説明

微細パルプ含有飲料およびその製造方法、並びに食品用素材

本発明にかかる微細パルプ含有飲料は、少なくとも、パルプ成分として、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が5体積%以上であり、かつ、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が60体積%以下である微細パルプを用いる。また、ホモゲナイザーを用いて原料パルプを破砕して微細パルプとする場合、ホモゲナイザー圧力を5kg/cm以上とすることが好ましい。これにより微細パルプ成分と液状成分とが渾然一体となり、「とろみ」と「ざらつき」という二つの食感を同時に実現した新しい食感を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細化されたパルプ(微細パルプ)を含有する飲料とその製造方法と、当該飲料等に好適に用いられる食品用素材とに関するものであり、特に、微細パルプ成分と果汁等を含む液状成分とが渾然一体となっており、「とろみ」と「ざらつき」という二つの食感を同時に実現した新しい食感を示す微細パルプ含有飲料およびその製造方法と、当該飲料等に好適に用いられる食品用素材とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
果汁を含有する果汁飲料としては、これまで、柑橘類、リンゴ、ブドウ等の果汁を用いて製造されるものが多く知られていた。また、その製造技術としては、果汁の品質向上や果汁を含む飲料組成の検討等によるものが多かった。しかしながら、近年の嗜好の多様化に伴い、果汁以外の素材を含む果汁飲料が広く市販されるようになっている。このような果汁飲料としては、具体的には、例えば、果肉を用いるタイプのもの(果肉飲料)、果粒を用いるタイプのもの(果粒入り果汁飲料)、パルプを用いるタイプのもの(パルプ入り果汁飲料)等を挙げることができる。
【0003】
上記果肉飲料は、果肉を加熱破砕して裏ごししてクリーム状にしたピューレを用い、水、糖類、酸味料、香料等を添加した後に、ホモゲナイザー処理して製造される。その特徴は、粘調(100cps程度)で甘く濃厚感があり、口当たりがよい、すなわち「とろみ」という食感を実現できるという点であり、例えば、ネクター(登録商標)等を挙げることができる。なお、果肉飲料で使用される果実としては、モモ、アンズ、ナシ、リンゴ、ミカン、バナナ、グァバ、パッションフルーツ、およびこれらの混合品を挙げることができるが、その主流はモモである。
【0004】
また、果肉飲料に関する技術の一例として、特許文献1には、柑橘類の果実の摩砕物(磨砕物)を用いた技術が開示されている。この技術では、柑橘果実の実質上全果の摩砕物を用いており、さらに当該摩砕物においては、75〜250μmの範囲内の粒度画分が50w/w%以上となるようになっている。このように全果の摩砕物、すなわち種子ごと摩砕したものを用いることで、果汁飲料における栄養成分を豊富なものとすることが可能となっている。
【0005】
次に、上記果粒入り果汁飲料は、果汁に加えて、果粒すなわちさのうや果肉を細かくしたものを含有する飲料である。その特徴は、「さらり」とした口当たりでありながら、果粒由来の果実感を楽しめるという点であり、例えば、いわゆる「つぶつぶみかんジュース」を挙げることができる。
【0006】
次に、上記パルプ入り果汁飲料は、果汁に加えてパルプ分を含有する飲料である。その特徴は、「さらり」とした口当たりでありながら、生搾り風の果実感を楽しめるという点であり、例えば、粘度調整のためにパルプを加える技術が知られている。
【0007】
具体的には、例えば、特許文献2には、果実パルプ質の磨砕物と、果汁とを含有する果実飲料であって、長手方向の長さが500μm以上のパルプ質の断片が残っており、全体の粘度が15〜50cpsとされている果実飲料が開示されている。この技術では、比較的大きな断片の果実の繊維質を含有し、しかも比較的さらりとしてのどごしがよく、異物感が少ない果実飲料を提供することができるとしている。また、この果実飲料は、一般的な果汁飲料とは異なり、ネクターのような果肉飲料とも異なるもので、従来にない新しい風味の果実飲料を提供することができるとしている。
【0008】
また、特許文献3には、化学物質からなる保湿剤、分散剤、粘度調整剤のかわりに微細化した柑橘パルプを用いる技術が開示されている。この技術では、飲料も含む各種食品に、200μm以下に微細化した柑橘パルプを加えることで、食品のしっとり感、粘度の経時変化の抑制、分離防止の効果を付与することができるので、人体に対して安全な形での食品添加が可能であるとしている。
【0009】
【特許文献1】 特開2002−300866号公報(公開:平成14(2002)年10月15日)
【特許文献2】 特開平10−210956号公報(公開日:平成10(1998)年8月11日)
【特許文献3】 特開2001−128637号公報(公開日:平成13(2001)年5月15日)
【0010】
ところが、上記のような、果汁以外の素材を含む果汁飲料を製造する技術では、味のバリエーションを広いものとするとともに、良好なバランスの食感を実現することが困難となっている。
【0011】
具体的には、まず、上記果肉飲料、例えばネクター(登録商標)の場合、使用する果実がモモかそれに類似する果実(リンゴ・アンズ等)に限定されるため、味のバリエーションが少なくなるという傾向にある。また、裏ごししたピューレに他の成分を添加した後ホモゲナイザー処理するため、「とろみ」という食感があるものの、「ざらつき」という食感がないため、飲料としての味わいが単調になっている。
【0012】
次に、上記果粒入り果実飲料は、果粒にできる果実の種類が限定されるため、味のバリエーションが少なくなる傾向にある。また、果粒の量は調整できるが、用いる果実の種類によっては果粒の大きさの調整が困難となる。例えば、リンゴやモモの場合には、果粒のかたさを調整することは可能であるが、果粒が柑橘類のさのうである場合には、そのかたさや大きさの調整が困難である。さらに、果粒が「さらり」とした食感を与える反面、果粒が咽喉に引っ掛かったり、口の中へ均一に入ってこなかったりすることがある。その結果、果粒と飲料との一体感が無い。
【0013】
次に、パルプ入り果汁飲料は、果粒入り果実飲料と同様に、パルプの存在が「さらり」とした食感を与える反面、パルプは果粒に比べると咽喉に引っ掛かりにくいが、口の中へ均一に入ってこなかったりすることがある。そのため、パルプと飲料との一体感が無い。
【0014】
ここで、上記特許文献1に開示されている技術では、柑橘果実を搾汁や裏ごししないで摩砕したものを用いているが、摩砕物は一定の範囲(75〜250μm)の粒度画分が多いため、舌触りは均一なものとなり、「ざらつき」が感じられない。さらに、この技術では、柑橘果実全体を摩砕することから、種子や果皮由来の苦味成分が含まれると考えられるため、摩砕物を多く用いると食感だけでなく味わいも何らかの影響を与えるおそれがある。
【0015】
また、特許文献2に開示されている技術では、微細化した柑橘パルプを添加することにより、果肉様の粘度を保持させることができるため、「従来にない新しい風味の果実飲料を提供する」としている。しかしながら、この文献では、15〜50cpsという低粘度の保持が優先されること、さらに、繊維質の感じられる大きさのパルプが含まれることから、「とろみ」および「ざらつき」という二つの食感をバランス良く実現することができていない。
【0016】
さらに、特許文献3に開示されている技術では、柑橘類の果実を搾汁等した後に副産物として生ずる柑橘パルプを有効利用することに重点が置かれている。この方法では、「とろみ」は得られるが、摩砕物の粒度が細かいため、「ざらつき」は感じられないと考えられる。また、パルプを洗浄後、微細化して乾燥させるため、パルプ由来の果実風味や繊維による果実の食感等が少なくなると考えられる。
【0017】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、パルプを含有させた場合でも、味のバリエーションを広いものとするとともに、「とろみ」と「ざらつき」という食感の制御が可能となり、微細パルプ成分と液状成分とが渾然一体となった飲料を得ることができる飲料およびその製造方法と、これに好適に用いることができる食品用素材とを提供することにある。
【発明の開示】
【0018】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくとも、パルプを微細化する際に、その粒度画分を規定するとともに、好ましくは、粘度および/または微細パルプの含有量、さらには製造過程における微細化条件(特にホモゲナイザー圧力)を規定することによって、微細パルプ成分と液状成分とが渾然一体となり、「とろみ」と「ざらつき」という二つの食感を同時かつ制御可能に実現した新しい食感を示す飲料が得られることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
すなわち、本発明にかかる微細パルプ含有飲料は、上記の課題を解決するために、微細パルプ成分と液状成分とを含有する飲料であって、上記微細パルプ成分には、250μm未満の微細パルプ画分と1000μm以上の微細パルプ画分とが含まれており、全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が5体積%以上であり、かつ、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が60体積%以下であることを特徴としている。
【0020】
上記微細パルプ含有飲料においては、全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が70体積%以下であり、かつ、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が1体積%以上であることが好ましい。
【0021】
また、上記微細パルプ含有飲料においては、全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が40体積%以下であることが好ましく、また、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が10体積%以上であることが好ましい。さらに、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が15体積%以上であることがより好ましく、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が30体積%以下であることがより好ましい。
【0022】
上記微細パルプ含有飲料においては、その粘度が50cps以上であることが好ましく、100cps以上であることがより好ましい。
【0023】
さらに、上記微細パルプ含有飲料においては、当該微細パルプ飲料中における上記微細パルプ成分の含有量の下限が10重量%以上であればよく、15重量%以上であることが好ましい。一方、上限は、50重量%以下であることが好ましく、45重量%以下であることがより好ましく、40重量%以下であることがさらに好ましい。特に、15〜25重量%の範囲内が好ましい。
【0024】
上記微細パルプ含有飲料においては、上記液状成分には、果汁および/または野菜汁が含まれることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、上記微細パルプとして、柑橘類の果実由来のパルプを用いることが好ましい。さらに、上記微細パルプとして、原料パルプを破砕したもの、および/または、原料パルプを摩砕したものが用いられることが好ましい。
【0025】
次に、本発明にかかる微細パルプ含有飲料の製造方法は、パルプ成分としての微細パルプと液状成分とを含有する飲料の製造方法であって、原料パルプを微細化するパルプ微細化工程を含んでおり、当該パルプ微細化工程では、得られる微細パルプ成分には、250μm未満の微細パルプ画分と1000μm以上の微細パルプ画分とを含有し、かつ、全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が5体積%以上となるとともに、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が60体積%以下となるように、微細化することを特徴としている。
【0026】
上記製造方法においては、さらに、上記微細パルプ成分全量のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が70体積%以下となっているとともに、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が1体積%以上となるように、原料パルプを微細化することが好ましい。
【0027】
上記製造方法では、パルプ成分と液状成分とを混合する混合工程を含んでいればよいが、上記混合工程のタイミングは限定されるものではなく、(1)上記パルプ微細化工程を経て得られる微細パルプと液状成分とを混合することにより上記混合工程を行ってもよいし、(2)原料パルプと液状成分とを混合して原料パルプ液を調製することに上記混合工程を行うとともに、当該混合工程の後に、上記パルプ微細化工程を行ってもよい。
【0028】
また、上記パルプ微細化工程では、ホモゲナイザーにより原料パルプを破砕することが好ましいが、このとき、原料パルプを破砕する際のホモゲナイザー圧力は、5kg/cm以上であればよい。さらには、上記ホモゲナイザー圧力の上限は300kg/cm以下であることが好ましく、100kg/cm以下であることがより好ましい。また、上記ホモゲナイザー圧力の下限は50kg/cm以上であることが好ましい。なお、上記パルプ微細化工程では、摩砕機により原料パルプを摩砕してもよい。
【0029】
さらに、本発明にかかる微細パルプ含有飲料の製造方法においては、上記液状成分として、果汁および/または野菜汁が含まれるものが用いられることが好ましく、上記原料パルプとして、柑橘類の果実の繊維が用いられることが好ましい。
【0030】
次に、本発明にかかる食品用素材は、少なくとも微細パルプを含んでおり、当該微細パルプには、250μm未満の微細パルプ画分と1000μm以上の微細パルプ画分とが含有されており、全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が5体積%以上となっており、かつ、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が60体積%以下となっていることを特徴としている。
【0031】
上記食品用素材においては、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が70体積%以下となっており、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が1体積%以上となっていることが好ましい。
【0032】
また、上記食品用素材においては、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が40体積%以下となっていることが好ましく、また、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が10体積%以上となっていることが好ましい。さらに、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が15体積%以上となっていることがより好ましく、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が30体積%以下となっていることがより好ましい。加えて、上記微細パルプとして、柑橘類の果実由来のパルプが用いられることがより好ましい。
【0033】
以上のように、本発明では、少なくとも、飲料に含まれる微細パルプ成分において、250μm未満のものと1000μm以上のものとのそれぞれについて、全微細パルプ中の含有量を規定している。さらに、粘度および/または微細パルプの含有量についても規定するとともに、製造方法においては、特に、原料パルプの微細化においてホモゲナイザーを用いる場合のホモゲナイザー圧力を規定している。
【0034】
この製造方法により、「とろみ」と「ざらつき」という食感の制御が可能となり、微細パルプ成分と液状成分とが渾然一体となった飲料を得ることができる。また、微細パルプ成分と液状成分に含まれる果実等の種類を組み合わせることで、味のバリエーションを広いものとすることができる。
【0035】
その結果、従来の飲料に見られた、味のバリエーションの少なさ、パルプ等の固体成分と液状成分との一体化の無さ、「とろみ」と「ざらつき」双方の制御が困難であるという問題を解消することができ、「とろみ」および「ざらつき」を併せ持つ新しい食感を有する飲料を提供することができるという効果を奏する。また、微細パルプ含有飲料において、高品質かつ消費者の嗜好の多様化にも十分対応した新規な飲料を提供することができ、特に果汁飲料に好適に用いることができるという効果を奏する。
【0036】
また、本発明にかかる食品用素材は、微細パルプ飲料のような飲料以外の食品にも好適に用いることができる。それゆえ、本発明は、飲料のみならず各種食品においても広く用いることができるという効果を奏する。
【0037】
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、次の説明で明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の実施の一形態について以下に詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0039】
本実施の形態では、本発明にかかる微細パルプ含汁飲料の成分、微細パルプ含有飲料、本発明にかかる微細パルプ含有飲料の製造方法、並びに、本発明の用途の順で、本発明を詳細に説明する。
【0040】
(1)微細パルプ含有飲料の成分
本発明にかかる微細パルプ含有飲料(以下、適宜「パルプ飲料」と略す)は、少なくとも、微細パルプ成分と液状成分とを含んでいる組成物であって、さらに他の成分を含んでいても構わない。
【0041】
<微細パルプ成分>
本発明にかかるパルプ飲料に含まれる微細パルプ成分は、植物性かつ食用可能なパルプを微細化したものであれば特に限定されるものではないが、原料として使用するパルプ(原料パルプ)としては、果実由来のものが好ましく、柑橘類の果実由来のものがより好ましい。
【0042】
柑橘類としては、具体的には、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ライム、ミカン、ハッサク、イヨカン、ネーブル、ポンカン、夏ミカン等を挙げることができるが、これら果実に限定されるものではない。これら果実由来のパルプは単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0043】
本発明で用いられる微細パルプの大きさ(サイズ)は特に限定されるものではないが、微細パルプ成分全体として見た場合、250μm未満の微細パルプ画分(説明の便宜上、250μm未満画分と称する)と1000μm以上の微細パルプ画分(説明の原義上、1000μm以上画分と称する)とが含まれており、全ての微細パルプのうち、250μm未満画分の含有量が5体積%以上であり、かつ、1000μm以上画分の含有量が60体積%以下であるという粒度分布を示す。
【0044】
ここで、全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満画分の含有量は70体積%以下であり、かつ、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が1体積%以上であることが好ましい。
【0045】
また、全ての微細パルプのうち、上記250μm未満画分の含有量は40体積%以下であることが好ましく、また、上記1000μm以上画分の含有量が10体積%以上であることが好ましい。さらに、上記250μm未満画分の含有量が15体積%以上であることが好ましく、また、上記1000μm以上画分の含有量が30体積%以下であることが好ましい。なお、粒度分布の測定方法は特に限定されるものではない。
【0046】
換言すると、パルプ飲料に含まれる(あるいは後述する食品用素材に含まれる)微細パルプ成分は、250μm未満画分の下限は5体積%以上であればよく、15体積%以上であることが好ましい。一方、その上限は70体積%以下であればよく、40体積%以下であることが好ましい。同様に、1000μm画分の下限は1体積%以上であればよく、10体積%以上であることが好ましい。一方、その上限は60体積%以下であればよく、30体積%以下であることが好ましい。
【0047】
250μm未満画分および1000μm以上画分の含有量が上記範囲内から外れると、添加される微細パルプ成分の粒度(サイズ)のバランスが好ましくなくなり、「とろみ」および「ざらつき」という二つの食感を同時にバランスよく実現することが困難となる。
【0048】
ここで、微細パルプの平均的な大きさ(サイズ)については特に限定されるものではなく、0μmを超えていれば良い。本発明においては、微細パルプ成分全体として見たときに、粒度分布が上述した範囲内に入っていることが重要となる。
【0049】
原料パルプの微細化については特に限定されるものではないが、公知のホモゲナイザーや摩砕機等を用いて微細化すればよい。なお、微細化の具体的な条件については、後述の(3)製造方法にて詳細に説明する。
【0050】
<液状成分>
本発明にかかるパルプ飲料に含まれる液状成分は、飲用の液体であれば特に限定されるものではないが、水または水溶液であることが好ましく、果汁および/または野菜汁を含むものであるとより好ましい。果汁および/または野菜汁を含む液状成分の場合、基本的には、果実から搾汁した果汁、野菜から搾汁した野菜汁、またはこれらの混合汁そのものであればよい。
【0051】
上記果汁・野菜汁の原料となる果実・野菜としては、具体的には、例えば、上記パルプの原料として用いられる柑橘類、リンゴ、ナシ、洋ナシ等の仁果類および/または準仁果類;モモ、アンズ、プラム、ウメ等の核果類;イチゴ(ストロベリー)、ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリー、カシス等の小果類;ブドウ、バナナ、パッションフルーツ等の液果類(小果類を含めてもよい);パイナップル、グァバ、マンゴー等の熱帯果実類(バナナ、パッションフルーツ等も含まれる);メロン、スイカ等の果菜類;トマト、ニンジン等の野菜類;等を挙げることができる。
【0052】
果汁や野菜汁以外の液状成分としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、水、公知の飲用の水溶液(糖液、酸味料水溶液、アミノ酸溶液、電解質溶液等)、酒類等を挙げることができるが特に限定されるものではない。これら液状成分は、果汁・野菜汁も含めて単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0053】
<その他の成分>
本発明にかかるパルプ飲料においては、上記微細パルプ成分および液状成分以外の成分、すなわち「その他の成分」を含んでいてもよい。その他の成分としては、具体的には、糖類、甘味料、酸味料、香料、着色料、ビタミン類、酸化防止剤等を挙げることができるが特に限定されるものではない。
【0054】
上記糖類は、砂糖(ショ糖・スクロース)、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)、トレハロース、その他オリゴ糖、水飴、異性化糖等の糖類;キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール等の糖アルコール類;ハチミツ、メープルシロップ等の天然糖類等を挙げることができる。
【0055】
上記甘味料は、本発明にかかるパルプ飲料に甘味を与えるものであれば特に限定されるものではない。甘味料の具体的な種類としては、例えば、ソルビトール、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK、ステビオサイド、ソーマチン、グリチルリチン、サッカリン、ジヒドロカルコン等が挙げられる。
【0056】
これら糖類や甘味料は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、糖類の形状も特に限定されるものではなく、粉末状の糖だけでなく、果糖ブドウ糖液糖のような液糖や、グラニュー糖のような結晶の大きい糖(ざら目糖)も用いることができる。
【0057】
上記酸味料は、本発明にかかるパルプ飲料に酸味を与えるものであれば特に限定されるものではない。酸味料の具体的な種類としては、例えば、クエン酸(結晶)(無水)、クエン酸三ナトリウム、DL−リンゴ酸、乳酸、リン酸、酒石酸、フィチン酸等が挙げられる。これら酸味料は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0058】
上記着色料は、本発明にかかるパルプ飲料を着色できるものであれば特に限定されるものではない。着色料の具体的な種類としては、例えば、クチナシ黄色素、ベニバナ黄色素、ウコン黄色素、ベニクジ黄色素、パーム油カロテン、ベニコウジ色素、クチナシ赤色素、ビートレット、コチニール色素、ラック色素、アカネ色素、シソ色素、アカキャベツ色素、ムラサキイモ色素、ブドウ果皮色素、エルダーベリー色素、トウガラシ色素、アナトー色素、スピルナ色素、カカオ色素およびタマリンド色素等の天然色素;食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色40号、食用黄色102号、食用青色1号などの合成色素;アナトー、カロチノイド、フラボノイド、アントシアニン等の天然着色料;等を挙げることができる。これら着色料は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0059】
上記香料は、最終的に製造されるパルプ飲料に芳香を与えるものであれば特に限定されるものではない。香料の具体的な種類としては、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等のシトラス系;ペパーミント、スペアミント等のミント系;ヨーグルト、バター等の乳製品系;ショウガ、シナモン、バニラ等の香辛料系;コーヒー、ワイン等の飲料系;アーモンド等のナッツ系;キャラメル;リンゴ、モモ、トロピカルフルーツ等の果汁等;を挙げることができる。また、パルプの原料由来の果実を用いることもできる。これら香料も1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0060】
上記ビタミン類は特に限定されるものではないが、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ニコチン酸、パントテン酸、ビタミンB6、ビオチン、ビタミンB12、ビタミンE等を挙げることができる。これらビタミンも1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合してもよい。
【0061】
上記酸化防止剤は、酸化によるパルプ飲料の品質の劣化を抑制することができるものであれば特に限定されるものではない。酸化防止剤の具体的な種類としては、ルチンおよび酸化処理ルチン、L−アスコルビン酸およびそのナトリウム塩、エリソルビン酸およびそのナトリウム塩、カテキン等を挙げることができる。これら酸化防止剤は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0062】
また、本発明にかかるパルプ飲料においては、上述した成分以外にも、清涼飲料を製造する分野で従来公知の各種成分、例えばアミノ酸類、プロテイン、食物繊維、乳成分、ミネラル、pH調整剤等を用いることができる。
【0063】
(2)微細パルプ含有飲料
本発明にかかるパルプ飲料は、上記(1)で説明した原料を適切な範囲内で含む組成物となっているが、後述する製造方法でも説明するように、微細化されていない原料パルプを適切な条件で微細化するようになっている。これにより、微細パルプ成分と液状成分とを渾然一体とすることが可能となり、「とろみ」および「ざらつき」という二つの食感を同時に制御可能に実現した新しい食感を得ることができる。
【0064】
<各成分の含有量(パルプ飲料の組成)>
本発明にかかるパルプ飲料は、微細パルプ成分および液状成分を少なくとも含み、必要に応じて、上記その他の成分を含んでいれば良い。
【0065】
ここで、これら各成分の含有量、すなわち本発明にかかるパルプ飲料の組成は、特に限定されるものではないが、必須成分である微細パルプ成分および液状成分は、「とろみ」および「ざらつき」という二つの食感を同時に実現した新しい食感を実現することができる範囲内の含有量となっている必要がある。
【0066】
具体的には、本発明にかかるパルプ飲料においては、微細パルプ成分の含有量は、パルプ飲料全重量のうち、その下限が10重量%以上であればよく、15重量%以上であることが好ましい。10重量%未満であれば、パルプ飲料に十分な粘度を与えることができなくなり、「とろみ」の食感が不十分となるため好ましくない。一方、微細パルプ成分の含有量の上限は特に限定されるものではないが、飲料として好ましい流動性を有し、かつ、上記二つの食感を同時に実現するためには、50重量%以下であることが好ましく、45重量%以下であることがより好ましく、40重量%以下がより好ましい。
【0067】
ここで、微細パルプ成分の含有量を製造方法から規定することもできる。具体的には、例えば、微細パルプが、ホモゲナイザーにより原料パルプを破砕したものである場合には、ホモゲナイザー圧力からその上限を規定することができる。なお、この点については、後述する(3)製造方法にて説明する。
【0068】
<パルプ飲料の粘度>
本発明にかかるパルプ飲料においては、「とろみ」および「ざらつき」をバランス良く実現できるようになっている。ここで、「とろみ」については、粘度により確認することができる。
【0069】
本発明にかかるパルプ飲料の粘度は、その下限は50cps以上であることが好ましく、100cps以上であることがより好ましい。なお、含有される微細パルプ成分の粒度分布等によっては、50cps以下でも十分な場合もある。その上限については特に限定されるものではないが、200cps以下程度であると、飲料として比較的好ましい濃度とすることが可能である。
【0070】
なお、本発明にかかるパルプ飲料の粘度は、様々な成分により影響を受ける可能性があるが、事実上、微細パルプ成分の微細化のレベルおよび/または含有量により決定される。それゆえ、本発明では、微細パルプ成分の含有量と後述するパルプの微細化の条件(特にホモゲナイザー圧力)により粘度をより好ましい範囲に調整することが可能である。
【0071】
(3)微細パルプ含有飲料の製造方法
本発明にかかる微細パルプ含有飲料の製造方法(以下、単に製造方法と略す場合がある)は、原料パルプを微細化するパルプ微細化工程を含んでおり、当該パルプ微細化工程では、得られる微細パルプ成分には、250μm未満画分と1000μm以上画分とを含有し、かつ、全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満画分の含有量が5体積%以上となるとともに、1000μm以上画分の含有量が60体積%以下となるように、微細化する方法である。
【0072】
<パルプ微細化工程>
本発明で行われるパルプ微細化工程は、前述した原料パルプを微細化する工程であれば特に限定されるものではないが、具体的には、原料パルプを破砕する手法と、原料パルプを摩砕する手法とを挙げることができる。前者の手法ではホモゲナイザーが用いられるのに対して、後者の方法では摩砕機が用いられる。
【0073】
上記ホモゲナイザー(均質化装置、均質機)は特に限定されるものではなく、公知のものを好適に用いることができる。
【0074】
ホモゲナイザーにより原料パルプを微細化する場合の条件も特に限定されるものではないが、そのホモゲナイザー圧力(ホモ圧と略す)は、総圧力の下限が5kg/cm以上であることが好ましく、50kg/cm以上であることがより好ましい。一方、上限については特に限定されるものではないが、微細化効率等から考えると300kg/cm以下であればよく、100kg/cm以下であることが好ましい。ホモ圧の特に好ましい範囲としては、50〜100kg/cmの範囲内を挙げることができる(実施例参照)。
【0075】
ホモ圧を上記の範囲内とすることによって、原料パルプの微細化の程度、すなわち微細パルプの大きさの範囲や粒度分布を制御することができる。ホモ圧が上記範囲内であれば、「ざらつき」の食感が好ましいものとすることができる。
【0076】
もちろん、ホモ圧が上記範囲内である場合、微細化の条件によっては、微細パルプの大きさの範囲が、前記(1)微細パルプ含有飲料の成分で述べた範囲から一部外れることもありうるが、この場合であっても、ホモ圧が上記範囲内に規定されることで、「とろみ」と「ざらつき」という2つの食感を十分両立させることができる。
【0077】
次に、上記摩砕機(摩砕装置)も特に限定されるものではなく、公知のものを好適に用いることができる。例えば、回転砥石を有する構成のものが挙げられる。摩砕機により原料パルプを微細化する場合の条件も特に限定されるものではなく、公知の条件を好適に用いることができる。
【0078】
<ホモ圧と微細パルプ成分の含有量との関係>
前記(2)微細パルプ含有飲料においても説明したが、本発明においては、ホモ圧から、パルプ飲料における微細パルプ成分の含有量の上限を規定することも可能である。具体的には、ホモ圧が5kg/cm以上25kg/cm未満の場合には、微細パルプ成分の含有量の上限を40重量%と規定し、ホモ圧が25kg/cm以上100kg/cm未満の場合には、微細パルプ成分の含有量の上限を45重量%と規定し、ホモ圧が100kg/cm以上300kg/cm以下の場合には、微細パルプ成分の含有量の上限を50重量%と規定することが可能である。
【0079】
このようにして微細パルプ成分の含有量の上限を規定することで、粒度分布を測定しなくても、本発明にかかるパルプ飲料の製造において、微細パルプ成分の含有量の好ましい範囲を設定することができる。
【0080】
<原料パルプ液・微細パルプ液>
上記パルプ微細化工程においては、微細化の手法に関わらず、当該原料パルプを水や水溶液等に分散させた分散液(便宜上、原料パルプ液と称する)を調製して用いることが好ましい。これにより原料パルプをホモゲナイザー等に連続的に供給することができるため、効率的な微細化(均質化)が可能となる。なお、原料パルプ液を微細化処理して得られるもの、すなわち、微細パルプの分散液を便宜上、微細パルプ溶液と称する。なお、原料パルプ液の具体的な組成は特に限定されるものではない。
【0081】
また、原料パルプ液に用いられる液体は特に限定されるものではなく、水や水溶液等を用いることができるが、液状成分として含めてよいものを用いることがより好ましく、例えば、果汁および/または野菜汁等の液状成分をそのまま用いることが可能である。これにより、原料パルプ液を微細化して得られる微細パルプ液をそのまま用いて、本発明にかかるパルプ飲料を製造することが可能となる。
【0082】
<混合工程>
本発明にかかる製造方法においては、パルプ成分と液状成分とを混合する混合工程を含んでいるが、この混合工程はどのようなタイミングで行っても良い。具体的には、先にパルプ微細化工程を行う場合と、混合工程を行ってからパルプ微細化工程を行う場合とが挙げられる。
【0083】
先にパルプ微細化工程を行う場合には、得られた微細パルプ成分と液状成分とを混合して、微細パルプ成分が分離しないように十分に攪拌(混和)すればよい。一方、後からパルプ微細化工程を行う場合には、原料パルプと液状成分とを混合して、原料パルプ液を調製してから微細化処理を行えばよい。
【0084】
混合工程における条件は特に限定されるものではなく、先にパルプ微細化工程を行う場合には、原料パルプ液を微細化して得られる微細パルプ液と液状成分とを混和すればよい。このとき、微細パルプ液とともに上記その他の成分を同時に加えてもよいし、先に、微細パルプ液を加えて混和してからその他の成分を混和してもよい。一方、後からパルプ微細化工程を行う場合には、液状成分に原料パルプを混合して、液状成分を分散媒とする原料パルプ液を調製すればよい。
【0085】
上記混合工程に用いられる混合手段も特に限定されるものではなく、公知の攪拌機等を用いればよい。また、パルプ微細化工程を行うタイミングに関わらず、パルプ成分と液状成分との混合は1回だけではなく2回以上に分けて行っても良い。例えば、液状成分を少なくして高濃度の原料パルプ液を調製してからパルプ微細化工程を行い、その後、液状成分を追加するようにしてもよい。あるいは、パルプ微細化工程の後に、液状成分と混和する際に、一度、高濃度の混和液を調製してから、さらに液状成分を加えて最終的なパルプ飲料としてもよい。
【0086】
<その他の工程>
本発明にかかる製造方法においては、(微細化されているか否かに関わらず)パルプ成分を加える工程(混合工程)と、原料パルプを微細化する工程(上記パルプ微細化工程)とが含まれていればよいが、さらに殺菌工程、および充填工程が含まれていることが好ましい。なお、これら工程については具体的に限定されるものではなく、公知の手法を用いればよい。
【0087】
(4)本発明の用途
本発明にかかるパルプ飲料およびその製造方法の主たる用途は、後述する実施例にも示すように、果汁等を含む液状成分と微細パルプ成分とを混和して、微細パルプ含有果汁飲料を製造する用途である。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、上記微細パルプを果汁飲料以外の各種食品にも広く用いることができる。
【0088】
このような食品としては、具体的には、例えば、アイスクリーム、ソフトクリーム、ムース等の冷菓;羊羹、プディング、ゼリー、ところてん、寒天等のゲル状の菓子類;団子、餅等の和菓子類;フルーツペースト、ジャム、マーマレード等の果物加工品;ドレッシング、各種シロップ、フルーツソース等のソース・シロップ類;ピュレスープ、クリームスープ、コンソメスープ等のスープ類;等が挙げられるが特に限定されるものではない。
【0089】
このように、本発明にかかる微細パルプは、食品用素材として、飲料以外の用途についても広く用いることができる。
【0090】
なお、本発明にかかる食品用素材の製造方法は、前記(3)微細パルプ含有飲料の製造方法にて説明した「パルプ微細化工程」を含んでいれば良く、それ以外の工程については特に限定されるものではない。
【0091】
本発明について、果汁飲料を代表例とする実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例における「重量%」とは、「重量/体積%(w/v%)」を指すものとする。
【実施例1】
【0092】
オレンジパルプ50重量%、水50重量%となるように原料パルプ液を調製し、これをAPVGAULIN社製ホモゲナイザーで処理することで、微細パルプ液を得た(パルプ微細化工程)。このときの処理条件はホモ圧を50kg/cmとした。
【0093】
次に、全量1000mlとなるように、得られた微細パルプ液40.0重量%(微細パルプとしては20重量%)、オレンジ果汁10.0重量%、果糖ブドウ糖液糖10.0重量%、クエン酸0.1重量%、香料0.2重量%、水適量を加えて十分に混和し(混合工程)、その後、殺菌して充填した。
【0094】
得られたパルプ溶液について試飲したところ、微細パルプ成分と果汁等の液状成分とが渾然一体となり、「とろみ」と「ざらつき」という二つの食感を同時に実現することができるものとなっていた。
【実施例2】
【0095】
まず、全量1000mlとなるように、オレンジパルプ(原料パルプ)20.0重量%、オレンジ果汁10.0重量%、果糖ブドウ糖液糖10.0重量%、クエン酸0.1重量%、香料0.2重量%、水適量を加えて十分に混和し(混合工程)、その後、実施例1と同じ条件でホモゲナイズ処理してオレンジパルプを微細化した(パルプ微細化工程)。それ例外は、実施例1と同様にして殺菌し容器に充填した。
【0096】
得られたパルプ溶液について試飲したところ、上記実施例1と同様に、微細パルプ成分と果汁等の液状成分とが渾然一体となり、「とろみ」と「ざらつき」という二つの食感を同時に実現することができるものとなっていた。
【実施例3】
【0097】
オレンジパルプを20重量%とするとともに、ホモ圧を0、5、25、50、75、100、200、または300kg/cmにそれぞれ変化させた以外は実施例2と同様にしてパルプ飲料を製造した。得られた各パルプ飲料における微細パルプの粒度分布、すなわち、各ホモ圧に対する微細パルプの粒度分布を表1に示す。なお、粒度分布は、Beckman Coulter社製の粒度分布計を用いて測定した。
【0098】
【表1】

【実施例4】
【0099】
オレンジパルプの含有量を10、20、または40重量%にそれぞれ変化させるとともに、ホモ圧を50kg/cmに固定した以外は、実施例3と同様にしてパルプ飲料を製造した。得られた各パルプ飲料における微細パルプの粒度分布、すなわち、各ホモ圧に対する微細パルプの粒度分布を表2に示す。
【0100】
【表2】

【実施例5】
【0101】
オレンジパルプの含有量を50、70、または100重量%にそれぞれ変化させるとともに、ホモ圧を5kg/cmに固定した以外は、実施例3と同様にしてパルプ飲料を製造した。得られた各パルプ飲料における微細パルプの粒度分布、すなわち、各ホモ圧に対する微細パルプの粒度分布を表3に示す。
【0102】
【表3】

【実施例6】
【0103】
オレンジパルプの含有量とホモ圧とを表4に示すようにそれぞれ変化させた以外は、実施例3と同様にしてパルプ飲料を製造した。得られた各パルプ飲料において、「とろみ」および「ざらつき」の食感と、これら食感の一体感とを5段階で評価した。5.0を「非常に多い」、4.0を「多い」、3.0を「やや多い」、2.0を「やや少ない」、1.0を「少ない」、0.0を「全く無い」として評価した。その結果を表4に示す。
【0104】
【表4】

【0105】
以上の結果から明らかなように、本発明で用いられる微細パルプ成分は、全ての微細パルプのうち、250μm未満画分の含有量が5体積%以上70体積%以下であるとともに、1000μm以上画分の含有量が1体積%以上60体積%以下であればよいことがわかる。また、ホモ圧は、総圧力が5kg/cm以上であることが好ましいことがわかる。特に、実施例6における食感のバランスと一体感とから明らかなように、ホモ圧が50〜100kg/cmの範囲内であるとより好ましいことがわかる。
【0106】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
このように本発明では、微細パルプの大きさの範囲を規定するとともに、好ましくは、粘度および/またはパルプの微細化条件(特にホモ圧)を規定することで、得られる飲料において、「とろみ」と「ざらつき」という二つの食感を同時に実現した新しい食感を実現することができる。
【0108】
それゆえ、本発明は、食品産業の中でも飲料を製造する産業に有効に利用できるだけでなく、当他の食品産業、例えば、アルコール飲料を製造する産業や菓子類を製造する産業等にも好適に利用することができる。さらに、果実を加工する農産物加工産業への利用も可能である。また、微細パルプを食品用素材として用いることができるので、飲料以外の食品を製造する食品産業にも広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細パルプ成分と液状成分とを含有する飲料であって、
上記微細パルプ成分には、250μm未満の微細パルプ画分と1000μm以上の微細パルプ画分とが含まれており、
全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が5体積%以上であり、かつ、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が60体積%以下であることを特徴とする微細パルプ含有飲料。
【請求項2】
全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が70体積%以下であり、かつ、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が1体積%以上であることを特徴とする請求項1に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項3】
全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が40体積%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項4】
全ての微細パルプ成分のうち、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が10体積%以上であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項5】
全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が15体積%以上であることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項6】
全ての微細パルプ成分のうち、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が30体積%以下であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項7】
粘度が50cps以上であることを特徴とする請求項1に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項8】
粘度が100cps以上であることを特徴とする請求項1に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項9】
上記微細パルプ成分の含有量が10重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項10】
上記微細パルプ成分の含有量が15重量%以上であることを特徴とする請求項1、7または8に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項11】
上記微細パルプ成分の含有量が50重量%以下であることを特徴とする請求項1、7または8に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項12】
上記微細パルプ成分の含有量が45重量%以下であることを特徴とする請求項1、7または8に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項13】
上記微細パルプ成分の含有量が40重量%以下であることを特徴とする請求項1、7または8に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項14】
上記液状成分には、果汁および/または野菜汁が含まれることを特徴とする請求項1ないし13の何れか1項に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項15】
上記微細パルプとして、柑橘類の果実由来のパルプを用いることを特徴とする請求項1ないし14の何れか1項に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項16】
上記微細パルプとして、原料パルプを破砕したもの、および/または、原料パルプを摩砕したものが用いられることを特徴とする請求項1ないし15の何れか1項に記載の微細パルプ含有飲料。
【請求項17】
パルプ成分としての微細パルプと液状成分とを含有する飲料の製造方法であって、
原料パルプを微細化するパルプ微細化工程を含んでおり、
当該パルプ微細化工程では、得られる微細パルプ成分には、250μm未満の微細パルプ画分と1000μm以上の微細パルプ画分とを含有し、かつ、
全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が5体積%以上となるとともに、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が60体積%以下となるように、微細化することを特徴とする微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項18】
さらに、上記微細パルプ成分全量のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が70体積%以下となっているとともに、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が1体積%以上となるように、原料パルプを微細化することを特徴とする請求項17に記載の微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項19】
パルプ成分と液状成分とを混合する混合工程を含むことを特徴とする請求項17または18に記載の微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項20】
上記パルプ微細化工程を経て得られる微細パルプと液状成分とを混合することにより上記混合工程を行うことを特徴とする請求項17または18に記載の微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項21】
原料パルプと液状成分とを混合して原料パルプ液を調製することに上記混合工程を行うとともに、当該混合工程の後に、上記パルプ微細化工程を行うことを特徴とする請求項17または18に記載の微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項22】
上記パルプ微細化工程では、ホモゲナイザーにより原料パルプを破砕することを特徴とする請求項17ないし21の何れか1項に記載の微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項23】
原料パルプを破砕する際のホモゲナイザー圧力が5kg/cm以上であることを特徴とする請求項22に記載の微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項24】
上記ホモゲナイザー圧力が300kg/cm以下であることを特徴とする請求項23に記載の微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項25】
上記ホモゲナイザー圧力が50kg/cm以上であることを特徴とする請求項23または24に記載の微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項26】
上記ホモゲナイザー圧力が100kg/cm以下であることを特徴とする請求項23、24または25に記載の微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項27】
上記パルプ微細化工程では、摩砕機により原料パルプを摩砕することを特徴とする請求項17ないし26の何れか1項に記載の微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項28】
上記液状成分として、果汁および/または野菜汁が含まれるものが用いられることを特徴とする請求項17ないし27の何れか1項に記載の微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項29】
上記原料パルプとして、柑橘類の果実の繊維が用いられることを特徴とする請求項17ないし28の何れか1項に記載の微細パルプ含有飲料の製造方法。
【請求項30】
少なくとも微細パルプを含んでおり、当該微細パルプには、250μm未満の微細パルプ画分と1000μm以上の微細パルプ画分とが含有されており、
全ての微細パルプ成分のうち、250μm未満の微細パルプ画分の含有量が5体積%以上となっており、かつ、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が60体積%以下となっていることを特徴とする食品用素材。
【請求項31】
250μm未満の微細パルプ画分の含有量が70体積%以下となっており、1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が1体積%以上となっていることを特徴とする請求項30に記載の食品用素材。
【請求項32】
250μm未満の微細パルプ画分の含有量が40体積%以下となっていることを特徴とする請求項30または31に記載の食品用素材。
【請求項33】
1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が10体積%以上となっていることを特徴とする請求項30、31または32に記載の食品用素材。
【請求項34】
250μm未満の微細パルプ画分の含有量が15体積%以上となっていることを特徴とする請求項30ないし33の何れか1項に記載の食品用素材。
【請求項35】
1000μm以上の微細パルプ画分の含有量が30体積%以下となっていることを特徴とする請求項30ないし34の何れか1項に記載の食品用素材。
【請求項36】
上記微細パルプとして、柑橘類の果実由来のパルプが用いられることを特徴とする請求項30ないし35の何れか1項に記載の食品用素材。

【国際公開番号】WO2005/067740
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517104(P2005−517104)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000541
【国際出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】