説明

微小気泡発生器を有するプロセス装置

【課題】1 化学プロセスの効率をあげること。 2 螺旋状の疑似マイクロ反応流路を形成する狭い間隙を有するCT(Couette-Taylor)反応器の殺菌および・または洗浄作業を軽減すること。 3 マイクロバブルからナノバブルを安定して生成すること。
【解決手段】 1 マイクロバブル発生器とCT(Couette-Taylor)反応器とを結合してマイクロバブル圧壊によるラジカル発生やバブル衝突の物理作用で反応器の間隙を殺菌および/または洗浄できるようにした。 2 マイクロバブル発生器と電極付きCT(Couette-Taylor)反応器とを結合して、放電や電解でナノバブルを抽出・生成できるようにした。 3 同軸回転する内筒との共通の回転軸と水平面ないしは鉛直線とのなす角度を自在に変化させる手段をさらに具備して装置内の反応を安定化する装置傾斜を確保できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CT(Couette-Taylor)反応器、または、STT(Spinning Tube in a Tube)反応器と呼称されるところの、固定外筒内に同軸回転する内筒を配備し、被反応材を外筒内壁と内筒側壁との間の狭い間隙に概一定な流動レートで圧入することで種々のプロセスを実行する装置の改良、ならびに、かかるCT(Couette-Taylor)反応器、または、STT(Spinning Tube in a Tube)反応器とマイクロバブルやナノバブルと呼称される微小気泡を発生する装置との組合わせによる装置系を提案するものである。
【0002】
その目的は、
1 たとえばサルファ剤などの医薬原薬の結晶製品の歩留まりをあげること、すなわち、高い歩留まりで特定結晶形の晶析を実現すること。
【0003】
2 CT(Couette-Taylor)流れで螺旋状の疑似マイクロ反応流路を形成する狭い間隙を有するCT(Couette-Taylor)反応器の殺菌および・または洗浄作業、とりわけ前記の狭い間隙の殺菌および・または洗浄作業を軽減・効率化すること。
【0004】
3 マイクロサイズ・バブルからナノサイズバブルを抽出および・または生成すること。
【0005】
4 コンタミネーションのない物質流動を形成する装置を利用した細胞培養などのバイオロジカルプロセス装置(バイオプロセス装置)を提供することである。
【0006】
CT(Couette-Taylor)反応器、または、STT(Spinning Tube in a Tube)反応器については、特許文献1および特許文献2、さらにはそれらが明細書中に引用する文献を参照されたい。サルファ剤などの医薬原薬の晶析については、非特許文献1を参照されたい。
【0007】
マイクロバブルやナノバブルと呼称される微小気泡を発生する装置については、本発明者が特許文献3から特許文献8のような改良改善とアプリケーションを提案している。また、産業総合研究所の高橋ら、レオ研究所の千葉ら、は、前記本発明者の提案に先んじて、特許文献9から特許文献25を提案している。これらを補足する資料として、非特許文献2から非特許文献4を参照されたい。
【0008】
一方、細胞培養などのバイオロジカルプロセス装置(バイオプロセス装置)では、コンタミネーション(異物混入)が大きな問題であり、プロセス開始前の殺菌・洗浄、プロセス中の混入の排除などに多大な注意をはらわねばならない。ここにおいて、バイオロジカルプロセスを連続化することは意義がある。
【0009】
すなわち、連続フローを形成すれば、ある時間だけに異物混入(コンタミネーション)があっても、その流れによるプロセス部分を排除すればよく、結果的に異物の混入量をきわめて少なくできるからである。連続フローを意識した技術は、特許文献26から特許文献28を参照されたい。
【0010】
本発明は、これらの公知技術をふまえ、前記目的1から4に即した改良改善を提案するものである。
【特許文献1】特願2009−217184号公報「連続晶析装置および連続晶析システム」日本化学工業
【特許文献2】特願2009−278427号公報「連続電気化学反応装置および連続電気化学反応システム」丸井智敬
【特許文献3】特願2009−234683号公報「細胞変化を促進する微小気泡含有組成物、およびその微小気泡含有組成物を製造する装置、ならびに微小気泡含有組成物を用いた細胞変化促進方法」丸井智敬
【特許文献4】特願2009−243940号公報「微小気泡含有組成物、および、微小気泡発生器」丸井智敬
【特許文献5】特願2009−249900号公報「液体中に微小気泡を発生させる装置」丸井智敬
【特許文献6】特願2009−265832号公報「液体中に微小気泡を生成して液体を発熱させる装置および方法」丸井智敬
【特許文献7】特願2009−282840号公報「微小気泡を含有する液体組成物で細胞変化を促進する装置、微小気泡を含有する液体組成物で細胞変化を促進する方法」丸井智敬
【特許文献8】特願2010−000569号公報「微小気泡粒径と微小気泡濃度が可変である微小気泡発生装置、該装置を利用した微小気泡発生装置の変更(スケールアップ/スケールダウン)設計方法。」丸井智敬
【特許文献9】特開2009−189307号公報「芽胞細菌の殺菌乃至不活化方法」
【特許文献10】特開2009−131770号公報「二酸化炭素ナノバブル水の製造方法」
【特許文献11】特開2009−131769号公報「窒素ナノバブル水の製造方法」
【特許文献12】特開2009−084258号公報「ナノバブルを含む癌の治療又は予防のための薬剤 」
【特許文献13】特開2009−039600号公報「超微細気泡生成装置」
【特許文献14】特開2008−259456号公報「魚介類の保存方法」
【特許文献15】特開2008−237950号公報「水酸基ラジカルを含む水の製造方法および水酸基ラジカルを含む水」
【特許文献16】特開2008−093612号公報「反応活性種を含む水の製造方法および反応活性種を含む水」
【特許文献17】特開2008−093611号公報「極微小気泡を含む水の製造方法および極微小気泡を含む水」
【特許文献18】特開2008−063258号公報「組織保存液」
【特許文献19】特開2007−275089号公報「長期持続型オゾン水、長期持続型オゾン水を利用した環境殺菌・脱臭浄化方法 」
【特許文献20】特開2006−223239号公報「酸素ナノバブルを利用した魚介類焙焼有効成分抽出方法およびその抽出方法によって得られた有効成分を添加した魚肉加工品素材」
【特許文献21】特開2005−246294号公報「酸素ナノバブル水およびその製造方法」
【特許文献22】特開2005−246293号公報「オゾン水およびその製造方法」
【特許文献23】特開2005−245817号公報「ナノバブルの製造方法」
【特許文献24】特開2005−110552号公報「加圧多層式マイクロオゾン殺菌・浄化・畜養殺菌システム」
【特許文献25】再表2005/030649号公報「微小気泡の圧壊」
【特許文献26】特開2009−291097号公報「細胞培養装置」国立大学法人群馬大学・オリンパス
【特許文献27】特開平07−075549号公報「生体の細胞培養装置」日立製作所
【特許文献28】特開平06−261736号公報「生体の細胞培養装置」宇宙開発事業団・三菱重工業株式会社
【非特許文献1】Aleum Choi、Woo−Sik Kim「Significant Influence of Couette−Taylor Vortex on Phase Transformation of Sulfamerazine」2009 International Symposium on Crystal Engineering & Drug Delivery System、Tianjin、China Sept.5th to 8th 2009.
【非特許文献2】平成17年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託調査研究 バイオ分野におけるナノバブル水の産業利用に関する調査 成果報告書 38−40「ナノバブル水を利用した生体組織の保存等に関する評価研究」
【非特許文献3】Hojo Y,et al.“Anti−inflammatory Property of Oxygen Nano−bubbles” Circulation Journal vol.70, supplement I,p276(第70回 日本循環器学会総会・学術集会)
【非特許文献4】平成17年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託調査研究 バイオ分野におけるナノバブル水の産業利用に関する調査 成果報告書 40−45「細胞の生理機能に対するナノバブル水の影響評価」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
課題は前述のとおり、下記である(再記)。
【0012】
1 たとえばサルファ剤などの医薬原薬の結晶製品の歩留まりをあげること、すなわち、高い歩留まりで特定結晶形の晶析を実現すること。
【0013】
2 CT(Couette-Taylor)流れで螺旋状の疑似マイクロ反応流路を形成する狭い間隙を有するCT(Couette-Taylor)反応器の殺菌および・または洗浄作業、とりわけ前記の狭い間隙の殺菌および・または洗浄作業を軽減・効率化すること。
【0014】
3 マイクロサイズ・バブルからナノサイズバブルを抽出および・または生成すること。
【0015】
4 コンタミネーションのない物質流動を形成する装置を利用した細胞培養などのバイオロジカルプロセス装置(バイオプロセス装置)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は(請求項1、図1参照)、固定中空外筒、該外筒内壁と概一定な間隙を保ちつつ同軸回転する内筒、該内筒の回転手段、前記間隙の一端に液体を供給する手段C1、および、該間隙の他端から前記の液体を抽出する手段C2、を具備し、 前記内筒が回転中に、前記液体を前記供給手段にて前記間隙に概一定な流動レートで供給することで、該液体が前記間隙のなかで螺旋状のCT(Couette-Taylor)流れパターンを形成して流動されつつ液体に関わるプロセスが実行されるプロセス装置であって、 前記液体供給手段C1が供給する液体を、A1:装置外部の液体、と、B1:前記間隙の他端から前記の液体を抽出する手段C2で抽出された液体、とに切替える手段C21を兼備した、CT(Couette-Taylor)反応器のプロセス装置である。
【0017】
請求項1は、循環型のCT(Couette-Taylor)反応器を用いたプロセス装置で、B1を選択した場合に、プロセス対象液体が当該CT(Couette-Taylor)反応器を循環する。よって、晶析プロセスや細胞培養プロセスなどのように、極端な場合数日間といった長時間を要するプロセスに好適である。
【0018】
反応装置の間隙を流動する被反応材の流動パターンは、液体に関わる被反応材の供給手段の圧入圧力と、内筒の回転によるせん断力によって誘起されるものであって、被反応材が間隙内を螺旋管状に、かつ、該螺旋管内でも二次旋回流動ベクトルを有する、進行型のテイラー渦(Taylar_Vortex)状の流動パターンである。この流動が連続型の疑似マイクロ反応流路(間隙のスケールが十分小さいのでマイクロリアクタの流路と概ね同じとしている)を形成するので、コンタミネーションの少ない理想的な細胞培養などバイオロジカルプロセスに好適である。
【0019】
CT(Couette-Taylor)反応器の実験機の実例を図2に示す。
【0020】
また、本発明は(請求項2、図3参照)、固定中空外筒、該外筒内壁と概一定な間隙を保ちつつ同軸回転する内筒、該内筒の回転手段、前記間隙の一端に液体を供給する手段C1、および、該間隙の他端から前記の液体を抽出する手段C2、を具備し、前記内筒が回転中に、前記液体を前記供給手段にて前記間隙に概一定な流動レートで供給することで、該液体が前記間隙のなかで螺旋状のCT(Couette-Taylor)流れパターンを形成して流動されつつ液体に関わるプロセスが実行されるCT(Couette-Taylor)反応器、および、液体貯留槽MRに貯留された液体中に微小気泡を生成させる微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)を具備するプロセス装置であって、 前記液体供給手段C1が供給する液体を、A2:装置外部の液体、と、B2:前記液体貯留槽MRに貯留された液体とに切替える手段CM1を兼備した、CT(Couette-Taylor)反応器と微小気泡発生器とを組合わせたプロセス装置である。
【0021】
なお図1および図3において、配管を示す線の中途に液体を圧入するための電磁ポンプ・シリンジポンプなどの定量流送手段を介在させてもよい。その定量流送手段の記載は図中では省略した。電磁ポンプは、駆動部にソレノイドを採用して、パルス信号と連動してソレノイドに発生する電磁力でダイアフラムを往復させて液体を吸入・吐出する電磁ポンプ、シリンジポンプは注射器様のシリンダ移動による定量流送手段である。
【0022】
マイクロバブルまたはナノバブルをCT(Couette-Taylor)反応器の間隙に導入することで、種々の化学プロセスの進行が促進される場合がある。たとえば、サルファ剤などの医薬原薬の晶析が例示される(非特許文献1参照)。
【0023】
また、マイクロバブルは圧壊でラジカルを出すので、ナノバブルをCT(Couette-Taylor)反応器の間隙に導入することで、殺菌および/または洗浄ができ、従来の分解清掃の手間が省け好適である。
【0024】
さて、特許文献2は、電気化学装置であって(図4参照)、固定中空外筒、該外筒の内側面と概一定な間隙を保ちつつ同軸回転する内筒、該内筒の回転手段、前記間隙の一端に被反応材を圧入する供給手段、および、該間隙の他端から反応後材を抽出する抽出手段、を具備し、前記内筒が回転中に、被反応材を前記供給手段にて前記間隙に概一定な流動レートで圧入することで、被反応材が該間隙を流動されつつ物理および/または化学反応を誘起されるフロー系連続反応装置において、前記中空外筒の内側面に電気化学反応の一方の電極E1、前記内筒の外側面に他方の電極E2、該一方および他方の電極それぞれに電気的に接続された外部端子E10、E20、および、前記外部端子間に電圧を印加する手段、を具備し、被反応材が前記間隙を流動中に、前記外部端子を介して一方と他方の電極間に電圧を印加することで該一方と他方の電極に挟まれた同心二重円筒の間のアニュラー状の電気化学セルを形成して被反応材に電気化学反応を誘起させる連続電気化学反応装置である。
【0025】
請求項3は、この連続電気化学反応装置と改良されたCT(Couette-Taylor)反応器を用いるものである。
【0026】
すなわち(請求項3)、固定中空外筒の内側面に電気化学反応の一方の電極、および、前記同軸回転する内筒の外側面に電気化学反応の他方の電極、および、該一方および他方の電極それぞれに電気的に接続された外部端子、および、前記外部端子間に電圧を印加する手段をさらに具備した、プロセス装置である。
【0027】
かかる構成によって、液体に関わるプロセスの被反応材が前記間隙を流動中に、前記外部端子を介して一方と他方の電極間に電圧を印加することで、該一方と他方の電極に挟まれた同心二重円筒の間のアニュラー状の電気化学セルを形成して液体に関わる被反応材に電気化学反応を誘起するものである。
【0028】
請求項3の態様は、公知のCT反応装置(STT反応装置)の連続かつ狭小反応場形成という特徴を電気化学反応に応用した技術である。
【0029】
従来の電気化学反応装置においては、電極と電極の間に形成される反応場が本発明に対して相対的に広く、反応の空間的均一性が保てないものであった。この欠点は、電極を回転する種々の回転電極の採用や、種々の攪拌手段の採用でなんとか反応場の空間的均一性を向上させ、反応の均一化を図ろうとしているが、均一化は不十分で反応歩留まりは、他の一般的な反応の歩留まりと比較すると高いとはいいがたいものであった。
【0030】
請求項3の態様は、CT反応装置の固定外筒内面と回転内筒外面(側面)に対抗電極を配備し、これらの間に電圧を印加することで連続かつ狭小な電気化学反応場を形成せしめるものであって、そのことで、反応の空間的均一性を向上させ、従来にないプロセス歩留まりを得るものである。
【0031】
さて次に、CT(Couette-Taylor)反応器における螺旋状のCT(Couette-Taylor)流れの形成であるが、多少なりとも重力の影響がある。そのため、特許文献1や特許文献2に記載されている、縦型(縦置き)のCT(Couette-Taylor)と横型(横置き)のCT(Couette-Taylor)では、流れパターンが多少異なってくる。斜行した状態でも同様である。
【0032】
これらの横型(横置き)、縦型(縦置き)、斜行した状態(斜め置き)で実用的に有効なポジショニング(置き方)がある。そこで、実用上の改善として、CT(Couette-Taylor)反応器のポジショニング(置き方)を自在に変えることができると便利である。
【0033】
すなわち(請求項4、図5参照)、CT(Couette-Taylor)反応器において、前記固定中空外筒および該外筒内壁と概一定な間隙を保ちつつ同軸回転する内筒との共通の軸と、水平面ないしは鉛直線とのなす角度を、自在に変化させる手段ROTをさらに具備するのか好適である。
【0034】
また、これまでの記載と重複するが、(請求項5)CT(Couette-Taylor)反応器において、プロセスが自らのCT(Couette-Taylor)反応器の前記間隙を殺菌および/または洗浄するプロセスであってもよい。
【0035】
また、産業総合研究所の高橋ら、レオ研究所の千葉ら、による、特許文献9から特許文献25の一部の記載によれば、マイクロバブル発生器が発生したマイクロバブル含有液体に、放電ないしは電解などの電気化学反応をなして、ナノバブルを生成または安定化させる際に、かかる放電ないしは電解などの電気化学反応を請求項3の態様で実施してもよい。
【0036】
すなわち(請求項6)、請求項3のプロセス装置において、プロセスがマイクロバブルを含む液体からナノバブルを生成および/または分離し安定化させるプロセスであってもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明の請求項1の構成で、たとえばサルファ剤などの医薬原薬の結晶製品の歩留まりをあげることができる。従来の晶析装置では、有用結晶以外の結晶が混在して現れるため、後工程で分離が必要であって、生産歩留まりが極めて悪い。本発明は、この状況を改善できる。すなわち結晶がポリモルフォロジ(多形)を呈し、特定の結晶形だけに活性があり有用である場合がある。その場合に本発明では、結晶多形のひとつをより多く晶析させることができる。具体的には、GMP(グアノシン一燐酸)やIMP(イノシン一りん酸)、サルファ剤などの医薬原薬であるSulfamerazine(SMZ:非特許文献2参照)は結晶多形を呈するが、本発明装置では、きわめて高い歩留まりで特定結晶形の晶析が実現される。
【0038】
さらに、本発明の請求項2の構成で、CT(Couette-Taylor)流れで螺旋状の疑似マイクロ反応流路を形成する狭い間隙を有するCT(Couette-Taylor)反応器の殺菌および・または洗浄ができる。すなわち、圧壊でラジカルを生成するマイクロ・ナノバブル発生器と結合して、かかるラジカルの殺菌および・または洗浄効果で、従来分解清掃によっていた作業が軽減できる。
【0039】
また、本発明の請求項3の構成で、マイクロバブル発生器と電極付きCT(Couette-Taylor)反応器とを結合し、マイクロサイズ・バブルからナノサイズバブルを抽出および・または生成して、イオン群のなかで懸濁安定化させるプロセスを電極付きCT(Couette-Taylor)反応器で連続的に行える。すなわち、マイクロバブル発生器が、マイクロバブルの原材料供給器で、その後工程のナノサイズバブル抽出および・または生成工程を電極付きCT(Couette-Taylor)反応器が行う、というカスケードプロセスを実現でき好適な態様である。ここにおいて、電極付きCT(Couette-Taylor)反応器で電気化学反応を行うので、液体を導電性化すべく、たとえば当該反応器のポートにて塩などの電解質塩を供給することが必要である。もちろん、塩などの電解質塩を供給手段は、CT(Couette-Taylor)反応器のポートに限定されず、マイクロバブル発生器の貯留タンクや供給手段C1、切替え手段C21の近傍や配管に配設してもよい。
【0040】
さらにまた、本発明の請求項3の構成で、安定しにくい螺旋状のCT(Couette-Taylor)流れを軸傾斜角を調整することで、容易に安定化できる。
【0041】
さらにまた、本発明の構成で、プロセスが自らのCT(Couette-Taylor)反応器の前記間隙を殺菌および/または洗浄するプロセスである場合、および、プロセスがマイクロバブルを含む液体からナノバブルを生成および/または分離し安定化させるプロセスである場合に、操作性・歩留まり等が、飛躍的に向上する。
【0042】
また、本発明では螺旋状の疑似マイクロ連続フローを形成するCT(Couette-Taylor)反応器を利用するので、コンタミネーションの少ない理想的な細胞培養などのバイオロジカルプロセスを実現できる。すなわち、連続フローであるので、ある時間だけに異物混入(コンタミネーション)があっても、その流れによるプロセス部分を排除すればよく、結果的に異物の混入量をきわめて少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の請求項1の構成を示す模式図であって、液体供給手段C1が供給する液体を、A1:装置外部の液体、と、B1:前記間隙の他端から前記の液体を抽出する手段C2で抽出された液体、とに切替える手段C21を具備したを構成を示す。ここでC22は、液体を抽出する手段C2にて、抽出液体を装置外部に出す、と、前記のB1、すなわち、液体供給手段C1の供給液体とする、の切替え手段である。
【図2】CT(Couette-Taylor)反応器の実験機の写真。間隙流れパターンを観察するため、固定中空外筒は透明樹脂で作成した例である。
【図3】本発明の請求項2の構成を示す模式図であって、CM1、すなわち液体供給手段C1が供給する液体を、A2:装置外部の液体、と、B2:前記液体貯留槽MRに貯留された液体、とに切替える手段を具備した構成を示す。
【図4】本発明の請求項3の構成要素である電極付きCT(Couette-Taylor)反応器を示す模式図であって、固定中空外筒の内側面に電気化学反応の一方の電極E1、および、同軸回転する内筒の外側面に電気化学反応の他方の電極E2、および、E1・E2に電気的に接続された外部端子E10・E20、および、前記外部端子間に電圧を印加する手段(図では略)を具備している。
【図5】本発明の請求項4の構成要素を示す模式図であって、ROT、すなわち、CT(Couette-Taylor)反応器の固定中空外筒および同軸回転する内筒との共通の軸と、水平面ないしは鉛直線とのなす角度を、自在に変化させる手段を具備する。ROTは、たとえば図示のようなCT(Couette-Taylor)反応器を把持して回転する機構である。
【符号の説明】
【0044】
1 固定中空外筒
2 1の内壁と概一定な間隙4を保ちつつ同軸回転する内筒
3 2の回転手段
4 1の内壁と2の側壁との間隙
5 間隙4の一端に被反応材を圧入する供給手段
6 間隙4の他端から反応後材を抽出する抽出手段
A1 C1が供給する液体を装置外部の液体とする切替えモード
A2 C1が供給する液体を装置外部の液体とする切替えモード
B1 C1が供給する液体を抽出手段C2で抽出された液体とする循環フローの切替えのモード
B2 C1が供給する液体をマイクロバブル発生器の液体貯留槽MRに貯留されたマイクロバブル含有液体とするマイクロバブルを導入する切替えのモード
C1 間隙4の一端に液体を供給する手段
C2 間隙4の他端から前記の液体を抽出する手段
C12 液体供給手段C1が供給する液体を、A1:装置外部の液体、と、B1:前記間隙の他端から前記の液体を抽出する手段C2で抽出された液体、とに切替える手段
C22 液体抽出手段C2が抽出する液体を、抽出液体を装置外部に出す、と、B1、すなわち、液体供給手段C1の供給液体とする、とに切替える手段
CM1 液体供給手段C1が供給する液体を、A2:装置外部の液体、と、B2:前記液体貯留槽MRに貯留された液体、とに切替える手段
E1 固定中空外筒1の内側面に配設された凹曲面状電極
E2 回転する内筒2の外側面に配設された凸曲面状電極
E10 E1に電気的に接続された外部端子
E20 E2に電気的に接続された外部端子
M1 液体
M4 気体吸引手段
M10 渦流ポンプ
M11 渦流ポンプの内蔵インペラ
M14 液体吸引手段(の先端部分)
M15 液体吐出手段(の先端部分)
MR 液体貯留槽
ROT 固定中空外筒および同軸回転する内筒との共通の軸と、水平面ないしは鉛直線とのなす角度を、自在に変化させる手段。たとえば回転機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定中空外筒、該外筒内壁と概一定な間隙を保ちつつ同軸回転する内筒、該内筒の回転手段、
前記間隙の一端に液体を供給する手段C1、および、
該間隙の他端から前記の液体を抽出する手段C2、を具備し、
前記内筒が回転中に、前記液体を前記供給手段にて前記間隙に概一定な流動レートで供給することで、
該液体が前記間隙のなかで螺旋状のCT(Couette-Taylor)流れパターンを形成して流動されつつ
液体に関わるプロセスが実行されるプロセス装置であって、
前記液体供給手段C1が供給する液体を、
A1:装置外部の液体、と、
B1:前記間隙の他端から前記の液体を抽出する手段C2で抽出された液体、
とに切替える手段C21を兼備した、CT(Couette-Taylor)反応器のプロセス装置。
【請求項2】
固定中空外筒、該外筒内壁と概一定な間隙を保ちつつ同軸回転する内筒、該内筒の回転手段、
前記間隙の一端に液体を供給する手段C1、および、
該間隙の他端から前記の液体を抽出する手段C2、を具備し、
前記内筒が回転中に、前記液体を前記供給手段にて前記間隙に概一定な流動レートで供給することで、
該液体が前記間隙のなかで螺旋状のCT(Couette-Taylor)流れパターンを形成して流動されつつ
液体に関わるプロセスが実行されるCT(Couette-Taylor)反応器、および、
液体貯留槽MRに貯留された液体中に微小気泡を生成させる微小気泡発生器(マイクロバブルまたはナノバブル発生器)
を具備するプロセス装置であって、
前記液体供給手段C1が供給する液体を、
A2:装置外部の液体、と、
B2:前記液体貯留槽MRに貯留された液体
とに切替える手段CM1を兼備した、
CT(Couette-Taylor)反応器と微小気泡発生器とを組合わせたプロセス装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のプロセス装置のCT(Couette-Taylor)反応器において、
前記固定中空外筒の内側面に電気化学反応の一方の電極、および、
前記同軸回転する内筒の外側面に電気化学反応の他方の電極、および、
該一方および他方の電極それぞれに電気的に接続された外部端子、および、
前記外部端子間に電圧を印加する手段をさらに具備した、プロセス装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のプロセス装置のCT(Couette-Taylor)反応器において、
前記固定中空外筒および該外筒内壁と概一定な間隙を保ちつつ同軸回転する内筒との共通の軸と、
水平面ないしは鉛直線とのなす角度を、自在に変化させる手段をさらに具備した、プロセス装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のプロセス装置のCT(Couette-Taylor)反応器において、
プロセスが自らのCT(Couette-Taylor)反応器の前記間隙を殺菌および/または洗浄するプロセスである、プロセス装置。
【請求項6】
請求項3のプロセス装置において、
プロセスがマイクロバブルを含む液体からナノバブルを生成および/または分離し安定化させるプロセスである、プロセス装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−147907(P2011−147907A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12727(P2010−12727)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(596174329)
【Fターム(参考)】