微粉砕装置
【課題】微細化された粉末を得ることができると共に処理能力も高めることができる微粉砕装置を提供する。
【解決手段】ホッパー2から供給された原料を粉砕して製品排出口4から排出させる原料粉砕室と、原料粉砕室内の上流側に配置される薄板状のロータ8と、このロータ8が収容される円筒空間と、円筒空間よりも下流側に配置され、円筒空間よりも内径が小さい分級空間Sと、を備え、ロータ8の回転により生じる気流により粉砕を行う微粉砕装置において、円筒空間の内壁面10には、円周方向に沿って、多数の凹凸部が形成され、ロータ8は、所定の半径を有すると共に、円周方向に沿って複数の孔が形成された円盤部分と、円盤部分の外周部から突出する多数のブレードにより構成され、円筒空間の内壁面には、円周方向に沿って、多数の溝が、多数のブレードと面する位置に形成されている。
【解決手段】ホッパー2から供給された原料を粉砕して製品排出口4から排出させる原料粉砕室と、原料粉砕室内の上流側に配置される薄板状のロータ8と、このロータ8が収容される円筒空間と、円筒空間よりも下流側に配置され、円筒空間よりも内径が小さい分級空間Sと、を備え、ロータ8の回転により生じる気流により粉砕を行う微粉砕装置において、円筒空間の内壁面10には、円周方向に沿って、多数の凹凸部が形成され、ロータ8は、所定の半径を有すると共に、円周方向に沿って複数の孔が形成された円盤部分と、円盤部分の外周部から突出する多数のブレードにより構成され、円筒空間の内壁面には、円周方向に沿って、多数の溝が、多数のブレードと面する位置に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端側に設けられる原料供給口と、他方側に設けられる製品排出口と、原料供給口から供給された原料を粉砕して製品排出口から排出させるための原料粉砕室とを備えた微粉砕装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品(米、緑茶、大豆、紅茶、海苔など)を扱う食品産業やその他の医薬・有機化学工業等の各産業分野においては、より均一化された微粉末が要求されており、種々の微粉砕装置が開発されている。
【0003】
例えば、本出願人による下記特許文献1に開示される微粉砕装置は、原料粉砕室内の上流側に配置される少なくとも1枚の薄板で形成されるロータと、このロータが収容される円筒空間と、この円筒空間よりも下流側に配置され、円筒空間よりも内径が小さく設定された円筒形状を有する分級空間と、この分級空間の下流側に配置された前記製品排出口と、を備え、円筒空間の内壁面には、円周方向に沿って、多数の凹凸部が形成されている。
【0004】
この微粉砕装置によれば、所定の粒度にまで小さくなっていない粉末は、所定の粒度になるまで粉砕が行われ、所望の粒度にまで分級された製品が取り出される。
【0005】
また、ロータが収容される円筒空間の内壁面には、円周方向に沿って、多数の凹凸部が形成されている。ロータの周面に凹凸部が存在することで、原料と原料粉砕室の内壁面との衝突がさらに促進されることで、より微粉砕工程を高効率化することができるようにすると共に、熱の発生もかなり抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−201289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示される微粉砕装置は、10μm以下の微粉砕領域の微粉末を得る場合には適した構造であるが、粉砕の程度は20μm程度でもよいが、単位時間当たりの処理量を多くしたい場合には、効率がよくなかった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、微細化された粉末を得ることができると共に処理能力も高めることができる微粉砕装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る微粉砕装置は、
一端側に設けられる原料供給口と、他方側に設けられる製品排出口と、原料供給口から供給された原料を粉砕して製品排出口から排出させるための原料粉砕室と、この原料粉砕室内の上流側に配置される少なくとも1枚の薄板で形成されるロータと、このロータが収容される円筒空間と、この円筒空間よりも下流側に配置され、円筒空間よりも内径が小さく設定された形状を有する分級空間と、この分級空間の下流側に配置された前記製品排出口と、を備え、
前記ロータの回転により生じる気流により、原料同士もしくは原料と原料粉砕室の内壁面とを衝突させて粉砕を行う微粉砕装置において、
前記ロータは、所定の半径を有すると共に、円周方向に沿って複数の孔が形成された円盤部分と、この円盤部分の外周部から放射状に突出する多数のブレードにより構成され、
前記円筒空間の内壁面には、円周方向に沿って、前記ロータの軸芯と平行な多数の溝が、前記多数のブレードと面する位置に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
かかる構成による微粉砕装置の作用・効果を説明する。この微粉砕装置の原料粉砕室は、上流側に薄板で形成されるロータが配置されており、これを回転させることで高速気流を発生させる。この気流により、原料同士もしくは原料と原料粉砕室の内壁面とを衝突させることで粉砕を行うものであり、いわゆる気流粉砕を主としているものである。ロータが収容される円筒空間の下流側には、分級空間が設けられており、分級空間の内径は円筒空間よりも小さく設定されている。また、この分級空間の下流側に、製品排出口が設けられている。従って、所定の粒度にまで小さくなっていない粉末は、所定の粒度になるまで粉砕が行われる。これにより、所望の粒度にまで分級された製品が取り出される。また、原料粉砕室内に配置される主な部品は、ロータのみであり、分級機能などについては分級空間の形状などにより対応することができる。
【0011】
また、ロータが収容される円筒空間の内壁面には、円周方向に沿って、ロータの軸芯と平行な多数の溝がブレードと面する位置に形成されている。これにより、原料と原料粉砕室の内壁面との衝突が促進される。そして、前記ロータは、円周方向に沿って複数の孔が形成された円盤部分を有しており、この円盤部分から多数のブレードが突出するように形成される。このような円盤部分を構成することで、前述の先行技術の構成に比べて、ロータの強度を保持しながらも、より多くのブレードを形成することができ、処理能力の増大に寄与することができる。また、円盤部分の孔が形成されることで、軽量化を図るだけでなく、微細化されていない粗粉を通過させて、微細化を促進させるのにも寄与することができる。以上のように、微細化された粉末を得ることができると共に処理能力も高めることができる微粉砕装置を提供することができる。この点は、後述するように実験的にも確認することができた。
【0012】
本発明において、前記円筒空間の内壁面は、スリット状の孔が多数形成された帯状金属プレートにより構成されており、前記スリット状の孔が前記溝として機能するように構成したことが好ましい。
【0013】
ロータの軸芯と平行な多数の溝を形成する方法は種々考えられるが、上記のような帯状金属プレートにスリット状の孔が多数形成されたものを用いることで、コストを抑制しながら、溝を形成することができる。
【0014】
本発明において、前記帯状金属プレートの裏面側に、孔が形成されていない第2の帯状金属プレートが密着させられて一体化されていることが好ましい。
【0015】
かかる構成により、粉砕された微粉末が溝から脱出できないという不具合を抑制することができる。また、2つの金属プレートにより一体化することで組み立て作業性を向上させることができる。
【0016】
本発明において、前記円筒空間の内壁面は、前記溝が多数形成された帯状プレートにより構成されていることが好ましい。
【0017】
かかる構成により、単一の部材で溝を形成することも可能になり、組み立て作業性に資することができる。また、コンタミ防止,清掃の面において優れており、主に食品関係の微粉砕を行う時に有用である。
【0018】
本発明に係る前記溝は、前記ロータが配置される位置から、当該位置よりも上流側の位置にわたって設けられることが好ましい。
【0019】
この構成によると、ロータが配置される位置はもちろんのこと、ロータが配置されていない上流側にも溝が設けられる。
【0020】
ロータの上流側にも溝を設けることで、ロータによる微粉砕が始まる前に、高速渦流により、溝が形成された内壁面に原料をぶつけて衝撃を与え、微粉砕前の前処理の役割を果たすことができる。従って、処理能力を高めることができる。
【0021】
本発明に係る前記溝の幅に対して、前記ブレードの円周方向に沿った長さは、6〜9倍に設定され、前記ブレードの配列ピッチは20〜25倍に設定されていることが好ましい。
【0022】
溝の幅と、ロータに形成されるブレードの寸法関係には、適切な関係が存在するものと考えられる。実際に実験を行ってみたところ、後述するように、上記の関係に設定すれば、本発明の効果が得られるものと推定される。
【0023】
本発明において、前記円筒空間を構成するため、上流側に位置する第1本体部と、この第1本体部の下流側に位置すると共に、第1本体部に対して着脱可能に結合される第2本体部とを備え、
前記第1本体部の側に、前記ロータ及び前記溝が設けられると共に、前記第2本体部は、下流側へ行くほど内径が徐々に小さくなるように設定された内壁面を有していることが好ましい。
【0024】
円筒空間の内部は、適宜メンテナンスを行う必要がある。また、ロータ自体は、メンテナンスのほかに、仕様変更により別のロータに交換することもありうる。そこで、上記のように円筒空間を第1本体部と第2本体部により構成することで、メンテナンスや部品交換の作業性向上に資することができる。また、第2本体部は、下流側に行くほど内径が徐々に小さくなっており、分級空間への微粉末の移動も滞りなく行うことができる。
【0025】
本発明において、前記分級空間の外部に配置され、分級空間の上流側から分級空間の先端側をバイパスさせるバイパス経路と、
分級空間の内部に配置され、分級空間の前記先端側から前記分級空間の上流側へとつながる内部経路と、を設け、粉砕された原料のうち、バイパス経路側に排出された粗粉を前記内部経路を経由して、再び、分級空間内へ戻すように構成し、
前記分級空間内へ戻ってきた原料を前記ロータの前記複数の孔の方向へ向かわせるための案内手段を設けたことが好ましい。
【0026】
この構成によると、所定の粒度まで粉砕されていない粗粉は、バイパス経路と内部経路を経由して、再び分級空間の上流側に戻ってくる。所定の粒度にまで粉砕された微粉のみが、製品排出口から排出されるので、より均一な粒度の製品を得ることができる。なお、分級空間の上流側は、分級空間の先端側よりも上流に位置していればよい。そして、分級空間内へ戻ってきた原料は、案内手段によりロータの複数の孔の方向へ向かうように仕向けられる。これにより、粗粉の粉砕をさらに効率よく行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】微粉砕装置の外観を示す斜視図
【図2】微粉砕装置の内部構成を示す断面図
【図3A】ロータの形状を示す平面図
【図3B】別実施形態に係るロータの形状を示す平面図
【図4】ロータのブレードの部分を拡大した平面図
【図5】ロータのブレードの部分を拡大した回転軸方向に沿った断面図
【図6】溝を形成する貼り合わせのプレート体の構成例を示す図
【図7】溝の別実施形態に係る構成例を示す図
【図8】溝の別実施形態に係る構成例を示す図
【図9】実験データを示す図
【図10】実験データを示す図
【図11】実験データを示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る微粉砕装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、微粉砕装置の外観を示す斜視図であり、図2は微粉砕装置の内部構成を示す断面図である。
【0029】
<第1実施形態の構成>
まず、第1実施形態に係る微粉砕装置Aの構成について説明する。微粉砕装置Aは、略L字形の土台1の底部にコロ1aが設けられている。また、原料を供給する原料供給装置Bからの原料が供給されるホッパー2(原料供給口)と、ホッパー2から投入された原料を微粉末に粉砕する原料粉砕室3と粉砕された原料を製品として排出する製品排出口4とを備えている。製品排出口4から排出された製品は、ブロア21により吸引されて、ホース5を通ってサイクロン集塵装置20により集積される。
【0030】
なお、サイクロン装置内の負圧を解消し微粉末を集積しやすくするため、正圧用のコンプレッサー又はリングブロアーを接続してもよい。このコンプレッサーやリングブロアーは、粉砕された微粉末の除熱作用を行うことができる。
【0031】
図2に示すように、土台1の上に駆動本体部6が設けられており、その内部にはモータ7が設置されている。モータ7の回転軸7aは水平な状態に設定され、この回転軸7aの先端側には3枚のロータ8が取り付けられている。この3枚のロータ8の配置間隔は調整することができ、これにより、粉砕原料の特性に適した粉砕や粒度の調整を行うことができる。また、ロータ8の取り付け枚数も調整することができ、図2では3枚であるが、4枚あるいは5枚にして増やすこともできる。あるいは2枚にしてもよい。
【0032】
なお、モータ7とロータ8とは上記のように直結する構成ではなく、ベルトを介して駆動する方式を採用してもよく、ロータ8を駆動する機構については、種々の変形例が可能である。
【0033】
回転軸7aの先端部には、円錐台形状の案内部材7b(案内手段に相当)がネジ7cにより取り付けられている。案内部材7bは、テーパ面を有し、後述するように、粗粉をロータ8側に案内するように機能する。
【0034】
<ロータの構成>
ロータ8は、円筒形状を有する上流側の円筒空間S1Aに収容されており、円筒空間S1Aの内壁面10と、ロータ8の外周面との隙間はわずかな大きさ(例えば、3mm)になるように設定されている。
【0035】
図3Aは、ロータ8の形状を示す平面図である。ロータ8は、中心部に回転軸7aと連結する小判孔8aが形成されている。ロータ8は、所定の半径を有する円盤部分80と、この円盤部分80の円周部から放射状に突出する多数のブレード81が設けられている。円盤部分80は、所定ピッチ(45゜ピッチ)で孔8bが形成されている。孔8bの形状は、頂点が中心方向を向いた三角形状に形成される。孔8bを形成することで、ロータ8の強度を確保しながらも軽量化を図っている。また、孔8bを介して粉砕していない粗粉を通過させて、より粉砕効果を高めるようにしている。なお、ロータ8と回転軸7aとの結合方法は、小判孔8aを使用しない他の公知の手法を使用してもよい。
【0036】
孔8bと孔8bの間は腕部8cが形成されており、腕部8cの幅は、中心に近い根元側に行くほど太くなるように形成されている。ブレード81は、先端部の幅が狭く、根元側へ行くほど徐々に幅が大きくなるように形成されている。多数のブレード81は、円周方向に沿って所定のピッチ(6゜ピッチ)で形成されている。
【0037】
ロータ8の具体的な仕様を説明すると、好ましくは、ステンレスの板材により製作され、その厚みは4mm程度である。また、円盤部分80の直径はφ868mm、ブレード81の高さは60mm、ロータ8全体の直径はφ988mmである。また、ブレード81の先端部の幅は15mmである。なお、ブレード81の配列ピッチや配列個数、円盤部分80の直径の大きさ等は適宜変更することができる。また、円盤部分80の孔8bの形状や配列ピッチ及び個数も同様である。
【0038】
3枚のロータ8は、その刃部8bが同位相になるように構成してもよいし、位相をずらしながら結合してもよい。位相をずらせた方がより粒度を細かくすることができる。
【0039】
ロータ8と内壁面10の隙間寸法は、あまり狭すぎると発熱の原因となり、原料そのものが大きい場合にトラブル発生の原因となる。逆にあまり広すぎると粉砕効率が大幅に低下するという問題があるので、目標とする粒度に応じた適切な寸法が設定される。
【0040】
<ロータの別実施形態>
図3Bは、ロータ8の別実施形態を示す平面図である。図3Aに示す第1実施形態と基本的な構成は同じであるので、同じ図番を付して説明は省略する。この第2実施形態では、厚みは3mm程度である。また、円盤部分80の直径はφ451mm、ブレード81の高さは40mm、ロータ8全体の直径はφ531mmである。また、ブレードの先端部の幅は10mmである。ブレード81の配列ピッチは10゜である。
【0041】
これらロータ8の使い分けは、微粉砕装置の能力等に応じて行うことができる。例えば、原料の粉砕効率に併せてロータ8の配置個数やブレード81の数等を調整する。
【0042】
<溝の構成>
図4は、ロータ8のブレード81の部分を拡大した平面図である。図4に示すように、ロータ8のブレード81が向かい合う内壁面10には多数の溝10a(凹凸部)が形成される。図5は、ロータ8のブレード81の部分を拡大した回転軸方向に沿った断面図である。内壁面10は、2枚の帯状金属プレートを重ねて貼り合わせる(密着させる)ことで形成される。すなわち、図6に示すように、第1帯状金属プレート100と第2帯状金属プレート101を貼り合わせて、図6(c)に示すように円環状に形成することで、内壁面10を構成することができる。貼り合わせたものをプレート体102と称することとする。
【0043】
第1帯状金属プレート100には、長手方向(円周方向に対応)に沿って多数のスリット孔が形成され、これが溝10aとして機能する。溝10aの長手方向は、ロータ8の軸芯方向に平行になるように取り付けられる。第2帯状金属プレート101は、孔が形成されないプレートであり、その平面サイズは第1帯状金属プレート100と同じである。これらを貼り合わせることで、スリット孔の底が閉じた状態の溝10aになる。2枚のプレートを貼り合わせる方法としては、溶接、リベット、接着等の種々の方法で行うことができる。スリット孔の底が閉鎖されるので、原料が溝10aから逃げていかないように構成することができる。
【0044】
図5にも示すように、溝10aが形成されるのは、ブレード81と面する位置だけでなく、ロータ8の上流側にある円筒空間S1Aにも形成されている。図5には、溝10aがロータ8の軸芯方向に沿って3つ配置されていることになる。このような構成を採用しているのは、より粉砕効果を高め処理量を増加させるためである。図6に示すような貼り合わせのプレート体102を3つ軸芯方向に沿って配置することで、図5のような構成にすることができる。
【0045】
なお、それ以外の構成例として、図7(a)に示すように、より平面積の大きなプレートを用いてプレート体102を構成することができる。この場合、図7(b)に示すように、溝10aを軸芯方向に沿って3箇所形成するのではなく、長手方向の長さを更に伸ばした構成を採用してもよい。図6、図7に示す構成は溝10a(スリット孔)も含めて、金属のプレス加工で製作することができ、コスト的に有利な点がある。
【0046】
図8は、2枚の帯状金属プレートを用いるのではなく、1枚の帯状金属プレート103のみを用いた構成例である。溝10aはプレス加工ではなく、フライスによる切削、あるいは、鍛造により形成する。
【0047】
また、溝を有する凹凸部を特殊ライニングとして別に製作して、凹凸のない内壁面10に装着する形で形成してもよい。以上のように、内壁面10への溝10aの形成方法は、種々考えられるので、特定の製作方法に限定されるものではない。図8に示す構成は、コンタミ防止,清掃の面において優れており、主に食品関係の微粉砕を行う時に有用である。
【0048】
次に、溝10aの幅とピッチについて説明する。図4に示すように、溝10aの幅をw1、隣接する溝10aどうしの間隔をw2とする。本実施形態では、w1,w2は同じであり、w1=w2=2mmである。また、溝10aの深さw3=2mm程度である。ただし、これらの具体的な寸法は適宜変更可能である。好ましくは、w1=w2=1〜3mmであり、より好ましくはw1=w2=1.5〜2.5mmである。深さについても、w3=1〜3mmが好ましく、1.5〜2.5mmがより好ましい。なお、必ずしもw1=w2でなくてもよく、w1>w2あるいはw1<w2としてもよい。
【0049】
また、溝10aは、図4等に示すように、内壁面10の円周方向に沿って多数形成されている。図4の方向視(ロータ8の回転軸芯から見た方向)では、溝10aの配列形状は、矩形波のごとき形状を呈しているが、これに限定されるものではない。溝10aの形状は台形状でもよいし三角形状でもよい。丸味を帯びた形状にしてもよい。
【0050】
上記のような溝10a及びブレード81を形成することで、後述の実験結果でもわかるように、粒径の小さな微粉末を得ることができると共に、処理能力を高めることができた。このような溝10aとブレード81との組み合わせにより、原料粉砕室3内における圧力変動がより大きくなり、粉砕効率が飛躍的に向上したものと推定される。粉砕対象である原料が原料粉砕室3内に滞留する時間が短くなり、負荷や熱の発生を飛躍的に低減し、細かな微粉末を効率よく製造可能になった。
【0051】
ロータ8の前面側、すなわち、下流側にも円筒空間S1Bが設けられる。円筒空間S1Aを形成するために前述のプレート体102が設けられ、これが第1本体部B1を構成する。円筒空間S1Bを形成するために、第2本体部B2が設けられ、金属プレートの絞り加工により形成される。第2本体部B2は、その内壁面の内径が下流側に行くほど徐々に小さくなるように設定されている。具体的には、R状に形成された部分110を有する。
【0052】
第1本体部B1と第2本体部B2は、フランジ111を利用してボルト(不図示)により締結される。第1本体部B1は、駆動本体部6に対してボルトにより結合される。第2本体部B2は第1本体部B1に対してボルトを外せば取り外すことができる。すなわち、第2本体部B2は第1本体部B1に対して着脱可能である。これにより、内部のロータ8や内壁面10の清掃やメンテナンスを行うことができる。また、ロータ8の交換作業も容易に行うことができる。第1本体部B1と第2本体部B2の更に外側には、カバー部材112が取り付けられる。
【0053】
前述の円筒空間S1Bの下流側に隣接して分級空間Cが配置され、第1分級空間部S2、テーパ空間部S3,第2分級空間部S4の順番に、円筒空間S1A,S1Bと同芯に配置される。テーパ空間部S3は、下流側に行くほど内径が小さくなるようなテーパ状の内壁面11を有している。
【0054】
第1分級空間部S2は、円筒空間S1A,S1Bよりも内径の小さな円筒形を有している。第1分級空間部S2の内壁面12と、円筒空間S1Bの内壁面110との間には内径寸法において段差が設けられている。
【0055】
第2分級空間部S4は、第1分級空間部S2よりも内径の小さな円筒形状を有している。テーパ空間部S3により、両者の異なる内径をスムーズにつなげている。この第2分級空間部S4の先端部に製品排出口4が設けられており、製品排出口4の内径は第2分級空間部S4の内径よりも小さくなっている。製品排出口4及び各分級空間部S2,S4と同芯になるように配置されている。ただし、製品排出口4は、必ずしも各分級空間部S2,S4と同芯に配置しなくてもよい。
【0056】
以上のように、分級空間Cは下流側にいくほど内径が小さくなるように設定されており、所定の粒度にまで粉砕された製品のみが製品排出口4から排出可能に構成されている。
【0057】
さらに、第1分級空間部S2の外部には第1接続部15が設けられ、第2分級空間部S4の外部には製品排出口4としての第2接続部16が設けられる。また、第2分級空間部S4の先端部にも先端接続部17が設けられる。第1接続部15と先端接続部17の間にパイプ22が接続されており、このパイプ22によりバイパス経路Pが構成される。
【0058】
図1,2に示すように第1・第2接続部15,16は、分級空間部S2,S4、テーパ空間部S3の外部に接線方向に向けて形成される。分級空間部S2,S4では、粉砕された原料が回転しており、その回転方向に対応した接線方向としている。
【0059】
製品排出口4は、接線方向を向くように設けられ、製品排出口4にホース5が挿入される。接線方向を向くことで、スムーズに、粉砕された微粉末を取り出すことができる。
【0060】
製品排出口4(第2接続部17)は、上記のように配置する構成の他、先端接続部17が設けられている面と同じ面に設けてもよい。製品排出口4は、上記分級空間S2,S4、テーパ空間部S3の下流側に設けられていればよい。
【0061】
また、分級空間Sの内部であって、先端接続部17の内側に内部経路Qが取り付けられている。内部経路Qの左端部は、バイパス経路Pに連続しており、右端部は、開放されて分級空間Sにつながっている。
【0062】
内部経路Qの先端には、傘状に開いた出口部材24が取り付けられており、その内面は出口に向かうほど径が大きくなるテーパ面24aとなっている。このテーパ面24aが案内部材7bのテーパ面と向かい合うように配置される。
【0063】
原料を粉砕すると、所定の粒度にまで粉砕された微粉と所定の粒度にまで粉砕されていない粗粉が、分級空間S内に混在する。そこで、上記のようなバイパス経路Pを設けると、重量の大きな粗粉は、バイパス経路P側へ移動し、内部経路Qを経由して再び分級空間S内に戻ってくるようにしている。再び戻ってきた粗粉は案内部材7bにより、ロータ8の孔8bの方向へと導かれる。これにより、粗粉は再び原料粉砕室3において粉砕処理が施される。
【0064】
これにより、粗粉が製品排出口4から排出することを防止し、確実に粉砕された微粉のみが製品排出口4から排出されるようにする。
【0065】
先端接続部17及び内部経路Qは、分級空間Sの軸中心と同芯となるように配置される。これにより、戻ってきた粗粉を効率よく再粉砕して微粉化することができる。また、製品排出口4は、先端接続部17に隣接した周囲に配置される。ただし、製品排出口4と、先端接続部17の配置については、これに限定されるものではない。先端接続部17及び内部経路Qは、分級空間Sの軸中心と同芯に配置しなくてもよい。
【0066】
図1に示すように、補助経路23が設けられ、主経路(第1接続部15のすぐ近傍の通路)と合流点Dにおいて合流している。主経路はパイプ22と合わせてバイパス経路Pとして機能する。補助経路23には、不図示のリングブロアーが接続されており、矢印の方向にエアーを送り込んでいる。例えば、冷却エアーを送り込むことで温度の調節などを行なうことができる。なお、補助経路23は必ずしも必要なものではなく、設けなくてもよい。
【0067】
この構成によると、粗粉を確実に微粉砕して排出することができ、所望の粒度の製品を確実に得ることができる。第1接続部15からバイパス経路Pへと排出された粗粉は、負圧の作用により図示の矢印方向に導かれ、確実に分級空間S内へと戻される。上記のリングブロアーを用いれば、より確実に粗粉を戻すことができる。
【0068】
<動作>
次に、本発明に係る微粉砕装置Aの動作について説明する。製品排出口4に接続されたブロアにより吸引動作を行うと共に、ロータ8を高速回転させる。ロータ8の高速回転に伴い負圧が発生し、モータ7側に引かれようとする力と、ブロア21による吸引力とがせめぎ合う形になるが、ブロア21の吸引力の方が大きくなるように設定されている。
【0069】
これにより、投入された原料は、高速気流により原料同士の衝突と原料と内壁面10との衝突を繰り返すことで、徐々に粉砕されていく。原料は、ロータ8と内壁面10の間の隙間、及び、ロータ8とロータ8の間を通って下流側へと流れていく。
【0070】
また、内壁面10には溝10aが形成されており、前述のように、より粒径の小さな微粉末を得ることができた。また、溝10aを設けることで、表面積が増加し、放熱効果を高めることができる。例えば、原料が米である場合、分級空間を構成するフレームの温度が最大で90℃まで上昇することがあったが、溝10aを設けることで、最大40〜50℃までしか上昇しなくなった。
【0071】
また、溝10aのない構成だと、ロータ8の回転数をある一定値まで上げると、それ以上上げても回収された微粉末の粒度に変化は見られなかったが、溝10aを設けることで、回転数をさらに上げることで、より細かな粒度にすることができた。
【0072】
ロータ8の下流側の分級空間Sにおいても、高速気流により渦流が発生し、この渦流により生じる遠心力により、粉砕が不十分な原料は、内壁面11,12,13の方向に吹き飛ばされ、十分に粉砕された原料のみが中央の製品排出口4から排出される。内壁面12と内壁面13は、段差面となっており、粉砕不十分な原料が製品排出口4から不用意に排出されていかないようにしている。これにより、所望の粒度にまで粉砕された原料のみが製品として取り出されることになり、均一な微粉末を得ることができる。
【0073】
<作用・効果>
本発明の微粉砕装置Aによれば、気流式の粉砕であるため、温度上昇を極力抑えることができる。また、金属同士の衝突部がないため金属粉が混入することがなく、故障が生じにくい構造となっている。
【0074】
粒度の調整は、前述のロータ8の間隔設定のほかに、ロータ8の回転数、ブレード81の配列個数、ピッチ、形状、溝10aのサイズ、個数、配列ピッチ、ブロア21の吸引風量の調整などにより行うことができ、きわめて簡単な作業で粒度の調整を行うことができる。また、ロータ8は厚さ数mm程度の薄板円盤状に形成することができるので、ロータ8を軽量にすることができ、これを駆動するための動力設備も小型化することができる。
【0075】
本発明に係る微粉砕装置Aは、原料粉砕室内の構造が簡単であり、分解清掃などのメンテナンスを容易に行うことができ、装置自体のコストも抑制することができる。また、装置全体の大きさもコンパクトであり、広い設置場所を必要としない。
【0076】
本発明においては、気流式の粉砕であり、機械的粉砕が困難とされている大豆などの比較的油分を多く含んだ原料でも均一に粉砕することができる。また、投入された原料は、瞬時に粉砕されて製品排出口4から排出されるため、風味を損なうなどの原料の変質を起こしにくいという利点も有している。
【0077】
本発明に係る微粉砕装置Aによれば、所望の粒度の微粉末のみが排出される構造であるから、1パスでシングルミクロンサイズ、サブミクロンサイズの粉砕が可能である。
【0078】
<実験結果>
次に、本実施形態に係る微粉砕装置を用いて、実際に粉砕を行ったデータを示す。図9は、米を粉砕した時の粒度分布を示し、グラフの横軸は粒子径(μm)縦軸は体積(%)を示す。処理量は(60kg/hr−7.5kwモーター)であり、特許文献1に示す従来のロータを使用したものに比べて、処理量が4倍に増えた。
【0079】
図10は、破砕米を粉砕した時のデータを示す。この場合の処理量は50kg/hr−2.2kwモーターであった。図11は、煎茶を破砕した時のデータを示す。この場合の処理量は80kg/hrであった。従来のロータを使用したものに比べて、処理量は1.5〜2倍に増加した。
【0080】
<別実施形態>
本発明に係る微粉砕装置により粉砕される原料については、特に限定されるものではないが、緑茶、紅茶、コーヒー豆、大豆、小豆、米、海苔などの食品には特に好適である。また、食品以外の樹脂等の粉砕にも応用することができる。
【0081】
本実施形態では、3つの分級空間部が形成されているが、この設定個数については適宜決めることができる。この個数に応じてバイパス経路Pを形成するための接続部の設定個数も変更することができる。また、各分級空間部において、内壁面をテーパ面にするか段差にするかは、適宜決めることができる。さらに、テーパ面とする場合のテーパ角度も適宜設定することができる。また、直線的なテーパ面ではなく、曲面で構成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
3 原料粉砕室
4 製品排出口
7b 案内部材
8 ロータ
8a 小判孔
8b 孔
10 内壁面
80 円盤部分
81 ブレード
A 微粉砕装置
B 原料供給装置
S 分級空間
S1 円筒空間
S2 テーパ空間部
S3 第1分級空間部
S4 第2分級空間部
P バイパス経路
Q 内部経路
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端側に設けられる原料供給口と、他方側に設けられる製品排出口と、原料供給口から供給された原料を粉砕して製品排出口から排出させるための原料粉砕室とを備えた微粉砕装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品(米、緑茶、大豆、紅茶、海苔など)を扱う食品産業やその他の医薬・有機化学工業等の各産業分野においては、より均一化された微粉末が要求されており、種々の微粉砕装置が開発されている。
【0003】
例えば、本出願人による下記特許文献1に開示される微粉砕装置は、原料粉砕室内の上流側に配置される少なくとも1枚の薄板で形成されるロータと、このロータが収容される円筒空間と、この円筒空間よりも下流側に配置され、円筒空間よりも内径が小さく設定された円筒形状を有する分級空間と、この分級空間の下流側に配置された前記製品排出口と、を備え、円筒空間の内壁面には、円周方向に沿って、多数の凹凸部が形成されている。
【0004】
この微粉砕装置によれば、所定の粒度にまで小さくなっていない粉末は、所定の粒度になるまで粉砕が行われ、所望の粒度にまで分級された製品が取り出される。
【0005】
また、ロータが収容される円筒空間の内壁面には、円周方向に沿って、多数の凹凸部が形成されている。ロータの周面に凹凸部が存在することで、原料と原料粉砕室の内壁面との衝突がさらに促進されることで、より微粉砕工程を高効率化することができるようにすると共に、熱の発生もかなり抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−201289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示される微粉砕装置は、10μm以下の微粉砕領域の微粉末を得る場合には適した構造であるが、粉砕の程度は20μm程度でもよいが、単位時間当たりの処理量を多くしたい場合には、効率がよくなかった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、微細化された粉末を得ることができると共に処理能力も高めることができる微粉砕装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る微粉砕装置は、
一端側に設けられる原料供給口と、他方側に設けられる製品排出口と、原料供給口から供給された原料を粉砕して製品排出口から排出させるための原料粉砕室と、この原料粉砕室内の上流側に配置される少なくとも1枚の薄板で形成されるロータと、このロータが収容される円筒空間と、この円筒空間よりも下流側に配置され、円筒空間よりも内径が小さく設定された形状を有する分級空間と、この分級空間の下流側に配置された前記製品排出口と、を備え、
前記ロータの回転により生じる気流により、原料同士もしくは原料と原料粉砕室の内壁面とを衝突させて粉砕を行う微粉砕装置において、
前記ロータは、所定の半径を有すると共に、円周方向に沿って複数の孔が形成された円盤部分と、この円盤部分の外周部から放射状に突出する多数のブレードにより構成され、
前記円筒空間の内壁面には、円周方向に沿って、前記ロータの軸芯と平行な多数の溝が、前記多数のブレードと面する位置に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
かかる構成による微粉砕装置の作用・効果を説明する。この微粉砕装置の原料粉砕室は、上流側に薄板で形成されるロータが配置されており、これを回転させることで高速気流を発生させる。この気流により、原料同士もしくは原料と原料粉砕室の内壁面とを衝突させることで粉砕を行うものであり、いわゆる気流粉砕を主としているものである。ロータが収容される円筒空間の下流側には、分級空間が設けられており、分級空間の内径は円筒空間よりも小さく設定されている。また、この分級空間の下流側に、製品排出口が設けられている。従って、所定の粒度にまで小さくなっていない粉末は、所定の粒度になるまで粉砕が行われる。これにより、所望の粒度にまで分級された製品が取り出される。また、原料粉砕室内に配置される主な部品は、ロータのみであり、分級機能などについては分級空間の形状などにより対応することができる。
【0011】
また、ロータが収容される円筒空間の内壁面には、円周方向に沿って、ロータの軸芯と平行な多数の溝がブレードと面する位置に形成されている。これにより、原料と原料粉砕室の内壁面との衝突が促進される。そして、前記ロータは、円周方向に沿って複数の孔が形成された円盤部分を有しており、この円盤部分から多数のブレードが突出するように形成される。このような円盤部分を構成することで、前述の先行技術の構成に比べて、ロータの強度を保持しながらも、より多くのブレードを形成することができ、処理能力の増大に寄与することができる。また、円盤部分の孔が形成されることで、軽量化を図るだけでなく、微細化されていない粗粉を通過させて、微細化を促進させるのにも寄与することができる。以上のように、微細化された粉末を得ることができると共に処理能力も高めることができる微粉砕装置を提供することができる。この点は、後述するように実験的にも確認することができた。
【0012】
本発明において、前記円筒空間の内壁面は、スリット状の孔が多数形成された帯状金属プレートにより構成されており、前記スリット状の孔が前記溝として機能するように構成したことが好ましい。
【0013】
ロータの軸芯と平行な多数の溝を形成する方法は種々考えられるが、上記のような帯状金属プレートにスリット状の孔が多数形成されたものを用いることで、コストを抑制しながら、溝を形成することができる。
【0014】
本発明において、前記帯状金属プレートの裏面側に、孔が形成されていない第2の帯状金属プレートが密着させられて一体化されていることが好ましい。
【0015】
かかる構成により、粉砕された微粉末が溝から脱出できないという不具合を抑制することができる。また、2つの金属プレートにより一体化することで組み立て作業性を向上させることができる。
【0016】
本発明において、前記円筒空間の内壁面は、前記溝が多数形成された帯状プレートにより構成されていることが好ましい。
【0017】
かかる構成により、単一の部材で溝を形成することも可能になり、組み立て作業性に資することができる。また、コンタミ防止,清掃の面において優れており、主に食品関係の微粉砕を行う時に有用である。
【0018】
本発明に係る前記溝は、前記ロータが配置される位置から、当該位置よりも上流側の位置にわたって設けられることが好ましい。
【0019】
この構成によると、ロータが配置される位置はもちろんのこと、ロータが配置されていない上流側にも溝が設けられる。
【0020】
ロータの上流側にも溝を設けることで、ロータによる微粉砕が始まる前に、高速渦流により、溝が形成された内壁面に原料をぶつけて衝撃を与え、微粉砕前の前処理の役割を果たすことができる。従って、処理能力を高めることができる。
【0021】
本発明に係る前記溝の幅に対して、前記ブレードの円周方向に沿った長さは、6〜9倍に設定され、前記ブレードの配列ピッチは20〜25倍に設定されていることが好ましい。
【0022】
溝の幅と、ロータに形成されるブレードの寸法関係には、適切な関係が存在するものと考えられる。実際に実験を行ってみたところ、後述するように、上記の関係に設定すれば、本発明の効果が得られるものと推定される。
【0023】
本発明において、前記円筒空間を構成するため、上流側に位置する第1本体部と、この第1本体部の下流側に位置すると共に、第1本体部に対して着脱可能に結合される第2本体部とを備え、
前記第1本体部の側に、前記ロータ及び前記溝が設けられると共に、前記第2本体部は、下流側へ行くほど内径が徐々に小さくなるように設定された内壁面を有していることが好ましい。
【0024】
円筒空間の内部は、適宜メンテナンスを行う必要がある。また、ロータ自体は、メンテナンスのほかに、仕様変更により別のロータに交換することもありうる。そこで、上記のように円筒空間を第1本体部と第2本体部により構成することで、メンテナンスや部品交換の作業性向上に資することができる。また、第2本体部は、下流側に行くほど内径が徐々に小さくなっており、分級空間への微粉末の移動も滞りなく行うことができる。
【0025】
本発明において、前記分級空間の外部に配置され、分級空間の上流側から分級空間の先端側をバイパスさせるバイパス経路と、
分級空間の内部に配置され、分級空間の前記先端側から前記分級空間の上流側へとつながる内部経路と、を設け、粉砕された原料のうち、バイパス経路側に排出された粗粉を前記内部経路を経由して、再び、分級空間内へ戻すように構成し、
前記分級空間内へ戻ってきた原料を前記ロータの前記複数の孔の方向へ向かわせるための案内手段を設けたことが好ましい。
【0026】
この構成によると、所定の粒度まで粉砕されていない粗粉は、バイパス経路と内部経路を経由して、再び分級空間の上流側に戻ってくる。所定の粒度にまで粉砕された微粉のみが、製品排出口から排出されるので、より均一な粒度の製品を得ることができる。なお、分級空間の上流側は、分級空間の先端側よりも上流に位置していればよい。そして、分級空間内へ戻ってきた原料は、案内手段によりロータの複数の孔の方向へ向かうように仕向けられる。これにより、粗粉の粉砕をさらに効率よく行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】微粉砕装置の外観を示す斜視図
【図2】微粉砕装置の内部構成を示す断面図
【図3A】ロータの形状を示す平面図
【図3B】別実施形態に係るロータの形状を示す平面図
【図4】ロータのブレードの部分を拡大した平面図
【図5】ロータのブレードの部分を拡大した回転軸方向に沿った断面図
【図6】溝を形成する貼り合わせのプレート体の構成例を示す図
【図7】溝の別実施形態に係る構成例を示す図
【図8】溝の別実施形態に係る構成例を示す図
【図9】実験データを示す図
【図10】実験データを示す図
【図11】実験データを示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る微粉砕装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、微粉砕装置の外観を示す斜視図であり、図2は微粉砕装置の内部構成を示す断面図である。
【0029】
<第1実施形態の構成>
まず、第1実施形態に係る微粉砕装置Aの構成について説明する。微粉砕装置Aは、略L字形の土台1の底部にコロ1aが設けられている。また、原料を供給する原料供給装置Bからの原料が供給されるホッパー2(原料供給口)と、ホッパー2から投入された原料を微粉末に粉砕する原料粉砕室3と粉砕された原料を製品として排出する製品排出口4とを備えている。製品排出口4から排出された製品は、ブロア21により吸引されて、ホース5を通ってサイクロン集塵装置20により集積される。
【0030】
なお、サイクロン装置内の負圧を解消し微粉末を集積しやすくするため、正圧用のコンプレッサー又はリングブロアーを接続してもよい。このコンプレッサーやリングブロアーは、粉砕された微粉末の除熱作用を行うことができる。
【0031】
図2に示すように、土台1の上に駆動本体部6が設けられており、その内部にはモータ7が設置されている。モータ7の回転軸7aは水平な状態に設定され、この回転軸7aの先端側には3枚のロータ8が取り付けられている。この3枚のロータ8の配置間隔は調整することができ、これにより、粉砕原料の特性に適した粉砕や粒度の調整を行うことができる。また、ロータ8の取り付け枚数も調整することができ、図2では3枚であるが、4枚あるいは5枚にして増やすこともできる。あるいは2枚にしてもよい。
【0032】
なお、モータ7とロータ8とは上記のように直結する構成ではなく、ベルトを介して駆動する方式を採用してもよく、ロータ8を駆動する機構については、種々の変形例が可能である。
【0033】
回転軸7aの先端部には、円錐台形状の案内部材7b(案内手段に相当)がネジ7cにより取り付けられている。案内部材7bは、テーパ面を有し、後述するように、粗粉をロータ8側に案内するように機能する。
【0034】
<ロータの構成>
ロータ8は、円筒形状を有する上流側の円筒空間S1Aに収容されており、円筒空間S1Aの内壁面10と、ロータ8の外周面との隙間はわずかな大きさ(例えば、3mm)になるように設定されている。
【0035】
図3Aは、ロータ8の形状を示す平面図である。ロータ8は、中心部に回転軸7aと連結する小判孔8aが形成されている。ロータ8は、所定の半径を有する円盤部分80と、この円盤部分80の円周部から放射状に突出する多数のブレード81が設けられている。円盤部分80は、所定ピッチ(45゜ピッチ)で孔8bが形成されている。孔8bの形状は、頂点が中心方向を向いた三角形状に形成される。孔8bを形成することで、ロータ8の強度を確保しながらも軽量化を図っている。また、孔8bを介して粉砕していない粗粉を通過させて、より粉砕効果を高めるようにしている。なお、ロータ8と回転軸7aとの結合方法は、小判孔8aを使用しない他の公知の手法を使用してもよい。
【0036】
孔8bと孔8bの間は腕部8cが形成されており、腕部8cの幅は、中心に近い根元側に行くほど太くなるように形成されている。ブレード81は、先端部の幅が狭く、根元側へ行くほど徐々に幅が大きくなるように形成されている。多数のブレード81は、円周方向に沿って所定のピッチ(6゜ピッチ)で形成されている。
【0037】
ロータ8の具体的な仕様を説明すると、好ましくは、ステンレスの板材により製作され、その厚みは4mm程度である。また、円盤部分80の直径はφ868mm、ブレード81の高さは60mm、ロータ8全体の直径はφ988mmである。また、ブレード81の先端部の幅は15mmである。なお、ブレード81の配列ピッチや配列個数、円盤部分80の直径の大きさ等は適宜変更することができる。また、円盤部分80の孔8bの形状や配列ピッチ及び個数も同様である。
【0038】
3枚のロータ8は、その刃部8bが同位相になるように構成してもよいし、位相をずらしながら結合してもよい。位相をずらせた方がより粒度を細かくすることができる。
【0039】
ロータ8と内壁面10の隙間寸法は、あまり狭すぎると発熱の原因となり、原料そのものが大きい場合にトラブル発生の原因となる。逆にあまり広すぎると粉砕効率が大幅に低下するという問題があるので、目標とする粒度に応じた適切な寸法が設定される。
【0040】
<ロータの別実施形態>
図3Bは、ロータ8の別実施形態を示す平面図である。図3Aに示す第1実施形態と基本的な構成は同じであるので、同じ図番を付して説明は省略する。この第2実施形態では、厚みは3mm程度である。また、円盤部分80の直径はφ451mm、ブレード81の高さは40mm、ロータ8全体の直径はφ531mmである。また、ブレードの先端部の幅は10mmである。ブレード81の配列ピッチは10゜である。
【0041】
これらロータ8の使い分けは、微粉砕装置の能力等に応じて行うことができる。例えば、原料の粉砕効率に併せてロータ8の配置個数やブレード81の数等を調整する。
【0042】
<溝の構成>
図4は、ロータ8のブレード81の部分を拡大した平面図である。図4に示すように、ロータ8のブレード81が向かい合う内壁面10には多数の溝10a(凹凸部)が形成される。図5は、ロータ8のブレード81の部分を拡大した回転軸方向に沿った断面図である。内壁面10は、2枚の帯状金属プレートを重ねて貼り合わせる(密着させる)ことで形成される。すなわち、図6に示すように、第1帯状金属プレート100と第2帯状金属プレート101を貼り合わせて、図6(c)に示すように円環状に形成することで、内壁面10を構成することができる。貼り合わせたものをプレート体102と称することとする。
【0043】
第1帯状金属プレート100には、長手方向(円周方向に対応)に沿って多数のスリット孔が形成され、これが溝10aとして機能する。溝10aの長手方向は、ロータ8の軸芯方向に平行になるように取り付けられる。第2帯状金属プレート101は、孔が形成されないプレートであり、その平面サイズは第1帯状金属プレート100と同じである。これらを貼り合わせることで、スリット孔の底が閉じた状態の溝10aになる。2枚のプレートを貼り合わせる方法としては、溶接、リベット、接着等の種々の方法で行うことができる。スリット孔の底が閉鎖されるので、原料が溝10aから逃げていかないように構成することができる。
【0044】
図5にも示すように、溝10aが形成されるのは、ブレード81と面する位置だけでなく、ロータ8の上流側にある円筒空間S1Aにも形成されている。図5には、溝10aがロータ8の軸芯方向に沿って3つ配置されていることになる。このような構成を採用しているのは、より粉砕効果を高め処理量を増加させるためである。図6に示すような貼り合わせのプレート体102を3つ軸芯方向に沿って配置することで、図5のような構成にすることができる。
【0045】
なお、それ以外の構成例として、図7(a)に示すように、より平面積の大きなプレートを用いてプレート体102を構成することができる。この場合、図7(b)に示すように、溝10aを軸芯方向に沿って3箇所形成するのではなく、長手方向の長さを更に伸ばした構成を採用してもよい。図6、図7に示す構成は溝10a(スリット孔)も含めて、金属のプレス加工で製作することができ、コスト的に有利な点がある。
【0046】
図8は、2枚の帯状金属プレートを用いるのではなく、1枚の帯状金属プレート103のみを用いた構成例である。溝10aはプレス加工ではなく、フライスによる切削、あるいは、鍛造により形成する。
【0047】
また、溝を有する凹凸部を特殊ライニングとして別に製作して、凹凸のない内壁面10に装着する形で形成してもよい。以上のように、内壁面10への溝10aの形成方法は、種々考えられるので、特定の製作方法に限定されるものではない。図8に示す構成は、コンタミ防止,清掃の面において優れており、主に食品関係の微粉砕を行う時に有用である。
【0048】
次に、溝10aの幅とピッチについて説明する。図4に示すように、溝10aの幅をw1、隣接する溝10aどうしの間隔をw2とする。本実施形態では、w1,w2は同じであり、w1=w2=2mmである。また、溝10aの深さw3=2mm程度である。ただし、これらの具体的な寸法は適宜変更可能である。好ましくは、w1=w2=1〜3mmであり、より好ましくはw1=w2=1.5〜2.5mmである。深さについても、w3=1〜3mmが好ましく、1.5〜2.5mmがより好ましい。なお、必ずしもw1=w2でなくてもよく、w1>w2あるいはw1<w2としてもよい。
【0049】
また、溝10aは、図4等に示すように、内壁面10の円周方向に沿って多数形成されている。図4の方向視(ロータ8の回転軸芯から見た方向)では、溝10aの配列形状は、矩形波のごとき形状を呈しているが、これに限定されるものではない。溝10aの形状は台形状でもよいし三角形状でもよい。丸味を帯びた形状にしてもよい。
【0050】
上記のような溝10a及びブレード81を形成することで、後述の実験結果でもわかるように、粒径の小さな微粉末を得ることができると共に、処理能力を高めることができた。このような溝10aとブレード81との組み合わせにより、原料粉砕室3内における圧力変動がより大きくなり、粉砕効率が飛躍的に向上したものと推定される。粉砕対象である原料が原料粉砕室3内に滞留する時間が短くなり、負荷や熱の発生を飛躍的に低減し、細かな微粉末を効率よく製造可能になった。
【0051】
ロータ8の前面側、すなわち、下流側にも円筒空間S1Bが設けられる。円筒空間S1Aを形成するために前述のプレート体102が設けられ、これが第1本体部B1を構成する。円筒空間S1Bを形成するために、第2本体部B2が設けられ、金属プレートの絞り加工により形成される。第2本体部B2は、その内壁面の内径が下流側に行くほど徐々に小さくなるように設定されている。具体的には、R状に形成された部分110を有する。
【0052】
第1本体部B1と第2本体部B2は、フランジ111を利用してボルト(不図示)により締結される。第1本体部B1は、駆動本体部6に対してボルトにより結合される。第2本体部B2は第1本体部B1に対してボルトを外せば取り外すことができる。すなわち、第2本体部B2は第1本体部B1に対して着脱可能である。これにより、内部のロータ8や内壁面10の清掃やメンテナンスを行うことができる。また、ロータ8の交換作業も容易に行うことができる。第1本体部B1と第2本体部B2の更に外側には、カバー部材112が取り付けられる。
【0053】
前述の円筒空間S1Bの下流側に隣接して分級空間Cが配置され、第1分級空間部S2、テーパ空間部S3,第2分級空間部S4の順番に、円筒空間S1A,S1Bと同芯に配置される。テーパ空間部S3は、下流側に行くほど内径が小さくなるようなテーパ状の内壁面11を有している。
【0054】
第1分級空間部S2は、円筒空間S1A,S1Bよりも内径の小さな円筒形を有している。第1分級空間部S2の内壁面12と、円筒空間S1Bの内壁面110との間には内径寸法において段差が設けられている。
【0055】
第2分級空間部S4は、第1分級空間部S2よりも内径の小さな円筒形状を有している。テーパ空間部S3により、両者の異なる内径をスムーズにつなげている。この第2分級空間部S4の先端部に製品排出口4が設けられており、製品排出口4の内径は第2分級空間部S4の内径よりも小さくなっている。製品排出口4及び各分級空間部S2,S4と同芯になるように配置されている。ただし、製品排出口4は、必ずしも各分級空間部S2,S4と同芯に配置しなくてもよい。
【0056】
以上のように、分級空間Cは下流側にいくほど内径が小さくなるように設定されており、所定の粒度にまで粉砕された製品のみが製品排出口4から排出可能に構成されている。
【0057】
さらに、第1分級空間部S2の外部には第1接続部15が設けられ、第2分級空間部S4の外部には製品排出口4としての第2接続部16が設けられる。また、第2分級空間部S4の先端部にも先端接続部17が設けられる。第1接続部15と先端接続部17の間にパイプ22が接続されており、このパイプ22によりバイパス経路Pが構成される。
【0058】
図1,2に示すように第1・第2接続部15,16は、分級空間部S2,S4、テーパ空間部S3の外部に接線方向に向けて形成される。分級空間部S2,S4では、粉砕された原料が回転しており、その回転方向に対応した接線方向としている。
【0059】
製品排出口4は、接線方向を向くように設けられ、製品排出口4にホース5が挿入される。接線方向を向くことで、スムーズに、粉砕された微粉末を取り出すことができる。
【0060】
製品排出口4(第2接続部17)は、上記のように配置する構成の他、先端接続部17が設けられている面と同じ面に設けてもよい。製品排出口4は、上記分級空間S2,S4、テーパ空間部S3の下流側に設けられていればよい。
【0061】
また、分級空間Sの内部であって、先端接続部17の内側に内部経路Qが取り付けられている。内部経路Qの左端部は、バイパス経路Pに連続しており、右端部は、開放されて分級空間Sにつながっている。
【0062】
内部経路Qの先端には、傘状に開いた出口部材24が取り付けられており、その内面は出口に向かうほど径が大きくなるテーパ面24aとなっている。このテーパ面24aが案内部材7bのテーパ面と向かい合うように配置される。
【0063】
原料を粉砕すると、所定の粒度にまで粉砕された微粉と所定の粒度にまで粉砕されていない粗粉が、分級空間S内に混在する。そこで、上記のようなバイパス経路Pを設けると、重量の大きな粗粉は、バイパス経路P側へ移動し、内部経路Qを経由して再び分級空間S内に戻ってくるようにしている。再び戻ってきた粗粉は案内部材7bにより、ロータ8の孔8bの方向へと導かれる。これにより、粗粉は再び原料粉砕室3において粉砕処理が施される。
【0064】
これにより、粗粉が製品排出口4から排出することを防止し、確実に粉砕された微粉のみが製品排出口4から排出されるようにする。
【0065】
先端接続部17及び内部経路Qは、分級空間Sの軸中心と同芯となるように配置される。これにより、戻ってきた粗粉を効率よく再粉砕して微粉化することができる。また、製品排出口4は、先端接続部17に隣接した周囲に配置される。ただし、製品排出口4と、先端接続部17の配置については、これに限定されるものではない。先端接続部17及び内部経路Qは、分級空間Sの軸中心と同芯に配置しなくてもよい。
【0066】
図1に示すように、補助経路23が設けられ、主経路(第1接続部15のすぐ近傍の通路)と合流点Dにおいて合流している。主経路はパイプ22と合わせてバイパス経路Pとして機能する。補助経路23には、不図示のリングブロアーが接続されており、矢印の方向にエアーを送り込んでいる。例えば、冷却エアーを送り込むことで温度の調節などを行なうことができる。なお、補助経路23は必ずしも必要なものではなく、設けなくてもよい。
【0067】
この構成によると、粗粉を確実に微粉砕して排出することができ、所望の粒度の製品を確実に得ることができる。第1接続部15からバイパス経路Pへと排出された粗粉は、負圧の作用により図示の矢印方向に導かれ、確実に分級空間S内へと戻される。上記のリングブロアーを用いれば、より確実に粗粉を戻すことができる。
【0068】
<動作>
次に、本発明に係る微粉砕装置Aの動作について説明する。製品排出口4に接続されたブロアにより吸引動作を行うと共に、ロータ8を高速回転させる。ロータ8の高速回転に伴い負圧が発生し、モータ7側に引かれようとする力と、ブロア21による吸引力とがせめぎ合う形になるが、ブロア21の吸引力の方が大きくなるように設定されている。
【0069】
これにより、投入された原料は、高速気流により原料同士の衝突と原料と内壁面10との衝突を繰り返すことで、徐々に粉砕されていく。原料は、ロータ8と内壁面10の間の隙間、及び、ロータ8とロータ8の間を通って下流側へと流れていく。
【0070】
また、内壁面10には溝10aが形成されており、前述のように、より粒径の小さな微粉末を得ることができた。また、溝10aを設けることで、表面積が増加し、放熱効果を高めることができる。例えば、原料が米である場合、分級空間を構成するフレームの温度が最大で90℃まで上昇することがあったが、溝10aを設けることで、最大40〜50℃までしか上昇しなくなった。
【0071】
また、溝10aのない構成だと、ロータ8の回転数をある一定値まで上げると、それ以上上げても回収された微粉末の粒度に変化は見られなかったが、溝10aを設けることで、回転数をさらに上げることで、より細かな粒度にすることができた。
【0072】
ロータ8の下流側の分級空間Sにおいても、高速気流により渦流が発生し、この渦流により生じる遠心力により、粉砕が不十分な原料は、内壁面11,12,13の方向に吹き飛ばされ、十分に粉砕された原料のみが中央の製品排出口4から排出される。内壁面12と内壁面13は、段差面となっており、粉砕不十分な原料が製品排出口4から不用意に排出されていかないようにしている。これにより、所望の粒度にまで粉砕された原料のみが製品として取り出されることになり、均一な微粉末を得ることができる。
【0073】
<作用・効果>
本発明の微粉砕装置Aによれば、気流式の粉砕であるため、温度上昇を極力抑えることができる。また、金属同士の衝突部がないため金属粉が混入することがなく、故障が生じにくい構造となっている。
【0074】
粒度の調整は、前述のロータ8の間隔設定のほかに、ロータ8の回転数、ブレード81の配列個数、ピッチ、形状、溝10aのサイズ、個数、配列ピッチ、ブロア21の吸引風量の調整などにより行うことができ、きわめて簡単な作業で粒度の調整を行うことができる。また、ロータ8は厚さ数mm程度の薄板円盤状に形成することができるので、ロータ8を軽量にすることができ、これを駆動するための動力設備も小型化することができる。
【0075】
本発明に係る微粉砕装置Aは、原料粉砕室内の構造が簡単であり、分解清掃などのメンテナンスを容易に行うことができ、装置自体のコストも抑制することができる。また、装置全体の大きさもコンパクトであり、広い設置場所を必要としない。
【0076】
本発明においては、気流式の粉砕であり、機械的粉砕が困難とされている大豆などの比較的油分を多く含んだ原料でも均一に粉砕することができる。また、投入された原料は、瞬時に粉砕されて製品排出口4から排出されるため、風味を損なうなどの原料の変質を起こしにくいという利点も有している。
【0077】
本発明に係る微粉砕装置Aによれば、所望の粒度の微粉末のみが排出される構造であるから、1パスでシングルミクロンサイズ、サブミクロンサイズの粉砕が可能である。
【0078】
<実験結果>
次に、本実施形態に係る微粉砕装置を用いて、実際に粉砕を行ったデータを示す。図9は、米を粉砕した時の粒度分布を示し、グラフの横軸は粒子径(μm)縦軸は体積(%)を示す。処理量は(60kg/hr−7.5kwモーター)であり、特許文献1に示す従来のロータを使用したものに比べて、処理量が4倍に増えた。
【0079】
図10は、破砕米を粉砕した時のデータを示す。この場合の処理量は50kg/hr−2.2kwモーターであった。図11は、煎茶を破砕した時のデータを示す。この場合の処理量は80kg/hrであった。従来のロータを使用したものに比べて、処理量は1.5〜2倍に増加した。
【0080】
<別実施形態>
本発明に係る微粉砕装置により粉砕される原料については、特に限定されるものではないが、緑茶、紅茶、コーヒー豆、大豆、小豆、米、海苔などの食品には特に好適である。また、食品以外の樹脂等の粉砕にも応用することができる。
【0081】
本実施形態では、3つの分級空間部が形成されているが、この設定個数については適宜決めることができる。この個数に応じてバイパス経路Pを形成するための接続部の設定個数も変更することができる。また、各分級空間部において、内壁面をテーパ面にするか段差にするかは、適宜決めることができる。さらに、テーパ面とする場合のテーパ角度も適宜設定することができる。また、直線的なテーパ面ではなく、曲面で構成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
3 原料粉砕室
4 製品排出口
7b 案内部材
8 ロータ
8a 小判孔
8b 孔
10 内壁面
80 円盤部分
81 ブレード
A 微粉砕装置
B 原料供給装置
S 分級空間
S1 円筒空間
S2 テーパ空間部
S3 第1分級空間部
S4 第2分級空間部
P バイパス経路
Q 内部経路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に設けられる原料供給口と、
他方側に設けられる製品排出口と、
原料供給口から供給された原料を粉砕して製品排出口から排出させるための原料粉砕室と、
この原料粉砕室内の上流側に配置される少なくとも1枚の薄板で形成されるロータと、
このロータが収容される円筒空間と、
この円筒空間よりも下流側に配置され、円筒空間よりも内径が小さく設定された形状を有する分級空間と、
この分級空間の下流側に配置された前記製品排出口と、を備え、
前記ロータの回転により生じる気流により、原料同士もしくは原料と原料粉砕室の内壁面とを衝突させて粉砕を行う微粉砕装置において、
前記ロータは、所定の半径を有すると共に、円周方向に沿って複数の孔が形成された円盤部分と、この円盤部分の外周部から放射状に突出する多数のブレードにより構成され、
前記円筒空間の内壁面には、円周方向に沿って、前記ロータの軸芯と平行な多数の溝が、前記多数のブレードと面する位置に形成されていることを特徴とする微粉砕装置。
【請求項2】
前記円筒空間の内壁面は、スリット状の孔が多数形成された帯状金属プレートにより構成されており、前記スリット状の孔が前記溝として機能するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の微粉砕装置。
【請求項3】
前記帯状金属プレートの裏面側に、孔が形成されていない第2の帯状金属プレートが密着させられて一体化されていることを特徴とする請求項2に記載の微粉砕装置。
【請求項4】
前記円筒空間の内壁面は、前記溝が多数形成された帯状プレートにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の微粉砕装置。
【請求項5】
前記溝は、前記ロータが配置される位置から、当該位置よりも上流側の位置にわたって設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粉砕装置。
【請求項6】
前記溝の幅に対して、前記ブレードの円周方向に沿った長さは、6〜9倍に設定され、前記ブレードの配列ピッチは20〜25倍に設定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微粉砕装置。
【請求項7】
前記円筒空間を構成するため、上流側に位置する第1本体部と、この第1本体部の下流側に位置すると共に、第1本体部に対して着脱可能に結合される第2本体部とを備え、
前記第1本体部の側に、前記ロータ及び前記溝が設けられると共に、前記第2本体部は、下流側へ行くほど内径が徐々に小さくなるように設定された内壁面を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の微粉砕装置。
【請求項8】
前記分級空間の外部に配置され、分級空間の上流側から分級空間の先端側をバイパスさせるバイパス経路と、
分級空間の内部に配置され、分級空間の前記先端側から前記分級空間の上流側へとつながる内部経路と、を設け、粉砕された原料のうち、バイパス経路側に排出された粗粉を前記内部経路を経由して、再び、分級空間内へ戻すように構成し、
前記分級空間内へ戻ってきた原料を前記ロータの前記複数の孔の方向へ向かわせるための案内手段を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の微粉砕装置。
【請求項1】
一端側に設けられる原料供給口と、
他方側に設けられる製品排出口と、
原料供給口から供給された原料を粉砕して製品排出口から排出させるための原料粉砕室と、
この原料粉砕室内の上流側に配置される少なくとも1枚の薄板で形成されるロータと、
このロータが収容される円筒空間と、
この円筒空間よりも下流側に配置され、円筒空間よりも内径が小さく設定された形状を有する分級空間と、
この分級空間の下流側に配置された前記製品排出口と、を備え、
前記ロータの回転により生じる気流により、原料同士もしくは原料と原料粉砕室の内壁面とを衝突させて粉砕を行う微粉砕装置において、
前記ロータは、所定の半径を有すると共に、円周方向に沿って複数の孔が形成された円盤部分と、この円盤部分の外周部から放射状に突出する多数のブレードにより構成され、
前記円筒空間の内壁面には、円周方向に沿って、前記ロータの軸芯と平行な多数の溝が、前記多数のブレードと面する位置に形成されていることを特徴とする微粉砕装置。
【請求項2】
前記円筒空間の内壁面は、スリット状の孔が多数形成された帯状金属プレートにより構成されており、前記スリット状の孔が前記溝として機能するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の微粉砕装置。
【請求項3】
前記帯状金属プレートの裏面側に、孔が形成されていない第2の帯状金属プレートが密着させられて一体化されていることを特徴とする請求項2に記載の微粉砕装置。
【請求項4】
前記円筒空間の内壁面は、前記溝が多数形成された帯状プレートにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の微粉砕装置。
【請求項5】
前記溝は、前記ロータが配置される位置から、当該位置よりも上流側の位置にわたって設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粉砕装置。
【請求項6】
前記溝の幅に対して、前記ブレードの円周方向に沿った長さは、6〜9倍に設定され、前記ブレードの配列ピッチは20〜25倍に設定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微粉砕装置。
【請求項7】
前記円筒空間を構成するため、上流側に位置する第1本体部と、この第1本体部の下流側に位置すると共に、第1本体部に対して着脱可能に結合される第2本体部とを備え、
前記第1本体部の側に、前記ロータ及び前記溝が設けられると共に、前記第2本体部は、下流側へ行くほど内径が徐々に小さくなるように設定された内壁面を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の微粉砕装置。
【請求項8】
前記分級空間の外部に配置され、分級空間の上流側から分級空間の先端側をバイパスさせるバイパス経路と、
分級空間の内部に配置され、分級空間の前記先端側から前記分級空間の上流側へとつながる内部経路と、を設け、粉砕された原料のうち、バイパス経路側に排出された粗粉を前記内部経路を経由して、再び、分級空間内へ戻すように構成し、
前記分級空間内へ戻ってきた原料を前記ロータの前記複数の孔の方向へ向かわせるための案内手段を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の微粉砕装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−183475(P2012−183475A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47927(P2011−47927)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(507037666)ミクロパウテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(507037666)ミクロパウテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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