説明

微小機能性材料

本開示は、微小機能性材料を提供し、この微小機能性材料には、外部印加場に反応する機能性を有する材料が吸収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微小機能性材料に関し、より具体的には、外部印加場に反応する機能性を有する材料を吸収させた微小機能性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロおよびナノ複合材料は、光学材料として日々重要性が高まっている。特に、ディスプレイ用途においてカプセル化液晶物質が開発されている。例えば、ポリマー分散液晶(PDLC)がディスプレイ用途に転換されている。これらの材料は、ポリマーマトリックス内に分散した液晶相に基づいて作用する不均一組成物である。典型的な液晶ドメインのサイズは、マイクロメートルの範囲内となり得る。
【0003】
概して、これらの系のポリマーマトリックスおよび液晶相は、ポリマーマトリックスの屈折率が液晶の屈折率と一致するように選択される。しかしながら、PDLC等のポリマーマトリックスの大型ドメイン(例えば、最大寸法においてマイクロメートルの範囲内)は、系の可視光波長散乱をもたらし得る。さらに、誘電異方性により、液晶ダイレクタは電場の存在下で配列し得る。
【0004】
これらの材料の電気光学的特性は、液滴径、形状および液晶の種類を含む複数のパラメータにより制御することができる。さらに、液滴径および形状は、数ある因子の中でも、組成、硬化速度または溶媒蒸発速度、硬化の程度、マトリックスモノマーに対する液晶物質の溶解度により決定される。結果として、ポリマーマトリックス中の液晶物質の形態の制御は複雑なプロセスとなることがあり、機能性のサブ波長ドメインを得ることは達成されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態は、微小機能性材料、微小機能性材料の調製のための方法、微小機能性材料およびマトリックス材料を含む複合材料、ならびに微小機能性材料で形成された調整可能な複屈折フィルムを含む。
【0006】
様々な実施形態において、微小機能性材料は、可視光の1/4波長以下の最大寸法を有する架橋ポリマードメインを有するナノドメインと、実質的にナノドメインの架橋ポリマードメイン全体に吸収されて微小機能性材料を形成する、外部印加場に反応する機能性を有する材料とを含む。様々な実施形態において、材料は、外部印加場に反応する(例えば活性な)機能性を有し得る。様々な実施形態において、架橋ポリマードメインは、約5ナノメートル(nm)から約175nmの体積平均直径を有し得る。
【0007】
様々な実施形態において、微小機能性材料の調製のための方法は、ナノドメインのエマルジョンを形成することであって、ナノドメインのそれぞれは可視光の1/4波長以下の最大寸法を有する架橋ポリマードメインを有する、ことと、外部印加場に反応する機能性を有する材料を実質的にナノドメインの架橋ポリマードメイン全体に吸収させ、微小機能性材料を形成することとを含む。様々な実施形態において、ナノドメインのエマルジョンは、外部印加場に反応する機能性を有する材料と同じ相に形成され得る。
【0008】
様々な実施形態において、複合材料は、マトリックス材料と、マトリックス材料中に分散した微小機能性材料とを含み、微小機能性材料は、約5nmから約175nmの体積平均直径を有する架橋ポリマードメインを有し、外部印加場に反応する光学活性機能性材料を実質的に架橋ポリマードメイン全体に吸収させたナノドメインを含む。
【0009】
様々な実施形態において、複合材料はまた、マトリックス材料と、マトリックス材料中に分散した微小機能性材料とを含んでもよく、微小機能性材料は、約5nmから約175nmの体積平均直径を有する架橋ポリマードメインを有し、外部印加場に反応する光学活性機能性材料を実質的に架橋ポリマードメイン全体に吸収させたナノドメインを含み、微小機能性材料は、マトリックス材料中に様々な濃度で空間的に分散して、マトリックス材料中の屈折率の勾配を形成する。
【0010】
様々な実施形態において、実質的に架橋ポリマードメイン全体に吸収された材料は、外部印加場に反応する光学活性機能性材料であってもよい。光学活性機能性材料は、実質的にナノドメインの架橋ポリマードメイン全体に吸収され得る。光学活性機能性材料の例は、液晶物質、二色性染料、およびこれらの組合せの群から選択され得る。様々な実施形態において、液晶物質は、負の誘電異方性を有する液晶を含み得る。
【0011】
様々な実施形態において、ナノドメイン中の光学活性機能性材料の量は、ナノドメインの総重量を基準として、微小機能性材料の約6重量パーセントから約60重量パーセントの範囲となり得る。様々な実施形態において、ナノドメイン中の光学活性機能性材料の量は、ナノドメインの総重量を基準として、微小機能性材料の約6重量パーセントから約30重量パーセントの範囲となり得る。
【0012】
様々な実施形態において、ナノドメインに吸収される光学活性機能性材料の量は、得られる微小機能性材料の用途に依存し得る。例えば、用途が液晶ディスプレイ(LCD)の位相遅延フィルム(phase retardation film)用である場合、使用される光学活性機能性材料の量は、LCDの関数となり得る。さらに、ナノドメインに吸収される光学活性機能性材料の量はまた、ナノドメインに吸収される光学活性機能性材料の屈折率および/または複屈折性に依存し得る。
【0013】
理解されるように、一用途において2種以上の微小機能性材料の組合せを使用することも可能であり、微小機能性材料のそれぞれは、異なる種類および/または量の光学活性機能性材料を有し得る。さらに、一用途の微小機能性材料において2種以上の光学活性機能性材料の組合せを使用することも可能であり、2種以上の光学活性機能性材料のそれぞれは、ナノドメインにおいて同じまたは異なる量を有し得る。いずれの手法も、所望の用途に対し微小機能性材料で形成されたフィルムの光学的性能を調節することができる。
【0014】
様々な実施形態において、光学活性機能性材料は、架橋ポリマードメインの屈折率値よりも大きい屈折率値を有し得る。様々な実施形態において、光学活性機能性材料はまた、赤外、可視および紫外周波数範囲のうちの少なくとも1つにおける電磁スペクトルの少なくとも一部の、微小機能性材料を通した透過を防止するように機能し得る。
【0015】
追加的な実施形態において、実質的に外部印加場に反応する架橋ポリマードメイン全体に吸収される材料は、化学活性機能性材料、光学活性機能性材料、磁気活性機能性材料、電気活性機能性材料、電気光学活性機能性材料、エレクトロクロミック活性機能性材料(electro- chromic-active functional material)、サーモクロミック活性機能性材料(thermo-chromic-active functional material)、電歪機能性材料(electro-strictive functional material)、誘電活性機能性材料(dielectric-active functional material)、熱活性機能性材料およびこれらの組合せの群から選択され得る。
【0016】
様々な実施形態において、微小機能性材料は、エマルジョンから(例えば凍結乾燥により)粉末形態として形成され得る。微小機能性材料はまた、水性液体および/または非水性液体の液相中に懸濁され得る。微小機能性材料の懸濁液を使用して、液相の除去後に微小機能性材料によりフィルムを形成することができる。
【0017】
様々な実施形態において、マトリックス材料は、特に、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、液相、インクおよびゾル−ゲル前駆体の群から選択され得る。さらに、架橋ポリマードメインに吸収された材料は、マトリックス材料中に分散された際に本質的に安定な量を維持し得る。実施形態において、微小機能性材料および吸収された材料(例えば光学活性機能性材料)は、マトリックス材料とは別個であってもよい。さらに、微小機能性材料は、マトリックス材料中に様々な濃度で空間的に分散して、マトリックス材料中の微小機能性材料の勾配(例えばマトリックス材料中の屈折率の勾配)を形成し得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、材料は、ポリマーマトリックス材料とは独立して外部印加場に反応し得る。例えば、微小機能性材料中の光学活性機能性材料は、外部印加場がマトリックス材料に印加されると変化する状態を有し得る。様々な実施形態において、複合材料のマトリックス材料のバルクの機械的特性は、微小機能性材料により影響されずに維持され得る。
【0019】
複合材料の実施形態はまた、光学活性機能性材料が架橋ポリマードメインの屈折率値よりも大きい屈折率値を有し、また架橋ポリマードメインの屈折率値がマトリックス材料の屈折率値よりも大きい構成を含み得る。
【0020】
追加的な実施形態において、本開示の複合材料は、ノズルから(例えばインクジェットプリンタからのように)材料の表面上に噴霧することができる溶液中に吸収され得る。
【0021】
定義
本明細書で使用される場合、「ナノドメイン」という用語は、可視光の1/4波長以下の最大寸法を有する架橋ポリマードメインの粒子を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「可視光」という用語および/または可視周波数範囲内の電磁スペクトルは、約400nmから約700nmの波長を有する可視電磁放射線を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「吸収される」という用語は、外部印加場に反応する材料がナノドメインの架橋ポリマードメイン中に、および実質的にそれ全体に吸収され、架橋ポリマードメインにわたり本質的に均一な量の材料を提供するプロセスを指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「外部印加場」という用語は、微小機能性材料に吸収された材料から機能的反応を発現させる目的で微小機能性材料に意図的に印加されるエネルギーを指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「液晶物質」は、液晶化合物、または2種以上の異なる液晶化合物で形成される液晶化合物の混合物を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「液晶」は、ダイレクタと呼ばれる共通軸に沿って向くことができる双極子および/または分極性の存在物(polarizable subsistent)を有する細長い分子を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「別個」という用語は、微小機能性材料が、架橋ポリマードメインおよび/または材料がマトリックス材料に溶解および/または浸出することなく、マトリックス材料中に混合される状態を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「負の誘電異方性」は、ダイレクタと平行な誘電率がダイレクタに垂直な誘電率よりも小さい状態を含み、ダイレクタは液晶の長距離秩序がその周りに配列する局所的対称軸を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「分散した」または「分散」という用語は、微小機能性材料を、巨視的レベルでの分離なしに所定の濃度で実質的にマトリックス材料全体に分布させることを指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、2種以上の異なるモノマーの重合により生成されるポリマーを指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「液体」は、溶液または原液(室温で液体であるか、または室温で固体であるが高温で溶融する)を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「体積平均直径」という用語は、架橋ポリマードメイン粒子の集合体の体積加重平均直径:D=Σ{v}(式中、Dは体積平均直径であり、vは、直径がDの粒子の体積分率である)を指す。体積平均直径は、参照により本明細書にその全内容が組み込まれる、「Development and application of an integrated,high−speed,computerized hydrodynamic chromatograph」、Journal of Colloid and Interface Science、第89巻、第1号、1982年9月、94〜106頁;Gerald R.McGowanおよびMartin A.Langhorstに記載のような流体力学的クロマトグラフィーにより決定される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「マトリックス材料」という用語は、微小機能性材料を含む複合材料の構成要素を指す。複合材料の場合、マトリックス材料は、微小機能性材料と比較して異なる物理的または化学的特性を有し得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「フィルム」という用語は、厚さが約50マイクロメートルから約1マイクロメートルであり、基板と接触していてもしていなくてもよい微小機能性材料で形成される物質の連続シート(例えば穴または亀裂を含まない)を指す。フィルムの薄い連続シートは、微小機能性材料で形成された物質の1つまたは複数の層から形成することができ、層のそれぞれは、微小機能性材料で形成された同じ物質、微小機能性材料で形成された2種以上の異なる物質、または微小機能性材料で形成された物質の異なる組合せで形成することができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「LCD」は、液晶ディスプレイの略語である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「PDLC」は、ポリマー分散液晶の略語である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「PMMA」は、ポリメチルメタクリレートの略語である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「MMA」は、メチルメタクリレートの略語である。
【0039】
本明細書で使用される場合、「DPMA」は、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートの略語である。
【0040】
本明細書で使用される場合、「Tg」は、ガラス転移温度の略語である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「UV」は、紫外の略語である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「IR」は、赤外の略語である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「GRIN」は、屈折率分布型の略語である。
【0044】
本明細書で使用される場合、「LED」は、発光ダイオードの略語である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「S」は、スチレンの略語である。
【0046】
本明細書で使用される場合、「EGDMA」は、エチレングリコールジメタクリレートの略語である。
【0047】
本明細書で使用される場合、「DVB」は、ジビニルベンゼンの略語である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「SDS」は、ドデシル硫酸ナトリウム塩の略語である。
【0049】
本明細書で使用される場合、「BA」は、ブチルアクリレートの略語である。
【0050】
本明細書で使用される場合、「AMA」は、アリルメタクリレートの略語である。
【0051】
本明細書で使用される場合、「APS」は、過硫酸アンモニウムの略語である。
【0052】
本明細書で使用される場合、「TMEDA」は、N,N,N’,N’−テトラメチル−エチレンジアミンの略語である。
【0053】
本明細書で使用される場合、「MEK」は、メチルエチルケトンの略語である。
【0054】
本明細書で使用される場合、「THF」は、テトラヒドロフランの略語である。
【0055】
本明細書で使用される場合、「UPDI」は、超純粋脱イオン化の略語である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「PVC」は、ポリ塩化ビニルの略語である。
【0057】
本明細書で使用される場合、「C−V」は、静電容量−電圧の略語である。
【0058】
本明細書で使用される場合、「Al」は、アルミニウム元素の略語である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「TOL」は、トルエンの略語である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「V」は、ボルトの略語である。
【0061】
本明細書で使用される場合、「E−O」は、電気−光学の略語である。
【0062】
本明細書で使用される場合、「CHO」は、シクロヘキサノンの略語である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「RI」は、屈折率の略語である。
【0064】
本明細書で使用される場合、「APE」は、アルキルフェノールエトキシレートの略語である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「AE」は、アルコールエトキシレートの略語である。
【0066】
本明細書で使用される場合、「wt.」は、重量の略語である。
【0067】
本明細書で使用される場合、「nm」は、ナノメートルの略語である。
【0068】
本明細書で使用される場合、「μm」は、マイクロメートルの略語である。
【0069】
本明細書で使用される場合、「g」は、グラムの略語である。
【0070】
本明細書で使用される場合、「℃」は、摂氏温度の略語である。
【0071】
本明細書で使用される場合、「FTIR」は、フーリエ変換赤外分光法の略語である。
【0072】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」、および「1つまたは複数の」は、交換可能に使用される。「備える」という用語およびその変化形は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲において出現する場合限定的な意味を有さない。したがって、例えば、外部印加場に反応する機能性を有する「1つの」材料を備える微小機能性材料は、その材料が「1つまたは複数の」材料を含むことを意味するように解釈され得る。
【0073】
「および/または」という用語は、列挙された要素のうちの1つ、2つ以上、またはすべてを意味する。
【0074】
本明細書で使用される場合、端点による数値範囲の記述は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。
【0075】
本開示の上記概要は、それぞれの開示された実施形態または本開示のすべての実施を説明することを意図しない。以下の説明は、実例的な実施形態をより具体的に例示している。本出願にわたりいくつかの箇所では、例の列挙により指針が提供され、例は様々な組合せで使用することができる。それぞれの場合において、挙げられた列挙は、代表的な群としてのみ機能し、排他的な列挙として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本開示のナノドメインの粒度分布を示すグラフである。
【図2A】Licristal(登録商標)E44(Merck,KGaA社製、ダルムシュタット、ドイツ)のFTIRスペクトルである。
【図2B】実施例1のナノドメインのFTIRスペクトルである。
【図2C】Licristal(登録商標)E44を吸収させた実施例1のナノドメインのFTIRスペクトルである。
【図3】様々な液晶物質を吸収させた実施例1のナノドメインのX線散乱パターンである。
【図4】様々な液晶物質を吸収させた実施例3のナノドメインのX線散乱パターンである。
【図5A】様々なアセトン/Licristal(登録商標)E44重量比に対する塩化メチレン前駆体溶液中の液晶物質Licristal(登録商標)E44の濃度(図5A)の、ナノドメインに吸収された液晶の量を示したグラフである。
【図5B】前駆体溶液中のLicristal(登録商標)E44の様々な濃度に対する前駆体溶液中のアセトン対Licristal(登録商標)E44重量比(図5B)の関数としての、ナノドメインに吸収された液晶の量を示したグラフである。
【図6】本開示の乾燥ナノドメイン中の液晶物質の量の最小二乗フィッティングモデルの結果を示すグラフである。
【図7】本開示の液晶物質を含む異なる材料のX線散乱パターンである。
【図8】様々な温度において本開示のナノドメインに吸収されたLicristal(登録商標)E44の量を示すグラフである。
【図9】様々な温度において本開示のナノドメインに吸収されたLicristal(登録商標)E44の量の最小二乗フィッティングモデルの結果を示すグラフである。
【図10】Licristal(登録商標)E44を吸収させた本開示の異なるサイズのナノドメインのX線散乱パターンである。
【図11】Licristal(登録商標)E44を吸収させた本開示による異なる組成のナノドメインのX線散乱パターンである。
【図12】ナノドメインまたは液晶物質を含まない、CHO:TOL中に溶解した9.2wt.%PMMAのC−V掃引を示すグラフである。
【図13】6wt.%4−シアノ−4’−オクチルビフェニル液晶物質を添加した、CHO:TOL中に溶解した9.2wt.%PMMAのC−V掃引を示すグラフである。
【図14】NOA−68(光学アクリレート樹脂、Norland社製)に直接混合した6wt.%Licristal(登録商標)E44のC−V掃引を示すグラフである。
【図15】本開示のナノドメイン中に吸収された22wt.%Licristal(登録商標)E44のC−V掃引を示すグラフである。
【図16】本開示のナノドメイン中に吸収された14wt.%Licristal(登録商標)E44のC−V掃引を示すグラフである。
【図17】本開示のナノドメイン中に吸収されPMMAと1:1で混合された22wt.%Licristal(登録商標)E44のC−V掃引を示すグラフである。
【図18】本開示のナノドメイン中に吸収された7wt.%Licristal(登録商標)E44のC−V掃引を示すグラフである。
【図19】本開示のナノドメイン中に吸収された7wt.%Licristal(登録商標)E44のC−V掃引を示すグラフである。
【図20】有効Licristal(登録商標)E44のwt.%に対する測定E−O係数(pm/V)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本開示の実施形態は、可視光の1/4波長以下の最大寸法を有する架橋ポリマードメインを有するナノドメインと、実質的に架橋ポリマードメイン全体に吸収されて微小機能性材料を形成する、外部印加場に反応する機能性を有する材料とを含む、微小機能性材料を含む。
【0078】
本開示の実施形態は、微小機能性材料がマトリックス材料中に分散されて複合材料を形成することを可能とする。さらに、本開示の実施形態は、微小機能性材料が1つまたは複数の層のフィルムを形成することを可能とする。さらに、一用途のために2つ以上のフィルムを使用することができる。様々な実施形態において、微小機能性材料は、特に、光学的、美学的、電気的、機械的および/または化学的技術分野における数々の用途において実用性を有し得る。微小機能性材料を単体で、追加的成分とともに、および/または複合材料において使用するための他の用途もまた可能である。
【0079】
様々な実施形態によれば、微小機能性材料は、架橋ポリマーのナノドメインから作製され、外部印加場に反応する材料で機能化される。様々な実施形態において、ナノドメインの架橋ポリマーは、可視光の1/4波長以下の最大寸法を有する架橋ポリマードメインを有する。これらの値は、ナノドメインの体積平均直径が約5nmから約175nmである粒度分布を含み得るが、これに限定されない。様々な実施形態において、ナノドメインは、約10nmから約100nmの体積平均直径を有し得る。
【0080】
本開示の実施形態はまた、ナノドメインを形成するための方法を提供する。例えば、ナノドメインは、ナノドメインのそれぞれが本明細書で説明されるような最大寸法(例えば可視光の1/4波長以下)を有するエマルジョンプロセスにより形成することができる(例えば、ともに参照によりその全内容が本明細書に組み込まれる、Kalantarら、米国特許出願公開第2004/0054111号および第2004/0253442号を参照)。
【0081】
様々な実施形態において、エマルジョンプロセスは、モノマー混合物および界面活性剤を水相中に乳化させることを含む。様々な実施形態において、エマルジョンは、水相中の安定化ナノドメインのマイクロエマルジョンである。界面活性剤の好適な例は、ポリオキシエチレン化アルキルフェノール(アルキルフェノール「エトキシレート」またはAPE);ポリオキシエチレン化直鎖アルコール(アルコール「エトキシレート」またはAE);ポリオキシエチレン化第2級アルコール、ポリオキシエチレン化ポリオキシプロピレングリコール;ポリオキシエチレン化メルカプタン;長鎖カルボン酸エステル;天然脂肪酸のグリセリルおよびポリグリセリルエステル;プロピレングリコール、ソルビトール、およびポリオキシエチレン化ソルビトールエステル;ポリオキシエチレングリコールエステルおよびポリオキシエチレン化脂肪酸;アルカノールアミン縮合物;アルカノールアミド;アルキルジエタノールアミン;1:1アルカノールアミン−脂肪酸縮合物;2:1アルカノールアミン−脂肪酸縮合物;第3級アセチレングリコール;ポリオキシエチレン化シリコーン;n−アルキルピロリドン;ポリオキシエチレン化1,2−アルカンジオールおよび1,2−アリールアルカンジオール;アルキルポリエトキシレート、アルキルアリールポリエトキシレート、アルキルポリグリコシド、ならびにこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。イオン性界面活性剤の使用もまた可能である。
【0082】
市販の界面活性剤の例は、ともにThe Dow Chemical Company製であるTergitol(商標)およびTriton(商標)界面活性剤を含む。使用される界面活性剤の量は、形成されるナノドメインを水またはその他の水性重合媒体中で少なくとも実質的に安定化させるために十分でなければならない。この正確な量は、選択される界面活性剤および他の化合物の性状に依存して変動する。また、この量は、反応がバッチ反応、半バッチ反応、または連続反応として行われるかどうかに依存して変動する。バッチ反応は、概して、最大量の界面活性剤を必要とする。半バッチおよび連続反応においては、粒子が成長するにつれ表面積対体積比が減少すると界面活性剤が再び利用され、したがってバッチ反応の場合と同じ量の所与のサイズの粒子を作製するのに必要な界面活性剤がより少なくなり得る。3:1から1:20、および2.5:1から1:15の界面活性剤:モノマー重量比が有用である。有用な範囲は、実際はこれよりも広くなり得る。
【0083】
水性液体成分は、水、水と親水性溶媒の組合せ、または親水性溶媒であってもよい。使用される水性液体の量は、反応混合物の総重量を基準として、少なくとも40重量パーセントとなり得る。様々な実施形態において、使用される水性液体の量は、反応混合物の総重量を基準として、少なくとも50重量パーセントとなり得る。様々な実施形態において、使用される水性液体の量は、反応混合物の総重量を基準として、少なくとも60重量パーセントとなり得る。使用される水性液体の量はまた、99重量パーセント以下、95重量パーセント以下、90重量パーセント以下、および/または85重量パーセント以下となり得る。
【0084】
開始剤は、フリーラジカル開始剤であってもよい。好適なフリーラジカル開始剤の例は、例えば2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、およびH/アスコルビン酸もしくはtert−ブチルヒドロペルオキシド/アスコルビン酸等のレドックス開始剤、またはジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエートもしくは2,2’−アゾイソブチロニトリル等の油溶性開始剤、またはこれらの組合せを含む。添加される開始剤の量は、モノマー100重量部あたり0.01から5.0、0.02から3.0、または0.05から2.5重量部の範囲となり得る。他の開始剤もまた可能である。フリーラジカル開始剤の使用に加え、重合のためのその他の機構には紫外光による硬化が含まれるが、これに限定されない。
【0085】
ナノドメインの形成に使用されるモノマーは、フリーラジカル重合を起こすことができる1種または複数種のモノマーであってもよい。好適なモノマーは、少なくとも1つの不飽和炭素間結合および/または2つ以上の炭素間二重結合を含有するものを含む。ナノドメインの形成において、1種類のモノマーが使用されてもよく、または2つ以上の異なる種類のモノマーが使用されてもよい。
【0086】
好適なモノマーの例は、スチレン(例えばスチレン、アルキル置換スチレン、アリール−アルキル置換スチレン、アルキニルアリールアルキル置換スチレン等);アクリレートおよびメタクリレート(例えばアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレート等);ビニル(例えば酢酸ビニル、アルキルビニルエーテル等);アリル化合物(例えばアリルアクリレート);アルケン、アルカジエン(例えばブタジエン、イソプレン);ジビニルベンゼンまたは1,3−ジイソプロペニルベンゼン;アルキレングリコールジアクリレートおよびこれらの組合せ(例えばコポリマー生成のための混合物)の群から選択することができる。本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、4個から14個の炭素(C4〜C14)を有する飽和直鎖または分岐鎖一価炭化水素基を含み得る。本明細書で使用される場合、「アルケン」という用語は、4個から14個の炭素(C4〜C14)を有する、少なくとも1つの炭素間二重結合を有する不飽和炭化水素を含み得る。
【0087】
様々な実施形態において、ナノドメインは、メチルメタクリレート(MMA)およびブチルアクリレートのモノマーから形成され得る。様々な実施形態において、ナノドメインは、MMA、ブチルアクリレートおよびスチレンモノマーから形成され得る。ナノドメインの他のコポリマー構成もまた可能である。
【0088】
さらに、液晶ポリマーのモノマーを本開示のナノドメインの形成に使用することができる。そのようなモノマーは、p−ヒドロキシ安息香酸および関連したモノマーに基づく部分結晶性芳香族ポリエステルを含み得る。重合して共重合液晶機能性を有するナノドメインを形成し得るモノマーの具体例は、2−プロペン酸、4’−シアノ[1,1’−ビフェニル]−4−イルエステル;コレスタ−5−エン−3−オール(3β)、2−プロペノエート;安息香酸、4−[[[4−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ブトキシ]カルボニル]オキシ]、2−メチル−1,4−フェニレンエステル;安息香酸、3,4,5−トリス[[11−[(1−オキソ−2−プロペン−1−イル)オキシ]ウンデシル]オキシ]、ナトリウム塩(1:1);フェノール、4−[2−(2−プロペン−1−イルオキシ)エトキシ];[1,1’−ビフェニル]−4−カルボニトリル、4’−(4−ペンテン−1−イルオキシ);フェノール、4−(10−ウンデセニルオキシ);安息香酸、4−[2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ];1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ビス[4−(10−ウンデセニルオキシ)フェニル]エステル、トランス;安息香酸、4−[[6−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ヘキシル]オキシ]−、2−クロロ−1,4−フェニレンエステル;および安息香酸、4−[[6−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ヘキシル]オキシ]−、2−クロロ−1,4−フェニレンエステル、ホモポリマーを含む。
【0089】
様々な実施形態によれば、ナノドメインは、紫外光の使用により、またはラジカル開始架橋プロセスにより架橋される。ナノドメインの架橋は、材料の吸収の前および/または後に行うことができる。そのような実施形態において、モノマーのうちの少なくともいくつかは2つ以上の不飽和炭素間結合を有する。ジビニルベンゼンまたは1,3−ジイソプロペニルベンゼンとともにスチレンモノマーを使用することが、有用な実施形態である。使用される架橋モノマー(例えば反応に利用可能な2つ以上の炭素間二重結合を有するモノマー)の量は、モノマーの総重量を基準として、約100重量パーセント未満、約70重量パーセント未満、約50重量パーセント未満、および約1重量パーセント超、または約5重量パーセント超となり得る。組成物に添加されるモノマーの総量は、組成物の総重量を基準として、約1重量パーセントから約65重量パーセント、約3重量パーセントから約45重量パーセント、または約5重量パーセントから約35重量パーセントの範囲内である。
【0090】
任意選択で、疎水性溶媒がモノマーに添加されてもよく、そのような溶媒の限定されない例は、トルエン、エチルベンゼン、メシチレン、シクロヘキサン、ヘキサン、キシレン、オクタン等、ならびにこれらの組合せを含む。使用される場合、疎水性溶媒の量は、疎水性液体の約1重量パーセントから約95重量パーセント、約2重量パーセントから約70重量パーセント、または約5重量パーセントから約50重量パーセントであってもよい。疎水性液体の総量は、全混合物の約1重量パーセントから約60重量パーセント、約3重量パーセントから約45重量パーセント、または約5重量パーセントから約35重量パーセントであってもよい。
【0091】
本開示のナノドメインを作製するために使用されるプロセスは、Kalantarら、米国特許出願公開第2004/0054111号および第2004/0253442号に記載のように、バッチプロセスとして、複数バッチプロセスとして、半バッチプロセスとして、または連続プロセスとして行うことができる。好適な反応温度は、約25℃から約120℃の範囲内であり得る。
【0092】
形成されたら、ナノドメインは、エマルジョンと少なくとも部分的に水に可溶な有機溶媒または溶媒混合物とを混合することにより沈殿させることができ、得られる水性液体−溶媒混合物中には、形成されたポリマーは実質的に不溶である。そのような溶媒の例は、アセトン、メチルエチルケトン、およびメタノールが含むが、これらに限定されない。このステップはナノドメインを沈殿させ、これは乾燥状態で使用することができ、または、後の使用のために、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メシチレン、またはジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)等の好適な有機溶媒中に再分散させることができる。沈殿はまた、ナノドメインから相当量の残留界面活性剤を除去する上で有用である。
【0093】
ナノドメインはまた、例えば沈殿前にイオン交換樹脂床を通過させる;沈殿させ、脱イオン水および任意選択でナノドメインが不溶な溶媒で完全に洗浄する;ならびに、沈殿させ、ナノドメインを有機溶媒中に分散させ、その溶媒中でシリカゲルまたはアルミナカラムに分散液を通過させる等、当技術分野において知られた様々な方法により精製することができる。
【0094】
沈殿後、噴霧乾燥ステップを使用してナノドメインの粉末を形成することができるが、乾燥温度は、ナノドメイン上の残留反応基を反応させて凝集およびナノドメイン粒子径の増加をもたらすほど十分高くない。また、凍結乾燥を使用してナノドメインの粉末を形成してもよい。
【0095】
本開示のナノドメインを形成するための他の方法もまた可能である。例としては、Mecerreyesら、Adv.Mater.2001、第13巻、204頁;Funke,W.、British Polymer J.1989、第21巻、107頁;Antoniettiら、Macromolecules 1995、第28巻、4227頁;およびGallagherら、PMSE.2002、第87巻、442頁;およびGanら、Langmuir 2001、第17巻、4519頁により説明されているものが含まれる。
【0096】
様々な実施形態において、ナノドメインは、外部印加場に反応する機能性を有する材料を実質的に架橋ポリマードメイン全体に吸収させて微小機能性材料を形成することにより、機能化され得る。材料により微小機能性材料に付与された機能性は、電気的、光学的、磁気的、化学的、電気光学的、エレクトロクロミック、磁気光学的、サーモクロミック、誘電的、および/または熱的特性を含み得るが、これらに限定されない。様々な実施形態において、機能的反応を有する材料をナノドメインの架橋ポリマードメイン中に吸収させることは、架橋ポリマードメインの形成の後および/またはその間に行うことができる。
【0097】
本明細書で説明されるように、架橋ポリマーは、様々な外部印加場のうちの1つまたは複数に反応性となるように機能化され得る。そのような外部印加場の例は、電場、磁場、電磁場、温度勾配、化学的勾配、および/または機械的力、例えば機械的圧力等を含むが、これらに限定されない。
【0098】
様々な実施形態において、架橋ポリマードメインは、ナノドメインの断面寸法を通して延在する連続的で実質的に均一なネットワークを提供する構造を有する(例えばそれは蛇行した細孔のネットワークを有する固体粒子である)。様々な実施形態において、構造の多孔性は、機能的反応を提供する材料がナノドメイン構造中に吸収されるのを可能とする。換言すると、架橋ポリマードメインは、材料を吸収し維持するスポンジのように機能し得る。この構造は、例えばある体積の材料を保持するシェルと対照的である。
【0099】
様々な実施形態において、吸収された材料は、実質的にナノドメインの架橋ポリマードメイン全体に均一に分散され得る。これにより、架橋ポリマードメイン内および/または該ドメインにわたる場所にかかわらず、ナノドメインを通して本質的に均一な材料の濃度が可能となる。さらに、ナノドメインの多孔性は、マトリックス材料中に分散された際に材料もまた架橋ポリマードメインにおける本質的に安定な濃度を維持し得るような多孔性である。本明細書で説明されるように、マトリックス材料は、無機および/または有機ポリマーマトリックス材料を含み得る。他のマトリックス材料もまた可能である。
【0100】
様々な材料を使用して、微小機能性材料のナノドメインを機能化することができる。例えば、外部印加場に反応する機能性を有する好適な材料は、化学活性機能性材料、光学活性機能性材料、磁気活性機能性材料、電気活性機能性材料、電気光学活性機能性材料、エレクトロクロミック活性機能性材料、サーモクロミック活性機能性材料、電歪機能性材料、誘電活性機能性材料、熱活性機能性材料およびこれらの組合せの群から選択され得る。
【0101】
例えば、好適な材料は、液晶物質、二色性染料、およびこれらの組合せの群から選択されるものを含む、外部印加場に反応する光学活性機能性材料を含み得る。ナノドメイン中に吸収される光学活性機能性材料の量は、微小機能性材料の約6重量パーセントから約60重量パーセントの範囲となり得る。さらに、光学活性機能性材料は、架橋ポリマードメインの屈折率値よりも大きい屈折率値を有し得る。
【0102】
様々な実施形態において、ナノドメインに吸収される光学活性機能性材料の量は、得られる微小機能性材料の用途に依存し得る。したがって、例えば、用途が液晶ディスプレイ(LCD)の位相遅延フィルム用である場合、使用される光学活性機能性材料の量は、所望のLCDの関数となる。さらに、ナノドメインに吸収される光学活性機能性材料の量はまた、ナノドメインに吸収される光学活性機能性材料の異方性、屈折率および/または複屈折性に依存し得る。
【0103】
理解されるように、一用途において2種以上の微小機能性材料の組合せを使用することも可能であり、微小機能性材料は、異なる種類および/または量の光学活性機能性材料を有し得る。例えば、第1の所定量の第1の材料で機能化された第1のナノドメインを含有する微小機能性材料の第1の層と、第2の所定量の第2の材料で機能化された第2のナノドメインを含有する微小機能性材料の第2の層とを備えたフィルムを有することが可能である。この手法、または他の手法を使用して、得られる多層フィルムを所望のアプリケーション用に「調整」することが可能であり、微小機能性材料を有する2つ以上の層を使用してこの目的を達成することができる。
【0104】
微小機能性材料のナノドメイン中に吸収させるのに好適な液晶物質の例は、等方相、ネマチック相、ねじれネマチック相、スメクチック相、キラルネマチック相、および/またはディスコチック相のものを含む。様々な実施形態において、好適な液晶物質は、4−ペンチルフェニル4−ペンチルベンゾエート;4−ペンチルフェニル4−メトキシベンゾエート;4−ペンチルフェニル4−メチルベンゾエート;4−ペンチルフェニル4−オクチルオキシベンゾエート;4−ペンチルフェニル4−プロピルベンゾエート;2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール;6−[4−(4−シアノフェニル)フェノキシ]ヘキシルメタクリレート;ポリ(4−ヒドロキシ安息香酸−コ−エチレンテレフタレート);p−アセトキシベンジリデンp−ブチルアニリン;p−アゾキシアニソール;4,4’−アゾキシジフェネトール;ビス(p−ブトキシベンジリデン)a,a’−ビ−p−トルイジン;ビス(p−ヘプチルオキシベンジリデン)p−フェニレンジアミン;ビス(p−オクチルオキシベンジリデン)2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン;p−ブトキシ安息香酸;p−ブトキシベンジリデンp−ブチルアニリン;p−ブトキシベンジリデンp−エチルアニリン;p−ブトキシベンジリデンp−ヘプチルアニリン;p−ブトキシベンジリデンp−オクチルアニリン;p−ブトキシベンジリデンp−ペンチルアニリン;p−ブトキシベンジリデンp−プロピルアニリン;ブチルp−ヘキシルオキシベンジリデンp−アミノベンゾエート;安息香酸コレステリル;デカン酸(カプリン酸)コレステリル;ドデカン酸(ラウリン酸)コレステリル;エライジン酸コレステリル;エルカ酸コレステリル;コレステリルエチルカーボネート;ヘプタン酸(エナント酸)コレステリル;コレステリルヘキサデシルカーボネート;コレステリルメチルカーボネート;オクタン酸(カプロン酸)コレステリル;コレステリルオレイルカーボネート;ペンタン酸(吉草酸)コレステリル;テトラデカン酸(ミリスチン酸)コレステリル;p−シアノベンジリデンp−ノニルオキシアニリン;4−シアノ−4’−ブチルビフェニル;4−シアノ−4’−ヘキシルビフェニル;4−シアノ−4’−オクチルビフェニル;4−シアノ−4’−ペンチルビフェニル;4−シアノ−4’−ペンチルオキシビフェニル;p−デシルオキシ安息香酸;p−デシルオキシベンジリデンp−ブチルアニリン;p−デシルオキシベンジリデンp−トルイジン;ジベンジリデン4,4’−ビフェニレンジアミン;4,4’−ジヘプチルアゾキシベンゼン;4,4’−ジヘプチルオキシアゾキシベンゼン;4,4’−ジヘキシルアゾキシベンゼン;4,4’−ジヘキシルオキシアゾキシベンゼン;4,4’−ジヘキシルオキシアゾキシベンゼン;4,4’−ジノニルアゾキシベンゼン;4,4’−ジオクチルアゾキシベンゼン;4,4’−ジペンチルアゾキシベンゼン;p−ドデシルオキシ安息香酸;p−エトキシベンジリデンp−ブチルアニリン;p−エトキシベンジリデンp−シアノアニリン;p−エトキシベンジリデンp−ヘプチルアニリン;エチル4−(4−ペンチルオキシベンジリデンアミノ)ベンゾエート;p−ヘプチルオキシベンジリデンp−ブチルアニリン;4−ヘプチルオキシベンジリデン4−ヘプチルアニリン;p−ヘキサデシルオキシ安息香酸;p−ヘキシルオキシベンザルアジン;p−ヘキシルオキシ安息香酸;4−(4−ヘキシルオキシベンゾイルオキシ)安息香酸;p−ヘキシルオキシベンジリデンp−アミノベンゾニトリル;p−ヘキシルオキシベンジリデンp−ブチルアニリン;p−ヘキシルオキシベンジリデンp−オクチルアニリン;p−メトキシベンジリデンp−ビフェニルアミン;p−メトキシベンジリデンp−ブチルアニリン;p−メトキシベンジリデンp−シアノアニリン;p−メトキシベンジリデンp−デシルアニリン;p−メトキシベンジリデンp−エチルアニリン;p−メトキシベンジリデンp−フェニルアゾアニリン;4−メトキシフェニル4’−(3−ブテニルオキシ)ベンゾエート;p−メチルベンジリデンp−ブチルアニリン;p−ニトロフェニルp−デシルオキシベンゾエート;p−ノニルオキシ安息香酸;p−ノニルオキシベンジリデンp−ブチルアニリン;p−オクチルオキシ安息香酸;p−オクチルオキシベンジリデンp−シアノアニリン;p−ペンチル安息香酸;p−ペンチルオキシ安息香酸;p−ペンチルオキシベンジリデンp−ヘプチルアニリン;4−ペンチルフェニル4’−プロピルベンゾエート;p−プロポキシ安息香酸;テレフタリリデンビス(p−ブチルアニリン);テレフタリリデンビス(p−ノニルアニリン);p−ウンデシルオキシ安息香酸および/または4−ペンチル−4’−シアノビフェニルを含み得るが、これらに限定されない。市販の液晶物質としては、Merck社(KGaA、ダルムシュタット、ドイツ)からLicristal(登録商標)E44(E44);Licristal(登録商標)E7(E7);Licristal(登録商標)E63(E63);Licristal(登録商標)BL006(BL006);Licristal(登録商標)BL048(BL048);Licristal(登録商標)ZLI−4853(ZLI−4853)およびLicristal(登録商標)MLC−6041(MLC−6041)の商標で販売されているものが含まれるが、これらに限定されない。他の市販の液晶物質もまた可能である。
【0105】
様々な実施形態において、有用な液晶物質はまた、負の誘電異方性を有するものを含み得る。本明細書で使用される場合、「負の誘電異方性」は、ダイレクタと平行な誘電率がダイレクタに垂直な誘電率よりも小さい状態を含み、ダイレクタは物質中の液晶の長距離秩序がその周りに配列する局所的対称軸を指す。負の誘電異方性を有する液晶物質の例は、米国特許第4,173,545号に見られるもの(例えばp−アルキル−フェノール−4’−ヒドロキシベンゾエート−4−アルキル(アルコキシ)−3−ニトロベンゾエート)、正または負の誘電異方性を有するもの、または、4−シアノ−4’−ヘキシルビフェニルおよびサリチルアルジミン(Physica B:Condensed Matter、第393巻、(1〜2)、270〜274頁を参照)の場合のように正から負に切り替わることができるもの、Klasen−Memmerらによる「Advanced Liquid Crystal Materials with Negative Dielectric Anisotropy for Monitor and TV Applications」(Proc Int Disp Workshops、第9巻、93〜95頁、2002)において説明されているもの、Hirdらによる「Nematic materials with negative dielectric anisotropy for display applications」(Proc.SPIE 第3955巻、15〜23頁、Liquid Crystal Materials,Devices,and Flat Panel Displays、2000年3月)に見られるもの、およびOsmanらによる「Stable Liquid Crystals with Large Negative Dielectric Anisotropy」(Helvetica Chimica Acta、第66巻、第6号、1786〜1789頁)に見られるものを含み得るが、これらに限定されない。光学活性機能性材料はまた、赤外、可視および紫外周波数範囲のうちの少なくとも1つにおける放射エネルギー(例えば光)の少なくとも一部の、微小機能性材料を通した透過を防止するように機能し得る。
【0106】
背景において上述したように、ポリマーマトリックス中の液晶物質の形態の制御は複雑なプロセスとなり得、本開示までは、機能性のサブ波長ドメインを得ることはまだ達成されていない。今までこれが可能でなかった理由についての1つの見解は、液晶分子が大型構造へと自己組織化する傾向を有するということである。これらの大型構造は、外部印加場の下で大型構造が回転しようとしたときに、それらが含有されるドメインの壁により付与される摩擦力によりマイナスの影響を受ける可能性がある。換言すれば、自己組織化液晶分子はドメインの体積に比べ非常に大きく、ドメインの体積対表面積の比率は表面積が支配的であるため、自己組織化液晶分子上には著しい有害な摩擦力が付与される。
【0107】
しかしながら、驚いたことに、本開示の実施形態は、これらの問題に遭遇しない。むしろ、実質的に微小機能性材料のナノドメイン全体にわたり吸収された液晶物質の自己組織化は最小限化されると考えられる。この理由として考えられるのは、架橋ポリマードメインの構造は、液晶物質がそれ自身と関連しすぎる程度まで組織化する能力を最小限化する(例えばそれが大きくなりすぎないようにする)のを補助する点である。結果として、架橋ポリマードメイン中の液晶物質が受ける摩擦力は、他のドメイン構造と比較して最小限化され得る。
【0108】
液晶物質に加え、微小機能性材料のナノドメイン中に吸収させるための他の可能な材料は、電気反応および/または磁気反応特性を有するものを含み得る。これらは、電気伝導および/または熱伝導に影響する、微小機能性材料の伝導/絶縁特性に影響を及ぼすために使用され得る材料を含み得る。さらに、微小機能性材料の誘電率に影響する材料を使用して、ナノドメイン材料の誘電率を増加または減少させることができる。例えば、ナノドメインの誘電率は、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウム、銅フタロシアニンオリゴマー(o−CuPc)ナノ粒子(Appl.Phys.Lett.第87巻、182901頁(2005)を参照)、銀ナノ粒子、オキシ水酸化アルミニウムAlO[OH]、LiN(CSOもしくはLiClO等の塩、Al、ZnO、SnO、および様々な酸化状態の他のナノ金属酸化物フィラー、またはいくつかの場合においては、金、銀、銅、もしくはこれらの金属の合金等の高誘電性材料を有することにより増加され得る。
【0109】
また、強誘電体および/または強磁性体材料をナノドメインに加え、ナノドメインおよび/または材料の特性を改善することもできる。そのような材料の例は、有機基の1個または複数の炭素原子と、主族、遷移、ランタニド、またはアクチニド金属原子(複数可)との間の結合相互作用がある有機金属化合物であり得る。さらに、他の有機分子をナノドメイン構造に吸収させることができる。
【0110】
様々な実施形態において、吸収された材料の機能特性は、一度ナノドメイン構造に吸収されると大きく影響されない。さらに、ナノドメインはまた、実質的にナノドメイン全体に吸収された材料に秩序を誘発し得る。材料およびナノドメインにおける同様の特性長さの秩序構造は、以下の実施例の項に記載されるように、X線散乱結果により決定することができる。これらの結果は、架橋ポリマードメインにより秩序が誘発され得ることを示唆している。例えば、液晶物質が実質的にナノドメインの架橋ポリマードメイン全体に吸収された場合、本明細書で説明される散乱試験は、約4nmの特性長さを有する液晶秩序構造を示す。ナノドメインにより誘発されたこの秩序は、未加工液晶物質、またはポリメチルメタクリレート中の液晶物質の溶液においては観察されない。さらに、液晶物質が実質的にナノドメインの架橋ポリマードメイン全体に吸収された場合、液晶の電気光学活性は維持される。
【0111】
追加的な実施形態において、微小機能性材料の架橋ポリマードメインの架橋密度は、材料をナノドメインの架橋ポリマードメイン中に吸収させた後に増加し得る。様々な実施形態において、吸収後の架橋を使用して、非球形ナノドメイン(例えば楕円形)を形成することができる。さらに、材料はまた、一度吸収されると、ナノドメインのポリマードメインに架橋され得る。一度形成されると、微小機能性材料は、本明細書において説明されるように、保管および後の使用のために粉末として調製(例えば凍結乾燥)され得る。
【0112】
様々な実施形態において、微小機能性材料は、マトリックス材料とブレンドすることができ、微小機能性材料およびマトリックス材料は別個の状態に維持される。さらに、微小機能性材料は、マトリックス材料のバルクの機械的特性に影響しない濃度でマトリックス材料中に組み込むことができる。したがって、材料は、ポリマーマトリックス材料とは独立して外部印加場に反応し得る。
【0113】
様々な実施形態において、マトリックス材料を改質するために使用される微小機能性材料は、非改質マトリックス材料と比較して、ヘーズまたはマトリックス材料の透明度に関するその他の問題を引き起こすことなくそのように使用され得る。説明したように、この理由の1つは、微小機能性材料のナノドメインが、可視光の1/4波長以下の最大寸法を有する点であり得る。ナノドメインのサイズを制御することによって、例えば光学的用途のために光を散乱させ得るサイズのドメインを排除することにより、マトリックス材料の透明度を維持することができる。微小機能性材料はまた、さもなくばマトリックス材料中に分散しない機能性材料を分散させるのに有用となり得る。
【0114】
様々な実施形態において、微小機能性材料が組み込まれるマトリックス材料は、有機および/または無機ポリマーを含み得る。これらのポリマーは、熱可塑性ポリマーを含み得る。様々な実施形態において、微小機能性材料は、熱硬化性樹脂を架橋させる前に熱硬化性樹脂中に分散され得る。あるいは、微小機能性材料は、輝度を改善するか、さもなくば溶液の屈折率を変化させるために、インク溶液および/または液体媒体、例えば有機および/または無機媒体中に懸濁され得る。また、微小機能性材料は、ゾル−ゲル前駆体溶液(例えばテトラエチルオルトシリケート)と混合され得る。さらに、微小機能性材料は、他の固体材料と混合されて固体混合物を形成し得る。
【0115】
他の添加剤もまた、微小機能性材料の2種以上を含むマトリックス材料中に分散させることができ、各材料は、異なる機能性を有し得る。異なる機能性に加えて、微小機能性材料は、同一の量または異なる量を含む様々な量を有し得る。選択される量は、微小機能性材料を有する得られる材料からの所望の反応に依存し得る。
【0116】
ナノドメインを使用することの1つの利点は、マトリックス材料の美的性質が保存されるように、機能的反応を有する材料が光の1/4波長未満の長さスケールで別個に維持されるという点である。(可溶化されるのではなく)別個であることにより、材料はその好ましい様式で作用し得る。例えば、本明細書において説明されるように、マトリックス材料中に分散した微小機能性材料における光学活性機能性材料(例えば液晶物質)の状態は、複合材料のバルクの電気光学的特性を制御するように、複合材料に印加される外部印加場により変化され得る。これは、マトリックス材料の光学的透明度を維持しながら行うことができる。
【0117】
さらに、材料を別個の状態に維持することにより、マトリックス材料の連続的特性をより良く保存することができ、例えばマトリックス材料のレオロジー的および機械的特性を保存することができる。保存および/または向上され得るマトリックス材料の他の特性には、ガス拡散障壁、光学的および電気的/磁気的(誘電的)特性が含まれる。押出、射出成形、スプレーコーティング、および/またはインクジェット印刷等のポリマー加工方法によりこれらの活性分散物を加工する能力は、均質材料としてでは使用することができない多くの用途におけるそれらの使用を可能とする。
【0118】
様々な実施形態において、マトリックス材料における微小機能性材料の分散は、均一となり得る。代替の実施形態において、微小機能性材料の分散は、マトリックス材料全体に、および/または該材料にわたり広がる濃度勾配をもたらすことができる。例えば、微小機能性材料は、マトリックス材料中に屈折率の勾配を形成するようにマトリックス材料中に様々な濃度で空間的に分散され得る。様々な実施形態において、濃度勾配は、マトリックス材料の厚さ全体に、および/またはマトリックス材料の幅もしくは長さにわたり広がり得る。
【0119】
様々な実施形態において、架橋ポリマードメインの選択は、部分的に、微小機能性材料が組み込まれるポリマーマトリックス材料(複数種可)に基づいて行うことができる。例えば、架橋ポリマードメインは、微小機能性材料をポリマーマトリックス材料(例えばポリマー溶融物)内に分散させるように選択することができる。微小機能性材料を実質的にマトリックス材料全体に分散させる手法は、単軸押出機、二軸押出機、2本ロールミル、および/またはHenschel型ミキサー、Haake型ミキサー等のミキサー等の従来のポリマー加工機器内で行うことができる。
【0120】
本開示の実施形態は、様々な用途において有用となり得る。そのような用途は、特に、ディスプレイ、眼科用レンズ、光ファイバ、ブラッグ反射器、および導波路等の光学的用途を含み得るが、これらに限定されない。微小機能性材料のナノドメインは、ナノドメインを形成するために使用されるモノマーの選択(例えば架橋ポリマードメインのT)および/または架橋ポリマードメインの架橋密度によって、より剛性またはより低剛性とすることができる。様々な実施形態において、液晶物質および架橋ポリマードメインの移動性を変化(例えば減少)させることを目的として、架橋ポリマードメインのTを調節することも可能となり得る。マトリックス材料は、複合材料への用途の加工および完全性要件を満たすように選択することができる。さらに、微小機能性材料は、屈折率分布型レンズ、反射防止フィルム、または、例えば視角を制御するフィルム等の光学材料を形成するために、様々な混合、押出、および/または印刷技術を使用して空間的に濃度勾配を有するように分散され得る。
【0121】
また、外部印加場に反応する機能性を有する材料は、微小機能性材料のナノドメイン中に吸収され、微小機能性材料および/またはマトリックス材料の両方の屈折率に変化をもたらし得る。これにより、微小機能性材料および/または吸収された材料の組成によって屈折率を「調整」することが可能となる。屈折率は、マトリックス材料または微小機能性材料のナノドメインよりも低く、または高く変化させることができる。屈折率調整因子(refractive index modifier)の主な利点は、閲覧者の目には光学的に透明としたまま、マトリックス材料または微小機能性材料のナノドメインの屈折率を変化させることができる点である。より高いまたはより低い屈折率を有する材料を達成する1つの手法は、微小機能性材料のナノドメインおよび/またはマトリックス材料よりも高いまたは低い屈折率を有する材料を吸収させた微小機能性材料を有することである。
【0122】
切り替え可能な屈折率(例えば電場の使用により)もまた、好適な液晶物質を微小機能性材料のナノドメイン中に吸収させることにより達成され得る。例えば、キラルネマチックまたはスメクチック−コレステリック液晶としても知られる強誘電性液晶を、微小機能性材料のナノドメインに吸収させることができる。強誘電性液晶の利点は、それらを使用して、外部印加場の印加後に屈折率における双安定性の変化(bi-stable change)(ひいては維持電圧を必要としない)を形成することができる点である(例えばそれらは切り替え可能である)。
【0123】
本開示の微小機能性材料で形成された調整可能な複屈折フィルムもまた、広範な光学的用途に有用である。そのような光学的用途の例は、光スイッチング、導波路多重化(waveguide multiplexing)、ビームステアリング、動的集束、ディスプレイ、スマートウィンドウ、眼鏡類、および工業光学システムを含むが、これらに限定されない。
【0124】
様々な実施形態において、調整可能な複屈折フィルムは、少なくとも2つの電極間に設置された微小機能性材料で形成され得る。電極の例は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン、インジウムスズ酸化物(ITO)、および/またはITO被覆基板等の伝導性材料で形成されるものを含み得る。他の種類および形態の電極が可能である。電極は、調整可能な複屈折フィルムにわたり電流を印加するために使用されるドライバに結合される。印加電流は、調整可能な複屈折フィルムの複屈折を印加電流の関数として変化させるように動作し得る。様々な実施形態において、2つ以上の調整可能な複屈折フィルムを光学的用途において一緒に使用することができる。
【0125】
本開示の調整可能な複屈折フィルムの1つの具体的な用途は、LCD内の用途であり得る。この用途において、調整可能な複屈折フィルムは、LCDの動的プライバシーフィルム(dynamic privacy film)を形成するために使用することができる。動的プライバシーフィルムは、調整可能な複屈折フィルムの位相遅延補償値が外部印加場の関数として「調整」されるのを可能とし、これはLCDのコントラスト比を視角の関数として変化させる。これにより、LCDの視角を動的に制御する能力が可能となる。
【0126】
視角を動的に制御する能力は、閲覧時に固有のプライバシーを変化させたいと望む多くのLCD使用者にとって魅力的である。本開示の調整可能な複屈折フィルムは、例えば、閲覧時のプライバシーを可能とする、ラップトップ型パソコン、携帯電話または現金自動預払機(ATM)上のスイッチを可能とする。このスイッチは、液晶セルからの位相遅延補償出力を改変し、使用者が例えば飛行機または他の公共の場所において閲覧されている情報をより良く保護することができるように、調整可能な複屈折フィルムを制御する。
【0127】
本開示の調整可能な複屈折フィルムは、印加電場により変動し得る屈折率楕円体を含み得る。これを達成する1つの手法は、本開示の微小機能性材料を使用して、溶液から直接コーティングするか、または別のポリマーマトリックスに添加することである。コーティングまたはフィルム形成の間、短軸引張またはせん断を適用して微小機能性材料を楕円化(prolate)し、それにより液晶物質を事前に配列させることができる。電場がフィルムの厚さにわたり印加されると、液晶物質は回転し、電場に配列する。
【0128】
液晶物質のうちの1種または複数種に加え、二色性染料もまた吸収させることができる。あるいは、二色性染料は、単独で、および/または本明細書において説明される他の機能性材料のうちの1種もしくは複数種とともに吸収させることができる。柱状およびネマチック両方のディスコチック液晶を有する物質もまた吸収させることができる。好適な二色性染料および/または追加的な液晶物質の例は、特に、米国特許第4,401,369号および第5,389,285号に見られるもの;WO1982/002209に見られるもの;アリールアゾピリミジン;ベンゾ−2,1,3−チアジアゾール(J.Mater.Chem.、2004、第14巻、1901〜1904頁を参照);Merck Licristal(登録商標)、およびMerck Licrilite(登録商標)を含む。
【0129】
様々な追加的な物質をナノドメイン中に吸収させて、微小機能性材料および/またはマトリックス材料の外観に影響を与えることができる。例えば、ナノドメイン材料の屈折率を適切に選択することにより(例えば、機能性材料の屈折率はナノドメイン材料の屈折率より大きく、ナノドメイン材料の屈折率はマトリックス材料の屈折率より大きい)、マトリックス材料および/または材料は、全内部反射に対するフレネル効果に起因してより明るく見えることができる。
【0130】
さらに、染料または顔料をナノドメインに添加して反射色を提供することができる。また、特定周波数の光を吸収する他の様々な化合物を吸収させ、および使用して、減色法によりナノドメインを着色することができる。さらに、ナノドメイン中のナノサイズ金属粒子は、プラズモン散乱により色を発することができる。得られる色は、粒子の金属の種類、濃度、および/またはサイズの関数となり得る。
【0131】
追加的な実施形態において、ナノドメインの透光性もまた調整され得る。例えば、ナノドメインの透光性の調整は、架橋ポリマードメインのサイズおよび屈折率を調節することにより行うことができる。減色法と同様に、吸収された材料を使用した特定波長(例えばUV、IR)の吸収および/または反射もまた可能である。例えば、材料としてZnOを使用すると、UV光を吸収することができる。さらに、架橋ポリマードメインは、特定周波数の光を反射する上で役立つように選択され得る。
【0132】
本明細書において説明される物品、および他の物品は、本明細書において説明される加工技術から形成され得る。例としては、射出成形、ブロー成形、フィルム押出、シート押出、共押出、圧縮成形、ロトモールディング、熱成形、および/または真空成形プロセスにおける微小機能性材料およびポリマーマトリックス材料の分散物の熱加工が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、物品は、発泡プロセスおよび/またはコーティングプロセスにより、微小機能性材料およびマトリックス材料の分散物から形成され得る。コーティングプロセスは、特に、ドローコーティング、ドクターブレードコーティング、スピンコーティング、塗布、静電塗布、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、カーテンコーティング、および/またはスプレーコーティングを含み得るが、これらに限定されない。
【0133】
本開示の微小機能性材料および/または複合材料は、様々な用途において使用することができる。例えば、外部印加場において屈折率を変化させる微小機能性材料は、動的複屈折フィルム、偏光子技術、および多層ディスプレイにおいて使用することができる。それらはまた、ナノドメインが光の散乱を引き起こすまで巨大化されれば、より従来的なポリマー分散液晶として使用することができる。さらに、様々な電場発光機能性材料を使用して、ディスプレイにおける使用のための電場発光性のフィルムまたはインクを作製することができる。
【0134】
本開示の微小機能性材料はまた、多層フィルムに追加して、赤外光および/または紫外光を外部印加場の関数としてフィルタリングする層を形成することができる。低放出コーティングもまた可能であり、ナノドメインは、フッ素ドープスズ酸化物または近赤外領域における表面プラズモン共鳴効果に起因する反射および/または吸収を示すその他の材料を含み得る。
【0135】
追加的な用途において、高屈折率を有する本開示の微小機能性材料は、光ファイバケーブルに追加して中心から端部への屈折率のグレーディング(例えば低屈折率から高屈折率へ)を提供することができ、または、光ファイバの外部の被覆に使用してファイバを伝わる光波の内部反射を増加させることができる。あるいは、マトリックス材料より高いまたは低い屈折率を有する微小機能性材料を、インクジェット印刷またはマイクロスタンピング等の方法を使用して格子パターンに空間的に分布させ、ブラッグ反射器を形成することができる。さらに、微小機能性材料は、ブラッグ反射器がオンまたはオフとなり得るように、屈折率が外部印加場(例えば印加電場)により変化する材料で充填され得る。さらに、微小機能性材料を三次元的に印刷する能力により、ホログラフィックブラッグ反射器もまた可能となり得る。
【0136】
本開示の微小機能性材料は、眼科用レンズの領域でも有用となり得る。例えば、高屈折率を有する微小機能性材料は、眼科用レンズ材料(例えばポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン)中に混合および分散され、レンズの屈折率を増加させることができ、レンズ設計におけるより多くの柔軟性および制御を可能とする。さらに、それらの屈折率が印加電場により制御され得る微小機能性材料を有するレンズを設計することができる(例えば動的屈折率レンズ)。
【0137】
マトリックス材料中の微小機能性材料はまた、屈折率分布型(GRIN)光学系(例えば、厚さおよび/または曲率ではなく屈折率を変化させることで集光するレンズ)に使用することができる。例えば、異なる屈折率を有する微小機能性材料を様々な濃度で空間的に分散させ、GRINレンズを形成することができる。ここでも、微小機能性材料の屈折率は、レンズをオンおよびオフにし、ならびに/またはレンズの焦点距離を調節するために、外部印加場により活性化され得る。
【0138】
マトリックス材料中の微小機能性材料はまた、発光ダイオード(LED)用途において使用することができる。例えば、微小機能性材料を有するマトリックス材料は、LEDパッケージにおいて使用することができ、より高い屈折率を使用して、LEDから放出される光の角度分布を改善することができる。
【0139】
マトリックス材料中の微小機能性材料はまた、マトリックス材料を反射防止性とするために使用することができる。例えば、微小機能性材料を有するマトリックス材料は、UVリソグラフィー用途の反射防止コーティングに使用することができる。また、微小機能性材料を有するマトリックス材料を、汎用反射防止材料として使用することも可能である。
【0140】
様々な実施形態において、微小機能性材料は、多層フィルムの1つまたは複数の層に組み込むことができる。様々な実施形態において、微小機能性材料を有する層は、多層フィルムの1つまたは複数の層の屈折率を変化させるために使用することができる。この変化は、静的または動的となり得る。例えば、電場または温度場を印加してフィルムの温度を変化させることにより動的な光学的効果(可変波長の反射および透過)を達成することができ、ここで温度変化は、層(複数可)のTgに達すると層の1つまたは複数におけるポリマー(複数種可)の配向をランダムとすることができる(例えば、ポリマーのTg以上で、ポリマーはより結晶性の状態から非晶質状態に変化する)。
【0141】
本開示の実施形態はまた、大きな体積分率の微小機能性材料を含有するモノリスの形成における微小機能性材料の使用を可能とする。本明細書で使用される場合、モノリスという用語は、組成物の大部分の体積分率が微小機能性材料である微小機能性材料の組成物から形成される、またはそれで形成される構造(例えばフィルムまたはコーティング)を指す。大部分として好適な値は、組成物の少なくとも60パーセントの体積分率が微小機能性材料であることを含み得、残りの体積分率は、微小機能性材料を懸濁させるために使用された揮発性液体種を含み得る。微小機能性材料の他の体積分率(例えば70パーセント以上、80パーセント以上)もまた可能である。
【0142】
追加的な実施形態において、本開示の微小機能性材料は、特に、装飾用フィルム、電場発光性のフィルム、顔料/インク、光沢剤、電磁的/電子的用途、例えばコンデンサ、透明導電体、高K/ゲート誘電体、アンダーフィル熱ペースト(underfill thermal paste)、磁気記憶媒体、および光記憶媒体に使用することができる。
【0143】
本開示は、以下の実施例により例示される。具体的な実施例、材料、量、および手順は、本明細書に記載されるような本開示の範囲および精神に従い、広義に解釈されるものであることを理解されたい。
【実施例】
【0144】
本開示の様々な態様が以下の実施例により例示される。具体的な実施例、材料、量、および手順は、本明細書に記載されるような本開示の範囲に従い、広義に解釈されるものであることを理解されたい。別段に示されない限り、すべての部およびパーセンテージは重量換算であり、すべての分子量は数平均分子量である。別段に指定されない限り、使用されるすべての化学薬品は、本明細書に示されるように市販されているものである。
【0145】
試薬:メチルメタクリレート(MMA、99パーセント、安定化、Acros Organics社製);スチレン(S、99パーセント、Aldrich社製)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA、98パーセント、安定化、Acros Organics社製);ジビニルベンゼン(DVB、98パーセント、Aldrich社製);ドデシル硫酸ナトリウム塩(SDS、98パーセント、Acros Organics社製);1−ペンタノール(99パーセント、Acros Organics社製);塩化メチレン(HPLCグレード、Burdick and Jackson社製);アセトン(HPLCグレード、J.T.Baker社製);液晶物質Licristal(登録商標)(Merck,KGaA製、ダルムシュタット、ドイツ);分子量15,000のポリ(メチルメタクリレート)(Aldrich社製);ブチルアクリレート(BA、99パーセント、安定化、Aldrich社製);アリルメタクリレート(AMA、Acros Organics社製、98パーセント);過硫酸アンモニウム(APS、Acros Organics社製、98パーセント);およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA、Acros Organics社製、99パーセント)。
【0146】
すべての重合は、窒素下で超純粋脱イオン水(UPDI水、Barnstead清浄機を通過、導電率<10−17Ω−1)中で行われる。
【0147】
ナノドメインの調製
本実施形態では、MMAもしくはBAもしくはS、またはこれらのモノマーの混合物を、架橋モノマーとして機能するAMAまたはDVBと、表1に記載の量に従い混合する。塩基性酸化アルミニウム(Acros Organics社製)が部分的に充填されたカラムを通して混合物を濾過して安定剤を除去し、100mlのガラス製シリンジに装填する。表1に記載されるように、SDSおよび1−ペンタノールをUPDI水と組み合わせて反応器に装填し、そこで混合物を低速度(200rpm)で撹拌し、30℃で20分間、窒素でパージする。
【0148】
等モル量のAPSおよびTMEDAを、2種の開始剤として使用する。表1に列挙された実施例のそれぞれに対し、表1に記載されるようにUPDI水10ml中のAPSを第1の開始剤として使用し、表1に記載されるようにUPDI水10ml中のTMEDAを第2の開始剤として使用する。
【0149】
表1に記載されるように、モノマー混合物および開始剤の初期部分を反応器に装填してシード重合を開始させる。30分後、表1に示されるような速度で、シリンジポンプ(KD Scientific社製)を介したモノマーの残りの注入を開始する。反応器100を窒素でパージし、反応を通して温度を28℃に維持する。重合は1時間続く。モノマー注入が完了したら、得られたナノドメインをガラス瓶に回収し、PennStop(商標)(Aldrich社製)を数滴瓶に添加し、重合反応を停止させる。
【0150】
【表1】

【0151】
流体力学的クロマトグラフィー(「Development and application of an integrated,high-speed,computerized hydrodynamic chromatograph」、Journal of Colloid and Interface Science、第89巻、第1号、1982年9月、94〜106頁;Gerald R.McGowanおよびMartin A.Langhorstに記載)により決定される実施例1〜5のナノドメインの粒度分布を図1に示す。ナノドメインの体積平均直径の値は、10nmから100nmとなり得る。粒度分布に関して、ナノドメインの70パーセントが50nm未満の体積平均直径を有し、30nmの体積平均直径を有するナノドメインが見られた。
【0152】
3つの方法のうちの1つに従い、ナノドメインを単離する。第1の方法では、所与の体積の不希釈ナノドメイン懸濁液またはラテックスに、等体積のメチルエチルケトン(MEK、Fisher社製、HPLCグレード)を添加する。得られる懸濁液を2,000rpmで20分間遠心分離する(IEC Centra GP8R;1500Gの力)。液体をデカンテーションし、ナノドメインを1×元の体積の1:1UPDI水:アセトンに再懸濁させる。さらに2回、再懸濁させたナノドメインを遠心分離してデカンテーションする。乾燥空気流中で約70時間、ナノドメインを乾燥させる。
【0153】
第2の方法では、所与の体積の不希釈ナノドメイン懸濁液またはラテックスに、等体積のMEKを添加する。得られる懸濁液を上記のように遠心分離する。液体をデカンテーションし、ナノドメインをUPDI水中にブレンドしてアセトン(等体積)に添加する。ナノドメイン懸濁液を濾過し、数倍体積分のメタノール(Fisher社製、HPLCグレード)または1:1UPDI水:アセトン、UPDI水、次いでメタノールで洗浄する。次いで乾燥空気流中で約70時間、ナノドメインを乾燥させる。
【0154】
第3の方法では、所与の体積の不希釈ナノドメイン懸濁液またはラテックスに、等体積のMEKを添加する。得られる懸濁液を上記のように遠心分離する。液体をデカンテーションし、ナノドメインを最少量のテトラヒドロフラン(THF、Fisher社製、HPLCグレード)中に溶解させる。THF溶液を徐々に5〜10倍過剰のメタノールに添加することにより、ナノドメインを沈殿させる。沈殿ナノドメインを濾過し、メタノール(Fisher社製、HPLCグレード)で洗浄し、次いで上述のように乾燥させる。
【0155】
液晶物質
様々な液晶物質を本明細書に記載の実施例において使用する。第1の実施例は、透明点(等方性流体への遷移)が100℃、誘電異方性(Δε)が+16.8、および光学的異方性(Δn)が0.2627のネマチック液晶物質である、Licristal(登録商標)E44(Merck,KGaA製、ダルムシュタット、ドイツ)、4−ペンチル−4’−シアノビフェニルを含む。本実施例において使用される他の液晶物質は、4−シアノ−4’−オクチルビフェニル(Frinton Laboratories社製、ニュージャージー州);Licristal(登録商標)E7;Licristal(登録商標)E63;Licristal(登録商標)BL006;Licristal(登録商標)BL048;Licristal(登録商標)ZLI−4853およびLicristal(登録商標)MLC−6041(それぞれMerck,KGaA製、ダルムシュタット、ドイツ)を含む。様々な実施例において、液晶物質および/または液晶物質の混合物は、ナノドメイン中の秩序に対するそれらの影響を観察するために使用される。
【0156】
表2は、液晶物質の特性のいくつかを示している。液晶物質は、少なくとも部分的に、それらの高屈折率異方性および比較的低い切替電圧のために選択される。切替電圧に関して、液晶の切替電圧を特性決定するために使用される2つの一般的な尺度がある。第1は閾値電圧Vthであり、これは反応をもたらすために必要な表示ピクセル(液晶物質を含有する)にわたる電圧の量である。他方は反応の「鋭さ」の尺度であり、10パーセントから90パーセントの輝度に達するのに必要な電圧の差(V10−V90と記述される)を検出することにより計算される。本実施例における液晶物質は、それらのV10−V90値により示されるように、鋭い遷移を有する。
【0157】
【表2】

【0158】
ナノドメイン中への液晶物質の吸収
表3に記載されるように、液晶物質の試料をガラス容器内で塩化メチレンに溶解させ、溶液を形成する。溶液にアセトンを添加し、これを視覚的に透明な溶液が得られるまで混合する。ナノドメインの水性分散液を秤量し、溶液に添加して混合物を形成する。混合物を室温(約21℃)で一晩振盪する。
【0159】
上述のようなナノドメイン中への液晶物質の吸収は、水−塩化メチレン界面を介した液晶分子の分散ナノドメイン中への移動に基づく。水性分散液と溶液との混合においてこのプロセスの兆候がある。混合すると、ナノドメインの水性分散液は、その光散乱能を大きく増加させる。これは、溶液によるナノドメインの膨潤、または粒子の凝集による平均粒径の増加を示唆している。動作範囲内において、実質的に混合、振盪、およびデカンテーションプロセス全体を通して、ナノドメインの水性分散液は安定性を維持し、例えばナノドメインの沈殿は生じない。
【0160】
混合物を室温(約21℃)で3時間相分離させる。容器内で2つの相が生成し、容器の下部には塩化メチレンを多く含む相が、また上部には水相が生成する。水相をデカンテーションしてフリーズドライし、液晶物質を吸収させたナノドメインを得る。液晶物質を吸収させた得られるナノドメインは、浮遊性の白色粉末の外観を有する。
【0161】
実施例に記載の液晶物質はすべて、上記と同じ手順を使用して、実施例1〜5(上記)のナノドメインに良好に吸収される。表3は、様々な液体物質を吸収させた実施例1のナノドメイン中の液晶の量を示す。ナノドメイン中の液晶物質の量は、微小機能性材料の約6重量パーセントから約25重量パーセントまで変動する。最も少ない量(6.2重量パーセント)はLicristal(登録商標)ZLI−4853に対応し、次いでLicristal(登録商標)MLC−6041(11.6重量パーセント)およびLicristal(登録商標)BL048(13.2重量パーセント)が続く。Licristal(登録商標)E44(24.6重量パーセント)およびLicristal(登録商標)E7(23.1重量パーセント)は、ナノドメインの実施例1において最も多い量で吸収される。体積平均直径が60nmの実施例1のナノドメインでは、若干より多い量の同様の結果が得られる。
【0162】
【表3】

【0163】
FTIR分光法
FTIR分光法(Nicolet 710 FTIR)を使用して、実施例1のナノドメインに吸収された液晶物質の存在および量を決定する。
【0164】
FTIRの較正のため、ポリ(メチルメタクリレート)0.887gを塩化メチレン16.78gに溶解させる。視覚的に均質な透明溶液が得られるまで混合物を撹拌する。この溶液に、必要量の液晶物質を添加し、混合物が視覚的に透明となるまで撹拌する。溶液をポリ(テトラフルオロエチレン)のリリース表面(release surface)(例えばシート)上に注ぎ、室温(約21℃)で動作する真空オーブン内に置いて塩化メチレンを蒸発させる。得られるフィルムを使用して、FTIR測定結果を較正する。
【0165】
生成された微小機能性材料を、FTIRおよびX線散乱で特性決定する。FTIR分光法を使用して、ナノドメイン中の液晶物質の量を決定する。
【0166】
Licristal(登録商標)E44、実施例1のナノドメイン、およびLicristal(登録商標)E44を吸収させた実施例1のナノドメインの典型的なスペクトルを、図2A〜2Cに示す。Licristal(登録商標)E44のFTIRスペクトルは、約2230cm−1(図2A)の芳香族C≡N線により特徴付けられる。図2Bは、実施例1のナノドメインのスペクトルを示す。Licristal(登録商標)E44を含有するナノドメインのスペクトルは、約2230cm−1のC≡Nバンドを示し、これによりナノドメイン中の液晶物質の存在が確認される(図2C)。
【0167】
ナノドメインのC=O線(約1730cm−1)に対する液晶物質のC≡N線の比を使用して、ナノドメイン中の液晶物質の量を決定する。既知の量の液晶/ナノドメイン標準組成物を較正用に調製する。他のすべての液晶物質は芳香族C≡N線を示すため、同じ方法を使用してナノドメイン粒子中の液晶物質の量を特性決定する。それぞれの液晶物質およびナノドメインの組成物に対し、標準組成物を較正用に調製する。
【0168】
図3は、実施例の液晶物質を吸収させた実施例1のナノドメインのX線散乱パターンを示す。図示されるように、散乱パターンは、液晶物質のそれぞれに対し同様である。液晶物質に対し散乱バンドは同じ2θ角に位置するようであり、Licristal(登録商標)E7のみがより大きい角度(より小さいサイズの特徴)へのごく僅かなシフトを示している。散乱ピークは、4nmの特性長さを有する液晶秩序構造に対応する。ナノドメインにより誘発されたこの秩序は、未加工液晶物質、またはPMMA中の液晶物質の溶液においては観察されない。これは、長さスケールがナノドメインの組成および構造により決定されることを示唆している可能性がある。しかしながら、本明細書で説明されるように、ナノドメイン組成物(例えばコポリマー)は、実施例の組成物の特性長さに大きな影響を与えるようには見えない。例えば、図4は、様々な液晶材料を吸収させた実施例3のナノドメイン(MMA/Sが1:1)において同様の結果が観察されることを示している。
【0169】
さらに、吸収したナノドメインの調製中の光散乱の増加は、ナノドメインの吸収に使用された液晶物質におけるアセトンの量に依存することが観察される。これは、ナノドメイン中に吸収されている液晶物質に対するアセトン含量の影響を示唆している。これをテストするため、1中心点の3×6要因計画実験を使用した、吸収プロセスに影響する因子の試験を行う。試験において、吸収溶液中の液晶物質の濃度およびアセトン対液晶物質の重量比を変数として使用する。調製温度および振盪条件は、試験中一定に維持する。
【0170】
表4は、計画、変数レベル、およびFTIRにより決定されるフリーズドライ後の液晶物質量を示す。吸収溶液中の液晶物質の最大濃度は、30重量パーセントである。アセトン対液晶物質重量比の最大値は2.0である。この値は、ナノドメインの水性分散液の安定性により制限される。アセトンの濃度が高いほど、分散液からの粒子の凝集および沈殿が生じる。これらの実験において、乾燥ナノドメインに吸収された最大Licristal(登録商標)量は20重量パーセントである。
【0171】
【表4】

【0172】
図5Aおよび5Bは、様々なアセトン/Licristal(登録商標)E44重量比に対する塩化メチレン前駆体溶液中のLicristal(登録商標)E44の濃度(図5A)、および前駆体溶液中のLicristal(登録商標)E44の様々な濃度に対する前駆体溶液中のアセトン対Licristal(登録商標)E44重量比(図5B)の関数としての、実施例1のナノドメインに吸収された液晶物質の量を示す。両方の曲線が、乾燥ナノドメイン中の液晶物質の量と両方の変数との間の直接的関係を示している。乾燥ナノドメイン中の液晶物質の量は、吸収溶液中の液晶物質の濃度およびアセトン対液晶物質重量比とともに直接的に増加する。さらに、上述の2つの変数の間に相互関係がある。乾燥ナノドメイン中の液晶物質の量の最小二乗フィッティングモデルの結果を図6に示す。2つの変数および交差項を使用すると、データの統計的に有意なフィッティング(R=0.9799)が得られる(3つの項に対する分散分析P<0.0001により示されるように)。このフィッティングに従い、乾燥ナノドメイン中の液晶物質の量は、以下のように表現することができる。
%LC=−4.657+0.536LCS%+3.278AC/LC比+0.22(LCS%×AC/LC比)
式中、%LCは、乾燥ナノドメイン中の液晶物質の量であり、LCS%は、吸収溶液中の液晶物質の濃度であり、AC/LC比は、吸収溶液中のアセトン対液晶物質の重量比であり、(LCS%×AC/LC比)は交差項である。フィッティングされたモデルはまた、ゼロ以外の切片を組み入れている。このフィッティングは、吸収溶液中の液晶物質の濃度およびアセトン対液晶物質重量比によりもたらされる、ナノドメイン中の液晶物質の量における約98パーセントの変動を説明していると思われる。
【0173】
Licristal(登録商標)E44は、ネマチック液晶物質として販売されている。液晶は、透明点までその配向秩序を維持し、この点で液晶は等方性流体となる(100℃)。ナノドメイン中への液晶物質の吸収は、液晶および/またはナノドメインの形態に影響し得る。X線散乱技術を使用して、液晶物質を吸収させたナノドメインの形態を調べる。
【0174】
選択された材料のX線散乱パターンを、図7に示す。液晶物質を含まない実施例1のナノドメインに対応する散乱パターンは、曲線700により表される。この曲線は、特定の構造配置を有さない非晶質ポリマー材料のブロードなハローを示している。曲線710は、PMMAポリマー中のLicristal(登録商標)E44の溶液に対応する。この曲線は、結晶性またはスメクチック液晶相を示すより大きな角度の小さなピークとともに、非常に類似した非晶質パターンを示している。一方、曲線720は、Licristal(登録商標)E44を吸収させた実施例1のナノドメインに対応し、スメクチックまたは結晶秩序の存在を示すいくつかの回折ピークを有しており、主なピークは40オングストローム(Å)の特徴を表している。この特徴的長さは、Licristal(登録商標)E44における二層格子面間隔と一致する。
【0175】
プロセス温度
吸収プロセスに対する温度の効果を、実施例1のナノドメインに吸収されたLicristal(登録商標)E44に対してテストした。室温(21℃)から50℃の間の温度を分析した。ナノドメイン/吸収溶液の二相系の不安定性を防ぎ、吸収プロセスにおけるナノドメインの沈殿を回避するように最高温度を選択した。
【0176】
表5および図8は、吸収温度の関数としてのナノドメイン中の液晶物質の量を示す。データは、吸収温度が高いほど、ナノドメイン中の液晶物質の量がより多く促進されることを示唆している。図9は、温度の関数としての実施例1のナノドメインに吸収されたLicristal(登録商標)E44の量の最小二乗フィッティングモデルの結果を示す。データの統計的に有意なフィッティングが得られ(R=0.7396、分散分析P<0.0007)、ナノドメイン中の液晶物質の量における約75パーセントの変動が温度の効果に起因することを示している。分析により、実施例1のナノドメイン上のLicristal(登録商標)E44の量に対し、温度係数0.44が提供される。
【0177】
【表5】

【0178】
ナノドメインサイズ
X線散乱データは、Licristal(登録商標)E44を吸収させた実施例1のナノドメインが、スメクチックまたは結晶秩序の存在を示すいくつかの回折ピークを有しており、主なピークは40Åの特徴を表していることを示している。この特徴的長さは、Licristal(登録商標)E44における二層格子面間隔と一致する。これらの所見に基づき、ナノドメインの複合形態が影響されるかどうかをより良く理解するために、より大きなサイズのナノドメインを作製する。表6は、様々な液晶物質を吸収させた30nmから60nmのサイズを有する実施例1のナノドメインの組成を示す。結果は、ナノドメイン中の液晶物質の量が、より大きなナノドメインにおいて若干多いことを示している。例えば、Licristal(登録商標)E7を吸収させた30nmのナノドメインは、23.1重量パーセントの液晶物質を示している。同じ液晶物質を吸収させた60nmのナノドメインは、26.1重量パーセントを含有する。他の液晶物質の量も、ナノドメインのサイズが30nmから60nmに増加すると、同様の増加を示す。しかしながら、液晶物質の量のこの変化は、ナノドメイン/液晶形態がコアシェル的性質のものであることを示唆するほど十分有意ではないと考えられる。
【0179】
30nmおよび106nmの実施例1のナノドメインおよび吸収されたLicristal(登録商標)E44のX線散乱パターンを図10に示す。主要な散乱特徴は、両方の組成物において同様であり、同様の秩序構造を示している。主要ピークは、両方の場合において4nmの特性長さと一致する。図10はまた、マイクロエマルジョン重合において2倍濃度のAMAを使用することにより架橋密度が増加した60nmのナノドメインの散乱パターンも示している。このパターンは、同じ関連した特性長さ(4nm)を有する他のすべてと同様の特徴を有する。これらのナノドメイン中の液晶物質(Licristal(登録商標)E44)の量は23.2重量パーセントであり(表6)、これは架橋剤のレベルが半分である30nmのナノドメインの場合(24.6wt.%)と同様である。これは、これらのナノドメイン中のより高いレベルの架橋剤は、これらの実施例に使用されたプロセスおよび条件では液晶物質の吸収を妨げないことを示唆している。
【0180】
【表6】

【0181】
ナノドメイン組成物
図11は、Licristal(登録商標)E44を吸収させた様々な組成物のナノドメインのX線散乱パターンを示す。3つの組成物は、表1からの実施例1、3、および4である。3つのナノドメイン組成物は、約30nmから約40nmの体積平均直径を有する。これらのパターンは、すべての組成物における秩序構造を示している。主な散乱特徴は、すべての組成物において同様であり、同じ角度に位置している。主要ピークは、4nmの特性長さと一致する。それにもかかわらず、パターンには僅かな違いがある。例えば、実施例1のナノドメインは、実施例3および4のナノドメインには現れない2θ=2.5°における小さなピークを示した。
【0182】
微小機能性材料のフィルム形成特性
3つの異なる微小機能性材料(上記実施例19、27、および30)のそれぞれに対し、フィルム形成溶液を本明細書で説明されたように調製する。各フィルム形成溶液を、トルエン(Aldrich社製、HPLCグレード)90g、マレイン酸ジブチル(Aldrich社製、99.9パーセント)9.4g、およびBYK−320(シリコーン平滑剤、BYK Chemie社製)0.2g中に20℃で20分間懸濁させた微小機能性材料(粉末形態の実施例19、27、および30)0.2gで形成する。驚くべきことに、トルエンとともに約9重量パーセントから約10重量パーセントのマレイン酸ジブチルを有するフィルム形成溶液で形成されたフィルムに対するヘーズ率測定結果において、突然の低下があることが見出される。
【0183】
3つの微小機能性材料のそれぞれのフィルムは、ドローコーティングプロセスにより形成される。このプロセスにおいて、フィルム形成溶液の200μL試料をスライドガラス上に滴下し、それに対し自動ドローマシン(Gardco社製、DP−8201)を使用して0.020インチに等しい高さのドローバーを3.8インチ/秒で引き出す。試料を完全に乾燥させると、約36.2μmの厚さを有する。
【0184】
上記フィルム形成溶液で形成されたフィルムはそれぞれ、ガラス基板上で全ヘーズが約2パーセントヘーズ未満の間(後述のように測定)、および全透過率が90パーセント以上(後述のように測定)であった。これらの低ヘーズおよび高透過率の結果により、高品質な光学特性(低ヘーズおよび高透過率)を有するフィルム形成物質としての微小機能性材料の挙動は、そのような材料の光学的用途への使用、例えば、数ある用途の中でも位相遅延フィルム、レンズ、グレーディング、反射防止コーティング、およびプライバシーコーティング等への使用を可能とし得る。
【0185】
フィルムの光学的および電気光学的性能特性
実施例1のナノドメイン(液晶物質を吸収させていない)を有するフィルム形成溶液、および22重量パーセントのLicristal(登録商標)E44を吸収させた実施例1のナノドメインの微小機能性材料を有するフィルム形成溶液を、本明細書で説明されるように調製する(実施例1のナノドメイン、またはトルエン90グラムに懸濁された微小機能性材料が0.2グラム、マレイン酸ジブチルが9.4グラム、およびBYK−320が0.2グラム)。2つのフィルム形成溶液のそれぞれを使用してスピンコーティングプロセスによりフィルムを形成するが、このプロセスではフィルム形成溶液の5ml試料が直径10.16cmのシリコンウエハの表面上に注がれ、これが3,000RPMで90秒間回転される。フィルムを室温で乾燥させると、約2マイクロメートルから約7マイクロメートルの厚さを有する。
【0186】
実施例1のナノドメイン(液晶物質を吸収させていない)で形成されたフィルムは、Metricon2010プリズムカプラにより測定すると、632.8nmで1.4753の屈折率を有する。実施例1のナノドメインを有し、22重量パーセントのLicristal(登録商標)E44を吸収させた微小機能性材料で形成されたフィルムは、Metricon2010プリズムカプラにより測定すると、632.8nmで1.5124の屈折率を有する。この屈折率データは、液晶物質の屈折率の影響が、微小機能性材料で形成されたフィルムの光学的特性において発現し得ることを示唆している。
【0187】
実施例1のナノドメイン(液晶物質を吸収させていない)で形成されたフィルムと比較して、22wt.%のLicristal(登録商標)E44を吸収させた実施例1のナノドメインを有する微小機能性材料で形成されたフィルムは、0.037の屈折率の変化を生じ、これは約185nmの大きな位相遅延効果をもたらす。さらに、この効果は、フィルムの厚さを調節することにより増大(または本出願に従い調整)され得、例えば、上記のナノドメインおよび微小機能性材料で形成された厚さ23μmのフィルムは、851nmの位相遅延効果を生じ得る。この種の性能は、液晶ディスプレイ産業の大部分の用途におけるニーズを提供し得る。
【0188】
液晶ポリマー系の静電容量−電圧掃引
静電容量−電圧(C−V)掃引を使用して、ナノドメイン中に一度吸収された液晶物質の切替能力を試験する。また、C−V掃引を使用して、液晶物質とナノドメインの形成に使用されるポリマーとの複合材に対する屈折率の変化を決定する。C−V掃引は、静電容量の測定された変化が、屈折率の二乗に比例するフィルムの誘電率に正比例すると仮定することにより、液晶物質とポリマーとの複合材の屈折率の変化の決定を可能とする。また、Metriconプリズム結合法は、C−V手法を補完するために使用され、またコーティングの屈折率を測定するために使用される。
【0189】
直接混合およびナノドメインの2つの系を試験する。直接混合系では、液晶物質をポリマー溶液に直接添加し混合する。2つのポリマー化学が直接混合系、PMMAおよびPVCに使用される。ナノドメイン系では、有機溶媒中の液晶物質の溶液を、上述のような実施例1のナノドメインのエマルジョンに添加する。
【0190】
系において、Merck社製Licristal(登録商標)E44、4−シアノ−4’−オクチルビフェニル(オクチル)、4−シアノ−4’−ペンチルビフェニル(フェニル)およびp−メトシベニリデン(methocybenylidene)p−ブチルアナリン(アナリン)を含む様々な液晶物質が試験される。ナノドメインまたはポリマーは、トルエンまたはシクロヘキサノン(CHO)およびトルエン(TOL)の50:50(重量比)混合物中に溶解させる。すべての溶液は、クリーンルーム内でシリコンウエハ上にスピンコーティングし、80℃で30分間焼成する。次いで、静電容量測定のためにそれらをAlドットにより金属化する。
【0191】
C−V掃引に使用された溶液を表7に列挙する。説明されたように、またプリズム結合(Metricon2010 Prism Coupler、Metricon Corp製)を使用して60,032.8nmでの屈折率(RI)を、また表面形状測定法を使用してフィルム厚を測定する。表7の屈折率測定結果を使用して、C−Vから計算された誘電率の平方根が0Vでの測定屈折率と等しくなるように静電容量測定結果を調節する。
【0192】
【表7】

【0193】
図12は、液晶物質または液晶−ナノドメインが添加されていない未加工PMMAのC−V結果を示す。ベースラインは極めて安定であり、場合によっては印加電場により若干静電容量がドリフトする。図13には、6重量パーセントのオクチル液晶物質を含む未加工PMMA溶液のC−V掃引がプロットされている。ここでも、静電容量または屈折率は、外部印加場による大きな作用を示していない。これは、液晶物質は、直接混合された場合、電場の印加中に協調的に配向していないことを示唆している。同様に、図14において、Licristal(登録商標)E44は、一般の光学的樹脂(NOA−68)中に直接溶解され、ここでも静電容量と外部印加場との間の大きな効果は観察されない。
【0194】
図15は、PMMAナノドメイン中に吸収された22重量パーセントのLicristal(登録商標)E44のC−V掃引をプロットしたものである。正電場の印加により静電容量または屈折率が大きく増加している。この結果は、電場の影響下で液晶物質を協調的に回転させるポリマーラテックス粒子に分散した液晶物質のドメインのモデルと一致する。
【0195】
さらに、液晶物質がナノドメインに吸収された場合、液晶物質の電気光学活性は維持される。C−V掃引は、吸収された液晶物質の誘電率が印加電圧により変化することを示している。これは、外部印加場における分子配列を示唆している。この誘電率の変化は、液晶物質の屈折率異方性に直接関連し、またこれらの小規模における調整可能な光学的挙動を可能とし得る。
【0196】
前述したように、誘電率のシフトは、屈折率の変化へと転化し得る液晶物質の配向の結果である。静電容量の変化が液晶物質と関連することを示すために、ナノドメイン中の液晶物質の量が調節されるか、またはフィルム中の液晶物質の総量が22重量パーセントの液晶ナノドメインをPMMAと混合することにより低減される一連の実験を行う。ここでも、図16〜19にプロットされたこれらの試料に対し、C−V掃引を使用して電場に対する静電容量反応を測定する。
【0197】
図15〜19を使用して、0V/umから20V/umまでの電場に対する屈折率の傾きを決定する。この傾きは1次電気光学係数(1st electro-optical coefficient)と呼ばれる。図20は、有効Licristal(登録商標)E44のパーセントに対する測定E−O係数のプロットを示す。示されるように、E−O係数は、Licristal(登録商標)E44の重量パーセントの増加とともに増加し、観察される静電容量変化は確かにナノ分散ドメイン中の液晶分子の配向に起因することを示唆している。
【0198】
インクジェット印刷に有用な染料を吸収させた微小機能性材料
インクジェット印刷に使用されるインク溶液は色安定性であり、フィルム形成物質であり、速乾性であり、および通常の使用条件下で色流れまたは色泣きしにくい必要がある。さらに、インク溶液中に使用される粒子は、典型的には、100nm未満のサイズ制限(例えば最大寸法)を有する。このサイズ制限を超える粒子は、印刷プロセス中のインクジェットカートリッジの詰まりの可能性を増加させ得る。さらに、インク溶液はまた、インクジェットプリンタにおける連続操作用に配合される必要がある。
【0199】
本開示の微小機能性材料がインク溶液中の成分として有用となり得ることを示すために、実質的にナノドメインの架橋ポリマードメイン全体に染料を吸収させる。実験においては、塩化メチレン中2重量パーセントのRed Dye No.1[CAS3564−09−8]の溶液をガラス容器内で形成する。ナノドメインの水性分散液を秤量し、溶液に添加して混合物を形成する。混合物を室温(約21℃)で一晩振盪する。動作範囲内において、実質的に混合、振盪、およびデカンテーションプロセス全体を通して、ナノドメインの水性分散液は安定性を維持し、例えばナノドメインの沈殿は生じない。
【0200】
混合物を室温(約21℃)で3時間相分離させる。容器内で2つの相が生成し、容器の下部には塩化メチレンを多く含む相が、また上部には水相が生成する。水相をデカンテーションしてフリーズドライし、染料を吸収させたナノドメインを得る。染料を吸収させた得られるナノドメインは、浮遊性の粉末の外観を有する。
【0201】
染料が微小機能性材料に吸収されていることを示すために、界面活性剤(上述のようにナノドメインの形成中に使用される)を少量のアセトンの添加により除去する。アセトンの添加後、微小機能性材料が溶液から沈殿し、溶液が透明となる。この結果により、染料分子がナノドメイン中に吸収されて微小機能性材料を生成することが確認される。
【0202】
染料を吸収させた微小機能性材料は、フリーズドライまたは噴霧乾燥することができる。得られる粉末状微小機能性材料は、インクジェット印刷における使用のためにインク溶液中に組み込むことができる。ナノドメインを形成する好適なモノマーの選択により(例えばガラス転移温度の調整により)、ナノドメインのTgは、吸収された染料が微小機能性材料内に捕捉されたままとなること、および熱インクジェット印刷に固有の熱たわみがナノドメインを壊さず、吸収された染料を除去することがないことの両方を確実とするために十分高くすることができる。
【0203】
微小機能性材料および屈折率分布型積層を有する発光ダイオード
発光ダイオード(LED)は、電気的バイアスが印加されると狭帯域の光を放出する半導体ダイオードである。LEDは、典型的には、固有の高誘電率を有し、したがって高屈折率(おおよその屈折率=2.4から3.6)を有する。LEDは、通常、比較的低屈折率の熱硬化性ポリマー(例えばエポキシ)または熱可塑性物質によりカプセル化される。LEDおよびカプセル材料の屈折率の違いは、これらの材料の間の屈折率の不整合をもたらし、これはフレネル反射(異なる屈折率を有する2つの媒体間の不連続界面における入射光の一部の反射)と呼ばれる大きな内部反射を生成し得る。LEDにおけるフレネル反射を制限するための1つの手法は、LEDの屈折率値に対するカプセル材料の屈折率値を上昇させることである。
【0204】
本実施例において、多層屈折率分布型フィルムがLEDをカプセル化することが提案される。多層屈折率分布型フィルムの各層は、単独または他の成分とともに隣接層の屈折率値とは若干異なる屈折率値を付与し得る微小機能性材料を含有し得る。この手法を使用して、多層屈折率分布型フィルムは、LEDの光効率を最大化するように、LEDの比較的高い値から多層屈折率分布型フィルムの最外面での比較的低い値まで、ほぼ連続した屈折率の勾配を提供し得る。さらに、多層屈折率分布型フィルムはまた、多層屈折率分布型フィルムによりカプセル化されたLEDのフレネル反射を最小限化するのを補助することができる。
【0205】
例えば、十(10)層を含む多層屈折率分布型フィルムから、LEDをカプセル化するLEDパッケージを形成することができる。10層のそれぞれに対し、屈折率値は、所定量だけ(例えば約0.2から約0.3の屈折率単位だけ)異なることが可能である。この種の多層屈折率分布型フィルムは、各層の微小機能性材料を既存のLEDパッケージ上にスプレーコーティングすることにより形成することができる。あるいは、多層屈折率分布型フィルムは、LEDパッケージの構成に統合することができる。
【0206】
この多層フィルムにより形成された屈折率の連続的な勾配により、多層屈折率分布型フィルムは、さもなくばLEDのコンポーネント間の屈折率の不整合(特にガラスからプラスチックの遷移)に起因して生じるフレネル型内部反射の低減に基づいて、LEDの光効率を約88パーセントから約95%まで改善し得る可能性がある。光効率におけるこの種の利得は、LED系デバイスにおける電力消費および発熱にとって重要である。
【0207】
多層屈折率分布型フィルムの層の屈折率の低下を実現するための微小機能性材料を形成するための吸収に有用な材料の例は、空気、オクタン、オクテン、ノナン、デカン、ドデカン、ならびに他の炭化水素およびフッ素化または過フッ素化炭化水素を含む。多層屈折率分布型フィルムの層の屈折率の上昇を実現するための微小機能性材料を形成するための吸収に有用な材料の例は、液晶物質、高誘電率有機液体、例えばブロモ−ナフタレン、アニリン、アニソール、ベンズアルデヒド、ベンゾニトリル、ベンゾフェノン、ベンジルアミン、ビフェニル、ブロモアナリン(bromoanaline)、ブロモオクタデカン、ブロモヘキサデカン、ブロモウンデカン、カンファージオン(camphanedione)、シクロヘプタシロキサン、デカノール、グリセロール、グリコール、ヘキサノン、乳酸、m−ニトロトルエン、無水マレイン酸、メトキシフェノール、キノリン、およびバレロニトリルを含む。
【0208】
本明細書において、または文献において引用される特許、仮特許出願を含む特許出願、出版物、および電子的に入手可能な資料すべての完全な開示が、参照により本明細書に組み入れられる。上記の詳細な説明および実施例は、理解の明確さのみのために提供されている。それらから不必要な限定が理解されることはない。本開示の実施形態は、示され説明された厳密な詳細に限定されず、多くの変型が当業者には明らかであり、特許請求の範囲により定義された開示内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光の1/4波長以下の最大寸法を有する架橋ポリマードメインを有するナノドメインと、
実質的にナノドメインの架橋ポリマードメイン全体に吸収されて微小機能性材料を形成する、外部印加場に反応する機能性を有する材料と
を備える微小機能性材料。
【請求項2】
外部印加場に反応する機能性を有する材料が、印加場に反応する光学活性機能性材料である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
光学活性機能性材料が、液晶物質、二色性染料、およびこれらの組合せの群から選択される、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
液晶物質が、負の誘電異方性を有する液晶を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
ナノドメインにおける光学活性機能性材料の量が約6重量パーセントから約60重量パーセントである、請求項1から4いずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
光学活性機能性材料が、架橋ポリマードメインの屈折率値よりも大きい屈折率値を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
光学活性機能性材料が、赤外、可視および紫外周波数範囲のうちの少なくとも1つにおける光の少なくとも一部の、微小機能性材料を通した透過を防止するように機能する、請求項1から6のいずれか一項に記載の材料。
【請求項8】
架橋ポリマードメインが、メチルメタクリレート、スチレン、ブチルアクリレートおよびこれらの混合物のモノマーから形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の材料を有する液晶ディスプレイ。
【請求項10】
ナノドメインのエマルジョンを形成することであって、ナノドメインのそれぞれは可視光の1/4波長以下の最大寸法を有する架橋ポリマードメインを有することと、
外部印加場に反応する機能性を有する材料を実質的にナノドメインの架橋ポリマードメイン全体に吸収させ、微小機能性材料を形成することと
を含む、微小機能性材料の調製のための方法。
【請求項11】
材料を吸収させることが、印加場に反応する光学活性機能性材料を実質的にナノドメインの架橋ポリマードメイン全体に吸収させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
光学活性機能性材料が、架橋ポリマードメインの屈折率値よりも大きい屈折率値を有する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
エマルジョンを形成することが、メチルメタクリレート、スチレン、ブチルアクリレートおよびこれらの混合物のモノマーのエマルジョン重合を含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
光学活性機能性材料を実質的にナノドメインの架橋ポリマードメイン全体に吸収させることの後に、微小機能性材料の架橋ポリマードメインの架橋密度を増加させることを含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
架橋密度を増加させることが、非球形ナノドメインを形成することを含む、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ナノドメインの架橋ポリマードメインに材料を化学的に連結させることを含む、請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
マトリックス材料と、
マトリックス材料中に分散した微小機能性材料と
を含む複合材料であって、微小機能性材料は、約5ナノメートル(nm)から約175nmの体積平均直径を有する架橋ポリマードメインを有し、外部印加場に反応する光学活性機能性材料が実質的に架橋ポリマードメイン全体に吸収されたナノドメインを含む、複合材料。
【請求項18】
光学活性機能性材料が、ポリマーマトリックス材料とは独立して外部印加場に反応する、請求項17に記載の複合材料。
【請求項19】
微小機能性材料中の光学活性機能性材料が、外部印加場がマトリックス材料に印加されると変化する状態を有する、請求項17または18に記載の複合材料。
【請求項20】
微小機能性材料が、マトリックス材料中に様々な濃度で空間的に分散して、マトリックス材料中の屈折率の勾配を形成する、請求項17から19のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項21】
インクジェットプリンタのノズルから噴霧され得る、請求項17から20のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項22】
1つまたは複数の層のフィルムを形成し得る、請求項17から21のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項23】
光学活性機能性材料が、マトリックス材料中に分散しているときに架橋ポリマードメイン中の本質的に安定した濃度を維持する、請求項17から22のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項24】
請求項17から23のいずれか一項に記載の複合材料を有する液晶ディスプレイ。
【請求項25】
マトリックス材料と、
マトリックス材料中に分散した微小機能性材料と
を含む複合材料であって、微小機能性材料は、約5nmから約175nmの体積平均直径を有する架橋ポリマードメインを有し、外部印加場に反応する光学活性機能性材料が実質的に架橋ポリマードメイン全体に吸収されたナノドメインを含み、微小機能性材料は、マトリックス材料中に様々な濃度で空間的に分散して、マトリックス材料中の屈折率の勾配を形成する、複合材料。
【請求項26】
請求項17から25のいずれか一項に記載の複合材料で形成された屈折率分布型(GRIN)レンズ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2011−508048(P2011−508048A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540631(P2010−540631)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/012986
【国際公開番号】WO2009/085082
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】