説明

微小粒子の生成

本発明は、関心ある化合物の粒子を生成するための方法に関する。本発明に従う方法では、関心ある化合物と溶媒との溶液が準備される。この溶液は、増粘またはゲル化され、粒子が形成される。本発明は、さらに、本発明によって得られる粒子に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、微小粒子を生成するための方法およびそれによって得られる微小粒子に関する。本発明は、特に、水に難溶性の生物学的または薬学的に活性な化合物の微小粒子の生成に関する。
【0002】
生体利用率が高く、溶解時間が短いことは、医薬品などの製品にとって望ましい特性であるが、医薬品(または薬剤発見の途上で開発されたリ−ド化合物)の中には、疎水性が高く、したがって、水には難溶性である。それ故、このように水に難溶性であることは、その生体利用率を制限し、そのため、薬剤として、その効果を制限する。
【0003】
薬剤などの微粒子製品の溶解速度は、その製品の粒子のサイズに依存し、粒子の表面積を増大することによって、たとえば、粒子サイズを減少することによって、溶解を高めることができることが知られている。さらに、薬剤などの製品の異なる結晶性多形体は、異なる速度で溶解することができ、非晶質粒子は、その結晶性同等物よりも速く溶解することも知られている。
【0004】
薬剤の難溶性の問題を解決するために開発された方法のうちいくつかには、製粉技術(米国特許第5145684号明細書)、液体への噴霧凍結(米国特許出願公開第2003/0041602A1号明細書)、テンプレ−ト乳剤(国際公開第03/059319A1号パンフレット)、蒸発沈殿(国際公開第02/47659A2号パンフレット)が含まれる。製粉技術は、研磨媒体からの汚染の問題を提起し、また、薬剤を分解させ得る過度の剪断力および高温度を受け、その過程中、多量の薬剤が失われる恐れがあり、大量の薬剤が通常必要となる。液体への噴霧凍結は、極低温液体、賦形剤または安定剤の使用を必要とし、10nm〜100μmの粒子を生成する。テンプレ−ト乳剤は、乳化剤および安定剤の存在を必要とし、これらは、生体内適用の前に除去されなければならない溶媒の存在下で、調製される必要もあり、0.2〜20μmの粒子を生成する。蒸発沈殿技術では、薬剤の水分散液が得られ、したがって、安定剤が必要である。その上、溶媒の蒸発のために、少なくとも50℃の温度が必要であり、生成された粒子は、50nm〜20μmである。
【0005】
国際公開第03/059319号パンフレットは、水中で、テンプレ−ト剤(典型的にはオイル)の乳剤を用いて薬剤粒子を生成する方法を記載している。薬剤を含む混合物を、好ましくは撹拌しながら乳剤に加えると、薬剤は、テンプレ−ト液滴中に移動する。この場合には、液滴のサイズは、薬剤粒子のサイズを決定する。記載の実施例では、得られた粒子は、典型的には、数マイクロメ−トルの直径を有し、この粒子を数時間、再分散した後初めて、数百ナノメ−トルのより微小な粒子に分解する。
【0006】
国際公開第03/059319号パンフレットは、水相中で乳剤液滴を安定化するための安定剤を随意的に含む。この方法では、安定剤は、薬剤粒子の結晶成長、凝結および凝集をも妨げる。乳剤はこのように用いられてもよく、または、使用済み液体(水および有機相)は除去されてもよく、それによって、薬剤を沈殿または結晶化させ、テンプレ−ト液滴のサイズによってサイズが制御される粒子を形成する。この方法は、かなり複雑で、相対的に少量の薬剤に対して、大量の多くの添加剤を必要とする。
【0007】
国際公開第03/032951号パンフレットは、製剤原料の結晶性粒子を調製するための大規模プロセスを記載しており、薬剤の溶液を、混合しながら反溶媒に加え、それによって、粒子スラリを形成する。安定剤を薬剤粒子の実質的成長を防ぐために用いてもよい。粒子スラリは、好ましくは(10℃未満で)冷却される。その実施例は、数百ナノメ−トルの直径を有する粒子の調製について記載している。このプロセスのためには、相対的に複雑な装置が必要である。
【0008】
医薬品などの化合物の粒子を調製するための別の方法が、依然必要である。
ナノ粒子(特に、1〜1000nmの数平均直径を有する粒子)などの、関心ある化合物の粒子を、特定の方法で溶液の粘度を変化させることによって溶液から調製できることが、現在、見出されている。
【0009】
したがって、本発明は、
−関心ある化合物と溶媒との溶液を準備する工程と、
−増粘剤またはゲル化剤を用いた前記溶液の増粘またはゲル化を引起こして増粘溶液またはゲルを生成する工程、
とを含む、関心ある化合物の粒子を生成するための方法に関する。
【0010】
粒子の形成は、溶液の増粘またはゲル化に際して、すなわち、増粘/ゲル化とともに、関心ある化合物の沈殿によって生じてもよく、あるいは、粒子の形成は後の段階で生じてもよい。
【0011】
沈殿は、増粘またはゲル化された溶液の乾燥時に達成されてもよい。乾燥は、溶媒蒸発、凍結乾燥、噴霧乾燥によって、または遠心分離によって達成されてもよい。この方法の沈殿のためには、凍結乾燥が、特に適切であると見出されている。
【0012】
本方法は、非常に急速にされてもよく、たとえば、粒子、特に、相対的に微小粒子(たとえば200nm未満の粒子)の形成は、必要な場合には、約1時間以内で、適切には、終了されてもよい。さらに、特に、粒子形成は、2〜15分以内で、さらに、特に、5〜10分以内で実施されてもよく、しかし、必要な場合には、より長いまたはより短い処理時間が可能である。
【0013】
本発明に従う方法は、高温度での操作は必要とせず、この方法を(積極的)冷却下で行う必要もなく、特に、周囲温度またはほぼ周囲温度(たとえば15〜30℃)で行われてもよい。
【0014】
本方法を高剪断力下で行う必要はない。実際は、本方法は、実質的な剪断加工あるいは他の形態の撹拌なしに、実施されてもよい。
【0015】
溶媒および増粘剤/ゲル化剤以外の添加剤の使用は必要ない。特に、本発明は、粒子成長/サイズ安定剤、乳化剤、界面活性剤などがない場合に、非常に適切に用いられ得る。
【0016】
それにも拘わらず、1つ以上の添加剤を加えてもよい。
安定剤は、粒子のサイズを制御するために用いられてもよい。一般に、安定剤は、安定剤の存在下で、沈殿によって調製された粒子がサイズを維持する効果を有し、安定剤なしで調製された粒子は、凝集されより大きな粒子になることがある。
【0017】
安定剤の選択は、関心ある化合物に依存するであろう。粒子安定剤の例には、コポリマおよびホモポリマおよびバイオポリマ、および/または分散補助剤を含むリン脂質、界面活性剤、重合体界面活性剤、ベシクル、ポリマが含まれる。他の適切な安定剤は、米国薬剤師会および英国薬学会(The American Pharmaceutical Association and The
Pharmaceutical Society of Great Britain)によって共同出版されたThe
Pharmaceutical Press, 1986の、「医薬品賦形剤のハンドブック」(The Handbook of
Pharmaceutical Excipients)に詳細が記載されている。このような安定剤は、市販されており、および/または当該技術分野で知られた技術によって調製することができる。
【0018】
適切な安定剤は、さらに、J.BrandrupおよびE.H.Immergutによって編集された「ポリマハンドブック」(Polymer Handbook)第3版にさらに記載されている。適切なホモポリマおよびコポリマの例には、
ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエンなどのポリオレフィンおよび置換ポリオレフィン、およびその塩素化誘導体、
ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸、
ポリ二置換エステル、
ポリビニルエ−テル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、およびポリビニルブチレ−ト、ポリビニルカプリレ−ト、ポリビニルラウレ−ト、ポリビニルステアレ−ト、ポリビニルベンゾエ−トなどのカルボン酸エステル、
ポリスチレン、
天然ゴムおよび塩酸ゴム、
エチル、ブチルおよびベンジルセルロ−ス、
セルロ−スエステル、および、
これらのポリマの組合せが含まれる。
【0019】
他の適切なポリマは、
非イオン性ポリアルキレングリコ−ル/(ポリ)カルボン酸化合物、
A−B−Aブロック型界面活性剤、および
ステアリン酸およびオレイン酸のアルカリエステルなどの天然植物油の高分子量エステルなどの、界面活性剤としても機能することができるポリマである。ポリマに加えて、非常に疎水性の小分子、すなわち、ヘキサデカンもまた用いることができる。好ましい安定剤は、GRAS(安全食品認定)リストの一部である安定剤、すなわち、ステアリン酸およびオレイン酸のアルキルエステルである。分子量または架橋度に応じて、安定剤は、液体またはオイルの物理的状態にあってもよく、固体であってもよい。
【0020】
安定剤は、分散相の重量で0.1〜90パ−セント、好ましくは、0.5〜50パ−セントの量で用いられてもよい。
【0021】
実施の一形態において、安定剤は界面活性剤である。本明細書における有利に用いられ得る界面活性剤は、当業者によって容易に決定することができ、各種非イオン、陰イオン、陽イオンおよび両性界面活性剤、またはこれらの界面活性剤の混合物を含む。
【0022】
適切な界面活性剤には、ゼラチン、カゼイン、レシチン、リン脂質、アラビアゴム、コレステロ−ル、トラガカント、脂肪酸および脂肪酸塩、塩化ベンザルコニウム、グリセロ−ルモノおよびジ脂肪酸エステルおよびエ−テル、セトステアリルアルコ−ル、セトマクロゴ−ル1000、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、たとえば、市販されているTween、ポリエチレングリコ−ル(たとえば、400g/molを超える分子量(Mw)を有する、固体のPEGを含む)、ポリ(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)コポリマ、たとえば、市販のPoloxomerまたはPluronic、ポリオキシエチレン脂肪酸エ−テル、たとえば、市販のBrij、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、たとえば、市販のSpan、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロ−スカルシウム、カルボキシメチルセルロ−スナトリウム、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロ−ス、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、非晶質セルロ−ス、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノ−ルアミン、ポリビニルアルコ−ル(PVA)、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(アクリル酸)、および他の陰イオン、陽イオン、両性イオンおよび非イオン界面活性剤が含まれる。
【0023】
非イオン界面活性剤の例には、
ポリアルキレングリコ−ルエ−テル、および脂肪族アルコ−ル、脂肪族アミンまたは脂肪酸とエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドとの縮合生成物、
異なる分子量および加水分解度のポリビニルアルコ−ル、
ポリビニルピロリドン、および
Brij、Tween、Span系の界面活性剤が含まれる。陰イオン界面活性剤には、アルキルアリ−ルスルホン酸の塩、硫酸化ポリグリコ−ルエ−テル、およびスルホコハク酸のエ−テルが含まれる。陽イオン界面活性剤には、第4アンモニウム化合物および脂肪族アミンが含まれる。使用される場合には、界面活性剤は、全組成の重量%で、0.1〜15%、さらに好ましくは、2〜10%の量で、一般に用いられる。
【0024】
特に、関心ある化合物が医薬品である場合には、追加の賦形剤を含んでもよい。これら賦形剤は、適切な使用(投与)のために粒子を均一に混合できるように、関心ある化合物の粒子が形成される前または後に、添加されてもよい。適正な賦形剤には、ポリマ、吸収促進剤、溶解促進剤、溶出速度促進剤、生体接着剤および制御された離型剤が含まれる。
【0025】
適切な賦形剤は、米国薬剤師会および英国薬学会(The American Pharmaceutical
Association and The Pharmaceutical Society of Great Britain)によって共同出版されたThe Pharmaceutical Press, 1986の、「医薬品賦形剤のハンドブック」(The
Handbook of Pharmaceutical Excipients)に詳細が記載されている。このような賦形剤は市販されており、および/または当該技術分野で知られた技術によって調製することができる。
【0026】
本発明に従う方法は、簡単な装置、たとえば、ガラス製バイアル瓶およびピペットのように簡単な装置を用いて実施することができると見出されている。
【0027】
加えて、本発明による方法は、大量バッチ処理のために用いられるのに適しているけれども、相対的に少量の関心ある化合物で、特に、約100mg以下、さらに特に、約10mg以下のバッチ処理のために、非常に適切に実施することができる。バッチサイズは、約1mg以下にさらに下げてもよい。この利点は、ほんの限られた量しか通常入手できない新規リ−ド化合物の有効性を見出すために、または、関心ある化合物が非常に高価でありかつ、ほんの限られた量しか必要ない場合、本方法を特に興味深くする。
【0028】
さらに、本発明は、生体利用率の向上を示す粒子を提供するために用いてもよい。加えて、本発明に従い得られる粒子は、写真撮影用途、化粧品において有利に用いられてもよい。特に、日よけスクリ−ン、光輝製品などにおいて、粒子は、ゲル中の分散の形態で、非常に適切に用いられ、ゲル中で安定化される。
【0029】
本発明に従う方法は、相対的に小さなサイズを有する粒子を調製するのに特に適していると見出されている。たとえば100μmまでの、より大きな粒子を調製することも可能であるけれども、約500nm未満、特に約300nm未満、さらに特に約100nm未満の数平均直径を有する微粒子物質を調整することができると見出されている。
【0030】
粒子サイズの下限は、関心ある化合物の分子サイズによって決定され、したがって、1nm未満であってもよい。実際上の理由で、数平均粒子サイズは好ましくは、少なくとも1nmであり、さらに好ましくは、少なくとも10nmである。
【0031】
本発明は、非晶質または結晶質の固体粒子を調製するための非常に適切な方法を提供する。非晶質粒子は、一般に、同じ組成の結晶質粒子よりも速い溶解速度を示すので、望ましい。
【0032】
本発明に従って用いられる化合物は、原則として、溶液から沈殿することができるいかなる化合物であってもよい。関心ある化合物またはゲル化剤/増粘剤に言及される場合には、化合物またはゲル化剤/増粘剤のプロトン化されたまたは脱プロトン化された形態の全てを含むものと意図されると知られている。したがって、原材料として用いられる基本形態の化合物またはゲル化剤/増粘剤は、本方法でプロトン化されてもよく、その結果、粒子は、酸性形態またはその逆の形態で、化合物またはゲル化剤/増粘剤(のいくつか)を含有する。
【0033】
本発明は、水に難溶性の化合物の粒子を調製するのに非常に適していると見出されている。この文脈においては、水に難溶性とは、特に、溶解度が20℃で10mg/ml未満であることを意味する。
【0034】
好ましくは、関心ある化合物は、医薬品、ペプチド、核酸、タンパク質、酵素、成長因子、ステロイド、ホルモン、抗生物質、遺伝子治療剤、触媒、吸着剤、顔料、塗料、パ−ソナルケア製品(化粧品を含む)、研磨剤、感知器用粒子、金属、合金、セラミック、膜材料、栄養物質、抗ガン剤、肥料、殺虫剤、除草剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0035】
関心ある化合物が生物学的または薬学的に活性な化合物である方法で、非常に良好な結果が達成されている。
【0036】
好ましくは、化合物は、金属有機化合物および有機金属化合物、たとえばシス白金錯体を含む、有機化合物の群から選択される。
【0037】
増粘剤として、溶媒の粘度を増加させるために適したいかなる薬剤を用いてもよい。
ゲル化剤として、溶媒と組み合わせてゲルを形成するのに適したいかなる薬剤を用いてもよい。ゲルという用語は当該技術分野で一般に認められている。ゲルとは、ゲルが調製された容器を倒置させたとき、液が即時に流れると認められない場合にそのようなものとして通常定義される。
【0038】
適切な増粘剤およびゲル化剤が当該技術分野で知られており、ゼラチン、でんぷんおよびそれらの誘導体、セルロ−スおよびその誘導体、ゴム、ソルビト−ル、N,N’ジベンゾイル−L−システインなどのアミノ酸誘導体、ステロイド誘導体および糖誘導体を含む。
【0039】
本発明に従って使用するための非常に適切な増粘剤またはゲル化剤は、低分子量の増粘剤または低分子量ゲル化剤であり、特に、約5000g/mol未満の分子量を有するもの、さらに特に約100〜2000g/molの分子量を有するものである。
【0040】
P.Terech著、第8章、第209〜263頁、1997年、D.Robb編、「スペシャリスト界面活性剤」(Specialist Surfactants)に記載された有機ゲル化剤が非常に適切である。特に、少なくとも8個の炭素原子および好ましくは、12−ヒドロキシステアリン酸または12−ヒドロキシオレイン酸およびそれらのアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩などの少なくとも12個の炭素原子を含有する直鎖または分岐脂肪族炭素鎖を有するヒドロキシル化されたカルボキシル脂肪酸、
カルボン酸のアミド、特に、シクロヘキサントリカルボン酸とラウリルアミンとの反応の結果生じるシクロヘキサントリカルボキサミドなどのトリカルボン酸のアミド、
1,2−ビス(ウレイド−)ベンゼンおよびトランス−1,2−ビス(ウレイド−)シクロヘキサンの誘導体および特に、Chemical Eur. J. 1999.5. No.3のR. M. Kellogg, B.
L. Feringa外による論文に記載された誘導体などのウレイド誘導体、
バリンのエステルまたはアミン、および特に「スペシャリスト界面活性剤」(
Specialist Surfactants)(上記参照)に記載されたエステルまたはアミン、
N−アシルアミノ酸および誘導体、および特に、N−アシルアミノ酸と1〜22個の炭素原子を含有するアミンとの反応の結果生じるジアミドなどのN−アシルアミノ酸のアミド、たとえば、国際公開第93/23008号パンフレットに記述されているものおよび特にアシル基がC8〜C22アルキル鎖を表すN−アシルグルタミン酸のアミド、
1〜22個の炭素原子、および好ましくは6〜18個の炭素原子を有するジアミドであって、その炭化水素鎖がエステル、尿素、フルオロ基によって随意的に置換されたジアミド(仏国特許出願公開第009317号明細書参照)、
D−17,17−ジプロピル−17a−アザ−5−ホモアンドロスタン−3β−オル17a−オキシまたは、D−17,17−ジプロピル−17a−アザ−5−ホモアンドロスタン−3β−オルなどの、ステロイドのアミンまたはアミドおよび特に、デオキシコ−ル酸、コ−ル酸、アポコ−ル酸、リトコ−ル酸およびそれらの塩のアミンまたはアミド、
いくつかの芳香環を有する化合物、および特に、2,3−ビス−n−デシクロオキシアントラセン、2,3−ビス−n−デシクロオキシアントラキノンなどの8〜30個の炭素原子を有する少なくとも2つのアルキル鎖を含有するまたはコレステリル4−(2−アントリルオキシ)ブタン酸またはコレステリルアントラキノン−2−カルボキシラ−トおよびそれらの誘導体などのステロイド基を含有するアントリル誘導体、
書籍「スペシャリスト界面活性剤」(Specialist Surfactants)に記載されたものなどのアゾベンゼンステロイド、
単核銅−β−ジケトナ−ト(ビス(3,4ノニルオキシベンゾイル)メタンで八置換された銅の錯体)、二核銅テトラカルボキシレ−トまたは三置換体のパラ−カルボキシフェニルポルフィリンとのZn(II)の錯体などの有機金属化合物、
少なくとも2つの直鎖または分岐アルキル鎖を含有する塩の形態の界面活性剤および特に、リン酸ジヘキサデシル(C16)またはスルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)のアルミニウム塩およびそのアルカリ金属塩(Na)などの8〜30個の炭素原子を有する2つのアルキル鎖を含有するアルカリ金属またはアルミニウムのリン酸アルキル、1,3:2,4−ジ−o−ベンジリデン−D−ソルビト−ルなどのベンジリデンソルビト−ルまたはアルジト−ルおよび誘導体、およびこれらの混合物。
下記の式(I)によって表されるゲル化剤/増粘剤で、良好な結果が達成されている。
【0041】
【化4】

【0042】
ここで、
Aは、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、芳香族またはヘテロ芳香族部分を表わし、
,XおよびXのそれぞれは、独立して、部分−N(H)−,−C(O)−,−O(CO)−,−OC(S)−,−C(S)−,−NHC(S)−および−NH−C(O)−から選択され、
Am,AmおよびAmのそれぞれは、独立して、アミノ酸またはその誘導体、あるいは複数のアミノ酸またはそれらの誘導体に基づく部分であり、
,YおよびYのそれぞれは、対応するX(Yに対するX、Yに対するXおよびYに対するX)が、−C(O)−または−NH−C(O)−およびn=1である場合には、−OR,−N(OH)Rおよび−NRの群から好ましくは独立して選択され、Y,YおよびYのそれぞれは、対応するX(Yに対するX、Yに対するXおよびYに対するX)が−NH−およびn=1または2である場合には、−C(O)R,−C(O)−NR,−C(O)−OR,−C(S)R,−C(S)−NR,−C(S)−ORおよびRの群から独立して選択され、ここで、各Rは、独立して、H、あるいは、場合により、芳香族、エステルまたはエ−テル部分または1つ以上の他のヘテロ原子、好ましくは、O,N,P,SおよびBから選択されたヘテロ原子を含み、1〜40個の炭素原子を有してもよい置換されたまたは非置換の、分岐、環状または直鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、
nは1または2である。
【0043】
Aが(ヘテロ)シクロアルキルである場合には、示された全ての置換基(各X−Am−Y基)は、好ましくは、(ヘテロ)シクロアルキル核のエクアトリアル位にある。
【0044】
式Iに従う化合物の調製およびこのような化合物の好ましい例は、国際出願第PCT/NL03/00381号または欧州出願第02077007.9号から既知であり、その内容は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0045】
本発明に照らして、シクロアルキル基は、4〜18個の炭素原子を有する飽和または不飽和環状アルキル基として定義される。5員環または6員環を含むシクロアルキル基、特にシクロペンチル、シクロペンタジエニルまたはシクロへキシル基が好ましい。環付加された多環系は、シクロアルキル基という用語によっても包含されることに注目すべきである。デカヒドロナフタレン、ドデカヒドロフェナレンおよびヘキサデカヒドロピレンがその例である。
【0046】
ヘテロシクロアルキル基は、環中に1つ以上のヘテロ原子(すなわち、炭素原子以外の原子)を有する飽和または不飽和環状アルキル基として定義される。ヘテロシクロアルキル基は好ましくは、1つ以上の縮合または結合4員環〜16員環、さらに好ましくは、5員環または6員環を含む。環中に存在することができる好ましいヘテロ原子は、酸素、イオウおよび窒素である。仮に存在する場合には、1つ、2つまたは3つのヘテロ原子が環中に存在することが好ましい。これらの原子は同じであってもよいし、または異なっていてもよい。環付加された多環系は、ヘテロシクロアルキル基という用語によっても包含されることに注目すべきである。テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、ジオキサン、トランスヘキサヒドロイソクロマンおよびトランスヒドロイソチオクロマンがその例である。
【0047】
芳香族基は、環系だけが炭素原子を含有する、6〜18個の炭素原子を含む芳香特性を有する環状基として定義される。縮合または結合多環系も、芳香族基という用語によって包含されることは注目すべきである。例には、フェニル、ナフチル、アンスラシルおよびピレンがある。好ましくは、三置換芳香族環は、三置換ベンゼン環である。
【0048】
ヘテロ芳香族基は、環中の1つ以上の炭素原子がヘテロ原子によって置換された芳香族基である。環中に存在してもよい好ましいヘテロ原子は、酸素、イオウおよび窒素である。1つ、2つまたは3つのヘテロ原子が環中に存在することが好ましい。これらの原子は同じであってもよいし、または異なっていてもよい。縮合または結合多環系も、ヘテロ芳香族基という用語によって包含されることに注目すべきである。例はフラン、ピリジン、ピラジン、キノリンおよびチオフェンである。
【0049】
本発明に従う方法におけるゲル化剤/増粘剤として非常に適切なものは、非対称性の三置換環状増粘剤またはゲル化剤で、そのうち環が1つまたは2つのX−Am−Y基によって置換され、残りの1つまたは2つの置換基は、−X−Z基であり、
Xのそれぞれは、部分−N(H)−,−C(O)−,−O(CO)−,−OC(S)−,−NHC(S)−および−NH−C(O)−から独立して選択され、
Amのそれぞれは、独立して、アミノ酸またはその誘導体にあるいは複数のアミノ酸またはそれらの誘導体に基づく部分であり、
Yのそれぞれは、−OR,−N(OH)R,−NR,−C(O)R,−C(O)−NR,−C(O)−OR,−C(S)R,−C(S)−NR,−C(S)−ORおよびRの群から独立して選択され、各Rは、独立してH、あるいは、場合により、芳香族、エステルまたはエ−テル部分または1つ以上の他のヘテロ原子を含有し、かつ1〜40個の炭素原子を有してもよい、置換されたまたは非置換の、分岐、環状または直鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、
各Zは、−OH,−COOH,−C(O)NHR,−NHC(O)Rおよび−NHRからなる群から独立して選択され、各Rは、独立して上記で定義され、
n=1または2である。
【0050】
このような、非対称三置換増粘剤またはゲル化剤は、以下の式の1つによって表され、式中、Aは増粘剤またはゲル化剤の環(核)を表し、各X,Y,ZまたはAmは、同じまたは異なるX,Y,ZまたはAmを表してもよい。
【0051】
【化5】

【0052】
または
【化6】

【0053】
非対称という用語は、非対称三置換ゲル化剤/増粘剤の置換基の少なくとも2つが相互に異なっており、特に、増粘剤またはゲル化剤が2つの同一のX−Am−Y基を含有する場合には、−X−Z基は−X−Am−Y基とは異なるべきであり、増粘剤またはゲル化剤が2つの同一の−X−Z基を含有する場合には、−X−Am−Y基は−X−Z基とは異なるべきであると定義するために本明細書では使われる。好ましくは、増粘剤またはゲル化剤は、−X−Am−Yによって表されるいかなる部分をも表さない少なくとも1つの−X−Z基が存在するという意味で非対称である。さらに特に、置換基の少なくとも1つは、本明細書に定義されるように、好ましくは、Am基が無い。
【0054】
三置換増粘剤/ゲル化剤の3つの置換基は、好ましくは、環構造の周りに、すなわち、6員環中に、本質的に均一に分布され、その環は好ましくは1,3,5置換環である。
【0055】
非対称三置換増粘剤/ゲル化剤における置換環は、シクロアルキル、へテロシクロアルキル、芳香族またはヘテロ芳香族部分であってもよい。三置換環が炭素原子のみによって形成される増粘剤またはゲル化剤で非常に良好な結果が達成されている。
【0056】
(ヘテロ)シクロアルキルの場合には、置換基は、好ましくは全てエクアトリアル位にある(すなわち、シクロへキシル核を有するゲル化剤/増粘剤の場合は、その化合物は「シス、シス」型立体配置を有する)。
【0057】
好ましくは、置換環は、6員環であり、好ましくはシクロヘキサンまたはフェニルである。さらに好ましくは、環は、1,3,5置換環である。
【0058】
非対称ゲル化剤/増粘剤中の各Xは、同じであっても、または異なっていてもよい。したがって、Am基およびZ基は、C=O基またはNH基に結合することによって、それぞれ、独立してAに接続することができる。X−Am−Y基中の各Xに対する選択は、それぞれのAm基がそのNH末端またはCOOH末端で結合されるかどうかに依存するであろう。アミノ酸またはオリゴペプチドがNH末端を介して接続される場合は、この特定のXは−C(O)−または−NH−C(O)−となるであろう。同様に、アミノ酸またはオリゴペプチドがそのCOOH末端を介して接続される場合には、この特定のXは、NH基となるであろう。
【0059】
式Iに従うゲル化剤/増粘剤または式IIまたはIIIに示されるような非対称ゲル化剤/増粘剤では、各Am基はアミノ酸またはその誘導体に基づいている。原則として、少なくとも1つの−NHまたは−NH基および少なくとも1つの−COOH基を含むいかなる基もアミノ酸と考えられる。各Amは完全なアミノ酸を表すとは限らないと理解されるであろう。これらのアミノ酸は、NH末端を介して対応するX基およびCOOH末端を介して対応するY基に接続され、逆の場合も同様である。この接続は、たとえば、アミド、尿素、チオアミドまたはカルバミン酸結合であってもよい。したがって、NH末端の1つまたは2つのH原子およびCOOH末端の−OHは、構造全体の一部ではない。
【0060】
Am基のいずれも1個より多いアミノ酸またはその誘導体に基づいており、したがって、ジペプチド、トリペプチドまたはオリゴペプチドなどのペプチドを含むことも可能である。好ましくは、各オリゴペプチドは、12個まで、さらに好ましくは2〜5個のアミノ酸に基づき、これらのアミノ酸は相互に頭尾接続している直鎖ペプチドを形成する。アミノ酸は、全ての天然および非天然(合成、たとえば、βアミノ酸またはαアルキル化アミノ酸)から選択されてもよい。好ましくは、アミノ酸は、α,βまたはγアミノ酸であり、これらのDおよびLの両異性体が適している。特に好ましいのはαアミノ酸である。アミノ酸の適切な例には、ロイシン、イソロイシン、リシン、バリン、プロリン、メチオニン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸およびアルギニンがある。Am基がフェニルアラニンまたはメチオニンに基づく増粘剤またはゲル化剤で、非常に良好な結果が達成されている。また別の好ましいAm基は、システインに基づく。システイン残基の存在は、架橋ゲルを形成するために、非常に適切に用いられてもよい。結局、システイン残基中の−SH基は、架橋ゲルを形成するのに適切に用いられてもよいジスルフィド架橋を形成することができる。本発明に照らして、アミノ酸の誘導体は、(たとえば、アスパラギン酸、リシンまたはグルタミン酸の)エステルまたはアミドおよび(たとえば、セリン、チロシンまたはシステインの)(チオ)エ−テルを含むものと定義される。
【0061】
各アミノ基は、置換基で置換され、各置換基は、芳香族、エステルまたはエ−テル部分またはN,S,O,PおよびBの群から選択された1つ以上の他のヘテロ原子を場合により含有する置換、非置換、分岐、環状または直鎖のアルキルまたはアルケニル基であってもよい。好ましくは、各置換基は、12個より多い炭素原子を含まない。好ましくは、Am基のそれぞれは、置換基を全然含まないか、または1つしか含まない。
【0062】
特に、三置換体の非対称ゲル化剤または増粘剤の場合には、末端基Yは、それぞれ、対応するXの性質およびnの値に依って、各群から独立して選択されてもよい。たとえば、Xが−C(O)−,−C(S)−,−OC(O)−,−OC(S),−NH−C(O)−または−NH−C(S)−およびn=1の場合は、Yは、−OR,−N(OH)Rまたは−NRであってもよい。Xが、たとえば、−NH−およびn=2である場合には、Yは、−C(O)R,−C(O)−NR,−C(O)−OR,−C(S)R,−C(S)−NR,−C(S)−ORまたはRであってもよい。後者の場合には、同じX−Am−Yの2つのY基は、HではないR基によって相互接続されてもよい。これに関連して、上述のR基のそれぞれは、H、および場合により芳香族、エステルまたはエ−テル部分または1つ以上の他のヘテロ原子を含有し、かつ1〜40個の炭素原子、好ましくは12個以下の炭素原子を有してもよい置換されたまたは非置換の、分岐、環状または直鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニル基の群から独立して選択されてもよい。非常に良好な結果が、とりわけ、ヘテロ原子の存在しないR基で、たとえば、ナフチル(−C10)で、または−CH−フェニル(−C)で達成されている。
【0063】
R基が1つ以上のヘテロ原子を含有する場合は、ヘテロ原子は、好ましくは、O,N,S,PおよびBから選択される。
【0064】
特に、式Iに従うゲル化剤/増粘剤においては、各Yは、好ましくは、−OH,−O−(CH−OH,−NH,−NH(CHO(CHOH,−O(CHO(CHOH,−NHOH,−NH(CHOHから独立して選択される。前記の基において、i,jは、好ましくは、1〜8の範囲で、それぞれ独立して選択され、さらに好ましくは、それぞれ独立して1または2である。非常に良好な結果が、このようなゲル化剤/増粘剤で達成されており、置換環は、置換シクロヘキサンまたは置換ベンゼンである。
【0065】
非常に良好な結果がゲル化剤/増粘剤で、特に、式IIまたはIII−に従う非対称ゲル化剤/増粘剤で達成されており、各Yは、−OCH,−OCHCH,−NH(CHOCHCH,−O(CHOCHCH,−NH−alk(ここで、alkはアルキル基である),ナフチル基、−NH−ナフチル基,−NH−(CH)Ph,NH−Ph−OMeおよびNH−キノリンから独立して選択される。
【0066】
特に、式I,IIまたはIIIに従うゲル化剤/増粘剤は、関心ある化合物を含むゲルまたは増粘溶液を形成するために、本発明に従って用いられてもよく、このゲル化剤/増粘剤は、良好な粘膜接着特性を有する。この点については、Yが−[(CH−O−](CH−OH基であるようなゲル化剤/増粘剤で良好な結果が達成されている。このようなゲル化剤/増粘剤は、粘膜層を介する摂取を意図した医薬品の粒子を調製する方法に使用するのに非常に有利であると見出されている。ここで、k,lおよびmは整数であり、好ましくは、それぞれ独立して1または2であり、さらに好ましくは、kおよびmは2であり、mは1である。
【0067】
このようなゲル化剤は、関心ある医薬品化合物と組み合わせて、製剤において有利に含まれてもよく、なぜならば、関心ある化合物は、このようなゲル化剤と組み合わせて生体利用率の向上を示すと見出されているからである。関心ある化合物の摂取の改善は、たとえば、鼻または胃腸管を介した、関心ある化合物の粘膜層への付着性に寄与するゲル化剤/増粘剤の良好な粘膜接着特性からも由来すると、発明者によって考えられている。
【0068】
非対称増粘剤またはゲル化剤が2つの−X−Am−(Y)基を含む場合は、両方の−X−Am−(Y)基は好ましくは同じである。
【0069】
実施形態において、本発明に従うゲル化剤/増粘剤、特に、本発明に従うゲル化剤は、架橋を形成することによって、ゲル化または増粘に寄与することができる反応基を含有している。適切な反応基を選択することによって、本発明に従うゲル化剤または増粘剤を用いて、さらなる反応を受け得るゲルまたは増粘溶液を形成してもよい。Am,Zおよび/またはYのうちいずれでもこのような反応基を含有してもよい。反応基の例は、−C=C−基(たとえば、YまたはZのR部分における)および−SH基(たとえば、Am部分中における)である。
【0070】
たとえば、反応基、たとえば末端アルケニル基(C=C)−を有するゲル化剤または増粘剤は、粘稠溶液またはゲルの形成後、たとえば、J.Am.Chem.Soc.(1995)117,12364に見出されるような、標準手順後のメタセシス反応によって相互接続される。メタセシス反応は、粘稠溶液またはゲルを(より粘り気のある)ゲルに変え、このゲルは、たとえば、クロマトグラフ用のカラムで用いることができる(Sinner
et al., Angew. Chem. Int. Ed. 39 (2000)1433-1436およびSinner et al.,
Macromolecules 33 (2000) 5777-5786参照)。
【0071】
その上、反応基を化学物質と反応させることによってゲル化または増粘を達成することができ、たとえば、チオ−ル基を含む本発明に従うゲル化剤/増粘剤をビスマレイミドなどと反応させてゲル化または増粘を達成してもよい。架橋を達成するのに適したこのような反応基を含む既知のゲル化剤および増粘剤のための適切な反応条件は、当該技術分野で周知である。他の架橋反応のための適切な反応条件は、当該技術分野で周知である。
【0072】
非対称三置換ゲル化剤/増粘剤におけるZ基は、Yに対して定義される基であってもよい。好ましくは、各X−Zは、C(O)NHRまたはC(O)ORからなる基から独立して選択され、ここで、Rは、さらに好ましくは、Hまたはアルキルであり、さらに一層好ましくは、Hまたは−CH、−NHC(O)R、−NHR、−C(O)−NH−(CH−OH、ここで、iは好ましくは1〜8で、たとえば2であり、−C(O)−NH−(CH−O−(CH−OH、ここで、i,jは好ましくは1〜8で、たとえば1または2であり、および−C(O)NH(CH−pyr、ここで、iは好ましくは、1,2または3である。これらのX−Z基はいずれも、増粘剤またはゲル化剤の置換環が、置換シクロヘキサンまたは置換ベンゼンである場合は特に適していると見出されている。本発明の特に好ましい方法では、環は置換シクロヘキサンである。
【0073】
特に、非対称1,3,5置換シクロへキサンの場合は、ゲル化または増粘に関して非常に良好な結果が、−X−Zが−COOH,−C(O)−NH,−C(O)−NHCH,−C(O)−NH−(CH−OH,−C(O)−NH−(CH−O−(CH−OHおよびC(O)NHCH−pyrの群から選択された増粘剤またはゲル化剤で達成されている。
【0074】
式Iに従うゲル化剤または増粘剤を調製する典型的な方法は、6つの好ましい群の化合物を参照してここで説明する。本発明の範囲を逸脱せずに、この合成における多くの変形例が可能であると当業者によって理解されるであろう。
【0075】
群1
【化7】

【0076】
この式に従う増粘剤またはゲル化剤は、シクロヘキサントリカルボン酸とSOClとの反応(塩化アシルの生成)および、(とりわけ、M. Kunishima, C. Kawachi, J.
Morita, K. Tereao, F. Iwasaki, S. Tani, Tetrahedron (1999) 13159-13170; M. B.
Smith, J. March, March’s Advanced Organic Chemistry, 2001, 第5版, Wiley
In terscience; E. Muller, O Bayer, Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, Synthesen von Peptiden, Band XV/1 and 2, 1974, George Thieme Verlag; N. Yamada, K. Okuyama, T. Serizawa, M. Kawasaki, S. Oshima, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2, (1996) 2707-2713; H. Tamiaki, A. Kiyomori, K. Maruyama, Bull. Chem. Soc. Jpn, 66, (1993) 1768-1772; S. Bhattacharya, S.N.G. Acharya, Chem. Mater. (1999) 3121-3132)に記載される[アミノ酸の]アミドおよびエステル生成のための標準有機手順に従う、)アミノ酸アルキルエステルまたはアミドあるいはアミノ酸グリコ−ルエステルまたはアミドなどのアミノ酸誘導体の遊離アミノ基との続いての反応(K. Hanabusa,
A. Kawakima, M. Kimura, H. Shirai, Chem. Lett (1997) 191-192)によって調製することができる。
【0077】
【化8】

【0078】
Y=OHは、アルカリ性条件下で加水分解によってY=OR′から容易に調製することができる。
【0079】
群2
【化9】

【0080】
この式に従う増粘剤またはゲル化剤は、ベンゼントリカルボン酸のSOClとの反応(塩化アシルの生成)および、アミノ酸アルキルエステルまたはアミドもしくはアミノ酸グリコ−ルエステルまたはアミドなどのアミノ酸誘導体の遊離アミノ基との続いての反応(K. Hanabusa, A. Kawakima, M. Kimura, H. Shirai, Chem. Lett (1997) 191-192)によって調製することができる。
【0081】
群3
【化10】

【0082】
この式に従う増粘剤またはゲル化剤は、とりわけ、トリアミノシクロヘキサン(T.
Bowen, R.P. Planalp, M.W. Brechbiel, Bioorg. Med. Chem. Lett. (1996) 807-810)と、
a)N末端が保護されたアミノ酸、たとえば、NH(CO)−R(J. March, March’s
Advanced Organic Chemistry, 2001, 第5版, Wiley Interscience; E. Muller, O.
Bayer, Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, Synthesen von Peptiden,
Band XV/1 and 2, 1974, George Thieme Verlag),NH(CO)OR(H.J. Knolker,
T. Braxmeier, Synlett. (1997) 925-928, J.S. Nowick, D.L. Holmes, G. Noronha,
E.M. Smith, T.M. Nguyen, S-L. Huang, J. Org. Chem., (1996)3929-3934, I.
Vauthey, F. Valot, C. Gozzi, F. Fache, M. Lemaire, Tetrahedron Lett. (2000) 6347-6350), S. Gasataldi, S.M. Weinreb, D. Stein, J. Org. Chem. (2000), 3239-3249, D.C.D. Butler, H. Alper, Chem. Commun. (1998) 2575-2576, P. Majer, R.S.
Randad, J. Org. Chem., (1994) 1937-1938, R.A. Batey, V. Santhakumar, C.
Yoshinashi, S.D. Taylor, Tetrahedron Lett. (1998) 6267-6270, S.M. Hutchins,
K.T. Capman, Tetrahedron Lett. (1995) 2583-2586)、
b)遊離アミンがアルデヒドと反応する(イミンの生成)アミノ酸、N=C−R(J.
March, March’s Advanced Organic Chemistry, 2001, 第5版, Wiley Interscience; E.
Muller, O. Bayer, Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, Synthesen von
Peptiden, Band XV/1 and 2, 1974, George Thieme Verlag)
の遊離または活性化カルボン酸部分との反応によって調製することができる。
【0083】
【化11】

【0084】
群4
【化12】

【0085】
この式に従う増粘剤またはゲル化剤は、ベンゼントリアミン(T. Yamaoka, H. Hosoya,
S. Nagakura, Tetrahedron (1968) 6203-6213)と、アミノ酸誘導体の遊離または活性化カルボン酸部分(群3の化合物参照)との反応、または他の単純なC−N形成プロトコル(ヨウ化アリ−ルの遷移金属アミノ化)B.H. Yang, S.L. Buchwald, Organometal. Chem.
(1999) 125-146, J.F. Hartwig, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. (1998) 2046-2067によって調製することができる。
【0086】
群5
【化13】

【0087】
この式に従う増粘剤またはゲル化剤は、トリアミノシクロへキサンの、ホスゲン、トリホスゲン、カルボニルジイミダゾ−ルまたはカルバミン酸(4−ニトロ)フェニルによる活性化および、それに続くアミノ酸アルキルエステルまたはアミドあるいはアミノ酸グリコ−ルエステルまたはアミドなどのアミノ酸誘導体の遊離アミノ基との反応(G.T. Wang,
Y.W. Chen, S.D, Wang, R. Sciotti, Tetrahedron Lett. (1895-1898), P. Majer, R.S.
Randad, J. Org. Chem., (1994) 1937-1938, R.A. Batey, V. Santhakumar, C.
Yoshinashi, S.D. Taylor, Tetrahedron Lett. (1998) 6267-6270, S.M.Hutchins, K.T.
Capman, Tetrahedron Lett. (1995) 2583-2586)によって調製することができる。第2の工程は、イソシアネ−トの形成を介して行われるとしばしば見なされる。
また別の実施形態では、シクロへキシルトリイソシアネ−トは、クルチウス転位(C.F.H.
Allen, A. Bell, Organic Synthesis Collective 第3巻、第6版(1967) 846-847)によって対応するトリカルボン酸アジドからインシトゥ形成され、引き続き、アミノ酸アルキルエステルまたはアミドあるいはアミノ酸グリコ−ルエステルまたはアミドなどのアミノ酸誘導体の遊離アミノ基と反応させる。
【0088】
また別の実施形態では、アミノ酸誘導体の遊離アミノ基は、まず活性化(イソシアネ−トのインシトゥ形成、H.J. Knolker, T. Braxmeier, Synlett. (1997) 925-928)され、引き続きトリアミノシクロヘキサンと反応させる。
【0089】
【化14】

【0090】
群6
【化15】

【0091】
この式に従う増粘剤またはゲル化剤は、トリアミノベンゼンと、アミド化/エステル化アミノ酸の(インシトゥ形成された)イソシアネ−トとの反応(H-J Knolker, T.
Braxmeier, Synlett. (1997) 925-928)またはトリイソシアネ−トの(インシトゥ)形成(C.F.H. Allen, A. Bell, Organic Synthesis Collective Volume 3, 第6版(1967)846-847, J.E. Gill, R. MacGillivray. J. Munro, J. Chem. Soc. (1949) 1753-1754)およびアミノ酸アルキルエステルまたはアミドあるいはアミノ酸グリコ−ルエステルまたはアミドなどのアミノ酸誘導体の遊離アミノ基の3当量との続いての反応(化合物5参照)によって調製することができる。
【0092】
本発明に従う方法に使用するのに適した、式IIまたはIIIに示されるような非対称ゲル化剤または増粘剤を調製する典型的な方法は、化合物の2つの好ましい群を参照して、ここで、説明される。本発明の範囲を逸脱せずに、合成における、多くの変形例が可能であることは当業者によって理解されるであろう。当業者は、本明細書および請求項で提供された情報および通常の一般知識に基づき、他のゲル化剤/増粘剤を調製する方法を知るであろう。
【0093】
非対称ゲル化剤または増粘剤の群1
【化16】

【0094】
この式(Z=Z′=OHを有する)に従う増粘剤またはゲル化剤は、随意的にカルボン酸基の活性化の後に、シクロヘキサントリカルボン酸と、アミノ酸アルキルエステルまたはアミドあるいはアミノ酸アリ−ルエステルまたはアミドなどのアミノ酸誘導体の遊離アミノ基との反応によって調製される(とりわけ、M. Kunishama, C. Kawachi, J. Morita,
K. Tereao, F. Iwasaki, S. Tani, Tetrahedron (1999) 13159-13170; M.B. Smith, J.
March, March’s Advanced Organic Chemistry, 2001, 第5版, Wiley Interscience; E.
Muller, O. Bayer, Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, Synthesen von
Peptiden, Band XV/1および2, 1974, George Thieme Verlag; N. Yamada, K. Okuyama,
T. Serizawa, M. Kawasaki, S. Oshima, J. Chem.. Soc., Perkin Trans. 2, (1996) 2707-2713; H. Tamiaki, A. Kiyomori, K. Maruyama, Bull. Chem. Soc. Jpn, 66, (1993) 1768-1772; S. Bhattacharya, S.N.G. Acharya, Chem. Mater. (1999) 3121-3132)に記載されている[アミノ酸の]アミドおよびエステル形成のための標準有機手順に従う。)この反応において、シクロへキサントリカルボン酸を過剰に用いることによって、二官能基化および三官能基化されたシクロヘキサンの形成が限定されてもよい。モノ付加体の単離は、結晶化/沈殿、カラムクロマトグラフィ、抽出などを含む標準の有機化学手順によって、達成することができる。
【0095】
あるいはまた、カルボン酸部分の2つが保護基で冠される(たとえば、ベンジルエステルに変えられた保護基であるが、他の保護基も用いられてもよい。T.W. Greene, P.G.M.
Wuts, Protective groups in organic synthesis, 1999, 第3版,Wiley Interscience参照)シクロヘキサントリカルボキシル誘導体が合成されてもよい。残りのカルボン酸と、(上記の)アミノ酸誘導体の遊離アミノ基との反応の後、カルボン酸の保護基の除去を行い(ベンジルエステルの場合は、H+Pd/Cを用いることができる。他の保護基の除去については、T.W. Greene, P.G.M. Wuts, Protective groups in organic synthesis, 1999, 第3版,Wiley Interscienceを参照)、次いでモノ付加体が生成される。
【0096】
このようにして得られたモノ付加体(Z=Z′=OHを有する)は、C(O)Zおよび/またはC(O)Z′(Z=Z′=OHを有する)の転換によって、Zおよび/またはZ′が−OR,NHR,NHC(O)Rの群から選択される化合物を与えるための多数の誘導体の形成のために用いられてもよく、各Rは、独立して選択され、(モノ付加体出発物質を表すR=H以外は)上記のとおり定義される。このような転換は当業者に既知の標準有機手順に従って実施することができる。続いて起る反応工程は、化合物の構造をさらに変えるために実施されてもよい。このような工程の一例は、アミノ酸のメチルエステルの(アルカリ性条件下での)加水分解を行い、相当する遊離酸を生成することである。
【0097】
非対称ゲル化剤または増粘剤の群2
【化17】

【0098】
この式(Z=OHを有する)に従う増粘剤またはゲル化剤は、随意的にカルボン酸基の活性化の後に、シクロヘキサントリカルボン酸と、アミノ酸アルキルエステルまたはアミドもしくはアミノ酸アリ−ルエステルまたはアミドなどのアミノ酸誘導体の遊離アミノ基との反応によって調製される(とりわけ、M. Kunishama, C. Kawachi, J. Morita, K.
Tereao, F. Iwasaki, S. Tani, Tetrahedron (1999) 13159-13170; M.B. Smith, J.
March, March’s Advanced Organic Chemistry, 2001, 第5版, Wiley Interscience; E.
Muller, O. Bayer, Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, Synthesen von
Peptiden, Band XV/1 and 2, 1974, George Thieme Verlag; N. Yamada, K. Okuyama,
T. Serizawa, M. Kawasaki, S. Oshima, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2, (1996) 2707-2713; H. Tamiaki, A. Kiyomori, K. Maruyama, Bull. Chem. Soc. Jpn, 66, (1993) 1768-1772; S. Bhattacharya, S.N.G. Acharya, Chem. Mater. (1999) 3121-3132)に記載されている[アミノ酸の]アミドおよびエステル形成のための標準有機手順に従う)。モノ、ビスおよびトリ付加体の混合物が形成され、この混合物からビス付加体が、結晶化/沈殿、カラムクロマトグラフィ、抽出などを含む、標準の有機化学手順によって分離され得る。
【0099】
あるいは、この式(Z=OHを有する)に従う増粘剤またはゲル化剤は、シクロヘキサントリカルボン酸誘導体を用いることによって、調製することができ、そのカルボン酸部分の1つは保護基で冠される(たとえば、ベンジルに変えられた保護基であるが、他の保護基も用いられてもよい。T.W. Greene, P.G.M. Wuts, Protective groups in organic
synthesis, 1999, 第3版,Wiley Interscience参照)。残りのカルボン酸のそれぞれと、(上記の)アミノ酸誘導体の遊離アミノ基との反応の後、カルボン酸の保護基の除去を行い(ベンジルエステルの場合は、H2+Pd/Cを用いることができる。他の保護基の除去については、T.W. Greene, P.G.M. Wuts, Protective groups in organic synthesis, 1999, 第3版,Wiley Interscienceを参照)、次いでビス付加体が生成される。
【0100】
このようにして得られたビス付加体(Z=OHを有する)は、Zが−OR,NHR,NHC(O)Rの群から選択され、ここで、Rは、(ビス付加体出発物質を表すR−H以外は)上記のように選択され定義される、化合物を得るためにC(O)Z(Z=OHを有する)の転換による多数の誘導体の形成のために用いられてもよい。このような転換は当業者に既知の標準有機手順に従って実施することができる。これに続く反応工程は、化合物の構造をさらに変えるために実施されてもよい。このような工程の一例は、アミノ酸のメチルエステルの(アルカリ性条件下での)加水分解を行い、相当する遊離酸を生成することである。
【0101】
特に、1つの−X−Am−Y基および2つの−X−Z基を含むゲル化剤/増粘剤に関しては、YがNH−アルキレン−フェニル(このアルキレンは好ましくはメチレン、エチレンまたはプロピレンである)、NH−フェニル−O−アルキル(このアルキルは好ましくはメチル、エチルまたはプロピルである)、−NH−ナフチルおよび−NH−キノリンから選択される化合物が、非常に適していると見出されている。
【0102】
特に、2つの−X−Am−Y基および1つの−X−Z基を含むゲル化剤/増粘剤に関しては、YがO−アルキルおよびNH−アルキル(このアルキルは好ましくはメチル、エチルまたはプロピルである)、−NH−アルキレン−フェニル、−NH−フェニル−O−アルキル、−NH−ナフチルおよび−NH−キノリンから選択される化合物が、非常に適していると見出されている。
【0103】
本発明に照らして、アミノ酸誘導体は、エステルまたはアミド(たとえば、アスパラギン酸、リシンまたはグルタミン酸の)および(チオ)エ−テル(たとえば、セリン、チロシンまたはシステインの)を含むように定義される。
【0104】
上記式I,IIまたはIII中の、および特に、非対称1,3,5−置換シクロヘキサンまたは1,3,5−置換ベンゼン化合物中の、各部分Amは、ロイシン、イソロイシン、リシン、バリン、プロリン、メチオニン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンおよびこれらの誘導体の群から好ましくは独立して選択される。フェニルアラニンまたはメチオニンで、非常に良好な結果が達成されている。また別の好ましいアミノ酸は、システインであり、本発明に従うこのような化合物は、架橋可能な−SH基を含み、このことは本発明に従うゲル化剤/増粘剤のゲル化/増粘特性のために有利である。
【0105】
溶媒として、関心ある化合物の溶解を可能にし、増粘剤/ゲル化剤の存在下で(場合により、ゲル化/増粘補助剤の存在下で)増粘/ゲル化することができる原則としていかなる溶媒も用いることができる。適切な溶媒の例には、芳香族炭化水素、非芳香族炭化水素、アルコ−ル、エ−テル、エステル、アルデヒド、ケトン、アルカン酸、エポキシド、アミン、アミド、たとえば、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ハロゲン化炭化水素、シリコ−ン油、植物油、リン酸塩、スルホキシド、たとえば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、二トリル、水およびこれらの混合物が含まれる。
【0106】
特に、溶解度の理由から特に好ましい溶媒は、水、DMF、NMP、DMSO、エタノ−ル(EtOH)、アセトニトリル(CHCN)、プロピレングリコ−ル(PG)およびポリエチレングリコ−ル(PEG)である。このPEGは、この方法条件下で液体であるいかなるPEGであってもよい。通常、約400g/mol以下の平均分子量を持つPEGが溶媒として用いられるであろう。
【0107】
医薬品的見地から非常に興味深い溶媒は、水、DMSO、NMP、PG、PEGおよびEtOHである。
【0108】
溶媒は、その物質だけで、混合物として用いられてもよく、または、添加剤、特に、塩、酸および塩基からなる群から選択された1つまたは複数の添加剤、および、安定剤、追加の賦形剤などの上述した添加剤を含んでもよい。
【0109】
適切な酸の例には、無機酸、特にハロゲン化水素(HClなどの)が含まれる。適切な塩基の例には、無機塩基、特に、アルカリ金属塩基(NaOHなどの)が含まれる。適切な塩の例には前記の酸と塩基との塩が含まれる。
【0110】
上記に示されるように、本発明に従って、関心ある化合物の溶液が、増粘剤/ゲル化剤を用いて、増粘されまたはゲルに変えられる。本発明の実施形態においては、増粘/ゲル化の結果として、関心ある化合物の沈殿を生じ、それによって粒子を形成するが、増粘/ゲル化は、粒子形成の原因となるには及ばない。
【0111】
望ましい特性を備えた微粒子物質を得るために、関心ある化合物、ゲル化剤/増粘剤の濃度および割合、溶媒の割合、温度などの物理的パラメ−タ、沈殿時間、撹拌/剪断特性(採用される場合)、溶媒添加速度、およびpHを用いることができる。適切な条件は、当業者によって、通常の一般知識および本明細書に開示された情報に基づき決定され得る。
【0112】
関心ある化合物および/または増粘剤の溶解は、加熱および/または音波処理によって促進されてもよい。
【0113】
増粘中の温度は、通常、特に重要ではなく、適切には使用溶媒の融点と沸点との間にある。但し、その温度は、関心ある化合物および増粘剤/ゲル化剤を処理するのに適している。実際上の理由から、その温度は、好ましくは、0〜300℃であり、さらに好ましくは、10〜40℃である。非常に良好な結果が室温またはその付近(約20〜30℃)で操作することによって達成されている。
【0114】
約30℃より高い温度は、温度変化が溶媒の増粘/ゲル化、またはゲル/増粘溶液の溶解/希釈を起こすために用いられてもよい。したがって、以下にさらに詳細に説明されるように、温度上昇を使用してもよい。
【0115】
ゲル化/増粘および/または粒子の形成は、特定のpHを選択することによって、達成されてもよい。このようなpHの選択は溶媒、関心ある化合物およびゲル化剤/増粘剤に依存している。適切な条件は、本明細書に開示された情報を用いて日常的に決定することができる。結果的に粒子形成をもたらすpHの変更は、いつでも達成されてもよい。特に、関心ある化合物が経口投与用である場合(たとえば、医薬品、栄養補助食品または栄養素である場合)、粒子形成は、摂取後、胃腸管内で起る。
【0116】
増粘またはゲル化の前、途中または後で、関心ある化合物を含む溶媒を撹拌する必要もなく、剪断状態に委ねる必要もない。実際上の理由から、何らかの撹拌/剪断が行われてもよいが、いかなる実質的な混合なくして、少なくともゲル化または増粘を行うことが一般に好ましい。
【0117】
ここで、ゲル化/増粘のいくつかの適切な方法について少し詳しく説明する。当業者は、他の可能性が存在すること、さらに、記載された実施形態は、各種方法で適応されてもよいことを理解するであろう。
【0118】
溶媒効果によるゲル化/増粘
実施形態において、ゲル化剤/増粘剤および関心ある化合物が、同一溶媒または類似の溶媒中で溶解される。
【0119】
適切な方法では、ゲル化剤/増粘剤および関心ある化合物は、同じ溶媒中で溶解される。この溶液を、異なる液体、いわゆる非溶媒、すなわち、(pH,Tなどの該当条件下で)少なくともゲル化剤/増粘剤が(完全には)溶解しない液体に接触させゲル化または増粘をもたらす。特に、(非溶媒などの)液体中で可溶ではない増粘剤/ゲル化剤は、本明細書では、既存の状況下では、ゲル化剤/増粘剤の少なくとも実質的な部分(特に、50%を超える、さらに特に、90%を超える部分)は、溶解しないかまたは溶解したままではないことを意味する。
【0120】
非溶媒に依っては、関心ある化合物は、ゲル/増粘溶媒中に閉じ込められたセル/液滴の形態で、溶媒と他の液体の混合物中で溶解したままであってもよく、または(部分的に)沈殿し、その結果、固体粒子を形成してもよい。関心ある化合物の固体粒子は、ゲル化/増粘途中で形成されない場合には、たとえば、必要に応じて、乾燥によって、特に凍結乾燥によって、後で形成されてもよい。
【0121】
実施形態において、増粘剤/ゲル化剤および関心ある化合物は、静電気的に相互作用し、塩を生じる(ゲル化剤が酸性で、関心ある化合部が塩基性である場合またはその逆も同様)ことができる。これらの場合には、ゲル化剤の濃度は、好ましくは、過剰にされ、非溶媒の添加によって形成された粒子は、関心ある化合物の粒子となり得るが、ゲル化剤および関心ある化合物からなる塩粒子ともなり得る。このような実施形態では、ゲル化剤は、粒子の安定剤として機能してもよい。
【0122】
実施形態において、先ず、増粘剤/ゲル化剤の溶液および関心ある化合物の別個の溶液が作られる。次に、両方の溶液を接触させる。関心ある化合物の溶液の溶媒は、ゲル化剤/増粘剤に対して非溶媒であるように選択され、それによって、両方の溶液を混合すると、ゲル化剤/増粘剤がゲルまたは増粘溶液を形成する。
【0123】
関心ある化合物の溶媒混合物中の溶解度に依って、粒子形成は、増粘/ゲル化と共に達成されてもよく、または、溶媒混合物中に溶解している化合物のセル/液滴は、ゲル/増粘溶媒混合物中に閉じ込められてもよい。
【0124】
関心ある化合物の固体粒子は、ゲル化/増粘途中で形成されない場合には、たとえば、乾燥によって、特に凍結乾燥によって、後で形成されてもよい。
【0125】
ゲル化剤/増粘剤および関心ある化合物の溶解を達成するために、およびゲル化または増粘および随意的に粒子形成を達成するために、異なる液体を使用することは、本プロセスのための多種多様の可能性を提供し、たとえば、関心ある化合物およびゲル化剤が同じ溶媒に不溶の場合は、粒子形成は、2つの異なる溶媒を用いてなお可能であろう。第2溶媒は、第1溶媒と混和可能であっても、あるいは不混和であってもよく、すなわち、適用される第1溶媒対第2溶媒の比率で第2液相を形成する。
【0126】
増粘またはゲル化の誘導は、ゲル化剤/増粘剤が本質的に不溶である溶媒の存在によって、実現されてもよい。このことは、関心ある化合物が、ゲル化剤/増粘剤が本質的に不溶であるように溶解される溶媒を選択することによって達成されてもよい。あるいは、これは、関心ある化合物が、ゲル化剤/増粘剤が本質的に不溶である溶媒(非溶媒)として溶解される溶媒とは異なる第2溶媒を選択することによって、達成されてもよい。
【0127】
次に、この第2溶媒は、関心ある化合物およびゲル化剤または増粘剤が溶解している溶液に加えられ、その時、ゲル化および増粘が起る。
【0128】
当業者は、関心ある化合物の性質に応じて適切な溶媒およびゲル化剤または増粘剤を選択する方法を、通常の一般知識および本明細書および請求項に開示された情報によって知るであろう。たとえば、非溶媒は、薬剤およびゲル化剤または増粘剤が溶解しないpHで有機溶媒、水(たとえば、水溶液の形態で)であってもよい。
【0129】
温度効果によるゲル化/増粘
ゲル化/増粘は、ゲル化剤/増粘剤が溶液に溶解している温度から、ゲル化剤/増粘剤が(完全には)溶解しない温度まで温度を変化させることによって、実現されてもよい。これは、ゲル化剤/増粘剤の種類に依っては、温度を上げるかまたは下げることによって、達成されてもよい。当業者は、ゲル化/増粘が加熱または冷却することによって、実現されるかどうかを決定する方法を知るであろう。一般に、重合体のゲル化剤は、加熱時、ゲルを形成する傾向があり、低分子量ゲル化剤/増粘剤は、高温で溶解する傾向があり、冷却時、ゲル化/増粘する傾向がある。
【0130】
温度変化は、外部加熱/冷却装置によって行われてもよい。
たとえば、適切な方法では、増粘剤/ゲル化剤および関心ある化合物は、低温では、増粘剤/ゲル化剤および随意的に関心ある化合物を(完全には)溶解しない液体に加えられる。次いで、その結果生ずる混合物が、増粘剤/ゲル化剤(および低温で既に不溶である場合は、関心ある化合物)の完全な溶解に至るまで加熱される。次に、この溶液は、放冷され、その際、ゲル化または増粘が起る。冷却は、積極的に(たとえば、冷却装置によって)達成されてもよく、たとえば、周囲条件にまで放冷することによって、消極的に達成される。
【0131】
正確な条件に応じて、溶媒および関心ある化合物のセル/小滴は、ゲル/増粘溶媒中に閉じ込められてもよくまたは関心ある化合物の固体粒子が形成されてもよい。
随意的に、固体粒子は凍結乾燥などの乾燥によって、後で形成される。
【0132】
加熱または冷却は、溶液に冷却または加熱媒体を加えることによって、実現されてもよい。例えば、冷却は、とりわけ、冷却器溶媒、固体COまたは冷却ガスを加えることによって達成することができる。
【0133】
実施形態において、ゲル化剤/増粘剤の溶液に流体を加えることによって、温度を変化させ、ゲル化剤/増粘剤の溶液の温度を上昇または下降させ、それによって、ゲル化/増粘を引き起こす。このことは、増粘剤/ゲル化剤の溶液に異なる温度の流体を加えることによって、適切に達成されてもよく、それによって、増粘/ゲル化が起る温度にまで、温度を変化させる。関心ある化合物は、増粘剤/ゲル化剤を有する溶液中、または異なる温度の流体中にあってもよい。
【0134】
たとえば、高温で増粘剤/ゲル化剤を溶解するが低温では溶解しない液体中の増粘剤/ゲル化剤と関心ある化合物との溶液に、低温の、増粘剤/ゲル化剤のための別のまたは同じ液体が加えられ、それによって、増粘剤/ゲル化剤の溶液の温度をゲル化または増粘が起る温度にまで下げる。
【0135】
液体および関心ある化合物の選択に依って、ゲル化/増粘が起る温度で、関心ある化合物が液体系で(完全には)可溶でない場合、増粘/ゲル化とともに粒子形成が達成されてもよい。
【0136】
粒子形成は、たとえば、凍結乾燥などの乾燥によって、後で、達成されてもよい(上記も参照)。
【0137】
もちろん、第1の別々の溶液が関心ある化合物からなるおよびゲル化剤/増粘剤からなる方法においては、温度効果を利用することもできる。たとえば、増粘剤/ゲル化剤の溶液を、関心ある化合物の溶液と接触させてもよく、前記第2の溶液は第1の溶液とは異なる温度を有し、その結果、ゲル化/増粘および随意的に粒子形成が起る値にまで温度を変化させることになる。
【0138】
液体中でゲル化剤/増粘剤を濃縮することによるゲル化/増粘
実施形態において、ゲル化/増粘は、ゲル化剤/増粘剤の溶液を濃縮することによって達成される。濃縮は、たとえば、ゲル化剤/増粘剤が溶解されている液体の蒸発によって実現されてもよい。溶液がさらに濃縮されるに従い、粘度が増加(増粘)し始める。ゲル化は、臨界ゲル化濃度、すなわち、特定の系のための、ゲル化を達成するのに必要最低濃度に到達すると起るであろう。蒸発による濃縮は、関心ある化合物の粒子形成が起る程度にまで進めてもよい。
【0139】
関心ある化合物および液体の性質に応じて、蒸発により、固体粒子を形成させてもよく、または液体および関心ある化合物を含むセル/小滴の閉じ込めをもたらしてもよい。そのときには、固体粒子は凍結乾燥時に形成されてもよい。
【0140】
固体ゲル化剤/増粘剤からの直接増粘/ゲル化
適切な方法では、ある量の増粘剤を、増粘剤/ゲル化剤に対して非溶媒である溶媒中で、関心ある化合物の溶液と接触させる。やがて、ゲル化または増粘が起る。
【0141】
ゲル化を容易にするために、音波処理を適用することが有利であると見出されている。
関心ある化合物および液体の性質に応じて、蒸発により、固体粒子を形成させてもよく、または液体および関心ある化合物を含むセル/小滴の閉じ込めをもたらしてもよい。そのときには、固体粒子は凍結乾燥時に形成されてもよい。
【0142】
ゲル化/増粘後に関心ある化合物を添加すること
適切な方法では、増粘剤/ゲル化剤を含む増粘溶液またはゲルに、増粘剤/ゲル化剤が(完全には)溶解しない溶媒中の関心ある化合物の溶液を加えてもよい。この溶媒は、ゲルに使用される液体と同じであってもまたは異なっていてもよい。
【0143】
この添加は、関心ある化合物の溶液をゲル中に拡散させ、またはゲル中に撹拌させるか、噴霧させてもよい。当業者は、適切な条件を選択する方法を知るであろう。固体粒子の形成は、後で、たとえば、凍結乾燥によって実施されてもよい。
【0144】
関心ある化合物がゲルに添加された後(たとえば、温度変化、pH変化の結果として)、もはや完全には溶解しない、関心ある化合物のための溶媒を選択することによって、固体粒子の形成が添加中に達成されてもよい。
【0145】
ゲル/増粘溶液と関心ある化合物の溶液との比率に応じて、関心ある化合物の粒子形成が、特に、この比率が相対的に高い場合には、添加の直接結果として達成されてもよい。特に、このことは、ゲル/増粘溶液によって、関心ある化合物の溶媒の取り込み(吸収)が起り、それによって、関心ある化合物の溶液中で、関心ある化合物を有効に濃縮する。濃度がその溶解度よりも大きくなるに従い、固体粒子が形成される。当業者は、本明細書で記述された情報、通常の一般知識および随意的に限られた量の日常的実験に基づき、適切な条件を選択する方法を知るであろう。
【0146】
プロ増粘剤/プロゲル化剤の使用
適切な方法においては、関心ある化合物の溶液と、増粘剤/ゲル化剤に対して非溶媒である溶媒中のプロ増粘剤/プロゲル化剤(プロ増粘剤/プロゲル化剤とは、化学的または物理的トリガによって、増粘剤/ゲル化剤に転換される分子のことである)との溶液に、トリガが施され、その時、ゲル化または増粘が起る。
【0147】
特に、このトリガは、増粘剤/ゲル化剤の形成に繋がるpH変化(このようなプロゲル化剤/プロ増粘剤およびこれらのトリガの例は、たとえば、S.R. Haines et al. Chem.
Commun. 2002, 2846-2347; K.J.C. van Bommel et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 1663-1667に見出され得る)、増粘剤/ゲル化剤の形成に繋がるイオン交換(B.
Messersmith et al. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 9463-9464)、増粘剤・ゲル化剤の形成に繋がる反応(R.P. Lyon et al. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 4408-4413)、増粘剤/ゲル化剤に化学物質を組み入れることに繋がる反応(R.G. Weiss et al. Langmuir 2002, 18, 7124-7135)、増粘剤/ゲル化剤の形成に繋がる非共有相互作用(N. Boden
et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 5603-5606)を引き起こすことができる化学物質、増粘剤/ゲル化剤の形成に繋がるpH変化を引き起こすことができる酵素、増粘剤/ゲル化剤の形成に繋がる反応を引き起こすことができる酵素であってもよい。光(S.
S hinkai et al. J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 20-32)、温度および電気化学的刺激もトリガと考えられる。
【0148】
適切な方法では、関心ある化合物と増粘剤/ゲル化剤の両方に対して非溶媒である溶媒中のプロ増粘剤/プロゲル化剤の溶液に、関心ある化合物が加えられ、トリガが適用される、その時、プロ増粘剤/プロゲル化剤は増粘剤/ゲル化剤になり、非溶媒は関心ある化合物に対しては溶媒となり、増粘剤/ゲル化剤に対しては非溶媒のままであり、したがって、ゲル化または増粘が起る。本実施形態については、pHの変化を引き起こすトリガが特に適切であると見出されている。
【0149】
適切な方法では、関心ある化合物の溶液と、増粘剤/ゲル化剤に対して非溶媒である溶媒中のプロ増粘剤/プロゲル化剤の溶液とに、トリガが適用され、その時、プロ増粘剤/プロゲル化剤は増粘剤/ゲル化剤になり、溶媒は関心ある化合物に対しては非溶媒になり、ゲル化または増粘が起る。本実施形態については、pHの変化を引き起こすトリガは特に適切であると見出されている。
【0150】
上記方法においては、溶媒、非溶媒、ゲル化剤/増粘剤、関心ある化合物などの液体の量と性質が、通常の一般知識、本明細書に記載された情報および随意的に限られた量の日常的実験に基づき、当業者によって適切に決定することができる。
【0151】
ゲル化/増粘および/または粒子形成を引き起こすのに適した施策のいずれもが組み合わされてもよい。当業者は、適切な条件(溶媒、濃度、温度、pH値など)を選択する方法を知るであろう。
【0152】
当業者によって充分理解されるように、温度の効果が用いられる多くの変形例が可能である。当業者は、類似の方法で、pHの変化などの、粒子形成およびゲル化/増粘を引き起こすための他のトリガを使用することができることも充分に理解するであろう。
【0153】
当業者は、関心ある化合物の粒子が、上述された方法の実施中に形成されない全ての場合に、記載された製剤が乾燥、たとえば凍結乾燥または噴霧乾燥される場合には、粒子形成がさらに起ると、当業者は充分理解するであろう。この粒子は、それ自体、関心ある化合物の粒子であってよいし、またはゲル化剤で被覆されてもよく、あるいは、ゲル化剤および関心ある化合物の混合粒子であってもよい。粒子形成は、製剤が、たとえば動物や人間に経口で投与されるときにも生じ、身体内にあるとき、製剤に変化(たとえば、胃腸管に沿ったpHの変化)が生じる。
【0154】
同じ溶媒が、ゲル化剤/増粘剤および関心ある化合物に用いられるときは、温度効果の使用が、増粘/ゲル化を引き起こすのに非常に適していると見出されている。
【0155】
溶媒の除去が所望される場合は、複数の溶媒の代わりにただ1つの溶媒を用いることが、溶媒除去に関してより容易になると見出されている。このような溶媒は、たとえば、非常に適切には、薬剤およびゲル化剤または増粘剤が溶解するpHにおける有機溶媒または水溶液であってもよい。
【0156】
増粘/ゲル化の後、増粘液/ゲルは、それ自体用いられてもよく、または関心ある化合物の粒子が、増粘溶液またはゲルから、分離されてもよい。
【0157】
適切な分離方法は、当該技術分野で周知であり、当業者は、特定の種類の粒子および増粘溶液/ゲルに対する、このような方法の選び方を知るであろう。
【0158】
沈殿した粒子を再溶解することなく、増粘またはゲル化を逆行することによって分離を達成する方法は、非常に適していると、見出されている。このことは、増粘剤/ゲル化剤が溶解し粒子が溶解しない溶媒を用いることによって、適切に実現することができる。増粘/ゲル化も、別の方法で、たとえば、pHを変化させて、ゲル/増粘溶液を加熱することによって、音波処理によって、光を照射することによって(感光性増粘剤/ゲル化剤が用いられる場合)、または、ゲル内の物理的条件を変えることができる、あるいは非ゲル化剤/非増粘剤となるようにゲル化剤/増粘剤と反応することができる化学反応によって、逆行されてもよい。ゲルからゾルまたはゾルからゲルへの形成の引き金となる適切な化学誘導物質の例には、現実に人体内でも生じる、ジスルフィド還元酵素およびチオ−ル酸化酵素がある。また、トリス−(2−カルボキシエチル)ホスフィン、メルカプトエタノ−ル、1,4−ジチオスレイト−ル、グルタチオンおよびジメチルスルホキシド(DMSO)が、化学的トリガのために用いることができる。適切なトリガ方法の例は、たとえば、国際公開第03/084508号パンフレットに記載されている。
【0159】
当業者は、通常の一般知識および本明細書および請求項に開示されている情報に基づき適切な条件を選ぶ方法を知るであろう。
【0160】
本発明は、さらに、請求項のいずれかに従う方法によって得られる関心ある化合物、好ましくは、薬学的または生物学的活性化合物の粒子に関する。本発明に従って得られる微粒子材料は、従来方法で得られた粒子とは異なる良好な経口利用率パタ−ンを示す(たとえば、図8、実施例17参照)ことが見出されている。
【0161】
好ましくは、本発明に従う粒子は、1nm〜100μmの範囲内、さらに好ましくは、1〜250nmの範囲内、さらに一層好ましくは、1〜100nmの範囲内の粒子サイズを有する。
【0162】
本発明の粒子、特に、ナノ粒子は、非常に満足すべき溶解挙動を有していると見出されている。特に、本発明に従う粒子は、従来方法で調製された粒子に比べて、改良された生体利用率を有すると見出されている。さらに、特に、式I、IIまたはIIIに従うゲル化剤/増粘剤の使用を伴う方法によって得られる粒子の事例が見出だされている。
【0163】
本発明は、結晶性、非晶質または半結晶性粒子の形成を可能にする。
本発明は、ここで、以下の実施例によって示される。
実施例1
100μLのDMSO中に、5mg(8.2×10−3mmol)のcHexAmMetOHゲル化剤(構造については、図4参照)と、1.66mg(8.2×10−3mmol)のピレンとを含有する溶液に、900μLの蒸留水を素早く添加した。水の添加の結果、溶液の即時のかつ完全なゲル化が生じた。このゲルの透過電子顕微鏡法(TEM)分析は、ゲル繊維およびピレン粒子の存在を示し、後者は14〜30nmの数平均サイズを有する。
【0164】
実施例2
100μLのDMSO中に、5mg(5.4×10−3mmol)のcHexAmPheOCHCHOCHCHOHゲル化剤(構造については、図4参照)と、1.10mg(5.4×10−3mmol)のピレンとを含有する溶液に、900μLの蒸留水を素早く添加した。水の添加の結果、溶液の即時のかつ完全なゲル化が生じた。このゲルのTEM分析は、ゲル繊維およびピレン粒子の存在を示し、後者は10〜60nmの平均サイズを有する。
【0165】
実施例3
100μLのDMSO中に、4mg(6.0×10−3mmol)cHexAm(PheAQ)(CHCHOCHCHOH)ゲル化剤(このゲル化剤の合成については実施例12、構造については図4参照)と、1.22mg(6.0×10−3mmol)のピレンとを含有する溶液に、900μLの蒸留水を素早く添加した。水の添加の結果、溶液の即時のかつ完全なゲル化が生じた。このゲルのTEM分析は、ゲル繊維およびピレン粒子の存在を示し、後者は37〜185nmの平均サイズを有する。
【0166】
実施例4
ゲル中のピレン粒子に対する経時安定性を決定するために、試料を実施例3におけるように調製し、各7日後、18日後、1ヵ月後および2ヵ月後にTEMで調べた。参照として、DMSO/HO(100μL/900μL)中にピレンのみを含有する試料も調製した。その上、溶液中におけるゲル化剤の効果、すなわち、ゲルの効果ではなく、ゲル化剤の効果を決定するために、4mg(6.0×10−3mmol)のcHexAm(PheAQ)(CHCHOCHCHOH)ゲル化剤、1.22mg(6.0×10−3mmol)のピレンと、100μLのDMSOと、900μLの1N HClとを含有する試料が調製された。HClの存在は、ゲル化剤を溶解させ、したがって、試料は溶液のままである。試料は全て、暗所で室温で保持した。TEM分析の結果は、図1、2および3に示されている。図1:7日後、試料中に、37〜185nmの非常に少数の粒子しか存在していない、18日後、より多くの30〜190nmの粒子が観察できる、1ヵ月後、150nm以下の若干の結晶も観察できる、2ヵ月後、80〜200nmの範囲のサイズを有する、より多くの結晶が存在している。図2:7日後、0.2〜3μmの結晶が観察できる、18日後、このような結晶がより多く観察できる、1ヵ月後、より大きな6μmの結晶も見られる、2ヵ月後、このような結晶がより多く観察できる。図3:7日後、18日後または1ヵ月後、0.4〜9μmの結晶が存在し、2ヵ月後、2〜12μmの結晶が観察できる。
【0167】
実施例5
100μLのDMSO中に、4.6mg(7.6×10−3mmol)のcHexAmMetOHゲル化剤と、1.3mg(3.8×10−3mmol)のダナゾ−ルとを含有する溶液に、900μLの蒸留水を素早く添加した。水の添加の結果、溶液の即時のかつ完全なゲル化が生じた。このゲルのTEM分析は、ゲル繊維および幅0.2〜1.7μmおよび長さ1〜10μmの棒状ダナゾ−ル粒子の存在を示している。100μLのDMSOおよび900μLの蒸留水中にダナゾ−ルのみからなる参照試料では、棒状ダナゾ−ル粒子は、幅0.5〜10μmおよび長さ15〜53μmである。
【0168】
実施例6
100μLのDMSO中に、7mg(7.6×10−3mmol)のcHexAmPheOCHCHOCHCHOHゲル化剤と、1.3mg(3.8×10−3mmol)のダナゾ−ルとを含有する溶液に、900μLの蒸留水を素早く添加した。水の添加の結果、溶液の即時のかつ完全なゲル化が生じた。このゲルのTEM分析は、ゲル繊維および0.6×0.6μmのダナゾ−ル粒子、および幅0.2〜0.6μmおよび長さ0.6〜6μmの棒状粒子の存在を示している。100μLのDMSOおよび900μLの蒸留水中にダナゾ−ルのみからなる参照試料では、棒状ダナゾ−ル粒子は、幅0.5〜10μmおよび長さ15〜53μmである。
【0169】
実施例7
ゲル剤対ダナゾ−ルのモル比を増して、すなわち、5:1のモル比で実施例6を繰り返した。TEM分析は、ゲル繊維のおよびダナゾ−ル粒子の存在を示し、後者は20nmの平均サイズを有し、粒子の中には約200nmのものもあり、棒状ダナゾ−ル粒子は殆ど存在していなかった。
【0170】
実施例8
50μLのDMSO中に、1.96mg(2.9×10−3mmol)のcHexAm(PheAQ)(CHCHOCHCHOH)ゲル化剤と、1.0mg(2.9×10−3mmol)のダナゾ−ルとを含有する溶液に、950μLの蒸留水を素早く添加した。水の添加の結果、溶液の即時のかつ完全なゲル化が生じた。このゲルのTEM分析は、ゲル繊維のおよびダナゾ−ル粒子の存在を示し、後者は140〜700nmの平均サイズを有し、幅0.7μmおよび長さ9μmの若干の棒状ダナゾ−ル粒子も存在した。
【0171】
900μLの蒸留水を加えた、100μLのDMSO中にダナゾ−ルのみからなる参照試料では、棒状ダナゾ−ル粒子が形成され、これらの粒子は、幅0.5〜10μmおよび長さ15〜53μmであった。
【0172】
実施例9
ゲル化剤対ダナゾ−ルのモル比を(1:1から2:1に)増して、実施例8を繰り返した。TEM分析は、ゲル繊維のおよびダナゾ−ル粒子の存在を示し、後者は28nmの平均サイズを有し、粒子の中には2μmのものもあり、10μmの粒子は非常に少なく、棒状ダナゾ−ル粒子は存在していなかった。モル比を、2:1から5:1に再び増加したとき、TEM分析は、ゲル繊維のおよびダナゾ−ル粒子の存在を示し、後者は14nmの平均サイズを有し、粒子の中には400nmのものもあり、棒状粒子は存在しなかった。
【0173】
実施例10
DMSO/水混合物(50μL/950μL)中に、cHexAmPheOCHCHOCHCHOHおよびダナゾ−ルを5:1モル比で含有するゲルの凍結乾燥をした結果、ゲル化剤とダナゾ−ルの乾燥粉末を生じた。この粉末のTEM分析は、対応するゲル試料(実施例7)と同様の特徴、すなわちゲル繊維およびダナゾ−ル粒子を示し、後者は20nmの平均サイズを有し、幅約500〜900nmの棒状粒子は殆ど存在しなかった。
【0174】
実施例11
DMSO/水(50μL/950μL)中に、cHexAm(PheAQ)(CHCHOCHCHOH)およびダナゾ−ルを5:1モル比で含有するゲルの凍結乾燥をした結果、ゲル化剤とダナゾ−ルの乾燥粉末を生じた。この粉末のTEM分析は、対応するゲル試料(実施例9)と同様の特徴、すなわちゲル繊維およびダナゾ−ル粒子を示し、後者は14〜70nmの平均サイズを有し、棒状粒子は存在しなかった。
【0175】
実施例12
23mg(25×10−3mmol)のcHexAmPheOCHCHOCHCHOHと、4.2mg(12.4×10−3mmol)のダナゾ−ルとに、400μLのポリプロピレングリコ−ル(PG)(A)、または300μLのPGおよび100μLの水(B)、または200μLのPGおよび200μLの水(C)、または100μLのPGおよび100μLのPEG400および200μLの水(D)、または200μLのPEG400および200μLの水(E)または、300μLのPEG400および100μLの水(F)を加えた。この試料を、ゲル化剤とダナゾ−ルの両方の完全な溶解が達成されるまで加熱し、次いで、放冷し、その結果ゲル化させた。このゲルのTEM分析は、ゲル繊維およびダナゾ−ル粒子の存在を示し、後者はそれぞれ、19〜560nm(A),15〜50nm(B),37〜100nm(C),185〜280nm(D),28〜100nm(E),22〜100nm(F)の数平均サイズを有している。
【0176】
実施例13
12.5mg(20×10−3mmol)のcHexAm(PheAmBn)(CHCHOCHCHOH)(構造については、図4参照)と、1mg(0.83×10−3mmol)のシクロスポリンA(CyA)とに、50μLのポリエチレングリコ−ル(PG)、50μLのPEG400および900μLの水を加えた。この試料をゲル化剤とCyAの両方の完全な溶解が達成されるまで加熱し、次いで、放冷し、その結果ゲル化させた。このゲルのTEM分析は、ゲル繊維およびCyA粒子の存在を示し、後者は、40〜100nmの数平均サイズを有している。
【0177】
実施例14
5mg(15×10−3mmol)のフロセミドを、12.5mg(20×10−3mmol)のcHexAm(PheAmBn)(CHCHOCHCHOH)(A)、または12.9mg(20×10−3mmol)のcHexAm(PheAmPhOMe)(CHCHOCHCHOH)(B)、または18.4mg(20×10−3mmol)のcHexAmPheOCHCHOCHCHOH(C)とともに、50μLのプロピレングリコ−ル、50μLのPEG400および900μLの水中で、透明な溶液が得られるまで加熱することによって溶解した。参照として、ゲル化剤のない試料が調製された(D)。冷却時、試料(A)、(B)および(C)は、ゲルを形成した。各ゲルの、およびプロピレングリコ−ル、PEG400および水(D)中のフロセミドの参照溶液の、光学顕微鏡分析結果は、図5に示される。図5:(a)蝶形結晶、25μm以下(長軸)、(b)蝶形結晶、25μm以下(長軸)、(c)球状結晶、25μm以下、(d)棒状結晶、25〜250μm(長軸)。
【0178】
実施例15
1mg(3×10−3mmol)のダナゾ−ルを、3.9mg(6×10−3mmol)のcHexAm(PheAmAQ)(CHCHOCHCHOH)(A)、または5.4mg(6×10−3mmol)のcHexAmPheOCHCHOCHCHOH(B)とともに、50μLのDMSOおよび950μLの蒸留水中で、透明な溶液が得られるまで、加熱することによって溶解した。参照として、ゲル化剤のない試料が調製された(D)。冷却時、試料(A)、(B)および(C)は、それぞれ、ゲルを形成した。光学顕微鏡分析結果は、図6に示される。図6は、(a)非晶質球状粒子、2μm未満、(b)非晶質球状粒子、2μm未満および若干の針状結晶、25〜50μm(長軸)、(c)棒状結晶、20〜120μm)を示す。
【0179】
実施例16
2.5mg(2.1×10−3mmol)のシクロスポリンAを、6.3mg(10×10−3mmol)のcHexAm(PheAmBn)(CHCHOCHCHOH)(A)、または9.2mg(10×10−3mmol)のcHexAmPheOCHCHOCHCHOH(B)とともに、25μLのプロピレングリコ−ル、25μLのPEG400および450μLの蒸留水中で、透明な溶液が得られるまで加熱することによって溶解した。参照として、ゲル化剤のない試料が調製された(C)。冷却時、試料(A)および(B)は、それぞれ、ゲルを形成した。光学顕微鏡分析結果は、図7に示される。図7:(a)非晶質球状粒子、2μm未満、(b)非晶質球状粒子、2μm未満、(c)非晶質球状粒子、2μm未満、および非晶質凝集体、50μm以下。
【0180】
実施例17
生体内試験
ゲルを使用して得られたシクロスポリンA(CyA)の生体利用率を、ゲル化剤のない同じ処方からの生体利用率と比較した。ゲル処方は、実施例13で調製されるように、1mlのPG:PEG400:水の溶液中の、5mgのCyAおよび9mgのcHexAm(PheAmBn)(CHCHOCHCHOH)ゲル化剤からなる。この製剤を、前夜から絶食させておいたオスのウィスタ−系覚醒ラットに強制経口投与によって与えた。CyA試料の投与後4時間までは食物を与えないままにした。この実験の開始後24時間まで、頸静脈血中の固定カニュ−レを介して図示された各時点(図8参照)で採血した。CyAがゲル化しない形態で投与されたときは、検出可能量のCyA(検出限界25μg/L)は血液中に認められなかった。これに対比して、CyAがゲル処方で投与された場合には、CyAは、4〜6時間後、600〜900μg/Lの最大濃度で、血液中に回収された。
【0181】
この実験は、他のいくつかの薬学的活性化合物で繰り返され、経口生体利用率の向上も示した。
【0182】
実施例18
cHexAm(PheAmAQ)(CHCHOCHCHOH)の合成
工程1 cHex(AmPheAmAQ)(COOH)の合成
DMSO(200mL)中の、シス,シス−1,3,5−シクロへキサントリカルボン酸(11.18g、51.71mmol)と、HOBT(2.55g、18.87mmol)との溶液に、CDI(2.80g、17.27mmol)を加えた。RT(室温)で2時間撹拌した後、Phe−6AQ・2HBr(4.51g、10.0mmol)およびEtN(4.04g、40.0mmol)を加え、一晩中、撹拌を続け、その後、この溶液をHO(600mL)に注入し、その結果、沈殿が形成され、その沈殿を濾過除去した。続いて、沈殿をDMSO/HO/アセトン中で溶解し、再び濾過した。その後、アセトンを、ゆっくりと蒸発させ、その結果、沈殿が形成され、この沈殿を濾過して集め、続いて乾燥させ、淡橙色の固体として、純粋のcHex(AmPheAmAQ)(COOH)を得た。収量:2.95g(6.03mmol=60.3%)。
【0183】
工程2 cHexAm(PheAmAQ)(CHCHOCHCHOH)の合成
MeOH(100mL)およびDMSO(60mL)中の、cHex(AmPheAmAQ)(COOH)(2.80g、5.73mmol)と、2(−2−アミノエポキシ)−1−エタノ−ル(1.36g、12.94mmol)と、DMT−MM(3.58g、12.94mmol)との溶液を室温で一晩中撹拌した。反応完了後、HO(300mL)を加え、その結果生じた沈殿物を濾過除去し、HO(3×100mL)で洗浄し、乾燥した。この粗生成物をカラムクロマトグラフィ(S,CHCl:MeOH=9:1〜8:2)によって、精製し、淡黄色の固体として純粋のcHexAm(PheAmAQ)(CHCHOCHCHOH)を得た。収量:1.60g(2.41mmol=42.1%)。
ゲル試験:HOまたはPBS中で、0.3mg/mL:透明なゲル、HO/DMSO(19:1)中で0.5mg/mL:透明なゲル、HO/EtOH(19:1)中で0.6mg/mL:透明なゲル、EtOH中で25mg/ml:ゲル。
【0184】
実施例19
cHexAm(PheAmBn)(CHCHOCHCHOH)の合成
工程1 cHex(AmPheAmBn)(COOH)の合成
この化合物は、PheAmBnTFA(4.00g,9.88mmol)およびEtN(2.02g,20.0mmol)を用いて、実施例18におけるcHex(AmPheAmAQ)(COOH)のために記載された手順に従い合成された。濾過によって集められた固体をHO(3×100mL)で洗浄し、次いで、加熱MeOH(3×100mL+3×30mL)で抽出した。結合されたMeOH留分を蒸発乾固し、純cHex(AmPheAmBn)(COOH)を白色固体として得た。収量:2.00g(4.4mmol=44.5%)。
ゲル試験:HO中で3mg/mL:ゲル。
PheAmBn・TFAは、Katritzky, A.R.; Suzuki, K.; He, H.-Y., J. Org.
Chem. 2002, 67, 8224-8229に従って合成された。
【0185】
工程2 cHexAm(PheAmBn)(CHCHOCHCHOH)
この化合物は、MeOH(120mL)中で純cHex(AmPheAmBn)(COOH)(2.00g,4.4mmol)を用いて、実施例18におけるcHexAm(PheAmAQ)(CHCHOCHCHOH)のために記載された手順に従い合成された。反応完了後、結果生じたゲル状沈殿物を過除去し、MeOH(2×50mL)で洗浄し、乾燥し、cHexAm(PheAmBn)(CHCHOCHCHOH)を白色固体として得た。収量:1.80g(2.87mmol=65.3%)。
ゲル試験:HO中で1.0mg/mL:ゲル、アセトン7.0mg/mL:透明なゲル。
【0186】
実施例20
cHexAm(PheAmPhOMe)(CHCHOCHCHOH)の合成
工程1 cHex(AmPheAmPhOMe)(COOH)の合成
この化合物は、PheAmPhOMe(1.95g,7.22mmol)を用いて実施例18におけるcHex(AmPheAmAQ)(COOH)のために記載された手順に従い合成された。濾過によって集められた固体をHO(3×150mL)で洗浄し、次いで、加熱MeOH(3×100mL)で抽出した。結合されたMeOH留分を蒸発乾固し、その結果得た固体を、MeOHから再結晶化/再ゲル化させ、純cHex(AmPheAmPhOMe)(COOH)を白色固体として得た。収量:2.85g(6.1mmol=84.3%)。
ゲル試験:HO中で3mg/mL:透明なゲル。
PheAmPhOMeは、Fink, C.A.; Carlson, J.E.; Boehm, C.; McTaggart, P.;
Qiao, Y.; Doughty, J.; Ganu, V.; Melton, R.; Goldberg, R. Bioorg. Med. Chem.
Lett. 1999, 9, 195-200に従って合成された。
【0187】
工程2 cHexAm(PheAmPhOMe)(CHCHOCHCHOH)
この化合物は、MeOH/DMSO(50/20mL)中で、cHex(AmPheAmPhOMe)(COOH)(0.95g,2.03mmol)を用いて実施例18におけるcHexAm(PheAmAQ)(CHCHOCHCHOH)のために記載された手順に従って合成された。反応完了後、結果生じたゲル状沈殿物を濾過除去し、MeOH(10mL)で洗浄し、乾燥した。濾過液をHO(300mL)に添加し、その結果生じた沈殿物は、濾過除去され、H2O(3×100mL)で洗浄し、乾燥した。混合された固体を、MeOHから再結晶化/再ゲル化させ、cHexAm(PheAmPhOMe)(CHCHOCHCHOH)を白色固体として得た。収量:0.76g(1.18mmol=58.1%)。
ゲル試験:HO中で3.0mg/mL:ゲル。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】左から右に、それぞれ、7日後、18日後、1カ月後および2カ月後に調べられた、DMSO/HO(100μL/900μL)中に1:1のモル比(6.0×10−3mmol)でピレンを含有するcHexAm(PheAQ)(CHCHOCHCHOH)のゲルの透過電子顕微鏡写真(TEM)を示す。
【図2】左から右に、それぞれ、7日後、18日後、1カ月後および2カ月後に調べられた、DMSO/1NHCl(100μL/900μL)中の1:1のモル比(6.0×10−3mmol)でのcHexAm(PheAQ)(CHCHOCHCHOH)およびピレンのTEM写真を示す。
【図3】左から右に、それぞれ、7日後、18日後、1カ月後および2カ月後に調べられた、DMSO/HO(100μL/900μL)中のピレン(6.0×10−3mmol)のTEM写真を示す。
【図4】本発明に従って用いられてもよいいくつかのゲル化剤の化学構造を示す。
【図5】フロセミドを含有する、cHexAm(PheAmBn)(CHCHOCHCHOH)(a)、cHexAm(PheAmPhOMe)(CHCHOCHCHOH)(b)、cHexAmPheOCHCHOCHCHOH(c)のゲルの光学顕微鏡写真、ならびにフロセミドと50μLのプロピレングリコ−ル、50μLのPEG400および900μLの水との溶液(d)の光学顕微鏡写真を示す。
【図6】ダナゾ−ルを含有する、cHexAm(PheAmAQ)(CHCHOCHCHOH)(a)、cHexAmPheOCHCHOCHCHOH)(b)のゲルの光学顕微鏡写真、ならびにダナゾ−ルと100μLのDMSO、900μLの水との溶液(c)の光学顕微鏡写真を示す。
【図7】シクロスポリンAを含有する、cHexAm(PheAmBn)(CHCHOCHCHOH)(a)、cHexAmPheOCHCHOCHCHOH(b)のゲルの光学顕微鏡写真、ならびにシクロスポリンAと25μLのプロピレングリコ−ル、25μLのPEG400、および450μLの水との溶液(c)の光学顕微鏡写真を示す。
【図8】cHexAm(PheAmBn)(CHCHOCHCHOH)ゲル化剤のゲル処方を用いて得られたシクロスポリンAの経口利用率(黒四角)およびゲル化剤無しの参照処方中のシクロスポリンAの経口利用率(白四角)を表示する図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心ある化合物の粒子を生成するための方法であって、
関心ある化合物と溶媒との溶液を準備する工程と、
増粘剤またはゲル化剤を用いた前記溶液の増粘またはゲル化を引起こして増粘溶液またはゲルを生成する工程、
とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
関心ある化合物は、前記溶液の増粘またはゲル化に際し、粒子の形態で沈殿することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
増粘溶液またはゲルは、好ましくは、凍結乾燥、噴霧乾燥または遠心分離によって、乾燥されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
粒子は、増粘溶液またはゲルから分離されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
溶液の増粘またはゲル化は、沈殿粒子を再溶解することなしに、逆行されること特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
増粘溶液またはゲル化溶液は、関心ある化合物が粒子の形態で沈殿するときに、凍結乾燥されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
増粘剤またはゲル化剤が前記溶液中で溶解されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
増粘剤またはゲル化剤が、前記溶液に第2溶媒の溶液の形態で加えられ、第2溶媒は、関心ある化合物が溶解する溶媒とは異なることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ゲル化剤または増粘剤が本質的に不溶である溶媒の存在によって、ゲル化または増粘が引起こされることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ゲル化剤または増粘剤が本質的に不溶である溶媒は、関心ある化合物が溶解する溶媒であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
ゲル化剤または増粘剤が本質的に不溶である溶媒は、関心ある化合物が溶解する溶媒とは異なる第2溶媒で、かつ、ゲル化剤または増粘剤が溶解する関心ある化合物の溶液に加えられる第2溶媒であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項12】
関心ある化合物が第2溶媒に本質的に不溶であることを特徴とする請求項8または11記載の方法。
【請求項13】
関心ある化合物は、医薬品、ペプチド、核酸、タンパク質、酵素、成長因子、ステロイド、ホルモン、抗生物質、遺伝子治療剤、触媒、吸着剤、顔料、塗料、パ−ソナルケア製品、研磨剤、感知器用粒子、金属、合金、セラミック、膜材料、栄養物質、抗ガン剤、肥料、殺虫剤、除草剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
関心ある化合物は、生物学的または薬学的に活性な化合物であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
関心ある化合物は、水に難溶であることを特徴とする請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
増粘剤またはゲル化剤は、ゼラチン、でんぷんおよびそれらの誘導体、セルロ−スおよびその誘導体、ゴム、有機ゲル化剤、ソルビト−ル、N,N’ジベンゾイル−L−システインなどのアミノ酸誘導体、ステロイド誘導体および糖誘導体からなる群から、好ましくは、有機ゲル化剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
増粘剤またはゲル化剤は、式Iによって表される増粘剤およびゲル化剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【化1】

[ここで、
Aは、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、芳香族またはヘテロ芳香族部分を表わし、
,XおよびXのそれぞれは、独立して、部分−N(H)−,−C(O)−,−O(CO)−,−OC(S)−,−C(S)−,−NHC(S)−および−NH−C(O)−から選択され、
Am,AmおよびAmのそれぞれは、独立して、アミノ酸またはその誘導体、あるいは複数のアミノ酸またはそれらの誘導体に基づく部分であり、
,YおよびYのそれぞれは、対応するX(Yに対するX、Yに対するXおよびYに対するX)が、−C(O)−または−NH−C(O)−およびn=1である場合には、−OR,−N(OH)Rおよび−NRの群から好ましくは独立して選択され、Y,YおよびYのそれぞれは、対応するX(Yに対するX、Yに対するXおよびYに対するX)が−NH−およびn=1または2である場合には、−C(O)R,−C(O)−NR,−C(O)−OR,−C(S)R,−C(S)−NR,−C(S)−ORおよびRの群から独立して選択され、ここで、各Rは、独立して、H、あるいは、場合により、芳香族、エステルまたはエ−テル部分または1つ以上の他のヘテロ原子を含み、1〜40個の炭素原子を有してもよい置換されたまたは非置換の、分岐、環状または直鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、
nは1または2である。]
【請求項18】
各Yは、−OH,−O−(CH−OH,−NH,−NH(CHO(CHOH,−O(CHO(CHOH,−NHOHおよび−NH(CHOHの群から独立して選択されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
増粘剤またはゲル化剤は非対称三置換環状増粘剤またはゲル化剤であり、式IIまたは式IIIに示されるように、その環は1つまたは2つのX−Am−Y基によって置換され、残りの1つまたは2つの置換基は、−X−Z基であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【化2】

【化3】

[ここで、
Xのそれぞれは、部分−N(H)−,−C(O)−,−O(CO)−,−OC(S)−,−C(S)−,−NHC(S)−および−NH−C(O)−から独立して選択され、
Amのそれぞれは、独立して、アミノ酸またはその誘導体、あるいは複数のアミノ酸またはそれらの誘導体に基づく部分であり、
Yのそれぞれは、−OR,−N(OH)R,−NR,−C(O)R,−C(O)−NR,−C(O)−OR,−C(S)R,−C(S)−NR,−C(S)−ORおよびRの群から独立して選択され、各Rは、独立して、請求項17に定義されるとおりであり、
各Zは、−OH,−COOH,−C(O)NHR,−NHC(O)Rおよび−NHRからなる群から独立して選択され、各Rは、独立して、請求項17で定義され、
n=1または2である。]
【請求項20】
X、すなわち、X1,X2およびX3は、それぞれ、−N(H)−,−C(O)−,−O(CO)−および−NH−C(O)−から独立して選択されることを特徴とする請求項17〜19記載の方法。
【請求項21】
増粘剤またはゲル化剤は、1,3,5−置換シクロへキサンまたは1,3,5置換ベンゼン、好ましくは、1,3,5−置換シクロへキサンであり、3つの置換基は全て、エクアトリアル面にあることを特徴とする請求項17〜20記載の方法。
【請求項22】
−X−Zは、−COOH,−C(O)−NH,−C(O)−NHCH,−C(O)−NH−(CH−OH,−C(O)−NH−(CH−O−(CH−OHおよびC(O)NHCH−pyrの群から選択されることを特徴とする請求項19〜21記載の方法。
【請求項23】
Yは、それぞれ、−OCH,−OCHCH,−NHCHCHOCHCH,−OCHCHOCHCH,−NHCH,−NHCHCH,−NH(CHCH,−NHCHPh,−NH−Ph−O−CH,−O−ナフチル,−NH−ナフチルおよび−NH−キノリンの群から独立して選択されることを特徴とする請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
各Amは、ロイシン、イソロイシン、リシン、バリン、プロリン、メチオニン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンおよびそれらの誘導体から独立して選択されることを特徴とする請求項17〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ゲル化剤または増粘剤は、架橋結合可能反応基、好ましくは、−C=C−または−SH基を含み、ゲル化または増粘中に反応し、それによって、架橋を形成することを特徴とする請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
化合物の溶液のゲル化は、ゲルを生成するためにゲル化剤を用いて引起こされることを特徴とする請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
関心ある化合物は、芳香族炭化水素、非芳香族炭化水素、アルコ−ル、エ−テル、エステル、アルデヒド、ケトン、アルカン酸、エポキシド、アミン、アミド、ハロゲン化炭化水素、シリコ−ン油、植物油、リン酸塩、スルホキシド、ニトリル、水およびこれらの混合物の群から選択される溶媒に溶解することを特徴とする請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
溶媒は、水、DMF、NMP、DMSO、エタノ−ル、アセトニトリル、プロピレングリコ−ルおよびポリエチレングリコ−ルの群から選択されることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
第2溶媒は、請求項27または28に規定された溶媒から選択されることを特徴とする請求項8または11記載の方法。
【請求項30】
ゲル化または増粘は、音波処理、化学的トリガ、pH変化、温度変化、光によって、またはゲル化剤/増粘剤に対する非溶媒を加えることによって、助長されることを特徴とする請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ゲル化または増粘は、ゲル化剤/増粘剤および関心ある化合物を有する溶液を濃縮することによって助長されることを特徴とする請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
関心ある化合物を含有する溶液が、ゲル化剤/増粘剤のゲルまたは増粘溶液に加えられることを特徴とする請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
ゲル化剤/増粘剤、関心ある化合物および溶媒は、相互に接触され、温度が上げられ、それによって、ゲル化剤/増粘剤および関心ある化合物は、溶媒に溶解し、その後、結果として生じた溶液をゲル化/増粘温度よりも下の温度にまで冷却し、その結果、溶液をゲル化/増粘させることを特徴とする請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法によって得られる関心ある化合物の粒子。
【請求項35】
1nm〜100μmの範囲、好ましくは1〜250nmの範囲、さらに好ましくは、1〜100nmの範囲の粒子サイズを有する請求項34記載の粒子。
【請求項36】
関心ある化合物の粒子を生成するためのゲルの使用。
【請求項37】
関心ある化合物の粒子を生成するための増粘溶液の使用。
【請求項38】
,XおよびXのそれぞれが、部分−OC(S),−C(S)−および−NHC(S)から独立して選択されることを特徴とする、請求項17,18で、または請求項17または18に従属している限りは、請求項20〜25で定義されるゲル化剤または増粘剤。
【請求項39】
請求項33または34に記載の粒子を含むゲルまたは増粘溶液。
【請求項40】
請求項16〜25のいずれか1項で定義されるゲル化剤/増粘剤を含む請求項39記載のゲルまたは増粘溶液。
【請求項41】
請求項39または40記載のゲルまたは増粘溶液の、粘膜接着剤としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−515390(P2007−515390A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532127(P2006−532127)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000350
【国際公開番号】WO2004/103347
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(500219630)アプライド ナノシステムズ ベー.フェー. (1)
【氏名又は名称原語表記】Applied Nanosystems B.V.
【住所又は居所原語表記】Ubbo Emmiussingel 37,Groningen,The Netherlands
【Fターム(参考)】