説明

微細な充填材の水性スラリー、その製法および充填材含有紙を製造するためのその使用

微細な充填材の水性スラリーを、(a)少なくとも1種の式(III)のN−ビニルカルボン酸アミド、(b)分子中に炭素原子3〜8個を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸および/またはその塩少なくとも1種、および場合により(c)その他の、ニトリル基を有さないモノエチレン性不飽和モノマー、および場合により(d)分子中にエチレン性不飽和二重結合を少なくとも2個有する化合物を共重合し、かつ引き続きコポリマー中に組み込み重合されたモノマーIIIから基−CO−Rを部分的にまたは完全に脱離することにより得られる水溶性の両性コポリマー少なくとも1種で処理することにより得られる、少なくとも部分的にポリマーで被覆されている微細な充填材の水性スラリー、その製法および紙原料を脱水することによる充填材含有紙、充填材含有厚紙または充填材含有板紙の製造における、紙原料への添加剤としての水性スラリーの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的にポリマーで被覆されている微細な充填材の水性スラリーに関する。この水性スラリーの製法、および充填材含有紙、充填材含有厚紙または充填材含有板紙を製造する際の紙原料への添加物としての使用に関する。
【0002】
EP−B−0251182からは、ポリマー製法が公知であり、この際、N−ビニルホルムアミドおよびアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルの混合物をラジカル形成性開始剤の存在で重合し、引き続きこのポリマーを酸での処理により変性する。この変性したポリマーは塩の形のビニルアミン単位、ビニルホルムアミド単位およびアクリロニトリル単位もしくはメタクリロニトリル単位並びに場合によりアクリルアミド単位およびアクリル酸単位を含有する。この文献の例をこれに従って実施する場合、酸で加水分解したポリマーと共に、著しい量の式
【0003】
【化1】

のアミジン単位が得られることが明らかになる。この加水分解したポリマーは、製紙の際に脱水剤、歩留向上剤として、および紙の強化のために使用される。
【0004】
EP−B−0528409からは、カチオン性コポリマーが公知であり、これはアミジン単位20〜90モル%を含有する。これはN−ビニルホルムアミドおよびアクリロニトリルの共重合および引き続くこのコポリマーの酸での加水分解により製造される。このアミジン単位を含有するポリマーをスラリーの凝集剤として使用している。
【0005】
EP−B−672212の対象はN−ビニルカルボン酸アミド、モノエチレン性不飽和カルボン酸および場合により酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンおよび/またはN−ビニルイミダゾールおよび場合により分子中に少なくとも2個の二重結合を有するモノマーを共重合し、引き続きコポリマー中に含有されるビニルカルボン酸アミド単位をアミン基またはアンモニウム基に部分的にまたは完全に加水分解することにより得られるコポリマーの、製紙にける脱水速度、歩留並びに紙の乾燥強度および湿潤強度を上昇するための、紙原料への添加物としての使用である。加水分解した、N−ビニルホルムアミドとアクリル酸とからなるコポリマーは、分析が示すように、式
【0006】
【化2】

[Xはアニオンを表す]のアミジン単位を著しい量で含有する。
【0007】
特開平08−059740号公報からは、無機粒子の水性懸濁液に水溶性両性ポリマーを添加することが公知であり、その際、少なくともポリマーの一部が充填材の表面に吸着される。この両性ポリマーは有利に、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリルおよびアクリル酸からなるコポリマーを酸の存在で加水分解することにより製造される。これは構造
【0008】
【化3】

[式中、RおよびRはそれぞれHまたはメチル基を表し、Xはアニオンを表す]のアミジン単位20〜90モル%を含有する。そのようなポリマーで処理された充填材スラリーは、充填材含有紙の製造の際に添加される。充填材処理は、紙原料の脱水の改善のために実施され、更に乾燥紙の種々の強度特性の改善および充填材歩留の向上が得られる。
【0009】
US−A2002/0088579中には、カチオン、アニオンおよび両性(両性イオン)ポリマーでの無機充填材の前処理が記載されている。
【0010】
この処理は、いずれの場合にも少なくとも2工程からなる。最初にカチオン性ポリマーでのおよび引き続きアニオン性ポリマーでの処理が勧められる。その他の工程においては、選択的に再度その他のカチオン性およびアニオン性ポリマーを吸着させることができる。この前処理した充填材粒子を有する水性懸濁液は充填材含有紙の製造の際に紙原料に添加される。この充填材処理は、乾燥した紙の種々の強度特性を改善する。
【0011】
本発明の課題は、製紙の際に使用可能である、その他の微細な充填材の水性スラリーを提供することである。
【0012】
この課題は、少なくとも部分的にポリマーで被覆されている微細な充填材の水性スラリーで解決し、この際、このスラリーは、微細な充填材の水性スラリーを、
(a)少なくとも1種の式
【0013】
【化4】

[式中、R、R=HまたはC〜C−アルキルを表す]
のN−ビニルカルボン酸アミド、
(b)分子中に炭素原子3〜8個を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸および/またはそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩少なくとも1種、および場合により
(c)その他の、ニトリル基を有さないモノエチレン性不飽和モノマー、および場合により
(d)分子中にエチレン性不飽和二重結合を少なくとも2個有する化合物
を共重合し、引き続きこのコポリマー中に組み込み重合されたモノマーIIIから基−CO−Rを部分的にまたは完全に脱離することにより得られる、水溶性の両性コポリマー少なくとも1種で処理することにより得られる。
【0014】
この水性スラリーは、例えば少なくとも1種の微細な充填材1〜50質量%、有利に10〜40質量%を含有する。水溶性両性ポリマーの量は、充填材に対して例えば0.1〜5質量%、有利に0.25〜3質量%である。
【0015】
更に、本発明の対象は水性スラリーの製法であり、この際、少なくとも1種の微細な充填材の水性スラリーに、
(a)少なくとも1種の式
【0016】
【化5】

[式中、R、R=HまたはC〜C−アルキルを表す]
のN−ビニルカルボン酸アミド、
(b)分子中に炭素原子3〜8個を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸および/またはそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩少なくとも1種、および場合により
(c)その他の、ニトリル基を有さないモノエチレン性不飽和モノマー、および場合により
(d)分子中にエチレン性不飽和二重結合を少なくとも2個有する化合物
を共重合し、引き続きコポリマー中に組み込み重合されたモノマーIIIから基−CO−Rを部分的にまたは完全に脱離することにより得られる、少なくとも1種のコポリマーを充填材に対して0.1〜5質量%の量で添加するか、または
少なくとも1種の微細な充填材の水性スラリーを、前記両性コポリマーの水溶液中に供給し、かつ成分をそれぞれ混合する。
【0017】
水溶性両性ポリマーの分子量は、例えば少なくとも10000ダルトン、有利に少なくとも100000ダルトンであり、特に少なくとも500000ダルトンである。
【0018】
本発明の更なる対象は、充填材含有紙、充填材含有厚紙または充填材含有板紙を製造する際の、前記の水性スラリーの紙原料への添加剤としての使用である。
【0019】
充填材としては、製紙産業に常用の全ての顔料、例えば粉砕した形の炭酸カルシウム(GCC)、カルク、チョーク、大理石または沈降炭酸カルシウム(PCC)、タルク、カオリン、ベントナイト、サチンホワイト、硫酸カルシウム、硫酸ビスマスおよび二酸化チタンを考慮することができる。2種以上の顔料からなる混合物を使用することもできる。微細な充填材の粒子直径は、例えば40〜90%が、2μmより小さい。
【0020】
この充填材を例えば水中に供給することにより、水性スラリーにする。沈降炭酸カルシウムは通常分散剤の不存在で水性スラリーを形成する。その他の充填材の水性スラリーを製造するためには、一般にアニオン性分散剤、例えば平均分子量Mw1000〜40000ダルトンを有するポリアクリル酸を使用する。アニオン性分散剤を使用する場合、充填材水性スラリーを製造するために、アニオン性分散剤を、例えば0.01〜0.5質量%、有利に0.2〜0.3質量%使用する。アニオン性分散剤の存在下に水中で分散した微細な充填材はアニオン性である。水性スラリーは少なくとも1種の充填材を、例えば10〜30質量%、多くの場合15〜25質量%含有する。
【0021】
本発明による微細な充填材の水性スラリーを製造するためには、アニオン性に分散した微細な充填材の水性スラリーを少なくとも1種の水溶性両性ポリマーで処理する。例えば、少なくとも1種の微細な充填材を1〜50質量%まで含有する水性スラリーに、充填材に対して0.1〜5質量%の水溶性両性ポリマーを添加するか、または微細な充填材の水性スラリーを両性ポリマーの水溶液中に導入し、それぞれ成分を混合することができる。微細な充填材の水性スラリーの両性ポリマーでの処理は連続的にまたは非連続的に実施することができる。微細な充填材の水性スラリーと両性ポリマーの水溶液とを一緒にする際に、充填材粒子は少なくとも部分的に両性ポリマーで被覆されるか、または含浸される。成分の混合は、例えば剪断場で実施される。多くの場合、成分を一緒にした後に撹拌することにより、またはこれをウルトラチュラックス装置の剪断場で処理することで十分である。水性スラリーの成分を一緒に合することおよび混合は、例えば0〜95℃で、有利に10〜70℃で実施することができる。多くの場合、成分をそれぞれ室温〜温度40℃で混合する。両性ポリマーで処理した充填材の水性スラリーのpH−値は、例えば5〜11、有利に6〜9であり、この際炭酸カルシウムを含有するスラリーのpH値は、有利に6.5より高い。
【0022】
水溶性の両性コポリマーは従来技術において記載したEP−B−0672212から公知である。これは
(a)少なくとも1種の式
【0023】
【化6】

[式中、R、R=HまたはC〜C−アルキルを表す]
のN−ビニルカルボン酸アミド、
(b)分子中に炭素原子3〜8個有するモノエチレン性不飽和カルボン酸および/またはそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩少なくとも1種、および場合により
(c)その他の、ニトリル基を有さないモノエチレン性不飽和モノマー、および場合により
(d)分子中にエチレン性不飽和二重結合を少なくとも2個有する化合物
を共重合し、引き続きコポリマー中に組み込み重合されたモノマーIIIから基−CO−Rを部分的にまたは完全に脱離することにより製造される。
【0024】
(a)N−ビニルホルムアミド、
(b)アクリル酸、メタクリル酸、および/またはそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、および場合により
(c)その他の、ニトリル基を有さないモノエチレン性不飽和モノマー
を共重合し、引き続きこのコポリマー中に含有されるビニルホルムアミド単位を酸、例えば塩酸または塩基、例えば水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液の存在で部分的または完全に加水分解することにより得られる両性コポリマーで処理されている、微細な充填材の水性スラリーが有利である。酸または塩基でビニルホルムアミド単位を加水分解する際に、式
【0025】
【化7】

[式中Xはアニオンを表す]のビニルアミンおよび/またはアミジン単位が生じる。始めにアニオン性のコポリマーは、これによりカチオン基を有し、こうして両性になる。組み込み重合されたモノマー単位IIIの加水分解は、酵素によっても実施することができる。アミジン単位は隣接するビニルアミン単位とビニルホルムアミド単位とを反応させることにより生じる。以下には、両性のコポリマーに関して、組み込み重合したN−ビニルカルボン酸アミドの単位から生じるビニルアミン単位とアミジン単位の合計を常に記載する。
【0026】
群(a)のモノマーの例はN−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミドおよびN−ビニルプロピオンアミドである。群(a)のモノマーは単独で、または他の基のモノマーとの共重合における混合物で使用することができる。
【0027】
群(b)のモノマーとしては、炭素原子3〜8個を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸並びにこれらのカルボン酸の水溶性塩を挙げることができる。これらのモノマーの群には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ジメタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、アリル酢酸、ビニル酢酸およびクロトン酸が属する。これらの群のモノマーは、単独で、または相互に混合物の形で、部分的にまたは完全に中和した形で共重合に使用することができる。中和のためには、例えばアルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基、アンモニア、アミンおよび/またはアルカノールアミンを使用する。このための例は水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、トリエタノールアミン、エタノールアミン、モルホリン、ジエチレントリアミンまたはテトラエチレンペンタミンである。
【0028】
コポリマーは、変性のために場合により群(c)のモノマーを組み込み重合された形で含有することができる、このモノマーはニトリル基を含有しない、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、酢酸ビニル、ビニルプロピオネート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドである。
【0029】
コポリマーの更なる変性は、共重合の際に、モノマー(d)を使用することにより可能であり、これは分子中に少なくとも2個の二重結合を含有するモノマー、例えばメチレンビスアクリルアミド、グリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリトリットトリアリルエーテル、アクリル酸および/またはメタクリル酸で少なくとも2度エステル化されているポリアルキレングリコールまたはポリオール、例えばペンタエリトリット、ソルビットまたはグルコースである。群(d)のモノマー少なくとも1種を共重合の際に使用する場合、使用する量は2モル%まで、例えば0.001〜1モル%である。
【0030】
モノマーの共重合は公知法で、例えばEP−B−0672212、第4頁、第13〜37行により行う。コポリマーの加水分解は、前記EP特許明細書の第4頁、第38〜58行および第5頁第1〜25行に記載されている。酸の存在で加水分解を行った、加水分解したコポリマーを使用するのが有利である。組み込み重合されたビニルカルボン酸アミド基の加水分解度は、例えば1〜98、多くの場合10〜98%、有利に20〜60モル%である。
【0031】
加水分解したコポリマーは、例えば
(i)ビニルカルボン酸アミド単位1〜98モル%、有利に1〜75モル%、
(ii)少なくとも1種の、炭素原子3〜8個を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸の単位1〜98モル%、有利に1〜55モル%、および
(iii)式
【0032】
【化8】

[式中、Xはアニオンを表す]のビニルアミン−および/またはアミジン単位1〜98モル%、有利に1〜55モル%、および場合により
(iv)その他の、ニトリル基不含のモノエチレン性不飽和化合物の単位30モル%までを含有する。
【0033】
(i)ビニルホルムアミド単位 5〜70モル%、
(ii)アクリル酸単位および/またはメタクリル酸単位 15〜45モル%、
および
(iii)塩の形のビニルアミン単位および式IIのアミジン単位 10〜50モル%
を含有する、加水分解したコポリマーが特に有利である。
【0034】
両性コポリマーはアニオン性またはカチオン性過剰電荷を有していてよいか、または同量のアニオンおよびカチオン基がコポリマー中に存在している場合には、電気的に中性であってよい。両性コポリマーの電荷状態に依存して、これで製造した充填材の水性スラリーはアニオン性、カチオン性であるか、または両性コポリマーが同量のカチオン電荷およびアニオン電荷を示す場合には、電気的に中性である。
【0035】
pH7でアニオン性領域でもカチオン性領域でも電荷密度が有利に最高でも1meq/gを有するような両性コポリマーを使用するのが有利である。
【0036】
例中でのパーセンテージでの記載は、その関連から他のものであることが明らかでない限りは、質量%を表す。電気泳動移動度もしくはゼータ電位はレーザオプティカル法により測定した。電気泳動測定のためには、試料を測定のための濃度である1体積%にKCl水溶液(例えば10ミリモル)で希釈した。測定装置としては、Malvern Instrument 社のZetasizer 3000HSを使用した。
【0037】
ポリマーの分子量Mwは静的光散乱法を用いて測定した。この測定はpH7.6で10ミリモル濃度の塩化ナトリウム水溶液中で実施した。
【0038】
ポリマーの組成は、13C−NMR−分光分析で測定した。このためには、次のC−原子のシグナルを積分した。溶媒としては、DOを使用した。
【0039】
【表1】

【0040】
個々のモノマー単位の量(モル%)は次の式により得られる:
アクリル酸:100×F(アクリレート)/[F(アクリレート)+F(ホルミエート)+F(ホルムアミド)+F(アミジン)]、
ビニルアミン:100×F(ホルミエート)/[F(アクリレート)+F(ホルミエート)+F(ホルムアミド)+F(アミジン)]、
ビニルホルムアミド:100×F(ホルムアミド)/[F(アクリレート)+F(ホルミエート)+F(ホルムアミド)+F(アミジン)]、
アミジン:100×F(アミジン)/[F(アクリレート)+F(ホルミエート)+F(ホルムアミド)+F(アミジン)]。
【0041】
充填材としては沈降チョーク、沈降炭酸カルシウム(PCC)、粉砕炭酸カルシウム(GCC)、カオリンまたは前記の充填材の混合物を使用した。
【0042】
実施例
例1
ビニルホルムアミド単位40モル%、アクリル酸単位30モル%およびビニルアミン−およびアミジン単位30モル%の含量を有し、かつ分子量Mw約500000を有する両性コポリマーの12%水溶液6gをビーカー中に装入し、引き続き水30gで希釈した。引き続き、沈降炭酸カルシウム(PCC)の20%濃度の水性スラリー150gを添加した。PCCスラリーの添加の間およびその後、混合をHeiltof−撹拌装置を用いて1分当たり1000回転(rpm)で撹拌した。引き続き、混合物のpH−値を8.5に調節した。微量電気泳動法を用いて、充填材粒子の移動度をpH8.5およびpH7で測定した。この電気泳動移動度は、両方のpH−調節で僅かに負の値を有した。
【0043】
例2
ビニルホルムアミド単位5モル%、アクリル酸単位45モル%およびビニルアミン−およびアミジン単位50モル%の含量を有し、かつ分子量Mw約400000を有する両性コポリマーの12%水溶液6gをビーカー中に装入し、引き続き水30gで希釈した。引き続き、沈降炭酸カルシウム(PCC)の20%濃度の水性スラリー150gを添加した。PCCスラリーの添加の間およびその後、混合をHeiltof−撹拌装置を用いて1000rpmで撹拌した。引き続き、混合物のpH−値を8.5に調節した。微量電気泳動法を用いて、充填材粒子の移動度をpH8.5およびpH7で測定した。この電気泳動移動度は、両方のpH−調節で僅かに負の値を有した。
【0044】
例3
ビニルホルムアミド単位70モル%、アクリル酸単位20モル%およびビニルアミン−およびアミジン単位10モル%の含量を有し、かつ分子量Mw約700000を有する両性コポリマーの12%水溶液6gをビーカー中に装入し、引き続き水30gで希釈した。引き続き、沈降炭酸カルシウム(PCC)の20%濃度の水性スラリー150gを添加した。PCCスラリーの添加の間およびその後、混合をHeiltof−撹拌装置を用いて1000rpmで撹拌した。引き続き、混合物のpH−値を8.5に調節した。微量電気泳動法を用いて、充填材粒子の移動度をpH8.5およびpH7で測定した。この電気泳動移動度は、両方のpH−調節で僅かに負の値を有した。
【0045】
例4
ビニルホルムアミド単位30モル%、アクリル酸単位40モル%およびビニルアミン−およびアミジン単位30モル%の含量を有し、かつ分子量Mw約400000を有する両性コポリマーの12%水溶液6gをビーカー中に装入し、引き続き水30gで希釈した。引き続き、沈降炭酸カルシウム(PCC)の20%濃度の水性スラリー150gを添加した。PCCスラリーの添加の間およびその後、混合をHeiltof−撹拌装置を用いて1000rpmで撹拌した。引き続き、混合物のpH−値を8.5に調節した。微量電気泳動法を用いて、充填材粒子の移動度をpH8.5およびpH7で測定した。この電気泳動移動度は、両方のpH−調節で僅かに負の値を有した。
【0046】
例5
ビニルホルムアミド単位30モル%、アクリル酸単位30モル%およびビニルアミン−およびアミジン単位40モル%の含量を有し、かつ分子量Mw約400000を有する両性コポリマーの12%水溶液6gをビーカー中に装入し、引き続き水30gで希釈した。引き続き、沈降炭酸カルシウム(PCC)の20%濃度の水性スラリー150gを添加した。PCCスラリーの添加の間およびその後、混合をHeiltof−撹拌装置を用いて1000rpmで撹拌した。引き続き、混合物のpH−値を8.5に調節した。微量電気泳動法を用いて、充填材粒子の移動度をpH8.5およびpH7で測定した。この電気泳動移動度は、両方のpH−調節で僅かに負の値を有した。
【0047】
例6
ビニルホルムアミド単位40モル%、アクリル酸単位30モル%およびビニルアミン−およびアミジン単位30モル%の含量を有し、かつ分子量Mw約500000を有する両性コポリマーの12%水溶液6gをビーカー中に装入し、引き続き水30gで希釈した。引き続き、粉砕炭酸カルシウム(GCC)の20%濃度の水性スラリー150gを添加した。PCCスラリーの添加の間およびその後、混合をHeiltof−撹拌装置を用いて1000rpmで撹拌した。引き続き、混合物のpH−値を8.5に調節した。微量電気泳動法を用いて、充填材粒子の移動度をpH8.5およびpH7で測定した。この電気泳動移動度は、両方のpH−調節で僅かに負の値を有した。
【0048】
例7
ビニルホルムアミド単位40モル%、アクリル酸単位30モル%およびビニルアミン−およびアミジン単位30モル%の含量を有し、かつ分子量Mw約500000を有する両性コポリマーの12%水溶液6gをビーカー中に装入し、引き続き水30gで希釈した。引き続き、カオリン・クレー混合物の20%濃度の水性スラリー150gを添加した。このスラリーの添加の間およびその後、混合をHeiltof−撹拌装置を用いて1000rpmで撹拌した。引き続き、混合物のpH−値を8.5に調節した。微量電気泳動法を用いて、充填材粒子の移動度をpH8.5およびpH7で測定した。この電気泳動移動度は、両方のpH−調節で僅かに負の値を有した。
【0049】
比較例1(特開平08−059740号公報の例1による)
構造Iのアミジン単位35モル%、ビニルホルムアミド単位20モル%、ビニルアミン単位10モル%、アクリル酸単位5モル%およびニトリル単位30モル%の含量を有し、かつ分子量Mw300000ダルトンを有する両性コポリマーの12%水溶液6gをビーカー中に装入し、引き続き水30gで希釈した。ポリマーの極限粘度は2.7dl/gであった(NaCl含量0.1g/dlにおけるNaCl−水溶液中、温度25℃でオスワルド−粘度測定装置で測定)。引き続き、沈降炭酸カルシウム(PCC)の20%濃度の水性スラリー150gを添加した。このスラリーの添加の間およびその後、混合をHeiltof−撹拌装置を用いて1000rpmで撹拌した。引き続き、混合物のpH−値を8.5に調節した。微量電気泳動法を用いて、充填材粒子の移動度をpH8.5およびpH7で測定した。この電気泳動移動度は、両方のpH−調節で僅かに負の値を有した。
【0050】
充填材含有紙の製造
A型の紙
例8〜14
固体濃度4%において、70/30の比でTMP(サーモメカニカルパルプ)および砕木パルプからなる混合物を、粉砕度(Mahlgrad)60〜65が達せられるまで、実験室用パルプ製造器中で粒むらがなくなるまで叩解した。その際、原料のpH−値は7〜8の範囲である。引き続き、粉砕した原料に水を添加することにより固体含量0.35%に希釈した。
【0051】
充填材含有紙を製造する際の、前記水性充填材スラリーの挙動を調べるために、それぞれ紙原料懸濁液500mlを予め装入し、このプルプ中に例および比較例により処理したスラリー並びにカチオン性ポリアクリルアミド(Polymin KE 2020)を歩留向上剤として配量した。歩留向上剤の配合量は紙原料懸濁液の乾燥含量に対してそれぞれ0.01%であった。スラリーの量は多くの予備実験により、この原料で完成した紙シートの灰分が32%であるように調節した。更にこの紙シートは、第1表に記載されているような沈降炭酸カルシウム(PCCスラリー)、粉砕した炭酸カルシウム(GCCスラリー)並びにカオリン・クレーの20%水性スラリーの使用下に製造した。
【0052】
この紙シートをそれぞれISO5269/2によりRapid−Koethenシート形成装置上で、80g/mのシート質量で完成し、引き続き90℃で7分間乾燥し、その後200N/cmのニップ圧でカレンダー加工した。
【0053】
A型の紙シートの試験
温度23℃、湿度50%で一定のコンディショニング室中で12時間貯蔵した後に、DIN54540によるシートの乾燥裂断長およびBendtsen(ISO5636−3)によるシートの多孔性を試験した。乾燥耐ピッキング性をIGT−印刷適性試験(SO3783)で調べた。結果を第1表に示す。
【0054】
B型の紙
例15〜20
固体濃度4%において、70/30の比で漂白バーチスルフェート(Birkensulfat)および漂白パインサルファイト(Kiefernsulfit)からなる混合物を、粉砕度55〜60が達せられるまで、実験室用パルプ製造器中で粒むらがなくなるまで叩解した。この叩解した原料に引き続き蛍光増白剤(Blankophor(R)PSG)およびカチオン性デンプン(HiCat5163A)を添加した。カチオン性デンプンの消化は、10%デンプンスラリーとしてジェット型ダイジェスタ中で130℃および1分間の滞留時間で実施した。蛍光増白剤の配合量は紙原料懸濁液の乾燥含量に対して市販品0.5%であった。カチオン性デンプンの配合量は紙原料懸濁液の乾燥含量に対してデンプン0.5%であった。その際、原料のpH−値は7〜8の範囲である。引き続き、粉砕した原料に水を添加することにより固体含量0.35%に希釈した。
【0055】
充填材含有紙を製造する際の、前記水性充填材スラリーの挙動を調べるために、それぞれ紙原料懸濁液500mlを予め装入し、このパルプ中にそれぞれ例および比較例により処理したスラリー並びにカチオン性ポリアクリルアミド(Polymin KE 2020)を歩留向上剤として配量した。歩留向上剤の配合量は紙原料懸濁液の乾燥含量に対して、ポリマー0.01%であった。スラリーの量は多くの予備実験により、この原料で完成した紙シートの灰分が20%であるように調節した。更にこの紙シートを、第2表に記載されているような沈降炭酸カルシウム(PCC−スラリー)および粉砕した炭酸カルシウム(GCC−スラリー)の20%水性スラリーの使用下に製造した。
【0056】
この紙シートをそれぞれISO5269/2によりRapid−Koethenシート形成装置上で、80g/mのシート質量で完成し、引き続き90℃で7分間乾燥した。
【0057】
B型の紙シートの試験
温度23℃、湿度50%で一定のコンディショニング室中で12時間貯蔵した後に、DIN54540によるシートの乾燥裂断長およびDIN54516による内部強度を試験した。いわゆる、CIE白色度をElrepho SF 400の分光光度計を用いてDIN5033により測定した。結果を第2表に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にポリマーで被覆されている微細な充填材の水性スラリーにおいて、これが微細な充填材の水性スラリーを、
(a)少なくとも1種の式
【化1】

[式中、R、R=HまたはC〜C−アルキルを表す]
のN−ビニルカルボン酸アミド、
(b)分子中に炭素原子3〜8個を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸および/またはそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩少なくとも1種、および場合により
(c)その他の、ニトリル基を有さないモノエチレン性不飽和モノマー、および場合により
(d)分子中にエチレン性不飽和二重結合を少なくとも2個有する化合物
を共重合し、かつ引き続きコポリマー中に組み込み重合されたモノマーIIIから基−CO−Rを部分的にまたは完全に脱離することにより得られる水溶性の両性コポリマー少なくとも1種で処理することにより得られることを特徴とする、少なくとも部分的にポリマーで被覆されている微細な充填材の水性スラリー。
【請求項2】
微細な充填材の水性スラリーを、
(a)N−ビニルホルムアミド、
(b)アクリル酸、メタクリル酸、および/またはそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、および場合により
(c)その他のモノエチレン性不飽和モノマー
を共重合し、引き続きこのコポリマー中に含有されるビニルホルムアミド単位を酸または塩基の存在で部分的または完全に加水分解することにより得られる両性コポリマーで処理する、請求項1記載の水性スラリー。
【請求項3】
少なくとも1種の微細な充填材を1〜50質量%含有し、かつ両性コポリマーの量が充填材に対して0.05〜5質量%である、請求項1または2記載の水性スラリー。
【請求項4】
少なくとも1種の充填材を10〜40質量%含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の水性スラリー。
【請求項5】
両性コポリマーが少なくとも分子量Mw10000を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の水性スラリー。
【請求項6】
組み込み重合されたビニルカルボン酸アミド基の加水分解度が10〜98%である、請求項1から5までのいずれか1項記載の水性スラリー。
【請求項7】
加水分解したコポリマーが
(I)ビニルカルボン酸アミド単位1〜98モル%、有利に1〜75モル%、
(II)少なくとも1種の、炭素原子3〜8個を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸単位1〜98モル%、有利に1〜55モル%、および
(III)式
【化2】

[式中、Xはアニオンを表す]のビニルアミン−および/またはアミジン単位1〜98モル%、有利に1〜55モル%、および場合により
(iv)その他の、ニトリル基不含のモノエチレン性不飽和化合物の単位30モル%までを含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の水性スラリー。
【請求項8】
両性コポリマーが、
(I)ビニルホルムアミド単位 5〜70モル%、
(II)アクリル酸および/またはメタクリル酸単位 15〜45モル%、および
(III)塩の形のビニルアミン単位および式
【化3】

のアミジン単位 10〜50モル%
を含有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の水性スラリー。
【請求項9】
両性コポリマーが過剰のアニオン荷電を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の水性スラリー。
【請求項10】
両性コポリマーが過剰のカチオン荷電を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の水性スラリー。
【請求項11】
両性コポリマーがカチオンおよびアニオン荷電を同量で有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の水性スラリー。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の水性スラリーの製法において、少なくとも1種の微細な充填材水性スラリーに、
(a)少なくとも1種の式
【化4】

[式中、R、R=HまたはC〜C−アルキルを表す]
のN−ビニルカルボン酸アミド、
(b)分子中に炭素原子3〜8個を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸および/またはそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩少なくとも1種、および場合により
(c)その他の、ニトリル基を有さないモノエチレン性不飽和モノマー、および場合により
(d)分子中にエチレン性不飽和二重結合を少なくとも2個有する化合物
を共重合し、引き続きコポリマー中に組み込み重合されたモノマーIIIから基−CO−Rを部分的にまたは完全に脱離することにより得られる、少なくとも1種のコポリマーを充填材に対して0.1〜5質量%の量で添加するか、または
少なくとも1種の微細な充填材水性スラリーを、前記両性コポリマーの水溶液中に供給し、成分をそれぞれ混合することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の水性スラリーの製法。
【請求項13】
水性スラリーの微細な充填材粒子の電気泳動可動性がpH7において負であるか、または最大でも0である、請求項12記載の製法。
【請求項14】
紙原料を脱水することによる充填材含有紙、充填材含有厚紙または充填材含有板紙の製造における、紙原料への添加剤としての、請求項1から11までのいずれか1項記載の水性スラリーの使用。

【公表番号】特表2006−522188(P2006−522188A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504914(P2006−504914)
【出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003347
【国際公開番号】WO2004/087818
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】