説明

微量の活性成分を含む製剤の調製方法

本発明は、1.ワセリンを入れた容器で活性成分を計量する工程;2.前記活性成分を追加のワセリンを用いて封入する工程;3.前記活性成分とワセリンとが入った容器をミキサーに導入する工程;及び4.前記活性成分をミキサー中に拡散させる工程;を含む、微量の分散性活性成分を含む製剤、好ましくは軟膏の調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作用剤もしくは微量の分散可能な活性成分を含む、製薬品もしくは化粧品製剤、好ましくは軟膏の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低活性成分濃度の調剤の製造は、その賦形剤中における活性成分の均一化の問題を必然的に伴うことが知られている。これは、大量の賦形剤と混合されると、微量の活性成分が分散不均一性の問題に遭遇するためである。低活性成分濃度の製品を得るために、これらの調剤は通常、中間の希釈段階を経る必要がある。活性成分が有害生成物の部類に属する場合には、さらなる問題が生じる。この場合は、取り扱いが長時間を要するのみならず、危険でもあり、このことが事故の危険性が著しく増大させる。これに加えて、有害生成物を光及び酸化現象から保護しつつ輸送するという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの方法によって製造される調剤の例は、軟膏である。これらは、皮膚に直接適用することを企図し、然るに皮膚に適用可能な、予め決定した範囲の粘度のものでなければならない、外用のための調剤である。前記軟膏中の活性成分が固体であるならば、これはできる限り細かく散在させ、幾何学的希釈の原理によって前記軟膏に導入される。
【0004】
幾何学的希釈は一連の希釈工程を含む。これは、活性成分がおよそ等サイズの賦形剤の所定量中に導入されることから開始される。生成した第一の混合物とおよそ同等の賦形剤の第二量が加えられ、その後混合される。
【0005】
希釈工程を含むこの操作は、活性成分の企図した濃度が得られるように、全ての賦形剤が使用されるまで行われる。
【0006】
前記軟膏の製造に必要とされる様々な生成物は、一般的に水浴を用いて溶解させることにより混合し、引き続き該混合物が冷却するまで撹拌する。この場合には、活性成分は適当な段階で導入される。従って、均一性を保証するために、長く、引き延ばされた相互作用処理が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
長い処理及び事故の危険性の問題に対する解決策が、活性成分を含む製剤を調製するための、本発明による新規な方法であって、これは下記の調製工程:
1.ワセリンを入れた容器で活性成分を計量する工程;
2.前記活性成分を追加のワセリンを用いて封入する工程;
3.前記活性成分とワセリンとが入った容器をミキサーに導入する工程;及び
4.前記活性成分をミキサー中に拡散させる工程;
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
これら様々な工程は、時間の節約及び均一な製品を得ようとする目的に関して品質の改善を可能にする。
【0009】
これは、前記活性成分の容器からミキサー中への拡散の点で、本発明による方法が一定の拡散を保証し、これによりかつて行われていた可能性のある、ミキサーのバット(vat)中に「ばらで」導入された場合に観察される不均一な分散が回避されるためである。
【0010】
活性成分をワセリン保護膜中に封入することにより、前記活性成分を希釈する工程がいっそう不要になり、前記活性成分を計量後に取り扱う際、特にこれをバットに輸送する間の毒性及び事故の危険性が回避される。
【0011】
最後に、ワセリン封入によって提供される保護により、本発明の方法によって生じる耐漏洩性が光による酸化及び変質の問題が回避する。
【0012】
したがって、中間の希釈工程を排除することによって、さらに本発明は調製時間を短縮するであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、純粋に例示のために以下の図面を考慮に入れて詳説される。
【0014】
本発明は、微量の活性成分を含む製剤、好ましくは軟膏の調製方法に関する。前記方法は、下記の調製工程:
1.ワセリンを入れた容器で活性成分を計量する工程;
2.前記活性成分を追加のワセリンで封入する工程;
3.前記活性成分とワセリンとが入った容器をミキサーに導入する工程;及び
4.前記活性成分をミキサー中に拡散させる工程;
を含むことを特徴とする。
【0015】
特に、微量の活性成分を含む均一な液体製剤は、以下のように調製される。
−工程1では、容器の底部に白色ワセリンの層を設ける(図1b参照)前に、まず容器の重量を計測する(図1a参照)。その後、加えたワセリンの重量を測定するために、計量を行う必要がある。その後、図1cに示されるように活性成分を前記容器に導入する。その後、添加された活性成分の厳密な量を測定するために前記容器を再計量する。
【0016】
−工程2では、ワセリンで前記活性成分を包むために、白色ワセリンのプラグが形成される(図1d参照)。この複雑な工程は、白色ワセリンの「コクーン」を形成を妨げるであろう、いかなるエアポケットの生成も回避するように行う必要がある。前記容器の調製を完了するために、これを2つの剛性プラグで封鎖する(図1e参照)。
【0017】
容器のこの封鎖形態では、白色ワセリンで封入された前記活性成分を、光及び酸化現象から保護しつつその処置位置に輸送することができる。
【0018】
−続く工程3を実行するために、前記容器の小プラグを除去し、前記容器の大プラグを穿孔プラグと取り替える(図3及び4参照)。こうして該容器をバットに導入し(図6参照)、このバットとその中の賦形剤が十分に加熱されて、中の賦形剤の混合物が液体形態であるようにする。
【0019】
−工程4では、活性成分を封入する固体ワセリンが、加熱した賦形剤の混合物と接触して溶解する。したがってこれは、活性成分溶液を担持しつつ拡散可能であり、且つミキサーのバット内に収容された他の賦形剤の中に均一に分布可能である。
【0020】
この均一な分布は、様々な要因によって促進されるが、まずは70乃至90℃に亘るバット中の賦形剤の温度によって促進される。然るに、該温度によって活性成分を保持する拡散容器中に入っているワセリンを溶解させることができる。前記均一な分布は、引き続き前記容器の端部にあるグリルによって促進されるが、これは活性成分を少量ずつ一定割合で拡散させるのみである。したがって、前記グリルは、劣悪な分布をもたらし、ひいては最終製品の劣悪な均一性をもたらす、半固体のワセリンの大きな塊の形成を防ぐ。
【0021】
「微量の活性成分」なる語は、1乃至100ppm、例えば1乃至50ppm、とりわけ1乃至10ppm、好ましくは1乃至5ppmの活性成分濃度を意味することを企図する。
【0022】
好ましい実施態様においては、本発明の方法で使用される活性成分はカルシトリオールであり、とりわけカルシトリオールを3ppmの最終濃度で使用することが好ましい。
むろん、本発明の方法は、その一つ以上が微量である複数の活性成分を含む組成物の調製のために使用してよい。
【0023】
「計量」なる語は、天秤で秤量する動作(taring action)、またはより一般的には、生成物の重量もしくは質量を測定する方法を意味することを企図する。
【0024】
有害活性成分による汚染の危険性を避けるために、計量工程は、垂直層流のドラフト内か、もしくは密閉容器内で行うことが好ましい。
【0025】
いかなる誤りも防ぐために、この計量工程は、1/100mgの正確度の天秤で行うことが好ましい。
【0026】
「容器」なる語は、活性成分を導入するための、あらゆる体積の入れ物もしくは容器を意味することを企図する。本件の場合には、本発明はとりわけフラストコニカル型の容器に関する。
【0027】
拡散を促進するために、その形状により流体の流速を助長し且つ増大させる特性を有している円錐形の錐台を使用することが好ましい。さらには前記流速は幅広部分では減速し、このことにより活性成分のより優れた溶解が可能になる。
【0028】
「金属容器」なる語は、好ましくはステンレススチール容器を意味することを企図する。
【0029】
本発明の特段の実施態様では、製品Silkisを調製するために最適な活性成分(濃度3ppmのカルシトリオール)の拡散が可能な容器には、下記の部品が備わっている(図2参照):
1−ステンレススチール製の、金属の円錐台(図3参照)。これは製剤の調製の間にワセリンで覆われることになる。
2−白色ポリテトラフルオロエチレン製の、2つの固体プラグ及び1つの大きな穿孔プラグ。差込みシステムを備えたこれらのプラグは、容器上にかみ合わせ固定される。
3−大型穿孔プラグ(図4参照)の形状と容器の小端部にあるグリル(図3参照)の形状により、熱い可塑剤と接触した場合に溶解したワセリンが拡散することができ、塊の形成が回避される。
【0030】
(バットの形状による)一定高さでの容器のロッドへの固定は、図5に図示したように連結させることによって行う。一定高さをもつこの形態では、前記容器は回転することができ、バット中の活性成分を均一に分布させることができる(図6)。
【0031】
「剛性プラグ」なる語は、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン製またはステンレススチール製のものを意味することを企図する。
【0032】
「ワセリン」なる語は、軟膏の構成に使用されるワセリンから誘導されるあらゆる脂性物質を意味することを企図する。本件においては、本発明はとりわけ、欧州及び米国薬局方「Pharmeuropa」及び「USP」の詳述に該当する、130,000乃至550,000Cpsの粘度を有するワセリンに関する。パラフィンオイル滲出現象の最適な抑制をもたらすワセリンが好ましく使用される。
【0033】
密閉アッセンブリの形成を可能にするためにこの操作は好ましくは真空中で行われる。これによれば、より長期間に亘って維持可能な密閉アッセンブリを形成することが可能である。
【0034】
「賦形剤混合物」なる語は、2つ以上の賦形剤を含むあらゆる混合物、例えばワセリンとパラフィンとの混合物、とりわけ50乃至60%の白色ワセリンと40乃至50%のパラフィンとの混合物を意味することを企図する。
【0035】
「加熱した」なる語は、賦形剤の温度が上昇し、前記賦形剤を液体形態とするような、あらゆる熱の産生を意味することを企図する。
【0036】
好ましくは、最適な均一化のためには、規定温度と均一化時間に従うことが重要である。本発明の好ましい実施態様では、例えば、温度は70乃至90℃であり、均一化時間は3時間30分間から4時間30分間の範囲である。
【実施例】
【0037】
(実施例1a:容器中のカルシトリオールの計量)
まず、カルシトリオールを計量する工程に使用される、ワセリンのポット及びチューブを準備することが必要である。
【0038】
前記ポット及びチューブは、下記の方式で計量される。
・ポット及びそのフタを8kg天秤に載せる;
・目盛りを読む;
・槽から約50gのワセリンをとり、これをポットに導入する;
・前記ポットを再度閉じ、目盛りをゼロに戻す;
・前記チューブを天秤に載せる;
・目盛りを読む;
・槽から約50gのワセリンをとり、これをチューブに導入する;さらに
・折り畳み機構を用いてチューブを閉じる。
【0039】
ワセリンを準備するこの段階の後、下記の方式でワセリンを用いて円錐台を準備する。
まず、その固体下部プラグ及びその固体上部プラグを嵌めたステンレススチール円錐台を、天秤の皿に載せ、スパチュラを用いて容器にワセリンを充填する前に目盛りを読む。前記円錐台は2/3まで満たされ、且つその中央に窪みを有しているべきであり、ここにカルシトリオールを導入する。密閉容器にワセリンの前記円錐台を導入する前に、加えたワセリンの質量を記録する。
【0040】
カルシトリオールのアンプルを予め密閉容器に導入しておき、これが計量される時点でコンパートメントと同じ温度であるようにする。前記円錐台に導入したカルシトリオールを、差異として計量する。カルシトリオールを導入するこの工程は、該粉末の散布を回避するために追加式注入によって行われる。
【0041】
活性成分の計量のこの工程の後、カルシトリオールの入った窪みは、前記のチューブに入れたワセリンで覆われる。
【0042】
このように形成した円錐台は、差込みシステムを備えた2つの固体プラグを用いて閉じられ、毒性の如何なる危険性からも保護された状態でその処置位置に輸送することが可能になる。
【0043】
(実施例1b:製品Silkis3ppmの製造)
1a)製造バットをワセリンで満たし、これが最終製剤の56.2487%を構成するようにする。まずこのワセリンを、これが液体状態となる温度で予め溶解させ、その後、このワセリンを液体の均一な状態に維持する温度条件下で撹拌しつつ、窒素中で加熱する。
【0044】
1b)同時に、やかんを流動パラフィンで満たし、これが最終製剤の43.75%を構成するようにする。工程1a中でワセリンについて使用したものと同等の温度まで、撹拌しつつ窒素中にて加熱する。
【0045】
1c)活性成分もこの第一工程中に密閉容器中で準備する。この点について、カルシトリオールを、非化学作用光線下且つ窒素中にて、ワセリンのコクーン中で計量し、カルシトリオールが最終製剤の0.0003%を構成するようにする。
【0046】
2)これら三つの化合物を準備した後、まず高温のパラフィンをワセリンの入ったバットに導入する。
【0047】
3)その後D.L.アルファトコフェロールを、これが最終製剤の0.001%を構成するような濃度でこの賦形剤混合物に加える。
【0048】
4)三つの賦形剤のこの混合物を、その後脱気し、窒素中に維持する。
【0049】
5)これに引き続いて、均一化段階を行い、その間は真空下にて撹拌を継続する。
【0050】
6)この均一化工程の後に、カルシトリオールを入れた円錐台を、非化学作用光線下にて三つの賦形剤を入れたバットに導入する。
【0051】
7)この工程に引き続き、脱気及び窒素による不活性化を、真空下で行う。
【0052】
8)このアッセンブリを、均一化に必要な時間、真空中におく。
【0053】
9)前記均一化段階の後、前記製剤を、該混合物中に空気が入ることを避けるために真空中で放冷する。
【0054】
10)最終工程は、ゆっくりと撹拌しつつ、非化学作用光線下、窒素中における、液体状態での基本的実装である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1A】図1Aは、容器の重量の測定を示す。
【図1B】図1Bは、白色ワセリン層の形成及び計量を示す。
【図1C】図1Cは、カルシトリオールの導入及び計量を示す。
【図1D】図1Dは、ワセリンプラグの形成を示す。
【図1E】図1Eは、2つの剛性プラグによる容器の封鎖を示す。
【図2】図2は、容器の様々な部品の平面図を示す。
【図3】図3は、フラストコニカル容器を示す(側面図)。
【図4】図4は、差込み取付具を有する穿孔プラグを示す(平面図)。
【図5】図5は、ロッド上の容器の連結部を示す(平面図)。
【図6】図6は、バット中に固定した容器を示す(平面図)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微量の活性成分を含む製剤の調製方法であって、以下の工程:
1.ワセリンを入れた容器で活性成分を計量する工程;
2.前記活性成分を追加のワセリンを用いて封入する工程;
3.前記活性成分とワセリンとが入った容器をミキサーに導入する工程;及び
4.前記活性成分をミキサー中に拡散させる工程;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
有害活性成分による汚染のあらゆる危険性を回避するために、計量工程が垂直層流のドラフト内か、もしくは密閉容器内で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
活性成分を導入するための容器がフラストコニカル型の容器であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ワセリンが、130000乃至550000Cpsの粘度を有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ワセリンが、パラフィンオイル滲出現象の最適な抑制をもたらすことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記活性成分が、カルシトリオールであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記活性成分が、最終濃度3ppmのカルシトリオールであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記賦形剤の混合物が、50乃至60%の白色ワセリンと40乃至50%のパラフィンとからなることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−528674(P2006−528674A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530335(P2006−530335)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001116
【国際公開番号】WO2004/100924
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(500247183)ガルデルマ・ソシエテ・アノニム (29)
【Fターム(参考)】