説明

微粉末形態の送達物質を含む経口投与用医薬組成物

治療的有効量の薬理学的に活性な薬物;クロスポビドンまたはポビドン;および該薬理学的に活性な薬物のための送達物質を含む、薬理学的に活性な薬物、例えばペプチドの経口送達に好適な固形の医薬組成物およびそれらの使用方法を開示する。前記組成物に、薬理学的に活性な薬物、特にカルシトニンの増強されたバイオアベイラビリティを提供する送達物質の微粉末形態を利用する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、薬理学的に活性な薬物の送達のための経口組成物、経口投与された薬理学的に活性な薬物のバイオアベイラビリティを増大する方法、および本発明の薬理学的に活性な薬物を経口投与することにより、哺乳動物、特にヒトにおける疾患を処置および/または予防する方法に関する。
【0002】
2.関連技術の詳細
薬理学的に活性な薬物の経口送達は一般に、それが便利で、比較的容易で、かつ一般に無痛であり、結果として他の送達方法と比較して患者のコンプライアンスを高めるため、選択される送達経路である。しかしながら、胃腸管内の様々なpH、強力な消化酵素および活性薬物不透過性胃腸膜などの生物学的、化学的および物理的バリアーが、哺乳動物へのいくつかの薬理学的に活性な薬物の経口送達、例えばカルシトニン(それは、哺乳動物における甲状腺の傍濾胞細胞ならびに鳥類および魚類の後鰓の腺から分泌される長鎖ポリペプチドホルモンである)の経口送達を難しい問題としており、それは、少なくとも一部は、胃腸管中カルシトニンの不十分な安定性、ならびにカルシトニンが容易に腸壁を通って血流に移動できないことによることが証明されている。
【0003】
米国特許番号第5,773,647号および第5,866,536号は、N−(5−クロロサリチロイル)−8−アミノカプリル酸(5−CNAC)、N−(10−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノデカン酸(SNAD)、およびN−(8−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸(SNAC)などの修飾アミノ酸を有する、ヘパリンおよびカルシトニンなどの活性薬物の経口送達のための組成物を記載する。さらに、WO 00/059863は、式I
【化1】

[式中、
、R、RおよびRは、独立して、水素、−OH、−NR、ハロゲン、C−CアルキルまたはC−Cアルコキシであり;
は、置換もしくは非置換C−C16アルキレン、置換もしくは非置換C−C16アルケニレン、置換もしくは非置換C−C12アルキル(アリーレン)、または置換もしくは非置換アリール(C−C12アルキレン)であり;および
およびRは、独立して水素、酸素、またはC−Cアルキルである]
の二ナトリウム塩;ならびにその水和物および溶媒和物を、カルシトニン、シクロスポリンおよびヘパリンなどの活性薬物の経口送達に特に有効であるとして開示する。
【0004】
本発明は、薬理学的に活性な薬物、例えばカルシトニンなどのペプチドの一層大きな経口バイオアベイラビリティを供する医薬組成物を記載する。
【0005】
発明の概要
従って、本発明は、非常に驚くほどに、活性薬物、特にペプチドの経口バイオアベイラビリティを大きく高める医薬組成物を対象とする。具体的には、本発明は、
1.治療的有効量の薬理学的に活性な薬物;
2.薬学的に許容される不活性な賦形剤;および
3.該薬理学的に活性な薬物のための送達物質(ここで、該送達物質は、微粉末形態である)
を含む、薬理学的に活性な薬物の経口送達に好適な固形の医薬組成物を提供する。
【0006】
他の態様にて、本発明は、
1.治療的有効量のカルシトニン;
2.薬学的に許容される不活性な賦形剤;および
3.該カルシトニンのための送達物質(ここで該送達物質は、微粉末形態である)
を含む、カルシトニンの経口送達に好適な固形の医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明の付加的態様にて、薬学的に許容される不活性な賦形剤とは、ポリマーであるクロスポビドンまたはポビドンのどちらかまたは両方であり得る。
本発明のさらなる態様にて、経口送達に好適な固形の医薬組成物は、希釈剤も含んでいてよい。
【0008】
さらに、本発明の他の態様にて、経口送達に好適な固形の医薬組成物は、潤滑剤も含んでいてよい。
さらなる態様にて、本発明は、薬理学的に活性な薬物の経口バイオアベイラビリティを増大するための方法であって、有効量の本発明の医薬組成物を該薬理学的に活性な薬物を必要とする対象に対して投与することを含む方法を対象とする。
【0009】
さらなる態様にて、本発明は、骨関連疾患およびカルシウム障害を処置するための方法であって、治療的有効量の本発明の組成物(ここで、該薬理学的に活性な薬物はカルシトニである)をかかる処置を必要とする患者に対して投与することを含む方法を対象とする。
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の本発明の詳しい説明により明らかになるであろう。
【0010】
発明の詳しい説明
本発明における使用に好適な前記薬理学的に活性な薬物は、治療的ならびに予防的薬物の両方を含み、そしてそれらだけで胃腸粘膜を通過しないかまたは少量の投与量のみが通過する薬物、および/または胃腸管にて酸および酵素により切断されやすい薬物を特に対象とする。薬理学的に活性な薬物には、タンパク質;ポリペプチド;ホルモン;ムコ多糖の混合物を含む多糖類;炭水化物;脂質;およびその組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0011】
薬理学的に活性な薬物の特定の例には、その合成、天然または組換え源を含む、以下:ヒト成長ホルモン(hGH)、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、ウシ成長ホルモン、およびブタ成長ホルモンを含む、成長ホルモン;成長ホルモン−放出ホルモン;α、β、およびγ−インターフェロンを含む、インターフェロン;インターロイキン−1;インターロイキン−2;ブタ、ウシ、ヒトおよびヒト組換えを含む、インスリン(要すれば、ナトリウム、亜鉛、カルシウムおよびアンモニウムを含む対イオンを有していてよい);IGF−1を含む、インスリン−様成長因子;非分画ヘパリン、ヘパリノイド、デルマタン、コンドロイチン、低、極低および超低分子量ヘパリンを含む、ヘパリン;サケ、ブタ、ウナギ、ニワトリおよびヒトを含む、カルシトニン;エリスロポイエチン(erythopoietein);心房性ナトリウム利尿因子(atrial naturetic factor);抗原;モノクローナル抗体;ソマトスタチン;プロテアーゼ阻害剤;アドレノコルチコトロピン、ゴナドトロピン放出ホルモン;オキシトシン;黄体形成(leutinizing)−ホルモン−放出ホルモン;卵胞刺激ホルモン;グルコセレブロシダーゼ;トロンボポエチン;フィルグラスチム;プロスタグランジン;シクロスポリン;バソプレシン;クロモリンナトリウム(クロモグリク酸ナトリウムまたはクロモグリク酸二ナトリウム);バンコマイシン;デスフェリオキサミン(DFO);その断片を含む、副甲状腺ホルモン(PTH);抗真菌薬を含む、抗菌剤;ビタミン;これらの化合物の類似体、断片、模倣体またはポリエチレングリコール(PEG)−修飾誘導体;またはそのいくつかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0012】
興味のある薬理学的に活性な薬物は、薬理学的に活性なペプチド、具体的には骨活性化薬であり、さらに具体的にはカルシトニンである。
【0013】
骨活性化薬には、骨の安定化、治癒または成長、骨代謝の鈍化または阻害、骨吸収の鈍化または阻害、破骨細胞活性の阻害、および破骨細胞活性の刺激などの、動物におけるインビボ薬理学的活性を示す薬物群が含まれる。これらの薬物のいくつかは、ペプチド性、例えばカルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、PTH断片、類似体および放出因子、ならびに形質転換成長因子(TGF)断片、類似体および放出因子であり得る。前記骨活性化薬はまた、本段落にて上記のようなインビボ薬理学的骨活性を示す小分子非ペプチド構造であり得る。
【0014】
かかる薬理学的に活性な薬物の既知の群であるカルシトニンは、様々な薬学的有用性を有し、例えば、パジェット病、抗カルシウム血症および閉経後骨粗鬆症の処置に通常用いられる。サケ、ブタおよびウナギカルシトニンを含む様々なカルシトニンは市販されており、例えば、パジェット病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症および骨粗鬆症の処置に通常用いられる。前記カルシトニンは、その天然、合成または組換え源を含むいくつかのカルシトニン、ならびに1,7−Asu−ウナギカルシトニンなどのカルシトニン誘導体であり得る。組成物には、単一のカルシトニンまたは2個あるいはそれ以上のカルシトニンのいくつかの組合せが含まれ得る。好ましいカルシトニンは、合成サケカルシトニンである。
【0015】
カルシトニンは市販されているか、または公知の方法により合成され得る。
薬理学的に活性な薬物の量とは一般に、所望の目的を達成するための有効量、例えば、治療的有効量である。しかしながら、その量は、複数の組成物が投与されるとき、すなわち、全有効量が累積的投与量単位で投与され得るとき、より少なくなり得る。活性薬物の量はまた、前記組成物が、薬理学的に活性な薬物の持続的放出を提供するとき、前記有効量より多くなり得る。用いる活性薬物の全量は、当業者に公知の方法により測定され得る。しかしながら、前記組成物が、従前の組成物よりも効果的に活性薬物を送達し得るため、従前の投与量単位形態または送達系に用いられるより少ない活性薬物量が、同じ血液レベルおよび/または治療効果を達成するまでの間、対象に投与され得る。
【0016】
前記の薬理学的に活性な薬物がサケカルシトニンであるとき、適した投与量はもちろん、例えば宿主ならびに処置される状態の性質および重症度に依存して変化するであろう。しかしながら、一般に、満足のいく結果は、動物1kg重あたり約0.5μgから約10μg、好ましくは体重1kgあたり1μgから約6μgの日用量で全身的に得られるだろう。
【0017】
前記薬理学的に活性な薬物は一般に、全体的な医薬組成物の全量と比較して重量の0.05〜70%、好ましくは重量の0.01〜50%、より好ましくは全体的な医薬組成物の全量と比較して重量の0.3〜30%を含む。
【0018】
前記薬学的に許容される不活性な賦形剤には、例えば、本発明で意図される固形の経口投与量形態の剤形化または製造を補助するか、または胃腸環境における固形の経口組成物の放出を補助し得る、ポリマーおよび不活性な化合物が含まれ得る。
【0019】
上記の薬学的に不活性な成分は、例えば所望により、クロスポビドンおよびポビドンを含んでいてよく、それは、いかなるクロスポビドンおよびポビドンでも良い。クロスポビドンは、1,000,000またはそれ以上の分子量を有する、N−ビニル−2−ピロリドン(1−エテニル−2−ピロリジノンとも称される)の合成架橋ホモポリマーである。市販されているクロスポビドンには、ISPにより利用可能なポリプラスドンXL、ポリプラスドンXL−10、ポリプラスドンINF−10、BASF社により利用可能なコリドン(Kollidon)CLが含まれる。好ましいクロスポビドンは、ポリプラスドンXLである。
【0020】
ポビドンは、一般に2,500から3,000,000の間の分子量を有する直鎖1−ビニル−2−ピロリジノン基からなる合成ポリマーである。市販されているポビドンには、BASF社により利用可能なコリドンK−30、コリドンK−90F、ならびにISPにより利用可能なプラスドン(Plasdone)K−30およびプラスドンK−29/32が含まれる。
上記のように、クロスポビドンおよびポビドンは市販されている。あるいは、それらは公知の方法により合成され得る。
【0021】
クロスポビドン、ポビドンまたはそれらの組合せは一般に、全体的な医薬組成物の全量と比較して0.5〜50%の量、好ましくは2〜25%の量、より好ましくは医薬組成物の全量と比較して5〜20%の量で組成物中に存在する。
【0022】
本発明にて有用な送達物質は、特定の薬理学的に活性な薬物の送達のために有用ないくつかの薬物である。好適な送達物質は、前記の米国特許番号第5,866,536号に開示の123個の修飾アミノ酸のうちいずれか1個であるか、または前記の米国特許番号第5,773,647号に開示の193個の修飾アミノ酸のうちいずれか1個であるか、またはその組合せである。前記の米国特許番号第5,773,647号および第5,866,536号の内容は、その全体を参照により本明細書に含まれる。さらに、前記送達物質は、いずれかの前記の修飾アミノ酸の二ナトリウム塩、ならびにそのエタノール溶媒和物および水和物であり得る。好適な化合物には、以下の式I
【化2】

[式中、
、R、R、およびRは、独立して、水素、−OH、−NR、ハロゲン、C−Cアルキル、またはC−Cアルコキシであり;
は、置換もしくは非置換C−C16アルキレン、置換もしくは非置換C−C16アルケニレン、置換もしくは非置換C−C12アルキル(アリーレン)、または置換もしくは非置換アリール(C−C12アルキレン)であり;および
およびRは独立して、水素、酸素、またはC−Cアルキルである]
で示される化合物、ならびにその水和物およびアルコール溶媒和物が含まれる。式Iの化合物ならびにその二ナトリウム塩およびそのアルコール溶媒和物および水和物は、その製造方法と一緒に、WO 00/059863に記載されている。
【0023】
前記二ナトリウム塩を、当技術分野で公知の方法によりエタノール溶媒和物を蒸発または乾燥させ、無水二ナトリウム塩を形成させることにより、エタノール溶媒和物から製造することができる。乾燥は一般に、約80℃〜約120℃、好ましくは約85℃〜約90℃、最も好ましくは約85℃の温度で行われる。乾燥工程は一般に、26”Hgまたはそれ以上の圧力で行われる。無水二ナトリウム塩は一般に、100%全量の無水二ナトリウム塩に基づき、約5%以下の重量のエタノール、好ましくは約2%以下の重量のエタノールを含む。
【0024】
送達物質の二ナトリウム塩を、水中で送達物質のスラリーを作製し、そして2モル当量の水酸化ナトリウム水溶液、ナトリウムアルコキシドなどを加えることにより製造することもできる。好適なナトリウムアルコキシドには、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、およびその組合せが含まれるが、それらに限定されない。
二ナトリウム塩のさらなる製造方法は、送達物質と1モル当量の水酸化ナトリウムとを反応させることにより、二ナトリウム塩を得ることである。
【0025】
前記二ナトリウム塩を、二ナトリウム塩を含む溶液を減圧蒸留により分厚いペースト状に濃縮することにより固体として単離することができる。このペーストを、固体として送達物質の二ナトリウム塩を得るために真空オーブンで乾燥させることができる。前記固体を、二ナトリウム塩の水溶液を噴霧乾燥することにより単離することもできる。
送達物質を、当技術分野で公知の方法、例えば上記のような、米国特許番号第5,773,647号および第5,866,536号に記載の方法により製造することができる。
【0026】
既述のWO 00/059863に記載のようなエタノール溶媒和物には、エタノール溶媒和物の分子またはイオンと送達物質の二ナトリウム塩の分子またはイオンとの分子またはイオン複合体が含まれるが、それらに限定されない。一般に、エタノール溶媒和物には、送達物質の二ナトリウム塩のすべての分子に対して約1個のエタノール分子またはイオンが含まれる。
【0027】
送達物質の二ナトリウム塩のエタノール溶媒和物を、エタノールに送達物質を溶解することにより製造することができる。一般に、送達物質の各グラムを、約1〜約50mLのエタノール、通常、約2〜約10mLのエタノールに溶解する。その後、送達物質/エタノール溶液を、送達物質と比較してモル過剰の、例えば塩を含む一ナトリウムなどの塩を含むナトリウムと反応させ、すなわち、送達物質1モル毎に2モル以上のナトリウムカチオンがある状態で反応させ、エタノール溶媒和物を得る。好適な一ナトリウム塩には、水酸化ナトリウム;ナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドなどのナトリウムアルコキシド;および、上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。好ましくは、少なくとも約2モル当量の塩を含む一ナトリウムをエタノール溶液に加える(すなわち、送達物質1モル毎に少なくとも約2モルのナトリウムカチオンがある)。一般に、前記反応は、周囲温度などの上記混合物の還流温度かまたはそれより低い温度で行われる。その後、エタノール溶媒和物を、常圧蒸留で生じたスラリーの濃縮、濃縮スラリーの冷却、そして固体のろ過などの当技術分野で公知の方法により回収する。その後、回収した固体を減圧乾燥し、エタノール溶媒和物を得る。
【0028】
送達物質の二ナトリウム塩の水和物を、上記のように、エタノール溶媒和物を乾燥し無水二ナトリウム塩を形成させ、そして無水二ナトリウム塩を水和することにより製造することができる。好ましくは、二ナトリウム塩の一水和物が形成される。前記無水二ナトリウム塩は非常に含水性であるため、大気中の水分への曝露によりその水和物を形成する。一般に、水和工程を、およそ周囲温度〜約50℃、好ましくは周囲温度〜約30℃で、少なくとも50%の相対湿度を有する環境下で行う。あるいは、無水二ナトリウム塩を、蒸気で水和することができる。
【0029】
好ましい送達物質は、N−(5−クロロサリチロイル)−8−アミノカプリル酸(5−CNAC)、N−(10−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸(SNAD)、N−(8−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸(SNAC)ならびにそれらの一ナトリウムおよび二ナトリウム塩、それらのナトリウム塩のエタノール溶媒和物およびそれらのナトリウム塩の一水和物およびそのいずれかの組合せである。最も好ましい送達物質は、5−CNACの二ナトリウム塩およびその一水和物である。
【0030】
送達物質、5−CNAC、SNAD、およびSNACは、非常に水溶性であり、ほぼ完全に、すなわち90%以上が胃腸管により吸収される(それは、微粉末形態または粗形態のどちらかで摂取される)。しかしながら、驚くべきことに、これらの担体薬物のうちの1個の微粉末形態が組成物に用いられるとき、本組成物の薬理学的に活性な薬物の吸収が、血流中により完全に吸収されることが発見されている。故に、微粉末化された担体薬物の使用は、本発明の必須の要素である。
【0031】
本発明の固体経口投与量形態の製造に用いられる担体薬物の微粉末形態は、薬理学的に活性な薬物および薬学的に不活性な成分の混合物を本発明の組成物に加えるとき、40マイクロメーター未満の平均粒子サイズを有する担体薬物として定義される。望ましくは、本発明の担体薬物は、20ミクロン未満の平均粒子サイズとして定義される微粉末形態を有する。より興味深いことには、本発明の担体薬物は、10ミクロン未満の平均粒子サイズとして定義される微粉末形態を有する。
【0032】
本発明の担体薬物の微粉末形態を、医薬成分を粉砕するために好ましく、かつ医薬成分および/または担体薬物を細かく一定の微粉化粒子サイズに粉砕することが可能な製粉器で粉砕することにより製造することができる。かかる粉砕器の例は、エアージェットミル(Air Jet Mill)Gem T(登録商標)(Copley Scientific,Ltd.,Nottingham,UK)である。その後、細かい担体薬物を、別々にまたは細かい担体薬物+本発明の細かい付加的成分のいずれかとの組合せのどちらかで、必要とする粒子サイズを有する成分のみを通過させることができ、そして本発明に用いるために収集するためにふるい、例えば、適した孔を有するメッシュ・スクリーンを通すことができる。
【0033】
本発明の医薬組成物は一般に、1個またはそれ以上の送達物質の送達有効量、すなわち所望の効果のための活性薬物を送達するために十分な量を含む。一般に、送達物質は、重量の2.5%〜99.4%、より好ましくは重量の25%〜50%で存在する。
【0034】
本発明の医薬組成物は、軟ゲルカプセル、錠剤、カプレットまたは他の固形の経口投与量形態を含むカプセルとして提供され得、それらはすべて当技術分野でよく知られている方法により製造され得る。
【0035】
前記組成物は、pH調整剤、防腐剤、芳香剤、味覚マスキング剤、香料、湿潤剤、等張化剤(tonicifier)、着色剤、界面活性剤、可塑剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、流動補助剤、圧縮補助剤、可溶化剤、賦形剤、微結晶セルロース、例えばアビセルPH 102(登録商標)(FMC corporation 1735 Market Street Philadelphia, PA 19103, USAから提供)などの希釈剤、またはそのいずれかの組合せを含むがこれらに限られない、通常用いられる量の添加剤をさらに含み得る。他の添加剤は、リン酸緩衝塩、クエン酸、グリコール、および他の分散剤を含んでいて良い。
【0036】
組成物はまた、アクチノニン(actinonin)またはエピアクチノニン(epiactinonin)およびそれらの誘導体;アプロチニン、トラジロールおよびボーマンバーク(Bowman−Birk)阻害剤などの1個またはそれ以上の酵素阻害剤を含んでいて良い。
【0037】
さらに、輸送阻害剤、すなわちケトプロフィン(Ketoprofin)などのρ−糖タンパク質は、本発明の組成物中に存在し得る。
【0038】
好ましくは、本発明の固形の医薬組成物には、アビセル(Avicel)(登録商標)などの希釈剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤が含まれる。
【0039】
本発明の固形の医薬組成物は、まず、前記担体薬物かまたは本発明組成物の付加的成分のいずれかと組合せた前記担体薬物のどちらかを、微粉末粒子サイズに粉砕することにより製造することができる。その後、前記微粉末化された担体薬物または微粉末化された担体薬物+微粉末化された本発明の付加的成分を、常套法、例えば、活性薬物の混合物または活性薬物、送達物質、クロスポビドンまたはポビドンおよび他の成分を混合し、練り合わせ、そしてカプセルに充填するかまたはカプセルに充填するかわりに成形し、その後さらに錠剤化するかまたは圧縮成形することによりさらにプロセシングし、錠剤を得ることができる。さらに、固体分散体を公知の方法により形成し、その後、さらにプロセシングすることにより錠剤またはカプセルを形成することができる。
【0040】
好ましくは、本発明の医薬組成物中の成分は、固形の投与形態全体で均質的にまたは均一的に混合される。
【0041】
本発明の組成物は、活性薬物を必要とする、げっ歯類、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、および霊長類、特にヒトなどの哺乳動物が含まれるがそれらに限定されない、いかなる動物にもそれを送達するために投与され得る。
【0042】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するためのものであって、当業者により容易に理解されるであろう。その実施例は、いかなる点においても本発明を限定することを意図するものではない。
【0043】
実施例1
微粉末化された5−CNACおよびサケカルシトニン+微粉末化された5−CNACの錠剤を、以下のように本発明に従い製造することができる:
【0044】
微粉末化された5−CNACの製造
粗5−CNAC(微粉末化すべきである)を、約700g/時間の手送りで80セラミックパンケーキ・ジェットミル(直径8cm、6バール N2、0.5mmノズル)を用いて、ジェットミル(エアージェットミル Gem T(登録商標)Copley Scientific, Ltd., Nottingham, UK)に加える。粗5−CNACをジェットミル処理し、そして標準定規測定を有する顕微鏡下で定期的にサンプリングし、いつ所望の微粉末化された粒子サイズ平均が得られるかを同定する。3つの異なるバッチを挽いて、6um、35um、および46umバッチを作成する。その後、別個の微粉末化されたバッチの個々のふるいを、U10、813um 円錐ふるい、円形ビーターを有する円錐ふるいミル(Quadro Comil, Quadro Engineering Incorporated 613 Colby Drive, Waterloo, Ontario, Canada N2V 1A1)を用いて、約150kg/hの処理量で1500upmで行う。
【0045】
剤形I.異なる粒子サイズの5−CNACとのサケカルシトニン剤形
成分 量(mg) 割合(%)
サケ カルシトニン 1 0.25
微粉末化5−CNAC 228 57
アビセルPH 102(登録商標) 147 36.75
クロスポビドン、NF 20 5
ステアリン酸マグネシウム 4 1____
全量 400 100
【0046】
剤形1の製造
錠剤の3つの異なるバッチを、微粉末化された5−CNAC二ナトリウムの3つの異なるバッチ(1つ目は、46ミクロンの平均粒子サイズの5−CNAC二ナトリウムを有する錠剤型バッチ(バッチA)であり、2つ目は、6ミクロンの平均粒子サイズの5−CNAC 二ナトリウムを有する錠剤型バッチ(バッチB)であり、3つ目は、35ミクロンの平均粒子サイズの5−CNAC二ナトリウムを有する錠剤型バッチ(バッチC)である)を用いて製造する。
【0047】
40メッシュ・スクリーンを通して前もってふるった0.50gのサケカルシトニン、35メッシュ・スクリーンを通してふるった57gの微粉末化された5−CNAC二ナトリウム塩、および10gのポリプラスドンXL(クロスポビドン、NF、International Specialty Products, 1361 Alps Road, Wayne, New Jersey, 07470, USA)を500mL広口瓶中で合わせ、46RPMの速度で100回転にてターブラーミキサーを用いて混合する。さらに、35メッシュ・スクリーンを通してふるった57gの微粉末化された5−CNAC二ナトリウム塩、および36.75gのアビセルPH 102(登録商標)を前記広口瓶に加え、46RPMの速度で500回転にて混合する。さらに、36.75gのアビセルPH 102(登録商標)を広口瓶に加え、46RPMの速度でさらに100回転混合する。4.0gのステアリン酸マグネシウムを、35メッシュ・スクリーンを用いて広口瓶にふるって入れ、46RPMの速度で1分間混合する。最終的な混合物を、Manesty社のB3B錠剤圧搾器を用いて錠剤に圧縮する。錠剤重量は約400mgである。
【0048】
実施例1で作製された錠剤のバイオアベイラビリティを、以下のように試験することができる:
【0049】
実施例2
霊長類投与
前記錠剤を、微粉末化された5−CNAC二ナトリウムの3つの異なるバッチ(1つ目は、46ミクロンの平均粒子サイズの5−CNAC二ナトリウムを有する錠剤型バッチ(バッチA)であり、2つ目は、6ミクロンの平均粒子サイズの5−CNAC二ナトリウムを有する錠剤型バッチ(バッチB)であり、3つ目は、35ミクロンの平均粒子サイズの5−CNAC二ナトリウムを有する錠剤型バッチ(バッチC)である)を用いて実施例1に記載のように製造する。3つの異なるバッチのそれぞれから製造された錠剤を、以下のように、異日に同じ4匹のアカゲザルそれぞれに投与する:
【0050】
アカゲザルを投与前に一晩断食させ、そして実験期間中、完全に意識のある状態で椅子に固定する。バッチAまたはバッチBまたはバッチCからの1つの錠剤を、チューブ補給により各サルに投与し、その後10mLの水を与える。
【0051】
アカゲザルの血液試料を、投与直前ならびに投与後0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4、5、および6時間に回収する。残りの2つの錠剤バッチそれぞれからの錠剤を投与し、血液試料を同様の方法に集めるが、残りの錠剤バッチそれぞれについて異なる日に行う。各投与量および各サルについて得られた血漿サケカルシトニンを、放射免疫アッセイ法により測定する。各サルについて、1つのバッチおよびある期間についての霊長類の血漿サケカルシトニン(SCt)、1つのバッチおよびある期間についての全てのサルの平均血漿SCt濃度、1つのバッチおよびある期間についての血漿SCt濃度の標準偏差(SD)、および1つのバッチおよびある期間についてすべてのサルの血漿SCt濃度の標準平均誤差(SEM)を測定し、以下の表1、2、および3にて報告する。
【0052】
【表1】

【表2】

【表3】

【0053】
上記により、本発明の組成物が、活性薬物の経口バイオアベイラビリティをかなり改善し得ることが明確に示される。改善されたバイオアベイラビリティは、経口送達により達成される、活性薬物、特にカルシトニンの高インビボ濃度をもたらし、そして前記実施例の経口剤形における5−CNACの粒子サイズと相関した。
上記の態様および実施例は、本発明を単に説明するものとして提供され、限定する物として解釈されてはならない。多くの他の態様および変形は、本発明の範囲内であり、当業者に容易に理解される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.治療的有効量の薬理学的に活性な薬物;
b.薬学的に許容される不活性な賦形剤、および
c.該薬理学的に活性な薬物のための送達物質(ここで、該送達物質が微粉末形態である)
を含む、薬理学的に活性な薬物の経口送達に適する固形の医薬組成物。
【請求項2】
前記活性な薬物がペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ペプチドがカルシトニンである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カルシトニンがサケカルシトニンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
該不活性な賦形剤が、クロスポビドンおよびポビドンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記送達物質が、5−CNAC、SNADおよびSNACからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記送達物質が、5−CNACの二ナトリウム塩、SNADの二ナトリウム塩およびSNACの二ナトリウム塩からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
希釈剤をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記希釈剤が微結晶セルロースである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
潤滑剤をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記潤滑剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
有効量の請求項1に記載の医薬組成物を薬理学的に活性な薬物の必要な患者に対して投与することを含む、薬理学的に活性な薬物の経口バイオアベイラビリティを増大するための方法。
【請求項13】
該薬理学的に活性な薬物が骨活性化薬である、骨関連疾患およびカルシウム障害の処置の方法であって、治療的有効量の請求項1から11に記載の組成物をかかる処置が必要な患者に対して投与することを含む、方法。
【請求項14】
該薬理学的に活性な薬物がカルシトニンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該カルシトニンがサケカルシトニンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該医薬組成物が骨活性化薬である活性薬物を含む、骨関連疾患の処置のための医薬の製造における請求項1に記載の医薬組成物の使用。

【公表番号】特表2009−513528(P2009−513528A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518162(P2006−518162)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007584
【国際公開番号】WO2005/004900
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】