この発明及びその各種実施態様を記述するためにこの明細書で使用された語は、その一般的に定義された意味においてだけでなく、この明細書における特別の定義により、その一般的に定義されている意味の範囲を超えた構造、材料又は働きを含むと理解すべきである。したがって、ある要素がこの明細書の文脈の中で二つ以上の意味を包含すると理解できる場合には、特許請求の範囲でのその使用は、この明細書及びその語自体によって裏付けられるすべての可能な意味について包括的であると理解しなければならない。
【0298】
したがって、前掲の特許請求の範囲の語及び要素の定義は、この明細書において、文言どおりに記載された要素の組合わせだけでなく、実質的に同一の要領で実質的に同一の作用をして実質的に同一の結果を得るすべての均等な構造、材料又は働きを包含するものとして、定義されている。したがって、この意味で、前掲の特許請求の範囲におけるどの一つの要素を二つ以上の要素で等価的に置換してもよいこと、又は特許請求の範囲における二つ以上の要素を単一の要素で置き換えてもよいことを、筆者は意図している。複数の要素が特定の組合わせで働くように上述され、そのように当初請求されているかも知れないが、請求された組合わせからの一つ又は複数の要素は、場合によっては、その組合わせから外すことができ、また請求された組合わせは部分的組合わせに又は部分的組合わせの変形に向けてもよいことを、篤と理解されたい。
【0299】
当業者から見て、請求された主題からの非実質的な変更は、現在知られているものでも今後工夫されるものでも、特許請求の範囲内の均等物であると意識的に意図している。したがって、当業者にとって現在知られているか又は今後知られる自明な置換は、定義された要素の範囲内であると定義される。
【0300】
したがって、特許請求の範囲は、上記に具体的に図解及び記述されたもの、概念的に均等なもの、自明に置き換えできるもの、及びこの発明の必須の思想を本質的に取り込んでいるものをも包含していると理解されるべきである。
なお、明細書中の「≒」は、「近似的に等しい」として使用している。
また、明細書中の「√Hz」、「√(k/m)」及び「√3」は、「√」中に「Hz」、「(k/m)」及び「3」がそれぞれ記載されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0301】
【図1a】図1bに示すヘテロ構造体の厚さtの異なるポイントにおけるエネルギーバンドのレベルのグラフである。
【図1b】本発明のNEMS装置が組み立てられているスタックを示す側断面線図である。
【図2】本発明のダイポール動作の機構の断面略図であり、ビームのp1と駆動ゲートのdp2との間のビーム上のダイポールの形成を示す。
【図3a】本発明に使用される二重クランプビームの走査型電子顕微鏡写真である。平面内ゲートが2DEGで形成されている。
【図3b】測定装置の概略図である。
【図3c】本発明のプラズマエッチングのステップで使用されるECRチャンバーの簡略化側断面図である。
【図3d(i)−(v)】図1bのヘテロ構造体に使用される2DEGを製造するステップを示す一連の斜視図である。
【図4a】ビームが、増大する駆動振幅でその最低機械的共振まで駆動されたときの、ビームの両端間の電圧降下/周波数のグラフである。DCバイアス電流は5μAに固定されている。挿入図には、振幅応答のピーク値が線形状態で駆動振幅の関数として示されている。
【図4b】各種DCバイアス電流下での周波数に対するマグニチュード応答曲線のグラフである。挿入図には、-26μAから26μAまで増大する検出電流に対する共振時の信号の振幅を示す。
【図5】各種の温度における周波数に対するマグニチュード応答曲線のグラフである。
【図6】シリコン上の炭化ケイ素の厚さ200nmの層の表面を微細機械加工することによって製造した機械的前置増幅器の顕微鏡写真である。その金属電極は厚さ50nmのAuの層からパターン化される。
【図7】全機械的パラメトリック増幅器の作動原理を示す線図である。その信号電極は信号ビームの励起と検出に使用されるが、そのポンプ電極はその曲げばね定数を調節する。
【図8】例示実施態様においてパラメトリック増幅器の利得測定に採用される回路の回路略図である。
【図9】ポンプビームに加えられる横DC力(transverse DC force)の関数としての周波数偏移Δf/fのグラフである。この力は、事実上、信号ビームに対する圧縮力(正)又は引張り力(負)である。周波数偏移の線形部分はこの力から生成するが、その二次成分(quadratic component)はポンプビームのオーミック加熱から生じる。
【図10】図9に示す信号ビームに対する圧縮力又は引張り力 から生ずる、ポンプビームに加えられた1nNの静電負荷のもとでのパラメトリック増幅器の有限エレメントシミュレーション(finite element simulation)の線図である。信号ビームの圧縮は、ポンプビームが存在せずかつ負荷が信号ビームの末端に直接加えられた場合 に予想される圧縮の0.235倍である。
【図11】信号とポンプ励起の間の位相差に対する利得の依存性を示すグラフである。位相によって、信号は増幅されるか又はデアンプリファイされる。予想されるように、増幅とデアンププリフィケーション両者のマグニチュードは磁界が強いと増大する。
【図12】ポンプビームが共振周波数の2倍で駆動されている場合の、周波数オフ共振(frequency off-resonance)での励起に対する信号ビームの応答のグラフである。プロットはωにおける側波帯の強さを示す。装置の側波帯は、ポンプが閾値の近くで励起されると劇的に低下する。
【図13】熱機械的ノイズの増幅のグラフである。ポンプ電圧が8.2mVの場合、Φ=0利得は39であり、そして共振のクオリティーファクターは10600から180000まで増大する。
【図14】パラメトリック機械的増幅器の出力ノイズの位相のプロットである。上左側のプロットは、励起なし及びポンプなしの場合の信号ビームのロックイン増幅器の測定結果を示す。これは、増幅器の位相依存性入力ノイズを示す。上右側のプロットは、励起なしでポンプ電圧が5mVの場合の信号ビームの測定結果を示す。揺動はやはり電気増幅器で支配されている。下左側のプロットは、励起なしでポンプ電圧が8.1mVの場合の信号ビームの測定結果を示す。熱機械的揺動は、1直角位相内の増幅器入力ノイズを超えて増幅される。他の直角位相に、ポンプの効果は見られない。
【図15】ポンプオフの場合の価に対して正規化した、利得と 各直角位相内のノイズレベルとの比較を示すグラフである。ポンプの効果は、特にΦ=π/2直角位相に対してS/N比を増大する効果である。
【図16】ポンプに印加される電圧に対する利得の依存性を示すグラフである。ポンプの振幅が小さい場合、利得は信号ビームの励起から独立している。ポンプの電圧が高い場合、利得は、運動のrms振幅が360pmに到達すると飽和し始める。
【図17】ドーパント層が厚さ30nmでありそしてドーパント濃度が4x1025/m3である厚さ130nmの試料のキャリヤ分布のグラフである。
【図18】ドーパント層が厚さ7nmでありそしてドーパント濃度が4x1025/m3である厚さ30nmの試料のキャリヤ分布のグラフである。
【図19a−19d】起磁気反射とブリッジの測定結果を示す。図19aは起磁気反射を例示する概略線図でありそして図19bはブリッジの測定結果を例示する概略線図である。図19cは図19bに示す代表的なブリッジ装置の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。図19dは、単一ビーム及び平衡ビームの配置構成それぞれの斜視図を示す反射とブリッジの配置構成の概略図である。
【図20a−20b】図20aは、上の曲線が、Qが約3x104で25.598MHzにて共振する二重クランプされBをドープされたSiビームを反射配置構成で測定したグラフであり、そして下の曲線は上記SiビームをB=0,2,4,6Tの磁界強度に対してブリッジ配置構成で測定したグラフである。図20bは反射とブリッジの両配置構成の広帯域伝達関数の振幅のグラフである。
【図21】異なる磁界強度B=2,4,6,8Tに対してブリッジ配置構成のSiCビームから測定した伝送係数(S21)の振幅のグラフである。
【図22a−22d】本発明の装置の一実施態様のSEM顕微鏡写真である。図22aは平面図である。図22bは側面図である。図22cは一つのビームの拡大平面図である。図22dは機械構造体が明確に懸架されていることを示す一つのビームの拡大側面図である。
【図23】測定装置の概略図である。
【図24】試験中のネットワークの順方向伝送係数(S21)の周波数依存性の三次元グラフである。挿入図は複雑な関数のS21面への投影図を示す。
【図25】前置増幅器の入力に差し戻された信号の振幅のグラフである。これは、生データからバックグランド関数を差し引いた後、係数をとることによって得られる(差し引きの手順に関するテキスト参照)。
【図26】高周波数チューニングを例示するため使用した装置の平面図を示すSEM顕微鏡写真である。
【図27】SiビームとGaAsビームの共振測定値/アスペクト比のグラフである。
【図28】加えられたローレンツ力によるGaAsビームの平面外周波数偏移のグラフである。
【図29】加えられた力の関数としてプロットされた図28に示した周波数偏移のグラフである。
【図30】平面方向に対するローレンツ力チューニングのグラフである。
【図31】チューニング力の関数としてプロットした 図29に示す周波数偏移のグラフである。
【図32】ビームの二つのモードの温度偏移のグラフである。
【図33】3種のSiビームの共振周波数の温度依存性のグラフである。
【図34】4種のGaAsビームの共振周波数の温度依存性のグラフである。
【図35】図29の修正データのグラフである。
【図36】機械的共振の均等回路の概略図である。
【図37】1ポートの駆動回路と検出回路の概略図である。
【図38】1ポート測定のための均等回路の概略図である。
【図39】2ポート検出回路の均等回路の概略図である。
【図40】曲げ(左)と捩り(右)の共振器の代表的設計の簡略化平面図である。
【図41】熱機械的ノイズと比較した、2ポート起磁気検出法の周波数の関数としての感度のグラフである。
【図42】電極の導電率の関数としての、 熱機械的ノイズによって制限される起磁気感度を得るため50Ω増幅器に要求される入力ノイズのレベルのグラフである。
【図43a−43d】バルクの微細機械加工法を利用してSi膜を製造する方法の側断面図である。
【図44a−44d】バルクの微細機械加工法を利用してGaAs膜を製造する方法の側断面図である。
【図45a−45b】NH4OHでエッチングされたGaAsのウエルのSEM写真である。図45aは(011)面にそってへき開されたバックサイドからの傾斜図を示し、図45bは(011)面のフェイスオン図(face-on view)である(平滑な良好に画成された側面と底面に注意)。
【図46a−46b】クエン酸でエッチングされたGaAsのウエルのSEM写真である。図46aはバックサイドからの傾斜図を示し、図46bは(011)面にそってへき開された面を示す(傾斜壁の不均一性と床面の粗さに注意)。破線は(011)へき開面を示す。
【図47】NEMSアレーベースの電力スペクトル分析器の簡略化斜視図である。そのアレー内のエレメントは、共通の伝送ライン電極にそって突出する局所スタブによって静電気で駆動される。各共振エレメントは、ピエゾ抵抗で別個に読み取られる。エレメントの長さ部分は、振動リード回転計(vibrating reed tachometer)のようにスタガーされていて所望のスペクトル範囲をカバーしている。
【図48】結合されたアレーに生ずる集中モードに基づいたNEMSアレースペクトル分析器の線図である。信号は全アレーに加えられるが読取りは光学的に行われ、そして光ダイオードアレーを使って、回折オーダーの同時解像が行われる。
【図48a】図48に示すアレーの拡大SEM写真である。
【図49】化学的又は生化学的吸着物が誘発する質量負荷及び表面の歪の変化を監視するため共振センサが使用されるNEMSアレーベースの電子ノーズの線図である。
【図50】NEMSアレーベースの冷却されないIRイメージャーの線図である。共振センサのアレーを使って、IRエネルギーの吸収から生ずる平面外の曲がりを監視する。局所放射線が誘発するIR吸収体の加熱はその吸収体とカンチレバーの間に異なる熱膨張を起こす。共通の静電バイアス/駆動装置の接続によって、アレーの掃引周波数の問い合わせのための局所dc静電バイアスと共通ac駆動電極が提供される。
【図51a】ピエゾ抵抗カンチレバーの走査型電子顕微鏡写真であるこの装置の寸法は、長さが15μm、幅が2μm及び厚さが130nmでありその厚さの頂部の30nmはボロンのドーピング密度が4x1019/cm3の導電層を形成している。この装置の場合、b=0.5μm及びI1=4μmである。
【図51b】カンチレバーを既知の大きさだけ移動させるため原子間力顕微鏡を使って試験した、時間の関数としてのカンチレバーの変位のグラフである。これによって、G=dRTIdx=3x107Ω/mを直接測定できる。
【図51c】カンチレバーを既知の大きさだけ移動させるため原子間力顕微鏡を使って試験した、図51bに対応する時間の関数としてのカンチレバーの抵抗のグラフである。これによって、G=dRTIdx=3x107Ω/mを直接測定できる。
【図52】減圧下でのナノ機械的共振のピークのグラフである。挿入図に、クオリティーファクターの圧力に対する依存性を示してある。これらを測定するのに102μAのバイアス電流を使用した。
【図53a−53b】熱機械的ノイズの9Kでの測定結果のグラフである。
【図54a−54c】量子ウエルにキャリヤを閉じ込めるため追加の半導体層で拡大された拡大ピエゾ抵抗構造体の側断面線図である。
【図55】絶縁体の上に配置した量子ウエルで拡大された拡大ピエゾ抵抗構造体の側断面線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブミクロン幅で二重にクランプして懸架されたビームであって、その中又は上に非対称に配置された機械−電気変換層を有するビームと、
サブミクロンの距離内で前記ビームに近接している少なくとも一つのサイド駆動ゲートと、
を備えてモノリシックに製造された装置。
【請求項2】
上記の非対称に配置された機械−電気変換層が、前記ビーム内に非対称に配置された圧電層を備えている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ビームが、2DEGヘテロ構造体から製造された請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ビームが、電気接点を備えて出力端子を有する2端子回路を形成し、さらに前記ビームと並列な回路内に誘導器を備え、かつ前記ビームの出力端子に結合された阻止コンデンサを備えている請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記阻止コンデンサに結合された低ノイズ低温増幅器をさらに備えている請求項4に記載の装置。
【請求項6】
ゲートがゲートダイポール電荷分離器を備えそしてビームがビームダイポール電荷分離器を備え、そのビームとゲートがダイポール-ダイポール相互作用によって相互に作用する請求項1に記載の装置。
【請求項7】
ビームを低温に維持するための低温化手段をさらに備えている請求項1に記載の装置。
【請求項8】
サイドゲートが2DEG層を含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項9】
ビームとサイドゲートがチップを備えそしてさらにそのチップが配置されている基板を備え、その基板上に電極が形成され、ゲートには基板の電極とゲートの間にゲートダイポール電荷分離器が設けられ、そしてビームにはビームダイポール電荷分離器が設けられて、ビームとゲートはダイポール-ダイポール相互作用によって相互に作用する請求項1に記載の装置。
【請求項10】
ビームとゲートが、2DEG GaAs圧電層、GaAs層の各面上の二つのサンドイッチイングAlGaAsスペーサ層、これらAlGaAsスペーサ層それぞれの上と下の第一と第二のAlGaAs:Siドナー層、これらAlGaAs:Siドナー層それぞれの上と下の二つのGaAsキャップ層を含んでなる非対称のヘテロ構造スタックから製造される請求項1に記載の装置
【請求項11】
2DEG GaAs圧電層の下の層各々が、2DEG GaAs圧電層の上の対応する層より厚い請求項10に記載の装置。
【請求項12】
スタックの下に配置されたAxGa1-xAs犠牲層及びそのAxGa1-xAs犠牲層(但し0<x<1)の下に配置された基板をさらに含む請求項10に記載の装置。
【請求項13】
ゲートにゲートダイポール電荷分離装置が設置されそしてビームにビームダイポール電荷分離装置が設けられて、ビームとゲートがダイポール-ダイポール相互作用によって相互に作用する請求項1に記載の装置。
【請求項14】
各々ビームからサブミクロンの距離以内に配置されかつ各々ゲートダイポール電荷分離器を設けられた二つのゲートをさらに含む請求項13に記載の装置。
【請求項15】
ビームに供給される検出電流の電源、及び出力信号を生成するためのビームを含む回路内の増幅器をさらに備えている請求項13に記載の装置。
【請求項16】
増幅器が低温増幅器である請求項15に記載の装置。
【請求項17】
検出電流の電源がDCとACの検出電流をビームに供給する請求項15に記載の装置。
【請求項18】
ビームの変換層が、ビームの発信を誘発するのに使用される圧電層でありかつビームの発信を検出するのに使用されるピエゾ抵抗層でもある請求項1に記載の装置。
【請求項19】
犠牲層上に配置された2DEG層を含むヘテロ構造スタックを提供し、
マスクをスタック上に選択的に配置してNEMSビームのパターンを画成し、
Cl2/Heプラズマエッチング法を使用しスタックの露出部分のドライエッチングを行って、2DEG層の電気特性を実質的に変えることなくNEMSビームを画成する、
ステップを含んでなる二次元電子ガス層を含む懸架NEMSビームの製造方法の改良。
【請求項20】
Cl2/Heプラズマエッチング法を使用して行うスタックの露出部分のドライエッチング法が、Cl2とHeそれぞれを1:9の流量比でECRプラズマチャンバー中に供給するステップを 含んでいる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
Cl2ガスとHeガスをECRプラズマチャンバー中に供給するステップが、スタックを200Wの一定のRF電力で150V以下の自己バイアスに維持し次いでCl2ガスとHeガスを約300W以上のマイクロ波電力でイオン化するステップをさらに含んでいる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
平面内に画成され、平面内運動に対する曲げばね定数を有しそして信号ビームの機械的共振の周波数ωもしくはその近傍で駆動されている、懸架されたサブミクロンの発信信号ビーム、
その信号ビームに結合されそして2ωもしくは2ωの近傍で駆動されている一対のポンプビーム、
信号ビーム及び一対のポンプビームに垂直の少なくとも一つの成分を有する磁界を加える磁界源、並びに
ポンプビームと回路で結合され磁界の存在下ポンプビームを通じて電流を加えて、変調されたローレンツ力をポンプビームに生成し次いで信号ビームに圧縮力と引張り力を加えて信号ビームの平面内運動に対する曲げばね定数を摂動させる交流電源、
を備えてなるNEMSパラメトリック増幅器。
【請求項23】
ビームに結合された増幅器をさらに備えている請求項22に記載の装置。
【請求項24】
ポンプビームと信号ビームが集合して平面内H字型構造体を形成し、信号ビームがそのH字型構造体の中央部分を形成している請求項22に記載の装置。
【請求項25】
ポンプビームが2ωで共振するようにチューニングされる請求項22に記載の装置。
【請求項26】
一対のポンプビームに垂直の少なくとも一つの成分を有する磁界を加え、
ポンプビームにこの磁界の存在下2ωもしくは2ωの近傍の周波数の交流電流を供給して、ポンプビームに結合された信号ビームに対し調節されたローレンツ力の圧縮力と引張り力を生成して信号ビームの平面内運動に対する曲げばね定数を摂動させ、
信号ビームの機械的共振周波数であるωもしくはその近傍で駆動されるポンプビームに応答して信号ビームを振動させ、次いで
信号ビームの振動を検出する、
ステップを含んでなるNEMSパラメトリック増幅器の操作方法。
【請求項27】
周波数2ωでチューニングされたポンプビームを提供するステップをさらに含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ポンプビームが信号ビームの振動に対し反対側の直角位相で駆動される請求項26に記載の方法。
【請求項29】
制限部分を有するNEMSカンチレバー、
そのカンチレバーに結合されたピエゾ抵抗歪変換エピ層、
を備え、そしてGが下記式:

(式中、パラメータΠLはピエゾ抵抗変換材料のピエゾ抵抗係数であり、係数βは導電層の厚さが有限であるためGが減少することを説明し、Kはカンチレバーのばね定数であり、Iはカンチレバーのオーバーレングスであり、I1は制限部分の長さであり、bは制限部分の厚さであり、tは制限部分の厚さでありそしてRTは変換器の2端子間の抵抗である)で表わされる装置のゲージ率である、サブミクロンの変位を特徴とするサブミクロンのカンチレバー。
【請求項30】
共振の近くの熱機械的揺動の力スペクトル密度が下記式:

(式中、kBはボルツマン定数であり、Tは温度であり、Yは減衰係数であり、f0は共振周波数でありそしてQ=mf0/Yはクオリティーファクターであり、mはカンチレバーの質量である)で表わされる請求項29に記載のカンチレバー。
【請求項31】
共振の近くの熱機械的揺動の電圧スペクトル密度が下記式:

(式中、fはカンチレバーの振動の周波数である)で表わされる請求項30に記載のカンチレバー。
【請求項32】
予め定められた厚さを有する被ドープ層を提供し、
その被ドープ層にドーピング濃度を提供し、
下記条件:

[式中、

はイオン化アクセプタサイトの密度であり、ρはフェルミ統計で表されるキャリヤの容積密度であり、

であり、そして正と負のキャリヤ密度は下記式:

(式中、βは1/kTであり、EFはフェルミエネルギーであり、EVは価電子帯のエネルギーであり及びECは伝導体のエネルギーである)で表わされる]を満たすことによって、電荷の中性が達成されるまでフェルミ準位を調節し、
下記境界条件:

(式中、σは実験表面キャリヤ密度である)を条件として、下記式:

(式中、EVは価電子帯のエネルギーであり、εは比誘電率であり、eは電子の電荷である)に従って価電子帯のベンディングを測定し、次いで
コンバージェンスがキャリヤ密度ρについて達成されるまで上記調節と測定のステップを繰り返す、
ステップを含んでなる、真性層上に配置された異なるドーピング濃度と異なる厚さを有する被ドープ層を備えたNEMS装置のキャリヤ分布をスケーリングし測定する方法。
【請求項33】
励起信号源、
上記励起信号源に結合されて、励起信号の二つの位相の合っていない成分を生成する電力スプリッタ、
上記電力スプリッタに結合された第一操作ポート、
上記電力スプリッタに結合された第二操作ポート、
変換された電気出力を有する第一NEMS共振ビームを含む第一操作ポートに結合された第一回路アーム、
変換された電気出力を有する第二NEMS共振ビームを含む第二操作ポートに結合された第二回路アーム(これら第一と第二のビームは互いにマッチしている)、及び
DC結合抵抗ReとNEMS共振ビームに結合された検出ポート
を備えてなるブリッジ回路。
【請求項34】
第一と第二の回路アームの対向するアームに回路で結合された可変減衰器と移相器をさらに備え、その減衰器は第一と第二の回路アームの間のインピーダンスの不整合を減衰器なしの場合より一層正確に平衡させ、一方移相器は減衰器の回路を含むことによって生じる位相の不均衡を補償する請求項33に記載のブリッジ。
【請求項35】
NEMS共振ビームが試験材料を吸着するように構成された表面を有し、そのNEMS共振ビームの性能がその試験材料の作用を受け次いでブリッジによって測定される請求項33載のブリッジ。
【請求項36】
増幅器及びその増幅器に検出ポートを結合する出力インピーダンス不整合回路をさらに含む請求項33記載のブリッジ。
【請求項37】
第一と第二のNEMS共振ビームが起磁気NEMS共振ビームでありそして金属化されていない請求項33に記載のブリッジ。
【請求項38】
励起駆動信号を提供し、
その励起駆動信号を二つの位相の合っていない成分に分割し、
その位相の合っていない成分の一方を、第一変換電気出力を有する第一NEMS共振ビームに提供し、
その位相の合っていない成分の他方を、第二変換電気出力を有する第二NEMS共振ビームに提供し、これら第一と第二のビームは互いに整合しており、次いで
前記第一と第二の変換電気出力を合計して平衡検出出力信号を生成する、
ステップを含んでなるブリッジ回路内の二つのNEMS装置の出力を平衡させる方法。
【請求項39】
第一と第二のNEMS共振ビームのうちの一方に対する駆動励起信号を可変減衰させ次に第一と第二のNEMS共振ビームのうちの他方に対する駆動励起信号の移相を補償して第一と第二のNEMS共振ビームの間のインピーダンスの不整合を、減衰無し又は減衰によって生じる位相の不均衡に対する移相の補償なしより一層正確に平衡させるステップをさらに含んでいる請求項38に記載の方法。
【請求項40】
NEMS共振ビームの表面に試験材料を吸着させてその NE MS共振ビームの性能を変化させ次に平衡検出出力信号の性能の変化を測定するステップをさらに含んでいる請求項38に記載の方法。
【請求項41】
平衡検出出力信号を増幅器内で増幅し、及び平衡検出出力信号が増幅器によって提供される検出ポートの出力のインピーダンスを整合させるステップをさらに含む請求項38に記載の方法。
【請求項42】
第一と第二のNEMS共振ビームが暴露される磁界を提供し、その第一と第二のNEMS共振ビームを、それらビームを金属化せずに起磁気力で駆動するステップをさらに含む請求項38に記載の方法。
【請求項43】
NEMS共振ビームのうちの一方の上に配置された吸着表面をさらに含み、その吸着面の吸着物の吸着が平衡検出出力信号に示される請求項38に記載の方法。
【請求項44】
駆動源、
対向する位相の駆動信号を生成するためその駆動源に結合された電力スプリッタ、
その電力スプリッタによって生成された駆動信号のうちの一方の位相に結合された第一起磁気NEMS共振ビーム、
その電力スプリッタによって生成された駆動信号のうちの他方の対向位相に結合された第二起磁気NEMS共振ビーム、
これら二つの起磁気NEMS共振ビームに結合された電気端子、
その端子に結合された増幅器、及び
その増幅器に結合された、装置の順方向伝送係数S21の周波数依存性を測定する手段、
を備えてなる装置。
【請求項45】
第一と第二の起磁気NEMS共振ビームがSiCで構成されている請求項44に記載の装置。
【請求項46】
第一と第二の起磁気NEMS共振ビームが平面内共振で振動する請求項44に記載の装置。
【請求項47】
第一と第二の起磁気NEMS共振ビームが平面外共振で振動する請求項44に記載の装置。
【請求項48】
NEMS共振ビームのうちの一方の上に配置された吸着表面をさらに含み、その吸着面の吸着物の吸着が測定手段によって測定される請求項44に記載の装置。
【請求項49】
励起駆動信号を提供し、
その励起駆動信号を二つの位相の合っていない成分に分割し、
その位相の合っていない成分のうちの一方を、第一変換電気出力を有する第一NEMS共振ビームに提供し、
その位相の合っていない成分のうちの他方を、第二変換電気出力を有する第二NEMS共振ビームに提供し、これら第一と第二のビームは互いに整合しており、
その第一と第二のNEMS共振ビームを振動させ、
その第一と第二の変換電気出力を合計して平衡検出出力信号を生成させ、
その平衡検出出力信号を増幅器内で増幅させ、次いで
順方向伝送係数S21の周波数依存性を測定する、
ステップを含んでなる方法。
【請求項50】
第一と第二の起磁気NEMS共振ビームを振動させるステップがこれらビームを平面内共振で振動させるステップで構成されている請求項49に記載の方法。
【請求項51】
第一と第二の起磁気NEMS共振ビームを振動させるステップがこれらビームを平面外共振で振動させるステップで構成されている請求項49に記載の方法。
【請求項52】
表面を有し、軸方向の長さがL、幅がW、ヤング率がE、質量密度がρ及び変位の振幅がAであるサブミクロンのSiC NEMSビーム、
磁界源B 、
ビームの表面に配置されてビームの軸方向の長さの少なくとも一部分にそって電流を流す電極手段、
その電極手段の第一末端に結合されて、SiC NEMSビームを共振周波数

で起磁気的に駆動する交流電源、及び
前記電極手段の第二末端に結合されてSiC NEMSビームから生成された

を検出する検出器、
を備えてなる、起磁気的に駆動されるサブミクロンのSiC NEMS共振ビームの改良。
【請求項53】
電極手段が、磁界内のビームを駆動する交流電源に結合されかつビームの運動によって電極に発生したEMFを検出する検出器に結合された単一の電極を備えている請求項52に記載の改良。
【請求項54】
電極手段が、磁界内のビームを駆動する交流電源に結合された第一電極及びビームの運動によって電極に発生したEMFを検出する検出器に結合された第二電極を備えている請求項52に記載の改良。
【請求項55】
SiC NEMSビームが、UHFの範囲及びそれより高い基本共振周波数を提供する寸法とパラメータを有している請求項52に記載の改良。
【請求項56】
SiC NEMSビームが、マイクロ波Lバンドの基本共振周波数を提供する寸法とパラメータを有している請求項52に記載の改良。
【請求項57】
NEMS装置が配置される磁界を提供し、
AC電流をNEMS装置に供給してNEMS装置を磁界内で共振周波波にて振動させ、
DC電流をNEMS装置に供給してNEMS装置の平面外共振周波数を一定のローレンツ力でチューニングする
ステップを含んでなる、平面外共振を行うサブミクロンNEMS装置をチューニングする方法。
【請求項58】
NEMS装置が軸方向の長さを有しその軸方向の長さに沿って金属化され、そしてDC電流をNEMS装置に供給するステップがDC電流をその金属化部分に供給するステップで構成されている請求項57に記載の方法。
【請求項59】
NEMS装置が平面内共振も行いNEMS装置の温度を変えてNEMS装置を平面外共振及び平面内共振の両者をチューニングするステップをさらに含んでいる請求項57に記載の方法。
【請求項60】
NEMS装置が配置された磁界源、
NEMS装置に結合されてそのNEMS装置を磁界内で共振周波数にて振動させるAC電流電源、
NEMS装置に結合されてそのNEMS装置の平面外共振周波数を一定のローレンツ力でチューニングするDC電流電源、
を備えてなる平面外共振を行うチューニング可能なサブミクロンNEMS装置。
【請求項61】
NEMS装置が軸方向の長さを有しその軸方向の長さに沿って金属化され、そしてNEMS装置に結合されたDC電流電源がDC電流をその金属化部分に供給する請求項60に記載のNEMS装置。
【請求項62】
NEMS装置が平面内共振も行いNEMS装置の温度を変えてNEMS装置を平面外共振及び平面内共振の両者をチューニングする手段をさらに備えている請求項60に記載のNEMS装置。
【請求項63】
NEMS装置が単結晶の高度にドープされた半導体で製造された半導体-金属2層を備え、そしてその上に配置された金属化物が多結晶金属であり半導体-金属2層の応力を低下させる請求項62に記載のNEMS装置。
【請求項64】
幅がw、厚さがt、長さがL、検出器負荷抵抗がRL、等価機械インピーダンスがRmであり、下記式:

(式中、

である)で定義される挿入損εを最小限にするか又は1にするように、導電率がρのビーム上の電極によって波長λに対応する周波数で作動する共振ビームを含むサブミクロンの1ポート共振NEMS装置の改良。
【請求項65】
幅がw、厚さがt、長さがL、検出器負荷抵抗がRL、等価機械インピーダンスがRmであり、下記式:

(式中、

である)で定義される挿入損εを最小限にするか又は1にするように、導電率がρのビーム上の電極によって波長λに対応する周波数で作動する共振ビームを含むサブミクロンの2ポート共振NEMS装置の改良。
【請求項66】
負荷抵抗RLを有する増幅器に結合され、そして磁界B内で長さがL、厚さがt、幅がw、ヤング率がE、質量密度がρであり、その金属化物の導電率がσで、温度がTで、駆動信号の波長がλで、共振周波数がf0で、増幅器のスペクトル電力密度がSavである2ポートのまっすぐな二重クランプNEMS起磁気ビームの改良であって、下記式:

(式中、kBはボルツマン定数でありそして

である)で定義されるスペクトル変位感度Smx(2)がNEMSビームの熱揺動に対応するスペクトル変位密度以上であるように選択された改良。
【請求項67】
Si基板を提供し、
そのSi基板上にSiO2層を配置し、
そのSiO2層上にSiエピ層を配置し、
前記Si基板の部分を、停止層として使用される前記SiO2層まで選択的に異方性エッチングし、
前記SiO2の部分を、懸架されたSiエピ層が露出するまで選択的にエッチングし、次いで
懸架されたSiエピ層膜のNEMSビームを製造する
ステップを含んでなり、キャピラリの歪が回避され及び電子ビームの解像線幅が基板からの近接散乱無しで達成されるSi膜からNEMSビームを製造する方法。
【請求項68】
GaAs基板を提供し、
そのGaAs基板上にAlGaAs層を配置し、
そのAlGaAs層上にGaAsエピ層を配置し、
前記GaAs基板の部分を、停止層として使用される前記AlGaAs層まで選択的に異方性エッチングし、
前記AlGaAs層の部分を、懸架されたGaAsエピ層膜が露出するまで選択的にエッチングし、次いで
懸架されたGaAsエピ層膜のNEMSビームを製造する
ステップを含んでなる、GaAs膜からNEMSビームを製造する方法。
【請求項69】
GaAs基板の部分を、停止層として使用されるAlGaAs層まで選択的に異方性エッチングするステップが、NH4OH又はクエン酸の溶液によってエッチングするステップで構成されている請求項68に記載の方法。
【請求項70】
NH4OH溶液でエッチングするステップが、エッチングを行う前に約1:30の容積比で新しく混合したNH4OHとH2O2を含有する溶液でエッチングするステップで構成されている請求項69に記載の方法。
【請求項71】
クエン酸溶液でエッチングするステップが、クエン酸一水和物を1:1重量比で脱イオン水と混合して完全に溶解し次いでこの1:1混合物を3:1容積比でH2O2と混合して作製した浴で構成された室温浴でエッチングするステップで構成されている請求項69に記載の方法。
【請求項72】
二つの対向する平行基板、
一方の基板から延びる複数のピエゾ抵抗NEMSカンチレバーであって、各々が、対応する複数の共振周波数が選択されたスペクトル範囲をカバーするように異なる共振周波数を有するNEMSカンチレバー、及び
他方の基板から延びる複数の駆動/検出エレメントであって、各々、複数のピエゾ抵抗NEMSカンチレバーの中の一つと本来結合されているエレメント
を備えてなるNEMSアレー分析器。
【請求項73】
フレーム、
相互に作用するアレーを形成して光回折格子を形成する複数のNEMS構造体、
その複数のNEMS構造体を入力信号に応答して駆動する手段、及び
その複数のNEMS構造体を照明する光源、及び
時変性回折格子として集合的に働く複数のNEMS構造体からの回折光を検出する検出手段
を備えてなるNEMSアレー分析器。
【請求項74】
複数の歪検出NEMSカンチレバーであって、各々その上に、対応する被検体に応答するオーバーレーヤーを配置されそのオーバーレーヤーの応答が対応するカンチレバーに歪を与えるカンチレバー、及び
それら複数の歪検出NEMSカンチレバー各々の歪を検出する手段
を備えてなるNEMS電子化学的検出アレー。
【請求項75】
オーバーレーヤーの応答が、対応するカンチレバーに歪を加えてそれを曲げるオーバーレーヤーの容積の拡張又は収縮の変化を含み、そして検出する手段が、各カンチレバーの曲がりの大きさを測定する光検出アレーを備えている請求項74に記載のNEMS電子化学的検出アレー。
【請求項76】
オーバーレーヤーの応答が、対応する各カンチレバーの全慣性質量を変化させる質量負荷を含み、そして検出する手段が各カンチレバーの共振周波数偏移の変化を検出する手段を備えている請求項74に記載のNEMS電子化学的検出アレー。
【請求項77】
二つの対向する平行な基板、
それら基板のうち一方の基板から延びる複数の同じ大きさのピエゾ抵抗NEMSカンチレバーであって、各々、異なるIR周波数に応答する対応するIR吸収体を備え各IR吸収体が吸収するIRの量によって各カンチレバーの対応する示差熱膨張を誘発するカンチレバー、及び
それら基板のうち他方の基板から延びる複数の駆動/検出エレメントであって、各々、複数のピエゾ抵抗NEMSカンチレバーのうちの一つと本来結合しているエレメント
を備えてなるNEMS赤外線検出アレー。
【請求項78】
ドープされた半導体層、及び
そのドープされた半導体層の下に配置されている真性半導体層
を備えてなり、そのドープされた層と真性層は厚さがそれぞれ約7nm及び約23nmと薄いが、良好に閉じ込められた導電層を維持する、閉じ込められたキャリヤ領域を有するピエゾ抵抗NEMS装置。
【請求項79】
量子ウエルが画成されているドープされた半導体層、及び
そのドープされた半導体層の下に配置されている真性半導体層
を備えてなり、ドープされた半導体層と下に配置されている真性層の厚さを、ドープ層と真性層の間の界面及びドープ層の頂面の空乏層の予め定められた大きさの厚さがその界面において0.4eV以上のバンドエッジエネルギーの差を達成できるまで小さくした、閉じ込められたキャリヤ領域を有するピエゾ抵抗NEMS装置。
【請求項80】
ドープされた半導体層に隣接して配置された、そのドープ半導体層に対するバンドエッジエネルギーの差が0.4eV以上である閉じ込め層をさらに備えている請求項79に記載のピエゾ抵抗NEMS装置。
【請求項81】
ドープされた半導体層の下に隣接している閉じ込め層及びドープされた半導体層の上に隣接している閉じ込め層をさらに備え、各閉じ込め層がドープされた半導体層に対し0.4eV以上のバンドエッジエネルギーの差を有している請求項に記載80のピエゾ抵抗NEMS装置。
【請求項82】
量子ウエルが画成されているドープされた半導体層、及び
そのドープされた半導体の下に配置されている絶縁層
を備えてなり、ドープされた半導体層と下に配置されている絶縁層の厚さを、ドープ層と絶縁層の間の界面及びドープ層の頂面の空乏層の予め定められた大きさの厚さがその界面において0.4eV以上のバンドエッジエネルギーの差を達成できるまで小さくした、閉じ込められたキャリヤ領域を有するピエゾ抵抗NEMS装置。
【請求項83】
ドープされた半導体層とその下に配置されている真性層の界面及びドープされた半導体層の頂面の空乏層の予め定められた大きさの厚さが許容されるまで、そのドープ層の厚さを小さくしかつその下に配置されている真性層の厚さを小さくする ステップを含んでなる、ピエゾ抵抗特性を維持しながら厚さが最小のピエゾ抵抗変換器の製造方法。


【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19a】
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【図19b】
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【図19c】
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【図19d】
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【図20a】
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【図20b】
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【図21】
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【図22a】
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【図22b】
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【図22c】
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【図22d】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43a】
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【図43b】
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【図43c】
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【図43d】
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【図44a】
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【図44b】
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【図44c】
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【図44d】
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【図45a】
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【図45b】
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【図46a】
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【図46b】
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【図47】
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【図48】
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【図48a】
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【図49】
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【図50】
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【図51a】
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【図51b】
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【図51c】
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【図52】
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【図53a】
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【図53b】
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【図54a】
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【図54b】
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【図54c】
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【図55】
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【公表番号】特表2006−506236(P2006−506236A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549888(P2004−549888)
【出願日】平成15年5月7日(2003.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/014566
【国際公開番号】WO2004/041998
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(500226339)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (4)
【氏名又は名称原語表記】CALIFORNIA INSTITUTE OF TECHNOLOGY