説明

微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法及びこれを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂の製造方法

本発明は、微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法及びこれを用いた高分子量のポリカーボネート樹脂製造方法に関し、(A)非ホスゲン系ポリカーボネートに重合し、(B)微細球形パウダー状の非結晶性ポリカーボネートに押出し、(C)前記微細球形パウダー状の非結晶性ポリカーボネートを溶媒又は分散媒環境で表面結晶化し、(D)前記表面結晶化された微細球形パウダー状のポリカーボネートを乾燥する段階を含んで構成される微細球形パウダー状のポリカーボネート製造方法と、これを通して得られた微細球形パウダー状のポリカーボネートを連続的に用いて固相重合段階を経て低分子量から高分子量に至るまで多様な分子量範囲のポリカーボネートを製造できる高分子量ポリカーボネート樹脂製造方法に関するものである。本発明によれば、非結晶性ポリカーボネートの結晶化段階を画期的に単純化することで、商業生産が可能な工程の連続性と経済性を具現し、既存の非ホスゲン系溶融重合工程における最大の問題である高分子量ポリカーボネート製造の限界を克服することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法及びこれを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂の製造方法に関するもので、より詳細には、新しい非ホスゲン系ポリカーボネート溶融重合工程を経て、一定の分子量のポリカーボネートを製造し、連続的な押出工程を経て、微細球形パウダー状のポリカーボネート粒子を実現して結晶化を促進し、連続的な固相重合工程を経て、多様な分子量範囲のポリカーボネートを提供する微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法及びこれを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日では、ポリカーボネート樹脂は、1950年代にバイエル(Bayer)社とGE社で個別にビスフェノールAを用いたポリカーボネート重合法が開発されて以来、優れた透明性と機械的物性に基づいてエンジニアリングプラスチックの重要な部分を占めながら成長している。2008年現在のポリカーボネートの世界的な需要は約340万トンであり、CD及びDVDなどの光ディスク用途を含む光学用途、押出シート及びフィルム、電気電子製品用途、そして、自動車部品に至るまで多様な分野で優れた物性に基づいて使用されており、年間成長率も世界的に7%の水準を記録しており、中国をはじめとする新興国では10%以上の成長率を記録している。
【0003】
ポリカーボネート工程の商業化は、1958年にバイエル社によって開始された後、1960年にGE社によって進められた。初期のポリカーボネート商業化工程は、ビスフェノールAとホスゲンガスを単量体として用いる、いわゆる「ホスゲン工程」であり、現在までも、ほとんどの世界各国のポリカーボネート工程では、ホスゲン工程である界面重合法を用いている。しかし、ホスゲン工程は、有毒ガスであるホスゲンの使用による設備上の安全性と環境問題、界面重合法の採択による塩化メチレン及び水の使用から生じる膨大なエネルギー消費及び建設費などの問題をもたらすため、使用に制約があった。そのため、ホスゲン工程である界面重合法ではない非ホスゲン系工程に対する研究が持続的に進められており、1960年代の初期にバイエル社によってビスフェノールAとジフェニルカーボネートを用いた溶融重合工程が開発され、非ホスゲン系工程の開発が始まった。最近、旭化成株式会社は、二酸化炭素とエチレンオキサイドを単量体にしてジフェニルカーボネートを製造する工程と、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートの溶融重合でワイヤ反応器を用いる非ホスゲン系ポリカーボネート製造工程の商業化に成功し、非ホスゲン系ポリカーボネート工程を世界的に拡大させている。
【0004】
加えて、非ホスゲン系ポリカーボネート製造技術には溶融重合工程と固相重合工程を用いた技術があり、これらの技術は多くの会社によって試みられている。特に、固相重合工程は、非ホスゲン系工程の弱点である高分子量ポリカーボネート製造のための最適な工程であって、これを実現するための多くの技術が紹介されている。
【0005】
非結晶性であるポリカーボネートを固相重合するための事前段階として結晶化を誘導する過程が必要とされ、この段階は、ポリカーボネートの固相重合を実現するために、多くの従来の技術において最も優先的に解決しようとする段階と見ることができる。
【0006】
しかしながら、従来の各技術は、ポリカーボネートを溶解する有機溶媒を導入して溶媒上で結晶化を誘導したり、重合されたポリカーボネートをペレット状態に作ったり粉砕して熱や気体状の溶媒によって結晶化を導入したり、又は、溶媒上に溶解されたポリカーボネートをスプレー状に噴射して結晶性ポリカーボネートを得るなどの結晶化段階で多量の有機溶媒を使用するとともに長い時間を消耗するという短所があり、実際に固相重合工程のための商業化は難しいという実情である。
【0007】
米国特許第4,948,871号及び日本特許第2,546,724号に開示されている芳香族ポリカーボネート結晶化方法は、非結晶性ポリカーボネートプレポリマーをアセトンで処理したり、長時間熱処理したりすることによって、結晶化された多孔性ポリカーボネートを製造する方法である。このような結晶化方式は、溶融重合工程と連続的に運営されにくい別途の工程段階を経るべきであり、アセトン回収及び洗浄などのための追加的な設備及び処理時間が必要になる。また、多孔性ポリカーボネート粒子の具現時にも均一な大きさで製造しにくいので、後続工程である固相重合工程での重合均一度を具現することができず、固相重合時の固体相流動による粒子間の摩擦と衝突によって多量の不均一な雪粉を生成するという問題を有している。このような雪粉は、プラスチック成形過程でも炭化物と未溶融物を誘発するもので、最終製品の品質を悪化させる主要原因として知られている。
【0008】
また、米国特許第5,717,056号では、ジヒドロキシ芳香族化合物でポリカーボネートプレポリマーを処理し、アルカリ金属ヒドロキサイド触媒などと共に加熱・撹拌してポリカーボネートの結晶化度を増加させる方法を提示しており、これを通してポリカーボネートの固相重合を実現することを紹介している。しかし、このような工程も、プレポリマーを作る溶融重合工程とは別途の撹拌及び反応工程を必要とし、固相重合のための後処理工程も追加されるという問題を依然として有している。
【0009】
米国特許第6,031,062号に紹介されたポリカーボネートの結晶化方法は、ポリカーボネートプレポリマーにジアリルカーボネートを共押出した後、再びミキサーなどで長時間ブレンディングする過程を経るようになっている。その後、同一のミキサーで固相重合を実施するようになり、このような多段階工程のため大量生産工程を具現できないという問題を有している。
【0010】
米国特許第7,148,312号及び大韓民国登録特許第0536528号には、非結晶性ポリカーボネートを溶媒に溶解させてポリカーボネート溶液を製造した後、ノズルを用いて噴射し、高温気体と接触させて結晶性ポリカーボネートを製造するスプレー結晶化法を紹介している。このような結晶化法は、比較的短時間にポリカーボネートを結晶化できるという長所を有しているが、結晶化段階の前処理過程として、ポリカーボネート溶融重合後に別途の溶媒を使用して溶解させる過程を追加しなければならないため、依然として効率的な非ホスゲン系ポリカーボネート連続重合工程を具現しにくいという問題を有している。また、スプレーによって噴射されたポリカーボネートの粒子を調節しにくく、その結果、固相重合時の重合均一度及び最終製品の雪粉生成に対する問題を解決しにくい。
【0011】
したがって、上記のような各問題を改善するために、効率的かつ単純なポリカーボネート結晶化工程の開発を通じた非ホスゲン系ポリカーボネート連続工程の開発が希求されているという実情にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の問題を解決するために、本発明が解決しようとする技術的課題は、均一な微細球形パウダー状のポリカーボネート粒子を製造することによって、ポリカーボネート結晶化段階を改善し、時間及び費用の面で画期的に有利な微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明が解決しようとする他の技術的課題は、均一な微細球形パウダー状のポリカーボネート粒子を製造することによって、固相重合工程での重合均一度を高め、重合過程で発生する雪粉の量を画期的に減少させることにある。
【0014】
本発明が解決しようとする更に他の技術的課題は、既存の非ホスゲン系ポリカーボネート製造工程で製造できなかった高分子量ポリカーボネート樹脂の生産を可能にするために、効率的な結晶化方法により進められる連続固相重合工程を具現することにある。
【0015】
また、本発明が解決しようとする更に他の技術的課題は、非ホスゲン系工程で溶融重合されたポリカーボネートプレポリマーを押出し、分散媒循環環境で速い結晶化を誘導し、連続乾燥工程段階を通して固相重合工程への連結を容易にし、追加的な設備がなくても、非ホスゲン系ポリカーボネート樹脂の製造工程が連続的な単一工程によって進められるようにすることにある。
【0016】
また、本発明が解決しようとする更に他の技術的課題は、多様な分子量範囲のポリカーボネート樹脂を生産できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した技術的課題を解決するための手段として、本発明による微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法及びこれを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂の製造方法は、(A)芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリルカーボネートを重量平均分子量が20,000g/mol以下である非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーに重合する段階、(B)前記非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーを微細球形パウダー状の非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーに押出する段階、(C)前記微細球形パウダー状の非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーを溶媒又は分散媒環境で表面結晶化する段階、(D)前記表面結晶化された微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーを乾燥する段階を含むことを特徴とする。
【0018】
前記非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーは、非ホスゲン系重合工程によって製造されたことを特徴とする。
【0019】
前記(B)段階は、多軸押出機又はバンバリー(banbury)形態の押出機のうちいずれか一つを用いて行うことを特徴とする。
【0020】
前記押出機には、100〜900ミクロンの大きさの微細ホールを有する押出ダイが接続されたことを特徴とする。
【0021】
前記(C)段階は、50〜200℃の温度で行われることを特徴とする。
【0022】
前記(C)段階によって表面結晶化された微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーは、結晶化度が10〜50%であることを特徴とする。
【0023】
前記(D)段階は、表面結晶化された微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーを遠心分離機によって溶媒又は分散媒と分離した後、真空乾燥、除湿乾燥又は熱風乾燥のうちいずれか一つの方法で乾燥することを特徴とする。
【0024】
前記(D)段階によって乾燥された微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーは、0.1%未満の水分率を有することを特徴とする。
【0025】
課題を解決するための更に別の手段として、本発明による微細球形パウダー状のポリカーボネート製造方法及びこれを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特許請求の範囲第1項による微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーを、固相重合装置を用いて連続的に分子量に応じて分離・排出する固相重合段階を含む微細球形パウダー状のポリカーボネートを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂の製造方法であることを特徴とする。
【0026】
前記固相重合段階は、不活性気体流動環境又は真空状態及び150〜230℃の温度で微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマー内のフェノールを除去して、重合度を高めることを特徴とする。
【0027】
前記固相重合装置は、垂直型、水平型又は斜線型固相重合装置のうちいずれか一つであることを特徴とする。
【0028】
前記固相重合装置には、ポリカーボネート樹脂排出ラインが1〜3個設置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法及びこれを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂製造方法とその製造装置によれば、非ホスゲン系ポリカーボネート工程を利用することで、環境にやさしく、微細球形パウダー状にポリカーボネート又はプレポリマーを製造すると同時に、分散媒環境下で表面結晶化を進行し、結晶化工程の連続性と効率性を大幅に向上させることができる。
【0030】
また、これにより、固相重合工程で進行するボトルネック無しに、直ちに連結が可能である。
【0031】
一方、本発明に係る微細球形パウダー状に表面結晶化されたポリカーボネート又はプレポリマーは、その形態を固相重合段階でも継続して維持することによって、表面積の画期的な増加によってフェノール除去効率を高めることができ、均一な球形を維持し、分子量の増加を滞留時間によって容易に調節することができる。
【0032】
これにより、固相重合工程中に多くの場所でそれぞれの分子量を有するポリカーボネートを同時に生産することができ、球形粒子の長所を通して既存のペレット移送過程及び固相重合工程で発生する雪粉が大幅に減少したポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーに重合する非ホスゲン重合工程及び微細押出ダイを通して押出する段階の流れを示したシステム構成図である。
【図2】微細球形パウダー状の非結晶性ポリカーボネートの結晶化段階及び乾燥段階の流れを示したシステム構成図である。
【図3】水平型固相重合装置の概略図である。
【図4】垂直型固相重合装置の概略図である。
【図5】微細球形パウダー状のポリカーボネート製造方法及びこれを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂を製造する方法の連続工程の流れを示したシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0035】
しかしながら、本発明は、多様な異なる形態に具現することもでき、ここで説明する実施例に限定されるものではない。また、図面において、本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略する。
【0036】
(1)非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーを重合し、微細押出ダイを通して押出する段階

本発明において、非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリルカーボネートから溶融重合されたものであり、重量平均分子量の範囲が1,000〜20,000g/mol、望ましくは2,000〜15,000g/mol、より望ましくは4,000〜12,000g/molである非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーを使用する。
【0037】
上記のような条件に該当するポリカーボネートとしては、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートから重合される単一重合体ポリカーボネートや、ジヒドロキシ化合物及びジアリルカーボネート誘導体から重合される単一重合体ポリカーボネートや、共重合体ポリカーボネートがあり、単一使用や混合しての使用が可能である。
【0038】
この段階で使用される製造装置は、前記ポリカーボネート又はプレポリマーを撹拌式反応器によって製造し、本発明で指定する範囲の重量平均分子量に到逹すると、溶融状態で連続的に微細押出ダイと切断手段が付着された押出機を通して微細球形パウダー状の非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーを製造する。
【0039】
このとき、望ましい押出機の例としては、一軸及び二軸押出機、三軸以上の多軸押出機、及びバンバリー形態の押出機などがある。
【0040】
前記押出機に接続された微細押出ダイは、900ミクロン以下の微細ホールをダイ上に具現したもので、望ましくは200〜500ミクロンの微細ホールをダイ上に具現したものである。
【0041】
前記微細押出ダイを通して押出された微細球形パウダー状の非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーの平均粒径は、100〜900ミクロンの範囲にする。
【0042】
(2)微細球形パウダー状の非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーを溶媒又は分散媒循環環境で結晶化して乾燥する段階

前記(1)段階の微細ダイホールを通して押出されながら、非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーは、微細直径で押出されると同時に、分散媒とアンダーウォーター方式で接触しながら回転刃が付着された切断手段によって微細球形パウダー状の非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーを製造する。
【0043】
前記分散媒としては、非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーの微細球形パウダー状を維持できる非溶媒であればいずれも適用可能であり、望まくは、水、アルコール類、グリコール類、アセトンなどを単一又は混合して使用することができる。
【0044】
微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーは、前記分散媒のように温度範囲を50〜200℃、望ましくは80〜180℃に一定時間維持し、表面結晶化を進行しなければならない。
【0045】
前記結晶化工程を経ながら、微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーは、10〜50%、望ましくは20〜40%の結晶化度を有する。
【0046】
前記結晶化度を有する微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーは、遠心分離装置によって分散媒と分離され、分散媒は、再び別途の分散媒貯蔵槽に保管された後、温度調節装置によって再び微細押出ダイラインに復帰されて再使用され、分離された微細球形パウダー状の結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーは、乾燥器に移動し、連続真空乾燥、連続除湿乾燥、連続熱風乾燥のうちいずれか一つの方法で乾燥される。
【0047】
このような乾燥段階を経た微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーは、水分率を0.1%未満にする。
【0048】
(3)結晶化された微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーを連続的に固相重合し、多様な分子量のポリカーボネート樹脂を製造する方法

前記(2)段階で乾燥が完了した結晶化微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーは、移動ラインを通して垂直型又は水平型固相重合工程に移動し、本発明で使用する固相重合工程は、分子量別に同時生産が可能であるという特徴を有する。
【0049】
本発明の水平型又は垂直型固相重合工程は、窒素気流雰囲気又は真空状態で稼動され、表面結晶化された微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマー内でフェノールが除去される。
【0050】
微細球形による広い表面積と均一な粒度維持のためフェノール除去調節が均一に行われ、これによって、固相重合工程内で滞留する時間によって均一な分子量増加効果を有する。そのため、滞留時間によって到逹する分子量の予測が可能であるので、水平型又は垂直型固相重合工程の中間に設置されたバルブを通して滞留時間を異にして重合されたポリカーボネート樹脂を排出でき、同時に多様な分子量のポリカーボネート樹脂を製造できるという特徴を有する。
【0051】
また、ポリカーボネート樹脂が固相重合過程でも微細球形パウダー状を維持しており、既存の技術で解決できなかったペレット及びフレーク状から発生する雪粉の発生可能性を画期的に減少できるという長所がある。
【0052】
前記固相重合工程に用いられる装置では、水平型固相重合工程の場合、押出機と同様にスクリューが回転しながら微細球形パウダー状のポリカーボネートが移動したり、又は固定軸を中心に外部円筒が動いてポリカーボネート樹脂の移動を可能にし、固相重合工程全体は、ポリカーボネート樹脂内に存在するフェノールを効率的に除去できるように熱い窒素気流や高真空状態で運転する。
【0053】
その一方、垂直型固相重合工程の場合は、垂直な円筒上に結晶化された微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーが投入され、垂直な円筒の内部に充填された後、垂直にレベルが形成されると、円筒の上部から底まで下降する間に逆に上昇する熱い窒素気流によってフェノールが除去されながら固相重合が進められる方法である。また、垂直な円筒の内部に螺旋状の棚を設置し、上から下に微細球形パウダー状のポリカーボネートが自然に流れるように設計することもできる。
【0054】
以下、本発明の好適な製造例を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0055】
製造例1.微細球形パウダー状の非結晶性ポリカーボネート製造

図1は、本発明に係る非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーを重合し、これを微細押出ダイを通して押出する段階を示す工程図である。
【0056】
まず、撹拌重合器10にビスフェノールAとジフェニルカーボネートを投入し、ビスフェノールA 1molに対して10−8molに該当するリチウムヒドロキシサイド触媒を付加した後、撹拌しながら徐々に約230℃まで昇温し、圧力は約50torrまで徐々に下げる。重量平均分子量が約5,000に到逹すると、溶融状態のポリカーボネートを押出機12に投入する。このときに使用される押出機12は、混練が必要でないので、一軸押出機であってもよく、ただし、溶融されたポリカーボネート樹脂の分解防止のために窒素気流又は真空環境になり得る液化(devolatilization)設備を保有することが望ましい。次の段階では、押出機を通して溶融されたポリカーボネート樹脂がギアポンプ14に投入され、ギアポンプ14によって一定の流動及び流量で300ミクロンの微細ホールを有する微細押出ダイ16に移送される。
【0057】
微細押出ダイ16の微細ホールをギアポンプによって一定の圧力で通過しながら、ポリカーボネート樹脂は、微細粒径で押出されると同時に、分散媒移送ライン22を通して入ってきた分散媒と接触するようになり、これと同時に、回転切断部18によって微細球形パウダー状のポリカーボネート樹脂に製造される。このとき、製造されたポリカーボネート微細球形パウダーの平均粒径は335ミクロンである。
【0058】
製造例2.微細球形パウダー状のポリカーボネートの結晶化及び乾燥

図2は、本発明による高分子量ポリカーボネート樹脂を製造するために差別化された結晶化方法に対する工程フローチャートである。
【0059】
回転切断部18の下端から流入した分散媒は、微細球形パウダー状のポリカーボネートと共に結晶化工程移送ライン20に移動するようになる。このとき、分散媒は、ポリカーボネート微細球形パウダーの結晶化を促進できる温度に維持しなければならない。
【0060】
ポリカーボネート微細球形パウダーは、結晶化を促進できる温度で分散媒と共に移送されながら、表面結晶化工程24を経て遠心分離器26に入っていく。この遠心分離器26では、表面結晶化された微細球形パウダー状のポリカーボネートと分散媒にそれぞれ分離され、分散媒と分離されたポリカーボネート微細球形パウダーは、表面結晶化された状態で除湿乾燥器32に流入する。また、遠心分離器26で分離された分散媒は、分散媒貯蔵槽28に移送された後、熱交換器30を通して再び一定の温度に昇温され、微細球形パウダー切断部に循環される。除湿乾燥器32で乾燥された表面結晶化ポリカーボネート微細球形パウダーは、固相重合工程移送ライン34を通して連続工程である固相重合工程36に流入する。除湿乾燥器34を通過したポリカーボネート微細球形パウダーは、約35%の結晶化度を有しており、球形の表面は完全に結晶化された状態であって、後工程である固相重合工程で塊を誘発せず、球形の特性を維持しているので、粒子間の衝突による雪粉の発生が大幅に減少する。
【0061】
製造例3.多様な分子量のポリカーボネート樹脂製造

図3は、本発明による多様な分子量のポリカーボネート固相重合製造のための水平型固相重合装置の概略図で、図4は、本発明による多様な分子量のポリカーボネート固相重合製造のための垂直型固相重合装置の概略図で、図5の固相重合工程36は、図3の水平型固相重合工程と図4の垂直型固相重合工程、又は傾きを有する水平型固相重合工程を用いることができ、水平型固相重合工程を中心に本製造例を説明する。
【0062】
結晶化されたポリカーボネート微細球形パウダーは、スクリュー回転方式で水平型の固相重合装置内で前部に徐々に移動するようになり、温度範囲は約180℃〜220℃で勾配を有して運営することができる。また、固相重合過程で微細球形パウダー内部のフェノールを除去するために、固相重合装置の内部は真空で運転したり、加熱された窒素が加熱窒素ガスライン38を通して微細球形パウダーの移動方向とは反対に移動しなければならない。固相重合装置の内部のスクリュー回転によってポリカーボネート微細球形パウダーのフェノールが除去されながら、重合度は効率的に増加するようになり、固相重合装置の中央部以後では、別途のバルブ設置によって所望の分子量範囲のポリカーボネートを生産することができる。これによって、本発明による固相重合装置を使用すると、滞留及び進行時間によって一定に増加する分子量別にポリカーボネート樹脂を製造できるようになるという特徴がある。すなわち、固相重合装置で滞留した時間が最も短いラインでは低分子量のポリカーボネート樹脂を排出40し、その後、中間部分では中間分子量のポリカーボネートを排出41し、固相重合工程の最外部では高分子量のポリカーボネート樹脂を排出42する。これによって、既存の非ホスゲン系ポリカーボネート重合工程で得られなかったメルトフローインデックス(melt flow index)5g/10min以下、重量平均分子量30,000g/mol以上のポリカーボネート樹脂も製造することができる。
【0063】
図5は、上述した製造例1、2及び3の工程を一つの工程図で示したもので、本発明の非ホスゲン系重合工程を通した微細球形パウダー状のポリカーボネート製造方法及びこれを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂を製造する方法に対する連続工程図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリルカーボネートを、重量平均分子量20,000g/mol以下の非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーに重合する段階と、
(B)前記非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーを、微細球形パウダー状の非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーに押出する段階と、
(C)前記微細球形パウダー状の非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーを、溶媒又は分散媒環境で表面結晶化する段階と、
(D)前記表面結晶化された微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーを乾燥する段階と、
を含むことを特徴とする、微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法。
【請求項2】
前記非結晶性ポリカーボネート又はプレポリマーは、非ホスゲン系重合工程によって製造されたことを特徴とする、請求項1に記載の微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記(B)段階は、多軸押出機又はバンバリー形態の押出機のうちいずれか一つを用いて行うことを特徴とする、請求項1に記載の微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記押出機には、100〜900ミクロンの大きさの微細ホールを有する押出ダイが接続されたことを特徴とする、請求項3に記載の微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法。
【請求項5】
前記(C)段階は、50〜200℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法。
【請求項6】
前記(C)段階によって表面結晶化された微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーは、結晶化度が10〜50%であることを特徴とする、請求項1に記載の微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記(D)段階では、表面結晶化された微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーを遠心分離器によって溶媒又は分散媒と分離した後、真空乾燥、除湿乾燥又は熱風乾燥のうちいずれか一つの方法で乾燥することを特徴とする、請求項1に記載の微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法。
【請求項8】
前記(D)段階によって乾燥された微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーは、0.1%未満の水分率を有することを特徴とする、請求項1に記載の微細球形パウダー状のポリカーボネートの製造方法。
【請求項9】
請求項1による微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマーを、固相重合装置を用いて連続的に分子量によって分離・排出する固相重合段階を含む、微細球形パウダー状のポリカーボネートを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記固相重合段階は、不活性気体流動環境又は真空状態及び150〜230℃の温度で微細球形パウダー状のポリカーボネート又はプレポリマー内のフェノールを除去して重合度を高めることを特徴とする、請求項9に記載の微細球形パウダー状のポリカーボネートを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記固相重合装置は、垂直型、水平型又は斜線型固相重合装置のうちいずれか一つであることを特徴とする、請求項9に記載の微細球形パウダー状のポリカーボネートを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記固相重合装置には、ポリカーボネート樹脂排出ラインが設置されたことを特徴とする、請求項11に記載の微細球形パウダー状のポリカーボネートを用いた高分子量ポリカーボネート樹脂の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−513521(P2012−513521A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543406(P2011−543406)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/KR2009/005884
【国際公開番号】WO2010/076947
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(511123485)ホナムペトロケミカルコーポレーション (10)
【Fターム(参考)】