説明

微生物分解した粉ゴムを用いた天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチの製造方法

【課題】ゴム片あるいはゴム粉末を処理するためのエネルギーコストが低い方法を提供すること、更には処理して得られたものをリサイクルに役立てる方法を提供することが、本発明の課題である。
【解決手段】本発明により、微生物分解した粉ゴムを水中に分散したスラリー溶液と、天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合することにより、天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチを製造することが可能となった。該天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチを乾燥して得た天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチを配合することにより、高い物性を維持したゴム組成物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物分解した粉ゴムを用いた天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチの製造方法と、それを配合したゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
廃タイヤは一般のプラスチック製品と比較しても回収率は高く、特にセメント工場を中心として燃料として再利用されている。しかしながら近年環境問題の高まりと共に、廃タイヤを切断または破砕したゴム片あるいはゴム粉末を再使用するいわゆるマテリアルリサイクル率の向上が求められている。廃タイヤの粉砕方法としてはロール粉砕法などの常温で機械的に破砕する方法以外に、液体窒素などにより冷凍してから破砕する冷凍粉砕法や、超高圧水を用いる水撃粉砕法があり、細かい粒子を低コストで作る試みがなされている。
【0003】
一方、粉ゴムを未加硫ゴムに混練して加硫ゴム製品として使用するためには、粉ゴムと新しい未加硫ゴムを加硫接着することが重要であり、粉ゴムに再生剤とオイルを混合し、加熱脱硫し、ロールでシート状にして作製された再生ゴムも古くから使用されている。また、粉ゴム表面の各種の脱硫方法が提案されており、例えば、粉ゴムに二軸押出機などで大きな剪断力を加えて粉砕脱硫する方法などがある。しかしこれらの方法は、処理温度が高温であることや高い剪断力で処理するために、エネルギーコストが高いという欠点がある。
【0004】
【非特許文献1】特開平11−236464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこでゴム片あるいはゴム粉末を処理するためのエネルギーコストが低い方法を提供すること、更には処理して得られたものをリサイクルに役立てる方法を提供することが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで上記の問題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、微生物分解した粉ゴムを水中に分散したスラリーと、天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合することにより、天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチを得た。更に本発明者らは、該天然ゴムウェットマスターバッチを乾燥して得た天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチを配合したゴム組成物は高い物性を維持することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は次の(1)〜(10)からなる。
(1)微生物で分解した粉ゴムを予め水中に分散してなるスラリー溶液と、天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合することを特徴とする天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチの製造方法。
(2)前記微生物で分解した粉ゴムが、ポリイソプレン系ゴムを含有する粉ゴムをノカルディア属に属する放練菌であるBS−HA株(FERM BP−10750)で分解したものであることを特徴とする上記(1)記載の方法。
(3)粉ゴムにおける前記ポリイソプレン系ゴムの含有量が10重量%以上であることを特徴とする上記(2)記載の方法。
(4)前記粉ゴムの平均粒子径が200ミクロン以下であることを特徴とする上記(2)記載の方法。
(5)前記スラリー溶液における前記粉ゴムのスラリー濃度は、該スラリー溶液に対して0.5重量%〜60重量%であることを特徴とする上記(1)記載の方法。
(6)前記スラリー溶液と前記天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスの混合液において、前記粉ゴムの濃度は前記天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスに起因するゴム成分100重量部に対して0.1〜100重量部であることを特徴とする上記(1)記載の方法。
(7)カーボンブラック及び/又はシリカと微生物で分解した粉ゴムを予め水中に分散してなるスラリー溶液と、天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合することを特徴とする上記(1)記載の方法。
(8) 前記天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチにおける前記カーボンブラック及び/又はシリカの配合量は、前記天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムラテックスに起因するゴム成分100重量部に対して5〜100重量部であることを特徴とする上記(7)記載の方法。
(9)上記(1)から上記(8)のいずれか1つに記載の方法により得られたことを特徴とする天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチ。
10)上記(9)記載の天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチを凝固し、更に乾燥することにより調製されたであることを特徴とする天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチ。
(11)上記(10)記載の天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチを配合することを特徴とするゴム組成物。
(12)前記天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチに含まれる粉ゴムの量は、前記ゴム組成物の該粉ゴム以外のゴム成分100重量部に対して0.1重量部〜50重量部であることを特徴とする上記(11)記載のゴム組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、微生物分解した粉ゴムを水中に分散したスラリー溶液と、天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合することにより、天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチを製造することが可能となった。該天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチを乾燥して得た天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチを配合することにより、高い物性を維持したゴム組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明は、微生物分解した粉ゴムを予め水中に分散させたスラリー溶液と、天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合することを特徴とする天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチの製造方法を骨子とする。一般的には、カーボンブラック、シリカなどの充填材と水を予め一定の割合で混合して該充填材を機械的な力で水中に微分散させたスラリーと天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合し、その後に酸などの凝固材を加えて凝固させ、得られた凝固物を回収し、更に乾燥することによりカーボンウェットマスターバッチを製造する。一方本発明においては、徹生物で分解した粉ゴムを水中に一定の割合で混合して水中に徹分散させたスラリーと、天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合し、粉ゴムウェットマスターバッチを予め製造する。
【0010】
微生物で分解した粉ゴムの表面は糖やタンパク質に覆われることにより親水性となるので、微生物で分解した粉ゴムは水に容易に分散する。本発明の好適な態様として、ノカルディア属に属する放線菌であるBS−HA1株で粉ゴムを微生物分解することができるが、本発明の範囲はそれに限定されるものではない。ノカルディア属の放線菌は天然ゴムなどのポリイソプレン系ゴムを分解することが知られているが、通常のノカルディア属の菌ではカーボンブラックなどを配合した硬質ゴムを分解することは不可能である。
【0011】
しかし本発明者は多くの土壌から天然ゴム分解菌を鋭意スクリーニングした結果、ノカルディア属に属するBS−HA1株を見出した。このBS−HA1株は、カーボンブラックを配合したポリイソプレン系ゴムを分解することができので、タイヤなどのゴム製品に使用されるゴム粉の分解に適している。このBS−HA1株は独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM P−19378株として2003年6月2日に国内寄託され、FERM BP−10750株として2006年12月11日に国際寄託に移管されている。
【0012】
本発明で使用するBS−HA1株は、無機塩の液体培地中で粉ゴムを資化しながら増殖する。液体培地中に含まれる無機塩としては窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含むものがあげられる。このように微生物処理した粉ゴムは上記で述べたように親水性の表面を持つ。なおBS−HA1株はポリイソプレン系ゴムを分解する放線菌であるので、粉ゴム中のポリイソプレン系ゴムの含有量は多い方が好適である。該粉ゴムのポリイソプレン系ゴムの含有量は好ましくは10重量%以上、更に好ましくは50重量%以上である。
【0013】
本発明において安定なスラリーを得るためには、粉ゴムの平均粒子径は200ミクロン以下であることが好ましい。粉ゴムの粒子径が大きいと均一なスラリーを作製することが困難であるからである。
【0014】
さらに安定なスラリー溶液を得るため、微生物で分解したゴムに一定量の水を加え、コロイドミルなどの混合機を用いて高速で一定時間攪拌する。必要であれば本発明において、上記スラリーにアニオン系、カチオン系、ノニオン系あるいは両性界面活性剤を添加することが可能であり、特にアニオン系とノニオン系の界面活性剤が好ましい。なお粉ゴムのスラリー濃度は該スラリーに対して0.5重量%〜60重量%であることが好ましく、特に好ましい範囲は1重量%〜30重量%である。
【0015】
そのスラリー溶液に天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合してウェットマスターバッチを調製する。前記スラリー溶液と前記天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスの混合液を調製する際の粉ゴムの配合量は、天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスに起因するゴム成分100重量部に対して、0.1〜100重量部の範囲にあることは好ましく、1〜10重量部の範囲にあることは更に好ましい。粉ゴムの添加量が少ないとリサイクル性が低くなり、一方粉ゴムが多すぎると物性が悪化するためである。
【0016】
更に他の観点において本発明は、カーボンブラック及び/又はシリカと微生物で分解した粉ゴムを予め水中に分散してなるスラリー溶液と、天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合することを特徴とする天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチの製造方法である。一般にカーボンブラック、シリカなどの充填材と水をあらかじめ一定の割合で混合し機械的な力で充填材を水中に微分散させたスラリーと、天然ゴムラテックスを混合し、その後、酸などの凝固材を加えて凝固したものを、回収、乾燥したカーボンウェットマスターバッチの製造方法が知られているが、本発明においてはカーボンブラック及び/又はシリカなどの充填材と微生物処理した粉ゴムを水中に一定の割合で混合し機械的な力で充填材を水中に微分散させたスラリーと、天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合し、微生物処理粉ゴムカーボンウエットマスターバッチをあらかじめ製造する。
【0017】
安定なスラリー溶液を得るため、前記、粉ゴムと充填材と界面活性剤を水に一定量加え、ハイシアミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、インペラーミルなどの混合機で高速で一定時間攪拌する。本発明で用いられるカーボンブラックとしては通常のゴム工業で用いられるものが使用できる。例えば、SAF、HAF、ISAF、FEF、GPFなどの種々のグレードのカーボンブラックを単独または混合して使用することができる。また、本発明で用いるシリカとしては特に限定されないが湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカが好ましい。
【0018】
上記カーボンブラック及び/又はシリカと微生物処理粉ゴムの合計のスラリー濃度はスラリーに対して0.5重量%〜60重量%が好ましく、特に好ましい範囲は1重量%〜30重量%である。カーボンブラック及び/またはシリカは該マスターバッチの天然ゴムラテックスに起因するゴム成分100重量部に対して、5〜100重量部添加されるのが好ましく、特には10〜70重量部の範囲にあることが好ましい。充填材の量が5重量部より少ないと十分な補強性が得られない場合があり、また、100重量部を越えると加工性が悪化する可能性があるからである。
【0019】
該マスターバッチの凝固法としては、通常と同様、蟻酸、硫酸などの酸や塩化ナトリウム等の塩の凝固剤を用いて行われる。また本発明においては、凝固剤を添加せず、天然ゴムラテックスと前記スラリーを混合することによって、凝固がなされる場合もある。
【0020】
その後ウェットマスターバッチを凝固するが、そこで採用できる凝固法としては、通常と同様に、蟻酸、硫酸などの酸や塩化ナトリウム等の塩の凝固剤を用いた方法を挙げることができる。所望に応じて該ウェットマスターバッチに、カーボンブラックやシリカ、その他の無機充填材や加硫剤、老化防止剤、着色剤、分散剤などの添加剤を加えることができる。
【0021】
なおマスターバッチ製造の最終工程において、通常乾燥を行う。本発明においては真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー、ハンドドライヤーなどの通常の乾燥機を用いることができるが、さらに粉ゴムの分散性を向上させるためには、機械的せん断力をかけながら乾燥を行うことが好ましい。この乾燥は一般的な混練機を用いて行うことができるが、工業的生産性の観点から、連続混練機を用いることが好ましい。さらには同方向回転、あるいは具方向回転の2軸混練押出機を用いることが好ましい。
【0022】
また、上記のせん断力をかけながら乾燥を行う工程においては、乾燥工程前のウェットマスターバッチ中の水分は10%以上であることが好ましい。この水分が10%未満であると、乾燥工程での充填材分散の改良幅が小さくなってしまう。
【0023】
さらに該マスターバッチを配合して最終的なゴム組成物が得られるが、このゴム組成物には他のゴム種も混練することができる。なお該ゴム組成物に配合されるマスターバッチに含まれる粉ゴムの量は、最終的に得られるゴム組成物の粉ゴム以外のゴム成分100重量部に対して0.1重量部〜50重量部が好ましい。
【0024】
またこのゴム組成物には本発明の目的が損なわれない範囲で、カーボンブラック、シリカ、その他の無機充填材、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを添加することができる。
【0025】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を説明するが、本発明は下記実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
(1)ラテックス溶液の調製
天然ゴムのフィールドラテックス(DRC 26.2%、pH 10.5)のゴム分が20%となるように、水で希釈した。
【0027】
(2)粉ゴムの微生物分解
シリコーン栓付きのガラス容器に準備した表1の組成の培地に、アセトン抽出済みの天然ゴム系の粉ゴム(平均粒径100μm)10g/1を入れ、90℃でオートクレープ中で滅菌処理した。これに手袋ゴムを唯一の炭素源として前培養したBS−HA1株の菌液を加え、20日間マグネティックスターラーで回転培養後、121℃でオートクレープ滅菌し、粉ゴムをろ紙でろ過した。ろ紙上の粉ゴムをアセトンで数回洗浄後、純水で洗浄し、十分に乾燥したことを確認した後、配合する微生物分解した粉ゴムの試料とした。
【0028】
【表1】

【0029】
(3)スラリー溶液の調製
上記の微生物分解した粉ゴムを一定量水に加え、コロイドミルで高速で一定時間攪拌した。粉ゴムのスラリー濃度はスラリーに対して粉ゴム10重量%であった。
【0030】
(4)凝固工程
ホモミキサー中に上記により調製されたラテックスとスラリーをゴム分100重量部に対して粉ゴム10重量部になるよう添加し、攪拌しながら、蟻酸をpH4.7になるまで加えてウェットマスターバッチを得た。凝固したウェットマスターバッチを回収・水洗し、脱水した。
【0031】
(5)乾燥工程
エアドライヤーにて上記の凝固した試料を乾燥し、マスターバッチを得た。
【0032】
(6)ゴム組成物
上記のマスターバッチ(ゴム100重量部、粉ゴム10重量部)に対して、HAF 50重量部、酸化亜鉛3重量部、硫黄1.2重量部、ステアリン酸2重量部、NS 1重量部 6C l重量部を混練してゴム組成物を得た。
【0033】
(比較例1)
比較例1の組成物は実施例1と同様の操作を経て作製したが、粉ゴムは微生物処理しないものを用いた。当該ゴム組成物を加硫し、JIS K6251-1993に準拠した方法で引っ張り破壊強さを測定したところ、下記の表2に示すように、比較例1に対し実施例1では高い物性を示した。
【0034】
【表2】

【0035】
(実施例2)
(1) ラテックスの調製
実施例1と同様に行った。
【0036】
(2) 粉ゴムの微生物処理
実施例1と同様に行った。
【0037】
(3) スラリー溶液の調製
上記微生物処理した粉ゴムを水に一定量加え、コロイドミルで高速で一定時間攪拌した。粉ゴムのスラリー濃度はスラリーに対して粉ゴム2重量%であった。
【0038】
(4) 凝固工程
ホモミキサー中に上記により調製されたラテックスとスラリーをゴム分100重量部に対して粉ゴム10重量部になるよう添加し、攪拌しながら、蟻酸をpH4.7になるまで加えてウェットマスターバッチを得た。凝固したウェットマスターバッチを回収・水洗し、脱水した。
【0039】
(5) 乾燥工程
実施例1と同様に行った。
【0040】
(6) ゴム組成物
実施例1と同様に行った。
【0041】
(実施例3)
(1) ラテックスの調製
実施例2と同様に行った。
【0042】
(2) 粉ゴムの微生物処理
実施例2と同様に行った。
【0043】
(3) スラリー溶液の調製
上記微生物処理した粉ゴムとカーボンブラックHAFを水に一定量加え、コロイドミルで高速で一定時間攪拌した。カーボンブラックと粉ゴムの合計のスラリー濃度はスラリーに対してカーボンブラック10重量%、粉ゴム2重量%であった。
【0044】
(4) 凝固工程
ホモミキサー中に上記により調整されたラテックスとスラリーをゴム分100重量部に対してカーボンブラックと粉ゴムの合計重量が60重量部になるよう添加し、攪拌しながら、蟻酸をpH4.7になるまで加えて粉ゴム・カーボンウェットマスターバッチを得た。凝固したウェットマスターバッチを回収、水洗し、脱水した。
【0045】
(5) 乾燥工程
エアドライヤーにて上記の凝固したウェットマスターバッチを乾燥した。
【0046】
(6) ゴム組成物
上記のマスターバッチ(ゴム100重量部、カーボンブラック50重量部、粉ゴム10重量部)に対して、酸化亜鉛3重量部、硫黄1.2重量部、ステアリン酸2重量部、NS 1重量部、6C 1重量部を混練してゴム組成物を得た。
【0047】
(実施例4)
ラテックスの調製のみ下記の手順で行い、他は実施例2と同様に行った。
(1) ラテックスの調製
市販の合成ポリイソプレンラテックス(住友精化(株)製 セポレックス IR-100K DRC:65.4%)のゴム分が20%となるように、水で希釈した。
【0048】
(比較例2)
(1 )ラテックスの調製
天然ゴムのフィールドラテックス(DRC 26.2%、pH 10.5)のゴム分が20%となるように、水で希釈した。
【0049】
(2) 凝固工程
ホモミキサー中に上記により調製されたラテックスに攪拌しながら、蟻酸をpH4.7になるまで加えた。凝固した天然ゴムを回収、水洗し、脱水した。
【0050】
(3) 乾燥工程
エアドライヤーにて上記の凝固した天然ゴムを乾燥した。
【0051】
(4) ゴム組成物
上記の天然ゴム100重量部に対して、平均粒子径100ミクロンの粉ゴム10重量部、HAF50重量部、酸化亜鉛3重量部、硫黄1.2重量部、ステアリン酸2重量部、NS 1重量部、6C 1重量部を混練してゴム組成物を得た。
【0052】
(比較例3)
(1) ラテックスの調製
市販の合成ポリイソプレンラテックス(住友精化(株)製 セポレックス IR-100K DRC:65.4%)のゴム分が20%となるように、水で希釈した。
【0053】
(2)凝固工程
ホモミキサー中に上記により調整されたラテックスに攪拌しながら、蟻酸をpH4.7になるまで加えた。凝固した合成ポリイソプレンゴムを回収、水洗し、脱水した。
【0054】
(3) 乾燥工程
エアドライヤーにて上記の凝固した合成ポリイソプレンゴムを乾燥した。
【0055】
(4) ゴム組成物
上記の合成ポリイソプレンゴム100重量部に対して、平均粒子径100ミクロンの粉ゴム10重量部、HAF50重量部、酸化亜鉛3重量部、硫黄1.2重量部、ステアリン酸2重量部、NS 1重量部、6C 1重量部を混練してゴム組成物を得た。
【0056】
本発明のマスターバッチを配合した実施例2、3、4のゴム組成物と、マスターバッチを配合していない比較例2,3のゴム組成物の物性を、破壊強度と定伸張疲労試験結果を指標として評価した。(表3)なお、破壊強度はJIS K6151-1993に準拠した方法で測定した。定伸張疲労試験はダンベル状の試験片を300rpmの速度、歪100%で繰り返し引っ張りを行い、破断する回数の対数で評価した。 表3のように実施例2,3,4の物性は比較例2,3よりも優れていた。
【0057】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明により、微生物分解した粉ゴムを水中に分散したスラリー溶液と、天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合することにより、天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチを製造することが可能となった。該天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチを乾燥して得た天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチを配合することにより、高い物性を維持したゴム組成物を得ることができる。本発明のゴム処理方法はエネルギーコストが低いという利点を有し、本発明の方法によって得られた天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチはゴムのリサイクルに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物で分解した粉ゴムを予め水中に分散してなるスラリー溶液と、天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合することを特徴とする天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチの製造方法。
【請求項2】
前記微生物で分解した粉ゴムが、ポリイソプレン系ゴムを含有する粉ゴムをノカルディア属に属する放練菌であるBS−HA株(FERM BP−10750)で分解したものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
粉ゴムにおける前記ポリイソプレン系ゴムの含有量が10重量%以上であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記粉ゴムの平均粒子径が200ミクロン以下であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記スラリー溶液における前記粉ゴムのスラリー濃度は、該スラリー溶液に対して0.5重量%〜60重量%であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記スラリー溶液と前記天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスの混合液において、前記粉ゴムの濃度は前記天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラッテクスに起因するゴム成分100重量部に対して0.1〜100重量部であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
カーボンブラック及び/又はシリカと微生物で分解した粉ゴムを予め水中に分散してなるスラリー溶液と、天然ゴムラテックス及び/又は合成イソプレンゴムラテックスを混合することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチにおける前記カーボンブラック及び/又はシリカの配合量は、前記天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムラテックスに起因するゴム成分100重量部に対して5〜100重量部であることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つの請求項記載の方法により得られたことを特徴とする天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチ。
【請求項10】
請求項9記載の天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムウェットマスターバッチを凝固し、更に乾燥することにより調製されたであることを特徴とする天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチ。
【請求項11】
請求項10記載の天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチを配合することを特徴とするゴム組成物。
【請求項12】
前記天然ゴム及び/又は合成イソプレンゴムマスターバッチに含まれる粉ゴムの量は、前記ゴム組成物の該粉ゴム以外のゴム成分100重量部に対して0.1重量部〜50重量部であることを特徴とする請求項11記載のゴム組成物。

【公開番号】特開2007−291333(P2007−291333A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9113(P2007−9113)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】