説明

微小部品の配列板および微小部品の配列方法

【課題】外乱があってもバランス良く部品を保持し、なお且つ大量の微小部品を整列させることが出来る配列板および配列方法を提供する。
【解決手段】複数の部品を所定の方向に整列載置する配列板であって、基板のどちらか一方の基板面に、略平行に形成された2本の第1溝と、前記2本の第1溝に挟まれた領域に前記第1溝にほぼ直交するように形成された1以上の第2溝と、を備え、前記第2溝と前記第1溝とが連接し形成される部品載置領域を複数備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小部品の配列板および微小部品の配列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品は製造技術の発達と共に急激な小型化が進んできている。部品の小型化によって、組み込まれる例えば回路基板も相対的に小型化され、その結果、従来の組立て装置であっても一度に多くの製品の同時加工が可能となってきている。
【0003】
しかし、回路基板への部品組立てでは部品の取り付け位置は勿論のこと、組立て方向も正確に制御されなければならない。そのため、従来からの画像処理装置を備えたロボット装置により1個もしくは数個を整列配置させる方法では、多数個を整列させるためには時間をかけるか、複数台のロボット装置を同時作動させるなどの方法になり、大きなコストアップとなってしまう。
【0004】
このような大掛かりな装置を必要しない、部品自体が自己整列し、微小部品を短時間に多数個を基板上に正確に並べるプロセスとして、部品形状に合わせて凹部に揮発性の液体を充填し、当該液体の表面張力によって部品を所定の位置に誘導し、当該液体が揮発することで凹部に部品を載置する。すなわち、配列方向を規制する凹部形状内に部品が収容されることで部品を整列することが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−209397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の特許文献1であっても、凹部内に充填された液体が例えば外部からの微振動などで揺れが生じ、それにより部品に揺れや傾きが生じてしまう。その状態で液体が揮発し、凹部内に部品が収納される際に、揺れによる部品傾きが修正されずに収納されてしまい、正確に部品を整列させることが困難であった。
【0007】
そこで、外乱があってもバランス良く部品を保持し、なお且つ大量の微小部品を整列させることが出来る配列板および配列方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも上述の課題の一つを解決するように、下記の形態または適用例として実現され得る。
【0009】
〔適用例1〕本適用例の微小部品の配列板は、複数の部品を所定の方向に整列載置する配列板であって、基板のどちらか一方の基板面に、略平行に形成された2本の第1溝と、前記2本の第1溝に挟まれた領域に前記第1溝にほぼ直交するように形成された1以上の第2溝と、を備え、前記第2溝と前記第1溝とが連接し形成される部品載置領域を複数備えることを特徴とする。
【0010】
上述の適用例によれば、複数の第1溝と第2溝とが連接していることにより、溝に導入される液体によって微小部品を保持した際に、各溝での液面は同じに保たれ且つ均等に表面張力による部品吸着力をバランス良くすることが出来る。さらに、外乱によって配列板が振動しても第1、第2溝のそれぞれの溝内での液体の揺らぎは極わずかに抑制され、よって部品の傾きが発生しないため、正確な配列位置に部品を載置することができる。
【0011】
〔適用例2〕上述の適用例において、少なくとも前記配列板の前記第1溝と前記第2溝とを除く、前記基板の前記部品載置領域の形成面が撥水性を有していることを特徴とする。
【0012】
上述の適用例によれば、第1、第2溝以外には、溝に導入される液体が滞留することなく除去されるため、部品載置領域に確実に微小部品を誘導することが出来る。
【0013】
〔適用例3〕上述の適用例において、前記第1溝と前記第2溝とが親水性を有していることを特徴とする。
【0014】
上述の適用例によれば、第1、第2溝に液体を確実に滞留させることができるため、部品載置領域に確実に微小部品を誘導することが出来る。
【0015】
〔適用例4〕上述の適用例において、前記基板がシリコン基板であることを特徴とする。
【0016】
上述の適用例によれば、配列板への正確な溝形成と多数個の部品載置領域の形成を容易行うことができる。また、撥液性能を有しているので、撥液性能を付与するための工程を必要としないため、製造工程を短くすることが出来る。
【0017】
〔適用例5〕本適用例の微小部品の配列方法は、基板のどちらか一方の基板面に平行して形成された2本の第1溝と、前記2本の第1溝に挟まれた領域に形成された1以上の第2溝とを備え、前記第2溝と前記第1溝とが連接し形成される部品載置領域を複数備える微小部品の配列板を用いた微小部品の配列方法であって、前記配列板の前記部品載置領域に液体を供給し、前記第1溝および前記第2溝とを除く前記基板面上の前記液体を除去する液体供給工程と、前記液体が充填された前記第1溝および前記第2溝上に配列部品を載置する部品載置工程と、前記配列部品が載置された前記配列板を振動させる配列板振動工程と、前記配列板振動工程の後に前記第1溝と前記第2溝とに残留する液体を蒸散させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
上述の適用例によれば、配列板に振動を与えることで、溝内部に有って部品を支持する液体の表面張力による部品吸着力の最もバランスの良い位置、すなわち均衡が取れる位置まで微小な表面張力でも作用させることが出来る。
【0019】
〔適用例6〕上述の適用例において、前記液体が水であることを特徴とする。
【0020】
安全性が確保でき、環境負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態を示す、(a)は模式的に示した平面図、(b)は部分斜視図。
【図2】実施形態を示す、(a)は部分平面図、(b)(c)は断面図。
【図3】実施形態の製造工程を示すフローチャート。
【図4】実施形態の製造方法を示す断面図。
【図5】実施形態の部品配列工程を示すフローチャート。
【図6】実施形態の部品配列方法を示す断面図および平面図。
【図7】実施形態の部品配列方法を示す断面図および平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明に係る配列板の実施形態を説明する。
【0023】
(実施形態)
図1(a)は本実施形態の配列板の模式的な平面図を示し、図1(b)は、図1(a)におけるA部を拡大した部品載置領域100aの概略斜視図を示す。配列板100は基板20に溝10を備える部品載置領域100aを複数備えている。部品載置領域100aに形成されている溝10は、配列する図示しない部品が所定の方向を向き、所定の位置に配列されるよう形成されている。配列板100の基板20の外形形状は特に図示するような矩形に限定はされず、例えば円形であっても良い。
【0024】
図2(b)、(c)は、それぞれ実施形態の平面図を示す図2(a)におけるL−L’断面、M−M’断面を示す。第1溝11a、11bは、互いにほぼ平行に形成されている。また、第2溝12a、12b、12c、12dは第1溝11a、11bに直交する方向に形成され、その両端は第1溝11a、11bと接続している。すなわち、第1溝11a、11bと第2溝12a、12b、12c、12dとにより連続した溝10が形成され、溝10に囲まれる凸部30a、30b、30cが形成される。
【0025】
第2溝12a、12b、12c、12dの溝数は、整列させる部品形態により最適な溝数に設計され、図2に示す4本に限定されるものではない。しかし、部品をバランス良く保持させるために、第2溝(12a、12b、12c、12d)は2本以上であることが好ましい。
【0026】
基板20の溝10が形成される基板面20aの表面は、撥水膜40がコーティングされている。撥水膜40は、溝10形成前に予め基板面20aの表面に施すことで、凸部30a、30b、30cの表面に撥水膜40が残存する。撥水膜40は例えばハイレックス(NTTアドバンステクノロジ株式会社製)、エス・エス・コート(新昭和コート株式会社製)、フッ素系コート材が好適に使用される。また、配列板100の基板20に撥水性を有する材料を使用することで、撥水膜40のコーティングを省略することも可能である。
【0027】
また、図2(d)の溝10部の拡大図に示すように、溝10の内部の壁10aおよび底部10bには親水膜60をコーティングすることが好ましい。親水膜60により、溝10内部への液体の導入と保持を確実に行い、部品保持のための液体量を確保することができる。親水膜60には、例えばハイドロテクト(TOTO株式会社製)やポリシラザン材料からなるコーティング剤が好適に適用できる。
【0028】
〔配列板製造方法〕
次に、配列板100の製造方法について説明する。図3は、配列板100の製造工程を示すフローチャート、図4は配列板100の製造方法を説明する断面図である。
【0029】
(撥水処理工程)
先ず撥水処理工程(S101)に入る。予め両面を整面された基板20を準備する。基板20の材料には特に限定は無いが、後述する溝形成工程においてエッチングにより精密加工を行うことが好適な加工方法であるため、シリコン基板を用いることが好ましい。ここでは、シリコン基板を用いた製造方法を説明する。
【0030】
撥水処理工程(S101)は、図4(a)に示すように準備されたシリコン製の基板20の一方の基板面20aに撥水膜40を形成する。撥水膜は、例えばハイレックス(NTTアドバンステクノロジ株式会社製)、エス・エス・コート(新昭和コート株式会社製)、フッ素系コート材などが用いられ、撥水剤基材を溶剤等で希釈し使用する。
溶剤で希釈された撥水剤溶液をスピンコート法、スプレー法等により基板20の基板面20aに均一に塗布し、乾燥、定着させる。
【0031】
(マスク形成工程)
次に、エッチングマスク形成工程(S102)に移行する。上述の撥水膜40が形成された基板20の撥水膜40上に、図4(b)に示すように感光性樹脂膜を均一に塗布し、フォトリソグラフィーにより溝形成部に対応する開口部50aを形成し、エッチングマスク50を形成する。
【0032】
(溝形成工程)
次に、溝形成工程(S103)へ移行する。溝形成工程(S103)は図4(c)に示すように、エッチングマスク形成工程(S102)において形成されたエッチングマスク50の開口部50aより露出している撥水膜40を含む基板20をエッチング液により食刻し、溝10を形成する。
【0033】
(親水処理工程)
次に、親水処理工程(S104)に移行する。図4(d)に示すように、上述のエッチングマスク50の上から、親水膜60の基材を塗布する。親水膜60の基材としては、例えばハイドロテクト(TOTO株式会社製)やポリシラザン材料からなるコーティング剤を溶剤で希釈した溶液を使用する。この親水剤溶液をスプレー法等により、溝10の内部の壁10aおよび底部10bに均一に塗布する。その他の部位、例えばエッチングマスク50の表面には親水膜60が形成されなくても良い。
【0034】
(エッチングマスク除去工程)
次に、エッチングマスク除去工程(S105)に移行する。エッチングマスク除去工程(S105)では、基板20の基板面20aに形成されている撥水膜40を残して、エッチングマスク50を除去する。エッチングマスク50が除去され、図4(e)に示す配列板100を得ることが出来る。
【0035】
〔部品配列方法〕
次に、上述の実施形態の配列板100を用いて、部品を配列する方法について説明する。図5は部品配列工程を示すフローチャート、図6、図7は各工程を示す平面図および断面図である。
【0036】
(液体供給工程)
先ず、図6(a)に示すように、予め洗浄された配列板100の部品載置領域100aを覆うように、微小な固形物(ごみ)をろ過し除去した液体200を図示しない供給装置より供給する、液体供給工程(S201)から始まる。供給方法は、特に限定されないが例えばディスペンサー、スプレー等により供給される。また、配列板100全体を液槽に全浸漬し基板面20aを上方にして引き上げることでも、液体供給工程(S201)の目的は達成できる。供給された液体200は、配列板100の上面に液滴として部品載置領域100aを覆う。
【0037】
使用する液体は、水もしくは揮発性溶剤を用いることが好ましいが、純水を用いることで部品への影響が少なく環境にも影響が無いためより好ましく適用できる。本実施形態では液体200に純水を適用した場合について説明する(以下、液体200を純水200として説明する)。
【0038】
基板面20a表面には撥水膜40により撥水性能が付与されているので、上述の供給された純水200は図6(b)に示すように、第1溝11a、11b、第2溝12a、12b、12c、12dには純水200が残留し残留水200a、他の部分では付与された撥水性能により純水200の表面張力で球形の水粒200bとなる。球形の水粒200bは、配列板100の撥水皮膜40上で、いわゆる転がり易くなり、容易に配列板100から除去できる。なお、微圧の圧縮空気により水粒200bを吹き飛ばすことも可能ではあるが、残留水200aも同時に除去されない圧力(風量)に制御されなければならない。
【0039】
(部品載置工程)
次に、部品載置工程(S202)に移行する。配列される部品300を図6(c)に示すように、第1溝11a、11b、第2溝12a、12b、12c、12dに残った残留水200aの上に載置する。残留水200aは、表面張力によって基板面20aより上面が円柱状(シリンダー状)になる。この円柱状の頂部200cにより部品300が支持される。
【0040】
部品300を残留水200aの上に載置する時は、正確な位置を見付けて載置する必要は無い。すなわち、図6(d)に示す平面図のように、溝10に対して相対的なズレがあっても良い。従って、簡単な部品移動装置あるいはハンドワークによって部品300を配列板100の残留水200a上に載せるだけでよい。
【0041】
(配列板振動工程)
上述の部品載置工程(S202)により、位置がずれた状態で配列板100に載置された部品300を、所定の位置に誘導するために、配列板100に振動を与える配列板振動工程(S203)へ移行する。載置された部品300には、残留水200aの表面張力が部品300を引寄せるように作用する。この表面張力の作用を起こさせるために、図7(e)に示すように振動装置400により振動Fを配列板100に与える。振動Fは微小な振幅でよく、超音波振動が好適である。
【0042】
振動Fにより、部品300は残留水200a上を移動し、残留水200aの表面張力のバランスがとれた所、すなわち部品300の正確な配列位置に部品300が誘導される。図7(f)に示す平面図のように、部品300を正確な載置位置である第1溝11a、11b、第2溝12a、12b、12c、12dで構成される溝10の中央となるように誘導される。
【0043】
(乾燥工程)
次に乾燥工程(S204)に移行する。配列板振動工程(S203)により、正確な位置に配置された部品300を含む配列板100を、図示しない乾燥装置に入れ、残留水200aを蒸散させる。微量の残留水200aの乾燥であり、乾燥温度約50°Cで約60sec間の加熱で蒸散は可能である。なお、揮発性液体を使用した場合には、使用液体に最適な乾燥温度、時間を設定する。
【0044】
乾燥により図7(g)に示すように、配列板100に部品300が所定の位置、方向に配列される。この後、部品300を含む配列板100を、図示しない部品300の組立装置に搬送し、所定の部品組立てを行う。
【0045】
部品300を含む配列板100を搬送する場合には、部品300が搬送中に所定の配列位置から動いてずれないよう、図示しないが、例えば配列板100に吸引装置を備えることが好ましい。また、搬送後の組立て等の装置への部品300の供給には、配列板100に載置された部品300を吸引装置等で同時に取り上げて、組立て等の装置に供給する搬送装置を用いることが好ましい。すなわち、部品300を取り上げる際に配列板100に外乱(振動等)が加わり、取り上げ前の部品300の配列位置がずれてしまう虞があるため同時取り上げが好ましい。
【0046】
上述の説明の通り、本実施形態において、大量の微小部品を短時間に正確に方向・位置を定めて配列板上に載置することができる。また、使用する液体が水(純水)であっても十分に効果を発揮できることから、従来の揮発性溶剤を用いなければならない配列方法に比べ、安全性、環境負荷の高い対応性能を有するものである。
【符号の説明】
【0047】
10…溝、20…基板、100…配列板、100a…部品載置領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品を所定の方向に整列載置する配列板であって、
基板のどちらか一方の基板面に、略平行に形成された2本の第1溝と、
前記2本の第1溝に挟まれた領域に前記第1溝にほぼ直交するように形成された1以上の第2溝と、を備え、
前記第2溝と前記第1溝とが連接し形成される部品載置領域を複数備える、
ことを特徴とする微小部品の配列板。
【請求項2】
少なくとも前記配列板の前記第1溝と前記第2溝とを除く、前記基板の前記部品載置領域の形成面が撥水性を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の微小部品の配列板。
【請求項3】
前記第1溝と前記第2溝とが親水性を有している、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の微小部品の配列板。
【請求項4】
前記基板がシリコン基板であることを特徴とする微小部品の配列板。
【請求項5】
基板のどちらか一方の基板面に平行して形成された2本の第1溝と、前記2本の第1溝に挟まれた領域に形成された1以上の第2溝とを備え、前記第2溝と前記第1溝とが連接し形成される部品載置領域を複数備える微小部品の配列板を用いた微小部品の配列方法であって、
前記配列板の前記部品載置領域に液体を供給し、前記第1溝および前記第2溝とを除く前記基板面上の前記液体を除去する液体供給工程と、
前記液体が充填された前記第1溝および前記第2溝上に配列部品を載置する部品載置工程と、
前記配列部品が載置された前記配列板を振動させる配列板振動工程と、
前記配列板振動工程の後に前記第1溝と前記第2溝とに残留する液体を蒸散させる乾燥工程と、を含む、
ことを特徴とする微小部品の配列方法。
【請求項6】
前記液体が水であることを特徴とする請求項5に記載の微小部品の配列方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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