説明

微生物の付着を防止するための構造

微生物の付着を阻止するための隆起構造を有する基板を作製および使用する方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連特許)本出願は、2010年1月28日に出願された米国特許出願第61/299,214号、および2010年7月19日に出願された米国特許出願第61/365,615号に対する優先権を主張するものであり、参照により、その内容全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
微生物の付着による表面の汚染は、非常に起こりやすく、これは、共同性の多細胞超個体としての細菌バイオフィルムの発生の第一段階である(O’Toole et al.,Annu.Rev.Microbiol.54,49−79(2000)、De Beer et al.,Prokaryotes 1,904−937(2006)、O’Toole,J.Bacteriology 185,2687−2689(2003))。表面の細菌汚染および個体群の重大な結果は、手術器具、生物医学材料、およびカテーテル等の装具の感染である(Christensen et al.,J.Clin.Microbiol.22,996−1006(1985)、Costerton et al.,Ann.Rev.Microbiol.41,435−464(1987)、Gristina,Science 237,1588−1595(1987)、Everaert et al,Colloids and Surfaces B:Biointerfaces 10,179−190(1998)、Jacques et al.,Microbial Ecology 13,173−191(1987)、Hall et al.,Public Health Records 79,1021−1024(1964)、Druskin et al.,J.Am.Med.Assoc.185,966−968(1963)、Bentley et al.,J.Am.Med.Assoc.206,1749−1752(1968)、Corso et al.,J.Am.Med.Assoc.210,2075−2077(1969)、Irwin et al.,Yale J.Biol.Med.46,85−93(1973)、Michel et al.,Am.J.Surgery 137,745−748(1979)、およびShinozaki et al,J.Am.Med.Assoc.249,223−225(1983))。手術器具、カテーテル、およびインプラントに関連する細菌汚染によって引き起こされる血流感染は、カテーテルおよびインプラントに関与する手技に関連して頻繁に見られる深刻な合併症である(Christensen et al.,J.Clin.Microbiol.22,996−1006(1985)、Costerton et al.,Ann.Rev.Microbiol.41,435−464(1987)、Gristina,Science237,1588−1595(1987)、Everaert et al,Colloids and Surfaces B:Biointerfaces 10,179−190(1998)、Jacques et al.,Microbial Ecology 13,173−191(1987)、Hall et al.,Public Health Records 79,1021−1024(1964)、Druskin et al.,J.Am.Med Assoc.185,966−968(1963)、Bentley et al.,J.Am.Med.Assoc.206,1749−1752(1968)、Corso et al.,J.Am.Med.Assoc.210,2075−2077(1969)、Irwin et al.,Yale J.Biol.Med.46,85−93(1973)、Michel et al.,Am.J.Surgery 137,745−748(1979)、およびShinozaki et al,J.Am.Med.Assoc.249,223−225(1983))。
【0003】
細菌は、多様な機構によって、親水性から疎水性まで非常に様々な表面に物理的に付着することができる(O’Toole et al.,Annu.Rev.Microbiol.54,49−79(2000)、De Beer et al.,Prokaryotes 1,904−937(2006)、O’Toole,J. Bacteriology 185,2687−2689(2003)、Christensen et al.,J.Clin.Microbiol.22,996−1006(1985)、Costerton et al.,Ann.Rev.Microbiol.41,435−464(1987)、Gristina,Science 237,1588−1595(1987)、Everaert et al,Colloids and Surfaces B:Biointerfaces 10,179−190(1998)、Jacques et al.,Microbial Ecology 13,173−191(1987))。典型的な機構として、コンディショニング層として知られる、物理的または化学的な吸着によって細菌自体の付着の前に生じるタンパク質の初期堆積が挙げられる。フィブロネクチン、フィブリノゲン、コラーゲン、および他のタンパク質を含有し得るコンディショニングフィルムは、ほぼ瞬時に生体材料表面を被覆し、細菌または組織の接着のための受容部位を提供する(Gristina,Science 237,1588−1595(1987))。
【0004】
これらの種々の高分子の役割は、異なる細菌種ごとに異なる。例えば、黄色ブドウ球菌は、コラーゲンおよびフィブロネクチンに特異的な結合部位を有する(Gristina,Science 237,1588−1595(1987))。生体材料表面に接近する細菌(または骨、内皮細胞、線維芽細胞等の組織細胞)は、最初に糖タンパク質性のコンディショニング層に遭遇する。
【0005】
手術器具およびカテーテル等の血管内デバイスは、多くの潜在的な感染源を有する。カテーテル表面への微生物の接着は、感染の原因に関連する最も重要な特徴の1つである。細菌細胞がたとえ1つでも表面への接着に成功すると、強力な伝染性の細菌フィルムへと発達し、疾病の原因となり得る。したがって、細菌の接着を防止するための有効な対策は、コロニー形成に対して本質的に耐性を示す表面材料を開発することであった。カテーテル表面を非毒性の殺菌剤もしくは抗菌剤で被覆するため、またはそのような物質をカテーテル材料自体に組み込むために、種々の手法が採られてきた(Cmich et al.,Clinical Infectious Diseases 34,1232−1242(2002))これらの抗菌性表面は、Ag粒子複合材構造、殺菌剤、および抗菌剤等の化合物を組み込む原理に基づいている。
【発明の概要】
【0006】
基板への微生物の付着を防止、阻止、または軽減するための隆起構造、およびそのような構造を使用する方法について記載する。そのような隆起構造は、微生物を含有する汚染液に接触した場合に、基板上の微生物の付着を防止、阻止、または軽減する。接触は、汚染液への単純な曝露に起因して静的であってもよいか、または微生物を含有する液体の飛沫もしくは注入に起因する接触等、動的であってもよい。好ましくは、接着は、汚染液の一次的な接触後に阻止または軽減される。特定の実施形態において、接触は、数ミリ秒から数分間継続する。
【0007】
一態様において、処理表面は、動的条件下(表面上での液体の注入、飛沫、または散布等)で汚染液による表面の湿潤を防止することにより基板表面から細菌、ウイルス、および真菌をエネルギー的に排除する隆起した超疎水性構造を備え、該構造は、幅、例えば、細菌およびウイルス用には約5μm未満、真菌用には約15μm未満の遠位幅を有する。
【0008】
1つ以上の実施形態において、隆起構造は、幅、例えば、約2μm未満の遠位幅を有する。
【0009】
別の態様において、処理表面は、汚染液中に含有される微生物のおよその長さおよび/または横径未満の構造間空間を有する隆起構造を提供することにより、基板サブ表面から微生物を物理的に排除する隆起構造を含む。隆起構造は、超疎水性、疎水性、または親水性であってもよい。
【0010】
1つ以上の実施形態において、処理表面は、エネルギー的および物理的の両方で基板から微生物を排除する隆起構造を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、隆起構造はポストである。さらなる実施形態において、隆起構造はチャネルである。さらなる実施形態において、隆起構造はクローズドセル構造である。さらなる実施形態において、隆起構造は上記の組み合わせである。隆起構造は、基部またはサブ表面上に規則正しく離間されてもよく(例えば、ポストアレイ)、規則正しく離間されたチャネルおよびレンガ様閉鎖構造であってもよい。他の実施形態において、ランダムに離間される。
【0012】
いくつかの実施形態において、隆起ポスト構造は、機械的安定性の増加を確実にする横断面を有する機械的に強化されたポストを備える。
【0013】
いくつかの実施形態において、チャネル構造の壁は、直線的ではなく、機械的に強化された形状を備える。
【0014】
いくつかの実施形態において、隆起構造は、遠位幅よりも大きい基部幅を有する隆起構造を有することにより、機械的に強化された構造を備える。いくつかの実施形態において、これらの隆起構造は、より大きいまたはより広い基部を有するポスト、チャネル、またはクローズドセルを備え、それによって機械的強度の向上を示す。
【0015】
一態様において、隆起面を提供するために基板が被覆される。
【0016】
別の態様において、隆起構造は、デバイスへの微生物の付着を防止、阻止、または軽減するために、医療用デバイス等のデバイス上のコーティングとして調製される。
【0017】
いくつかの実施形態において、隆起構造は、種々の形状および寸法(例えば、横断面、高さ、および幅)の構造である。さらなる実施形態において、隆起構造は、分離しているかまたは相互接続しているかのいずれかである。よって、異なる寸法、形状、および空間的配置を有する隆起構造から、周期的パターンを含む異なる表面パターンが形成される。
【0018】
本発明の隆起構造は、フォトリソグラフィ、投影リソグラフィ、電子ビームによる書き込みもしくはリソグラフィ、ナノワイヤアレイの析出、基板表面上でのナノ構造体形成、ソフトリソグラフィ、レプリカ成形、溶液析出、溶液重合、電気重合、電気紡糸、電気めっき、蒸着、接触印刷、エッチング、転写パターニング、マイクロインプリント、自己アセンブリ等の多数の異なる技術によって生成することができる。
【0019】
本発明の種々の目的、特徴、および利点は、同様の参照番号が同様の要素を特定する以下の図面と関連して考慮される場合に、以下の本発明の詳細な説明を参照して、より完全に理解され得る。以下の図面は、例示目的のためであるに過ぎず、その範囲が添付の特許請求の範囲に記載される本発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】超疎水性ポストのアレイの斜視図である。
【図1B】「Cassie」または「Cassie‐Baxter」状態でポストの上部に接触する水溶液の液滴を含む超疎水性ポストのアレイの上部の写真であり、図1Cは対応する断面側面図であり、接触角θまたはθ*を画定する蒸気/液体界面の拡大図を含むポストの上部に接触する液滴を示している。
【図1D】水溶液(上)が「Cassie」状態にあり、構造の先端にのみ曝露された微生物を含有する、基板(下)上のポストのアレイの側面図である。
【図1E】水溶液(上)が部分的にまたは完全にウェンゼル(湿潤)状態に遷移し、溶液によって湿潤されたポストに接着する微生物を含有する、基板(下)上のポストのアレイの側面図である。
【図1F】不規則な隆起構造を有する基板の図を示し、図1Gは、均一または規則的な隆起構造を有する基板の図を示しており、汚染液(表面の上)は、不規則な隆起構造よりも均一な隆起構造によって基板サブ表面からより効率的に排除されることを示している。
【図2A−2F】(a)平坦な親水性基板、(b)平坦な疎水性基板、および(c)〜(f)ポストアレイおよびレンガ状隆起面(「交差壁」)を含む基板上の隆起した超疎水性構造を含む、様々な表面およびそれらの対応する接触角を示す一連の図および顕微鏡写真である。
【図3】幅(w)、ピッチ(p)および構造間空間(s)を示した、円形隆起ポスト構造(3A)、隆起チャネル構造(「壁」)(3B)、および隆起クローズドセル型のレンガ状構造(「交差壁」)(3C)の概略的な斜視図、上面図、および側面図を示す。
【図4A】隆起ポスト構造によって形成される異なる表面パターンの代表的な概略上面図であり、種々の実施形態によるポストの種々の断面形状および面積、ならびにポストの整列度におけるばらつきを示している。
【図4B】種々の実施形態による異なる隆起チャネルを有する構造化表面の代表的な概略上面図である。
【図4C】種々の実施形態による、隣接する構造間に空間を有する種々の形状の隆起クローズドセル構造を有する基板の上面図である。
【図4D】種々の実施形態によるレンガ状区画、正方形状区画、ハニカム状区画、および網目状区画を含む、相互接続する壁を有する隆起クローズドセル構造を有する基板の上面図である。
【図5A−D】種々の実施形態による、強化された分岐したI字形(5A)、T字形(5B)、X字形(5C)、およびY字形(5D)の隆起ポスト構造の代表的な概略断面図である。
【図5E】分岐したT字形の隆起Siポストの例示的なアレイのうちの1つのアレイの走査電子顕微鏡画像を示す。
【図5F】成形技術を用いて製造した機械的強度の向上を示す、分岐したY字形の隆起した重合体ポスト構造のアレイの光学顕微鏡画像を示す。
【図6A−6F】表面に向かって落下し(6A)、超疎水性表面に衝突し(6B)、拡散し(6C)、表面から離れる(6D〜6F)水溶液の液滴を示す一連の写真である。
【図7A】微生物が基板に接触するのを妨げる、微生物のおよその最長直径dLおよび最短横径dSのどちらにも満たない構造間距離(s)を有する隆起ポスト構造を有する基板の側面図である。
【図7B】枯草菌細胞の横径未満の構造間距離を有する隆起ポスト構造を有する基板上の枯草菌の顕微鏡写真であり、枯草菌細胞が、ポスト構造の先端上に存在し、基板には接触しないことを示している。
【図8A−8D】直線的な円筒形(8A)、分岐したY字形(8B)、分岐したT字形(8C)の形状を有し、基部幅2.7ミクロンの先細り円錐形状(8D)を有するSiポスト(幅1ミクロン、高さ9ミクロン)の機械的特性のコンピュータによるシミュレーションであり、挿入図は、調べた特徴の上面図を提供し、横の棒グラフは、機械的応力(フォン・ミーゼス、MPa)および変位(μm)を示す。
【図9A−E】それらが遠位端から基部表面に接近するにつれて増加する幅を有する隆起ポスト構造を特徴とする5つの異なるアレイの概略断面図である。
【図9F】Boschプロセスを用いて製造した機械的強度の向上を示す隆起円錐形Siポスト構造のアレイの走査電子顕微鏡画像を示す。
【図9G】導電性重合体の電着による再成形を用いて製造した機械的強度を示す隆起円錐形Siポスト構造のアレイの、時間(t)=0、t=5分、t=10分、t=15分、およびt=20分での走査電子顕微鏡画像を示し、徐々に幅広くなる基部を有するポストの形成を示している。
【図10A−10F】1つ以上の実施形態によるハニカム状およびレンガ状の壁を備える例示的な隆起クローズドセル構造の光学顕微鏡写真および電子顕微鏡写真を示す。
【図11】2種類のパターン化表面を有する医療用デバイスの概略図であり、(A)上のデバイスは、隆起構造を備える表面コーティングで被覆され、(B)下のデバイス自体が、隆起構造を備える表面を有する。
【図12A−12B】汚染液への接触後、隆起した超疎水性構造を有する基板への細菌の接着を調べるために使用される方法の図である。
【図13A】寒天平板上の平坦な疎水性(フッ素化)基板(Si−F)、平坦な親水性基板(Si−C)を示し、図13Bは、一晩培養した後の対応する寒天平板を示す。
【図14A】非パターン化(平坦)およびパターン化の両方の隆起ポストアレイ表面を有する基板の画像を示し、図14Bは、寒天平板上に伏せられた基板の画像を示し、図14Cは、一晩培養した後の寒天平板の画像を示している:パターン化表面に相当する区域が実質的に微生物を含まないのに対し、平坦な表面に相当する区域には著しい微生物の増殖が見られたことを示している。
【図15A−C】隆起ポストの幅の関数として、汚染液の流れに曝露した後の細菌増殖実験を示す。
【図16A】交差する1.3ミクロン幅のレンガ状の壁を有する非パターン化(平坦)およびパターン化領域の両方を有する基板の画像を示す。図16Bは、寒天平板上に伏せられた基板の画像を示し、図16Cは、一晩培養した後の寒天平板の画像を示している:パターン化表面に相当する区域が微生物を含まないのに対し、平坦な表面に相当する区域には著しい微生物の増殖が見られた。
【図17A】平坦な(非パターン化)表面上で増殖する病原性大腸菌の画像を示し、図17Bは、大腸菌の最小寸法未満の構造間空間を有する隆起ポスト構造を有する表面の画像を示している:ポストの上部には大腸菌の存在は見られなかった(上の画像は電子顕微鏡写真であり、下の画像は光学顕微鏡写真である)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照により、それらの全体が組み込まれる。別途指定のない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとする。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先する。また、材料、方法、および例は、例示的であるに過ぎず、限定的であることは意図されない。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料が本発明の実施または試験において使用されてもよいが、好適な方法および材料を後に記載する。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明白となるであろう。
【0023】
基板への微生物の付着を防止、阻止、または軽減するための隆起構造、およびそのような構造を使用する方法について記載する。そのような隆起構造は、微生物を含有する汚染液に接触した場合に、基板上への微生物の付着を防止、阻止、または軽減する。接触は、単純なもしくは継続的な曝露に起因して静的であってもよいか、または微生物を含有する液体の飛沫もしくは注入に起因する接触等、動的であってもよい。いくつかの実施形態において、接着は、汚染液の一次的な接触後に完全に阻止または軽減される。いくつかの実施形態において、接触は、数ミリ秒から数分間継続する。そのように曝露された表面は、無菌状態を維持するか、または物理的もしくは化学的処理によって容易に除去することができるように微生物を緩やかに付着させるかのいずれかである。無菌表面は、完全に無菌であるか(完全に微生物を含まない)、有効に無菌であるか(緩やかに付着するかまたは組織化が不完全な生物を十分に少量含有するため、微生物はその表面から別の環境に移動されない)、または限定されたもしくは軽減された汚染を示すか(微生物の付着は、隆起構造を持たない類似表面よりも少ない)のいずれかである。無菌性または微生物汚染は、Miles,A.A;Misra,S.S.J.Hyg.(London),38,732(1938)(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるミスラ法を使用して、液体の体積または固体の質量当たりに存在するコロニーフォーミングユニット(CFU)の数を測定すること等、当業者に既知の多数の方法のいずれかによって測定される。無菌性または微生物の汚染はまた、表面上の微生物増殖の程度を画像分析することによっても測定することができる。例えば、図13B、14C、15A、B、およびC(下側の画像)、ならびに16Cに示される寒天平板の画像について画像分析を行った。これらの図に示される平坦な対照表面は、増殖後には元の区域の75%〜100%を構成したプリント(汚染)区域を移動させたのに対し、約2ミクロン未満の直径および/または幅を有する隆起ポストおよび壁を有する超疎水性表面は、元の区域の0%の区域を移動させた(すなわち、微生物増殖は見られなかった)。例えば、図15A〜B、16Cを参照。5ミクロンの直径を有する隆起ポストを有する超疎水性表面は、元の区域の約4%の区域を移動させた(すなわち、いくらかの微生物増殖が見られた)。例えば、図15Cを参照。無菌性または微生物汚染を測定する他の方法は、G.D.,et al.J.Clin.Microbiol.22,996−1006(1985)、Costerton,J.W.,et al.Ann.Rev.Microbiol.41,435−464(1987)、Gristina,A.G.Science 237,1588−1595(1987)、Everaert,E.P.J.M.,van der Mei,H.C.&Busscher,H.J.Colloids and Surfaces B:Biointerfaces 10,179− 190 (1998)、Jacques,M.,Marrie,T.J.&Costerton,J.W.Microbial Ecology 13,173−191(1987)、Hall,L.B.&Hartnett,B.A.Public Health Records 79,1021−1024(1964)、Druskin,M.S.&Siegel,P.D.J.Am.Med.Assoc.185,966−968(1963)、Bentley,D.W.&Lepper,M.H.J.Am.Med.Assoc.206,1749−1752(1968)、Corso,J.A.,Agostinelli,R.&Brandriss,M.W.J.Am.Med.Assoc.210,2075−2077(1969)、Irwin,G.R.,Hart,R.J.&Martin,C.M.Pathogenesis and Prevention of Intravenous Catheter Infections.Yale Journal of Biology and Medicine 46,85−93(1973)、Michel,L.,McMichan,J.C.&Bachy,J.−L.Am.J.Surgery 137,745−748(1979)、Shinozaki,T.,Deane,R.S.,Mazuzan,J.E.,Hamel,A.J.&Hazelton,D.J.Am.Med.Assoc.249,223−225(1983)、Cmich,C.J.&Maki,D.Clinical Infectious Diseases 34,1232−1242(2002)、およびGenzer,J.&Efimenko,K.Biofouling 22,339−360(2006)に記載されており、参照により、これらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0024】
いくつかの実施形態において、隆起構造はポストである。さらなる実施形態において、隆起構造はチャネルである。さらなる実施形態において、隆起構造はクローズドセル構造である。さらなる実施形態において、隆起構造は上記の組み合わせである。
【0025】
一態様において、処理表面は、表面上での液体の注入、飛沫、または散布等の動的条件下で汚染液による表面の湿潤を防止することにより微生物をエネルギー的に排除する、隆起した超疎水性構造を備える。
【0026】
本明細書で使用される場合、「超疎水性」は、液体/表面界面が少なくとも約140°の接触角θを有し、液体が隆起面特徴の先端のみと接触し、かつ空気のクッション上に載置するようないわゆる「Cassie」状態にある、高度に疎水性および非湿潤性の表面を意味する。接触角(θ)は、図1Cに見られるように、液体‐蒸気界面が固体−液体界面に出会う角度である。接触角が減少するにつれて、平坦な固体表面にわたって液滴が拡散する傾向が増加する。したがって、接触角は、湿潤性の逆指標を提供する。
【0027】
図1Aは、ポスト100のアレイを有する例示的な超疎水性表面を示す。ポストは疎水性であり、例えば、それらは疎水性の材料でできていてもよいか、または疎水性表面を提供するように被覆もしくは化学処理されてもよい。液体、例えば、水は、球を形成するため、超疎水性表面の表面を湿潤させない。図1Bは、例えば、図1Aに示されるようなポスト100のアレイから構成される超疎水性表面120上の非湿潤性の水滴110を示す。図1Cは、微細構造を有する超疎水性表面上に載置する水滴の断面図を示す。図1Cはまた、基板上の液相(L)、蒸気(V)の相対的な位置の拡大図も提供する。この図において、θは、Cassie状態にある液体の接触角であり、θ*は、安定した平衡状態に相当する見かけの接触角である。超疎水性表面は、当該技術分野において既知であり、限定されないが、隆起面の表面組成、幅、高さ、および構造間空間等の要因によって影響を受けることが分かっている。当業者は、これらの要因が、表面によって示される接触角にどのように影響を与えるかを理解するであろう。
【0028】
図2A〜2Fは、種々の表面の特性が液体/表面界面の接触角にどのように影響を与えるかを示している。図2は、140°未満の接触角を示す、隆起構造を持たない平坦な(a)親水性および(b)疎水性の表面を示し、平坦な表面を疎水性材料で被覆することだけでは、超疎水性表面を生成するために十分ではないことを示している。画像(c)〜(f)は、140°より大きい接触角を示す、様々な幅(または「直径」)およびピッチの(c)〜(e)ポストアレイおよび(f)クローズドセル型のレンガ状(または「交差壁」)構造の隆起構造を有するフッ素化表面を示しており、本明細書に記載される隆起面が超疎水性表面を生成することを示している。各図において、上の画像は表面の低倍率画像であり、中央の画像は表面の高倍率画像であり、下の画像は接触角を示した表面上の水滴の画像である。図2Cは、ポスト間空間が10μmである5μm幅ポストの規則正しいポストアレイを示す。表面上の水滴は、146°の接触角を有する。図2Dに示されるように、ポストサイズおよびポスト間空間の両方を減少させると、表面の疎水性および水滴の接触角(169°)が増加する。さらにより小さい直径のポスト(300nm)およびポスト間空間(1.7μm)は、ほぼ同じ接触角を提供する(図2E)。興味深いことに、図2Dおよび2Eのポストの突出表面積(Φ比率)も同様である。最後に、図2Fは、ポスト以外の隆起面特徴もまた、超疎水性表面および大きな接触角(例えば149°)を形成することができることを示している。
【0029】
図3Aは、サブ表面10上にポスト20を有するポストアレイを斜視図、平面図、および断面図で示している。図3Bは、サブ表面30上に壁40を有するチャネルアレイを斜視図、平面図、および断面図で示している。最後に、図3Cは、サブ表面50上に長壁60および横の短い壁65を有するクローズドセルのアレイを斜視図、平面図、および断面図で示している。本明細書で使用される場合、「幅」(w)は、隆起面の遠位端の最短横方向距離を指す。例えば、図3は、隆起環状ポスト表面の遠位端の幅は、その遠位端ではその直径であり(3A)、チャネルまたはクローズドセル構造を画定する隆起面の遠位端の幅は、その遠位端ではチャネルまたはクローズドセル構造を画定する壁の幅である(それぞれ、3Bおよび3C)ことを示している。
【0030】
本明細書で使用される場合、「ピッチ」(p)または周期性は、隣接する隆起構造の中心間の距離を指す。例えば、図3は、ポスト間のピッチは、隣接するポストの中心間の距離であり(3A)、チャネルを画定する隆起構造間のピッチは、隣接する横壁の中心間の平均距離であり(3B)、クローズドセル構造を画定する隆起構造間のピッチは、クローズドセル構造を区切る壁または対向する壁の中心間の平均距離(区画ごと)であることを示している(例えば、正方形、六角形、八角形等の形状を示す区画等の特定の対称な区画の場合、構造間空間は、対抗する横壁の中心間の距離に等しくなり、非対称区画の場合はpxおよびpyである)。
【0031】
本明細書で使用される場合、「構造間空間」(s)は、隣接する隆起構造間の利用可能な空間/空隙の最短横寸法を指す。図3A〜Bは、構造間空間は、構造のピッチから幅を引いたものに等しいことを示す。図4A〜Bおよび4Dのいくつかの態様に見られるように、不均一に離間されたポスト、非対称区画、および非対称チャネル等の様々な構造間空間を有する構造の場合、構造間空間は、区画ごとに隣接する隆起構造間の利用可能な平均最短空間/空隙として定義されることが望ましい。
【0032】
別の態様において、表面は、基板サブ表面から微生物を物理的に排除する、汚染液中に含有される微生物のおよその長さおよび/または横径未満の幅および構造間空間の両方を有する隆起構造を有する隆起構造を備える。いくつかの実施形態において、微生物は、構造の上部を構成する網状表面等において構造の上部に接触し、基部またはサブ基板には接触しない。
【0033】
いくつかの実施形態において、微生物は、縦横の区別がある微生物、例えば、長さおよび横径を有する棒状の微生物である。他の態様において、微生物は、縦横の区別がない微生物、例えば、直径を有する球状の微生物である。
【0034】
いくつかの実施形態において、微生物は、バイオフィルムを形成する微生物であり、バイオフィルムの形成は、本明細書に記載される方法によって阻止されるか、遅延されるか、または弱められる。
【0035】
いくつかの実施形態において、微生物の付着を軽減または阻止するために使用される基板は、寸法、形状、および空間的配置が異なり得る隆起構造を含む。いくつかの実施形態において、基板上の隆起構造の高さおよび幅は、均一である。さらなる実施形態において、隆起構造の高さおよび幅は、基板にわたって異なる。いくつかの実施形態において、隆起構造の高さは、基板にわたって徐々に変化し、例えば、高さの勾配を形成する。さらなる実施形態において、隆起構造の高さは、基板にわたってランダムに異なる。同様に、いくつかの実施形態において、基板上の隆起構造の幅は、均一である。さらなる実施形態において、隆起構造の幅は、基板にわたって異なる。いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、基板にわたって徐々に変化し、例えば、幅の勾配を形成する。さらなる実施形態において、隆起構造の幅は、基板にわたってランダムに異なる。いくつかの実施形態において、基板上の隆起構造の形状は、均一である。さらなる実施形態において、隆起構造の形状は、基板にわたって異なる。いくつかの実施形態において、隆起構造の形状は、基板にわたって徐々に変化し、例えば、形状の勾配を形成する。さらなる実施形態において、隆起構造の形状は、基板にわたってランダムに異なる。いくつかの実施形態において、基板上の隆起構造の構造間空間は、均一または規則正しい。さらなる実施形態において、隆起構造の構造間空間は、基板にわたって異なる。いくつかの実施形態において、隆起構造の構造間空間は、基板にわたって徐々に変化し、例えば、構造間空間の勾配を形成する。さらなる実施形態において、隆起構造の構造間空間は、基板にわたってランダムに異なる。いくつかの実施形態において、隆起構造は整然とした様式で分布され、例えば、対称に配置される。さらなる実施形態において、隆起構造はランダムに配置される。
【0036】
いくつかの実施形態において、隆起構造は、分離しているかまたは相互接続しているかのいずれかである。よって、図4A〜4Dに例示されるように、異なる寸法、形状、および空間的配置を有する隆起構造から、周期的パターンを含む異なる表面パターンが形成される。図1F〜Gに示されるように、汚染液(表面の上)は、不規則な隆起構造よりも均一な隆起構造によって基板サブ表面からより効率的に排除されるため、均一な隆起構造が好ましい。
【0037】
いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、表面への微生物の付着を防止または抑制するように選択される。いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は約5μm以下である。いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は約2μm以下である。いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、約5μm〜約100nm、または約2μm〜約300nmの範囲である。いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、微生物のおよその最小軸よりも小さい。さらなる実施形態において、隆起構造の幅は、微生物のおよその長さ未満であるか、または微生物のおよその直径未満である。
【0038】
ウイルスは非常に小さく、約20〜250nmの範囲の寸法である。真菌胞子は1〜100ミクロン(大抵は2〜20ミクロン)の範囲であり、細菌胞子は0.5〜2ミクロンの範囲である。特徴の寸法は、それに応じて決定することができる。例えば、細菌および真菌の場合、ポスト寸法の上限は、微生物のサイズの約3〜5倍の範囲であってもよく、多くの場合、約3〜5ミクロンのポスト寸法を用いて表面への細菌および真菌の付着を防止または抑制することができる。実験の結果から、5ミクロンのポストは、微生物の汚染がまったくないかわずかに見られ、かつ/または処理表面上でのバイオフィルム形成を防止するサイズの範囲であることが示された。
【0039】
特定の実施形態において、隆起構造は、通常、基板に対して垂直に配向される(例えば、直交する)。さらなる実施形態において、隆起構造は、基板に対して斜めに配向される。
【0040】
いくつかの実施形態において、隆起ポスト構造は、機械的安定性のために分岐した横断面を有する機械的に強化されたポストを備える。例えば、図5A〜5Dは、そのようなポストは、それらの最大機械的安定性に起因して構築において用いられることが知られている、分岐したT字形、Y字形、もしくはX字形の横断面、または分岐したI形梁の形状を有することができることを示している。さらなる実施形態において、ポストは横断面がS字形であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、隆起構造は、それらの遠位幅よりも大きい基部幅を有する、機械的に強化された構造を備える。
【0042】
いくつかの実施形態において、隆起構造は、デバイスへの微生物の付着を防止、阻止、または軽減するために、医療用デバイス等のデバイス上のコーティングとして調製される。さらなる実施形態において、表面自体が、本明細書に記載される隆起構造を画定するように構造化される。
【0043】
本発明の隆起構造は、フォトリソグラフィ、投影リソグラフィ、電子ビームによる書き込みもしくはリソグラフィ、ナノワイヤアレイの析出、基板表面上でのナノ構造体形成、ソフトリソグラフィ、レプリカ成形、溶液析出、溶液重合、電気重合、電気紡糸、電気めっき、蒸着、接触印刷、エッチング、転写パターニング、マイクロインプリント、自己アセンブリ等の多数の異なる技術によって生成することができる。
【0044】
微生物のエネルギー的排除
本発明は、規定された特徴サイズを有する超疎水性隆起構造は、微生物を含有する汚染液の表面への動的衝突時に(飛沫、注入、または、散布による等)、基板上の微生物の接着を完全に阻止または軽減するために使用することができるという発見に一部基づいている。
【0045】
一態様において、隆起構造は、動的条件下(表面上での液体の注入、飛沫、または散布等)で汚染液による表面の湿潤を防止することにより微生物をエネルギー的に排除する表面を提供する隆起した超疎水性構造を備える。特定の実施形態において、構造は、細菌の付着を防止するために約5μm未満の幅、そして真菌の付着を防止するために約15μm未満の幅を有する。
【0046】
いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、表面への微生物の付着を防止または抑制するように選択される。いくつかの実施形態において、細菌またはウイルスの場合、隆起構造の幅は約5μm以下である。真菌生物の場合、特徴の幅は約10μm以下であってもよい。いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は約2μm以下である。いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、約5μm〜約100nm、または約2μm〜約300nmの範囲である。いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、微生物のおよその最小軸よりも小さい。さらなる実施形態において、隆起構造の幅は、微生物のおよその長さ未満であるか、または微生物のおよその直径未満である。
【0047】
特徴の直径が微生物の寸法以下である場合、微生物が隆起面特徴の上部に付着するのが困難である。表面がCassie状態にある場合、液体の接触角が高く、接触面積が小さいので、微生物が表面に付着して増殖する能力はさらに妨げられる。1つ以上の実施形態において、特徴の寸法はバイオフィルムの形成を防止する。いくつかの実施形態において、約2ミクロン未満の幅を有する隆起構造は、動的条件下(汚染液による注入、散布、または飛沫)で有効に無菌の表面をもたらす。さらなる実施形態において、約2〜約20ミクロンの幅を有する隆起構造は、動的条件下(汚染液による注入、散布、または飛沫)で限定されたまたは軽減された汚染を示す表面をもたらす。
【0048】
水滴とパターン化疎水性表面との接触面積を最小限に抑えるために、液滴が、いわゆるWenzel状態、すなわち湿潤状態に遷移することなく、いわゆる「Cassie‐Baxter」状態、すなわち非湿潤状態に留まる可能性を最大化しなければならない。「Cassie‐Baxter」状態にある液滴は、隆起構造の上部のみを湿潤させるため、接触面積が最小限に抑えられることに留意されたい。対照的に、Wenzel状態にある液滴は、表面全体、例えば、隆起した特徴の上面および隆起した特徴が取り付けられたサブ表面を湿潤させる。これらの2つの状態についての考察は、例えば、Cassie et al.Trans.Faraday Soc.,1944,40,546−550およびWenzel,J.Phys.Colloid Chem.,1949,53,1466−1467を参照のこと(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)。液滴が「Cassie‐Baxter」状態に留まる可能性を最大化するために、隆起構造のサイズを疎水性表面上で適切な寸法に減少し、それによって、表面の疎水性をさらに増加させることができる。実際に、この手法は、超疎水性表面、すなわち、水滴が140°以上の接触角を有する表面の調製を可能にする。接触角が大きいほど、接触面積は小さくなることに留意されたい。基板は、隆起面の超疎水性効果を増強する疎水性材料でできていてもよい。
【0049】
疎水性ポストのアレイ等の超疎水性表面は、汚染液に対して非湿潤性であるため、いわゆる「Cassie」状態にある液滴は、表面構造のごく上部の特徴とのみ接触する(Danese,Chemistry and Biology 9,873−880(2002)、Cmich et al.,Clinical Infectious Diseases 34,1232−1242(2002)、Cmich et al.,Clinical Infectious Diseases 34,1362−1368(2002)、Genzer et al.,Biofouling 22,339−360(2006)、Callies et al.,Soft Matter 1,55−61(2005)、Barthlott et al.,Planta 202,1(1997)(参照により、それらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。これは、液滴がポストの上部に接触し、表面の接触角を画定していることを示す図1Bおよび1Cに示される。
【0050】
図1Dは、サブ表面120上に隆起ポスト100を有する超疎水性表面を示し、微生物の付着に対する超疎水性表面の閉じ込め効果を示している。溶液130中の微生物は、表面との限定された接触のみを有する(図1D)。しかしながら、曝露時間の延長により、表面の部分的または完全な湿潤140をもたらすことができる(図1E)。したがって、「Cassie」状態の寿命は限定され得、汚染液(すなわち、微生物を含有する液体)の非湿潤性接触もまた限定され得る。
【0051】
微生物の付着のための導入時間(すなわち、微生物が隆起面または基板に付着するために必要な時間)が存在するため、微生物の付着が起こる前に水滴が表面から跳ね返る条件が生成され得る。汚染液の液滴は、パターン化超疎水性表面から跳ね返るため、それらの表面との接触時間は、微生物の付着のために必要な時間よりも短い。これに対して、汚染液の液滴は、典型的には、非パターン化疎水性表面、またはパターン化もしくは非パターン化親水性表面からは跳ね返らない。結果として、そのような液滴は、非パターン化疎水性表面またはいずれかの親水性表面と接触した状態に留まり、微生物がこれらの表面に付着するための十分な機会を提供し得る。
【0052】
超疎水性がもたらす重要な結果は、衝突した液滴が拡散するが、その後に後退し、結局は表面から迅速に撥水されることである(Feng et al.,Advanced Materials 18,3063−3078(2006)、Quere,Ann.Rev.Mater.Res.38,71−99(2008)、Richard et al.,Europhys.Lett.50,769−775(2000)、Richard et al.,Nature 417,811(2002)、Bartolo et al.,Europhys.Lett.74,299−305(2006)(参照により、それらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。そのような衝突した液滴は、限定された時間の間だけ表面と接触した状態に留まり、該時間は、大抵の場合、液滴の衝突速度の関数ではなく、液滴のサイズの関数であり(Quere,Ann.Rev.Mater.Res.38,71−99(2008)(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)、1〜3mmのサイズの液滴の場合、約101〜102ミリ秒である。図6は、(6A)水溶液の液滴が(6B)超疎水性表面に衝突し、(6C)拡散し、(6D)〜(6F)次いで、表面から完全に撥水される(すなわち、離れる)ところを示す一連の写真を示している。
【0053】
液滴の迅速な撥水および表面からの排出の特性は、そのような液滴中に含有される細菌、ウイルス、または真菌が表面に物理的に付着する能力を妨害する規定された特徴サイズの超疎水性隆起構造と相まって、細胞付着およびバイオフィルム形成に耐性を示す表面を提供する。したがって、汚染液による液滴の撥水および表面からの排出後には、緩やかに付着するかまたは組織化が不完全な微生物が、存在しないかまたはごく少量後に残される。結果的に、微生物の完全なまたは実質的な不在とは、表面が、完全に無菌状態を維持するか(完全に微生物を含まない)、または有効に無菌であるか(緩やかに付着するかまたは組織化が不完全な生物を十分に少量含有するため、微生物はその表面から別の環境に移動され得ない)のいずれかに留まることを意味する。細菌が表面に付着できないことは、液滴の表面接触のための時間が限定されていること、および細菌または真菌が付着するための表面積が非常に限定されていること、という要因が組み合わさったことによるものである。
【0054】
特定の実施形態において、隆起した超疎水性構造は、疎水性材料から調製され、および/または疎水性コーティングを含む。いくつかの実施形態において、隆起した超疎水性構造はフッ素化される。特定の実施形態において、隆起した超疎水性構造(または隆起した超疎水性構造のアレイ)は、約150°〜約180°等の約140°より大きい接触角を有する。
【0055】
微生物の物理的排除
さらに、隆起構造の構造間空間、寸法、および形状は、微生物の付着を阻止するか、軽減するか、または弱めるために使用することができることが発見された。
【0056】
別の態様において、隆起構造は、基板サブ表面から微生物を物理的に排除する、汚染液中に含有される微生物のおよその長さおよび/または横径未満の構造間空間を有することができる。これらの実施形態において、微生物が構造間空間に進入して基部表面に付着することを可能にするためには構造間空間が小さすぎるため、それらは代わりに隆起構造の上面に拘束される。例えば、図7Aは、微生物が基板に接触するのを妨げるように、微生物725のおよその横径d未満の構造間距離sを有する隆起ポスト構造700を有する基板740の側面図を示す。最短横径dsおよび最長直径dLを有する、縦横の区別がある微生物720もまた示される。微生物720および725が隆起構造の上面に拘束されると、上部770および下方の利用可能な空間760の両方からそれらに到達することができるため、これらの微生物は、生物学的および化学的な攻撃の影響をより受け易い。図7Bは、そのような基板上の枯草菌微生物の顕微鏡写真であり、細胞750は、ポスト構造の先端に存在し、基板には接触しない。したがって、たとえ表面が湿潤する可能性があり、そのため、液体が、付着を可能にするのに十分な時間の間だけ表面に接触する場合でも、付着はほとんど見られないか、または微弱な付着のみが起こる。いくつかの実施形態において、隆起構造は超疎水性ではない。さらなる実施形態において、隆起構造は親水性である。
【0057】
微生物の物理的排除の場合、例えば、細菌が、隆起した特徴の先端のみに付着している時、それは、平坦な表面の場合よりもかなり容易に機械的または化学的な手段によって除去することができる。機械的除去の容易さが、表面接触の限定および接着の軽減に起因する一方で、上から(例えば、平坦な表面上に形成されるバイオフィルムにおけるように)だけではなく、下からも(例えば、液体または気体にかかわらず、抗生物質または他の化学的手段により)微生物を攻撃するための手段を提供する多孔質容積を微生物(例えば、細菌バイオフィルム)の下に有することにより、微生物の下部に到達するとともに攻撃の表面積も増加させるという事実によって、化学的または生物学的な除去もまた簡素化される。
【0058】
いくつかの実施形態において、隆起構造の構造間空間は、微生物のおよその最小軸よりも小さい。さらなる実施形態において、隆起構造の構造間空間は、微生物のおよその長さ未満であり、およその横径より大きい。さらなる実施形態において、隆起構造の構造間空間が減少し、微生物のおよその最短寸法未満であるため、微生物は構造の先端に接触し、基板には接触しない。
【0059】
上述のように、隆起した特徴の直径はまた、微生物の接着を抑制するように選択されてもよい。典型的には、棒状の微生物は、約0.1μm〜約10μmまたはそれより長い長さ、および約0.1μm〜約5μmまたはそれより広い横径を有する。球状の微生物は、約0.1μm〜約1μmの直径を有し得る。したがって、基板上に配置される隆起構造は、特定の微生物の長さおよび/または直径に基づいた幅を有することができる。例えば、ほとんどの院内感染疾患の原因である緑膿菌(PA14株)は、約1μm〜約2μmの横の長さおよび約0.5μm〜約1μmの横径を有する。この微生物の場合、約2μm未満の幅の隆起構造を有する基板が、この微生物の付着を阻止または軽減し、約0.5μm未満の構造間空間の隆起構造を有する基板が、微生物が隆起構造の上部に閉じ込められるように微生物を制御する。
【0060】
特定の実施形態において、微生物は、バイオフィルムを形成する微生物であり、バイオフィルムの形成が阻止されるか、遅延されるか、または弱められるように微生物の配置が制御される。例えば、本明細書に記載される基板上で微生物によってバイオフィルムが形成される場合、それが構造の先端に懸架されているため、表面との接触が限定されるという事実に起因して、そのようなバイオフィルムは、すすぎまたは洗浄等によって弱められ、基板から容易に除去することができる。
【0061】
特定の実施形態において、表面は、約10μm未満(真菌の場合)または約5μm未満(細菌またはウイルスの場合)または約2μm以下の直径を有する隆起した特徴を有する超疎水性表面であるため、表面の接触面積が小さく、液体は短い表面滞留時間を有する。隆起構造の上部に微生物を閉じ込めるために、約2μm未満の構造間空間を提供することによって、または約0.5μm未満の構造間空間によって、微生物の接着はさらに軽減または防止される。抗バイオフィルム表面の特定の特徴は、微生物系に依存する。5μm以下の遠位幅を有する表面の特徴は、ほとんどの細菌系(したがって真菌系(真菌は細菌よりも大きいため))に作用する。しかしながら、曝露の性質に依存して、さらなる特徴サイズが好ましいかもしれない。
【0062】
特定の実施形態において、幅が細菌/真菌細胞のサイズの約3〜5倍よりも小さい場合、表面は、エネルギー的排除(飛沫)の間に細菌/真菌の付着を軽減させる(実施例3に見られるように、5ミクロンのポストは、完全には付着を防止しないが、付着を軽減させる)。
【0063】
他の実施形態において、特徴の幅が細菌のサイズ(実施例3では約1.5ミクロン)未満である場合、表面は、エネルギー的排除(飛沫)の間に完全に無菌状態を維持する。
【0064】
さらに他の実施形態において、間隙が、細菌、真菌、またはウイルス、および微生物(例えば細菌フィルム)の最小寸法よりも小さく、そのため限定された接触で先端で形成し(より容易な物理的または機械的除去につながる)、下方からの到達が容易である場合(化学種または生物学的種を拡散するために、微生物の下にある多孔質容積からの化学的または生物学的処理に対するより高い感受性をもたらす)、表面は、長時間曝露された細菌を物理的に排除する。
【0065】
他の実施形態において、幅および空隙の両方が、細菌/真菌の最小寸法よりも小さい場合、表面は、飛沫したかまたは長時間曝露されたかのいずれかの細菌をエネルギー的および物理的の両方で排除する。
【0066】
汚染液への曝露後に、実施例3に記載される条件下で表面(または、隆起した特徴を有するコーティング層を含有する物品)を培養したところ、表面は、バイオフィルムの成長の証拠を示した。
【0067】
隆起構造の機械的強度の向上
大部分が柱のアレイから構成される従来の構造化表面は、衝撃および擦過によって容易に損傷を受けやすく、そのような損傷を受けると、隆起構造によって付与されたいずれの特性も失われる。本発明の隆起構造は、所望の耐湿潤性および/または細胞排除特性を有するが、機械的強度および耐衝撃性の向上を示す構造化表面を提供する。
【0068】
1つ以上の実施形態による隆起構造は、高い機械的安定性および耐擦過性を示す。ポストは、全ての方向に比較的小さな寸法を有するため、元も損傷を受けやすい。チャネルおよびクローズドセル構造は、少なくとも一次元に長い寸法、例えば、長さを有し、またクローズドセル構造の場合には均等な横断面特徴による補強を有するため、それよりも幾分強い。
【0069】
いくつかの実施形態において、隆起ポスト構造を含む隆起構造は、遠位幅よりも大きい基部幅を提供することによってさらに強化される。いくつかの実施形態において、強化されたポスト構造は、分岐したI字形、Y字形、T字形、もしくはX字形のカラム、またはS字形の横断面を有するポストに起因して、機械的安定性および耐擦過性の増加を示す。これらの形状は、円筒形または多角形のカラムと比較して向上した機械的特性を有する。いくつかの実施形態において、隆起ポスト構造は、分岐した横断面(例えば、分岐したT字形、Y字形、もしくはX字形の横断面、または分岐したI形梁の形状)または非直線的な横断面(例えば、S字形の横断面)に起因して、これらの向上した機械的強度を有する。分岐した横断面を有する特徴は、クローズドセル構造を模倣する配置に分岐したポストをグループ化または配置することによってさらに一層強化することができる。例えば、図5Aにおいて、分岐したI形梁の形状のカラム510は、「レンガ状」クローズドセル構造の形状に近付くようにグループで配置される。同様に、図5Bにおいて、分岐したT字形のカラム520は、「レンガ状」クローズドセル構造の形状に近付くようにグループで配置される。分岐したX字形のカラム530は、正方形のセルを有するクローズドセル構造を形成するように配置されてもよく(図5C)、分岐したY字形のカラム540は、クローズドセル型のハニカム構造を形成するように配置されてもよい。
【0070】
さらなる実施形態において、本発明のチャネルを有する構造は、強化された正弦波状、波状、またはジグザグ状の壁に起因して(図4B)これらの向上した特性を有する。さらなる実施形態において、クローズドセル構造は、相互接続によって支持される壁に起因してこれらの向上した特性を有する。
【0071】
いくつかの実施形態において、遠位幅よりも大きい基部幅を有する本発明の強化された隆起構造は、機械的故障(例えば破砕)前の最大せん断応力において、類似する非強化構造(強化された構造の同じ遠位幅以下の基部幅を有する構造)の少なくとも2倍の向上を示す。さらなる実施形態において、向上は少なくとも3倍である。さらなる実施形態において、向上は少なくとも4倍である。
【0072】
いくつかの実施形態において、分岐したT字形、I字形、X字形、およびY字形の隆起ポスト構造またはS字形の横断面を有する本発明の強化された隆起構造は、機械的故障(例えば破砕)前の最大せん断応力において、類似する非強化構造(分岐していない構造)の少なくとも2倍の向上を示す。さらなる実施形態において、向上は少なくとも3倍である。さらなる実施形態において、向上は少なくとも4倍である。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明の強化された隆起構造は、10MPaより高い強度(機械的故障、例えば破砕前の最大せん断応力、)を有する。さらなる実施形態において、強化された隆起構造の強度は、50MPaより高い。さらなる実施形態において、強化された隆起構造の強度は、100MPaより高い。さらなる実施形態において、強化された隆起構造の強度は、200MPaより高い。さらなる実施形態において、強化された隆起構造の強度は、300MPaより高い。他の実施形態において、強化された隆起構造の強度は、約100〜500MPa、または200〜400MPa、または300〜400MPaの範囲である。
【0074】
図8は、例示的な分岐したT字形およびY字形の隆起ポストを破壊するために必要な力は、同じ寸法の隆起した円筒形ポストを破壊するであろう力よりも少なくとも3〜4倍高いことを示すコンピュータによるシミュレーションの結果を示している。図8Aは、幅1μm、高さ9μmの円筒形Siカラムの応力場を表している。そのようなカラムのアレイの平面図を図8Aの挿入図に示す。そのような構造の上部に印加される最大せん断応力(矢印Fxで示される)は、機械的故障(例えば破砕)の前に約100MPaである。図8Bは、同じく幅1μm、高さ9μmの分岐したY字形のSiカラムの応力場を表している。図8Bの挿入図のそのようなカラムのアレイの平面図に示されるように、カラムはハニカム状の形状に配置される。そのような構造の上部での最大せん断応力は、機械的故障(例えば破砕)の前に約350MPaであり、単純なカラムの3倍を超える増加である。図8Cは、同様に幅1μm、高さ9μmの分岐したT字形のSiカラムの応力場を表している。そのような構造の上部での最大せん断応力は、約300MPaである。図8Cの挿入図中で、そのようなカラムのアレイの平面図に示されるように、カラムはレンガ状の形状に配置される。この応力場モデルは、これらの機械的に強化された形状を有するカラムでは、最大せん断応力において少なくとも約3倍の向上が見られたことを示している。
【0075】
他の実施形態において、隆起構造は、遠位幅よりも大きい基部幅を有することによって向上した機械的な安定性および耐擦過性を有する。いくつかの実施形態において、向上した安定性および機械的強度を有するこれらの隆起構造は、ポスト、チャネル、またはクローズドセル区画を備える。いくつかの実施形態において、隆起構造の基部幅は、1:1倍を超える程度〜10:1倍を超える程度で、もしくは2:1〜9:1、3:1〜8:1、4:1〜7:1、または5:1〜6:1倍を超える程度で遠位幅よりも大きい。他の実施形態において、基部幅は、遠位幅よりも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍広い。そのような構造は、遠位幅と基部幅との比率に依存して、それらの強化されていない類似体よりも5〜100倍高い機械的安定性および/または強度を示す。例えば、図8Dは、例示的な円錐形構造を破壊するために必要な力は、同じ遠位幅の円筒形ポストを破壊するために必要な力よりも少なくとも10倍高いことを示すコンピュータによるシミュレーションの結果を示している。上述のように、図8Aは、そのような構造の上部で約100MPaの最大せん断応力を示す、幅1μm、高さ9μmの円筒形Siカラムの応力場を表している。図8Dは、遠位幅1μm、基部幅2.7μm、高さ9μmの円錐形Siカラムの応力場を表している。そのような構造の上部での最大せん断応力は、約1100MPaであり、最大せん断応力において、この機械的な強化がなされていないカラムの約11倍の向上が見られたことを示している。
【0076】
動的条件下では、より優れた機械的頑健性および液滴圧力安定性を示すパターン化表面を使用することが好ましい。実際に、機械的に強化された隆起構造、例えば、先細りの区画を有する表面は、機械的安定性、圧力安定性、および/または超疎水性/湿潤遷移の向上を示す。液滴圧力安定性は、液滴が、湿潤状態に遷移することなく、パターン化表面上に及ぼすことのできる最大圧力に関連していることに留意されたい。
【0077】
隆起ポスト構造
いくつかの実施形態において、隆起構造は、高さよりも小さい幅を有する棒、ポスト、または他の構造等、大いに縦横の区別がある。ポストの形状は、円筒形、角錐形、円錐形、分岐したY字形、T字形、X字形、I字形、S字形の横断面、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0078】
この実施形態の隆起構造は、典型的には、0.1μm〜100μm(好ましくは1μm〜25μm、また最も好ましくは2μm〜10μm)の高さを有する。
【0079】
動的条件下で、隆起構造が抗湿潤特性によって基板表面から微生物をエネルギー的に排除する実施形態の場合、隆起構造は、それらの遠位端で0.01μm〜5μmの幅、および0.05μm〜50μm(好ましくは0.1μm〜20μm、また最も好ましくは0.5μm〜10μm)のピッチを有する。これらの記載された寸法を有する隆起構造によるエネルギー的排除は、実施例3および図15A〜Cに示される。
【0080】
構造間空間を制御することによっておよび接着のために利用可能な幅を制限することによって、隆起構造が基板のサブ表面から微生物を物理的に排除し、かつ、微生物が減少された接触面積で上面のみに接触している実施形態の場合、隆起構造は、0.01μm〜10μm(好ましくは0.1μm〜2μm)の構造間空間、それらの遠位端で0.01μm〜5μmの幅を有する。より具体的には、物理的に排除する表面は、汚染された溶液または培地中に含有される微生物のサイズよりも小さい構造間空間および構造幅を有するべきである。これらのサイズは、用途および汚染環境内に予想される特定の種に合わせられるべきである。微生物はサブ表面から物理的に排除されるため、表面が疎水性である必要はない。いくつかの実施形態において、表面および隆起構造は疎水性である。さらなる実施形態において、表面および隆起構造は超疎水性である。さらなる実施形態において、表面および隆起構造は疎水性ではない。
【0081】
いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、それらの高さに沿って一定である。さらなる実施形態において、隆起構造の幅は、それらの高さに沿って変化する。いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、遠位端から基部表面に近付くにつれて増加する。いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、遠位端から基部表面に近付くにつれて、直線的に、指数関数的に、または特定の他の勾配(例えば、曲線をなす断面形状を有する)分だけ、上部から下部にかけて増加する。さらなる実施形態において、隆起構造の幅は、遠位端から基部表面にかけて段階的な様式で増加する。いくつかの実施形態において、ポストの形状は、円柱状、円錐状、角錐状、角柱状、または曲線状のいずれかである。
【0082】
隆起構造は、限定されないが、円形、楕円形、または多角形(三角形、正方形、五角形、六角形、八角形等)を含む、様々な形状の隆起ポストであってもよい。上述の例示的な基板は、均一な形状およびサイズを有する隆起ポストを示しているが、所与の基板上の隆起ポストの形状および/またはサイズは異なってもよい。特定の実施形態において、隆起構造はランダムに分布されない。例えば、基板は、隆起ポストの列からなるアレイであってもよく、所与の列のポストは、隣接する隆起ポストの列のポストとはサイズおよび/または形状が異なる。代替として、同様のサイズおよび/または形状の隆起ポストの第1の集団は、特定の場所で基板上に配置されてもよく、第1の集団とは異なるサイズおよび/または形状を有する隆起ポストの第2の集団は、第1の集団とは異なる場所で基板上に配置されてもよく、異なるサイズおよび/または形状ポストを形成する。隆起構造はまた、遠位幅よりも大きい基部幅を示してもよい。例えば、基部幅は、1:1〜10:1よりも大きい比率だけ遠位幅よりも大きくてもよい。
【0083】
図3Aは、隆起ポスト構造の概略斜視図を示す。
図4Aは、異なる形状を有する隆起ポスト構造の概略上面図を示す。
【0084】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される隆起ポスト構造は、安定性の向上および機械的強度の向上を達成するように構造化される。
【0085】
いくつかの実施形態において、強化されたポスト構造は、分岐したI字形、Y字形、T字形、もしくはX字形のカラム、またはS字形の横断面の形状を有する。図5A〜Dは、強化された分岐したI字形、T字形、X字形およびY字形の隆起ポスト構造の代表的な概略断面図である。図5Eは、分岐したT字形の隆起Siポストの例示的なアレイのうちの1つのアレイの走査電子顕微鏡画像を示す。図5Fは、成形技術を用いて製造した機械的強度の向上を示す、分岐したY字形の隆起した重合体ポスト構造のアレイの光学顕微鏡画像を示す。
【0086】
いくつかの実施形態において、遠位幅よりも大きい基部幅を有する隆起ポスト構造は、機械的強度の向上を付与する。図9A〜Eは、遠位幅よりも大きい基部幅を有する隆起ポスト構造の概略断面図を示す。図9Fは、Boschプロセスを用いて製造した機械的強度の向上を示す隆起円錐形Siポスト構造の例示的なアレイの走査電子顕微鏡画像を示す。図9Gは、導電性重合体の電着による再成形を用いて製造した機械的強度を示す隆起円錐形の重合体ポスト構造のアレイの走査電子顕微鏡画像を示す。
【0087】
いくつかの実施形態において、隆起構造の構造間空間は、微生物のおよその最小軸よりも小さい。さらなる実施形態において、隆起構造の構造間空間は、微生物のおよその長さ未満であり、およその横径よりも大きい。さらなる実施形態において、隆起構造の構造間空間は、微生物のおよその最大軸よりも大きい。さらなる実施形態において、隆起構造の構造間空間が減少し、微生物のおよその最短寸法未満であるため、微生物は構造の先端に接触し、基板には接触しない。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される隆起ポスト構造は、基板に所望の抗バイオフィルム特性を付与するために、基板に対するコーティングとして適用される。
【0089】
隆起チャネル構造
いくつかの実施形態において、隆起構造は、波状であってもよいチャネル構造、溝、または刃を形成する複数の横壁を画定する。「溝」という用語は、底面および2つの隆起した連続的な構造、例えば、交差しない2つの壁によって区切られたチャネルを指す。
【0090】
いくつかの実施形態において、隆起構造は、実質的に直線状であって、それらの全長に沿って平行である横壁を画定する。さらなる実施形態において、隆起構造は、曲線状、鋸歯状、または他の強化された形状および配置(例えば、正弦波状、波状、またはジグザグ状)を有する横壁を画定し、後に記載する構造間空間を維持する。例示的な基板は、均一な形状およびサイズの横壁を画定する隆起構造について説明しているが、所与の基板上の横壁の形状および/またはサイズは異なってもよい。
【0091】
図3Bは、隆起チャネル構造の概略斜視図を示す。図4Bは、直線状、曲線状、およびランダムな形状を有する種々の隆起チャネル構造の概略上面図を示す。
【0092】
この実施形態の隆起構造は、典型的には、0.1μm〜100μm(好ましくは1μm〜25μm、また最も好ましくは2μm〜10μm)の高さを有する。
【0093】
動的条件下で、隆起構造が抗湿潤特性によって基板表面から微生物をエネルギー的に排除する実施形態の場合、隆起構造は、それらの遠位端で0.01μm〜5μmの幅、および0.05μm〜50μm(好ましくは0.2μm〜20μm、また最も好ましくは0.5μm〜10μm)のピッチを有する。
【0094】
構造間空間を制御することによって、隆起構造が基板のサブ表面から微生物を物理的に排除する実施形態の場合、隆起構造は、0.01μm〜10μm(好ましくは0.1μm〜2μm)の構造間空間、およびそれらの遠位端で0.01μm〜5μmの幅を有する。より具体的には、物理的に排除する表面は、汚染された溶液または培地中に含有される微生物のサイズよりも小さい構造間空間および構造幅を有するべきである。これらのサイズは、用途および汚染環境内に予想される特定の種に合わせられるべきである。微生物はサブ表面から物理的に排除されるため、表面が疎水性である必要はない。いくつかの実施形態において、表面および隆起構造は疎水性である。さらなる実施形態において、表面および隆起構造は超疎水性である。さらなる実施形態において、表面および隆起構造は疎水性ではない。
【0095】
いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、それらの高さに沿って一定である(例えば、図3Bに示すように平坦な底のチャネルを画定する)。さらなる実施形態において、隆起構造の幅は、それらの高さに沿って変化する。いくつかの実施形態において、チャネルは、遠位端から基部表面に近付くにつれてその幅が増加する隆起構造によって画定される。いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、遠位端から基部表面に近付くにつれて、直線的に、指数関数的に、または特定の他の勾配(例えば、丸底のチャネルを画定する曲線をなす断面形状を有する)分だけ増加する。さらなる実施形態において、隆起構造の幅は、遠位端から基部表面にかけて段階的な様式で増加する。
【0096】
いくつかの実施形態において、隆起構造の構造間空間は、微生物のおよその最小軸よりも小さい。さらなる実施形態において、隆起構造の構造間空間は、微生物のおよその長さ未満であり、およその横径よりも大きい。さらなる実施形態において、隆起構造の構造間空間は、微生物のおよその最大軸よりも大きい。さらなる実施形態において、隆起構造の構造間空間が減少し、微生物のおよその最短寸法未満であるため、微生物は構造の先端に接触し、基板には接触しない。
【0097】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される隆起ポスト構造は、安定性の向上および機械的強度の向上を達成するように変更される。いくつかの実施形態において、遠位幅よりも大きい基部幅を有する隆起チャネル構造は、機械的強度の向上を付与する。
【0098】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される隆起チャネル構造は、基板に所望の抗バイオフィルム特性を付与するために、基板に対するコーティングとして適用される。
【0099】
隆起クローズドセル構造
いくつかの実施形態において、隆起構造は、クローズドセル構造または区画を形成する相互接続する壁であり、すなわち、底面および1つ以上の壁によって空洞がそれぞれ区切られる。クローズドセル構造は、囲まれた空間を画定する複数の壁を含む。いくつかの実施形態において、クローズドセル構造は、隣接するクローズドセルと壁を共有し、密集するクローズドセル構造のアレイを形成する(図3Cおよび図10A〜10Fを参照)。相互接続する壁を有するそのようなクローズドセル構造は、ポストまたはチャネル構造と比較して、大幅に向上された機械的特性および耐擦過性を有する。
【0100】
この実施形態の隆起構造は、典型的には、0.1μm〜100μm(好ましくは1μm〜25μm、また最も好ましくは2μm〜10μm)の高さを有する。
【0101】
動的条件下で、隆起構造が抗湿潤特性によって基板表面から微生物をエネルギー的に排除する実施形態の場合、隆起構造は、それらの遠位端で0.01μm〜5μmの幅、および各区画内に0.02μm〜50μm(好ましくは0.2μm〜20μm、また最も好ましくは0.5μm〜10μm)の最短壁間距離を有する。
【0102】
構造間空間を制御することによって、隆起構造が基板のサブ表面から微生物を物理的に排除する実施形態の場合、隆起構造は、0.01μm〜10μm(好ましくは0.1μm〜2μm)の構造間空間、およびそれらの遠位端で0.01μm〜5μmの幅を有する。より具体的には、物理的に排除する表面は、汚染された溶液または培地中に含有される微生物のサイズよりも小さい構造間空間および構造幅を有するべきである。これらのサイズは、用途および汚染環境内に予想される特定の種に合わせられるべきである。微生物はサブ表面から物理的に排除されるため、表面が疎水性である必要はない。いくつかの実施形態において、表面および隆起構造は疎水性である。さらなる実施形態において、表面および隆起構造は超疎水性である。さらなる実施形態において、表面および隆起構造は疎水性ではない。
【0103】
いくつかの実施形態において、クローズドセル構造は、それらの高さに沿って一定の幅を有する隆起構造によって画定される(例えば、平坦な底の区画を画定する)。さらなる実施形態において、クローズドセル構造は、それらの高さに沿って変化する幅を有する隆起構造によって画定される。いくつかの実施形態において、クローズドセル構造は、遠位端から基部表面に近付くにつれてその幅が増加する隆起構造によって画定される。いくつかの実施形態において、隆起構造の幅は、遠位端から基部表面に近付くにつれて、直線的に、指数関数的に、または特定の他の勾配(例えば、丸底の区画を画定する曲線をなす断面形状を有する)分だけ増加する。さらなる実施形態において、隆起構造の幅は、遠位端から基部表面にかけて段階的な様式で増加する。
【0104】
相互接続する隆起構造の数および2つの連続的な隆起構造間の角度に基づいて、異なる形状の区画を形成することができる。そのような区画の例として、限定されないが、正方形状区画(すなわち、4つの同一の壁によって区切られる)、長方形状区画(すなわち、4つの壁によって区切られ、各2つの対向する壁が同一である)、三角形状区画(すなわち、3つの壁によって区切られる)、六角形状区画(すなわち、6つの壁によって区切られる)、円形状または楕円形状区画(すなわち、1つの壁によって区切られる)、ランダムな形状の区画、およびそれらの組み合わせが挙げられる。他の隆起構造として、クローズドセル構造のアレイ、ハニカム状のアレイ、卵形の閉鎖壁のアレイ、レンガ状のアレイ等の任意の他の隆起構造を挙げることができる。いくつかの実施形態において、区画は規則的な形状である。さらなる実施形態において、区画は不規則な形状である。例えば、クローズドセル構造は、網目模様に類似してもよく、該クローズドセルの形状および寸法は様々である。他の例において、基板は、様々なサイズおよび形状の孔を含有する。
【0105】
図3Cは、隆起クローズドセル型のレンガ状構造の概略斜視図を示す。図4Cは、壁を共有せず、互いから離れて離間された隆起クローズドセル構造の概略上面図を示す。図4Dは、隆起クローズドセル型のレンガ状、正方形状、ハニカム状、および網目状構造の概略上面図を示す。図10は、ハニカム状およびレンガ状の壁を備える例示的な隆起クローズドセル構造の光学顕微鏡写真および電子顕微鏡写真を示す。
【0106】
隆起構造および区画によって形成されるパターンは、その隆起構造(すなわち、壁)の空間的配置に基づいて異なってもよい。いくつかの実施形態において、隆起クローズドセル構造は、壁を共有する(例えば、図4Dを参照)。例えば、横断壁と交差(例えば、直交)する平行な縦方向の壁は、数列の平行な区画、例えば、レンガ状の区画を形成する。2つの隣接する平行な列の区画は、千鳥状であってもよい。いくつかの実施形態において、これらのクローズドセル構造は、機械的安定性および耐擦過性の向上を示す。さらなる実施形態において、隆起クローズドセル構造は、交差壁を有さない(例えば、図4Cを参照)。
【0107】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される隆起クローズドセル構造は、安定性の向上および機械的強度の向上を達成するようにさらに変更される。いくつかの実施形態において、遠位幅よりも大きい基部幅を有する隆起クローズドセル構造は、機械的強度の向上を付与する。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される隆起クローズドセル構造は、基板に所望の抗バイオフィルム特性を付与するために、基板に対するコーティングとして適用される。
【0109】
本発明において使用するための基板は、上記表面パターンのうちの1つ以上を有することができる。
【0110】
作製方法
本発明の隆起構造は、隆起構造を基板上に析出させるための任意の既知の方法によって生成することができる。非限定的な例として、従来のフォトリソグラフィ、投影リソグラフィ、電子ビームによる書き込みもしくはリソグラフィ、ナノワイヤアレイの析出、基板表面上でのナノ構造体形成、ソフトリソグラフィ、レプリカ成形、溶液析出、溶液重合、電気重合、電気紡糸、電気めっき、蒸着、接触印刷、エッチング、転写パターニング、マイクロインプリント、自己アセンブリ等が挙げられる。例えば、ポストアレイ、レンガ状アレイ、チャネルもしくは「刃状」アレイ、箱状アレイ、またはハニカム状アレイを有するシリコン基板は、(Plasma Etching:Fundamentals and Applications,M.Sugawara,et.al,Oxford University Press,(1998),ISBN−10:019856287X(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように)Bosch反応性イオンエッチング法を用いて、フォトリソグラフィにより製造することができる。さらなる例示的な方法は、第WO2009/158631号(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0111】
パターン化表面はまた、ソフトリソグラフィ法によってレプリカ(例えば、エポキシのレプリカ)として得ることもできる(例えば、Pokroy et al., Advanced Materials,2009,21,463(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。丸底を有するパターン化表面(例えば、丸底のレンガ状アレイ)は、Plasma Etching:Fundamentals and Applications,M.Sugawara,et.al.,Oxford University Press,(1998),ISBN−10:019856287X(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるBosch反応性イオンエッチング法と等方性反応性エッチング技術との組み合わせによって得ることができる。
【0112】
パターン化表面を有する重合体フィルムは、当該技術分野において既知である手段(例えば、ロールツーロールインプリントまたはエンボッシング)によって製造することができる。
【0113】
このようにして形成されるパターン化表面は、本質的に疎水性である材料から製造されない場合、低表面エネルギーフッ素重合体(例えばポリテトラフルオロエチレン)およびフルオロシラン(例えば、ヘプタデシルフルオロ−1,1,2,2−テトラ−ヒドロデシル−トリクロロシラン)等の疎水性材料で被覆することができる。表面コーティングは、プラズマ補助化学蒸着、溶液析出、および蒸着を含む当該技術分野において周知の方法によって達成することができる。
【0114】
パターン化表面は、基板と一体化した部分または基板上の別個の層のいずれかであり得ることに留意されたい。例えば、パターン化表面は、1つの材料(例えば、シリコンウエハまたは重合体フィルム)から製造され、別の材料を覆うために(例えば、アルミニウムめっき)使用されてもよい。これは、基板の材料以外の材料からパターン化表面を製造することのほうがより容易である場合に有用であり得る。また、大きな基板上に大きなパターン化表面を得るために、より小さいパターン化表面を製造し、次いで、それらを大きな基板上に配置することが必要となることも多い。
【0115】
パターン化表面で基板を被覆するために、Whitesides et al.,Chern.Review,2005,105,1171−1196(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるような標準的な方法(例えば、タイル張り、エンボッシング、およびパターン化ローラーを用いたローリング等)を使用することができる。パターン化表面のトポロジーを分析するために、走査電子顕微鏡(SEM)および原子間力顕微鏡法(AFM)等の周知の方法を使用することができる。上述のように、本発明において使用するための疎水性表面上の水滴は、90°を超える、好ましくは140°を超える接触角を示す。実際の接触角は、当該技術分野において周知の方法によって(例えば、接触角ゴニオメータを用いて)判定することができる。
【0116】
本明細書に記載される隆起構造はまた、2009年12月30日に公開された第WO2009/158631号(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるような成形技術を用いて製造することもできる。これらの技術は、任意の既知の技術を用いて元となるレプリカ型を作製した後、好適なレプリカ材料を使用してレプリカ用のネガ型を形成することを伴う。最後に、ネガのレプリカを型として使用してレプリカを作製する。次いで、これらのレプリカは、任意の平坦なまたは曲線的な表面(パイプの内側または外側を含む)を被覆することができる。
そのような曲線的にパターン化されたチューブは、カテーテルまたは血管チューブに関連する用途において特に重要である。
【0117】
本明細書に記載される隆起構造はまた、2010年7月19日に出願された米国特許出願第61/365,615号(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるような電着技術を用いて製造することもできる。具体的には、本明細書に記載される隆起構造は、電気化学的析出または直接無電解溶液析出のいずれかによる導電性有機重合体のその場析出によって製造することができる。これらの方法において、導電性有機重合体の形態は、単量体の濃度、電解質およびバッファの種類、析出温度および時間等の析出条件、ならびに電圧および電流等の電気化学的条件を変化させることによって制御することができる。導電性有機重合体の形態は、ナノメートルからマイクロメートルにわたる尺度で精密に制御することができる。したがって、正確に制御された形態を有する表面コーティングは、形態の設計および制御により種々の表面特性のカスタマイゼーションを保証する単純な変更によって生成することができる。
【0118】
本明細書に記載される隆起構造は、任意の好適な材料でできていてもよい。そのような材料の非限定的な例として、エポキシ、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメチルメタクリル酸(PMMA)、ならびに種々のヒドロゲルおよび生物学的高分子(例えば、アルギン酸塩、コラーゲン、寒天)等の重合体、Au金属およびTi合金等の金属および合金、そしてAl2O3、TiO2、HfO2、SiO2、ZrO、およびBaTiO3を含むセラミックが挙げられる。他の重合体材料、金属、合金、およびセラミックもまた使用することができる。
【0119】
いくつかの実施形態において、材料は、本明細書に記載される隆起構造に形成することができる任意の生体適合性材料である。
【0120】
疎水性コーティング
いくつかの実施形態において、製造後、隆起構造を超疎水性にするために、次いで、隆起構造が疎水性コーティングで処理される。例えば、上述のように、疎水性表面コーティングは、溶液析出処理または蒸着処理のいずれかによって、フッ素化シランを使用して適用することができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、隆起構造は、ポリシロキサン、アルキルシラン、またはアルキルシラザン等のシリコーン流体を用いた処理によって超疎水性にされる。好適なポリシロキサンの非限定的な例として、直鎖、分岐鎖、または環状のポリジメチルシロキサン;シラノール終端ポリジメチルシロキサン、シラノール終端ポリジフェニルシロキサン、ジフェニルシラノール終端ポリジメチルフェニルシロキサン、カルビノール終端ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシプロピル終端ポリジメチルシロキサン、およびポリジメチル−ヒドロキシアルキレンオキシドメチルシロキサン等の分子鎖にヒドロキシル基を有するポリシロキサン;ビス(アミノプロピルジメチル)シロキサン、アミノプロピル終端ポリジメチルシロキサン、アミノアルキル基含有T構造ポリジメチルシロキサン、ジメチルアミノ終端ポリジメチルシロキサン、およびビス(アミノプロピルジメチル)シロキサン等の分子鎖にアミノ基を有するポリシロキサン;グリシドキシプロピル終端ポリジメチルシロキサン、グリシドキシプロピル基含有T構造ポリジメチルシロキサン、ポリグリシドキシプロピルメチルシロキサン、およびポリグリシドキシプロピルメチルジメチルシロキサン共重合体等の分子鎖にグリシドキシアルキル基を有するポリシロキサン;クロロメチル終端ポリジメチルシロキサン、クロロプロピル終端ポリジメチルシロキサン、ポリジメチル−クロロプロピルメチルシロキサン、クロロ終端ポリジメチルシロキサン、およびl,3−ビス(クロロメチル)テトラメチルジシロキサン等の分子鎖に塩素原子を有するポリシロキサン;メタクリルオキシプロピル終端ポリジメチルシロキサン、メタクリルオキシプロピル含有T構造ポリジメチルシロキサン、およびポリジメチル−メタクリルオキシプロピルメチルシロキサン等の分子鎖にメタクリルオキシアルキル基を有するポリシロキサン;メルカプトプロピル終端ポリジメチルシロキサン、ポリメルカプトプロピルメチルシロキサン、およびメルカプトプロピル含有T構造ポリジメチルシロキサン等の分子鎖にメルカプトアルキル基を有するポリシロキサン;エトキシ終端ポリジメチルシロキサン、トリメトキシシリルを一方の末端に有するポリジメチルシロキサン、およびポリジメチルオクチルオキシメチルシロキサン共重合体等の分子鎖にアルコキシ基を有するポリシロキサン;カルボキシプロピル終端ポリジメチルシロキサン、カルボキシプロピル含有T構造ポリジメチルシロキサン、およびカルボキシプロピル終端T構造ポリジメチルシロキサン等の分子鎖にカルボキシアルキル基を有するポリシロキサン;ビニル終端ポリジメチルシロキサン、テトラメチルジビニルジシロキサン、メチルフェニルビニル終端ポリジメチルシロキサン、ビニル終端ポリジメチル−ポリフェニルシロキサン共重合体。ビニル終端ポリジメチル−ポリジフェニルシロキサン共重合体、ポリジメチル−ポリメチルビニルシロキサン共重合体、メチルジビニル終端ポリジメチルシロキサン、ビニル終端ポリジメチルメチルビニルシロキサン共重合体、ビニルイル含有T構造ポリジメチルシロキサン、ビニル終端ポリメチルフェネチルシロキサン、および環状ビニルメチルシロキサン等の分子鎖にビニル基を有するポリシロキサン;ポリジメチル−ジフェニルシロキサン共重合体、ポリジメチル−フェニルメチルシロキサン共重合体、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルフェニル−ジフェニルシロキサン共重合体、ポリジメチルシロキサン−トリメチルシロキサン共重合体、ポリジメチル−テトラクロロフェニルシロキサン共重合体、およびフェニルジメチルシロキサン等の分子鎖にフェニル基を有するポリシロキサン;ポリビス(シアノプロピル)シロキサン、ポリシアノプロピルメチルシロキサン、ポリシアノプロピル−ジメチルシロキサン共重合体、およびポリシアノプロピルメチル−メチルフェニルシロキサン共重合体等の分子鎖にシクロアルキル基を有するポリシロキサン;ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルオクチルシロキサン、ポリメチルオクタデシルシロキサン、ポリメチルデシル−ジフェニルシロキサン共重合体、およびポリメチルフェネチルシロキサン−メチルヘキシルシロキサン共重合体等の分子鎖に長鎖アルキル基を有するポリシロキサン;ポリメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン、およびポリメチル−1,1,2,2−テトラヒドロフルオロオクチルシロキサン等の分子鎖にフルオロアルキル基を有するポリシロキサン;水素終端ポリジメチルシロキサン、ポリメチルヒドロシロキサン、およびテトラメチルジシロキサン等の分子鎖に水素原子を有するポリシロキサン;ヘキサメチルジシロキサン;ならびにポリジメチルシロキサン−アルキレンオキシド共重合体が挙げられる。多くのポリシロキサンは、主にポリジメチルシロキサンから形成されるSuper Rain X(Unelkoより供給)、および主にポリジメチルシロキサンから形成されるGlass Clad 6C(末端基が塩素原子で置換されてもよい)(Petrarch Systems Inc.より供給)等の撥水剤として商業的に入手可能である。これらのポリシロキサンは、単独で、または組み合わせて使用することができる。他の好適なポリシロキサンは、米国特許第5,939,491号(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に開示される有機ポリシロキサンである。
【0122】
好適なアルキルシランとして、限定されないが、n−ブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、およびシクロヘキシルメチルジメトキシシランが挙げられる。アルキルシランは、別個に、または2つ以上の混合物中に使用することができる。代替として、ペルフルオロアルキル、エーテル、エステル、ウレタン、または他の化学部分を有するフッ素および加水分解性シラン等のフッ素化疎水性シランが使用されてもよい。隆起構造を被覆するために使用することができる他の例示的なフッ素化シランは、米国特許第5,081,192号、5,763,061号および6,227,485号(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に開示される。
【0123】
隆起構造は、基板の反対側の隆起構造の垂直端部等が、完全に被覆されてもよいかまたは部分的に被覆されてもよい。いくつかの実施形態において、隆起ナノ構造および基板は、疎水性コーティングで被覆される。コーティングは、約1nm〜約30nmの厚さで適用することができる。
【0124】
構造が疎水性材料でできている場合、追加の疎水性コーティングは必要ない。
【0125】
超疎水性は、既知の方法を使用して汚染液の液滴と隆起した超疎水性構造のアレイの表面との間の接触角を測定することによって定量化することができる。特定の実施形態において、アレイは、約140°よりも大きいか、または約150°よりも大きいか、または約155°よりも大きいか、または約160°よりも大きいか、または約165°よりも大きいか、または約170°よりも大きいか、または約175°よりも大きい接触角を有する。
【0126】
微生物
細菌細胞
特定の実施形態において、本明細書に記載される隆起構造は、基板への細菌の付着を防止、阻止、または軽減するために使用することができる。例示的な方法において、細菌は、バイオフィルムを形成する細菌である。細菌は、グラム陰性細菌種またはグラム陽性細菌種であってもよい。そのような細菌の非限定的な例として、アクチノバチルス属のメンバー(アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス等)、アシネトバクター属のメンバー(アシネトバクター・バウマニー等)、アエロモナス属のメンバー、ボルデテラ属のメンバー(百日咳菌、気管支敗血症菌、またはパラ百日咳菌等)、ブレビバチルス属のメンバー、ブルセラ属のメンバー、バクテロイデス属のメンバー(バクテロイデス・フラジリス等)、バークホルデリア属のメンバー(バークホルデリア・セパシアまたは類鼻疽菌等)、ボレリア属のメンバー(ボレリア−ブルグドルフェリ等)、バシラス属のメンバー(炭疽菌または枯草菌等)、カンピロバクター属のメンバー(カンピロバクター・ジェジュニ等)、カプノサイトファーガ属のメンバー、カルディオバクテリウム属のメンバー(カルディオバクテリウム・ホムニス等)、サイトロバクター属のメンバー、クロストリジウム属のメンバー(破傷風菌またはクロストリジウムディフィシル等)、クラミジア属のメンバー(クラミジア・トラコマチス、クラミジア・ニューモニエ、またはクラミジア・シッタシ等)、アイケネラ属のメンバー(アイケネラコローデンス等)、エンテロバクター属のメンバー、エシェリキア属のメンバー(大腸菌等)、エンテンバクター(Entembacter)属のメンバー属、フランシセラ属のメンバー(野兎病菌等)、フゾバクテリウム属のメンバー、フラボバクテリウム属のメンバー、ヘモフィルス属のメンバー(軟性下疳菌またはインフルエンザ菌等)、ヘリコバクター属のメンバー(ヘリコバクターピロリ等)、キンゲラ属のメンバー(キンゲラ・キンゲ等)、クレブシエラ属のメンバー(肺炎桿菌等)、レジオネラ属のメンバー(レジオネラ・ニューモフィラ等)、リステリア属のメンバー(リステリア・モノサイトゲネス等)、レプトスピラ属のメンバー、モラクセラ属族のメンバー(モラクセラ・カタラーリス等)、モルガネラ属のメンバー、マイコプラズマ属のメンバー(マイコプラズマ・ホミニスまたはマイコプラズマ・ニューモニエ等)、マイコバクテリウム属のメンバー(結核菌またはハンセン菌等)、ナイセリア属のメンバー(淋菌または髄膜炎菌等)、パスツレラ属のメンバー(パスツレラ・ムルトシダ等)、プロテウス属のメンバー(プロテウス・ブルガリスまたはプロテウス・ミラビリス等)、プレボテラ属のメンバー、プレジオモナス属のメンバー(プレジオモナス・シゲロイデス等)、シュードモナス属のメンバー(緑膿菌等)、プロビデンシア属のメンバー、リケッチ属のメンバー(斑点熱リケッチアまたは発疹熱リケッチア等)、ステノトロホモナス属のメンバー(ステノトロホモナス・マルトフィリア等)、ブドウ球菌属のメンバー(黄色ブドウ球菌または表皮ブドウ球菌等)、連鎖球菌属のメンバー(ビリダンス型連鎖球菌、化膿連鎖球菌(A群)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(B群)、ストレプトコッカス・ボビス、または肺炎連鎖球菌等)、トレプトマイセス属のメンバー(ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス等)、サルモネラ属のメンバー(腸炎菌、チフス菌、またはネズミチフス菌等)、セラチア属のメンバー(セラチア・マルセセンス等)、赤痢菌属のメンバー、スピリルム属のメンバー(鼠咬症スピリルム等)、トレポネーマ属のメンバー(梅毒トレポネーマ等)、ベイヨネラ属のメンバー、ビブリオ属のメンバー(コレラ菌、腸炎ビブリオ菌、またはビブリオ・バルニフィカス等)、エルシニア属のメンバー(腸炎エルシニア菌、ペスト菌、または偽結核菌等)、およびキサントモナス属のメンバー(キサントモナス・マルトフィリア等)が挙げられる。
【0127】
真菌細胞
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される隆起構造は、基板への真菌の付着を防止、阻止、または軽減するために使用することができる。例示的な方法において、真菌は、バイオフィルムを形成する真菌である。本明細書に記載される方法を使用して制御することができる真菌種として、限定されないが、アスペルギルス属のメンバー(例えば、アスペルギルス・フラブス、アスペルギルス・フミガーツス、アルペルギルス・グラウカス、アスペルギルス・ニデュランス、アスぺルギルス・ニガー、およびアスペルギルス・テレウス);ブラストミセス・デルマチチジス;カンジダ属のメンバー(例えば、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・パラプシローシス、カンジダ・クルーセイ、およびカンジダ・ギリエルモンジィ);コクシジオイデス・イミティス;クリプトコッカス属のメンバー(例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、クリプトコッカス・アルビダス、およびクリプトコッカス・ローレンティ);カプスラーツム型ヒストプラスマ症;ズボアジ型ヒストプラスマ症;パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス;スポロトリックス・シェンキィ;アブシジア・コリムビフェラ;リゾムコール・プシルス;ならびにリゾプス・アリズスが挙げられる。
【0128】
ウイルス細胞
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される隆起構造は、基板上へのウイルスの付着を防止、阻止、または軽減するために使用することができる。本明細書に記載される方法を使用して制御することができるウイルス種として、限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)、デング熱、エプスタイン・バー、ハンタウイルス、ヒトTリンパ好性ウイルス(HTLV I/II)、パルボウイルス、A、B、またはC型肝炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)、呼吸器合抱体ウイルス(RSV)、水痘・帯状疱疹ウイルス、西ナイル、ヘルペス、ポリオ、天然痘、および黄熱病が挙げられる。
【0129】
隆起構造の使用
本明細書に記載される隆起構造を有する基板は、基板への微生物の付着を阻止または軽減するために使用することができる。そのような表面は、微生物の接着を受け易い可能性があるいずれの表面、好ましくは硬質表面であってもよい。企図される表面の例として、以下の材料のうちの1つ以上から作製される硬質表面が挙げられる:例えば、ペンキまたはエナメルで任意選択的に被覆された、金属、プラスチック、ゴム、板、ガラス、木材、紙、コンクリート、石、大理石、石膏、および磁器等のセラミック材料。
【0130】
アスペクト比の高い隆起した特徴を有する表面を生成するために、レプリカ成形を用いて隆起した特徴を有する基板を処理することができる。レプリカ成形は、例えば、糊または他の接着剤を使用して物品の表面に適用することができるシートを形成するために使用することができる。レプリカ成形はまた、隆起した特徴で処理された表面を有する目的物を直接形成するために使用することもできる。好適なレプリカ成形技術に関するさらなる詳細は、第WO2009/158631号(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0131】
特定の実施形態において、表面は、医療用デバイス、器具、またはインプラントである。非限定的な例として、クランプ、鉗子、鋏、皮膚鉤、チューブ(気管内チューブまたは消化管チューブ等)、針、開創器、スケーラー、ドリル、ノミ、ヤスリ、ノコギリ、留置カテーテルを含むカテーテル(尿道カテーテル、血管カテーテル、腹膜透析カテーテル、中心静脈カテーテル等)、カテーテル構成部品(針、ルアーロックコネクタ、無針コネクタ)、整形外科用デバイス、人工心臓弁、人工関節、人工喉頭、ステント、シャント、ペースメーカー、手術用ピン、人工呼吸器、換気装置、および内視鏡が挙げられる。1つ以上の実施形態において、隆起構造は、調製され、医療用デバイス等のデバイスに取り付けられる。他の実施形態において、隆起構造は、デバイスの構造内に直接的に成形されるか、またはデバイスの表面に刻み込まれる。
【0132】
図11は、本発明の1つ以上の実施形態の図である。図11Aは、隆起構造204を示す表面コーティング203によって被覆された表面202を有する医療用デバイス201の一部の斜視図を示す。図11Bは、隆起構造207を備える表面206を有する医療用デバイス205の一部の斜視図を示す。図2Bにおいて、デバイスは表面コーティングで被覆されておらず、むしろ表面自体が本明細書に記載される隆起構造を有する。上述のように、隆起構造は、デバイスに抗菌特性を付与するために構築される。
【0133】
他の基板は、配水管、浴槽、台所器具、調理台、シャワーカーテン、目地、便器、産業用食品飲料生産施設、および床板の表面を含む。他の表面としては、ボート、桟橋、石油プラットフォーム、給水ポート、シーブ、およびビューポート等の海洋構造物が挙げられる。
【0134】
特定の用途において、隆起した超疎水性構造は、外的環境(例えば挿入前)における汚染液の飛沫または曝露時にそのようなデバイスの汚染を防止するために、体内に挿入される手術器具またはカテーテル等の医療用デバイスに適用することができる。そのような表面処理は、無菌性および清潔度の制御が容易に達成されず、医療器具またはインプラントの表面が、汚染液に曝露されるか、汚染液による飛沫を受けるか、または汚染液で洗浄される、軍事環境を含む緊急医療の状況において特に重要である。
【0135】
本発明は、以下の実施例にさらに詳述されるが、それらは、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0136】
実施例1:パターン化疎水性表面の製造
Boschプロセスの後にフォトリソグラフィを用いて、100mmのシリコンウエハから円筒形ポストアレイ、ハニカム状アレイ、レンガ状アレイ、箱状アレイ、およびチャネルアレイを含む異なるパターンの多数の表面を製造した。下の表は、所与の寸法を有する、製造した5つの異なるパターン化表面を列挙している。これはまた、後に説明するようなフッ素化化合物で被覆された特定の表面に対する水の接触角も列挙している。
【表1】

【0137】
パターンは、厚さ0.5μmのS1805ポジティブフォトレジストを使用して接触印刷によって作製した。別個の接触マスクを製造して、シリコンウエハに60×60または40×40mmの正方形を印刷した。次いで、垂直な側壁を作製するために2つの別個のステップを用いるBoschプロセスを用いて、シリコンウエハにパターンをエッチングした。つまり、最初にSF6を使用してSiをエッチングし、次いで、Siのさらなるエッチングを防止するために、C4F8を使用してフッ素重合体の保護層を析出させた。マスクに対する特定のアンダーカットおよびリップルにより垂直な側壁を形成した。次いで、酸素プラズマを使用してフォトレジストをストリップし、H2SO4/H2O2 Piranhaウェットエッチでウエハを清浄した。サブミクロン構造の表面には、接触リソグラフィの代わりに投影リソグラフィを用いた。
【0138】
Pokroy et al.,Advanced Materials,2009,21,463(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるソフトリソグラフィ法の後にシリコンマスターを複製することにより、エポキシ(すなわち、非シリコン)パターンを有する基板もまた製造した。
【0139】
疎水性表面を形成するために、プラズマ補助化学蒸着を使用して、各パターン化表面をフッ素化化合物(例えば、ヘプタデシルフルオロ−1,1,2,2−テトラ−ヒドロデシル−トリクロロシラン)の薄層(約2nm)で被覆した。より具体的には、25℃で10時間、真空チャンバ内の表面上にフッ素化化合物を蒸気から析出させた。
【0140】
製造した全てのパターン化表面をSEMにより分析し、接触角の測定のために設計された高解像度カメラを有する標準的なゴニオメータにより、特定のパターン化表面上の水滴の接触角を判定した。
【0141】
本発明の方法のために使用したものと類似するシリコンポスト、ハニカム、およびレンガ形態のSEM顕微鏡写真、ならびにパターン化疎水性表面の調製に関するさらなる詳細は、Krupenkin et al.,Langmuir,2004,20,3824−3827、Henoch et al.,AIAA Paper,2006−3192,San Francisco,CA,June 2006、およびAhuja et al.,Langmuir,2008,24,9−14(参照により、それらの全体が本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。
【0142】
実施例2:電着を使用した隆起構造の製造
使用前に、ピロール(Py)をアルミナカラムにより精製した。0.07M過塩素酸リチウム(LiClCO4)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中の0.08〜0.14Mピロールの水溶液をPPyの電着に使用した。Ptワイヤならびにメッシュカウンター電極およびAg/AgCl基準電極とともに、典型的な3電極構成を使用した。典型的には、1mV/sの速度で、0〜0.5Vから開始して0.8〜1.0Vまでの線形走査ボルタンメトリーを、PPy薄膜の成長のための作用電極としてサンプル表面に適用し、繊維状PPyを成長させるための追加の時間の間、約0.85Vでクロノアンペロメトリーを行った。連続的な膜析出のために、0.1Mピロールおよび0.1Mドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Na+DBS〜)の水溶液を調製し、乾燥窒素により10分間パージした。この溶液に、作用電極としてパターン化金属電極を有するテンプレート構造を入れ、次いで、標準的な3電極構成を使用してポリピロール膜を電気化学的に析出させた。定電位条件下で+0.55V vs.Ag/AgClのアノード電位(NaClで飽和状態)を印加し、白金メッシュを対電極として使用した。析出時間全体にわたって溶液から一定の速度でサンプルを抽出することによって、析出されたポリピロール膜の厚さの勾配を作成した。新しく析出したポリピロール層を脱イオン水で洗浄し、通気乾燥した。
【0143】
隆起構造は、衝撃および擦過に対する機械的強度の向上を示すように設計することができる。強化されたポストアレイの隆起構造の例を図9Gに示す。様々な厚さのPPyを析出させることにより、各マイクロポストの基部の直径を増加させた。この特定の例では、各マイクロポストの方向に沿って並べられた蒸発源からの見通し線上の蒸発によって金属電極を析出させた。扇形切り欠き(側壁の波形)の存在のために、各ポストの側壁上の電極が一連の絶縁環を形成する。下面からPPyの電着が起こると、これらの絶縁環電極は、新たに析出された導電性PPy膜によって電気的に架橋される。その結果、基部は上部よりも厚みのあるPPy層を有し、円筒形のポストを円錐形のポストに変換し、その機械的特性を強化する。
【0144】
実施例3:エネルギー的排除実験における隆起ポストおよびクローズドセル構造上での緑膿菌の増殖
種々の超疎水性表面が細菌増殖培地溶液に曝露された後に無菌状態を維持する有効性を調べるために一連の実証実験を行った。図2に示すように、5μmおよび1.5μm幅のポストを有するエッチングされたSi隆起ポストアレイ構造を有する表面、ならびに300nm幅のポストを有するエポキシ(元のSiから鋳造)を試験サンプルとして使用した。隆起ポスト構造を有する各表面を、酸素プラズマ処理後に疎水性シラン(Gelest社製(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン)で処理して超疎水性とした(図2C〜F)。2つの平坦な(非構造化)対照サンプルである未処理の親水性Si(Si−C)およびフッ素化した疎水性Si(Si−F)(それぞれ、図2Aおよび2B)もまた、比較において使用した。
【0145】
TB寒天平板に画線して培養した後、光学密度(OD)0.2になるまでTB培地中で12時間の間(37℃、振とう器)増殖させた緑膿菌10mLの流れに各サンプルを曝露した。図12Aに示すように、約5〜7秒間にわたる10mLビュレットからの連続的な流れとして、細菌培地をサンプルに曝露した。次いで、曝露されたサンプルを直ちにPBS溶液ですすぎ、次いで、図12Bに示すように、曝露された側を下にして新しい寒天平板上に10分間置いた。次いで、各サンプルを寒天平板から除去し、室温または37℃のいずれかで12時間の間平板を放置した。
【0146】
寒天平板の結果を定性的に図13〜16に示す。図13A〜Bは、Si−CおよびSi−F対照サンプルが、汚染された寒天平板(37℃)内に非常に明確な細菌コロニーの領域を生成したこと、またSi−C(親水性)サンプルの場合に特にそうであったことを示している。図14は、非パターン化(平坦)およびパターン化の両方の隆起ポストアレイ表面を有する基板の画像を示しており、汚染液の飛沫後および寒天平板に一晩曝露した後、パターン化表面に相当する区域が実質的に微生物を含まないのに対し、平坦な表面に相当する区域には著しい細菌の増殖が見られたことを示している。
【0147】
図15は、隆起ポストの幅の関数として、汚染液の流れに曝露した後の細菌増殖実験を示す。図15Aは、寒天平板上に置かれた、それらの遠位端で300nmの幅(「直径」)を有するポストの隆起構造を有する基板の画像(上)、および一晩培養した後の寒天平板の画像(下)を示す。この図に示されるように、平坦な周縁領域に囲まれた300nmポストのサンプルは、劇的な細菌増殖の非常に明確な周縁領域を有するが、300nmポストが配置された中心領域ではまったく増殖が起こらない。図15Bは、それらの遠位端で1.5μmの幅(「直径」)を有するポストの隆起構造を有する基板の画像(上)、および一晩培養した後の寒天平板の画像(下)を示す。この図は、1.5μmポストサンプルが、室温の寒天平板の場合に非常に明確な「周縁」領域を示すことを示している:コロニーは、このパターンの直線状の境界に非常に厳密に一致しており、非湿潤性領域が無菌状態を維持し、いずれの細菌にも寒天を汚染させなかったことを示唆している。図15Cは、それらの遠位端で5μmの幅(「直径」)を有するポストの隆起構造を有する基盤の画像(上)、および該基板を含む一晩培養した後の寒天平板の画像(下)を示す。この図では、エッチングされたパターン化領域の周囲の平坦なエッチングされていないSiの周縁部には、非常に鮮明に著しいコロニーの増殖があり、平坦な湿潤領域の汚染が、パターン化された非湿潤性領域よりもかなり大きかったことを示唆している。しかしながら、寒天平板に、非湿潤性領域からの数個の小さいコロニーが存在することは明らかである。
【0148】
図16は、1.3ミクロンの壁の幅を有するクローズドセル構造も、汚染液の飛沫時に無菌状態を維持することを示す。この場合も同様に、パターン化表面に相当する区域が微生物を含まないのに対し、平坦な表面に相当する区域には著しい細菌の増殖が見られた。
【0149】
これらの結果は、動的条件下(汚染液の飛沫、注入、または散布等)でのエネルギー的排除実験における細菌の付着は、超疎水性表面構造の特徴のサイズの関数であることを示唆している。1.5μmおよび300nmのポストのみが完全に細菌の付着を起こさないと考えられることが明らかとなり、直径5μmのポストは、ある程度の(わずかな)表面付着に十分な大きさの面積であることを意味している。したがって、汚染液の飛沫後に無菌状態であるためには、超疎水性表面は、細菌自体よりも小さい幅(すなわち、緑膿菌の場合には約2ミクロン未満)のポストを有するべきである。非湿潤性液滴の空気−液体界面における細菌遊泳のその場観察でも(水浸レンズおよび位相差画像を使用)、5μmポストの場合はポストへの散発的な細菌の付着がある程度起こったが、300nmおよび1.5μmポストの場合はまったく付着が見られなかったことが確認された。超疎水性表面を特徴付けるために従来使用されてきた単なる固体面積の割合だけではなく、特徴の絶対サイズ(すなわち、ポストの直径)が、超疎水性表面への細菌の付着を制御する上での重要なパラメータである。したがって、超疎水性の存在のみ、および液滴が表面から撤退する能力は、接触時の細菌の接着を確実になくすためには十分ではない。
【0150】
実施例4:物理的排除による隆起ポスト構造上での枯草菌の増殖
枯草菌細胞の最長寸法未満の寸法で離間された隆起構造のアレイ上で、枯草菌を増殖させた。0.9μmピッチで直径300nmのポストを備えるSi基板を、MSgg増殖培地を含有する枯草菌(JH642株)培養物中に室温で12時間の間浸漬し、次いでPBSですすいだ。図7BのSEM画像によって示されるように、細胞は、先端のみに集まり、それらは互いから離れていることが分かった。表面の接触を制限し、その下の到達可能な多孔質容積を大きくすることにより、これらの細胞は、機械的または化学的方法のいずれか、またはそれらの組み合わせによって、平坦な表面からよりもさらに容易に除去することができる。
【0151】
実施例5:物理的排除による隆起構造上での大腸菌の増殖
隆起ポスト上で増殖させた大腸菌の配置について調べた。0.9μmピッチで直径300nmのポストを備えるSi基板を、TB増殖培地を含有する大腸菌(ZK2686株)培養物中に室温で12時間の間浸漬し、次いでPBSですすいだ。図17(右側の画像)に示されるように、ポスト間の空間およびポストの幅の両方が大腸菌の最小寸法未満であった時、すすいだ後、ポストの先端に大腸菌は見られなかった。これらの構造上で増殖させた細菌は接着力が低下し、多くの細胞が観察され得る平坦な表面(左側の画像)からよりも剥離/除去がかなり容易であった。
【0152】
均等物
本発明をその詳細な説明とともに記載してきたが、上記説明は例示を意図するものであって、付属の特許請求の範囲の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、および変更は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【図4(a)】

【図4(b)】

【図4(c)】

【図4(d)】

【図5(a)】

【図5(b)】

【図5(c)】

【図5(d)】

【図5(e)】

【図5(f)】

【図6A】

【図6B】

【図6C】

【図6D】

【図6E】

【図6F】

【図8(a)】

【図8(b)】

【図8(c)】

【図8(d)】

【図11(a)】

【図11(b)】

【図12】

【図17】

【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性表面を有する物品であって、前記表面は、
基板と、
前記基板の面上の複数の隆起構造であって、構造間空間、前記構造の基端の幅、および前記構造の遠位端の幅によって画定される、隆起構造と、を備え、
前記遠位幅は約50μm未満であり、前記遠位幅は、前記物品に接触する汚染液源中の微生物の最大寸法の5倍未満になるように選択され、
前記表面は超疎水性である、物品。
【請求項2】
抗菌性表面を有する物品であって、前記表面は、
基板と、
前記基板の面上の複数の隆起構造であって、構造間空間、前記構造の基端の幅、および前記構造の遠位端の幅によって画定される、隆起構造と、を備え、
前記遠位幅は約50μm未満であり、前記遠位幅は、前記物品に接触する汚染液源中の微生物の最大寸法の5倍未満になるように選択され、
前記構造間空間は、約5μm未満であり、
前記構造間空間は、前記微生物の最大寸法未満になるように選択される、物品。
【請求項3】
前記遠位幅は、約20μm未満である、請求項1または2記載の物品。
【請求項4】
前記遠位幅は、約5μm未満である、請求項1〜3のいずれかに記載の物品。
【請求項5】
前記隆起構造は、フッ素化される、請求項1〜4のいずれかに記載の物品。
【請求項6】
前記表面は、約140°〜約180°の範囲の接触角を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の物品。
【請求項7】
前記基部幅は、前記遠位幅よりも大きい、請求項1〜6のいずれかに記載の物品。
【請求項8】
前記表面は、効率的に殺菌される、前記請求項1〜7のいずれかに記載の物品。
【請求項9】
前記遠位幅は、前記物品に接触する汚染液源中の微生物の最大寸法の3倍未満となるように選択される、前記請求項1〜8のいずれかに記載の物品。
【請求項10】
前記遠位幅は、前記基板にわたって均一である、前記請求項1〜9のいずれかに記載の物品。
【請求項11】
前記遠位幅は、前記基板にわたって異なる、前記請求項1〜10のいずれかに記載の物品。
【請求項12】
前記隆起構造は、ポストである、前記請求項1〜11のいずれかに記載の物品。
【請求項13】
前記ポストの形状は、円形、楕円形、多角形、「S字」形の横断面および円筒形、円錐形、角錐形、または任意の形状である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記ポストは、横断面がT字形、Y字形、X字形、またはI字形に分岐している、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
前記隆起構造は、チャネルまたは溝を画定する、請求項1〜11のいずれかに記載の物品。
【請求項16】
前記チャネルまたは溝は、丸底である、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記隆起構造は、クローズドセル構造を画定する、請求項1〜11のいずれかに記載の物品。
【請求項18】
前記クローズドセル構造は、ハニカム状またはレンガ状である、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記クローズドセル構造は、丸底である、請求項17に記載の物品。
【請求項20】
前記隆起構造は、規則正しい配置で前記基板の前記面上に垂直に配向される、前記請求項1〜19のいずれかに記載の物品。
【請求項21】
前記構造間空間は、約5μm未満であり、前記構造間空間は、前記微生物の最大寸法未満となるように選択される、請求項1または3〜20のいずれかに記載の物品。
【請求項22】
前記基部幅は、約1:1倍を超える程度で前記遠位幅よりも大きい、前記請求項1〜21のいずれかに記載の物品。
【請求項23】
前記比率は、約2:1よりも大きい、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記比率は、約10:1よりも大きい、請求項22に記載の物品。
【請求項25】
前記表面は、超疎水性である、請求項2に記載の物品。
【請求項26】
前記表面は、超疎水性ではない、請求項2に記載の物品。
【請求項27】
前記物品は、医療用デバイスである、前記請求項1〜26のいずれかに記載の物品。
【請求項28】
前記医療用デバイスは、クランプ、鉗子、鋏、皮膚鉤、チューブ、針、開創器、スケーラー、ドリル、ノミ、ヤスリ、ノコギリ、留置カテーテルを含むカテーテル、カテーテル構成部品、整形外科用デバイス、人工心臓弁、人工関節、人工喉頭、ステント、シャント、ペースメーカー、手術用ピン、人工呼吸器、換気装置、および内視鏡からなる群から選択される、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
前記物品は、配水管、浴槽、台所器具、調理台、シャワーカーテン、目地、便器、産業用食品飲料生産施設、および床板からなる群から選択される、請求項1〜26のいずれかに記載の物品。他の表面としては、ボート、桟橋、石油プラットフォーム、給水ポート、シーブ、およびビューポート等の海洋構造物が挙げられる。
【請求項30】
前記請求項1〜29のいずれか1項に記載の前記物品を汚染液に一時的に接触させ、それによって、前記基板への前記微生物の付着を阻止することを含む、基板への微生物の付着を阻止する方法。
【請求項31】
前記微生物は、長さおよび横径を有する縦横の区別がある微生物である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記遠位幅は、前記微生物のおよその前記横径未満である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記遠位幅は、約1μm未満である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記汚染液の各液滴は、約5分間未満前記物品に接触する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記微生物は、細菌、ウイルス、または真菌である、請求項30〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記幅が、前記細菌、真菌、またはウイルス細胞のサイズの約3〜5倍よりも小さい場合、前記表面は、動的条件下でのエネルギー的排除の間、細菌、真菌、またはウイルスの前記付着を軽減する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記特徴の前記幅が前記微生物の前記サイズ未満である場合、前記表面は、動的条件下でのエネルギー的排除の間、完全に無菌状態を維持する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記構造間空間が、前記細菌、真菌、またはウイルスの最小寸法よりも小さく、そのため、前記微生物が、限定された接触で前記隆起構造の先端に付着する場合、前記表面は、静的条件下で細菌を物理的に排除する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記幅および前記構造間距離の両方が、前記細菌、ウイルス、または真菌の前記最小寸法よりも小さい場合、前記表面は、動的または静的曝露下のいずれかで細菌、真菌、またはウイルスをエネルギー的および物理的の両方で排除する、請求項35に記載の方法。

【図3】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−517903(P2013−517903A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551273(P2012−551273)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2011/022620
【国際公開番号】WO2011/094344
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】