説明

微小空洞中に封入された添加剤を具有するポリマー粒子

ポリマーバインダーと、粒子中に存在する任意の細孔安定化化合物とは異なる少なくとも1種の添加剤とを含有する多孔質粒子であって、該ポリマーバインダーが外部粒子表面を有する固体状の組成的に連続した相を含有し;不連続な細孔が、内部細孔表面を形成する組成的に連続した該相内に分散し;少なくとも1種の添加剤が、主として該不連続な細孔内に存在する該多孔質粒子が提供される。更に好ましくは、該添加剤は、固体状の組成的に連続した相内に存在せず、また、実質的に外部粒子表面に存在しない。複数の異なる着色トナーを具備する、カラー電子写真画像を形成するためのトナーセットであって、異なる着色トナーのうちの少なくとも1種が、添加剤を含有するこのような多孔質粒子を含有し、特定の実施態様においては、少なくとも2種の異なる着色トナーの各々が、主として内部細孔内に存在する異なる顔料を含有する。また、このような多孔質粒子を調製する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として内部細孔中に存在する添加剤を含有する、新規な多孔質粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子写真画像は、まず、既知の手段、例えばコロナ若しくはローラー充電器などを使用して、一次画像部材、例えば光伝導性ウェブまたはドラムなどを均一に帯電させることにより形成される。次いで、静電潜像を、既知の手段、例えば光学的暴露、レーザースキャナーまたはLEDアレイなどを使用して、該一次画像部材を画像に対応して暴露させることにより形成させる。次いで、静電潜像を、静電潜像を形成する該一次画像部材の領域へ誘引されるように帯電させたマーキング粒子、またはトナー粒子と称される粒子を近接させることにより、該静電潜像を可視画像に変換させる。一般に、着色剤、例えば染料、または顔料含有マーキング粒子若しく顔料不含マーキング粒子を帯電させた後、該粒子を一次受像部材に近接させることは、磁気ブラシ現像ステーションを使用することによりおこなわれる。まず、マーキング粒子と所謂担体粒子とを混合させることにより、マーキング粒子を磁気ブラシ現像ステーションにおける使用に適する状態にする。担体粒子は、多くの場合、磁気ブラシ現像ステーションにおける磁石に誘引さきれる適当な物質を含有し、また、既知の物質、例えばフェライトまたは酸化鉄などを含有してもよい。担体粒子は、多くの場合、マーキング粒子上に制御された電荷をもたらす異なる帯電剤を含有する。また、マーキング粒子は適当な帯電制御剤を含有してもよく、これにより、担体粒子との混合に際し、静電潜像上に現像される異なる画像濃度を得ることができる適当量で、それらを静電潜像へ適度に引きつかせるように帯電させることによって、マーキング粒子は適当な大きさと種類の電荷を得ることができる。
【0003】
磁気ブラシ現像の場合、一般的に、磁気ブラシ現像ステーションのスランプ内で、トナー濃度監視装置で計測される所定濃度まで、トナー粒子と担体粒子を混合させる。担体粒子と接触させることでマーキング粒子を帯電させ、次いで、磁気ブラシ現像ステーションの円筒状シェル、同軸の磁性コアまたは両方を回転させることにより、静電潜像をもたらす一次受像部材にマーキング粒子近接させる。トナー粒子の耐電形態に依存するような方法でブラシを電気的に偏らせることで、静電潜像を視認させるために、電気的に耐電または電気的に放電させた領域において、一次受像部材上へマーキング粒子を沈着させることができる。
【0004】
次いで、調色した画像は、最終的な受像材料、例えば紙、透明フィルムなどの受像体に転写されるか、あるいは中間伝達部材、例えば追随性中間伝達部材に転写され、次いで、該中間伝達部材から最終的な受像材料に転写される。受像体と一次受像部材若しくは中間伝達部材の間へ圧力を加えることにより、転写がおこなわれる。より一般には、圧力は、印加される静電界、またはトナー粒子を軟化させる熱と併用して印加される。次いで、一般的に、圧力、熱または溶媒蒸気を用いて、最終受像部材に画像を永続的に固定させる。一般に、マーキング粒子が流体となるように、マーキング粒子のガラス転移温度を超える温度まで、マーキング粒子を加熱することが好ましい。通常、加熱した融着ローラーに対して、画像を生じる最終受像部材を押しつけることにより、画像が最終部材に固定される。最終受像部材が、加熱融着ローラーに対して粘着することを防ぐために、通常、離型剤、例えばシリコンオイルを予め加熱融着ローラーに塗布する方法が簡便である。あるいは、離型剤、特にワックス粒子をトナー粒子内へ組み込ませることによって、加熱融着ローラーから、結合させたトナー画像の剥離を促進させてもよい。
【0005】
このような系において、磁気ブラシ現像および静電転写を併用する場合、マーキング粒子を電気的に絶縁することが重要である。粒子が電気的に絶縁していない場合、受像体または現像部と接触する際にこれらの電荷が変動し得る。これによって、マーキング粒子の一次受像部材に向けて移動又は受像体への移動若しくは受像体からの移動を促進させるために使用される印加静電力がマーキング粒子上の電荷により変化するときに、転写および現像が損なわれる。さらに、帯電が、その符号を逆転させないか、あるいは現像または転写を妨げるほど大きく変化しない場合であっても、これらの作用のいずれかまたは両方が遅延し、その結果、不正確な量のマーキング粒子が堆積し、これに対応して望ましくない濃度変化および他の擬似信号が付随して生じる。
【0006】
常套の静電トナー粒子は、バインダーポリマーと他の機能性添加剤、例えば顔料および電荷制御剤などを、加熱ロールまたは押出機で溶融配合させることにより調製される。次いで、得られる固化配合物を微粉すり潰しまたは微粉砕して粉末を生成する。この常套の方法に固有の問題は、幾つかの欠点を有することである。例えば、バインダーは、粉砕を容易にするために脆弱である必要がある。粉砕性の向上は、比較的低い分子量のポリマーバインダーによりもたらされる。しかしながら、低分子量のバインダーは、いくつかの欠点を有する;それらは、トナー/現像剤の薄片を形成する傾向がある;それらは、電子写真用現像剤組成物用のトナー粉末と混合される担体粒子の地汚れを助長する;それらの低い溶融弾性が、電子写真複写装置の熱融着ローラーへのトナーの裏移りを増加さる;およびバインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整は困難である。さらに、ポリマーの粉砕は、幅広い粒径分布をもたらす。その結果として、有用なトナーの収率はより低くなり、製造原価がより高くなる。また、トナー微粒子が複写装置の現像ステーションに堆積して、現像剤の寿命に悪影響を及ぼす。
【0007】
トナーの化学的調製法、例えば「蒸発限定凝集(ELC:Evaporative Limited Coalescence)」法などによって、予め形成したバインダーポリマーからトナーポリマー粉末を調製することは、トナー粒子を調製する常套の粉砕法と比べて、多くの利点を有する。この方法において、粒径分布が小さいポリマー粒子(粒径に関する変動係数(平均粒径に対する標準偏差率)は、一般に、15〜35%またはそれ未満の範囲である)は、水と不混和性の溶媒中にポリマー溶液を生成させ、このようにして生成した溶液を、固形コロイド安定剤を含有する水性媒体中へ分散させ、次いで該溶媒を除去することにより得ることができる。次いで、生成させた粒子を、単離し、洗浄し、そして乾燥させる。
【0008】
この方法を実施する場合、ポリマー粒子は、水と不混和性の溶媒中に可溶な任意の種類のポリマーから調製される。したがって、生成される粒子の粒径および粒径分布は、採用される具体的なポリマーの相対量、溶媒、水不溶性固形粒子の懸濁液の安定剤、一般的にはシリカ又はラテックスの量および大きさ、ならびに回転子−固定子型のコロイドミル、高圧ホモジナイザー、攪拌器などを用いた機械的剪断によって減少させた溶媒−ポリマー液滴の大きさによって予め決定して制御できる。
【0009】
一般的に、この種の方法は、実質的に均一な粒径分布を有するポリマー粒子の生成をもたらすので、この種の限定凝集法は、静電トナー粒子の製造に関する多数の特許明細書において開示されている。トナーの製造において採用される代表的な限定凝集法は、米国特許第4833060号明細書、同4965131号明細書、同6544705号明細書、同6682866号明細書および同6800412号明細書、並びに米国特許出願公開第2004/0161687号明細書に開示されている。一般に、この方法は、以下の工程を含む:ポリマー材料および溶媒(および必要に応じて追加的な1種または複数種の着色剤、電荷制御剤、およびワックス)を混合することにより有機相を形成させ;
該有機相を、粒状安定剤を含有する水性相中に分散させた後、該混合物を均質化させ;
溶媒を蒸発させることによって得られる生成物を洗浄後、乾燥させる。
【0010】
静電画像トナー粒子の性能は、粒子内に包含される添加剤、例えば着色剤などの存在により影響を受ける。何故ならば、常套の溶融粉砕法または化学的製造法のいずれであっても、添加剤の一部がトナーの外表面上に存在する傾向があるからである。その結果、摩擦帯電および静電画像特性は、異なる添加剤を含有するトナーセットの各トナーに対して、異なったトナー特性をもたらす添加剤によって影響を受ける。一般的には、包含される着色剤および他のマーキング粒子添加剤が例えばカーボンブラックのように電気伝導性または摩擦活性をもたらす場合には、該添加剤を、マーキング粒子の形成に使用されポリマーにより完全に被覆するか、又は該添加剤の表面をいずれかの表面処理法によって処理すべきである。そうしなければ、着色剤の誘電部が現像ステーションまたは受像シートの構成部材と接触して、導電路をもたらす可能性が生じ得るので、マーキング粒子の電荷が変化する。さらに、導電性を示さなくても、マーキング粒子の表面上にかなりの量の添加剤、例えばワックス粒子が存在する場合、該添加剤は、例えば粒子の取扱性および流動性などの別の有害作用をもたらし得る。このような添加剤を効果的に被覆するために、包含される着色剤または他の添加剤と比べて、比較的多量のバインダーポリマーを各マーキング粒子のために必要とするので、望ましくない。
【0011】
目的とする画像濃度をもたらすために必要とするトナー量を低減できるので、減量させた比較的小さなマーキング粒子を、比較的高配合量で使用することが、経済的に望ましい。この減少させたトナーを使用することで、必要とされる融着エネルギーを同じく有利に減少させると共に、高品質の印刷塗布を可能にする。
【0012】
電子写真法において多孔質トナー粒子を使用することは、細孔内のトナー添加剤を高濃度で封入させることを可能にするので、画像領域におけるトナー質量を潜在的に低減させることもできる。単純化して説明すると、50%の多孔度を有するトナー粒子は、同じ画像を生じるためにわずか半分の質量しか必要としない。増加した多孔度を有するトナー粒子は、1ページ当りのコストを更に低減し、印刷物の堆積高さを同様に減少させる。多孔質トナーの適用は、印刷のコストを低減すると共に印刷品質を改良する実用的な方法を提供する。
【0013】
米国特許出願公開第2005/0026064号明細書において、多孔質のトナー粒子が開示される。しかしながら、粒子の至る所に存在する細孔の分布と共に粒径分布を調整することは困難である。さらに、主として不連続な内部細孔内に存在するが、外部粒子表面には実質的には存在しない機能的な添加剤を含有する粒子は開示されていない。
【0014】
米国特許第3923704号明細書、同4339237号明細書、同4461849号明細書、同4489174号明細書、および欧州特許出願公開第0083188号明細書においては、第2水性相中へ第1エマルションを混合させてポリマービーズを形成させる、多重エマルションの調製法が記載されている。これらの方法によれば、多孔度を有する粒径分布の大きな多孔質ポリマー粒子が得られ、多孔度はほとんど調製されていない。このことは、トナー粒子に関して適当でない。さらに、主として不連続な内部細孔内に存在する添加剤が、外部粒子表面には実質的に存在しない添加剤を含有する粒子は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第4833060号明細書
【特許文献2】米国特許第4965131号明細書
【特許文献3】米国特許第6544705号明細書
【特許文献4】米国特許第6682866号明細書
【特許文献5】米国特許第同6800412号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0161687号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0026064号明細書
【特許文献8】米国特許第3923704号明細書
【特許文献9】米国特許第4339237号明細書
【特許文献10】米国特許第4461849号明細書
【特許文献11】米国特許第4489174号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第0083188号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、主として不連続な内部細孔に存在する添加剤を含有する多孔質ポリマー粒子、および特に多孔質トナー粒子を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、添加剤が外部粒子表面に実質的に存在しない多孔質粒子を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、粒径分布が狭い多孔質ポリマー粒子およびトナー粒子を提供することである。
【0019】
本発明の更に別の目的は、再現性よく生産可能であり、狭い粒径分布を有するこのような多孔質ポリマー粒子およびトナー粒子を再現性よく調製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、少なくとも1種のポリマーバインダーと、少なくとも1種の添加剤とを含有する多孔質粒子であって、該添加剤が、該粒子中に存在する任意の細孔安定化化合物とは異なり、該ポリマーバインダーが外部粒子表面を有する固体状の組成的に連続した相を含有し;内部細孔表面を形成する固体状の組成的に連続した該相内に不連続な細孔が分散され;少なくとも1種の該添加剤が、主として不連続な細孔内に存在する多孔質粒子に関する。別の実施態様において、添加剤が組成的に連続したバインダー相内に存在せず、かつ外部粒子表面に実質的に存在しないこの種の多孔質粒子が提供される。さらに本発明は、複数種の異なる着色トナーを含むカラー電子写真画像形成用トナーセットであって、該着色トナーのうちの少なくとも1種が上記の添加剤含有多孔質粒子を含有するトナーセットに関する。また、特定の実施態様においては、少なくとも2種の異なる着色トナーが、内部細孔中に存在する異なる顔料を具備し、実質的に同等の摩擦帯電特性を有する。さらに、本発明は、このような多孔質粒子を製造する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施例1で得られた粒子の破砕片における走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【図2】図2は、実施例1で得られた粒子の断面における透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図3】図3は、実施例4で得られた凍結粉砕した粒子のSEM画像である。および
【図4】図4は、実施例6で得られた多孔質粒子のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
電子写真法において多孔質トナー粒子を使用することは、画像領域におけるトナーの質量減少を可能とする。例えば、50%の多孔度を有するトナー粒子は、同じ画像を生じるためにわずか半分の質量しか必要としないはずである。高い多孔度を有するトナー粒子は、1ページ当りのコストを更に低減させ、印刷物の堆積高さを同様に減少させる。したがって、本発明における多孔質トナー技術は、比較的薄い画像が形成されるので、画像品質の改良と、カールの低減、画像隆起の低減、融着エネルギーの節約、および典型的なEP印刷よりもよりオフセット印刷に近い印象/外観がもたらされる。さらに、本発明における着色多孔質粒子は、カラー印刷とモノクロ印刷の間のコスト差を小さくする。このような可能性はEP法をより広い用途範囲にまで適用させるので、EP技術に関するビジネスの機会をより促進させることが予測できる。
【0023】
多孔質ポリマービーズは異なる用途、例えばクロマトグラフィーカラム、イオン交換および吸着樹脂、ドラッグデリバリービヒクル、再生医療用の骨格、化粧品処方物、並びに製紙および塗料業界において使用されている。ポリマー粒子の内部に細孔を生成させる方法は、ポリマー科学分野において既知である。しかしながら、トナーバインダー材料に対する特殊な要件、例えば適切なガラス転移温度、架橋密度およびレオロジー、増加した多孔度から生じる粒子の脆弱性に対する感度に起因させて、多孔質トナーを調製することは容易でない。さらに、多孔質ポリマー粒子を生成させる既知の方法は、該粒子中におけるトナー添加剤の配置を所望されるように制御できない。本発明の場合、添加剤の配置を効果的に制御でき、制御された粒径および粒径分布を有する多孔質粒子は、懸濁法、特にELC法と併用させた多重エマルション法を使用して製造できる。本発明は、主に、トナー用途に関する機能性添加剤を具有する多孔質粒子を使用して記載するが、本発明はこのような実施態様に限定されない。制御された粒径および粒径分布を示す多孔質粒子中に機能性添加剤を制御して配置することに関する本発明の利点は、添加剤として別の機能性添加剤を含有できるので、多孔質のポリマービーズを採用する他の用途、例えば上述した用途に適用可能なことである。
【0024】
本発明における多孔質粒子は、国際純正応用化学連合の分類に従い「ミクロ(micro)」細孔、「メソ(meso)」細孔および「マクロ(macro)」細孔を含み、これらは、それぞれ、2nm未満、2〜50nmの範囲、および50nmよりも大きな細孔に対して推奨されている分類である。本明細書において、多孔質粒子という用語は、開放細孔または閉鎖細孔を含む全ての大きさの細孔を包含する。
【0025】
本発明による多孔質粒子を製造するための好ましい方法は、基本的に3段階の工程を伴う。第1工程は、有機溶媒中に溶解させたバインダーポリマーの連続相中へ第1水溶液を導入し細かく分散させ、安定した油中水滴型(W/O型)エマルションを形成させる。この分散した第1水性相が本発明における粒子内に細孔を形成する。本発明において使用される方法の場合、第1水溶液は、望ましくは、形成された多孔質粒子内に存在する粒子であって、望ましくはその存在量がポリマーバインダー相内に限定されるか、または外部粒子表面に実質的に存在しない添加剤を含有する。粒子中の細孔の大きさおよび細孔の数を制御するために、第1水溶液中に細孔を安定化させる化合物を含ませてもよい。更に細孔を安定化させることにより、最終的な粒子は脆弱でなく、または容易に破砕しない。形成した多孔質粒子中に存在する、本発明において使用される添加剤は、細孔安定化化合物(詳細は以下に記載する)として使用される任意成分とは異なる粒子添加剤である。本発明において好ましく使用される細孔安定化ヒドロコロイドは、自然発生的および合成の、水溶性または水膨潤性ポリマー、例えばセルロース誘導体など、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロースとも称される;ゼラチン、例えばアルカリ処理したゼラチン、例えば牛骨若しくは皮革ゼラチン、または酸処理したゼラチン、例えば豚皮ゼラチンなど、ゼラチン誘導体、例えばアセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチンなど;タンパク質およびタンパク質誘導体などの物質;合成ポリマーバインダー、例えばポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルラクタム)、アクリルアミドポリマー、ポリビニルアセタール、アルキルおよびスルホアルキルアクリレートおよびメタクリレートのポリマー、加水分解ポリビニルアセテート、ポリアミド、ポリビニルピリジン、メタクリルアミドコポリマー、水溶性ミクロゲル、高分子電解質、アイオノマーおよびこれらの混合物を含む。
【0026】
所望の場合、まず、第1工程における油中水滴型エマルションを、熟成または凝集させることなく保持できるように安定化させるために、水性相中のヒドロコロイドは、油相における水の溶解度に応じて、油相中のバインダーの浸透圧よりも高い浸透圧を有することが好ましい。これによって、油相内への水の拡散を大きく減少させることができ、さらに、水滴間での水の移動により引き起される熟成を大きく減少させることができる。ヒドロコロイド濃度を上昇させるか、またはヒドロコロイドの電荷を上昇させることにより、水性相中の高い浸透圧を達成できる(ヒドロコロイド上の解離電荷の対イオンが、ヒドロコロイドの浸透圧を高くする)。pHを変化させることによりヒドロコロイドの浸透圧を調整できる弱塩基性部または弱酸性部を、細孔安定化ヒドロコロイドが有することも有利である。本発明者はこれらのヒドロコロイドを「弱解離ヒドロコロイド」と呼ぶ。弱解離ヒドロコロイドに関する浸透圧は、解離を促進するようにpHを緩衝させるか、または、解離を促進するように水性相のpH値を変化させるために塩基(または酸)を単に添加することにより増加できる。このような弱解離ヒドロコロイドの好ましい例は、pHの影響を受けて解離性を示すCMCである(カルボキシレートが弱酸部である)。CMCに関する浸透圧は、例えばpH6〜8のリン酸緩衝液を使用してpHを緩衝するか、または解離を促進するように水性相のpHを上昇させる塩基を単に添加することにより増加させることができる(CMCに関する浸透圧は、pHが4〜8から上昇するにつれ急激に増加する)。
【0027】
別の合成高分子電解質ヒドロコロイド、例えばポリスチレンスルホネート(PSS)またはポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホネート)(PAMS)またはポリホスフェートも、可能なヒドロコロイドである。これらのヒドロコロイドは強解離部を有する。これらの強解離性高分子電解質ヒドロコロイドに関する電荷が強解離することに起因して、浸透圧に対するpH調整は上述のように有利に行なえないが、これらの系は酸不純物の濃度変化の影響を受けにくい。特に、ポリエステルなどの酸不純物を幅広い濃度で有するバインダーポリマーと共に使用する場合、このことは、これらの強解離性高分子電解質ヒドロコロイドが備える潜在的な利点である。
【0028】
細孔安定化ヒドロコロイドの本質的な特性は、水中での可溶性、多重乳化過程に対して悪影響がないこと、およびこれらを静電写真トナーとして使用する際に得られる粒子の溶融レオロジーに対して悪影響を及ぼさないことである。細孔安定化化合物は、トナーの摩擦耐電に影響を及ぼす表面への化合物の移動を最小限にするために、必要に応じて細孔内で架橋できる。第1工程において使用されるヒドロコロイドの量は、所望される多孔度および細孔の大きさ、並びにヒドロコロイドの分子量に依存する。特に好ましいヒドロコロイドはCMCであり、バインダーポリマーの0.5〜20重量パーセント量、好ましくは1〜10重量パーセント量、より好ましくはバインダーポリマーの2〜10重量パーセント量である。
【0029】
第1水性相は、所望の場合、溶液を緩衝する塩、および上述のように第1水性相の浸透圧を必要に応じて調整する塩を付加的に含有してもよい。CMCに関する浸透圧は、pH7のリン酸緩衝剤を使用して緩衝することにより増加させることができる。また、第1水性相は、ポロゲンまたは細孔形成剤、例えば炭酸アンモニウムなどを付加的に含有してもよい。
【0030】
本発明は、バインダー自体が実質的に水に不溶性であり、水と不混和性の溶媒中に溶解させることができる任意の種類のバインダーポリマー又はバインダー樹脂から、ポリマー粒子を調製することに適用できる。有用なバインダーポリマーとしては、ビニルモノマー、例えばスチレンモノマーなど、および縮合モノマー、例えばエステルなど、並びにこれらの混合物から誘導されるものを含む。バインダーポリマーとしては、既知のバインダー樹脂を使用できる。具体的には、これらのバインダー樹脂としては、以下のホモポリマーおよびコポリマーが含まれる:例えばポリエステル、スチレン、例えばスチレンおよびクロロスチレン;モノオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンおよびイソプレン;ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、および酪酸ビニル;α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクチルアクリレート、フェニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートおよびドデシルメタクリレート;ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、およびビニルブチルエーテル;およびビニルケトン、例えばビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンおよびビニルイソプロペニルケトン。特に望ましいバインダーポリマー/樹脂としては、以下のものが含まれる:ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/アルキルアクリレートコポリマー、スチレン/アルキルメタクリレートコポリマー、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂。これらはさらに、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、変性ロジン、パラフィンおよびワックスを含む。また、特に有用なものは、芳香族又は脂肪族ジカルボン酸と1種またはそれ以上の脂肪族ジオールとのポリエステル、例えばイソフタル酸又はテレフタル酸又はフマル酸と、ジオール、例えばエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールおよびエチレン若しくはプロピレンオキシドのビスフェノール付加物とのポリエステルである。
【0031】
好ましくは、ポリエステル樹脂の酸価は、2〜100の範囲である(樹脂1g当りの水酸化カリウムのミリグラム数として示される)。ポリエステルは飽和または不飽和である。これらの樹脂のうち、スチレン/アクリル樹脂およびポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0032】
本発明の実施に際し、25℃の酢酸エチル中で20重量%溶液として測定した場合に、1〜200センチポイズの範囲に粘度を有する樹脂を使用することが特に有利である。
【0033】
水と不混和であり、バインダーポリマーを溶解させる任意の適当な溶媒、例えば、クロロメタン、ジクロロメタン、酢酸エチル、塩化ビニル、トリクロロメタン、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、2−ニトロプロパンなどを本発明の実施に際して使用してもよい。本発明の実施に際して特に有用な溶媒は、酢酸エチル及び酢酸プロピルである。なぜならば、それらは共に多くのポリマーに対して良好な溶媒であり、一方でそれと同時に水中での難溶性を示すからである。さらに、それらは、蒸発により、以下に記載するような不連続相液滴から容易に除去できるような揮発度を有する。
【0034】
水と不混和であり、バインダーポリマーを溶解させる溶媒は、上述のリストから選択される、水と不混和性の2種以上の溶媒を必要に応じて混合させてもよい。必要に応じて、溶媒は、バインダーポリマーに対して、1種または複数種の上記溶媒の混合液および水と不混和性の非溶媒、例えばヘプタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテルなどを含有してもよく、それは、乾燥および単離する前のバインダーポリマーを沈殿させるには不十分な量で添加される。
【0035】
本発明における多孔質粒子の形成過程における第2工程は、ELC法を改良した方法、例えば米国特許第4833060号明細書、同4965131号明細書、同2934530号明細書、同3615972号明細書、同2932629号明細書および4314932号明細書などに記載された方法を使用して、安定化ポリマー、例えばポリビニルピロリドン若しくはポリビニルアルコール、またはより好ましくはコロイドシリカ、例えばルドックス(LUDOX)TM若しくはナルコ(NALCO)TM、またはラテックス粒子を含有する第2水性相中に、上述の油中水滴型エマルションを分散させることにより、W/O/W(water-in-oil-in-water)エマルションを形成することを含む。
【0036】
具体的には、第2工程において、剪断若しくは伸縮混合または類似の流通法、好ましくは液滴サイズを減少させる(しかし、第1の油中水滴型エマルションの粒子サイズよりは大きい)オリフィス装置を介する方法に付される油中水滴型エマルションを、好ましくは、コロイドシリカ安定剤を含有する第2水性相と混合させて、水性懸濁液の液滴を生成させ、制限された凝集過程を介してサイズ分布の狭い液滴を得る。第2水性相のpHは、コロイド安定剤としてシリカを使用する場合、一般に4〜7である。
【0037】
第2水性相中へ、第1の油中水滴型エマルションの懸濁液滴を導入することは、比較的大きなバインダーポリマー/樹脂液滴の内部のより小さな液滴として、第1水性相を含有する油相の中に溶解させたバインダーポリマー/樹脂の液滴をもたらし、それを乾燥に付すことにより、多孔質領域を有するバインダーポリマー/樹脂粒子を製造する。液滴を安定させるために使用されるシリカの量は、多重エマルションを調製するために使用される異なる相の体積および重量比に依存する典型的な限定凝集法と同様に、所望される最終的な多孔質粒子の大きさに依存する。
【0038】
任意の種類の混合装置および剪断装置、例えばバッチ式ミキサー、遊星型ミキサー、1軸または多軸型押出機、動的または静的ミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー、超音波粉砕器(sonicator)、またはこれらの組合せなどを、上述した第1工程をおこなうために使用できる。一方、任意の高剪断型攪拌装置をこの工程に使用でき、好ましい均質化装置は、マイクロフルイディックス・マニュファクチュアリング社製の微細流動化装置(MICROFLUIDIZER)(例えば型式番号110T型など)である。この装置の場合、高剪断攪拌領域内の油相(連続層)中において、第1水性相(不連続相)の液滴を分散させ、該液滴サイズを減少させ、次いでこの領域の上方へ排出させ、連続相中の分散液滴が均一の大きさになるまで分散相の粒子サイズを減少させる。処理温度は、液滴の乳化に最適な粘度を得るために、および溶媒の蒸発を調整するために修正できる。W/O/W型エマルションが生成される第2工程における、剪断若しくは伸縮混合または流動工程は、第1エマルションの崩壊を防ぐために制御される。液滴サイズの低減化は、好ましくは、細管オリフィス装置を介するか、あるいは別の適当な流動形状を介して、エマルションを均質化させることによりおこなわれる。許容できる粒子サイズとサイズ分布をもたらすために適当な背圧の範囲は、100〜5000psi、好ましくは500〜3000psiである。好ましい流速は、1分当り1000〜6000mLの範囲である。
【0039】
粒子の最終サイズ、細孔の最終サイズおよび粒子の表面形態は、内部水性相、バインダーポリマー/樹脂含有油相および外部水性相の浸透圧間の不一致により影響が及ぼされ得る。各界面において、存在する浸透圧勾配が大きいほど、拡散速度がより速くなり、その際、油相における水の拡散係数および溶解度に基づき、浸透圧の比較的低い相から浸透圧のより高い相へと水が拡散する。油相に比べて、外部水性相または内部水性相の浸透圧が低い場合、水は油相内へと拡散してこれを飽和させる。油相溶媒である酢酸エチルは、油相内に約8重量%の水を溶解させることができる。バインダー相に比べて、外部水性相の浸透圧が高い場合、水が粒子の細孔から移動して、多孔度および粒子サイズが減少する。多孔度を最大にするためには、外部相の浸透圧が最も低く、一方、内部水性相の浸透圧が最も高くなるように浸透圧を整理することが好ましい。すなわち、水は浸透圧勾配に従い外部水性相から油相内へと拡散し、次いで内部水性相へと拡散し、細孔の大きさを膨張させ、多孔度および粒子サイズを増加させる。
【0040】
小さな細孔を有すること、および第1工程のエマルションにより生成される初期の小さな液滴サイズを維持することが好ましい場合、内部水性相および外部水性相の浸透圧をなるべく一致させるか、あるいは該浸透圧が小さな浸透圧勾配を有するべきである。また、油相の浸透圧に比べて、外部水性相と内部水性相の浸透圧を高くすることも好ましい。弱解離性のヒドロコロイド、例えばCMCなどを使用する場合、酸または緩衝剤、好ましくはpH4のクエン酸緩衝剤を使用して、外部水性相のpHを変化させることができる。水素イオンおよび水酸化物イオンは、内部水性相へと急速に拡散し、外部相のpHを平衡化させる。CMCを含有する内部水性相のpHの低下は、CMCの浸透圧を低下させる。pHの平衡化を正確に設計することにより、ヒドロコロイドの浸透圧を制御することができ、最終的な多孔度、細孔のサイズおよび粒子サイズを制御できる。
【0041】
本発明に従って調製した多孔質粒子は、外部粒子表面をもたらす固体状の組成的に連続したポリマーバインダー相と、該固体状の組成的に連続した相内に分散した不連続な細孔を含有し、添加剤は主として内部細孔内に存在する。本発明の目的である、添加剤を主として内部細孔内に存在させるためには、組成的に連続したポリマーバインダー相中に存在する添加剤量よりも、粒子内部の細孔内に存在する添加剤量を大きくする必要がある。このことは、第1水性相内へ添加剤の大多数を包含させ、上述した方法により、油相内へ包含される添加剤をごく少量にする(極端な場合には添加剤を含まない)ことにより得られる。本発明において使用される特定の実施態様によると、粒子内部の主として細孔内に存在する添加剤は、外部粒子表面に実質的に存在しない。このことは、上述した方法で、第1水性相中にのみ添加剤が存在するように制御することによって可能となる。上述した方法において、添加剤を実質的に含有しない外部粒子表面構造を可能とするための粒子表面形態を制御する別の方法は、2つの水性相の浸透圧を制御することである。外部水性相と比較して内部水性相の浸透圧が極めて低い場合、例えば、第3工程において乾燥させる間に、表面近くに形成された細孔が表面に向かって破裂し、「開放細孔」(表面クレーター)と呼ばれる表面形態を形成する。その結果として、第1水性相中に含まれる添加剤が、外部粒子表面上に沈着する可能性がある。従って、好ましくは、該方法は、このような開放細孔の形成を最小限にするように制御することで、主に閉鎖細孔を具備して、表面シェルに実質的に細孔を有さず、および外部粒子表面に添加剤を備えない粒子を形成する。
【0042】
水溶液中で均一な多孔質ポリマー粒子の懸濁液を調製するために、本発明に係る多孔質粒子の調製における第3工程は、バインダーポリマーを溶解させるために使用された溶媒と、第1水性相の大多数を除去することを含む。乾燥中の速度、温度、及び圧力も、最終粒子サイズ及び表面形態に影響を及ぼす。この過程における重要な詳細は、乾燥過程の温度と関連する有機相の水溶性と沸点に依存する。溶媒除去装置、例えば回転蒸発器又はフラッシュ蒸発器が本発明の方法の実施に際して使用できる。溶媒を除去した後、濾過または遠心分離によってポリマー粒子を単離し、続いて、40℃のオーブン内で粒子を乾燥させる。この乾燥により、細孔中に残存する第1水性相からの水を除去する。所望により、粒子をアルカリで処理してシリカ安定剤を除去する。所望により、上述した多孔質粒子の調製における第3工程は、細孔のサイズと多孔度の全体水準を増加させるために、溶媒の除去、単離、および乾燥の前に更なる水の添加をおこなってもよい。
【0043】
本発明における多孔質粒子を形成するための別の方法においては、任意の細孔安定化ヒドロコロイドに加えて、少なくとも1種の添加剤を含有する第1水溶液を、水と不混和性の重合モノマーおよび重合性開始剤を含有する混合物中で乳化させることによって、第1油中水型エマルションを形成させてもよい。次いで、好ましくは限定凝集法によって、得られるエマルションを、第2工程において記載したような安定剤を含有する水中に分散させることにより、W/O/W型エマルションを形成させてもよい。乳化混合物中のモノマーを第3工程、好ましくは加熱または放射線照射を介して重合させる。多孔質粒子を得るために、得られる懸濁重合粒子を前述のようにして単離し、乾燥させてもよい。さらに、水と不混和性の重合性モノマーの混合物は、前記のバインダーポリマーを含有できる。
【0044】
本発明における多孔質粒子の平均粒径は、例えば2〜50マイクロメーター、好ましくは3〜20マイクロメーターである。粒子の多孔度は、好ましくは10%より大きく、より好ましくは20〜90%であり、最も好ましくは30〜70%である。
【0045】
上述したように、本発明における多孔質粒子は、外部粒子表面を有する固体状の組成的に連続したポリマーバインダー相と、固体状の組成的に連続した相内に分散し、内部細孔表面を形成する不連続な細孔を含有する。上述した多孔質粒子形成工程において使用され得る、任意の細孔安定化化合物と異なりこれとは別に添加される少なくとも1種の添加剤は、このような粒子の不連続な内部細孔内に主に存在し、さらに、外部粒子表面に実質的に存在しない。本発明において使用される特定の実施態様によると、このような少なくとも1種の添加剤は、例えばトナーにおいて使用される機能性添加剤または別のマーキング粒子、例えば少なくとも1種の着色剤など、離型剤、例えばワックスなど、磁性粒子、あるいは艶消し剤を含有してもよい。別の実施態様によると、このような少なくとも1種の添加剤は、生物学的活性剤を含有してもよい。本明細書において使用される「生物学的活性剤」という用語は、例えば生理的障害の処理に効果的である物質、薬剤、酵素、ホルモン、成長因子、組み換え生成物などを含む。このような生物学的活性剤は、例えばドラッグデリバリー媒体、再生医療用の骨格および化粧品処方物として使用される本発明における多孔質ポリマー粒子中に、添加剤として組み込まれてもよい。
【0046】
トナーにおいて常套に使用される添加剤の場合、トナー粒子表面に存在する添加剤は、電子写真性能特性と共に、摩擦帯電の制御および材料取扱い特性へ影響を及ぼし、他の不整合性および悪影響の可能性をも有する。組成的に連続したポリマーバインダー相内に含有された主として内部細孔内に存在する添加剤の配置を制限することにより、このような粒子の摩擦帯電および電子写真特性に及ぼす添加剤の影響を最小限にできるので、一定した帯電と転写特性を有利に示す、異なる添加剤と共に異なるトナーを含有するトナーセットを得ることができる。本発明による多孔質粒子は、上記の方法における第1水性相から形成された多孔質粒子中に、所望のように配置される。ただし、望ましくは外部粒子表面には実質的に存在しない該添加剤を取り込むことにより形成させてもよい。
【0047】
さらに、多くの所望の添加剤は水性分散液として容易に入手でき、また、化学的に調製されたトナー若しくは別のポリマー粒子内へ添加剤を導入するための実現可能な方法は、本発明に係る実施態様における多重乳化法の第1水性相中へ、それらを導入させることである。例えば、異なるワックスおよび顔料の分散液、特にワックス分散液を水中で調製することは容易であり、また、これらの多くは市販されている。本発明によると、トナーおよび別のポリマー粒子中に組み込むために使用可能な着色剤および他の添加剤の範囲が大幅に拡大される。
【0048】
本発明における粒子中の添加剤として使用に適する着色剤は、例えば米国再発行特許第31072号明細書、および米国特許第4160644号明細書、同第4416965号明細書、同第4414152号号明細書および同第4229513号明細書に開示されている顔料および染料が含まれる。着色剤としては、既知の着色剤を使用できる。着色剤は例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントブルー15:1、およびC.I.ピグメントブルー15:3を含む。本発明の実施において、着色剤は一般に、総トナー粉末重量を基準として1〜90重量パーセント、好ましくは2〜30重量パーセント、最も好ましくは4〜20重量パーセントの範囲で採用できる。着色剤含有率が4重量%以上である場合、十分な着色力を得ることができ、そして20重量%以下である場合、良好な透明性を得ることができる。着色剤の混合物を使用することもできる。本発明に従い添加剤として使用される非水溶性の着色剤は、第1エマルションを形成する前に、第1水性相中に予め分散させてもよい。
【0049】
好ましい実施態様において、複数種の着色トナーを具備する、カラーの電子写真画像形成用のトナーセットがもたらされ、この場合、異なる着色トナーのうちの少なくとも2種は、本発明における粒子に従い、主として内部細孔内に添加剤を有する多孔質粒子を具備する。好ましくは、このようなトナーセットは、主として内部細孔内に存在する異なる顔料を具備する少なくとも2種の異なる着色トナーを具備し、該顔料は、トナーの外部表面に実質的に存在しない。主として内部細孔に存在する異なる顔料を具備する、異なるトナーをもたらすことにより、このような異なるトナーは、実質的に等価の摩擦帯電特性を有利に示すことができる。異なる実施態様におけるトナーセットは、例えば、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックトナー配合物の組合せ、ならびに別の異なる色彩、例えば白および透明のトナー配合物を含有してもよい。
【0050】
好ましくは、本発明における添加剤としての使用に適する離型剤はワックスである。任意のワックスを本発明に使用できる。このようなワックスの例としては、ポリオレフィン、例えばポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスなど、長鎖炭化水素ワックス、例えばパラフィンワックスなどを含む。ワックスの別の分類としては、以下のものが含まれる:長鎖脂肪族エステルワックスを含むカルボニル基含有ワックス、ならびにポリアルカン酸エステルワックス、例えばモンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、グリセリントリベヘネートなど、ポリアルカノールエステルワックス、例えばトリステアリルトリメリレートおよびジステアリルマレエートなど、ポリアルカン酸アミドワックス、例えばトリメリット酸トリステアリルアミド。有用な脂肪族アミドおよび脂肪酸の例としては、以下のものが含まれる:オレアミド、エルカミド、ステアラミド、ベヘナミド、エチレンビス(オレアミド)、エチレンビス(ステアラミド)、エチレンビス(ベヘナミド)、並びにステアリン酸、ラウリン酸、モンタン酸、ベヘン酸、オレイン酸、及びタル油酸を含む長鎖酸。特に好ましい脂肪族アミドおよび脂肪酸は、ステアラミド、エルカミド、エチレンビス(ステアラミド)およびステアリン酸を含む。脂肪族アミドまたは脂肪酸は、0.5〜30重量パーセント、好ましくは0.5〜10重量パーセントの量で存在する。脂肪族アミドおよび脂肪酸の混合物も使用できる。一つの有用なステアラミドは、ケムアミド(Kemamide)STMとしてウィトコ社から商業的に入手できる。有用なステアリン酸は、ヒステレン(Hysterene)9718TMとしてウィトコ社から入手できる。天然由来のポリアルカン酸エステルワックスは、カルナウバワックスを含む。エステルワックスの特に有用な種類は、長鎖脂肪酸及びアルコールから調製される。この種類の例は、モンタン酸から誘導されたクラリアント社製のライコワックス(Licowax)シリーズである。トナー用途において有用な別の例は、融点の範囲が狭い高精製のの固体エステルワックスであるNOF社製のWE型である。マイクロパウダー社から入手可能な、フッ素化ワックス、例えばポリフルオ190、ポリフルオ200、ポリフルオ523XF、アクアポリフルオロ411(全てポリエチレン/PTFEで官能化されたワックスである)、アクアポリシルク19、ポリシルク14(全てポリエチレン/PTFE/アミドで官能化されたワックスである)なども有用である。ワックスの選択は単一のワックスに限定されない。上記ワックスの2種以上を分散液中に導入することにより、改良されたトナー特性をもたらしてもよい。40℃未満で融解をほとんど生じず、融解範囲が狭いので、長鎖脂肪酸およびアルコールから調製される長鎖エステルワックスであるNOF社製のWE-3ワックスは好ましいワックスである。好ましくは、使用されるワックスは、50%よりも高い結晶化度を有する。
【0051】
本発明において使用してもよいワックスは、多様な用途を有するが、ワックスは40〜160℃、好ましくは50〜120℃、より好ましくは60〜90℃の融点を有することが、トナー用途に対して一般に所望される。40℃未満の融点を示すワックスは、トナーの耐熱性および貯蔵性に悪影響を及ぼし得る。一方、非常に高い融点、すなわち、160℃を越える融点は、低温で融着をおこなう際にトナーのコールドオフセットを引き起こす傾向がある。さらに、ワックスの溶融曲線は、示差走査熱量測定法などにより得られ、また、最大溶融温度への溶融開始温度は20℃よりも高く好ましくは50℃よりも高いことが好ましい。好ましくは、ワックスは、それらの融点よりも20℃近く高い温度で、5〜1000cps、より好ましくは10〜100cpsの溶融粘度を有する。粘度が1000cpsよりも高い場合、トナーの耐ホットオフセット性および低固着性が悪影響を及ぼす。トナー中のワックス量は、トナー重量に基づき、一般に0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0052】
プリンターにおいては、融着ローラーは、受像シート、例えばクレー被覆紙ストックの表面上の未融着トナー画像へ熱および圧力を施すのに使用される。トナー粒子は、受像シートへ融着すると共に融着し、ある程度流延する。一般に、融着ローラーの温度が上昇するにつれ、融着ローラーへのトナーの裏写り傾向が増加することが観察される。しかしながら、ワックス剥離剤がトナーから十分に剥離されるならば、裏移りは生じず、画像は損なわれない。
【0053】
本発明の実施に際して添加剤として使用される有用な磁性材料の例としては、鉄の混合酸化物、鉄ケイ素合金、鉄アルミニウム、鉄アルミニウムケイ素、ニッケル鉄モリブデン、クロム鉄、鉄ニッケル銅、鉄コバルト、鉄酸化物およびマグネタイトが挙げられる。トナー中に存在することができる別の適当な磁性材料は、針状マグネタイト、立方晶マグネタイト、および多面体マグネタイトを含有する磁性材料を含む(ただし、これらに限定されない)。本発明のトナー粒子に関する磁性添加剤の量は、商業的な要求、例えば画像として現像されるトナーに対して十分な信号強度を付与するという要求を満足するのに十分な任意の量で添加できる。特定の実施態様における本発明の磁性トナー粒子は、MICR(磁性インク特性認識)トナー粒子の形成に有利な、少なくとも1種の磁性添加剤または磁性材料、例えばトナーに強磁性をもたらす軟鉄酸化物(FE)などを含有する。
【0054】
本発明の実施において有用な添加剤は、第1水性相中にそれらを包含させることにより、細孔内へ導入される。特定の実施態様において、添加剤は、添加剤の固体粒子分散液の形態で第1水性相内へ導入され得る。固体粒子分散液の調製は、分散剤と共にサイズを減少させる粒子と、粒子を分散させる液体媒体とを、粒子サイズ減少させて粒子を分散させる適当な細砕機を用いて、混合させることを含む。細砕機での細砕において重要な構成要素である分散剤は、粉砕される固形物を液体媒体と混和性を示すと共に、該固形物が分散される最終製品組成物とも混和性を示すように選択される。使用される分散剤は、細砕中に固体を効率的な粒子サイズへと減少させることができ、細砕後に凝集を防ぐように粒子の良好なコロイド安定性をもたらし、並びにそれを包含させる最終的なトナー粒子へ所望の特性を与えるように選択される。
【0055】
細砕は、任意の適当な微粉砕機でおこなうことができる。適当な微粉砕機は、エアージェットミル、ローラーミル、ボールミル、磨砕ミル、振動ミル、遊星ミル、サンドミル、ビーズミルを含む。高速微粉砕機が特に有用である。高速微粉砕機を使用することにより、該微粉砕機で粉砕媒体を1秒あたり5メートルより速い速度まで加速させることができる。微粉砕機は、1枚または複数枚の羽根を具有する回転軸を具備してもよい。このような微粉砕機において、媒体へ付与される速度は、1分当りの羽根の回転数(π)と羽根の直径との積である羽根の周速度と概ね等しい。例えば、40mmの直径を有するコールズ型の鋸歯状羽根を9000rpmで稼働させる場合、十分な粉砕媒体速度がもたらされる。粉砕媒体、顔料(または配合されるべき別の添加剤)、分散媒体液および分散剤の有用な割合は、幅広い範囲で変化でき、例えば、選択される特定の材料、並びに粉砕媒体のサイズおよび密度などに依存する。該工程は、連続しておこなうことができ、または回分的におこなうこともできる。
【0056】
回分的に微粉砕する場合、微粉砕媒体、液体、顔料(または配合されるべき別の添加剤)、および分散剤のスラリーはこれらの成分の単純混合によって調製される。このスラリーは、常套の高エネルギー回分微粉砕法、例えば高速磨砕ミル、振動ミルおよびボールミルなどを使用して微粉砕できる。このスラリーは、活性物質が最小粒径まで粉砕されるように予め設定された長さの時間をかけて微粉砕される。微粉砕が完了した後、微粉砕媒体に対する障害となるが微粉砕された活物質に対して障害とならない、例えば5μm未満の孔径を有するフィルターを用いる単純なふるい若しくは濾過により、活性物質の分散液を、微粉砕媒体から分離する。
【0057】
連続的に媒体を再循環させて微粉砕する場合、微粉砕媒体、液体、顔料(または包含される別の添加剤)および分散剤のスラリーを、回路の至る所で分散系の自由な通過を認めると共に微粉砕媒体を滞留させるように調整した媒体分離ふるいを有する常套の媒体ミルを介して、保持容器から連続的に再循環させることができる。微粉砕が完了した後、活性物質の分散液を、単純なふるい若しくは濾過により微粉砕媒体から分離させる。
【0058】
上記方法のいずれの場合も、微粉砕に付す成分の有用な配合量および配合比は、具体的な成分に応じて幅広く変化する。微粉砕混合物の内容物は、微粉砕物質および微粉砕媒体を含有する。微粉砕物質は、顔料(または他の添加剤)、分散剤および液体キャリヤー、例えば水などを含有する。濾過した水性スラリーに対して、通常、固形物は、微粉砕媒体を除く微粉砕物質中に1〜50重量%の量で存在する。分散剤に対する固形物の重量比は、20:1〜1:2である。高速微粉砕機は、高攪拌装置、例えばモアハウス-コールズ社製(Morehouse−Cowles)、ホックマイヤー(Hockmeyer)社製などの装置である。
【0059】
微粉砕時間は広範囲に変化させることができ、該時間は、顔料、または配合されるべき別の添加剤、力学的手段および選択される滞留条件、初期粒径および所望の最終粒径などに依存する。前記有用な固体、分散剤および微粉砕媒体を使用する水性微粉砕物質に関する微粉砕時間は、一般的に1〜100時間の範囲である。微粉砕した粒子濃縮物は、濾過により微粉砕媒体から簡便に分離される。
【0060】
本発明による多孔質粒子の調製においては、外部粒子表面上に添加剤が存在することが完全には制限されない場合には、静電写真トナー粒子の内部に一般的に存在させる添加剤(または他の多孔質粒子)を、溶媒中へ溶解させる前または該溶解工程後にバインダーポリマー相へ添加してもよく、これによって、少なくとも1種の添加剤が主として内部細孔内に存在するように制御されるのであれば、該添加剤をバインダー相の内部、または生成する多孔質の外部粒子表面上に存在させることができる。このような添加剤は上述したものから選択でき、また、外部粒子表面特性を制御するために添加される別の添加剤(例えば電荷制御剤)を選択してもよい。添加剤の配置の制御を可能とすることにより、本発明は、異なるトナーの電子写真特性に異なる影響を与える他の添加剤を含有する多種多様なトナー用粒子の外部表面上に類似の電荷制御剤を配置させることを可能にする点で有利である。
【0061】
「電荷制御」という用語は、得られるトナーの摩擦帯電特性を改良するトナー添加物の性質と関する。正に帯電するトナー用の多種多様な電荷制御剤が入手できる。負に帯電する、トナー用の多くの(しかし、正に帯電するものより少ない)電荷制御剤も入手できる。適当な電荷制御剤は、例えば、米国特許3893935号明細書、同4079014号明細書、同4323634号明細書、同4394430号明細書、および英国特許第1501065号明細書および1420839号明細書に記載されている。一般に電荷制御剤は、トナーの重量に基づき少量、例えば0.1〜5重量パーセントの量で使用される。有用な別の電荷制御剤は、米国特許第4624907号明細書、同4814250号明細書、同4840864号明細書、同4834920号明細書、同4683188号明細書および同4780553号明細書に記載されている。電荷制御剤の混合物も使用できる。
【0062】
本発明において使用する多孔質粒子は、球状または不規則な形状であってもよい。球状粒子は、表面上の全ての点が中心点から実質的に等距離である三次元の物体として定義され、一方、非球状の粒子は、表面の個々の点が中心点から異なる距離を示すものである。このような非球状の粒子は、例えば不規則状、楕円状、または皺状の形状若しくは表面を有する粒子であってもよい。粒子の形状も、静電トナーの転写および洗浄特性に影響を及ぼす。したがって、例えば、トナー粒子の洗浄効率は、粒子の球形度が減少するにつれて向上することが見出されている。トナー粒子の形状を調整するための数多くの方法が、当該分野においてに知られている。本発明の実施に際し、添加剤は、必要に応じて第2水性相または油相中で使用できる。添加剤は、W/O/W型エマルションを形成した後または形成前に添加できる。いずれの場合においても、粒子の球形度の減少をもたらしながら溶剤を取り除くので、界面張力が変化する。米国特許第5283151号明細書において、粒子の球形度を減少させるためにカルナウバワックスの使用が記載されている。米国特許第6380297号明細書において、不規則な形状の粒子を形成させると共に、所望の狭い粒径分布を維持するために、水性相中の有機相を均質化させた後に添加される形状調整添加剤として、異なるアニオン性、非イオンおよびカチオン性物質を添加することが記載されている。「制御された表面形態のトナー粒子」という発明の名称で2006年12月15日に出願された米国特許出願公開第2008/0145779号明細書において、球形度を制御することに有用な特定の金属カルバメートの使用が記載されており、「制御された表面形態のトナー粒子」という発明の名称で2006年12月15日に出願された米国特許出願公開第2008/0145780号明細書において、球形度を制御する特定の塩の使用が記載されている。「制御された表面形態のトナー粒子」という発明の名称で出願された米国特許出願公開第2007/0298346号明細書において、球形度を制御するために第四級アンモニウムテトラフェニルボラート塩の使用が記載されている。
【0063】
トナー粒子の形態は、画像解析による、2つの寸法比を算出することにより特徴づけられてもよい。トナーの水分散液を測定できる装置の1つは、マルバーンインスツールメンツ社により販売されるシスメック「FPIA3000」である。この装置の場合、トナー分散液の流れをシースジェットで切断させることによって、拡大光学素子、キセノン閃光電球、およびCCDアレイを用いて2つの最大寸法が画像化されるように粒子を配向させる。シスメックFPIA3000に備えられたソフトウェアは、各粒子の周囲長を検出し、第1接線の対間の最大間隔を検出して最大寸法を規定し、第1接線対に対して垂直な第2接線対間の最大幅を検出して第2の最大寸法を規定し、次いで、第2の最大寸法を第1最大寸法で割った値で表される主要なアスペクト比Rを報告する。信頼性のある平均アスペクト比は、トナーを十分に分散させて粒子の実質的な結合を防ぐために、濃度を十分に低くし、9000〜10000個の粒子を画像化することにより決定できる。
【0064】
粒子の配向に起因して、シスメックス社製のFPIA3000により報告される主要なアスペクト比Rは、粒子の形態を完全に特徴づけるには不十分である。粒子の球形度は、シスメックス社製のFPIA3000により撮像されない最小寸法によって主として決定される。最小寸法は、電界領域検出装置、例えばM3社製のコールター・マルチサイザー・IIE型などにより測定した球面等価径Dseを、円形等価径Dceおよびシスメックス社製のFPIA3000により報告された主要なアスペクト比Rと比較することにより推定できる。楕円等価小さなアスペクト比Rは、Rの平方根に、Dse割るDceの比の三乗を乗じることで算出される。Rの正確な計算のために、シスメックスデータの寸法値域をコールター・マルチサイザーの寸法値域に限定すると共に、シスメックスデータおよびマルチサイザーデータの更なる切り捨てにより、マルチサイザーで算出される不正確な微粒子のDseに関する影響を除外する必要がある。シスメックデータが、対数尺度の直径に関して二進法で処理され、マルチサイザーの二進数と等しくなる場合、0.1%未満の数平均Dce値のよりも下位の最初の二進数(first bin)で切り捨てられる。マルチサイザーに関する切り捨てサイズは、Dse割るDceの比をシスメックスデータに対する切り捨てサイズで乗じることにより、反復的に得られる。
【0065】
粒子の形状は、以下の式で表される相乗的平均アスペクト比Rにより特徴づけることができる。
【0066】
【数1】


式中、Rは、シスメックス社製のFPIA3000により報告される主要アスペクトを示し、Rは、上述のようにして算出した楕円等価小アスペクト比Rを示す。所望の非球形を確実にするために、Rは好ましくは0.80未満、より好ましくは0.74未満、就中0.70未満である。非球形であることに加えて、ブレード洗浄剤を使用して良好に洗浄するために、粒子の形状は非円筒状であることが更に好ましい。所望の非円筒状を保証するために、R割るRの比は、好ましくは0.90未満、より好ましくは0.85未満、就中0.80未満である。粒子表面粗さを制御すると共に全体的な非球形を得るために、上述の参照特許文献において更に記載されたような形状制御剤を更に使用してもよい。
【0067】
本発明によるトナー粒子は、表面処理剤としてスペーシング剤を含有してもよい。一般に、表面処理剤は、主に5nm〜1000nmの粒径を有する無機酸化物若しくはポリマー粒子の形態で存在する。トナー粒子における該処理剤の量は、帯電を修正するのに十分な量か、帯電した画像にもたらされる静電力を最小限にすること、或いは機械的な力により、2成分系における担体粒子からトナー粒子を剥離させるのに十分な量である。スペーシング剤の別の目的は、色調を帯びた画像の転写における接着性と凝集力を調節することである。これらの力は、高い分離度で最小化される。スペーシング剤の好ましい量は、トナーの重量に基づいて0.05〜10重量パーセント、最も好ましくは0.1〜5重量%である。
【0068】
スペーシング剤は、常套の表面処理技術、例えば、これらに限定されるわけではないが、常套のパウダー混合技術、例えばスペーシング剤の存在下におけるトナー粒子のタンブリングなどにより、トナー粒子の表面上に施すことができる。好ましくは、スペーシング剤は、トナー粒子の表面上に分配される。スペーシング剤をトナー粒子の表面へ、静電力若しくは物理的手段または両方により付着させてもよい。混合、好ましくは均質混合が好ましく、例えば、スペーシング剤を凝集させないかまたは少なくとも凝集を最小化するのに十分な、高エネルギーヘンシェル型ミキサーのようなミキサーによりもたらされる。更に、トナー粒子表面への分散をもたらすようにスペーシング剤をトナー粒子と混合させる場合、凝集したスペーシング剤または凝集したトナー粒子を除去するために、混合物を篩過させてもよい。凝集粒子を分離する他の方法も、本発明の目的のために使用できる。
【0069】
最も一般的な表面処理剤は、表面変性ヒュームドシリカ、例えばデグサ社製のR-972またはワッカー社製のH2000などの商用的に入手可能なヒュームドシリカである。別の適当なスペーシング剤としては、特に限定されるものではないが、他の無機酸化物粒子、ポリマー粒子などが含まれる。具体的な例としては、特に限定されるものではないが、例えば、チタニア、アルミナ、ジルコニア、および別の金属酸化物;および好ましくは直径1μm未満(より好ましくは0.1μm未満)のポリマー粒子、例えばアクリルポリマー、シリコーンを基剤とするポリマー、スチレンポリマー、フルオロポリマー、それらのコポリマー、およびこれらの混合物が含まれる。
【0070】
さらに、スペーシング剤は有用ではあるが、内在するコアトナーの表面上の添加剤成分の効果を排除してはならない。トナー上へ静電荷を誘導し、トナーで感光体上の潜像を現像させ、中間受像体および最終受像体へ現像した画像を転写し、トナーに関する別の補助的な工程、例えば洗浄などをおこなうために、トナーは、しばしば激しい衝突および剪断運動にさらされる。トナーの表面に対して垂直方向に作用するトナー粒子の激しい衝突が、表面処理剤に対して衝撃力をおよぼす。衝撃力は、トナーのコア物質(通常、ガラス転移温度Tgが50℃〜60℃の範囲にある溶融接着性ポリマーである)の強度を越える場合がある。衝突に際する短期間において、熱はトナー粒子及び他の表面との表面処理接触点に局在するので、衝突の運動エネルギーが熱に変換される。接点における局所温度は一時的にTgを上回るので、トナーのコア物質は、接触部位が増加する表面処理剤の周囲において塑性的に変形する。特に低画像印刷の場合、ステーションにおける滞留時間が増加するにつれて、表面処理剤は、トナー粒子の表面と接触するまでトナー粒子へと押しつけられる。更なる衝突により、表面処理剤を覆い隠して巻き込むような塑性変形がトナーのコア物質に作用する。表面処理剤が次第に埋め込まれて巻き込まれるにつれ、トナー粒子と他の粒子の表面間を所望の間隔を維持する効果は低減される。現時点では、トナー表面における添加剤の存在により、帯電および電子写真特性が決定される。したがって、着色剤および他の添加剤を細孔中に組み込むことによって、この問題は軽減される。
【実施例】
【0071】
本発明は、以下の実施例により更に説明される。これらは、本発明において適用される全ての可能な変形態様を網羅するものではない。
【0072】
材料;
これらの実施例において記載されるトナーを調製するために使用されるバインダーは、ポリエステルポリマーに基づくビスフェノール-Aであり、日本のカオウ社の関連会社であるカオウ・スペシャリティーズ・アメリカ社から入手したKAO EおよびKAO Nであった。ナトリウム塩として、約250Kの分子量を有するカルボキシメチルセルロースは、アクロスオーガニクス社から入手した。コロイドシリカ、NALCO 1060TMはナルコケミカル社から、LUDOX TMTMはデュポン社から入手し、いずれも50重量%分散液である。
【0073】
全ての実施例で使用したワックスは、エステルワックスであるNOF社製のWE-3(登録商標)である。カーボンブラックの水性分散液であるセンシジェット(Sensijet)SDP2000および1000は、センシエント社から入手した。シアンPB15:4顔料の水性分散液(Cab-o-jet)は、キャボット社から入手した。分子量が50Kであるポリ(エチルオキサゾリン)は、アルドリッチ社から入手した。
【0074】
トナーの電荷/質量(Q/m)測定
質量あたりの電荷をMACCA法によりオフラインで測定した。該方法において測定される試験サンプルは、2分間、その後さらに10分間かけて粒子を帯電させる粒子の物理的混合をもたらす、磁場を発生させる回転磁石で、現像剤を攪拌することによって調製した。トナーのQ/m比は、間隙をおいて配設させた平行な2枚の電極板を具備するMECCA装置で測定した。前記電極板は、現像剤サンプルに電界と磁界の両方を印加することにより、磁界と電界の影響を組合せた条件下において、混合物の2成分、すなわちキャリヤー粒子とトナー粒子を分離させる。0.100gの現像剤混合物のサンプルを、底部の金属板上に配置する。次に、このサンプルを、電極板の間で60Hzの磁界と2,000〜2500ボルトの電位に30秒間曝すことにより、現像剤を攪拌させる。トナー粒子は、磁界と電界の影響を組合せた条件下でキャリヤー粒子から放出され、上側の電極板に引きつけられて堆積するが、磁性キャリヤー粒子は下側の電極板に滞留する。上側の電極板上のトナーの蓄積電荷を、電位計で測定する。1グラム当たりのマイクロクーロン(μC/g)を単位とするトナーのQ/m比は、上側の電極板から回収した堆積トナーの質量で蓄積電荷を割ることによって算出される。次いで、Q/M比を、1平方メートル当りのマイクロクーロン(μC/m)で表される外部表面積あたりの電荷(Q/S)に変換する。それは、固体連続層の密度「ρ」、粒子の多孔度「φ」およびコールター測定で得られる体積平均粒径「d」を考慮する。
【0075】
被覆力測定
トナーの着色力を、「正規化した被覆力」値として評価した。一連の様々な密度のトナーパッチを、透明なフィルム上に調製した。各パッチにおけるトナーの重量と各パッチの面積を測定した。125ミクロンの厚みを有し高光沢のテフロン(登録商標)被覆カプトン(Kapton)(登録商標)フィルムを、パッチの上方に配設した。次いで、パッチを、トナーの流度が最大となるような十分に高い温度(160℃)と十分に低い速度(0.026インチ/秒)に制御した融着ローラーで融着させ、トナーの連続薄膜を得た。このような条件下におけるトナーの着色力は、トナーにおける分散品質に依存し、トナーのレオロジーにより影響を受けたトナー流度には依存しない。融着パッチの光沢度は、一般に、60℃で90よりも高い。生じた融着パッチの透過濃度を、X-ライト社製の濃度計を使用して測定した。各トナーに関するデータを貫く直線を引き、次いで、透過濃度1.0におけるトナーの単位面積当りの重量を算出した。この値の逆数(cm/g単位で表される)を、被覆力として定義する(透過濃度1.0のトナー1gにより被覆される面積)。これをトナー中の顔料濃度で割ることにより、この値を正規化した。正規化された被覆力(cm/g トナー/g 顔料)が増加するにつれ、トナーの「収率」が上昇する。すなわち、印刷において同じ量の密度/面積被覆率をもたらすためには、より少ない質量を必要とする。
【0076】
粒径
粒径および粒径分布を、コールター粒子分析機により特性化した。コールター測定で得られる体積平均値を、これらの実施例において記載された粒子の粒径を示すのに使用した。ある例においては、粒径を、ホリバ社製のLA-920分析器を利用する光散乱法により測定した。これらの場合、粒径を特性化するために、最頻値を使用した。
【0077】
多孔度測定
本発明における粒子の多孔度は、複数の方法を組合せて測定した。粒子の外径または全径は、上述した異なる粒子測定法により容易に測定できるが、粒子多孔度範囲を測定することは問題を生じる恐れがある。典型的な重力探査法を使用して多孔度を測定することは、粒子における細孔のサイズおよび分布に起因して、また、粒子表面に幾つかの細孔が出現するかしないかに起因して、問題を生じる恐れがある。本発明に係る粒子における多孔度範囲を正確に測定するために、常套の直径測定法および飛行時間法の組み合せを使用した。常套の直径決定法は、総体積変位法、例えばコールター粒径測定機、または画像に基づく方法、例えばシスメックスFPIA3000装置を含む。本発明に係る粒子の多孔度範囲を測定するために使用される飛行時間法は、エアロサイザー(Aerosizer)粒子測定装置を含む。エアロサイザーは、制御された環境下における粒子の飛行時間により粒子サイズを測定する。この飛行時間は、物質の密度に大きく依存する。エアロサイザーで測定した物質が多孔度に起因して比較的低い密度を有する場合、算出された直径分布は人為的に低くシフトする。この場合、代替法(例えばコールター法またはシスメックス法)を介した正確な粒子サイズ分布の独立した測定値を、調節可能なパラメータとして、粒子密度を表すエアロサイザーデータと適合させて使用できる。本発明に係る粒子の多孔度範囲を測定する方法は、以下の通りである。まず、外径および粒系分布が、コールターまたはシスメックス粒子測定装置を使用して測定される。体積直径分布の最頻値は、エアロサイザー体積分布と適合させるための値として選択される。同じ粒子分布をエアロサイザーで測定し、2つの分布の相乗平均体積(D50%)が一致するまで、粒子の見掛け密度を調整する。1から計算値と固形粒子密度の比を引いた値は、粒子の多孔度範囲とされる。一般に、多孔度値は±10%の不正確性を有する。一部の例においては、多孔度は水銀圧入式多孔度器(Hg intrusion porosimetry)により測定された。
【0078】
オフライン融着性能
パッチを含む画像を電子写真印刷装置で作製し、S.Dヴァレン社から入手した、1平方メートル当り118gの秤量を示すリソグラフィー用コート紙である、ルストロ(LUSTRO).TM.レーザー紙に転写した。最も密度の高いパッチが約1mg/cm.sup.2のトナー層厚(laydown)を有するように、充電電圧、磁気ブラシのバイアス電圧、および現像剤中のトナー濃度を含むプリンターのパラメータを調整した。融着ローラー型融着装置EK250を加熱し、滑らかな表面仕上げのフルオロポリマー/シリコーンポリマーブレンドで融着ローラー、加熱加圧ローラー、および駆動部を被覆して、60ミリ秒の時間で融着を阻止するようなローディング機構を調整した。ローラーは、温度センサーおよび制御回路を使用して、所望の表面温度に保持された。何れの実施例においても、5.5℃の昇温幅で連続的に昇温する融着温度を、182℃まで上昇させた。何れの温度においても、パッチおよび融着ローラーに画像オフセットが生じていないか検査した。
【0079】
顕微鏡観察
SEM顕微鏡観察は、ポリビニルブチラール(butvar)中にトナーを埋め込むことによりおこなわれた。次いで、試験片をミクロトーム中に導入し、ダイヤモンドナイフで中間切断し、伝導性を付与するためにAu/Pdで被覆した。被覆した試験片を、25kvにて、細孔中の顔料を観察できる異なる倍率で観察した。
【0080】
幾つかのサンプルを、エポキシ樹脂内に埋め込み、液体窒素で冷却し破砕することにより、凍結破砕処理に付した。
【0081】
TEM断面は、湿潤切断式のダイヤモンドナイフを具備するライヘルトウルトラカットを使用することにより作成した。断面を切断し、水の表面に浮かべ、100番の網状格子で取り上げた。
【0082】
実施例
添加剤分散液の調製
【0083】
WX-1:酢酸エチルを分散媒とするワックス分散液
分散液WX-1は、NOF社製のWE-3(登録商標)750gと、酢酸エチル中に分散させたベイカーヒューズ社製のセラマー(Ceramer)1608(登録商標)分散体の10%溶液1125gと、酢酸エチル3125gとを混合させることにより調製した。分散液を、150分間、温度25℃、流速1L/分および軸速度1800rpmで、0.35mmのケイ酸ジルコニウム媒体を具備するネッチ社製の媒体ミルLME4を介して再循環させた。生成した分散液は、ホリバ社製LA-920粒子分析器により測定した結果、0.391ミクロンの平均粒径を示し、13.71wt%のワックスを含有した。
【0084】
WX-2:水を分散媒とするワックス分散液
分散液WX-2は、3種類の分散液を混合させることにより調製した。各分散液は、4オンスの瓶にNOF社製WE-3(登録商標)ワックス2.5gと、ダウ社製のテルギトール15-S-7(登録商標)界面活性剤0.38gと、高純度水22.13gおよび1.8mmの酸化ジルコニウムビーズ60mLとを添加することにより調製した。瓶を6日間かけて65ft/分の速度で回転させた。微粉砕後、分散液を、濾過によりビーズから分離した。生成した分散液は、UPA150粒子分析器(登録商標)により測定した結果0.191ミクロンの平均粒径を示し、8.55wt%のワックスを含有した。
【0085】
CB1:酢酸エチルを分散媒とするカーボンブラック分散液
CB1分散液は、キャボット社製のBP280(登録商標)炭素1500gと、エアプロダクツ社製のゼタスパース(Zetasperse)(登録商標)45gと、カオウ社製KaoN(登録商標)ポリエステルポリマーの10%酢酸エチル溶液7500gと、酢酸エチル955gとを混合することにより調製した。分散液を、180分間、温度25℃、流速1L/分および軸速度1800rpmで、0.35mmのケイ酸ジルコニウム媒体を具備するネッチ社製の媒体ミルLME4を介して再循環させた。生成した分散液は、ホリバ社製LA-920粒子分析器により測定した結果、0.388ミクロンの平均粒径を示し、15.21wt%の炭素を含有した。
【0086】
M1:水を分散媒とする磁性粒子分散液
磁性材料の細粉砕コンセントレートは、小さな媒体ミルを用いて、70部の脱イオン水中で、主軸平均粒径が0.2〜0.25μmである、商品名CSF4085V2としてトダ工業社より供給されたCo表面処理-γ−鉄酸化物粉末20部と、Syn FAc8337(ミリケンケミカル社製)分散体の50重量%溶液20部とを微粉砕することにより調製された。サンプルは、平均粒子サイズが0.25μmを下回るまで1〜1.5時間かけて微粉砕した。
【0087】
実施例1(本発明)細孔内にカーボンブラックを含有
分子量250KであるCMCの5wt%溶液48.58gを、37.01グラムの蒸留水と、センスジェット(Sensjet)2000(14.5wt%)26.91グラムに添加した。これを、シルバーソン社製LR4ホモジナイザーを使用して6800rpmで2時間かけて、Kao Eポリマー樹脂の20重量%酢酸エチル溶液242.9グラムに分散させた。生成した油中水型エマルションを、8900psiの圧力でマイクロフルイディックス社製のマイクロフルイダイザー型式#110Tを使用して2分間、更に均質化した。生成した極めて微細な油中水型エマルション229gアリコートを、2800rpmで2分間、再度シルバーソン社製のホモジナイザーを使用して、pH4のクエン酸-リン酸塩緩衝液300mMと、NALCO1060TM16.8gを含有する第2水性相375グラム中に分散させ、続いて、1000psiにて、オリフィスホモジナイザーを用いて均質化をおこない、W/O/W型二重エマルションを調製した。酢酸エチルを、40℃、減圧下でハイドルフ・ラボラタ社製の回転エバポレータを使用して蒸発させた。8重量パーセントのカーボンブラックを含有するビーズの生成懸濁液を、ガラス濾過器を用いて濾過し、水で洗浄し、pH12.5の水中に再懸濁させ、30分間攪拌し、粒子表面上のシリカを除去した。粒子を濾過により単離し、濾液の導電率が20μSを下回るまで洗浄した。粒子を、16時間、35℃に設定した真空オーブン中で乾燥させた。粒径は7.4ミクロンであり、多孔度は31%であった。図1は、粒子の破砕サンプルの走査型電子顕微鏡写真であり、特徴的な内部細孔を示している。図2は、トナー粒子断面のTEM写真を示し、該図において、サブミクロン粒子の細孔中に具備されたカーボンブラックが明確に観察できる。電荷、2分および10分で測定されたQ/Sは、それぞれ-72μC/mおよび-62μC/mであった。このことは、剥き出しになったトナーの帯電が良好であることを示す。正規化した被覆力(CP)は、310cm/gと良好であり、このことは、細孔中の炭素の単離が着色力に影響をほとんど及ぼさないことを明示した。
【0088】
実施例2(本発明)細孔内にカーボンブラックを含有
実施例2は、10.7gの水および42.6gのセンジェット1000(14.1wt%)と共に、5重量%CMC30gを第1水性相として使用したことを除き実施例1と同様にして調製した。油相は、酢酸エチル34.4gと、Kao Nの20.4wt%酢酸エチル溶液215.6gを含有した。油中水型エマルションの288.5gのアリコートを、バッファー482.2gおよび26.8gのナルコ(Nalco)1060中に分散させた。蒸発させる前に、エマルションを0.03wt%ポリ(エチルオキサゾリン)水溶液で1:1に希釈した。
【0089】
12wt%のカーボンブラック含有粒子、すなわち生成した非球形の粒径は6.6ミクロンであり、多孔度は50%であった。2分後および10分後に測定された電荷Q/Sは、それぞれ-11μC/mおよび-35μC/mであった。このことは、剥き出しになったトナーの帯電が良好であることを示す。CPは320cm/gと良好であり、このことは、細孔中の炭素の単離が着色力に影響をほとんど及ぼさないことを明示した。
【0090】
実施例3(比較例)連続したバインダー相内にカーボンブラックを含有
対照実施例3は、2重量%のCMC77.4gを第1水性相中に使用し、カーボンブラックを、酢酸エチル33.6gと、Kao Nの24.6wt%酢酸エチル溶液147.3gと、15.2%の炭素および29.7gのWX-1を含有するCB-1分散液39.5gとを含有した油相中に配合させたことを除き、実施例1と同様にして調製した。油中水型エマルションの250gアリコートを、バッファー399gおよび16.4gのナルコ1060中に分散させた。蒸発させる前に、エマルションを0.03wt%ポリ(エチルオキサゾリン)水溶液で1:1に希釈した。
【0091】
12wt%のカーボンブラック含有粒子、すなわち生成した非球形の粒径は6.7ミクロンであり、多孔度は55%であった。2分後および10分後に測定された電荷Q/Sは、それぞれ-4μC/mおよび-7μC/mであった。このことは、剥き出しになったトナーの帯電が良好でないことを示す。CPは440cm/gと良好であり、この値は、バインダー相にカーボンブラックが存在する場合の典型的な値である。
【0092】
実施例4(本発明)細孔内にシアン顔料を含有
細孔中にシアン顔料を含有する多孔質トナーは、実施例1におけるセンシジェットの代わりに、水分散シアンPB15:4であるキャボジェット25C(固形物10%)を使用したことを除いて、実施例1の方法と同様の方法を使用して調製した。第1水性相は、顔料分散液174.4gと、5%CMC116.6gと、蒸留水151.7gとを含有した。使用した油相は、971.5gであった。エマルションの915gアリコートを、85gのナルコ1060を含有するバッファー1500gに添加した。溶媒を蒸発させる前に、エマルションの1:1希釈を、0.03wt%のポリ(エチルオキサゾリン)水溶液でおこなった。9wt%の顔料を含有する、6.4ミクロンの生成させた非球形粒子は、50%の多孔度を有し、2分後および10分後に測定された電荷Q/Sは、-23μC/mおよび-42μC/mであり、細孔中に顔料を具備すると共に良好な電荷と多孔度を明示した。図3は、実施例4の凍結破砕粒子のSEM写真であり、サブミクロン粒子における細孔中に含有された顔料を示す。
【0093】
実施例5(本発明)細孔内にワックスおよびシアンを含有
これらの粒子は、水性顔料分散液22.43gと共にCMC16.6gと、WX−2分散液23.4gを使用したことを除いて、実施例1で記載したようにして調製した。これを、36.12gの付加的な酢酸エチル溶媒と共に88.88gの21.8%Kao E酢酸エチル溶液を含有する溶液中で乳化させた。このエマルションの113gアリコートを、9.85gのナルコ1060を含有するバッファー181.5gへ添加し、上述のようにして均質化した。蒸発させる前に、生成した二重エマルション137gを、0.1wt%ポリ(エチルオキサゾリン)溶液41.3gで希釈した。細孔中に8wt%のワックスと9wt%のシアン顔料を含有する生成粒子は、粒径4.5ミクロンであり、32%の多孔度を有し、2分後および10分後に測定された摩擦電荷Q/Sは、それぞれ-23μC/mおよび-30μC/mであった。生成した粒子の示差走査熱量測定は、油相中にワックスが存在する実施例6と比べて、細孔中に含有されたワックスに関する良好な分割溶融ピークを示した。トナーは、オフライン融着特性試験において良好な融着と剥離挙動を明示した。ホットオフセット放出挙動は182℃でパスし、実施例6で示した挙動に相当した。
【0094】
実施例6 細孔内にシアン顔料を含有し、連続したバインダー相内にワックスを含有
これらの粒子は、CMCの5wt%水性溶液133.2gを、キャボ-ジェット社から入手できるPB15:4の20.22wt%水性分散液98.8gと共に、水134.7gへ添加したことを除いて、実施例3で記載したようにして調製した。油相は、酢酸エチル55.5g、Kao Nの20.4wt%溶液902.8gおよび131.8gのワックス分散液WX-1を含有した。蒸発させる前に、二重エマルションを、ポリ(エチルオキサゾリン)の0.0015wt%水溶液で1:1に希釈した。細孔中に9wt%のシアン顔料と、連続したバインダー相中に8wt%のワックスを含有する粒子を常套の方法で単離し、得られた体積平均粒径は6.7ミクロンであった。粒子は40%の多孔度を有し、2分後および10分後に測定された摩擦電荷Q/Sは、それぞれ-3μC/mおよび-17μC/mであった。実施例5と比較するためにオフライン融着特性試験を行った。ホットオフセット剥離挙動は182℃でパスした。図4は、この実施例で調製された多孔粒子の中間切断面のSEM写真を示し、該写真はサブミクロン粒子の細孔中に明確に存在する顔料を示す。
【0095】
実施例7(本発明)細孔内に磁性粒子を含有
細孔中に磁性粒子を含有する多孔質粒子は、使用したCMC溶液の量を15gとしたことを除いて、実施例1のようにして調製した。これを、12.5gの分散液M1および14.7gの水との混合物中へ添加し、次いで、得られた混合物とKao Nの20%酢酸エチル溶液121.25g中に分散させた。生成した油中水型エマルションの119gアリコートを、9.8gのナルコ1060を含有するpH4のバッファー180gへ添加して、均質化させた。蒸発させる前にエマルションを、50wt%の水で希釈し、前述のようにして単離した。体積平均粒径は4.9ミクロンであった。10wt%の磁性粒子を含有する多孔質粒子は非球形であり、44%の多孔度を有し、顕微鏡観察において、細孔中で微細な磁性粒子が明確に観察された。
【0096】
実施例8(本発明)細孔内に磁性粒子を含有
細孔中に磁性粒子を有する多孔質粒子は、CMC溶液を使用せずに、26.25gの分散液M1をKao Eの20%酢酸エチル溶液85.0g中に分散させたことを除いて、実施例7のようにして調製した。生成した油中水型エマルションの61gアリコートを、0.7gのルドックス(Ludox)TMを含有するpH4のバッファー150gへ添加して、均質化させ、上述のようにして単離した。平均粒径は6.0ミクロンであった。粒子は非球形であり、30wt%の多孔性を示し、顕微鏡観察において、細孔中で微細な磁性粒子が明確に観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーバインダーと、少なくとも1種の添加剤とを含有する多孔質粒子であって、
該添加剤が、該多孔質粒子中に存在する任意の細孔安定化化合物とは異なり、
該ポリマーバインダーが、外部粒子表面を有する固体状の組成的に連続した相を含有し、
内部細孔表面を形成する固体状の組成的に連続した該相内に不連続な細孔が分散され、および、少なくとも1種の該添加剤が、主として不連続な該細孔内に存在する
該多孔質粒子。
【請求項2】
少なくとも1種の添加剤が、固体状の組成的に連続した相内または外部粒子表面上に存在しない請求項1に記載の多孔質粒子。
【請求項3】
少なくとも1種の添加剤が、着色剤、離型剤、磁性粒子、艶消し剤、または生物学的活性剤のうちの少なくとも1種を含有する請求項1に記載の多孔質粒子。
【請求項4】
少なくとも1種の添加剤が着色剤を含有する請求項1に記載の多孔質粒子。
【請求項5】
着色剤が顔料を含有する請求項4に記載の多孔質粒子。
【請求項6】
少なくとも1種の添加剤がワックスを含有する請求項1に記載の多孔質粒子。
【請求項7】
少なくとも1種の添加剤が磁性粒子を含有する請求項1に記載の多孔質粒子。
【請求項8】
細孔安定化親水性コロイドを更に含有する請求項1に記載の多孔質粒子。
【請求項9】
多孔質粒子が少なくとも10パーセントの多孔度を有する請求項1に記載の多孔質粒子。
【請求項10】
多孔質粒子が非球形である請求項1に記載の多孔質粒子。
【請求項11】
複数の異なる着色トナーを具備するカラー電子写真画像形成用のトナーセットであって、該複数の異なる着色トナーのうちの少なくとも1種が請求項1に記載の多孔質粒子を含有する該トナーセット。
【請求項12】
異なる着色トナーのうちの少なくとも2種が請求項1に記載の多孔質粒子を含有する請求項11に記載のトナーセット。
【請求項13】
異なる着色トナーのうちの少なくとも2種の各々が、主として多孔質粒子の不連続細孔内に存在する異なる顔料を含有する請求項12に記載のトナーセット。
【請求項14】
少なくとも2種の異なる着色トナーが、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーおよびブラックトナーのうちの少なくとも2種を含有する請求項13に記載のトナーセット。
【請求項15】
以下の工程を含む、ポリマーバインダーと少なくとも1種の添加剤とを含有する多孔質粒子の調製方法:
少なくとも1種の添加剤を含有する第1水性相を調製し、
該第1水性相を、ポリマーバインダーを含有する有機相中へ分散させることによって、第1エマルションを形成させ、
該第1エマルションを第2水性相中へ分散させることによって、第2エマルションを形成させ、
微粒子状安定化剤の存在下で該第2エマルションを剪断させることによって、該第2水性相中で該第1エマルションの液滴を形成させ、次いで
該液滴から該有機溶液を蒸発させることによって、多孔質ポリマー粒子を形成させる;
ただし、該形成したポリマー多孔質粒子は、外部粒子表面を有する固体状の組成的に連続したポリマーバインダー相を含有し;
内部細孔表面を形成する固体状の組成的に連続した該ポリマーバインダー相内に不連続な細孔が分散され、および少なくとも1種の該添加剤が、該多孔質粒子中に存在する任意の細孔安定化化合物とは異なると共に、主として該不連続な細孔内に存在する、該多孔質粒子の調製方法。
【請求項16】
第1水性相が細孔安定化ヒドロコロイドを更に含有する請求項15に記載の多孔質粒子の調製方法。
【請求項17】
少なくとも1種の添加剤が、着色剤、離型剤、磁性粒子または艶消し剤のうちの少なくとも1種を含有する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1種の添加剤が着色剤を含有する請求項15に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1種の添加剤がワックスを含有する請求項15に記載の方法。
【請求項20】
多孔質粒子が少なくとも10パーセントの多孔度を有する請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−529203(P2011−529203A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520035(P2011−520035)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/004236
【国際公開番号】WO2010/011297
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】