説明

微細気泡発生装置および微細気泡発生方法

【課題】 微細な気泡を多量に発生させる。
【解決手段】 管状で上下方向に延びて配設された揚砂管3と、揚砂管3の下口側に配設された粒状活性炭7aおよび水と、揚砂管3内に上方に流れる空気を供給する揚砂ブロア4とを備え、揚砂ブロア4から揚砂管3内に空気を供給することで、揚砂管3の下口から粒状活性炭7aと水とを吸い上げ、粒状活性炭7aの衝突によって空気を微細に砕いて微細気泡を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、微細な気泡を発生させる微細気泡発生装置および微細気泡発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水槽内に微細な気泡を発生させる装置として、ノズルから多量の水を噴射して噴射部周辺を負圧にし、外部から供給された空気を吸い込み、水圧によって空気を微細に砕いて微細気泡を生成、発生させるもの(例えば、特許文献1参照。)が知られている。また、撹拌羽根を内側に備えた円筒内に空気を供給し、撹拌羽根を高速に回転させて空気をせん断することで微細気泡を生成、発生させる装置(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【特許文献1】実開昭63−054425号公報
【特許文献2】特開2006−159187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載された装置では、ノズルの噴射部周辺に吸い込まれた空気を微細に砕くものであるため、吸い込まれる空気が少量で、多量の微細気泡を発生させることが困難である。このため、微細気泡を多量に発生させるには、多数のノズルを配設する必要があり、設備費がかさむとともに、広い配設スペースを要する。また、上記特許文献2に記載された装置では、空気を撹拌羽根でせん断するものであるため、空気を微細に砕くことが困難で、生成された気泡が大きいという問題があった。
【0004】
そこでこの発明は、微細な気泡を多量に発生させることが可能な微細気泡発生装置および微細気泡発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、管状で上下方向に延びて配設された生成管と、前記生成管の下口側に配設された微細な衝撃体および液体と、前記生成管内に上方に流れる空気を供給する給気手段と、を備え、前記給気手段から前記生成管内に空気を供給することで、前記生成管の下口から前記衝撃体と液体とを吸い上げ、前記衝撃体の衝突によって前記空気を微細に砕いて微細気泡を発生させる、ことを特徴とする微細気泡発生装置である。
【0006】
この発明によれば、給気手段から生成管内に上方に流れる空気を供給すると、空気の上昇流によるエアリフト作用によって衝撃体と液体とが吸い上げられる。このとき、衝撃体が生成管内を上下振動しながら上方に移動し、衝撃体が空気に衝突して空気を微細に砕き、微細気泡が生成、発生される。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の微細気泡発生装置において、前記衝撃体がろ過材または吸着材から構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、管状で上下方向に延びて配設された生成管の下口側に微細な衝撃体および液体を配設し、前記生成管内に上方に流れる空気を供給して、前記生成管の下口から前記衝撃体と液体とを吸い上げ、前記衝撃体の衝突によって前記空気を微細に砕いて微細気泡を発生させる、ことを特徴とする微細気泡発生方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1および3に記載の発明によれば、微細な衝撃体の衝突によって空気を砕くため、微細な気泡を発生させることができ、しかも、衝撃体を空気に衝突させればよいため、衝撃体と空気の量を増やすことで微細な気泡を多量に発生させることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、衝撃体がろ過材または吸着材から構成されているため、発生した微細気泡によってろ過材または吸着材が洗浄され、これらの劣化を抑制して交換期間、つまり寿命を延ばすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態に係る微細気泡発生装置を備えた活性炭吸着装置1の内部構成を示す斜視図である。この活性炭吸着装置1は、断面が円形の吸着槽2内に、管状で上下方向に延びる揚砂管(生成管)3が3本配設されている。この揚砂管3の下端には、ラッパ状の吸い込み口3aが設けられ、この吸い込み口3aは後述する活性炭層7内に埋没され、吸着槽2の底部近くに達している。また、各揚砂管3の上端部は水平に曲げられた吐き出し口3bとされ、吸着槽2内の上部に配設された仕切り板31に取り付けられ、後述する原水供給管21の対向側に向けて開口している。ここで、仕切り板31には、後述する活性炭7aを通さない程度の小孔が全面に多数形成され、仕切り板31は、後述するように清水(液体)を所定の水位まで供給した状態で、その下部が清水内に位置するように配設されている。ここで、仕切り板31によって仕切られた吐き出し口3b側を分離槽2Aとする。
【0013】
各揚砂管3の吸い込み口3a側には、揚砂ブロア(給気手段)4から延びるブロア管4aが接続され、このブロア管4aには調整弁4bが配設されている。そして、揚砂ブロア4から供給された空気がブロア管4aを経由して、揚砂管3内を上方に(吐き出し口3b側に)流れるようになっている。
【0014】
このような各揚砂管3に対向して、吸着槽2内の下部に3つの集水槽5が配設されている。この集水槽5は、図2に示すように、上面が傾斜した箱型で、上面として集水板(ストレーナ)51が配設されている。この集水板51は、図3に示すように、複数のウエッジワイヤ51aを小間隙に並べて構成されている。また、揚砂管3側を前面とした場合の集水槽5の背面側には、ろ過ポンプ6の吸い込み口から延びる第1の排出管6aが接続され、この第1の排出管6aには集水弁6bが配設されている。一方、ろ過ポンプ6の吐き出し口には第2の排出管6cが接続され、ろ過ポンプ6の稼動によって、集水槽5内のろ過水が第1の排出管6aおよび第2の排出管6cを経由して、外部に取り出されるようになっている。ここで、図2中符号6dは移送弁、符号6mはろ過水のドレンである。
【0015】
また、第1の排出管6aと第2の排出管6cとを接続するバイパス管6eが設けられ、後述するように集水弁6bとバイパス弁6fの開閉によって、第2の排出管6cを流れるろ過水がバイパス管6eを経由して第1の排出管6aから集水槽5側に還流すようになっている。さらに、第2の排出管6cには還流管6gが接続され、この還流管6gの分岐管である分岐還流管6hが各集水槽5内を通り、その開口端が集水槽5の下部前面に位置するように配設されている。そして、還流管6gに配設された揚砂洗浄弁6jおよび各分岐還流管6hに配設された調整弁6kの開閉によって、第2の排出管6cを流れるろ過水が還流管6g、6hを経由して吸着槽2内に還流されるようになっている。
【0016】
吸着槽2の上部槽壁には原水供給管21が設けられ、この原水供給管21から浄化対象である原水が吸着槽2内に供給されるようになっている。また、吸着槽2内の上部で揚砂管3の吐き出し口3bの下方には、排水トラフ8が配設されている。この排水トラフ8は、断面が略U字状で両上端縁が凹凸に形成された排水部8aと、図4に示すように、排水部8aの下端から斜め下方に延びる板状のガイド部8bとを備えている。このガイド部8bの先端部は、後述する活性炭層7に達し、ガイド部8bの上方に仕切り板31が位置している。また、吸着槽2の槽壁には、排水トラフ8の排水部8aのU字内に対向して洗浄水排水管22が配設され、さらに、洗浄水排水管22の下方で集水槽5の上方には、ろ過排水管23が配設されている。
【0017】
このような吸着槽2内に、集水槽5および揚砂管3の下端部を埋めるように、かつ集水板51の傾斜角に沿うように、微細な衝撃体としての粒状活性炭(吸着材)7aが堆積され、活性炭層7が形成されている。さらに、原水供給管21から原水(液体)Wが供給された状態で、原水Wが活性炭層7内に浸透するとともに、原水Wが活性炭層7を覆うようになっている。また、後述するように清水やろ過水などの水(液体)が供給されると、水が活性炭層7内に浸透し、揚砂管3の下口側である吸い込み口3a側に、粒状活性炭7aと水とが配設された状態となる。
【0018】
このような揚砂管3と、粒状活性炭7aおよび水と、揚砂ブロア4およびブロア管4aとによって微細気泡発生装置が構成されている。そして、揚砂ブロア4から空気を供給することで、空気の上昇流によるエアリフト作用によって粒状活性炭7aと水とを揚砂管3内に吸い上げ、後述するようにして、粒状活性炭7aが空気に衝突して微細気泡が生成されるようになっている。なお、図1中符号24は点検窓である。
【0019】
次に、このような活性炭吸着装置1および微細気泡発生装置の作用および、微細気泡発生装置による微細気泡発生方法について説明する。
【0020】
まず、原水Wを浄化処理するには、図4に示すように、原水供給管21から吸着槽2内に原水Wを所定の水位(図中Mの水位程度)まで供給し、その水位が維持されるように原水Wを供給し続ける。そして、原水Wを10〜60分程度かけて活性炭層7内を流下させ、活性炭7aと接触させる。これにより、原水Wに含まれる化学物質が活性炭7aに吸着され、原水Wの臭気や色なども吸着除去される。このようにして浄化処理されたろ過水が、各集水槽5の集水材51を通って集水槽5内に集められ、ろ過ポンプ6によって第1の排出管6aおよび第2の排出管6cを経由して、外部に取り出される。ここで、集水弁6bおよび移送弁6dは開状態で、バイパス弁6fおよび揚砂洗浄弁6j、調整弁6kは閉状態となっている。
【0021】
このような浄化処理を継続すると、原水W中に混入しているSS(Suspended Solid、懸濁物質)により、活性炭7aが目詰まりを起こし、原水Wの流れに伴って流動すべき活性炭7aが流動しなくなる。そして、吸着層2内での原水Wの流れにショートパス(原水Wが通過しない領域が発生する事象)を起こして、活性炭7aの吸着性能が有効に活用されなくなる。また、活性炭7aの表面に付着した付着物、よごれにより、活性炭7a同士が固着してマッドボール(固まった濁質分や残留汚泥など)が形成され、活性炭7aの吸着性能が著しく低下したり、さらには腐敗によって原水Wの水質が悪化する場合がある。このため、浄化処理の合間に、例えば、半日〜5日に1回程度、次のように微細気泡発生装置を稼動して、活性炭7aを洗浄する。
【0022】
まず、ろ過ポンプ6まわりの弁6b、6d、6f、6j、6kをすべて閉じ、清水供給管(図示せず)から吸着槽2内に清水を、または原水供給管21から吸着槽2内にろ過水(上記のようにして浄化処理された処理水)を、所定の水位(図4中Hの水位程度)まで供給する。以下、清水を供給したものとして説明する。次に、揚砂ブロア4を稼動させ、揚砂管3内に空気を供給する。これにより、空気が揚砂管3内を上方に流れ、そのエアリフト作用によって活性炭7aと清水とが吸い込み口3aから吸い込まれ、揚砂管3内を上昇する。このとき、図5に示すように、活性炭7aの塊が、揚砂管3内を上下に微振動しながら上方に移動する。そして、このような動きをする活性炭7aが空気に繰り返し激しく衝突し、かつ、活性炭7aと空気との間に摩擦が発生し、空気が微細に砕かれ、微細気泡が生成される。このようにして生成された微細気泡による洗浄作用(超音波洗浄と同等の作用)と、清水との撹拌、混合作用により、活性炭7aが洗浄されながら吐き出し口3bに至り、排水トラフ8のガイド部8bの上方(分離槽2A)に吐出される。
【0023】
このような洗浄によって活性炭7aからSSなどの付着分が除去され、除去された付着分は、水の流れと共に仕切り板31の小孔を通り、あるいは仕切り板31の下方を通って排水トラフ8側に流れる。そして、排水トラフ8の排水部8aの上端縁を越えて排水部8a内に流入し、洗浄水排水管22から吸着槽2外に排出される。一方、吐出された活性炭7aは、仕切り板31によって排水トラフ8側に流れるのを阻止され、その自重により沈降する。このような洗浄処理を10分〜60分程度行うものである。また、このような洗浄処理は、揚砂管3の口径や配設数、洗浄時間間隔などに応じて、各揚砂管3に対して交互に空気を供給して順次行ってもよいし、すべての揚砂管3に対して同時に空気を供給して行ってもよい。
【0024】
ここで、洗浄処理の際に、次のようにして集水槽5内の水を循環させることで、集水材51に付着した付着物を除去することができる。すなわち、例えば図2中左側の集水槽5の集水弁6bと、図中右側の集水槽5のバイパス弁6fのみを開けた状態で、ろ過ポンプ6を稼動させる。これにより、左側の集水槽5内の水が、第1の排出管6a、第2の排出管6cおよび、右側の集水槽5のバイパス管6e、第1の排出管6aを経由して、右側の集水槽5内に圧送され、右側の集水槽5の集水材51に付着している付着物が押し流され、除去される。
【0025】
以上のような浄化処理と洗浄処理とは、手動によって起動、切り替えてもよいし、プログラムに基づいて所定の条件に合致した際に自動起動、切り替えるようにしてもよい。例えば、入力、設定された時間だけ浄化処理した後に洗浄処理を開始したり、水位が所定位置以上、例えばレベルH以上に達した時点で洗浄処理を開始したり、あるいは、予め設定された日時になった時点で洗浄処理を開始してもよい。
【0026】
以上のように、この微細気泡発生装置および微細気泡発生方法によれば、粒状活性炭7aによる衝突と摩擦によって空気を微細に砕くため、微細な気泡(マイクロバブル)を発生させることができる。しかも、揚砂管3の口径を大きくし、揚砂ブロア4からの空気量を増やして、吸い込む粒状活性炭7aの量を増やすことで、微細な気泡を多量に発生させることが可能となる。そして、発生した微細気泡によって活性炭7aが適正に洗浄され、活性炭7aの劣化を抑制して交換期間を延ばすこと、つまり活性炭7a自体の吸着性能が劣るまで活性炭7aを有効に活用することが可能となる。例えば、活性炭7aの表面に付着したよごれが除去され、活性炭7a全体の吸着作用が維持できたために、微細気泡による洗浄がない場合に比べて、活性炭7aの交換期間が2倍以上延びた例が挙げられる。
【0027】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、微細な衝撃体としての吸着材が粒状活性炭7aである活性炭吸着装置1の場合について説明したが、その他の微細な衝撃体でもよいし、他の装置に適用してもよい。例えば、吸着材をゼオライトとした吸着装置や、微細な衝撃体をろ過砂、マンガン砂やセラミックなどのろ過材としたろ過装置に適用してもよい。そして、ろ過装置に適用した場合に、ろ過材(砂)の交換期間が、微細気泡による洗浄がない場合に比べて、数年以上延びた例が挙げられる。その他、吸着材またはろ過材として、アンスラサイト、ガーネット、サンゴ砂、酸化アルミニウム、骨炭などが挙げられる。また、吸着装置やろ過装置以外の装置にも適用でき、給気手段としてコンプレッサなどを使用してもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、この発明に係る微細気泡発生装置および方法は、微細な気泡を多量に発生させることが可能で、しかも衝撃体自体を洗浄できるものとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施の形態に係る微細気泡発生装置を備えた活性炭吸着装置の内部構成を示す斜視図である。
【図2】図1の活性炭吸着装置の集水槽とその周辺設備を示す斜視図である。
【図3】図2の集水槽の集水板を示す拡大斜視図である。
【図4】図1の活性炭吸着装置の概略構造を示す断面図である。
【図5】図1の活性炭吸着装置の揚砂管内で活性炭が上下に微振動しながら上方に移動する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 活性炭吸着装置
2 吸着槽
3 揚砂管(生成管)
4 揚砂ブロア(給気手段)
4a ブロア管
5 集水槽
6 ろ過ポンプ
7 活性炭層
7a 粒状活性炭(衝撃体、吸着材)
W 原水(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状で上下方向に延びて配設された生成管と、前記生成管の下口側に配設された微細な衝撃体および液体と、前記生成管内に上方に流れる空気を供給する給気手段と、を備え、
前記給気手段から前記生成管内に空気を供給することで、前記生成管の下口から前記衝撃体と液体とを吸い上げ、前記衝撃体の衝突によって前記空気を微細に砕いて微細気泡を発生させる、ことを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記衝撃体がろ過材または吸着材から構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
管状で上下方向に延びて配設された生成管の下口側に微細な衝撃体および液体を配設し、前記生成管内に上方に流れる空気を供給して、前記生成管の下口から前記衝撃体と液体とを吸い上げ、前記衝撃体の衝突によって前記空気を微細に砕いて微細気泡を発生させる、ことを特徴とする微細気泡発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−12366(P2010−12366A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171929(P2008−171929)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(592188069)株式会社広洋技研 (4)
【Fターム(参考)】