微小管相互作用薬の脂質−油−水型ナノエマルジョンデリバリシステム
人を含む温血動物で癌などの細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態、症候群またはこれらの症状を治療、診断および予防する際に有益な医薬組成物およびこの使用方法と調製方法は、均質化を介した処理によって調製された脂質ナノエマルジョンであって、異常細胞内に優先的および選択的に能動的に内在化することが可能な少なくとも1つの非二層形成脂質をそれぞれ含む脂質粒子で構成された脂質ナノエマルジョンと;ナノエマルジョンに連結された有効量の少なくとも1つの治療用または診断用の微小管相互作用薬と;薬剤的に受容可能な担体とを組み込む。好適な実施形態では、この組成がさらに、タンパク質担体分子ならびに/または界面活性剤、植物性脂肪源、溶媒、およびこれらの組み合わせなどの乳化促進剤で構成されてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療薬と診断薬に関し、特に患者への導入に適しており、腫瘍細胞を含む過剰増殖によって特徴づけられた細胞内へ活性選択剤の濃度を促進可能な脂質−油−水のナノエマルジョンの微小管相互作用薬の製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍内およびこれらの微環境内の薬剤分布の役割は十分に研究されていない。現在、有効性を知るために、最も効き目のある薬剤でさえ高用量を投与して拡散と組織分布を促進しなければならない。しかしながら、腫瘤内の薬剤濃度を高めることが常に細胞の薬剤濃度あるいは細胞内の標的への到達能を高めるとは限らない。実際に、ある薬剤はポリマ結合、リポソームカプセル化、または固体脂質ナノ粒子製剤によって腫瘤内濃度を高めるかもしれないが、これらは事実上細胞の吸収量と分布を阻害するであろう。さらに、拡散によって腫瘍浸透を促進するために高用量投与することは一般に高い死亡率の癌治療に関連する副作用をもたらす場合がある。このため、腫瘍組織への薬剤浸透を改善し、高い安全性と有効性の側面を同時に提供しながら腫瘍細胞内のその濃度を高めるドラッグデリバリ技術を考案することが望ましい。腫瘍内への薬剤の受動的な蓄積について種々のアプローチが探究されているが、活発な腫瘍細胞の吸収量の促進について有効な技術はほとんどない。
【0003】
脂溶性薬剤は容易に細胞膜に浸透し、細胞内へ輸送されるであろう。癌細胞などの過剰増殖によって特徴づけられた細胞は、一般に異常な脂質代謝を示し、脂質と脂肪酸の非常に高い優先的な吸収によって特徴づけられる。このように癌に関して脂質は、膜構造、成長および転移、信号伝達、ならびに輸送過程に不可欠な役割を果たすことが分かった。
【0004】
腫瘍血管に特有の漏出性の特徴によって引き起こされ、脂質粒子、リポソーム、人工ナノ粒子、および他の高分子剤の強化された浸透性と貯留(EPR)効果として知られている現象は固形腫瘍で一般的であり、例えばポリマ結合抗癌剤のより選択的なターゲティングと腫瘤蓄積について探究されてきた。ポリマ小胞、リポソーム、および固体ポリマ粒子あるいは脂質ナノ粒子などの封入剤の使用は、それぞれ様々な組成、製剤および構造で調製され、様々な生理学的条件下で投与されており、先行技術で報告されてきた。しかしながら、これらの作用薬は腫瘍に受動的な蓄積を可能にするに過ぎない。さらに、これらの作用薬はしばしば細網内皮系の広範囲の共蓄積によって循環系から急速に追い出され、しばしばこれらの作用薬の使用は細胞毒性に関連し、免疫反応を増強する。
【0005】
複数のレセプタタイプとレセプタサブタイプ、輸送タンパク、および脂質ラフト現象は、同じ疾病を持つが変質した遺伝的特徴を持つ患者間でさえ、癌細胞内の脂質吸収量に関係する可能性があることを研究が示した。天然のレセプタ配位子を模倣し、癌細胞の標的と薬剤吸収量を増加する脂質型ナノ粒子またはHDLもしくはLDL型薬物担体が、様々な治療薬と共に調製されているが、癌治療の能動的な腫瘍細胞の薬剤吸収を促進する最適化された製剤が欠けている。
【0006】
参照により本書に組み込まれるD’Arrigoの米国特許第4684479号明細書および第5215680号明細書は、ガスあるいは空気で満たされた脂質コートマイクロバブル(LCM)の製剤と、この製造方法および使用方法について記載しており、超音波法とドラッグデリバリの造影剤として用いられる。LCMの製造プロセスは、特定の鎖長で一定比率の飽和グリセリドとコレステロールエステルなどの非イオン脂質の水性懸濁液の単純な機械的振動に基づいている。全ての場合において、加えられた大部分の脂質(99%)は凝集または沈殿し、ろ過による材料の追加損失を1%以下生じる。さらに、これらの人工LCMはとても長寿命であることが分かり、6ヶ月以上生体外で持ちこたえた。さらに、少ないろ過収量にも拘わらず、LCMは、腫瘍組織の微小循環系の有窓毛細血管壁を通過するのに十分に小さく十分に柔軟である。特に注目は、げっ歯類の脳腫瘍細胞内やイヌの自発性腫瘍内のLCMの高い選択性、温度依存性、明らかな飽和吸収性であり、癌細胞のある脂質の自然吸収量によく似ていると考えられる。しかしながら、現在まで患者投与の有害な副作用を存在しないレベルまで最小化するLCM技術を利用した医薬品化合物の有効な製剤はなかった。
【0007】
パクリタキセルはタキサンとして知られている薬剤の種類の要素であり、北米西岸イチイ木、セイヨウイチイ、および近縁種の樹皮から最初に分離される。アレルギ反応は製剤賦形剤で観察されたが、タキサンは卵巣癌、胸部癌、非小細胞肺癌、および頭頸部癌などの様々な癌の治療で有用であることが分かった。タキサンを投与する際の難しさは、この薬剤が一般に水に溶けないということである。従って、パクリタキセルはCremophorEL(登録商標)(ポリオキシエチレンヒマシ油)とエタノールとの1:1の混合物内に調剤され、タキソール(登録商標)(Bristol−Myers Squibb社)を生成した。外部に結晶化する総ての薬剤を除去する直列型のろ過と共に、約12時間安定する適切な担体の再構成が必要である。タキソール(登録商標)は神経毒性を示し、知覚障害を引き起こし、時には患者の運動神経障害を伴った。CremophorEL(登録商標)は、それ自体深刻な副作用がないので神経障害の一部の要因である。
【0008】
安定した脂肪乳剤にパクリタキセルを製剤する試みも同様に失敗した。この薬剤は、大豆油を最初に含むイントラリピッド(登録商標)、または大豆とベニバナ油との混合物を含むリポシン(登録商標)などの脂肪乳剤に溶けないことが報告されている。大豆またはベニバナ油の何れかでパクリタキセルを加熱しても、あるいは超音波処理しても相当量の薬剤が溶解せず、均質化ステップ中の脂肪乳剤へのパクリタキセルの添加は一様に期待外れの結果に直面する。パクリタキセルを最大15mg/mL組み込む乳剤は、トリアセチン、L−αレシチン、ポリソルベート80、プルロニックF−68、オレイン酸エチルおよびグリセロールと共に調剤された。しかしながら、これらの乳剤は非常に有毒で不安定である。パクリタキセルはさらに、LCM製剤のCremophorEL(登録商標)とエタノールとに結合された。しかしながら、LCMの腫瘍吸収の選択性はドラッグデリバリの観点から魅力的であるが、先行技術によれば製造歩留まりと薬剤積載能力が低すぎて実用的でない。パクリタキセルを持つCremophorEL(登録商標)とエタノールの使用はさらに、恐らくこの製剤の毒性の一因となっている。
【0009】
さらに、生産方法が複雑であり、条件の小さな変更が粒子径と性能特性とに有意差をもたらす場合がある。典型的なアプローチは、高せん断力均質化と超音波、高圧均質化、ホットホモジナイゼーション、コールドホモジナイゼーション、および溶媒乳化蒸発を含む。無菌ろ過または放射線による滅菌はさらに複雑かもしれない。このように、エタノールと水溶液への薬剤の添加、続いて高せん断力均質化によるLCMの薬剤積載量と脂質溶解度を高める試みは、全く薬剤を含まない安定性に乏しくガスのない粒子の製剤をもたらす。
【0010】
腫瘤内の蓄積と細胞内在化を同時に促進するが、健康な組織内の蓄積を制限する適切な輸送媒体に治療薬を投与することが非常に望ましい。より有効なデリバリにより、僅かな副作用または低減した副作用で同じ治療結果またはより良好な治療結果を達成しながら、全身の健康な組織の治療薬の濃度が減少されてもよい。固有レベルの腫瘍細胞選択性を持つ作用薬のこのデリバリは、さらなる利点を提供するであろう。さらに、単一の腫瘍型に限定されないが、腫瘤内の選択的な蓄積と種々の癌細胞型への細胞内在化とを可能にする輸送媒体が特に望ましく、より安全でより有効な癌治療を可能にするであろう。治療薬の高い積載能力を可能にする輸送媒体はさらに、この分野で著しい進歩となるであろう。
【0011】
このため、安定的で、容易に調製され、生体適合性があり、効果的な製剤の微小管相互作用薬であって、腫瘍細胞への吸収を促進し、さらに最小限の副作用を示すパクリタキセルなどのタキサンを含んだ微小管相互作用薬に対する明らかな要望がある。
【0012】
本発明の目的と産業上の利用可能性
従って、本発明の目的は、癌などの細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態、および症候群の治療または診断で用いられる医薬組成物であって、腫瘍細胞への迅速で高い選択性と優先的な吸収性を示す医薬組成物を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、癌などの細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態、および症候群の治療または診断で用いられる医薬組成物であって、投与の際に最小限の副作用を引き起こす医薬組成物を提供することである。
【0014】
また本発明の更なる目的は、癌などの細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態、および症候群の治療または診断で用いられる医薬組成物であって、最小限の費用で容易に製造することができ、可能な限り長期間に渡って貯蔵することができる医薬組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0015】
これらの目的を達成するため、本発明は、人を含む温血動物の細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態、もしくは症候群またはこれらの症状を治療、診断、または予防するのに有用な医薬組成物であって、以下に規定される脂質粒子であって、水相内に一様に分散されて、癌細胞を含む異常細胞内に選択的または優先的に内在化することが可能な脂質粒子で構成された脂質ナノエマルジョンと;前記脂質ナノエマルジョンに連結された少なくとも1つの有効量の治療薬または診断薬と;薬剤的に受容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0016】
この脂質粒子は少なくとも1つの非二層形成脂質をそれぞれ具える。この適切な脂質粒子は、癌細胞を含む過剰増殖によって特徴づけられた異常細胞内に治療薬または診断薬の標的されたデリバリと濃度を著しく高めることが分かっており、所望の治療効果を達成するのに必要な投与量と投与頻度を減少または少なくとも維持しながら治療効率と生体利用性を改善した。さらに、ナノエマルジョンは拡張された持続時間の優秀な物理的および化学的な安定性を示し、これによって安定的にすぐに投与できる形態で医薬組成物の販売前包装を非常に容易にし、さらにこれによって類似活性剤を含む先行技術の組成で現在実施されるような病床での希釈と製剤に関連した問題と不便さをなくしている。
【0017】
この脂質粒子は薬剤的に活性な治療効果のある微小管相互作用薬を自身に連結した。適切な微小管相互作用薬は、限定されないが、例えばパクリタキセルなどのタキサンと;エポチロンと;例えばビンクリスチンなどのビンカアルカロイドと;エリュテロビンと;ジスコデルモリドと;ドラスチンと;コルヒチンと;コンブレスタチンと;フォモプシンAと;ハリコンドリンBと;スポンギスタチン1と;サルコジクチンと;ラウリマリドと;これらの誘導体、類似体、同属種および前述した各作用薬の組み合わせとを含む。微小管相互作用薬は、過剰増殖した細胞の成長を止めるか、または少なくとも中断するのに十分な量で存在する。
【0018】
本発明の更なる態様では、人を含む温血動物の癌を含む細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態または症候群を診断、治療または予防する方法であって、本書で開示された有効量の医薬組成物を温血動物に投与するステップを含む方法が提供される。
【0019】
また本発明の更なる態様では、本書で開示された医薬組成物を調剤する方法であって、a)少なくとも1つの非二層形成脂質を少なくとも1つの有効量の診断薬または治療薬と混合して脂質部を得るステップと;b)脂質部を水相に加えて分散を得るステップと;c)分散を高せん断力の条件下で撹拌して少なくとも1つの非二層形成脂質を十分に分散し、脂質粒子で構成された脂質ナノエマルジョンを形成するステップと、を含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下の図面は本発明の実施形態の例示であり、明細書と特許請求の範囲全体に含まれるアプリケーションの範囲を限定するよう意図されていない。
【図1】図1は、本発明に係る20%のDMSOに10%のパクリタキセルを充填した脂質粒子の粒径分布とゼータ電位を示す図である。
【図2】図2は、ショ糖密度の研究におけるパクリタキセル充填脂質粒子の溶解率をプロットするグラフによって本発明に係る脂質粒子へのパクリタキセルの組み込みを示す図である。
【図3】図3Aおよび図3Bは、本発明に係る細胞の脂質粒子吸収量を蛍光活性化細胞分類によって定量化することができることを示すグラフである。
【図4】図4A−図4Dは、HT−29結腸腫瘍細胞とSF−539肺腫瘍細胞と比べた腫瘍細胞株による本発明に係る細胞の脂質粒子吸収量を示すグラフである。
【図5】図5は、CremophorEL(登録商標)で製剤されたパクリタキセルより本発明に係るある特定の混合物の脂質粒子で調剤されたパクリタキセルを腫瘍細胞が大量に取り込むことを示すグラフである。
【図6】図6は、LNとCremophorEL(登録商標)の双方を2時間薬剤培養後にパクリタキセルの細胞吸収量がプラトーに達したことを示すグラフである。
【図7】図7は、パクリタキセルの量が本発明に係る脂質粒子の細胞吸収量に対して飽和しているかどうかを測定する実験結果を示す図である。
【図8】図8Aおよび図8Bは、コレステロールが本発明に係る脂質粒子の細胞吸収量の重大な成分であることを示すグラフである。
【図9】図9Aおよび図9Bは、CremophorEL(登録商標)内のパクリタキセルより本発明に係る脂質粒子内のパクリタキセルが多く内在化することを示すグラフである。
【図10】図10A−図10Dは、パクリタキセル単独対本発明に係る脂質粒子内のパクリタキセルの細胞毒性を示すグラフである。
【図11】図11は、CremophorEL(登録商標)内に製剤された場合より本発明に係る脂質粒子内に調剤された場合にパクリタキセルがより強い細胞毒性を有することを示す図である。
【図12】図12Aおよび図12Bは、CremophorEL(登録商標)内に調剤された場合により本発明の脂質粒子内に調剤された場合に、パクリタキセルが著しく強い抗腫瘍活性を有することを示すグラフを示す。
【図13】図13は、EmPAC、アブラキサン(登録商標)、またはタキソール(登録商標)により治療され、パクリタキセル特異抗体で染色されたA549細胞の代表的な画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は一般に、温血動物の細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態もしくは症候群またはこれらの症状を治療、診断または予防するための医薬品組成物に向けられている。この動物は、癌を含む細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病およびその他の病的状態および症候群に罹患しているヒト、ウマ、ウシ、イヌおよびネコを含む家畜などの哺乳類クラスを含む。本発明の医薬組成物は、脂質粒子で構成されたナノエマルジョンを含み、以下で規定されるように、少なくとも1つの治療用または診断用の微小管相互作用薬に操作的に連結され、これに対して脂質粒子が高い充填能力と、薬剤的に受容可能な担体または賦形剤を有し、これによって腫瘍などの異常細胞と病変組織への選択的なデリバリと有効濃度とに特に適切な脂質粒子を生成する。
【0022】
ナノエマルジョンの脂質粒子は、腫瘍細胞と腫瘍組織とを含む異常細胞と病変組織への高い受動的な蓄積と能動的な内在化の双方を容易にするよう構築される。脂質粒子が病変組織の血管領域に受動的に蓄積するとき、脂質粒子は能動的な代謝吸収によってこれらの細胞へ取り込まれる。このように、本発明の脂質粒子は、腫瘍と癌細胞とを含む過剰増殖によって特徴づけられた細胞による吸収と内在化を選択的かつ優先的に標的とした輸送媒体を提供する。本書で使用される「内在化」とは、脂質粒子が細胞によって能動的に取り込まれることを意味する。粒子の治療薬または診断薬の高い充填能力と結合されたこの高い内在化レベルは、この標的に有効量の治療薬または診断薬を提供することによって、これらの標的の治療または診断に有力な媒体を提供し、これによって成長、誘導性分化の停止、または細胞の死滅を含む治療上の有益な効果を誘導する。
【0023】
従って本発明の脂質粒子は、異常細胞と病変組織への治療薬のデリバリを強化するだけでなく、特に先行技術のデリバリシステムと比べて所望の効能を達成するのに必要な治療薬の量を減少する。本発明の脂質粒子は、拡張された時間に渡って物理的および化学的に非常に安定的であり、従って先行技術のデリバリシステムで一般に示される望ましくない沈殿、凝集または不溶による治療薬または診断薬のロスを最小化する。さらに、これらの脂質粒子はその他の長所を示し、これは制御された放出と;強化された薬剤安定性と;正の薬剤充填能力と;疎水性薬物との良好な互換性と;相対的に低い生体有毒性と;低い有機溶媒含有量とを含む。また、本脂質粒子は調製および投与するのが相対的に簡単で便利である。
【0024】
本書で用いられるように、用語「脂質粒子」は一般にナノサイズの任意の脂質を含む構造を包含するよう意味し、これはナノエマルジョンの一部を形成する実質的に無傷の粒子である。用語「実質的に無傷」とは、リポソームと対比されるとき、膜がない状態で粒子がその形状を維持することをいう。この脂質粒子は少なくとも1つの非二層形成脂質で構成される。
【0025】
脂質二層構造または脂質二層配置は一般に、親水性端子(極性の頭部)と疎水性端子(非極性の尾部)を有するある種類の脂質によって形成され、水溶液中の脂質分子の2つの対向層に自己組織化する能力および/または傾向を示す。脂質分子の2つの対向層が整列されてこれらの疎水性端子面は互いに対面して油状コアを形成するが、これらの親水性端子面は二層構造の何れかの側の水溶液に対面する。本発明では、用語「非二層形成脂質」は、水溶性の環境で脂質二層構造または脂質二層配置を形成するこの性能および/または傾向を欠く脂質を包含している。非二層形成脂質の実施例は、弱極性の脂質を含み、好ましくは実質的に非極性または中性である脂質を含む。本発明のより好適な脂質は中性脂質である。
【0026】
本発明の脂質粒子は、米国特許第4684479号明細書と第5215680号明細書に記載されたガス含有マイクロバブルと区別され、例えば参照により本書に全て組み込まれる米国特許第6565889号明細書と第6596305号明細書に記載されたリポソームと構造上区別される。特に脂質粒子は、生理学的に受容可能である非二層形成脂質の混合物によって形成され、例えばリン脂質を含む帯電脂質または極性脂質がある状態で少なくとも実質的に遊離する。非二層形成脂質の好適例は、飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸のグリセロールモノエステルと;飽和脂肪族アルコールのグリセロールモノエステルと;ステロール芳香族酸エステルと;ステロールと;テルペンと;胆汁酸と;胆汁酸のアルカリ金属塩と;脂肪酸のステロールエステルと;糖酸のステロールエステルと;糖酸のエステルと;脂肪族アルコールのエステルと;糖質のエステルと;脂肪酸のエステルと;糖酸と;サポニンと;サポゲニンと;グリセロールと;脂肪酸のグリセロールジエステルと;脂肪酸のグリセロールトリエステルと;脂肪族アルコールのグリセロールジエステルと;脂肪族アルコールのグリセロールトリエステルと;これらの組み合わせと、から選択されたものを含む。
【0027】
本発明の実施形態では、脂質粒子は非二層形成脂質の選択群の混合物を最初に形成することによって調製され、これは以下に記載されたサイズを持つ脂質粒子であって、標的の病変組織と異常細胞に適用されたときに高い内在化レベルを促進する脂質粒子を提供する。脂質混合物は一般に、
a)約9乃至18の炭素原子を含むカルボン酸のグリセロールモノエステルと、約10乃至18の炭素原子を含む脂肪族アルコールとから成る群から選択された少なくとも1つの第1要素と;
b)ステロール芳香族酸エステルから成る群から選択された少なくとも1つの第2要素と;
c)ステロール、テルペン、胆汁酸および胆汁酸のアルカリ金属塩から成る群から選択された少なくとも1つの第3要素と;
d)約1乃至18の炭素原子を含む脂肪酸のステロールエステルと;糖酸のステロールエステルと;約10乃至18の炭素原子を含む糖酸と脂肪族アルコールのエステルと;約10乃至18の炭素原子を含む糖質と脂肪酸のエステルと、糖酸と、サポニンと;サポゲニンとから成る群から選択された少なくとも1つの任意の第4要素と;
e)グリセロールと、約10乃至18の炭素原子を含む脂肪酸のグリセロールジエステルまたはグリセロールトリエステルと、約10乃至18の炭素原子を含む脂肪族アルコールとから成る群から選択された少なくとも1つの任意の第5要素と、を含む。
【0028】
上記に記載された脂質混合物は要素(a)乃至(c)の存在を含むに過ぎないが、脂質粒子のサイズの長期安定性と均一性が、これら2つの任意の要素の存在によって理論上強化されるので、要素(d)および/または(e)を組み込むほうが好適である。
【0029】
本発明の好適な実施形態では、本発明の脂質粒子を形成する脂質混合物を構成する5つの要素(任意の2つの要素を含む)は、それぞれ(a):(b):(c):(d):(e)が(1−5):(0.25−3):(0.25−3):(0−3):(0−3)の重量比で結合される。
【0030】
脂質混合物の第1要素は、約10乃至18の炭素原子を含む飽和カルボン酸のグリセロールモノエステルを含むよう記載されたが、限定されないが9−炭素オレイン酸またはエライジン酸などの約9乃至18の炭素原子を含むモノカルボン酸またはポリ不飽和カルボン酸のグリセロールモノエステルも脂質混合物の構造に有用であると考えられる。
【0031】
脂質混合物の要素の大きさは、限定されないが、デリバリの標的の細胞および/または組織の種類と、充填される治療薬または診断薬と、治療薬または診断薬の所望の投与量と、用いられる薬剤的に受容可能な担体と、投与形態と、その他の賦形剤または添加剤の存在などを含む幾つかの因子に依存して変更してもよいことが理解されるであろう。さらに、標的の病変組織と異常細胞によって脂質粒子を選択的に内在化させることができる因子は、脂質混合物の組成と得られる脂質粒子の構造だけでなく以下に記載される粒子のサイズと分子量も含む。
【0032】
本発明の脂質粒子は所望の粒径分布を維持しており、好ましくは、粒子の主要部分は約0.02乃至0.2μ(ミクロン)、好ましくは0.02μ乃至0.1μの範囲の平均粒子径を有し、上記または以下の範囲に留まる少量の粒子と最大約200nmの範囲しかない幾つかの脂質粒子とを変更する。本発明の脂質粒子で達成可能な粒子径範囲はさらに、拡張された時間に渡って強化された物理的および化学的安定性と、望ましくない凝集と薬剤沈殿の実質的な減少とへ導く。さらに、この範囲は癌の治療に特に適しており;より大きな粒子は他の利用(例えば、他の種類の細胞または組織のターゲティング)に適合されてもよい。本書で提供される範囲は、使用された脂質混合物と、追加された治療薬または診断薬の種類および量によっていくぶん決定されるであろう。
【0033】
本発明で用いられる治療薬または診断薬は無帯電または帯電、非極性または極性、天然または合成などでもよい。本書で用いられる用語「治療薬」は、限定されないが、薬剤、ホルモン、ビタミン、栄養素、物質などを含む任意の物質を含み、これは微小管の生成、構造、連結、機能および破壊に影響を与え、これにより、癌を含む細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態、症候群またはこれらの症状の予防と治療で有用である。したがって、本発明で有用な治療薬は、微小管の生成、構造、連結、機能および破壊に影響を与えるあらゆる種類の薬剤と、脂肪親和性ポリペプチドと、細胞毒素と、オリゴヌクレオチドと、細胞毒性抗腫瘍薬と、抗代謝剤と、ホルモンおよび放射性分子とを含む。用語「オリゴヌクレオチド」は、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびセンスオリゴヌクレオチド(例えばベクタとして従来知られている核酸)の双方を含む。オリゴヌクレオチドは、サブユニットまたはサブユニット間の結合に関して「天然」または「修飾」されてもよい。
【0034】
しかしながら、本発明の特別な態様では、治療薬は微小管相互作用薬であって、例えばパクリタキセル、ドセタセル、セファロマンニンバッカチンIII、10−デアセチルバッカチンIII、デアセチルパクリタキセルおよびデアセチル−7−エピパクリタキセルなどのタキサンと;例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンおよびこれらの類似体などのビンカアルカロイドと;エポチロンと;エリュテロビンと;ジスコデルモリドと;ドラスチンと;コルヒチンと;コンブレスタチンと;フォモプシンAと;ハリコンドリンBと;スポンギスタチン1と;サルコジクチンと;ラウリマリドと;誘導体、類似体、同属種およびこれら前記作用薬の各々の結合と;この微小管相互作用活性を示すと知られている類似薬または類似物質とから成る群から選択した微小管相互作用薬である。
【0035】
またパクリタキセルなどのタキサンは、より少量の徐放性投与量で抗炎症剤として用いられてもよい。この用途は、ステントなどの患者内に外科的に配置される生体医用器具の分野で特に重要である。ステント周囲およびステント内側の細胞の幾らかの蓄積は、この蓄積が平滑な被覆を形成し、これによって動脈自体にこの器具を組み込むときに好適であるが、この細胞蓄積がさらに内部の通路を妨げて、動脈の再狭窄を引き起こす場合がある。結果として、Boston Scientific株式会社は、ステント表面にパクリタキセルを結合する専用ポリマで覆われたパクリタキセル溶出冠状動脈ステントシステムを製造している。パクリタキセルポリマ複合体は、パクリタキセルの投与量と徐放特性を正確に制御することが可能であり、十分な量の薬物の溶出を可能にし、ステント周囲の細胞蓄積を阻害し、ステント周囲の再狭窄と血管再生を著しく防止する。本発明の医薬組成物は、特に治療薬がタキサンまたは他の微小管相互作用薬である場合、外科的に植え込まれた生体医用器具周囲の細胞蓄積を調整するのに同様に有用になると考えられる。
【0036】
本発明の医薬組成物は、長期的な物理的および化学的安定性を示し、この組成を安定的にすぐに投与できる剤形に便利に販売前包装するのを可能にしており、これによって先行技術の類似組成に一般に関連する投与に先立って病床での希釈と製剤のニーズをなくしている。本発明の医薬組成物は、拡張された期間(例えば約30℃で少なくとも14日間および4℃で少なくとも12ヶ月)に渡って所望の薬剤安定性と乳化安定性を示す。本発明の医薬組成物は、約0.1μg/mL乃至1000μg/mL、好ましくは約10μg/mL乃至800μg/mL、および最も好ましくは約200μg/mL乃至600μg/mLの量の脂質粒子を含む。医薬組成物の全容積に基づく治療薬または診断薬の典型的な濃度は、少なくとも0.001重量/体積(w/v)%、好ましくは0.001乃至90重量/体積%、およびより好ましくは約0.1乃至25重量/体積%でよい。医薬組成物に存在する治療薬または診断約の量は、約0.001μg/mL乃至1000μg/mL、好ましくは約0.1μg/mL乃至800μg/mL、およびより好ましくは約60μg/mL乃至400μg/mLに及んでよい。
【0037】
本発明の医薬組成物はさらに、植物性脂肪源、溶媒、界面活性剤またはこれらの組み合わせから選択された乳化促進剤を含んでもよい。乳化促進剤は、脂質粒子の望ましくない沈殿または凝集を低減また最小限にすることによって、理論上脂質粒子の安定性を強化し、小さな粒子径特性を維持し、これによって癌細胞への脂質粒子の能動的取り込みに積極的に影響を及ぼし促進することが個々にまたは組み合わせで分かった。乳化促進剤はさらに、本発明の医薬組成物の物理的および化学的安定性と薬剤運搬容量を改善するはずである。
【0038】
本発明の好適な実施形態では、植物性脂肪源は、例えば大豆油とアマニ油、大麻油、アマニ油、からし油、菜種油、キャノーラ油、ベニバナ油、ゴマ油、ひまわり油、ブドウ種油、アーモンド油、アプリコット油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、ココナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ニーム油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、ピーナッツ油、パンプキンシード油、米ぬか油、くるみ油およびこれらの混合物など植物油の形態で一般に植物由来脂肪酸を含む。より好適な植物油は大豆油である。
【0039】
植物油は通常、ナノエマルジョンの表面張力を高めるのに十分な量で存在し、これは次に標的細胞の細胞質膜またはその受容体と疎水的相互作用の確率を高める。植物性脂肪源は約0.001乃至5.0体積/体積(v/v)%、より好ましくは約0.005乃至4.0体積/体積%、および最も好ましくは約0.01乃至2.5体積/体積%の量で存在してもよい。
【0040】
本発明の別の好適な実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤から選択されたものである。非イオン性界面活性剤の実施例は、脂肪族アシル化ソルビタンエステルおよびこのポリオキシエチレン誘導体などのソルビタンエステルならびにこの混合物と、限定されないがポロキサマ化合物(188、182、407および908)、チロキサポール、ポリソルベート20、60および80、グリコール酸ナトリウム、硫酸ドデシルナトリウムなどを含むこれらの混合物と、これらの組み合わせとを含む。より好適な非イオン性界面活性剤は、例えばTween(登録商標)−80などの洗浄性ポリソルベートである。
【0041】
界面活性剤は通常、ナノエマルジョンの疎水性成分と親水性成分の間の界面を安定し、疎水性成分が結合するよう維持することによって、ナノエマルジョンの動力学的安定性を高めるのに十分な量で存在し、このため一度形成されたナノエマルジョンは貯蔵中に著しく変化しない。界面活性剤は、約0.01乃至4.0重量/体積%、より好ましくは約0.1乃至3.0重量/体積%、および最も好ましくは約0.2乃至2.5重量/体積%の量で存在する。
【0042】
さらに本発明の別の好適な実施形態では、溶媒は任意の薬剤的に受容可能な水混和性希釈剤または例えば極性のプロトン性溶媒と極性の非プロトン性溶媒などの溶媒を含む。この溶媒は好ましくは、1,3−ブタンジオールと;ジメチルスルホキシドと;メタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、イソプロパノールおよびエタノールなどのアルコールと;同種のものとから選択される。より好適な溶媒はベンジルアルコールである。
【0043】
溶媒は通常、ナノエマルジョンの非イオン性界面活性剤の凝集の程度を制御するのに十分な量で存在する。溶媒は、約0.001乃至99.9体積/体積%、より好ましくは0.005乃至80体積/体積%、および最も好ましくは約0.005乃至70体積/体積%の量で存在してもよい。
【0044】
本発明の組成は、治療薬または診断薬に内在する薬理活性または化学的性質を修飾または変更しないが、癌細胞または癌組織を含む異常細胞または病変組織への作用薬のデリバリおよび内在化を簡単に強化し、治療または診断の効果を提供する。癌治療の治療薬としてタキサンの使用に関する教示の実施例は、参照により本書にそれぞれ組み込まれる米国特許第6346543号明細書と;第6384071号明細書と;第6387946号明細書と;第6395771号明細書と;第6403634号明細書と;第6500858号明細書とに例えば開示されている。
【0045】
一般に、本発明の医薬組成物は、脂質粒子を治療薬または診断薬と結合し、同様に完全に混合することによって調製される。脂質混合物は、治療薬または診断薬と混合するのに先立って植物性脂肪源と組み合わせて界面活性剤と混合されてもよく、これ自体は溶解のため水混和性溶媒と混合されてもよい。次いで脂質粒子−治療薬/診断薬の結合が、水、好ましくは精製水と共に混合される。次いで得られた混合物は高せん断力に晒され、一般に標準的な従来のせん断集中均質化ミキサまたはホモジナイザ内に生成され、水相内に分散した脂質粒子を含むナノエマルジョンを生成する。十分に強いせん断力は、マサチューセッツ州ニュートンのMicrofluidics社により販売されるMicrofluidizer(登録商標)流体材料プロセッサなどの適切なせん断集中均質化ミキサまたはホモジナイザにより生成することができる。得られたナノエマルジョンはさらに処理されてより精製された形態を得て、これは人を含む温血動物への投与に用いられてもよい。
【0046】
ある実施例では、混合処理から過度に大きな粒子を除去することが望ましく、所望の範囲に粒径分布を維持する。マサチューセッツ州ウォルサムのミリポア株式会社のものなど適切な濾過システムがこの目的に利用可能である。このため、適切なろ過システムの選択は、所望の範囲に脂質粒子の粒径分布を制御する要因であり、熟練した職人の日常的なスキル内にするであろう。あるいは、ナノエマルジョンは透析によって処理されて不純物を除去してもよく、得られた透析物は薬剤的用途のため保存される。透析は、任意の非粒子の脂質混合物の成分、薬剤、および/または溶媒を除去し、任意の所望の緩衝剤の交換または濃度を達成する好適な方法である。5000乃至500000の名目上の分子量を遮断する透析膜を用いることができ、10000乃至300000の分子量が好ましい。記載されるように生成された脂質粒子は、透析により精製されて非粒子の薬剤を除去する場合、脂質粒子が例えばC6グリオーマ細胞などの標的細胞に内在化されるまで測定することを特徴としてもよい。
【0047】
本発明の組成はさらに、薬剤的に受容可能な担体または賦形剤を含む。薬剤的に受容可能な担体の実施例はこの分野で周知であり、限定されないが、酸化防止剤、緩衝剤、キレート剤、香味料、着色剤、保存剤、生体利用性を高める吸収促進剤、抗菌剤およびこれらの組み合わせなどの医薬組成物に従来用いられるものを含む。この添加剤の量は所望の特性に依存し、これは当業者により容易に決定することができる。
【0048】
本発明の医薬組成物は通常、塩、緩衝剤、保存剤および互換性のある担体を含み、任意に他の治療成分と組み合わせる。薬剤に用いられた場合、塩は薬剤的に受容可能であるはずだが、非薬剤的に受容可能な塩を上手い具合に用いてこの薬剤的に受容可能な塩を調製してもよく、これは本発明の範囲から除外されない。この薬理学的に受容可能な塩と薬剤的に受容可能な塩は、限定されないが、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエン、スルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタン、スルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびスルホン酸ベンゼンから調製されたものを含む。さらに、薬剤的に受容可能な塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調製することができる。
【0049】
本発明はさらに、細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態もしくは症候群、またはこれらの症状の予防、診断または治療を実施するために細胞に少なくとも1つの治療薬または診断薬の有効量を送ることによって、治療薬または診断薬により患者を治療または診断する方法を提供する。改善された癌治療は特に、腫瘍の細胞増殖、血管形成、転移成長、アポトーシスの制御による一次腫瘍の治療および外科切除後または外科切除と並行の微小転移発育の治療と;一次腫瘍の放射線療法または他の化学療法と、を含めて考慮される。本発明の医薬組成物は、一次黒色腫または転移性黒色腫、リンパ腫、肉腫、肺癌、肝臓癌、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、白血病、子宮癌、子宮頚部癌、膀胱癌、腎癌、結腸癌、ならびに乳癌、前立腺癌、卵巣癌および膵癌などの腺癌のような癌型で有用である。
【0050】
治療用途および診断用途として、医薬組成物は、薬剤的に受容可能な担体と結合した場合に患者に直接投与することができる。この方法は、治療薬または診断薬単独または有効量の別の治療薬または診断薬と組み合わせて投与することによって実施されてもよく、これは第2の微小管相互作用薬でもよいし、そうでなくてもよい。微小管相互作用薬でない場合、この第2の作用薬は、限定されないが、細胞静止剤、葉酸阻害剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、ポドフィロトキシン、抗腫瘍抗生物質、化学療法剤、アポトーシス誘導剤、およびこれらの組み合わせでもよい。この治療薬はさらに代謝阻害剤試薬を含む。多くのこの治療薬がこの分野で知られている。併用療法は、治療法に対する患者の反応を増幅または確認するのに必要とされるので、この状態を治療するのと同時使用、逐次使用、または別使用として提供する。
【0051】
本発明の方法は、医学的に許容可能な任意の投与形態を用いて実施されてもよく、臨床的に許容できない副作用を引き起こさずに活性化合物の有効レベルを生成する。非経口投与に特に適した製剤が好ましいが、本発明の組成は、エアゾール剤、スプレー剤、粉末剤、ゲル剤、ローション剤、クリーム剤、坐剤、軟膏剤などの形態で、吸入、口、局所、経皮、鼻、目、肺、直腸、口腔粘膜、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、胸腔内、胸膜腔内、子宮内、腫瘍内、または点滴による方法もしくは投与用に調剤することができる。この製剤が望まれる場合、この分野で周知の他の添加剤が含まれて製剤に所望の一貫性と他の特性を与えてもよい。
【0052】
治療薬または診断薬を投与する特定の方法が、選択される特定の作用薬と;投与が疾病、状態、症候群またはこれらの症状の治療、診断または予防用かどうかと;治療または診断される内科的疾患の重症度と;治療効力に必要とされる投与量と、に依存することを当業者は認識するであろう。例えば、白血病の治療用の抗癌剤を投与する好適な方法は静脈内投与を含むが、皮膚癌を治療する好適な方法は局所投与または皮内投与を含むであろう。
【0053】
本書で用いられるように、「有効量」とは所望の治療効果または診断効果が達成される治療薬または診断薬の投与量または複数の投与量のことをいう。一般に、治療薬または診断薬の有効量は、使用される特定の作用薬の活性と;その作用薬の代謝的安定性および作用の長さと;被験者の種族、年齢、体重、健康状態、食事の状態、性別および食事と;投与の形態および時間と;排泄率と;もしあれば複合薬と;治療される特定の状態の症状および/または重症度の程度とにより変更してもよい。正確な投与量は、所望の結果を得るため1日当たり1回または数回の投与で、過度の実験をせずに当業者によって決定することができ、この投与量は、所望の治療効果を達成するためまたは任意の合併症の場合に個々の開業医により調整されてもよい。重要なことは、癌の治療に用いられる場合、使用される治療薬の投与量は、腫瘍細胞を抑制または死滅させるのに十分であるが、正常細胞を実質的に傷つけないでおくことである。
【0054】
本発明の医薬組成物に含まれる治療薬または診断薬は、所望の最大量まで任意の量で調製することができ、これは所定の脂質粒子で可溶とされてもよいし、脂質粒子内で懸濁されてもよいし、脂質粒子に操作的に連結されてもよい。診断薬または治療薬の量は、0.001μg/mL乃至1000μg/mL、好ましくは約0.1μg/mL乃至800μg/mL、およびより好ましくは約300μg/mLに及んでもよい。
【0055】
通常、脂質粒子は患者に有効量を投与するのに十分な方法で提供されるであろう。投与量は、約0.1mg/kg乃至175mg/kg、好ましくは約1mg/kg乃至80mg/kg、およびより好ましくは5mg/kg乃至60mg/kgに及んでもよい。投与量は、単回投与または1日当たり1乃至4回以上など個々に分割投与の形態で投与されてもよい。被験者の反応がある投与量で不十分である場合、さらに高用量(または異なる局所的輸送経路で有効な高用量)が患者の許容量まで使用されてもよい。1日当たり複数回の投与が考慮され、適切な全身レベルまたは標的レベルの治療薬または診断薬を達成する。
【0056】
さらに本発明の別の実施形態では、微小管相互作用薬は、生体外で診断薬として用いられてもよい。前に述べたように、問題の特定の腫瘍細胞または細胞型に依存して、異なる微小管相互作用薬が別個の腫瘍種の抑制で多少有効であるかもしれない。したがって、例えば適切な化学療法の戦略の判断または選択が困難である場合に、特定の腫瘍細胞型を標的にすると知られていた微小管相互作用薬による生体外の腫瘍細胞の培養試験は、代替アプローチを提供して腫瘍型と有効な治療を特定する。
【0057】
本発明の別の態様では、本発明の医薬組成物を調製する方法が提供される。脂質混合物は、水相で処理する際、脂質粒子の分散を含む脂質ナノエマルジョンの組成を形成する量で治療薬または診断薬に組み込まれ、脂質粒子が分散された相は、ナノスケールオーダの粒子径の高分子または小分子の塊の形態で存在する。本発明の組成を調製する際に、脂質混合物および治療薬または診断薬は、水、好ましくはろ過水を含む水相と結合される。得られた混合物は処理されて典型的に平均粒子径範囲を有する脂質粒子であって、いつもではないが、癌の治療に特に適した最大200nmのサイズの範囲の脂質粒子を他の用途に適切な大きな粒子と共に形成する。得られる範囲は、使用された脂質混合物と、脂質混合物に加えられた治療薬または診断薬の種類および量と、脂質粒子を生成するのに用いられた技術とによって幾分影響される。
【0058】
本発明の医薬組成物は、この分野で知られている従来の分散生成技術またはプロセスを用いて作ることができる。この技術は限定されないが、高せん断力均質化、超音波撹拌もしくは超音波処理、高圧均質化、溶媒乳化/蒸発などを含む。本発明の一実施例では、脂質粒子は適切な高圧ホモジナイザを用いる従来の高圧均質化技術によって調製されてもよい。適切なサイズのホモジナイザは商業上利用可能である。高圧ホモジナイザは通常、典型的に約100乃至2000の棒材により高圧で約数ミクロンに渡る狭い隙間を介して流体を押し出すよう設計されている。加圧流体は、超短距離で1000km/hr以上の超高速まで加速する。脂質混合物を含む加圧流体は、超高せん断応力と空洞化力に対抗し、サブミクロン範囲で粒子内に脂質混合物を分裂させて細かく砕く。前に論じられたように、大部分の脂質粒子は約0.02μ乃至0.2μ、好ましくは0.02μ乃至0.1μに及ぶ平均粒子径を有するべきであり、特に最大約200nmに及ぶ幾つかの脂質粒子と共に、この範囲以上または以下にとどまる少量の粒子に変更する。
【0059】
脂質粒子を調製する別の特定の方法では、脂質混合物は、植物油などの植物性脂肪源と、非イオン性界面活性剤などの界面活性剤と混合されて脂質相を得てもよい。治療薬または診断薬は、水混和性溶媒などの溶媒と混合されて治療薬相または診断薬相を得てもよい。脂質相と治療薬または診断薬相はその後、好ましくは超音波処理を介して、水相の存在下で一緒に混合されブレンドされる。得られた混合物はその後、高せん断力下で均質化されて対応する本発明のナノエマルジョンを生成する。次いで、ナノエマルジョンは0.2μの膜を介してろ過されてもよく、未使用の脂質材料、過剰な治療薬または診断薬などの不純物を殺菌および/または除去し、治療または診断ニーズのある人を含む温血動物への医薬組成物としてデリバリに適した精製形態を得る。
【0060】
本発明の医薬品組成物の理解を容易にするために以下の実施例を提供する。
【0061】
実施例1
EmPACの組成
パクリタキセルが第1薬剤候補として選択され、脂質ナノ粒子(LN)への充填を介して製剤について試験され、商業上利用可能な製品へ開発される。パクリタキセル/LNの製剤は、水と4%のエタノールで直接調製され、続いて110Y Microfluidics Microfluidizer(登録商標)高圧ホモジナイザ(M−110Yモデル、Microfluidics社、ニュートン、マサチューセッツ州)を用いて18000psiで4サイクルの高圧均質化を行う。先行研究は、最大〜25重量/重量(w/w)%の脂質濃度のLNにパクリタキセルを組み込むことができることを示したが、この製剤は数時間しか安定しないことが分かったが、この問題は薬剤の組み込みよりも安定性に関係するように思われた。1mMのピロリン酸ナトリウム(pH9.5)で調製されたLNは少なくとも2か月間安定したままであることを発見後、1mMのピロリン酸ナトリウム(pH9.5)が薬剤の組み込み研究に1次試験媒体として選択された。
【0062】
パクリタキセルが3サイクルで15000psiで1mMのピロリン酸ナトリウム中の4%のエタノール含有量と共にLNに組み込まれた場合、5%の薬剤充填を伴う製剤のみが安定し、この最終的な製剤でさえ有意な時間安定しないことが分かった。組み込み後2日目に、僅かな混濁が5%の充填サンプルで観察され、これは3日目に完全に沈殿した。一方33%および16%の薬剤充填サンプルでは即時の混濁が観察された。これらの発見は表1に要約されている。この安定性を低下させた有力な理由は、水におけるパクリタキセルの難溶性、低いアルコール含有量(4%)、高いpHの最終溶液(pH11.5)、および/または調和できない脂質濃度であろう。
表1.4%のエタノールで調製されたLNに充填するパクリタキセル
【0063】
この場合エチルアルコールである有機含有量の変更により、薬剤組み込み粒子の安定性を改善する可能性が高い。したがって、LNは最初に異なるアルコール含有量(例えば50体積/体積%、25体積/体積%、12.5体積/体積%)で調製された。薬剤のない粒子でさえ25体積/体積%以下またはこれと同等のエタノール含有量で安定しないことが観察された。さらに、12.5体積/体積%アルコールのLNのみが少なくとも1日間安定していた。したがって、10%のパクリタキセルが12.5体積/体積%のアルコール含有量と共にLNに充填された。3時間後、ゲル組成が観察され、高レベルのアルコールはLN内のパクリタキセル製剤を安定させないことを強く示した。エチルアルコールはさらに通常、解乳化剤として用いられた。これは、安定した薬剤充填製剤を得る際に高い割合のエタノールが助力しないという理由であろう。その他の溶媒では、パクリタキセルはDMSOに非常に良好な溶解度を有すると知られているので、ジメチルスルホキシド(DMSO)が選択肢の溶媒である。したがって、パクリタキセル充填サンプルは、第2機器であるMicrofluidizer(登録商標)高圧ホモジナイザ(M−110EHモデル、Microfluidics社、ニュートン、マサチューセッツ州)M−110EHで15000psiおよび3サイクルで10%のDMSOに調製された。
【0064】
2つのコントロールが用いられ、一方はパクリタキセルがなく、他方は脂質成分がない。第2のコントロールから、このサンプルが脂質成分のない状態で沈殿したので、脂質成分が薬剤組み込みLNの安定性の役割を担うことは明らかである。しかしながら、5%のパクリタキセルのサンプルは透明であったが、10%のパクリタキセルのサンプルは2日目に沈殿したことが観察された。これらのサンプルの高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)アッセイでは、これらのサンプルでパクリタキセルが悪化したことが観察された。
【0065】
パクリタキセルはDMSOによく溶けるので、異なる濃度のDMSOでパクリタキセルにより調製されたLNの安定性が試験された。濃度20%のDMSOが10重量/重量%のパクリタキセルを有する200μg/mLのLNに最も高い安定性をもたらしたことが分かった。代表的な粒径分布とゼータ電位値は図1に示されている。この変更された製剤の安定性のデータは表2に示されている。
表2.変更されたDMSO製剤のパクリタキセル充填LNの安定性
【0066】
パクリタキセルの前記悪化(24時間以内にほぼ100%)は、この製剤の高いpH(11.0)によるものであると仮定された。1mMのピロリン酸ナトリウムの添加が、9.5までpHを低下させた。したがって、1mMのピロリン酸ナトリウムによりpHを調整することによってパクリタキセルと脂質成分の安定性の効果が研究された。
【0067】
6.0に等しいpHまたは6.0を超えるpHでは、沈殿が観察されず、製剤は透明のままであった。しかしながら、6.0を超えるpHではパクリタキセルの相当な悪化があった。このように、最適解は、脂質成分とパクリタキセルの双方を製剤中で化学的および物理的に安定させ続けるために、希リン酸により6.0に調整されたpHを有する1mMのピロリン酸ナトリウムを利用することである。全結果は表3に要約されている。
表3.脂質ナノ粒子の安定性におけるpHの効果¥
【0068】
このようにDMSOとpHの制御は、製剤の長期安定性に導くことができることが発見されたので、製造中に製品を消毒するのにろ過が利用されるので、次の研究手段は、ろ過がパクリタキセル充填LNサンプルの脂質成分と薬剤潜在能力に影響するかどうかであった。
【0069】
ナイロン、PVDF、およびPESなどの異なる種類の膜の一次審査後、ポリエーテルサルフォン(PES)親水性膜が製剤のろ過に最も適切な膜であることが結論づけられた。20%のDMSOで調製された10%のパクリタキセル充填LNが0.22μmのPES薄膜フィルタによりろ過された場合、少なくとも98%のパクリタキセルが膜を通過した。これら同じ製剤から脂質成分がELSDによって分析された場合、平均して、全成分の93%が膜を通過した。このようにろ過は製剤の品質も安定性も高めることが実証された。
【0070】
パクリタキセルが20%のDMSOがある状態でLNに組み込まれるかどうかを判定するために、または水相内へパクリタキセルを分配することによってLNへのパクリタキセルの組み込みをDMSOが妨げるどうかを判定するために、LNからの14C標識化パクリタキセルの分離がショ糖密度勾配を用いて行われた。放射能数の分布の測定は、どの画分がパクリタキセルを含むかに関するデータを提供する。したがって、200μg/mLのLNは、幾らかの14C標識化パクリタキセルを含む10重量/重量%のパクリタキセルの存在下で調製され、その調製品はショ糖密度勾配で分画された。画分が放射能数の分析のため集められてどの画分がパクリタキセルを含むかを決定した。沈殿した画分は勾配の底で発見され、これは最初に不溶性のパクリタキセルで構成された。バンドは、LNであると確証された勾配で発見され、沈殿物とLN画分の双方の放射性成分がLNを含む脂質がある状態で分析され、放射性標識は底部の沈殿物で殆ど発見されなかった。脂質がない状態では、大量の沈殿物が発見され、非常に小さな画分の放射標識が沈殿物画分で発見されている。
【0071】
図2で分かるように、脂質がない状態では約80%のパクリタキセルが沈殿したが、脂質がある状態では1.8%のパクリタキセルが沈殿するに過ぎなかった。これは、大部分のパクリタキセルがLNの脂質内に組み込まれているという考えを支持するものである。
【0072】
臨床設定では、3−24時間に渡る約2.5Lの静脈注射は通常、殆どの患者に安全で耐えられるものと考えられている。臨床用途の現在のパクリタキセルの投与量は、3−24時間に渡って135〜175mg/m2の範囲である。表面積が〜1.8m2の平均サイズのオスを想定すると、この投与量を達成するのにパクリタキセルの〜97μg/mLの濃度が必要である。この時間および体積パラメータ内でこの治療用の投与量のパクリタキセルを提供するために、パクリタキセルは十分に高濃度でなければならない。従って、ベンチマークとしてこの投与量を達成するパクリタキセル充填LNサンプルを製剤することが望ましい。しかしながら、本発明は腫瘍細胞を選択的に標的とすることができるので、パクリタキセルを組み込まれたLNに必要な治療用の投与量は事実上、非常に少なくてもよい。このように、投与された薬剤の大部分の画分は最終的に腫瘍細胞に行き着くであろう。
【0073】
後に表4で明らかなように、10%のパクリタキセルを充填する最大400μg/mLのLNを調製することが可能であり、これは凝集の兆候なく少なくとも5時間安定する。この調整品は、40μg/mLのパクリタキセル濃度を有し、静脈内投与に必要な時間に渡って安定した。
【0074】
0.22μmのPES膜によるろ過後、LNに充填された1mMピロリン酸ナトリウム(pH−6.0)の20%DMSO内の10%パクリタキセルのサンプルは、少なくとも3日間安定したままだった。ピロリン酸ナトリウム濃度を0.5mMに変更した後、サンプルは7日間安定したままだった。最初に、全てのサンプルはろ過された形態およびろ過されてない形態でパクリタキセル成分と粒径分布について分析された。これによりこれらのデータは、臨床で現在利用される濃度のパクリタキセル製剤をLN内に調製することができることを示した。
【0075】
したがって、第2のパクリタキセル−LN製剤が調製され、これは60μg/mLのパクリタキセルと;300μg/mLの脂質混合物と;0.5%のブタノールと;0.5%の大豆油と;0.25%のTween(登録商標)−80とから成る。この第2の製剤で行われた安定性研究は、400μg/mLの脂質と一定濃度のパクリタキセルを用いる製剤が少なくとも24時間安定していることを明らかにした。結果は表4に要約されている。
表4.ナノ粒子安定性に対する脂質濃度の効果
【0076】
具体的には、表5で分かるように、第2のパクリタキセル−LN製剤は少なくとも7日間室温で安定し、少なくとも30日間2−8℃で安定することが分かった。
表5.第2の製剤の安定性
【0077】
しかしながら、ブタノールはマウスに有毒であり、注射で昏睡状態を引き起こすことが分かったので(データは示されてない)、ブタノールはベンジルアルコールによって置換された。得られた第3の製剤は、60μg/mLのパクリタキセル、400μg/mLの脂質混合物、0.06%のベンジルアルコール、0.5%の大豆油、および0.25%のTween(登録商標)−80で構成される。表6で要約されるように、この第3の製剤は室温で少なくとも3週間および2−8℃で80日間以上安定していたことが分かった。
表6.第3の製剤の安定性
【0078】
実施例2
EMULSIPHANとEmPACの細胞吸収
ここで記載された研究は、ヒト腫瘍細胞がLNを取り込むかどうかを判定し、かつそれらがLNを取り込む異なる能力を示すかどうかを判定するために行われた。試験された大抵の腫瘍細胞株が蛍光LNを容易に取り込むだけでなく、異なる腫瘍細胞株からの腫瘍細胞株はLNを取り込む異なる能力を示すことが分かった。
【0079】
これらの実験に用いたLN製剤は、以下のように調製された:適切な脂質が10分間超音波処理により10mg/mLまで95%のエタノールに可溶化された。次に、エタノール中の100μLの0.5mg/mLコレステリルBODIPY−FL(オレゴン州ユージーンのMolecular Probes)が1mLの可溶化された10mg/mL脂質に加えられた。最後に、脂質とコレステリルBODIPY−FLの混合物が1mMピロリン酸ナトリウム水の50mL溶液に加えられ、110Y Microfluidics Microfluidizer(登録商標)高圧ホモジナイザ(M−110Yモデル、Microfluidics社、ニュートン、マサチューセッツ州)により処理された。
【0080】
蛍光標識化ナノ粒子の細胞吸収の程度が蛍光活性化細胞分類(FACS)による細胞蛍光強度に正比例することを最初に立証するため、図3Aで分かるように、細胞当たりの平均蛍光強度がLNの濃度に正比例し、さらに図3Bから明らかなように、LNがある状態で培養時間に正比例することが分かった。実際には、同じく治療された細胞がカバーガラスに固定された状態で、蛍光強度が蛍光LN吸収の程度に比例することが視覚的に確認された。LNは、蛍光の脂肪親和性染料DiO(オレゴン州ユージーンのMolecular Probes)により標識化され、これはフルオレセインのフィルタセットを用いて検出することができる。LNは顕微溶液化により200μg/mLの脂質と2.5μg/mLのDiOにより調製された。標識化されたLNは、C6細胞に加えられ、37℃で培養された。この後、培地が除去され、細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)により洗浄され、トリプシン処理され、4%のホルムアルデヒド内に固定する前に再び洗浄された。LNは、0、12.5、25、50および100μg/mL加えられ、60分間培養された。50μg/mLのLNが細胞に加えられ、培地の除去とFACS分析の処理の前に0、5、10、15、30および60分間培養された。図3Aと図3Bで示される結果から明らかなように、細胞当たりの蛍光強度が濃度の増加と培養時間の増加とに正比例することをそれぞれ示しており、FACSによってLN吸収を推定することができることは明らかである。
【0081】
異種細胞株由来細胞がLNを取り込む異なる能力を示すかどうかを判定するため、かつ異種腫瘍型由来細胞がLNを取り込む相対的な能力をさらに推定するために、種々のパネルの腫瘍細胞株でLN吸収が試験された。選択された細胞株は、国立癌研究所(NCI)のDevelopmental Therapeutics Program In Vitro Screeningによって用いられたものから選択された。NCI細胞株パネルは、多くの異なるヒト腫瘍株由来細胞株で構成され、幾つかの異種細胞株はそれぞれ代表的なヒト腫瘍株に由来した。使用される細胞株は、HS−578T、MDA−MB−231、およびMX−I乳癌と;H23、H460、およびH522肺癌と;SF−539肝臓と;HT29、SW−620、およびCOLO205結腸腫瘍細胞株とを含んだ。
【0082】
LNは、顕微溶液化によって200μg/mLの脂質と0.5重量/重量%のコレステリル−BODIPY−FLとにより調製された。標識化されたLNは細胞に加えられ、37℃で培養された。この後、培地が除去され、細胞がPBSで洗浄され、トリプシン処理され、および4%のホルムアルデヒド内に固定される前に再び洗浄された。サンプルはFACSによって分析され、細胞当たりの平均蛍光強度が測定された。結腸、胸部、中枢神経系(CNS)、および肺に由来する細胞は、HT−29結腸癌細胞株とSF−539肺癌細胞株のものと比較され、これは少量および多量の蛍光LNをそれぞれ取り込むことが示された。LNで治療された各細胞サンプルによる蛍光LN吸収量は、未治療の同じ細胞株の蛍光強度を控除することによって得られた。
【0083】
図4A〜4Dで分かるように、NCIパネルの細胞株によるLN吸収量の比較は、LN吸収が異なった株の細胞型間で変化することを明らかにする。同じ腫瘍株の細胞間で幾らかの変異性が見られたが、相対的な吸収量は各腫瘍株で適正に一致する。例えば、胸部腫瘍細胞株と肺腫瘍細胞株は通常、結腸腫瘍細胞株に行ったものより高いLN吸収量を示した。最も大きなLN吸収量は、肺腫瘍およびCNSの細胞株で発見された。全結果は表7に要約されている。
表7.腫瘍細胞株による脂質ナノ粒子の吸収
§細胞当たりの平均蛍光強度は、同じ各未治療の細胞株の蛍光と比較し、控除することによって、各蛍光LN治療サンプルについて得られた。
£ND−判定されていない。高レベルの沈殿のため粒径は判定できない。
【0084】
次に、LN(EmPAC)に調剤されたパクリタキセルの吸収量は、従来の媒体に調剤されたパクリタキセル、タキソール(登録商標)として知られている1:1のCremophor/エタノール(CremophorEL(登録商標))と比較され、一連の実験で放射標識化パクリタキセルの培養された腫瘍細胞吸収量を分析した。
【0085】
第1の実験では、14C標識化パクリタキセルは、LNに組み込まれ(これによってEmPACを形成する)、タキソール(登録商標)に組み込まれた。この実験で使用されるEmPAC製剤は、DMSOを含む第1の製剤であった(実施例1を参照)。これらの製剤は、同じ濃度のパクリタキセルから成り、1時間12の複製ウェルでSF539神経膠腫とA549肺癌細胞に加えられた。媒体が除去され、細胞単層は薬剤の除去後に可溶化にされ、トルエンを含む同じ容量のシンチレーションカクテルによりPBS内で洗浄して各単層サンプルに連結されたパクリタキセルを測定した。各サンプルの放射標識数は、各サンプルに最初に追加された合計放射標識の僅かとして表わされた。この実験結果は、図5で実証されるように、SF539がタキソール(登録商標)よりもLNに調剤されたパクリタキセル(すなわちEmPAC)を著しく多く内在化することを示した。
【0086】
この実験は前述したように実質的に繰り返され、薬剤に培養後に様々な時間で採取されたことを除いて、細胞は第2の製剤のEmPACで治療された。実質的に、各製剤について同じ量の放射標識化薬剤が各細胞サンプルに加えられた。細胞単層に連結された放射標識化薬剤の大体の数が示されている。さらに、細胞吸収量の動態を推定するために、パクリタキセルの吸収量が薬剤培養時間の関数として分析された。SF539グリオーマ細胞による以前の研究は、吸収量がプラトーに達する前に2時間に渡って増加したことを実証した。これはさらにEmPACとタキソール(登録商標)の双方について観察され、図6で分かるように、この違いはCremophorEL(登録商標)製剤でのパクリタキセルの相対的な不溶性によるものではなかったことを示した。しかしながら、タキソール(登録商標)よりこれらの細胞に連結されたEmPACに著しい多量のパクリタキセルが存在した。
【0087】
EmPACのパクリタキセルまたは脂質混合物が細胞吸収量を飽和させることができるかどうかを判定するために、全ての未標識のパクリタキセルは変更されたが、脂質と放射標識化パクリタキセルの量は一定の状態を保って実験が行われた。図7で分かるように、パクリタキセルの量は細胞吸収量を飽和するように見えるが、これはこの特定の実験から完全には明らかではない。全てのパクリタキセルが変更される一方で、標識化パクリタキセルは一定であるので、全てのパクリタキセルの小さい画分または大きな画分を単に表わしてもよい。パクリタキセルの濃度の増加がさらに粒子の総数を増加するであろう。このため、同じ数の薬剤充填粒子が取り込まれても、少量の標識化パクリタキセルが取り込まれるであろう。
【0088】
続いて、一連の実験が行なわれて細胞吸収量におけるLNの各脂質成分の寄与を確認した。14C標識化コレステロールの追跡によって標識化されたLNサンプルは、1つの成分が組織的にない状態で調製された。LNサンプルは、300μg/mLの脂質と20%のDMSOを用いて調製された。その他の全成分は比例して増加し、失った成分を補った。このサンプルは、2時間SF539ヒトグリオーマ細胞に加えられた。LN粒子を作るためにコレステロールと1:1で混合された単一成分を用いて同じ実験が行なわれた。図8Aと図8Bは共に、コレステロールは細胞吸収量を促進する際にLNの全脂質成分の最も重要な役割を果たすことを確証している。
【0089】
細胞単層に連結された放射標識化パクリタキセルは、パクリタキセルの内在化の結果であると仮定されたが、パクリタキセルが内在化するのではなく、細胞の外部に配置された可能性があった。パクリタキセルが内在化するかどうかを判定するために、A549ヒト肺腫瘍細胞が、2時間EmPACまたはCremophorEL(登録商標)で調剤されたパクリタキセルで治療された。細胞は続いて氷のように冷たいメタノールで固定され、反タキサン抗体(ハワイ州ホノルルのHawaii Biotech社)で染色され、続いて2次抗体が蛍光性Alexa Fluor488分子(オレゴン州ユージーンのMolecular Probes社)に結合された。パクリタキセルが内在化し、微小管に配置されることが図9Aから明らかである。パクリタキセルは生体内で微小管に結合すると知られているので、これはEmPACと同様にCremophorEL(登録商標)に調剤されたパクリタキセルが内在化することを示している。しかしながら、各細胞のエッジをトレースすることによって各サンプルについて多くの領域の細胞の細胞内蛍光強度も定量化され、トレースされた境界内の蛍光強度の定量化した。図9Bで分かるように、EmPACで治療された細胞は、タキソール(登録商標)で治療された細胞のおよそ2倍の蛍光強度を有し、これにより早期の発見を確認することができる。
【0090】
実施例3
EmPACの細胞毒性
このセットの実験の目的は、EmPACの相対的な腫瘍成長抑制と細胞毒性を測定することであった。EmPACは、製造者によって推薦されるように、DMSOで溶解されたパクリタキセルまたはタキソール(登録商標)と比較された。
【0091】
LNに組み込まれたパクリタキセルが細胞を死滅する能力を保持するかどうか判定するために、DMSO保存溶液に溶解されたパクリタキセル単独の細胞毒性が、多くの異種細胞株の等モル量のEmPACと比較された。MTS細胞増殖アッセイが使用されて相対的な細胞毒性を推定した。MTSはテトラゾリウム化合物であり、これは可溶性のホルマザン製品へ生細胞によって生物還元(bioreduced)される。490nmの実行でホルマザン製品の吸光度を使用して相対的な数の生細胞を判定することができる。このように、MTSを用いてパクリタキセル単独の相対的な細胞毒性の潜在能力対EmPACの潜在能力を推定することができる。試験された細胞株は子宮肉腫細胞株MES−SAとその薬剤耐性副株MES−SA−DX5を含んでおり、LNへのパクリタキセルの組み込みが薬物耐性細胞のパクリタキセルの細胞毒性に影響を与えるどうかを調べた。したがって、MES−SA、MES−SA−DX5、A549およびMX−I細胞株は、サブコンフルエントな密度で平板培養された。等モル濃度のパクリタキセル単独とEmPACは、組織培養培地で希釈され、細胞が平板培養された日後に細胞に加えられ、72時間細胞で培養させた。培地が置き換えられ、MTSアッセイは製造者(Promega社、マディソン、ウイスコンシン州)からの指示に従って行なわれた。各細胞株由来の未治療の細胞に対して生存率が正規化に基づいて計算された。図11A〜図11Dの各データポイントは、6つのサンプル±SEMの平均値を表わす。
【0092】
図10Aで分かるように、EmPACは、より低いパクリタキセル濃度でMES−SAとA549細胞内のDMSOのパクリタキセルと比べて、およそ弱い細胞毒性を示したが、さらに図10Cで分かるように、パクリタキセル単独よりも高濃度で大きな画分の細胞を死滅させるように見えた。これはパクリタキセル単独が水性溶媒に非常に不溶性であるという事実によるであろう;その疎水性はパクリタキセルをより高い濃度で凝集させ、細胞へのその進入を妨げる。LNへのパクリタキセルの組み込みによって、パクリタキセルが水性溶媒で安定し、凝集を防止して、高い濃度のパクリタキセルが細胞に入るのを可能にしてもよい。図10Dで明らかなように、EmPACはさらにMX−I乳癌細胞でパクリタキセル単独より顕著に強い細胞毒性を示し、図10Bで分かるように、MES−SA−DX5細胞株へパクリタキセル単独より適度に強い細胞毒性を示した。これらの観察の基礎となるメカニズムは未知であるが、1つの仮説は、薬物耐性細胞株MES−SA DX−5の場合には、EmPACがパクリタキセル単独でするのと同じくらい効率的に細胞の外に汲み出されないということであり、これが脂質に埋められ、少なくとも最初に、LNの成分として扱われるためである。脂質粒子は、特定のメカニズムによって細胞の中に取り込まれ、これは薬剤耐性に基礎をなす細胞機構により影響されないであろう。
【0093】
前述の実験は、EmPAC対CremophorEL(登録商標)を比べるために変更された。この実験で使用されるEmPAC製剤が超音波処理によってTween(登録商標)−80と大豆油がある状態で専用の脂質混合物を可溶化し、続いてこの混合物をブタノール中の超音波処理によって可溶化したパクリタキセルに添加することによって調製された。混合物は、110EH Microfluidics Microfluidizer(登録商標)高圧ホモジナイザ(M−110Yモデル、Microfluidics社、ニュートン、マサチューセッツ州)で顕微溶液化によって処理された。これらのパクリタキセル製剤は薬剤除去の前に1時間SF539グリオーマ細胞に晒した後に比べられ、この薬剤への短期被曝は、薬剤への連続被曝より生体内の抗腫瘍薬への腫瘍細胞被曝に非常によく似ており、パクリタキセルは生体内で1時間以下の生物的に利用可能な半減期を有する(Wiernikら、1987年;Rowinskyら、1990年)。
【0094】
薬剤の除去後、細胞は続いて生存と増殖がMTTによって分析される前に、さらに72時間増殖を許容された。生細胞は、死にそうな細胞または死細胞より強い脱水素酵素活性を有し、このため強いMTT活性レベルを有すると予想されるので、MTTアッセイは生細胞に存在するミトコンドリアの脱水素酵素を利用して細胞の生存率を測定する。各細胞サンプルの生存は、薬剤に晒されなかった各コントロール細胞株に関して画分として計算された。生存率は薬剤濃度の関数としてプロットされ、各曲線は4つのパラメータのロジスティック曲線に適合され、EC50値が計算された。EmPAC対CremophorEL(登録商標)間の統計的な有意差は、スチューデントのt検定によって各薬剤濃度について推定された。図11で分かるように、EmPAC単独は細胞致死と細胞生存に有意な効果がなかったが(データは示されない)、EmPACはタキソール(登録商標)よりグリオーマ細胞に著しい細胞毒性があった。
【0095】
実施例5
マウス腫瘍モデルのEmPACの腫瘍成長抑制
H23ヒト肺腫瘍を皮下に植え込まれたヌードマウスがEmPACまたは等しい投与量のタキソール(登録商標)で治療された場合、等しい投与量のタキソール(登録商標)のパクリタキセルと比べてEmPACによる顕著に強い腫瘍成長抑制があったことが観察された。
【0096】
ヌードマウスはH23肺腫瘍細胞を皮下に植え込まれ、これは薬剤が投与される前の25日間成長させられた。担癌動物は、25、27、29、32、34、36、39、42日にそれぞれ2mLの60μg/mL薬剤と共にIPを注射された。腫瘍容積は、これらの各注射日で測定された。最終の腫瘍容積測定は、腫瘍の植え込み後45日に行われた。
注射された製剤の組成は表8に示される。
表8.H23TGIの動物実験群
【0097】
図12Aで分かるように、第1の薬物注入後20日間に渡って、EmPACで治療された動物の腫瘍は1日で容積が減少したが、タキソール(登録商標)で治療された動物の腫瘍は実験の終わりの恒常的成長過程を再開する前に最初の11日間に腫瘍容積の退縮を示した。LNコントロールで治療された動物または未治療の動物の腫瘍は、研究の全体に渡って恒常的成長を示した。このように、EmPACはタキソール(登録商標)を行ったものより長時間の腫瘍サイズを低減することができた。図12Aのデータは、薬物療法の間の平均腫瘍容積を示すようプロットされた。
【0098】
図12Bに移り、腫瘍退縮率は薬物療法の1日目と最終日との腫瘍容積差を比べることによって求められた。腫瘍退縮の統計的有意差は、タキソール(登録商標)で治療されたマウスと、EmPAC(p<0.0005)で治療されたマウスとの間で示された。各群は、3±SEMの平均を表わす。研究の終りまでに、EmPACで治療された動物の腫瘍は約71%(71.4±2.4%)まで退縮したが、タキソール(登録商標)で治療された動物の腫瘍は約19%(18.7±0.9%)まで退縮した。このため、データはEmPACがタキソール(登録商標)より顕著に強い抗腫瘍活性を有することを示す。
【0099】
EmPACによる腫瘍成長抑制の量を異なる濃度のパクリタキセルと比べるため、H460ヒト肺腫瘍細胞を植え込まれたヌードマウスは、実施例1の第3の製剤より2倍のパクリタキセルで調剤されたEmPACを注射された。タキソール(登録商標)はさらに先のTGI実験で得られた投与量の1乃至4倍投与された。結果は、EmPACが4倍強いタキソール(登録商標)とおよそ同じくらい効果的であることを示す。
【0100】
この実験では、60と137μg/mLパクリタキセルのEmPAC製剤と等量のパクリタキセルが使用され、さらに、最初の第3のEmPAC製剤(すなわち60μg/mLパクリタキセル)で得られた投与量のおよそ4倍のタキソール(登録商標)が、H460担癌マウスに投与された。マウス腫瘍は、先の実験より大きなサイズに成長させられた。動物は、毎週3回、3週間で2日おきに投与され、腫瘍は薬剤の注射の前に測定され、その腫瘍が切断サイズ限界以上に達した動物は自動的に安楽死させられた。経時的で相対的な腫瘍容積が計算され、時間の関数としてプロットされた。T検定が行われて異なる薬剤で治療された動物間に腫瘍成長抑制の有意差があったかどうかを判定した。さらに、生存曲線が生成され、終わりの端点は、治療に関連した原因または切断サイズ限界に達した腫瘍による安楽死による動物死として規定された。
【0101】
不運にも、動物群は無作為化されず、その結果コントロール群の動物は最も小さな腫瘍で開始したが、高用量の薬剤による治療群の動物は治療前に大きな腫瘍で開始した。しかしながら結果は、EmPACが4倍の濃度のタキソール(登録商標)とおよそ同じくらい効果的であることを示した。
【0102】
実施例6
EmPACの薬物動態と生体内分布
IP対IVのEmPACの薬物動態の違い、およびEmPACの生体内分布を測定するために、A549肺腫瘍を植え込まれたヌードマウスは、放射標識化パクリタキセルをそれぞれ含むEmPACまたはタキソール(登録商標)のパクリタキセルの何れかと共にIPまたはIVを注射された。
14C標識化パクリタキセルを含むEmPAC製剤は以下のように調製された:
A)緩衝剤の調製
1)1Lの水に466.1mgのピロリン酸ナトリウムを加えて1mMのピロリン酸ナトリウム溶液を作製する。
2)希リン酸を加えることによってpHを4.0に調整する。
3)0.22μmのPESフィルタによってろ過する。
4)10mLのこの緩衝剤に10μLの10%Tween(登録商標)−80を加える。
B)脂質保存溶液
1)10mgの脂質混合粉末を測定して、10mLのDMSOに溶かして1mg/mLの脂質/DMSO溶液を作製する。
2)透明な溶液が得られるまで超音波で処理する。
C)高温のパクリタキセル:
1)50μLの高温のパクリタキセルを取り込む。
2)80℃の水浴で酢酸エチルを完全に蒸発させる。
D)製剤:高温のパクリタキセル溶液に800μLの脂質/DMSO溶液を加える。完全に混合して撹拌する。この溶液を得て、次いで3.2mLの水性緩衝液に加える。
【0103】
動物は、注射後0(注射直後)、0.5、1、6、または12時間後に安楽死させられた。血液は心臓穿刺によって抜かれ、選択された臓器(例えば腫瘍下の全脳、腎臓、肺、肝臓、胃、脾臓、膵臓、腫瘍、腫瘍の対側部位の筋肉、尿、糞便、全血および腫瘍筋)の組織が採取された。組織と血液は全て処理されて放射標識薬剤の数えた。組織は全て重さを量られて均質化された。組織は小さすぎて用いられる秤(秤は1つの小数位に読み取る)によって正確に重さを量ることができなかったので、用いられる緩衝剤を含む組織ホモジネートが量られた。ホモジネートの部分標本は、全てのホモジネートの画分を測定するためにシンチレーションを数える前に量られた。全ての臓器組織の全ての14C標識化パクリタキセルが測定された。結果は、IP対IVで注射されたある薬剤間の薬物動態に有意差がないことを示している。これらの結果はさらに、EmPAC対タキソール(登録商標)のパクリタキセル間で類似する薬物動態を示す。組織が注射後0.25、0.75、3、6、または12時間に採取された類似する実験は、EmPACとタキソール(登録商標)が実質的に同じ薬物動態プロファイルを有し、その上、組織パクリタキセルレベルが注射後約3時間でピークに達することを示している。さらに、実施例1に記載された第3の製剤へEmPAC製剤を変更する際、EmPAC製剤#3がタキソール(登録商標)のものと同じ薬物動態プロファイルを有することを結果が示している。
【0104】
実施例7
タキソール(登録商標)およびアブラキサン(登録商標)として調剤したパクリタキセルと比較したEmPACとして調剤したパクリタキセルの細胞吸収量
タキソール(登録商標)(CremophorEL(登録商標):エタノール 1:1のパクリタキセル)は、数年間臨床で使用され、肺非小細胞癌と乳癌を含む様々な異なる癌適応症を治療してきた。アブラキサン(登録商標)(HSAで調剤されたパクリタキセルの製剤)は癌治療のFDAによって承認された。この研究の目的は、EmPACがタキソール(登録商標)とアブラキサン(登録商標)と異なるかどうかを判定することであり、各パクリタキセル製剤に1時間晒されたA549ヒト肺癌とMDA MB 435乳癌細胞株を用いる生体外の短期間の露出実験で、パクリタキセルの細胞吸収量に影響を及ぼした。次いで細胞が固定され、パクリタキセル対抗抗体、続いて蛍光に標識化された第2抗体によって染色された。細胞内のパクリタキセルは、細胞内蛍光染色によって検出できるように、エピ蛍光顕微鏡によって視覚化された。蛍光に標識化された細胞のデジタル像は、冷却されたCCDカメラで取り込まれた。標識化された細胞の蛍光強度はデジタル画像ソフトウェアを用いて定量化され、各実験群の細胞の平均細胞内蛍光強度が比べられた。
【0105】
材料と方法
細胞株
米国培養菌保存施設(ATCC)から購入されたA549ヒト非小細胞肺腫瘍細胞は、10%のウシ胎児血清(FCS)と共にロズウェル公園記念研究所(RPMI)1640媒体で培養されて、1:3乃至1:8の比率で二次培養された。
【0106】
ATCCから購入されたMDA MB 435ヒト乳癌細胞は、10%のウシ胎児血清(FCS)と共にロズウェル公園記念研究所(RPMI)1640媒体で培養されて、1:3〜1:8の比率で二次培養された。
【0107】
被験物質
タキソール(登録商標)(ロット#729537)は、オハイオ州ベッドフォードのBen Venue Laboratories社から得られた。
【0108】
EmPAC(バッチ#T343)は、0.3mLベンジルアルコールと;5.6gの大豆油、6.61gのTween(登録商標)80を含む超音波処理された混合物および123.23mgの脂質混合粉末と;300mLのHPLCグレード水と、に超音波処理によって溶解された90.42mgのパクリタキセルを組み合わせ、1250の棒材で高圧均質化により乳化することによって調製された。次いで10gのデキストロースが200mLのこの溶液に加えられ、溶かすために超音波処理され、0.22μMのフィルタによって無菌ろ過された。得られた製品は、2.0%の大豆油と、2.2%のTween(登録商標)80と、400μg/mLの脂質混合粉末と、0.1%のベンジルアルコールと、300μg/mlのパクリタキセル(ロット#28042/kl)とを含んだ。
【0109】
GlobalRx社(エフランド(Efland)、ノースカロライナ州)から購入された注射可能な懸濁液のアブラキサン(登録商標)(ロット#200495、期限2007年4月;Abraxis BioScience社)は、100mgのパクリタキセルと900mgのHSAを含む粉末として提供された。次いでアブラキサン(登録商標)粉末は、5mg/mLのパクリタキセルと45mg/mLのHSAを含む懸濁液を生成するために20mLの無菌PBSを加えることによって再構成された。再構成されたアブラキサン(登録商標)は、安定性の消失を回避するためにパッケージ説明書に従って24時間以内で実験に利用された。
【0110】
試薬
1)ミリQ水
2)ベンジルアルコール、シグマ、ロット#02748PC
3)大豆油、シグマ、ロット#074k0169
4)Tween(登録商標)80、シグマウルトラ、ロット#073K00641
5)パクリタキセル(研究開発グレード)、インデナ(Indena)、ロット#28042/kl
6)デキストロース(無水粉末)、フィッシャー、ロット#024291
7)エマルシファン(Emulsiphan)脂質混合物#003/05
【0111】
抗体
1)マウス抗パクリタキセルIgG。カタログ番号TA12;ハワイバイオテクノロジー社、アイエーア、ハワイ州。
2)AlexaFluor488結合ニワトリ抗マウスIgG。分子プローブ社、ユージーン、オレゴン州。
【0112】
材料を染色する追加抗体
1)Nunc Lab Tek Cell チャンバスライドシステム。Nalge Nunc International社、ロチェスター、ニューヨーク州。
2)トリス緩衝食塩水(TBS)。Boston Bioproducts、ウスター(Worcester)、マサチューセッツ州
【0113】
研究デザインと手順
実験は、調査者が各被験物質の正体を知らされていないように設計された。被験物質は新しいチューブに配置され、実験に直接関与しない人によってラベルが張り替えられた;結果が計算された後、被験物質の正体が明かされた。
【0114】
>50%の密集度に成長させられた細胞について、媒体が除去され、細胞単層が5mLのPBSの添加によって簡単に洗浄され、続いて吸引された。2mLのトリプシンエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が各フラスコに加えられ、フラスコは5分間組織培養培養器に配置された。10mLの完全培地が酵素反応を停止させるために加えられ、細胞は血清ピペットにより再懸濁を繰り返すことによって分解された。10μLの細胞が10μLの0.4%トリパンブルー溶液に加えられ、混合され、この細胞溶液の〜10乃至20μLが血球計算器のチャンバに配置された。生細胞の数は、100X全体倍率で四角形の血球計算器チャンバのトリパンブルーを除外した細胞の数を数えることによって測定された。
【0115】
必要とされる細胞の容積は下記式によって測定された:
細胞の容積=(Ax104細胞/mL)(mLに必要な細胞のVtotal)÷(2df)(B細胞/mL)
ここで:dfは希釈比であり;Aは血球計算器で数えられた細胞の数であり;Bは実験に必要な細胞/mLの濃度である。
【0116】
A549肺腫瘍とMDA MB 435乳癌細胞は、4×104細胞/cm2で8つのウェルチャンバスライド内に培養された。細胞は、被験物質が加えられる前に24時間夜通し培養させられた。
【0117】
被験物質(各々2.5μMのパクリタキセルを含む)および被験物質のないコントロール完全培地が二重のチャンバスライドウェルに加えられ、培養哺乳動物細胞(5%CO2。95%02;37℃)を用いて標準状態で1時間培養された。培養期間の終わりに、細胞サンプルは1mLのPBSの添加によって暖かいPBSにより一度洗浄され、続いて暖かいPBSを吸引した。3mLの氷冷のメタノールが各組織培養ウェルに加えられ、細胞は15分間〜20℃でメタノール内で固定された。スライドは染色まで0.02%のアジ化ナトリウムを含むPBSに配置された。
【0118】
細胞サンプルは1時間pH8.0のTBS内の10%の正常ニワトリ血清(NCS)で遮断された。遮断後に溶液が除去され、細胞は、1時間および室温で2%のNCSとマウス抗パクリタキセルを1:100の希釈で含むTBSで培養された。一次の抗体培養の終わりに、細胞サンプルが洗浄ボトル内のTBSで簡単にすすがれ、チャンバスライド全体がTBSを含むコプリン染色びんに浸された。チャンバスライドの洗浄は、10分間撹拌プレートの撹拌棒によりTBSを攪拌することによって達成された。チャンバスライドは3つ変更したTBSで洗浄された。細胞は、室温で30分間Alexa Fluor488に結合した2%NCSとニワトリ抗マウスIgGを1:100の希釈で含むTBSにより染色された。第2の抗体培養の終わりに、細胞は洗浄ボトル内のTBSで簡単にすすがれ、上述したように洗浄された。染色された細胞は、14.3μMの4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール,二塩酸塩(DAPI)を含むFluoromountG封入剤(Southern Biotechnology社)により取り付けた細胞であり、カバーガラスで覆われた。
【0119】
スライドと細胞は、抗パクリタキセルのAlexa Fluorの第2染色を視覚化するために、励起480nmと出射520nmを用いるエピ蛍光顕微鏡で観察された。DAPIの染色体染色は、励起358nmと出射461nmのフィルタを用いて視覚化された。画像は、Zeiss AxiocamHRデジタルカメラとAxiovision画像収集および解析ソフトウェアを用いて得られた。パクリタキセル染色とDAPI染色の画像は、Zeiss AxiocamHRデジタルカメラにより各細胞領域について同時に取り込まれた。細胞領域のパクリタキセル染色の細胞内蛍光強度は、Axiovisionソフトウェアを用いることによって測定された。4乃至19個の細胞を各々含む細胞の8乃至11の重複しない領域の画像は、各サンプルの二重のウェルの双方から無作為に取り込まれた。全てにおいて、合計123乃至147個の細胞が各細胞サンプルについて分析された。細胞周囲長は、マウスカーソルで細胞のエッジをデジタルでトレースすることによって各細胞について手動で規定された。
【0120】
計算と統計的分析
蛍光強度と細胞面積の計算と統計的分析データはExcelのスプレッドシートにコピーされ、個別細胞の面積当たりの平均蛍光強度がExcelで計算された。
【0121】
平均細胞蛍光強度を計算するために、下記式が用いられた:
[(I1/A1)+(I2/A2)+(I3/A3)+...(In/An)]/n=細胞面積当たりの平均蛍光強度
ここで:Iは、細胞周囲長の手動トレースによって規定された各細胞面積の強度であり;Aは、各規定された細胞面積の面積であり;nは、サンプリングされた細胞の数である。
【0122】
平均細胞内パクリタキセルレベルは、各治療されたサンプルの面積当たりの平均蛍光強度によって測定され、異なる被験物質で治療された細胞間で比較された。
【0123】
EmPAC−、タキソール(登録商標)−、アブラキサン(登録商標)−治療細胞の平均蛍光強度値の統計有意差は、スチューデントのt検定を用いて比較された。
【0124】
結果
EmPAC、タキソール(登録商標)、またはアブラキサン(登録商標)で各々治療された108乃至147個のA549細胞の平均蛍光強度が測定された。各被験物質で治療したA549細胞サンプルの細胞当たりの平均蛍光強度は、表9に示されている。被験物質なしで治療された細胞は、特定の染色を示さなかった(データは示されない)。このため、未治療の細胞の蛍光強度は測定されなかった。さらに、これらはパクリタキセルで治療する際に形状が丸くなり、これが細胞質と細胞周辺を視覚化するのを困難にしたので、MDA−MB−435細胞の蛍光強度は測定されなかった。
表9.様々なパクリタキセル製剤に1時間晒されたA549細胞の細胞内蛍光性パクリタキセル
各群につき10乃至12の領域で109乃至147個の細胞より測定された。
表10.A549腫瘍細胞のパクリタキセル製剤の細胞面積当たりの細胞内蛍光性パクリタキセル強度を比較するステューデントt検定の結果
【0125】
図13で分かるように、EmPAC、タキソール(登録商標)、またはアブラキサン(登録商標)で治療された細胞は全て、微小管の典型的な核周囲の繊維模様を有した蛍光染色を示した。これは、パクリタキセルが微小管に貪欲に結合し、最初に細胞の微小管に局在化したので、抗パクリタキセル染色が特異的であったことを示している。
【0126】
スチューデントのt検定は、細胞面積値当たりの平均蛍光強度によって示されるように(表9および表10;EmPACとアブラキサン(登録商標)間、およびタキソール(登録商標)とアブラキサン(登録商標)間の比較はP<0.0001)、EmPACまたはタキソール(登録商標)の何れかで治療された細胞がアブラキサン(登録商標)のものと比べて著しく強い平均細胞内パクリタキセルレベルを有することを示した。この違いは統計的な有意値(P=0.08)以下であったが、EmPACがタキソール(登録商標)より適度に強い細胞内パクリタキセルレベルを持っていたこととが分かった(表9、116.7±2.0および112±1.8、それぞれ)。
【0127】
議論/結論
この研究の結果は、EmPACとタキソール(登録商標)製剤の双方がアブラキサン(登録商標)を行ったものよりパクリタキセルの細胞吸収を著しく多くすることができることを示している。これらの結果は、これらのパクリタキセル製剤による細胞増殖阻害に関する以前の研究の結果と一致しているように見え、これは、1時間細胞に一時的に晒された場合にEmPACとタキソール(登録商標)がアブラキサン(登録商標)と比べてより多くの細胞増殖阻害活性を持つことを示した。これらの3つの製剤が同じ活性成分を有するので、これらの3つの製剤の違いについて1つの可能性のある説明は、それらの媒体が原因であるであろう。この場合、アブラキサン(登録商標)の媒体が、パクリタキセル(EmPACとタキソール(登録商標)の媒体と比べて、細胞の吸収量を抑制する可能性がある。
【0128】
この研究による結果は、タキソール(登録商標)で調剤されたものとEmPACで調剤された放射標識パクリタキセルの細胞の吸収量を比較した実施例2の結果と一致している。しかしながら、実施例2の結果は、タキソール(登録商標)で治療された細胞のパクリタキセル吸収量と比べて、EmPACで治療されたA549細胞のパクリタキセル吸収量は著しく多いことを示した。多いが、タキソール(登録商標)で治療された細胞と比べてEmPACで治療された細胞のパクリタキセル吸収量が多いことがこの研究で観察されたが、この違いは統計的な有意値以下であった。この結果の違いは、EmPAC製剤が2つの研究で異なっていたという事実によるであろう。
【0129】
参照
Ibrahim NK,Desai N,Legha S,Soon−Shiong P,Theriault RL,Rivera E,Esmaeli B,Ring SE,Bedikian A,Hortobagyi GN,およびEllerhorst JA.2002年 ABI−007 Cremophor無し タンパク質安定化 パクリタキセルのナノ粒子製剤のフェーズIおよび薬物動態研究 Clin.Cancer Res.8:1038−1044。
Singla AK、Garg AおよびAggarwal D.2002年 パクリタキセルとその製剤 Int.J.Pharm.235:179−192。
【0130】
本発明は、癌細胞と癌組織を治療する抗癌剤を含む治療薬と診断薬を運ぶ組成形態でのデリバリシステムに向けられていることが理解されるであろう。したがって、全抗癌剤は本発明の範囲内であり、同様に異常な脂質代謝と脂質の高い吸収量を示す全病変組織と異常細胞は、癌細胞を含み、この治療薬によって治療されるであろう。
【0131】
前述の議論は、本発明の例示的実施形態を単に開示および記載するものである。当業者は、以下の特許請求の範囲に規定されている本発明の趣旨および範囲から外れずに、様々な変更、修飾および変形を行ってもよいことをこの議論および添付した特許請求の範囲から容易に理解するであろう。さらに、例示的実施形態が本書に記載されているが、他の当業者は本発明のその他の設計または使用に気づくであろう。したがって、本発明はその例示的実施形態に関して記載されているが、デザインおよび使用の双方における多くの変形が当業者に明らかであり、本出願が任意の適合またはその変形を包含するように意図されていることを理解されるであろう。よって、本発明は特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることを明確に意図する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療薬と診断薬に関し、特に患者への導入に適しており、腫瘍細胞を含む過剰増殖によって特徴づけられた細胞内へ活性選択剤の濃度を促進可能な脂質−油−水のナノエマルジョンの微小管相互作用薬の製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍内およびこれらの微環境内の薬剤分布の役割は十分に研究されていない。現在、有効性を知るために、最も効き目のある薬剤でさえ高用量を投与して拡散と組織分布を促進しなければならない。しかしながら、腫瘤内の薬剤濃度を高めることが常に細胞の薬剤濃度あるいは細胞内の標的への到達能を高めるとは限らない。実際に、ある薬剤はポリマ結合、リポソームカプセル化、または固体脂質ナノ粒子製剤によって腫瘤内濃度を高めるかもしれないが、これらは事実上細胞の吸収量と分布を阻害するであろう。さらに、拡散によって腫瘍浸透を促進するために高用量投与することは一般に高い死亡率の癌治療に関連する副作用をもたらす場合がある。このため、腫瘍組織への薬剤浸透を改善し、高い安全性と有効性の側面を同時に提供しながら腫瘍細胞内のその濃度を高めるドラッグデリバリ技術を考案することが望ましい。腫瘍内への薬剤の受動的な蓄積について種々のアプローチが探究されているが、活発な腫瘍細胞の吸収量の促進について有効な技術はほとんどない。
【0003】
脂溶性薬剤は容易に細胞膜に浸透し、細胞内へ輸送されるであろう。癌細胞などの過剰増殖によって特徴づけられた細胞は、一般に異常な脂質代謝を示し、脂質と脂肪酸の非常に高い優先的な吸収によって特徴づけられる。このように癌に関して脂質は、膜構造、成長および転移、信号伝達、ならびに輸送過程に不可欠な役割を果たすことが分かった。
【0004】
腫瘍血管に特有の漏出性の特徴によって引き起こされ、脂質粒子、リポソーム、人工ナノ粒子、および他の高分子剤の強化された浸透性と貯留(EPR)効果として知られている現象は固形腫瘍で一般的であり、例えばポリマ結合抗癌剤のより選択的なターゲティングと腫瘤蓄積について探究されてきた。ポリマ小胞、リポソーム、および固体ポリマ粒子あるいは脂質ナノ粒子などの封入剤の使用は、それぞれ様々な組成、製剤および構造で調製され、様々な生理学的条件下で投与されており、先行技術で報告されてきた。しかしながら、これらの作用薬は腫瘍に受動的な蓄積を可能にするに過ぎない。さらに、これらの作用薬はしばしば細網内皮系の広範囲の共蓄積によって循環系から急速に追い出され、しばしばこれらの作用薬の使用は細胞毒性に関連し、免疫反応を増強する。
【0005】
複数のレセプタタイプとレセプタサブタイプ、輸送タンパク、および脂質ラフト現象は、同じ疾病を持つが変質した遺伝的特徴を持つ患者間でさえ、癌細胞内の脂質吸収量に関係する可能性があることを研究が示した。天然のレセプタ配位子を模倣し、癌細胞の標的と薬剤吸収量を増加する脂質型ナノ粒子またはHDLもしくはLDL型薬物担体が、様々な治療薬と共に調製されているが、癌治療の能動的な腫瘍細胞の薬剤吸収を促進する最適化された製剤が欠けている。
【0006】
参照により本書に組み込まれるD’Arrigoの米国特許第4684479号明細書および第5215680号明細書は、ガスあるいは空気で満たされた脂質コートマイクロバブル(LCM)の製剤と、この製造方法および使用方法について記載しており、超音波法とドラッグデリバリの造影剤として用いられる。LCMの製造プロセスは、特定の鎖長で一定比率の飽和グリセリドとコレステロールエステルなどの非イオン脂質の水性懸濁液の単純な機械的振動に基づいている。全ての場合において、加えられた大部分の脂質(99%)は凝集または沈殿し、ろ過による材料の追加損失を1%以下生じる。さらに、これらの人工LCMはとても長寿命であることが分かり、6ヶ月以上生体外で持ちこたえた。さらに、少ないろ過収量にも拘わらず、LCMは、腫瘍組織の微小循環系の有窓毛細血管壁を通過するのに十分に小さく十分に柔軟である。特に注目は、げっ歯類の脳腫瘍細胞内やイヌの自発性腫瘍内のLCMの高い選択性、温度依存性、明らかな飽和吸収性であり、癌細胞のある脂質の自然吸収量によく似ていると考えられる。しかしながら、現在まで患者投与の有害な副作用を存在しないレベルまで最小化するLCM技術を利用した医薬品化合物の有効な製剤はなかった。
【0007】
パクリタキセルはタキサンとして知られている薬剤の種類の要素であり、北米西岸イチイ木、セイヨウイチイ、および近縁種の樹皮から最初に分離される。アレルギ反応は製剤賦形剤で観察されたが、タキサンは卵巣癌、胸部癌、非小細胞肺癌、および頭頸部癌などの様々な癌の治療で有用であることが分かった。タキサンを投与する際の難しさは、この薬剤が一般に水に溶けないということである。従って、パクリタキセルはCremophorEL(登録商標)(ポリオキシエチレンヒマシ油)とエタノールとの1:1の混合物内に調剤され、タキソール(登録商標)(Bristol−Myers Squibb社)を生成した。外部に結晶化する総ての薬剤を除去する直列型のろ過と共に、約12時間安定する適切な担体の再構成が必要である。タキソール(登録商標)は神経毒性を示し、知覚障害を引き起こし、時には患者の運動神経障害を伴った。CremophorEL(登録商標)は、それ自体深刻な副作用がないので神経障害の一部の要因である。
【0008】
安定した脂肪乳剤にパクリタキセルを製剤する試みも同様に失敗した。この薬剤は、大豆油を最初に含むイントラリピッド(登録商標)、または大豆とベニバナ油との混合物を含むリポシン(登録商標)などの脂肪乳剤に溶けないことが報告されている。大豆またはベニバナ油の何れかでパクリタキセルを加熱しても、あるいは超音波処理しても相当量の薬剤が溶解せず、均質化ステップ中の脂肪乳剤へのパクリタキセルの添加は一様に期待外れの結果に直面する。パクリタキセルを最大15mg/mL組み込む乳剤は、トリアセチン、L−αレシチン、ポリソルベート80、プルロニックF−68、オレイン酸エチルおよびグリセロールと共に調剤された。しかしながら、これらの乳剤は非常に有毒で不安定である。パクリタキセルはさらに、LCM製剤のCremophorEL(登録商標)とエタノールとに結合された。しかしながら、LCMの腫瘍吸収の選択性はドラッグデリバリの観点から魅力的であるが、先行技術によれば製造歩留まりと薬剤積載能力が低すぎて実用的でない。パクリタキセルを持つCremophorEL(登録商標)とエタノールの使用はさらに、恐らくこの製剤の毒性の一因となっている。
【0009】
さらに、生産方法が複雑であり、条件の小さな変更が粒子径と性能特性とに有意差をもたらす場合がある。典型的なアプローチは、高せん断力均質化と超音波、高圧均質化、ホットホモジナイゼーション、コールドホモジナイゼーション、および溶媒乳化蒸発を含む。無菌ろ過または放射線による滅菌はさらに複雑かもしれない。このように、エタノールと水溶液への薬剤の添加、続いて高せん断力均質化によるLCMの薬剤積載量と脂質溶解度を高める試みは、全く薬剤を含まない安定性に乏しくガスのない粒子の製剤をもたらす。
【0010】
腫瘤内の蓄積と細胞内在化を同時に促進するが、健康な組織内の蓄積を制限する適切な輸送媒体に治療薬を投与することが非常に望ましい。より有効なデリバリにより、僅かな副作用または低減した副作用で同じ治療結果またはより良好な治療結果を達成しながら、全身の健康な組織の治療薬の濃度が減少されてもよい。固有レベルの腫瘍細胞選択性を持つ作用薬のこのデリバリは、さらなる利点を提供するであろう。さらに、単一の腫瘍型に限定されないが、腫瘤内の選択的な蓄積と種々の癌細胞型への細胞内在化とを可能にする輸送媒体が特に望ましく、より安全でより有効な癌治療を可能にするであろう。治療薬の高い積載能力を可能にする輸送媒体はさらに、この分野で著しい進歩となるであろう。
【0011】
このため、安定的で、容易に調製され、生体適合性があり、効果的な製剤の微小管相互作用薬であって、腫瘍細胞への吸収を促進し、さらに最小限の副作用を示すパクリタキセルなどのタキサンを含んだ微小管相互作用薬に対する明らかな要望がある。
【0012】
本発明の目的と産業上の利用可能性
従って、本発明の目的は、癌などの細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態、および症候群の治療または診断で用いられる医薬組成物であって、腫瘍細胞への迅速で高い選択性と優先的な吸収性を示す医薬組成物を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、癌などの細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態、および症候群の治療または診断で用いられる医薬組成物であって、投与の際に最小限の副作用を引き起こす医薬組成物を提供することである。
【0014】
また本発明の更なる目的は、癌などの細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態、および症候群の治療または診断で用いられる医薬組成物であって、最小限の費用で容易に製造することができ、可能な限り長期間に渡って貯蔵することができる医薬組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0015】
これらの目的を達成するため、本発明は、人を含む温血動物の細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態、もしくは症候群またはこれらの症状を治療、診断、または予防するのに有用な医薬組成物であって、以下に規定される脂質粒子であって、水相内に一様に分散されて、癌細胞を含む異常細胞内に選択的または優先的に内在化することが可能な脂質粒子で構成された脂質ナノエマルジョンと;前記脂質ナノエマルジョンに連結された少なくとも1つの有効量の治療薬または診断薬と;薬剤的に受容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0016】
この脂質粒子は少なくとも1つの非二層形成脂質をそれぞれ具える。この適切な脂質粒子は、癌細胞を含む過剰増殖によって特徴づけられた異常細胞内に治療薬または診断薬の標的されたデリバリと濃度を著しく高めることが分かっており、所望の治療効果を達成するのに必要な投与量と投与頻度を減少または少なくとも維持しながら治療効率と生体利用性を改善した。さらに、ナノエマルジョンは拡張された持続時間の優秀な物理的および化学的な安定性を示し、これによって安定的にすぐに投与できる形態で医薬組成物の販売前包装を非常に容易にし、さらにこれによって類似活性剤を含む先行技術の組成で現在実施されるような病床での希釈と製剤に関連した問題と不便さをなくしている。
【0017】
この脂質粒子は薬剤的に活性な治療効果のある微小管相互作用薬を自身に連結した。適切な微小管相互作用薬は、限定されないが、例えばパクリタキセルなどのタキサンと;エポチロンと;例えばビンクリスチンなどのビンカアルカロイドと;エリュテロビンと;ジスコデルモリドと;ドラスチンと;コルヒチンと;コンブレスタチンと;フォモプシンAと;ハリコンドリンBと;スポンギスタチン1と;サルコジクチンと;ラウリマリドと;これらの誘導体、類似体、同属種および前述した各作用薬の組み合わせとを含む。微小管相互作用薬は、過剰増殖した細胞の成長を止めるか、または少なくとも中断するのに十分な量で存在する。
【0018】
本発明の更なる態様では、人を含む温血動物の癌を含む細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態または症候群を診断、治療または予防する方法であって、本書で開示された有効量の医薬組成物を温血動物に投与するステップを含む方法が提供される。
【0019】
また本発明の更なる態様では、本書で開示された医薬組成物を調剤する方法であって、a)少なくとも1つの非二層形成脂質を少なくとも1つの有効量の診断薬または治療薬と混合して脂質部を得るステップと;b)脂質部を水相に加えて分散を得るステップと;c)分散を高せん断力の条件下で撹拌して少なくとも1つの非二層形成脂質を十分に分散し、脂質粒子で構成された脂質ナノエマルジョンを形成するステップと、を含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下の図面は本発明の実施形態の例示であり、明細書と特許請求の範囲全体に含まれるアプリケーションの範囲を限定するよう意図されていない。
【図1】図1は、本発明に係る20%のDMSOに10%のパクリタキセルを充填した脂質粒子の粒径分布とゼータ電位を示す図である。
【図2】図2は、ショ糖密度の研究におけるパクリタキセル充填脂質粒子の溶解率をプロットするグラフによって本発明に係る脂質粒子へのパクリタキセルの組み込みを示す図である。
【図3】図3Aおよび図3Bは、本発明に係る細胞の脂質粒子吸収量を蛍光活性化細胞分類によって定量化することができることを示すグラフである。
【図4】図4A−図4Dは、HT−29結腸腫瘍細胞とSF−539肺腫瘍細胞と比べた腫瘍細胞株による本発明に係る細胞の脂質粒子吸収量を示すグラフである。
【図5】図5は、CremophorEL(登録商標)で製剤されたパクリタキセルより本発明に係るある特定の混合物の脂質粒子で調剤されたパクリタキセルを腫瘍細胞が大量に取り込むことを示すグラフである。
【図6】図6は、LNとCremophorEL(登録商標)の双方を2時間薬剤培養後にパクリタキセルの細胞吸収量がプラトーに達したことを示すグラフである。
【図7】図7は、パクリタキセルの量が本発明に係る脂質粒子の細胞吸収量に対して飽和しているかどうかを測定する実験結果を示す図である。
【図8】図8Aおよび図8Bは、コレステロールが本発明に係る脂質粒子の細胞吸収量の重大な成分であることを示すグラフである。
【図9】図9Aおよび図9Bは、CremophorEL(登録商標)内のパクリタキセルより本発明に係る脂質粒子内のパクリタキセルが多く内在化することを示すグラフである。
【図10】図10A−図10Dは、パクリタキセル単独対本発明に係る脂質粒子内のパクリタキセルの細胞毒性を示すグラフである。
【図11】図11は、CremophorEL(登録商標)内に製剤された場合より本発明に係る脂質粒子内に調剤された場合にパクリタキセルがより強い細胞毒性を有することを示す図である。
【図12】図12Aおよび図12Bは、CremophorEL(登録商標)内に調剤された場合により本発明の脂質粒子内に調剤された場合に、パクリタキセルが著しく強い抗腫瘍活性を有することを示すグラフを示す。
【図13】図13は、EmPAC、アブラキサン(登録商標)、またはタキソール(登録商標)により治療され、パクリタキセル特異抗体で染色されたA549細胞の代表的な画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は一般に、温血動物の細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態もしくは症候群またはこれらの症状を治療、診断または予防するための医薬品組成物に向けられている。この動物は、癌を含む細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病およびその他の病的状態および症候群に罹患しているヒト、ウマ、ウシ、イヌおよびネコを含む家畜などの哺乳類クラスを含む。本発明の医薬組成物は、脂質粒子で構成されたナノエマルジョンを含み、以下で規定されるように、少なくとも1つの治療用または診断用の微小管相互作用薬に操作的に連結され、これに対して脂質粒子が高い充填能力と、薬剤的に受容可能な担体または賦形剤を有し、これによって腫瘍などの異常細胞と病変組織への選択的なデリバリと有効濃度とに特に適切な脂質粒子を生成する。
【0022】
ナノエマルジョンの脂質粒子は、腫瘍細胞と腫瘍組織とを含む異常細胞と病変組織への高い受動的な蓄積と能動的な内在化の双方を容易にするよう構築される。脂質粒子が病変組織の血管領域に受動的に蓄積するとき、脂質粒子は能動的な代謝吸収によってこれらの細胞へ取り込まれる。このように、本発明の脂質粒子は、腫瘍と癌細胞とを含む過剰増殖によって特徴づけられた細胞による吸収と内在化を選択的かつ優先的に標的とした輸送媒体を提供する。本書で使用される「内在化」とは、脂質粒子が細胞によって能動的に取り込まれることを意味する。粒子の治療薬または診断薬の高い充填能力と結合されたこの高い内在化レベルは、この標的に有効量の治療薬または診断薬を提供することによって、これらの標的の治療または診断に有力な媒体を提供し、これによって成長、誘導性分化の停止、または細胞の死滅を含む治療上の有益な効果を誘導する。
【0023】
従って本発明の脂質粒子は、異常細胞と病変組織への治療薬のデリバリを強化するだけでなく、特に先行技術のデリバリシステムと比べて所望の効能を達成するのに必要な治療薬の量を減少する。本発明の脂質粒子は、拡張された時間に渡って物理的および化学的に非常に安定的であり、従って先行技術のデリバリシステムで一般に示される望ましくない沈殿、凝集または不溶による治療薬または診断薬のロスを最小化する。さらに、これらの脂質粒子はその他の長所を示し、これは制御された放出と;強化された薬剤安定性と;正の薬剤充填能力と;疎水性薬物との良好な互換性と;相対的に低い生体有毒性と;低い有機溶媒含有量とを含む。また、本脂質粒子は調製および投与するのが相対的に簡単で便利である。
【0024】
本書で用いられるように、用語「脂質粒子」は一般にナノサイズの任意の脂質を含む構造を包含するよう意味し、これはナノエマルジョンの一部を形成する実質的に無傷の粒子である。用語「実質的に無傷」とは、リポソームと対比されるとき、膜がない状態で粒子がその形状を維持することをいう。この脂質粒子は少なくとも1つの非二層形成脂質で構成される。
【0025】
脂質二層構造または脂質二層配置は一般に、親水性端子(極性の頭部)と疎水性端子(非極性の尾部)を有するある種類の脂質によって形成され、水溶液中の脂質分子の2つの対向層に自己組織化する能力および/または傾向を示す。脂質分子の2つの対向層が整列されてこれらの疎水性端子面は互いに対面して油状コアを形成するが、これらの親水性端子面は二層構造の何れかの側の水溶液に対面する。本発明では、用語「非二層形成脂質」は、水溶性の環境で脂質二層構造または脂質二層配置を形成するこの性能および/または傾向を欠く脂質を包含している。非二層形成脂質の実施例は、弱極性の脂質を含み、好ましくは実質的に非極性または中性である脂質を含む。本発明のより好適な脂質は中性脂質である。
【0026】
本発明の脂質粒子は、米国特許第4684479号明細書と第5215680号明細書に記載されたガス含有マイクロバブルと区別され、例えば参照により本書に全て組み込まれる米国特許第6565889号明細書と第6596305号明細書に記載されたリポソームと構造上区別される。特に脂質粒子は、生理学的に受容可能である非二層形成脂質の混合物によって形成され、例えばリン脂質を含む帯電脂質または極性脂質がある状態で少なくとも実質的に遊離する。非二層形成脂質の好適例は、飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸のグリセロールモノエステルと;飽和脂肪族アルコールのグリセロールモノエステルと;ステロール芳香族酸エステルと;ステロールと;テルペンと;胆汁酸と;胆汁酸のアルカリ金属塩と;脂肪酸のステロールエステルと;糖酸のステロールエステルと;糖酸のエステルと;脂肪族アルコールのエステルと;糖質のエステルと;脂肪酸のエステルと;糖酸と;サポニンと;サポゲニンと;グリセロールと;脂肪酸のグリセロールジエステルと;脂肪酸のグリセロールトリエステルと;脂肪族アルコールのグリセロールジエステルと;脂肪族アルコールのグリセロールトリエステルと;これらの組み合わせと、から選択されたものを含む。
【0027】
本発明の実施形態では、脂質粒子は非二層形成脂質の選択群の混合物を最初に形成することによって調製され、これは以下に記載されたサイズを持つ脂質粒子であって、標的の病変組織と異常細胞に適用されたときに高い内在化レベルを促進する脂質粒子を提供する。脂質混合物は一般に、
a)約9乃至18の炭素原子を含むカルボン酸のグリセロールモノエステルと、約10乃至18の炭素原子を含む脂肪族アルコールとから成る群から選択された少なくとも1つの第1要素と;
b)ステロール芳香族酸エステルから成る群から選択された少なくとも1つの第2要素と;
c)ステロール、テルペン、胆汁酸および胆汁酸のアルカリ金属塩から成る群から選択された少なくとも1つの第3要素と;
d)約1乃至18の炭素原子を含む脂肪酸のステロールエステルと;糖酸のステロールエステルと;約10乃至18の炭素原子を含む糖酸と脂肪族アルコールのエステルと;約10乃至18の炭素原子を含む糖質と脂肪酸のエステルと、糖酸と、サポニンと;サポゲニンとから成る群から選択された少なくとも1つの任意の第4要素と;
e)グリセロールと、約10乃至18の炭素原子を含む脂肪酸のグリセロールジエステルまたはグリセロールトリエステルと、約10乃至18の炭素原子を含む脂肪族アルコールとから成る群から選択された少なくとも1つの任意の第5要素と、を含む。
【0028】
上記に記載された脂質混合物は要素(a)乃至(c)の存在を含むに過ぎないが、脂質粒子のサイズの長期安定性と均一性が、これら2つの任意の要素の存在によって理論上強化されるので、要素(d)および/または(e)を組み込むほうが好適である。
【0029】
本発明の好適な実施形態では、本発明の脂質粒子を形成する脂質混合物を構成する5つの要素(任意の2つの要素を含む)は、それぞれ(a):(b):(c):(d):(e)が(1−5):(0.25−3):(0.25−3):(0−3):(0−3)の重量比で結合される。
【0030】
脂質混合物の第1要素は、約10乃至18の炭素原子を含む飽和カルボン酸のグリセロールモノエステルを含むよう記載されたが、限定されないが9−炭素オレイン酸またはエライジン酸などの約9乃至18の炭素原子を含むモノカルボン酸またはポリ不飽和カルボン酸のグリセロールモノエステルも脂質混合物の構造に有用であると考えられる。
【0031】
脂質混合物の要素の大きさは、限定されないが、デリバリの標的の細胞および/または組織の種類と、充填される治療薬または診断薬と、治療薬または診断薬の所望の投与量と、用いられる薬剤的に受容可能な担体と、投与形態と、その他の賦形剤または添加剤の存在などを含む幾つかの因子に依存して変更してもよいことが理解されるであろう。さらに、標的の病変組織と異常細胞によって脂質粒子を選択的に内在化させることができる因子は、脂質混合物の組成と得られる脂質粒子の構造だけでなく以下に記載される粒子のサイズと分子量も含む。
【0032】
本発明の脂質粒子は所望の粒径分布を維持しており、好ましくは、粒子の主要部分は約0.02乃至0.2μ(ミクロン)、好ましくは0.02μ乃至0.1μの範囲の平均粒子径を有し、上記または以下の範囲に留まる少量の粒子と最大約200nmの範囲しかない幾つかの脂質粒子とを変更する。本発明の脂質粒子で達成可能な粒子径範囲はさらに、拡張された時間に渡って強化された物理的および化学的安定性と、望ましくない凝集と薬剤沈殿の実質的な減少とへ導く。さらに、この範囲は癌の治療に特に適しており;より大きな粒子は他の利用(例えば、他の種類の細胞または組織のターゲティング)に適合されてもよい。本書で提供される範囲は、使用された脂質混合物と、追加された治療薬または診断薬の種類および量によっていくぶん決定されるであろう。
【0033】
本発明で用いられる治療薬または診断薬は無帯電または帯電、非極性または極性、天然または合成などでもよい。本書で用いられる用語「治療薬」は、限定されないが、薬剤、ホルモン、ビタミン、栄養素、物質などを含む任意の物質を含み、これは微小管の生成、構造、連結、機能および破壊に影響を与え、これにより、癌を含む細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態、症候群またはこれらの症状の予防と治療で有用である。したがって、本発明で有用な治療薬は、微小管の生成、構造、連結、機能および破壊に影響を与えるあらゆる種類の薬剤と、脂肪親和性ポリペプチドと、細胞毒素と、オリゴヌクレオチドと、細胞毒性抗腫瘍薬と、抗代謝剤と、ホルモンおよび放射性分子とを含む。用語「オリゴヌクレオチド」は、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびセンスオリゴヌクレオチド(例えばベクタとして従来知られている核酸)の双方を含む。オリゴヌクレオチドは、サブユニットまたはサブユニット間の結合に関して「天然」または「修飾」されてもよい。
【0034】
しかしながら、本発明の特別な態様では、治療薬は微小管相互作用薬であって、例えばパクリタキセル、ドセタセル、セファロマンニンバッカチンIII、10−デアセチルバッカチンIII、デアセチルパクリタキセルおよびデアセチル−7−エピパクリタキセルなどのタキサンと;例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンおよびこれらの類似体などのビンカアルカロイドと;エポチロンと;エリュテロビンと;ジスコデルモリドと;ドラスチンと;コルヒチンと;コンブレスタチンと;フォモプシンAと;ハリコンドリンBと;スポンギスタチン1と;サルコジクチンと;ラウリマリドと;誘導体、類似体、同属種およびこれら前記作用薬の各々の結合と;この微小管相互作用活性を示すと知られている類似薬または類似物質とから成る群から選択した微小管相互作用薬である。
【0035】
またパクリタキセルなどのタキサンは、より少量の徐放性投与量で抗炎症剤として用いられてもよい。この用途は、ステントなどの患者内に外科的に配置される生体医用器具の分野で特に重要である。ステント周囲およびステント内側の細胞の幾らかの蓄積は、この蓄積が平滑な被覆を形成し、これによって動脈自体にこの器具を組み込むときに好適であるが、この細胞蓄積がさらに内部の通路を妨げて、動脈の再狭窄を引き起こす場合がある。結果として、Boston Scientific株式会社は、ステント表面にパクリタキセルを結合する専用ポリマで覆われたパクリタキセル溶出冠状動脈ステントシステムを製造している。パクリタキセルポリマ複合体は、パクリタキセルの投与量と徐放特性を正確に制御することが可能であり、十分な量の薬物の溶出を可能にし、ステント周囲の細胞蓄積を阻害し、ステント周囲の再狭窄と血管再生を著しく防止する。本発明の医薬組成物は、特に治療薬がタキサンまたは他の微小管相互作用薬である場合、外科的に植え込まれた生体医用器具周囲の細胞蓄積を調整するのに同様に有用になると考えられる。
【0036】
本発明の医薬組成物は、長期的な物理的および化学的安定性を示し、この組成を安定的にすぐに投与できる剤形に便利に販売前包装するのを可能にしており、これによって先行技術の類似組成に一般に関連する投与に先立って病床での希釈と製剤のニーズをなくしている。本発明の医薬組成物は、拡張された期間(例えば約30℃で少なくとも14日間および4℃で少なくとも12ヶ月)に渡って所望の薬剤安定性と乳化安定性を示す。本発明の医薬組成物は、約0.1μg/mL乃至1000μg/mL、好ましくは約10μg/mL乃至800μg/mL、および最も好ましくは約200μg/mL乃至600μg/mLの量の脂質粒子を含む。医薬組成物の全容積に基づく治療薬または診断薬の典型的な濃度は、少なくとも0.001重量/体積(w/v)%、好ましくは0.001乃至90重量/体積%、およびより好ましくは約0.1乃至25重量/体積%でよい。医薬組成物に存在する治療薬または診断約の量は、約0.001μg/mL乃至1000μg/mL、好ましくは約0.1μg/mL乃至800μg/mL、およびより好ましくは約60μg/mL乃至400μg/mLに及んでよい。
【0037】
本発明の医薬組成物はさらに、植物性脂肪源、溶媒、界面活性剤またはこれらの組み合わせから選択された乳化促進剤を含んでもよい。乳化促進剤は、脂質粒子の望ましくない沈殿または凝集を低減また最小限にすることによって、理論上脂質粒子の安定性を強化し、小さな粒子径特性を維持し、これによって癌細胞への脂質粒子の能動的取り込みに積極的に影響を及ぼし促進することが個々にまたは組み合わせで分かった。乳化促進剤はさらに、本発明の医薬組成物の物理的および化学的安定性と薬剤運搬容量を改善するはずである。
【0038】
本発明の好適な実施形態では、植物性脂肪源は、例えば大豆油とアマニ油、大麻油、アマニ油、からし油、菜種油、キャノーラ油、ベニバナ油、ゴマ油、ひまわり油、ブドウ種油、アーモンド油、アプリコット油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、ココナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ニーム油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、ピーナッツ油、パンプキンシード油、米ぬか油、くるみ油およびこれらの混合物など植物油の形態で一般に植物由来脂肪酸を含む。より好適な植物油は大豆油である。
【0039】
植物油は通常、ナノエマルジョンの表面張力を高めるのに十分な量で存在し、これは次に標的細胞の細胞質膜またはその受容体と疎水的相互作用の確率を高める。植物性脂肪源は約0.001乃至5.0体積/体積(v/v)%、より好ましくは約0.005乃至4.0体積/体積%、および最も好ましくは約0.01乃至2.5体積/体積%の量で存在してもよい。
【0040】
本発明の別の好適な実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤から選択されたものである。非イオン性界面活性剤の実施例は、脂肪族アシル化ソルビタンエステルおよびこのポリオキシエチレン誘導体などのソルビタンエステルならびにこの混合物と、限定されないがポロキサマ化合物(188、182、407および908)、チロキサポール、ポリソルベート20、60および80、グリコール酸ナトリウム、硫酸ドデシルナトリウムなどを含むこれらの混合物と、これらの組み合わせとを含む。より好適な非イオン性界面活性剤は、例えばTween(登録商標)−80などの洗浄性ポリソルベートである。
【0041】
界面活性剤は通常、ナノエマルジョンの疎水性成分と親水性成分の間の界面を安定し、疎水性成分が結合するよう維持することによって、ナノエマルジョンの動力学的安定性を高めるのに十分な量で存在し、このため一度形成されたナノエマルジョンは貯蔵中に著しく変化しない。界面活性剤は、約0.01乃至4.0重量/体積%、より好ましくは約0.1乃至3.0重量/体積%、および最も好ましくは約0.2乃至2.5重量/体積%の量で存在する。
【0042】
さらに本発明の別の好適な実施形態では、溶媒は任意の薬剤的に受容可能な水混和性希釈剤または例えば極性のプロトン性溶媒と極性の非プロトン性溶媒などの溶媒を含む。この溶媒は好ましくは、1,3−ブタンジオールと;ジメチルスルホキシドと;メタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、イソプロパノールおよびエタノールなどのアルコールと;同種のものとから選択される。より好適な溶媒はベンジルアルコールである。
【0043】
溶媒は通常、ナノエマルジョンの非イオン性界面活性剤の凝集の程度を制御するのに十分な量で存在する。溶媒は、約0.001乃至99.9体積/体積%、より好ましくは0.005乃至80体積/体積%、および最も好ましくは約0.005乃至70体積/体積%の量で存在してもよい。
【0044】
本発明の組成は、治療薬または診断薬に内在する薬理活性または化学的性質を修飾または変更しないが、癌細胞または癌組織を含む異常細胞または病変組織への作用薬のデリバリおよび内在化を簡単に強化し、治療または診断の効果を提供する。癌治療の治療薬としてタキサンの使用に関する教示の実施例は、参照により本書にそれぞれ組み込まれる米国特許第6346543号明細書と;第6384071号明細書と;第6387946号明細書と;第6395771号明細書と;第6403634号明細書と;第6500858号明細書とに例えば開示されている。
【0045】
一般に、本発明の医薬組成物は、脂質粒子を治療薬または診断薬と結合し、同様に完全に混合することによって調製される。脂質混合物は、治療薬または診断薬と混合するのに先立って植物性脂肪源と組み合わせて界面活性剤と混合されてもよく、これ自体は溶解のため水混和性溶媒と混合されてもよい。次いで脂質粒子−治療薬/診断薬の結合が、水、好ましくは精製水と共に混合される。次いで得られた混合物は高せん断力に晒され、一般に標準的な従来のせん断集中均質化ミキサまたはホモジナイザ内に生成され、水相内に分散した脂質粒子を含むナノエマルジョンを生成する。十分に強いせん断力は、マサチューセッツ州ニュートンのMicrofluidics社により販売されるMicrofluidizer(登録商標)流体材料プロセッサなどの適切なせん断集中均質化ミキサまたはホモジナイザにより生成することができる。得られたナノエマルジョンはさらに処理されてより精製された形態を得て、これは人を含む温血動物への投与に用いられてもよい。
【0046】
ある実施例では、混合処理から過度に大きな粒子を除去することが望ましく、所望の範囲に粒径分布を維持する。マサチューセッツ州ウォルサムのミリポア株式会社のものなど適切な濾過システムがこの目的に利用可能である。このため、適切なろ過システムの選択は、所望の範囲に脂質粒子の粒径分布を制御する要因であり、熟練した職人の日常的なスキル内にするであろう。あるいは、ナノエマルジョンは透析によって処理されて不純物を除去してもよく、得られた透析物は薬剤的用途のため保存される。透析は、任意の非粒子の脂質混合物の成分、薬剤、および/または溶媒を除去し、任意の所望の緩衝剤の交換または濃度を達成する好適な方法である。5000乃至500000の名目上の分子量を遮断する透析膜を用いることができ、10000乃至300000の分子量が好ましい。記載されるように生成された脂質粒子は、透析により精製されて非粒子の薬剤を除去する場合、脂質粒子が例えばC6グリオーマ細胞などの標的細胞に内在化されるまで測定することを特徴としてもよい。
【0047】
本発明の組成はさらに、薬剤的に受容可能な担体または賦形剤を含む。薬剤的に受容可能な担体の実施例はこの分野で周知であり、限定されないが、酸化防止剤、緩衝剤、キレート剤、香味料、着色剤、保存剤、生体利用性を高める吸収促進剤、抗菌剤およびこれらの組み合わせなどの医薬組成物に従来用いられるものを含む。この添加剤の量は所望の特性に依存し、これは当業者により容易に決定することができる。
【0048】
本発明の医薬組成物は通常、塩、緩衝剤、保存剤および互換性のある担体を含み、任意に他の治療成分と組み合わせる。薬剤に用いられた場合、塩は薬剤的に受容可能であるはずだが、非薬剤的に受容可能な塩を上手い具合に用いてこの薬剤的に受容可能な塩を調製してもよく、これは本発明の範囲から除外されない。この薬理学的に受容可能な塩と薬剤的に受容可能な塩は、限定されないが、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエン、スルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタン、スルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびスルホン酸ベンゼンから調製されたものを含む。さらに、薬剤的に受容可能な塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調製することができる。
【0049】
本発明はさらに、細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態もしくは症候群、またはこれらの症状の予防、診断または治療を実施するために細胞に少なくとも1つの治療薬または診断薬の有効量を送ることによって、治療薬または診断薬により患者を治療または診断する方法を提供する。改善された癌治療は特に、腫瘍の細胞増殖、血管形成、転移成長、アポトーシスの制御による一次腫瘍の治療および外科切除後または外科切除と並行の微小転移発育の治療と;一次腫瘍の放射線療法または他の化学療法と、を含めて考慮される。本発明の医薬組成物は、一次黒色腫または転移性黒色腫、リンパ腫、肉腫、肺癌、肝臓癌、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、白血病、子宮癌、子宮頚部癌、膀胱癌、腎癌、結腸癌、ならびに乳癌、前立腺癌、卵巣癌および膵癌などの腺癌のような癌型で有用である。
【0050】
治療用途および診断用途として、医薬組成物は、薬剤的に受容可能な担体と結合した場合に患者に直接投与することができる。この方法は、治療薬または診断薬単独または有効量の別の治療薬または診断薬と組み合わせて投与することによって実施されてもよく、これは第2の微小管相互作用薬でもよいし、そうでなくてもよい。微小管相互作用薬でない場合、この第2の作用薬は、限定されないが、細胞静止剤、葉酸阻害剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、ポドフィロトキシン、抗腫瘍抗生物質、化学療法剤、アポトーシス誘導剤、およびこれらの組み合わせでもよい。この治療薬はさらに代謝阻害剤試薬を含む。多くのこの治療薬がこの分野で知られている。併用療法は、治療法に対する患者の反応を増幅または確認するのに必要とされるので、この状態を治療するのと同時使用、逐次使用、または別使用として提供する。
【0051】
本発明の方法は、医学的に許容可能な任意の投与形態を用いて実施されてもよく、臨床的に許容できない副作用を引き起こさずに活性化合物の有効レベルを生成する。非経口投与に特に適した製剤が好ましいが、本発明の組成は、エアゾール剤、スプレー剤、粉末剤、ゲル剤、ローション剤、クリーム剤、坐剤、軟膏剤などの形態で、吸入、口、局所、経皮、鼻、目、肺、直腸、口腔粘膜、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、胸腔内、胸膜腔内、子宮内、腫瘍内、または点滴による方法もしくは投与用に調剤することができる。この製剤が望まれる場合、この分野で周知の他の添加剤が含まれて製剤に所望の一貫性と他の特性を与えてもよい。
【0052】
治療薬または診断薬を投与する特定の方法が、選択される特定の作用薬と;投与が疾病、状態、症候群またはこれらの症状の治療、診断または予防用かどうかと;治療または診断される内科的疾患の重症度と;治療効力に必要とされる投与量と、に依存することを当業者は認識するであろう。例えば、白血病の治療用の抗癌剤を投与する好適な方法は静脈内投与を含むが、皮膚癌を治療する好適な方法は局所投与または皮内投与を含むであろう。
【0053】
本書で用いられるように、「有効量」とは所望の治療効果または診断効果が達成される治療薬または診断薬の投与量または複数の投与量のことをいう。一般に、治療薬または診断薬の有効量は、使用される特定の作用薬の活性と;その作用薬の代謝的安定性および作用の長さと;被験者の種族、年齢、体重、健康状態、食事の状態、性別および食事と;投与の形態および時間と;排泄率と;もしあれば複合薬と;治療される特定の状態の症状および/または重症度の程度とにより変更してもよい。正確な投与量は、所望の結果を得るため1日当たり1回または数回の投与で、過度の実験をせずに当業者によって決定することができ、この投与量は、所望の治療効果を達成するためまたは任意の合併症の場合に個々の開業医により調整されてもよい。重要なことは、癌の治療に用いられる場合、使用される治療薬の投与量は、腫瘍細胞を抑制または死滅させるのに十分であるが、正常細胞を実質的に傷つけないでおくことである。
【0054】
本発明の医薬組成物に含まれる治療薬または診断薬は、所望の最大量まで任意の量で調製することができ、これは所定の脂質粒子で可溶とされてもよいし、脂質粒子内で懸濁されてもよいし、脂質粒子に操作的に連結されてもよい。診断薬または治療薬の量は、0.001μg/mL乃至1000μg/mL、好ましくは約0.1μg/mL乃至800μg/mL、およびより好ましくは約300μg/mLに及んでもよい。
【0055】
通常、脂質粒子は患者に有効量を投与するのに十分な方法で提供されるであろう。投与量は、約0.1mg/kg乃至175mg/kg、好ましくは約1mg/kg乃至80mg/kg、およびより好ましくは5mg/kg乃至60mg/kgに及んでもよい。投与量は、単回投与または1日当たり1乃至4回以上など個々に分割投与の形態で投与されてもよい。被験者の反応がある投与量で不十分である場合、さらに高用量(または異なる局所的輸送経路で有効な高用量)が患者の許容量まで使用されてもよい。1日当たり複数回の投与が考慮され、適切な全身レベルまたは標的レベルの治療薬または診断薬を達成する。
【0056】
さらに本発明の別の実施形態では、微小管相互作用薬は、生体外で診断薬として用いられてもよい。前に述べたように、問題の特定の腫瘍細胞または細胞型に依存して、異なる微小管相互作用薬が別個の腫瘍種の抑制で多少有効であるかもしれない。したがって、例えば適切な化学療法の戦略の判断または選択が困難である場合に、特定の腫瘍細胞型を標的にすると知られていた微小管相互作用薬による生体外の腫瘍細胞の培養試験は、代替アプローチを提供して腫瘍型と有効な治療を特定する。
【0057】
本発明の別の態様では、本発明の医薬組成物を調製する方法が提供される。脂質混合物は、水相で処理する際、脂質粒子の分散を含む脂質ナノエマルジョンの組成を形成する量で治療薬または診断薬に組み込まれ、脂質粒子が分散された相は、ナノスケールオーダの粒子径の高分子または小分子の塊の形態で存在する。本発明の組成を調製する際に、脂質混合物および治療薬または診断薬は、水、好ましくはろ過水を含む水相と結合される。得られた混合物は処理されて典型的に平均粒子径範囲を有する脂質粒子であって、いつもではないが、癌の治療に特に適した最大200nmのサイズの範囲の脂質粒子を他の用途に適切な大きな粒子と共に形成する。得られる範囲は、使用された脂質混合物と、脂質混合物に加えられた治療薬または診断薬の種類および量と、脂質粒子を生成するのに用いられた技術とによって幾分影響される。
【0058】
本発明の医薬組成物は、この分野で知られている従来の分散生成技術またはプロセスを用いて作ることができる。この技術は限定されないが、高せん断力均質化、超音波撹拌もしくは超音波処理、高圧均質化、溶媒乳化/蒸発などを含む。本発明の一実施例では、脂質粒子は適切な高圧ホモジナイザを用いる従来の高圧均質化技術によって調製されてもよい。適切なサイズのホモジナイザは商業上利用可能である。高圧ホモジナイザは通常、典型的に約100乃至2000の棒材により高圧で約数ミクロンに渡る狭い隙間を介して流体を押し出すよう設計されている。加圧流体は、超短距離で1000km/hr以上の超高速まで加速する。脂質混合物を含む加圧流体は、超高せん断応力と空洞化力に対抗し、サブミクロン範囲で粒子内に脂質混合物を分裂させて細かく砕く。前に論じられたように、大部分の脂質粒子は約0.02μ乃至0.2μ、好ましくは0.02μ乃至0.1μに及ぶ平均粒子径を有するべきであり、特に最大約200nmに及ぶ幾つかの脂質粒子と共に、この範囲以上または以下にとどまる少量の粒子に変更する。
【0059】
脂質粒子を調製する別の特定の方法では、脂質混合物は、植物油などの植物性脂肪源と、非イオン性界面活性剤などの界面活性剤と混合されて脂質相を得てもよい。治療薬または診断薬は、水混和性溶媒などの溶媒と混合されて治療薬相または診断薬相を得てもよい。脂質相と治療薬または診断薬相はその後、好ましくは超音波処理を介して、水相の存在下で一緒に混合されブレンドされる。得られた混合物はその後、高せん断力下で均質化されて対応する本発明のナノエマルジョンを生成する。次いで、ナノエマルジョンは0.2μの膜を介してろ過されてもよく、未使用の脂質材料、過剰な治療薬または診断薬などの不純物を殺菌および/または除去し、治療または診断ニーズのある人を含む温血動物への医薬組成物としてデリバリに適した精製形態を得る。
【0060】
本発明の医薬品組成物の理解を容易にするために以下の実施例を提供する。
【0061】
実施例1
EmPACの組成
パクリタキセルが第1薬剤候補として選択され、脂質ナノ粒子(LN)への充填を介して製剤について試験され、商業上利用可能な製品へ開発される。パクリタキセル/LNの製剤は、水と4%のエタノールで直接調製され、続いて110Y Microfluidics Microfluidizer(登録商標)高圧ホモジナイザ(M−110Yモデル、Microfluidics社、ニュートン、マサチューセッツ州)を用いて18000psiで4サイクルの高圧均質化を行う。先行研究は、最大〜25重量/重量(w/w)%の脂質濃度のLNにパクリタキセルを組み込むことができることを示したが、この製剤は数時間しか安定しないことが分かったが、この問題は薬剤の組み込みよりも安定性に関係するように思われた。1mMのピロリン酸ナトリウム(pH9.5)で調製されたLNは少なくとも2か月間安定したままであることを発見後、1mMのピロリン酸ナトリウム(pH9.5)が薬剤の組み込み研究に1次試験媒体として選択された。
【0062】
パクリタキセルが3サイクルで15000psiで1mMのピロリン酸ナトリウム中の4%のエタノール含有量と共にLNに組み込まれた場合、5%の薬剤充填を伴う製剤のみが安定し、この最終的な製剤でさえ有意な時間安定しないことが分かった。組み込み後2日目に、僅かな混濁が5%の充填サンプルで観察され、これは3日目に完全に沈殿した。一方33%および16%の薬剤充填サンプルでは即時の混濁が観察された。これらの発見は表1に要約されている。この安定性を低下させた有力な理由は、水におけるパクリタキセルの難溶性、低いアルコール含有量(4%)、高いpHの最終溶液(pH11.5)、および/または調和できない脂質濃度であろう。
表1.4%のエタノールで調製されたLNに充填するパクリタキセル
【0063】
この場合エチルアルコールである有機含有量の変更により、薬剤組み込み粒子の安定性を改善する可能性が高い。したがって、LNは最初に異なるアルコール含有量(例えば50体積/体積%、25体積/体積%、12.5体積/体積%)で調製された。薬剤のない粒子でさえ25体積/体積%以下またはこれと同等のエタノール含有量で安定しないことが観察された。さらに、12.5体積/体積%アルコールのLNのみが少なくとも1日間安定していた。したがって、10%のパクリタキセルが12.5体積/体積%のアルコール含有量と共にLNに充填された。3時間後、ゲル組成が観察され、高レベルのアルコールはLN内のパクリタキセル製剤を安定させないことを強く示した。エチルアルコールはさらに通常、解乳化剤として用いられた。これは、安定した薬剤充填製剤を得る際に高い割合のエタノールが助力しないという理由であろう。その他の溶媒では、パクリタキセルはDMSOに非常に良好な溶解度を有すると知られているので、ジメチルスルホキシド(DMSO)が選択肢の溶媒である。したがって、パクリタキセル充填サンプルは、第2機器であるMicrofluidizer(登録商標)高圧ホモジナイザ(M−110EHモデル、Microfluidics社、ニュートン、マサチューセッツ州)M−110EHで15000psiおよび3サイクルで10%のDMSOに調製された。
【0064】
2つのコントロールが用いられ、一方はパクリタキセルがなく、他方は脂質成分がない。第2のコントロールから、このサンプルが脂質成分のない状態で沈殿したので、脂質成分が薬剤組み込みLNの安定性の役割を担うことは明らかである。しかしながら、5%のパクリタキセルのサンプルは透明であったが、10%のパクリタキセルのサンプルは2日目に沈殿したことが観察された。これらのサンプルの高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)アッセイでは、これらのサンプルでパクリタキセルが悪化したことが観察された。
【0065】
パクリタキセルはDMSOによく溶けるので、異なる濃度のDMSOでパクリタキセルにより調製されたLNの安定性が試験された。濃度20%のDMSOが10重量/重量%のパクリタキセルを有する200μg/mLのLNに最も高い安定性をもたらしたことが分かった。代表的な粒径分布とゼータ電位値は図1に示されている。この変更された製剤の安定性のデータは表2に示されている。
表2.変更されたDMSO製剤のパクリタキセル充填LNの安定性
【0066】
パクリタキセルの前記悪化(24時間以内にほぼ100%)は、この製剤の高いpH(11.0)によるものであると仮定された。1mMのピロリン酸ナトリウムの添加が、9.5までpHを低下させた。したがって、1mMのピロリン酸ナトリウムによりpHを調整することによってパクリタキセルと脂質成分の安定性の効果が研究された。
【0067】
6.0に等しいpHまたは6.0を超えるpHでは、沈殿が観察されず、製剤は透明のままであった。しかしながら、6.0を超えるpHではパクリタキセルの相当な悪化があった。このように、最適解は、脂質成分とパクリタキセルの双方を製剤中で化学的および物理的に安定させ続けるために、希リン酸により6.0に調整されたpHを有する1mMのピロリン酸ナトリウムを利用することである。全結果は表3に要約されている。
表3.脂質ナノ粒子の安定性におけるpHの効果¥
【0068】
このようにDMSOとpHの制御は、製剤の長期安定性に導くことができることが発見されたので、製造中に製品を消毒するのにろ過が利用されるので、次の研究手段は、ろ過がパクリタキセル充填LNサンプルの脂質成分と薬剤潜在能力に影響するかどうかであった。
【0069】
ナイロン、PVDF、およびPESなどの異なる種類の膜の一次審査後、ポリエーテルサルフォン(PES)親水性膜が製剤のろ過に最も適切な膜であることが結論づけられた。20%のDMSOで調製された10%のパクリタキセル充填LNが0.22μmのPES薄膜フィルタによりろ過された場合、少なくとも98%のパクリタキセルが膜を通過した。これら同じ製剤から脂質成分がELSDによって分析された場合、平均して、全成分の93%が膜を通過した。このようにろ過は製剤の品質も安定性も高めることが実証された。
【0070】
パクリタキセルが20%のDMSOがある状態でLNに組み込まれるかどうかを判定するために、または水相内へパクリタキセルを分配することによってLNへのパクリタキセルの組み込みをDMSOが妨げるどうかを判定するために、LNからの14C標識化パクリタキセルの分離がショ糖密度勾配を用いて行われた。放射能数の分布の測定は、どの画分がパクリタキセルを含むかに関するデータを提供する。したがって、200μg/mLのLNは、幾らかの14C標識化パクリタキセルを含む10重量/重量%のパクリタキセルの存在下で調製され、その調製品はショ糖密度勾配で分画された。画分が放射能数の分析のため集められてどの画分がパクリタキセルを含むかを決定した。沈殿した画分は勾配の底で発見され、これは最初に不溶性のパクリタキセルで構成された。バンドは、LNであると確証された勾配で発見され、沈殿物とLN画分の双方の放射性成分がLNを含む脂質がある状態で分析され、放射性標識は底部の沈殿物で殆ど発見されなかった。脂質がない状態では、大量の沈殿物が発見され、非常に小さな画分の放射標識が沈殿物画分で発見されている。
【0071】
図2で分かるように、脂質がない状態では約80%のパクリタキセルが沈殿したが、脂質がある状態では1.8%のパクリタキセルが沈殿するに過ぎなかった。これは、大部分のパクリタキセルがLNの脂質内に組み込まれているという考えを支持するものである。
【0072】
臨床設定では、3−24時間に渡る約2.5Lの静脈注射は通常、殆どの患者に安全で耐えられるものと考えられている。臨床用途の現在のパクリタキセルの投与量は、3−24時間に渡って135〜175mg/m2の範囲である。表面積が〜1.8m2の平均サイズのオスを想定すると、この投与量を達成するのにパクリタキセルの〜97μg/mLの濃度が必要である。この時間および体積パラメータ内でこの治療用の投与量のパクリタキセルを提供するために、パクリタキセルは十分に高濃度でなければならない。従って、ベンチマークとしてこの投与量を達成するパクリタキセル充填LNサンプルを製剤することが望ましい。しかしながら、本発明は腫瘍細胞を選択的に標的とすることができるので、パクリタキセルを組み込まれたLNに必要な治療用の投与量は事実上、非常に少なくてもよい。このように、投与された薬剤の大部分の画分は最終的に腫瘍細胞に行き着くであろう。
【0073】
後に表4で明らかなように、10%のパクリタキセルを充填する最大400μg/mLのLNを調製することが可能であり、これは凝集の兆候なく少なくとも5時間安定する。この調整品は、40μg/mLのパクリタキセル濃度を有し、静脈内投与に必要な時間に渡って安定した。
【0074】
0.22μmのPES膜によるろ過後、LNに充填された1mMピロリン酸ナトリウム(pH−6.0)の20%DMSO内の10%パクリタキセルのサンプルは、少なくとも3日間安定したままだった。ピロリン酸ナトリウム濃度を0.5mMに変更した後、サンプルは7日間安定したままだった。最初に、全てのサンプルはろ過された形態およびろ過されてない形態でパクリタキセル成分と粒径分布について分析された。これによりこれらのデータは、臨床で現在利用される濃度のパクリタキセル製剤をLN内に調製することができることを示した。
【0075】
したがって、第2のパクリタキセル−LN製剤が調製され、これは60μg/mLのパクリタキセルと;300μg/mLの脂質混合物と;0.5%のブタノールと;0.5%の大豆油と;0.25%のTween(登録商標)−80とから成る。この第2の製剤で行われた安定性研究は、400μg/mLの脂質と一定濃度のパクリタキセルを用いる製剤が少なくとも24時間安定していることを明らかにした。結果は表4に要約されている。
表4.ナノ粒子安定性に対する脂質濃度の効果
【0076】
具体的には、表5で分かるように、第2のパクリタキセル−LN製剤は少なくとも7日間室温で安定し、少なくとも30日間2−8℃で安定することが分かった。
表5.第2の製剤の安定性
【0077】
しかしながら、ブタノールはマウスに有毒であり、注射で昏睡状態を引き起こすことが分かったので(データは示されてない)、ブタノールはベンジルアルコールによって置換された。得られた第3の製剤は、60μg/mLのパクリタキセル、400μg/mLの脂質混合物、0.06%のベンジルアルコール、0.5%の大豆油、および0.25%のTween(登録商標)−80で構成される。表6で要約されるように、この第3の製剤は室温で少なくとも3週間および2−8℃で80日間以上安定していたことが分かった。
表6.第3の製剤の安定性
【0078】
実施例2
EMULSIPHANとEmPACの細胞吸収
ここで記載された研究は、ヒト腫瘍細胞がLNを取り込むかどうかを判定し、かつそれらがLNを取り込む異なる能力を示すかどうかを判定するために行われた。試験された大抵の腫瘍細胞株が蛍光LNを容易に取り込むだけでなく、異なる腫瘍細胞株からの腫瘍細胞株はLNを取り込む異なる能力を示すことが分かった。
【0079】
これらの実験に用いたLN製剤は、以下のように調製された:適切な脂質が10分間超音波処理により10mg/mLまで95%のエタノールに可溶化された。次に、エタノール中の100μLの0.5mg/mLコレステリルBODIPY−FL(オレゴン州ユージーンのMolecular Probes)が1mLの可溶化された10mg/mL脂質に加えられた。最後に、脂質とコレステリルBODIPY−FLの混合物が1mMピロリン酸ナトリウム水の50mL溶液に加えられ、110Y Microfluidics Microfluidizer(登録商標)高圧ホモジナイザ(M−110Yモデル、Microfluidics社、ニュートン、マサチューセッツ州)により処理された。
【0080】
蛍光標識化ナノ粒子の細胞吸収の程度が蛍光活性化細胞分類(FACS)による細胞蛍光強度に正比例することを最初に立証するため、図3Aで分かるように、細胞当たりの平均蛍光強度がLNの濃度に正比例し、さらに図3Bから明らかなように、LNがある状態で培養時間に正比例することが分かった。実際には、同じく治療された細胞がカバーガラスに固定された状態で、蛍光強度が蛍光LN吸収の程度に比例することが視覚的に確認された。LNは、蛍光の脂肪親和性染料DiO(オレゴン州ユージーンのMolecular Probes)により標識化され、これはフルオレセインのフィルタセットを用いて検出することができる。LNは顕微溶液化により200μg/mLの脂質と2.5μg/mLのDiOにより調製された。標識化されたLNは、C6細胞に加えられ、37℃で培養された。この後、培地が除去され、細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)により洗浄され、トリプシン処理され、4%のホルムアルデヒド内に固定する前に再び洗浄された。LNは、0、12.5、25、50および100μg/mL加えられ、60分間培養された。50μg/mLのLNが細胞に加えられ、培地の除去とFACS分析の処理の前に0、5、10、15、30および60分間培養された。図3Aと図3Bで示される結果から明らかなように、細胞当たりの蛍光強度が濃度の増加と培養時間の増加とに正比例することをそれぞれ示しており、FACSによってLN吸収を推定することができることは明らかである。
【0081】
異種細胞株由来細胞がLNを取り込む異なる能力を示すかどうかを判定するため、かつ異種腫瘍型由来細胞がLNを取り込む相対的な能力をさらに推定するために、種々のパネルの腫瘍細胞株でLN吸収が試験された。選択された細胞株は、国立癌研究所(NCI)のDevelopmental Therapeutics Program In Vitro Screeningによって用いられたものから選択された。NCI細胞株パネルは、多くの異なるヒト腫瘍株由来細胞株で構成され、幾つかの異種細胞株はそれぞれ代表的なヒト腫瘍株に由来した。使用される細胞株は、HS−578T、MDA−MB−231、およびMX−I乳癌と;H23、H460、およびH522肺癌と;SF−539肝臓と;HT29、SW−620、およびCOLO205結腸腫瘍細胞株とを含んだ。
【0082】
LNは、顕微溶液化によって200μg/mLの脂質と0.5重量/重量%のコレステリル−BODIPY−FLとにより調製された。標識化されたLNは細胞に加えられ、37℃で培養された。この後、培地が除去され、細胞がPBSで洗浄され、トリプシン処理され、および4%のホルムアルデヒド内に固定される前に再び洗浄された。サンプルはFACSによって分析され、細胞当たりの平均蛍光強度が測定された。結腸、胸部、中枢神経系(CNS)、および肺に由来する細胞は、HT−29結腸癌細胞株とSF−539肺癌細胞株のものと比較され、これは少量および多量の蛍光LNをそれぞれ取り込むことが示された。LNで治療された各細胞サンプルによる蛍光LN吸収量は、未治療の同じ細胞株の蛍光強度を控除することによって得られた。
【0083】
図4A〜4Dで分かるように、NCIパネルの細胞株によるLN吸収量の比較は、LN吸収が異なった株の細胞型間で変化することを明らかにする。同じ腫瘍株の細胞間で幾らかの変異性が見られたが、相対的な吸収量は各腫瘍株で適正に一致する。例えば、胸部腫瘍細胞株と肺腫瘍細胞株は通常、結腸腫瘍細胞株に行ったものより高いLN吸収量を示した。最も大きなLN吸収量は、肺腫瘍およびCNSの細胞株で発見された。全結果は表7に要約されている。
表7.腫瘍細胞株による脂質ナノ粒子の吸収
§細胞当たりの平均蛍光強度は、同じ各未治療の細胞株の蛍光と比較し、控除することによって、各蛍光LN治療サンプルについて得られた。
£ND−判定されていない。高レベルの沈殿のため粒径は判定できない。
【0084】
次に、LN(EmPAC)に調剤されたパクリタキセルの吸収量は、従来の媒体に調剤されたパクリタキセル、タキソール(登録商標)として知られている1:1のCremophor/エタノール(CremophorEL(登録商標))と比較され、一連の実験で放射標識化パクリタキセルの培養された腫瘍細胞吸収量を分析した。
【0085】
第1の実験では、14C標識化パクリタキセルは、LNに組み込まれ(これによってEmPACを形成する)、タキソール(登録商標)に組み込まれた。この実験で使用されるEmPAC製剤は、DMSOを含む第1の製剤であった(実施例1を参照)。これらの製剤は、同じ濃度のパクリタキセルから成り、1時間12の複製ウェルでSF539神経膠腫とA549肺癌細胞に加えられた。媒体が除去され、細胞単層は薬剤の除去後に可溶化にされ、トルエンを含む同じ容量のシンチレーションカクテルによりPBS内で洗浄して各単層サンプルに連結されたパクリタキセルを測定した。各サンプルの放射標識数は、各サンプルに最初に追加された合計放射標識の僅かとして表わされた。この実験結果は、図5で実証されるように、SF539がタキソール(登録商標)よりもLNに調剤されたパクリタキセル(すなわちEmPAC)を著しく多く内在化することを示した。
【0086】
この実験は前述したように実質的に繰り返され、薬剤に培養後に様々な時間で採取されたことを除いて、細胞は第2の製剤のEmPACで治療された。実質的に、各製剤について同じ量の放射標識化薬剤が各細胞サンプルに加えられた。細胞単層に連結された放射標識化薬剤の大体の数が示されている。さらに、細胞吸収量の動態を推定するために、パクリタキセルの吸収量が薬剤培養時間の関数として分析された。SF539グリオーマ細胞による以前の研究は、吸収量がプラトーに達する前に2時間に渡って増加したことを実証した。これはさらにEmPACとタキソール(登録商標)の双方について観察され、図6で分かるように、この違いはCremophorEL(登録商標)製剤でのパクリタキセルの相対的な不溶性によるものではなかったことを示した。しかしながら、タキソール(登録商標)よりこれらの細胞に連結されたEmPACに著しい多量のパクリタキセルが存在した。
【0087】
EmPACのパクリタキセルまたは脂質混合物が細胞吸収量を飽和させることができるかどうかを判定するために、全ての未標識のパクリタキセルは変更されたが、脂質と放射標識化パクリタキセルの量は一定の状態を保って実験が行われた。図7で分かるように、パクリタキセルの量は細胞吸収量を飽和するように見えるが、これはこの特定の実験から完全には明らかではない。全てのパクリタキセルが変更される一方で、標識化パクリタキセルは一定であるので、全てのパクリタキセルの小さい画分または大きな画分を単に表わしてもよい。パクリタキセルの濃度の増加がさらに粒子の総数を増加するであろう。このため、同じ数の薬剤充填粒子が取り込まれても、少量の標識化パクリタキセルが取り込まれるであろう。
【0088】
続いて、一連の実験が行なわれて細胞吸収量におけるLNの各脂質成分の寄与を確認した。14C標識化コレステロールの追跡によって標識化されたLNサンプルは、1つの成分が組織的にない状態で調製された。LNサンプルは、300μg/mLの脂質と20%のDMSOを用いて調製された。その他の全成分は比例して増加し、失った成分を補った。このサンプルは、2時間SF539ヒトグリオーマ細胞に加えられた。LN粒子を作るためにコレステロールと1:1で混合された単一成分を用いて同じ実験が行なわれた。図8Aと図8Bは共に、コレステロールは細胞吸収量を促進する際にLNの全脂質成分の最も重要な役割を果たすことを確証している。
【0089】
細胞単層に連結された放射標識化パクリタキセルは、パクリタキセルの内在化の結果であると仮定されたが、パクリタキセルが内在化するのではなく、細胞の外部に配置された可能性があった。パクリタキセルが内在化するかどうかを判定するために、A549ヒト肺腫瘍細胞が、2時間EmPACまたはCremophorEL(登録商標)で調剤されたパクリタキセルで治療された。細胞は続いて氷のように冷たいメタノールで固定され、反タキサン抗体(ハワイ州ホノルルのHawaii Biotech社)で染色され、続いて2次抗体が蛍光性Alexa Fluor488分子(オレゴン州ユージーンのMolecular Probes社)に結合された。パクリタキセルが内在化し、微小管に配置されることが図9Aから明らかである。パクリタキセルは生体内で微小管に結合すると知られているので、これはEmPACと同様にCremophorEL(登録商標)に調剤されたパクリタキセルが内在化することを示している。しかしながら、各細胞のエッジをトレースすることによって各サンプルについて多くの領域の細胞の細胞内蛍光強度も定量化され、トレースされた境界内の蛍光強度の定量化した。図9Bで分かるように、EmPACで治療された細胞は、タキソール(登録商標)で治療された細胞のおよそ2倍の蛍光強度を有し、これにより早期の発見を確認することができる。
【0090】
実施例3
EmPACの細胞毒性
このセットの実験の目的は、EmPACの相対的な腫瘍成長抑制と細胞毒性を測定することであった。EmPACは、製造者によって推薦されるように、DMSOで溶解されたパクリタキセルまたはタキソール(登録商標)と比較された。
【0091】
LNに組み込まれたパクリタキセルが細胞を死滅する能力を保持するかどうか判定するために、DMSO保存溶液に溶解されたパクリタキセル単独の細胞毒性が、多くの異種細胞株の等モル量のEmPACと比較された。MTS細胞増殖アッセイが使用されて相対的な細胞毒性を推定した。MTSはテトラゾリウム化合物であり、これは可溶性のホルマザン製品へ生細胞によって生物還元(bioreduced)される。490nmの実行でホルマザン製品の吸光度を使用して相対的な数の生細胞を判定することができる。このように、MTSを用いてパクリタキセル単独の相対的な細胞毒性の潜在能力対EmPACの潜在能力を推定することができる。試験された細胞株は子宮肉腫細胞株MES−SAとその薬剤耐性副株MES−SA−DX5を含んでおり、LNへのパクリタキセルの組み込みが薬物耐性細胞のパクリタキセルの細胞毒性に影響を与えるどうかを調べた。したがって、MES−SA、MES−SA−DX5、A549およびMX−I細胞株は、サブコンフルエントな密度で平板培養された。等モル濃度のパクリタキセル単独とEmPACは、組織培養培地で希釈され、細胞が平板培養された日後に細胞に加えられ、72時間細胞で培養させた。培地が置き換えられ、MTSアッセイは製造者(Promega社、マディソン、ウイスコンシン州)からの指示に従って行なわれた。各細胞株由来の未治療の細胞に対して生存率が正規化に基づいて計算された。図11A〜図11Dの各データポイントは、6つのサンプル±SEMの平均値を表わす。
【0092】
図10Aで分かるように、EmPACは、より低いパクリタキセル濃度でMES−SAとA549細胞内のDMSOのパクリタキセルと比べて、およそ弱い細胞毒性を示したが、さらに図10Cで分かるように、パクリタキセル単独よりも高濃度で大きな画分の細胞を死滅させるように見えた。これはパクリタキセル単独が水性溶媒に非常に不溶性であるという事実によるであろう;その疎水性はパクリタキセルをより高い濃度で凝集させ、細胞へのその進入を妨げる。LNへのパクリタキセルの組み込みによって、パクリタキセルが水性溶媒で安定し、凝集を防止して、高い濃度のパクリタキセルが細胞に入るのを可能にしてもよい。図10Dで明らかなように、EmPACはさらにMX−I乳癌細胞でパクリタキセル単独より顕著に強い細胞毒性を示し、図10Bで分かるように、MES−SA−DX5細胞株へパクリタキセル単独より適度に強い細胞毒性を示した。これらの観察の基礎となるメカニズムは未知であるが、1つの仮説は、薬物耐性細胞株MES−SA DX−5の場合には、EmPACがパクリタキセル単独でするのと同じくらい効率的に細胞の外に汲み出されないということであり、これが脂質に埋められ、少なくとも最初に、LNの成分として扱われるためである。脂質粒子は、特定のメカニズムによって細胞の中に取り込まれ、これは薬剤耐性に基礎をなす細胞機構により影響されないであろう。
【0093】
前述の実験は、EmPAC対CremophorEL(登録商標)を比べるために変更された。この実験で使用されるEmPAC製剤が超音波処理によってTween(登録商標)−80と大豆油がある状態で専用の脂質混合物を可溶化し、続いてこの混合物をブタノール中の超音波処理によって可溶化したパクリタキセルに添加することによって調製された。混合物は、110EH Microfluidics Microfluidizer(登録商標)高圧ホモジナイザ(M−110Yモデル、Microfluidics社、ニュートン、マサチューセッツ州)で顕微溶液化によって処理された。これらのパクリタキセル製剤は薬剤除去の前に1時間SF539グリオーマ細胞に晒した後に比べられ、この薬剤への短期被曝は、薬剤への連続被曝より生体内の抗腫瘍薬への腫瘍細胞被曝に非常によく似ており、パクリタキセルは生体内で1時間以下の生物的に利用可能な半減期を有する(Wiernikら、1987年;Rowinskyら、1990年)。
【0094】
薬剤の除去後、細胞は続いて生存と増殖がMTTによって分析される前に、さらに72時間増殖を許容された。生細胞は、死にそうな細胞または死細胞より強い脱水素酵素活性を有し、このため強いMTT活性レベルを有すると予想されるので、MTTアッセイは生細胞に存在するミトコンドリアの脱水素酵素を利用して細胞の生存率を測定する。各細胞サンプルの生存は、薬剤に晒されなかった各コントロール細胞株に関して画分として計算された。生存率は薬剤濃度の関数としてプロットされ、各曲線は4つのパラメータのロジスティック曲線に適合され、EC50値が計算された。EmPAC対CremophorEL(登録商標)間の統計的な有意差は、スチューデントのt検定によって各薬剤濃度について推定された。図11で分かるように、EmPAC単独は細胞致死と細胞生存に有意な効果がなかったが(データは示されない)、EmPACはタキソール(登録商標)よりグリオーマ細胞に著しい細胞毒性があった。
【0095】
実施例5
マウス腫瘍モデルのEmPACの腫瘍成長抑制
H23ヒト肺腫瘍を皮下に植え込まれたヌードマウスがEmPACまたは等しい投与量のタキソール(登録商標)で治療された場合、等しい投与量のタキソール(登録商標)のパクリタキセルと比べてEmPACによる顕著に強い腫瘍成長抑制があったことが観察された。
【0096】
ヌードマウスはH23肺腫瘍細胞を皮下に植え込まれ、これは薬剤が投与される前の25日間成長させられた。担癌動物は、25、27、29、32、34、36、39、42日にそれぞれ2mLの60μg/mL薬剤と共にIPを注射された。腫瘍容積は、これらの各注射日で測定された。最終の腫瘍容積測定は、腫瘍の植え込み後45日に行われた。
注射された製剤の組成は表8に示される。
表8.H23TGIの動物実験群
【0097】
図12Aで分かるように、第1の薬物注入後20日間に渡って、EmPACで治療された動物の腫瘍は1日で容積が減少したが、タキソール(登録商標)で治療された動物の腫瘍は実験の終わりの恒常的成長過程を再開する前に最初の11日間に腫瘍容積の退縮を示した。LNコントロールで治療された動物または未治療の動物の腫瘍は、研究の全体に渡って恒常的成長を示した。このように、EmPACはタキソール(登録商標)を行ったものより長時間の腫瘍サイズを低減することができた。図12Aのデータは、薬物療法の間の平均腫瘍容積を示すようプロットされた。
【0098】
図12Bに移り、腫瘍退縮率は薬物療法の1日目と最終日との腫瘍容積差を比べることによって求められた。腫瘍退縮の統計的有意差は、タキソール(登録商標)で治療されたマウスと、EmPAC(p<0.0005)で治療されたマウスとの間で示された。各群は、3±SEMの平均を表わす。研究の終りまでに、EmPACで治療された動物の腫瘍は約71%(71.4±2.4%)まで退縮したが、タキソール(登録商標)で治療された動物の腫瘍は約19%(18.7±0.9%)まで退縮した。このため、データはEmPACがタキソール(登録商標)より顕著に強い抗腫瘍活性を有することを示す。
【0099】
EmPACによる腫瘍成長抑制の量を異なる濃度のパクリタキセルと比べるため、H460ヒト肺腫瘍細胞を植え込まれたヌードマウスは、実施例1の第3の製剤より2倍のパクリタキセルで調剤されたEmPACを注射された。タキソール(登録商標)はさらに先のTGI実験で得られた投与量の1乃至4倍投与された。結果は、EmPACが4倍強いタキソール(登録商標)とおよそ同じくらい効果的であることを示す。
【0100】
この実験では、60と137μg/mLパクリタキセルのEmPAC製剤と等量のパクリタキセルが使用され、さらに、最初の第3のEmPAC製剤(すなわち60μg/mLパクリタキセル)で得られた投与量のおよそ4倍のタキソール(登録商標)が、H460担癌マウスに投与された。マウス腫瘍は、先の実験より大きなサイズに成長させられた。動物は、毎週3回、3週間で2日おきに投与され、腫瘍は薬剤の注射の前に測定され、その腫瘍が切断サイズ限界以上に達した動物は自動的に安楽死させられた。経時的で相対的な腫瘍容積が計算され、時間の関数としてプロットされた。T検定が行われて異なる薬剤で治療された動物間に腫瘍成長抑制の有意差があったかどうかを判定した。さらに、生存曲線が生成され、終わりの端点は、治療に関連した原因または切断サイズ限界に達した腫瘍による安楽死による動物死として規定された。
【0101】
不運にも、動物群は無作為化されず、その結果コントロール群の動物は最も小さな腫瘍で開始したが、高用量の薬剤による治療群の動物は治療前に大きな腫瘍で開始した。しかしながら結果は、EmPACが4倍の濃度のタキソール(登録商標)とおよそ同じくらい効果的であることを示した。
【0102】
実施例6
EmPACの薬物動態と生体内分布
IP対IVのEmPACの薬物動態の違い、およびEmPACの生体内分布を測定するために、A549肺腫瘍を植え込まれたヌードマウスは、放射標識化パクリタキセルをそれぞれ含むEmPACまたはタキソール(登録商標)のパクリタキセルの何れかと共にIPまたはIVを注射された。
14C標識化パクリタキセルを含むEmPAC製剤は以下のように調製された:
A)緩衝剤の調製
1)1Lの水に466.1mgのピロリン酸ナトリウムを加えて1mMのピロリン酸ナトリウム溶液を作製する。
2)希リン酸を加えることによってpHを4.0に調整する。
3)0.22μmのPESフィルタによってろ過する。
4)10mLのこの緩衝剤に10μLの10%Tween(登録商標)−80を加える。
B)脂質保存溶液
1)10mgの脂質混合粉末を測定して、10mLのDMSOに溶かして1mg/mLの脂質/DMSO溶液を作製する。
2)透明な溶液が得られるまで超音波で処理する。
C)高温のパクリタキセル:
1)50μLの高温のパクリタキセルを取り込む。
2)80℃の水浴で酢酸エチルを完全に蒸発させる。
D)製剤:高温のパクリタキセル溶液に800μLの脂質/DMSO溶液を加える。完全に混合して撹拌する。この溶液を得て、次いで3.2mLの水性緩衝液に加える。
【0103】
動物は、注射後0(注射直後)、0.5、1、6、または12時間後に安楽死させられた。血液は心臓穿刺によって抜かれ、選択された臓器(例えば腫瘍下の全脳、腎臓、肺、肝臓、胃、脾臓、膵臓、腫瘍、腫瘍の対側部位の筋肉、尿、糞便、全血および腫瘍筋)の組織が採取された。組織と血液は全て処理されて放射標識薬剤の数えた。組織は全て重さを量られて均質化された。組織は小さすぎて用いられる秤(秤は1つの小数位に読み取る)によって正確に重さを量ることができなかったので、用いられる緩衝剤を含む組織ホモジネートが量られた。ホモジネートの部分標本は、全てのホモジネートの画分を測定するためにシンチレーションを数える前に量られた。全ての臓器組織の全ての14C標識化パクリタキセルが測定された。結果は、IP対IVで注射されたある薬剤間の薬物動態に有意差がないことを示している。これらの結果はさらに、EmPAC対タキソール(登録商標)のパクリタキセル間で類似する薬物動態を示す。組織が注射後0.25、0.75、3、6、または12時間に採取された類似する実験は、EmPACとタキソール(登録商標)が実質的に同じ薬物動態プロファイルを有し、その上、組織パクリタキセルレベルが注射後約3時間でピークに達することを示している。さらに、実施例1に記載された第3の製剤へEmPAC製剤を変更する際、EmPAC製剤#3がタキソール(登録商標)のものと同じ薬物動態プロファイルを有することを結果が示している。
【0104】
実施例7
タキソール(登録商標)およびアブラキサン(登録商標)として調剤したパクリタキセルと比較したEmPACとして調剤したパクリタキセルの細胞吸収量
タキソール(登録商標)(CremophorEL(登録商標):エタノール 1:1のパクリタキセル)は、数年間臨床で使用され、肺非小細胞癌と乳癌を含む様々な異なる癌適応症を治療してきた。アブラキサン(登録商標)(HSAで調剤されたパクリタキセルの製剤)は癌治療のFDAによって承認された。この研究の目的は、EmPACがタキソール(登録商標)とアブラキサン(登録商標)と異なるかどうかを判定することであり、各パクリタキセル製剤に1時間晒されたA549ヒト肺癌とMDA MB 435乳癌細胞株を用いる生体外の短期間の露出実験で、パクリタキセルの細胞吸収量に影響を及ぼした。次いで細胞が固定され、パクリタキセル対抗抗体、続いて蛍光に標識化された第2抗体によって染色された。細胞内のパクリタキセルは、細胞内蛍光染色によって検出できるように、エピ蛍光顕微鏡によって視覚化された。蛍光に標識化された細胞のデジタル像は、冷却されたCCDカメラで取り込まれた。標識化された細胞の蛍光強度はデジタル画像ソフトウェアを用いて定量化され、各実験群の細胞の平均細胞内蛍光強度が比べられた。
【0105】
材料と方法
細胞株
米国培養菌保存施設(ATCC)から購入されたA549ヒト非小細胞肺腫瘍細胞は、10%のウシ胎児血清(FCS)と共にロズウェル公園記念研究所(RPMI)1640媒体で培養されて、1:3乃至1:8の比率で二次培養された。
【0106】
ATCCから購入されたMDA MB 435ヒト乳癌細胞は、10%のウシ胎児血清(FCS)と共にロズウェル公園記念研究所(RPMI)1640媒体で培養されて、1:3〜1:8の比率で二次培養された。
【0107】
被験物質
タキソール(登録商標)(ロット#729537)は、オハイオ州ベッドフォードのBen Venue Laboratories社から得られた。
【0108】
EmPAC(バッチ#T343)は、0.3mLベンジルアルコールと;5.6gの大豆油、6.61gのTween(登録商標)80を含む超音波処理された混合物および123.23mgの脂質混合粉末と;300mLのHPLCグレード水と、に超音波処理によって溶解された90.42mgのパクリタキセルを組み合わせ、1250の棒材で高圧均質化により乳化することによって調製された。次いで10gのデキストロースが200mLのこの溶液に加えられ、溶かすために超音波処理され、0.22μMのフィルタによって無菌ろ過された。得られた製品は、2.0%の大豆油と、2.2%のTween(登録商標)80と、400μg/mLの脂質混合粉末と、0.1%のベンジルアルコールと、300μg/mlのパクリタキセル(ロット#28042/kl)とを含んだ。
【0109】
GlobalRx社(エフランド(Efland)、ノースカロライナ州)から購入された注射可能な懸濁液のアブラキサン(登録商標)(ロット#200495、期限2007年4月;Abraxis BioScience社)は、100mgのパクリタキセルと900mgのHSAを含む粉末として提供された。次いでアブラキサン(登録商標)粉末は、5mg/mLのパクリタキセルと45mg/mLのHSAを含む懸濁液を生成するために20mLの無菌PBSを加えることによって再構成された。再構成されたアブラキサン(登録商標)は、安定性の消失を回避するためにパッケージ説明書に従って24時間以内で実験に利用された。
【0110】
試薬
1)ミリQ水
2)ベンジルアルコール、シグマ、ロット#02748PC
3)大豆油、シグマ、ロット#074k0169
4)Tween(登録商標)80、シグマウルトラ、ロット#073K00641
5)パクリタキセル(研究開発グレード)、インデナ(Indena)、ロット#28042/kl
6)デキストロース(無水粉末)、フィッシャー、ロット#024291
7)エマルシファン(Emulsiphan)脂質混合物#003/05
【0111】
抗体
1)マウス抗パクリタキセルIgG。カタログ番号TA12;ハワイバイオテクノロジー社、アイエーア、ハワイ州。
2)AlexaFluor488結合ニワトリ抗マウスIgG。分子プローブ社、ユージーン、オレゴン州。
【0112】
材料を染色する追加抗体
1)Nunc Lab Tek Cell チャンバスライドシステム。Nalge Nunc International社、ロチェスター、ニューヨーク州。
2)トリス緩衝食塩水(TBS)。Boston Bioproducts、ウスター(Worcester)、マサチューセッツ州
【0113】
研究デザインと手順
実験は、調査者が各被験物質の正体を知らされていないように設計された。被験物質は新しいチューブに配置され、実験に直接関与しない人によってラベルが張り替えられた;結果が計算された後、被験物質の正体が明かされた。
【0114】
>50%の密集度に成長させられた細胞について、媒体が除去され、細胞単層が5mLのPBSの添加によって簡単に洗浄され、続いて吸引された。2mLのトリプシンエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が各フラスコに加えられ、フラスコは5分間組織培養培養器に配置された。10mLの完全培地が酵素反応を停止させるために加えられ、細胞は血清ピペットにより再懸濁を繰り返すことによって分解された。10μLの細胞が10μLの0.4%トリパンブルー溶液に加えられ、混合され、この細胞溶液の〜10乃至20μLが血球計算器のチャンバに配置された。生細胞の数は、100X全体倍率で四角形の血球計算器チャンバのトリパンブルーを除外した細胞の数を数えることによって測定された。
【0115】
必要とされる細胞の容積は下記式によって測定された:
細胞の容積=(Ax104細胞/mL)(mLに必要な細胞のVtotal)÷(2df)(B細胞/mL)
ここで:dfは希釈比であり;Aは血球計算器で数えられた細胞の数であり;Bは実験に必要な細胞/mLの濃度である。
【0116】
A549肺腫瘍とMDA MB 435乳癌細胞は、4×104細胞/cm2で8つのウェルチャンバスライド内に培養された。細胞は、被験物質が加えられる前に24時間夜通し培養させられた。
【0117】
被験物質(各々2.5μMのパクリタキセルを含む)および被験物質のないコントロール完全培地が二重のチャンバスライドウェルに加えられ、培養哺乳動物細胞(5%CO2。95%02;37℃)を用いて標準状態で1時間培養された。培養期間の終わりに、細胞サンプルは1mLのPBSの添加によって暖かいPBSにより一度洗浄され、続いて暖かいPBSを吸引した。3mLの氷冷のメタノールが各組織培養ウェルに加えられ、細胞は15分間〜20℃でメタノール内で固定された。スライドは染色まで0.02%のアジ化ナトリウムを含むPBSに配置された。
【0118】
細胞サンプルは1時間pH8.0のTBS内の10%の正常ニワトリ血清(NCS)で遮断された。遮断後に溶液が除去され、細胞は、1時間および室温で2%のNCSとマウス抗パクリタキセルを1:100の希釈で含むTBSで培養された。一次の抗体培養の終わりに、細胞サンプルが洗浄ボトル内のTBSで簡単にすすがれ、チャンバスライド全体がTBSを含むコプリン染色びんに浸された。チャンバスライドの洗浄は、10分間撹拌プレートの撹拌棒によりTBSを攪拌することによって達成された。チャンバスライドは3つ変更したTBSで洗浄された。細胞は、室温で30分間Alexa Fluor488に結合した2%NCSとニワトリ抗マウスIgGを1:100の希釈で含むTBSにより染色された。第2の抗体培養の終わりに、細胞は洗浄ボトル内のTBSで簡単にすすがれ、上述したように洗浄された。染色された細胞は、14.3μMの4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール,二塩酸塩(DAPI)を含むFluoromountG封入剤(Southern Biotechnology社)により取り付けた細胞であり、カバーガラスで覆われた。
【0119】
スライドと細胞は、抗パクリタキセルのAlexa Fluorの第2染色を視覚化するために、励起480nmと出射520nmを用いるエピ蛍光顕微鏡で観察された。DAPIの染色体染色は、励起358nmと出射461nmのフィルタを用いて視覚化された。画像は、Zeiss AxiocamHRデジタルカメラとAxiovision画像収集および解析ソフトウェアを用いて得られた。パクリタキセル染色とDAPI染色の画像は、Zeiss AxiocamHRデジタルカメラにより各細胞領域について同時に取り込まれた。細胞領域のパクリタキセル染色の細胞内蛍光強度は、Axiovisionソフトウェアを用いることによって測定された。4乃至19個の細胞を各々含む細胞の8乃至11の重複しない領域の画像は、各サンプルの二重のウェルの双方から無作為に取り込まれた。全てにおいて、合計123乃至147個の細胞が各細胞サンプルについて分析された。細胞周囲長は、マウスカーソルで細胞のエッジをデジタルでトレースすることによって各細胞について手動で規定された。
【0120】
計算と統計的分析
蛍光強度と細胞面積の計算と統計的分析データはExcelのスプレッドシートにコピーされ、個別細胞の面積当たりの平均蛍光強度がExcelで計算された。
【0121】
平均細胞蛍光強度を計算するために、下記式が用いられた:
[(I1/A1)+(I2/A2)+(I3/A3)+...(In/An)]/n=細胞面積当たりの平均蛍光強度
ここで:Iは、細胞周囲長の手動トレースによって規定された各細胞面積の強度であり;Aは、各規定された細胞面積の面積であり;nは、サンプリングされた細胞の数である。
【0122】
平均細胞内パクリタキセルレベルは、各治療されたサンプルの面積当たりの平均蛍光強度によって測定され、異なる被験物質で治療された細胞間で比較された。
【0123】
EmPAC−、タキソール(登録商標)−、アブラキサン(登録商標)−治療細胞の平均蛍光強度値の統計有意差は、スチューデントのt検定を用いて比較された。
【0124】
結果
EmPAC、タキソール(登録商標)、またはアブラキサン(登録商標)で各々治療された108乃至147個のA549細胞の平均蛍光強度が測定された。各被験物質で治療したA549細胞サンプルの細胞当たりの平均蛍光強度は、表9に示されている。被験物質なしで治療された細胞は、特定の染色を示さなかった(データは示されない)。このため、未治療の細胞の蛍光強度は測定されなかった。さらに、これらはパクリタキセルで治療する際に形状が丸くなり、これが細胞質と細胞周辺を視覚化するのを困難にしたので、MDA−MB−435細胞の蛍光強度は測定されなかった。
表9.様々なパクリタキセル製剤に1時間晒されたA549細胞の細胞内蛍光性パクリタキセル
各群につき10乃至12の領域で109乃至147個の細胞より測定された。
表10.A549腫瘍細胞のパクリタキセル製剤の細胞面積当たりの細胞内蛍光性パクリタキセル強度を比較するステューデントt検定の結果
【0125】
図13で分かるように、EmPAC、タキソール(登録商標)、またはアブラキサン(登録商標)で治療された細胞は全て、微小管の典型的な核周囲の繊維模様を有した蛍光染色を示した。これは、パクリタキセルが微小管に貪欲に結合し、最初に細胞の微小管に局在化したので、抗パクリタキセル染色が特異的であったことを示している。
【0126】
スチューデントのt検定は、細胞面積値当たりの平均蛍光強度によって示されるように(表9および表10;EmPACとアブラキサン(登録商標)間、およびタキソール(登録商標)とアブラキサン(登録商標)間の比較はP<0.0001)、EmPACまたはタキソール(登録商標)の何れかで治療された細胞がアブラキサン(登録商標)のものと比べて著しく強い平均細胞内パクリタキセルレベルを有することを示した。この違いは統計的な有意値(P=0.08)以下であったが、EmPACがタキソール(登録商標)より適度に強い細胞内パクリタキセルレベルを持っていたこととが分かった(表9、116.7±2.0および112±1.8、それぞれ)。
【0127】
議論/結論
この研究の結果は、EmPACとタキソール(登録商標)製剤の双方がアブラキサン(登録商標)を行ったものよりパクリタキセルの細胞吸収を著しく多くすることができることを示している。これらの結果は、これらのパクリタキセル製剤による細胞増殖阻害に関する以前の研究の結果と一致しているように見え、これは、1時間細胞に一時的に晒された場合にEmPACとタキソール(登録商標)がアブラキサン(登録商標)と比べてより多くの細胞増殖阻害活性を持つことを示した。これらの3つの製剤が同じ活性成分を有するので、これらの3つの製剤の違いについて1つの可能性のある説明は、それらの媒体が原因であるであろう。この場合、アブラキサン(登録商標)の媒体が、パクリタキセル(EmPACとタキソール(登録商標)の媒体と比べて、細胞の吸収量を抑制する可能性がある。
【0128】
この研究による結果は、タキソール(登録商標)で調剤されたものとEmPACで調剤された放射標識パクリタキセルの細胞の吸収量を比較した実施例2の結果と一致している。しかしながら、実施例2の結果は、タキソール(登録商標)で治療された細胞のパクリタキセル吸収量と比べて、EmPACで治療されたA549細胞のパクリタキセル吸収量は著しく多いことを示した。多いが、タキソール(登録商標)で治療された細胞と比べてEmPACで治療された細胞のパクリタキセル吸収量が多いことがこの研究で観察されたが、この違いは統計的な有意値以下であった。この結果の違いは、EmPAC製剤が2つの研究で異なっていたという事実によるであろう。
【0129】
参照
Ibrahim NK,Desai N,Legha S,Soon−Shiong P,Theriault RL,Rivera E,Esmaeli B,Ring SE,Bedikian A,Hortobagyi GN,およびEllerhorst JA.2002年 ABI−007 Cremophor無し タンパク質安定化 パクリタキセルのナノ粒子製剤のフェーズIおよび薬物動態研究 Clin.Cancer Res.8:1038−1044。
Singla AK、Garg AおよびAggarwal D.2002年 パクリタキセルとその製剤 Int.J.Pharm.235:179−192。
【0130】
本発明は、癌細胞と癌組織を治療する抗癌剤を含む治療薬と診断薬を運ぶ組成形態でのデリバリシステムに向けられていることが理解されるであろう。したがって、全抗癌剤は本発明の範囲内であり、同様に異常な脂質代謝と脂質の高い吸収量を示す全病変組織と異常細胞は、癌細胞を含み、この治療薬によって治療されるであろう。
【0131】
前述の議論は、本発明の例示的実施形態を単に開示および記載するものである。当業者は、以下の特許請求の範囲に規定されている本発明の趣旨および範囲から外れずに、様々な変更、修飾および変形を行ってもよいことをこの議論および添付した特許請求の範囲から容易に理解するであろう。さらに、例示的実施形態が本書に記載されているが、他の当業者は本発明のその他の設計または使用に気づくであろう。したがって、本発明はその例示的実施形態に関して記載されているが、デザインおよび使用の双方における多くの変形が当業者に明らかであり、本出願が任意の適合またはその変形を包含するように意図されていることを理解されるであろう。よって、本発明は特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることを明確に意図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人を含む温血動物の細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態もしくは症候群またはこれらの症状を治療または予防するのに有用な医薬組成物であって、当該医薬組成物が、
異常細胞内に優先的または選択的に内在化することが可能な少なくとも1つの非二層形成脂質をそれぞれ含む脂質粒子で構成された脂質ナノエマルジョンと;
前記脂質ナノエマルジョンに連結される有効量の少なくとも1つの治療薬と;
薬剤的に受容可能な担体とを具え、
前記医薬組成物が均質化を介した処理によって生成されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記治療薬が微小管相互作用薬であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の医薬組成物において、前記微小管相互作用薬が、タキサン、ビンカアルカロイド、エポチロン、エリュテロビン、ドラスチン、コンブレスタチン、サルコジクチン、ラウリマリド、ジスコデルモリド、コルヒチン、フォモプシンA、ハリコンドリンB、スポンギスタチン1、ならびにこれらの誘導体、類似体、同属種および組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の医薬組成物において、前記タキサンが、パクリタキセル、セファロマンニン、ドセタセル、バッカチンIII、10−デアセチルバッカチンIII、デアセチルパクリタキセル、デアセチル−7−エピパクリタキセル、ならびにこれらの誘導体、同属種、類似体および組み合わせから成る群から選択されること特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の医薬組成物において、前記ビンカアルカロイドが、ビンクリスチン、ビンブラスチン、酒石酸ビノレルビン、ビンデシン、ならびにこれらの誘導体、同属種、類似体および組み合わせから成る群から選択されること特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記治療薬の量が前記医薬組成物の総体積ベースで少なくとも0.001重量%であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の医薬組成物において、前記治療薬の量が前記医薬組成物の総体積ベースで0.1乃至90重量%存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記非二層形成脂質が弱極性に過ぎないことを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の医薬組成物において、前記非二層形成脂質が実質的に非極性または中性であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の医薬組成物において、前記非二層形成脂質が中性であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が非二層形成脂質の混合物で構成されること特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が少なくとも7日間水相で安定的に分散されていること特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が少なくとも14日間水相で安定的に分散されていること特徴とする医薬組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が少なくとも1ヶ月間水相で安定的に分散されていること特徴とする医薬組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が少なくとも6ヶ月間水相で安定的に分散されていること特徴とする医薬組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が少なくとも1年間水相で安定的に分散されていること特徴とする医薬組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の医薬組成物がさらに、乳化促進剤を含むこと特徴とする医薬組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の医薬組成物において、前記乳化促進剤が、界面活性剤、植物性脂肪源、溶媒およびこれらの組み合わせから成る群から選択されること特徴とする医薬組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の医薬組成物において、前記非イオン性界面活性剤が洗浄性ポリソルベートであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の医薬組成物において、前記洗浄性ポリソルベートがTween80(登録商標)であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項22】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記非イオン性界面活性剤がソルビタンエステルであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の医薬組成物において、前記ソルビタンエステルが、脂肪族アシル化ソルビタンエステルとこのポリオキシエチレン誘導体、およびこれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項24】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記界面活性剤が、前記ナノエマルジョンの保存中の変質を防止するのに十分な量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項25】
請求項24に記載の医薬組成物において、前記界面活性剤が0.01乃至4.0重量/体積(w/v)%の量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項26】
請求項25に記載の医薬組成物において、前記界面活性剤が0.1乃至3.0重量/体積%の量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項27】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記溶媒が水混和性溶媒であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項28】
請求項27に記載の医薬組成物において、前記水混和性溶媒が、極性溶媒およびこの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項29】
請求項28に記載の医薬組成物において、前記溶媒が、極性の非プロトン性溶媒、極性のプロトン性溶媒、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項30】
請求項29に記載の医薬組成物において、前記極性の非プロトン性溶媒がジメチルスルホキシドであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項31】
請求項29に記載の医薬組成物において、前記極性のプロトン性溶媒がアルコールであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項32】
請求項31に記載の医薬組成物において、前記アルコールが、ブタノール、プロパノール、エタノール、メタノール、ベンジルアルコール、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項33】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記溶媒が前記界面活性剤の凝集の程度を制御するのに十分な量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項34】
請求項33に記載の医薬組成物において、前記溶媒が0.001乃至99.9体積/体積(v/v)%の量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項35】
請求項34に記載の医薬組成物において、前記溶媒が0.005乃至80体積/体積%の量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項36】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記植物性脂肪源が植物油であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項37】
請求項36に記載の医薬組成物において、前記植物油が、大豆油、亜麻油、大麻油、アマニ油、からし油、菜種油、キャノーラ油、ベニバナ油、ゴマ油、ひまわり油、ブドウ種油、アーモンド油、アプリコット油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、ココナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ニーム油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、ピーナッツ油、パンプキンシード油、米ぬか油、くるみ油、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項38】
請求項37に記載の医薬組成物において、前記植物油が大豆油であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項39】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記植物性脂肪源が、前記ナノエマルジョンの表面張力を高めるのに十分な量で存在し、これにより標的細胞の細胞質膜との疎水的相互作用の確率を高めることを特徴とする医薬組成物。
【請求項40】
請求項39に記載の医薬組成物において、前記植物性脂肪源が0.001乃至5.0体積/体積%の量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項41】
請求項40に記載の医薬組成物において、前記植物性脂肪源が0.005乃至4.0体積/体積%の量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項42】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記少なくとも1つの非二層形成脂質が、カルボン酸のグリセロールモノエステル、脂肪族アルコール、ステロール芳香族酸エステル、ステロール、テルペン、胆汁酸、胆汁酸のアルカリ金属塩、脂肪酸のステロールエステル、糖酸のステロールエステル、糖酸のエステル、脂肪族アルコールのエステル、糖質のエステル、脂肪酸のエステル、糖酸、サポニン、サポゲニン、グリセロール、脂肪酸のグリセロールジエステル、脂肪酸のグリセロールトリエステル、脂肪族アルコールのグリセロールジエステル、および脂肪族アルコールのグリセロールトリエステル、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項43】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記少なくとも1つの非二層形成脂質が脂質混合物の形態で、
a)9乃至18の炭素原子を含むカルボン酸のグリセロールモノエステルと、10乃至18の炭素原子を含む脂肪族アルコールとから成る群から選択された少なくとも1つの第1要素と;
b)ステロール芳香族酸エステルから成る群から選択された少なくとも1つの第2要素と;
c)ステロール、テルペン、胆汁酸および胆汁酸のアルカリ金属塩から成る群から選択された少なくとも1つの第3要素とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項44】
請求項43に記載の医薬組成物において、前記カルボン酸のグリセロールモノエステルが飽和していることを特徴とする医薬組成物。
【請求項45】
請求項43に記載の医薬組成物において、前記カルボン酸のグリセロールモノエステルが飽和していないことを特徴とする医薬組成物。
【請求項46】
請求項43に記載の医薬組成物において、前記脂質混合物は、前記脂質粒子の総重量ベースで(a):(b):(c)が(1−5):(0.25−3):(0.25−3)の重量比を有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項47】
請求項43に記載の医薬組成物において、前記脂質混合物がさらに、
d)1乃至18の炭素原子を含む脂肪酸のステロールエステルと;糖酸のステロールエステルと;糖酸のエステルおよび10乃至18の炭素原子を含む脂肪族アルコールと;糖質のエステルおよび10乃至18の炭素原子を含む脂肪酸と;糖酸と、サポニンと;サポゲニンと;から成る群から選択された少なくとも1つの第4要素と、
e)グリセロールと;10乃至18の炭素原子を含む脂肪酸のグリセロールジエステルおよびトリエステルと;10乃至18の炭素原子を含む脂肪族アルコールとから成る群から選択された少なくとも1つの第5要素とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項48】
請求項47に記載の医薬組成物において、前記脂質混合物は、前記脂質粒子の総重量ベースで(a):(b):(c):(d):(e)が(1−5):(0.25−3):(0.25−3):(0.25−3):(0.25−3)の重量比を有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項49】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が0.1μg/mL乃至1000μg/mLの量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項50】
請求項49に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が10μg/mL乃至800μg/mLの量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項51】
請求項50に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が200μg/mL乃至600μg/mLの量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項52】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子の平均粒子径が最大0.2μ(ミクロン)であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項53】
請求項52に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子の平均粒子径が0.02μ乃至0.2μであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項54】
人を含む温血動物の疾病、状態、症候群、またはこれらの症状を診断するのに有用な医薬組成物であって、当該医薬組成物が、
癌細胞を含む異常細胞内に優先的または選択的に内在化することが可能な少なくとも1つの非二層形成脂質をそれぞれ含む脂質粒子で構成された脂質ナノエマルジョンと;
前記脂質ナノエマルジョンに連結される有効量の少なくとも1つの治療薬と;
薬剤的に受容可能な担体とを具え、
前記医薬組成物が均質化を介した処理によって生成されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項55】
人を含む温血動物の疾病、状態および症候群を治療または予防する方法であって、請求項1に記載の有効量の医薬組成物を前記動物に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法において、前記医薬組成物が動物の体内に外科的に挿入された生体医用器具の表面に染み込ませられることを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法において、前記生体医用器具はステントであることを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項1に記載の医薬組成物を調製する方法であって、
a)前記少なくとも1つの非二層形成脂質を有効量の少なくとも1つの治療薬と混合して脂質部を得るステップと;
b)前記脂質部を水相に加えて分散を得るステップと;
c)前記分散を高せん断力の条件下で撹拌して前記少なくとも1つの非二層形成脂質を十分に分散し、脂質粒子で構成された脂質ナノエマルジョンを形成するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項58に記載の方法がさらに、前記医薬組成物に乳化促進剤を加えるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項59に記載の方法において、前記乳化促進剤が、界面活性剤、溶媒、植物性脂肪源、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されること特徴とする方法。
【請求項61】
請求項60に記載の方法がさらに、前記治療薬と混合するステップに先立って前記界面活性剤を前記少なくとも1つの非二層形成脂質と混合するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項62】
請求項60に記載の方法がさらに、前記治療薬と混合するステップに先立って前記植物性脂肪源を前記少なくとも1つの非二層形成脂質と混合するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項60に記載の方法であって、前記少なくとも1つの非二層形成脂質と混合するステップに先立って前記溶媒を前記治療薬と混合するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項58に記載の方法において、前記撹拌するステップが前記脂質混合物を流体均質化プロセスによって処理するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項64に記載の方法において、前記流体均質化プロセスが、高せん断力均質化、超音波均質化、高圧均質化、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項58に記載の方法がさらに、前記ナノエマルジョンを殺菌するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項67】
請求項58に記載の方法がさらに、前記ナノエマルジョンを無菌ろ過によって処理するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項68】
請求項67に記載の方法において、前記処理するステップが前記ナノエマルジョンを0.2μの膜に通すステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項69】
人を含む温血動物の細胞過剰増殖によって特徴づけられた疾病、状態、症候群、またはこれらの症状を診断する方法であって、前記温血動物に請求項54に記載の有効量の医薬組成物を投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
人を含む温血動物の細胞過剰増殖によって特徴づけられる疾病、状態もしくは症候群またはこれらの症状を治療または予防するのに有用な医薬組成物であって、当該医薬組成物が、
異常細胞内に優先的または選択的に内在化することが可能な少なくとも1つの非二層形成脂質をそれぞれ含む脂質粒子で構成された脂質ナノエマルジョンと;
前記脂質ナノエマルジョンに連結される有効量の少なくとも1つの治療薬と;
薬剤的に受容可能な担体とを具え、
前記医薬組成物が均質化を介した処理によって生成されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記治療薬が微小管相互作用薬であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の医薬組成物において、前記微小管相互作用薬が、タキサン、ビンカアルカロイド、エポチロン、エリュテロビン、ドラスチン、コンブレスタチン、サルコジクチン、ラウリマリド、ジスコデルモリド、コルヒチン、フォモプシンA、ハリコンドリンB、スポンギスタチン1、ならびにこれらの誘導体、類似体、同属種および組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の医薬組成物において、前記タキサンが、パクリタキセル、セファロマンニン、ドセタセル、バッカチンIII、10−デアセチルバッカチンIII、デアセチルパクリタキセル、デアセチル−7−エピパクリタキセル、ならびにこれらの誘導体、同属種、類似体および組み合わせから成る群から選択されること特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の医薬組成物において、前記ビンカアルカロイドが、ビンクリスチン、ビンブラスチン、酒石酸ビノレルビン、ビンデシン、ならびにこれらの誘導体、同属種、類似体および組み合わせから成る群から選択されること特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記治療薬の量が前記医薬組成物の総体積ベースで少なくとも0.001重量%であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の医薬組成物において、前記治療薬の量が前記医薬組成物の総体積ベースで0.1乃至90重量%存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記非二層形成脂質が弱極性に過ぎないことを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の医薬組成物において、前記非二層形成脂質が実質的に非極性または中性であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の医薬組成物において、前記非二層形成脂質が中性であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が非二層形成脂質の混合物で構成されること特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が少なくとも7日間水相で安定的に分散されていること特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が少なくとも14日間水相で安定的に分散されていること特徴とする医薬組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が少なくとも1ヶ月間水相で安定的に分散されていること特徴とする医薬組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が少なくとも6ヶ月間水相で安定的に分散されていること特徴とする医薬組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が少なくとも1年間水相で安定的に分散されていること特徴とする医薬組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の医薬組成物がさらに、乳化促進剤を含むこと特徴とする医薬組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の医薬組成物において、前記乳化促進剤が、界面活性剤、植物性脂肪源、溶媒およびこれらの組み合わせから成る群から選択されること特徴とする医薬組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の医薬組成物において、前記非イオン性界面活性剤が洗浄性ポリソルベートであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の医薬組成物において、前記洗浄性ポリソルベートがTween80(登録商標)であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項22】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記非イオン性界面活性剤がソルビタンエステルであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の医薬組成物において、前記ソルビタンエステルが、脂肪族アシル化ソルビタンエステルとこのポリオキシエチレン誘導体、およびこれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項24】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記界面活性剤が、前記ナノエマルジョンの保存中の変質を防止するのに十分な量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項25】
請求項24に記載の医薬組成物において、前記界面活性剤が0.01乃至4.0重量/体積(w/v)%の量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項26】
請求項25に記載の医薬組成物において、前記界面活性剤が0.1乃至3.0重量/体積%の量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項27】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記溶媒が水混和性溶媒であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項28】
請求項27に記載の医薬組成物において、前記水混和性溶媒が、極性溶媒およびこの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項29】
請求項28に記載の医薬組成物において、前記溶媒が、極性の非プロトン性溶媒、極性のプロトン性溶媒、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項30】
請求項29に記載の医薬組成物において、前記極性の非プロトン性溶媒がジメチルスルホキシドであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項31】
請求項29に記載の医薬組成物において、前記極性のプロトン性溶媒がアルコールであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項32】
請求項31に記載の医薬組成物において、前記アルコールが、ブタノール、プロパノール、エタノール、メタノール、ベンジルアルコール、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項33】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記溶媒が前記界面活性剤の凝集の程度を制御するのに十分な量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項34】
請求項33に記載の医薬組成物において、前記溶媒が0.001乃至99.9体積/体積(v/v)%の量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項35】
請求項34に記載の医薬組成物において、前記溶媒が0.005乃至80体積/体積%の量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項36】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記植物性脂肪源が植物油であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項37】
請求項36に記載の医薬組成物において、前記植物油が、大豆油、亜麻油、大麻油、アマニ油、からし油、菜種油、キャノーラ油、ベニバナ油、ゴマ油、ひまわり油、ブドウ種油、アーモンド油、アプリコット油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、ココナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ニーム油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、ピーナッツ油、パンプキンシード油、米ぬか油、くるみ油、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項38】
請求項37に記載の医薬組成物において、前記植物油が大豆油であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項39】
請求項18に記載の医薬組成物において、前記植物性脂肪源が、前記ナノエマルジョンの表面張力を高めるのに十分な量で存在し、これにより標的細胞の細胞質膜との疎水的相互作用の確率を高めることを特徴とする医薬組成物。
【請求項40】
請求項39に記載の医薬組成物において、前記植物性脂肪源が0.001乃至5.0体積/体積%の量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項41】
請求項40に記載の医薬組成物において、前記植物性脂肪源が0.005乃至4.0体積/体積%の量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項42】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記少なくとも1つの非二層形成脂質が、カルボン酸のグリセロールモノエステル、脂肪族アルコール、ステロール芳香族酸エステル、ステロール、テルペン、胆汁酸、胆汁酸のアルカリ金属塩、脂肪酸のステロールエステル、糖酸のステロールエステル、糖酸のエステル、脂肪族アルコールのエステル、糖質のエステル、脂肪酸のエステル、糖酸、サポニン、サポゲニン、グリセロール、脂肪酸のグリセロールジエステル、脂肪酸のグリセロールトリエステル、脂肪族アルコールのグリセロールジエステル、および脂肪族アルコールのグリセロールトリエステル、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項43】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記少なくとも1つの非二層形成脂質が脂質混合物の形態で、
a)9乃至18の炭素原子を含むカルボン酸のグリセロールモノエステルと、10乃至18の炭素原子を含む脂肪族アルコールとから成る群から選択された少なくとも1つの第1要素と;
b)ステロール芳香族酸エステルから成る群から選択された少なくとも1つの第2要素と;
c)ステロール、テルペン、胆汁酸および胆汁酸のアルカリ金属塩から成る群から選択された少なくとも1つの第3要素とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項44】
請求項43に記載の医薬組成物において、前記カルボン酸のグリセロールモノエステルが飽和していることを特徴とする医薬組成物。
【請求項45】
請求項43に記載の医薬組成物において、前記カルボン酸のグリセロールモノエステルが飽和していないことを特徴とする医薬組成物。
【請求項46】
請求項43に記載の医薬組成物において、前記脂質混合物は、前記脂質粒子の総重量ベースで(a):(b):(c)が(1−5):(0.25−3):(0.25−3)の重量比を有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項47】
請求項43に記載の医薬組成物において、前記脂質混合物がさらに、
d)1乃至18の炭素原子を含む脂肪酸のステロールエステルと;糖酸のステロールエステルと;糖酸のエステルおよび10乃至18の炭素原子を含む脂肪族アルコールと;糖質のエステルおよび10乃至18の炭素原子を含む脂肪酸と;糖酸と、サポニンと;サポゲニンと;から成る群から選択された少なくとも1つの第4要素と、
e)グリセロールと;10乃至18の炭素原子を含む脂肪酸のグリセロールジエステルおよびトリエステルと;10乃至18の炭素原子を含む脂肪族アルコールとから成る群から選択された少なくとも1つの第5要素とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項48】
請求項47に記載の医薬組成物において、前記脂質混合物は、前記脂質粒子の総重量ベースで(a):(b):(c):(d):(e)が(1−5):(0.25−3):(0.25−3):(0.25−3):(0.25−3)の重量比を有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項49】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が0.1μg/mL乃至1000μg/mLの量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項50】
請求項49に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が10μg/mL乃至800μg/mLの量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項51】
請求項50に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子が200μg/mL乃至600μg/mLの量で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項52】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子の平均粒子径が最大0.2μ(ミクロン)であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項53】
請求項52に記載の医薬組成物において、前記脂質粒子の平均粒子径が0.02μ乃至0.2μであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項54】
人を含む温血動物の疾病、状態、症候群、またはこれらの症状を診断するのに有用な医薬組成物であって、当該医薬組成物が、
癌細胞を含む異常細胞内に優先的または選択的に内在化することが可能な少なくとも1つの非二層形成脂質をそれぞれ含む脂質粒子で構成された脂質ナノエマルジョンと;
前記脂質ナノエマルジョンに連結される有効量の少なくとも1つの治療薬と;
薬剤的に受容可能な担体とを具え、
前記医薬組成物が均質化を介した処理によって生成されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項55】
人を含む温血動物の疾病、状態および症候群を治療または予防する方法であって、請求項1に記載の有効量の医薬組成物を前記動物に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法において、前記医薬組成物が動物の体内に外科的に挿入された生体医用器具の表面に染み込ませられることを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法において、前記生体医用器具はステントであることを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項1に記載の医薬組成物を調製する方法であって、
a)前記少なくとも1つの非二層形成脂質を有効量の少なくとも1つの治療薬と混合して脂質部を得るステップと;
b)前記脂質部を水相に加えて分散を得るステップと;
c)前記分散を高せん断力の条件下で撹拌して前記少なくとも1つの非二層形成脂質を十分に分散し、脂質粒子で構成された脂質ナノエマルジョンを形成するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項58に記載の方法がさらに、前記医薬組成物に乳化促進剤を加えるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項59に記載の方法において、前記乳化促進剤が、界面活性剤、溶媒、植物性脂肪源、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されること特徴とする方法。
【請求項61】
請求項60に記載の方法がさらに、前記治療薬と混合するステップに先立って前記界面活性剤を前記少なくとも1つの非二層形成脂質と混合するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項62】
請求項60に記載の方法がさらに、前記治療薬と混合するステップに先立って前記植物性脂肪源を前記少なくとも1つの非二層形成脂質と混合するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項60に記載の方法であって、前記少なくとも1つの非二層形成脂質と混合するステップに先立って前記溶媒を前記治療薬と混合するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項58に記載の方法において、前記撹拌するステップが前記脂質混合物を流体均質化プロセスによって処理するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項64に記載の方法において、前記流体均質化プロセスが、高せん断力均質化、超音波均質化、高圧均質化、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項58に記載の方法がさらに、前記ナノエマルジョンを殺菌するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項67】
請求項58に記載の方法がさらに、前記ナノエマルジョンを無菌ろ過によって処理するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項68】
請求項67に記載の方法において、前記処理するステップが前記ナノエマルジョンを0.2μの膜に通すステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項69】
人を含む温血動物の細胞過剰増殖によって特徴づけられた疾病、状態、症候群、またはこれらの症状を診断する方法であって、前記温血動物に請求項54に記載の有効量の医薬組成物を投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2011−516472(P2011−516472A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502906(P2011−502906)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/004393
【国際公開番号】WO2009/123595
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510237262)
【氏名又は名称原語表記】SHORR,Robert
【出願人】(510237273)
【氏名又は名称原語表記】RODRIGUEZ,Robert
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/004393
【国際公開番号】WO2009/123595
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510237262)
【氏名又は名称原語表記】SHORR,Robert
【出願人】(510237273)
【氏名又は名称原語表記】RODRIGUEZ,Robert
【Fターム(参考)】
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