説明

微粒子の製造方法

【課題】両親媒性物質により安定化された分散体から効率的に微粒子を製造する方法を提供する。
【解決手段】両親媒性物質により安定化された微粒子が溶媒に分散してなる分散体に対し、前記両親媒性物質を分解する酵素を添加することにより、前記両親媒性物質の一部又は全部を分解する工程を含むことを特徴とする微粒子の製造方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性物質を含む分散体から微粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インキ、化粧品、医薬品等の分野における微粒子の製造では、溶媒中において両親媒性物質により安定化された分散体を調製し、その分散体から目的とする微粒子を回収する手法が多くで採用されている。上記分散体では、両親媒性物質による分散安定化作用が強いほど凝集等を防止して所望の微粒子を確実に得ることが可能となる。
【0003】
しかしながら、分散体から微粒子を回収するに当たっては、一般に濃縮、精製及び単離という一連のプロセスが実施しなければならない。すなわち、両親媒性物質による分散安定化作用が強いほど、濃縮、精製及び単離という一連のプロセスの実施が困難となる。これでは微粒子を効率的に製造することは困難であるため、より効率的な製造方法の開発が切望されている。
【特許文献1】特開平7−216466号公報
【特許文献2】特開平11−71409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の主な目的は、両親媒性物質により安定化された分散体から効率的に微粒子を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の物質を分散体に添加する工程を採用することによって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の微粒子の製造方法に係る。
1. 溶媒中で両親媒性物質により安定化された微粒子が分散してなる分散体に対し、前記両親媒性物質を分解する酵素を添加することにより、前記両親媒性物質の一部又は全部を分解する工程を含むことを特徴とする微粒子の製造方法。
2. 分散体が、1)発色剤(電子供与性呈色性有機化合物)、顕色剤(電子受容性化合物)及び減感剤を含む熱変色性組成物が溶媒中に分散してなる分散体又は2)前記組成物を内包したマイクロカプセルが溶媒中に分散してなる分散体である、前記項1に記載の製造方法。
3. 溶媒が水又は水系溶媒である、前記項1又は2に記載の製造方法。
4. 両親媒性物質が、多糖類及びタンパク質の少なくとも1種である、前記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5. 溶媒の一部又は全部を除去する工程をさらに有する、前記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6. 溶媒中で両親媒性物質により安定化された微粒子が分散してなる分散体に対し、前記両親媒性物質を分解する酵素を添加することにより、前記両親媒性物質の一部又は全部を分解する工程を含むことを特徴とする微粒子の精製方法。
7. 溶媒中で両親媒性物質により安定化された微粒子が分散してなる分散体に対し、前記両親媒性物質を分解する酵素を添加することにより、前記両親媒性物質の一部又は全部を分解する工程を含むことを特徴とする微粒子の回収方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、両親媒性物質により安定化された微粒子が溶媒に分散してなる分散体において、その両親媒性物質を分解できる酵素を用いるので、その後の回収工程を効率的に行うことができる。すなわち、本発明は、特定の両親媒性物質と酵素との組み合わせを導入することによって、効率的な微粒子の製造を実現することができる。
【0008】
本発明の製造方法は、例えばインキ、食品、医薬品、化粧品等をはじめとする各種の微粒子製造分野において好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の微粒子の製造方法は、溶媒中で両親媒性物質により安定化された微粒子が分散してなる分散体に対し、前記両親媒性物質を分解する酵素を添加することにより、前記両親媒性物質の一部又は全部を分解する工程を含むことを特徴とする。
【0010】
微粒子
微粒子は、無機系(金属系も含む。)又は有機系のいずれの微粒子であっても良い。また、固体微粒子、液体微粒子又はこれらの混合物のいずれであっても良い。
【0011】
用途としては、例えば染料又は顔料、医薬品、食品、化粧品、その他の化学品等のいずれであっても良い。
【0012】
微粒子の平均粒径は特に限定されないが、通常は0.01〜100μmの範囲内(好ましくは0.1〜10μm)で適宜設定することができる。
【0013】
分散体
分散体の形態は、特に限定されず、例えばサスペンション、エマルション等のいずれの形態であっても良い。
【0014】
分散体の調製方法も制限されず、公知の方法で調製された分散体を用いることができる。例えば、1)両親媒性物質の存在下で乳化法により調製された有機化合物粒子分散体(乳化物)、2)両親媒性物質の存在下で乳化重合又は懸濁重合により調製された高分子粒子分散体、3)両親媒性物質(保護コロイド)存在下で調製された無機化合物粒子分散体、4)両親媒性物質(保護コロイド)存在下で調製された高分子壁マイクロカプセル分散体、5)両親媒性物質(保護コロイド)存在下で析出した結晶性粒子分散体等が挙げられる。
【0015】
分散体の媒体は、公知の溶媒のいずれも適用可能である。本発明では、特に水又は水系溶媒が好ましい。水系溶媒としては、例えば水と水溶性有機溶剤(エタノール等)との混合液(混合溶液)が挙げられる。
【0016】
また、分散体の用途は制限されないが、特にインキ用分散体を好適に用いることができる。例えば、特開昭60−99695号、特開昭60−152586号、特開昭61−233583号、特開昭61−261389号、特開昭61−16980号、特開平6−65568号等で開示されているように、熱変色性組成物をホモミキサー等により乳化してなるエマルションも前記分散体として適用することができる。その他にも、特開平6−65568号に開示されたマイクロカプセルを前記分散体として適用することができる。具体的には、、1)発色剤(電子供与性呈色性有機化合物)、顕色剤(電子受容性化合物)及び減感剤を含む熱変色性組成物が溶媒中に分散してなるエマルション又は2)前記組成物を内包したマイクロカプセルが溶媒中に分散してなるスラリー(以下両者を併せて「インキ分散体」とも言う。)を前記分散体として好適に用いることができる。これらのインキ分散体も、公知のものを用いることができる。
【0017】
両親媒性物質としては、公知のものを使用することができる。例えば、タンパク質、多糖類及び界面活性剤の少なくとも1種を用いることができる。1)タンパク質(その変性物も含む)として、例えばゼラチン、フタル化ゼラチン、グルテン、アルブミン、加水分解コラーゲン、カゼイン等、2)多糖類(その変性物も含む)として、例えばアラビアガム、デキストリン、アルギン酸、リン酸化デンプン、カルボキシメチルセルロース、3)界面活性剤(陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤)として、例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン付加ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン付加ソルビットエステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル系界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、好ましくは非イオン系界面活性剤を除く。
【0018】
これらの両親媒性物質は、分散体の種類等に応じて、1種又は2種以上で用いることができる。例えば、分散体として前記インキ分散体を用いる場合は、特に、多糖類及びタンパク質の少なくとも1種を好ましく用いることができ、特にゼラチン及びアラビアガムの少なくとも1種がより好ましい。
【0019】
両親媒性物質は、そのまま形態で使用することができるが、水溶液等の形態で使用しても良い。
【0020】
両親媒性物質の使用量は、用いる両親媒性物質の種類等に応じて適宜設定できるが、通常は溶媒中1〜30重量%の範囲内で好適に用いることができる。
【0021】
酵素の添加
本発明では、両親媒性物質を分解する酵素を添加することにより、両親媒性物質の一部又は全部を分解する。
【0022】
酵素は、前記両親媒性物質を分解する酵素を用いる。すなわち、前記で例示した両親媒性物質を基質として加水分解反応又は酸化還元反応により分解反応を触媒する酵素(酵素製剤)を用いることができる。従って、用いる酵素の種類は、公知又は市販のものから、用いる両親媒性物質の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、1)用いる両親媒性物質がタンパク質であれば、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)、ペプチド分解酵素(ペプチターゼ)等、2)用いる両親媒性物質が多糖類であれば、セルラーゼ(セルロース分解酵素)、デンプン分解酵素(アミラーゼ)、デキストリン分解酵素(デキストラナーゼ)、グルコース分解酵素(グルコシターゼ)等、3)用いる両親媒性物質がエステル系界面活性剤であれば、エステラーゼ(エステル分解酵素)等、4)用いる両親媒性物質が酸化還元反応により分解する界面活性剤であれば、酸化還元酵素(デヒドロゲナーゼ、レダクターゼ、オキシターゼ等を使用することができる。
【0023】
酵素の添加量は、用いる両親媒性物質の種類及び使用量によるが、通常は両親媒性物質1重量部に対して0.001〜10重量部、特に0.01〜1重量%とすることが好ましい。かかる範囲内に設定することによって、酵素による両親媒性物質の分解を効果的に進行させることができる。
【0024】
その他にも、前記酵素の作用を妨げない範囲内で公知の添加剤を分散体に配合することができる。例えば、pH調整剤、凝集剤、無機塩類、乾燥凝集防止剤等を添加することができる。これらは、両親媒性物質1重量部に対して0.02〜200重量部、特に0.2〜20重量部とすることが好ましい。この範囲内に設定すれば、特に分散体として前記インキ分散体を用いる場合には、メジウムや成型用樹脂に配合した際に生じ得るブリードあるいは乾燥時のマイクロカプセルの凝集をより効果的に防止することができる。
【0025】
分解反応条件は、用いる分散体の種類、酵素の種類・使用量等により異なる。反応温度は、一般的には0〜100℃程度、好ましくは30〜50℃とすれば良い。反応時間は、数分〜数時間程度、好ましくは1〜48時間とすれば良い。酵素の添加により両親媒性物質が分解したことは、例えば分散体の粘度、粒子の沈降状態等の観察により確認することができる。
【0026】
また、本発明では、酵素の添加に先立って、洗浄(液の入れ替え)を促進するために分散液を希釈しても良い。希釈度は、分散液の種類等に応じて適宜設定すれば良い。
【0027】
さらに、酵素の添加に先立って、予め分散液のpH調整を行うこともできる。例えば、酵素として至適pHが7.0のものを用いる場合は、pHを5.0〜9.0の範囲に調節することが望ましい。かかるpH調整により酵素反応の効率が上がる。pH調整は、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム等の公知のpH調整剤を使用すれば良い。
【0028】
酵素の添加後、必要に応じて乾燥凝集防止剤としてノニオン系界面活性剤を添加することもできる。ノニオン系界面活性剤の添加により乾燥時の粒子どうしの凝集を防止することができる。ノニオン系界面活性剤としては、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル等のエーテル型、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル型、ポリオキシエチレンアルキルアミド等のアルカノールアミド型等を挙げることができる。
【0029】
ノニオン系界面活性剤の添加量は、通常は両親媒性物質1重量部に対して0.02〜200重量部、特に0.2〜20重量部とすることが好ましい。
【0030】
微粒子の回収等
本発明では、酵素を添加することにより両親媒性物質を分解した後の工程は特に限定されない。例えば、遠心分離、ろ過、デカンテーション、蒸留等の固液分離法によって溶媒の全部を取り除いて粉体として回収することができる。また、これらの方法により溶媒の一部を取り除いて濃縮液としても良い。これらの固液分離方法は、いずれも公知の方法に従って実施することができる。また、これらの固液分離方法を実施するに先立って、予め凝集剤を添加することもできる。
【0031】
<実施の形態>
以下に、本発明の実施の形態の具体例として、1)発色剤(電子供与性呈色性有機化合物)、顕色剤(電子受容性化合物)及び減感剤を含む熱変色性組成物が溶媒中に分散してなる分散体又は2)前記組成物を内包したマイクロカプセルが溶媒中に分散してなる分散体を用いた場合について説明する。
1−1.熱変色性組成物
電子供与性呈色性有機化合物
電子供与性呈色性有機化合物(発色剤)としては、電子受容性化合物(顕色剤)と反応して呈色するものであれば限定されず、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、下記の化合物を好適に用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0032】
(1)フルオラン類…2’−[(2−クロロフェニル)アミノ]−6’−(ジブチルアミノ)−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジメチルアミノベンゾ(a)−フルオラン、3−アミノ−5−メチルフルオラン、2−メチル−3−アミノ−6,7−ジメチルフルオラン、2−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、6’−(エチル(4−メチルフェニル)アミノ−2’−(N−メチルフェニルアミノ)−スピロ(イソベンゾフラン1(3H),9’−(9H)キサンテン)−3−オン等;
(2)フルオレン類…3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオレンスピロ(9.3’)−4’−アザフタリド、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオレンスピロ(9.3’)−4’,7‘−ジアザフタリド等;
(3)ジフェニルメタンフタリド類…3,3−ビス−(p−エトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)フタリド等;
(4)ジフェニルメタンアザフタリド類…3,3−ビス−(1−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド等;
(5)インドリルフタリド類…3,3−ビス(n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド等;
(6)フェニルインドリルフタリド類…3−(1−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド等;
(7)フェニルインドリルアザフタリド類…3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−[2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル]−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド等;
(8)スチリルキノリン類…2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン等;
(9)ピリジン類…2,6−ジフェニル−4−(6−ジメチルアミノフェニル)ビリジン、2,6−ジエトキシ−4−(4−ジエチルアミノフェニル)ピリジン等;
(10)キナゾリン類…2−(4−N−メチルアニリノフェニル)−1−フェノキシキナゾリン、2−(4−ジメチルアミノフェニル)−4−(1−メトキシフェニルオキシ)キナゾリン等;
(11)ビスキナゾリン類…4,4’−(エチレンジオキシ)−ビス[2−(1−ジエチルアミノフェニル)キナゾリン]、4,4’−(エチレンジオキシ)−ビス[2−(1−ジ−n−ブチルアミノフェニル)キナゾリン]等;
(12)エチレノフタリド類…3,3−ビス[1,1−ビス−(p−ジメチルアミノフェニル)エチレノ−3]フタリド等;
(13)エチレノアザフタリド類…3,3−ビス[1,1−ビス−(p−ジメチルアミノフェニル)エチレノ−2]−4−アザフタリド、3,3−ビス[1,1−ビス−(p−ジメチルアミノフェニル)エチレノ−2]−4,7−ジアザフタリド等;
(14)トリフェニルメタンフタリド類…クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン等;
(15)ポリアリールカルビノール類…ミヒラーヒドロール、クリスタルバイオレットカルビノール、マラカイトグリーンカルビノール等;
(16)ロイコオーラミン類…N−(2,3−ジクロロフェニニル)ロイコオーラミン、N−ベンゾイルオーラミン、N−アセチルオーラミン等;
(17)ローダミンラクタム類…ローダミンβラクタム等;
(18)インドリン類…2−(フェニルイミノエチリデン)−3,3−ジメチルインドリン等;
(19)スピロピラン類…N−3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、8−メトキシ−N−3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン等;
また、本発明では、これらのほか、ジアザローダミンラクトン類、キサンテン類等も使用することができる。
【0033】
本発明では、これら電子供与性呈色性有機化合物のうちフルオラン類の少なくとも1種を好適に用いることができる。特に、2’−[(2−クロロフェニル)アミノ]−6’−(ジブチルアミノ)−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オンがより好ましい。
【0034】
電子供与性呈色性有機化合物の含有量は、その化合物の種類等に応じて適宜設定できるが、一般的には本発明の熱変色性組成物中0.1〜50重量%程度、特に0.8〜15重量%とすることが望ましい。前記含有量が0.1重量%未満の場合は発色濃度が低くなるおそれがある。また、上記含有量が50重量%を超える場合は地発色が大きくなるおそれがある。
【0035】
電子受容性化合物
電子受容性化合物としては、限定的でなく、公知又は市販のものを適宜使用することができる。例えば、下記の化合物を好適に用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0036】
(1)フェノール類…ビスフェノールA又はその誘導体、ビスフェノールS又はその誘導体、p−フェニルフェノール、ドデシルフェノール、o−ブロモフェノール、p−オキシ安息香酸エチル、没食子酸メチル、フェノール樹脂等
(2)フェノール類の金属塩…フェノール類のNa、K、Li、Ca、Zn、Al、Mg、Ni、Co、Sn、Cu、Fe、Ti、Pb、Mo等の金属塩等
(3)芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸類…フタル酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸等
(4)カルボン酸類の金属塩…オレイン酸ナトリウム、サリチル酸亜鉛、安息香酸ニッケル等
(5)酸性リン酸エステル類…ブチルアシッドフォスフェート、2−エチルヘキシル−アシッドフォスフェート、ドデシルアシッドフォスファイト
(6)酸性リン酸エステル類の金属塩…酸性リン酸エステル類のNa、K、Li、Ca、Zn、Al、Mg、Ni、Co、Sn、Fe、Ti、Pb、Mo等の金属塩等
(6)トリアゾール化合物…1,2,3−トリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール等
(7)チオ尿素及びその誘導体…ジフェニルチオ尿素、ジ−o−トルイル尿素等
(8)ハロヒドリン類…2,2,2−トリクロロエタノール、1,1,1−トリブロモ−2−メチル−2−プロパノール、N−3−ピリジル−N’−(1−ヒドロキシ−2,2,2−トリクロロエチル)尿素等
(9)ベンゾチアゾール類…2−メルカプトベンゼンチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾールのZn塩等
本発明では、これら電子受容性化合物のうちフェノール類及びその金属塩の少なくとも1種を好適に用いることができる。特に、1)ビスフェノールA及びその誘導体ならびに2)ビスフェノールS及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、最も好ましくは2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0037】
電子受容性化合物の含有量は、その化合物の種類等に応じて適宜設定できるが、一般的には本発明の熱変色性組成物中0.05〜98重量%程度、特に0.5〜77重量%とすることが望ましい。前記含有量が0.05重量%未満の場合は発色濃度が低くなるおそれがある。また、上記含有量が98重量%を超える場合は地発色が大きくなるおそれがある。
【0038】
また、本発明では、電子供与性呈色性有機化合物との関係では、電子供与性呈色性有機化合物1重量部に対して電子受容性化合物0.1〜100重量部、特に0.5〜20重量部とすることが好ましい。
【0039】
減感剤
減感剤は、公知又は市販のものを使用できる。具体的には、下記に示す減感剤を例示することができる。
【0040】
(1)アルコール類…n−セチルアルコール、n−オクチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ヘキシレングリコール等
(2)エステル類…ミリスチン酸エステル、ラウリン酸エステル、フタル酸ジオクチル、ラウリン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル等
(3)ケトン類…メチルヘキシルケトン、ベンゾフェノン、ステアロン等
(4)エーテル類…ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジステアリルエーテル等
(5)酸アミド化合物類…オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ラウリン酸N−オクチルアミド、カプロン酸アニリド等
(6)炭素数6以上の脂肪酸…ラウリン酸、ステアリン酸、2−オキシミリスチン酸等
(7)芳香族化合物…ジフェニルメタン、ジベンジルトルエン、プロピルジフェニル、イソプロピルナフタリン、1,1,3−トリメチル−3−トリル−インダン、ドデシルベンゼン等
(8)チオール類…n−デシルメルカプタン、n−ミリスチルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン、イソセチルメルカプタン、ドデシルベンジンメルカプタン等
(9)スルフィド類…ジ−n−オクチルスルフィド、ジ−n−デシルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジエチルフェニルスルフィド、ジラウリルジチオプロピオネート等
(10)ジスルフィド類…ジ−n−オクチルジスルフィド、ジ−n−デシルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジナフチルジスルフィド等
(11)スルホキシド類…ジエチルスルホキシド、テトラメチレンカルボキシド、ジフェニルスルホキシド等
(12)スルホン類…ジエチルスルホン、ジブチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジベンジルスルホン等
(13)アゾメチン類…ベンジリデンラウリルアミン、p−メトキシベンジリデンラウリルアミン、ベンジリデンp−アニシジン等
(14)脂肪酸一級アミン類…オレイン酸ステアリルアミン、ステアリン酸ミリスチルアミン、ベヘニン酸ステアリルアミン等
これらの中でも、エステル類が好ましく、特にラウリン酸ステアリル及びバルミチン酸ステアリルの少なくとも1種がより好ましい。
【0041】
減感剤の含有量(合計量)は、その化合物の種類等に応じて適宜設定できるが、一般的には本発明の熱変色性組成物中1〜99重量%程度、特に19〜99重量%とすることが望ましい。前記含有量が1重量%未満の場合は地発色が大きくなるおそれがある。また、上記含有量が99重量%を超える場合は発色濃度が低くなるおそれがある。
【0042】
その他の成分
本発明の熱変色性組成物では、必要に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、非熱変色性顔料、非熱変色性染料、蛍光増白剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、溶剤、増粘剤等の公知の添加剤を組成物中に配合しても良い。
【0043】
熱変色性組成物の製造方法
熱変色性組成物は、これらの成分を攪拌機、ミキサー、ホモジナイザー等の公知の混合機に投入し、均一に混合することによって調製することができる。この場合、加熱しながら混合することが好ましい。加熱温度は限定的ではないが、通常は120〜180℃程度とすれば良い。
1−2.マイクロカプセル
本発明は、前記の熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包してなる熱変色性マイクロカプセルにも適用することができる。このマイクロカプセルは、内容物として本発明の熱変色性組成物を用いるほかは、公知のマイクロカプセルと同様の構造を採用することができる。例えば、熱変色性組成物を含む内容物を壁膜により内包してなるマイクロカプセルが挙げられる。
【0044】
内容物としては、熱変色性組成物のほか、必要に応じて溶剤(溶解助剤)、乳化剤等か含まれていて良い。
【0045】
熱変色性組成物の含有量は限定的ではないが、一般的にはマイクロカプセルを100重量%とすると6〜98重量%程度、特に75〜95重量%とすることが望ましい。
【0046】
溶剤としては、熱変色性組成物と壁膜原料とを均一に溶解させることができ、熱変色性能を阻害しないものである限り、公知の溶剤から適宜選択することができる。特に、後工程で取り除けるものが望ましい。例えば、エステル系溶剤(但し、前記(1)(2)の化合物を除く。)、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤、含窒素系溶剤、シリコン系溶剤、含ハロゲン系溶剤等が使用できる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0047】
乳化剤としては、内容物を水中で乳化する際に油滴表面に吸着して安定化させる両親媒性物質を用いる。これらは公知の乳化剤から採用することができる。例えば、水溶性天然高分子、水溶性合成高分子、界面活性剤、無機微粒子等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。乳化剤は、壁膜を構成する樹脂成分の種類等に応じて適宜決定することができる。例えば、樹脂成分がエポキシ樹脂である場合には、乳化剤としてアラビアゴム、ゼラチン等の多糖類のほか、カゼイン等も好適に使用することができる。また例えば、樹脂成分としてメラミンホルマリン樹脂を用いる場合には、乳化剤としてエチレン無水マレイン酸共重合体等を好適に用いることができる。さらに、樹脂成分としてウレタン(イソシアネート)を用いる場合には、ゼラチン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。
【0048】
壁膜としては、通常は樹脂系壁膜を好適に採用することができる。樹脂としては、例えば各種の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を使用するこができる。より具体的には、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、尿素−ホルムアルデヒド系樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、尿素−メラミン系樹脂等が挙げられる。これら樹脂成分は1種又は2種以上で使用することができる。マイクロカプセルを製造する際は、これらの原料を用い、これらを高分子化することにより好適にマイクロカプセル化することができる。
【0049】
マイクロカプセルの製造方法
マイクロカプセル(熱変色性マイクロカプセル)の製造方法としては、内容物として本発明の熱変色性組成物を用いるほかは、公知のマイクロカプセル化に従って実施することができる。マイクロカプセル化の方法として、例えば界面重合法(重縮合、付加重合)、インサイチュー重合法、コアセルベーション法、液中乾燥法、噴霧乾燥法等を挙げることができる。
【0050】
マイクロカプセルの製造方法の一例としては、例えば、1)溶剤の存在下又は不存在下において、壁膜を構成し得る主原料(架橋剤を除く。)を熱変色性組成物と混合又は溶解することにより溶液を調製する第1工程、2)得られた溶液を乳化剤水溶液中に添加し、O/Wエマルションを調製する第2工程、3)架橋剤又はその溶液をO/Wエマルションに添加する第3工程を含む方法により、好適にマイクロカプセルを製造することができる。
【0051】
第1工程
第1工程では、溶剤の存在下又は不存在下において、壁膜を構成し得る主原料(架橋剤を除く。)を熱変色性組成物と混合又は溶解することにより溶液を調製する。
【0052】
熱変色性組成物は、前記で説明したものを用いる。使用量は、通常は乳化剤水溶液100重量部に対して5〜50重量部、特に10〜40重量部とすることが好ましい。前記使用量が5重量部未満の場合は、生産性が低下することがある。また、前記使用量が50重量部を超える場合は、乳化が困難になるおそれがある。
【0053】
前記主原料及び架橋剤としては、前記(3)で説明した壁膜を構成する成分となるものを使用すれば良い。この場合、特にマイクロカプセル化の方法に応じて適宜設定することがより望ましい。例えば、インサイチュー重合法でマイクロカプセル化する場合において、壁膜をメラミン樹脂、ポリウレア樹脂等とする場合は、主原料としてメラミン、尿素等を用い、架橋剤としてホルマリンを使用すれば良い。インサイチュー重合法でマイクロカプセル化する場合において、壁膜がウレタン樹脂等である場合は、主原料としてイソシアネート化合物を用い、架橋剤としてポリアルコールを使用すれば良い。例えば、界面重合法(重縮合)でマイクロカプセル化する場合において、壁膜がエポキシ樹脂等である場合は、主原料としてエポキシ化合物を用い、架橋剤としてポリアミン化合物を使用すれば良い。界面重合法(重縮合)でマイクロカプセル化する場合において、壁膜がウレタン樹脂等である場合は、主原料としてイソシアネート化合物を用い、架橋剤としてポリアミン化合物を使用すれば良い。界面重合法(重縮合)でマイクロカプセル化する場合において、壁膜がポリアミド樹脂等である場合は、主原料として酸クロライド化合物を用い、架橋剤としてポリアミン化合物を使用すれば良い。界面重合法(付加重合)でマイクロカプセル化する場合において、壁膜がアクリル樹脂等である場合は、主原料としてアクリル化合物を用い、架橋剤としてペルオキシ化合物を使用すれば良い。
【0054】
主原料及び架橋剤の使用量は特に制限されない。主原料は、乳化剤水溶液100重量部に対して通常1〜50重量部の範囲内、好ましくは2〜10重量部の範囲内で適宜設定することができる。架橋剤は、乳化剤水溶液100重量部に対して通常0.5〜25重量部の範囲内、好ましくは1〜5重量部の範囲内で適宜設定することができる。主原料又は架橋剤の使用量が少なすぎる場合又は多すぎる場合は、反応が不十分となり、カプセル(壁膜)の強度、耐熱性等が低くなるおそれがある。
【0055】
第1工程では、必要に応じて溶剤を使用することができる。溶剤としては前記で掲げたものを用いることができる。
【0056】
溶剤の使用量は限定的ではないが、通常は乳化剤水溶液100重量部に対して0〜100重量部の範囲内、好ましくは0〜40重量部の範囲内で適宜設定することができる。
【0057】
第2工程
第2工程では、得られた溶液を乳化剤水溶液中に添加し、O/Wエマルションを調製する。
【0058】
乳化剤水溶液は、前記の乳化剤を水に溶解して得られる水溶液を使用できる。乳化剤水溶液の濃度は、乳化剤の種類等に応じて適宜設定することができるが、一般に0.1〜15重量%、特に0.5〜8重量%とすることが好ましい。前記濃度が0.2重量%を下回る場合は、乳化が困難となるおそれがある。前記濃度が15重量%を超える場合は、起泡することがある。
【0059】
本発明では、O/Wエマルションの調製は、攪拌法、膜透過法等の公知の方法に従って実施することができる。この場合のO/Wエマルションの液滴径は0.1〜20μm程度とすれば良い。
【0060】
第3工程
第3工程では、架橋剤又はその溶液をO/Wエマルションに添加する。架橋剤としては、前記で列挙した各架橋剤を用いることができる。架橋剤の溶液は、例えば架橋剤を水に溶解して得られる架橋剤水溶液を好適に用いることができる。この場合の水溶液の濃度は限定されないが、通常は1〜100重量%程度の範囲内で適宜すれば良い。架橋剤の添加方法は特に制限されないが、滴下することにより添加することが好ましい。
【0061】
架橋剤又はその溶液を添加した後、架橋が進行し、架橋が完了すれば、所望のマイクロカプセルをスラリーの形態で得ることができる。その後、必要に応じて、例えばろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法に従って、マイクロカプセルを固形分として回収することもできる。また、必要に応じて、マイクロカプセルを洗浄することもできる。
2.酵素の添加
前記1−1又は1−2のインキ分散体に酵素を添加することにより、両親媒性物質の一部又は全部を分解する。
【0062】
本発明では、酵素の添加に先立って、洗浄(液の入れ替え)を促進するために分散液を希釈しても良い。希釈度は、分散液の種類等に応じて適宜設定すれば良い。
【0063】
さらに、酵素の添加に先立って、予め分散液のpH調整を行うこともできる。例えば、酵素として至適pHが7.0のものを用いる場合は、pHを5.0〜9.0の範囲に調節することが望ましい。かかるpH調整により酵素反応の効率を上げることができる。pH調整は、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム等の公知のpH調整剤を使用すれば良い。
【0064】
酵素の添加に際しては、攪拌しながら添加することが望ましい。攪拌は、公知の攪拌機等を使用すれば良い。酵素の添加後(後記のノニオン系界面活性剤を添加する場合は、それを添加した後)は、両親媒性物質が十分に分解するのに必要な時間(例えば24時間以上、好ましくは24〜48時間)静置しておくことが望ましい。
【0065】
酵素の添加後、必要に応じて乾燥凝集防止剤としてノニオン系界面活性剤を添加することもできる。ノニオン系界面活性剤の添加によって乾燥時の粒子どうしの凝集を防止することができる。ノニオン系界面活性剤としては、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル等のエーテル型、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル型、ポリオキシエチレンアルキルアミド等のアルカノールアミド型等を挙げることができる。
【0066】
ノニオン系界面活性剤の添加量は、通常は両親媒性物質1重量部に対して0.02〜200重量部、特に0.2〜20重量部とすることが好ましい。
【0067】
両親媒性物質の分解が完了した後、必要に応じてデカンテーション等により分散体の濃縮を行っても良い。また、上記濃縮工程の後、必要に応じてさらに1)水による希釈、2)攪拌及び3)静置の一連の工程(精製工程)を1回又は2回以上繰り返すことができる。その後、さらに固液分離、乾燥等の工程を経れば微粒子を乾燥粉末として回収することができる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。なお、本発明は、実施例に限定されない。
【0069】
実施例1〜4及び比較例1〜7
分散体の調製
表1に示す各成分を用いて(a)熱変色性組成物エマルション又は(b)マイクロカプセル化熱変色性組成物スラリーを下記の手順にてそれぞれ調製した。なお、表1中、カプセル壁原料を用いていないものが上記(a)であり、カプセル壁原料を用いるものが上記(b)である。
(a)熱変色性組成物エマルションの調製
1)発色剤(電子供与性化合物)、顕色剤(電子受容性化合物)及び減感剤(揮発性疎水性有機媒体)を120〜180℃で加熱溶解する。
【0070】
2)60〜80℃に加温した乳化剤水溶液中に、中剪断攪拌しながら70〜100℃の前記1)の溶液を均一に溶解させる。
【0071】
3)高剪断攪拌を行うことにより、平均粒径数μm程度のO/Wエマルションを得る。
(b)マイクロカプセル化熱変色性組成物スラリーの調製
1)発色剤(電子供与性化合物)、顕色剤(電子受容性化合物)及び減感剤(揮発性疎水性有機媒体)を120〜180℃で加熱溶解する。
【0072】
2)カプセル壁原料と溶解助剤を混合し、そこに70〜100℃の前記1)の溶液を加えて均一に溶解させる。
【0073】
3)30〜60℃に加温した乳化剤水溶液中に、中剪断攪拌しながら前記2)の溶液を添加する。
【0074】
4)高剪断攪拌を行うことにより、平均粒径数μm程度のO/Wエマルションを得る。
【0075】
5)低剪断攪拌に切り替えた後、架橋剤水溶液を徐々に滴下する。
【0076】
6)60〜90℃で3〜12時間反応を行った後、室温まで冷却することによりμmカプセルが分散したスラリーを得る。
【0077】
微粒子の回収
下記の手順により、前記(a)で得られたエマルション又は前記(b)で得られたスラリーから粒子の回収を行った。
【0078】
1)前記(a)で得られたエマルション又は前記(b)で得られたスラリーを30〜60℃の温水で10倍に希釈する。
【0079】
2)硫酸水溶液でpH5〜6に調節する。
【0080】
3)酵素を添加し、30分以上攪拌する。
【0081】
4)ノニオン界面活性剤を加え、30分以上攪拌する。
【0082】
5)1晩以上放冷した後、デカンテーションにより濃縮エマルション又は濃縮スラリーを得る。
【0083】
6)濃縮エマルション又は濃縮スラリーに対し、水による希釈、攪拌、静置及びデカンテーションの一連の精製工程を繰り返すことにより、精製エマルション又は精製スラリーを得る。
【0084】
7)濃縮エマルション(又は精製エマルション)あるいは濃縮スラリー(又は精製スラリー)を吸引ろ過し、乾燥することにより微粒子を得る。
【0085】
上記6)及び7)において、指で微粒子が簡単にほぐれ、さらさらのパウダーとなるまでに要する精製工程の回数を調べた。その結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
表1からもわかるように、乳化剤にアラビアガムを用い、エマルションの回収時にセルラーゼによる分解処理を行った実施例1及び実施例2、乳化剤にゼラチンを用い、マイクロカプセル回収時にプロテアーゼよる分解処理を行った実施例3及び実施例4をみると、いずれも精製回数が1回で凝集が容易に解れる状態になった。
【0088】
酵素による分解処理を実施しなかったほかは実施例1〜4と同様の条件で実施した比較例1〜4においては、乾燥凝集防止剤(ノニオン活性剤)を添加しているにもかかわらず、凝集が容易に解れる状態にするために精製回数を3回にする必要があった。
【0089】
また、酵素により分解されない乳化剤を用いた比較例5〜7では、乾燥凝集防止剤(ノニオン活性剤)を添加しているにもかかわらず、凝集が容易に解れる状態にするために精製回数を3回又は5回にする必要があった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中で両親媒性物質により安定化された微粒子が分散してなる分散体に対し、前記両親媒性物質を分解する酵素を添加することにより、前記両親媒性物質の一部又は全部を分解する工程を含むことを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項2】
分散体が、1)発色剤(電子供与性呈色性有機化合物)、顕色剤(電子受容性化合物)及び減感剤を含む熱変色性組成物が溶媒中に分散してなる分散体又は2)前記組成物を内包したマイクロカプセルが溶媒中に分散してなる分散体である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
溶媒が水又は水系溶媒である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
両親媒性物質が、多糖類及びタンパク質の少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
溶媒の一部又は全部を除去する工程をさらに有する、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−73574(P2008−73574A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252876(P2006−252876)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】