説明

微粒子センサ

【課題】微粒子を含むガス中の微粒子の量を、コロナ放電を利用して検出する微粒子センサについて、その寿命を長くする。
【解決手段】微粒子センサは、イオン発生部50と、導電線122と、帯電部40と、イオン捕捉部30と、を備える。イオン発生部50は、コロナ放電によってイオンPIを発生させる。導電線122は、コロナ放電のための電力を外部電源からイオン発生部50に供給する。帯電部40は、ガス中の少なくとも一部の微粒子Sを、イオンPIを用いて帯電させる。イオン捕捉部30は、イオン発生部50において生じたイオンPIのうち、帯電部40における微粒子Sの帯電に用いられなかったイオンPIを捕捉する。このような原理のもと、微粒子センサは、ガス中の微粒子Sの量を検出する。導電線122の少なくとも一部は、シリコーン樹脂によって被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排ガス中に含まれる煤などの微粒子量を検出するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンなどの内燃機関の排ガスには、煤などの微粒子が含まれる。内燃機関から大気中に排出される排ガスに含まれる微粒子の量を制御または抑制するために、内燃機関の排ガス配管には、排ガス中の微粒子の量を検出するための微粒子センサが取り付けられる場合がある。そのような微粒子センサには、コロナ放電によってイオンを生成し、そのうちの一部のイオンによって排ガス中の微粒子を帯電させることにより、排ガス中の微粒子量を検出するものが知られている(下記特許文献1等)。その微粒子センサにおいては、微粒子センサが備える電極に断続的に電圧を印加することにより、コロナ放電が行われる。
【0003】
上記のような微粒子センサにおいては、電極に電圧を印加するための導電線は、少なくとも他の電位を有する導電部材の近傍において、樹脂によって被覆され、他の電位を有する導電部材から絶縁されている。しかし、高出力であって、高周波の断続的なもしくは交流の電圧の印加により、被覆部材のクラックやボイド等の微細な欠陥においてコロナ放電が生じる場合がある。そのようなコロナ放電は、さらに欠陥を成長させて、導電線全体の絶縁性能を維持できなくする。このため、微粒子センサの寿命が短くなってしまうという問題があった。このような問題は、内燃機関の排ガス中の煤の検出に用いられる微粒子センサのみならず、微粒子を含むガス中の微粒子の量を、コロナ放電を利用して検出する微粒子センサについて、広く存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−514923号公報
【特許文献2】国際公開WO2009/109688号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、微粒子を含むガス中の微粒子の量を、コロナ放電を利用して検出する微粒子センサについて、その寿命を長くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
コロナ放電によってイオンを発生させるイオン発生部と、
前記コロナ放電のための電力を外部電源から前記イオン発生部に供給するための導電線と、
微粒子を含むガス中の少なくとも一部の前記微粒子を、前記イオンを用いて帯電させる帯電部と、を備え、
前記微粒子の帯電に使用された前記イオンの量に基づいて前記ガス中の前記微粒子の量を検出する微粒子センサにおいて、
前記導電線の少なくとも一部は、シリコーン樹脂によって被覆されている、微粒子センサ。
【0008】
このような態様においては、イオン発生部に電力を供給するための導電線は、耐コロナ放電性に優れるシリコーン樹脂によって被覆されている。このため、長期にわたって導電線の絶縁性能を維持することができる。よって、微粒子を含むガス中の微粒子の量を、コロナ放電を利用して検出する微粒子センサについて、微粒子センサの寿命を長くすることができる。
なお、「シリコーン樹脂」は、ケイ素化合物を主成分とする合成樹脂である。
【0009】
[適用例2]
適用例1の微粒子センサであって、
前記導電線において、前記シリコーン樹脂による被覆の少なくとも一部の外側が、前記シリコーン樹脂よりも耐熱性が高い素材で被覆されている、微粒子センサ。
【0010】
このような態様とすれば、シリコーン樹脂よりも耐熱性が高い素材でシリコーン樹脂による被覆が被覆されていない場合に比べて、微粒子センサが高温の環境下で使用される場合にも、シリコーン樹脂による被覆の形状を維持しやすい。
【0011】
[適用例3]
適用例2の微粒子センサであって、
前記シリコーン樹脂よりも前記耐熱性が高い素材は、フッ素系樹脂である、微粒子センサ。
【0012】
このような態様とすれば、微粒子センサが高温の環境下で使用される場合にも、シリコーン樹脂による導電線の被覆の形状を、効果的に維持することができる。
【0013】
なお、「フッ素系樹脂」は、フッ素を含むオレフィンを重合させて得られる合成樹脂である。「フッ素系樹脂」には、たとえば、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(略号:PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(略号:FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(略号:ETFE)が含まれる。
【0014】
[適用例4]
適用例1〜3の微粒子センサであって、さらに、
前記イオン発生部において生じた前記イオンを前記帯電部へと流入させるために利用される気体を、外部の気体供給部から前記イオン発生部に供給するための気体供給管を備え、
前記気体供給管と前記導電線とは、一体的にケーブルに収容されている、微粒子センサ。
【0015】
このような態様とすれば、ガスの流路に微粒子センサを設置する際に、導電線や気体供給管の取り回しが容易である。したがって、微粒子センサをガスの流路に取りつけやすい。
【0016】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、排ガス中の微粒子を検出する微粒子検出センサ、そのセンサを排ガス配管に備えた内燃機関、その内燃機関を備えた車両等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】微粒子センサを搭載する車両の構成を示す概略図と、排ガス配管への微粒子センサの取付状態とセンサ駆動部の内部構成とを示す概略図。
【図2】微粒子センサの構成を示す概略断面図。
【図3】微粒子センサの構成を示す概略断面図。
【図4】微粒子センサの構成を示す分解斜視図。
【図5】微粒子センサに接続されるケーブルの構成を示す概略断面図。
【図6】排ガス中の微粒子量を検出するための微粒子センサの動作を説明するための模式図。
【図7】センサ制御部による微粒子センサを用いた排ガス中の煤量の検出を説明するための概略図。
【図8】第2実施例の微粒子センサに接続されるケーブルの構成を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施例:
図1(A)は本発明の一実施例としての微粒子センサを搭載する車両の構成を示す概略図である。この車両500は、内燃機関400と、燃料供給部410と、車両制御部420とを備える。内燃機関400は、車両500の動力源であり、例えばディーゼルエンジンによって構成することができる。
【0019】
燃料供給部410は、燃料配管411を介して内燃機関400に燃料を供給する。内燃機関400には、排ガス配管415が接続されており、内燃機関400からの排ガスは、排ガス配管415を介して車両500の外部へと排出される。排ガス配管415には、排ガス中に含まれる煤などの微粒子を除去するためのフィルタ装置416(例えば、DPF(Diesel particulate filter):ディーゼル微粒子捕集フィルタ)が設けられている。
【0020】
車両制御部420は、マイクロコンピュータによって構成され、車両500全体の運転状態を制御する。具体的には、車両制御部420は、燃料供給部410からの燃料の供給量や、内燃機関400の燃焼状態などを制御する。
【0021】
車両500には、さらに、微粒子センサ100と、センサ駆動部110とが搭載されている。微粒子センサ100は、排ガス配管415のフィルタ装置416より下流側に取り付けられており、ケーブル120を介してセンサ駆動部110と接続されている。
【0022】
センサ駆動部110は、微粒子センサ100を駆動し、微粒子センサ100の検出信号に基づき排ガス中の微粒子量を検出する。ここで、排ガス中の微粒子量は、例えば、微粒子の表面積を基準とする量として評価することもでき、微粒子の質量を基準とする量として評価することもできる。あるいは、排ガス中の微粒子量は、単位体積量の排ガス中の微粒子の個数を基準とする量として評価することもできる。
【0023】
図1(B)は、排ガス配管415への微粒子センサ100の取付状態と、センサ駆動部110の内部構成とを説明するための概略図である。微粒子センサ100は、先端部100eの直棒状の部分が排ガス配管415の内部に挿入された状態で、排ガス配管415の外表面に固定的に取り付けられる。より具体的には、微粒子センサ100の先端部100eは、微粒子センサ100の取付部位における排ガス配管415の延伸方向DLに対してほぼ垂直に挿入される。
【0024】
先端部100eのケーシングの壁面には、図1(B)下段に示すように、排ガスのための流入孔45と排出孔35とが設けられている。先端部100eが排ガス配管415に取りつけられた状態において、流入孔45と排出孔35とは、排ガス配管415内に位置する。微粒子センサ100においては、排ガス配管415を流れる排ガスの一部が、流入孔45を介して、先端部100eのケーシング内部に取り込まれる。そして、取り込まれた排ガス中に含まれる微粒子は、微粒子センサ100において生成されたイオン(本実施例では、陽イオン)によって帯電される。帯電した微粒子を含む排ガスは、排出孔35から先端部100eのケーシング外部に排出される。排ガス中の微粒子量を検出する際の微粒子センサ100の具体的な動作や、先端部100eのケーシング内部における排ガスの流れについては後述する。
【0025】
本実施例の微粒子センサ100は、排ガスを取り込む先端部100eの流入孔45と排出孔35が排ガス配管415内に収容・配置されている。このため、排ガスを排ガス配管415の外部へと分岐させ、再び流入させることなく、排ガス中の微粒子の量を検出することができる。従って、排ガス中の微粒子量を検出するためのシステムが小型化され得る。
【0026】
微粒子センサ100の後端側(先端部100eとは逆の側)には、複数の配線121,122,124や空気供給管123などを内部に一体的に収容したケーブル120が接続されている。ケーブル120の他端は、排ガス配管415から離隔して設置されたセンサ駆動部110に接続されている。ケーブル120は可撓性を有しているため、比較的自由に車両500内に配設することが可能である。ケーブル120の詳細な構成については後述する。
【0027】
センサ駆動部110は、図1(B)左上に示すように、センサ制御部111と、電気回路部112と、エア供給部113とを備えている。センサ制御部111は、マイクロコンピュータによって構成される。センサ制御部111は、電気回路部112と、エア供給部113とを制御する。また、センサ制御部111は、微粒子センサ100を用いて検出した排ガス中の微粒子量を車両制御部420(図1(A)参照)に送信する。
【0028】
なお、車両制御部420は、センサ制御部111から送信された排ガス中の微粒子量が、所定量より多い場合には、フィルタ装置416の劣化や異常を車両500の運転手に警告する態様とことができる。また、車両制御部420は、センサ制御部111の検出値に基づき、内燃機関400における燃焼状態を調整する態様とすることもできる。
【0029】
電気回路部112は、ケーブル120に収容されている第1と第2の絶縁電線121,122(図1(B)上段ならびに図5参照)を介して微粒子センサ100を駆動するための電力を供給する。また、電気回路部112は、同じくケーブル120に収容されている信号線124を介して微粒子センサ100のセンサ信号を受信するとともに、そのセンサ信号に基づく計測結果をセンサ制御部111に送信する。電気回路部112の詳細な構成については後述する。
【0030】
エア供給部113は、ポンプ(図示は省略)を備えている。エア供給部113は、センサ制御部111からの指令に基づき、微粒子センサ100の駆動の際に用いられる高圧空気を、ケーブル120内の空気供給管123を介して、微粒子センサ100に供給する。なお、微粒子センサ100は、空気供給管123を介して、他の種類の圧縮気体の供給を受けるものとしてもよい。
【0031】
図2〜図4は、微粒子センサ100の構成を示す概略図である。図2,図3はそれぞれ、異なる方向から見た微粒子センサ100の概略断面図である。図4は微粒子センサ100の分解斜視図である。図2〜図4には、先端部100e側(単に「先端側」とも呼ぶ)を紙面上側とし、ケーブル120側(単に「後端側」とも呼ぶ)を紙面下側として、微粒子センサ100が図示されている。すなわち、図1(B)に示した微粒子センサ100とは、向きが上下逆となっている。また、図2,図4には、微粒子センサ100の仮想中心線CLが一点鎖線で図示されている。参考のために、図2に、微粒子センサ100が排ガス配管415に取りつけられた際の、排ガス配管415および取付用ボス417の断面の位置を破線で示す。また、排ガスの流れ方向を示す矢印F(図1(B)参照)を示す。
【0032】
図2〜図4には、さらに、各図が対応するように三次元矢印X,Y,Zを図示す。具体的には、矢印Zは、微粒子センサ100の仮想中心軸CLに沿った方向を示しており、紙面上方向を示している。矢印Xは、微粒子センサ100が備えるフランジ103fの短手方向に沿った方向を示しており、図2では、紙面手前方向を示し、図3では紙面右方向を示し、図4では紙面右斜め手前方向を示している。矢印Yは、フランジ103fの長手方向に沿った方向を示しており、図2では紙面右方向を示し、図3では紙面奥行き方向を示し、図4では紙面右斜め奥行き方向を示している。
【0033】
微粒子センサ100は、第1と第2の電極10,20を備えている。第1の電極10は、図3および図4の上部に示すように、先端部11(紙面上側の端部)が略U字状に湾曲した棒状の電極である。第1の電極10における湾曲部より後端側の本体部12の外周は、セラミックパイプ15によって気密に被覆されている(図4の左上部参照)。セラミックパイプ15は、絶縁性セラミック(例えばアルミナ)によって構成され、第1の電極10と他の導電性部材とを絶縁する。セラミックパイプ15から露出した第1の電極10の後端部13(紙面下側の端部)は、図3の中段に示すように、ケーブル120の端部から露出した第1の絶縁電線121と電気的に接続されている。第1の電極10は、絶縁電線121を介して100Vの電圧を印加され、陽イオンの捕捉を補助する補助電極として機能する。第1の電極10機能の詳細については、後述する。
【0034】
第2の電極20は、直線的に延びる棒状の電極である。第2の電極20は、図2および図3の上部に示すように、微粒子センサ100内の第1の電極10の先端部11よりも後端側において、第1の電極10の他の一部と並ぶように配されている。第2の電極20の本体部22の外周は、図4左下に示すように、セラミックパイプ25によって気密に被覆されている。セラミックパイプ25は、絶縁性セラミック(例えばアルミナ)によって構成され、第2の電極20と他の導電性部材とを絶縁する。第2の電極20の先端部21(紙面上側の端部)と、後端部23(紙面下側の端部)とはセラミックパイプ25から露出している。なお、第2の電極20の先端部21は、先端が尖った針状をなしている。第2の電極20の後端部23は、図3の中段に示すように、第2の絶縁電線122と電気的に接続されている。第2の電極20は、第2の絶縁電線122を介して2〜3kVの電圧を100kHzで断続的に印加され、コロナ放電のための放電電極として機能する。第2の電極20の機能の詳細については、後述する。
【0035】
微粒子センサ100は、イオン捕捉部30と、排ガス帯電部40と、イオン発生部50とを備える。イオン捕捉部30と排ガス帯電部40とイオン発生部50とはそれぞれ、導電性を有する部材によって構成されている。イオン捕捉部30と排ガス帯電部40とイオン発生部50とが直列に嵌合して連結されることにより、前述の先端部100eを構成する。なお、各構成部30,40,50の外壁は、先端部100eの略円筒状の連続的なケーシングを構成する。
【0036】
イオン捕捉部30は、図4左上に示すように、略円筒状の外殻を有する。イオン捕捉部30の内部には、図3上段に示すように、ガス流路31と、パイプ挿通孔33とが、紙面上下方向(矢印Zの方向)に延びる互いに並列な貫通孔として形成されている。ガス流路31は、後端側に位置する第1流路部31aと、第1流路部31aに対して先端側に位置する第2流路部31bとを有している。第1流路部31aは、後端において排ガス帯電部40の内部空間71に接続されている。Z軸方向に垂直な断面における第1流路部31aの断面積は、先端側に向かって縮小する。一方、第2流路部31bは、先端においてイオン捕捉部30の内部空間70に接続されている。Z軸方向に垂直な断面における第2流路部31bの断面積は、先端側に向かって拡大する。このガス流路31の機能については後述する。
【0037】
図3の上段に示すパイプ挿通孔33には、第1の電極10の本体部12を収容するセラミックパイプ15が気密的に挿通されて保持される。第1の電極10の先端部11は、パイプ挿通孔33から折り返して、ガス流路31における第2流路部31bのほぼ中央に懸垂配置される。
【0038】
イオン捕捉部30の紙面上側の端部は、図2〜図4の上段に示すように、導電性を有するキャップ101によって封止される。イオン捕捉部30の外壁には、排ガスのための排出孔35が貫通孔として形成されている(図4の左上、および図1(B)も参照)。排出孔35は、ガス流路31とキャップ101との間の内部空間70に連通するように形成されている(図2の上段参照)。
【0039】
排ガス帯電部40は、図4に示すように、イオン捕捉部30に対して後端側に配されており、略円筒状の外殻を有する。排ガス帯電部40は、イオン捕捉部30のガス流路31と連通する内部空間71を有しており、後端側端部に隔壁41が設けられている(図2および図3の上段参照)。その結果、排ガス帯電部40の内部空間71とイオン発生部50とは、隔壁41によって仕切られて分離されている。隔壁41には、排ガス帯電部40とイオン発生部50とを連通する連通孔であるノズル42が設けられている。ノズル42は、イオン捕捉部30のガス流路31に向かってガスを噴射可能なように、ガス流路31に向かって開口面積(断面積)が縮小する微小孔(オリフィス)として設けられている。
【0040】
また、隔壁41には、図3の上段に示すように、第1の電極10を収容するセラミックパイプ15を挿通して保持するパイプ挿通孔43が設けられている。さらに、排ガス帯電部40の外壁には、図4の左側中段に示すように、排ガスを先端部100eの内部に流入させるための流入孔45が貫通孔として形成されている(図1(B)も参照)。流入孔45は、微粒子センサ100を構成したときに、内部空間71に連通するように形成されている(図2参照)。
【0041】
ここで、イオン捕捉部30と排ガス帯電部40とが嵌合して連結される際には、ガス流路31の一部は、排ガス帯電部40の内部に収容される。流入孔45は、図2の上段に示すように、その開口方向に沿って微粒子センサ100を見たときに(より詳細には、流入孔45の開口方向に沿った方向であって微粒子センサ100の軸線CLに直交する方向に沿って見たときに)、ガス流路31と重なる位置に形成されている。ガス流路31を構成する壁部には、ガス流路31の流路方向と並列に伸びる溝部34が設けられている。流入孔45は、この溝部34を介して内部空間71と連通する。
【0042】
イオン発生部50は、図4左下に示すように、排ガス帯電部40に対して後端側に配されており、略円柱状の形状を有する。イオン発生部50の先端側には、ノズル42を介して、排ガス帯電部40の内部空間71と連通する内部空間72が設けられている(図2および図3の上段参照)。内部空間72には、第2の電極20の先端部21が、コロナ放電を発生させることが可能な程度の空隙をノズル42との間に形成しつつ、保持されている。
【0043】
図2の中段に示すように、内部空間72の紙面下側の底部には、紙面上下方向に延びる空気供給孔54が形成されている。空気供給孔54は、ケーブル120の空気供給管123(図2において図示せず)からの空気を内部空間72へと流入させるための流路である。
【0044】
一方、図3の中段に示すように、内部空間72の紙面下側の底部には、さらに、紙面上下方向に延びる第1と第2のパイプ挿通孔52,53が形成されている。第1のパイプ挿通孔52は、第1の電極10を収容するセラミックパイプ15を気密に保持する。また、第2のパイプ挿通孔53は、第2の電極20を収容するセラミックパイプ25を気密に保持する。
【0045】
第1と第2の電極10,20の後端部13,23は、図3の中段に示すように、イオン発生部50の後端側において外部に露出している。第1と第2の電極10,20の後端部13,23は、ケーブル120の端部から伸びた第1と第2の絶縁電線121,122に、それぞれ電気的に接続されている。なお、これらの電極10,20と電線121,122の接続部は、イオン発生部50の下端に嵌合して連結される略円筒状の内筒102に収容されることによって保護される(図3の中段、および図4の右上参照)。
【0046】
内筒102の下端部は、図2および図3の中段、および図4の右上に示すように、ケーブル120の端部を収容して緊密に保持する。ここで、内筒102は、導電性を有する部材によって構成されており、ケーブル120の第1のシールド線SL1(後述)と電気的に接続される。すなわち、内筒102は、先端部100eを構成する各構成部30,40,50と、ケーブル120の第1のシールド線SL1と、の間の導電パスとして機能する。
【0047】
イオン発生部50は、図2および図3の中段に示すように、取付固定部103内に収納されている。取付固定部103は、微粒子センサ100を排ガス配管415に取付用ボス417を介して固定するための部材である。図4の左下に示されるように、イオン発生部50の外周には鍔部50fが設けられている。鍔部50fは、図2および図3の中段に示すように、イオン発生部50の外周に取り付けられる円環状の第1と第2の保持部材61,62によって、取付固定部103内において、紙面上下方向に狭持される。なお、鍔部50fの外周面は、取付固定部103に非接触の状態を維持するように、第1と第2の保持部材61,62によって挟持される。ここで、第1の保持部材61は略円筒形である。そして、第1の保持部材61の先端側の外径は、後端側の外径よりも小さい(図4の左下参照)。すなわち、第1の保持部材61は、外周部分に段部を有している。
【0048】
取付固定部103は、図4左側に示すように、略円筒形状の本体部103sと、本体部103sの紙面上側の端部に設けられたフランジ103fとを有している。取付固定部103の本体部103sの筒内には段部が形成されている(図2および図3の中段参照)。すなわち、この段部よりも先端側の内径は、後端側の内径よりも小さい。この段部は、イオン発生部50に取り付けられた第1の保持部材61の段部と、板パッキン65を介して係合する(図2および図3の上段参照)。この係合により、イオン発生部50は、取付固定部103の筒内においてZ軸方向の所定の位置で係止される。具体的には、イオン発生部50は、第2の電極20の先端部21がフランジ103fより先端側に突出する位置で係止される。また、第1の保持部材61の先端部61pも、フランジ103fより先端側に突出する。
【0049】
また、取付固定部103のフランジ103fには、リング状のガスケット64(図4の左側中段参照)がイオン発生部50の突出部位を囲むように配置される。
【0050】
ここで、イオン発生部50と取付固定部103は導電性を有する部材によって構成される。一方、第1と第2の保持部材61,62は、絶縁部材で構成される。そして、イオン発生部50は、第1と第2の保持部材61,62を介して取付固定部103に固定されており、取付固定部103に直接接触していない。このため、取付固定部103とイオン発生部50は、絶縁されている。
【0051】
また、取付用ボス417および排ガス配管415も、導電性を有する部材によって構成される。しかし、微粒子センサ100が取付用ボス417を介して排ガス配管415に取り付けられた状態において、取付用ボス417と先端部100e(イオン発生部50)との間には、第1の保持部材61の突出部61pが介在する(図2の上段参照)。そして、取付用ボス417および排ガス配管415と先端部100e(イオン発生部50)とは、互いに直接接触しない。よって、取付用ボス417および排ガス配管415と先端部100e(イオン発生部50)とは、第1の保持部材61により、絶縁されている。
【0052】
取付固定部103の下端部には、ジョイント部104が、イオン発生部50に取り付けられた第2の保持部材62を紙面下側から支持するように、螺合連結されている(図4の右上参照)。ジョイント部104には、貫通孔104pが設けられている。貫通孔104pには、イオン発生部50の下端部および内筒102が挿通される。なお、貫通孔104pの内壁面と、イオン発生部50および内筒102の外表面との間には、空隙が形成されており、ジョイント部104とイオン発生部50とを絶縁する。また、ジョイント部104の外周には、六角レンチなどの工具と係合させるための工具係合部104eが設けられている。
【0053】
ジョイント部104の下端には、内筒102とケーブル120との連結部を保護するための略円筒状の外筒105が嵌合されている(図4の右下参照)。外筒105とケーブル120との間には、ケーブル120を保護するための円環状のグロメット66が配置される(図2および図3の下段参照)。外筒105の下端側は、ケーブル120を保持するために加締められる。ここで、この加締めの際には、ケーブル120の外皮1204(後述)に切れ目を設けるとともに、外筒105の一部を、その切れ目に入り込ませる。このような構成とすることにより、外筒105の下端側には、ケーブル120内の第2のシールド線SL2(後述)と電気的に導通する加締め部105cが形成される。なお、図2および図3では、外筒105の加締め部105cが示されているのに対して、図4では、加締められる前の外筒105が図示されている。
【0054】
図5は、本実施例の微粒子センサ100に接続されるケーブル120の構成を示す概略断面図である。前記したとおり、ケーブル120には、第1の絶縁電線121および第2の絶縁電線122と、空気供給管123と、信号線124とが一体的に収容されている。このような構成とすることにより、微粒子センサ100に接続される配線・配管の取り回しが容易となる。よって、微粒子センサ100の車両500への搭載が容易になる。具体的に、ケーブル120は以下で述べるような構成を有している。
【0055】
第1の絶縁電線121は、その中心に導電線である芯線1210を有している。芯線1210の外周には、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などのフッ素系樹脂による第1の樹脂被覆層1211が設けられている。
【0056】
第2の絶縁電線122は、その中心に導電線である芯線1220を有している。芯線1220の外周には、シリコーン樹脂による第1の樹脂被覆層1221が設けられている。なお、「シリコーン樹脂」は、ケイ素化合物を主成分とする合成樹脂である。
【0057】
本実施例においては、芯線1220の外周に、シリコーン樹脂による第1の樹脂被覆層1221が設けられている。このため、芯線1220に対して繰り返し高出力の電圧が断続的に印加されても、フッ素系樹脂で構成されている態様に比べて、第1の樹脂被覆層1221は劣化しにくい。その結果、第2の絶縁電線122全体の被覆層の絶縁性が悪化しにくい。よって、微粒子センサ100が正常に使用できなくなるまでの時間(寿命)を、長くすることができる。
【0058】
なお、以上では、図5に示すケーブル120の断面図を使用して第1の絶縁電線121および第2の絶縁電線122の構成を説明した。しかし、第1の絶縁電線121および第2の絶縁電線122が、ガラス繊維部1201およびその外側の層に覆われておらず、露出している部分(図3の中段、および図4左側中段参照)においても、第1の絶縁電線121および第2の絶縁電線122の被覆層は、上述の構成を有する。
【0059】
空気供給管123は、PTFE (ポリテトラフルオロエチレン)などの樹脂部材によって中空筒状に構成される。空気供給管123の外周は、補強部材123sによって被覆されている。補強部材123sは、可撓性を有しつつ、樹脂部材よりも高い剛性を有するように構成されていることが好ましく、例えば、金属線を編み組みすることによって構成されるものとすることができる。この補強部材123sによって、温度上昇に伴って空気供給管123を構成する樹脂部材が少なからず軟化した場合であっても、空気圧による空気供給管123の膨張変形が抑制される。すなわち、このケーブル120を用いれば、高温環境下においても微粒子センサ100に、より高い圧力の空気を供給することが可能である。
【0060】
図5に示すように、第1と第2の絶縁電線121,122と空気供給管123の補強部材123sの外周には、ガラス繊維が充填されたガラス繊維部1201が形成されている。そして、ガラス繊維部1201の外周は、第1のケーブル被覆層1202によって被覆されている。第1のケーブル被覆層1202は、PTFEなどのフッ素系樹脂部材によって構成することができる。
【0061】
第1のケーブル被覆層1202の外周には、導電線が編み組された第1のシールド線SL1が配設されている。そして、第1のシールド線SL1の外側には、PTFEなどのフッ素系樹脂部材によって構成された第2のケーブル被覆層1203が設けられている。さらに、第2のケーブル被覆層1203の外周には、導電線が編み組みされた第2のシールド線SL2が配設されている。そして、第2のシールド線SL2の外周は、FEPなどのフッ素系樹脂などで構成された外皮1204によって被覆されている。
【0062】
第2の絶縁電線122の被覆層の一つである第1の樹脂被覆層1221は、シリコーン樹脂で設けられているため、高温下においては変形しやすくなる。ただし、第2の絶縁電線122の周囲にはガラス繊維が充填されており、その外側には、シリコーン樹脂よりも耐熱性の高いPTFEなどのフッ素系樹脂部材による第1のケーブル被覆層1202および第2のケーブル被覆層1203、ならびに、シリコーン樹脂よりも耐熱性の高いFEPなどのフッ素系樹脂などによる外皮1204が設けられている。このため、第2の絶縁電線122の第1の樹脂被覆層1221は、高温環境下においても、これらの構成により形状を維持される。すなわち、第2の絶縁電線122の第1の樹脂被覆層1221は、高温環境下においても変形しにくい。
【0063】
なお、本明細書において、「Aよりも耐熱性が高い」とは、UL(Underwriters Laboratories Inc.)規格における746BのRTI(Relative Thermal Index:相対温度指数)がAに比べて高いことを意味する。
【0064】
上記のように、このケーブル120においては、第1と第2のシールド線SL1,SL2が二重で設けられている。このうち、第1のシールド線SL1は、前述のように、内筒102を介して、先端部100eの各構成部30,40,50と電気的に接続される(図2および図3の中段参照)。このような構成とすることにより、第1のシールド線SL1は、微粒子センサ100の先端部100eと電気回路部112とを接続する信号線124として機能する。
【0065】
一方、第2のシールド線SL2は、前述のように、外皮1204を貫通する外筒105の加締め部105cと導通する(図2および図3の下段参照)。そして、第2のシールド線SL2は、それぞれ導電性を有する外筒105、ジョイント部104、取付固定部103、取付用ボス417、排ガス配管415を介して、車両500のシャーシ(図示せず)などと電気的に接続される。その結果、第2のシールド線SL2は、接地されている。
【0066】
微粒子センサ100は、排ガス配管415内に先端部100eが挿入・配置されるとともに、ケーブル120によって、離隔配置されたセンサ駆動部110と接続されて駆動する。車両500では、この微粒子センサ100を用いて、以下のように、排ガス中に含まれる微粒子量を検出する。
【0067】
図6は、排ガス中の微粒子量を検出するための微粒子センサ100の動作を説明するための模式図である。図6においては、排ガス配管415内に挿入された微粒子センサ100の先端部100eの内部が模式的に図示されている。なお、図6においては、微粒子センサ100は、図2や図3とは、上下逆の向きに記載されている。図6に示された微粒子センサ100の向きと、図1(B)に示された微粒子センサ100の向きとは、同じである。
【0068】
図6では、先端部100eのケーシングCS(各構成部30,40,50の内部空間70,71,72を囲む壁部)を、各構成部30,40,50の境界線の図示を省略するとともに、同じハッチングを付すことにより、一体的に示す。また、図6では、第1の電極10については、先端部11以外の構成の図示を省略する。さらに、図6には、排ガス配管415における排ガスの流れ方向(矢印F)と、先端部100eの内部におけるガスの流れ方向とを模式的に図示する。
【0069】
排ガス中の微粒子量を検出する際には、微粒子センサ100は、図6上部に示すように、空気供給孔54を介して、エア供給部113(図1(B)参照)から内部空間72に高圧空気が供給される。そして、微粒子センサ100は、イオン発生部50において、陽イオンPIを発生させる。より具体的には、微粒子センサ100は、電気回路部112によって、第2の電極20を陽極とし、ノズル42を構成する隔壁41を陰極として、断続的に電圧を印加し、第2の電極20の先端部21とノズル42との間にコロナ放電を発生させ、放電した電子を内部空間72に供給される空気中の分子と衝突させることで、周囲に陽イオンPIを発生させる。
【0070】
イオン発生部50において発生した陽イオンPIは、エア供給部113から内部空間72に供給される高圧空気とともに、ノズル42から排ガス帯電部40の内部空間71へと噴射される。ノズル42から陽イオンPIを含む空気が噴射されると、内部空間71に負圧が発生する。すると、微粒子である煤Sを含む排ガスが、流入孔45から内部空間71へと吸引される(矢印fi参照)。なお、エア供給部113から微粒子センサ100に供給される空気の圧力は、ノズル42からの空気の噴射速度が音速程度となる程度の圧力であることが好ましい。
【0071】
ノズル42から噴射された空気と、流入孔45から吸引された排ガスとは、図6の中段に示すように、排ガス帯電部40の内部空間71において混合される。このような構成とすることにより、排ガス中に微粒子である煤Sが存在する場合に、煤Sが空気中の陽イオンPIを吸着して煤Sが帯電する。
【0072】
図2で説明したとおり、流入孔45は溝部34を介して内部空間71に連通している。その結果、ノズル42から噴射される空気が、後端側から先端側に向かう向き(図6において下向き)に内部空間71に噴射されるのに対して、排ガスは、先端側から後端側に向かう向き(図6において上向き)に内部空間71に流入する。すなわち、流入孔45から内部空間71に流入する排ガスの流れ方向と、ノズル42から内部空間71に噴射される空気の噴射方向とが互いに対向し合うことになる。このため、内部空間71において、より大きな乱流が発生する。この乱流により、空気と排ガスとの混合が促進され、煤Sの帯電が促進される。
【0073】
内部空間71において空気と混合された排ガスは、イオン捕捉部30に設けられたガス流路31を介して内部空間70へと流れる。なお、ガス流路31には、上流側から下流側に向かって断面積が次第に縮小する第1流路部31aが設けられている。本実施例の微粒子センサ100では、この第1流路部31aによって、排ガスをより円滑に下流側へと誘導できるとともに、陽イオンPIと煤Sとの衝突を促進させて、煤Sの帯電を促進させることができる。
【0074】
イオン捕捉部30では、ガス流路31の第2流路部31bから内部空間70に渡って、第1の電極10の先端部11が、排ガスの流れ方向に沿って配置されている。イオン捕捉部30では、電気回路部112によって、第1の電極10を陽極とし、第1の電極10を囲むケーシングCSを陰極として、電圧が印加される。
【0075】
このような構成とすることにより、煤Sの帯電に用いられなかった陽イオンPI、すなわち、煤Sに吸着することのなかった陽イオンPIは、第1の電極10から斥力を受けて、その移動方向が第1の電極10の外側へと反らされる。移動方向を反らされた陽イオンPIは、陰極として機能するガス流路31の第2流路部31bや内部空間70の外壁に捕捉される。一方、陽イオンPIが吸着して帯電した煤Sは、質量が大きい。このため、帯電した煤Sは、同様に第1の電極10から斥力を受けるものの、斥力によってその進行方向に与えられる影響が、単体の陽イオンPIに比較して小さい。そのため、帯電した煤Sは、排ガスの流れに従って、排出孔35から排ガス配管415へと排出される。
【0076】
ところで、本実施例の微粒子センサ100におけるガス流路31の第2流路部31bでは、下流側に向かって断面積が次第に拡大している。この構成により、帯電した煤Sや、帯電に用いられなかった陽イオンPIを含む排ガスを、内部空間70の壁面に向かって、放射状に拡散させることができる。その結果、イオン捕捉部30における陽イオンPIの捕捉効率が向上する。
【0077】
微粒子センサ100の先端部100eでは、イオン捕捉部30における陽イオンPIの捕捉量に応じた電流の変化を検出することができる。センサ制御部111(図1(B)参照)は、電気回路部112を介して、そうした微粒子センサ100における電流の変化に基づいて検出信号を検出する。そして、センサ制御部111は、その検出信号に基づいて排ガス中に含まれる煤Sの量を検出する。具体的には、センサ制御部111は、以下のように、排ガス中の煤Sの量を検出する。
【0078】
図7は、センサ制御部111による微粒子センサ100を用いた排ガス中の煤量の検出を説明するための概略図である。図7には、微粒子センサ100の先端部100eの模式図と、センサ駆動部110のうちのセンサ制御部111と電気回路部112とが模式的に図示されている。なお、図7では、図6と同様に、先端部100eの各構成部30,40,50の外壁を、ケーシングCSとして一体的に図示している。また、図7では、電気回路部112の内部構成を概略的に図示している。
【0079】
電気回路部112は、一次側電源部210と、二次側電源部220と、電流差計測部230とを備える。一次側電源部210は、センサ制御部111の指令に従って、トランスを介して二次側電源部220に高圧電力を断続的に供給する。二次側電源部220は、第1電流供給回路221と、第2電流供給回路222とを備えている。
【0080】
図7に示すように、第1電流供給回路221は、第1の絶縁電線121を介して、第1の電極10と接続されている(図3の中段も参照)。微粒子センサ100は、第1電流供給回路221から陽イオンPIの捕捉のための電力(100V)の供給を受ける。
【0081】
一方、第2電流供給回路222は、図7に示すように、第2の絶縁電線122を介して第2の電極20と接続されている(図3の中段も参照)。微粒子センサ100は、第2電流供給回路222から、コロナ放電のための電力の供給を断続的に受ける(2〜3kV、100kHz)。なお、第2電流供給回路222は、定電流回路であり、コロナ放電に際して、例えば5μA程度の一定の電流Iinを第2の電極20に供給する。
【0082】
ここで、微粒子センサ100の先端部100e、すなわちイオン捕捉部30と排ガス帯電部40とイオン発生部50は、排ガス配管415や車両500のシャーシなどとは絶縁された状態で排ガス配管415内に保持される(図2および図3に示す保持部材61,62参照)。すなわち、微粒子センサ100の先端部100eは、いわゆるシャーシグラウンドとも呼ばれる車両500の基準電位とは異なる基準電位を有する閉回路を構成していると解釈することができる。
【0083】
第2電流供給回路222から第2の電極20に入力電流Iinが流れると、コロナ放電により、第2の電極20からノズル42を介してケーシングCSに放電電流Idcが流れるとともに、陽イオンPIが発生する(図7の中央部参照)。図6で説明したように、陽イオンPIの一部は煤Sの帯電に用いられ、残りの陽イオンPIは、イオン捕捉部30においてケーシングCSに捕捉される(図7の右部参照)。
【0084】
ここで、煤Sの帯電に用いられてケーシングCSの外部へと漏洩する陽イオンPIの流れに相当する電流を「漏洩電流Iesc」と呼ぶ。一方、ケーシングCSに捕捉される陽イオンPIの流れに相当する電流を「捕捉電流Itrp」と呼ぶ。このとき、コロナ放電によって流れるこれらの4つの電流Iin,Idc,Iesc,Itrpについて、以下の関係式(1)が成り立つ。
in=Idc+Itrp+Iesc …(1)
【0085】
これらの電流のうち、放電電流Idcと、捕捉電流Itrpとは、ケーシングCSに流れる電流である(図7の中央部および右部参照)。また、前記したとおり、第2の電極20への入力電流Iinは、第2電流供給回路222によって一定に制御されている(図7の中央部参照)。従って、入力電流Iinと、ケーシングCSに流れる2つの電流Idc,Itrpの合計との差をとることにより、漏洩電流Iescを得ることができる(下記(2)式)。
esc=Iin−(Idc+Itrp)…(2)
【0086】
電気回路部112は、電流差計測部230によって、入力電流Iinと、ケーシングCSに流れる2つの電流Idc,Itrpの合計と、の差を、漏洩電流Iescとして検出し、その検出結果に基づく信号をセンサ制御部111に出力する。具体的には、電気回路部112は、漏洩電流Iescを以下のように検出する。
【0087】
電気回路部112の電流差計測部230は、信号線124(図5に示すケーブル120の第1のシールド線SL1)を介して、先端部100eのケーシングCSと電気的に接続されている。また、電流差計測部230は、排ガス配管415または車両500のシャーシを介して接地されている(図7の左下部参照)。
【0088】
ケーシングCSでは、入力電流Iinに対して漏洩電流Iescの分が不足する分だけ、その基準電位が外部の基準電位より低下する。これに対し、電流差計測部230からは、その低下分を補償するように、補償電流Icが信号線124に流れる。この補償電流Icは漏洩電流Iescに相当する電流である。電流差計測部230は、この補償電流Icの計測値を漏洩電流Iescの計測値として、センサ制御部111に送信する。
【0089】
漏洩電流Iescは、煤Sの帯電に用いられた陽イオンPIの量と相関関係を有する電流である。そして、煤Sの帯電に用いられた陽イオンPIの量は、排ガス中の単位流量当たりの煤Sの量と相関関係を有する量である。従って、漏洩電流Iescを計測(検出)することにより、排ガス中の単位流量当たりの煤Sの量を求めることができる。センサ制御部111は、予め記憶されたマップや演算式などを用いて、電流差計測部230において検出された漏洩電流Iescに対する排ガス中の煤Sの量を取得する。
【0090】
このように、センサ制御部111は、煤Sの帯電に用いられてケーシングCSの外部へと漏洩した陽イオンPIに基づく電流変化(換言すれば、陽イオンPIの捕捉量に応じた微粒子センサ100のケーシングCSにおける電流変化)を利用して、排ガス中の煤Sの量を検出する。
【0091】
このように、本実施例の微粒子センサ100によれば、簡易かつ小型な構成で、内燃機関400から排出される排ガスに含まれる煤Sなどの微粒子の量を検出することができる。
【0092】
B.第2実施例:
図8は、第2実施例の微粒子センサに接続されるケーブル120bの構成を示す概略断面図である。第2実施例は、微粒子センサに接続されるケーブル中の第2の絶縁電線122bの構成が、第1実施例の第2の絶縁電線122とは異なっている。第2実施例の他の点は、第1実施例と同じである。
【0093】
第2の絶縁電線122bは、その中心に導電線である芯線1220を有している。芯線1220の外周には、シリコーン樹脂による第1の樹脂被覆層1221が設けられている。第1の樹脂被覆層1221の外周には、シリコーン樹脂よりも耐熱性の高いPTFEなどのフッ素系樹脂部材によって構成される、第3の樹脂被覆層1224が設けられている。
【0094】
本実施例においては、芯線1220の外周に、シリコーン樹脂による第1の樹脂被覆層1221が設けられている。このため、第1実施例の場合と同様に、第2の絶縁電線122b全体の被覆層の絶縁性が劣化しにくい。
【0095】
また、本実施例においては、第1の樹脂被覆層1221の外周に、断面形状が第1の樹脂被覆層1221に対して同心円状となるように、シリコーン樹脂よりも耐熱性の高いフッ素系樹脂による第3の樹脂被覆層1224が設けられている。このため、第2の絶縁電線122bの第1の樹脂被覆層1221は、高温環境下においても、第3の樹脂被覆層1224により形状を維持される。また、第3の樹脂被覆層1224は、第1の樹脂被覆層1221に接して設けられているため、第3の樹脂被覆層1224が第1の樹脂被覆層1221に接して設けられ廷内態様に比べて、さらに、第1の樹脂被覆層1221の形状を維持しやすい。その結果、第2の絶縁電線122bの第1の樹脂被覆層1221は、高温環境下においても、高温環境下でも変形しにくい。
【0096】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0097】
C1.変形例1:
上記実施例では、微粒子センサ100のうち、排ガス配管415内に配置される先端部100eに、イオン発生部50と、排ガス帯電部40と、イオン捕捉部30とが配列されていた。しかし、先端部100eには、少なくとも排ガス帯電部40が配列されていれば良く、イオン発生部50については、例えば、微粒子センサ100のうち排ガス配管415の外側に配置される部位に離隔して設けられるものとしてもよい。また、イオン捕捉部30を設けなくても排ガス中の煤Sの量を検出することは可能であるが、煤Sの量を検出する精度を高める観点からイオン捕捉部30を設置した方がよい。
【0098】
C2.変形例2:
上記実施例においては、イオン発生部50において生じたイオンPIを帯電部40およびイオン捕捉部30へと流入させるために利用される気体は、空気である。しかし、イオンPIを帯電部40およびイオン捕捉部30へと流入させるために利用される気体は、検出対象である微粒子を含まない他の気体とすることもできる。イオンPIを帯電部40およびイオン捕捉部30へと流入させるために利用される気体は、微粒子センサ100が使用される環境下において電離しにくいものであることが好ましい。そして、イオンPIを帯電部40およびイオン捕捉部30へと流入させるために利用される気体は、コロナ放電により、電離されるものであることが、より好ましい。さらに、微粒子センサ100が使用される環境において微粒子センサ100やセンサ駆動部110の周囲に存在する気体であることが好ましい。
【0099】
C3.変形例3:
上記実施例では、先端部100eにおけるケーシングCSの内壁面の一部をコロナ放電の陰極や陽イオンPIを捕捉するための陰極として機能させていた。しかし、それらの陰極は、先端部100eのケーシングCSとは別の部材として別個に設けられるものとしてもよい。
【0100】
C4.変形例4:
上記実施例では、イオン発生部50の内部空間72と排ガス帯電部40の内部空間71との間にノズル42が形成されていた。しかし、それら2つの内部空間71,72の間にはノズル42は形成されていなくともよい。ただし、2つの内部空間71,72の間にノズル42を設けることにより、ノズル42からの噴流によって内部空間71に負圧を発生させることができる。従って、流入孔45を介した外部からの排ガスの取り込みを良好にして、その取り込み量を安定させることができ、排ガス中の微粒子量の検出精度を向上させることが可能である。
【0101】
C5.変形例5:
上記実施例では、コロナ放電により第2の電極20とノズル形成部材41との間で陽イオンを発生させ、第1の電極10にて陽イオンとの間で斥力を生じさせる構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、これらの部材10,20,41の正負の接続先を変更することで、 コロナ放電により第2の電極20とノズル形成部材41との間で陰イオンを発生させ、第1の電極10にて陰イオンとの間で斥力を生じさせる構成を採って被検出ガス中に含まれる微粒子の量を検出するようにしてもよい。
【0102】
C6.変形例6:
また、上記実施例においては、イオン発生部50では、2〜3kVの電圧を、100kHzで断続的に第2の電極20に印加する。しかし、イオンを生成するために電極に電圧を印加する態様は、他の電圧や他の周波数とするなど、他の態様であってもよい。ただし、断続的に電圧が印加されたり、交流電圧が印加される態様において、絶縁電線の被覆の劣化は顕著である。このため、本発明は、そのような態様に適用するとより好適である。
【0103】
C7.変形例7:
シリコーン樹脂による被覆の外側がシリコーン樹脂よりも耐熱性が高い素材で被覆されている態様としては、図8に示す第3の樹脂被覆層1224のように、シリコーン樹脂による被覆1221に接した層1224が、耐熱性が高い素材で設けられている態様とすることができる。また、図5および図8に示す第1のケーブル被覆層1202や第2のケーブル被覆層1203のように、他の層や構成を介在させて、シリコーン樹脂による被覆1221を覆う構成が、耐熱性が高い素材で設けられている態様とすることもできる。
【0104】
C8.変形例8:
上記実施例においては、図5や図8のような構成は、センサ駆動部110と微粒子センサ100を結ぶケーブル120の被覆の全長にわたって採用される。しかし、図5や図8のような構成を、センサ駆動部110と微粒子センサ100を結ぶケーブル120の被覆の長手方向(軸線方向)に沿った一部、たとえば、微粒子センサ100との接続部分を含み微粒子センサ100に近い側の一部において、採用することもできる。
【0105】
また、第2の絶縁電線122におけるシリコーン樹脂による第1の樹脂被覆層1221は、第2の絶縁電線122の被覆の全長にわたって採用される。しかし、第1の樹脂被覆層1221は、第2の絶縁電線122の被覆の長手方向(軸線方向)に沿った一部、たとえば、他の導電部材の近傍にある部分や、微粒子センサ100との接続部分を含み微粒子センサ100に近い側の一部において、採用することもできる。ただし、シリコーン樹脂による第1の樹脂被覆層1221は、第2の絶縁電線122の被覆の全長にわたって採用されることが好ましい。
【0106】
そして、第2実施例において、シリコーン樹脂よりも耐熱性の高い素材によって構成される第3の樹脂被覆層1224は、第2の絶縁電線122bの被覆の全長、すなわち、第1の樹脂被覆層1221が設けられている部分の全部にわたって採用される。しかし、第3の樹脂被覆層1224は、第1の樹脂被覆層1221が設けられている部分のうちの長手方向(軸線方向)に沿った一部、たとえば、他の部分に比べて高温になる部分や、微粒子センサ100との接続部分を含み微粒子センサ100に近い側の一部において、採用することもできる。ただし、シリコーン樹脂よりも耐熱性の高い素材によって構成される第3の樹脂被覆層1224は、第2の絶縁電線122bの被覆の全長にわたって採用されることが好ましい。
【0107】
C9.変形例9:
上記実施例においては、ケーブル120の第3の樹脂被覆層1224、ならびに第1のケーブル被覆層1202および第2のケーブル被覆層1203を構成する素材として、PTFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)を例示した。しかし、ケーブルにおいて、シリコーン樹脂製の被覆の形状を維持するための構成は、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)など、他の素材で構成することもできる。すなわち、ケーブルにおいて、シリコーン樹脂製の被覆の形状を維持するためにシリコーン樹脂製の被覆の外側に配される構成の素材は、シリコーン樹脂よりも前記微粒子センサの使用温度下で耐熱性が高い素材であればよい。ただし、シリコーン樹脂製の被覆の形状を維持するための構成の素材は、PTFE、FEP、PFA等を含むフッ素系樹脂の中から選択することが好ましい。
ただし、「シリコーン樹脂よりも耐熱性が高い素材」は、フッ素系樹脂以外の素材であってもよい。
【0108】
また、本実施例において、上記各構成の素材として、UL(Underwriters Laboratories Inc.)規格における746BのRTI(Relative Thermal Index:相対温度指数)が、シリコーン樹脂に比べて高い素材が採用される。ただし、シリコーン樹脂による被覆層の外側を覆う層は、特に、微粒子センサの使用環境下(特に使用温範囲)において、変形しにくい素材で構成されることが好ましい。
【符号の説明】
【0109】
10…第1の電極
11…先端部
12…本体部
13…後端部
15…セラミックパイプ
20…第2の電極
21…先端部
22…本体部
23…後端部
25…セラミックパイプ
30…イオン捕捉部
31…ガス流路
31a…第1流路部
31b…第2流路部
33…パイプ挿通孔
34…溝部
35…排出孔
40…排ガス帯電部
41…隔壁
42…ノズル
43…パイプ挿通孔
45…流入孔
50…イオン発生部
50f…鍔部
52…第1のパイプ挿通孔
53…第2のパイプ挿通孔
54…空気供給孔
61…第1の保持部材
62…第2の保持部材
64…ガスケット
65…板パッキン
66…グロメット
70,71,72…内部空間
100…微粒子センサ
100e…先端部
101…キャップ
102…内筒
103…取付固定部
103f…フランジ
103s…本体部
104…ジョイント部
104e…工具係合部
104p…貫通孔
105…外筒
105c…加締め部
110…センサ駆動部
111…センサ制御部
112…電気回路部
113…エア供給部
120…ケーブル
1201…ガラス繊維部
1202…第1のケーブル被覆層
1203…第2のケーブル被覆層
1204…外皮
121…第1の絶縁電線
1210…芯線
1211…第1の樹脂被覆層
122,122b…第2の絶縁電線
1220…芯線
1221…第1の樹脂被覆層
1224…第3の樹脂被覆層
123…空気供給管
123s…補強部材
124…信号線
200…ケーブル
210…一次側電源部
220…二次側電源部
221…第1電流供給回路
222…第2電流供給回路
230…電流差計測部
400…内燃機関
410…燃料供給部
411…燃料配管
415…ガス配管
416…フィルタ装置
417…取付用ボス
420…車両制御部
500…車両
CL…仮想中心線
CS…ケーシング
DL…排ガス配管の延伸方向
PI…陽イオン
S…煤
SL1…第1のシールド線
SL2…第2のシールド線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナ放電によってイオンを発生させるイオン発生部と、
前記コロナ放電のための電力を外部電源から前記イオン発生部に供給するための導電線と、
微粒子を含むガス中の少なくとも一部の前記微粒子を、前記イオンを用いて帯電させる帯電部と、を備え、
前記微粒子の帯電に使用された前記イオンの量に基づいて前記ガス中の前記微粒子の量を検出する微粒子センサにおいて、
前記導電線の少なくとも一部は、シリコーン樹脂によって被覆されている、微粒子センサ。
【請求項2】
請求項1記載の微粒子センサであって、
前記導電線において、前記シリコーン樹脂による被覆の少なくとも一部の外側が、前記シリコーン樹脂よりも前記微粒子センサの使用温度下で耐熱性が高い素材で被覆されている、微粒子センサ。
【請求項3】
請求項2記載の微粒子センサであって、
前記シリコーン樹脂よりも前記耐熱性が高い素材は、フッ素系樹脂である、微粒子センサ。
【請求項4】
請求項1〜3記載の微粒子センサであって、さらに、
前記イオン発生部において生じた前記イオンを前記帯電部へと流入させるために利用される気体を、外部の気体供給部から前記イオン発生部に供給するための気体供給管を備え、
前記気体供給管と前記導電線とは、一体的にケーブルに収容されている、微粒子センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−255661(P2012−255661A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127503(P2011−127503)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】